説明

塗装機

【課題】塗装チャンバー内の減圧状態を一定に維持して、建材を均一に塗装することのできる塗装機を提供する。
【解決手段】塗装チャンバー2内を減圧状態にする減圧手段1により、塗装チャンバー2内に霧状の塗料Tを分散させ、塗装チャンバー2内に置かれた建材5の表面に塗料Tを付着させて塗装する塗装機において、塗装チャンバー2内の圧力Pを検出する圧力検出手段4と、減圧手段1の作動を制御する制御手段3とを備え、圧力検出手段4が、塗装チャンバー2内の圧力Pが第1の基準値P1を超えたことを検出した場合、制御手段3は、減圧手段1の減圧力を増加させる。また、減圧手段1を、塗装チャンバー2内の減圧時に常に作動する常時減圧手段11と、制御手段3からの指示があった場合にのみ作動する臨時減圧手段12とから構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建材を塗装する塗装機に関する。より詳しくは、塗装チャンバー内を減圧状態にして、霧状の塗料を建材に付着させる塗装機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種建材を塗装する場合、ロールコーターやスプレー等の塗装装置を用いるのが一般的であった。
このうち、ロールコーターは、被塗装物である建材の表面にロールを転がすようにして塗装するため、表面に大きな凹凸のある連続した長尺物、例えば住宅用建材の廻縁、幅木、手摺、枠材等を塗装する場合には、凹凸部分に対応することができなかった。
【0003】
そのため、凹凸の大きな建材を塗装する場合には、図3に示すように、スプレーを用いる方法が行われていた。しかし、開放された空間でスプレーガン8から塗料Tが噴射されるために、建材5に付着せず、周囲に飛散してしまう塗料Tが大半であり、無駄が多く、飛散した塗料Tで周囲を汚染しやすかった。また、作業には熟練が必要で、仕上がりがムラになりやすく、また、背面まで一気に塗装できないので建材5を移動しなければならないという欠点もあった。
【0004】
そこで、図4に示すような、一般にバキュームコーターと称される塗装機が使用されるようになった。この塗装機は、塗料タンク100内と、これに接続された塗装チャンバー2内をブロワーBにて脱気して減圧し、塗料Tが霧状となって塗装チャンバー2内に導かれ、塗装チャンバー2内に置かれた建材5の表面に万遍なく付着する事で、建材5の全周に亘って凹凸内部まで均一に塗装することができるというものである。
この塗装機によれば、仕上がりが良好で、建材5に付着しなかった塗料Tも塗料回収装置6を使用して回収可能なので、周囲への塗料Tの飛散が極めて少なく、環境に優しい塗装を行うことができる。また、大量生産が可能で、熟練も必要無く誰でも操作が可能である。
【0005】
ここで、上記塗装機を使用して均一な塗装を行うには、塗装チャンバー2内に霧状の塗料Tが均一に分散していることが重要であるが、そのためには塗装チャンバー2内の減圧状態が一定に維持されていなければならない。
ところが、塗装チャンバー2には、建材5を出し入れするための開口部21が設けられており、この開口部21から外気が入ってしまい、塗装チャンバー2内の減圧状態が乱されてしまうという問題がある。
【0006】
そこで、建材5が塗装チャンバー2内を通過する際に、開口部21に生じる隙間を小さくするために、図5に示すように、建材5の形状に合わせた型枠9を開口部21に取り付けることが行われている。
【0007】
また、図6に示すように、開口部21にゲート22を設けて、建材5が通過するときにはゲート22を開け、通過しないときにはゲート22を閉めるようにした発明が開示されている(特許文献1、特許文献2)。
また、センサを用いて制御する塗装装置として、塗料の供給圧力を圧力センサで検出してモータを制御し、吐出量が安定するまでの立ち上がり時間を短縮するようにした発明(特許文献3)、塗装ブース内の気圧を圧力センサで検出し外気圧と比較して排気ファンを制御し、塗装ブース内を一定の陽圧に保つようにした発明(特許文献4)、塗装ブースの風速を風速センサで検出し吸気ファンを制御する発明(特許文献5)、塗装ブースの風速を風速センサで検出し排気ファンを制御する発明(特許文献6)が開示されている。
【特許文献1】実開平2−40471号公報
【特許文献2】実開平2−40472号公報
【特許文献3】特開2002−361124号公報
【特許文献4】特許第2559146号公報
【特許文献5】実開昭60−21363号公報
