塩素化スクロースのクロマトグラフィー精製
【課題】塩素化スクロース、例えば非常に強力な甘味剤であるスクラロース(sucralose)などをクロマトグラフィーで精製する方法を提供する。
【解決手段】1番目の塩素化スクロースを含有しかつ上記1番目の塩素化スクロースとは異なる他の少なくとも1種の塩素化スクロース、塩および溶媒から成る群から選択される少なくとも1種の追加的成分を含有する反応混合物を固体状吸着材の固定床の上に注入しそしてそれを(a)上記1番目の塩素化スクロースが上記吸着材の中をある速度で通ることで上記1番目の塩素化スクロースを豊富に含有する1番目の回収可能生成物流れが生じそして上記速度とは異なる速度で(b)上記追加的成分の少なくとも1つが上記吸着材の中を通ることで上記追加的成分を豊富に含有する2番目の回収可能流れが少なくとも1つ生じるように脱離剤で処理することによって上記反応混合物を液相中で分離する方法。
【解決手段】1番目の塩素化スクロースを含有しかつ上記1番目の塩素化スクロースとは異なる他の少なくとも1種の塩素化スクロース、塩および溶媒から成る群から選択される少なくとも1種の追加的成分を含有する反応混合物を固体状吸着材の固定床の上に注入しそしてそれを(a)上記1番目の塩素化スクロースが上記吸着材の中をある速度で通ることで上記1番目の塩素化スクロースを豊富に含有する1番目の回収可能生成物流れが生じそして上記速度とは異なる速度で(b)上記追加的成分の少なくとも1つが上記吸着材の中を通ることで上記追加的成分を豊富に含有する2番目の回収可能流れが少なくとも1つ生じるように脱離剤で処理することによって上記反応混合物を液相中で分離する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩素化スクロース(chlorinated sucrose)、例えば非常に強力な甘味剤であるスクラロース(sucralose)などをクロマトグラフィーで精製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スクロースの選択的修飾は、反応性OH基が多数存在しかつグリコシド結合は酸に不安定なことから、大きな合成挑戦を意味する。興味の標的が商業的に重要な非栄養性(non−nutritive)甘味剤であるスクラロース、即ち4,1’,6’−トリクロロ−4,1’,6’−トリデオキシガラクトスクロース[この化合物を製造している過程で4位の所の立体配置が反転し、従ってスクラロースはガラクト−スクロースである]である場合、反応性が低い4位および1’位を塩素化する必要があると同時に反応性が高い6位を無傷のまま残す必要があることから、困難さが複合している。6位を前以てブロックする(preblock)目的で数多くの手段が開発された[通常は、スクロース−6−アシレート、例えばスクロース−6−アセテートを生じさせそして塩素化後に加水分解を受けさせることなどでブロッキング部分(blocking moiety)を除去することで行われており、そのようにして副反応を最小限にしている]にも拘らず、粗塩素化生成物には望まれない二塩素化、三塩素化および四塩素化スクロース類(本明細書では以降それぞれDi’s、Tri’sおよびTet’sと呼ぶ)が不可避的にいくらかまだ含まれているばかりでなく反応で使用した高沸点溶媒および塩素化段階後の中和で生じた塩化物塩が含まれている。それらは、概して、多面的(multi−faceted)精製問題になっておりかつスクラロース製造の全体的経済性にとって重要な関心になっている。上記精製を遂行する目的で蒸留、液−液抽出、結晶化および/または誘導化(derivatization)をいろいろに組み合わせることが従来技術に教示されている。我々は、ここに、関連した成分が個々の固体状吸着材に対して異なる親和性を示すことを利用した吸着技術をいろいろな液体−固体デザインで単独でか或は上述した方法と組み合わせて適用すると従来技術に比べて大きな操作的利点が得られることを見出した。
【0003】
最も簡単な形態の吸着技術は断続様式(pulse mode)であり、この場合、単独の濃混合物を吸着材カラムの上に導入した後、適切な脱離剤(desorbent)を通すことで、上記混合物をそれのいろいろな成分に分ける。装置の圧力降下必要性に応じて軸方向流れまたは半径方向流れの装置を用いることができる。図1に、成分(または成分帯)AとBとCの混合物[ここで、吸着材がそれらに対して示す親和性は下記の順である:A>B>C]を上記様式で分離する時の一般的分離を示し、ここで、t0からtnは増加する溶離時間(またはカラムの長さ)を表す。操作上、3つの帯全部の分解(resolving)を行う必要がある場合には取り出し口をt3またはそれ以降の所に位置させてもよいか、或はある程度のオーバーラップが許容される場合にはt0からt3の連続に沿った任意地点に取り出し口を位置させてもよい。後者の場合に、焦点が単にAおよびCを精製することのみである(Bには関心がない)ならば、1つの任意選択は、t2の所の重なり合うプロファイルの前方部分(early slices)と後方部分(late slices)のみを取り除きそして中心の溜分を新鮮な供給材料と混合し;この混合物を上記に再循環させて戻すか或は2番目のカラムに送ると言った選択である。このような連続−断続様式の場合、容認され得る最低限の分解能に近くなるように操作を行いかつ供給断続と供給断続の間の間隔を最小限にすることで最大限の生産性を探求し;脱離剤の使用量を最小限にしようとする時には、1つの断続の前縁(leading ege)が直前の断続の後縁に追い付かないほどにちょうど維持される度合まで間隔を最小限にする。
【0004】
また、供給材の流れと脱離剤の流れと取り出し流れ(複数)が同時に要求される真に連続運転も可能である。連続環状クロマトグラフィー(CAC)と呼ぶ1つのアプローチでは、環状のカラムがそれの軸の回りをゆっくりと回転するようにして供給材料と脱離剤を上部に注入してそれが環内の螺旋帯に別れるようにし、そしてそれを下部に位置する個々の出口に通して正しく取り出す。このような設計は、操作の点では連続的であるが、吸着材の使用効率が低い点で断続に類似している。代替の機械的配置[模擬移動床(simulated moving bed)(SMB)と呼ぶ]が非常に好適であり、吸着材と脱離剤の使用量が最小限で取り出し濃度が最大限になる。これを密封ループ(closed loop)内に位置させた数個の連続セクションまたはカラムを含んで成る固定床で構成させて、上記セクションまたはカラムの各々が個別に液体流れを受け取りかつ解放する能力を持つようにする。脱離剤用口と供給用口と取り出し用口(これらは互いに関して固定配置に保持されている)は、運転中、液体の流れの方向と並流の方向に向かって(従って、液体−吸着材接触の向流移動を模擬するように)、決まった時間的間隔(ステップタイムと呼ぶ)でラチェット式に作動する(ratchet forward)。このような設計は幅広い範囲の化学商品、例えばキシレン、エチルベンゼン、高フルクトースのコーンシロップおよび糖などの製造で幅広く受け入れられていて、使用されている商業的装置は直径で22フィートに及んでいる。また、SMB型のバルブ切り替え配置を利用して重なり合う画分を複数のカラムに通して連続的に送る更に別の様式[連続並流SMBと呼ぶ]も記述されている。
