説明

境界ブロック

【課題】融雪用薬剤により溶解して脆弱化することなく、配設されて自然と調和し、かつ製作および修繕に要するコストを低減できると共に取付作業も容易で、さらに腐食等による損傷が抑制されてより長期使用可能な境界ブロックを提供する。
【解決手段】本発明の境界ブロック1は、複数の木製板材2を垂直方向に積載して形成された木製ブロック体3を有し、内部にはアンカーボルト挿通孔4が設けられており、予め基礎5に立設固定したアンカーボルト6をアンカーボルト挿通孔4内に挿通させ上部をナット7にて固定することにより基礎5に木製ブロック体3が配設された境界ブロックであって、木製ブロック体3の下面3aと基礎5の上面5aとの間には部分的にスペーサー8が配されて離間している。このため、木製ブロック体3の下面3aの乾燥状態が構造的に担保され腐食が抑制されてより長期使用が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば道路における歩道または中央分離帯と車道との境界、各種施設(病院、公園、駅前ロータリー、高速サービスエリア等)内における駐車場と進入車道との境界、或いは各種施設内において花壇等を区画するために配設される境界ブロックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、道路や各種施設内に配設される境界ブロックとして、コンクリート製のいわゆる縁石が多用されているが、寒冷地では融雪用に撒布される薬剤(塩化カルシウム等)の影響でコンクリートが溶解し脆弱化することが懸案となっている。また、地球温暖化を抑制する観点からコンクリート製品に比してCO排出量を低減できると共に近年の自然志向を背景に景観等自然に調和する木製境界ブロックが嘱望されている。
本願出願人は、そのような現況に鑑みて、先に、融雪用薬剤により溶解して脆弱化することなく、配設されて自然と調和し、かつ製作および修繕に要するコストを低減できると共に、取付作業が容易な木製境界ブロック(特開平11−6104号公報)を提案した。
【特許文献1】特開平11−6104号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この木製境界ブロックは、ブロック体を構成する複数の木製板材に防腐処理が施されているため、雪雨に晒されても容易に腐食することはないが、長期間使用されるとより腐食し易い部位が存在することが明らかになった。本発明は、そのような腐食し易い部位を構造的に解消することで、より長期使用に耐え得る木製境界ブロックを想起したものであり、すなわち、本発明の課題は、融雪用薬剤により溶解して脆弱化することなく、配設されて自然と調和し、かつ製作および修繕に要するコストを低減できると共に取付作業も容易で、さらに腐食等による損傷が抑制されてより長期使用可能な境界ブロックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するものは、複数の木製板材を垂直方向に積載して形成された木製ブロック体を有し、該木製ブロック体内部には、上部付近から下面に貫通するアンカーボルト挿通孔が設けられており、予め基礎に立設固定したアンカーボルトを前記アンカーボルト挿通孔内に挿通させ該アンカーボルトの上部をナットにて固定することにより前記基礎に前記木製ブロック体が配設された境界ブロックであって、前記木製ブロック体の下面と前記基礎の上面との間には部分的にスペーサーが配されて前記木製ブロック体の下面と前記基礎の上面とが離間していることを特徴とする境界ブロックである。
【0005】
前記基礎の上面には、前記アンカーボルトの立設部位から端部にかけて水捌け用凹条溝が設けられていることが好ましい。前記境界ブロックは、前記木製ブロック体の一側面側に土砂が配される境界ブロックであって、当該木製ブロック体の一側面には樹脂製シートが貼付されていることが好ましい。前記木製ブロック体の上面は傾斜面に形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0006】
請求項1ないし4に記載の発明によれば、融雪用薬剤により溶解して脆弱化することなく、配設されて自然と調和し、かつ製作および修繕に要するコストを低減できると共に取付作業も容易で、さらに腐食等による損傷がより抑制されて長期使用可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明では、図2に示すように、木製ブロック体3の下面3aと基礎5の上面5aとを離間させることで、木製ブロック体3の腐食を抑制しより長期使用可能な境界ブロック1を実現した。
【実施例1】
【0008】
図1は本発明の境界ブロックの側面図であり、図2は図1のA−A線断面図であり、図3は図1のB−B線断面図であり、図4は図1に示した境界ブロックの斜視分解図である。
【0009】
この実施例の境界ブロック1は、複数の木製板材2を垂直方向に積載して形成された木製ブロック体3を有し、木製ブロック体3内部には、上部付近から下面3aに貫通するアンカーボルト挿通孔4が設けられており、予め基礎5に立設固定したアンカーボルト6をアンカーボルト挿通孔4内に挿通させアンカーボルト6の上部をナット7にて固定することにより基礎5に木製ブロック体3が配設された境界ブロックであって、木製ブロック体3の下面3aと基礎5の上面5aとの間には部分的にスペーサー8が配されて木製ブロック体3の下面3aと基礎5の上面5aとが離間していることを特徴とする境界ブロックである。以下、各構成について順次詳述する。