【特許文献6】実開昭63−149268号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、図5に示すような型枠9を取り付けたとしても、建材5が通過していない時には開口部21が完全に開かれてしまうので、ここから大量の外気が流入し減圧状態が低下しまう。特に、図7に示すように、(a)建材5が小さい場合と比較して、(b)建材5が大きい場合には、必要となる開口幅Wも広くなり、建材5の通過後に大量の外気が流入してしまう。
また、型枠9は建材5の形状に合わせる必要があるため、建材5のサイズを変更する毎に型枠9も交換する必要があり、手間がかかってしまう。
【0009】
減圧状態の変動を小さくするためには、ブロワー10の能力を増加させる方法もあるが、建材5が小さい場合には不経済である。また、ブロワー10が1つの場合には、点検時や故障時には作業不可能となってしまう。
【0010】
また、特許文献1や特許文献2に記載された発明のように、ゲート22を用いる場合には、ゲート22を頻繁に開閉する必要があるため構造が複雑で故障の恐れがある。また、ゲート22の開閉が一瞬でも遅れると、建材5が衝突してトラブルが生じてしまう。
さらに、特許文献3乃至特許文献6に記載された発明は自動車等の塗装に関するものであり、減圧状態を利用した建材の塗装機に関するものではないため、塗装チャンバー2内の減圧状態を一定に維持するという課題を解決することはできない。
【0011】
そこで本発明は、上記従来の課題を解決するためのものであり、塗装チャンバー内の減圧状態を一定に維持して、建材を均一に塗装することのできる塗装機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記従来の課題を解決するために、請求項1に係る発明の塗装機は、塗装チャンバー(2)内を減圧状態にする減圧手段(1)により、塗装チャンバー(2)内に霧状の塗料(T)を分散させ、塗装チャンバー(2)内に置かれた建材(5)の表面に塗料(T)を付着させて塗装する塗装機において、前記塗装チャンバー(2)内の圧力(P)を検出する圧力検出手段(4)と、前記減圧手段(1)の作動を制御する制御手段(3)とを備え、前記圧力検出手段(4)が、前記塗装チャンバー(2)内の圧力(P)が第1の基準値(P1)を超えたことを検出した場合、前記制御手段(3)は、前記減圧手段(1)の減圧力を増加させることを特徴とする。
【0013】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記減圧手段(1)は、前記塗装チャンバー(2)内の減圧時に常に作動する常時減圧手段(11)と、前記制御手段(3)からの指示があった場合にのみ作動する臨時減圧手段(12)とからなり、前記圧力検出手段(4)が、前記塗装チャンバー(2)内の圧力(P)が前記第1の基準値(P1)よりも大きな第2の基準値(P2)を超えたことを検出した場合、前記制御手段(3)は、前記常時減圧手段(11)の減圧力を増加させるとともに、前記臨時減圧手段(12)を作動させることを特徴とする。
【0014】
また、請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記減圧手段(11,12)は、ブロワー(B1,B2)とブロワー(B1,B2)を作動させる電動機(M1,M2)とからなり、前記制御手段(3)は、前記電動機(M1,M2)のインバーターに対して回転数の増減を指示して減圧力を増減させることを特徴とする。
【0015】
また、請求項4に係る発明の塗装機は、塗装チャンバー(2)内を減圧状態にする減圧手段(1)により、塗装チャンバー(2)内に霧状の塗料(T)を分散させ、塗装チャンバー(2)内に置かれた建材(5)の表面に塗料(T)を付着させて塗装する塗装機において、前記塗装チャンバー(2)内の圧力(P)を検出する圧力検出手段(4)と、前記減圧手段(1)の作動を制御する制御手段(3)とを備えるとともに、前記減圧手段(1)は、前記塗装チャンバー(2)の減圧時に常に作動する常時減圧手段(11)と、前記制御手段(3)からの指示があった場合にのみ作動する臨時減圧手段(12)とからなり、前記圧力検出手段(4)が、前記塗装チャンバー(2)内の圧力(P)が第1の基準値(P1)を超えたことを検出した場合、前記制御手段(3)は、前記臨時減圧手段(12)を作動させることを特徴とする。
【0016】
なお、括弧内の記号は、発明を実施するための最良の形態および図面に記載された対応要素または対応事項を示す。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、塗装チャンバー内の圧力を検出する圧力検出手段を備えているので、塗装チャンバー内の減圧状態の変化を常に監視することができる。また、減圧手段を制御する制御手段を備えているので、制御手段により減圧手段の減圧力を増減させることができる。
