説明

塩酸キナプリルの調製

塩酸キナプリルを含むキナプリルとそれの薬学的に許容できる塩の調製のための方法及び材料について開示する。本方法は、(2S,4S)-2-(4-メチル-2,5-ジオキソ-オキサゾリジン-3-イル)-4-フェニル酪酸エチルエステルを、(3S)-1,2,3,4-テトラヒドロ-イソキノリン-3-カルボン酸tert-ブチルエステルと反応させて、キナプリルtert-ブチルエステルを生成させ、続いて、それを酸と反応させて、キナプリル又はキナプリルの酸付加塩を生成させることを包含する。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
この発明は、通常、キナプリルとして知られる(1S,2S,3S)-2-[2-(1-エトキシカルボニル-3-フェニル-プロピルアミノ)-プロピオニル]-1,2,3,4-テトラヒドロ-イソキノリン-3-カルボン酸
【0002】
【化1】

【0003】
を調製するための材料および方法に関する。
【発明の背景】
【0004】
塩酸キナプリルは、Pfizer Inc.により市販され、高血圧と鬱血性心不全の治療に用いられるACCUPRILRとACCURETICRに含まれる活性医薬成分である。キナプリルとそれの最初の代謝産物であるキナプリラト(キナプリルジ酸)は、アンジオテンシン変換酵素(ACE)の公知の阻害剤である。ACEは、アンジオテンシンIの、血管収縮剤であるアンジオテンシンIIへの変換を触媒するペプチジルジペチダーゼである。Hoefle等に発行された米国特許番号4,344,949('949特許)、及びGoel等に発行された米国特許番号4,761,479('479特許)を参照のこと。Klutchko等,“Synthesis of Novel Angiotensin Converting Enzyme Inhibitor Quinapril and Related Compounds. A Divergence of Structure-Activity Relationships for Non-Sulfhydryl and Sulfhydryl Types,”J.Med.Chem.Vol.29p.1553(1986)も参照のこと。
【0005】
キナプリルとそれの塩酸塩の調製方法は、'949特許とYoussefyeh等に発行された米国特許番号4,686,295('295特許)に基づく方法を包含する。この方法は、(3S)-1,2,3,4-テトラヒドロ-イソキノリン-3-カルボン酸ベンジルエステル(THIQベンジルエステル)
【0006】
【化2】

【0007】
を、(1S,2S)-2-(1-カルボキシ-エチルアミノ)-4-フェニル酪酸エチルエステル
【0008】
【化3】

【0009】
又は(2S,4S)-2-(4-メチル-2,5-ジオキソ-オキサゾリジン-3-イル)-4-フェニル酪酸エチルエステル
【0010】
【化4】

【0011】
と反応させ、(1S,2S,3S)-2-[2-(1-エトキシカルボニル-3-フェニル-プロピルアミノ)-プロピオニル]-1,2,3,4-テトラヒドロ-イソキノリン-3-カルボン酸ベンジルエステル
【0012】
【化5】

【0013】
を生成することを含む。
両反応とも、塩化メチレンのような非プロトン性溶媒中で行われる。N-置換アミノ酸(式3)に関与する反応は、カップリング剤(例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド)と触媒(例えば、N-ヒドロキシベンゾトリアゾール)の使用を含み、一方で、N-カルボキシ無水物(式4)に関与する反応は、触媒量の酸を使用する。
【0014】
HClと溶媒の混合液による処理後、式5のベンジル保護基がPd/Cで触媒された水素化分解を介して除去されて、キナプリルの塩酸塩
【0015】
【化6】