【0005】
このような吸着技術のいずれかか或は全部を個々の運転に適用しようとする時には必要な分離をもたらす能力を有する吸着材−脱離剤対を最初に見付け出す必要がありそして単独の断続様式(より連続的なアプローチの機械的複雑さがない)を用いて必要な相対的分離要因の固有図を得る必要があることがこの上の考察から分かるであろう。この図、即ちクロマトグラムを用いて、体積ライン(volumetric line)(脱離剤の流れを表す)に沿って集められた個々の画分に入っている各成分の濃度を記録する。慣習により、溶離の順が成分が有する極性の増大を直接示す場合、このようなプロファイルを「正常相(normal phae)」と呼ぶ。これは、極性のある吸着材と非極性の脱離剤を組み合わせた時に得られ、例えばシリカゲルとシクロヘキサンを組み合わせた時に得られる。それとは対照的に、用語「逆相」は、非極性の吸着材と極性のある脱離剤の対を記述する用語であり、溶離の順は極性が低下する順である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4,980,463号明細書
【特許文献2】米国特許第5,530,106号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
処理を受けさせる実際の流れの位置および組成の両方に関して幅広く多様な適用が可能である。吸着段階を優しい水性環境内に置くことができる場合には有機樹脂が使用可能である。環境にとって苛酷な有機溶媒が含まれている場合の使用は、より不活性な吸着材、例えばモレキュラーシーブ、シリカゲル、ゼオライト類および活性炭などの使用に限定される。我々は、ここに、両方の種類の吸着材を適当な脱離剤と組み合わせるとそれらを幅広い範囲のスクラロース精製運転に適用可能な装置で利用することができることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、1番目の塩素化スクロースを含有しかつ上記1番目の塩素化スクロースとは異なる他の少なくとも1種の塩素化スクロース、塩および溶媒から成る群から選択される少なくとも1種の追加的成分を含有する反応混合物を液相中で分離する方法を提供し、ここでは、この方法を、上記反応混合物を固体状吸着材の固定床の上に注入しそしてそれを
(a)該1番目の塩素化スクロースが該吸着材の中をある速度で通ることで上記1番目の塩素化スクロースを豊富に含有する1番目の回収可能生成物流れが生じ、該速度とは異なる速度で、
(b)上記追加的成分の少なくとも1つが該吸着材の中を通ることで上記追加的成分を豊富に含有する2番目の回収可能流れが少なくとも1つ生じるように、
脱離剤で処理することによって行う。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、吸着による混合物の一般的な具体的分離である。
【図2】図2は、DVBが4%のスルホン酸ナトリウム樹脂を吸着材として用いかつ水を脱離剤として用いた時のクロマトグラムである。
【図3】図3は、DVBが2%のスルホン酸ナトリウム樹脂を吸着材として用いかつ水を脱離剤として用いた時のクロマトグラムである。
【図4】図4は、DVBが6%のスルホン酸ナトリウム樹脂を吸着材として用いかつ水を脱離剤として用いた時のクロマトグラムである。
【図5】図5は、吸着材としてシリカゲルを用いかつ脱離剤として酢酸エチル(水が2%)を用いた時のクロマトグラムである。
【図6】図6は、吸着材としてシリカゲルを用いかつ脱離剤として酢酸エチル(水が2%)を用いた時のクロマトグラムである。
【図7】図7は、吸着材としてシリカゲルを用いかつ脱離剤として酢酸エチル(メタノールが5%)を用いた時のクロマトグラムである。
【図8】図8は、DVBが4%のスルホン酸ナトリウム樹脂を吸着材として用いかつ水を脱離剤として用いた時のクロマトグラムである。
【図9A】図Aは、溶媒の除去を伴う脱ブロッキング(deblocking)後の吸着技術任意選択を示すチャートである。
【図9B】図Bは、溶媒の除去を伴わない脱ブロッキング(deblocking)後の吸着技術任意選択を示すチャートである。
【図9C】図Cは、結晶化に付随した収率向上としての吸着を示すチャートである。
【図9D】図Dは、結晶化に付随した収率向上としての吸着および誘導化を示すチャートである。
【図9E】図Eは、誘導化および結晶化に付随した収率向上としての吸着を示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
好適な面では、本発明の方法を用いてスクラロースを精製する。スクラロースの精製で本発明の方法を実施する時の典型的な塩素化スクロース混合物は、塩素化を受けた式:
【0011】
【化1】
【0012】
[式中、いろいろな塩素化スクロース類に関して:
【表1】
]
で表される二塩素化スクロース類と三塩素化スクロース類と四塩素化スクロース類の混合物を含有するであろう。
【0013】
具体的説明として、4,6’−ジクロロスクロースは、R2およびR7=Cl;R1、R4およびR6=OH;そしてR3およびR5=Hの上記式で表される。4,1’,6塩素化スクロースに関して2番目に記載したものは炭素番号4上の置換基の反転で誘導され、その結果として4,1’,6’−トリクロロスクロース、即ち6番目に挙げた化合物が生じ、これは形式的にはスクラロース(即ち4,1’,6’−トリクロロ−ガラクトスクロース、5番目に挙げた化合物)のエピマーである。
【0014】
