説明

塩酸ファスジルの経口徐放性製剤

【課題】塩酸ファスジルおよびその水和物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の有効成分を含有する経口徐放性製剤の提供。
【解決手段】表面を有する芯および該芯の表面を被覆する被膜よりなる少なくとも1個の徐放性被覆粒子を含み、該芯が該有効成分を含有し、該被膜が、コーティング基剤及び特定の不溶性物質を含み、該製剤が、溶出試験法によって測定した時に、該有効成分に関し、特定の溶出率を示す。経口徐放性製剤は、該製剤からの該有効成分の溶出を確実に制御し、該有効成分の作用を長時間持続させることにより、服薬に伴う患者の負担を軽減し、コンプライアンスを向上させることができる。また該有効成分を含有する経口徐放性製剤を、該有効成分の徐放能に関して評価する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経口徐放性製剤に関する。更に詳しくは、本発明は、塩酸ファスジルおよびその水和物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の有効成分を含有する経口徐放性製剤であって、該製剤が、表面を有する芯および該芯の表面を被覆する被膜よりなる少なくとも1個の徐放性被覆粒子を含み、該芯が該有効成分を含有し、該被膜が、コーティング基剤及び特定の不溶性物質を含み、該製剤が、溶出試験法によって測定した時に、該有効成分に関し、特定の溶出率を示すことを特徴とする製剤、および該有効成分を含有する経口徐放性製剤を、該有効成分の徐放能に関して評価する方法に関する。
【0002】
本発明の経口徐放性製剤は、塩酸ファスジルの放出を確実に制御することが可能なので、適切な量の塩酸ファスジルが長時間にわたって放出され、塩酸ファスジルの作用が比較的長時間持続する。その結果、製剤の投与頻度が減り、服薬に伴う患者の負担が軽減され、コンプライアンスが向上し、塩酸ファスジルの治療効果が確実なものとなるので、極めて有用である。
【背景技術】
【0003】
1−(5−イソキノリンスルホニル)ホモピペラジン塩酸塩(以降「塩酸ファスジル」と称する)は優れた血管拡張作用を有し、エリル注(Eril Inj.)(登録商標;旭化成工業株式会社)の商品名で市販され、くも膜下出血術後の脳血管攣縮及びこれに伴う脳虚血症状の改善等を目的とした注射剤として臨床使用されている[特公平5−3851号明細書(米国特許第4,678,783号明細書に対応)を参照]。
【0004】
また塩酸ファスジルの結晶には、結晶水を持たない結晶(以降「塩酸ファスジル無水物」と称する)と、結晶水を有する結晶(以降「塩酸ファスジル水和物」と称する)が存在することが知られている[国際出願公開公報第WO97/02260号明細書(欧州特許公開公報第0 870 767 A1号明細書に対応)を参照]。
【0005】
発明の概要
塩酸ファスジルは、その優れた血管拡張作用のため、前記の注射剤とは投与経路や用法・用量等を異にする、種々の製剤として提供されることが望まれている。例えば、その優れた血管拡張作用から、塩酸ファスジルを虚血性疾患、特に狭心症等の治療薬として用いることが可能であって、その場合、塩酸ファスジルを有効成分として含有する経口製剤は、医師により投与を受ける必要のある注射剤と違い、患者が自宅で服用することが可能であるため、通院治療に伴う患者の負担を大幅に軽減することができる。
【0006】
以上のような観点から、本発明者らは、塩酸ファスジルを有効成分として含有する、狭心症などの虚血性疾患の治療を目的とした経口製剤の開発を試みた。
【0007】
この開発過程において、塩酸ファスジルを有効成分として含有する従来型の経口製剤を用いて、十分な治療効果を得るためには、1日3回という高頻度の投与が必要であることが判明した。しかし、虚血性疾患のように、長期間に及ぶ薬剤投与が必要な疾患の治療に用いる薬剤が、高頻度の投与を必要とする場合、いわゆるコンプライアンスが低下することが多い。これは、患者がその薬剤の服用を忘れることが多くなるためであり、その結果確実な治療効果が得られないことがある。従って、確実な治療効果を得るためには、薬剤の投与頻度を減らすことにより、服薬に伴う患者の負担を軽減し、コンプライアンスを向上させることが好ましいとされている。
【0008】
薬剤の投与回数を減らすための有効な手段の一つとして、薬剤を経口徐放性製剤とすることが挙げられる。そこで本発明者らが、塩酸ファスジルの経口徐放性製剤の開発を試みたところ、そのような製剤を開発するためには、以下に述べる2つの問題を解決する必要があることが判明した。
【0009】
第1の問題は、塩酸ファスジルの溶出を制御する方法に関するものである。
【0010】
一般に、製剤からの薬物の溶出速度を適切に制御することにより、比較的多量の薬物を含む製剤から、薬物が比較的長時間(以降、単に「長時間」という)にわたって徐々に放出されるようにすることができる。そのような製剤(徐放性製剤)を患者に投与すると、その製剤から適切な量の薬物が長時間にわたって徐々に放出され、患者の血液中の薬物の濃度がその時間にわたって適切な範囲に維持されるので、作用が長時間持続する。またこのことにより、製剤の投与頻度を減らすことが可能になる。
【0011】
徐放性製剤を製造するための技術に関しては多数の報告があり、それらの技術が多くの医薬品に適用され、種々の有用な徐放性製剤が開発されている。
【0012】
ところが、塩酸ファスジルを含む製剤からの、塩酸ファスジルの放出を制御することは、従来の方法では非常に困難であった。実際本発明者らは、これまでに報告されている種々の方法で、塩酸ファスジルを有効成分として含有する徐放性製剤の製造を試みたが、塩酸ファスジルは速やかに製剤から放出されてしまい、放出を制御することは不可能であった。この問題は、塩酸ファスジルが本質的に極めて水に溶けやすい性質を有していることに起因するものである。
【0013】
また、塩酸ファスジルの作用を長時間持続させるためには、後述する塩酸ファスジルの活性代謝物の血中濃度を長時間にわたって適切な範囲に維持する必要がある。そのためには、消化管内液の量が比較的多い消化管上部内において、塩酸ファスジルが製剤から急速に放出されることがなく、その一方で、消化管上部内に比べ消化管内液の量の少ない消化管下部内においても、十分な量の塩酸ファスジルが放出されるような製剤を用いる必要がある。
【0014】
このため、塩酸ファスジルを有効成分として含有する経口徐放性製剤は、
(1)多量の水分の存在下においても、塩酸ファスジルの急速な放出を確実に抑制する
(2)少量の水分の存在下においても、十分な量の塩酸ファスジルを長時間にわたって確実に放出するという、相反する機能を有する必要がある。このような製剤の開発は、従来の方法では極めて困難であった。
【0015】
第2の問題は、塩酸ファスジルの体内動態に関するものである。
【0016】
経口投与された塩酸ファスジルの大半は、代謝を受けた後に循環血中に移行する。代謝を受けず、未変化体のまま循環血中に移行する塩酸ファスジルの量はごくわずかである。塩酸ファスジルが代謝を受けて生じる代謝産物は、主として塩酸ファスジル分子中のイソキノリン骨格の1位に水酸基が導入された1−ヒドロキシ体であり、この1−ヒドロキシ体が、生体内において薬理作用を発現する。即ち、塩酸ファスジルの薬理作用は、実際には塩酸ファスジルの活性代謝物である1−ヒドロキシ体によるものである(以降、塩酸ファスジルの活性代謝物である1−ヒドロキシ体を、単に「活性代謝物」と称する)。従って、塩酸ファスジルの薬理作用を持続させるためには、塩酸ファスジル自体ではなく、活性代謝物の血中濃度を長時間適切な範囲に維持する必要がある。
【0017】
ところが、この活性代謝物は速やかに血中より消失するので、活性代謝物の血中濃度を長時間適切な範囲に維持するためには、活性代謝物を継続的に循環血中に移行させ続けなければならない。これが達成されるためには、塩酸ファスジルを含有する製剤が経口投与されて消化管内に到達し、その後消化管下部に移送されるまでの間、適切な量の塩酸ファスジルが製剤から継続的に放出され、放出された塩酸ファスジルが消化管全域で吸収され、その後代謝されて活性代謝物となり、継続的に循環血中に移行することが必要と考えられる。
【0018】
しかし、多くの薬物に関し、吸収や代謝の速度などが、消化管の各部位によって異なることが知られている。薬物の種類によっては、その薬物が受ける代謝の様式にまで差がある。従って、塩酸ファスジルのような、代謝を受けた後に薬理作用を発揮する薬物を徐放性製剤、特に経口徐放性製剤とする場合、その製剤設計、すなわち、活性代謝物の血中濃度を適切な範囲に長時間維持することを可能にするための、徐放性製剤からの塩酸ファスジルの放出パターンの設定が非常に困難であった。
【0019】
このような状況下において、本発明者らは、上記2つの問題を解決し、有効成分として塩酸ファスジルを含有し、適切な量の塩酸ファスジルを長時間にわたって放出し、塩酸ファスジルの作用を長時間持続させることが可能な経口徐放性製剤を開発すべく、鋭意研究を行なった。その結果意外にも、有効成分として塩酸ファスジルを含有する経口徐放性製剤を、表面を有し且つ有効成分を含有する芯およびその芯の表面を被覆し且つコーティング基剤及び特定の不溶性物質を含む被膜よりなる少なくとも1個の徐放性被覆粒子を含む製剤とすることにより、製剤からの塩酸ファスジルの放出を確実に制御することが可能となること、および上記のような製剤からの塩酸ファスジルの放出は、製剤の周囲に存在する水分の量にほとんど影響されないことを見いだした。
【0020】
また、有効成分として塩酸ファスジルを含有する経口徐放性製剤が、溶出試験法によって測定した時に、有効成分に関し特定の溶出率を示すようにすることにより、上記の活性代謝物の血中濃度を長時間にわたり適切な範囲に維持することが可能となることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0021】
従って、本発明の主な目的は、有効成分として塩酸ファスジルを含有し、適切な量の塩酸ファスジルを長時間にわたって放出し、塩酸ファスジルの作用を長時間持続させることが可能な経口徐放性製剤を提供することにある。
【0022】
本発明の他の1つの目的は、有効成分として塩酸ファスジルを含有する経口徐放性製剤を、塩酸ファスジルの徐放能に関して評価する方法を提供することにある。
【0023】
本発明の上記及びその他の諸目的、諸特徴ならびに諸利益は、添付の図面を参照しながら述べる以下の詳細な説明及び請求の範囲の記載から明らかになる。
【0024】
発明の詳細な説明
本発明によれば、下記式
【0025】
【化4】