【0016】
が生成する。
'949特許と'295特許に基づく合成ルートは、容易に入手できる出発物質(式2〜式4)を使用するが、反応体の限界に基づいて、20%〜40%の収率損失がある。この収率損失はキナプリル(式1)又はそれのベンジルエステル(式5)のジケトピペラジンへの分子内環化(アミノリシス)に起因する。G.Guo等,“Physical Characteristics and Chemidal Degradation of Amorphous Quinapril Hydrochloride,”J.Pharm.Sci.Vol.89p.128(2000)を参照のこと。ジケトピペラジンの形成は約45℃を超える温度で加速化し、そして水素化分解溶媒を取り除くための蒸留中に主に起こると考えられる。
【0017】
本発明は、上記の1つ又はそれを超える問題を克服するか、又はそれらの問題の影響を少なくすることに関する。
【発明の要旨】
【0018】
本発明は、キナプリル(式1)、キナプリルHCl(式6)、及び、非晶性塩形態と結晶性塩形態を含む他の薬学的に許容できる塩を調製するための材料及び方法に関する。現行の方法と比較して、特許請求に係る方法は、キナプリルとそれの塩を実質的により高い収率(約25%増の収率)で生成し、有意なコスト削減をもたらす。さらに、本方法は、水素化分解の必要性を排除することにより、水素の取り扱いに関する困難を回避するので、処理量を有意に増加させる。実際、本発明は、現行の装置を使用した時の約3倍の処理量増加を提供する。
【0019】
かくして、本発明の1つの側面は、式1
【0020】
【化7】

【0021】
の化合物又は、式1の化合物の薬学的に許容できる塩の製造方法を提供する。本方法は、式4
【0022】
【化8】

【0023】
の化合物を式7
【0024】
【化9】

【0025】
の化合物と反応させ、式8
【0026】
【化10】

【0027】
の化合物を生成させ、続いて、酸と接触させて、式1の化合物又はそれの薬学的に許容できる塩を生成させることを包含する。
本発明のもう一つの側面は、式6
【0028】
【化11】

【0029】
の化合物の製造方法を提供し、そして、式4の化合物を式7の化合物と反応させて、式8の化合物(上記の通り)を得ることを包含する。本方法は、式8の化合物とHClを接触させて、式6の化合物を生成させることも包含する。
【0030】
本発明のさらなる側面は、式6の化合物の非晶形態の製造方法を包含する。本方法は、式4の化合物を式7の化合物と反応させて、式8の化合物(上記の通り)を生成させることを包含する。本方法は、式8の化合物を、HCl及びアセトンと接触させて、式9
【0031】
【化12】

【0032】
の化合物を生成させ、次に、極性の非プロトン性溶媒から式9の化合物を再結晶させて、乾燥により式6の化合物の非晶形態を生成させることも包含する。
【発明の詳細な説明】
【0033】
次の表は本明細書中で用いる略語の表である。
【0034】
【表1】

