説明

塩素化エチレン系ポリマー並びにそれらから調製された組成物及び製品

本発明は、塩素化エチレン系ポリマー、それを調製するためのプロセス、並びにそれから調製された組成物及び製品を提供する。前記塩素化エチレン系ポリマーは、例えば8%未満の低い残留結晶化率、例えば25℃以上の比較的高い結晶化温度Tc、及び例えば325,000g/mol以下の中間重量平均分子量Mwを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
先行出願への参照
本出願は、参照により本明細書に組み込まれる2006年6月28日に出願された米国仮特許出願第60/817,201号明細書の恩典を主張する。
【0002】
本発明は、塩素化エチレン系ポリマーに関する。詳細には、本発明は、優れたバルクハンドリング性及び優れた加工性を備える塩素化エチレン系ポリマーを提供する。塩素化エチレン系ポリマーは、改良された耐衝撃性及び低レベルの表面欠陥を備える製品を形成するためにポリビニルクロライド組成物中に使用できる。
【背景技術】
【0003】
ポリビニルクロライド(PVC)は、その剛性形及び柔軟形態の両方において、種々の用途、例えばフィルム、サイディング用パネル、窓用パネル、シート、フェンス材、デッキ材、パイプ及びチュービングなどにおいて広範に使用されている。しかし、剛性PVCは硬質かつ脆性の熱可塑性ポリマーであるため、衝撃を受けた場合に破損する傾向の小さい組成物を形成するために改質剤と混合されることが多い。
【0004】
塩素化ポリエチレン(CPE)は、剛性PVC組成物のための耐衝撃性改質剤構成材として使用されている。ある場合には、CPEについては「バルク操作性」であることが望ましいが、これはCPEの経時的な凝集を最小限に抑えながら、バルクトラックで輸送できる、及び/又はサイロ内に保管できることを意味する。通常、CPEをこの方法で取り扱うことはできないが、それはブロッキングもしくは集合する傾向があり、特にそれが任意の期間にわたって保管された場合はトラックからCPEを取り出すことを困難にさせるからである。CPEがブロッキング(blocking)する傾向は、大量のブロッキング防止剤、例えばカルシウムカーボネートを添加することによって減少させることができるが、この添加は、総費用を増加させ、さらに剛性PVC調製物においては望ましくない可能性があるブロッキング防止剤自体を導入する余分な加工処理工程を付け加える。大量のブロッキング防止剤の添加は、材料の輸送及び/又は運搬中における個々の成分の偏析(demixing)及び分離をさらにもたらすことがある。また別のアプローチは、CPEの分子量(及び粘度)を増加させることであるが、これはPVC調製物の押出中に問題を引き起こす。例えば、PVC中における過剰に高分子量のCPEの使用は、押出窓枠形材における小さな擦傷もしくは欠陥を生じさせる可能性があり、そのような製品を望ましくないものにさせる。
【0005】
高レベルの残留結晶化度(例えば、>10%)を含有する従来型の塩素化ポリエチレン、例えば従来型のブロック塩素化ポリマーは、改質PVC組成物中で使用されると衝撃強度を低下させる傾向がある。従来型のランダム塩素化ポリエチレン、及び詳細には低分子量(Mw<150,000g/mol)は、ポリマー粒子の凝集を増加させる傾向がある。これらの低分子量ポリマーもまた、改質PVC組成物中で使用されると衝撃強度を低下させる傾向がある。
【0006】
米国特許第5,446,064号明細書(さらに、欧州特許第0618260(B1)号明細書も参照されたい)は、以下、(a)20〜45%の塩素化度、及びDSC法によって測定された5〜35cal/gの結晶融解熱を備え、100,000〜750,000の重量平均分子量を有するポリエチレンを塩素化する工程によって得られる100重量部の結晶性塩素化ポリエチレンと;(b)1〜100重量部の結晶性ポリオレフィンと;及び(c)5〜200重量部の可塑剤とを含む熱可塑性エラストマー組成物を開示している。
【0007】
5cal/gの結晶融解熱は、CPEの重量に基づくと「20重量%のCl」〜「45重量%のCl」に対応する、9〜13%(本発明に記載されるような計算によって決定される)の範囲内の残留HDPE結晶化度に対応する。
【0008】
米国特許第4,767,823号明細書(EP0204816(B1)及びWO86/03499もさらに参照されたい)は、「ブロッキング」する傾向が減少しているハロゲン化ポリエチレン樹脂及びハロゲン化エチレンポリマー樹脂について開示している。これらのハロゲン化樹脂は、120〜600ミクロンの重量に基づく中央粒径、及び粒子の60%超が130〜850ミクロンの粒径を有するように、重量に基づく粒径分布を有する各々ポリエチレン及びエチレンポリマー出発材料から調製される。ハロゲン化樹脂もまた、200〜900ミクロンの重量に基づく中央粒径をさらに有する。ハロゲン化ポリエチレン樹脂は、26〜42重量%の化学的に結合したハロゲン含量を有するが、他方ハロゲン化エチレンポリマー樹脂は、15〜28重量%の化学的に結合したハロゲン含量を有する。ハロゲン化エチレンポリマー樹脂は、その中で重合した、エチレンと共重合可能な5重量%までの1−オレフィンモノマーを有するエチレンポリマー出発材料から調製される。実験例では、相当に多量の塩素が、初期中の低い反応温度とは対照的に、ランダム塩素分布に好都合な110℃以上の高温で添加される。
【0009】
米国特許第6,706,815号明細書は、優れた衝撃強度を有する改良されたポリビニルクロライド組成物について開示している。詳細には、この耐衝撃性組成物は以下、a)ビニルクロライドポリマーと、b)少なくとも1つのエチレン/α−オレフィンコポリマーであって、0.858〜0.91g/ccの密度及び0.1のI10値から10のI2値のメルトインデックスを有するコポリマーと、及びc)20〜40重量%の塩素含量を有する少なくとも1つのランダム塩素化オレフィンポリマーであって、前記塩素化オレフィンポリマーのための供給材料が0.1のI10値から10のI2値のメルトインデックスを有するランダム塩素化オレフィンポリマーとを含む。任意で、これらの耐衝撃性ポリビニルクロライド組成物は、ポリビニルクロライドポリマーに比較して、5〜50%の無機充填剤レベルを有してよい。
【0010】
米国特許第4,029,862号明細書は、改良されたハンドリング特性を有する、及び流動床状態にある所定の自由流動性の高嵩密度の線状オレフィンポリマー粉末を塩素ガスと反応させる工程によって調製されるオレフィンポリマー塩素化生成物について開示している。使用されるオレフィンポリマー粉末は、24°〜28°の範囲内にある安息角として測定された流動性、25〜35ポンド/ft3の範囲内の嵩密度、及び2〜4m2/gの範囲内にある表面積を有することを特徴とする。オレフィンポリマー粒子の個々の粒子は、大部分が300〜600ミクロンの範囲内にある粒径、及び総粒子容積に基づいて個々の粒子内で20〜45容積%の範囲内にある平均自由容積を提供するために十分な多孔性を有することを特徴とする。本実施例では、塩素化温度は、ポリマー粒子の凝集を防止するため、及び塩素化速度に影響を及ぼす粒子多孔性の消失を防止するために100℃未満に維持されている。そのような低温では、結果として生じる塩素化ポリマーは、相当に高い残留結晶化度を有する。
【0011】
米国特許第6,204,334号明細書(さらに、米国特許第6,313,229号明細書;米国特許第6,124,406号明細書;EP1084158(B1);及びWO99/50316も参照されたい)は、PVC及び/又はCPVC樹脂とポリオレフィンエラストマーとの相溶化剤として使用するための高結晶化度を備えるブロック状塩素化ポリオレフィンについて開示している。ブロック状塩素化ポリオレフィンは、PVC及び/又はCPVCの耐衝撃性改質のための適正なサイズを備える、分散相としてのエラストマーの分散を促進する。ブロック状塩素化ポリオレフィンは、以下の特性、PVCもしくはCPVCにおける加工助剤及び衝撃改質剤として使用されることの多いランダム塩素化ポリオレフィンと比較して、エラストマーとPVC及び/又はCPVCとのより優れた接着;より優れた物理的特性、例えばノッチ付きアイゾッドによって測定された衝撃強度;及びより優れた可変高さ衝撃試験(VHIT)結果を提供すると開示されている。ブロック状塩素化ポリオレフィン対ランダム塩素化ポリオレフィンを用いて得られる特性の差は、ポリオレフィンエラストマーもしくはPVC/CPVCいずれかと適合する(及び/又は共結晶化可能な)、結果としてより優れた相間接着を生じさせるブロック状ポリオレフィンの個別ブロックに帰せられている。
【0012】
米国特許第6,277,915号明細書は、PVC及び/又はCPVC樹脂における高ゴムグラフトコポリマーもしくは塩素化ポリエチレン衝撃改質剤の性能強化剤として使用するための高結晶性ブロック塩素化ポリオレフィンについて開示している。ブロック塩素化ポリオレフィン(例えば、ブロック塩素化ポリエチレン)はマトリックス内への衝撃改質剤粒子の優れた分散、及び衝撃改質剤とPVC及び/又はCPVC界面との間の優れた接着を提供し、PVC又はCPVCにおける加工助剤及び衝撃改質剤として使用されることが多いランダム塩素化ポリオレフィンより優れた物理的特性、例えばノッチ付きアイゾッドによって測定される衝撃強度を提供すると開示されている。ブロック塩素化ポリオレフィン対ランダム塩素化ポリオレフィンを用いて得られる特性の差は、衝撃改質剤もしくはPVC/CPVCいずれかと適合する、結果としてより優れた相間接着を生じさせるブロック状ポリオレフィンの個別ブロックに帰せられると開示されている。
【0013】
さらなるブロック塩素化ポリエチレンは、米国特許第6,780,907号明細書に開示されている。
【0014】
依然として、ポリマーの重大なブロッキング又は集合を伴わずに、バルク量で使用できる、及びバルク量で輸送及び保管することのできる塩素化エチレンポリマーが必要とされる。さらに、大量の1つ又はそれ以上のブロッキング防止剤を添加せずに、「バルクハンドリング性」である塩素化エチレン系ポリマーが必要とされる。さらに、剛性PVC調製物中での優れた加工性及び分散を有し、表面欠陥を少ししか、又は全く生じさせない、及び最終加工製品における優れた耐衝撃性を提供する塩素化エチレンポリマーが必要とされる。これら及びその他の必要性は、以下の本発明によって満たされている。
【発明の開示】
【0015】
本発明は、塩素化エチレン系ポリマーであって、以下の特性、
a)290J/gのポリエチレン融解熱を用いて、DSCによって測定された8%未満の結晶化率と、及び
b)28℃〜60℃の結晶化温度Tcとを含み、
該塩素化エチレン系ポリマーは325,000g/mol以下の重量平均分子量Mwを有するエチレン系ポリマーから形成される、塩素化エチレン系ポリマーを提供する。
【0016】
本発明は、塩素化エチレン系ポリマーであって、以下の特性、
a)290J/gのポリエチレン融解熱を用いて、DSCによって測定された8%未満の結晶化率と、及び
b)25℃〜80℃の結晶化温度Tcとを含み、及び
