説明

塗膜形成装置、ボビンレスコイルおよびボビンレスコイルの製造方法

【課題】ボビンレスコイルの内周面および/または端面に、塗料の膜厚を均一に塗布できる被膜形成装置、被膜形成方法を提供すること。
【解決方法】ボビンレスコイル(8)と、被膜塗料の滴を供給するための供給手段(51a)と、ボビンレスコイル(8)が載置されるとともにボビンレスコイル(8)の内径より小さい吸引孔を略中央に備えた吸引媒体(53)と、該吸引媒体(53)に取り付けられた吸引装置(54)とを備え、供給手段(51a)によって供給された被膜塗料の滴の大きさは、ボビンレスコイル内径より大きく、吸引装置(54)による吸引時には、被膜塗料はボビンレスコイルの上端面を被膜で被覆するとともにボビンレスコイル(8)の内周面に滴ってボビンレスコイル(8)内周面を被膜で被覆する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗膜形成装置、ボビンレスコイルおよびボビンレスコイルの製造方法に関するものであり、特に好適には、ボビンレスコイルの内周面および所定の端面に被膜を形成できる塗膜形成装置と、このようなボビンレスコイル
の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ボビンレスコイルが組み込まれる装置として、例えば、一般的なPM型(Permanent Magnet Type:回転子に永久磁石が適用されるタイプ)のステッピングモータが知られている(特許文献1参照)。具体的には、内側ステータコアと外側ステータコアとが組み合わされて対をなし、さらに二つの対が鏡面対称に結合される(または重ね合わされるように結合される)。これによりステータコアが構成される。
【0003】
内側ステータコアおよび外側ステータコアには、それぞれ複数本の極歯が略等間隔に形成されており、内側ステータコアの極歯と外側ステータコアの極歯とが、互いに噛み合うように交互に配列される。そして各対の内側ステータコアと外側ステータコアの極歯群の外周には、ボビンレスコイルがそれぞれ装着される。そして二対の内側ステータコアと外側ステータコアによって一個のステータが構成される。
【0004】
このステータの中心部には、ロータが軸受を介して取付板に回転自在に支承されている。このロータには、回転軸の周りにマグネット(例えば永久磁石)が一体に設けられる。
【0005】
このような構成のステッピングモータは、二対のステータコアのそれぞれに装着される一個ずつのボビンレスコイルに、外部から端子などを介して電流が流される。そうするとボビンレスコイルの周囲に磁界が発生し、その磁界が回転軸の回転動力源となる。そして回転軸の一端または両端から回転動力が外部に出力される。
【0006】
ところで、これらのボビンレスコイルが一対のステータコアの極歯群の周囲に装着される際には、ボビンレスコイルの内周面が極歯に接触して傷がつくなどして短絡しないようにする必要がある。このような短絡を防止する構成としては、例えば、前記特許文献1には、ボビンレスコイルをディッピング塗装によりボビンレスコイルの内周面に絶縁膜を形成している構成が開示されている。このような構成によれば、形成された塗料膜によって、ボビンレスコイルの表面に傷がつくことを防止できる。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、ボビンレスコイル径が小さい場合、ボビンレスコイル内周部に塗料による膜が張られてしまうことがあった。この膜をエアー吹きなどの方法で取り除く場合、エアーの風圧によってボビンレスコイルの内周面の絶縁膜の厚さが均一にならない(エアーを吹き付ける側の面が薄膜化する)という問題があった。
【0008】
【特許文献1】特開2006−254609号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記実情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、ボビンレスコイルの内周面および/または端面(すなわち、他の部材に接触する面)に、塗料の膜厚を均一に塗布できる塗膜形成装置、および内周面および/または端面に塗布された塗膜の膜厚が均一なボビンレスコイルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明では、コイルと、被膜塗料の滴を供給するための供給手段と、前記コイルが載置されるとともに前記コイルの内径より小さい吸引孔を略中央に備えた吸引媒体と、該吸引媒体に取り付けられた吸引装置とを備え、前記供給手段によって供給された被膜塗料の滴の大きさは、コイル内径より大きく、前記吸引装置による吸引時には、前記被膜塗料はコイルの上端面を被膜で被覆するとともに前記コイルの内周面に滴ってコイル内周面を被膜で被覆する塗膜形成装置であることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、被膜塗料の供給によってコイルの上端面と内周面に一度に被膜を形成できる。
【0012】
(2)また、前記吸引装置による吸引時には前記被膜塗料は前記吸引孔と前記コイル下端面との隙間に前記被膜塗料が入り込んで前記コイルの下面を被膜で被覆することが好ましい。
【0013】
本発明によれば、被膜塗料の供給によってコイルの下端面にも被膜を形成することができる。
【0014】
(3)また、前記被膜塗料は絶縁塗料であることが好ましい。
【0015】
本発明によれば、絶縁性の被膜が好適に適用できる。
【0016】
(4)また、前記供給手段は塗料の滴を形成する被膜塗料排出口と、該被膜塗料排出口を上下動させることができる往復動手段とを備え、該被膜塗料排出口が前記コイルに接近して前記被膜塗料排出口が形成した塗料の滴をコイルに滴下することが好ましい。
【0017】
本発明によれば、供給手段が往復動手段を備えることにより、被膜塗料排出口をコイルに近接させることができるため被膜塗料の滴下位置や滴の大きさの精度を高めることができる。
また、塗料を滴下することにより、滴の量を決めやすくすることができる。
【0018】
(5)また、前記供給手段は塗料の滴を形成する被膜塗料排出口と、該被膜塗料排出口を上下動させることができる往復動手段とを備え、該被膜塗料排出口が前記コイルに接近して前記被膜塗料排出口が形成した塗料の滴をコイルに受け渡すことが好ましい。