本発明では、1番目の塩素化スクロースを含有しかつ上記1番目の塩素化スクロースとは異なる他の少なくとも1種の塩素化スクロース、塩および溶媒から成る群から選択される少なくとも1種の追加的成分を含有する反応混合物を用いる。本発明で用いる反応混合物をスクラロースの精製で用いる場合、上記混合物は、Walkup他の米国特許第4,980,463号(これの開示は引用することによって本明細書に組み入れられる)に開示されているスクロース−6−エステルの塩素化で生じる反応生成物を中和したものであってもよい。その場合の反応混合物はスクラロース−6−エステル(例えばスクラロース−6−アセテートまたはスクラロース−6−ベンゾエート)、恐らくは他の少なくとも1種の塩素化スクロース(それらのエステルを包含)、塩素化反応用の第三級アミド溶媒(好適にはN,N−ジメチルホルムアミド)、塩素化反応および中和反応で生じるいろいろな塩副生成物(これにはアルカリ、アルカリ土類金属、アンモニウムおよびアルキルアンモニウムの塩化物、例えば塩化ナトリウムおよび塩酸ジメチルアミンなどばかりでなく、アルカリ金属の蟻酸塩、例えば蟻酸ナトリウムなどが含まれる)、および水が入っているであろう。スクラロース−6−エステルは、R2、R4およびR7=Cl;R1=アシルオキシ基、例えばアセトキシまたはベンゾイルオキシ;R6=OH;そしてR3およびR5=Hの上記式で表される。この場合の反応混合物は他の塩素化スクロース(またこれらも6位がエステル化される)を含有している可能性がある。
【0015】
別法として、塩素化反応混合物(Walkup他の方法で生じる)に蒸気脱溶媒(steam stripping)などを受けさせて第三級アミド溶媒を除去[Navia他の米国特許第5,530,106号(これの開示は引用することによって本明細書に組み入れられる)に開示されているように]した後、加水分解で6−アシル部分を除去することを通して、本発明の精製方法で使用可能な別の反応混合物を生じさせることも可能である。この場合の本発明の方法で用いる反応混合物には、スクラロース、恐らくは他の塩素化スクロース、塩素化反応および中和反応で生じるいろいろな塩副生成物(これにはアルカリ、アルカリ土類金属、アンモニウムおよびアルキルアンモニウムの塩化物、例えば塩化ナトリウムおよび塩酸ジメチルアミンなどばかりでなく、アルカリ金属の蟻酸塩、例えば蟻酸ナトリウムなどが含まれる)、水、恐らくは少量(反応混合物の1もしくは2重量%未満)の第三級アミド溶媒、そして恐らくは残存する数種のスクロース−6−エステル化合物(6−アシル部分を除去するための加水分解が完全でなかった場合)が入っているであろう。
【0016】
本発明の方法で使用可能な別の反応混合物は、Navia他が開示した方法の生成物に蒸気脱溶媒と加水分解を受けさせたものに再結晶化(またNavia他に開示されているように)を受けさせて塩類および他の(即ちスクラロースでない)塩素化スクロース類の数種(大部分はdi’s)を除去することで生じさせた混合物であり得る。この場合の本発明の方法で用いる反応混合物には、スクラロースおよび他の塩素化スクロース(大部分はtri’sおよびtetra’s)、有機溶媒、例えば酢酸エチルなど、そして少量の水が入っているであろう。
【0017】
図Aは、特に、高沸点の塩素化用溶媒、典型的にはアミド、例えばN,N−ジメチルホルムアミドなどを最初に除去しそして粗塩素化生成物に脱ブロックを受けさせた(deblocked)(例えばスクラロース−6−アセテートからアシル基を除去するためのアルカリ加水分解などによって)場合の1組の案の図解である。出て来る水流れに4種類の幅広い方法[これらの中の3つは、精製の負荷を抽出と吸着(これらの順は重要でない)の間で多様に分けることを伴う]のいずれかで精製を受けさせて望まれない塩、Di’s、Tri’sおよびTet’sを除去してもよい。4番目の例(吸着を単独で配備)が本発明の立証の目的で主要な態様(このように、分離すべき成分の最も幅広い範囲を包含する)であることは認識されるであろう[他の3例の各々における吸着負荷はそれのサブセット(subset)である]。
【0018】
図2に、ポリスチレンを基としていてジビニルベンゼンを4%用いて架橋させたスルホン酸ナトリウム樹脂を吸着材として用いかつ純水(straight water)を脱離剤として用いた逆相系(reversed phase system)を利用した場合に得た結果を示す。従って、溶離順:塩>Di’s>6,6’>スクラロース>6,1’,6’>4,6,6’>Tet’sであることが分かる。我々は、このような有機樹脂である吸着材を用いる時には架橋度合そしてその結果としてそれが拡散レベルに対して与える影響が重要であることを見出し、2%(図3)および4%(図2)のジビニルベンゼンが良好な分離を与え、6%(図4)およびそれ以上にすると、分離がほとんどか或は全く起こらないことが分かる。更に、我々は、分離の効率はカチオンの選択に対して不変であることを見出し、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の間に有意な差がないことを確認した。このことは、選択性または安定性の考慮に対してより高い感受性を示す他の炭水化物系とは極めて対照的であることに一致している。従って、従来技術では二価のアルカリ土類金属が下記の点で好ましいとされていた:(a)フルクトース/グルコースの場合の分離度合は、このような単糖類がそれらのヒドロキシル基を配向させてカチオン性水和球(cationic hydration sphere)内に保持されている水分子を配位的に追い出すのが比較的容易であることに大きく由来し、そして(b)オリゴ糖の場合にアルカリ金属を用いると基質が加水分解で極度に破壊される。従来技術とは異なるさらなる点は、観察される相互作用の様式に関する。樹脂と(a)グルコース/フルクトース、(b)スクロース/ラフィノースおよびオリゴ糖[これらの全部が示す溶離の順は分子のサイズが大きくなる順であり、これはビーズ(beads)を通る浸透/拡散の相対速度を反映している]の相互作用とは異なり、塩素化スクロースの溶離プロファイルは、むしろ、成分が示す疎水性の増大が決定要因であることを示唆しており、ファンデルワールス型の相互作用が表面で起こることをより大きく示している。従って、我々の系では、より大きな構成要素、即ちTet’sは高い疎水性を示すことから後期に溶離して来るが、従来技術のサイズエクスクルージョン(size exclusion)挙動では一致してむしろ早期に溶離し、そしてその逆も当てはまり、Di’sは、サイズがより小さいことで期待されるように、より高い親水性を示すことから、後期ではなくむしろ早期に溶離して来る。
【0019】
図Bに、図Aの態様を基に組み立てて吸着の利用範囲をスクラロース製造過程で塩素化溶媒を除去する前の位置にまで更に戻して拡張したさらなる組の態様を示す。再び、吸着を単独で配備した支流が主要な態様を構成していて、補足的抽出および/または2番目の吸着の補助を伴う。ここでは、図5に示すように、吸着材としてのシリカゲルと脱離剤としての酢酸エチルの組み合わせが高沸点の塩素化用溶媒を分離する新規なアプローチであることが分かった。弱く保持されるアミドが脱離剤前線(front)に近い所で炭水化物より前に流出し、それを取り出した時点でそれを分溜し、酢酸エチルを脱離剤として再利用しそして上記アミドをフラッシュ洗浄(flashed)でそれの溶質から取り除く。これは、従来技術(この上に引用したNavia他)に教示されている蒸気脱溶媒の代替を提供するものであり、これはあまりエネルギー集中的でない。
