塗装廃液の処理方法
【課題】生物処理槽の能力を充分発揮させ、好気性微生物が分解処理した塗装廃液の上澄み液を、再度、廃液処理水槽に供給し水のリサイクルが可能な塗装廃液の処理方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の塗装廃液の処理方法は、塗装ブース1内に具備された廃液処理水槽2を設け、前記塗装ブース1内で捕集した塗料廃液及び塗料ミストを、前記廃液処理水槽2内に流入させた後、前記廃液処理水槽2の廃液を汲みあげる水中ポンプ11を用いて、前記塗装ブース1の近傍に設けた生物処理槽12の微生物によって、前記廃液の分解を促進するように室内の空気または酸素をブロワー16で取込み、前記生物処理槽12内に散気することを特徴とする。
【解決手段】本発明の塗装廃液の処理方法は、塗装ブース1内に具備された廃液処理水槽2を設け、前記塗装ブース1内で捕集した塗料廃液及び塗料ミストを、前記廃液処理水槽2内に流入させた後、前記廃液処理水槽2の廃液を汲みあげる水中ポンプ11を用いて、前記塗装ブース1の近傍に設けた生物処理槽12の微生物によって、前記廃液の分解を促進するように室内の空気または酸素をブロワー16で取込み、前記生物処理槽12内に散気することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装ブース内の塗装廃液を微生物で分解するようにした処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、塗装廃液を微生物によって分解処理する技術は、塗装廃液に有効な微生物を塗装ブース内の処理水槽内の固定担体に固定して処理する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この場合、固定したセラミック担体に数種類の好気性微生物を増殖させ、塗装ブース内において、塗装廃液を数種類の好気性微生物によって分解する方法で、この好気性微生物を増殖させる為に、栄養源の投入を行うものである。
【0004】
また、特に塗装ブースからの排気ダクトの内壁に付着する塗装カスを除去して空気流の乱れを防止することと塗装ブースの内壁に付着する塗装カスを綺麗に洗浄するために、塗装ブース内の処理水槽内の塗装廃液を、濾過手段を設けて濾過した廃液を排気ダクト内に散布するものである。
【0005】
また、塗装ブース内に上水または水道水を処理水槽内に供給する装置である。
【特許文献1】特開2000−140872号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の塗装廃液の処理方法において、微生物を担持させる担体がセラミック等の固定担体のため、例えば多孔質のセラミックを使用した場合、そのセラミック担体の表面には最初は好気性微生物が担持するが、その好気性微生物が死滅した場合、その表面部分は、洗浄しないと空気が通らない部分、すなわち嫌気状態となり、死滅した好気性微生物の細胞膜とセラミック担体の間には嫌気性微生物が増殖し塗装廃液を効率よく処理できないという問題があった。
【0007】
また、上記従来の塗装廃液の処理方法において、好気性微生物を高密度の微生物群を増殖させる為に栄養源を投入することから、数種類の好気性微生物が処理水槽内に増殖し、この処理水槽内の塗装廃液を、濾過手段を設けて濾過した廃液を排気ダクト内に散布した場合には、ダクトの内壁部分にはぬめりが発生する。いわば好気性微生物が増殖過剰となり、排気ダクトの内壁に好気性微生物が付着する状態を作り出し、空気流の乱れの要因にもなりかねない。
【0008】
また、塗装ブース内に上水または水道水を処理水槽内に供給可能になっており、塗装廃液が濃縮されるのを防ぐため、上水または水道水を処理水槽内に供給し、上水または水道水のコストも嵩む(再度利用できるような設備になっていない)という課題があった。
【0009】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、塗装廃液を効率よく処理するものであり、生物処理槽の能力を充分発揮させ、好気性微生物が分解処理した塗装廃液の上澄み液を、再度、廃液処理水槽に供給し水のリサイクルが可能な塗装廃液の処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本願第1の発明の塗装廃液の処理方法は、湿式の塗装ブース内において、前記塗装ブース内に具備された廃液処理水槽を設け、前記塗装ブース内で捕集した塗料廃液及び塗料ミストを前記廃液処理水槽内に流入させた後、水中ポンプを用いて前記廃液処理水槽の貯留廃液を汲みあげ前記塗装ブースの近傍に設けた生物処理槽へ流入させ、前記生物処理槽の微生物によって、流入させた貯留廃液の分解を促進するように、室内の空気または酸素をブロワーで取込み、前記生物処理槽内に散気することを特徴としたものである。
【0011】
これにより、塗装廃液は塗装ブース内の廃液処理水槽内に流入させた後、前記塗装ブース近傍に設置された生物処理槽に送り込まれ、前記生物処理槽内で微生物により分解処理される。
【0012】
また、本願第2の発明の塗装廃液の処理方法は、生物処理槽に、塗物の乾燥炉からの排ガスを一部分岐させて取込み、生物処理槽の水温を制御することを特徴としたものである。
【0013】
