説明

塗膜形成方法

【課題】 エッジ部を有する基材の塗装などに好適な、防食性に優れた塗膜形成方法を提供すること。
【解決手段】 飽和磁化が0.5emu/g以上である粒状磁性材料を含む熱硬化性塗料組成物を用いて、未硬化塗膜を形成する、塗膜形成工程;およびこの未硬化塗膜を、磁場の作用下において加熱する、熱硬化工程;を包含する、塗膜形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッジ部を有する基材の塗装に好適な、塗膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属基材などの基材の表面には、種々の役割を持つ複数の塗膜を形成して、基材を保護すると同時に美しい外観を付与している。一般に、基材に防食性を付与する塗膜としては、電着塗装により形成される電着塗膜が広く用いられている。電着塗装は、複雑な形状を有する被塗物であっても細部にまで塗装を施すことができ、自動的かつ連続的に塗装することができるので、特に自動車車体等の大型で複雑な形状を有する被塗物の下塗り塗装方法として広く実用化されている。電着塗装は、つきまわり性、被塗物の未着部位に塗膜が順次形成される性質、も高いという利点がある。電着塗装は、電着塗料中に被塗物を電極として浸漬させ、電圧を印加することにより行なわれる。
【0003】
塗膜は、基材の防食性付与が求められることに加えて、その表面状態の良好さも求められる。塗膜の表面状態を向上させる手段として、塗膜形成時に塗膜のレベリング性を向上させる方法がある。例えば、加熱等の硬化時に熱フローによって塗膜をレベリングさせ、塗膜の表面状態を向上させることができる。一方、基材がエッジ部(被塗物である基材の角部。)を有する場合は、このエッジ部の塗装は電着塗装を用いる場合であっても困難である。さらに、このレベリング作用そして熱フローによって加熱硬化時にエッジ部から塗膜が流れてしまうことがあり、これによって防食性が劣ることとなる。そのため、エッジ部を有する基材の塗装においては、エッジ部の塗膜の膜厚を確保する手段が求められている。なお、基材1のエッジ部5において塗膜3が充分に形成されていない態様を示す模式図を図1に、基材1のエッジ部5において塗膜3が充分に形成された態様を示す模式図を図2に示す。
【0004】
加熱硬化時の熱フローによる塗膜の流れを抑制するために、塗料組成物中に増粘剤を添加することもできる。しかしながら、増粘剤を添加することによって、塗膜のレベリング性が劣ることとなり、エッジ部以外の平坦部などの表面状態が劣ることとなる。このため、基材のエッジ部における被膜の膜厚の確保と、塗膜の表面状態の向上(塗膜平滑性の向上)との両立は、困難である。
【0005】
エッジ部を有する基材の電着塗装においては、電着塗膜を形成した後、エッジ部の塗膜の上にシーラーまたは防錆ワックスなどを塗布することがある。シーラーとは、耐チッピング性を付与したり、鋼板合わせ目部の防錆や防水のために用いられるものであり、例えば、塩化ビニル系樹脂、可塑剤、充填剤、結合剤、及び溶剤等が含まれる。これによってエッジ部の膜厚を確保し、防食性を向上させることができる。しかしながら、塗装工程が増加するため、塗装設備または加熱炉などの設備コストおよび塗装コストが高くなってしまう。
【0006】
特開平2−22368号公報(特許文献1)には、磁化量0.3〜90emu/gの磁化機能を有する材料を、塗料固形分比で0.01〜30重量%含む電着塗料を、被塗物に対し磁気作用下に電着塗装することを特徴とする電着塗装方法が記載されている。この方法は、磁気作用下に電着塗装することを特徴とする点において、本発明の方法とは異なるものである。この電着塗装方法によって、電着塗装時にエッジ部のカバリングを向上させることが可能である。しかしながら、防食性をより高いものとするには、この磁化機能を有する材料を多量に使用しなければならず、これによりエッジ部以外での塗膜の平滑性が不十分となる場合があった。
【0007】
【特許文献1】特開平2−22368号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記従来技術の問題点を解決することを課題とする。より特定すれば、本発明は、塗膜の平滑性に優れ、かつ、エッジ部を有する基材の塗装に好適な、防食性に優れた塗膜形成方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
飽和磁化が0.5emu/g以上である粒状磁性材料を含む熱硬化性塗料組成物を用いて、未硬化塗膜を形成する、塗膜形成工程、および
この未硬化塗膜を、磁場の作用下において加熱する、熱硬化工程、
を包含する、塗膜形成方法、
を提供するものであり、これにより上記目的が達成される。
【0010】
上記粒状磁性材料は、金属磁性材料、金属合金磁性材料、金属酸化物磁性材料またはフェライト高分子複合材料からなる群から選択される少なくとも1つであるのが好ましい。
【0011】
また、熱硬化性塗料組成物の固形分100重量部に対する粒状磁性材料の重量%が0.01〜30重量%であるのが好ましい。
【0012】
また、上記熱硬化工程における加熱温度は、上記粒状磁性材料のキュリー温度より低い温度であるのが好ましい。
【0013】
さらに、上記熱硬化工程において120〜240℃で5〜30分間加熱を行うのが好ましい。
【0014】
上記熱硬化工程における磁場は、誘導磁場であるのが好ましい。
【0015】
また、上記熱硬化工程における磁場の強度は、0.3〜100kA/mであるのが好ましい。
【0016】
上記熱硬化性塗料組成物は、カチオン性エポキシ樹脂およびブロックイソシアネート硬化剤を含有する熱硬化性塗料組成物であるのが好ましい。また、上記熱硬化性塗料組成物は、電着性を有するものであるのがより好ましい。
【0017】
上記塗膜形成工程が、浸漬塗装、粉体塗装、スプレー塗装、静電塗装または電着塗装によって行われるのが好ましい。
【0018】
本発明はまた、上記記載の塗膜形成方法によって得られる塗膜も提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の方法を用いて基材を塗装することによって、塗膜表面の外観を損なうことなく、より均一な膜厚を有する塗膜を形成することができる。本発明の方法を用いて塗装することによって、一般に塗装が困難とされるエッジ部を有する基材であっても、良好に塗膜を形成することができる。このため、塗装後の基材の防食性を高めることができる。また、本発明の方法は、塗装工程数の増加を伴わずに、仕上がり外観および防食性が良好な塗膜を形成することができるという利点も有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
粒状磁性材料
本発明の方法で用いられる熱硬化性塗料組成物は、粒状磁性材料を含む。粒状磁性材料として、金属酸化物磁性材料、金属磁性材料あるいは金属合金磁性材料、フェライト高分子複合材料などが挙げられる。これらの粒状磁性材料は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
