増加した感度を持つ核酸検出方法
本発明は出力シグナルを監視することによって核酸ハイブリダイゼーションを検出する方法に関する。いくつかの有利な実施形態には、シグナルを増大させることができる技術が含まれる。そのような技術の一つでは、触媒的検出、例えばペルオキシダーゼまたは他の酵素によるものを行なう。もう一つの技術では、ハイブリダイゼーションが起こった後に核酸を拡大するための「オンチップ」増幅を行なう。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、2003年11月10日に出願された「NUCLEIC ACID DETECTION METHOD HAVING INCREASED SENSITIVITY(増加した感度を持つ核酸検出方法)」と題する米国仮特許出願第60/518,816号に基づく優先権を主張し、前記仮特許出願の開示は全て参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本発明は増加した感度を持つ核酸検出方法に関する。いくつかの有利な実施形態において、本方法は、合成的に延長された核酸と電極表面との間で起こる触媒サイクルの電気化学的検出を含む。
【背景技術】
【0003】
少なくとも一部に相補的ヌクレオチド配列を持つ他のポリヌクレオチドに対するワトソン−クリック型の塩基対形成によるポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションの検出は、広範囲にわたる多様な研究用途、医学的用途、および工業的用途に役立つ基本的プロセスである。標的配列を含有するポリヌクレオチドに対するプローブのハイブリダイゼーションは、遺伝子発現解析、DNA配列決定、およびゲノム解析に有用である。具体的用途としては、例えばSambrookら「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」第2版(Cold Spring Harbor Laboratory,ニューヨーク,1989)、KellerおよびManak「DNA Probes」第2版(Stockton Press,ニューヨーク,1993)、Milliganら,1993,J Med Chem,36:1923−1937、Drmanacら,1993.Science,260:1649−1652、Bains,1993,J DNA Seq Map,4:143−150などに記載されているように、診断アッセイにおける疾患関連ポリヌクレオチドの同定、試料中の新規標的ポリヌクレオチドに関するスクリーニング、ポリヌクレオチド混合物中の特異的標的ポリヌクレオチドの同定、変異配列の同定、遺伝子タイピング、特異的標的ポリヌクレオチドの増幅、および不適切に発現される遺伝子の治療的遮断などが挙げられる。
【0004】
各固定化プローブが支持体に機能的に接続され、固定化プローブに対するポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションを検出することができる場合、固定化プローブは標的ヌクレオチド配列を含有するポリヌクレオチドの検出に有用である。最も一般的には、DNAプローブを使って、そのプローブ配列に相補的な標的ヌクレオチド配列を含有するポリヌクレオチドが検出される。固定化プローブの支持体はしばしば「チップ」と呼ばれる平坦な表面であるか、ビーズまたは他の粒子の表面であることができる。プローブは通常、既知の配置またはアレイで固定化され、それが、塩基対形成規則に基づいて既知ポリヌクレオチドと未知ヌクレオチドとを対応づけるための媒体になる。好ましくは、プローブアレイを使って同定される未知物を同定するプロセスが自動化される。アイデンティティが既知である多数の固定化プローブを持つマイクロアレイは、相補的結合を決定するために用いられ、遺伝子発現および遺伝子発見の超並列的な研究を可能にする。例えば、単一のDNAチップを使った実験により、研究者は何千もの遺伝子に関する情報を得ることができる。例えばHashimotoらは、固定化一本鎖プローブのアレイであって、少なくとも一つのプローブが検出すべき標的遺伝子に相補的なヌクレオチド配列を持ち、各プローブが電極の表面または光ファイバーの先端に固定化され、二本鎖核酸に結合する能力を持つ電気化学的または光学的に活性な物質を使って、相補的固定化プローブに対する標的遺伝子のハイブリダイゼーションが検出されるようになっているものを開示している(米国特許第5,776,672号および第5,972,692号)。
【0005】