これにより、生物処理槽の水温を20℃〜38℃に調整することができ、微生物の活性化を促進する温度を維持できるとともに、乾燥炉からの排ガスのもつ熱エネルギーを取込むことにより、サーマルリサイクルができ、省エネルギー化が図れる。
【0014】
なお、排ガスの取込みに関しては、熱交換器を設けて排ガスの熱エネルギーだけを取込むこともできる。
【0015】
また、本願第3の発明の塗装廃液の処理方法は、微生物が、バチルス種及びシュウドモナス種を含む通性嫌気性微生物群及び好気性微生物群で構成されていることを特徴としたものである。
【0016】
これにより、好気性微生物群であるシュウドモナス種の微生物コロニーが死滅しても、通性嫌気性微生物群であるバチルス種によって、塗装廃液を分解処理できるとともに、死滅した好気性微生物群のコロニーが有機性であることから、生存する好気性微生物群及び通性嫌気性微生物群の栄養源となる。また、塗装廃液から発生する臭いについても、分解処理できる。さらに塗装廃液のpH値が7〜10の場合には、主にバチルス種によって分解促進され、pH値が4〜7の場合には主にシュウドモナス種によって分解促進される。
【0017】
また、本願第4の発明の塗装廃液の処理方法は、生物処理槽の前記微生物の担体が親水性のスポンジであることを特徴としたものである。
【0018】
これにより、生物処理槽の好気性微生物群であるシュウドモナス種及び通性嫌気性微生物群であるバチルス種を親水性のアクリル製のスポンジ担体に担持し、散気管からの曝気により、生物処理槽内を揺動し、塗装廃液との接触により分解を促進することができる。
【0019】
また、スポンジ担体は親水性のアクリル担体以外でもよく、ポリエステル製においても好気性微生物群であるシュウドモナス種及び通性嫌気性微生物群であるバチルス種を担持し、塗装廃液を分解する効果は同じである。
【0020】
さらに、スポンジ担体とスポンジ担体が散気管からの曝気により、擦れることから、スポンジ担体に付着している死滅した微生物を剥ぎ取れ、逆洗浄する必要性がない。
【0021】
また、本願第5の発明の塗装廃液の処理方法は、生物処理槽の前記廃液を前記微生物が分解処理した処理水の上澄み液を沈殿槽に流入させ、前記沈殿槽で固液分離された液体の上澄み液を、前記廃液処理水槽に返送することを特徴としたものである。
【0022】
これにより、廃液処理水槽の水を新たに供給することを抑制でき、水のリサイクルが可能である。
【0023】
また、本願第6の発明の塗装廃液の処理方法は、生物処理槽の前記塗装廃液のBOD負荷が、前記微生物の活性するエネルギー量よりも小さくなるように、前記生物処理槽内に散気する空気または酸素の供給を制御し、前記生物処理槽内の溶存酸素濃度を上昇させることを特徴としたものである。
【0024】
これにより、微生物の活性化、つまり微生物の活性エネルギーを常に使用することができ、曝気することにより、微生物の運動(分解する働き)を常に持たすことにより、塗装廃液のBOD負荷を減少させることができ、常に微生物が分解するために運動していることから微生物の増殖を最低限に抑えることができる。
【0025】
いわば、微生物の個体数のコントロールができるため、過剰な栄養源の投入をしなくてもよくなるため、生物処理槽を効率よく機能させることができる。
【0026】
このコントロールは、塗装廃液のBODを測定することと、微生物のエネルギー量(ATP)をATP計で測定でき、常に塗装廃液のBOD負荷が、微生物の活性するエネルギー量よりも小さくなるようにすることにより、活性汚泥(微生物)での余剰汚泥(微生物の必要以上の増加)の抑制ができる。
【発明の効果】
【0027】
本願第1の発明の塗装廃液の処理方法によれば、塗装ブース内の塗装廃液を廃液処理水槽内に流入させた後、塗装ブース近傍に設置された生物処理槽内の微生物により塗装廃液を分解処理することができる。
【0028】
また、本願第2の発明の塗装廃液の処理方法によれば、生物処理槽の水温を20℃〜38℃に調整することができ、微生物の活性化を促進する温度を維持できるとともに、乾燥炉からの排ガスのもつ熱エネルギーを取込むことにより、サーマルリサイクルができ、省エネルギー化が図れる。
【0029】
また、本願第3の発明の塗装廃液の処理方法によれば、好気性微生物群であるシュウドモナス種の微生物コロニーが死滅、腐敗しても、通性嫌気性微生物群であるバチルス種によって、腐敗臭を脱臭することができる。また、通性嫌気性微生物群であるバチルス種によって、塗装廃液を分解処理できるとともに、死滅した好気性微生物群のコロニーが有機性であることから、生存する好気性微生物群及び通性嫌気性微生物群の栄養源となる。また、塗装廃液から発生する臭いについても、分解処理できる。さらに塗装廃液のpH値が7〜10の場合には、主にバチルス種によって分解促進され、pH値が4〜7の場合には主にシュウドモナス種によって分解促進される。
【0030】
また、本願第4の発明の塗装廃液の処理方法によれば、生物処理槽の好気性微生物群であるシュウドモナス種及び通性嫌気性微生物群であるバチルス種が親水性のアクリル製のスポンジ担体に担持し、散気管からの曝気により、生物処理槽内を揺動し、塗装廃液との接触により分解を促進することができる。
【0031】
さらに、スポンジ担体とスポンジ担体が散気管からの曝気により、擦れることから、スポンジ担体に付着している死滅した微生物を剥ぎ取れ、逆洗浄する必要性がない。
【0032】