【0020】
更に、我々は上記系(図5−7)に関するクロマトグラフィーウインド(chromatographic window)を広げて炭水化物を互いからTet’s>6,6’>DMF>6,1’,6’>スクラロース>4,6,6’>Di’sの溶離順で分離することも包含させたことから、上記系の利用度が幅広くなり、それによって、我々は吸着を基とする多様な精製過程を形作ることが可能になった。1つの一般的アプローチは、吸着単独(例えば連続的二成分分離による)でか或は吸着と液体−液体抽出の組み合わせのいずれかでクロマトグラフィーの極端物(extremes)を最初にパージ洗浄するアプローチである。このような液体−液体抽出の補強は、下記の順:Di’s>Tri’s>Tet’s[塩素で連続的に置換した後に残存するヒドロキシル基の数が少なくなることに一致する]に従う上記3種類の幅広い相同種に見られる親水性の幅広い相違である。しかしながら、その結果として異性体の中心溜分(isomeric center cut)を設定する時、成分間のそのような親水性の差(6,6’−>スクラロース>6,1’,6’−、4,6,6’−)は、必要な平衡段階の数(液体−液体抽出に必要な)が商業的に法外である度合にまで縮まる。このような鍵となる運転において、我々は、吸着の差自身が収率および操作上の性能の意味で他の全ての工程技術とは極めて顕著に異なることを見出した。逆相系(図2)で見出した非対称的溶離順(スクラロース>6,1’,6’−>4,6,6’−)が特にSMB配置[連続操作の固有効率を全部持ちそして吸着材と脱離剤を最大限に利用する(冒頭で記述したように)]を基にした単一の二成分分離によって4,6,6’−および6,1’,6’−不純物の同時除去を可能にする点で実用的であることが分かる。また、対称的溶離順(6,1’,6’−>スクラロース>4,6,6’−)を示す正常相アプローチ(図5−7)も任意選択である[そのような二成分SMB分離を2回行うか或は複数の取り出しを可能にする単一変形が要求されるが]。
【0021】
いずれの場合にも、この見出したスクラロース異性体分離は従来技術に比類がないものであることは認識されるであろう。幅広く配備されている他のただ1つの直接的な競争者である結晶化では、結果として、母液中に蓄積する望まれない異性体が示す「毒」作用によって自己制限されることによって収率が限定される[2回目の収穫を行う方策を含めたとしても]。結果として生じる母液にはスクラロースがかなりの量で入っているが、それの直接的分解を可能にするのは、この上に示した如き吸着による分解のみであり得る(図C)。また、勿論、異性体中心溜分の誘導化(derivatization)も可能である[2つの新しい化学段階、即ちブロッキングおよび脱ブロッキング(図DおよびE)を加えることに関連した余分な操作上の複雑さおよび作用剤の使用を伴うが]。更に、この誘導化を受けさせた中間体、典型的にはパーエステルを結晶化で精製すると、更に母液の損失が生じる[スクラロースに誘導化を受けさせない場合に遭遇する損失より少ないが、それに類似する]。我々は図C−Eにさらなる説明的態様を示し、ここでは、そのような結晶化および/または誘導化アプローチの収率を向上させる付随技術として我々の吸着技術を配備する。最後に、また、加水分解を受けさせる前のエステル化反応混合物、例えば冒頭で引用したWalkup他の米国特許第4,980,463号の方法そしてNavia他の米国特許第5,530,106号の方法に見られる如き混合物に吸着技術を適用することを通して、更により徹底的な精製過程を設計する機会を得ることができることも分かるであろう。特に、次に行う脱アセチル化で高純度のスクラロースが直接得られるようにスクラロース−6−アセテートを精製する目的で、図8に詳述した如き逆相クロマトグラフィー図[スクラロース>DiCl−モノアセテート>スクラロース−6−アセテートの溶離順を示す]を多方面に渡って利用することができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩素化スクロース(chlorinated sucrose)、例えば非常に強力な甘味剤であるスクラロース(sucralose)などをクロマトグラフィーで精製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スクロースの選択的修飾は、反応性OH基が多数存在しかつグリコシド結合は酸に不安定なことから、大きな合成挑戦を意味する。興味の標的が商業的に重要な非栄養性(non−nutritive)甘味剤であるスクラロース、即ち4,1’,6’−トリクロロ−4,1’,6’−トリデオキシガラクトスクロース[この化合物を製造している過程で4位の所の立体配置が反転し、従ってスクラロースはガラクト−スクロースである]である場合、反応性が低い4位および1’位を塩素化する必要があると同時に反応性が高い6位を無傷のまま残す必要があることから、困難さが複合している。6位を前以てブロックする(preblock)目的で数多くの手段が開発された[通常は、スクロース−6−アシレート、例えばスクロース−6−アセテートを生じさせそして塩素化後に加水分解を受けさせることなどでブロッキング部分(blocking moiety)を除去することで行われており、そのようにして副反応を最小限にしている]にも拘らず、粗塩素化生成物には望まれない二塩素化、三塩素化および四塩素化スクロース類(本明細書では以降それぞれDi’s、Tri’sおよびTet’sと呼ぶ)が不可避的にいくらかまだ含まれているばかりでなく反応で使用した高沸点溶媒および塩素化段階後の中和で生じた塩化物塩が含まれている。それらは、概して、多面的(multi−faceted)精製問題になっておりかつスクラロース製造の全体的経済性にとって重要な関心になっている。上記精製を遂行する目的で蒸留、液−液抽出、結晶化および/または誘導化(derivatization)をいろいろに組み合わせることが従来技術に教示されている。我々は、ここに、関連した成分が個々の固体状吸着材に対して異なる親和性を示すことを利用した吸着技術をいろいろな液体−固体デザインで単独でか或は上述した方法と組み合わせて適用すると従来技術に比べて大きな操作的利点が得られることを見出した。
【0003】