で表わされる塩酸ファスジルおよびその水和物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の有効成分を含有する経口徐放性製剤であって、
該製剤が、表面を有する芯および該芯の表面を被覆する被膜よりなる少なくとも1個の徐放性被覆粒子を含み、該芯が該有効成分を含有し、該被膜が、コーティング基剤及び薬学的に許容され且つ水及びエタノールのいずれにも不溶な物質である不溶性物質を含み、
該製剤が、第十三改正日本薬局方に記載の溶出試験法第2法(パドル法)によって測定した時に、該有効成分に関し、下記(1)、(2)および(3)の溶出率を示すことを特徴とする製剤が提供される。
【0026】
(1)溶出試験開始から3時間後の時点で、該製剤に元から含まれている該有効成分の全重量に対し5〜40%、
(2)溶出試験開始から6時間後の時点で、該製剤に元から含まれている該有効成分の全重量に対し35〜70%、および
(3)溶出試験開始から15時間後の時点で、該製剤に元から含まれている該有効成分の全重量に対し70%以上。
【0027】
次に、本発明の理解を容易にするために、本発明の基本的諸特徴及び好ましい態様を列挙する。
1.下記式
【0028】
【化5】

で表わされる塩酸ファスジルおよびその水和物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の有効成分を含有する経口徐放性製剤であって、
該製剤が、表面を有する芯および該芯の表面を被覆する被膜よりなる少なくとも1個の徐放性被覆粒子を含み、該芯が該有効成分を含有し、該被膜が、コーティング基剤及び薬学的に許容され且つ水及びエタノールのいずれにも不溶な物質である不溶性物質を含み、
該製剤が、第十三改正日本薬局方に記載の溶出試験法第2法(パドル法)によって測定した時に、該有効成分に関し、下記(1)、(2)および(3)の溶出率を示すことを特徴とする製剤。
【0029】
(1)溶出試験開始から3時間後の時点で、該製剤に元から含まれている該有効成分の全重量に対し5〜40%、
(2)溶出試験開始から6時間後の時点で、該製剤に元から含まれている該有効成分の全重量に対し35〜70%、および
(3)溶出試験開始から15時間後の時点で、該製剤に元から含まれている該有効成分の全重量に対し70%以上。
2.該芯中に含まれる該有効成分の量が、該製剤に含まれている該有効成分の全重量に対し、少なくとも30重量%であることを特徴とする、前項1に記載の経口徐放性製剤。
3.該芯中に含まれる該有効成分の量が、該製剤に含まれている該有効成分の全重量に対し、実質的に100重量%であることを特徴とする、前項1に記載の経口徐放性製剤。
4.該被膜が、該コーティング基剤1重量部に対して0.5〜10重量部の該不溶性物質を含むことを特徴とする、前項1〜3のいずれかに記載の経口徐放性製剤。
5.該不溶性物質が、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、酸化チタン、軽質無水ケイ酸からなる群より選ばれる1種以上の物質であることを特徴とする、前項1〜4のいずれかに記載の経口徐放性製剤。
6.該コーティング基剤がエチルセルロースであり、該不溶性物質がタルクであることを特徴とする、前項1〜5のいずれかに記載の経口徐放性製剤。
7.該コーティング基剤がエチルセルロースであり、該不溶性物質がステアリン酸マグネシウムであることを特徴とする、前項1〜5のいずれかに記載の経口徐放性製剤。
8.該コーティング基剤が、アクリル酸エチル/メタアクリル酸メチル/メタアクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル共重合体であり、該不溶性物質がタルクであることを特徴とする、前項1〜5のいずれかに記載の経口徐放性製剤。
9.下記式
【0030】
【化6】

で表わされる塩酸ファスジルおよびその水和物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の有効成分を含有する経口徐放性製剤であって、
該製剤が、第十三改正日本薬局方に記載の溶出試験法第2法(パドル法)によって測定した時に、該有効成分に関し、下記(1)、(2)および(3)の溶出率を示すことを特徴とする製剤。
【0031】
(1)溶出試験開始から3時間後の時点で、該製剤に元から含まれている該有効成分の全重量に対し5〜40%、
(2)溶出試験開始から6時間後の時点で、該製剤に元から含まれている該有効成分の全重量に対し35〜70%、および
(3)溶出試験開始から15時間後の時点で、該製剤に元から含まれている該有効成分の全重量に対し70%以上。
10.下記式
【0032】
【化7】

で表わされる塩酸ファスジルおよびその水和物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の有効成分を含有する経口徐放性製剤を、該有効成分の徐放能に関して評価する方法であって、該製剤を、第十三改正日本薬局方に記載の溶出試験法第2法(パドル法)による標準試験に付して該製剤からの該有効成分の溶出性について、下記(1)、(2)および(3)の溶出率を基準にして検査した場合に得られる評価結果と実質的に同じ評価結果を与える溶出試験法による試験に付すことを含む方法。
【0033】
(1)溶出試験開始から3時間後の時点で、該製剤に元から含まれている該有効成分の全重量に対し5〜40%、
(2)溶出試験開始から6時間後の時点で、該製剤に元から含まれている該有効成分の全重量に対し35〜70%、および
(3)溶出試験開始から15時間後の時点で、該製剤に元から含まれている該有効成分の全重量に対し70%以上。
【0034】
以下、本発明につき詳細に説明する。
【0035】
本発明の経口徐放性製剤は、下記式
【0036】
【化8】