【0019】
本発明によれば、塗料の滴をコイルに受け渡すときに、滴の下面が最大の径になったところでコイルに塗料を受け渡すことができるためコイルの上端面に形成される塗膜面積を拡げることができる。また、塗膜面積を一定の大きさにでき、精度を高めることができる。
【0020】
(6)さらに、前記供給手段の前記被膜塗料排出口は上半分がテーパ形状の溜め部であり、最も細くなった切り返し部から下半分に向かって山形状した拡散部となっていることが好ましい。
【0021】
本発明によれば、上半分のテーパ形状で貯留した被膜塗料を、切り返し部から続く山形状した拡散部に向かって均一に拡散することができるため、安定した所定の形状の滴が形成できる。
【0022】
(7)本発明は、内周面が絶縁膜に被膜され、内周面に続く少なくとも一方の端面の全面が、前記内周面と同一の絶縁膜で被膜されたボビンレスコイルであることを特徴とする。
【0023】
本発明によれば、内周面だけでなく、いずれかの端面の全面が絶縁膜で被膜されているため、剥がれにくい絶縁膜が形成できる。また、モータのステータコアに取り付けた場合など、絶縁膜が形成されているほうの端面に対向しているステータコアの面との間に他の絶縁手段(例えば絶縁シートや隙間)を設けなくてよい。
【0024】
(8)前記コイルの外周面が前記内周面と同一の絶縁膜で被膜されたボビンレスコイルであることが好ましい。
【0025】
本発明によれば、コイルの外周面が絶縁膜で被覆されているため、モータのステータコアに取り付けた場合など、この外周面に対向しているステータコアの面との間に他の絶縁手段(例えば絶縁シートや隙間)を設けなくてよい
【0026】
(9)また、本発明は、内周面に絶縁性の被膜が形成されるボビンレスコイルの製造方法であって、ボビンレスコイルの一端に塗料の滴を滴下する段階と、前記滴下した塗料の滴を前記ボビンレスコイルの他端から吸引することにより前記ボビンレスコイルの内周面に塗料を伝わらせる段階とを含むことを特徴とする。
【0027】
(10)また、ボビンレスコイルの製造方法において、前記ボビンレスコイルの一端に塗料の滴を滴下し、その後過剰の塗料を吸引することによって、前記ボビンレスコイルの一端に被膜を形成することが好ましい。
【0028】
上記発明によれば、内周面に過剰に残った塗料を吸引することによって特にコイルの角部(コイルのエッジ部)に塗料の溜まりやダレを作らずに被膜の膜厚を均一に形成することができる。
【0029】
(11)さらに、ボビンレスコイルの製造方法において、前記ボビンレスコイルの他端を所定の部材に接触させる段階と、前記ボビンレスコイルの一端に塗料の滴を滴下する段階と、前記滴下した塗料の滴を前記ボビンレスコイルの他端側から吸引することにより前記ボビンレスコイルの内周面に塗料を伝わらせる段階と、を含み、前記ボビンレスコイルの内周面を伝わらせた塗料の一部を前記ボビンレスコイルの他端と前記所定の部材との間に入り込ませることによって前記ボビンレスコイルの他端に被膜を形成することが好ましい。
【0030】
(12)また、ボビンレスコイルの製造方法において、内周面に絶縁性の被膜が形成されるボビンレスコイルの製造方法であって、ボビンレスコイルの一端に塗料を受け渡す段階と、前記受け渡された塗料を前記ボビンレスコイルの他端側から吸引することにより前記ボビンレスコイルの内周面に塗料を伝わらせる段階とを含むことが好ましい。
【0031】
(13)また、ボビンレスコイルの製造方法において、前記ボビンレスコイルの一端に塗料を受け渡し、その後過剰の塗料を吸引することによって、前記ボビンレスコイルの一端に被膜を形成することが好ましい。
【0032】
(14)さらに、ボビンレスコイルの製造方法において、前記ボビンレスコイルの他端を所定の部材に接触させる段階と、前記ボビンレスコイルの一端に塗料を受け渡す段階と、前記受け渡された塗料を前記ボビンレスコイルの他端側から吸引することにより前記ボビンレスコイルの内周面に塗料を伝わらせる段階と、を含み、前記ボビンレスコイルの内周面を伝わらせた塗料の一部を前記ボビンレスコイルの他端と前記所定の部材との間に入り込ませることによって前記ボビンレスコイルの他端に被膜を形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、滴下手段によって滴下された塗料は、吸引されることによって、被塗装材の表面(例えばボビンレスコイルの内周面)をつたうように流下する。このため、塗料が溜まることがなく、形成される被膜の膜厚を均一にすることができる。また、滴下された塗料のうち、過剰分は吸引されるから、塗料の垂れやダレを作らずに、被膜の膜厚を均一にすることができる。特に、過剰分の塗料を吸引することにより、被塗装材のエッジ部(ボビンレスコイルのエッジ部)に、塗料の溜まりが形成されることを防止できる。
【0034】
そして、滴下する塗料の滴の大きさ(形状)を調整することにより、被塗装材(例えばボビンレスコイル)の内周面と端面にのみ塗膜を形成することができる。また、滴下する塗料の滴の大きさを調整することにより、被塗装材の端面の全面に塗料を確実に滴下して全面にわたって塗膜を形成することができる。また、被塗装材の内周面と端面の全面にわたって被膜を形成することにより、形成された被膜が剥がれにくくなるようにできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下に、本発明の各種実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0036】
図1は、本発明の第一実施形態にかかる塗膜形成装置5aの要部の構成を、模式的に示した正面図(平面図)である。本発明の第一実施形態にかかる塗膜形成装置5aは、被塗装材であるボビンレスコイル8の内周面および所定の端面に、塗料の膜(塗膜)を形成することができる。
【0037】
図1に示すように、本発明の第一実施形態にかかる塗膜形成装置5aは、塗料の滴(しずく)を滴下することができる供給手段である滴下手段51aと、滴下手段51aを上下方向に往復動させることができる滴下手段往復動手段52aと、被塗装材であるボビンレスコイル8を載置することができる吸引媒体53と、流体を吸引することができる吸引装置54と、吸引した塗料を溜めることができる塗料溜まり(チャンバ)55とを備える。滴下手段51aは、加圧塗料供給源511と、被膜塗料排出口512が形成されるノズル513とを備える。