最も簡単な形態の吸着技術は断続様式(pulse mode)であり、この場合、単独の濃混合物を吸着材カラムの上に導入した後、適切な脱離剤(desorbent)を通すことで、上記混合物をそれのいろいろな成分に分ける。装置の圧力降下必要性に応じて軸方向流れまたは半径方向流れの装置を用いることができる。図1に、成分(または成分帯)AとBとCの混合物[ここで、吸着材がそれらに対して示す親和性は下記の順である:A>B>C]を上記様式で分離する時の一般的分離を示し、ここで、t0からtnは増加する溶離時間(またはカラムの長さ)を表す。操作上、3つの帯全部の分解(resolving)を行う必要がある場合には取り出し口をt3またはそれ以降の所に位置させてもよいか、或はある程度のオーバーラップが許容される場合にはt0からt3の連続に沿った任意地点に取り出し口を位置させてもよい。後者の場合に、焦点が単にAおよびCを精製することのみである(Bには関心がない)ならば、1つの任意選択は、t2の所の重なり合うプロファイルの前方部分(early slices)と後方部分(late slices)のみを取り除きそして中心の溜分を新鮮な供給材料と混合し;この混合物を上記に再循環させて戻すか或は2番目のカラムに送ると言った選択である。このような連続−断続様式の場合、容認され得る最低限の分解能に近くなるように操作を行いかつ供給断続と供給断続の間の間隔を最小限にすることで最大限の生産性を探求し;脱離剤の使用量を最小限にしようとする時には、1つの断続の前縁(leading ege)が直前の断続の後縁に追い付かないほどにちょうど維持される度合まで間隔を最小限にする。
【0004】
また、供給材の流れと脱離剤の流れと取り出し流れ(複数)が同時に要求される真に連続運転も可能である。連続環状クロマトグラフィー(CAC)と呼ぶ1つのアプローチでは、環状のカラムがそれの軸の回りをゆっくりと回転するようにして供給材料と脱離剤を上部に注入してそれが環内の螺旋帯に別れるようにし、そしてそれを下部に位置する個々の出口に通して正しく取り出す。このような設計は、操作の点では連続的であるが、吸着材の使用効率が低い点で断続に類似している。代替の機械的配置[模擬移動床(simulated moving bed)(SMB)と呼ぶ]が非常に好適であり、吸着材と脱離剤の使用量が最小限で取り出し濃度が最大限になる。これを密封ループ(closed loop)内に位置させた数個の連続セクションまたはカラムを含んで成る固定床で構成させて、上記セクションまたはカラムの各々が個別に液体流れを受け取りかつ解放する能力を持つようにする。脱離剤用口と供給用口と取り出し用口(これらは互いに関して固定配置に保持されている)は、運転中、液体の流れの方向と並流の方向に向かって(従って、液体−吸着材接触の向流移動を模擬するように)、決まった時間的間隔(ステップタイムと呼ぶ)でラチェット式に作動する(ratchet forward)。このような設計は幅広い範囲の化学商品、例えばキシレン、エチルベンゼン、高フルクトースのコーンシロップおよび糖などの製造で幅広く受け入れられていて、使用されている商業的装置は直径で22フィートに及んでいる。また、SMB型のバルブ切り替え配置を利用して重なり合う画分を複数のカラムに通して連続的に送る更に別の様式[連続並流SMBと呼ぶ]も記述されている。
【0005】
このような吸着技術のいずれかか或は全部を個々の運転に適用しようとする時には必要な分離をもたらす能力を有する吸着材−脱離剤対を最初に見付け出す必要がありそして単独の断続様式(より連続的なアプローチの機械的複雑さがない)を用いて必要な相対的分離要因の固有図を得る必要があることがこの上の考察から分かるであろう。この図、即ちクロマトグラムを用いて、体積ライン(volumetric line)(脱離剤の流れを表す)に沿って集められた個々の画分に入っている各成分の濃度を記録する。慣習により、溶離の順が成分が有する極性の増大を直接示す場合、このようなプロファイルを「正常相(normal phae)」と呼ぶ。これは、極性のある吸着材と非極性の脱離剤を組み合わせた時に得られ、例えばシリカゲルとシクロヘキサンを組み合わせた時に得られる。それとは対照的に、用語「逆相」は、非極性の吸着材と極性のある脱離剤の対を記述する用語であり、溶離の順は極性が低下する順である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4,980,463号明細書
【特許文献2】米国特許第5,530,106号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
処理を受けさせる実際の流れの位置および組成の両方に関して幅広く多様な適用が可能である。吸着段階を優しい水性環境内に置くことができる場合には有機樹脂が使用可能である。環境にとって苛酷な有機溶媒が含まれている場合の使用は、より不活性な吸着材、例えばモレキュラーシーブ、シリカゲル、ゼオライト類および活性炭などの使用に限定される。我々は、ここに、両方の種類の吸着材を適当な脱離剤と組み合わせるとそれらを幅広い範囲のスクラロース精製運転に適用可能な装置で利用することができることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、1番目の塩素化スクロースを含有しかつ上記1番目の塩素化スクロースとは異なる他の少なくとも1種の塩素化スクロース、塩および溶媒から成る群から選択される少なくとも1種の追加的成分を含有する反応混合物を液相中で分離する方法を提供し、ここでは、この方法を、上記反応混合物を固体状吸着材の固定床の上に注入しそしてそれを
(a)該1番目の塩素化スクロースが該吸着材の中をある速度で通ることで上記1番目の塩素化スクロースを豊富に含有する1番目の回収可能生成物流れが生じ、該速度とは異なる速度で、
(b)上記追加的成分の少なくとも1つが該吸着材の中を通ることで上記追加的成分を豊富に含有する2番目の回収可能流れが少なくとも1つ生じるように、
脱離剤で処理することによって行う。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、吸着による混合物の一般的な具体的分離である。
【図2】図2は、DVBが4%のスルホン酸ナトリウム樹脂を吸着材として用いかつ水を脱離剤として用いた時のクロマトグラムである。
【図3】図3は、DVBが2%のスルホン酸ナトリウム樹脂を吸着材として用いかつ水を脱離剤として用いた時のクロマトグラムである。
【図4】図4は、DVBが6%のスルホン酸ナトリウム樹脂を吸着材として用いかつ水を脱離剤として用いた時のクロマトグラムである。
【図5】図5は、吸着材としてシリカゲルを用いかつ脱離剤として酢酸エチル(水が2%)を用いた時のクロマトグラムである。
【図6】図6は、吸着材としてシリカゲルを用いかつ脱離剤として酢酸エチル(水が2%)を用いた時のクロマトグラムである。
【図7】図7は、吸着材としてシリカゲルを用いかつ脱離剤として酢酸エチル(メタノールが5%)を用いた時のクロマトグラムである。
【図8】図8は、DVBが4%のスルホン酸ナトリウム樹脂を吸着材として用いかつ水を脱離剤として用いた時のクロマトグラムである。