【0035】
スキーム1は、キナプリル(式6)の非晶性塩酸塩を調製するための方法を示す。遊離塩基(式1)又はその他の塩類及び多形体を製造するために容易に変更できる本方法は、触媒量の酸(例えば、HOAc、トリフルオロ酢酸、又は同じpKaを有する酸)の存在下で、(2S,4S)-2-(4-メチル-2,5-ジオキソ-オキサゾリジン-3-イル)-4-フェニル酪酸エチルエステル(式4)を(3S)-1,2,3,4-テトラヒドロ-イソキノリン-3-カルボン酸tert-ブチルエステル(式7)と反応させて、キナプリルtert-ブチルエステルである(1S,2S,3S)-2-[2-(1-エトキシカルボニル-3-フェニル-プロピルアミノ)-プロピオニル]-1,2,3,4-テトラヒドロ-イソキノリン-3-カルボン酸tert-ブチルエステル(式8)を生成させることを包含する。
【0036】
この反応は、1又はそれを超える非プロトン性又はプロトン性の溶媒中で、約60℃未満の温度、より典型的には、約45℃又はそれ未満の温度で行う。より低い反応温度は、望ましくない副生成物の形成を最小限とすることに役立つが、合理的な時間内(すなわち3時間未満)に実質的に完全な転化を行えるように、この反応は、通常、約15℃又はそれより高い温度で行われる。かくして、反応温度は典型的には15℃〜45℃であり、より典型的には30℃〜35℃である。有用な非プロトン性溶媒には、トルエンのような芳香族溶媒;MeCl2、クロロホルム等のようなハロアルキル類;THF、ジエチルエーテル、ジメトキシエタンのような環状又は非環状エーテル類;及び、アセトン、2-ブタノン等のケトン類が含まれる。有用なプロトン性溶媒には、限定はないが、MeOH、EtOH等のようなアルコール類;酢酸エチルのようなアルキルエステル類;及び水が含まれるが、それらに限定されるものではない。
【0037】
THIQ tert-ブチルエステル(式7)は、CHEMICREAからp-トルエンスルホン酸塩(THIQ tert-ブチルエステルPTSA塩)として入手でき、そして、塩基性条件(例えばpH8〜pH9)下で、水と有機溶媒(例えばトルエン)とで抽出し、続いて、その有機相を蒸留することにより調製される。特に断りがなければ、本開示における温度範囲、pH範囲等についての言及は、示された上限下限を含むものとする。
【0038】
N-カルボキシ無水物(式4)とTHIQ tert-ブチルエステル(式7)のカップリング後、キナプリルtert-ブチルエステル(式8)を、水性又は無水の塩酸と反応させることによりtert-ブチル保護基が除去される。この反応は、1又はそれを超える非プロトン性又はプロトン性溶媒(例えば、HOAc、MeCl2、トルエン等)中で、ほぼ室温で行われ、溶液状態の塩酸キナプリルを生成する。反応混合液に加えられる有機溶媒の量は、反応混合液成分の沈殿を防ぐのに十分な多さの量だが、その後の蒸留による除去の必要性を排除するのに十分な少なさの量がよく、それによりジケトピペラジンの形成を最小限にできる。tert-ブチル基は他の酸を用いて除去してもよいが、THIQ tert-ブチルエステルをHClと反応させることで、一段階での脱保護及び塩酸塩形成が可能になる。
【0039】
溶液状態のキナプリル塩酸塩を形成した後、反応混合液を真空下で、ほぼ室温下におき、残存する塩酸を排出する。アセトンをこの溶液に加え、約0℃の温度まで冷却して、キナプリルHClをアセトン溶媒和物(式9)として沈殿させる。生じた結晶性の固体は、ろ過(例えば、遠心ろ過)により混合液から分離し、続いて、アセトニトリルのような極性の非プロトン性溶媒中で再結晶させる。再結晶された溶媒和物を続いて乾燥し、非晶性の固体を得る。本方法は、非晶性キナプリルHClを高い収量(すなわち、THIQ tert-ブチルエステルPTSA塩に基づいて90%の収量)で与える。
【0040】
キナプリル(式1)に加えて、他の開示した化合物が薬学的に許容できる塩(ジ塩を含む)を形成することができる。このような塩には、限定はないが、酸付加塩及び塩基塩が含まれる。薬学的に許容できる酸付加塩は、塩酸、硝酸、燐酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、フッ化水素酸、及び亜リン酸等のような無機酸類から誘導される無毒の塩、並びに、脂肪族モノカルボン酸及びジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、アルカンジ酸、芳香族酸、脂肪族スルホン酸、及び芳香族スルホン酸等のような有機酸から誘導される無毒の塩が含まれる。そのような塩には、かくして、硫酸塩、ピロ硫酸塩、硫酸水素塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、硝酸塩、リン酸塩、一水素リン酸塩、二水素リン酸塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、プロピオン酸塩、カプリル酸塩、イソ酪酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、琥珀酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、フタル酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、及びメタンスルホン酸塩等が含まれる。
【0041】
薬学的に許容できる塩基塩には、塩基から誘導される無毒の塩が含まれてもよく、そのような塩基には、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の陽イオンのような金属陽イオン、並びに、アミン類が含まれる。適する金属陽イオンの例は、限定はないが、ナトリウムイオン(Na)、カリウムイオン(K)、マグネシウムイオン(Mg)、カルシウムイオン(Ca2+)等が含まれるが、それらに限定されるものではない。適するアミン類の例は、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、N-メチルグルカミン、及びプロカインが含まれるが、それらに限定されるものではない。有用な酸付加塩及び塩基塩の説明については、S.M.Berge等,“Pharmaceutical Salts,”J.of Pharm.Sci.,Vol.66p.1-19(1977)を参照のこと。Stahl、Wermuth, Handobook of Pharmaceutical Salts:Properties, Selection, and Use(2002)も参照のこと。
【0042】
【化13】