核酸ハイブリダイゼーションが起こっているかどうかを検出するためのもう一つの方法は、核酸を取り囲む対イオンの量を反映するシグナルを検出することである。したがって、ハイブリダイズした核酸は、一本鎖核酸よりも多くの対イオンに取り囲まれる傾向を示すだろう。対イオンは通例、例えば三価イオンの二価イオンへの還元などにより、電気化学的反応によって検出される、このように、対イオンは電子移動化学種として機能する。
【0006】
電気化学的定量はA.B.Steelら「Electrochemical Quantitation of DNA Immobilized on Gold(金上に固定化されたDNAの電気化学的定量)」Anal. Chem. 70:4670−77(1998)に記載されている(この論文は参照によりその全文が明示的に本明細書に組み入れられる)。この刊行物においてSteelらは、表面固定化DNAと相互作用する化学種としてのコバルト(III)トリスビピリジルおよびルテニウム(III)ヘキサアミン(ruthenium (III) hexaamine)の使用を記述している。
【0007】
汎用チップ
場合によっては、検出すべき特異的配列に相補的になるように設計された一組の固定化プローブを使って、各チップを、検出すべき配列に対して専用に製造しなければならないことが、チップ技術の欠点になる。単一生物に特異的なチップは大きな製造投資を必要とし、そのチップは狭く限定された範囲の試料にしか使用することができない。対照的に、「汎用チップ」または「汎用アレイ」は、プローブが生物特異的な配列または産物を標的としていないので、生物非依存的である。遺伝子発現解析にしばしば用いられる特定の組織、生理状態、または発生段階に特異的なチップも同様に、限定された範囲の試料に使用するために、かなりの製造投資を必要とする。汎用チップは、関心対象の組織、生理状態、または発生段階を研究するための制約のないアプローチを提供する。ポリヌクレオチド検出に汎用チップを用いることにより、製造品質管理を改善することができる。
【0008】
汎用チップ設計へのアプローチの一つでは、5、6、7、8、9、10ヌクレオチドまたはそれ以上の長さを持つオリゴヌクレオチドの考えうる配列を全て含む一組のオリゴヌクレオチドプローブをチップ表面に取り付ける。これらのアレイに必要なプローブは、簡単な組合せアルゴリズムを使って設計することができる。チップを、DNA、cDNA、RNAまたはハイブリダイズ可能な他の材料を含有しうる混合物と共にインキュベートし、既知の配列を持つ各プローブに対するハイブリダーゼションを測定する。しかしそのようなアレイの特異性は損なわれる場合がある。なぜなら、配列が異なると、ストリンジェントなハイブリダイゼーションのための要件も異なりうるからである。また、そのような汎用アレイではフレームシフトに起因する偽陽性が防止されない。例えば、6ヌクレオチド長のプローブを持つ汎用アレイの場合、試料ポリヌクレオチドの最後の4ヌクレオチドは、ある6ヌクレオチドプローブの相補的な最後の4ヌクレオチドにハイブリダイズしうるが、この試料ポリヌクレオチドはその6ヌクレオチドプローブ配列全体にはハイブリダイズしないだろう。
【0009】
Suyamaら(2000,Curr Comp Mol Biol 7:12−13)は、試料の遺伝子発現プロファイリングを行なうための汎用チップシステムを開示している。このチップシステムではプローブに対する転写物の結合に代えて「DNAコンピューティング」を利用する。SuyamaらのDNAコンピューティングシステムでは、汎用チップ上の一組の汎用固定化プローブに対するコード化されたアダプターの結合を測定することによって、どの転写物が存在するかを間接的に決定する。試料中に存在する転写物の一領域に相補的な領域を持つコード化されたアダプターだけが、その後の操作および処理ステップを受けて、汎用チップ上のプローブに結合する能力を持つアダプターを生成させることになる。
【0010】
タグ
汎用チップを製造するためのもう一つのアプローチでは、標的ポリヌクレオチド中に自然には存在しない一組のタグ配列を使用し、これらのタグが汎用チップ上の相補的プローブに結合する。そのような用途を持つタグは、時には「アドレスタグ」または「ジップコード」と呼ばれたり、標的を同定するための「バーコード」に類似しているとみなされたりする。そして、検出、同定、追跡、選別、回収、その他の操作は、標的ポリヌクレオチドの配列ではなく、タグ配列に対して行われる。オリゴヌクレオチドタグは、ポリヌクレオチドに共有結合させるか、ポリヌクレオチド中に組み込むことができる。少なくとも二つのドメイン(プローブに相補的なタグ配列を持つドメインと、標的ポリヌクレオチドの少なくとも一部に相補的な配列を持つドメイン)を持つことでリンカーとして機能する別個のオリゴヌクレチドのハイブリダイゼーションにより、タグは、あるポリヌクレオチドと関係づけられた状態になりうる。