また、本願第5の発明の塗装廃液の処理方法によれば、廃液処理水槽の水を新たに供給することを抑制でき、水のリサイクルが可能である。これにより例えば水道水を供給した場合と比べ、槽内にシリカ成分が付着することを抑制でき、水道水に含有している塩素により微生物が死滅することも防止できる。
【0033】
また、本願第6の発明の塗装廃液の処理方法によれば、微生物の活性化、つまり微生物の活性エネルギーを常に使用することができ、曝気することにより、微生物の運動(分解する働き)を常に持たすことにより、塗装廃液のBOD負荷を減少させることができ、常に微生物が分解するために運動していることから微生物の増殖を最低限に抑えることができる。
【0034】
いわば、微生物の個体数のコントロールができるため、過剰な栄養源の投入をしなくてもよくなるため、生物処理槽を効率よく機能させることができる。
【0035】
このコントロールは、塗装廃液のBODを測定することと、微生物のエネルギー量(ATP)をATP計で測定でき、常に塗装廃液のBOD負荷が、微生物の活性するエネルギー量よりも小さくなるようにすることにより、活性汚泥(微生物)での余剰汚泥(微生物の必要以上の増加)の抑制ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
発明が解決しようとする課題のところで説明したように、本発明のポイントは、塗装廃液を生物処理槽において、いかに微生物を働かせ、過剰な増殖を防止しながら、塗装廃液を微生物により分解させるところにあり、塗装廃液のBOD負荷に対して微生物の活性エネルギー量が常に大きくなるよう、生物処理槽において散気管より曝気を行い、溶存酸素濃度をあげて、塗装廃液を微生物が常に分解し続けることにある。
【0037】
そのためには、微生物が活性する環境である生物処理槽の水温を20℃〜38℃に調整し、散気管からの曝気も純酸素を用いて行えば溶存酸素濃度も空気で曝気するより酸素が溶込む濃度が高くなり、微生物の活性化を促進することができる。
【0038】
散気管については、とくに限定するものでなく、市販される様々なものを利用できる。
【0039】
また、微生物を担持させる担体についての形状についても、特に限定するものではなく、塗装廃液との接触効率が良いものであれば、多角形状、球状など市販のものを使用することができる。但し、塗装廃液のBOD負荷が著しく大きい場合は、生物処理槽を複数設けて、最初の生物処理槽の担体は繊維素材の放射線状の糸で構成されたエヌ・イーティ株式会社製の「揺動床バイオフリンジ(登録商標)」を使用することが最適である。
【0040】
また、塗装廃液のBOD負荷と微生物の活性(エネルギー)をATP計で測定し、微生物のエネルギー量が大きくなった場合は、生物処理槽に超音波やビーズミルなどの微生物の細胞膜を破砕する装置を具備してもよい。
【0041】
また、生物処理槽についても、高さ方向を利用した多段式の生物処理槽としてもよい。
【実施例】
【0042】
以下本発明の実施例について図面を用いて説明する。
【0043】
図1は本発明の一実施例における塗装廃液処理の構成図である。図2は本発明の廃液処理水槽の構成図である。図3は本発明の一実施例における塗装廃液処理のフロー図である。塗装ブース1の給排気の方法は、プッシュ・プル方式やプル方式があるが、どちらの方式においても湿式塗装を用いる場合は、塗装ブース1の下部に塗装廃液を貯留する廃液処理水槽2が備わっている。
【0044】
自動塗装装置または人がスプレーガン3等でワーク4に載った被塗物5に塗装する際に、塗装ブース1内の換気などは法令で定められており、通気抵抗の低い排気ダクト6を用い、塗装ミストや、余分となった塗装廃液は、廃液処理水槽2に貯留されるとともに、塗装ブース1内の排気ガスが廃液処理水槽2と接触し、排気ダクト6を通って、排気ダクト6に連通した送風機7(リミットロード)により塗装ブース1から排出される。排気ガスと廃液処理水槽2の水とが接触するが、水に溶けないVOCガス成分(トルエン、キシレン等の揮発性有機化合物)は、排気ダクト6を通過し、濃縮装置8を経て、蓄熱式排ガス処理装置9により燃焼させ、排ガスの無害化処理を行い、大気中に放出させる。
【0045】
一方、廃液処理水槽2には、水に浮遊または溶解した有機性及び無機性成分(油脂成分、溶剤、乳化剤、塗料樹脂、顔料、染料等)が流れ込み、これらの廃液は廃液処理水槽2に設けられた仕切板10を通って、水中ポンプ11によって汲みあげられ、生物処理槽12内の上部に設けられた複数のノズル13から散布される。この散布される廃液は図2に示すように、廃液処理水槽2に複数の仕切板10により有機性固形分及び無機性固形分は、廃液処理水槽2内に留まり、水に浮遊する油分及び水に溶けこんだ溶剤、乳化剤、塗料樹脂、顔料、染料等が生物処理槽12内の上部に設けられた複数のノズル13から散布される。生物処理槽12は下部に曝気を行う散気管14が単数または複数設置されており、廃液処理水槽2からの廃液を微生物による好気性処理が行われるように、スポンジ担体15が充填されている。
【0046】
また、廃液処理水槽2からの廃液のうち、有機性成分は微生物の栄養源となり、スポンジ担体15に担持している微生物を活性化させることができる。
【0047】
このスポンジ担体15の充填量は生物処理槽12の容積に対して50%から70%が効率よく廃液を浄化処理できる。スポンジ担体15が生物処理槽12の容積に対して50%より少ない場合は、廃液のBOD成分とスポンジ担体15に担持されている微生物との接触回数が少なく、浄化処理に時間がかかる。また、スポンジ担体15が生物処理槽12の容積に対して70%より多い場合はスポンジ担体15同士の接触回数が多くなり、スポンジ担体15の接触による磨耗やスポンジ担体15に担持している微生物も剥ぎ取られ、浄化効率が悪くなる。
