説明

塗装用カートリッジ

【課題】 環状隙間に塗料が浸入した場合でも、この塗料の顔料成分が固化するのを抑制し、ピストンの摺動性を長期に亘って良好にする。
【解決手段】 塗料タンク12内のピストン19には、外周側の環状隙間21と押出し液体収容室15とを連通する連通路22を設ける構成としている。従って、環状隙間21には、連通路22によって押出し液体収容室15の押出し液体を導くことにより、環状隙間21を押出し液体収容室15とほぼ同圧にし、塗料収容室14から環状隙間21への塗料の浸入を抑制する。また、環状隙間21に塗料が浸入しても、この塗料の顔料成分は環状隙間21内の押出し液体により常時液状状態で維持することができる。さらに、連通路22には、チェック弁23を設けているから、塗料が連通路22を介して押出し液体収容室15に混入するのを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば塗装機に対し交換して取付けられ、内部に充填された塗料を塗装機に向けて供給する塗装用カートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車のボディ等の被塗物を塗装する塗装システムは、色替時に廃棄される塗料の量を削減でき、また多くの塗色に対応できることが望まれている。これに対応する塗装システムとしては、各色毎の塗料が充填された塗装用カートリッジを、被塗物を塗装する度に交換して塗装装置に取付ける構成となったカートリッジ式の塗装システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平11−262699号公報
【0004】
そして、特許文献1で用いる塗装用カートリッジは、塗装装置に着脱可能に取付けられ内部に塗料を収容する筒状の容器からなる塗料タンクと、該塗料タンクの前側から軸方向に延び内部に塗料通路を有するフィードチューブと、前記塗料タンク内に軸方向に摺動可能に挿嵌され、前記塗料タンク内を塗料収容室と押出し液体収容室とに画成するピストンと、該ピストンと前記塗料タンクの内周面との間をシールするために、前記ピストンの外周面に設けられた環状のシール部材とにより大略構成されている。
【0005】
また、塗装用カートリッジでは、塗料と押出し液体とが混ざらないように塗料タンクとピストンとの間のシール性を高める必要がある。このために、塗装用カートリッジには、例えばピストンの外周面に軸方向に間隔をもって2本のシール部材を設ける構成としたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献2】特開2001−79463号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述した特許文献2のように、ピストンの外周面に軸方向に間隔をもって2本のシール部材を設けた場合、この2本のシール部材により塗料タンクの内周面とピストンの外周面との間に環状隙間が画成されることになる。この環状隙間には、ピストンが往復動する間に塗料タンクの内周面に付着した塗料が僅かずつ浸入するから、塗料中の不溶な顔料成分が固まりとなって蓄積してしまう。
【0008】
これにより、環状隙間に蓄積した顔料成分の固まりは、シール部材が塗料タンクの内周面を摺動するときに大きな抵抗になり、塗装作業時にピストンの摺動(変位)が不安定になったり、シール部材が損傷することがある。この結果、塗装装置に向けて塗料を安定的に供給できなることがあり、耐久性、信頼性が低下するという問題がある。
【0009】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、環状隙間に塗料が浸入した場合でも、この塗料の顔料成分が固化するの抑制し、ピストンの摺動性を長期に亘って良好にできるようにした塗装用カートリッジを提供することにある。
【0010】