オリゴヌクレオチドタグを使用するシステムは、複雑な混合物中の個々の分子を操作し同定するための手段として、例えば標的ヌクレオチド配列を持つポリヌクレオチドを検出するための手段として、または薬物候補を求めてゲノムライブラリー、cDNAライブラリー、もしくはコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングする際の補助手段などとして、提案されている。BrennerおよびLerner,1992,Proc Natl Acad Sci,89:5381−5383、Alper,1994,Science,264:1399−1401、Needelsら,1993,Proc Nat Acad Sci,90:10700−10704。
【0011】
偽シグナル
タグ付きポリヌクレオチドの有用性は、あるタグと、表面に固定化されたその相補的プローブとの間で達成される特異的ハイブリダイゼーションの成功に大きく依存する。オリゴヌクレオチドタグによるポリヌクレオチドの同定を成功させるには、偽陽性シグナルおよび偽陰性シグナルの数を最小限に抑えるべきである。残念なことに、偽シグナルは珍しくない。なぜなら、塩基対形成および塩基スタッキングの自由エネルギーは、二重鎖構造または三重鎖構造をとっているヌクレオチド配列の間で、大きなばらつきを持ちうるからである。例えば、グアノシン−シトシン(G−C)対の数がもう一つの二重鎖と比べて相違しているタグ−プローブ二重鎖は異なる融点を有するので、ハイブリダイゼーションに関するストリンジェンシー要件も相違しているだろう。また、スタッキングエネルギーが相違するので、アデノシン(A)とチミジン(T)の反復配列がその相補鎖に結合しているものからなるタグ−プローブ二重鎖は、GとCの反復配列がミスマッチを含有する部分的に相補的な標的に結合しているものからなる同じ長さの二重鎖より、安定性が低いということも起こりうる。このようなスタッキングエネルギーの相違を埋め合わせるには、特殊な試薬がしばしば必要になる。
【0012】
偽シグナルは上述の「フレームシフト」にも起因しうる。この問題は、「無コンマ(comma−less)」コードを用いることによって対処されてきた。この無コンマコードは、その相補的タグに対して見当ずれ(フレームシフト)を起こしたプローブが、そのコドンのそれぞれについて一つ以上のミスマッチを持つ二重鎖をもたらし、それが不安定な二重鎖を形成させることを保証する。
【0013】
偽シグナルに関わる上記の問題を考慮して、十分なタグレパートリーを提供するが、それと同時に、自然の塩基対形成および塩基スタッキング自由エネルギー差を変化させるために特殊な試薬を使用したり、無コンマコード用のコード化システムを苦心して作ったりしなくても、偽陽性シグナルおよび偽陰性シグナルの発生を最小限に抑えるような、オリゴヌクレオチドに基づくさまざまなタグ付けシステムが、研究者によって開発されている。そのようなタグ付けシステムは、例えばコンビナトリアル化合物ライブラリーの構築および使用、DNAの大規模マッピングおよび配列決定、遺伝子による同定、および医学的診断など、多くの分野に応用される。
【0014】
Brennerらは、ポリヌクレオチド断片の末端に反応性部分を介してタグを取り付ける「汎用」チップシステムを開示している。このシステムでは、あるタグとそれとは別のタグに対する相補鎖との間に形成される任意のミスマッチ二重鎖またはミスマッチ三重鎖の安定性が、そのタグとそれ自身の相補鎖との間に形成される完全にマッチしたどの二重鎖よりも、はるかに低くなるような配列を持つ多サブユニットオリゴヌクレチドタグのレパートリーを設計することによって、偽シグナルが回避される。米国特許第5,604,097号、第5,654,413号、第5,846,719号、第5,863,722号、第6,140,489号、第6,150,516号、第6,172,214号、第6,172,218号、第6,352,828号、第6,235,475号。Morrisら(米国特許第6,458,530号、EP0799897)は、タグおよび相補的プローブのアレイを使って、細胞およびウイルスを含む組成物を標識し追跡すること、ならびに細胞およびウイルス表現型の解析を容易にすることを開示している。
【0015】