そして、圧力検出手段により塗装チャンバー内の圧力が第1の基準値を超えたことを検出した場合、制御手段により減圧手段の減圧力を増加させるようにしたので、建材の出し入れ等により塗装チャンバー内の減圧状態が乱れ圧力が上昇しても、直ちに圧力を引き下げて塗装チャンバー内の減圧状態を一定に維持し、建材を均一に塗装することができる。
【0018】
また、請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の作用効果に加えて、減圧手段を、塗装チャンバー内の減圧時に常に作動する常時減圧手段と、制御手段からの指示があった場合にのみ作動する臨時減圧手段とにより構成したので、常時減圧手段に加えて臨時減圧手段を作動させることで、減圧手段の減圧力を大幅に増加させることができる。
そして、圧力検出手段により塗装チャンバー内の圧力が第1の基準値よりも大きな第2の基準値を超えたことを検出した場合、制御手段により常時減圧手段の減圧力を増加させるとともに、臨時減圧手段を作動させるようにしたので、塗装チャンバー内の圧力が大幅に上昇しても、上昇した圧力を急速に引き下げることができる。
【0019】
また、請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は請求項2に記載の発明の作用効果に加えて、減圧手段を、ブロワーとブロワーを作動させる電動機とにより構成し、制御手段が電動機のインバーターに対して回転数の増減を指示することにより減圧力を増減させるようにしたので、スムーズな減圧力の調整が可能である。
【0020】
また、請求項4に記載の発明によれば、塗装チャンバー内の圧力を検出する圧力検出手段を備えているので、塗装チャンバー内の減圧状態の変化を常に監視することができる。また、減圧手段を制御する制御手段を備えているので、制御手段により減圧手段の減圧力を増減させることができる。さらに、減圧手段を、塗装チャンバー内の減圧時に常に作動する常時減圧手段と、制御手段からの指示があった場合にのみ作動する臨時減圧手段とにより構成したので、常時減圧手段に加えて臨時減圧手段を作動させることで、減圧手段の減圧力を大幅に増加させることができる。
そして、圧力検出手段により塗装チャンバー内の圧力が第1の基準値を超えたことを検出した場合、制御手段により臨時減圧手段を作動させるようにしたので、建材の出し入れ等により塗装チャンバー内の減圧状態が乱れ圧力が上昇しても、直ちに圧力を引き下げて塗装チャンバー内の減圧状態を一定に維持し、建材を均一に塗装することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、図1及び図2を参照して、本発明の実施形態に係る塗装機について説明する。
図1は、本実施形態に係る塗装機の構成図であり、図2は、本実施形態に係る塗装機による減圧状態制御方法を示すフローチャートである。
図1に示すように、本実施形態に係る塗装機は、主として減圧手段1、塗装チャンバー2、制御手段3、圧力検出手段4、及び塗料Tが入れられた塗料タンク100から構成されている。
【0022】
減圧手段1は、塗料タンク100内とこれに接続された塗装チャンバー2内を減圧状態にするものであり、ブロワーB1とブロワーB1を作動させる電動機M1、ブロワーB2とブロワーB2を作動させる電動機M2の2組の減圧手段11,12から構成されている。このうち、減圧手段11は、塗装チャンバー2内を減圧状態にする際に常に作動するものであり、以下「常時減圧手段11」と称する。一方、減圧手段12は、塗装チャンバー2内を減圧状態にする際に常に作動するものではなく、制御手段3からの指示があった場合のみ作動するものであり、以下「臨時減圧手段12」と称する。
なお減圧手段1は2組に限らず、3組以上の構成であってもよい。
【0023】
常時減圧手段11と臨時減圧手段12は、バルブVを介して塗料タンク100に接続されている。バルブVは、(1)閉鎖、(2)常時減圧手段11側のみ開放、(3)臨時減圧手段12側のみ開放、(4)常時減圧手段11と臨時減圧手段12の両側を開放、のそれぞれになるよう調整可能となっている。
【0024】
塗装チャンバー2には開口部21が設けられており、開口部21から建材5を出し入れするようになっている。また、塗装チャンバー2の内部には、圧力センサ等の圧力検出手段4が設けられており、塗装チャンバー2内の圧力を測定するようになっている。