で表わされる塩酸ファスジルおよびその水和物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の有効成分を含有する。
【0037】
塩酸ファスジル(無水物)は、公知の方法、例えば特公平5−3851号明細書(米国特許第4,678,783号明細書に対応)に記載の方法により製造することができる。
【0038】
また、塩酸ファスジル水和物もまた公知の方法、例えば国際出願公開公報第WO97/02260号明細書(欧州特許公開公報第0 870 767 A1号明細書に対応)に記載の方法により製造することができる。なお、塩酸ファスジル水和物としては、塩酸ファスジル1/2水和物、塩酸ファスジル3水和物などが知られているが、本発明においてはそれらのいずれを用いてもよい。
【0039】
本発明の経口徐放性製剤においては、塩酸ファスジル無水物または塩酸ファスジル1/2水和物を有効成分として含有することが好ましい。
【0040】
なお、本発明において、塩酸ファスジル水和物の重量を塩酸ファスジル無水物の重量に換算する、又は塩酸ファスジル無水物の重量を塩酸ファスジル水和物の重量に換算する必要がある場合には、それらの分子量比(水和物の場合は、水和水の分子量も考慮する)から容易に行なうことができる。例えば、塩酸ファスジル1/2水和物の重量に0.9733を乗ずることにより、塩酸ファスジル無水物の重量に換算することができる。
【0041】
本発明の経口徐放性製剤は、表面を有する芯およびその芯の表面を被覆する被膜よりなる少なくとも1個の徐放性被覆粒子を含む。
【0042】
上記の「粒子(particle)」という用語は、「顆粒剤(granules)」、「散剤(powder)」、「丸剤(pills)」などを構成する、種々の大きさの粒子の総称である。本発明においては、上記徐放性被覆粒子は顆粒状であることが好ましい。
【0043】
また、本発明の経口徐放性製剤は、上記徐放性被覆粒子を1個だけ含むものであってもよいが、複数個含むものの方がより好ましい。
【0044】
上記の芯は、上記有効成分を含有する。即ち、上記の芯、又は上記粒子が複数の場合にはそれらが全体として、上記有効成分の少なくとも一部を含有する。
【0045】
本発明の経口徐放性製剤に含まれている上記有効成分の全重量に対する、上記の芯に含まれる上記有効成分の重量比は特に限定されないが、経口徐放性製剤の品質を均一なものとし、経口徐放性製剤から放出され、体内に吸収される有効成分の量にバラツキが生じることを防ぐ、という観点から、この重量比は高い方が好ましい。上記の芯に含まれる上記有効成分の重量比は、本発明の経口徐放性製剤に含まれている有効成分の全重量に対して、少なくとも30重量%、より好ましくは少なくとも60重量%、更に好ましくは少なくとも80重量%、特に好ましくは実質的に100重量%であることが好ましい。この「実質的に100重量%」とは、通常95重量%以上であり、好ましくは100重量%であることを意味する。
【0046】
また、上記の芯における有効成分の含量は特に限定されないが、好ましくは、上記の芯が、芯の重量に対して30重量%以上、より好ましくは50重量%以上の有効成分を含むことが好ましく、有効成分のみからなる芯を用いることも可能である。
【0047】
なお、上記有効成分の重量は、塩酸ファスジル無水物の重量、または塩酸ファスジル水和物の重量を塩酸ファスジル無水物の重量に換算した重量を意味するものとする。
【0048】
芯の大きさは特に限定されないが、平均粒子径として表わした芯の粒子径の下限を100μmとすることが好ましく、より好ましくは300μm、特に好ましくは500μmである。また平均粒子径として表わした芯の粒子径の上限は5000μmとすることが好ましく、より好ましくは2000μm、更に好ましくは1500μm、特に好ましくは1000μmである。
【0049】
上記の被膜は、コーティング基剤及び薬学的に許容され且つ水及びエタノールのいずれにも不溶な物質である不溶性物質を含む。
【0050】
本発明において用いられるコーティング基剤は、薬学的に許容され、被膜形成能を有する物質であれば特に限定されないが、その例としては疎水性高分子と親水性高分子を挙げることができる。これらは単独で用いても、両者を組み合わせて用いても良い。
【0051】
コーティング基剤として疎水性高分子が用いられる場合、本発明の経口徐放性製剤が投与された後、消化管内において、消化管内液が被膜内を透過して、上記徐放性被覆粒子内に侵入し、粒子の内部にある芯が消化管内液に接触する。その結果、芯内の有効成分は侵入した消化管内液に溶解し、被膜内を透過して、徐放性被覆粒子外に拡散・放出されるものと推定される。
【0052】
また、コーティング基剤として親水性高分子が用いられる場合、本発明の経口徐放性製剤が投与された後、被膜が消化管内において消化管内液に接触すると、徐々に溶解または分解し、芯の表面の一部が消化管内液に接触する。その結果、芯内の有効成分が消化管内液に溶解して、徐放性被覆粒子外に拡散・放出されるものと推定される。
【0053】
疎水性高分子の例としては、エチルセルロース、ブチルセルロースなどのセルロースエーテル、セルロースアセテート、セルロースプロピオネートなどのセルロースエステル、ポリビニルアセテート、ポリビニルブチレートなどのポリビニルエステル、アクリル酸エチル/メタアクリル酸メチル/メタアクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル共重合体などのアクリル酸系合成ポリマー等が挙げられる。以上の物質は、単独で用いてもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうち、エチルセルロース、セルロースアセテート、アクリル酸エチル/メタアクリル酸メチル/メタアクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル共重合体等が好ましい。
【0054】
親水性高分子としては、水溶性高分子、腸溶性高分子、胃溶性高分子、胃腸両溶性高分子等を用いることができる。
【0055】
水溶性高分子の例としては、プルラン、デキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。以上の物質は、単独で用いてもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうち、ヒドロキシプロピルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース等が好ましい。
【0056】
腸溶性高分子とは、pH5未満の酸性条件下では不溶性又は安定であり、pH5以上の条件下で溶解または分解する高分子性物質をいう。そのような物質の例としては、カルボキシメチルエチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートサクシネート、メチルセルロースフタレート、ヒドロキシメチルエチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ポリビニルアルコールフタレート、ポリビニルブチレートフタレート、ポリビニルアセタールフタレート、ビニルアセテート/マレイン酸無水物共重合体、ビニルブチルエーテル/マレイン酸無水物共重合体、スチレン/マレイン酸モノエステル共重合体、メチルアクリレート/メタアクリル酸共重合体、スチレン/アクリル酸共重合体、メチルアクリレート/メタアクリル酸/オクチルアクリレート共重合体、メタアクリル酸/メタアクリル酸メチル共重合体等が挙げられる。以上の物質は、単独で用いてもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうち、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、またはメタアクリル酸/メタアクリル酸メチル共重合体が好ましい。
【0057】
胃溶性高分子とは、pH6を超える弱酸性〜塩基性条件下では不溶性又は安定であり、pH6以下の条件下で溶解または分解する高分子性物質をいう。そのような物質の例としては、ベンジルアミノメチルセルロース、ジエチルアミノメチルセルロース、ピペリジルエチルヒドロキシエチルセルロース、セルロースアセテートジメチルアミノアセテート、ビニルジエチルアミン/ビニルアセテート共重合体、ビニルベンジルアミン/ビニルアセテート共重合体、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ビニルピペリジルアセトアセタール/ビニルアセテート共重合体、ポリジエチルアミノメチルスチレン、メタアクリル酸メチル/メタアクリル酸ブチル/メタアクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、ポリジメチルアミノエチルメタアクリレート等が挙げられる。以上の物質は、単独で用いてもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうち、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテートまたはメタアクリル酸メチル/メタアクリル酸ブチル/メタアクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体が好ましい。
【0058】
胃腸両溶性高分子とは、pH4.5を超えpH6未満の条件下では不溶性又は安定であり、pH4.5以下およびpH6以上の条件下で溶解または分解する高分子性物質をいう。そのような物質の例としては、2−メチル−5−ビニルピリジン/メチルメタアクリレート/メタアクリル酸共重合体、2−メチル−5−ビニルピリジン/メチルアクリレート/メタアクリル酸共重合体、2−ビニル−5−エチルピリジン/メタアクリル酸/スチレン共重合体、2−ビニル−5−エチルピリジン/メタアクリル酸/メチルアクリレート共重合体、2−ビニルピリジン/メタアクリル酸/メチルアクリレート共重合体、2−ビニルピリジン/メタアクリル酸/アクリロニトリル共重合体、カルボキシメチルピペリジルデンプン、カルボキシメチルベンジルアミノセルロース、ポリ2−ビニルフェニルグリシン、N−ビニルグリシン/スチレン共重合体等が挙げられる。以上の物質は、単独で用いてもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
上記の通り、本発明において用いられる不溶性物質とは、薬学的に許容され且つ水及びエタノールのいずれにも不溶な物質を意味する。ここで「不溶である」とは、第十三改正日本薬局方通則第23項において定義されている「ほとんど溶けない」と理解することが好ましい。即ち、所定の条件下において、ある物質1gまたは1mlをある溶媒に溶解する際、その溶媒が10000ml以上必要であると理解することが好ましい。
【0060】
不溶性物質の例としては、タルク、二酸化チタン、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、軽質無水ケイ酸などが挙げられる。このうちタルクおよびステアリン酸マグネシウムが好ましい。
【0061】
不溶性物質の量は特に限定されないが、その下限は、好ましくはコーティング基剤1重量部に対し0.5重量部、より好ましくは0.7重量部、さらに好ましくは1重量部である。またその上限は、好ましくはコーティング基剤1重量部に対し10重量部、より好ましくは7重量部、さらに好ましくは5重量部である。
【0062】
また不溶性物質は、微粉末状または微粒子状のものを用いることが好ましい。その場合、不溶性物質の平均粒子径の下限は0.1μmが好ましく、より好ましくは0.3μm、さらに好ましくは0.5μmである。また、不溶性物質の平均粒子径の上限は、300μmが好ましく、より好ましくは100μm、さらに好ましくは50μmである。
【0063】
上記コーティング基剤および不溶性物質の組み合わせに特に限定はないが、好ましい組み合わせの例としては、コーティング基剤がエチルセルロース、不溶性物質がタルクである組み合わせ、コーティング基剤がエチルセルロース、不溶性物質がステアリン酸マグネシウムである組み合わせ、コーティング基剤がアクリル酸エチル/メタアクリル酸メチル/メタアクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル共重合体、不溶性物質がタルクである組み合わせが挙げられる。
【0064】
なお上記被膜は、上記芯の表面に均一に形成されていることが好ましい。また上記被膜の厚みは特に限定されないが、好ましくは5〜100μm、より好ましくは10〜50μmである。
【0065】
本発明において用いられる徐放性被覆粒子の製造方法は特に限定されないが、その一例として、塩酸ファスジルおよびその水和物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の有効成分を含有する芯前駆体を製造し、得られた芯前駆体の表面に、上記コーティング基剤及び上記不溶性物質を含む被膜を形成させることにより、徐放性被覆粒子を製造する方法を挙げることができる。以降、この方法による徐放性被覆粒子の製造につき説明する。
【0066】
芯前駆体の形状は特に限定されないが、通常は球形であることが好ましい。また、芯前駆体の大きさも特に限定されないが、芯前駆体の平均粒子径の下限を100μmとすることが好ましく、より好ましくは300μm、特に好ましくは500μmである。また芯前駆体の平均粒子径の上限は5000μmとすることが好ましく、より好ましくは2000μm、更に好ましくは1500μm、特に好ましくは1000μmである。
【0067】
芯前駆体の製造方法は特に限定されないが、例えば、
a)遠心転動造粒機や転動流動層造粒機、流動層造粒機などを用い、核の表面に塩酸ファスジルを含む溶液または懸濁液を付着させつつ、上記溶液または懸濁液に含まれる溶媒を温風により蒸発させて、核の表面を塩酸ファスジルで被覆することによって造粒し、乾燥して芯前駆体を得る方法;
b)上記と同様の造粒機などを用い、核の表面を直接塩酸ファスジル粉末で被覆することによって造粒し、乾燥して芯前駆体を得る方法;および
c)核を用いず、塩酸ファスジルの原末を流動層造粒機や押出し造粒機などを用い、直接造粒法により造粒し、所望であれば得られた粒子を球形化整粒機を用いて球形とし、芯前駆体を得る方法
などが挙げられる。
【0068】
上記の核とは、その表面を薬物で被覆することによって顆粒などの粒子を製造することを目的として、薬学的に許容される賦形剤を造粒し微粒子状にしたものであり、白糖、デンプン、結晶セルロースなど、またはそれらのうち2種以上からなる混合物からなる核が市販されている。
【0069】
なお、上記の芯前駆体の製造は結合剤の存在下で行なってもよい。好ましい結合剤の例としては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
【0070】
芯前駆体の表面に、上記コーティング基剤及び上記不溶性物質を含む被膜を形成させる方法は特に限定されないが、例えば、遠心転動造粒機や転動流動層造粒機、流動層造粒機などを用いて、以下のような方法で実施することができる。まず、水、エタノール、塩化メチレン、アセトンなどの溶媒に、上記コーティング基剤を溶解または懸濁させた溶液または懸濁液に、上記不溶性物質を分散させてコーティング液を調製する。次いで、流動層造粒機などを用い、調製したコーティング液を芯前駆体の表面に付着させつつ、コーティング液に含まれる溶媒を温風により蒸発させて、芯前駆体の表面に被膜を形成させて、徐放性被覆粒子を得る。
【0071】
なお本発明において用いられる徐放性被覆粒子は、所望であれば、芯および/または被膜中に、薬学的に許容される賦形剤、結合剤、崩壊剤、矯味剤、pH調節剤、滑沢剤、粘稠剤、着色剤などを含有していてもよい。
【0072】
以上のようにして調製した徐放性被覆粒子を、カプセルに充填してカプセル剤とする、または打錠して得られる錠剤とするなどの方法により、本発明の経口徐放性製剤を得ることができる。また、上記徐放性被覆粒子を、そのまま本発明の経口徐放性製剤とすることもできる。この場合、上記徐放性被覆粒子は、顆粒剤、散剤または丸剤などとして用いられる。本発明の経口徐放性製剤の剤型としては、これらのうち、カプセル剤および顆粒剤(散剤または丸剤の場合を含む)が好ましい。
【0073】
なお、上記徐放性被覆粒子を打錠して錠剤とする場合、例えば川島嘉明らの記載(「粉体の圧縮成形技術」、p.172、青木真司ら著、粉体工学会・製剤と粒子設計部会編、日刊工業新聞社発行、1998年)などを参照することができる。
【0074】
本発明の経口徐放性製剤における有効成分の含有量は、その構成成分の種類や量、適応症などにより変動し得るため特に限定されない。本発明の経口徐放性製剤は、種々の疾患の治療に用いることができるが、例えば、本発明の経口徐放性製剤を、狭心症などの虚血性疾患の治療に用いる場合、本発明の経口徐放性製剤における有効成分の含有量は、一回に投与される量の製剤あたり、塩酸ファスジル1/2水和物の重量として、通常1〜1000mg、好ましくは15〜300mgの範囲から適宜選択される量であることが好ましい。
【0075】
本発明の経口徐放性製剤は、所望であれば、薬学的に許容される賦形剤、結合剤、崩壊剤、矯味剤、pH調節剤、滑沢剤、粘稠剤、着香剤、着色剤等を含有していても良い。
【0076】
また、本発明の経口徐放性製剤は、有効成分の放出に関する特性を異にする、2種類以上の上記徐放性被覆粒子を含んでいてもよく、また上記有効成分を含有する速放性粒子を含んでいてもよい。速放性粒子とは、上記有効成分が速やかに放出される粒子を意味し、その例としては、上記の方法c)によって得られるような、有効成分のみからなる芯前駆体をはじめとする、上記の種々の方法で得られる芯前駆体それ自体や、それを公知の方法、または上記したような芯を被覆する方法に準ずる方法でコーティングして得られる速放性被覆粒子などを挙げることができる。本発明の経口徐放性製剤が2種類以上の徐放性被覆粒子、または徐放性被覆粒子と速放性粒子とを含む場合、それらの粒子の重量比については、例えば、以下のような方法により求めることができる。
【0077】
n種類の粒子K、K…K…Kを組み合わせるものとし、
粒子K、K…K…Kの総重量に対する、粒子Kの重量比をXとし、
粒子Kの重量に対する、粒子K中の有効成分の重量比をZとし、
粒子K、K…K…K中の有効成分の総重量(本発明の経口徐放性製剤に元から含まれている有効成分の全重量に相当)に対する、粒子K中の有効成分の重量比をYとすると、
:Y:…Y:…:Y=X×Z:X×Z
:…X×Z:…:X×Z
であるから、
=Y/Z (a)
である。
【0078】
一方、粒子Kに関し、後述するパドル法(またはそれと実質的に同等の結果を得ることのできる方法)により、溶出試験開始から3、6および15時間後の時点での有効成分の溶出率Qi3、Qi6およびQi15を測定する。
【0079】
その後、下記の要件(I)、(II)および(III)を全て満足するYを、粒子K、K…K…Kのそれぞれに関して適宜選択し、これらの値とZから、上記式(a)に従ってXを算出することができる。
【0080】
【数1】