【0038】
加圧塗料供給源511は、塗料を加圧してノズル513に供給することができる。この加圧塗料供給源511には、空気を加圧して供給する装置が適用できる。例えば、空気圧搾機などが適用できる。
【0039】
ノズル513には、塗料を滴下することができる被膜塗料排出口512が形成される。図2は、ノズル513の構成を模式的に示した断面図である。それぞれ図2(a)は、本発明の第一実施形態にかかる塗膜形成装置5aに適用できる第一の例513を示し、図2(b)は第二の例であるノズル514を示す。
【0040】
図2(a)に示すように、第一の例にかかるノズル513の被膜塗料排出口512は、上側約半分が下すぼまりのテーパ状の貫通孔に形成されている。このような構成によれば、この下すぼまりのテーパ状の部分に塗料を溜めることができる。すなわち、この下すぼまりのテーパ状の部分が塗料溜め部5131となる。
【0041】
被膜塗料排出口512の下側約半分は、切り返し部5132(内径が最も細くなった部分をいうものとする)から下側に向かって拡がるテーパ状の(換言すると山形状の)貫通孔に形成される。すなわち、切り返し部5132より下側には、下側に向かって山形状の拡散部5133が形成される。このような構成によれば、被膜塗料排出口512を流下した塗料を、被膜塗料排出口512の下端(すなわち開口部端面)において滴状に溜めることができる。そして滴状に溜まった塗料を被塗装材であるボビンレスコイル8に滴下することができる。また、このような構成によれば、被膜塗料排出口512の内径を調整することにより、塗料の滴の大きさを調整することができる。
【0042】
なお、被膜塗料排出口512の下端(すなわち開口部端面)における内径は、被塗装材であるボビンレスコイル8の内径よりも大きく設定される。このような構成によれば、被膜塗料排出口512の下端において形成された塗料の滴は、ボビンレスコイル8の端面に落下する。したがって、ボビンレスコイル8の端面に塗膜を形成することができる。
【0043】
図2(b)に示すように、第二の例にかかるノズル514は、被膜塗料排出口512の内径が小さい部分5134と大きい部分5135とを有する。具体的には図2(b)に示すように、被膜塗料排出口512の約上半分の内径が小さく、約下半分の内径が大きい。このような構成によれば、内径が小さい部分5134を流下した塗料を、内径が大きい部分5135に溜めて液滴にすることができる。そして液滴にした塗料を被塗装材であるボビンレスコイル8に向けて滴下することができる。ここで、内径の大なる部分5135の径を調整することにより、形成される塗料の滴の大きさを調整することができる。
【0044】
なお、被膜塗料排出口512の内径が大きい部分5135における当該内径は、被塗装材であるボビンレスコイル8の内径よりも大きく設定される。このような構成によれば、被膜塗料排出口512の下端において形成された塗料の滴は、ボビンレスコイル8の端面に落下する。したがって、ボビンレスコイル8の端面に塗膜を形成することができる。
【0045】
そして、形成された塗料の滴は加圧されて押し出される。これにより、塗料の滴は、被膜塗料排出口512からボビンレスコイル8の端面に落下することができる。なお、塗料の押し出し圧力は特に限定されるものではなく、塗料の滴の大きさなどに応じて適宜設定される。具体的には例えば、0.05〜1MPa程度の圧力で押し出す構成が適用できる。
【0046】
図1に戻って説明すると、滴下手段往復動手段52aは、滴下手段51aを上下に往復動させることができる。滴下手段51aが下端に位置したときに、滴下手段51aの被膜塗料排出口512が、吸引媒体53(に載置されるボビンレスコイル8の上端面)に最も近接する(ただし、接触はしないことが好ましい)。このような構成であると、滴下手段51aが下端に位置するときに被膜塗料の滴を滴下するようにすれば、塗料の滴の滴下位置の精度を高くすることができる。
【0047】
吸引媒体53は、ボビンレスコイル8の内周面などに塗膜を形成する際において、ボビンレスコイル8が載置される台状の部材である。具体的には、常態における上面側に、ボビンレスコイル8の端部(軸線方向の端部)を係合することができる係合凹部531が形成される。この係合凹部531は、例えば被塗装材であるボビンレスコイル8の外径と略同じかまたは外径より少し大きい径(ボビンレスコイル8の端部を遊嵌できる程度の径)の略円形の凹部である。ボビンレスコイル8の端部をこの係合凹部531に係合させることにより、ボビンレスコイル8に塗料の滴を滴下する際において、ボビンレスコイル8を位置合わせすることができる。
【0048】
なお、下記に説明するように、塗料をボビンレスコイル8に滴下した際には塗料はコイルの内周面を伝ってボビンレスコイル8の下端に達する。ボビンレスコイルの下端に達した塗料は、毛細管現象によりボビンレスコイルの下端面全面に滲入する。さらに、上記のとおり係合凹部531を遊嵌できる径にしておけば、下端面に滲入した塗料を、さらに滴下方向とは反対側の方向に向かってボビンレスコイル8の下端面からボビンレスコイル8の外周面へと凹部の高さに沿って毛細管現象によって塗布できる。もちろん、ボビンレスコイル8の外周面に塗膜を形成する必要がなければ、凹部の高さを低くしたりするなどすればよい。
【0049】
係合凹部531の底面の表面は、塗料を弾く性状であることが好ましい。このような構成によれば、塗膜を形成した後に、ボビンレスコイル8を係合凹部531から取り出すことが容易となる。
【0050】
係合凹部531の略中心には、吸引孔532が形成される。この吸引孔532は塗料を吸引するための貫通孔であり、吸引媒体53の下方に設けられる塗料溜まり(チャンバ)55に連通する。この吸引孔532の内径は、被塗装材であるボビンレスコイル8の内径よりも小さく形成される。したがって、被塗装材であるボビンレスコイル8を係合凹部531に位置合わせして載置すると、ボビンレスコイル8の端面は全面にわたって係合凹部531の底面に接触することになる。
【0051】