金属酸化物磁性材料としては特に限定されず、例えば、FeにMnO、ZnO、NiO、MgO、CuO、CoO等を組み合わせたフェライト;NiO−MnO−ZnO−Fe、MnO−ZnO−Fe、NiO−ZnO−Fe等のスピネル型フェライト;ガーネット型フェライト;γ−Fe(マグヘマイト);Fe(マグネタイト);などを挙げることができる。これらのうち、本発明においては、MgO、MnO、CoO、NiO、CuOまたはZnOのうち少なくとも1種を含有するフェライト、γ−Fe(マグヘマイト)またはFe(マグネタイト)を使用することが好ましい。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
金属磁性材料および金属合金磁性材料としては特に限定されず、例えば、Fe、Co、Ni等の磁性金属単体、又はこれらに、酸化処理等の、安定な態様にするための表面処理を施した表面処理金属磁性体;珪素鋼、センダスト、スーパーマロイ、パーマロイ、アモルファス金属等の磁性金属合金;Si、B、Al、Co、Ni、Cr、V、Sn、Zn、Pb、Mn、Mo及びAgからなる群より選択される少なくとも1種を含むFe磁性合金等を挙げることができる。これらのうち、本発明においては、Si、B、Al、Co、Ni、Cr、V、Sn、Zn、Pb、Mn、Mo及びAgからなる群より選択される少なくとも1種を含むFe磁性合金;Fe、Co若しくはNiの磁性金属単体、又はこれらに、酸化処理等の、安定な態様にするための表面処理を施した表面処理金属磁性体またはナノコロイド粒子が好ましい。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
上記金属酸化物磁性材料、金属磁性材料および金属合金磁性材料は、例えば、上記金属酸化物磁性材料、金属磁性材料または金属合金磁性材料等の磁性体のブロックを、スタンプミル機等を用いて粉砕し、乾式篩い分け法、気流分級、湿式篩い分け法、機械的湿式分級等により分級することによって調製することができる。
【0024】
フェライトめっき樹脂粒子は、樹脂または有機顔料などの粒状物を、鉄(II)イオンを含む水溶液中でコーティングすることによって調製することができる。なおフェライトめっき樹脂粒子の調製方法は、例えば特開昭59−111929号公報または同63−065085号公報等に記載されており公知である。本発明において好ましいフェライトめっき樹脂粒子として、平均粒径が小さく、飽和磁化が大きく、そして比重が1に近いものを挙げることができる。例えば、平均粒径2〜5μm、飽和磁化5〜40emu/g、比重1.2〜2.0のフェライトめっき樹脂粒子が入手容易であり、好ましく使用することができる。
【0025】
本発明において特に好ましい粒状磁性材料は、金属酸化物磁性材料であり、中でもキュリー温度が240℃以上であるものが更に好ましい。
【0026】
上記粒状磁性材料の形状としては特に限定されるものではなく、例えば、不定形粒子、偏平状粒子、鱗片状粒子等であってよい。
【0027】
本発明で用いられる粒状磁性材料は、飽和磁化が0.5emu/g以上である。粒状磁性材料の飽和磁化が0.5emu/g未満である場合は、被塗物である基材のエッジ部の被覆が不十分となり防錆効果が認められない。粒状磁性材料の飽和磁化は3emu/gであるのがより好ましい。また粒状磁性材料の飽和磁化の上限は特に限定されるものではないが、化学的安定性および入手容易性の面からは100emu/g以下であるのが好ましい。
【0028】
なお、飽和磁化とは、粒状磁性材料がある特定の温度でもちうる最大の磁化であり、自発磁化ともよばれることがある。粒状磁性材料の飽和磁化の測定は、例えば東英工業株式会社製Vibrating Sample Magnetometer VSM−3Sで測定することができる。本明細書中における粒状磁性材料の飽和磁化は、特記しない限り25±2℃で測定されたものをいう。
【0029】
本発明で用いられる粒状磁性材料は、熱硬化性塗料組成物の固形分100重量部に対して0.01〜30重量%含まれるのが好ましい。0.01重量%未満である場合は、本発明による防食性向上効果が得られない恐れがある。また30重量%を超える場合は、得られる塗膜の平面部の塗膜表面の平滑性が劣ることとなる恐れがある。粒状磁性材料は、熱硬化性塗料組成物の固形分100重量部に対して0.1〜20重量%含まれるのがより好ましい。
【0030】
本発明で用いられる粒状磁性材料は、平均粒径が0.01〜10μmであるのが好ましい。平均粒径が0.01μm未満である場合は、磁区サイズの影響と考えられる磁化の低下が起こり、磁気の効果が弱くなるおそれがある。平均粒径が10μmを超える場合は、得られる塗膜の平面部の塗膜表面の平滑性が劣ることとなる恐れがある。平均粒径は0.03〜6μmであるのがより好ましい。
【0031】
ここで「平均粒径」とは、一般に粒子の粒度(粒径が粗いか細かいか)を表わすために用いられるものであり、重量50%に相当するメジアン径や算術平均径、表面積平均径、体積面積平均径などが使用される。本明細書に示す平均粒径は、レーザー法によって測定された値で示している。レーザー法とは、粒子を溶媒に分散させ、その分散溶媒にレーザー光線を当て、得られた散乱光を捕捉、演算することにより、平均粒径、粒度分布等を測定する方法である。レーザー法による粒径の測定は、透過型電子顕微鏡を用いて行うことができる。
【0032】
なおこれらの粒状磁性材料は、必要に応じて、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤等のカップリング剤;粒状磁性材料の濡れ性を改善するための界面活性剤、湿潤剤、粘度低下剤、安定剤等の添加剤;樹脂等により表面処理されていてもよい。上記表面処理により、粒状磁性材料に反応性を与える官能基や濡れ性を支配する官能基を導入することができ、これにより粒状磁性材料の濡れ性、分散性または分散安定性などを向上させることができる。
【0033】
熱硬化性塗料組成物
本発明の方法で用いられる、粒状磁性材料を含む熱硬化性塗料組成物は、水性塗料組成物であってもよく、溶剤型塗料組成物であってもよい。また、粉体塗料組成物であってもよい。本発明における熱硬化性塗料組成物の成分としては、上記粒状磁性材料、樹脂成分、顔料、そして必要に応じた水性溶媒および/または有機溶媒が挙げられる。樹脂成分は、塗料樹脂および硬化剤から構成される。
【0034】
塗料樹脂として、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アルキド樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、ポリエーテル樹脂などが挙げられる。これらの塗料樹脂は、例えばカチオン性エポキシ樹脂などのように変性されていてもよい。
またこれらの樹脂は、1種を単独で用いてもよく、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
硬化剤としては、メラミン樹脂、ブロックイソシアネート硬化剤、オキサゾリン化合物およびカルボジイミド化合物などが挙げられる。この硬化剤を、樹脂成分中に含めて、後に加熱下において硬化反応を進行させることができる。
【0036】