また、本発明の他の目的は、環状隙間に塗料が浸入し難くすることで塗料の顔料成分の蓄積を防止し、シール部材のシール性を維持できるようにした塗装用カートリッジを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による塗装用カートリッジは、噴霧手段に着脱可能に取付けられ内部に塗料を収容する筒状の容器からなる塗料タンクと、該塗料タンクの前側から軸方向に延び内部に塗料通路を有するフィードチューブと、前記塗料タンク内に軸方向に摺動可能に挿嵌され、前記塗料タンク内を塗料収容室と押出し液体収容室とに画成するピストンと、該ピストンと前記塗料タンクの内周面との間をシールするために、前記ピストンの外周面に軸方向に間隔をもって設けられた2本の環状のシール部材と、前記塗料タンクの内周面とピストンの外周面との間に該2本のシール部材によって画成される環状隙間とにより構成している。
【0012】
そして、上述した課題を解決するために、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記ピストンには、前記環状隙間に押出し液体を導くために、前記環状隙間と前記押出し液体収容室とを連通する連通路を設ける構成としたことにある。
【0013】
請求項2の発明は、前記連通路には、前記押出し液体収容室から環状隙間に押出し液体が流通するのを許し、逆向きの流れを規制するチェック弁を設ける構成としたことにある。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、塗料タンク内でピストンが往復動すると、塗料タンクの内周面に付着した塗料がシール部材との僅かな隙間を通って環状隙間に浸入しようとする。しかし、ピストンには、環状隙間に押出し液体を導くための連通路を設けているから、この環状隙間内を押出し液体収容室とほぼ同じ圧力にすることができる。これにより、環状隙間への塗料の浸入を抑制することができ、シール部材の寿命を延ばすことができる。
【0015】
しかも、環状隙間に塗料が浸入することがあっても、この環状隙間は押出し液体で満たされているから、浸入した塗料の顔料成分を常時液状状態で維持することができる。この結果、ピストンの摺動性を長期に亘って良好にすることができ、耐久性を高めて信頼性を向上することができる。
【0016】
請求項2の発明によれば、連通路に設けたチェック弁は、押出し液体収容室から環状隙間に押出し液体が流通するのを許すことができる。これにより、環状隙間を押出し液体によって常時満たすことができる。一方、チェック弁は、環状隙間から押出し液体収容室に押出し液体が流通するのを規制することができる。これにより、押出し液体収容室に塗料が混入するのを確実に防止することができ、押出し液体の寿命を延ばすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態による塗装用カートリッジを、回転霧化頭型塗装装置に適用した場合を例に挙げ、図1ないし図4に従って詳細に説明する。
【0018】
図1において、1は塗装用ロボット等の動作機械(図示せず)に設けられた噴霧手段をなす回転霧化頭型塗装装置(以下、塗装装置1という)を示している。この塗装装置1は、前側がモータ取付部2Aとなり後側がカートリッジ取付部2Bとなったハウジング2と、該ハウジング2のモータ取付部2A内に装着されたエアモータ3と、該エアモータ3によって回転駆動される回転軸4と、該回転軸4の前端側に取付けられ、回転することにより塗料を遠心霧化して微粒化し被塗物に向け噴霧する回転霧化頭5と、前記ハウジング2のカートリッジ取付部2Bの中央から回転軸4の先端まで貫通して設けられたフィードチューブ挿通孔6とにより大略構成されている。
【0019】
また、ハウジング2には、例えばコッククロフト回路によって構成され、電源装置(図示せず)から供給される電圧を−60〜−120kVに昇圧する高電圧発生器7が設けられている。この高電圧発生器7は、例えばエアモータ3、回転軸4を介して回転霧化頭5に高電圧を印加し、塗料に直接帯電させる。
【0020】
さらに、ハウジング2には、押出し液体が流通するハウジング側押出し液体通路8が設けられ、該押出し液体通路8の途中には、後述の塗装用カートリッジ11に対して押出し液体の供給、停止を行う押出し液体弁9が設けられている。
【0021】
次に、塗装装置1に交換可能に取付けられる本実施の形態による塗装用カートリッジ11について説明する。
【0022】