塗料溜まり(チャンバ)55は、吸引した塗料を溜めておくことができる容器状の部材である。この塗料溜まり(チャンバ)55は、塗料を溜めておくことができるものであればよく、その寸法や形状は限定されるものではない。
【0052】
吸引装置54は、塗料溜まり(チャンバ)55の内部の空気を吸引することができる。そして、塗料溜まり(チャンバ)55の内部の空気を吸引することにより、係合凹部531に形成される吸引孔532から塗料を吸引することができる。吸引された塗料は、塗料溜まり(チャンバ)531の内部に落下して溜まる。この吸引装置54には、公知の各種真空ポンプなどが適用できる。
【0053】
このように、本発明の第一実施形態にかかる塗膜形成装置5aは、加圧塗料供給源511と、吸引装置54という簡単な装置構成にすることができる。したがって、安価で場所をとらない装置構成とすることができる。
【0054】
次に、本発明の第一実施形態にかかる塗膜形成装置5aを用いた塗膜形成方法について説明する。図3から図5は、本発明の第一実施形態にかかる塗膜形成装置5aを用いた塗膜形成方法の工程を、模式的に示した断面図である。塗膜形成の対象となる部材はボビンレスコイル8であり、塗膜形成の対象となる部位は、ボビンレスコイル8の内周面と両端面(角部を含む)、および外周面側の角部近傍である。
【0055】
まず、図3(a)に示すように、吸引媒体53の係合凹部531に被塗装材であるボビンレスコイル8が載置される。そして、ボビンレスコイル8の下端面が、吸引媒体53の上面に形成される係合凹部531に係合する。この状態においては、滴下手段51aは往復動の範囲の上端またはその近傍に位置する状態に維持される。滴下手段51aが往復動の範囲の上端またはその近傍に位置すれば、滴下手段51aが、ボビンレスコイル8を吸引媒体に載置する動作の障碍となることがない。
【0056】
次いで、図3(b)に示すように、滴下手段往復動手段52aが滴下手段51aを移動させ、上下動の下端位置に位置させる。これにより、滴下手段51aの被膜塗料排出口512が、吸引媒体53に載置されたボビンレスコイル8の上端面に近接する。
【0057】
そして、図4(a)に示すように、加圧塗料供給手段511が動作し、ノズル513に塗料が供給される。ノズル513に塗料が供給されると、第一の例にかかるノズル513が適用される場合には、ノズル513の塗料溜め部5131に塗料が溜まり、さらに塗料溜め部5131に溜まった塗料が切り返し部5132を通り、拡散部5133に至る。流下した塗料は拡散部5133において滴状となる。
【0058】
図4(b)に示すように、滴となった塗料を、ボビンレスコイル8の上端面に落下させる。落下した塗料は、粘性によってボビンレスコイルの上端面および貫通孔の内周面に留まる。ここで、落下させる塗料の滴の大きさ(外径)は、ボビンレスコイル8の内径より大きく、外径以下であることが好ましい。滴下する塗料の径をこのように設定すれば、落下した塗料の滴をボビンレスコイルの上端面全面に付着させることができる。
【0059】
また、落下させる塗料の滴の大きさを、外径よりわずかに大きくしてもよい。滴下する塗料の径をこのように設定すれば、落下した塗料の滴は、ボビンレスコイルの上端面に滴を付着させることができるとともに、上端面とコイルの外周面とで形成されている角部および角部近傍にも滴を付着させることができる。一方で、落下させる塗料の滴の大きさ(外径)を、ボビンレスコイル8の外径以下とした場合、落下した塗料の滴は、ボビンレスコイル8の上端面、および内周面に付着するが、ボビンレスコイル8の外周面に塗料の塗膜が形成されることはない。
【0060】
次いで、図5に示すように、吸引装置54を作動させ、前記工程において滴下した塗料を、吸引媒体53の吸引孔532から吸引する。塗料を吸引すると、塗料はボビンレスコイル8の内周面を伝ってボビンレスコイル8の下端に達する。これによって、ボビンレスコイル8の内周面に塗膜81が形成される。そして下端に達した塗料の一部は、吸引媒体53の係合凹部531とボビンレスコイル8の下端面との間に滲入する。これにより、ボビンレスコイル8の下端面に塗膜が形成される。
【0061】
そしてさらに、上述の係合凹部の径を遊嵌させた場合には、下端面に滲入し、外周面側までに達した塗料は、ボビンレスコイル8の外周面と係合凹部531の内周面との間に生じる毛細管現象において、係合凹部531の高さ方向に沿ってボビンレスコイル8の外周面の角部および角部近傍(係合凹部の高さ)まで滲入する。これにより、ボビンレスコイル8の外周面に塗膜が形成される。なお、図5にはボビンレスコイル8の外周面に塗膜が形成された場合の図を図示している。
【0062】
なお、過剰分の塗料は、吸引媒体53に形成される吸引孔532から塗料溜まり(チャンバ)55に吸引される。このように、ボビンレスコイル8の一端(上端)に塗料を滴下し、他端(下端)から過剰の塗料を吸引することにより、ボビンレスコイル8の内周面と両端面(角部を含む)、および外周面側の角部近傍にわたって塗料を伝わせることができる。したがって、ボビンレスコイル8の内周面の全体にわたって塗料を塗布し塗膜を形成することができる。
【0063】
また、過剰の塗料を吸引するから、塗膜の厚さを均一にすることができる。さらにボビンレスコイル8の端部(エッジとなっている部分)などに、塗料の「溜まり」ができることを防止できる。
【0064】
次に、本発明の第二実施形態にかかる塗膜形成装置5bについて説明する。本発明の第二実施形態にかかる塗膜形成装置は図1の塗膜形成装置5aと構成は同一であるため図1を参照しつつ説明する。
【0065】
塗膜形成装置5aは、被塗装材であるボビンレスコイル8に塗料を受け渡すことができる受渡手段51aと、受渡手段51aを上下方向に往復動させることができる受渡手段往復動手段52aと、被塗装材であるボビンレスコイル8を載置することができる吸引媒体53と、流体を吸引することができる吸引装置54と、吸引した塗料を溜めることができる塗料溜まり(チャンバ)55とを備える。受渡手段51aは、加圧塗料供給源511と、被膜塗料排出口512が形成されるノズル513とを備える。
【0066】
第二実施形態においてノズル514の説明については、第一実施形態にかかる塗膜形成装置5aにおける塗料の「滴下」を、塗料の「受け渡し」と読み替えればよい。
【0067】