塗料固形分中における塗料樹脂と硬化剤との好ましい重量割合は、一般に90/10〜50/50、より好ましくは85/15〜60/40である。塗料樹脂と硬化剤との重量割合が90/10から外れる程、硬化剤の量が少ない場合は、塗膜中の十分な架橋が得られないことがある。一方、この割合が50/50から外れる程、硬化剤の量が多い場合は、塗料組成物の貯蔵安定性が低下するとともに硬化速度が大きくなり、塗膜外観が悪くなる恐れがある。
【0037】
熱硬化性塗料組成物は、粒状磁性材料に加えて、通常用いられる顔料を含んでもよい。熱硬化性塗料組成物に含まれ得る顔料として、防錆顔料、着色顔料、体質顔料などが挙げられる。具体的には、例えば、バリタ粉、沈殿性硫酸バリウム、炭酸バリウム、石膏、クレー、シリカ、タルク、炭酸マグネシウム、アルミナホワイトなどの体質顔料、および着色顔料などが挙げられる。着色顔料として、例えば、アゾレーキ系顔料、フタロシアニン系顔料、インジコ系顔料、ベリレン系顔料、キノフタロン系顔料、ジオキサジン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属錯体顔料、カーボンブラック等の有機顔料、あるいは黄鉛、ベンガラ、二酸化チタン等の無機顔料が挙げられる。顔料の量は、所望の性能および色相を発現するのに合わせて任意に設定できる。なお、上記粒状磁性材料はここにいう顔料には含まれない。上記これら顔料は、1種のみ単独で用いてもよく、また2種以上を併用して用いてもよい。
【0038】
熱硬化性塗料組成物の塗料固形分に対する顔料の濃度(PWC)は、下限10重量%上限50重量%の範囲であるのが好ましい。上記上限は30重量%であることがより好ましい。また、熱硬化性塗料組成物の固形分濃度は、下限35重量%上限65重量%の範囲が好ましい。
【0039】
熱硬化性塗料組成物は、上記成分の他に、脂肪族アミドの潤滑分散体であるポリアミドワックスや酸化ポリエチレンを主体としたコロイド状分散体であるポリエチレンワックス、硬化触媒、紫外線吸収剤、酸化防止剤、レベリング剤、シリコンや有機高分子等の表面調整剤、タレ止め剤、増粘剤、消泡剤、滑剤、架橋性重合体粒子(ミクロゲル)等を適宜添加することができる。これらの添加剤を、熱硬化性塗料組成物の樹脂成分100質量部(固形分基準)に対して15質量部以下の割合で配合することにより、塗料組成物や塗膜の性能を改善することができる。上記熱硬化性塗料組成物は、例えば特開2002−224613号公報記載されるような公知の方法によって調製することができる。
【0040】
本発明の方法は、まず未硬化塗膜を形成し、次いで磁場の作用下において加熱して塗膜を硬化させるものである。そのため、塗膜を形成する方法は特に限定されず、種々の熱硬化性塗料組成物を用いることができる。熱硬化性塗料組成物を用いて未硬化塗膜を形成する塗装方法として、例えば、浸漬塗装、粉体塗装、スプレー塗装、静電塗装、スピンコート塗装、ロールコーター塗装、ローラー塗装、はけ塗り塗装または電着塗装などが挙げられる。
【0041】
好ましい熱硬化性塗料組成物として、例えば、カチオン性エポキシ樹脂およびブロックイソシアネート硬化剤を含有するものを挙げることができる。このような熱硬化性塗料組成物は、加熱により、カチオン性エポキシ樹脂およびブロックイソシアネート硬化剤が反応して硬化するという性質を有する。
【0042】
カチオン性エポキシ樹脂
カチオン性エポキシ樹脂には、アミンで変性されたエポキシ樹脂が含まれる。カチオン性エポキシ樹脂は、典型的には、ビスフェノール型エポキシ樹脂のエポキシ環の全部をカチオン性基を導入し得る活性水素化合物で開環するか、または一部のエポキシ環を他の活性水素化合物で開環し、残りのエポキシ環をカチオン性基を導入し得る活性水素化合物で開環して製造される。
【0043】
ビスフェノール型エポキシ樹脂の典型例はビスフェノールA型またはビスフェノールF型エポキシ樹脂である。前者の市販品としてはエピコート828(油化シェルエポキシ社製、エポキシ当量180〜190)、エピコート1001(同、エポキシ当量450〜500)、エピコート1010(同、エポキシ当量3000〜4000)などがあり、後者の市販品としてはエピコート807、(同、エポキシ当量170)などがある。
【0044】
特開平5−306327号公報に記載される、下記式
【0045】
【化1】

【0046】
[式中、Rはジグリシジルエポキシ化合物のグリシジルオキシ基を除いた残基、R’はジイソシアネート化合物のイソシアネート基を除いた残基、nは正の整数を意味する。]で示されるオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂をカチオン性エポキシ樹脂に用いてもよい。耐熱性及び耐食性に優れた塗膜が得られるからである。
【0047】
エポキシ樹脂にオキサゾリドン環を導入する方法としては、例えば、メタノールのような低級アルコールでブロックされたブロックイソシアネート硬化剤とポリエポキシドを塩基性触媒の存在下で加熱保温し、副生する低級アルコールを系内より留去することで得られる。
【0048】
特に好ましいエポキシ樹脂はオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂である。耐熱性及び耐食性に優れ、更に耐衝撃性にも優れた塗膜が得られるからである。
【0049】
二官能エポキシ樹脂とモノアルコールでブロックしたジイソシアネート(すなわち、ビスウレタン)とを反応させるとオキサゾリドン環を含有するエポキシ樹脂が得られることは公知である。このオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂の具体例及び製造方法は、例えば、特開2000−128959号公報第0012〜0047段落に記載されており、公知である。
【0050】
これらのエポキシ樹脂は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、および単官能性のアルキルフェノールのような適当な樹脂で変性しても良い。また、エポキシ樹脂はエポキシ基とジオール又はジカルボン酸との反応を利用して鎖延長することができる。
【0051】
これらのエポキシ樹脂は、開環後0.3〜4.0meq/gのアミン当量となるように、より好ましくはそのうちの5〜50%が1級アミノ基が占めるように活性水素化合物で開環するのが望ましい。
【0052】
カチオン性基を導入し得る活性水素化合物としては1級アミン、2級アミン、3級アミンの酸塩、スルフィド及び酸混合物がある。1級、2級又は/及び3級アミノ基含有エポキシ樹脂を調製するためには1級アミン、2級アミン、3級アミンの酸塩をカチオン性基を導入し得る活性水素化合物として用いる。
【0053】
具体例としては、ブチルアミン、オクチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、メチルブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、トリエチルアミン塩酸塩、N,N−ジメチルエタノールアミン酢酸塩、ジエチルジスルフィド・酢酸混合物などのほか、アミノエチルエタノールアミンのケチミン、ジエチレントリアミンのジケチミンなどの1級アミンをブロックした2級アミンがある。アミン類は複数の種類を併用して用いてもよい。