【0048】
この生物処理槽12の曝気は、図1に示すように室内の空気を利用してブロワー16で散気管14に供給する方法のほか、図示してはいないが、空気の代わりに酸素を供給してもよい。 また、図3に示すように乾燥炉17からの排気ガスと、空気または酸素と混合させて、その混合空気18の温度を20℃〜38℃に温度調整して散気管14に供給する方法が、生物処理槽12内の水温の制御と生物処理槽12内のDO(溶存酸素)の値をコントロールするには都合が良い。
【0049】
生物処理槽12での曝気強度は5m3/m3・hから8m3/m3・hが効率がよく、5m3/m3・hより低い場合は、溶存酸素が2mg/l以上を保持できなく、8m3/m3・h以上の場合は、溶存酸素は8m3/m3・hと比較して変化がないことから、ブロワー16のエネルギーロスとなる。従って、生物処理槽12の水温を20℃〜38℃に制御装置19で制御するに当たり、その時の曝気強度は、DOが2mg/l〜3mg/lとなるようにその曝気の量を決定されるものである。
【0050】
これにより、生物処理槽12内に散布された油脂成分、溶剤、乳化剤、塗料樹脂、顔料、染料等を、好気性微生物群であるシュウドモナス種及び通性嫌気性微生物群であるバチルス種が分解し続けるため、廃液のBOD負荷が小さくなり、廃液を浄化できる。
【0051】
また、生物処理槽12から沈殿槽20に供給された浄化後の廃液の上澄み液は、廃液処理水槽2に戻すことで水のリサイクルが可能である。
【0052】
尚、市水を廃液処理水槽2供給するのではなく、浄化後の廃液を廃液処理水槽2に戻すことで、シリカの発生の抑制や、塩素による微生物の死滅を抑制することもできる。
【0053】
また、図4に示すように乾燥炉17からの排気ガスと室内の空気を熱交換器21で熱交換して、空気または酸素と混合させて、その混合空気の温度を20℃〜38℃に温度調整して散気管14に供給する方法が、生物処理槽12内の水温の制御と生物処理槽内のDO(溶存酸素)の値をコントロールするには最良の方法といえる。
【0054】
これにより、生物処理槽12内において微生物の活性適正環境を創出し、微生物の運動エネルギーを最大限に発揮させることができる為、廃液のBOD負荷が小さくなる。
【0055】
また、廃液のBOD負荷の値と、微生物のエネルギー(ATP)の値を測定し、常に微生物のエネルギー(ATP)が大きくなるよう、散気管14から曝気して、生物処理槽12のDOが2mg/l〜3mg/lとなるようにすることで、微生物の増殖(余剰汚泥の発生)が防止できる。また、微生物のエネルギー(ATP)は、ATP計で測定できる。
【0056】
従って、微生物の活性(働き)によって塗装廃液を分解処理が促進されるが、微生物の増殖は抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上説明してきたように、本発明の塗装廃液の処理方法は、例えば、有機物含有排水の生物処理システムにおいて、生物処理槽の処理能力に余裕がなく、余剰汚泥の削減が必要な場合の生物処理槽に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施例における塗装廃液処理の構成図
【図2】本発明の廃液処理水槽の構成図
【図3】本発明の一実施例における塗装廃液処理のフロー図
【図4】本発明のその他の塗装廃液処理のフロー図
【符号の説明】
【0059】
1 塗装ブース
2 廃液処理水槽
3 スプレーガン
4 ワーク
5 被塗物
6 排気ダクト
7 送風機
8 濃縮装置
9 蓄熱式排ガス処理装置
10 仕切板
11 水中ポンプ
12 生物処理槽
13 ノズル
14 散気管
15 スポンジ担体
16 ブロワー
17 乾燥炉
18 混合空気
19 制御装置
20 沈殿槽
21 熱交換器
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装ブース内の塗装廃液を微生物で分解するようにした処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、塗装廃液を微生物によって分解処理する技術は、塗装廃液に有効な微生物を塗装ブース内の処理水槽内の固定担体に固定して処理する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この場合、固定したセラミック担体に数種類の好気性微生物を増殖させ、塗装ブース内において、塗装廃液を数種類の好気性微生物によって分解する方法で、この好気性微生物を増殖させる為に、栄養源の投入を行うものである。
【0004】
また、特に塗装ブースからの排気ダクトの内壁に付着する塗装カスを除去して空気流の乱れを防止することと塗装ブースの内壁に付着する塗装カスを綺麗に洗浄するために、塗装ブース内の処理水槽内の塗装廃液を、濾過手段を設けて濾過した廃液を排気ダクト内に散布するものである。
【0005】
また、塗装ブース内に上水または水道水を処理水槽内に供給する装置である。