【0081】
なお、上記の有効成分の重量は、塩酸ファスジル無水物の重量、または塩酸ファスジル水和物の重量を塩酸ファスジル無水物の重量に換算した重量を意味するものとする。
【0082】
本発明の経口徐放性製剤は、第十三改正日本薬局方に記載の溶出試験法第2法(パドル法)によって測定した時に、該有効成分に関し、下記(1)、(2)および(3)の溶出率を示す。
【0083】
(1)溶出試験開始から3時間後の時点で、該製剤に元から含まれている該有効成分の全重量に対し5〜40%、
(2)溶出試験開始から6時間後の時点で、該製剤に元から含まれている該有効成分の全重量に対し35〜70%、および
(3)溶出試験開始から15時間後の時点で、該製剤に元から含まれている該有効成分の全重量に対し70%以上。
【0084】
上記の溶出試験法第2法(以降単に「パドル法」と称する)は、第十三改正日本薬局方(1996年より適用)の一般試験法の項に記載されている。以降、パドル法による溶出試験の実施方法の一例について説明する{なお、第十三改正日本薬局方の英語版(1996年発行)は、日本国、薬事日報社より入手できる}。
【0085】
なお以降の説明において、有効成分の重量は、塩酸ファスジル無水物の重量、または塩酸ファスジル水和物の重量を塩酸ファスジル無水物の重量に換算した重量を意味するものとする。
【0086】
溶出試験装置は、日本薬局方に準拠したもので、パドル法による溶出試験を実施できるものであれば特に限定されない。
【0087】
まず、溶出試験装置に取り付けられている容器に、適当な方法で脱気した試験液を900mlとり、液の温度を37±0.5℃に保つ。本発明の経口徐放性製剤を溶出試験に付す場合、通常試験液として蒸留水を用いる。また脱気の方法は特に限定されないが、試験液を減圧下におく方法、試験液を超音波処理する方法、試験液を減圧下で超音波処理する方法などを挙げることができる。これらの脱気操作は、通常5〜10分間行なわれる。
【0088】
次に、試験装置にパドルを取り付け、本発明の経口徐放性製剤を容器内底の中心部に沈めた後、直ちにパドルを回転させる。パドルの回転数は、100±4回転/分に調節する。以降の操作中は、容器にふたをして試験液の蒸発を防ぐ。
【0089】
本発明の経口徐放性製剤の量は、通常1回の投与に用いられる量とする。例えば、本発明の経口徐放性製剤がカプセル剤や錠剤である場合、通常1個を用いる。これらの製剤は試験液に浮く場合があるので、日本薬局方に記載されている規定のシンカーに製剤を入れて容器内の中央底部に沈める。また、本発明の経口徐放性製剤が顆粒剤、散剤などである場合、1回の投与に用いられる量の製剤を計り取り、直接容器内に入れる。この場合、通常シンカーを使用する必要はない。
【0090】
試験の開始、即ちパドルの回転開始の時点から、少なくとも3、6および15時間後の時点、好ましくは、1、2、3、4、6、8、10、12、15および20時間の時点で、試験液面とパドルの上端の中間で、容器壁から10mm離れた位置から、製剤より放出された有効成分を含む試験液(以降「溶出液」と称する)を10ml採取し、直ちに37±0.5℃に加温した10mlの蒸留水を注意して補う。溶出液を孔径0.5μmのメンブランフィルターで濾過し試料溶液とする。
【0091】
別に、既知重量の塩酸ファスジル標準品を蒸留水に溶解してその体積を1000mlとし、既知濃度の標準溶液を調製する。試料溶液および標準溶液に関し、275nmにおける吸光度(以降単に「吸光度」と称する)を測定する。
【0092】
上記のようにして、第1番目、第2番目…第n番目(nは3以上の整数を表わす)の試料溶液を、溶出試験開始の時点からt時間後、t時間後…t時間後にそれぞれ採取した場合、第1番目の試料溶液を得た時点、即ち溶出試験開始の時点からt時間後の時点での、製剤に元から含まれている有効成分の全重量に対する、有効成分の溶出率(%)(以降単に「溶出率」と称する)は、下記の式により算出することができる。
溶出試験開始の時点からt時間後の時点での溶出率(%)
=100×{m×A÷(A×1000÷900)+m
上記式中の略号の意味は以下の通りである。
【0093】
:製剤に元から含まれている有効成分の全重量
:標準溶液の調製に用いた有効成分の重量
:第1番目の試料溶液の吸光度
:標準溶液の吸光度
また、第i番目(iは2〜nまでの整数を表わす)の試料溶液を得た時点、即ち溶出試験開始の時点からt時間後の時点での溶出率(%)は、下記の式により算出することができる。
【0094】
【数2】

【0095】
上記式中の略号の意味は以下の通りである。
【0096】
:製剤に元から含まれている有効成分の全重量
:標準溶液の調製に用いた有効成分の重量
:第i番目の試料溶液の吸光度
:標準溶液の吸光度
【0097】
【数3】