次に、本発明の第二実施形態にかかる塗膜形成装置5bを用いた塗膜形成方法について説明する。図6は、本発明の第二実施形態にかかる塗膜形成装置5bを用いた塗膜形成方法の工程を、模式的に示した断面図である。塗膜形成の対象となる部材はボビンレスコイル8であり、塗膜形成の対象となる部位は、ボビンレスコイル8の内周面と両端面(角部を含む)、および外周面側の角部近傍である。
【0068】
まず、吸引媒体53の係合凹部531に被塗装材であるボビンレスコイル8が載置される。そして、ボビンレスコイル8の下端面が、吸引媒体53の上面に形成される係合凹部531に係合する。この状態においては、受渡手段51bは往復動の範囲の上端またはその近傍に位置する状態に維持される。受渡手段51bが往復動の範囲の上端またはその近傍に位置すれば、ボビンレスコイル8を吸引媒体に載置する動作の障碍となることがない。
【0069】
次いで、受渡手段往復動手段52bが受渡手段51bを移動させ、受渡手段51bを上下動の下端位置に位置させる。これにより、受渡手段51bの被膜塗料排出口512が、吸引媒体53に載置されたボビンレスコイル8の上端面に近接する。
【0070】
そして、加圧塗料供給手段511が動作し、図6(a)に示すように、ノズル514に塗料が供給される。ノズル514に塗料が供給されると、ノズル514の塗料溜め部5131(図2参照)に塗料が溜まり、さらに塗料溜め部5131に溜まった塗料が切り返し部5132を通り、拡散部5133に至る。流下した塗料は拡散部5133において半滴状となる。そして半滴状になった塗料は、ボビンレスコイル8の上端面に接触する。
【0071】
図6(b)に示すように、滴となった塗料を、ボビンレスコイルの端面に受け渡す。具体的には、塗料を押し出せばよい。受け渡された塗料は、粘性によってボビンレスコイル8の上端面および貫通孔の内周面に留まる。後は第一実施形態にかかる塗膜形成装置5aを用いた場合と同じ手順で内周面と両端面(角部を含む)、および外周面側の角部近傍に塗膜が形成されるため説明を省略する。
【0072】
このような構成によれば、第一実施形態にかかる塗膜形成装置5aを用いた塗膜形成方法と同様の作用効果を奏することができる。
【0073】
図7は、本発明の実施形態にかかるボビンレスコイル8の構成を、模式的に示した部分断面図である。図7に示すように、本発明の実施形態にかかるボビンレスコイル8は、略円筒形状を有する。そして、内周面と両端面(角部を含む)、および外周面側の角部近傍に塗膜81が形成されている例を示す。この塗膜81は、前記方法により形成されるものであるから、略均一な厚さを有する。また、ボビンレスコイル8の端部(角部近傍)に、塗料の「溜まり」がない。また、この塗膜81は電気的に絶縁性の材料により形成される。したがって、この塗膜81は電気的な絶縁膜として機能する。
【0074】
次に、このようなボビンレスコイル8が適用されるステッピングモータについて簡単に説明する。
【0075】
図8は本発明の一実施形態に係るモータ10の概略構成を示したものである。本実施形態に係るモータ10はステッピングモータである。図8に示すように、このステッピングモータ10は、回転軸20とこの回転軸20の外周面に固着された円筒状のマグネット22(永久磁石)を備えたロータRと、ロータRを囲むように配置されたステータSとを有している。
【0076】
ステータSは、第1のステータ組S1と、この第1のステータ組S1と背中合わせに固定される第2のステータ組S2によって2層構造に構成されている。なお、第1のステータS1と第2のステータS2の基本的な構成は同じである。したがって、以下においては、共通する部分については同一の符号を付して説明する。
【0077】
第1のステータ組S1と第2のステータ組S2は、各々、概ね内ステータコア16aと、外ステータコア16bと、コイルボビンを有しない本発明の実施形態にかかるボビンレスコイル8と、本発明の実施形態にかかるボビンレスコイル8の内周面と内ステータコア16aの極歯18aから構成されている。なお、本実施形態において、内ステータコア16aと外ステータコア16bとを組み合わせた態様をステータコア16と称して以下説明する。
【0078】
本実施の形態において、内ステータコア16aには、本発明の実施形態にかかるボビンレスコイル8が装着され、一対の内ステータコア16aが背中合わせに重ね合わされている。各内ステータコア16aの内周縁にはそれぞれ複数本ずつからなる極歯18aが略等間隔に環状に起立形成されている。
【0079】
そして、内ステータコア16aには、外ステータコア16bがそれぞれ被着される。外ステータコア16bの内周縁には内ステータコア16aと同様に複数本ずつからなる極歯18bが起立形成されており、内ステータコア16aの極歯18aと外ステータコア16bの極歯18bとが周方向に噛み合うように並んだ状態で配置されている。
【0080】
そして、この内ステータコア16aの極歯18aと外ステータコア16bの極歯18bの外周面にボビンレスコイル8の内周面、すなわち塗膜81が形成される面が対向するように配置される。そして、このような状態で内ステータコア16aに本発明の実施形態にかかるボビンレスコイル8が装着されている。なお、本形態において、外ステータコア16bはモータケースを兼用している。
【0081】
また、前記のように本発明の実施形態にかかるボビンレスコイル8の内周面には絶縁性を備える塗膜81が形成され、この塗膜81の内周面が、内ステータコア16aと外ステータコア16bの極歯18a,18b群の外周面に対向するように構成されている。
【0082】
そして、このように構成されたステータSの中央部には、極歯内径から所定の間隙を配して回転軸20の周りにマグネット22が一体的に設けられたロータRが配置されている。
【0083】
第1のステータ組S1の外ステータコア16bには、ステッピングモータ10を機器に搭載する際の固定板などとして利用される取付板29aが固定されており、この取付板29aには回転軸20を出力側で回転自在に支承する第1のラジアル軸受26aが固定されている。
【0084】