該塩素化エチレン系ポリマーは325,000g/mol以下かつ150,000g/molを超える重量平均分子量Mwを有するエチレン系ポリマーから形成される、塩素化エチレン系ポリマーをさらに提供する。
【0017】
本発明は、塩素化エチレン系ポリマーを調製するためのプロセスであって、前記プロセスは、
水性スラリー反応混合液中でエチレン系ポリマーを塩素化する工程を含み、及び
該反応混合液の温度は最初に低温T1から高温T2へ増加させられ、及び
該反応混合液の温度は次に温度T3へ増加させられるが、T3≧T2であり、所定の時間tにわたり温度T3で保持される;及び
該反応混合液に添加される塩素の総量の60重量%以上は、該反応混合液の温度がT1からT2へ増加させられる期間中に添加される、及び
該反応混合液に添加される塩素の総量の40重量%以下は時間t中に添加される;及び
温度T1は50℃〜100℃であり、温度T2は100℃〜120℃であり、及びT3は110℃より高い;及び
該エチレン系ポリマーは、350,000g/mol未満の重量平均分子量Mwを有するプロセスを提供する。
【0018】
本発明は、塩素化エチレン系ポリマーを調製するためのプロセスであって、前記プロセスは、
水性スラリー反応混合液中でエチレン系ポリマーを塩素化する工程を含み、及び
該反応混合液の温度は最初に低温T1から高温T2へ増加させられ、及び
該反応混合液の温度は次に温度T3へ増加させられるが、T3≧T2である;及び
該反応混合液に添加される塩素の総量の60重量%以上は、該反応混合液の温度がT1からT2へ増加させられる期間中に添加される、及び
温度T1は90℃〜110℃であり、温度T2はT1〜135℃であり、及びT3は110℃より高く、該エチレン系ポリマーの融解温度Tmより低い;及び
該エチレン系ポリマーは、350,000g/mol未満かつ150,000g/molを超える重量平均分子量Mwを有するプロセスをさらに提供する。
【0019】
本発明による塩素化エチレン系ポリマー、又はそれを含む組成物から形成された少なくとも1つの構成材を含む製品もまた提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本出願人らは、エチレン系ポリマーへの制御された塩素添加は、CPEがバルクハンドリング性であるように、CPEのブロッキング傾向を低下させるために十分な残留結晶化度を備える、比較的高モジュラスのCPEを生成することを見いだした。さらに、中間分子量エチレン系ポリマーへの塩素の制御された組込みは適正な粘度を備える材料を提供し、この材料はPVCに調製されると表面欠陥のより少ない最終PVC複合部品を生じさせる。
【0021】
市販のランダム塩素化ポリオレフィンの一部は、バルクハンドリング性を妨害する低い結晶化温度を有するが、その他は過度に高い分子量を有しており、例えば小数の表面欠陥しか備えない形材を押出するための組成物におけるように、加工性を妨害する。中間分子量CPEは、バルクハンドリング性を所望する顧客のために追加のブロッキング防止剤を用いて長年に渡り使用されてきた。高分子量グレードのCPEはバルクハンドリング性のために開発されたが、結果として表面欠陥、例えば製品の表面上に観察される擦傷を生じさせる不良なPVC加工性を有することが見出された。そこで、そのようなポリマーの骨格に塩素を組み込むための制御されたプロセスにおいて中間分子量エチレン系ポリマーを使用すると、結果として生じる塩素化ポリマーのバルクハンドリング性、及びそのような塩素化ポリマーを含有するビニルクロライドポリマー調製物の加工性の両方における予想外の改良が可能になる。ポリマー分子量は、それでもまだ成形部品のための溶融強度並びに衝撃強度を提供するために十分に高くなければならない。本発明によるCPEは、窓枠形材を形成するため使用される剛性PVC調製物のために特に適合する。
【0022】
本発明は、低いブロッキング傾向を備える、塩素化エチレン系ポリマーを提供する。上記で考察したように、中間分子量エチレン系ポリマーを本明細書で考察したように制御された方法で塩素化すると、「バルクハンドリング性」である、そして優れた加工性、及び少ない表面欠陥しか備えないPVC調製物に使用できる中間分子量塩素化エチレンポリマーが生成される。これらの優れた特性は、主としてエチレン系ポリマーの分子量の適正な選択の結果として、そして塩素添加反応中にポリマーへの制御された塩素の組込みによって生じる。制御された塩素化は、25℃〜100℃、好ましくは28℃〜80℃、及びより好ましくは30℃〜60℃で融解する結晶化度を残す。この残留結晶化度は、他のゴム特性、例えば耐衝撃性を損なわずに、ポリマーが粒子間変形及びコールドフローに抵抗することを引き起こす。そのようなプロセスは、100%伸び率での比較的高い引張応力(100%モジュラス)及び十分に高い結晶化温度(Tc、DSCによって測定される)を備える塩素化ポリエチレンポリマーを生じる。
【0023】
概観
上記で考察したように、本発明は、塩素化エチレン系ポリマーであって、以下の特性、
a)290J/gのポリエチレン融解熱を用いて、DSCによって測定された8%未満の結晶化率と、及び
b)28℃〜60℃の結晶化温度Tcとを含み、及び
該塩素化エチレン系ポリマーは、325,000g/mol以下の重量平均分子量Mwを有するエチレン系ポリマーから形成される、塩素化エチレン系ポリマーを提供する。
【0024】
1つの実施形態では、エチレン系ポリマーは、300,000g/mol以下の重量平均分子量を有する。
【0025】
また別の実施形態では、エチレン系ポリマーは、150,000g/molを超える重量平均分子量を有する。
【0026】
また別の実施形態では、エチレン系ポリマーは、175,000g/mol以上の重量平均分子量を有する。
【0027】
また別の実施形態では、エチレン系ポリマーは、325,000g/mol未満かつ175,000g/molを超える重量平均分子量Mwを有する。
【0028】
好ましい実施形態では、エチレン系ポリマーは、HDPEである。
【0029】
また別の実施形態では、塩素化エチレン系ポリマーは、5%未満、又は2%未満の結晶化率を有する。
【0030】
また別の実施形態では、塩素化エチレン系ポリマーは、28℃〜50℃の結晶化温度Tcを有する。
【0031】
また別の実施形態では、塩素化エチレン系ポリマーは、28℃〜40℃の結晶化温度Tcを有する。
【0032】
また別の実施形態では、塩素化エチレン系ポリマーは、30℃〜60℃の結晶化温度Tcを有する。
【0033】
また別の実施形態では、塩素化エチレン系ポリマーは、28℃より高い、好ましくは30℃より高い結晶化温度を有する。
【0034】
また別の実施形態では、塩素化エチレン系ポリマーは、50℃未満、又は40℃未満の結晶化温度を有する。
【0035】
また別の実施形態では、塩素化エチレン系ポリマーは、ポリマーの総重量に基づいて20〜50重量%の塩素、及び好ましくはポリマーの総重量に基づいて20〜45又は25〜45重量%の塩素を含有する。
【0036】
また別の実施形態では、塩素化エチレン系ポリマーは、1.05N/mm2を超える、好ましくは1.15N/mm2を超える、より好ましくは1.25N/mm2を超える、及び一層より好ましくは1.35N/mm2を超える「100%モジュラス」値を有する。
【0037】
また別の実施形態では、塩素化エチレン系ポリマーは、1.05N/mm2を超える、好ましくは1.15N/mm2を超える、より好ましくは1.25N/mm2を超える、及び一層より好ましくは1.35N/mm2を超える「100%モジュラス」値、並びに28℃より高い結晶化温度を有する。
【0038】
また別の実施形態では、塩素化エチレン系ポリマーは、20psi以下、及び好ましくは15psi以下のブロッキング力を有する。
【0039】
また別の実施形態では、塩素化エチレン系ポリマーは、20psi以下、及び好ましくは15psi以下のブロッキング力を有する。
【0040】
本発明は、塩素化エチレン系ポリマーであって、以下の特性、
a)290J/gのポリエチレン融解熱を用いて、DSCによって測定された8%未満の結晶化率と、及び
b)25℃〜80℃の結晶化温度Tcとを含み、及び
該塩素化エチレンポリマーは、325,000g/mol以下かつ150,000g/molを超える重量平均分子量Mwを有するエチレン系ポリマーから形成される、塩素化エチレン系ポリマーをさらに提供する。
【0041】
また別の実施形態では、エチレン系ポリマーは、300,000g/mol以下の重量平均分子量を有する。
【0042】
また別の実施形態では、エチレン系ポリマーは、175,000g/molを超える重量平均分子量を有する。
【0043】
また別の実施形態では、エチレン系ポリマーは、325,000g/mol未満かつ175,000g/molを超える重量平均分子量Mwを有する。
【0044】
好ましい実施形態では、エチレン系ポリマーは、HDPEである。
【0045】
また別の実施形態では、塩素化エチレン系ポリマーは、5%未満、又は2%未満の結晶化率を有する。
【0046】
また別の実施形態では、塩素化エチレン系ポリマーは、25℃〜60℃の結晶化温度Tcを有する。
【0047】
また別の実施形態では、塩素化エチレン系ポリマーは、25℃〜50℃の結晶化温度Tcを有する。
【0048】
また別の実施形態では、塩素化エチレン系ポリマーは、25℃〜40℃の結晶化温度Tcを有する。
【0049】
また別の実施形態では、塩素化エチレン系ポリマーは、1.05N/mm2を超える、好ましくは1.15N/mm2を超える、より好ましくは1.25N/mm2を超える、及び一層より好ましくは1.35N/mm2を超える「100%モジュラス」値を有する。
【0050】
また別の実施形態では、塩素化エチレン系ポリマーは、1.05N/mm2を超える、好ましくは1.15N/mm2を超える、より好ましくは1.25N/mm2を超える、及び一層より好ましくは1.35N/mm2を超える「100%モジュラス」値、並びに28℃より高い結晶化温度を有する。
【0051】
また別の実施形態では、塩素化エチレン系ポリマーは、20psi以下、及び好ましくは15psi以下のブロッキング力を有する。
【0052】
また別の実施形態では、塩素化エチレン系ポリマーは、25℃より高い、好ましくは28℃より高い、及びより好ましくは30℃より高い結晶化温度を有する。
【0053】
また別の実施形態では、塩素化エチレン系ポリマーは、70℃未満、60℃未満、又は50℃未満の結晶化温度を有する。
【0054】
また別の実施形態では、塩素化エチレン系ポリマーは、ポリマーの総重量に基づいて20〜50重量%の塩素、及び好ましくはポリマーの総重量に基づいて20〜45又は25〜45重量%の塩素を含有する。
【0055】
また別の実施形態では、塩素化エチレン系ポリマーは、1.05N/mm2を超える、好ましくは1.15N/mm2を超える、より好ましくは1.25N/mm2を超える、及び一層より好ましくは1.35N/mm2を超える「100%モジュラス」値を有する。
【0056】
また別の実施形態では、塩素化エチレン系ポリマーは、1.05N/mm2を超える、好ましくは1.15N/mm2を超える、より好ましくは1.25N/mm2を超える、及び一層より好ましくは1.35N/mm2を超える「100%モジュラス」値、並びに28℃より高い結晶化温度を有する。