【0098】
以上の試験を通常6回実施して、溶出試験開始からt時間後の時点での有効成分の溶出率の平均値を求める。
【0099】
上記した通り、本発明の経口徐放性製剤においては、以上のようにして求めた、溶出試験開始から3、6および15時間後の時点での有効成分の溶出率(平均値)が、上記の要件(1)〜(3)を満たす。
【0100】
本発明の経口徐放性製剤においては、溶出試験開始から3時間後の時点での有効成分の溶出率が、製剤に元から含まれている該有効成分の全重量に対し5〜35%であることが好ましい。
【0101】
また本発明の経口徐放性製剤においては、溶出試験開始から6時間後の時点での有効成分の溶出率が、3時間後の時点での有効成分の溶出率を下回らず、15時間後の時点での有効成分の溶出率が、6時間後の時点での有効成分の溶出率を下回らないことが好ましい。
【0102】
なお、上記のパドル法によって得られる結果と実質的に同等の結果が得られることを確認できる限りにおいては、本発明の経口徐放性製剤からの有効成分の溶出率を、上記のパドル法とは別の方法によって測定してもよい。そのような方法の例としては,例えば、第十三改正日本薬局方に記載の溶出試験法第1法(回転バスケット法)および第3法(フロースルーセル法)、アメリカ薬局方第XXIII版(1995年より適用)第1791頁「Dissolution」の項に記載の「装置2」を用いる方法およびこれに準ずる方法、ヨーロッパ薬局方第3版(1997年より適用)第128頁[2.9.3.Dissolution Test for Solid Dosage Forms」の項に記載の[Paddle apparatus」を用いる方法およびこれに準ずる方法を挙げることができる。
【0103】
本発明の経口徐放性製剤は経口投与される。本発明の経口徐放性製剤の投与量は、その構成成分の種類や量、適応症、患者の様態、年齢、性別などにより大幅に変動し得る。本発明の経口徐放性製剤を、狭心症などの虚血性疾患の治療に用いる場合、一回当たり、塩酸ファスジル1/2水和物の重量に換算して通常1〜1000mg、好ましくは15〜300mgの範囲から適宜選択される量の本発明の経口徐放性製剤を、成人に対し、通常1日1〜2回、または2日に1回程度経口投与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0104】
以下に、参考例、実施例、比較例及び実験例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0105】
以下の参考例、実施例および比較例において、有効成分である塩酸ファスジルの他、次のような製剤原料を用いた。
1)核(微粒子状にした賦形剤)
ノンパレル105(乳糖および結晶セルロースからなる粒子径500〜710μmの球状顆粒。日本国、フロイント産業株式会社製。)
セルフィアCP−507(結晶性セルロースからなる粒子径500〜710μmの顆粒。日本国、旭化成工業株式会社製。)
2)コーティング基剤
エチルセルロース(グレード:10cps。米国、ダウ・ケミカル社製。)
オイドラギットRLPO(アクリル酸エチル−メタアクリル酸メチル−メタアクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル共重合体。ドイツ国、レーム社製。)
オイドラギットRSPO(アクリル酸エチル−メタアクリル酸メチル−メタアクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル共重合体。ドイツ国、レーム社製。上記オイドラギットRLPOとはコモノマー単位の含有率が異なる。)
アクアコート(エチルセルロース水分散液。日本国、旭化成工業株式会社製。)
3)不溶性物質
タルク(日本薬局方準拠。平均粒子径11.0μm。日本国、林化成株式会社製。)
ステアリン酸マグネシウム(日本薬局方準拠。平均粒子径11.3μm。日本国、太平化学産業株式会社製。)
酸化チタン(アナターゼ型。日本国、和光純薬工業株式会社製。)
4)その他
HPC−L(ヒドロキシプロピルセルロース。日本国、日本曹達株式会社製。)
クエン酸トリエチル(日本国、ファイザー株式会社製。)
TC−5R(ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910。日本国、信越化学工業株式会社製。)
D−マンニトール(日本国、東和化成工業株式会社製。)
NS−300(カルメロース。日本国、五徳薬品株式会社製。)
アビセルPH301(結晶セルロース。日本国、旭化成工業株式会社製。)
アドソリダー101(軽質無水ケイ酸。日本国、フロイント産業株式会社製。)
TC−5RW(ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910。日本国、信越化学工業株式会社製。上記TC−5Rを脱色し白色としたもの。)
ポリシングWAX103(カルナウバロウ。日本国、フロイント産業株式会社製。)
トウモロコシデンプン(日本国、日本食品化工株式会社製。)
プリモジェル(カルボキシメチルスターチナトリウム。日本国、松谷化学工業株式会社製。)
エタノール(日本薬局方準拠。日本国、和光純薬株式会社製。)
1号カプセル(日本薬局方準拠。日本国、シオノギクオリカプス株式会社製。)
2号カプセル(日本薬局方準拠。日本国、シオノギクオリカプス株式会社製。)
3号カプセル(日本薬局方準拠。日本国、シオノギクオリカプス株式会社製。)
後述する実験例において、ラットの血中薬物濃度測定は、下記1)の方法で調製したサンプルを、下記2)に示す条件下でHPLC法によって行なった。なお、この方法で測定対象となる薬物は、塩酸ファスジルの1−ヒドロキシ体(活性代謝物)のみであり、これ以外の代謝物や未変化体は、この方法では検出されなかった。
1)HPLC用サンプルの調製
ラットから採取した血液1mlを遠心分離し、得られた上清(血漿)を蒸留水8mlで希釈し、これを予めメタノール3ml、次いで蒸留水3mlによりコンディショニングした固相抽出用カラム、ボンドエルートCBA(日本国、ジーエルサイエンス株式会社製)にアプライした。このカラムを、蒸留水3ml、次いでメタノール9mlで洗浄し、活性代謝物以外の物質の大半をカラムから溶出させた。その後、濃アンモニア水2%を含むメタノール4mlでカラムを洗浄し、活性代謝物を含む画分を得た。この画分を遠心エバポレーターを用いて濃縮・乾固させた後、50mMリン酸緩衝液(pH6.8):メタノール=9:1(v/v)200μlに溶解し、得られた溶液をフィルターにより濾過し、得られた濾液をHPLC用サンプルとした。
2)HPLCの装置及び条件
装置:D7000型システム(日本国、日立製作所製)
カラム:YMC AM−302(日本国、株式会社ワイエムシィ製)
カラム温度:30℃
移動相:50mMリン酸緩衝液(pH6.8):アセトニトリル=85:15(v/v)
流速:0.5ml/min.
UV検出器:L−7400型UV検出器(日本国、日立製作所製)
検出波長:300nm
サンプル注入量:100μl
参考例1
塩酸ファスジル無水物400gを精製水600mlに溶解して得られた塩酸ファスジル水溶液と、ノンパレル105 350gをLAB−1型流動層造粒機(日本国、株式会社パウレック製)に入れ、給気温度80℃、風量50m/hrの条件下でワースター法によりノンパレル105を流動させながら、噴霧液量2ml/min、噴霧空気圧2kg/cmの条件下で塩酸ファスジル水溶液を噴霧することにより、ノンパレル105の表面を塩酸ファスジルで被覆し、粒子径600〜850μmの芯前駆体710gを得た。同様の方法を計3回繰り返し、合計で3ロット、約2000gの芯前駆体を得た。
参考例2
塩酸ファスジル無水物400gの代わりに塩酸ファスジル1/2水和物400g、ノンパレル105 350gの代わりにセルフィアCP−507 350gを用いる以外は参考例1と同様の方法で、粒子径600〜850μmの芯前駆体700gを得た。同様の方法を計3回繰り返し、合計で3ロット、約2000gの芯前駆体を得た。
参考例3
塩酸ファスジル1/2水和物1400gとHPC−L 70gを精製水2100mlに溶解して得られた水溶液と、セルフィアCP−507 700gをMP−01型転動流動層造粒機(日本国、株式会社パウレック製)に入れ、給気温度85℃、風量70m/hr、ローター回転数400rpmの条件下でセルフィアCP−507を流動させながら、噴霧液量8g/min、噴霧空気圧0.3MPa/cmの条件下で上記水溶液を噴霧することにより、セルフィアCP−507の表面を塩酸ファスジルで被覆し、粒子径710μm〜1000μmの芯前駆体2155gを得た。
【実施例1】
【0106】
エチルセルロース12gを300mlのエタノールに溶解した溶液に、タルク36gを分散させて、コーティング液を調製した。このコーティング液と、参考例1で製造した芯前駆体200gをLAB−1型流動層造粒機(日本国、株式会社パウレック製)に入れ、給気温度50℃、風量50m/hrの条件下でワースター法により上記芯前駆体を流動させながら、噴霧液量5ml/min、噴霧空気圧2kg/cmの条件下で上記コーティング液を噴霧することにより、上記芯前駆体をコーティングし、粒子径600〜1000μmの徐放性被覆粒子を得た。得られた徐放性被覆粒子を3号カプセルに185mgずつ充填し、塩酸ファスジルを80mg(塩酸ファスジル無水物としての重量)含有する経口徐放性製剤を得た。
【実施例2】
【0107】
参考例1で製造した芯前駆体の代わりに参考例2で製造した芯前駆体を用い、タルクの重量を60gに変更する以外は、実施例1と同様の操作を繰り返し、粒子径600〜1000μmの徐放性被覆粒子を得た。得られた徐放性被覆粒子を2号カプセルに215mgずつ充填し、塩酸ファスジルを80mg(塩酸ファスジル1/2水和物としての重量)含有する経口徐放性製剤を得た。
【実施例3】
【0108】
参考例2で製造した芯前駆体の重量を130gに、エチルセルロースの重量を8gに、タルクの重量を24gに変更し、また芯前駆体を流動させる際の風量を40m/hrに、コーティング液の噴霧液量を4ml/minに変更する以外は、実施例2と同様の操作を繰り返し、粒子径600〜1000μmの徐放性被覆粒子を得た。得られた徐放性被覆粒子を3号カプセルに200mgずつ充填し、塩酸ファスジルを80mg(塩酸ファスジル1/2水和物としての重量)含有する経口徐放性製剤を得た。
【実施例4】
【0109】
オイドラギットRSPO14.3gを125mlのエタノールに溶解した溶液に、タルク42.9gを分散させて得られる分散液をコーティング液として用い、参考例1で製造した芯前駆体の重量を190gに変更する以外は、実施例1と同様の操作を繰り返し、粒子径600〜1000μmの徐放性被覆粒子を得た。得られた徐放性被覆粒子を3号カプセルに194mgずつ充填し、塩酸ファスジルを80mg(塩酸ファスジル無水物としての重量)含有する経口徐放性製剤を得た。
【実施例5】
【0110】
タルクの代わりにステアリン酸マグネシウム11.4gを用い、エチルセルロースの重量を11.4gに、エタノールの体積を285mlに、参考例1で得た芯前駆体の重量を190gに変更する以外は、実施例1と同様の操作を繰り返し、粒子径600〜1000μmの徐放性被覆粒子を得た。得られた徐放性被覆粒子を3号カプセルに167mgずつ充填し、塩酸ファスジルを80mg(塩酸ファスジル無水物としての重量)含有する経口徐放性製剤を得た。
【実施例6】
【0111】