また、第2のステータ組S2の外ステータコア16bには、回転軸20を反出力側で回転自在に支承する第2のラジアル軸受26bが固定されている。さらに、第2のステータ組S2の外ステータコア16bには、側板29bが固定されており、この側板29bによって回転軸20の軸端がスラスト方向に回転自在に支承されている。なお、本実施の形態においては、回転軸20の軸端を側板29bで回転自在に支持した構造を採用したが、側板29bに替えて回転軸20を軸方向(出力側)に付勢する付勢部材を取り付けてもよい。
【0085】
すなわち、ロータRは第1のラジアル軸受26aと、第2のラジアル軸受26bと、側板29bにより回転自在に支承されている。そしてロータRの回転軸20の一端側は第1のステータ組S1の外ステータコア16bより外側(出力側)に突出され、回転駆動用の出力軸とされている。
【0086】
また、第1のラジアル軸受26aとマグネット22との間には樹脂製のワッシャ23が配置され、ロータRの出力側への移動を規制している。
【0087】
また、各ステータコア16にはそれぞれの電力を供給する端子ピン28が設けられ、この端子ピン28を介して本発明の実施形態にかかるボビンレスコイル8に交流電流が流され、回転磁界が発生する。この回転磁界によってロータRのマグネット22に磁気的な回転力が付与され、マグネット22とともに回転軸20が回転駆動される。
【0088】
図9はステータSの内ステータコア16aに本発明の実施形態にかかるボビンレスコイル8を装着する前の状態を示す分解斜視図である。図示のように、この内ステータコア16aには、ボビンレスコイル8が載置される円環状の台座部32が設けられ、その内周縁には複数本の極歯18aが略等間隔に円周上に起立形成されている。そして、台座部32の外周縁の一側には、本発明の実施形態にかかるボビンレスコイル8に電力を供給するための端子ピン28を支持する端子台27が取り付けられる(図8参照)。
【0089】
また、図示しないが、この内ステータコア16aに本発明の実施形態にかかるボビンレスコイル8を介して被着される外ステータコア16bは、内ステータコア16aと略対称の形状を有している。そして、内ステータコア16aの極歯18aと極歯18aの間に対応する位置に極歯18bが起立成形され、内ステータコア16aの極歯18a群と外ステータコア16bの極歯18b群とが噛み合うようになっている。これらの内ステータコア16aおよび外ステータコア16bは例えば鉄などの磁性鋼板をプレス加工により形成される。
【0090】
一方、内ステータコア16aの極歯18a群の外周に装着される本発明の実施形態にかかるボビンレスコイル8は、銅線などの表面に自己融着層が設けられた巻線を、複数回巻回して形成される。この自己融着層は、加熱しながら巻線を所定の外径を有する治具等に巻いていくと、巻線の表面が融着して、ボビンレスコイル8の形状に固定されるものや、巻線を巻き回した後に溶剤等によって融着するもの等が適用される。これにより、コイルボビンがなくとも、巻線だけでボビンレスコイル8の形状を維持できるようになっている。
【0091】
そして、形成されたボビンレスコイル8の内周面および一方の端面に、絶縁性の塗膜が形成される。この絶縁性の塗膜の形成方法については、前記のとおりである。
【0092】
これらの本発明の実施形態にかかるボビンレスコイル8、内ステータコア16aを組み立てる際の手順を、図9、図10を参照して説明する。図9はステータSの内ステータコア16aに本発明の実施形態にかかるボビンレスコイル8を装着する前の状態を示す分解斜視図である。なお、図示しないが、この内ステータコア16aには、予めこの内ステータコア16aと対をなす内ステータコア16aが背中合わせに重なり合って配置され、溶接されて互いに固定されている。
【0093】
図10は、本発明の実施形態にかかるボビンレスコイル8と内ステータコア16とを組み立てた状態を示した外観斜視図である。図10に示すように、本発明の実施形態にかかるボビンレスコイル8の内周に内ステータコア16aの極歯18a群が挿通される。
【0094】
図10に示すように、内周面および両方の端面に絶縁性の塗膜が形成されたボビンレスコイル8を内ステータコア16aの極歯18a群に装着する。前記のとおり、ボビンレスコイル8の内周面には絶縁性の塗膜が形成されているので、内ステータコア16aの極歯18aがボビンレスコイル8の内周面に直接触れることがなく、ボビンレスコイル8の断線や絶縁不良等が起こらない。
【0095】
また、本発明の実施形態にかかるボビンレスコイル8の端面のうち、内ステータコア16aの台座部32に接する面(ボビンレスコイル8の両端面)は、絶縁性の塗膜で覆われている。したがって、ボビンレスコイル8の端面が内ステータコア16aの内周縁の端縁で傷付けられるようなことがなく、ボビンレスコイル8の断線や絶縁不良等が起こらない。また、ボビンレスコイル8と内ステータコア16aの極歯18aとがより確実に絶縁された状態に保たれる。
【0096】
また、外ステータコア16bとの絶縁性を高めることができるので、特許文献1のように空芯コイルの軸線方向の端面と、ステータコアとの端面に絶縁性シートを介在させたり、隙間を設けてやるなどして絶縁性を確保しなくてもよい。そうすれば、ステータコアの軸方向を短くすることができるためモータが小型化できる
【0097】
そして、図10に示すように、このボビンレスコイル8が装着された内ステータコア16aに、ボビンレスコイル8を介して、外ステータコア16bが被着される。この外ステータコア16bには、内ステータコア16aの極歯18a群と噛み合うように、内周縁に極歯18b群が起立成形されているが、ボビンレスコイル8の内周面には絶縁性の塗膜が形成されているので、ボビンレスコイル8の内周面が外ステータコア16bの極歯18bにより傷付けられるようなことがない。
【0098】
そのため、ボビンレスコイル8が装着された内ステータコア16aと外ステータコア16bとを同軸に配置する等の繁雑な作業を要せず、組み立て作業性が向上する。また、外ステータコア16bの極歯18bとボビンレスコイル8の内周面とが直接、接しないため絶縁された状態に保たれている。
【0099】
さらに、ボビンレスコイル8の外周面側の角部、および角部近傍が絶縁性の塗布膜で覆われている。そのため、外ステータコア16bとの絶縁性を高めることができるので、特許文献1のように空芯コイルの軸線方向の端面と、ステータコアとの端面に絶縁性シートを介在させたり、隙間を設けてやるなどして絶縁性を確保しなくてもよい。そうすれば、ステータコアの径方向を小さくすることができるためモータが小型化できる。