そして、塗装チャンバー2は、塗装タンク100と管7により2方向から接続されており、環状の閉鎖経路が形成されている。
なお、本実施形態では、塗装チャンバー2と塗料タンク100を別々の構成としたが、塗装チャンバー2内に塗料Tを入れておいて、塗装チャンバー2内を直接減圧状態とするような構成にしてもよい。
【0025】
減圧手段1が作動して、塗料タンク100内とこれに接続された塗装チャンバー2内が減圧状態になると、塗料タンク100内の塗料Tは霧状となって塗装チャンバー2内に導かれる。そして、塗装チャンバー2内に置かれた建材5の表面に万遍なく付着する事で、建材5の全周に亘って凹凸内部まで均一に塗装することができる。
図1中の矢印は、このときの霧状となった塗料Tの流れを示すものである。なお、塗料Tの流路上には塗料回収装置6が設けられており、塗装チャンバー2内を通過したあとの塗料Tを回収して再び塗料タンク100に戻すことで、塗料Tを無駄なく使用するようにしている。
【0026】
制御手段3は、塗装チャンバー2内に設けられた圧力検出手段4からの圧力検出値をもとに、減圧手段1の作動を制御するものであり、CPU31、ROM32、RAM33から構成されている。ROM32には、減圧手段1に対する制御パターンとなるプログラムが格納されている。そして、CPU31は、圧力検出手段4からの圧力検出値をRAM33に記憶させるとともに、ROM32に格納されたプログラムの制御パターンに合わせて減圧手段1を制御する指示を行う。
このとき、制御手段3は、常時減圧手段11の電動機M1のスイッチON、スイッチOFF、回転数UP、回転数DOWNを電動機M1のインバーターに対して指示する。また、制御手段3は、臨時減圧手段12の電動機M2のスイッチON、スイッチOFF、回転数UP、回転数DOWNを電動機M2のインバーターに対して指示する。さらに、制御手段3は、常時減圧手段11と臨時減圧手段12の作動状況に応じて、バルブVの開閉を指示する。なお、CPU31は、図示しない内部タイマを有している。
【0027】
以上の構成により、本実施形態に係る塗装機は、減圧手段1により塗装チャンバー2内に霧状の塗料Tを分散させ、塗装チャンバー内2に置かれた建材5の表面に塗料5を付着させて塗装するようになっている。また、圧力検出手段4で塗装チャンバー2内の圧力を測定し、その測定値に基づいて制御手段3が減圧手段1の減圧力を制御するようになっている。
【0028】
次に、図2のフローチャートを参照して、本実施形態に係る塗装機による減圧状態制御方法について説明する。
【0029】
最初に、減圧状態制御の基準となる塗装チャンバー2内の圧力Pの基準値について説明する。
まず、第1の基準値P1を設定する。第1の基準値P1は、制御部3が減圧手段1の減圧力を増加させるように制御するときの閾値となるものであり、塗装チャンバー2内の圧力PがP1を超えると、制御部3が減圧力増加の制御を開始する。
次に、第2の基準値P2を設定する。第2の基準値P2は、制御部3が減圧手段1の減圧力を急速に増加させるように制御するときの閾値となるものであり、塗装チャンバー2内の圧力PがP2を超えると、制御部3が減圧力を急速に増加させるように制御を行う。当然、第1の基準値P1よりも第2の基準値P2の方が大きい。
【0030】
また、塗装チャンバー2内の圧力Pの最低値P0を設定する。最低値P0は、塗装チャンバー2内の圧力が下がりすぎないように設定するものであり、制御部3は、塗装チャンバー2内の圧力PがP0を下回ると、減圧力を減少させるように制御を行う。
なお、本実施形態では最低値P0を設定して制御するようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、減圧手段1の減圧力を増加させて一定時間経過した後に、強制的に減圧手段1をもとの状態に戻すような設定を予めしておいてもよい。
【0031】
塗装機のスイッチをONにすると(ステップS201:以後、括弧内では「ステップ」という語を省略する)、制御部3は、常時減圧手段11の電動機M1をONにするとともに、バルブVを常時減圧手段11側にのみ開放する(S202)。
そうすると、常時減圧手段11のブロワーB1の働きにより、塗料タンク100内とこれに接続された塗装チャンバー2内が徐々に減圧状態となり、塗料タンク100内の塗料Tが霧状となって塗装チャンバー2内に導かれる。そして塗装チャンバー2内は塗装に適した減圧状態となり、開口部21から建材5を出し入れして塗装を行うことができるようになる。また、建材5の出し入れを行うと、塗装チャンバー2内の減圧状態が乱れ、圧力の上昇が生じる。
【0032】