【0057】
また別の実施形態では、塩素化エチレン系ポリマーは、20psi以下、及び好ましくは15psi以下のブロッキング力を有する。
【0058】
また別の実施形態では、塩素化エチレン系ポリマーは、20psi以下、及び好ましくは15psi以下のブロッキング力を有する。
【0059】
本発明は、本明細書に記載した本発明の塩素化エチレン系ポリマーを含む組成物をさらに提供する。
【0060】
また別の実施形態では、組成物は、エチレン/α−オレフィンインターポリマーをさらに含む。
【0061】
また別の実施形態では、組成物は、アクリルポリマーをさらに含む。
【0062】
また別の実施形態では、組成物は、ビニルクロライドポリマーをさらに含む。
【0063】
また別の実施形態では、組成物は、エチレン/α−オレフィンインターポリマー及びビニルクロライドポリマーをさらに含む。
【0064】
また別の実施形態では、組成物は、アクリルポリマー及びビニルクロライドポリマーをさらに含む。
【0065】
また別の実施形態では、組成物は、1つ又はそれ以上の追加のブロッキング防止剤をさらに含む。ブロッキング防止剤には、タルク、カルシウムステアレート、及びカルシウムカーボネートが含まれるがそれらに限定されない。
【0066】
また別の実施形態では、塩素化エチレン系ポリマーは、6重量%までの1つ又はそれ以上の追加のブロッキング防止剤を含有する。ブロッキング防止剤には、タルク、カルシウムステアレート、及びカルシウムカーボネートが含まれるがそれらに限定されない。
【0067】
本発明は、本明細書に記載した本発明の塩素化エチレンポリマーから形成される少なくとも1つの構成材を含む製品をさらに提供する。
【0068】
本発明は、本明細書に記載した本発明の組成物から形成される少なくとも1つの構成材を含む製品をさらに提供する。
【0069】
本発明のまた別の実施形態では、製品、又は構成材は、押出プロセスによって形成される。また別の実施形態では、製品は、押出形材(extrusion profile)である。さらにまた別の実施形態では、押出形材が有する表面欠陥は、形材6メートル当たり10個以下、及び好ましくは5個以下である。
【0070】
また別の実施形態では、製品、もしくは構成材は、射出成形プロセス、圧縮成形プロセス、又は熱成形プロセスによって形成される。
【0071】
また別の実施形態では、製品は、サイディング材(siding)、パイプ、チュービング、窓枠形材(window profiles)、フェンス材、デッキ材及び電線用導管からなる群より選択される。
【0072】
本発明は、塩素化エチレン系ポリマーを調製するためのプロセスであって、前記プロセスは、
水性スラリー反応混合液中でエチレン系ポリマーを塩素化する工程を含み、及び
該反応混合液の温度は最初に低温T1から高温T2へ増加させられ、及び
該反応混合液の温度は次に温度T3へ増加させられるが、T3≧T2であり、所定の時間tに渡り温度T3で保持される;及び
該反応混合液に添加される塩素の総量の60重量%以上、好ましくは70重量%以上は、該反応混合液の温度がT1からT2へ増加させられる期間中に添加される、及び
該反応混合液に添加される塩素の総量の40%以下、好ましくは30%以下は、時間t中に添加される;及び
温度T1は50℃〜100℃であり、温度T2は100℃〜120℃であり、及びT3は110℃より高い;及び
該エチレン系ポリマーは、350,000g/mol未満の重量平均分子量Mwを有するプロセスを提供する。
【0073】
また別の実施形態では、エチレン系ポリマーは、340,000g/mol未満の重量平均分子量Mwを有する。
【0074】
また別の実施形態では、エチレン系ポリマーは、325,000g/mol未満の重量平均分子量Mwを有する。
【0075】
1つの実施形態では、エチレン系ポリマーは、300,000g/mol以下の重量平均分子量を有する。
【0076】
また別の実施形態では、エチレン系ポリマーは、150,000g/molを超える重量平均分子量を有する。
【0077】
また別の実施形態では、エチレン系ポリマーは、175,000g/mol以上の重量平均分子量を有する。
【0078】
また別の実施形態では、エチレン系ポリマーは、325,000g/mol未満かつ175,000g/molを超える重量平均分子量Mwを有する。
【0079】
好ましい実施形態では、エチレン系ポリマーは、HDPEである。
【0080】
また別の実施形態では、反応混合液に添加される塩素の総量の60〜80重量%は、該反応混合液の温度がT1からT2へ増加させられる期間中に添加される、及び
該反応混合液に添加される塩素の総量の20〜40重量%は、時間t中に添加される。
【0081】
Tm(ベースポリマー)は、本明細書に記載したように、DSCによって決定される、エチレン系ポリマーのピーク融解温度である。
【0082】
また別の実施形態では、時間tは、例えば、塩素供給速度(即時反応)又は全塩素添加(質量平衡)によって決定される、塩素が反応するために十分な時間である。また別の実施形態では、tは、少なくとも5分間である。
【0083】
また別の実施形態では、反応混合液に添加される塩素の総量の70〜80重量%は、該反応混合液の温度がT1からT2へ増加させられる期間中に添加される、及び
該反応混合液に添加される塩素の総量の20〜30重量%は、時間t中に添加される。
【0084】
また別の実施形態では、時間tは、例えば、塩素供給速度(即時反応)又は全塩素添加(質量平衡)によって決定される、塩素が反応するために十分な時間である。また別の実施形態では、tは、少なくとも5分間である。
【0085】
本発明は、塩素化エチレン系ポリマーを調製するためのプロセスであって、前記プロセスは、
水性スラリー反応混合液中でエチレン系ポリマーを塩素化する工程を含み、及び
該反応混合液の温度は最初に低温T1から高温T2へ増加させられ、及び
該反応混合液の温度は次に温度T3へ増加させられるが、T3≧T2である;及び
該反応混合液に添加される塩素の総量の60重量%以上、好ましくは70重量%以上は、該反応混合液の温度がT1からT2へ増加させられる期間中に添加される、及び
温度T1は90℃〜110℃であり、温度T2はT1〜135℃であり、及びT3は110℃より高く、該エチレン系ポリマーの融解温度Tmより低い;及び
該エチレン系ポリマーは、350,000g/mol未満かつ150,000g/molを超える重量平均分子量Mwを有するプロセスを提供する。
【0086】
融解温度Tmは、本明細書に記載したように、DSCによって決定される、エチレン系ポリマーのピーク融解温度である。
【0087】
また別の実施形態では、エチレン系ポリマーは、340,000g/mol未満の重量平均分子量Mwを有する。
【0088】
また別の実施形態では、エチレン系ポリマーは、325,000g/mol未満の重量平均分子量Mwを有する。
【0089】
1つの実施形態では、エチレン系ポリマーは、300,000g/mol以下の重量平均分子量を有する。
【0090】
また別の実施形態では、エチレン系ポリマーは、150,000g/molを超える重量平均分子量を有する。
【0091】
また別の実施形態では、エチレン系ポリマーは、175,000g/mol以上の重量平均分子量を有する。
【0092】
また別の実施形態では、エチレン系ポリマーは、325,000g/mol未満かつ175,000g/molを超える重量平均分子量Mwを有する。
【0093】
好ましい実施形態では、エチレン系ポリマーは、HDPEである。
【0094】
また別の実施形態では、反応混合液に添加される塩素の総量の70重量%以上は、該反応混合液の温度がT1からT2へ増加させられる期間中に添加される。
【0095】
また別の実施形態では、反応混合液に添加される塩素の総量の60〜90重量%は、該反応混合液の温度がT1からT2へ増加させられる期間中に添加される。
【0096】
また別の実施形態では、反応混合液に添加される塩素の総量の70〜80重量%は、該反応混合液の温度がT1からT2へ増加させられる期間中に添加される。
【0097】
本発明は、本明細書に記載した本発明のプロセスから形成された塩素化エチレン系ポリマーをさらに提供する。
【0098】
本発明の塩素化エチレン系ポリマーは、本明細書に記載した2つ又はそれ以上の実施形態の組み合わせを含んでよい。
【0099】
本発明の組成物は、本明細書に記載した2つ又はそれ以上の実施形態の組み合わせを含んでよい。
【0100】
本発明の製品は、本明細書に記載した2つ又はそれ以上の実施形態の組み合わせを含んでよい。
【0101】
本発明のプロセスは、本明細書に記載した2つ又はそれ以上の実施形態の組み合わせを含んでよい。
【0102】
塩素化エチレン系ポリマー
本発明の塩素化エチレン系ポリマーの特定の特徴は、そのようなポリマーが、粒子間変形及びコールドフローへ適正に抵抗するために十分なモジュラス及び結晶化温度のポリマーを形成するために制御された方法で塩素と反応させられる、中間分子量塩素化エチレンポリマーから形成されることにある。制御された塩素の添加は、非塩素化領域の比較的小さい結晶化可能なセグメントが最終ポリマー中に残留している特殊なブロック状(もしくは擬ブロック状)塩素分布を生じさせると想定される。この選択的塩素化分布は、塩素化ポリマーにおける低温結晶化の量の増加を提供する。
【0103】
エチレン系ポリマーは、エチレンホモポリマー又はエチレン/α−オレフィンインターポリマーであってよい。好ましい実施形態では、エチレン系ポリマーは、エチレンホモポリマー、及び好ましくはHDPE(高密度ポリエチレン)である。
【0104】
また別の実施形態では、エチレン系ポリマーは、0.930g/cc以上、好ましくは0.940g/cc以上、及びより好ましくは0.950g/cc以上の密度を有する。好ましい実施形態では、エチレン系ポリマーは、0.940g/ccを超える密度を備えるエチレンホモポリマーである。
【0105】
また別の実施形態では、エチレン系ポリマーは、0.955g/cc以上、好ましくは0.956g/cc以上の密度を有する。好ましい実施形態では、エチレン系ポリマーは、エチレンホモポリマー、及び好ましくはHDPEである。
【0106】
また別の実施形態では、エチレン系ポリマーは、0.965g/cc以下、好ましくは0.960g/cc以下の密度を有する。好ましい実施形態では、エチレン系ポリマーは、エチレンホモポリマー、及び好ましくはHDPEである。
【0107】
また別の実施形態では、エチレン系ポリマーは、350,000g/mol未満、好ましくは325,000g/mol以下、及びより好ましくは300,000g/mol以下の重量平均分子量を有する。また別の実施形態では、エチレン系ポリマーは、全個別値及びそれらの間の部分範囲を含む、200,000g/mol〜340,000g/molの重量平均分子量を有する。好ましい実施形態では、エチレン系ポリマーは、エチレンホモポリマー、及び好ましくはHDPEである。
【0108】