【0010】
木製ブロック体3は、図1または図2に示すように、複数の木製板材2a,2b,2cを重ね合わせて形成されており、内部には、上部付近より下面3aに貫通するアンカーボルト挿通孔4と、上部付近に設けられたナット固定用空間9が設けられている。
【0011】
具体的には、この実施例の木製板材2は、最上部に配置された第1の木製板材2aと、最下部に配置された第2の木製板材2bと、中央部に隣接して3段に渡って配置された3枚の第3の木製板材2cとからなっている。そして、これらが順次垂直方向に重ね合わされて(積載されて)全体として1つの木製ブロック体3を形成している。
【0012】
第1の木製板材2aは、厚さ45mm×幅200mm×長さ1800mmの寸法に形成されており、上部左右両側には面取りが施されると共に、上面は傾斜面に形成されている。木製ブロック体3の上面が傾斜面になることによって、雨水などが上面に溜まることなく流れ落ちるため、木製ブロック体3の損傷がより抑制される。なお、この実施例の上面は、中央付近より両側に向かってそれぞれ下り傾斜面に形成されているが、一側方に向かう傾斜面に形成されていてもよい。
【0013】
また、第2の木製板材2bは、厚さ50mm×幅200mm×長さ1800mmの寸法に形成されており、第3の木製板材2cは、厚さ35mm×幅100mm×長さ1800mmの寸法に形成されている。
【0014】
なお、この実施例の境界ブロックは計5枚の木製板材からなっているが、複数であれば何枚であってもよく、さらに、各木製板材の寸法も適宜設計変更可能であり、例えば、全ての木製板材の寸法が同一のもので構成されていてもよい。
【0015】
このように、本発明の境界ブロックは、複数の木製板材より形成されているので、安価な小径木や集成材を活用することができ、また一部が損傷した場合でも部分的に取り替え可能であるため、製作および修繕に要するコストを低減できる。特に、この実施例のように、中間部に配置される木製板材として幅寸法の小さな板材を使用し、その上下に幅広の板材を配置すれば、中間部においてより安価な小径木を活用できる。
【0016】
木製板材としては、から松、檜、椹、杉などの針葉樹が好適に使用できるが、特に戦後、主として電柱の構成材として大量に植林され、現在では用途が極めて少なく放置されがちな唐松を使用すれば木資源の有効利用を図ることができる。
【0017】
木製ブロック体3の内部には、上部付近より下面3aに貫通するアンカーボルト挿通孔4が穿孔されている。このアンカーボルト挿通孔4は、境界ブロック1の配設に際してアンカーボルト6を挿通させる部位であり、木製ブロック体3の中央付近において垂直方向に延在して設けられている。
【0018】
この実施例の境界ブロック1は、図1に示すように、アンカーボルト6を長手方向の両端付近に2箇所挿嵌して配設するものであるため、それに対応させてアンカーボルト挿通孔4も長手方向の両端付近に2箇所形成されている。ただし、アンカーボルト挿通孔4の形成部位はこれに限定されるものではなく、基礎5に立設されるアンカーボルトの本数および部位に対応させて適宜設計変更可能である。
【0019】
また、木製ブロック体3内の上部には、ナット固定用空間9が設けられている。このナット固定用空間9は、境界ブロック1の配設に際してアンカーボルト6の上部をナット7で固定するための空間である。
【0020】
そして、木製ブロック体3の下面3aと基礎5の上面5aとの間には、図1または図2に示すように、部分的にスペーサー8が配されており、木製ブロック体3の下面3aと基礎5の上面5aとが離間するように構成されている。これは、境界ブロック1が、木製ブロック体3と基礎5との境界面に水や菌が付きやすく最も腐食しやすいからであり、この部位にスペーサー8を配することで、木製ブロック体3の下面3aを基礎5の上面5aから浮上させ、木製ブロック体3の下面3aの乾燥状態を維持し腐食を防止するためである。
【0021】
具体的には、この実施例のスペーサー8は、真鍮製鋲が用いられており、この真鍮製鋲は木製ブロック体3の重量によって小さなスペースでも潰れない強度を有すると共に錆びることもなくより好適である。また、この実施例のスペーサーは、図1または図3に示すように、木製ブロック体3の長手方向の両側および中央付近にそれぞれ3個計9個設けられており、真鍮製鋲8の鋭利部が木製板材2bの下面に穿刺されることにより、木製ブロック体3の下面または底面3aに配され、真鍮製鋲8の頭部にて木製ブロック体3の下面3aと基礎5の上面5aとの離間状態が保持される。
【0022】
なお、スペーサー(間隔保持部材)としては、真鍮製鋲に限定されるものではなく、木製ブロック体3の下面3aと基礎5の上面5aとを長期に渡って離間可能なものであればどようなものでもよい。また、木製ブロック体3の下面3aと基礎5の上面5a離間距離は、両者間の風通しを確保できればよく3〜5mm程度が好適である。
【0023】
さらに、この実施例の基礎5の上面5aには、図4に示すように、アンカーボルト6の立設部位から端部にかけて水捌け用凹条溝11が設けられている。これは、ナット固定用空間9内にはモルタル10を充填するが、経時変化によってモルタル10が収縮して水分がナット固定用空間9内に流入し、アンカーボルト挿通孔4内に溜まって腐食の原因となるからであり、アンカーボルト6を伝わって流れる水分を水捌け用凹条溝11を介して外部に排出させるための部位である。
【0024】