【特許文献1】特開2000−140872号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の塗装廃液の処理方法において、微生物を担持させる担体がセラミック等の固定担体のため、例えば多孔質のセラミックを使用した場合、そのセラミック担体の表面には最初は好気性微生物が担持するが、その好気性微生物が死滅した場合、その表面部分は、洗浄しないと空気が通らない部分、すなわち嫌気状態となり、死滅した好気性微生物の細胞膜とセラミック担体の間には嫌気性微生物が増殖し塗装廃液を効率よく処理できないという問題があった。
【0007】
また、上記従来の塗装廃液の処理方法において、好気性微生物を高密度の微生物群を増殖させる為に栄養源を投入することから、数種類の好気性微生物が処理水槽内に増殖し、この処理水槽内の塗装廃液を、濾過手段を設けて濾過した廃液を排気ダクト内に散布した場合には、ダクトの内壁部分にはぬめりが発生する。いわば好気性微生物が増殖過剰となり、排気ダクトの内壁に好気性微生物が付着する状態を作り出し、空気流の乱れの要因にもなりかねない。
【0008】
また、塗装ブース内に上水または水道水を処理水槽内に供給可能になっており、塗装廃液が濃縮されるのを防ぐため、上水または水道水を処理水槽内に供給し、上水または水道水のコストも嵩む(再度利用できるような設備になっていない)という課題があった。
【0009】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、塗装廃液を効率よく処理するものであり、生物処理槽の能力を充分発揮させ、好気性微生物が分解処理した塗装廃液の上澄み液を、再度、廃液処理水槽に供給し水のリサイクルが可能な塗装廃液の処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本願第1の発明の塗装廃液の処理方法は、湿式の塗装ブース内において、前記塗装ブース内に具備された廃液処理水槽を設け、前記塗装ブース内で捕集した塗料廃液及び塗料ミストを前記廃液処理水槽内に流入させた後、水中ポンプを用いて前記廃液処理水槽の貯留廃液を汲みあげ前記塗装ブースの近傍に設けた生物処理槽へ流入させ、前記生物処理槽の微生物によって、流入させた貯留廃液の分解を促進するように、室内の空気または酸素をブロワーで取込み、前記生物処理槽内に散気することを特徴としたものである。
【0011】
これにより、塗装廃液は塗装ブース内の廃液処理水槽内に流入させた後、前記塗装ブース近傍に設置された生物処理槽に送り込まれ、前記生物処理槽内で微生物により分解処理される。
【0012】
また、本願第2の発明の塗装廃液の処理方法は、生物処理槽に、塗物の乾燥炉からの排ガスを一部分岐させて取込み、生物処理槽の水温を制御することを特徴としたものである。
【0013】
これにより、生物処理槽の水温を20℃〜38℃に調整することができ、微生物の活性化を促進する温度を維持できるとともに、乾燥炉からの排ガスのもつ熱エネルギーを取込むことにより、サーマルリサイクルができ、省エネルギー化が図れる。
【0014】
なお、排ガスの取込みに関しては、熱交換器を設けて排ガスの熱エネルギーだけを取込むこともできる。
【0015】
また、本願第3の発明の塗装廃液の処理方法は、微生物が、バチルス種及びシュウドモナス種を含む通性嫌気性微生物群及び好気性微生物群で構成されていることを特徴としたものである。
【0016】
これにより、好気性微生物群であるシュウドモナス種の微生物コロニーが死滅しても、通性嫌気性微生物群であるバチルス種によって、塗装廃液を分解処理できるとともに、死滅した好気性微生物群のコロニーが有機性であることから、生存する好気性微生物群及び通性嫌気性微生物群の栄養源となる。また、塗装廃液から発生する臭いについても、分解処理できる。さらに塗装廃液のpH値が7〜10の場合には、主にバチルス種によって分解促進され、pH値が4〜7の場合には主にシュウドモナス種によって分解促進される。
【0017】
また、本願第4の発明の塗装廃液の処理方法は、生物処理槽の前記微生物の担体が親水性のスポンジであることを特徴としたものである。
【0018】
これにより、生物処理槽の好気性微生物群であるシュウドモナス種及び通性嫌気性微生物群であるバチルス種を親水性のアクリル製のスポンジ担体に担持し、散気管からの曝気により、生物処理槽内を揺動し、塗装廃液との接触により分解を促進することができる。
【0019】
また、スポンジ担体は親水性のアクリル担体以外でもよく、ポリエステル製においても好気性微生物群であるシュウドモナス種及び通性嫌気性微生物群であるバチルス種を担持し、塗装廃液を分解する効果は同じである。
【0020】
さらに、スポンジ担体とスポンジ担体が散気管からの曝気により、擦れることから、スポンジ担体に付着している死滅した微生物を剥ぎ取れ、逆洗浄する必要性がない。
【0021】
また、本願第5の発明の塗装廃液の処理方法は、生物処理槽の前記廃液を前記微生物が分解処理した処理水の上澄み液を沈殿槽に流入させ、前記沈殿槽で固液分離された液体の上澄み液を、前記廃液処理水槽に返送することを特徴としたものである。
【0022】
これにより、廃液処理水槽の水を新たに供給することを抑制でき、水のリサイクルが可能である。
【0023】
また、本願第6の発明の塗装廃液の処理方法は、生物処理槽の前記塗装廃液のBOD負荷が、前記微生物の活性するエネルギー量よりも小さくなるように、前記生物処理槽内に散気する空気または酸素の供給を制御し、前記生物処理槽内の溶存酸素濃度を上昇させることを特徴としたものである。
【0024】