また別の実施形態では、エチレン系ポリマーは、150,000g/molを超える、好ましくは165,000g/mol以上、及びより好ましくは175,000g/mol以上の重量平均分子量を有する。また別の実施形態では、エチレン系ポリマーは、全個別値及びそれらの間の部分範囲を含む、150,000g/mol〜325,000g/molの重量平均分子量を有する。好ましい実施形態では、エチレン系ポリマーは、エチレンホモポリマー、及び好ましくはHDPEである。
【0109】
また別の実施形態では、エチレン系ポリマーは、5g/10分以下、好ましくは3g/10分以下、及びより好ましくは2g/10分以下のメルトインデックス(I10)を有する。好ましい実施形態では、エチレン系ポリマーは、エチレンホモポリマー、及び好ましくはHDPEである。
【0110】
また別の実施形態では、エチレン系ポリマーは、0.8g/10分以上、好ましくは0.9g/10分以上、及びより好ましくは1g/10分以上のメルトインデックス(I10)を有する。好ましい実施形態では、エチレン系ポリマーは、エチレンホモポリマー、及び好ましくはHDPEである。
【0111】
また別の実施形態では、エチレン系ポリマーの融点(Tm)は、DSCによって決定される、110℃以上、好ましくは120℃以上、及びより好ましくは130℃以上である。
【0112】
エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、当分野において一般に公知である任意の従来型エチレン/α−オレフィン重合技術を用いて製造できる。例えば、エチレン/α−オレフィンインターポリマーの重合は、Ziegler−NattaもしくはKaminsky−Sinnタイプの重合反応において周知の条件で実施できる。エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、モノ−もしくはビス−シクロペンタジエニル、インデニル、もしくはフルオレニル遷移金属(好ましくは第4族)触媒又は束縛幾何学的触媒を用いて作成することもできる。懸濁液、溶液、スラリー、ガス相、固体粉末重合、又は所望であればその他のプロセス条件を使用できる。支持体、例えばシリカ、アルミナ、又はポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレンもしくはポリオレフィン)もまた、所望であれば使用できる。
【0113】
エチレンは、C3−C12α−オレフィン、C3−C20モノカルボン酸のC1−C12アルキルエステル;不飽和C3−C20モノ−もしくはジカルボン酸;不飽和C4−C8ジカルボン酸の無水物;及び飽和C2−C18カルボン酸のビニルエステルからなる群より選択される、少なくとも1つのエチレン不飽和モノマーと重合させることもできる。
【0114】
塩素化エチレン系ポリマーは、分枝状もしくは非分枝状であるエチレンをベースとするインターポリマーから調製できる。エチレン系ポリマーは、フリーラジカルプロセス、Ziegler−Natta触媒系、例えば米国特許第4,661,465号明細書及び同第4,873,300号明細書に提示された改良された方法、メタロセン触媒系、及び/又は束縛幾何学的触媒系、例えば米国特許第5,272,236号明細書及び同第5,278,272号明細書に開示された触媒系によって調製できる;各々は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0115】
1つの実施形態では、塩素化エチレン系ポリマーは、不均一に分枝状のエチレンをベースとするインターポリマーから調製される。
【0116】
また別の実施形態では、塩素化エチレン系ポリマーは、均一に分枝状の直鎖エチレンをベースとするインターポリマーから調製される。
【0117】
また別の実施形態では、塩素化エチレン系ポリマーは、均一に分枝状の、実質的に直鎖状のエチレンをベースとするインターポリマーから調製される。
【0118】
好ましい実施形態では、塩素化エチレン系ポリマーは、Ziegler−Natta触媒系、例えば米国特許第4,661,465号明細書及び同第4,873,300号明細書に提示された改良された方法から調製されるエチレンホモポリマーから調製される。
【0119】
不活性液体は、エチレン系ポリマーを重合するために適切な溶媒として機能する。例には、直鎖状及び分枝状炭化水素、例えばイソブタン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、及びそれらの混合物;環式及び脂環式炭化水素、例えばシクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロヘプタン、及びそれらの混合物;ペルフルオロ化炭化水素、例えばペルフルオロ化C4−10アルカン;並びに芳香族及びアルキル置換芳香族化合物、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、及びエチルベンゼンが含まれる。適切な溶媒には、さらにまたモノマーもしくはコモノマーとして作用できる液体オレフィンも含まれ、ブタジエン、シクロペンテン、1−ヘキセン、4−ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキサン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1,4−ヘキサジエン、1−オクテン、1−デセン、スチレン、ジビニルベンゼン、アリルベンゼン、及びビニルトルエン(全イソマーを単独で又は混合物中に含む)を含む。上記の混合物もまた適合する。所望であれば、通常は気体状のオレフィンを加圧によって液体に変換させ、重合において使用することができる。
【0120】
代表的な塩素化オレフィンポリマーには、以下が含まれる。a)エチレンの塩素化及びクロロスルホン化ホモポリマー、及びb)C3−C10α−モノオレフィン;C3−C20モノカルボン酸のC1−C12アルキルエステル;不飽和C3−C20モノ−もしくはジカルボン酸;不飽和C4−C8ジカルボン酸の無水物;及び飽和C2−C18カルボン酸のビニルエステルからなる群より選択されるエチレン及び少なくとも1つのエチレン的に不飽和なモノマーの塩素化及びクロロスルホン化コポリマー。塩素化及びクロロスルホン化グラフトコポリマーも同様に含まれる。
【0121】
適合するポリマーの一部の例には、塩素化ポリエチレン;クロロスルホン化ポリエチレン;塩素化エチレンアクリル酸コポリマー;クロロスルホン化エチレンアクリル酸コポリマー;塩素化エチレンメタクリル酸コポリマー;クロロスルホン化エチレンメタクリル酸コポリマー;塩素化エチレンメチルアクリレートコポリマー;塩素化エチレンメチルメタクリレートコポリマー;塩素化エチレンn−ブチルメタクリレートコポリマー;塩素化エチレングリシジルメタクリレートコポリマー;エチレンとマレイン酸無水物との塩素化グラフトコポリマー;エチレンとプロピレン、ブテン、3−メチル−1−ペンテン、もしくはオクテンとの塩素化コポリマー、並びにエチレンとプロピレン、ブテン、3−メチル−1−ペンテンもしくはオクテンとのクロロスルホン化コポリマーが含まれる。コポリマーは、ジポリマー、ターポリマー、又はより高次のコポリマーであってよい。塩素化オレフィンポリマーには、典型的には塩素化ポリエチレンが含まれる。
【0122】
1つの実施形態では、塩素化の量は、塩素化エチレン系ポリマーの重量に基づいて、28重量%以上、好ましくは30重量%以上、及びより好ましくは塩素化ポリマーの総重量に基づいて33重量%以上である。好ましい実施形態では、エチレン系ポリマーは、エチレンホモポリマー、及び好ましくはHDPEである。
【0123】
また別の実施形態では、塩素化の量は、塩素化エチレン系ポリマーの重量に基づいて、45重量%以下、好ましくは42重量%以下、及びより好ましくは塩素化ポリマーの総重量に基づいて40重量%以下である。好ましい実施形態では、エチレン系ポリマーは、エチレンホモポリマー、及び好ましくはHDPEである。
【0124】
塩素化エチレン系ポリマーは、本明細書に記載した2つ又はそれ以上の適切な実施形態の組み合わせを有してよい。
【0125】
エチレン系ポリマーは、本明細書に記載した2つ又はそれ以上の実施形態の組み合わせを有してよい。
【0126】
塩素化反応
エチレン系ポリマーの塩素化もしくはクロロスルホン化は、懸濁液、溶液、固体もしくは流動層中で発生させることができる。フリーラジカル懸濁液塩素化プロセスは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第3,454,544号明細書、同第4,767,823号明細書、及びその中で言及された参考文献において記載かつ教示されている。そのようなプロセスは、後に塩素化される微細エチレンポリマーの水性懸濁液の調製を含む。クロロスルホン化プロセスは、従来的には溶液中で実施されるが、懸濁液及び非溶媒プロセスもまた公知である。クロロスルホン化オレフィンポリマーの調製は、米国特許第2,586,363号明細書;同第3,296,222号明細書;及び同第5,242,987号明細書に記載されている;各々は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0127】
懸濁液塩素化反応では、反応装置の温度は、エチレン系ポリマーにおける残留結晶化度を崩壊させるために十分に高い温度へ増加させることができる。典型的には、ポリエチレンのランダム塩素化のためには、反応温度は、塩素化反応において沈降しうる非結晶性非晶質ポリマーを形成するためにエチレン系ポリマーの融点から数℃以内の温度へ増加させられる。しかし、利用可能な非晶質ポリマー分画と反応させるために利用可能な塩素の量を制御することによって、及びエチレン系ポリマーの分子量を制御することによって、塩素分布、従ってポリマーの粘度、100%モジュラス、及び結晶化温度全部を制御できることが見出されている。
【0128】
好ましい実施形態では、エチレン系ポリマーは、密封攪拌槽中での水性スラリープロセスによって塩素化される。プロセス制御のためには、ポリマーは、粒径制御助剤、例えばタルクなどと水中で予備混合されてよい。追加の粒径制御助剤もまた塩素化中に添加することができる。スラリーは、界面活性剤をさらに含有してよい。
【0129】
本発明の1つの実施形態では、プロセス制御助剤(例えば、タルク)、界面活性剤(例えば、ポリエチレングリコールエステル)及び水が反応装置に装填され、その中で混合液は周囲温度(約27℃)から規定の出発温度へ加熱される。1つの実施形態では、塩素の添加は、スラリー温度が規定温度(T1)に達すると開始される。塩素ガスの制御添加は、基本ポリエチレン結晶化度を崩壊させるために十分な最高温度(T3)に等しい温度T2に達するまで進行する。この温度におけるこの傾斜中に、制御された量の塩素が所望の生成物総塩素含量及び塩素分布を達成するために反応装置に加えられる。塩素添加が完了した後に、反応混合液は低い温度へ、典型的には約90℃へ冷却される。反応混合液は、次に別の攪拌槽へ移される。粒子から残留HClが十分に洗浄された後、スラリーは冷却され、次に遠心分離装置によって脱水される。CPEケーキの各バッチは乾燥させられ、追加の6重量%(乾燥重量基準)までのブロッキング防止剤と混合されるが、ブロッキング防止剤にはタルク、カルシウムステアレート、カルシウムカーボネート、又は他の適切なブロッキング防止剤を含むことができる。ブレンディングは、バッチ流動層乾燥装置中で行うことができる。