開始から所定時間経過すると(S203)、制御部3は、塗装チャンバー2内の圧力Pを圧力検出手段4により検出する(S204)。そして、圧力Pを第1の基準値P1及び最低値P0と比較する(S205)。
その結果、P0≦P≦P1(S205YES)の場合には、塗装チャンバー2内は塗装に適した減圧状態にあるので、減圧手段1の制御を変更することなく、塗装機のスイッチがOFFでないか判定し(S210)、OFFでない場合にはステップS204に戻り、圧力Pの検出を繰り返す。
【0033】
一方、ステップS205においてP>P1と判定された場合、塗装チャンバー2内は減圧状態が乱れ圧力が上昇した状態にあるので、制御部3は常時減圧手段11の電動機M1の回転数を上昇させるように、電動機M1のインバーターに指示する(S206)。
さらに、塗装チャンバー2内の圧力Pを第2の基準値P2と比較し(S207)、P>P2と判定された場合(S207YES)、塗装チャンバー2内は圧力が大幅に上昇した状態にあり、急速に低下させる必要があるので、制御部3は臨時減圧手段12の電動機M2のスイッチをONにするとともに、バルブVを常時減圧手段11と臨時減圧手段12の両側に開放する(S208)。P<P2と判定された場合(S207NO)、臨時減圧手段12は作動させない。
以上により、減圧状態を維持するように制御した後、塗装機のスイッチがOFFでないか判定し(S210)、OFFでない場合にはステップS204に戻り、圧力Pの検出を繰り返す。
【0034】
また、ステップS205においてP<P0と判定された場合、塗装チャンバー2内は圧力が低下しすぎた状態にあるので、制御部3は常時減圧手段11の電動機M1の回転数を低下させるように電動機M1のインバーターに指示するとともに、電動機M2がONとなっていればOFFにし、バルブVを常時減圧手段11側にのみ開放する(S209)。そして、塗装機のスイッチがOFFでないか判定し(S210)、OFFでない場合にはステップS204に戻り、圧力Pの検出を繰り返す。
【0035】
最後に塗装機のスイッチがOFFである場合には(S210YES)、電動機M1、電動機M2をOFFにし、バルブVを閉鎖して制御処理を終了する(S211)。
以上により、制御部3は、塗装チャンバー2内の圧力PがP0≦P≦P1となるように制御を行う。
【0036】
なお、ステップS206において電動機M1の回転数を上昇させる場合、ステップS206の1回の通過あたりの上昇幅を設定しておき、段階的に上昇させるようにするとよい。ステップS209において電動機M1の回転数を低下させる場合も同様である。
また、上記実施形態においては、臨時減圧手段12の電動機M2の回転数を上昇あるいは低下させる制御を行っていないが、塗装チャンバー2内の減圧状態に応じて、電動機M2をON・OFFするだけでなく、電動機M2の回転数を変更して臨時減圧手段12自体の減圧力を制御するようにしてもよい。
【0037】
本実施形態に係る塗装機によれば、塗装チャンバー2内の圧力Pを検出する圧力検出手段4を備えているので、塗装チャンバー2内の減圧状態の変化を常に監視することができる。また、減圧手段1を制御する制御手段3を備えているので、制御手段3により減圧手段1の減圧力を増減させることができる。
そして、圧力検出手段4により塗装チャンバー2内の圧力Pが第1の基準値P1を超えたことを検出した場合、制御手段3により常時減圧手段11の減圧力を増加させるようにしたので、建材5の出し入れ等により塗装チャンバー2内の減圧状態が乱れ圧力Pが上昇しても、直ちに圧力Pを引き下げて塗装チャンバー2内の減圧状態を一定に維持し、建材5を均一に塗装することができる。
【0038】
また、減圧手段1を、塗装チャンバー2内の減圧時に常に作動する常時減圧手段11と、制御手段3からの指示があった場合にのみ作動する臨時減圧手段12とにより構成したので、常時減圧手段11に加えて臨時減圧手段12を作動させることで、減圧手段1の減圧力を大幅に増加させることができる。
そして、圧力検出手段4により塗装チャンバー2内の圧力Pが第1の基準値P1よりも大きな第2の基準値P2を超えたことを検出した場合、制御手段3により常時減圧手段11の減圧力を増加させるとともに、臨時減圧手段12を作動させるようにしたので、塗装チャンバー2内の圧力Pが大幅に上昇しても、上昇した圧力を急速に引き下げることができる。
【0039】
また、減圧手段1を、ブロワーB1,B2とブロワーB1,B2を作動させる電動機M1,M2とにより構成し、制御手段3が電動機M1,M2のインバーターに対して回転数の増減を指示することにより減圧力を増減させるようにしたので、スムーズな減圧力の調整が可能である。
【0040】