これにより、微生物の活性化、つまり微生物の活性エネルギーを常に使用することができ、曝気することにより、微生物の運動(分解する働き)を常に持たすことにより、塗装廃液のBOD負荷を減少させることができ、常に微生物が分解するために運動していることから微生物の増殖を最低限に抑えることができる。
【0025】
いわば、微生物の個体数のコントロールができるため、過剰な栄養源の投入をしなくてもよくなるため、生物処理槽を効率よく機能させることができる。
【0026】
このコントロールは、塗装廃液のBODを測定することと、微生物のエネルギー量(ATP)をATP計で測定でき、常に塗装廃液のBOD負荷が、微生物の活性するエネルギー量よりも小さくなるようにすることにより、活性汚泥(微生物)での余剰汚泥(微生物の必要以上の増加)の抑制ができる。
【発明の効果】
【0027】
本願第1の発明の塗装廃液の処理方法によれば、塗装ブース内の塗装廃液を廃液処理水槽内に流入させた後、塗装ブース近傍に設置された生物処理槽内の微生物により塗装廃液を分解処理することができる。
【0028】
また、本願第2の発明の塗装廃液の処理方法によれば、生物処理槽の水温を20℃〜38℃に調整することができ、微生物の活性化を促進する温度を維持できるとともに、乾燥炉からの排ガスのもつ熱エネルギーを取込むことにより、サーマルリサイクルができ、省エネルギー化が図れる。
【0029】
また、本願第3の発明の塗装廃液の処理方法によれば、好気性微生物群であるシュウドモナス種の微生物コロニーが死滅、腐敗しても、通性嫌気性微生物群であるバチルス種によって、腐敗臭を脱臭することができる。また、通性嫌気性微生物群であるバチルス種によって、塗装廃液を分解処理できるとともに、死滅した好気性微生物群のコロニーが有機性であることから、生存する好気性微生物群及び通性嫌気性微生物群の栄養源となる。また、塗装廃液から発生する臭いについても、分解処理できる。さらに塗装廃液のpH値が7〜10の場合には、主にバチルス種によって分解促進され、pH値が4〜7の場合には主にシュウドモナス種によって分解促進される。
【0030】
また、本願第4の発明の塗装廃液の処理方法によれば、生物処理槽の好気性微生物群であるシュウドモナス種及び通性嫌気性微生物群であるバチルス種が親水性のアクリル製のスポンジ担体に担持し、散気管からの曝気により、生物処理槽内を揺動し、塗装廃液との接触により分解を促進することができる。
【0031】
さらに、スポンジ担体とスポンジ担体が散気管からの曝気により、擦れることから、スポンジ担体に付着している死滅した微生物を剥ぎ取れ、逆洗浄する必要性がない。
【0032】
また、本願第5の発明の塗装廃液の処理方法によれば、廃液処理水槽の水を新たに供給することを抑制でき、水のリサイクルが可能である。これにより例えば水道水を供給した場合と比べ、槽内にシリカ成分が付着することを抑制でき、水道水に含有している塩素により微生物が死滅することも防止できる。
【0033】
また、本願第6の発明の塗装廃液の処理方法によれば、微生物の活性化、つまり微生物の活性エネルギーを常に使用することができ、曝気することにより、微生物の運動(分解する働き)を常に持たすことにより、塗装廃液のBOD負荷を減少させることができ、常に微生物が分解するために運動していることから微生物の増殖を最低限に抑えることができる。
【0034】
いわば、微生物の個体数のコントロールができるため、過剰な栄養源の投入をしなくてもよくなるため、生物処理槽を効率よく機能させることができる。
【0035】
このコントロールは、塗装廃液のBODを測定することと、微生物のエネルギー量(ATP)をATP計で測定でき、常に塗装廃液のBOD負荷が、微生物の活性するエネルギー量よりも小さくなるようにすることにより、活性汚泥(微生物)での余剰汚泥(微生物の必要以上の増加)の抑制ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
発明が解決しようとする課題のところで説明したように、本発明のポイントは、塗装廃液を生物処理槽において、いかに微生物を働かせ、過剰な増殖を防止しながら、塗装廃液を微生物により分解させるところにあり、塗装廃液のBOD負荷に対して微生物の活性エネルギー量が常に大きくなるよう、生物処理槽において散気管より曝気を行い、溶存酸素濃度をあげて、塗装廃液を微生物が常に分解し続けることにある。
【0037】
そのためには、微生物が活性する環境である生物処理槽の水温を20℃〜38℃に調整し、散気管からの曝気も純酸素を用いて行えば溶存酸素濃度も空気で曝気するより酸素が溶込む濃度が高くなり、微生物の活性化を促進することができる。
【0038】
散気管については、とくに限定するものでなく、市販される様々なものを利用できる。
【0039】
また、微生物を担持させる担体についての形状についても、特に限定するものではなく、塗装廃液との接触効率が良いものであれば、多角形状、球状など市販のものを使用することができる。但し、塗装廃液のBOD負荷が著しく大きい場合は、生物処理槽を複数設けて、最初の生物処理槽の担体は繊維素材の放射線状の糸で構成されたエヌ・イーティ株式会社製の「揺動床バイオフリンジ(登録商標)」を使用することが最適である。
【0040】
また、塗装廃液のBOD負荷と微生物の活性(エネルギー)をATP計で測定し、微生物のエネルギー量が大きくなった場合は、生物処理槽に超音波やビーズミルなどの微生物の細胞膜を破砕する装置を具備してもよい。