【0100】
このようにしてステータコア16に装着されたボビンレスコイル8の巻線端末は、図8に示すように、内ステータコア16aに端子台27を介して取り付けられた端子ピン28に巻き回されて、半田付け等により電気的に接続される。
【0101】
以上が、本発明の実施形態にかかるボビンレスコイル8が適用されるステッピングモータの構成の一例である。
【0102】
(実施の形態の主な効果)
本発明の実施形態によれば、滴下手段によって滴下された塗料は、吸引されることによって、被塗装材の表面(例えばボビンレスコイルの内周面)をつたうように流下する。このため、塗料が溜まることがなく、形成される塗膜の膜厚を均一にすることができる。また、滴下された塗料のうち、過剰分は吸引されるから、塗料の溜まりやダレを作らずに、塗膜の膜厚を均一にすることができる。特に、過剰分の塗料を吸引することにより、被塗装材のエッジ部(ボビンレスコイルのエッジ部)に、塗料の溜まりが形成されることを防止できる。
【0103】
そして、滴下する塗料の滴の大きさ(量)を調整することにより、被塗装材(例えばボビンレスコイル)の内周面と両端面、および外周面側の角部近傍に塗膜を形成することができる。また、滴下する塗料の滴の大きさ(径)を調整することにより、被塗装材の端面の全面に塗料を確実に滴下して全面にわたって塗膜を形成することができる。特に、滴下で塗料を塗布する場合には、
特に滴の大きさ(量)を一定にすることができる。
また、被塗装材の内周面と端面の全面にわたって塗膜を形成すれば、形成された塗膜が剥がれにくくなるようにできる。
【0104】
ここで、前記滴下手段が往復動手段により上下動する構成とすれば、塗料の滴を滴下する際に、被膜塗料排出口と被塗装材であるボビンレスコイルを近接させることができる。したがって、塗料の滴下位置の精度の向上を図ることができる。
【0105】
前記滴下手段の被膜塗料排出口は上半分がテーパ形状の溜め部であれば、加圧塗料供給源から供給された塗料を溜めることができる。したがって、所定の大きさの塗料の滴を形成することが容易となる。また、最も細くなった切り返し部から下半分に向かって山形状した拡散部を有すれば、塗料を拡散部に沿って均一に拡散させることができる。したがって、安定した形状の滴ができるため、ボビンレスコイルの内周面および所定の端面に、均一な塗膜を形成することができる。
【0106】
本発明の実施形態にかかるボビンレスコイルによれば、内周面に塗膜が形成されているから、ボビンレスコイルをモータなどに組み付ける際などにおいて、ボビンレスコイルの巻き線が保護される。したがって、ボビンレスコイルの巻き線に傷がつくことなどを防止できる。また、ボビンレスコイルの端面、および外周面側の角部近傍に塗膜が形成される構成によれば、前記同様の作用効果を奏することができる。さらに、コイルの外周面とコイルの外周面に対向して配置されているステータコアの面との間に他の絶縁手段を設けなくてもよい。
【0107】
特許文献1に示すようなディップ塗装では、ボビンレスコイルの必要な個所にだけ絶縁性の塗膜を形成するには塗膜が不必要な個所にマスキング処理を施さねば成らないなど手間がかかってしまう。しかし、本発明では、前記絶縁膜が絶縁性の塗膜であれば、必要箇所に当該絶縁性の塗料を塗布するだけで良い。したがって、工程の複雑化や設備の複雑化、製造コストの上昇を招くことがない。
【0108】
ボビンレスコイルの一端に塗料の滴を滴下する段階と、前記滴下した塗料の滴を前記ボビンレスコイルの他端から吸引することにより前記ボビンレスコイルの内周面に塗料を伝わらせる段階と、を有する構成であれば、滴下した塗料はボビンレスコイルの内周面を伝わるから、ボビンレスコイルの内周面に全域にわたって塗膜を形成することができる。
【0109】
また、過剰な塗料は吸引されるから、膜厚を均一にすることができる。さらにボビンレスコイルの端部(エッジ状になっている部分)などに塗料の「溜まり」が形成されることを防止できる。
【0110】
ボビンレスコイルの他端を所定の部材に接触させる段階と、ボビンレスコイルの一端に塗料の滴を滴下する段階と、滴下した塗料の滴を前記ボビンレスコイルの他端側から吸引することにより前記ボビンレスコイルの内周面に塗料を伝わらせる段階とを含む構成であると、ボビンレスコイルの内周面を伝わらせた塗料の一部を前記ボビンレスコイルの他端と前記所定の部材との間に入り込ませることができる。したがって、ボビンレスコイルの端面にも塗膜を形成することができる。
【0111】
なお、塗料の滴を滴下する構成ではなく、塗料の半滴を受け渡す構成であっても、前記同様の作用効果を奏することができる。
【0112】
この、塗料の半滴を受け渡す構成であれば、滴の下面が最大の径になったところでコイルに塗料を受け渡すことができるため、コイルの上端面に形成される塗膜面積を拡げることができる。また、塗膜面積を一定の大きさにでき、精度を高めることができる。
【0113】
また、塗膜はボビンレスコイルの上下端面の全面、および外周面の角部近傍を必ずしも覆っている必要はなく、例えばいずれか一方の端面の一部、両方の端面の一部ずつが塗膜で覆われている場合や、いずれか一方の端面の全面と他方の端面の一部が塗膜で覆われていてもよく、組み合わせは自由である。
このように、必ずしもボビンレスコイルの上下端面の全面、および外周面の角部近傍を覆っていなくても、コイルの内周面が塗膜で被覆されていることによりステータコアの極歯に傷付けられることを防止できるとともにステータコアとの絶縁性も保つことができる。
【0114】
以上、本発明の各種実施形態について説明したが、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明の第一実施形態にかかる塗膜形成装置の要部の構成を、模式的に示した正面図(平面図)である。
【図2】ノズルの構成を模式的に示した断面図であり、(a)は、本第一の例を示し、(b)は第二の例を示す。
【図3】本発明の第一実施形態にかかる塗膜形成装置を用いた塗膜形成方法の工程を、模式的に示した断面図である。
【図4】本発明の第一実施形態にかかる塗膜形成装置を用いた塗膜形成方法の工程を、模式的に示した断面図である。
【図5】本発明の第一実施形態にかかる塗膜形成装置を用いた塗膜形成方法の工程を、模式的に示した断面図である。