アクアコート333gにクエン酸トリエチル33g及びステアリン酸マグネシウム100gを添加し、350mlの蒸留水で希釈して得られる分散液をコーティング液として用い、給気温度を70℃に、コーティング液の噴霧液量を2ml/minに変更する以外は、実施例2と同様の操作を繰り返して粒子を得た。この粒子を80℃で12時間乾燥することにより、粒子径710〜1180μmの徐放性被覆粒子を得た。得られた徐放性被覆粒子を1号カプセルに340mgずつ充填し、塩酸ファスジルを80mg(塩酸ファスジル1/2水和物としての重量)含有する経口徐放性製剤を得た。
【実施例7】
【0112】
オイドラギットRLPO1.5g及びオイドラギットRSPO13.5gを250mlのエタノールに溶解させて得られる溶液に、タルク45gを分散させて得られる分散液をコーティング液として用いる以外は、実施例1と同様の操作を繰り返し、粒子径600〜1000μmの徐放性被覆粒子を得た。得られた徐放性被覆粒子を3号カプセルに194mgずつ充填し、塩酸ファスジルを80mg(塩酸ファスジル無水物としての重量)含有する経口徐放性製剤を得た。
【実施例8】
【0113】
TC−5R 2gを50mlの水/エタノール混液(体積比1:1)に溶解させて得られる溶液をコーティング液として用い、コーティング液の噴霧液量を3ml/minに変更する以外は、実施例2と同様の操作を繰り返し、塩酸ファスジルを50重量%(塩酸ファスジル1/2水和物としての重量)含有する、粒子径600〜850μmの被覆粒子A(以降単に「A粒子」と称する)を得た。
【0114】
一方、オイドラギットRLPO 2.25gおよびオイドラギットRSPO 20.25gをエタノール375mlに溶解した溶液に、タルク67.5gを分散させて得られる分散液をコーティング液として用いる以外は、実施例2と同様の操作を繰り返し、塩酸ファスジルを35重量%(塩酸ファスジル1/2水和物としての重量)含有する、粒子径600〜1000μmの徐放性被覆粒子B(以降単に「B粒子」と称する)を得た。
【0115】
上記A粒子32gと上記B粒子183g(塩酸ファスジル1/2水和物の重量比で、A粒子2重量部及びB粒子8重量部に相当)を均一に混合し、得られた混合粒子215mgを2号カプセルに充填し、塩酸ファスジルを80mg(塩酸ファスジル1/2水和物としての重量)含有する経口徐放性製剤を得た。
【実施例9】
【0116】
参考例2で製造した芯前駆体の代わりに参考例3で製造した芯前駆体300gを用い、エチルセルロースの重量を18gに、タルクの重量を18gに変更する以外は、実施例2と同様の操作を繰り返し、粒子径850〜1180μmの徐放性被覆粒子を得た。得られた徐放性被覆粒子を3号カプセルに143mgずつ充填し、塩酸ファスジルを80mg(塩酸ファスジル1/2水和物としての重量)含有する経口徐放性製剤を得た。
【実施例10】
【0117】
エチルセルロース18gを306mlのエタノールに溶解した溶液に、タルク90gを分散させて、コーティング液を調製した。このコーティング液と、参考例3で製造した芯前駆体400gをSFC−MINI型転動流動層造粒機(日本国、フロイント産業株式会社製)に入れ、給気温度40℃、流動エアー風量0.3m/min、スリットエアー風量0.3m/min:ローター回転数800rpmの条件下で上記芯前駆体を流動させながら、噴霧液量8ml/min、噴霧空気圧2kg/cmの条件下で上記コーティング液を噴霧することにより、上記芯前駆体をコーティングし、粒子径850〜1180μmの徐放性被覆粒子を得た。得られた徐放性被覆粒子を3号カプセルに158mgずつ充填し、塩酸ファスジルを80mg(塩酸ファスジル無水物としての重量)含有する経口徐放性製剤を得た。
【実施例11】
【0118】
エチルセルロースの重量を20gに、タルクの重量を100gに、エタノールの体積を340mlに変更する以外は、実施例10と同様の操作を繰り返し、粒子径850〜1180μmの徐放性被覆粒子を得た。得られた徐放性被覆粒子を163mgずつ分包し、顆粒剤である経口徐放性製剤とした。この経口徐放性製剤は、塩酸ファスジルを一包当たり80mg(塩酸ファスジル1/2水和物としての重量)含有する。
比較例1
タルクを用いない以外は、実施例1と同様の操作を繰り返し、粒子径600〜1000μmの被覆粒子を得た。得られた被覆粒子を2号カプセルに200mgずつ充填し、塩酸ファスジルを含有する経口カプセル剤を得た。
比較例2
オイドラギットRLPO3g及びオイドラギットRSPO27gを500mlのエタノールに溶解させて得られる溶液をコーティング液として用いる以外は、実施例2と同様の操作を繰り返し、粒子径600〜1000μmの被覆粒子を得た。得られた被覆粒子を2号カプセルに200mgずつ充填し、塩酸ファスジルを含有する経口カプセル剤を得た。
比較例3
ステアリン酸マグネシウムを用いず、クエン酸トリエチルの重量を33.5gに、蒸留水の体積を300mlgに変更する以外は、実施例6と同様の操作を繰り返し、粒子径600〜1000μmの被覆粒子を得た。得られた被覆粒子を2号カプセルに200mgずつ充填し、塩酸ファスジルを含有する経口カプセル剤を得た。
比較例4
オイドラギットRSPO11.5gを400mlのエタノールに溶解させて得られる溶液に、タルク172.5gを分散させて得られる分散液をコーティング液として用いる以外は、実施例4と同様の操作を繰り返し、粒子径600〜1000μmの被覆粒子を得た。得られた被覆粒子を2号カプセルに200mgずつ充填し、塩酸ファスジルを含有する経口カプセル剤を得た。
比較例5
塩酸ファスジル無水物80g、D−マンニトール360g、NS−300 28g、HPC−L 12g、アビセルPH301 120g、アドソリダー101 4g、ステアリン酸マグネシウム3.2gを混合し、乾式造粒機ローラーコンパクターミニ(日本国、フロイント産業株式会社製)にて圧縮成型した後整粒し、顆粒を得た。得られた顆粒をステアリン酸マグネシウム4.8gと混合し、打錠用顆粒を得た。得られた打錠用顆粒をCP−12型ロータリー式打錠機(日本国、株式会社菊水製作所製)に導入して打錠し、1錠153mgの素錠を得た。
【0119】
次に、TC−5RW 19.6gとエチルセルロース2.8gを、375mlの精製水/エタノール混液(体積比1:4)に溶解した溶液に、酸化チタン(アナターゼ型)5.6gを分散させてコーティング液を調製した。上記素錠を、DRC−300型コーティング機(日本国、株式会社パウレック製)に入れ、温風(給気温度:80℃、風量:1.2m/min.)を吹き込みつつ上記コーティング液を噴霧し、錠剤のコーティングを行なった。その後、上記コーティング機内にポリシングWAX103約0.13gを添加し、温風(給気温度:60℃)を吹き込みつつ30分間転動した後、温風を停止して30分間転動してつや出しを行ない、1錠160mgの錠剤を得た。
【0120】
また、塩酸ファスジル無水物の代わりに塩酸ファスジル1/2水和物82.2g(塩酸ファスジル無水物として80g)を用いる以外は上記と同様の操作を行ない、1錠160.6mgの錠剤を得た。
比較例6
塩酸ファスジル1/2水和物822gとD−マンニトール3078gおよびトウモロコシデンプン1000gをFLO−15型流動層造粒機(日本国、フロイント産業株式会社製)に入れ、流動させた。これにHPC−L120gを精製水2480gに溶解した溶液を、トップスプレー方式により噴霧しながら造粒、乾燥して顆粒を得た。得られた顆粒に、プリモジェル(崩壊剤)120gおよびステアリン酸マグネシウム(滑沢剤)60gを混合して打錠用顆粒を得た。得られた打錠用顆粒をCP−12型ロータリー式打錠機(日本国、株式会社菊水製作所製)に導入して打錠し、1錠130mgの素錠を得た。
【0121】
次に、TC−5RW 220gを精製水3600gに溶解した溶液に、酸化チタン60gを分散させてコーティング液を調製した。上記素錠を、DRC−650型コーティング機(日本国、株式会社パウレック製)に入れ、温風(給気温度:80℃、風量:6m/min.)を吹き込みつつ上記コーティング液を噴霧し、錠剤のコーティングを行なった。その後、上記コーティング機内にポリシングWAX103約1.3gを添加し、温風(給気温度:60℃)を吹き込みつつ30分間転動した後、温風を停止して30分間転動してつや出しを行ない、1錠137mgの錠剤を得た。
【0122】
また、塩酸ファスジル1/2水和物の代わりに塩酸ファスジル無水物800gを用いる以外は上記と同様の操作を行ない、1錠136.5mgの錠剤を得た。
実験例1
実施例1〜11で得られた経口徐放性製剤、比較例1〜4で得られた経口カプセル剤および比較例5〜6で得られた錠剤を、第十三改正日本薬局方に記載の溶出試験法第2法(パドル法)に付し、それらの製剤からの有効成分の溶出率を測定した。試験の方法は以下の通りである。なお以降の説明において、有効成分の重量は、塩酸ファスジル無水物の重量、または塩酸ファスジル水和物の重量を塩酸ファスジル無水物の重量に換算した重量を意味するものとする。
【0123】
溶出試験装置として、DT−610型溶出試験機(日本薬局方準拠、日本国、日本分光株式会社製)を用いた。
【0124】
また、減圧下(アスピレーター使用)、約10分間超音波処理することにより脱気した蒸留水を、試験液として用いた。
【0125】
試験液900mlを溶出試験装置に取り付けられた容器にとり、液の温度を37±0.5℃に保った。
【0126】
次に、試験装置にパドルを取り付け、上記の製剤1個をシンカーに入れて(実施例11で得られた経口徐放性製剤については、一包分163mgをシンカーに入れず直接)容器内底の中心部に沈めた後、直ちにパドルを回転させた。パドルの回転数は、100±4回転/分に調節した。以降の操作は、試験液の蒸発を防ぐため、容器にふたをして行なった。
【0127】
試験の開始、即ちパドルの回転開始の時点から、1、2、3、4、6、8、10、12、15および20時間後の時点で、試験液面とパドルの上端の中間で、容器壁から10mm離れた位置から、製剤より放出された有効成分を含む試験液(以降「溶出液」と称する)を10ml採取し、直ちに37±0.5℃に加温した10mlの蒸留水を注意して補った。溶出液を直径25mm、孔径0.5μmのメンブランフィルター(オムニポアメンブレン マイレクスLH、日本国、日本ミリポア社製)で濾過し試料溶液とした。
【0128】
溶出試験開始の時点から1、2、3、4、6、8、10、12、15および20時間後に採取した試料溶液を、それぞれ「第1番目、第2番目…第10番目の試料溶液」と称する。
【0129】
別に、塩酸ファスジル標準品約80mgを精密に量り、蒸留水に溶解して体積を1000mlとすることにより、標準溶液を調製し、試料溶液および標準溶液に関し、275nmにおける吸光度(以降単に「吸光度」と称する)を測定した。
【0130】
第1番目の試料溶液を得た時点(即ち、溶出試験開始の時点から1時間後の時点)での、製剤に元から含まれている有効成分の全重量に対する、有効成分の溶出率(%)(以降単に「溶出率」と称する)を、下記の式により算出した。
第1番目の試料溶液を得た時点での溶出率(%)
=100×{m×A÷(A×1000÷900)÷m
上記式中の略号の意味は以下の通りである。
【0131】
:製剤に元から含まれている有効成分の全重量
:標準溶液の調製に用いた有効成分の重量
:第1番目の試料溶液の吸光度
:標準溶液の吸光度
また、第i番目(iは2〜10の整数を意味する)の試料溶液を得た時点(即ち、溶出試験開始の時点から2、3、4、6、8、10、12、15または20時間後の時点)での、製剤に元から含まれている有効成分の全重量に対する、有効成分の溶出率(%)を、下記の式により算出した。
【0132】
【数4】