【0130】
また別の実施形態では、反応混合液の温度は最初に低温T1から高温T2へ増加させられ、及び
該反応混合液の温度は次に温度T3へ増加させられるが、T3≧T2であり、所定の時間tに渡り温度T3で保持される;及び
該反応混合液に添加される塩素の総量の60重量%以上は、該反応混合液の温度がT1からT2へ増加させられる期間中に添加される、及び
該反応混合液に添加される塩素の総量の40%以下は、時間t中に添加される;及び
温度T1は50℃〜100℃であり、温度T2は100℃〜120℃、好ましくは100℃〜110℃であり、及びT3は110より高く、好ましくはT3>{Tm(ベースポリマー)−10℃}である。Tm(ベースポリマー)は、本明細書に記載したように、DSCによって決定される、エチレン系ポリマーのピーク融解温度である。また別の実施形態では、反応混合液に添加される塩素の総量の60重量%以上は、該反応混合液の温度がT1からT2へ増加させられる期間中に添加される。また別の実施形態では、反応混合液に添加される塩素の総量の70重量%以上は、該反応混合液の温度がT1からT2へ増加させられる期間中に添加される。また別の実施形態では、時間tは、例えば、塩素供給速度(即時反応)又は全塩素添加(質量平衡)によって決定される、塩素が反応するために十分な時間である。
【0131】
また別の実施形態では、反応混合液の温度は最初に低温T1から高温T2へ増加させられ、及び
該反応混合液の温度は次に温度T3へ増加させられるが、T3≧T2である;及び
該反応混合液に添加される塩素の総量の50重量%以上は、該反応混合液の温度がT1からT2へ増加させられる期間中に添加される、及び
温度T1は90℃〜110℃であり、温度T2はT1〜135℃であり、及びT3は110℃より高く、該エチレン系ポリマーの融解温度(Tm)より低い。融解温度Tmは、本明細書に記載したように、DSCによって決定される、エチレン系ポリマーのピーク融解温度である。また別の実施形態では、反応混合液に添加される塩素の総量の60重量%以上は、該反応混合液の温度がT1からT2へ増加させられる期間中に添加される。また別の実施形態では、反応混合液に添加される塩素の総量の70重量%以上は、該反応混合液の温度がT1からT2へ増加させられる期間中に添加される。また別の実施形態では、T2は、T1〜120℃である。また別の実施形態では、T2は、T1〜110℃である。
【0132】
また別の実施形態では、全塩素の100重量%は反応装置に、ベースポリマーのピーク融点から数℃(例えば、2〜5℃)以内のピーク反応装置温度への温度傾斜(t=0、及びT1からT3への傾斜)中に添加される。
【0133】
また別の実施形態では、塩素化反応は、110℃より高い温度(T3)及び好ましくは120℃より高い温度でラインアウト(line−out)(もしくは保持)される。また別の実施形態では、反応温度は塩素が反応するために十分な時間(例えば、少なくとも5分間)にわたり110℃より高い温度で保持される。また別の実施形態では、反応温度は塩素が反応するために十分な時間(例えば、少なくとも5分間)にわたり120℃より高い温度で保持される。
【0134】
また別の実施形態では、本明細書に記載した各プロセスについては、反応装置に添加される全塩素の65重量%以上、及びより好ましくは70重量%以上が温度傾斜(T1からT2又はT3へ)中に添加される。
【0135】
また別の実施形態では、反応装置に添加される全塩素の35重量%未満、及び好ましくは30重量%未満が反応ラインアウト中に添加される。
【0136】
また別の実施形態では、本明細書に記載した各プロセスについては、反応装置に添加される全塩素の25重量%以上は、反応温度が110℃(T2)に達する前に添加される。
【0137】
また別の実施形態では、塩素化反応は、フリーラジカル源、及び/又は触媒を含有さない。
【0138】
また別の実施形態では、塩素化反応は、UV照射によって活性化されない。
【0139】
本発明のプロセスは、本明細書に記載した2つ又はそれ以上の適切な実施形態の組み合わせを含有してよい。
【0140】
耐衝撃性改質剤(Impact Modifier)
耐衝撃性改質剤は、本明細書に記載した本発明の塩素化エチレンポリマーを含む。耐衝撃性改質剤は、炭化水素系ポリマー、例えばアクリルモノマー又はエチレン/α−オレフィンインターポリマーをさらに含有してよい。耐衝撃性改質剤は、1つ又はそれ以上のブロッキング防止剤、例えばタルク、カルシウムステアレート、カルシウムカーボネート、又は他の適切な作用物質をさらに含有してよい。ブロッキング防止剤は、一般に、全耐衝撃性改質剤に基づいて2〜20重量%の範囲内にある。好ましくは、ブロッキング防止剤は、2〜10重量%の範囲内にある。より好ましくは、ブロッキング防止剤は、2〜6重量%の範囲内にある。
【0141】
耐衝撃性改質ビニルクロライドポリマー組成物
本発明の耐衝撃性改質組成物は、ビニルクロライドポリマーと、本明細書に記載した本発明の塩素化エチレンポリマーを含む耐衝撃性改質剤とを含む。本組成物は、1つ又はそれ以上の追加の添加物、例えば充填剤及び/又は顔料、及びその他の耐衝撃性改質剤、例えばアクリル耐衝撃性改質剤、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)耐衝撃性改質剤、及び/又はメタクリレート−ブタジエン−スチレン(MBS)耐衝撃性改質剤をさらに含んでよい。
【0142】
1つの実施形態では、本ビニルクロライドポリマー組成物は、ビニルクロライドポリマー100重量部当たり2〜20重量部の耐衝撃性改質剤、及び好ましくはビニルクロライドポリマー100重量部当たり4〜10重量部の耐衝撃性改質剤を含む。
【0143】
本ビニルクロライドポリマー成分は、典型的には固体の高分子量ポリマーであるが、これはポリビニルクロライドホモポリマーもしくは1つ又はそれ以上の追加のコモノマーの共重合単位もしくはグラフト単位を有するビニルクロライドのコポリマーであってよい。存在する場合は、そのようなコモノマーは、典型的には20重量%までのコポリマー、好ましくは1〜5重量%のコポリマーを占める。適切なコモノマーの例には、C2−C6オレフィン、例えばブチル−アクリレートコポリマー;エチレン及びプロピレン;直鎖状もしくは分枝状C2−C4カルボン酸のビニルエステル、例えばビニルアセテート、ビニルプロピオネート、及びビニル2−エチルヘキサノエート;ビニルハライド、例えばビニルフルオライド、ビニリデンフルオライドもしくはビニリデンクロライド;ビニルエーテル、例えばビニルメチルエーテル及びブチルビニルエーテル;ビニルピリジン;不飽和酸、例えばマレイン酸、フマル酸、メタクリル酸並びにC1−C10モノ−もしくはジアルコールとのそれらのモノ−又はジエステル;マレイン酸無水物、マレイン酸イミド並びにマレイン酸イミドと芳香族、脂環式及び任意で分枝状脂肪族置換基とのN置換生成物;アクリロニトリル及びスチレンが含まれる。そのようなホモポリマー及びコポリマーは、Formosa社及びShintech社から市販で入手できる。
【0144】
本ビニルクロライドポリマー成分は、塊状、懸濁、分散、及びエマルジョンプロセスを含むがそれらに限定されない任意の適切な重合によって調製できる。懸濁プロセスを用いて調製されるポリマーが好ましい。
【0145】
ビニルクロライドのグラフトコポリマーもまた、本発明において使用するために適切である。例えば、ビニルクロライドとグラフト化できるエチレンコポリマー、例えばエチレンビニルアセテート、及びエチレンコポリマーエラストマー、例えばEPDM(エチレン、プロピレン及びジエンの共重合単位を含むコポリマー)及びEPR(エチレン及びプロピレンの共重合単位を含むコポリマー)は、ビニルクロライドポリマー成分として使用できる。そのような市販で入手できるポリマーの例は、Wacker Chemie GmbH社から入手できるVinnol(登録商標)500である。
【0146】
本発明のビニルクロライドポリマー組成物は、典型的にはポリマーの物理的ブレンドであり、そして市販生成物として有用であるために架橋結合又は加硫処理を必要としない。充填剤は、一般にはビニルクロライドポリマー100部当たり2〜50部の量で使用される。好ましくは、耐衝撃性組成物は、ビニルクロライドポリマー100部当たり5〜35部の充填剤を含有する。特に有用な充填剤には、シリカ、クレー、チタニウムジオキシド、タルク、カルシウムカーボネート、及びその他のミネラル充填剤が含まれる。カルシウムカーボネートが好ましい。本組成物は、他の配合剤、例えば他の耐衝撃性改質剤、安定剤、発泡剤、潤滑剤、顔料、着色剤、加工助剤、可塑剤、架橋剤をさらに含有してよい。そのような追加の成分の使用は、組成物を種々の用途、例えば剛性PVCサイディング材、パイプ及び形材、例えば窓枠形材、フェンス材、デッキ材及び電線導管、並びに他の用途に使用するために特別仕立てすることを可能にする。
【0147】
特に有用な配合剤には、錫、鉛及びカルシウム/亜鉛安定剤、ポリメチルメタクリレート加工助剤、及び炭化水素、エステル、もしくはアミド・ワックスが含まれる。配合剤が利用される場合は、それらは一般に、添加物のタイプに依存して、ビニルクロライド樹脂100部当たり0.1〜50部、及び好ましくは0.1〜30部の量で使用される。本発明の耐衝撃性組成物は、特にPVCサイディング、形材、及びパイプの製造において有用である。好ましくは、耐衝撃性剛性ビニルクロライドポリマー組成物は、ビニルクロライドポリマー100重量部当たり0.1〜25重量部の追加の成分を含んでよい。
【0148】
従来型の塩素化ポリエチレンは、約12重量%のカルシウムカーボネート充填剤を含有することがあるが、これは塩素化ポリオレフィン、例えば塩素化エチレン系ポリマーのブロッキング傾向を減少させるために使用される。これには、ブレンドを作成する追加の工程を必要とし、費用の点で不利益であり、最終ビニルクロライドポリマー調製物においては望ましくないカルシウムカーボネートを導入する。大量のブロッキング防止剤の添加は、材料の輸送及び/又は運搬中における個々の成分の偏析及び分離をさらにもたらすことがある。
【0149】
製造においては、ビニルクロライドポリマー及び耐衝撃性改質剤は一緒にブレンドされ、それによって耐衝撃性剛性ビニルクロライドポリマー組成物が形成される。ブレンドする工程は、当分野において一般に公知の任意の方法によって促進できる;例えば、ブレンドする工程は、高強度乾式混合ミキサー、配合押出機、回転式ブレンダー、リボンミキサー、Banbury型ミキサー、又は任意の他の混合装置によって促進することができる。
【0150】
耐衝撃性改質ビニルクロライドポリマー組成物のために典型的な最終用途にはシート、窓枠形材、フェンス材、サイディングパネル、デッキ材、及びパイプが含まれるがそれらに限定されない。押出成形、射出成形、圧縮成形を含むがそれらに限定されない一般に公知の方法は、製品、例えばシート、窓枠形材、フェンス材、サイディングパネル、デッキ材、パイプ、チューブ及び電線導管を形成するために使用できる。