即ち、11はハウジング2のカートリッジ取付部2Bに着脱可能に取付けられる塗装用カートリッジを示している。この塗装用カートリッジ11は、例えば塗料充填装置の充填台(図示せず)に交換用として複数個用意されている。また、複数個のカートリッジ11は、塗装装置1の回転霧化頭5に向け塗料を供給するもので、複数種類(複数色)の塗料毎にそれぞれ専用で使用されるものである。
【0023】
そして、塗装用カートリッジ11は、図2に示す如く、後述の塗料タンク12、フィードチューブ13、塗料収容室14、押出し液体収容室15、塗料通路16、ピストン19、シール部材20、環状空間21、連通路22、チェック弁23等によって大略構成されている。
【0024】
12は塗装用カートリッジ11の塗料タンクで、該塗料タンク12は、塗装用カートリッジ11の外形を構成している。また、塗料タンク12は、ハウジング2のカートリッジ取付部2Bに挿脱可能に挿嵌される外径寸法を有し、前,後方向に延びる円筒体(図3参照)として形成されている。
【0025】
そして、塗料タンク12は、ハウジング2のカートリッジ取付部2Bに着脱可能に嵌合する円板状の前蓋部12Aと、該前蓋部12Aと軸方向の反対側に位置する円板状の後蓋部12Bと、前記前蓋部12Aと後蓋部12Bとの間に設けられた円筒状のシリンダ部12Cとにより大略構成されている。
【0026】
また、前蓋部12Aの中央部には後述の塗料弁17を収容する弁体収容空間12Dが形成されている。一方、後蓋部12Bには、塗装用カートリッジ11を交換するときに把持される把持突起12Eが設けられている。さらに、シリンダ部12Cの内周面12C1は、後述のピストン19(シール部材20)が摺動するものである。
【0027】
13は塗料タンク12の前蓋部12Aから軸方向の前側に向け同軸に延びて設けられたフィードチューブで、該フィードチューブ13の内部には後述する塗料通路16が形成され、先端部には弁座13Aが設けられている。ここで、フィードチューブ13は、後述の塗料収容室14から供給される塗料を塗料通路16を介して先端から回転霧化頭5に向け流出するものである。また、フィードチューブ13は、塗料、洗浄用のエア・シンナの充填口としても利用することができる。
【0028】
14は塗料タンク12内の前側に後述のピストン19によって画成された塗料収容室で、該塗料収容室14は、回転霧化頭5に向けて供給する塗料を収容するものである。また、塗料収容室14は、塗料タンク12の前蓋部12A、シリンダ部12Cおよびピストン19により閉塞空間として画成され、後述の塗料通路16が接続されている。
【0029】
15は塗料タンク12内の後側に後述のピストン19によって画成された押出し液体収容室で、該押出し液体収容室15は、ピストン19を押動するための押出し液体を流入,流出可能に収容するものである。また、押出し液体収容室15は、塗料タンク12の後蓋部12B、シリンダ部12Cおよびピストン19により閉塞空間として画成され、後述のカートリッジ側押出し液体通路18が接続されている。
【0030】
16は塗料タンク12とフィードチューブ13とに亘って設けられた塗料通路で、該塗料通路16は、塗料収容室14とフィードチューブ13の先端との間を連通して設けられている。そして、塗料通路16は、塗料収容室14内の塗料を回転霧化頭5に向けて吐出するものである。
【0031】
17は塗料タンク12の前蓋部12Aに設けられた塗料弁で、該塗料弁17は、常閉弁として構成されている。また、塗料弁17は、弁体収容空間12D内に軸方向に移動可能に挿嵌されたピストン17Aと、基端側が該ピストン17Aに取付けられ、先端側がフィードチューブ13の先端まで軸方向に延び弁座13Aに離着座する長尺な弁体17Bと、前記ピストン17Aを該弁体17Bの閉弁方向に付勢する弁ばね17Cとにより大略構成されている。
【0032】
そして、塗料弁17は、常時は弁ばね17Cの付勢力により弁体17Bが弁座13Aに着座することによりフィードチューブ13内の塗料通路16を遮断している。一方、パイロットエアが供給されたときには、弁ばね17Cに抗してピストン17Aを変位させることにより、弁体17Bを開弁させ、塗料通路16を連通することができる。
【0033】