【図9A】図Aは、溶媒の除去を伴う脱ブロッキング(deblocking)後の吸着技術任意選択を示すチャートである。
【図9B】図Bは、溶媒の除去を伴わない脱ブロッキング(deblocking)後の吸着技術任意選択を示すチャートである。
【図9C】図Cは、結晶化に付随した収率向上としての吸着を示すチャートである。
【図9D】図Dは、結晶化に付随した収率向上としての吸着および誘導化を示すチャートである。
【図9E】図Eは、誘導化および結晶化に付随した収率向上としての吸着を示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
好適な面では、本発明の方法を用いてスクラロースを精製する。スクラロースの精製で本発明の方法を実施する時の典型的な塩素化スクロース混合物は、塩素化を受けた式:
【0011】
【化1】
【0012】
[式中、いろいろな塩素化スクロース類に関して:
【表1】
]
で表される二塩素化スクロース類と三塩素化スクロース類と四塩素化スクロース類の混合物を含有するであろう。
【0013】
具体的説明として、4,6’−ジクロロスクロースは、R2およびR7=Cl;R1、R4およびR6=OH;そしてR3およびR5=Hの上記式で表される。4,1’,6塩素化スクロースに関して2番目に記載したものは炭素番号4上の置換基の反転で誘導され、その結果として4,1’,6’−トリクロロスクロース、即ち6番目に挙げた化合物が生じ、これは形式的にはスクラロース(即ち4,1’,6’−トリクロロ−ガラクトスクロース、5番目に挙げた化合物)のエピマーである。
【0014】
本発明では、1番目の塩素化スクロースを含有しかつ上記1番目の塩素化スクロースとは異なる他の少なくとも1種の塩素化スクロース、塩および溶媒から成る群から選択される少なくとも1種の追加的成分を含有する反応混合物を用いる。本発明で用いる反応混合物をスクラロースの精製で用いる場合、上記混合物は、Walkup他の米国特許第4,980,463号(これの開示は引用することによって本明細書に組み入れられる)に開示されているスクロース−6−エステルの塩素化で生じる反応生成物を中和したものであってもよい。その場合の反応混合物はスクラロース−6−エステル(例えばスクラロース−6−アセテートまたはスクラロース−6−ベンゾエート)、恐らくは他の少なくとも1種の塩素化スクロース(それらのエステルを包含)、塩素化反応用の第三級アミド溶媒(好適にはN,N−ジメチルホルムアミド)、塩素化反応および中和反応で生じるいろいろな塩副生成物(これにはアルカリ、アルカリ土類金属、アンモニウムおよびアルキルアンモニウムの塩化物、例えば塩化ナトリウムおよび塩酸ジメチルアミンなどばかりでなく、アルカリ金属の蟻酸塩、例えば蟻酸ナトリウムなどが含まれる)、および水が入っているであろう。スクラロース−6−エステルは、R2、R4およびR7=Cl;R1=アシルオキシ基、例えばアセトキシまたはベンゾイルオキシ;R6=OH;そしてR3およびR5=Hの上記式で表される。この場合の反応混合物は他の塩素化スクロース(またこれらも6位がエステル化される)を含有している可能性がある。
【0015】
別法として、塩素化反応混合物(Walkup他の方法で生じる)に蒸気脱溶媒(steam stripping)などを受けさせて第三級アミド溶媒を除去[Navia他の米国特許第5,530,106号(これの開示は引用することによって本明細書に組み入れられる)に開示されているように]した後、加水分解で6−アシル部分を除去することを通して、本発明の精製方法で使用可能な別の反応混合物を生じさせることも可能である。この場合の本発明の方法で用いる反応混合物には、スクラロース、恐らくは他の塩素化スクロース、塩素化反応および中和反応で生じるいろいろな塩副生成物(これにはアルカリ、アルカリ土類金属、アンモニウムおよびアルキルアンモニウムの塩化物、例えば塩化ナトリウムおよび塩酸ジメチルアミンなどばかりでなく、アルカリ金属の蟻酸塩、例えば蟻酸ナトリウムなどが含まれる)、水、恐らくは少量(反応混合物の1もしくは2重量%未満)の第三級アミド溶媒、そして恐らくは残存する数種のスクロース−6−エステル化合物(6−アシル部分を除去するための加水分解が完全でなかった場合)が入っているであろう。
【0016】
本発明の方法で使用可能な別の反応混合物は、Navia他が開示した方法の生成物に蒸気脱溶媒と加水分解を受けさせたものに再結晶化(またNavia他に開示されているように)を受けさせて塩類および他の(即ちスクラロースでない)塩素化スクロース類の数種(大部分はdi’s)を除去することで生じさせた混合物であり得る。この場合の本発明の方法で用いる反応混合物には、スクラロースおよび他の塩素化スクロース(大部分はtri’sおよびtetra’s)、有機溶媒、例えば酢酸エチルなど、そして少量の水が入っているであろう。
【0017】
図Aは、特に、高沸点の塩素化用溶媒、典型的にはアミド、例えばN,N−ジメチルホルムアミドなどを最初に除去しそして粗塩素化生成物に脱ブロックを受けさせた(deblocked)(例えばスクラロース−6−アセテートからアシル基を除去するためのアルカリ加水分解などによって)場合の1組の案の図解である。出て来る水流れに4種類の幅広い方法[これらの中の3つは、精製の負荷を抽出と吸着(これらの順は重要でない)の間で多様に分けることを伴う]のいずれかで精製を受けさせて望まれない塩、Di’s、Tri’sおよびTet’sを除去してもよい。4番目の例(吸着を単独で配備)が本発明の立証の目的で主要な態様(このように、分離すべき成分の最も幅広い範囲を包含する)であることは認識されるであろう[他の3例の各々における吸着負荷はそれのサブセット(subset)である]。
【0018】
図2に、ポリスチレンを基としていてジビニルベンゼンを4%用いて架橋させたスルホン酸ナトリウム樹脂を吸着材として用いかつ純水(straight water)を脱離剤として用いた逆相系(reversed phase system)を利用した場合に得た結果を示す。従って、溶離順:塩>Di’s>6,6’>スクラロース>6,1’,6’>4,6,6’>Tet’sであることが分かる。我々は、このような有機樹脂である吸着材を用いる時には架橋度合そしてその結果としてそれが拡散レベルに対して与える影響が重要であることを見出し、2%(図3)および4%(図2)のジビニルベンゼンが良好な分離を与え、6%(図4)およびそれ以上にすると、分離がほとんどか或は全く起こらないことが分かる。更に、我々は、分離の効率はカチオンの選択に対して不変であることを見出し、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の間に有意な差がないことを確認した。