【0151】
各々が本発明の塩素化エチレン系ポリマーから、又はそれを含有する組成物から形成される少なくとも1つの構成材を有する追加の製品には、カーペット構成材、ワイヤ外装、ケーブル、防御用衣服、自動車部品、フットウエア構成材、又はフォーム積層品、オーニング、防水布、屋根建造製品、耐久消費財、グリップ、ハンドル、コンピュータ構成材、ベルト、アップリケ、コンベヤベルトもしくはタイミングベルト、人工レザー、人工芝、又は布地が含まれるがそれらに限定されない。
【0152】
各々が本発明の塩素化エチレン系ポリマーから、又はそれを含有する組成物から形成された少なくとも1つの構成材を有する他の製品には、鋳造品、射出成形品、オーバーモールド製品、積層構造、押出成形シート、及び熱成形シートが含まれるがそれらに限定されない。
【0153】
定義
本明細書で言及される任意の数値範囲は、1単位の増分で下方の数値から上方の数値までの全数値を含むが、ただし任意の低い数値と任意の高い数値との間が少なくとも2単位離れていることを前提とする。1つの例として、組成上の、物理的もしくは他の特性、例えば分子量、メルトインデックスなどが100〜1,000であると記載されている場合は、本明細書には全個別値、例えば100、101、102など、及び部分範囲、例えば100〜144、155〜170、197〜200などが明示的に列挙されていることを意味する。1未満である数値を含有する、又は1より大きい分数(例えば、1.1、1.5など)を含有する範囲については、1単位は、適切に0.0001、0.001、0.01もしくは0.1であると見なされる。10未満の1桁数を含有する範囲(例えば、1〜5)については、1単位は、典型的には0.1であると見なされる。これらは、特に意図される例に過ぎず、列挙される最低値と最高値との間の数値のあらゆる考えられる組み合わせは、本出願において明示的に記載されていると見なすべきである。数値範囲は、本明細書で考察するように、反応温度、重量平均分子量及びその他の特性に関連して言及されている。
【0154】
本明細書で使用する用語「組成物」は、組成物を含む材料の混合物、並びに組成物の材料から形成された反応生成物及び分解生成物を含む。
【0155】
本明細書で使用する用語「ポリマー」は、同一タイプもしくは相違するタイプに関わらず、モノマーを重合する工程によって調製されるポリマー化合物を指す。そこで一般的用語「ポリマー」は、通常は1つだけのタイプのモノマーから調製されたポリマーを意味するために使用される用語「ホモポリマー」、及び以下で規定する用語「インターポリマー」を含む。
【0156】
上記で考察したように、本明細書で使用する用語「インターポリマー」は、少なくとも2種のタイプのモノマーの重合によって調製されるポリマーを指す。そこで一般的用語「インターポリマー」は、通常は2種のタイプのモノマーから調製されたポリマー、及び2種より多いタイプのモノマーから調製されたポリマーを指すために使用されるコポリマーを含む。
【0157】
本明細書で使用する用語「エチレン系ポリマー」は、主として(50モル%を超える)エチレンモノマー単位から形成されたポリマーを指す。モル%は、重合可能なモノマーの総モルに基づいている。
【0158】
試験方法
試験方法には、以下の方法が含まれる。
ブロッキング力(Blocking Force)
塩素化ポリエチレンについてのブロッキング力の測定方法は、参照により本明細書に全体として組み込まれる米国特許第4,412,448号明細書に記載されている。詳細には、直径2インチの型に40〜50gの粒子状塩素化ポリエチレン樹脂を充填した。粘着を防止するために、第1ポリテトラフルオロエチレン製ディスク及び第2ポリテトラフルオロエチレン製ディスクを各々樹脂の上方及び下方に配置した。金型の内側金属壁をライニングするためにはポリテトラフルオロエチレン製シートが使用されている。金型は60℃で平衡させたオーブン内に配置し、サンプル(約40g)は60psigの圧力下で3時間圧縮した。金型をオーブンから取り出し、ASTM規定温度及び湿度制御された実験室環境において、少なくとも3時間約25℃へ冷却させた。
【0159】
次にASTM規格D 638−03に記載されたように、ケーキを金型から取り出し、Instron 1122型試験機へ移した。次に米国特許第4,412,448号明細書に記載されているようなウェッジをケーキに貫通させるために、Instron試験機によって下降させた。ウェッジは、結合された、上方長方形区間及び下方ウェッジ形の三角形区間を含む。細長い三角形区間の先端は、約60℃の角度で鋭角のV形構造を有するが、任意の所望の構造もしくは角度へ調整することができる。好ましくは、ウェッジの両端は、少なくとも試験されるケーキの両端まで伸長する。
【0160】
Instron試験機内でのウェッジの進行速度は、約0.5インチ/分に設定した。Instron試験機によって加えられる力をウェッジが樹脂ケーキの破断点までケーキに貫通するに従って継続的に測定した。ケーキを破断させるために必要とされる力は、測定される最高力であり、塩素化ポリエチレン樹脂が凝集する傾向、及び塩素化ポリエチレン樹脂が凝集する程度の尺度を提供する。
【0161】
ゲル浸透クロマトグラフィ
エチレン系ポリマーについての平均分子量及び分子量分布は、ガードカラムとともに単一Plgel MIX−Aカラムを装備したPolymer Laboratories PL−210 GPCからなるゲル浸透クロマトグラフィシステムを用いて決定した。移動相は、200pmブチルヒドロキシトルエン(BHT)を用いて安定化させた1,2,4−トリクロロ−ベンゼンであった。ポリマー(1.1〜1.2mg)は、約1mLの移動相中に溶解させた。PL−210オーブンの温度は145℃に制御した。GPC較正のためには、7,500,000〜580ダルトンの分子量を備える1セットのポリスチレン標準物質(Polymer Labs製;EasyCal Standards)を使用した。結果として生じる検量線は、ポリエチレン検量線を生成するために以下のMark−Houwink係数を用いて変換した。Mark−Houwink係数:ポリスチレンα=0.725、ポリスチレンlogK=−4.021、ポリエチレンa=0.725、ポリエチレンlogK=−3.391。ラン条件は次の通りであった。流量=0.2mL/分、注入量=100μL/分、ラン時間=90分間、及び注入遅延=4分間。数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(MWD)は、各々、曲線下面積から分子量モーメントを計算するソフトウエアを用いて決定した。分布(分子量に関する)のモーメント(数及び重量平均)は、原点周囲の第1及び第2モーメントとして直接的に計算できる。第1モーメント(数平均分子量)は、Mn=[Sumi(Wfi)/[Sumi(Wfi/Mi)]である。第2モーメント(重量平均分子量)は、Mw=[Sumi(Wfi*i)/[Sumi(Wfi)](式中、Wfは重量分率であり、Miは分子量である)である。レフラクトメータ信号は重量分率に直接比例しているので、RI信号は重量分率と直接的に置換できることに留意されたい。分子量は、従来型検量線から入手される分子量であることに留意されたい。分子量分布(MWD)は、Mw/Mnである。
【0162】
ポリマー塩素含量
ポリマー塩素含量は、TA Instrument Model 2950熱重量分析装置を用いて、熱重量分析(TGA)によって測定した。サンプルパンを取り扱うためにピンセットを用いて、各サンプルパンを洗浄し、乾燥させ、計量した。この手順は各パンの底部がサンプル(典型的には15〜20mg)によって被覆されることを必要とする。パンが機器プラットフォーム上に配置された後、分析者はソフトウエア制御分析を開始する。塩素分析は、窒素を用いて加熱炉を清掃し、1分間に渡り50℃で平衡させ、5分間に渡り110℃で平衡させ、そして50℃/分の速度で450℃へ上昇させるように構成される。次に、加熱炉のガスを空気に切り替え、750℃へ加熱を継続し、5分間平衡させる。機器は、較正したサンプル重量消失に基づいて塩素含量を報告する。
【0163】
示差走査熱量測定
示差走査熱量測定は、TA Instruments Model Q1000シリーズの機器を用いて測定した。試験手順は、Cahnマイクロバランス上の計量済みDSCパン内へ約10mgのポリマーを計量する工程を含む。ポリマーサンプルは、0.5重量%未満(ポリマーの総重量に基づく)の揮発性物質(TGAによって決定)へ事前に乾燥させ、その後にポリマーをDSCによって分析する。蓋は、密閉された雰囲気を保証するためにパンの上にクリンピングした。サンプルパンをDSCセル内に配置し、−50℃へ冷却した。サンプルを1分間この温度に維持し、次に約10℃/分の速度で約180℃の温度へ加熱した。サンプルを1分間この温度で維持した。次にサンプルを10℃/分の速度で−50℃へ冷却し、その温度で1分間等温で維持した。サンプルを次に、完全融解するまで10℃/分の速度で加熱した(第2加熱;約180℃)。他に規定しない限り、各ポリマーサンプルの融点(Tm)及びポリマー残留HDPE結晶化度は、110℃〜150℃の熱反応を組み込むことによって、DSCから入手される第1熱曲線から決定した。結晶化温度(Tc)は、第1冷却曲線から測定する。Tmは、加熱曲線上に示したように、吸熱のピークで測定された温度である。Tcは、冷却曲線上に示したように、発熱のピークで測定された温度である。
【0164】
「残留HDPE結晶化度(J/g)」は、最初のHDPEベースポリマー内の結晶化度(典型的には110℃〜150℃の範囲内のピーク結晶化度)を測定するために使用された温度範囲とほぼ同一温度範囲でDSCによって測定される、塩素化ポリマーにおける結晶化度を指す。「結晶化率」は、結合した塩素の重量を除外した、塩素化ポリマー中の結晶化度(又は残留結晶化度)の重量パーセンテージである。計算のためには、DSCによる100%結晶性ポリエチレンの融解熱は290J/gである。同様の方法は、参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許第6,124,406号明細書に記載されている。この場合には、ポリマー結晶化率は、100%結晶化率値を基準とする。結晶化率計算の例は、以下の通りである。36重量%の塩素(ポリマーの総重量に基づく)塩素化エチレン系ポリマーについての融解エンタルピーは、DSCによってΔHf=5J/gであると測定された。ポリマー内に組み込まれた塩素について補正するためには、補正ΔHf=5/0.64=7.8J/g(0.64=1−0.36(塩素の重量分率))である。100%結晶化率値を基準とする結晶化率は、7.8/290×100=2.7%の結晶化率になる。
【0165】
モジュラス試験方法
この試験方法では、(モジュラスブランケット)の製造及び熱可塑性ポリマー比較引張特性の決定について記載する。
【0166】