18は塗料タンク12に設けられたカートリッジ側押出し液体通路である。この押出し液体通路18は、その一端がハウジング側押出し液体通路8と連通する位置で前蓋部12Aの前面に開口している。また、塗料タンク12の外周側を軸方向に延びつつ後蓋部12Bの位置で屈曲した押出し液体通路18の他端は、押出し液体収容室15に接続されている。ここで、カートリッジ側押出し液体通路18の一端側には、ハウジング2への取付時に開弁する逆止弁18Aが設けられている。
【0034】
次に、塗料タンク12内を塗料収容室14と押出し液体収容室15とに画成し、該塗料タンク12内を軸方向に摺動するピストン19について説明する。
【0035】
即ち、19は塗装用カートリッジ11のピストンで、該ピストン19は、塗料タンク12内に軸方向に摺動可能に挿嵌された短尺な円柱体として形成されている。また、ピストン19の外径寸法は、塗料タンク12のシリンダ部12Cの内径寸法よりも後述する環状隙間21の分だけ小さな寸法となっている。また、ピストン19は、塗料収容室14側の前面19Aと、押出し液体収容室15側の後面19Bと、シリンダ部12Cの内周面12C1に対面する外周面19Cとを有している。さらに、ピストン19の外周面19Cには、軸方向に間隔をもって2条のシール取付溝19Dが全周に形成されている。
【0036】
20はピストン19の外周面19Cに軸方向に間隔をもって設けられた2本の環状のシール部材である。このシール部材20は、シール取付溝19Dにそれぞれ装着され、ピストン19と塗料タンク12を構成するシリンダ部12Cの内周面12C1との間をシールするものである。また、シール部材20は、例えば高機能フッ素ゴム等を用いて形成されている。
【0037】
21はピストン19の周囲に設けられた環状隙間で、該環状隙間21は、図4に示すように、塗料タンク12を構成するシリンダ部12Cの内周面12C1とピストン19の外周面19Cとの間に2本のシール部材20によって画成されている。
【0038】
次に、ピストン19に設けられた本発明の特徴部分である連通路22とチェック弁23の構成について説明する。
【0039】
まず、22はピストン19に設けられた連通路である。この連通路22は、環状隙間21に押出し液体を導くもので、前記環状隙間21と押出し液体収容室15とを連通して設けられている。また、連通路22は、図2、図3に示す如く、ピストン19の後面19Bから前側に向けて軸方向に設けられた軸方向通路22Aと、ピストン19内に円環状に形成され軸方向通路22Aに連通する環状通路22Bと、該環状通路22Bから径方向の外向きに延びた複数本、例えば4本の径方向通路22Cとにより構成されている。
【0040】
ここで、軸方向通路22Aは、図4に示す如く、ピストン19の後面19Bで押出し液体収容室15に連通している。また、軸方向通路22A内は、後述のチェック弁23を収容する弁体収容室22A1となっている。一方、4本の径方向通路22Cは、ピストン19の外周面19Cで環状隙間21に連通している。
【0041】
これにより、連通路22は、押出し液体収容室15から環状隙間21に押出し液体を流入させることにより、該環状隙間21内を押出し液体収容室15とほぼ同じ圧力にすることができ、塗料収容室14から環状隙間21への塗料の浸入を抑制することができる。さらに、連通路22は、環状隙間21を押出し液体で満たすことにより、環状隙間21に塗料が浸入することがあっても、この塗料の顔料成分が固化するのを防止し、常時液状状態で維持することができる。
【0042】
23は連通路22の軸方向通路22Aの弁体収容室22A1に設けられたチェック弁で、該チェック弁23は、後側部分で通路を閉塞するボール弁23Aと、該ボール弁23Aを閉弁方向(後方向)に付勢する弁ばね23Bとにより構成されている。
【0043】
これにより、チェック弁23は、押出し液体収容室15から連通路22を介して環状隙間21に向けて押出し液体が流通するときに、図4中に二点鎖線で示すように、弁ばね23Bに抗してボール弁23Aを開弁させることにより、この押出し液体の流通を許す。一方、チェック弁23は、逆向きとなる環状隙間21から押出し液体収容室15への流れを規制することにより、押出し液体収容室15に塗料が混入しないようにしている。