ある代替方法では、多成分タグ付けシステムであって、タグがポリヌクレオチドに取り付けられるではなく、所定のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを適合させ、インデックス化し、かつ/または検出するためにポリヌクレオチドにハイブリダイズさせる別個の成分上に、タグが見いだされるようなシステムを使用する。米国特許第6,261,782号ならびにその関連特許および関連出願(Lizardiら)に開示されている方法では、核酸切断試薬を使って「付着末端」を生成させ、さまざまな付着末端に相補的な末端を持つアダプター−インデクサー(adapter−indexer)オリゴヌクレオチドを試料に加えることで、切断されたポリヌクレオチド断片を何組かにインデックス化し、アダプター−インデクサーの付着末端に相補的な付着末端を持つライゲーター−ディテクター(ligator−detector)オリゴヌクレオチドを加え、試料全体を複数の検出子プローブとハイブリダイズさせ、ライゲーター−ディテクターを検出子プローブに共有結合させ、最後に、検出子プローブへのライゲーター−ディテクターのカップリングを検出することによって、試料中の標的ポリヌクレオチドを選別し、同定することを可能にする。
【0016】
汎用アレイ中の固定化捕捉プローブにハイブリダイズするドメインと標的を含有する分析物にハイブリダイズするドメインとを持つ二官能性リンカーを使用するもう一つの多成分システムが、Balchらによって米国特許第6,331,441号に開示されている。Balchらは、標的配列と、捕捉プローブに相補的なユニーク汎用配列との両方を含有するアンプリコンを生成させるための、標的ポリヌクレオチドの増幅も開示しており、このユニーク汎用配列は、PCRプライマーまたはLCRプライマーによって導入することができる(米国特許第6,331,441号)。
【0017】
既存の電流測定技術によって得られる感度よりも高い核酸検出感度を得ることが望ましい場合がある。例えば、標的鎖がプローブにハイブリダイズしているかどうかを識別することは、標的が試料中に極めて少量しか存在しない場合や、ハイブリダイゼーションに先だって標的を(PCRまたはRCAなどによって)増幅することが不可能もしくは非現実的である場合は特に、既存の技術では困難なことがある。したがって当技術分野では、増加した感度を持つ核酸検出方法が必要とされながらも、まだ満たされていない。
【発明の開示】
【0018】
本発明の一態様は、試料が標的ポリヌクレオチドを含有するかどうかを決定する方法であって、試料を、標的ポリヌクレオチド中の配列の少なくとも一部に相補的な捕捉プローブポリヌクレオチドを含有する検出ゾーンと、標的ポリヌクレオチドが捕捉プローブポリヌクレオチドにハイブリダイズすることを許す条件下で、接触させるステップ;捕捉プローブポリヌクレオチドにハイブリダイズしている任意の標的ポリヌクレオチドを延長するステップ;および試料中の標的ポリヌクレオチドの存在を示すシグナルであって、自らは消耗されずに複数のシグナルを生じさせることができる触媒的検出試薬によって生成されるシグナルが、生成しているかどうかを決定するステップ、を含む方法である。
【0019】
本発明のもう一つの態様は、試料が標的ポリヌクレオチドを含有するかどうかを決定する方法であって、試料を、標的ポリヌクレオチド中の配列の少なくとも一部に相補的な捕捉プローブポリヌクレオチドを含有する検出ゾーンと、標的ポリヌクレオチドが捕捉プローブポリヌクレオチドにハイブリダイズすることを許す条件下で、接触させるステップ;捕捉プローブポリヌクレオチドにハイブリダイズしている任意の標的ポリヌクレオチドに、第1ブリッジをハイブリダイズさせるステップ;および試料中の標的ポリヌクレオチドの存在を示すシグナルであって、自らは消耗されずに複数のシグナルを生じさせることができる触媒的検出試薬によって生成されるシグナルが、生成しているかどうかを決定するステップ、を含む方法である。
【0020】
本発明のさらにもう一つの態様は、試料が標的ポリヌクレオチドを含有するかどうかを決定する方法であって、試料を、標的ポリヌクレオチド中の配列の少なくとも一部に相補的な捕捉プローブポリヌクレオチドを含有する検出ゾーンと、標的ポリヌクレオチドが捕捉プローブポリヌクレオチドにハイブリダイズすることを許す条件下で、接触させるステップ;標的ポリヌクレオチドを第3ポリヌクレオチドにハイブリダイズさせるステップ;第3ポリヌクレオチドをプローブポリヌクレオチドにライゲートするステップ;および試料中の標的ポリヌクレオチドの存在を示すシグナルであって、自らは消耗されずに複数のシグナルを生じさせることができる触媒的検出試薬によって生成されるシグナルが、生成しているかどうかを決定するステップ、を含む方法である。
【0021】