ポリマー樹脂は、100部のCPE、2部のカルシウムステアレート、3部のDrapex 6.8、及び0.5部のステアリン酸を用いて調製し、5分間高温(188℃)ロールミル上で圧延した。このブランケットを次に圧縮し、ブランケットからサンプル区間を切り取った。ダンベル試験ストリップは引張試験機に配置し、サンプルが破断するまで引張った。結果は、メガパスカル(MPa)で測定した。ポリマーの引張特性は、速度、寸法及び方向感受性である。速度及び試験片寸法の両方を固定した。方向−引張関係は、正確に同一技術によって引張試験片を調製する単純な手段によって相当にしっかりと固定される(ASTM D3182−89、D412−98aによる)。
【0167】
サンプル調製及び試験方法は、以下の通りである。ブランケットは60ミルフレーム内に配置した。サンプルは、力を加えずに2分間188℃で予備加熱した加熱圧縮器内に配置した。圧縮機は20トンへ加圧し、この圧力で1分間保持した。サンプルを冷却用プラテンへ移し、20トンへ加圧し、3分間冷却させた。それから試験片を切断したシートは、清潔な平滑表面上に配置した。ASTM D412−98aの「C型ダイ」を用いて、シートの横断方向にあるダイの長さ寸法を備える5つの試験片を切断した。
【0168】
切断した試験片は、ASTMの室温で、少なくとも一晩、又は18時間状態調節した。ダンベルは、C型ダイを用いて、ASTM D412−98a、方法Aによる引張試験のために調製した。サンプルの寸法は、方法A、C型のダイによって規定した。1サンプル当たり少なくとも3つの試験片の厚さを測定かつ記録した。サンプルは、Instron 1122引張試験機装置を用いて測定された。クロスヘッドは、サンプル破断が検出されるまで、1分当たり20インチ(約50.8cm)の速度で、自動的に移動させた。100%伸長での平均引張応力(100%モジュラス)を計算した(TestWorks4ソフトウエア)。
【0169】
密度
密度は、ASTM D−792−00に従って測定される。
【0170】
メルトインデックス
エチレン系ポリマーについてのg/10分でのメルトインデックス(I10)は、ASTM D−1238−04(条件、190℃/10.0kg)を用いて測定した。表記「I2」は、ASTM D−1238−04(条件、190℃/2.16kg)を用いて測定した、g/10分でのメルトインデックスを指す。注釈「I21」は、ASTM D−1238−04(条件、190℃/21.6kg)を用いて測定した、g/10分でのメルトインデックスを指す。
【0171】
表面欠陥(Surface Defects)
耐衝撃性改質PVC調製物は、大量供給型(flood−fed)二軸スクリュー押出機上で押出し、形材ダイを用いて形成した。典型的な窓枠形材調製物は、100phrのPVC(すべての他の成分の量はPVCに関連する);およそ3〜4phrのアクリル耐衝撃性改質剤、3〜4phrの実施例CPE耐衝撃性改質剤、4phrのカルシウム/亜鉛安定剤及び潤滑剤、4phrのチタニウムジオキシド色素、5phrのカルシウムカーボネート充填剤を含有する。その他の成分、例えば色素、熱歪み防止用添加物、帯電防止剤、光沢調整剤などもまた使用できる。スクリュー押出機は、吸引孔を備える円錐45mm二軸スクリューであった。バレル温度は175〜185℃の範囲内であり、ダイ温度は205℃であった。ダイは、水冷式真空較正を備える窓枠形材の形状であった。形材の長さ6メートルについて目に見える表面欠陥の数を記録した。
【0172】
以下の実施例は本発明を例示するが、本発明の範囲を限定することは意図されていない。
【実施例】
【0173】
CPE調製物
2種のポリエチレンホモポリマー(公称分子量:0.959g/ccの密度を備える300,000及び0.955g/ccの密度を備える350,000)を水性スラリー反応混合液中で塩素と反応させ、3種の塩素化ポリマーを生成した。CPE−1、CPE−2及びCPE−4と表示したこれらの塩素化ポリエチレンの特性は、表1に示した。CPE−3は、CPE−1と、CPE及びカルシウムカーボネートの総重量に基づいて12重量%のカルシウムカーボネートとの混合物である。
【0174】
表1における実施例については、24lbsのエチレン系ポリマー、0.6lbsのタルク、12mLの界面活性剤(例えば、ポリエチレングリコールエステル)及び189lbsの水を反応装置に装填し、そこで混合物を周囲温度(約27℃)から100℃へ加熱した。塩素添加は、スラリー温度が100℃(T1)に達した時点に開始した。塩素ガスの添加は、1時間当たりポリエチレン1ポンド当たり約0.8lbsの制御された速度で、基本ポリエチレン結晶化度を崩壊させるために十分な最高温度(T2、約129〜132℃)に達するまで進行させた。この温度傾斜中に、所望の生成物総塩素含量及び塩素分布を達成するために制御された量の塩素を反応装置に加えた。本発明の好ましいCPE−4の場合並びにCPE−2の場合については、全塩素の75重量%(反応混合物に添加される塩素の総量に基づく)を反応温度の傾斜中に添加した。CPE−1の望ましくない場合については、全塩素のほぼ半分が温度傾斜中に添加された。各反応は、T3(T3=T2)ラインアウト温度を有し、このラインアウト中に塩素の残りが添加された。塩素添加が完了した後に、反応混合液をほぼ90℃へ冷却した。反応混合液は、次に別の攪拌槽へ移した。粒子から残留HClが十分に洗浄された後、スラリーを冷却し、次に遠心分離装置によって脱水した。CPEケーキのバッチは、バッチ流動層乾燥装置内でおよそ2重量%(乾燥重量基準)のカルシウムステアレートを用いて乾燥させた。温度傾斜及びピーク温度中の塩素添加反応は、2J/g(0.5cal/g)未満の残留結晶化度(110℃〜150℃の温度範囲内でDSCによって測定される)を生じさせる。塩素化ポリエチレンは、1.05〜1.51N/mm2のモジュラス値を有した。
【0175】
CPE−4は、36重量%の塩素へ塩素化された。CPE−2及びCPE−4には、温度の「ランプアップ(ramp−up)」中にポリエチレンと反応させた60重量%以上の塩素及び「ラインアウト」温度中にポリエチレンと反応させた40重量%以下の塩素を用いて、反応装置内への同一の制御された塩素化添加を使用した。温度上昇及びラインアウト温度中の塩素添加反応は、2J/g未満の残留結晶化度(110℃〜150℃の温度範囲内でDSCによって測定される)を生じさせる。
【0176】
結果として生じる塩素化ポリエチレンであるCPE−4(本発明)は、20psi未満のブロッキング力を有した。このCPEは、窓枠形材用のポリビニルクロライド(PVC)調製物中で使用されると、優れた加工結果を生じさせ、形材は形材の長さ6メートル中に目に見える表面欠陥を有さなかった。CPE−4は、他の耐衝撃性改質剤、例えばアクリル耐衝撃性改質剤と組み合わせて使用できる。CP−4は、PVC調製物中で3〜8phrのレベルで使用された。
【0177】
CPEの溶融押出
上記に記載した本発明のCPE(CPE−4)、並びにCPE−1、CPE−2及びCPE−3は各々、窓枠形材ラインを用いて、大量供給型二軸スクリュー押出機上で各々押出した。上記で考察したように、これらのポリマーの特性及び結果として生じた押出物は表1に示した。
【0178】
【表1】

【0179】
「残留HDPE結晶化度(J/g)」は、最初のHDPEベースポリマー内の結晶化度(典型的には110℃〜150℃の範囲内のピーク結晶化度)を測定するために使用された温度範囲とほぼ同一温度範囲でDSCによって測定される、塩素化ポリマーにおける結晶化度を指す。「結晶化率」は、結合した塩素の重量を除外した、塩素化ポリマー中の結晶化度(又は残留結晶化度)の重量パーセンテージである。計算のためには、DSCによる100%結晶性ポリエチレンの融解熱は290J/gである。同様の方法は、参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許第6,124,406号明細書に記載されている。この場合には、ポリマー結晶化率は100%結晶化率値を基準とする。結晶化率の計算の例は、以下の通りである。36重量%の塩素(ポリマーの総重量に基づく)を含有する塩素化エチレン系ポリマーについての融解エンタルピーは、DSCによってΔHf=5J/gであると測定された。ポリマー内に組み込まれた塩素について補正するためには、補正ΔHf=5/0.64=7.8J/gである(100%結晶化率を基準とする結晶化率は、7.8/290×100=2.7%の結晶化率となる)。
【0180】
押出の結果、及び詳細には形材の長さ6メートルにおける表面欠陥の数を、以下の表2に示す。各窓枠形材調製物は、100phrのPVC(すべての他の成分の量はPVCに関連する);およそ3〜4phrのアクリル耐衝撃性改質剤、3〜4phrの実施例CPE耐衝撃性改質剤、4phrのカルシウム/亜鉛安定剤及び潤滑剤、4phrのチタニウムジオキシド顔料、5phrのカルシウムカーボネート充填剤を含有した。スクリュー押出機は、吸引孔を備える円錐45mm二軸スクリューであった。バレル温度は175〜185℃の範囲内であり、ダイ温度は205℃であった。ダイは、水冷式真空較正を備える窓枠形材形状であった。長さ6メートルの形材について目に見える表面欠陥の数を記録した。
【0181】
【表2】

【0182】
結晶化温度は、不良なブロッキング性能を有した比較例のCPE−1については10.6℃であったのが、優れたブロッキング力を有したCPE−4については32.9℃へ上昇したことに留意されたい。結晶化温度におけるこの上昇は、ポリマー構造内のより完全な結晶領域の指標である。さらに、この結晶化温度における上昇は、ポリマーが粒子間変形及びコールドフローへ適正に抵抗するための十分なモジュラス及び結晶化についての指標である。
【0183】
表1及び2に示したデータから分かるように、比較例のCPE−1は、44.7psiという許容できないブロッキング力を有した。許容できるブロッキング力は、20psi未満である。比較例のCPE−1は、許容できる0個という欠陥数を有した。許容できる欠陥数は、形材6メートルにおいて約10個未満、及び好ましくは0個の欠陥である。比較例のCPE−2は、9.0psiの許容できるブロッキング力を有したが、許容できない欠陥数(19個)を有した。比較例のCPE−3は、9.1psiの許容できるブロッキング力、及び許容できる欠陥数(0個)を有したが、この比較例は12重量%のカルシウムカーボネートを添加する追加の工程を必要とし、この追加の工程は望ましくなく、かつ費用がかかる。実施例のCPE−4は、11.5psiの許容できるブロッキング力を有しており、さらに許容できる(0個)の欠陥数を有した。
【0184】
そこで、比較例のCPE−1は、許容できる製品性能を備えるが、許容できないバルクハンドリング性を備える場合を提示している。比較例のCPE−2は、許容できるバルクハンドリング性を備えるが、許容できない製品性能を備える場合を提示している。比較例のCPE−3は、許容できるバルクハンドリング性及び製品性能を備えるが、望ましくない追加のブロッキング防止剤を備える場合を提示している。実施例のCPE−4は、比較的低いブロッキング防止剤レベルで許容できるバルクハンドリング性及び製品性能を備える場合を提示している。
【0185】