このことは、選択性または安定性の考慮に対してより高い感受性を示す他の炭水化物系とは極めて対照的であることに一致している。従って、従来技術では二価のアルカリ土類金属が下記の点で好ましいとされていた:(a)フルクトース/グルコースの場合の分離度合は、このような単糖類がそれらのヒドロキシル基を配向させてカチオン性水和球(cationic hydration sphere)内に保持されている水分子を配位的に追い出すのが比較的容易であることに大きく由来し、そして(b)オリゴ糖の場合にアルカリ金属を用いると基質が加水分解で極度に破壊される。従来技術とは異なるさらなる点は、観察される相互作用の様式に関する。樹脂と(a)グルコース/フルクトース、(b)スクロース/ラフィノースおよびオリゴ糖[これらの全部が示す溶離の順は分子のサイズが大きくなる順であり、これはビーズ(beads)を通る浸透/拡散の相対速度を反映している]の相互作用とは異なり、塩素化スクロースの溶離プロファイルは、むしろ、成分が示す疎水性の増大が決定要因であることを示唆しており、ファンデルワールス型の相互作用が表面で起こることをより大きく示している。従って、我々の系では、より大きな構成要素、即ちTet’sは高い疎水性を示すことから後期に溶離して来るが、従来技術のサイズエクスクルージョン(size exclusion)挙動では一致してむしろ早期に溶離し、そしてその逆も当てはまり、Di’sは、サイズがより小さいことで期待されるように、より高い親水性を示すことから、後期ではなくむしろ早期に溶離して来る。
【0019】
図Bに、図Aの態様を基に組み立てて吸着の利用範囲をスクラロース製造過程で塩素化溶媒を除去する前の位置にまで更に戻して拡張したさらなる組の態様を示す。再び、吸着を単独で配備した支流が主要な態様を構成していて、補足的抽出および/または2番目の吸着の補助を伴う。ここでは、図5に示すように、吸着材としてのシリカゲルと脱離剤としての酢酸エチルの組み合わせが高沸点の塩素化用溶媒を分離する新規なアプローチであることが分かった。弱く保持されるアミドが脱離剤前線(front)に近い所で炭水化物より前に流出し、それを取り出した時点でそれを分溜し、酢酸エチルを脱離剤として再利用しそして上記アミドをフラッシュ洗浄(flashed)でそれの溶質から取り除く。これは、従来技術(この上に引用したNavia他)に教示されている蒸気脱溶媒の代替を提供するものであり、これはあまりエネルギー集中的でない。
【0020】
更に、我々は上記系(図5−7)に関するクロマトグラフィーウインド(chromatographic window)を広げて炭水化物を互いからTet’s>6,6’>DMF>6,1’,6’>スクラロース>4,6,6’>Di’sの溶離順で分離することも包含させたことから、上記系の利用度が幅広くなり、それによって、我々は吸着を基とする多様な精製過程を形作ることが可能になった。1つの一般的アプローチは、吸着単独(例えば連続的二成分分離による)でか或は吸着と液体−液体抽出の組み合わせのいずれかでクロマトグラフィーの極端物(extremes)を最初にパージ洗浄するアプローチである。このような液体−液体抽出の補強は、下記の順:Di’s>Tri’s>Tet’s[塩素で連続的に置換した後に残存するヒドロキシル基の数が少なくなることに一致する]に従う上記3種類の幅広い相同種に見られる親水性の幅広い相違である。しかしながら、その結果として異性体の中心溜分(isomeric center cut)を設定する時、成分間のそのような親水性の差(6,6’−>スクラロース>6,1’,6’−、4,6,6’−)は、必要な平衡段階の数(液体−液体抽出に必要な)が商業的に法外である度合にまで縮まる。このような鍵となる運転において、我々は、吸着の差自身が収率および操作上の性能の意味で他の全ての工程技術とは極めて顕著に異なることを見出した。逆相系(図2)で見出した非対称的溶離順(スクラロース>6,1’,6’−>4,6,6’−)が特にSMB配置[連続操作の固有効率を全部持ちそして吸着材と脱離剤を最大限に利用する(冒頭で記述したように)]を基にした単一の二成分分離によって4,6,6’−および6,1’,6’−不純物の同時除去を可能にする点で実用的であることが分かる。また、対称的溶離順(6,1’,6’−>スクラロース>4,6,6’−)を示す正常相アプローチ(図5−7)も任意選択である[そのような二成分SMB分離を2回行うか或は複数の取り出しを可能にする単一変形が要求されるが]。
【0021】
いずれの場合にも、この見出したスクラロース異性体分離は従来技術に比類がないものであることは認識されるであろう。幅広く配備されている他のただ1つの直接的な競争者である結晶化では、結果として、母液中に蓄積する望まれない異性体が示す「毒」作用によって自己制限されることによって収率が限定される[2回目の収穫を行う方策を含めたとしても]。結果として生じる母液にはスクラロースがかなりの量で入っているが、それの直接的分解を可能にするのは、この上に示した如き吸着による分解のみであり得る(図C)。また、勿論、異性体中心溜分の誘導化(derivatization)も可能である[2つの新しい化学段階、即ちブロッキングおよび脱ブロッキング(図DおよびE)を加えることに関連した余分な操作上の複雑さおよび作用剤の使用を伴うが]。更に、この誘導化を受けさせた中間体、典型的にはパーエステルを結晶化で精製すると、更に母液の損失が生じる[スクラロースに誘導化を受けさせない場合に遭遇する損失より少ないが、それに類似する]。我々は図C−Eにさらなる説明的態様を示し、ここでは、そのような結晶化および/または誘導化アプローチの収率を向上させる付随技術として我々の吸着技術を配備する。最後に、また、加水分解を受けさせる前のエステル化反応混合物、例えば冒頭で引用したWalkup他の米国特許第4,980,463号の方法そしてNavia他の米国特許第5,530,106号の方法に見られる如き混合物に吸着技術を適用することを通して、更により徹底的な精製過程を設計する機会を得ることができることも分かるであろう。特に、次に行う脱アセチル化で高純度のスクラロースが直接得られるようにスクラロース−6−アセテートを精製する目的で、図8に詳述した如き逆相クロマトグラフィー図[スクラロース>DiCl−モノアセテート>スクラロース−6−アセテートの溶離順を示す]を多方面に渡って利用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1番目の塩素化スクロースを含有しかつ上記1番目の塩素化スクロースとは異なる他の少なくとも1種の塩素化スクロース、塩および溶媒から成る群から選択される少なくとも1種の追加的成分を含有する反応混合物を液相中で分離する方法であって、上記反応混合物を固体状吸着材の固定床の上に注入し、脱離剤で処理することによって分離し、