【0054】
ブロックイソシアネート硬化剤
ブロックイソシアネート硬化剤の調製に使用されるポリイソシアネートとは、1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物をいう。ポリイソシアネートとしては、例えば、脂肪族系、脂環式系、芳香族系および芳香族−脂肪族系等のうちのいずれであってもよい。
【0055】
ポリイソシアネートの具体例には、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、p−フェニレンジイソシアネート、及びナフタレンジイソシアネート等のような芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、及びリジンジイソシアネート等のような炭素数3〜12の脂肪族ジイソシアネート;1,4−シクロヘキサンジイソシアネート(CDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシル−4,4’−ジイソシアネート、及び1,3−ジイソシアナトメチルシクロヘキサン(水添XDI)、水添TDI、2,5−もしくは2,6−ビス(イソシアナートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(ノルボルナンジイソシアネートとも称される。)等のような炭素数5〜18の脂環式ジイソシアネート;キシリレンジイソシアネート(XDI)、及びテトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等のような芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート;これらのジイソシアネートの変性物(ウレタン化物、カーボジイミド、ウレトジオン、ウレトンイミン、ビューレット及び/又はイソシアヌレート変性物);等があげられる。これらは、単独で、または2種以上併用することができる。
【0056】
ポリイソシアネートをエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールなどの多価アルコールとNCO/OH比2以上で反応させて得られる付加体ないしプレポリマーもブロックイソシアネート硬化剤に使用してよい。
【0057】
ブロック剤は、ポリイソシアネート基に付加し、常温では安定であるが解離温度以上に加熱すると遊離のイソシアネート基を再生し得るものである。
【0058】
より好ましい熱硬化性塗料組成物として、被塗物の下塗り塗装に広く用いられている電着塗料組成物が挙げられる。電着塗料組成物としては、カチオン電着塗料組成物およびアニオン電着塗料組成物が挙げられる。防食性などの観点からは、カチオン電着塗料組成物を用いるのが好ましい。好ましい熱硬化性塗料組成物の例であるカチオン電着塗料組成物について、以下に詳しく記載する。
【0059】
カチオン電着塗料組成物
本発明において好ましく用いられる熱硬化性塗料組成物は、電着性を有するものである。電着性を有する熱硬化性塗料組成物として、例えば、水性溶媒、水性溶媒中に分散するか又は溶解した、カチオン性エポキシ樹脂およびブロックイソシアネート硬化剤を含むバインダー樹脂、中和酸、有機溶媒、そして上記粒状磁性材料を含有するカチオン電着塗料組成物を挙げることができる。カチオン性エポキシ樹脂およびブロックイソシアネート硬化剤は、上記のものを用いることができる。そしてこのカチオン電着塗料組成物はさらに、必要に応じて顔料を含んでもよい。
【0060】
顔料
カチオン電着塗料組成物は、カチオン性エポキシ樹脂、ブロックイソシアネート硬化剤、そして上記粒状磁性材料に加えて、通常用いられる顔料を含んでもよい。なお、上記粒状磁性材料はここにいう顔料には含まれない。使用できる顔料の例としては、通常使用される無機顔料、例えば、チタンホワイト、カーボンブラック及びベンガラのような着色顔料;カオリン、タルク、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、マイカおよびクレーのような体質顔料;リン酸亜鉛、リン酸鉄、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウム、亜リン酸亜鉛、シアン化亜鉛、酸化亜鉛、トリポリリン酸アルミニウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸アルミニウム、モリブデン酸カルシウム及びリンモリブデン酸アルミニウム、リンモリブデン酸アルミニウム亜鉛のような防錆顔料等、が挙げられる。
【0061】
顔料を電着塗料の成分として用いる場合、一般に顔料を予め高濃度で水性溶媒に分散させてペースト状(顔料分散ペースト)にする。顔料は粉体状であるため、電着塗料組成物で用いる低濃度均一状態に一工程で分散させるのは困難だからである。一般にこのようなペーストを顔料分散ペーストという。
【0062】
顔料分散ペーストは、顔料を顔料分散樹脂ワニスと共に水性溶媒中に分散させて調製する。顔料分散樹脂としては、一般に、カチオン性又はノニオン性の低分子量界面活性剤や4級アンモニウム基及び/又は3級スルホニウム基を有する変性エポキシ樹脂等のようなカチオン性重合体を用いる。水性溶媒としてはイオン交換水や少量のアルコール類を含む水等を用いる。一般に、顔料分散樹脂は、顔料100質量部に対して固形分比20〜100質量部の量で用いる。顔料分散樹脂ワニスと顔料とを混合した後、その混合物中の顔料の粒径が所定の均一な粒径となるまで、ボールミルやサンドグラインドミル等の通常の分散装置を用いて分散させて、顔料分散ペーストを得ることができる。
【0063】
なお、上記顔料分散ペーストの調製と同様に、粒状磁性材料を予め高濃度で水性溶媒に分散させてペースト状に調製することによって、粒状磁性材料をカチオン電着塗料組成物に好適に分散させることができる。顔料分散ペーストを調製する際に、顔料と粒状磁性材料とを混合して調製してもよい。粒状磁性材料は、カチオン電着塗料組成物の固形分100重量部に対して0.01〜30重量%含まれるのが好ましい。0.01重量%未満である場合は、本発明による防食性向上効果が得られない恐れがある。また30重量%を超える場合は、得られる塗膜の平面部の塗膜表面の平滑性が劣ることとなる恐れがある。粒状磁性材料は、カチオン電着塗料組成物の固形分100重量部に対して0.1〜20重量%含まれるのがより好ましい。
【0064】
上記カチオン電着塗料組成物は、上記成分の他に、上記ブロックイソシアネート硬化剤のブロック剤解離のために解離触媒を含む場合は、ジブチル錫ラウレート、ジブチル錫オキシド、ジオクチル錫オキシドなどの有機錫化合物や、N−メチルモルホリンなどのアミン類、ストロンチウム、コバルト、銅などの金属塩が使用できる。解離触媒の濃度は、カチオン電着塗料組成物中のカチオン性エポキシ樹脂とブロックイソシアネート硬化剤合計の100固形分質量部に対し0.1〜6質量部である。
【0065】
カチオン電着塗料組成物の調製
