説明

塵芥収集車

【課題】 低騒音が要求される場所では、走行用エンジンを停止させて車体に設置した別置駆動源で塵芥収集作業を行うとともに、走行中に流し取り作業ができないようにする。
【解決手段】 走行用エンジン26によって駆動される第1油圧ポンプ28、又は走行用エンジン26とは別にシャーシに設置された別置エンジン32によって駆動される第2油圧ポンプ31から供給される油圧によって塵芥詰込装置を作動させ、シャーシに搭載された塵芥収容箱内に塵芥を詰め込む。塵芥詰込装置に対する第2油圧ポンプ31からの油圧供給を電磁切換弁34により、走行状態では強制的に規制する一方、走行状態から走行停止状態に移行した際には許容する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、走行用エンジンとは別に別置油圧ユニットを設置した塵芥収集車の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、走行用エンジンとは別に電気モータを車体に設置し、上記走行用エンジンによって駆動される第1油圧ポンプからの油圧と、上記電気モータによって駆動される第2油圧ポンプからの油圧との2つの油圧系統により、塵芥詰込装置の作動を詰込サイクルに応じてコントロールするようにした塵芥収集車が開示されている。
【特許文献1】特開2000−335706号公報(第3,4頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記の特許文献1の塵芥収集車では、塵芥詰込装置に作用する負荷の大きさが所定値以下のときには走行用エンジンの回転数を増加させず、上記電気モータによって第2油圧ポンプを駆動することにより、第1油圧ポンプからの油圧の供給量低下を上記第2ポンプからの油圧供給によって補う一方、塵芥詰込装置に作用する負荷の大きさが所定値を超えると、走行用エンジンの回転数を増加させるとともに、電気モータへの電力供給を停止させるか減少させるようにしているため、走行用エンジンは常に作動していて大きなエンジン音が騒音として周辺にまき散らされることになり、環境問題に厳しい昨今では緊急に低騒音化対策が望まれる。特に、夜間の塵芥収集作業、閑静な住宅地や病院等での塵芥収集作業は騒音に最も注意が要求されることからなおさらである。
【0004】
一方、上述の如く走行用エンジン以外に電気モータ等の別置駆動源があると、走行中に別置駆動源によって第2油圧ポンプを駆動させて塵芥詰込装置を作動させる,いわゆる「流し取り」が可能であるが、この流し取り作業は危険な作業である。
【0005】
この発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、低騒音が要求される場所では、走行用エンジンを停止させて車体に設置した別置駆動源で塵芥収集作業を行うようにするとともに、走行中に流し取り作業ができないようにしたことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、この発明は、走行中に別置駆動源が作動できないようにするとともに、走行を停止した際には走行用エンジン及び別置駆動源のいずれかを選択できるようにしたことを特徴とし、具体的には、次のような解決手段を講じた。
【0007】
すなわち、請求項1に記載の発明は、走行用エンジンによって駆動される第1油圧ポンプと、上記走行用エンジンとは別に車体に設置された別置駆動源と、この別置駆動源によって駆動される第2油圧ポンプと、上記第1油圧ポンプ又は第2油圧ポンプから供給される油圧によって作動し、車体に搭載された塵芥収容箱内に塵芥を詰め込む塵芥詰込装置と、上記塵芥詰込装置に対する第2油圧ポンプからの油圧供給を、走行状態では強制的に規制する一方、走行状態から走行停止状態に移行した際には許容する油圧供給切換手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、別置駆動源及び第2油圧ポンプは、密閉遮音箱内に収容されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、走行状態では塵芥詰込装置に第2油圧ポンプから油圧が供給されないので、塵芥詰込装置は作動せず、走行中に危険な流し取り作業をできないようにすることができる。一方、走行状態から走行停止状態に移行した際には塵芥詰込装置に第2油圧ポンプから油圧が供給されるので、低騒音が要求される場所では、大きなエンジン音を発生する走行用エンジンを停止させ、一般に走行用エンジンよりも低音である別置駆動源で塵芥収集作業を行うことができる。
【0010】
請求項2に係る発明によれば、別置駆動源及び第2油圧ポンプを密閉遮音箱内に収容しているので、これらから発生する作動音が外部に漏れず、さらに低騒音化を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。
【0012】
図3〜5はこの発明の一実施形態に係る塵芥収集車を示す。図3〜5において、1はキャブ、2は車体としてのシャーシであり、シャーシ2には車体後方に開口する塵芥詰込口3を有する塵芥収容箱4が搭載され、上記塵芥詰込口3上端には塵芥投入箱5が枢軸6により下開き可能に接続されている。この塵芥投入箱5は、その車体前方側が開放されて塵芥収容箱4の塵芥詰込口3に連通されるとともに、背面下方に塵芥を投入する投入口7が開口され、その下部に塵芥の貯留室8が形成されており、この塵芥投入箱5内には、塵芥を圧縮し、押し潰して塵芥収容箱4内に詰め込む塵芥詰込装置9が装備されている。