【0133】
上記式中の略号の意味は以下の通りである。
【0134】
:製剤に元から含まれている有効成分の全重量
:標準溶液の調製に用いた有効成分の重量
:第i番目の試料溶液の吸光度
:標準溶液の吸光度
【0135】
【数5】

【0136】
以上の試験を通常6回実施して、溶出試験開始からi時間後の時点での有効成分の溶出率の平均値を求めた。
【0137】
その結果を表1に示した。
【0138】
【表1】

【0139】
表1に示す通り、不溶性物質を含む被膜を用いている、実施例1〜11で得られた本発明の経口徐放性製剤では、試験開始から3時間の時点で5〜35%、6時間の時点で35〜65%、15時間の時点で70%以上の有効成分が製剤から放出された。
【0140】
一方、不溶性物質を含まない被膜を用いている、比較例1〜3で得られたカプセル剤では、試験開始から3時間以内に50%以上の有効成分が製剤から速やかに放出された。
【0141】
また、不溶性物質を含む被膜を用いているにもかかわらず、比較例4で得られたカプセル剤では、有効成分の放出が極度に遅かった。これは、被膜中の不溶性物質の量が過剰であったためと思われる。
【0142】
比較例5および6で得られた製剤は、不溶性物質を含む被膜で被覆された錠剤であるが、徐放性被覆粒子を含まない。このような錠剤の場合、比較例1〜3で得られたカプセル剤と同様、試験開始から3時間以内に有効成分が製剤から速やかに放出された。
【0143】
以上のことから、塩酸ファスジルまたはその水和物を有効成分として含有する製剤からの、有効成分の放出を制御するためには、不溶性物質を含む被膜を有する徐放性被覆粒子を用いることが必要であることがわかった。
実験例2
本発明の経口徐放性製剤の、消化管内液の量が少ない消化管下部における有効成分の放出に関する特性を調べるため、試験液が微量しか存在しない条件下で溶出試験を行った。以下にその方法を示す。なお以降の説明において、有効成分の重量は、塩酸ファスジル無水物の重量、または塩酸ファスジル水和物の重量を塩酸ファスジル無水物の重量に換算した重量を意味するものとする。
【0144】
装置としては、下記の貯槽、定流量ポンプおよびセルをこの順序で接続し、貯槽内の試験液が、定流量ポンプによってセル内に導入されるようにしたものを用いた。
・貯槽:テルモシリンジSS−10S(内容量10ml、日本国、テルモ株式会社製)
・定流量ポンプ:230P型微量送液ポンプ(米国、KD Scientific Inc.製)以降単に「ポンプ」と称する。
・セル:テルモシリンジSS−01P(内容量1ml、日本国、テルモ株式会社製)のシリンダー部を長さ23mmに切断して円筒状とし、その両端に各1個ずつガスケット(上記シリンジのピストン部の先端に取り付けられているゴム製パッキング)をはめ込んだものをセルとして用いた。ガスケット間の間隔は15.5mmとし、セルの内容量が約0.5mlになるようにした。
【0145】
また、上記計2個のガスケットの中央部にガスケットを貫通する穴を空け、それぞれの穴に送液用シリコンチューブ(長さ10cm、内径1mm、外径3mm)を1本ずつ挿入した。
【0146】
上記ポンプとセルの接続に際しては、このシリコンチューブのうちの1本をポンプに接続し、ポンプによってセル内に導入された試験液が、セル内を通過して、ポンプに接続されていない方のシリコンチューブから排出されるようにした。以降、「セルから排出される」とは、ポンプに接続されていないシリコンチューブを通してセルから排出されることを意味するものとする。
【0147】
以上の装置全体を37±0.5℃の恒温室内に設置し、第十三改正日本薬局方に記載の溶出試験法第3法(フロースルーセル法)の要領で試験を行なった。
【0148】
上記セル内に、直径6mmの円形濾紙を2枚入れ、その濾紙の間に、実施例2で製造した(カプセルに充填する前の)徐放性被覆粒子183mgを入れた。円形濾紙は徐放性被覆粒子の流出を防ぐためのものである。
【0149】
上記貯槽内に試験液(蒸留水、37℃)を入れ、上記ポンプによって試験液を0.4ml/hrの速度で送液し、上記セル内に導入した。セルから排出された、製剤より放出された有効成分を含む試験液(以降「溶出液」と称する)を、送液開始の時点から送液開始1時間後の時点まで10mlメスフラスコ中に採取した。同様にして、セルから排出された溶出液を1時間にわたって採取することを計20回繰り返した。採取した溶出液をそれぞれ10mlに希釈した後、さらに100倍に希釈して試料溶液とした。
【0150】
溶出試験開始から(i−1)〜i時間後(iは1〜20の整数を意味する)に採取した溶出液から調製した試料溶液を、それぞれ「第i番目の試料溶液」と称する。
【0151】
別に、塩酸ファスジル標準品約80mgを精密に量り、蒸留水に溶解して体積を100mlとし、得られた溶液1mlを100倍に希釈して標準溶液を調製し、試料溶液および標準溶液に関し、275nmにおける吸光度(以降単に「吸光度」と称する)を測定した。
【0152】
第i番目の試料溶液を得た時点での、製剤に元から含まれている有効成分の全重量に対する、有効成分の溶出率(%)(以降単に「溶出率」と称する)を、下記の式により算出した。
【0153】
【数6】

【0154】
上記式中の略号の意味は以下の通りである。
【0155】
:製剤に元から含まれている有効成分の全重量
:標準溶液の調製に用いた有効成分の重量
:標準溶液の吸光度
【0156】
【数7】

【0157】
得られた結果を表2に示した(「微量溶出試験」の項)。
【0158】
また比較のため、実施例2で製造した徐放性カプセル剤を、上記のパドル法による溶出試験(実験例1参照)に付して得られた結果を、合わせて表2に示した(「パドル法」の項)。
【0159】
【表2】