上記カチオン電着塗料組成物は、カチオン性エポキシ樹脂、ブロックイソシアネート硬化剤、粒状磁性材料、そして必要に応じて顔料分散ペーストおよび解離触媒を水性溶媒中に分散することによって調製される。また、通常、水性溶媒にはカチオン性エポキシ樹脂を中和して、バインダー樹脂エマルションの分散性を向上させるために中和酸を含有させる。中和酸は塩酸、硝酸、リン酸、ギ酸、酢酸、乳酸のような無機酸または有機酸である。
【0066】
使用される中和酸の量は、カチオン性エポキシ樹脂及びブロックイソシアネート硬化剤を含むバインダー樹脂固形分100gに対して、下限10mg当量、上限25mg当量の範囲であるのが好ましい。上記下限は15mg当量であるのがより好ましく、上記上限は20mg当量であるのがより好ましい。中和酸の量が10mg当量未満であると水への親和性が十分でなく水への分散ができないか、著しく安定性に欠ける状態となり、25mg当量を越えると析出に要する電気量が増加し、塗料固形分の析出性が低下し、つきまわり性が劣る状態となる。
【0067】
カチオン電着塗料組成物は、カチオン性エポキシ樹脂、及びブロックイソシアネート硬化剤を、水性溶媒に分散させることにより、調製することができる。ブロックイソシアネート硬化剤の量は、硬化時にカチオン性エポキシ樹脂中の1級、2級アミノ基、水酸基、等の活性水素含有官能基と反応して良好な硬化塗膜を与えるのに十分な量が必要とされる。好ましいブロックイソシアネート硬化剤の量は、カチオン性エポキシ樹脂とブロックイソシアネート硬化剤との固形分重量比(カチオン性エポキシ樹脂/硬化剤)で表して90/10〜50/50、より好ましくは80/20〜65/35の範囲である。カチオン性エポキシ樹脂とブロックイソシアネート硬化剤との固形分量比の調整により、造膜時の塗膜(析出膜)の流動性および硬化速度を調整することができる。
【0068】
有機溶媒は、カチオン性エポキシ樹脂、ブロックイソシアネート硬化剤、顔料分散樹脂等の樹脂成分を合成する際に溶媒として必要であり、完全に除去するには煩雑な操作を必要とする。また、バインダー樹脂に有機溶媒が含まれていると造膜時の塗膜の流動性が改良され、塗膜の平滑性が向上する。
【0069】
カチオン電着塗料組成物に通常含まれる有機溶媒としては、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノエチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等が挙げられる。
【0070】
カチオン電着塗料組成物は、上記のほかに、可塑剤、界面活性剤、酸化防止剤、及び紫外線吸収剤などの常用の塗料用添加剤を含むことができる。アミノ基含有アクリル樹脂、アミノ基含有ポリエステル樹脂等を含んでもよい。
【0071】
基材
本発明において、塗装される基材の種類は特に限定されるものではなく、塗膜形成工程に用いられる塗装に応じて好適な種々の基材を用いることができる。例えばカチオン電着塗装を用いる場合は、通電可能な種々の基材、例えば鋼材など、を用いることができる。この場合、基材の表面上にめっき処理または化成処理などが施されていてもよく、施されていない無処理の基材であってもよい。使用できる鋼材として例えば、冷延鋼板、熱延鋼板、ステンレス、電気亜鉛めっき鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板、亜鉛−アルミニウム合金系めっき鋼板、亜鉛−鉄合金系めっき鋼板、亜鉛−マグネシウム合金系めっき鋼板、亜鉛−アルミニウム−マグネシウム合金系めっき鋼板、アルミニウム系めっき鋼板、アルミニウム−シリコン合金系めっき鋼板、錫系めっき鋼板、鉛−錫合金系めっき鋼板、クロム系めっき鋼板などの鋼材、さらにこれらの鋼板に化成処理を施した鋼材、などが挙げられる。
【0072】
塗膜形成工程
熱硬化性塗料組成物を用いて未硬化塗膜を形成する塗装方法として、例えば、浸漬塗装、粉体塗装、スプレー塗装、静電塗装、スピンコート塗装、ロールコーター塗装、ローラー塗装、はけ塗り塗装または電着塗装などが挙げられる。これらは通常用いられる方法によって塗装される。塗膜形成工程において形成される未硬化塗膜の膜厚は、特に限定されず、例えば熱硬化工程により得られる硬化塗膜の膜厚が10〜50μmとなるように未硬化塗膜を形成するのが好ましい。
【0073】
熱硬化性塗料組成物がカチオン電着塗料組成物である場合は、被塗物である基材を陰極として陽極との間に、通常、50〜450Vの電圧を印加することによって電着塗装され、未硬化塗膜が形成される。得られた未硬化塗膜を、必要に応じて水洗してもよい。印加電圧が50V未満であると電着が不充分となり、450Vを超えると、塗膜が破壊され異常外観となる。電着塗装時、塗料組成物の浴液温度は、通常10〜45℃に調節される。この電着塗装は、カチオン電着塗料組成物に被塗物である基材を浸漬する過程、及び、上記基材を陰極として陽極との間に電圧を印加し、被膜を析出させる過程、から構成される。また、電圧を印加する時間は、電着条件によって異なるが、一般には、2〜4分とすることができる。
電着塗膜の膜厚は、好ましくは10〜50μmである。
【0074】
熱硬化工程
塗膜形成工程において形成された未硬化塗膜を、磁場の作用下において加熱することによって、エッジ部塗膜の膜厚を保持し、エッジ部を有する基材を好適に塗装することができる。
【0075】
熱硬化工程における加熱温度および加熱時間は、熱硬化性塗料組成物に含まれる樹脂成分および粒状磁性材料の種類に応じて適宜選択することができる。但し、この加熱温度は、粒状磁性材料のキュリー温度より低い温度であることを条件とするのが好ましい。キュリー温度とは、磁性材料の自発磁化が消失して常磁性状態となる相転移温度である。熱硬化工程における加熱温度がキュリー温度以上である場合は、粒状磁性材料が常磁性状態となり、磁場の作用下において未硬化塗膜を加熱することにより得られる、膜厚保持効果が得られなくなる恐れがあるからである。
【0076】
熱硬化工程における加熱温度および加熱時間として、例えば、熱硬化工程における加熱温度は120〜240℃、好ましくは140〜200℃、加熱時間は5〜30分間で焼付けることによって、硬化塗膜を好適に形成することができる。また、例えば熱硬化性塗料組成物がカチオン電着塗料組成物であって、粒状磁性材料が金属酸化物磁性材料である場合は、熱硬化工程における加熱温度は150〜180℃、好ましくは160〜170℃、加熱時間は5〜30分間で焼付けることによって、硬化塗膜を好適に形成することができる。
【0077】
本発明において、熱硬化工程は、磁場の作用下において加熱される。熱硬化工程における磁場は、例えば、コイル、ソレノイドまたは電磁石に電流を流すことなどによる、誘導磁場として設けることができる。誘電磁場を設ける場合は、例えば未硬化塗膜を有する基材をコイル内に配置することによって、未硬化塗膜を磁場の作用下におくことができる。
基材が複数のエッジ部を有する場合は、コイル、ソレノイドまたは電磁石を複数個設けたり、あるいは1またはそれ以上のコイル、ソレノイドまたは電磁石を回転させることによって、エッジ部の防食性を更に高めることもできる。また未硬化塗膜を有する基材の周辺に永久磁石を配置することによって設けることもできる。熱硬化工程における磁場は誘導磁場であるのが、磁場強度の調節が可能であるなどの点から好ましい。
【0078】