【0013】
上記塵芥詰込装置9は、塵芥投入箱5の両側壁に沿って敷設されて車体の後方下部に向って傾斜する溝形鋼よりなる案内溝部材10を備え、この案内溝部材10の上端部に上記枢軸6が枢支されている。一方、上記塵芥投入箱5内には、その幅方向全体に亘って延設された昇降板11が収納されていて、この昇降板11の上下には、上記案内溝部材10の内壁に沿って転動自在に嵌合される案内ローラ12が軸着されている。また、上記昇降板11の背面上部には、枢軸13がブラケット14を介して軸支されており、この枢軸13は、上記案内溝部材10背面に沿うとともに、昇降板11の摺動距離に合致するように塵芥投入箱5の側壁に形成された切欠部5aを越えて塵芥投入箱5内側より外側に突出している。
【0014】
そして、図5に破線で示すように、外側に突出した枢軸13と塵芥投入箱5の下部外側間には、一対の昇降用油圧シリンダ15が案内溝部材10の傾斜方向に沿って設けられていて、この昇降用油圧シリンダ15の伸縮作動により上記昇降板11を案内溝部材10に沿って上下方向に往復動させるようになっている。
【0015】
また、上記昇降板11の下端には、塵芥投入箱5の幅方向全体に亘って延設された押込板16が枢軸17によって前後に揺動自在に軸支されるとともに、この押込板16の背面に突出した支持片18と上記昇降用油圧シリンダ15先端の枢軸13との間には一対の押込用油圧シリンダ19が連結されていて、この押込用油圧シリンダ19の伸縮作動により、上記押込板16を枢軸17回りに前後に揺動させるようになされている。そして、押込板16を上記押込用油圧シリンダ19と昇降用油圧シリンダ15との共働により、詰込終了状態(図5の(a)位置)から反転(図5の(b)位置)、押し潰し(図5の(c)位置)、圧縮(図5の(d)位置)へと移動させて再度図5の(a)位置に戻すことにより、塵芥を塵芥収容箱4に詰め込むようにしている。
【0016】
上記塵芥収容箱4内には排出板20が移動可能に設けられ、塵芥収容箱4は、上記塵芥詰込装置9によって塵芥詰込口3を経て詰め込まれた塵芥を収容する手前側(車体後方)の塵芥収容空間4aと、その奥側空間4bとに上記排出板20で区画されており、奥側空間4bの下部には、上記排出板20を車体前後方向に移動させて塵芥を排出する排出板駆動用の油圧シリンダ(排出用油圧シリンダ)21が設けられている。この排出用油圧シリンダ21は、基部21aと、基部21aに対して伸縮自在な第1ピストン21bと、第1ピストン21bに対して伸縮自在な第2ピストン21cと、第2ピスtン21cに対して伸縮自在な第3ピストン21dとからなる3段式油圧シリンダである。そして、上記基部21aの基端は、排出板20の下方に設けられたブラケット22に枢軸23により回動自在に軸支され、上記第3ピストン21dの先端は、奥側空間4bの最奥部に取り付けられた取付部材24に枢軸25により回動自在に軸支されている。そして、この排出用油圧シリンダ21が伸長作動することにより、排出板20を塵芥収容箱4の塵芥詰込口3に近接させて塵芥収容空間4aの容積を最小にする一方、排出用油圧シリンダ21が収縮作動することにより、塵芥収容空間4aの容積を増大させるようになっている。
【0017】
次に、上記塵芥収集車の油圧回路の概略を図1を参照しながら説明する。
【0018】
図1中、26は走行用エンジン、27は走行用エンジン26の動力を取り出す動力取出装置(PTO)、28は動力取出装置(PTO)27によって駆動される第1油圧ポンプである。この第1油圧ポンプ28はオイルリザーバ29の作動油を吐出し、その吐出油は塵芥詰込装置9の電磁制御弁30を経てオイルリザーバ29に戻り、電磁制御弁30を経て昇降用油圧シリンダ15、押込用油圧シリンダ19及び排出用油圧シリンダ21に油圧が供給され、塵芥収容箱4に塵芥を詰め込むようになっている。また、上記第1油圧ポンプ28には第2油圧ポンプ31が並列に設けられている。この第2油圧ポンプ31は、上記走行用エンジン26とは別にシャーシ2に設置された別置駆動源としての別置エンジン32によって駆動されるようになっている。上記第2油圧ポンプ31及び別置エンジン32は、作動音が外部に漏れないように密閉遮音箱33内に収容され、図1及び図2に示すように、キャブ1と塵芥収容箱4との間のシャーシ2に設置されている。
【0019】
この実施形態の特徴として、上記第2油圧ポンプ31の吐出側には、油圧供給切換手段としての電磁切換弁34が介設されている。この電磁切換弁34は、走行状態から走行停止状態に移行した際には消磁されていて、上記塵芥詰込装置9に対する第2油圧ポンプ31からの油圧供給を許容するようになっている。図1は電磁切換弁34の消磁状態(走行停止状態)を示し、この消磁状態で第2油圧ポンプ31はオイルリザーバ29の作動油を吐出し、その吐出油は塵芥詰込装置9の電磁制御弁30を経てオイルリザーバ29に戻り、電磁制御弁30を経て昇降用油圧シリンダ15、押込用油圧シリンダ19及び排出用油圧シリンダ21に油圧が供給され、塵芥収容箱4に塵芥を詰め込むようになっている。また、この走行停止状態では、当然、塵芥詰込装置9は第1油圧ポンプ28の駆動によっても作動されるようになっており、いずれを油圧系を選択するかはそのときの作業状況等に応じて適宜決定されるものである。一方、上記電磁切換弁34は、走行状態では励磁されていて、上記塵芥詰込装置9に対する第2油圧ポンプ31からの油圧供給を強制的に規制し、昇降用油圧シリンダ15、押込用油圧シリンダ19及び排出用油圧シリンダ21に油圧が供給されないようにしている。なお、走行状態であることは、例えばパーキングブレーキの解除信号を検出することなどで行えばよい。