【0043】
一般に、薬学的に許容できる酸付加塩(又は塩基塩)は、化合物の遊離塩基(又は遊離酸)を、十分量の望まれる酸(又は塩基)と接触させて無毒の塩を生成させることにより調製することができる。次いで、塩が溶液から沈殿している場合にはろ過により、又は濃縮して塩を回収することにより、塩を単離してもよい。酸付加塩を塩基と(又は塩基塩を酸と)接触させることにより、遊離塩基(又は遊離酸)を再生させることができる。遊離塩基(又は遊離酸)及びそれぞれの酸付加塩(又は塩基塩)の一定の物理特性(例えば、溶解性、結晶構造、吸湿性等)は異なり得るが、化合物の遊離塩基と酸付加塩(又は遊離酸と塩基塩)は本開示の目的については同等である。
【0044】
上に示したこと及び以下の実施例に示す通り、塩酸キナプリルはアセトン溶媒和物(式9)として単離される。本開示における一定の他の化合物は、非溶媒和物形態、又は水和物形態を含む溶媒和物形態として存在することができる。薬学的に許容できる溶媒和物には、結晶化溶媒が同位体置換されたもの、例えばD2O、d6-アセトン、d6-DMSO等である水和物及び溶媒和物が含まれる。一般に、本開示の目的については、水和物形態を含む溶媒和物形態は非溶媒和物形態と同等である。かくして、明記がなければ、化合物の遊離塩基、遊離酸又は非溶媒和物形態のすべての言及は、本化合物の対応する酸付加塩、塩基塩又は溶媒和物形態も包含する。
【0045】
開示した化合物は、少なくとも1つの原子が、同じ原子番号を有するが、自然界に通常見出されるものと異なる原子量を有する原子により置き換えられている、すべての薬学的に許容できる同位体変換物も包含する。開示した化合物中に含まれるのに適する同位体の例は、限定はないが、H、Hのような水素の同位体:13C、14Cのような炭素の同位体:15Nのような窒素の同位体:17O、18Oのような酸素の同位体:31P、32Pのようなリンの同位体:35Sのような硫黄の同位体:18Fのようなフッ素の同位体:及び、36Clのような塩素の同位体が含まれる。同位体変換物(例えば、重水素、H)の使用は、より高い代謝安定性からもたらされる一定の治療上の利点、例えば、高いin vivo半減期、又は低い必要用量を与える。加えて、本開示化合物の一定の同位体変換物は、薬剤及び/又は基質組織分布研究に有用であり得る放射活性同位体(例えば、トリチウム、3H、又は14C)を組み込んでもよい。
【実施例】
【0046】
次の実施例は、例示であって限定の意味ではないこと、及び本発明の具体的態様を表すことを意図するものである。
【0047】
実施例1 THIQ tert-ブチルエステル
水酸化ナトリウム(5.9 kg,50重量%水溶液)、トルエン(56 L)及び水(28 L)を、THIQ tert-ブチルエステルPTSA塩(30 kg)及び水(28 L)の入っているガラスライニングされた蒸留器に加えた。生じた混合液を、室温で約10分間激しく撹拌し固体を溶解させた。その混合液は水相と有機相に分離した。HCl(37重量%水溶液)又はNaOH(50重量%水溶液)のアリコートを加えて、水相におけるpHを8〜9に維持した。HCl又はNaOHの最終添加後、その混合液をさらに30分間激しく撹拌し、水相と有機相を15分間静置した。下側の水相を抜き取り、残りの有機相を、約5 mmHgの減圧下で、有機混合液の容量が約14 Lに到達するまで蒸留した。生じたTHIQ tert-ブチルエステル溶液を室温以下まで冷却し、ガラスライニングされた移動容器中に入れた。蒸留器の内側をトルエン(2 L)ですすぎ、残存するTHIQ tert-ブチルエステルを回収し、移動容器中に戻した。
【0048】
実施例2 キナプリルtert-ブチルエステル
実施例1のTHIQ tert-ブチルエステルを、(2S,4S)-2-(4-メチル-2,5-ジオキソ-オキサゾリジン-3-イル)-4-フェニル-酪酸エチルエステル(23.5 kg)、トルエン(12 L)、及びHOAc(0.09 kg)が入っているガラスライニングされた蒸留器に、約5分かけて、激しく撹拌しながら加えた。移動容器の内側をトルエン(7 L)ですすぎ、残存するTHIQ tert-ブチルエステルを回収し、蒸留器に戻した。蒸留器の内容物を、少なくとも30分間、約30℃〜35℃の温度で、激しく撹拌し、THIQ tert-ブチルエステルをキナプリルtert-ブチルエステルへと、実質的に完全に転化(99.9%以上)させた。その反応混合液を、次に、約15℃〜25℃の温度まで冷却した。THIQ tert-ブチルエステルをキナプリルtert-ブチルエステルへと転化する間、COが生じたので、大気中へ排出した。
【0049】