この磁場の強度は、磁場を設ける方法、未硬化塗膜中に含まれる粒状磁性材料の種類および含有量に応じて適宜選択することができ、例えば0.3〜100kA/mとすることができ、より好ましくは0.5〜50kA/mとすることができる。
【0079】
本発明の塗膜形成方法は、粒状磁性材料を含む未硬化塗膜を磁場の作用下において加熱することによって、粒状磁性材料が有する磁性作用に基づき、加熱時において塗膜の熱フローが生じても、エッジ部塗膜の膜厚を保持することができる。これにより、エッジ部塗膜の膜厚を保持し、エッジ部を有する基材を好適に塗装することが可能となる。
【実施例】
【0080】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。実施例中、「部」および「%」は、ことわりのない限り、重量基準による。
【0081】
製造例1 溶剤型エポキシ樹脂Aの調製
エポキシ樹脂ワニス(日本ペイント株式会社製FDR−3621A)620重量部とブロックイソシアネート(同社製FND−4300)155重量部を混合し、MIBK(メチルイソブチルケトン)を適量配合してディスパー撹拌し、NV=70%の溶剤型エポキシ樹脂Aを調製した。ここでNV(non-volatile matter)とは、塗料固形分のことである。NVは、規定条件(本明細書においては105℃で3時間加熱)で加熱した後の残渣(加熱残分)の質量を測定し、加熱前の質量に対する百分率を求めることにより算出している(JIS K5601に準拠)。
【0082】
製造例2 水性カチオン型樹脂Bの調製
ビスフェノールAのグリシジルエーテル(エポキシ当量910)1000重量部にエチレングリコールモノエチルエーテル463重量部とジエチルアミン80.3重量部を配合し、アミンエポキシ付加物(成分X)を調製した。一方、コロネールL(日本ポリウレタン(株)社製ポリイソシアネート:NCO13%の不揮発分75重量%)875重量部にジブチルスズラウレート0.05重量部と2−エチルヘキサノール390重量部を加えた反応生成物をエチレングリコールモノエチルエーテル130重量部で希釈し(成分Y)、成分X 1000重量部と成分Y 400重量部からなる混合物を氷酢酸30重量部で中和し、脱イオン水570重量部で希釈して、固形分50%のカチオン型樹脂Bを調製した。
【0083】
製造例3 水性カチオン型樹脂Cの調製
製造例2より得られたカチオン型樹脂B 150重量部を氷酢酸0.8重量部で中和し、固形分50%のカチオン型樹脂Cを調製した。
【0084】
製造例4 NiのナノコロイドのPGMAC分散液Dの調製
2Lコルベンに酢酸ニッケル(II)・四水和物(和光純薬工業社製)229重量部と脱イオン水600重量部を入れ、湯浴中で加熱しながら撹拌し、酢酸ニッケル(II)・四水和物を溶解した緑色の水溶液を得た。これにソルスパース32550(ルーブリゾール社製;有効成分50%の酢酸ブチル溶液)60.8重量部とエタノール72.0重量部とを混合、撹拌して得られた溶液を、上記の酢酸ニッケル(II)・四水和物水溶液の入ったコルベンに撹拌しながら加え、緑白色に濁った溶液を得た。これをよく撹拌しながら、さらに湯浴中で70℃まで加熱した。次に上記コルベンとは別に、ロンガリット(キシダ化学社製;ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシラート・二水和物)162.2重量部と脱イオン水315.0重量部を50℃の湯浴中にて撹拌、溶解した。このロンガリット水溶液に、2−ジエチルアミノエタノール164.1重量部を加えて撹拌し、相溶させた。ロンガリットと2−ジエチルアミノエタノールの混合水溶液を、上記コルベンに撹拌しながら、瞬時に加えた。液は速やかに黒変した。そのまま液温を70℃に保つように湯浴中で加熟しながら、2時間撹拌を続けた。その結果非極性の高分子量顔料分散剤とNiナノコロイド粒子からなる黒色油状物の析出が認められた。
【0085】
次に、黒色油状物と無色透明の上澄みからなる生成物のうち、上澄み液をデカンテーションによって取り除いた。これに脱イオン水1600重量部を加え撹拌した。静置して黒色油状物と上澄み液が2層に分離した後にこの上澄みの水をデカンテーションにより取り除いた。さらに同様な洗浄操作を、上澄み液の伝導度が50μS/cm以下になるまで行った。
【0086】
続いて、上澄みを取り去った黒色油状物にメタノール400重量部を加えて撹拌し、静置した後、上澄みのメタノールをデカンテーションにより取り除いた。この操作を5回程度繰り返した後に放置、風乾した。メタノールがほぼ除去された後に、トルエンを400重量部加えて黒色油状物を溶解した。更にこのトルエンを加えたNiナノコロイド溶液を風乾させた。Niのナノコロイド溶液が120重量部以下となったら、さらにトルエン80重量部を加えて風乾を続けた。この操作を2回繰り返し、残存メタノール及び水を除去し、固形分42重量%のNiナノコロイドのトルエン溶液175重量部を得た。透過型電子顕微鏡観察の結果、この溶液中のコロイド状のNi金属は、平均粒径はl0nmであった。また得られた示差熱天秤「TG−DTA」(セイコーインスツルメンツ社)で測定したところ、Niの含有量が30%、ソルスパース32550が12%、トルエン58重量%であった。このようにして得られたNi含有率が30重量%のNiナノコロイドのトルエン溶液166.7重量部にPGMAC(キシダ化学社製:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)94.0重量部を加えて風乾してトルエンを取り除き、固形分濃度が42.7重量%、Niナノコロイド含有率が30.5重量%のNiナノコロイドのPGMAC分散液D 164重量部を調製した。
【0087】
製造例5 顔料ペーストEの調製
酸化チタン 250重量部
カーボンブラック 10重量部
カオリン 80重量部
マグネタイト 80重量部
の混合物に水性カチオン型樹脂C 201.8重量部および脱イオン水352.5重量部を混合して撹拌した後、ガラスビーズを加えて高速ディスパーで分散して、マグネタイトを含有する固形分53%の顔料ペーストEを調製した。用いたマグネタイトは三井金属鉱業(株)社製、TS−6であり、平均粒径は0.27μmであった。
【0088】
製造例6 顔料ペーストFの調製
酸化チタン 250重量部
カーボンブラック 10重量部
マグネタイト 160重量部
の混合物に水性カチオン型樹脂C 201.8重量部および脱イオン水352.5重量部を混合して撹拌した後、ガラスビーズを加えて高速ディスパーで分散して、固形分53%の顔料ペーストFを調製した。用いたマグネタイトは三井金属鉱業(株)社製、TS−6であった。
【0089】
製造例7 顔料ペーストGの調製
酸化チタン 50重量部
カーボンブラック 10重量部
マグネタイト 360重量部
の混合物に水性カチオン型樹脂C 201.8重量部および脱イオン水352.5重量部を混合して撹拌した後、ガラスビーズを加えて高速ディスパーで分散して、固形分53%の顔料ペーストGを調製した。用いたマグネタイトは三井金属鉱業(株)社製、TS−6であった。
【0090】
製造例8 顔料ペーストHの調製
酸化チタン 250重量部
カーボンブラック 10重量部
カオリン 150重量部