具体的には、この実施例の水捌け用凹条溝11は、アンカーボルト6の立設部位から両端部に向けてV字型に形成されており、この両端部が低地側に位置するように形成される。なお、例えば境界ブロック1が全くの平坦地に配設される場合などは、アンカーボルト6の立設部位から長手方向に直交する方向に水捌け用凹条溝11を設け、かつ両端部に向かうにつれて溝が深くなるように形成してもよい。
【0025】
つぎに、本発明の境界ブロック1の配設(取付施工)方法について説明する。
境界ブロック1は、道路における歩道または中央分離帯と車道との境界、各種施設(病院、公園、駅前ロータリー、高速サービスエリア等)内における駐車場と進入車道との境界など、或いは各種施設内において花壇等を区画するために適宜必要部位に配設される。
【0026】
配設に際しては、まず基礎形成として、砕石層(図示しない)を形成した後、図4に示すように、その上方にコンクリートを打設して基礎5を形成する。コンクリートの打設に際しては、アンカーボルト6を立設固定すると共に、基礎5の上面5aに、アンカーボルト6の立設部位から端部にかけて水捌け用凹条溝11を形成する。
【0027】
コンクリートが硬化して基礎5が形成された後、木製ブロック体3を基礎5の上部に載置する。この載置はアンカーボルト挿通孔4内にアンカーボルト6が挿嵌されるようにして行う。
【0028】
なお、木製ブロック体3は、複数の木製板材2を所要寸法に形成する工程と、複数の木製板材2を重ね合わせてブロック体を構成する工程と、ブロック体内部にアンカーボルト挿通孔4を形成する工程と、木製板材2を防腐処理する工程と、ブロック体を表面処理する工程と、木製ブロック体3の下面にスペーサー8を配する工程とを経て作製される。
【0029】
そして、基礎5の上部に木製ブロック体3を載置した後、アンカーボルト6の上部に設けられた螺合部にナット7を螺合させ座金を介して堅結固定する。この状態でナット固定用空間9内にモルタル10を充填して硬化させ配設が完了する。
【0030】
さらに、図5に示した本発明の境界ブロックの他の実施例について説明する。この実施例の境界ブロック20と前述した境界ブロック1との相違は、境界ブロック20が木製ブロック体3の一側面側に土砂が配される境界ブロック(例えば、花壇構成用境界ブロック或いはマウンドアップ歩道構成用境界ブロック)であって、木製ブロック体3の一側面に樹脂製シート21が貼付されている点のみであり他は同じである。境界ブロック1と同一構成部分には同一符号を付し説明を省略する。
【0031】
具体的には、花壇構成用境界ブロック或いはマウンドアップ歩道構成用境界ブロックは、通常、木製ブロック体3の一側面側が土砂と接触しているため腐食しやすい。このため、この実施例の境界ブロック20の木製ブロック体3の一側面側には、例えばオレフィン系樹脂シート21が接着剤にて貼付されて、木製ブロック体3の一側面側が土砂と接触しないように構成されている。
【0032】
以上のように、本発明の境界ブロックは、木製ブロック体がより腐食しない構造を多々採用することで、より長期使用可能な木製境界ブロックを実現した。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の境界ブロックの側面図である。
【図2】図1のA−A線拡大断面図である。
【図3】図1のB−B線拡大断面図である。
【図4】図1に示した境界ブロックの斜視分解図である。
【図5】本発明の境界ブロックの他の実施例の縦断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 境界ブロック
2 木製板材
3 木製ブロック体
4 アンカーボルト挿通孔
5 基礎
6 アンカーボルト
7 ナット
8 スペーサー
9 ナット固定用空間
10 モルタル
11 水捌け用凹条溝
21 樹脂製シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の木製板材を垂直方向に積載して形成された木製ブロック体を有し、該木製ブロック体内部には、上部付近から下面に貫通するアンカーボルト挿通孔が設けられており、予め基礎に立設固定したアンカーボルトを前記アンカーボルト挿通孔内に挿通させ該アンカーボルトの上部をナットにて固定することにより前記基礎に前記木製ブロック体が配設された境界ブロックであって、前記木製ブロック体の下面と前記基礎の上面との間には部分的にスペーサーが配されて前記木製ブロック体の下面と前記基礎の上面とが離間していることを特徴とする境界ブロック。
【請求項2】
前記基礎の上面には、前記アンカーボルトの立設部位から端部にかけて水捌け用凹条溝が設けられている請求項1に記載の境界ブロック。
【請求項3】
前記境界ブロックは、前記木製ブロック体の一側面側に土砂が配される境界ブロックであって、当該木製ブロック体の一側面には樹脂製シートが貼付されている請求項1または2に記載の境界ブロック。
【請求項4】
前記木製ブロック体の上面は傾斜面に形成されている請求項1ないし3のいずれかに記載の境界ブロック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−7852(P2009−7852A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−170793(P2007−170793)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(597094293)有限会社 新開工業 (1)
【Fターム(参考)】