実施例3 キナプリルHCl溶液
酢酸(10.5 kg)を、約-5℃〜5℃の温度まで冷却した実施例2のキナプリルtert-ブチルエステル反応混合液に加えた。HOAcの添加後、無水塩酸(8.1 kg)を、蒸留器の上部空間を約5psig.未満の圧力を維持する速度で、激しく撹拌しながら、反応混合液に加えた。HCl添加の間、反応混合液を冷却し、約20℃又はそれ未満の温度を維持した。脱保護反応中に形成されるイソブチレンは、蒸留器の上部空間の圧力が約10psig.に到達したときはいつでも、苛性スクラバーに排出した。HClの添加後、実質的にすべて(99.5%以上)のキナプリルtert-ブチルエステルがキナプリルHClに転化されるまで、反応混合液を、約20℃〜25℃の温度で、激しく撹拌した。
【0050】
実施例4 キナプリルHClアセトン溶媒和物
アセトン(75 L)を実施例3のキナプリルHCl溶液に添加した後、蒸留器の上部空間を空にし、過剰なHClを除去した。その反応混合液を、次に、約10℃〜20℃の温度まで冷却し、キナプリルHClのアセトン溶媒和物の結晶化を促進した。結晶化開始後、蒸留器の内容物を、約15℃〜25℃の温度で少なくとも8時間、続いて、約-5℃〜5℃の温度で少なくとも2時間、激しく撹拌した。蒸留器の内容物を遠心機に移動し、キナプリルHClの結晶性アセトン溶媒和物を単離した。残存するキナプリルHClを回収するために、蒸留器をアセトン(20 L)で満たして、0℃〜10℃の温度まで冷却した。生じたアセトンすすぎ液を遠心機に移動し、結晶を洗浄した。13C核磁気共鳴スペクトル(DMSO-d):δ13.65,14.48,29.82,30.43,30.51(アセトン),31.06,43.36,44.35,51.77,52.44,52.96,53.73,57.14,61.83,126.08,126.54,127.95,128.23,128.29,131.91,132.24,132.36,140.09,168.20,171.11,171.24,208.16(アセトン)ppm.
【0051】
実施例5 キナプリルHCl(非晶質)
約75℃〜82℃の温度に予め熱したアセトニトリルを、実施例4のキナプリルHClアセトン溶媒和物が入っているガラスライニングされた容器に加えた。加えたアセトニトリルの量は、キナプリルHClアセトン溶媒和物の約3.5倍の量であり、これは完全に固体を溶解するために十分な量だった。この容器の内容物を激しく撹拌し、75℃〜82℃の温度まで10分未満の間に加熱して、生じた溶液を、フィルターを通して、ガラスライニングされた蒸留器に移した。キナプリルHClアセトニトリル溶媒和物を結晶化させるために、蒸留器の内容物を、約0℃〜5℃の温度で少なくとも8時間、激しく撹拌した。蒸留器の内容物を遠心機に移し、そこで、キナプリルHClアセトニトリル溶媒和物を1〜3ミクロンのポリエチレン遠心袋に集めた。残存するキナプリルHClアセトニトリル溶媒和物を回収するために、蒸留器をアセトニトリル(10 kg)で満たし、約5℃又はそれ未満の温度まで冷却した。生じたアセトニトリルすすぎ液を遠心機に移し、固体を洗浄し、次に、その固体を、固体中のアセトニトリル及びアセトンの濃度がそれぞれ0.041重量%未満及び0.25重量%未満になるまで、約5 mmHgの減圧下、約50℃〜55℃の温度で乾燥した。乾燥工程中、結晶性キナプリルHClアセトニトリル溶媒和物は、非晶性キナプリルHClに転化した。全体の収率は、THIQ tert-ブチルエステルPTSA塩の量に基づいて、約90%だった。13C核磁気共鳴スペクトル(DMSO-d);δ13.79,14.59,29.92,30.37,30.53,43.47,44.41,51.84,52.52,53.02,53.81,57.18,61.93,126.21,126.67,127.08,128.20,128.37,131.50,132.06,132.47,140.23,168.41,171.31,171.43 ppm.
【0052】
上の記載は、例示であって限定しないことが意図されていると理解されるべきである。上の記載を読むと、当業者には、多くの態様が明らかとなるだろう。ゆえに、本発明の範囲は、上の記載を参照して決定されるべきではなく、その代わり、添付した特許請求の範囲を参照し、そのような特許請求の範囲に認められる均等の全範囲を併せて、決定されるべきである。特許、特許出願、及び刊行物を含むすべての記事及び参照についての開示は、それらの全体及びすべての目的のために、参照により本明細書中に組み込まれるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1
【化1】