【0044】
本実施の形態による塗装用カートリッジ11を用いた回転霧化頭型塗装装置1は上述の如き構成を有するもので、次に、その塗装動作について説明する。
【0045】
まず、塗料収容室14に塗料が充填された塗装用カートリッジ11を、図1に示すように、ハウジング2のカートリッジ取付部2Bに取付け、この状態で押出し液体弁9、塗料弁17を開弁する。そして、押出し液体通路8,18を介して押出し液体収容室15に押出し液体を供給することにより、ピストン19を塗料収容室14の容積を縮小する方向に変位させる。これにより、塗料収容室14内の塗料は、塗料通路16を介してフィードチューブ13の先端から回転霧化頭5に向け吐出される。
【0046】
このときには、高電圧発生器7によって塗料を高電圧に帯電させる。これにより、フィードチューブ13から吐出された塗料は、回転霧化頭5によって霧化されつつ、被塗物(図示せず)との間に形成される電気力線に沿って飛行し、該被塗物に塗着する。
【0047】
このように、塗装作業を行う場合には、塗料タンク12内でピストン19が摺動変位する。このときに、ピストン19に設けた連通路22は、押出し液体収容室15から環状隙間21に押出し液体を流入させ、該環状隙間21内を押出し液体収容室15とほぼ同圧にする。これにより、塗料収容室14から環状隙間21への塗料の浸入を抑制することができる。
【0048】
しかも、環状隙間21は、連通路22によって押出し液体で満たされているから、環状隙間21に塗料が浸入することがあっても、この塗料の顔料成分は固化することはなく、常時液状状態で維持することができる。
【0049】
また、連通路22に設けたチェック弁23は、押出し液体収容室15から環状隙間21に押出し液体が流通するのを許すことにより、環状隙間21を押出し液体によって常時満たし、塗料収容室から環状隙間に塗料が流入するのを規制する。一方、チェック弁23は、環状隙間21から押出し液体収容室15に押出し液体が流通するのを規制することにより、押出し液体収容室15に塗料が混入するのを防止することができる。
【0050】
かくして、本実施の形態によれば、塗料タンク12内に摺動可能に挿嵌されたピストン19には、塗料タンク12との間の環状隙間21に押出し液体を導くために、前記環状隙間21と押出し液体収容室15とを連通する連通路22を設ける構成としている。
【0051】
従って、ピストン19の往復動によってシリンダ部12Cの内周面12C1に付着した塗料がシール部材20との僅かな隙間を通って環状隙間21に浸入しようとしても、この環状隙間21には、連通路22によって押出し液体収容室15の押出し液体を導くことができ、環状隙間21を押出し液体収容室15とほぼ同じ圧力にすることができる。これにより、塗料収容室14から環状隙間21への塗料の浸入を抑制することができ、塗料の顔料成分の蓄積を防止し、シール部材20の寿命を延ばすことができる。
【0052】
しかも、環状隙間21は押出し液体で満たしているから、この環状隙間21に塗料が浸入することがあっても、押出し液体により浸入した塗料の顔料成分を常時液状状態で維持することができる。この結果、ピストン19の摺動性を長期に亘って良好にすることができ、またシール部材20の耐久性を高めて信頼性を向上することができる。
【0053】
また、連通路22には、チェック弁23を設け、押出し液体収容室15から環状隙間21に押出し液体が流通するのを許し、逆向きの流れを規制する構成としている。これにより、チェック弁23は、押出し液体収容室15から環状隙間21に押出し液体を流通させることにより、この環状隙間21を押出し液体によって常時満たすことができる。
【0054】
一方、チェック弁23は、環状隙間21から押出し液体収容室15に押出し液体が逆流するのを規制することができる。これにより、塗料収容室14から環状隙間21に塗料が流入することがあっても、この塗料が連通路22を介して押出し液体収容室15に混入するのを確実に防止することができ、押出し液体の寿命を延ばすことができる。
【0055】