先行する特定の実施形態を通して本発明をある程度詳細に記載してきたが、この詳細は主として例示することを目的としている。当業者であれば、特許請求項に記載するように、本発明の精神及び範囲から逸脱せずに、多くの変更及び修正を加えることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩素化エチレン系ポリマーであって、以下の特性、
a)290J/gのポリエチレン融解熱を用いて、DSCによって測定された8%未満の結晶化率と、及び
b)28℃〜60℃の結晶化温度Tcとを含み、
前記塩素化エチレン系ポリマーは、325,000g/mol以下の重量平均分子量Mwを有するエチレン系ポリマーから形成される、塩素化エチレン系ポリマー。
【請求項2】
前記エチレン系ポリマーは、300,000g/mol以下の重量平均分子量を有する、請求項1に記載の塩素化エチレン系ポリマー。
【請求項3】
前記エチレン系ポリマーは、150,000g/molを超える重量平均分子量を有する、請求項1に記載の塩素化エチレン系ポリマー。
【請求項4】
前記エチレン系ポリマーは、HDPEである、請求項1に記載の塩素化エチレン系ポリマー。
【請求項5】
前記塩素化エチレン系ポリマーは、5%未満の結晶化率を有する、請求項1に記載の塩素化エチレン系ポリマー。
【請求項6】
前記塩素化エチレン系ポリマーは、2%未満の結晶化率を有する、請求項1に記載の塩素化エチレン系ポリマー。
【請求項7】
前記塩素化エチレン系ポリマーは、28℃〜50℃の結晶化温度Tcを有する、請求項1に記載の塩素化エチレン系ポリマー。
【請求項8】
前記塩素化エチレン系ポリマーは、28℃〜40℃の結晶化温度Tcを有する、請求項1に記載の塩素化エチレン系ポリマー。
【請求項9】
前記塩素化エチレン系ポリマーは、前記ポリマーの総重量に基づいて20〜50重量%の塩素を含有する、請求項1に記載の塩素化エチレン系ポリマー。
【請求項10】
前記塩素化エチレン系ポリマーは、1.15N/mm2を超える「100%モジュラス」値、及び28℃より高い結晶化温度を示す、請求項1に記載の塩素化エチレン系ポリマー。
【請求項11】
前記塩素化エチレン系ポリマーは、20psi以下のブロッキング力を有する、請求項1に記載の塩素化エチレン系ポリマー。
【請求項12】
請求項1に記載の塩素化エチレン系ポリマーを含む組成物。
【請求項13】
エチレン/α−オレフィンインターポリマーをさらに含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
アクリルポリマーをさらに含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
ビニルクロライドポリマーをさらに含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項16】
ビニルクロライドポリマーをさらに含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項17】
ビニルクロライドポリマーをさらに含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項18】
請求項1に記載の塩素化エチレンポリマーから形成された少なくとも1つの構成材を含む製品。
【請求項19】
請求項12に記載の組成物から形成された少なくとも1つの構成材を含む製品。
【請求項20】
請求項13に記載の組成物から形成された少なくとも1つの構成材を含む製品。
【請求項21】
請求項14に記載の組成物から形成された少なくとも1つの構成材を含む製品。
【請求項22】
請求項15に記載の組成物から形成された少なくとも1つの構成材を含む製品。
【請求項23】
請求項16に記載の組成物から形成された少なくとも1つの構成材を含む製品。
【請求項24】
請求項17に記載の組成物から形成された少なくとも1つの構成材を含む製品。
【請求項25】
前記製品は、押出プロセスによって形成される、請求項19に記載の製品。
【請求項26】
前記製品は、押出形材(extrusion profile)である、請求項25に記載の製品。
【請求項27】
前記押出形材が有する表面欠陥は、形材6メートル当たり10個以下である、請求項26に記載の製品。
【請求項28】
前記製品は、シート、サイディング材(siding)、パイプ、チューブ、窓枠形材(window profiles)、フェンス材、デッキ材及び電線用導管からなる群より選択される、請求項25に記載の製品。
【請求項29】
塩素化エチレン系ポリマーであって、以下の特性、
a)290J/gのポリエチレン融解熱を用いて、DSCによって測定された8%未満の結晶化率と、及び
b)25℃〜80℃の結晶化温度Tcとを含み、
前記塩素化エチレンポリマーは、325,000g/mol以下かつ150,000g/molを超える重量平均分子量Mwを有するエチレン系ポリマーから形成される、塩素化エチレン系ポリマー。
【請求項30】
前記エチレン系ポリマーは、300,000g/mol以下の重量平均分子量を有する、請求項29に記載の塩素化エチレン系ポリマー。
【請求項31】
前記エチレン系ポリマーは、175,000g/molを超える重量平均分子量を有する、請求項29に記載の塩素化エチレン系ポリマー。
【請求項32】
前記エチレン系ポリマーは、HDPEである、請求項29に記載の塩素化エチレン系ポリマー。
【請求項33】
前記塩素化エチレン系ポリマーは、5%未満の結晶化率を有する、請求項29に記載の塩素化エチレン系ポリマー。
【請求項34】
前記塩素化エチレン系ポリマーは、2%未満の結晶化率を有する、請求項29に記載の塩素化エチレン系ポリマー。
【請求項35】
前記塩素化エチレン系ポリマーは、25℃〜60℃の結晶化温度Tcを有する、請求項29に記載の塩素化エチレン系ポリマー。
【請求項36】
前記塩素化エチレン系ポリマーは、25℃〜50℃の結晶化温度Tcを有する、請求項29に記載の塩素化エチレン系ポリマー。
【請求項37】
前記塩素化エチレン系ポリマーは、ポリマーの総重量に基づいて20〜50重量%の塩素を含有する、請求項29に記載の塩素化エチレン系ポリマー。
【請求項38】
前記塩素化エチレン系ポリマーは、1.15N/mm2を超える「100%モジュラス」値、及び28℃より高い結晶化温度を示す、請求項29に記載の塩素化エチレン系ポリマー。
【請求項39】
前記塩素化エチレン系ポリマーは、20psi以下のブロッキング力を有する、請求項29に記載の塩素化エチレン系ポリマー。
【請求項40】
請求項29に記載の塩素化エチレン系ポリマーを含む組成物。
【請求項41】
エチレン/α−オレフィンインターポリマーをさらに含む、請求項40に記載の組成物。
【請求項42】
アクリルポリマーをさらに含む、請求項41に記載の組成物。
【請求項43】
ビニルクロライドポリマーをさらに含む、請求項40に記載の組成物。
【請求項44】
ビニルクロライドポリマーをさらに含む、請求項41に記載の組成物。
【請求項45】
ビニルクロライドポリマーをさらに含む、請求項42に記載の組成物。
【請求項46】
請求項40に記載の組成物から形成された少なくとも1つの構成材を含む製品。
【請求項47】
塩素化エチレン系ポリマーを調製するためのプロセスであって、前記プロセスは、
水性スラリー反応混合液中でエチレン系ポリマーを塩素化する工程を含み、及び
前記反応混合液の温度は最初に低温T1から高温T2へ増加させられ、及び
前記反応混合液の温度は次に温度T3へ増加させられるが、T3≧T2であり、所定の時間tにわたり温度T3で保持される;及び
前記反応混合液に添加される塩素の総量の60重量%以上は、前記反応混合液の温度がT1からT2へ増加させられる期間中に添加される、及び
前記反応混合液に添加される塩素の総量の40%以下は、時間t中に添加される;及び
温度T1は50℃〜100℃であり、温度T2は100℃〜120℃であり、及びT3は110℃より高い;及び
前記エチレン系ポリマーは、350,000g/mol未満の重量平均分子量Mwを有する、プロセス。
【請求項48】
前記反応混合液に添加される塩素の総量の60〜80重量%は、前記反応混合液の温度がT1からT2へ増加させられる期間中に添加される、及び
前記反応混合液に添加される塩素の総量の20〜40重量%は、時間t中に添加される、請求項47に記載のプロセス。
【請求項49】
前記反応混合液に添加される塩素の総量の70〜80重量%は、前記反応混合液の温度がT1からT2へ増加させられる期間中に添加される、及び
前記反応混合液に添加される塩素の総量の20〜30重量%は、時間t中に添加される、請求項47に記載のプロセス。
【請求項50】
請求項47に記載のプロセスから形成された塩素化エチレン系ポリマー。
【請求項51】
塩素化エチレン系ポリマーを調製するためのプロセスであって、前記プロセスは、
水性スラリー反応混合液中でエチレン系ポリマーを塩素化する工程を含み、及び
前記反応混合液の温度は最初に低温T1から高温T2へ増加させられ、及び
前記反応混合液の温度は次に温度T3へ増加させられるが、T3≧T2である;及び
前記反応混合液に添加される塩素の総量の60重量%以上は、前記反応混合液の温度がT1からT2へ増加させられる期間中に添加される、及び
温度T1は90℃〜110℃であり、温度T2はT1〜135℃であり、及びT3は110℃より高く前記エチレン系ポリマーの融解温度Tmより低い;及び
前記エチレン系ポリマーは、350,000g/mol未満かつ150,000g/molを超える重量平均分子量Mwを有する、プロセス。
【請求項52】
前記反応混合液に添加される塩素の総量の70重量%以上は、前記反応混合液の温度がT1からT2へ増加させられる期間中に添加される、請求項51に記載のプロセス。
【請求項53】
前記反応混合液に添加される塩素の総量の60〜90重量%は、前記反応混合液の温度がT1からT2へ増加させられる期間中に添加される、請求項51に記載のプロセス。
【請求項54】
前記反応混合液に添加される塩素の総量の70〜80重量%は、前記反応混合液の温度がT1からT2へ増加させられる期間中に添加される、請求項51に記載のプロセス。
【請求項55】
請求項51に記載のプロセスから形成された塩素化エチレン系ポリマー。
【請求項56】
T2は、100℃〜110℃である、請求項47に記載のプロセス。
【請求項57】
T3>{Tm(ベースポリマー)−10℃}である、請求項47に記載のプロセス。
【請求項58】
T3>{Tm(ベースポリマー)−10℃}である、請求項56に記載のプロセス。
【請求項59】
T2は、T1〜120℃である、請求項51に記載のプロセス。
【請求項60】
T2は、T1〜110℃である、請求項51に記載のプロセス。

【公表番号】特表2009−542858(P2009−542858A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518526(P2009−518526)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【国際出願番号】PCT/US2007/072178
【国際公開番号】WO2008/002952
【国際公開日】平成20年1月3日(2008.1.3)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】