の化合物又は薬学的に許容できるその塩の製造方法であって、
式4
【化2】

の化合物を、式7
【化3】

の化合物と反応させて、式8
【化4】

の化合物を生成させること、及び、
該式8の化合物を酸と接触させて、該式1の化合物又は薬学的に許容できるその塩を生成させること
を含んでなる方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、さらに、該式1の化合物の薬学的に許容できる塩を溶媒と接触させて、溶媒和物を生成させることを含んでなる方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、さらに、該溶媒和物を乾燥させることを含んでなる方法。
【請求項4】
式6
【化5】

の化合物の製造方法であって、
式4
【化6】

の化合物を、式7
【化7】

の化合物と反応させて、式8
【化8】

の化合物を生成させること、及び、
該式8の化合物をHClと接触させて、該式6の化合物を生成させること
を含んでなる方法。
【請求項5】
式6
【化9】

の化合物の製造方法であって、
式4
【化10】

の化合物を、式7
【化11】

の化合物と反応させて、式8
【化12】

の化合物を生成させること、
該式8の化合物をHCl及びアセトンと接触させて、式9
【化13】

の化合物を生成させること、
該式9の化合物を極性の非プロトン性溶媒から再結晶させて、溶媒和物を生成させること、及び、
該溶媒和物を乾燥して該式6の化合物の非晶形態を生成させること
を含んでなる方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、さらに、アセトニトリルから該式9の化合物を再結晶させることを含んでなる方法。

【公表番号】特表2006−522092(P2006−522092A)
【公表日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−506407(P2006−506407)
【出願日】平成16年3月19日(2004.3.19)
【国際出願番号】PCT/IB2004/000942
【国際公開番号】WO2004/087671
【国際公開日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(503181266)ワーナー−ランバート カンパニー リミティド ライアビリティー カンパニー (167)
【Fターム(参考)】