なお、実施の形態では、連通路22の軸方向通路22Aに弁体収容室22A1を形状し、この弁体収容室22A1にボール弁23A、弁ばね23Bからなるチェック弁23を設ける構成としている。しかし、本発明はこれに限らず、例えば図5に示す第1の変形例のように、連通路31を軸方向通路31A、環状通路31Bおよび径方向通路31Cにより形成し、前記環状通路31B内に軸方向通路31Aを閉塞するように片持ち支持された板状弁体からなるチェック弁32を設ける構成としてもよい。
【0056】
また、図6に示す第2の変形例のように、連通路41を、ピストン19の後面19Bから前側に向けて軸方向に設けられた軸方向通路41Aと、ピストン19の外周面19Cに開口すると共に前記軸方向通路41Aに連通する環状溝41Bとにより構成してもよい。
【0057】
また、図7に示す第3の変形例のように、連通路51を、ピストン19の後面19B中央から前側に向けて軸方向に設けられた軸方向通路51Aと、該軸方向通路51Aからピストン19内を放射状に延びて外周面19Cに開口した複数本の径方向通路51Bとにより構成してもよい。
【0058】
さらに、押出し液体収容室15と環状隙間21とを連通するようにピストン19に1本の連通路を設け、この連通路にチェック弁を設ける構成としてもよい。また、この1本の連通路とチェック弁とのセットを、ピストン19に複数セット設ける構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施の形態による塗装用カートリッジを塗装装置に取付けた状態で示す縦断面図である。
【図2】本発明の実施の形態による塗装用カートリッジを単体で拡大して示す縦断面図である。
【図3】図2中の矢示III−III方向からみた塗装用カートリッジの横断面図である。
【図4】図2中のA部を示す要部拡大縦断面図である。
【図5】本発明の第1の変形例による連通路とチェック弁を示す要部拡大縦断面図である。
【図6】本発明の第2の変形例による連通路を示す要部拡大縦断面図である。
【図7】本発明の第3の変形例による連通路を示すピストンの縦断面図である。
【符号の説明】
【0060】
1 回転霧化頭型塗装装置(噴霧手段)
11 塗装用カートリッジ
12 塗料タンク
12A 前蓋部
12B 後蓋部
12C シリンダ部
12C1 内周面
13 フィードチューブ
14 塗料収容室
15 押出し液体収容室
16 塗料通路
19 ピストン
19A 前面
19B 後面
19C 外周面
19D シール取付溝
20 シール部材
21 環状隙間
22,31,41,51 連通路
23,32 チェック弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴霧手段に着脱可能に取付けられ内部に塗料を収容する筒状の容器からなる塗料タンクと、該塗料タンクの前側から軸方向に延び内部に塗料通路を有するフィードチューブと、前記塗料タンク内に軸方向に摺動可能に挿嵌され、前記塗料タンク内を塗料収容室と押出し液体収容室とに画成するピストンと、該ピストンと前記塗料タンクの内周面との間をシールするために、前記ピストンの外周面に軸方向に間隔をもって設けられた2本の環状のシール部材と、前記塗料タンクの内周面とピストンの外周面との間に該2本のシール部材によって画成される環状隙間とにより構成してなる塗装用カートリッジにおいて、
前記ピストンには、前記環状隙間に押出し液体を導くために、前記環状隙間と前記押出し液体収容室とを連通する連通路を設ける構成としたことを特徴とする塗装用カートリッジ。
【請求項2】
前記連通路には、前記押出し液体収容室から環状隙間に押出し液体が流通するのを許し、逆向きの流れを規制するチェック弁を設ける構成としてなる請求項1に記載の塗装用カートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−279539(P2009−279539A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−135697(P2008−135697)
【出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【出願人】(399055432)ABB株式会社 (18)
【Fターム(参考)】