以上により、塗装チャンバー2内の減圧状態を一定に維持することができるので、塗装チャンバー2の開口部21に取り付ける型枠9を、建材5の形状に完全に合わせることなく、数種類の建材5に共通の型枠9を使用できるので、交換等の手間が節約できる。
また、図6に示す従来例のようにゲート22を使用していないので構造が簡単で故障も少なく、開閉が遅れて建材5が衝突する恐れも無い。
【0041】
なお、本実施形態では、電動機M1及び電動機M2の回転数を変更可能としたが、電動機M1及び電動機M2ともに、回転を変更することなく、スイッチON・OFFの制御のみ行うようにしてもよい。
その場合、圧力検出手段4により塗装チャンバー2内の圧力Pが第1の基準値P0を超えたことを検出した場合、制御手段3により、常時減圧手段11に加えて、臨時減圧手段12を作動させるようにすることで、圧力Pを引き下げて塗装チャンバー2内の減圧状態を一定に維持することができる。
【0042】
さらに、減圧手段を2組設けているので、例えば、常時減圧手段11を大型にし、臨時減圧手段12を小型にして、建材5のサイズが小さい場合には、臨時減圧手段12の方を作動させるようにすれば経済的である。
また、一方の減圧手段が故障したり点検の必要がある場合にも、他方の減圧手段により塗装を継続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施形態に係る塗装機の構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る塗装機による減圧状態制御方法を示すフローチャートである。
【図3】従来例に係るスプレーによる塗装方法を示す図である。
【図4】従来例に係る塗装機の構成図である。
【図5】従来例に係る建材と型枠を示す斜視図である。
【図6】従来例に係る塗装機の開口部を示す図であり、(a)ゲートが開いた状態、(b)ゲートが閉じた状態を示す。
【図7】従来例に係る塗装機の開口部を示す図であり、(a)建材が小さい場合、(b)建材が大きい場合を示す。
【符号の説明】
【0044】
1 減圧手段
2 塗装チャンバー
3 制御部
4 圧力検出手段
5 建材
6 塗料回収装置
7 管
8 スプレーガン
9 型枠
10 減圧手段
11 常時減圧手段
12 臨時減圧手段
21 開口部
22 ゲート
31 CPU
32 ROM
33 RAM
100 塗料タンク
T 塗料
B ブロワー
M 電動機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗装チャンバー内を減圧状態にする減圧手段により、塗装チャンバー内に霧状の塗料を分散させ、塗装チャンバー内に置かれた建材の表面に塗料を付着させて塗装する塗装機において、
前記塗装チャンバー内の圧力を検出する圧力検出手段と、前記減圧手段の作動を制御する制御手段とを備え、
前記圧力検出手段が、前記塗装チャンバー内の圧力が第1の基準値を超えたことを検出した場合、前記制御手段は、前記減圧手段の減圧力を増加させることを特徴とする塗装機。
【請求項2】
前記減圧手段は、前記塗装チャンバー内の減圧時に常に作動する常時減圧手段と、前記制御手段からの指示があった場合にのみ作動する臨時減圧手段とからなり、
前記圧力検出手段が、前記塗装チャンバー内の圧力が前記第1の基準値よりも大きな第2の基準値を超えたことを検出した場合、前記制御手段は、前記常時減圧手段の減圧力を増加させるとともに、前記臨時減圧手段を作動させることを特徴とする請求項1に記載の塗装機。
【請求項3】
前記減圧手段は、ブロワーとブロワーを作動させる電動機とからなり、前記制御手段は、前記電動機のインバーターに対して回転数の増減を指示して減圧力を増減させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の塗装機。
【請求項4】
塗装チャンバー内を減圧状態にする減圧手段により、塗装チャンバー内に霧状の塗料を分散させ、塗装チャンバー内に置かれた建材の表面に塗料を付着させて塗装する塗装機において、
前記塗装チャンバー内の圧力を検出する圧力検出手段と、前記減圧手段の作動を制御する制御手段とを備えるとともに、前記減圧手段は、前記塗装チャンバーの減圧時に常に作動する常時減圧手段と、前記制御手段からの指示があった場合にのみ作動する臨時減圧手段とからなり、
前記圧力検出手段が、前記塗装チャンバー内の圧力が第1の基準値を超えたことを検出した場合、前記制御手段は、前記臨時減圧手段を作動させることを特徴とする塗装機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate