説明

塩素含有廃棄物の処理方法及び処理装置

【課題】セメント焼成設備の塩素バイパス装置にて捕集された塩素バイパスダストや、塩素を含有した焼却灰等の高塩素含有廃棄物から、塩素成分を有用な塩素化合物として分離回収することができ、しかも、高純度の塩素化合物が得られる塩素含有廃棄物の処理方法及び処理装置を提供する。
【解決手段】本発明の塩素含有廃棄物の処理方法は、塩素バイパスダストを水洗・濾過・反応させて得られた金属凝集体を含むスラリーS5に、電気分解装置25を用いて直流電流を通電して電気分解を行い、スラリーS5中に溶存している金属を酸化物として析出させ、その後、金属酸化物を含む懸濁物質と濾液S6とに分離し、イオン交換装置27を用いて濾液S6に微量に溶存する金属を取り除くことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩素含有廃棄物の処理方法及び処理装置に関し、更に詳しくは、塩素を含有した焼却灰やセメントキルンの排ガスや抽気ダスト等の塩素含有廃棄物から有用な塩類を取り出し、工業原料として再利用する際に好適に用いられ、特に、取り出した塩類の品位を高めることが可能な塩素含有廃棄物の処理方法及び処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、セメント製造設備においては、産業廃棄物の処理量の増加に伴って産業廃棄物に含まれる塩素等の揮発性成分がキルン内で増加しており、セメントの品質やセメントキルン系の操業に悪影響を及ぼす虞がある。そこで、この対策として、塩素をセメント製造設備から取り除く塩素バイパス装置が設置されている。
この塩素バイパス装置は、セメントキルンと予熱機の間で揮発と凝縮を繰り返すことで濃縮した塩素等の揮発性成分を取り除くために、セメントキルンの窯尻部から排ガスを抽気し冷却することにより、塩素化合物を主とする揮発性成分を固化させた塩素バイパスダストを生成させ、この塩素バイパスダストを系外に排出することで、塩素をセメントキルン内から除去する装置である。
この塩素バイパス装置にて発生した塩素バイパスダストは、多量の塩素化合物や重金属類等を含んでいるので、再びセメント原料として再利用するには、これらの塩素化合物や重金属類等を取り除く必要がある。また、取り除かれた塩素化合物や重金属類等は、分離回収することにより再び工業原料として利用することが好ましい。
【0003】
そこで、塩素化合物を分離回収する塩素含有廃棄物の処理方法としては、例えば、塩素を含む廃棄物を水洗して塩素分および鉛分を溶出させて固液分離する水洗工程と、濾別した固形分にアルカリ溶液を加えて鉛分を溶出させると共にカルシウムを水酸化物として濾別するアルカリ溶出工程と、この濾液を水洗工程にて分離した濾液に加え、硫化剤を添加して鉛を沈殿分離する脱鉛工程と、この脱鉛した濾液に炭酸源を加えてカルシウムを沈殿分離する脱カルシウム工程と、この濾液を加熱し塩化物を晶析させて分離回収する塩分回収工程を有する廃棄物の処理方法が提案されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2003−1218号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の塩素含有廃棄物の処理方法では、水洗工程にて濾別した固形分にアルカリ溶液を加えて鉛分を溶出させると共にカルシウムを水酸化物として濾別し、得られた濾液を水洗工程にて分離された濾液に加え、硫化剤を添加して鉛を沈殿分離しているために、必ずしも全ての重金属を取り除くことができないという問題点があった。特に、タリウム等の重金属は、硫化剤や還元剤等によって沈殿物として分離することが難しいために、塩素化合物とともに濾液中に残存することが多い。
したがって、この濾液を加熱し塩化物を晶析させて分離回収する場合に、回収された塩化物中にタリウム等の重金属が取り込まれて残存する虞があった。このため、回収された塩化物は、工業原料として再利用される品位が保てない虞があった。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、セメント焼成設備の塩素バイパス装置にて捕集された塩素バイパスダストや、塩素を含有した焼却灰等の高塩素含有廃棄物から、塩素成分を有用な塩素化合物として分離回収することができ、しかも、高純度の塩素化合物が得られる塩素含有廃棄物の処理方法及び処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために次の様な塩素含有廃棄物の処理方法及び処理装置を提供した。
すなわち、本発明の塩素含有廃棄物の処理方法は、塩素含有廃棄物を水洗した後に該塩素含有廃棄物に含まれる塩素を回収する塩素含有廃棄物の処理方法であって、前記塩素含有廃棄物の水洗・濾過により得られた濾液に直流電流を通電することにより該濾液に溶存する金属を酸化物として析出させ、この金属酸化物を前記濾液から分離することを特徴とする。
【0007】
この塩素含有廃棄物の処理方法では、塩素含有廃棄物を水洗・濾過することにより得られた濾液に直流電流を通電して該濾液に溶存する金属を酸化物として析出させ、この金属酸化物を前記濾液から分離することにより、通常のpH調整や還元剤等では沈殿しない濾液中の溶存金属を水の電気分解とともに酸化物として析出させた後、この金属酸化物を分離する。これにより、塩素含有廃棄物に含まれる金属が取り除かれ、得られる塩素化合物の純度が高まる。
【0008】
本発明の塩素含有廃棄物の処理方法は、
前記塩素含有廃棄物を水洗して得られた溶液を固形分と濾液に分離する水洗・濾過工程と、
前記濾液に、還元剤及びpH調整剤を添加して該濾液に溶存する金属を含む沈殿物を生じさせ、この沈殿物を前記濾液から分離するとともに、この分離された濾液に直流電流を通電することにより該濾液に溶存する金属を酸化物として析出させ、この金属酸化物を前記濾液から分離する濾液処理工程と、
この金属酸化物を分離した濾液を濃縮して該濾液に含まれる塩素化合物を晶析させ、ついで、この塩素化合物を晶析させた濾液を塩素化合物を含む固形分と母液とに分離し、この固形分を回収する晶析工程と、
を備えてなることが好ましい。
【0009】
この塩素含有廃棄物の処理方法では、一旦、溶存する金属が沈殿により取り除かれた濾液に、直流電流を通電して該濾液中に溶存する金属を酸化物として析出させ、この金属酸化物を前記濾液から分離することにより、通常のpH調整や還元剤等では沈殿しない濾液中の溶存金属を酸化物として析出させた後、この金属酸化物を分離する。これにより、塩素含有廃棄物に含まれる金属がさらに取り除かれ、得られる塩素化合物の純度がさらに高まる。
【0010】
前記金属酸化物を分離した後の濾液中に溶存する金属を、イオン交換樹脂により除去することが好ましい。
この塩素含有廃棄物の処理方法では、金属酸化物を分離した後の濾液中に僅かに溶存する金属をイオン交換樹脂により除去することにより、濾液中に含まれる金属を電気分解とイオン交換樹脂の二段階の方法にて取り除くこととなり、極めて高い純度の塩素化合物を取り出すことが可能となる。
【0011】
前記金属は、タリウムであることが好ましい。
【0012】
本発明の塩素含有廃棄物の処理装置は、塩素含有廃棄物を水洗した後に該塩素含有廃棄物に含まれる塩素を回収する塩素含有廃棄物の処理装置であって、
前記塩素含有廃棄物を水洗して得られた溶液を固形分と濾液に分離し、得られた固形分をセメント原料とする水洗・濾過手段と、
前記濾液に、還元剤及びpH調整剤を添加して該濾液に溶存する金属を含む沈殿物を生じさせ、この沈殿物を前記濾液から分離するとともに、この分離された濾液に直流電流を通電することにより該濾液に溶存する金属を酸化物として析出させ、この金属酸化物を前記濾液から分離する濾液処理手段と、
この金属酸化物を分離した濾液を濃縮して該濾液に含まれる塩素化合物を晶析させ、ついで、この塩素化合物を晶析させた濾液を塩素化合物を含む固形分と母液とに分離し、この固形分を回収する晶析手段と、
を備えてなることを特徴とする。
【0013】
この塩素含有廃棄物の処理装置では、水洗・濾過手段にて、塩素含有廃棄物を水洗して得られた溶液を固形分と濾液に分離し、得られた固形分をセメント原料とすることにより、少ない水の使用量で塩素化合物を効率よく取り除くとともに、得られた固形分をセメント原料として有効利用する。
また、濾液処理手段にて、金属を含む沈殿物が分離により取り除かれた濾液に直流電流を通電させて該濾液中に溶存する金属を酸化物として析出させ、この金属酸化物を前記濾液から分離することにより、該濾液中に溶存する金属を効率的に分離する。これにより、塩素含有廃棄物に含まれる金属が効率的に取り除かれ、得られる塩素化合物の純度が高まる。
これにより、少ない水の使用量で高純度の塩素化合物の回収が可能になる。
【0014】
前記濾液処理手段に、前記金属酸化物を分離した後の濾液中に溶存する金属を除去するイオン交換樹脂を設けてなることが好ましい。
この塩素含有廃棄物の処理装置では、前記濾液処理手段に、前記金属酸化物を分離した後の濾液中に溶存する金属を除去するイオン交換樹脂を設けたことにより、濾液中に含まれる金属を濾液処理手段とイオン交換樹脂の二段階にて取り除くこととなり、極めて高い純度の塩素化合物を取り出すことが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の塩素含有廃棄物の処理方法によれば、塩素含有廃棄物の水洗・濾過により得られた濾液に直流電流を通電することにより該濾液に溶存する金属を酸化物として析出させ、この金属酸化物を前記濾液から分離するので、通常のpH調整や還元剤等では沈殿しない濾液中の溶存金属を酸化物として析出させることで濾液から溶存金属を効率的に取り除くことができ、得られる塩素化合物の純度を高めることができる。
したがって、セメント焼成設備の塩素バイパス装置にて捕集された塩素バイパスダストや、塩素を含有した焼却灰等の高塩素含有廃棄物から、高純度の塩素化合物を効率的に分離回収することができる。
【0016】
本発明の塩素含有廃棄物の処理装置によれば、水洗・濾過手段にて、塩素含有廃棄物を水洗して得られた溶液を固形分と濾液に分離し、得られた固形分をセメント原料とするので、少ない水の使用量で塩素化合物を効率よく取り除くことができ、しかも、得られた固形分をセメント原料として有効利用することができる。
また、濾液処理手段にて、金属を含む沈殿物が分離により取り除かれた濾液に直流電流を通電させて該濾液中に溶存する金属を酸化物として析出させ、この金属酸化物を前記濾液から分離するので、濾液中に溶存する金属を効率的に分離することができ、得られる塩素化合物の純度を高めることができる。その結果、少ない水の使用量でかつ低コストで高純度の塩素化合物の回収を行うことができる。
したがって、セメント焼成設備の塩素バイパス装置にて捕集された塩素バイパスダストや、塩素を含有した焼却灰等の高塩素含有廃棄物から、高純度の塩素化合物を効率的に、しかも低コストで分離回収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の塩素含有廃棄物の処理方法及び処理装置の最良の形態について、図面に基づき説明する。
なお、本形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態のセメント製造設備における塩素含有廃棄物の処理装置を示す模式図であり、塩素含有廃棄物に含まれる無機成分をセメント原料として利用するとともに、この塩素含有廃棄物に含まれる塩素成分を回収し有効利用する処理装置の例である。
図において、1は水洗・濾過部(水洗・濾過手段)、2は濾液処理部(濾液処理手段)、3は晶析部(晶析手段)である。
【0019】
水洗・濾過部1は、塩素含有廃棄物を水洗して得られた溶液を固形分と濾液に分離し、得られた固形分をセメント原料とする装置であり、新たな水(以下、新水とも称する)Wを注水して貯留し、この新水Wに塩素バイパスダスト(塩素含有廃棄物)Dを投入し浸漬・攪拌して水洗することにより、この塩素バイパスダスト中の金属イオンを含む水溶性成分を水中に溶出させた溶液M1とする水洗槽11と、この溶液M1をフィルタにより脱塩ケーキCと濾液S1に分離する濾過機12とにより構成されている。
水洗槽11では、新水Wの替わりに、後述する結晶缶34にて蒸発または加熱により発生した水蒸気を冷却した洗浄水W’を用いることも可能である。
【0020】
濾液処理部2は、濾過機12から排出される濾液S1に還元剤、pH調整剤、炭酸カリウム等を添加し、この濾液F1に溶存する金属を含む沈殿物を生じさせ、この沈殿物を濾液から分離するとともに、この分離された濾液に直流電流を通電することにより該濾液の電気分解とともに該濾液中に溶存する金属を酸化物として析出させ、この金属酸化物を前記濾液から分離する装置であり、濾液S1に、例えば、硫酸第一鉄(FeSO)や塩化第一鉄(FeCl)等の還元剤、炭酸ガス(CO)等のPH調整剤、炭酸カリウム(KCO)、塩酸(HCl)または硫酸(HSO)、高分子凝集剤P等を必要に応じて適宜添加し反応させる反応槽21と、これらの反応により生じた炭酸カルシウム(CaCO)および重金属の凝集物を含むスラリーS2を静置して凝集した炭酸カルシウム(CaCO)及び重金属を沈殿させる沈殿槽22と、この沈殿槽22にて沈殿した沈殿物を取り出して加圧・脱水し炭酸カルシウム(CaCO)及び重金属を含むケーキ状の重金属スラッジMSと濾液S3とに分離するフィルタプレス(脱水機)23と、沈殿槽22から排出される上澄水S4に金属捕集剤Tを添加して反応させ上澄水S4中の金属を凝集させる反応槽24と、この反応槽24から排出される金属凝集体を含むスラリーS5に直流電流を通電して電気分解を行い、スラリーS5の電気分解とともにスラリーS5中に溶存している金属を酸化物として析出させる電気分解装置25と、メンブレンフィルタを用いてスラリーS5を電気分解により生じた金属酸化物を含む懸濁物質と濾液S6とに分離する精密濾過装置26と、精密濾過装置26により微細な懸濁物質が除去された濾液S6に微量に溶存する金属をイオン交換樹脂を用いて取り除くイオン交換装置27とにより構成されている。
【0021】
晶析部3は、イオン交換装置27により懸濁物質が除去された濾液S6からさらに微量に溶存する金属が取り除かれた濾液S7に、水酸化カリウム(KOH)等のアルカリ金属化合物を添加し、pHを調整するpH調整槽31と、このpHが調整された濾液S7を真空引きにより減圧して水分を蒸発させることにより濃縮する濃縮槽32と、この濃縮された濾液S8を水蒸気STを用いて加熱する加熱器33と、この加熱された濾液S8を真空引きにより減圧して、この濾液S8に含まれる水分を蒸発させることにより濃縮し、この濾液S8に含まれる塩化カリウム(KCl)等の塩素化合物を晶析させたスラリーS9とする結晶缶34と、この塩化カリウム(KCl)等の塩素化合物が晶析したスラリーS9を、晶析した塩化カリウム(KCl)等の塩素化合物CCと塩素化合物を含まない母液S10とに分離する遠心分離装置35と、晶析した塩化カリウム(KCl)等の塩素化合物CCに振動を加えつつ乾燥させる振動乾燥器36とにより構成されている。
【0022】
加熱器33と結晶缶34は、加熱器33で加熱された濾液S8をこれら加熱器33と結晶缶34との間を循環させることにより、加熱、減圧による水分の蒸発を繰り返して濃縮し、塩化カリウム(KCl)等の塩素化合物を晶析させたスラリーS9を生成するようになっている。
結晶缶34にて蒸発した水分は、コンデンサ(図示略)等により冷却されて水に戻された後、水洗・分離工程の洗浄水W’として再利用される。
一方、遠心分離装置35には、滴下器(図示略)等を介してセメント製造設備37が接続されており、遠心分離装置35にて分離された母液S10を、滴下器(図示略)等を経由してセメント製造設備37に投入するようになっている。
【0023】
次に、本発明の塩素含有廃棄物の処理方法について、図1に基づき説明する。
本実施形態の塩素含有廃棄物の処理方法は、塩素含有廃棄物を水洗した後に該塩素含有廃棄物に含まれる塩素を回収する塩素含有廃棄物の処理方法であって、前記塩素含有廃棄物の水洗・濾過により得られた濾液に直流電流を通電することにより該濾液に溶存する金属を酸化物として析出させ、この金属酸化物を前記濾液から分離する方法である。
【0024】
この処理方法は、塩素含有廃棄物を水洗して得られた溶液を固形分と濾液に分離する水洗・濾過工程と、
前記濾液に、還元剤及びpH調整剤を添加して該濾液に溶存する金属を含む沈殿物を生じさせ、この沈殿物を前記濾液から分離するとともに、この分離された濾液に直流電流を通電することにより該濾液に溶存する金属を酸化物として析出させ、この金属酸化物を前記濾液から分離する濾液処理工程と、
この金属酸化物を分離した濾液を濃縮して該濾液に含まれる塩素化合物を晶析させ、ついで、この塩素化合物を晶析させた濾液を塩素化合物を含む固形分と母液とに分離し、この固形分を回収する晶析工程と、
を備えている。
【0025】
これらの各工程について、さらに詳細に説明する。
また、本実施形態の塩素含有廃棄物の処理方法においては、対象とする塩素含有廃棄物は、都市ごみ焼却炉や産業廃棄物焼却炉から排出される焼却灰や飛灰、またはセメント焼成設備に付設した塩素バイパス装置で得られた高濃度の塩素化合物を含むダスト等の塩素含有ダストである。
ここでは、セメント焼成設備の塩素バイパス装置で得られた塩素バイパスダストを対象として、前記各工程での処理を詳細に説明する。
【0026】
[水洗・濾過工程]
まず、水洗槽11に所定量の新水W、例えば水洗する塩素バイパスダストDに対して2〜4重量倍の新水Wを注水して貯留し、この新水Wに所定量の塩素バイパスダストDを投入し浸漬・攪拌して水洗し、塩素バイパスダストDに含まれる塩素化合物等の可溶成分を溶出させ、溶液M1とする。
【0027】
ここで新水Wの注水量を上記の様に限定した理由は、注水量がダストの2重量倍以下であると、ダスト中の可溶成分の溶出が不十分なものとなり、後段の濾過機12で濾過して得られる脱塩ケーキC中に残存する可溶成分が多くなるからである。また得られる溶液M1の粘性が高くなり、後の工程へのポンプ輸送が難しくなるからである。
また、注水量がダストの4重量倍以上であると、カルシウム成分や重金属類等の他の成分の溶出が多くなり、したがって、後段の工程においては、これらの成分を取り除くための薬剤の使用量が多くなり、また、晶析工程にて使用する蒸気量などが多量に必要となるからである。
【0028】
上記の水洗過程では、可溶成分の溶解速度を高めるために水洗槽11内の温度を40℃以上に高めてもよい。また、攪拌時間は10時間以内で十分塩素成分を溶解することができるが、長時間の攪拌は、ダストに含有するカルシウムとアルカリ成分および塩素との複塩が生成して沈殿物が生じ、十分な脱塩が行われない虞があるので好ましくない。
【0029】
この水洗過程により生成した溶液M1は、濾過機12により脱塩ケーキCと濾液S1に濾別される。
この濾別の際に、濾過機12内の脱塩ケーキに残留する可溶成分を含有する水分を、新水Wで洗浄することが好ましい。この新水Wを用いた洗浄は、濾過機12を加圧した状態で脱塩ケーキに一方向から新水Wを圧送することにより、少ない水量で効率のよい洗浄を行うことができる。
この洗浄のために使用する新水Wは、水洗されるダスト量に対して0.5〜2.0重量倍が好ましい。
【0030】
この新水Wを用いた洗浄により、脱塩ケーキC中の塩素含有量を十分に低下させることができる。
また、得られた脱塩ケーキCは、含水率が比較的低いことから、直接セメント製造設備に送られ他のセメント原料に混合され、乾燥・粉砕の後、粉末セメント原料としてセメント焼成工程にて再循環使用され、セメントクリンカとして焼成される。
【0031】
[濾液処理工程]
水洗・濾過工程で得られた濾液S1および洗浄後の水は、ダスト中の塩素が溶出している他には、重金属類、カルシウム成分、塩素成分等も含まれている。そこで、本工程にてこれらの成分を取り除く。
【0032】
この水溶液処理工程は、下記の3つの段階に分けられる。
A.第1段階
濾液に還元剤、共沈剤、pH調整剤等を添加し、この濾液中に溶存する金属を含む沈殿物を生じさせ、この沈殿物を濾液から分離する工程。
B.第2段階
第1段階で沈殿物が分離された濾液(またはスラリー)に直流電流を通電することにより、この濾液(またはスラリー)の電気分解とともに該濾液(またはスラリー)中に溶存する金属を酸化物として析出させ、この金属酸化物を分離する工程。
C.第3段階
金属酸化物を分離した後の濾液のイオン交換を行い、この濾液中に溶存する金属を除去する工程。
【0033】
これら3つの段階について順次説明する。
「第1段階」
水洗・濾過工程で濾別された濾液S1を反応槽21に投入し、この濾液S1から重金属類、カルシウム成分を取り除くために、還元剤・共沈剤として、例えば、硫酸第一鉄(FeSO)や塩化第一鉄(FeCl)等の鉄塩を添加し、またpH調整剤として炭酸ガス(CO)を吹込み、さらに炭酸カリウム(KCO)、塩酸(HCl)または硫酸(HSO)、高分子凝集剤P等を適宜添加し反応させることにより、上記成分を水酸化物等からなる沈殿物として析出させる。
【0034】
例えば、重金属類については、濾液S1のpHを9〜10.5程度にして重金属の水酸化物の沈殿物を生成させることにより、大幅に取り除くことが可能である。また、pH調整剤としては酸性のものであればよいが、炭酸ガスが最も好ましい。炭酸ガスを用いることで、濾液S1中に溶解しているカルシウムを大幅に取り除くことができる。
【0035】
また、炭酸ガス(CO)と同時に炭酸カリウム(KCO)を添加することとすれば、濾液S1中に溶解しているカルシウムを炭酸カルシウム(CaCO)として完全に沈殿させて除去することができる。炭酸カリウム(KCO)を添加した場合、最終的に回収される塩は塩化カリウム(KCl)である。
この炭酸カリウムの替わりに炭酸ナトリウム(NaCO)や炭酸水素ナトリウム(NaHCO)も利用することが可能である。
また、炭酸ガス(CO)が用意できない場合には、濾液S1中に溶解しているカルシウムを炭酸カリウム(KCO)のみで処理してもよい。
【0036】
次いで、このようにして得られた炭酸カルシウム(CaCO)を含む濾液に塩酸(HCl)または硫酸(HSO)を添加し、反応をさらに促進させる。
次いで、この反応が促進した濾液に高分子凝集剤Pを添加し、濾液中の炭酸カルシウム(CaCO)および重金属を凝集させ、スラリーS2とする。
この炭酸カルシウム(CaCO)および重金属の凝集物を含むスラリーS2は沈殿槽22に送られ、所定時間静置される。これにより、スラリーS2中の炭酸カルシウム(CaCO)および重金属が沈殿することとなる。
【0037】
この沈殿槽22の沈殿物は、取り出した後にフィルタプレス23に送られる。
フィルタプレス23では、沈殿物を加圧・脱水することにより、炭酸カルシウム(CaCO)および重金属を含むケーキ状の重金属スラッジMSと、濾液S3とに濾別される。この濾液S3は反応槽21に送られる濾液S1に添加されることで循環使用される。
なお、水洗・濾過工程と同様、フィルタプレス23での圧搾後、新水にて洗浄してもかまわない。
一方、沈殿槽22から排出される上澄水S4は、反応槽24に送られて金属捕集剤Tが添加される。この上澄水S4は金属捕集剤Tと反応することにより、懸濁浮遊物質(SS成分)を数%以下含むスラリーS5となる。
【0038】
「第2段階」
このスラリーS5は電気分解装置25に送られ、電気分解装置25の電極を介してスラリーS5中に通電を行い、スラリーS5中の一部の水を電気分解することによって同時に溶存する金属を酸化物として析出させ、微細な懸濁物質に変化させる。特に溶存する金属がタリウム(Tl)の場合、容易に懸濁物質となる。
この懸濁物質を含むスラリーS5は、精密濾過装置26に送られ、メンブレンフィルタ(MF:精密濾過膜)によって金属酸化物を含む微細な懸濁物質が取り除かれ、懸濁浮遊物質(SS成分)が1mg/L以下の濾液S6となる。一方、懸濁物質を含む濾液S6’は、反応槽21に送られることで循環使用される。
【0039】
「第3段階」
精密濾過装置26から排出される濾液S6にごく僅か残る溶存金属を取り除くため、この濾液S6をイオン交換装置27に送り、イオン交換樹脂を用いて濾液S6に微量に溶存する金属を取り除く。このイオン交換樹脂は、上記の第2段階の処理でも尚ごく微量に残存するタリウム等の金属を取り除くことが可能である。
このように、イオン交換樹脂にてタリウム等の金属がほぼ完全に取り除かれた濾液S7は晶析工程に送られる。
【0040】
[晶析工程]
セメント製造設備の塩素バイパス装置で捕集されたダストには、塩素化合物として多量の塩化カリウムが含まれている。また、その他の塩素化合物としては、塩化ナトリウムや重金属と塩素化合物の複塩等が含まれている。
上記の水洗・濾過工程では、重金属やカルシウム等は極力取り除かれるが、この晶析工程では、有用塩類として目的とする塩化カリウムを高純度で得ることが重要となる。
【0041】
この晶析工程は、濾液処理工程で得られ精密濾過処理がなされたSS成分を取り除き、さらにイオン交換樹脂によってタリウム等の金属がほぼ完全に取り除かれた濾液S7に多量に含まれる塩素成分を、塩化カリウムとして析出して有用塩とするために、塩化ナトリウム等の他のアルカリ金属塩を混入させない晶析操作を可能とする工程である。
【0042】
この晶析工程では、イオン交換装置27により懸濁物質が除去され、さらに微量に溶存するタリウム等の金属が取り除かれた濾液S7は、pH調整槽31に送られて水酸化カリウム(KOH)等のアルカリ金属化合物が添加され、pHが12程度に調整された濾液S7となる。
ここで、濾液S7をpH12程度に調整する理由は、水酸化カリウムを用いてpHを12程度に調整することにより、後続する工程でのスケールの付着防止を図り、装置の腐食を防止するとともに、晶析した後に得られる塩化カリウムの純度を低下させないためである。pHが調整された濾液S7は、濃縮槽32に送られる。
【0043】
pHが調整された濾液S7は、濃縮槽32にて真空引きにより減圧されて水分が蒸発し、濃縮される。
この濃縮された濾液S8は、加熱器33に送られ、水蒸気STを用いた間接加熱により所定の温度、例えば、50〜80℃の範囲に加熱する。
このようにして所定の温度に加熱された濾液S8は、結晶缶34に送られ、真空引きにより減圧されて水分が蒸発し濃縮される。
【0044】
この濾液S8は、結晶缶34と加熱器33との間を循環させることにより、減圧による水分の蒸発、加熱が繰り返されて次第に濃縮され、塩化カリウム(KCl)等の塩素化合物の微結晶を多く含むスラリーS9となる。
例えば、加熱器33にて水蒸気STによる間接加熱を施すことにより、濾液S8の温度を60℃程度にまで高め、減圧に保った結晶缶34にて水分を蒸発させて約5倍に濃縮し高純度の塩化カリウムを晶析させる。この操作を繰り返し行うことにより、濾液S8は塩化カリウムが晶析したスラリーS9となる。
また、結晶缶34にて蒸発した水分はコンデンサ(図示略)にて水に戻された後、水洗・濾過工程の洗浄水W’として再利用される。
【0045】
このようにして高濃度に濃縮されたスラリーS9は、遠心分離装置35により晶析した塩化カリウム(KCl)等の塩素化合物CCと塩素化合物を含まない母液S10とに分離される。この分離の際に、純水を固形分である晶析した塩素化合物に噴霧し、この固形分を洗浄することにより、より純度の高い塩素化合物とすることができる。
【0046】
この塩素化合物CCは、振動乾燥機36により振動を加えつつ乾燥された後、純度の高い塩化カリウムを含む有用塩として工業原料に利用される。また母液S10は加熱器33および結晶缶34により循環使用される。
一方、遠心分離装置35にて分離された母液S10は、滴下器(図示略)等を経由してセメント製造設備37に投入される。
【0047】
この晶析工程では、結晶缶33と加熱器34との間を循環することで濾液S8を連続して加熱・濃縮を行っていくと、スケール成分、重金属の濃縮等も生じる場合がある。そこで、一部ブローした母液S10を水洗・濾過工程の洗浄水の一部として利用すれば、水洗・濾過工程の沈殿物として回収することも可能である。
母液S10をブローする場合は、ダストの成分にもよるが通常、晶析工程に導入される濾液S7の重量の1/20〜1/70重量部程度が好ましい。
【0048】
また、高濃度に濃縮されたスラリーS9の分離については、
(1)加熱濃縮後のスラリーS9の塩化カリウムの結晶濃度が10〜25重量%程度になった後、連続して塩化カリウムを含む固形分と母液とに分離する方法
(2)スラリーS9を一時貯留し冷却して、塩化カリウム結晶を成長させた後、分離する方法
のいずれかの方法、もしくはこれらの方法を組合わせたものが好ましい。
【0049】
以上説明したように、本実施形態の塩素含有廃棄物の処理方法によれば、電気分解装置25を用いてスラリーS5中に通電を行い、スラリーS5中の一部の水を電気分解することによって同時に溶存する金属を酸化物として析出させ、懸濁物質を含むスラリーS5とし、精密濾過装置26によりスラリーS5から金属酸化物を含む微細な懸濁物質を取り除き、懸濁浮遊物質(SS成分)が1mg/L以下の濾液S6とするので、通常のpH調整や還元剤等では沈殿しない溶存金属を効率的に取り除くことができ、得られる塩素化合物の純度を高めることができる。
したがって、セメント焼成設備の塩素バイパス装置にて捕集された塩素バイパスダストや、塩素を含有した焼却灰等の高塩素含有廃棄物から、高純度の塩素化合物を効率的に分離回収することができる。
【0050】
本実施形態の塩素含有廃棄物の処理装置によれば、塩素含有廃棄物を水洗して得られた溶液を固形分と濾液に分離し、得られた固形分をセメント原料とする水洗・濾過部1と、この濾液に、還元剤及びpH調整剤を添加して該濾液に溶存する金属を含む沈殿物を生じさせ、この沈殿物を前記濾液から分離するとともに、この分離された濾液に直流電流を通電することにより該濾液に溶存する金属を酸化物として析出させ、この金属酸化物を前記濾液から分離する濾液処理部2と、この金属酸化物を分離した濾液を濃縮して該濾液に含まれる塩素化合物を晶析させ、ついで、この塩素化合物を晶析させた濾液を塩素化合物を含む固形分と母液とに分離し、この固形分を回収する晶析部3とにより構成したので、濾液中に溶存する金属を効率的に分離することができ、得られる塩素化合物の純度を高めることができる。その結果、少ない水の使用量でかつ低コストで高純度の塩素化合物の回収を行うことができる。
したがって、セメント焼成設備の塩素バイパス装置にて捕集された塩素バイパスダストや、塩素を含有した焼却灰等の高塩素含有廃棄物から、高純度の塩化カリウム等の塩素化合物を効率的に、しかも低コストで分離回収することができる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明の塩素含有廃棄物の処理方法について実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例によって何ら制限されるものではない。
なお、本実施例では、脱塩の対象となるダストとしてセメントキルンから排出され塩素バイパス装置によって採取された塩素バイパスダストを用いた。
この塩素バイパスダストの組成を表1に示す。
【0052】
【表1】

【0053】
まず、上記の組成のダストに、このダスト100重量部に対して300重量部の水を添加して攪拌し、ダストスラリーとするとともに、含有する塩素化合物等の可溶成分を溶出させリパルプさせた。
次いで、フィルタプレスを用いて、このダストスラリーを空気圧5Kg/cmの圧力で圧搾して311重量部の濾液を得た。次いで、この圧搾状態を保ったまま、フィルタープレス内の脱塩ケーキに新水100重量部を濾液圧送方向から圧入し、この脱塩ケーキの貫通洗浄をおこなった。
得られた脱塩ケーキの収量は85重量部、その含水率は40%、その塩素含有率は0.3%、その脱塩率は98.8%であった。このようにして得られた脱塩ケーキは、セメント原料として再利用が可能なものであった。
【0054】
一方、この水洗・濾過工程にて得られた浸出水と洗浄液を加えた濾液は415重量部であり、この濾液の特性は、pHが13.1、導電率が200mS/cmであり、また、カリウムの含有量は47.5g/L、塩素の含有量は46.2g/Lであり、カルシウムを730ppm程度含むものであった。
また、その他の金属類としては、鉛を約250ppm、銅を30ppm、亜鉛を3ppm、タリウムを80ppm程度含んでいた。
【0055】
次いで、この濾液を反応槽21に移し、この濾液に炭酸ガスを吹き込むことによりpHを9.5に調製し、さらに硫酸第一鉄(FeSO)及び炭酸カリウム(KCO)を添加して反応させ、炭酸カルシウム(CaCO)を含むスラリーとした。
次いで、このスラリーに高分子凝集剤を添加し、スラリー中の炭酸カルシウム(CaCO)及び重金属を凝集させたスラリーとした。
次いで、このスラリーを沈殿槽22に移して所定時間静置し、スラリー中の炭酸カルシウム(CaCO)及び重金属を沈殿させた。
【0056】
次いで、沈殿槽22から沈殿物を取り出し、フィルタプレス23にて加圧・脱水を行い、炭酸カルシウム(CaCO)及び重金属を含むケーキ状の重金属スラッジと濾液とに分離した。
この沈殿槽22で得られた沈殿物は、カルシウムの他、鉛などの金属化合物塩を多く含むものであった。また、フィルタープレス23により濾過した後の濾液を、反応槽21に投入する濾液に加え、再利用した。
【0057】
一方、沈殿槽22から排出される上澄水を反応槽24に移し、この上澄水に金属捕集剤を添加し、反応させた。
これにより、上澄水は析出した懸濁物質(SS成分)を数%以下含むスラリーとなった。この上澄水の重金属類の含有量を調べたところ、特に、タリウムを約50ppm含んでおり、この段階においては十分に捕集されていないものであった。
【0058】
次いで、このスラリーを電気分解装置25に移し、このスラリーに電極を用いて3ボルトの直流電圧を印加し、通電を行った。通電量は150C/Lであった。
これにより、スラリーの一部の水の電気分解を伴いながら、このスラリー中に溶存している金属を酸化物として析出させることにより、重金属化合物を生成させた。
【0059】
次いで、このスラリーを精密濾過装置26に移し、メンブレンフィルタ(MF)により金属を含む微細な懸濁物質と濾液とに分離した。この濾液は、懸濁物質が取り除かれたことで、SS成分が1mg/L以下にまで減少した。
メンブレンフィルタ(MF)により懸濁物質が取り除かれた濾液をイオン交換装置27に移し、この濾液に僅かに残存する金属をイオン交換樹脂により取り除いた。
【0060】
イオン交換装置27から排出される濾液(晶析工程原水)の特性は、pHが9.5、導電率が200mS/cmであり、カリウムの含有量は47.5g/L、塩素の含有量は46.2g/Lであり、カルシウムを4ppm含むものであった。また、その他の金属は、鉛、銅および亜鉛がいずれも0.1ppm以下であり、タリウムについては0.1ppm以下となっており、濾液に僅かに残存する金属が電気分解装置25とイオン交換装置27により効率的に分離捕集されていることがわかった。
その後、この濾液410重量部を晶析工程に移送した。
【0061】
この濾液(晶析工程原水)に、強制循環タイプの真空加熱濃縮晶析装置を用いて加熱および蒸発を繰り返し施すことにより、濃縮を行い、連続的に回収塩を晶析させた。この回収塩は遠心分離装置35に母液とともに入れられて回収を行った。この場合の回収塩の回収量は47重量部であった。
また、晶析工程では次第にNa量が増加してきたため、母液を投入液量の1/50の割合でブローし、セメント製造工程へ戻した。これにより回収された塩は、換算値で、KOを57重量%、NaOを0.7重量%、SOを7.4重量%、Clを39.5重量%、それぞれ含む白色の結晶であった。
この回収塩の組成を表2に示す。
【0062】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の一実施形態のセメント製造設備における塩素含有廃棄物の処理装置を示す模式図である。
【符号の説明】
【0064】
1 水洗・濾過部
2 濾過処理部
3 晶析部
11 水洗槽
12 濾過機
21 反応槽
22 沈殿槽
23 フィルタプレス
24 反応槽
25 電気分解装置
26 精密濾過装置
27 イオン交換装置
31 pH調整槽
32 濃縮槽
33 加熱器
34 結晶缶
35 遠心分離装置
36 振動乾燥器
37 セメント製造設備
D 塩素バイパスダスト
W 水
W’ 洗浄水
S1、S3、S6、S6’、S7、S8 濾液
S2、S5、S9 スラリー
S4 上澄水
S10 母液
C 脱塩ケーキ
P 高分子凝集剤
T 金属捕集剤
MS 重金属スラッジ
ST 水蒸気
CC 塩素化合物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩素含有廃棄物を水洗した後に該塩素含有廃棄物に含まれる塩素を回収する塩素含有廃棄物の処理方法であって、
前記塩素含有廃棄物の水洗・濾過により得られた濾液に直流電流を通電することにより該濾液に溶存する金属を酸化物として析出させ、この金属酸化物を前記濾液から分離することを特徴とする塩素含有廃棄物の処理方法。
【請求項2】
前記塩素含有廃棄物を水洗して得られた溶液を固形分と濾液に分離する水洗・濾過工程と、
前記濾液に、還元剤及びpH調整剤を添加して該濾液に溶存する金属を含む沈殿物を生じさせ、この沈殿物を前記濾液から分離するとともに、この分離された濾液に直流電流を通電することにより該濾液に溶存する金属を酸化物として析出させ、この金属酸化物を前記濾液から分離する濾液処理工程と、
この金属酸化物を分離した濾液を濃縮して該濾液に含まれる塩素化合物を晶析させ、ついで、この塩素化合物を晶析させた濾液を塩素化合物を含む固形分と母液とに分離し、この固形分を回収する晶析工程と、
を備えてなることを特徴とする塩素含有廃棄物の処理方法。
【請求項3】
前記金属酸化物を分離した後の濾液中に溶存する金属を、イオン交換樹脂により除去することを特徴とする請求項1または2記載の塩素含有廃棄物の処理方法。
【請求項4】
前記金属は、タリウムであることを特徴とする請求項1、2または3記載の塩素含有廃棄物の処理方法。
【請求項5】
塩素含有廃棄物を水洗した後に該塩素含有廃棄物に含まれる塩素を回収する塩素含有廃棄物の処理装置であって、
前記塩素含有廃棄物を水洗して得られた溶液を固形分と濾液に分離し、得られた固形分をセメント原料とする水洗・濾過手段と、
前記濾液に、還元剤及びpH調整剤を添加して該濾液に溶存する金属を含む沈殿物を生じさせ、この沈殿物を前記濾液から分離するとともに、この分離された濾液に直流電流を通電することにより該濾液に溶存する金属を酸化物として析出させ、この金属酸化物を前記濾液から分離する濾液処理手段と、
この金属酸化物を分離した濾液を濃縮して該濾液に含まれる塩素化合物を晶析させ、ついで、この塩素化合物を晶析させた濾液を塩素化合物を含む固形分と母液とに分離し、この固形分を回収する晶析手段と、
を備えてなることを特徴とする塩素含有廃棄物の処理装置。
【請求項6】
前記濾液処理手段に、前記金属酸化物を分離した後の濾液中に溶存する金属を除去するイオン交換樹脂を設けてなることを特徴とする請求項5記載の塩素含有廃棄物の処理装置。

【図1】
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【公開番号】特開2007−117966(P2007−117966A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−317273(P2005−317273)
【出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】