【0020】
このように、この実施形態では、走行用エンジン26によって駆動される第1油圧ポンプ28からの油圧により塵芥詰込装置9を作動させるとともに、上記走行用エンジン26とは別にシャーシ2に設置された別置エンジン32によって駆動される第2油圧ポンプ31からの油圧によっても塵芥詰込装置9を作動させるようにした塵芥収集車において、塵芥詰込装置9に対する第2油圧ポンプ31からの油圧供給を、走行状態では電磁切換弁34を励磁して強制的に規制する一方、走行停止状態では電磁切換弁34を消磁して許容するようにした。したがって、走行状態では塵芥詰込装置9に第2油圧ポンプ31から油圧が供給されないので、塵芥詰込装置9は作動せず、走行中に危険な流し取り作業をできないようにすることができる。一方、走行状態から走行停止状態に移行した際には塵芥詰込装置9に第2油圧ポンプ31から油圧が供給されるので、低騒音が要求される場所では、大きなエンジン音を発生する走行用エンジン26を停止させ、一般に走行用エンジン26よりも低音である別置エンジン32で塵芥収集作業を行うことができる。
【0021】
また、別置エンジン32及び第2油圧ポンプ31を密閉遮音箱33内に収容しているので、これらから発生する作動音を外部に漏れないようにできてさらに低騒音化を実現することができる。
【0022】
図2は別の実施形態を示し、この実施形態では、油圧供給切換手段を別置エンジン32の電気回路35で構成したものであり、走行中の電気信号を別置エンジン32の電気回路35に取り込んで別置エンジン32を作動させないようにし、塵芥詰込装置9に対する第2油圧ポンプ31からの油圧供給を走行状態では強制的に規制する一方、走行状態から走行停止状態に移行した際には別置エンジン32を作動させて塵芥詰込装置9に対する第2油圧ポンプ31からの油圧供給を許容するようにしている。そのほかは、上記の実施形態と同様に構成されているので、同一の構成箇所には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。したがって、この実施形態では、上記の実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0023】
なお、上記両実施形態では、別置駆動源としてエンジンを採用したが、電気モータであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0024】
この発明は、走行用エンジンとは別に別置油圧ユニットを設置した塵芥収集車として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】一実施形態に係る塵芥収集車の油圧回路の概略図である。
【図2】別の実施形態に係る塵芥収集車の油圧回路の概略図である。
【図3】一実施形態に係る塵芥収集車の側面図である。
【図4】一実施形態に係る塵芥収集車の平面図である。
【図5】塵芥収集箱及び塵芥投入箱の縦断側面図である。
【符号の説明】
【0026】
2 シャーシ(車体)
4 塵芥収容箱
9 塵芥詰込装置
26 走行用エンジン
28 第1油圧ポンプ
31 第2油圧ポンプ
32 別置エンジン(別置駆動源)
33 密閉遮音箱
34 電磁切換弁(油圧供給切換手段)
35 電気回路(油圧供給切換手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用エンジンによって駆動される第1油圧ポンプと、
上記走行用エンジンとは別に車体に設置された別置駆動源と、
この別置駆動源によって駆動される第2油圧ポンプと、
上記第1油圧ポンプ又は第2油圧ポンプから供給される油圧によって作動し、車体に搭載された塵芥収容箱内に塵芥を詰め込む塵芥詰込装置と、
上記塵芥詰込装置に対する第2油圧ポンプからの油圧供給を、走行状態では強制的に規制する一方、走行状態から走行停止状態に移行した際には許容する油圧供給切換手段とを備えたことを特徴とする塵芥収集車。
【請求項2】
請求項1に記載の塵芥収集車において、
別置駆動源及び第2油圧ポンプは、密閉遮音箱内に収容されていることを特徴とする塵芥収集車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−124116(P2006−124116A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−315907(P2004−315907)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000002358)新明和工業株式会社 (919)
【Fターム(参考)】