マグネタイト 10重量部
の混合物に水性カチオン型樹脂C 201.8重量部および脱イオン水352.5重量部を混合して撹拌した後、ガラスビーズを加えて高速ディスパーで分散して、固形分53%の顔料ペーストHを調製した。用いたマグネタイトは三井金属鉱業(株)社製、TS−6であった。
【0091】
製造例9 顔料ペーストKの調製
酸化チタン 250重量部
カーボンブラック 10重量部
カオリン 80重量部
Ni−Znフェライト 80重量部
の混合物に水性カチオン型樹脂C 201.8重量部および脱イオン水352.5重量部を混合して撹拌した後、ガラスビーズを加えて高速ディスパーで分散して、固形分53%の顔料ペーストKを調製した。用いたNi−Znフェライトは戸田工業(株)社製、BSN−828であり、平均粒径は5.1μmであった。
【0092】
製造例10 顔料ペーストLの調製
酸化チタン 250重量部
カーボンブラック 10重量部
カオリン 80重量部
の混合物に水性カチオン型樹脂C 201.8重量部および脱イオン水352.5重量部を混合して撹拌した後、ガラスビーズを加えて高速ディスパーで分散した。それに、フェライトめっき樹脂粒子(日本ペイント株式会社製フェリスフェア、スチレン−アクリル共重合体粒子に、20重量%の量のフェリフェライト(マグネタイト)が被覆、比重=1.8g/cm、飽和磁化=25emu/g、平均粒径2.5μm)80重量部を加え、混合して固形分53%の顔料ペーストLを調製した。
【0093】
実施例1
製造例1の溶剤型エポキシ樹脂A 614重量部に、FAD−9700(日本ペイント社製、硬化触媒)を、全樹脂固形分に対してジブチル錫オキシドが1.5重量%となるように加え、さらにMIBKを622重量部添加し、ディスパーで撹拌混合した。次いで、ディスパーでゆっくりと撹拌しながら、製造例4で得られたNiのナノコロイドのPGMAC分散液D 164重量部を徐々に加え、Niのナノコロイド(塗料液中濃度=3.5重量%、塗料固形分中濃度=9.9重量%)を含有するNV=36%の溶剤型エポキシ樹脂塗料組成物を得た。
【0094】
この塗料に、リン酸亜鉛系化成処理(日本ペイント株式会社製SD−5350)を施した市販のオルファカッター替刃LB−10を浸漬し、ゆっくりと引き上げて塗装し、セッティングボックス内で30分間吊り下げて放置した。
【0095】
次いで、図3に示すような、非磁性のステンレス棒でできた一辺が25cmの立方体状のスペーサーに、直径1mmのエナメル線をコイル状200回巻いた籠を用意し、その中央にセッティング後のディップ塗装したカッター替刃を吊した。そして、その籠から出るエナメル線の両端を直流安定化電源につなぎ、エナメル線に5Aの直流電流を流しながら、そのまま籠を乾燥炉内に入れ(図4)、160℃で20分間焼付けを行った。磁場の強度は、電子磁気工業(株)社製GM−4001型ガウスメーターを用いて測定したところ、1.5kA/mであった。こうして得られた硬化塗膜について、以下の通り評価試験を行った。
【0096】
粗さ曲線の算術平均粗さ(Ra)
焼付けにより得られた、塗装替刃の平坦部の硬化塗膜の仕上がり外観の評価として、粗さ曲線の算術平均粗さ(Ra)を、表面粗度計((株)ミツトヨ製SJ−201P;カットオフ値=0.25mm)を用いて測定し、以下に定める基準に基づいて評価を行った。評価結果を表1に示す。なお、粗さ曲線の算術平均粗さ(Ra)とは、JIS B 0601−2001において規定されるパラメーターである。
【0097】
◎: Ra<0.25μm
○: 0.25μm≦Ra<0.30μm
△: 0.30μm≦Ra<0.35μm
×: 0.35μm≦Ra
【0098】
塩水噴霧試験
焼付けにより得られた、硬化塗膜を有する塗装替刃のサンプルを、塩水噴霧試験(JIS K5600−7−1)にかけ、替刃先端部(エッジ部)の点錆発生までの時間(T)を測定した。得られた結果について、以下に定める基準に基づいて評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0099】
◎: 10000時間≦T
○: 1000時間≦T<10000時間
△: 100時間≦T< 1000時間
×: T< 100時間
【0100】
硬化塗膜の膜厚測定
塗装替刃のサンプルの平坦部およびエッジ先端部の膜厚を、ビデオマイクロスコープ(キーエンス社製VHX−100)を用いて測定した。サンプルの平坦部のほぼ中央部を切断し、膜厚を測定したところ、30±2μmであった。この断面の画像を図5に示す。また、サンプルのエッジ先端部の膜厚を測定したところ、14.9μmであった。ここで「サンプルのエッジ先端部」とは、サンプル先端自体の膜厚測定は困難であるため、サンプル先端から100μmの部分の膜厚を測定し、これを「サンプルのエッジ先端部」の膜厚とした。この先端部の画像を図6に示す。
【0101】
実施例2
製造例1の溶剤型エポキシ樹脂A 1228重量部に、FAD−9700(日本ペイント社製、硬化触媒)を、全樹脂固形分に対してジブチル錫オキシドが1.5重量%となるように加え、さらにMIBKを1244重量部添加し、ディスパーで撹拌混合した。次いで、ディスパーでゆっくりと撹拌しながら、製造例4で得られたNiのナノコロイドのPGMAC分散液D 164重量部を徐々に加え、Niのナノコロイド(塗料液中濃度=1.9重量%、塗料固形分中濃度=5.3重量%)を含有するNV=36%の溶剤型エポキシ樹脂塗料組成物を得た。
【0102】
その後、実施例1と同様の方法で試料を作成し、得られたサンプルの粗さ曲線の算術平均粗さ(Ra)の測定と塩水噴霧試験を実施した。結果を表1に示す。
【0103】
また、実施例1と同様に、塗装替刃のサンプルの平坦部およびエッジ先端部の膜厚を、ビデオマイクロスコープ(キーエンス社製VHX−100)を用いて測定した。サンプルの平坦部のほぼ中央部を切断し、膜厚を測定したところ、30±2μmであった。また、サンプルのエッジ先端部の膜厚を測定したところ、12.8μmであった。
【0104】
比較例1
塗料調製、ディップ塗装、セッティングまでは実施例1と同様に行い、焼付けする際に誘導滋場発生籠を用いずに(磁場印加の無い状況で)乾燥炉内に入れ、160℃で20分間焼付けを行った。そのサンプルの粗さ曲線の算術平均粗さ(Ra)と塩水噴霧試験の結果を表1に示す。
【0105】
また、実施例1と同様に、塗装替刃のサンプルの平坦部およびエッジ先端部の膜厚を、ビデオマイクロスコープ(キーエンス社製VHX−100)を用いて測定した。サンプルの平坦部のほぼ中央部を切断し、膜厚を測定したところ、30±2μmであった。この断面の画像を図7に示す。また、サンプルのエッジ先端部の膜厚を2カ所測定したところ、9.9μm、9.8μmであった。この先端部の画像を図8に示す。
【0106】
実施例3
脱イオン水1516.6重量部へ、製造例2で得られた水性カチオン型樹脂B 705.6重量部を混合し、撹拌後、製造例5の顔料ペーストEを277.8重量部添加して、マグネタイト(塗料固形分中濃度=4.6重量%)を含有するNV=20重量%のカチオン型電着塗料組成物を得た。
【0107】