【0041】
また、生物処理槽についても、高さ方向を利用した多段式の生物処理槽としてもよい。
【実施例】
【0042】
以下本発明の実施例について図面を用いて説明する。
【0043】
図1は本発明の一実施例における塗装廃液処理の構成図である。図2は本発明の廃液処理水槽の構成図である。図3は本発明の一実施例における塗装廃液処理のフロー図である。塗装ブース1の給排気の方法は、プッシュ・プル方式やプル方式があるが、どちらの方式においても湿式塗装を用いる場合は、塗装ブース1の下部に塗装廃液を貯留する廃液処理水槽2が備わっている。
【0044】
自動塗装装置または人がスプレーガン3等でワーク4に載った被塗物5に塗装する際に、塗装ブース1内の換気などは法令で定められており、通気抵抗の低い排気ダクト6を用い、塗装ミストや、余分となった塗装廃液は、廃液処理水槽2に貯留されるとともに、塗装ブース1内の排気ガスが廃液処理水槽2と接触し、排気ダクト6を通って、排気ダクト6に連通した送風機7(リミットロード)により塗装ブース1から排出される。排気ガスと廃液処理水槽2の水とが接触するが、水に溶けないVOCガス成分(トルエン、キシレン等の揮発性有機化合物)は、排気ダクト6を通過し、濃縮装置8を経て、蓄熱式排ガス処理装置9により燃焼させ、排ガスの無害化処理を行い、大気中に放出させる。
【0045】
一方、廃液処理水槽2には、水に浮遊または溶解した有機性及び無機性成分(油脂成分、溶剤、乳化剤、塗料樹脂、顔料、染料等)が流れ込み、これらの廃液は廃液処理水槽2に設けられた仕切板10を通って、水中ポンプ11によって汲みあげられ、生物処理槽12内の上部に設けられた複数のノズル13から散布される。この散布される廃液は図2に示すように、廃液処理水槽2に複数の仕切板10により有機性固形分及び無機性固形分は、廃液処理水槽2内に留まり、水に浮遊する油分及び水に溶けこんだ溶剤、乳化剤、塗料樹脂、顔料、染料等が生物処理槽12内の上部に設けられた複数のノズル13から散布される。生物処理槽12は下部に曝気を行う散気管14が単数または複数設置されており、廃液処理水槽2からの廃液を微生物による好気性処理が行われるように、スポンジ担体15が充填されている。
【0046】
また、廃液処理水槽2からの廃液のうち、有機性成分は微生物の栄養源となり、スポンジ担体15に担持している微生物を活性化させることができる。
【0047】
このスポンジ担体15の充填量は生物処理槽12の容積に対して50%から70%が効率よく廃液を浄化処理できる。スポンジ担体15が生物処理槽12の容積に対して50%より少ない場合は、廃液のBOD成分とスポンジ担体15に担持されている微生物との接触回数が少なく、浄化処理に時間がかかる。また、スポンジ担体15が生物処理槽12の容積に対して70%より多い場合はスポンジ担体15同士の接触回数が多くなり、スポンジ担体15の接触による磨耗やスポンジ担体15に担持している微生物も剥ぎ取られ、浄化効率が悪くなる。
【0048】
この生物処理槽12の曝気は、図1に示すように室内の空気を利用してブロワー16で散気管14に供給する方法のほか、図示してはいないが、空気の代わりに酸素を供給してもよい。 また、図3に示すように乾燥炉17からの排気ガスと、空気または酸素と混合させて、その混合空気18の温度を20℃〜38℃に温度調整して散気管14に供給する方法が、生物処理槽12内の水温の制御と生物処理槽12内のDO(溶存酸素)の値をコントロールするには都合が良い。
【0049】
生物処理槽12での曝気強度は5m3/m3・hから8m3/m3・hが効率がよく、5m3/m3・hより低い場合は、溶存酸素が2mg/l以上を保持できなく、8m3/m3・h以上の場合は、溶存酸素は8m3/m3・hと比較して変化がないことから、ブロワー16のエネルギーロスとなる。従って、生物処理槽12の水温を20℃〜38℃に制御装置19で制御するに当たり、その時の曝気強度は、DOが2mg/l〜3mg/lとなるようにその曝気の量を決定されるものである。
【0050】
これにより、生物処理槽12内に散布された油脂成分、溶剤、乳化剤、塗料樹脂、顔料、染料等を、好気性微生物群であるシュウドモナス種及び通性嫌気性微生物群であるバチルス種が分解し続けるため、廃液のBOD負荷が小さくなり、廃液を浄化できる。
【0051】
また、生物処理槽12から沈殿槽20に供給された浄化後の廃液の上澄み液は、廃液処理水槽2に戻すことで水のリサイクルが可能である。
【0052】
尚、市水を廃液処理水槽2供給するのではなく、浄化後の廃液を廃液処理水槽2に戻すことで、シリカの発生の抑制や、塩素による微生物の死滅を抑制することもできる。
【0053】
また、図4に示すように乾燥炉17からの排気ガスと室内の空気を熱交換器21で熱交換して、空気または酸素と混合させて、その混合空気の温度を20℃〜38℃に温度調整して散気管14に供給する方法が、生物処理槽12内の水温の制御と生物処理槽内のDO(溶存酸素)の値をコントロールするには最良の方法といえる。
【0054】
これにより、生物処理槽12内において微生物の活性適正環境を創出し、微生物の運動エネルギーを最大限に発揮させることができる為、廃液のBOD負荷が小さくなる。
【0055】