【0160】
表2に示すように、試験液が微量しか存在しない条件下でも、本発明の経口徐放性製剤からの有効成分の放出は、大量(900ml)の試験液が存在する場合とほぼ同様の挙動を示した。
【0161】
この結果は、消化管内液の量が少ない消化管下部においても、十分な量の有効成分が本発明の経口徐放性製剤から放出されることを示し、本発明の経口徐放性製剤の有用性を示唆するものである。
実験例3
塩酸ファスジル無水物として約1.5mgに相当する量の、実施例2で製造された徐放性被覆粒子を、ラット用ミニカプセル(直径約2mm、長さ約8mm)に充填し、ラット用徐放性カプセル剤を製造した。
【0162】
得られたカプセル剤を、絶食したラットに0.5mlの水と共に経口投与した後、一定時間後に採血し、上記のHPLC法により、ラット血中における塩酸ファスジルの1−ヒドロキシ体(以降単に「活性代謝物」と称する)の濃度を測定した。
【0163】
ラット血中における活性代謝物濃度の経時変化を図1に示した。
【0164】
図1より明らかな通り、実施例2で製造された経口徐放性製剤を経口投与すると、長時間にわたって活性代謝物の血中濃度が適切な範囲に維持された。
実験例4
実施例2で製造された徐放性被覆粒子の代わりに、実施例3で製造された徐放性被覆粒子を用いる以外は、実験例3と同様の操作を繰り返した。
【0165】
ラット血中における活性代謝物濃度の経時変化を図2に示した。
【0166】
図2より明らかな通り、実施例3で製造された経口徐放性製剤を経口投与すると、長時間にわたって活性代謝物の血中濃度が適切な範囲に維持された。
実験例5
実施例2で製造された徐放性被覆粒子の代わりに、実施例4で製造された徐放性被覆粒子を用いる以外は、実験例3と同様の操作を繰り返した。
【0167】
ラット血中における活性代謝物濃度の経時変化を図3に示した。
【0168】
図3より明らかな通り、実施例4で製造された経口徐放性製剤を経口投与すると、長時間にわたって活性代謝物の血中濃度が適切な範囲に維持された。
実験例6
実施例2で製造された徐放性被覆粒子の代わりに、実施例8で製造された徐放性被覆粒子を用いる以外は、実験例3と同様の操作を繰り返した。
【0169】
ラット血中における活性代謝物濃度の経時変化を図4に示した。
【0170】
図4より明らかな通り、実施例8で製造された経口徐放性製剤を経口投与すると、長時間にわたって活性代謝物の血中濃度が適切な範囲に維持された。
実験例7
実施例2で製造された徐放性被覆粒子の代わりに、実施例10で製造された徐放性被覆粒子を用いる以外は、実験例3と同様の操作を繰り返した。
【0171】
ラット血中における活性代謝物濃度の経時変化を図5に示した。
【0172】
図5より明らかな通り、実施例10で製造された経口徐放性製剤を経口投与すると、長時間にわたって活性代謝物の血中濃度が適切な範囲に維持された。
実験例8
実施例2で製造された徐放性被覆粒子の代わりに、比較例3で製造された被覆粒子を用いる以外は、実験例3と同様の操作を繰り返した。
【0173】
ラット血中における活性代謝物濃度の経時変化を図6に示した。
【0174】
図6より明らかな通り、比較例3で製造された経口徐放性製剤を経口投与すると、活性代謝物の血中濃度は急速に上昇した後、急速に低下してしまうため、長時間にわたって活性代謝物の血中濃度を適切な範囲に維持することは不可能であった。
実験例9
実施例2で製造された徐放性被覆粒子の代わりに、比較例4で製造された被覆粒子を用いる以外は、実験例3と同様の操作を繰り返した。
【0175】
ラット血中における活性代謝物濃度の経時変化を図7に示した。
【0176】
図7より明らかな通り、比較例4で製造された経口徐放性製剤を経口投与すると、活性代謝物の血中濃度が十分に上昇しないため、活性代謝物の血中濃度を適切な範囲に維持することは不可能であった。
【0177】
実験例3〜7の結果から明らかなように、本発明の経口徐放性製剤をラットに経口投与すると、長時間にわたって活性代謝物の血中濃度が適切な範囲に維持された。このことは、適当な量の有効成分が長時間にわたって製剤から放出され、放出された有効成分がラット消化管全域において吸収され、代謝を受けて活性代謝物に変換され、循環血中に継続的に供給されたことを示すと考えられる。
【0178】
これに対し、実験例8に用いた比較例3の製剤では、有効成分が製剤から急速に放出され、これに伴って活性代謝物の血中濃度は急速に上昇するが、その後短時間のうちに有効成分の放出が終了してしまい、これに伴って活性代謝物の血中濃度が急速に低下してしまうため、活性代謝物の血中濃度を長時間にわたって適切な範囲に維持することができないと考えられる。
【0179】
また、実験例9に用いた比較例4の製剤では、製剤からの有効成分の放出が極度に遅いため、十分な量の有効成分が放出されず、そのため十分な量の有効成分が消化管から吸収されなかったため、活性代謝物の血中濃度が十分に上昇しなかったものと考えられる。
【0180】
以上のことから、塩酸ファスジルまたはその水和物を有効成分として含有する製剤を用いて、活性代謝物の血中濃度長時間にわたって適切な範囲に維持するためには、その製剤が、上記のような方法によって測定した時に、有効成分に関し、上記のような適切な溶出率を示すことが必要であることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0181】
本発明の経口徐放性製剤は、塩酸ファスジルの放出を確実に制御することが可能なので、適切な量の塩酸ファスジルが長時間にわたって放出され、塩酸ファスジルの作用が長時間持続する。その結果、製剤の投与頻度が減り、服薬に伴う患者の負担が軽減され、コンプライアンスが向上し、塩酸ファスジルの治療効果が確実なものとなるので、極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0182】
【図1】実施例2で製造した経口徐放性製剤をラットに経口投与したときの、活性代謝物の血中濃度の経時変化を示すグラフである。
【図2】実施例3で製造した経口徐放性製剤をラットに経口投与したときの、活性代謝物の血中濃度の経時変化を示すグラフである。
【図3】実施例4で製造した経口徐放性製剤をラットに経口投与したときの、活性代謝物の血中濃度の経時変化を示すグラフである。
【図4】実施例8で製造した経口徐放性製剤をラットに経口投与したときの、活性代謝物の血中濃度の経時変化を示すグラフである。
【図5】実施例10で製造した経口徐放性製剤をラットに経口投与したときの、活性代謝物の血中濃度の経時変化を示すグラフである。
【図6】比較例3で製造した経口徐放性製剤をラットに経口投与したときの、活性代謝物の血中濃度の経時変化を示すグラフである。
【図7】比較例4で製造した経口徐放性製剤をラットに経口投与したときの、活性代謝物の血中濃度の経時変化を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式
【化1】

で表わされる塩酸ファスジルおよびその水和物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の有効成分を含有する経口徐放性製剤であって、
該製剤が、表面を有する芯および該芯の表面を被覆する被膜よりなる少なくとも1個の徐放性被覆粒子を含み、該芯が該有効成分を含有し、該被膜が、コーティング基剤及び薬学的に許容され且つ水及びエタノールのいずれにも不溶な物質である不溶性物質を含み、
該製剤が、第十三改正日本薬局方に記載の溶出試験法第2法(パドル法)によって測定した時に、該有効成分に関し、下記(1)、(2)および(3)の溶出率を示すことを特徴とする製剤。
(1)溶出試験開始から3時間後の時点で、該製剤に元から含まれている該有効成分の全重量に対し5〜40%、
(2)溶出試験開始から6時間後の時点で、該製剤に元から含まれている該有効成分の全重量に対し35〜70%、および
(3)溶出試験開始から15時間後の時点で、該製剤に元から含まれている該有効成分の全重量に対し70%以上。
【請求項2】
該芯中に含まれる該有効成分の量が、該製剤に含まれている該有効成分の全重量に対し、少なくとも30重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の経口徐放性製剤。
【請求項3】
該芯中に含まれる該有効成分の量が、該製剤に含まれている該有効成分の全重量に対し、実質的に100重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の経口徐放性製剤。
【請求項4】
該被膜が、該コーティング基剤1重量部に対して0.5〜10重量部の該不溶性物質を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の経口徐放性製剤。
【請求項5】
該不溶性物質が、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、酸化チタン、軽質無水ケイ酸からなる群より選ばれる1種以上の物質であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の経口徐放性製剤。
【請求項6】
該コーティング基剤がエチルセルロースであり、該不溶性物質がタルクであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の経口徐放性製剤。
【請求項7】
該コーティング基剤がエチルセルロースであり、該不溶性物質がステアリン酸マグネシウムであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の経口徐放性製剤。
【請求項8】
該コーティング基剤が、アクリル酸エチル/メタアクリル酸メチル/メタアクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル共重合体であり、該不溶性物質がタルクであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の経口徐放性製剤。
【請求項9】
下記式
【化2】

で表わされる塩酸ファスジルおよびその水和物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の有効成分を含有する経口徐放性製剤であって、
該製剤が、第十三改正日本薬局方に記載の溶出試験法第2法(パドル法)によって測定した時に、該有効成分に関し、下記(1)、(2)および(3)の溶出率を示すことを特徴とする製剤。
(1)溶出試験開始から3時間後の時点で、該製剤に元から含まれている該有効成分の全重量に対し5〜40%、
(2)溶出試験開始から6時間後の時点で、該製剤に元から含まれている該有効成分の全重量に対し35〜70%、および
(3)溶出試験開始から15時間後の時点で、該製剤に元から含まれている該有効成分の全重量に対し70%以上。
【請求項10】
下記式
【化3】

で表わされる塩酸ファスジルおよびその水和物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の有効成分を含有する経口徐放性製剤を、該有効成分の徐放能に関して評価する方法であって、該製剤を、第十三改正日本薬局方に記載の溶出試験法第2法(パドル法)による標準試験に付して該製剤からの該有効成分の溶出性について、下記(1)、(2)および(3)の溶出率を基準にして検査した場合に得られる評価結果と実質的に同じ評価結果を与える溶出試験法による試験に付すことを含む方法。
(1)溶出試験開始から3時間後の時点で、該製剤に元から含まれている該有効成分の全重量に対し5〜40%、
(2)溶出試験開始から6時間後の時点で、該製剤に元から含まれている該有効成分の全重量に対し35〜70%、および
(3)溶出試験開始から15時間後の時点で、該製剤に元から含まれている該有効成分の全重量に対し70%以上。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−137956(P2009−137956A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−303342(P2008−303342)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【分割の表示】特願2000−564636(P2000−564636)の分割
【原出願日】平成11年8月4日(1999.8.4)
【出願人】(303046299)旭化成ファーマ株式会社 (105)
【Fターム(参考)】