(a)該1番目の塩素化スクロースが該吸着材の中をある速度で通ることで、上記1番目の塩素化スクロースを豊富に含有する1番目の回収可能生成物流れが生じ、該速度とは異なる速度で、
(b)上記追加的成分の少なくとも1つが該吸着材の中を通ることで、上記追加的成分を豊富に含有する2番目の回収可能流れが少なくとも1つ生じるように、脱離剤で処理し、
該固体状吸着材の固定床が密封ループ内に位置する数個の連続セクションまたはカラム内に入っていて、該セクションまたはカラムの各々が個別に流体を受け取りかつ解放する能力を有しかつそれに供給材料用口と脱離剤用口と取り出し用口の固定配列が備わっていて、該固定配列が、該固定床の吸着材の向流移動を模擬するように、液体の流れの方向と並流の方向に向かって決まった間隔で作動するラチェット式になっている、
方法。
【請求項2】
該反応混合物が式:
【化1】
[式中、いろいろな塩素化スクロース類に関して:
【表1】
]
で表される二塩素化スクロース類、三塩素化スクロース類および四塩素化スクロース類から成る群から選択される少なくとも2種類の塩素化スクロース類を含有する請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項3】
該反応混合物がスクラロースの製造で用いられる工程流れである請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項4】
該塩がアルカリ、アルカリ土類金属、アンモニウムおよびアルキルアンモニウムの塩化物から成る群から選択される塩を包含する請求の範囲第1、2または3項記載の方法。
【請求項5】
該溶媒が第三級アミドである請求の範囲第1、2または3項記載の方法。
【請求項6】
該第三級アミドがN,N−ジメチルホルムアミドである請求の範囲第5項記載の方法。
【請求項7】
該固定床の固体状吸着材がシリカゲルでありそして該脱離剤が有機溶媒である請求の範囲第1、2および3項記載の方法。
【請求項8】
該固定床の固体状吸着材が多孔質ゲルのカチオン交換樹脂でありそして該脱離剤が水である請求の範囲第1、2または3項記載の方法。
【請求項9】
上記1番目の塩素化スクロースが式:
【化2】
[式中、
R2、R4およびR7=Cl;R1=アシルオキシ基、R6=OH;そしてR3およびR5=H]
で表される請求の範囲第1または3項記載の方法。
【請求項10】
該アシルオキシ基がアセトキシ基である請求の範囲第9項記載の方法。
【請求項11】
該アシルオキシ基がベンゾイルオキシ基である請求の範囲第9項記載の方法。
【請求項1】
1番目の塩素化スクロースを含有しかつ上記1番目の塩素化スクロースとは異なる他の少なくとも1種の塩素化スクロース、塩および溶媒から成る群から選択される少なくとも1種の追加的成分を含有する反応混合物を液相中で分離する方法であって、上記反応混合物を固体状吸着材の固定床の上に注入し、脱離剤で処理することによって分離し、
(a)該1番目の塩素化スクロースが該吸着材の中をある速度で通ることで、上記1番目の塩素化スクロースを豊富に含有する1番目の回収可能生成物流れが生じ、該速度とは異なる速度で、
(b)上記追加的成分の少なくとも1つが該吸着材の中を通ることで、上記追加的成分を豊富に含有する2番目の回収可能流れが少なくとも1つ生じるように、脱離剤で処理し、
該固体状吸着材の固定床が密封ループ内に位置する数個の連続セクションまたはカラム内に入っていて、該セクションまたはカラムの各々が個別に流体を受け取りかつ解放する能力を有しかつそれに供給材料用口と脱離剤用口と取り出し用口の固定配列が備わっていて、該固定配列が、該固定床の吸着材の向流移動を模擬するように、液体の流れの方向と並流の方向に向かって決まった間隔で作動するラチェット式になっている、
方法。
【請求項2】
該反応混合物が式:
【化1】
[式中、いろいろな塩素化スクロース類に関して:
【表1】
]
で表される二塩素化スクロース類、三塩素化スクロース類および四塩素化スクロース類から成る群から選択される少なくとも2種類の塩素化スクロース類を含有する請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項3】
該反応混合物がスクラロースの製造で用いられる工程流れである請求の範囲第1項記載の方法。
【請求項4】
該塩がアルカリ、アルカリ土類金属、アンモニウムおよびアルキルアンモニウムの塩化物から成る群から選択される塩を包含する請求の範囲第1、2または3項記載の方法。
【請求項5】
該溶媒が第三級アミドである請求の範囲第1、2または3項記載の方法。
【請求項6】
該第三級アミドがN,N−ジメチルホルムアミドである請求の範囲第5項記載の方法。
【請求項7】
該固定床の固体状吸着材がシリカゲルでありそして該脱離剤が有機溶媒である請求の範囲第1、2および3項記載の方法。
【請求項8】
該固定床の固体状吸着材が多孔質ゲルのカチオン交換樹脂でありそして該脱離剤が水である請求の範囲第1、2または3項記載の方法。
【請求項9】
上記1番目の塩素化スクロースが式:
【化2】
[式中、
R2、R4およびR7=Cl;R1=アシルオキシ基、R6=OH;そしてR3およびR5=H]
で表される請求の範囲第1または3項記載の方法。
【請求項10】
該アシルオキシ基がアセトキシ基である請求の範囲第9項記載の方法。
【請求項11】
該アシルオキシ基がベンゾイルオキシ基である請求の範囲第9項記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図9E】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図9E】
【公開番号】特開2010−90160(P2010−90160A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−281022(P2009−281022)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【分割の表示】特願平10−535981の分割
【原出願日】平成10年2月11日(1998.2.11)
【出願人】(504337372)テート アンド ライル パブリック リミテッド カンパニー (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【分割の表示】特願平10−535981の分割
【原出願日】平成10年2月11日(1998.2.11)
【出願人】(504337372)テート アンド ライル パブリック リミテッド カンパニー (5)
【Fターム(参考)】
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