また、廃液のBOD負荷の値と、微生物のエネルギー(ATP)の値を測定し、常に微生物のエネルギー(ATP)が大きくなるよう、散気管14から曝気して、生物処理槽12のDOが2mg/l〜3mg/lとなるようにすることで、微生物の増殖(余剰汚泥の発生)が防止できる。また、微生物のエネルギー(ATP)は、ATP計で測定できる。
【0056】
従って、微生物の活性(働き)によって塗装廃液を分解処理が促進されるが、微生物の増殖は抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上説明してきたように、本発明の塗装廃液の処理方法は、例えば、有機物含有排水の生物処理システムにおいて、生物処理槽の処理能力に余裕がなく、余剰汚泥の削減が必要な場合の生物処理槽に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施例における塗装廃液処理の構成図
【図2】本発明の廃液処理水槽の構成図
【図3】本発明の一実施例における塗装廃液処理のフロー図
【図4】本発明のその他の塗装廃液処理のフロー図
【符号の説明】
【0059】
1 塗装ブース
2 廃液処理水槽
3 スプレーガン
4 ワーク
5 被塗物
6 排気ダクト
7 送風機
8 濃縮装置
9 蓄熱式排ガス処理装置
10 仕切板
11 水中ポンプ
12 生物処理槽
13 ノズル
14 散気管
15 スポンジ担体
16 ブロワー
17 乾燥炉
18 混合空気
19 制御装置
20 沈殿槽
21 熱交換器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿式の塗装ブース内において、前記塗装ブース内に具備された廃液処理水槽を設け、前記塗装ブース内で捕集した塗料廃液及び塗料ミストを前記廃液処理水槽内に流入させた後、水中ポンプを用いて前記廃液処理水槽の貯留廃液を汲みあげ前記塗装ブースの近傍に設けた生物処理槽へ流入させ、前記生物処理槽の微生物によって、流入させた貯留廃液の分解を促進するように、室内の空気または酸素をブロワーで取込み、前記生物処理槽内に散気することを特徴とした塗装廃液の処理方法。
【請求項2】
前記生物処理槽に、乾燥炉からの排ガスを一部分岐させて取込み、生物処理槽の水温を制御することを特徴とした請求項1記載の塗装廃液の処理方法。
【請求項3】
前記微生物が、バチルス種及びシュウドモナス種を含む通性嫌気性微生物群及び好気性微生物群で構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項2に記載の塗装廃液の処理方法。
【請求項4】
前記生物処理槽の前記微生物の担体が親水性のスポンジであることを特徴とする請求項1記載の塗装廃液の処理方法。
【請求項5】
前記生物処理槽の前記廃液を前記微生物が分解処理した処理水の上澄み液を沈殿槽に流入させ、前記沈殿槽で固液分離された液体の上澄み液を、前記廃液処理水槽に返送することを特徴とした請求項1記載の塗装廃液の処理方法。
【請求項6】
前記生物処理槽の前記塗装廃液のBOD負荷が、前記微生物の活性するエネルギー量よりも小さくなるように、前記生物処理槽内に散気する空気または酸素の供給を制御し、前記生物処理槽内の溶存酸素濃度を上昇させることを特徴とした請求項1記載の塗装廃液の処理方法。
【請求項1】
湿式の塗装ブース内において、前記塗装ブース内に具備された廃液処理水槽を設け、前記塗装ブース内で捕集した塗料廃液及び塗料ミストを前記廃液処理水槽内に流入させた後、水中ポンプを用いて前記廃液処理水槽の貯留廃液を汲みあげ前記塗装ブースの近傍に設けた生物処理槽へ流入させ、前記生物処理槽の微生物によって、流入させた貯留廃液の分解を促進するように、室内の空気または酸素をブロワーで取込み、前記生物処理槽内に散気することを特徴とした塗装廃液の処理方法。
【請求項2】
前記生物処理槽に、乾燥炉からの排ガスを一部分岐させて取込み、生物処理槽の水温を制御することを特徴とした請求項1記載の塗装廃液の処理方法。
【請求項3】
前記微生物が、バチルス種及びシュウドモナス種を含む通性嫌気性微生物群及び好気性微生物群で構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項2に記載の塗装廃液の処理方法。
【請求項4】
前記生物処理槽の前記微生物の担体が親水性のスポンジであることを特徴とする請求項1記載の塗装廃液の処理方法。
【請求項5】
前記生物処理槽の前記廃液を前記微生物が分解処理した処理水の上澄み液を沈殿槽に流入させ、前記沈殿槽で固液分離された液体の上澄み液を、前記廃液処理水槽に返送することを特徴とした請求項1記載の塗装廃液の処理方法。
【請求項6】
前記生物処理槽の前記塗装廃液のBOD負荷が、前記微生物の活性するエネルギー量よりも小さくなるように、前記生物処理槽内に散気する空気または酸素の供給を制御し、前記生物処理槽内の溶存酸素濃度を上昇させることを特徴とした請求項1記載の塗装廃液の処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図2】
【図3】
【図4】
【公開番号】特開2008−183531(P2008−183531A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−20853(P2007−20853)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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