非磁性のステンレス容器に本電着塗料組成物を入れ、リン酸亜鉛系化成処理(日本ペイント株式会社製SD−5350)を施した市販のオルファカッター替刃LB−10を浸漬し、同替刃を直流電源の陰極に前記容器を陽極に接続して、印加電圧150Vで3分間通電して塗膜を析出させた後、水洗して室内で吊り下げて水切乾燥した。
【0108】
その後、実施例1と同様に、図3の誘導磁場発生籠内に吊し、8Aの直流電流を流しながら、そのまま乾燥炉内に入れて、170℃で30分間焼付けを行い、約20μm(平坦部観測)の膜厚の塗膜を形成した。加熱工程における磁場の強度は2.5kA/mであった。次いで、得られたサンプルの粗さ曲線の算術平均粗さ(Ra)の測定と塩水噴霧試験を実施した。結果を表2に示す。
【0109】
実施例4
用いる顔料ペーストが製造例6の顔料ペーストFであること以外全て実施例3と同様の配合、重量部、手順にて、マグネタイト(塗料固形分中濃度=9.1重量%)含有塗料の調製、試料作成を行い、粗さ曲線の算術平均粗さ(Ra)の測定と塩水噴霧試験を行った。結果を表2に示す。
【0110】
実施例5
用いる顔料ペーストが製造例7の顔料ペーストGであること以外全て実施例3と同様の配合、重量部、手順にて、マグネタイト(塗料固形分中濃度=20.5重量%)含有塗料の調製、試料作成を行い、粗さ曲線の算術平均粗さ(Ra)の測定と塩水噴霧試験を行った。結果を表2に示す。
【0111】
実施例6
用いる顔料ペーストが製造例8の顔料ペーストHであること以外全て実施例3と同様の配合、重量部、手順にて、マグネタイト(塗料固形分中濃度=0.6重量%)含有塗料の調製、試料作成を行い、粗さ曲線の算術平均粗さ(Ra)の測定と塩水噴霧試験を行った。結果を表2に示す。
【0112】
実施例7
用いる顔料ペーストが製造例9の顔料ペーストKであること以外全て実施例3と同様の配合、重量部、手順にて、Ni−Znフェライト(塗料固形分中濃度=4.6重量%)含有塗料の調製、試料作成を行い、粗さ曲線の算術平均粗さ(Ra)の測定と塩水噴霧試験を行った。結果を表3に示す。
【0113】
実施例8
用いる顔料ペーストが製造例10の顔料ペーストLであること以外全て実施例3と同様の配合、重量部、手順にて、フェライトめっき樹脂粒子(塗料固形分中濃度=4.6重量%)含有塗料の調製、試料作成を行い、粗さ曲線の算術平均粗さ(Ra)の測定と塩水噴霧試験を行った。結果を表3に示す。
【0114】
比較例2
実施例3と同様にして電着塗料組成物を作成し、電着塗装用の非磁性のステンレス容器を図3の誘導磁場発生籠の中に入れてコイルに8Aの直流電流を流し、磁場の中で実施例3と同条件でカッター替刃に電着塗装を施した(図9)。電着塗装時の磁場の強度は2.5kA/mであった。
【0115】
水洗、風乾の後、磁場印加の無い状況で焼付けを行い、約20μm(平坦部観測)の膜厚の塗膜を形成して、粗さ曲線の算術平均粗さ(Ra)の測定と塩水噴霧試験を実施した。結果を表3に示す。
【0116】
【表1】

【0117】
【表2】

【0118】
【表3】

【0119】
表1〜3からも明らかであるように、本発明の方法を用いることによって、塗膜表面の外観を損なうことなく、防食性に優れた塗膜を形成することができた。さらに、図5〜8から明らかであるように、本発明の方法を用いることによって、基材のエッジ部の膜厚を高めることが可能となった。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明の方法を用いて基材を塗装することによって、塗膜表面の外観を損なうことなく、より均一な膜厚を有する塗膜を形成することができる。本発明の方法を用いて塗装することによって、一般に塗装が困難とされるエッジ部を有する基材であっても、良好に塗膜を形成することができる。本発明の方法を用いて塗装することにより、塗装後の基材の防食性を高めることができる。本発明の方法は、エッジ部などを有する、複雑な形状を有する基材の塗装に好適である。また、本発明の方法は、塗装工程数の増加を伴わずに、仕上がり外観および防食性が良好な塗膜を形成することができるという産業上の利点も有する。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】基材1のエッジ部5において、塗膜3が充分に形成されていない態様を示す模式図である。
【図2】基材1のエッジ部5において、塗膜3が充分に形成された態様を示す模式図である。
【図3】誘導磁場発生装置の模式図である。
【図4】熱硬化工程における装置の模式図である。
【図5】実施例1で得られたサンプル平坦部の断面の画像である。
【図6】実施例1で得られたサンプル先端部の画像である。
【図7】比較例1で得られたサンプル先端部の画像である。
【図8】比較例1で得られたサンプル平坦部の断面の画像である。
【図9】誘導磁場発生装置内で電着塗装する態様の模式図である。
【符号の説明】
【0122】
1…塗膜、
3…基材、
5…エッジ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飽和磁化が0.5emu/g以上である粒状磁性材料を含む熱硬化性塗料組成物を用いて、未硬化塗膜を形成する、塗膜形成工程、および
該未硬化塗膜を、磁場の作用下において加熱する、熱硬化工程、
を包含する、塗膜形成方法。
【請求項2】
前記粒状磁性材料は、金属磁性材料、金属合金磁性材料、金属酸化物磁性材料またはフェライト高分子複合材料からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1記載の塗膜形成方法。
【請求項3】
熱硬化性塗料組成物の固形分100重量部に対する粒状磁性材料の重量%が0.01〜30重量%である、請求項1または2記載の塗膜形成方法。
【請求項4】
前記熱硬化工程における加熱温度は、前記粒状磁性材料のキュリー温度より低い温度である、請求項1〜3いずれかに記載の塗膜形成方法。
【請求項5】
前記熱硬化工程において120〜240℃で5〜30分間加熱を行う、請求項4記載の塗膜形成方法。
【請求項6】
前記熱硬化工程における磁場は、誘導磁場である、請求項1〜5いずれかに記載の塗膜形成方法。
【請求項7】
前記熱硬化工程における磁場の強度は、0.3〜100kA/mである、請求項1〜6いずれかに記載の塗膜形成方法。
【請求項8】
前記熱硬化性塗料組成物は、カチオン性エポキシ樹脂およびブロックイソシアネート硬化剤を含有する熱硬化性塗料組成物である、請求項1〜7いずれかに記載の塗膜形成方法。
【請求項9】
前記熱硬化性塗料組成物は、電着性を有するものである、請求項8記載の塗膜形成方法。
【請求項10】
前記塗膜形成工程が、浸漬塗装、粉体塗装、スプレー塗装、静電塗装または電着塗装によって行われる、請求項1〜9いずれかに記載の塗膜形成方法。
【請求項11】
請求項1〜10いずれかに記載の塗膜形成方法によって得られる塗膜。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−313403(P2007−313403A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−144257(P2006−144257)
【出願日】平成18年5月24日(2006.5.24)
【出願人】(000230054)日本ペイント株式会社 (626)
【Fターム(参考)】