【図6】本発明の第二実施形態にかかる塗膜形成装置を用いた塗膜形成方法の工程を、模式的に示した断面図である。
【図7】本発明の実施形態にかかるボビンレスコイルの構成を、模式的に示した部分断面図である。
【図8】本発明の実施形態に係るボビンレスコイルが適用されるステッピングモータの構成を示す断面図である。
【図9】図8に示したステッピングモータのボビンレスコイルとステータを示す分解斜視図である。
【図10】図8に示したステッピングモータのステータコアにボビンレスコイルを装着した状態を示す図である。
【符号の説明】
【0116】
10 ステッピングモータ
14 ボビンレスコイル
16 ステータコア
16a 内ステータコア
16b 外ステータコア
18a,18b 極歯
20 回転軸
22 マグネット
32 台座部
5 塗膜形成装置
51 滴下手段
511 加圧塗料供給源
512 被膜塗料排出口
513 ノズル
5131 塗料溜め部
5132 切り返し部
5133 拡散部
5134 内径が小さい部分
5135 内径が大きい部分
514 ノズル
52a 滴下手段往復動手段
53 吸引媒体
531 係合凹部
532 吸引孔
54 吸引装置
55 塗料溜まり(チャンバ)
8 ボビンレスコイル
81 被膜
R ロータ
S ステータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルと、被膜塗料の滴を供給するための供給手段と、前記コイルが載置されるとともに前記コイルの内径より小さい吸引孔を略中央に備えた吸引媒体と、該吸引媒体に取り付けられた吸引装置とを備え、
前記供給手段によって供給された被膜塗料の滴の大きさは、コイル内径より大きく前記吸引装置による吸引時には、前記被膜塗料はコイルの上端面を被膜で被覆するとともに前記コイルの内周面に滴ってコイル内周面を被膜で被覆する、ことを特徴とする塗膜形成装置。
【請求項2】
前記吸引装置による吸引時には前記被膜塗料は前記吸引孔と前記コイル下端面との隙間に前記被膜塗料が入り込んで前記コイルの下面を被膜で被覆する、ことを特徴とする請求項1記載の塗膜形成装置。
【請求項3】
前記被膜塗料は絶縁塗料である、ことを特徴とする請求項1または2に記載の塗膜形成装置。
【請求項4】
前記供給手段は塗料の滴を形成する被膜塗料排出口と、該被膜塗料排出口を上下動させることができる往復動手段とを備え、該被膜塗料排出口が前記コイルに接近して前記被膜塗料排出口が形成した塗料の滴をコイルに滴下することを特徴とする請求項1に記載の塗膜形成装置。
【請求項5】
前記供給手段は塗料の滴を形成する被膜塗料排出口と、該被膜塗料排出口を上下動させることができる往復動手段とを備え、該被膜塗料排出口が前記コイルに接近して前記被膜塗料排出口が形成した塗料の滴をコイルに受け渡すことを特徴とする請求項1に記載の塗膜形成装置。
【請求項6】
前記供給手段の前記被膜塗料排出口は上半分がテーパ形状の溜め部であり、最も細くなった切り返し部から下半分に向かって山形状した拡散部となっていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の塗膜形成装置。
【請求項7】
内周面が絶縁膜に被膜され、内周面に続く少なくとも一方の端面の全面が、前記内周面と同一の絶縁膜で被膜されたことを特徴とするボビンレスコイル。
【請求項8】
前記コイルの外周面が前記内周面と同一の絶縁膜で被膜された請求項7記載のボビンレスコイル。
【請求項9】
内周面に絶縁性の被膜が形成されるボビンレスコイルの製造方法であって、ボビンレスコイルの一端に塗料の滴を滴下する段階と、前記滴下した塗料の滴を前記ボビンレスコイルの他端から吸引することにより前記ボビンレスコイルの内周面に塗料を伝わらせる段階と、を含むことを特徴とするボビンレスコイルの製造方法。
【請求項10】
前記ボビンレスコイルの一端に塗料の滴を滴下し、その後過剰の塗料を吸引することによって、前記ボビンレスコイルの一端に被膜を形成することを特徴とする請求項9に記載のボビンレスコイルの製造方法。
【請求項11】
前記ボビンレスコイルの他端を所定の部材に接触させる段階と、前記ボビンレスコイルの一端に塗料の滴を滴下する段階と、前記滴下した塗料の滴を前記ボビンレスコイルの他端側から吸引することにより前記ボビンレスコイルの内周面に塗料を伝わらせる段階と、を含み、前記ボビンレスコイルの内周面を伝わらせた塗料の一部を前記ボビンレスコイルの他端と前記所定の部材との間に入り込ませることによって前記ボビンレスコイルの他端に被膜を形成することを特徴とする請求項9または請求項10に記載のボビンレスコイルの製造方法。
【請求項12】
内周面に絶縁性の被膜が形成されるボビンレスコイルの製造方法であって、ボビンレスコイルの一端に塗料を受け渡す段階と、前記受け渡された塗料を前記ボビンレスコイルの他端側から吸引することにより前記ボビンレスコイルの内周面に塗料を伝わらせる段階と、を含むことを特徴とするボビンレスコイルの製造方法。
【請求項13】
前記ボビンレスコイルの一端に塗料を受け渡し、その後過剰の塗料を吸引することによって、前記ボビンレスコイルの一端に被膜を形成することを特徴とする請求項12に記載のボビンレスコイルの製造方法。
【請求項14】
前記ボビンレスコイルの他端を所定の部材に接触させる段階と、前記ボビンレスコイルの一端に塗料を受け渡す段階と、前記受け渡された塗料を前記ボビンレスコイルの他端側から吸引することにより前記ボビンレスコイルの内周面に塗料を伝わらせる段階と、を含み、前記ボビンレスコイルの内周面を伝わらせた塗料の一部を前記ボビンレスコイルの他端と前記所定の部材との間に入り込ませることによって前記ボビンレスコイルの他端に被膜を形成することを特徴とする請求項9または請求項10に記載のボビンレスコイルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−290934(P2009−290934A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−138208(P2008−138208)
【出願日】平成20年5月27日(2008.5.27)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】