本発明のさらなる態様は、試料中の標的ポリヌクレオチドの量を定量する方法であって、試料を、標的ポリヌクレオチド中の配列の少なくとも一部に相補的な捕捉プローブポリヌクレオチドを含有する検出ゾーンと、標的ポリヌクレオチドが捕捉プローブポリヌクレオチドにハイブリダイズすることを許す条件下で、接触させるステップ;捕捉プローブポリヌクレオチドにハイブリダイズしている任意の標的ポリヌクレオチドを延長するステップ;試料中の標的ポリヌクレオチドの存在を示すシグナルであって、自らは消耗されずに複数のシグナルを生じさせることができる触媒的検出試薬によって生成されるシグナルを、検出するステップ;およびシグナルのレベルに基づいて試料中に存在する標的ポリヌクレオチドの量を定量するステップ、を含む方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明は、概して、ある試料における特定配列を持つ標的核酸の存在を検出する方法に関する。本発明のいくつかの好ましい実施形態には、検出ゾーンにおけるポリヌクレオチドハイブリダイゼーションを使った標的核酸の検出が含まれる。いくつかの有利な実施形態では、そのような検出ゾーンが電極表面を含み、アッセイチップ上(好ましくは汎用アッセイチップ上)に設置される。
【0023】
いくつかの実施形態では、アッセイチップ上でのプローブ核酸への標的核酸のハイブリダイゼーションに起因する電気シグナル(電流または電圧など)を測定することによって、標的核酸が検出される。特定の実施形態では、検出試薬(例えば酸化または還元されうる薬剤)を、プローブ核酸にハイブリダイズさせた標的核酸と会合させることによって、電流を生成させることができる。いくつかの実施形態では、検出試薬が電子の移動に1回だけ参加する。しかし、いくつかの実施形態では、検出試薬が消耗されることなく酸化還元反応に繰り返し参加することができる。検出試薬が繰り返し参加できる場合、それを「触媒的」検出試薬と呼ぶことができる。いくつかの実施形態では、触媒的検出試薬が酵素などの酸化還元部分である。いくつかのさらなる実施形態では、ハイブリダイズした標的核酸のそれぞれに多くの検出剤を会合させることによって、および/または触媒的酸化/還元反応に参加する検出試薬を利用することによって、プローブへの標的核酸のハイブリダイゼーションに起因する電流の振幅を増加させる。
【0024】
いくつかの実施形態では、本方法は、標的と、静電的相互作用によって標的核酸と会合するポリアミン、他のカチオン性ペプチド、またはカチオン性ポリマーに連結した検出試薬(酸化還元部分など)との相互作用により、負に帯電した標的鎖の存在を検出することに基づく。別の実施形態では、本方法は、標的鎖を、追加プローブ、すなわち「検出子プローブ」(次にこれを酸化還元部分と連携させる)へのその配列特異的ハイブリダイゼーションに基づいて検出することに基づく。検出子プローブを「シグナルプローブ」と呼ぶ場合もある。検出子プローブと連携させる酸化還元部分の例は本明細書で論じる。
【0025】
核酸検出に役立つさまざまな技術および電子移動化学種は、WO2004/044549、2003年4月24日に出願された「UNIVERSAL TAG ASSAY(汎用タグアッセイ)」と題する米国特許出願第10/424,542号に開示されており、これらはどちらも参照によりその全文が本明細書に組み入れられる。さらなる実施形態は、2003年5月2日に出願された「ELECTROCHEMICAL METHOD TO MEASURE DNA ATTACHMENT TO AN ELECTRODE SURFACE IN THE PRESENCE OF MOLECULAR OXYGEN(分子状酸素の存在下で電極表面へのDNAの付着を測定するための電気化学的方法)」と題する米国特許出願10/429,291号、2003年5月2日に出願された「METHOD OF ELECTROCHEMICAL DETECTION OF SOMATIC CELL MUTATIONS(体細胞突然変異の電気化学的検出方法)」と題する米国特許出願第10/429,293号、および2004年8月23日に出願された同時係属中のPCT出願PCT/US2004/027412で議論されており、これらは全て参照によりその全文が本明細書に組み入れられる。
【0026】
特に、米国特許出願第10/429,293号では、標的鎖がプローブ鎖にハイブリダイズした後に標的鎖を伸長することによってシグナルを増強する方法が議論されており、この技術は「オンチップ増幅」と呼ばれることもある。この出願は線状オンチップ増幅および分岐状オンチップ増幅を開示している。
【0027】
フルオレセインおよびセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)の使用を含む他のさまざまな核酸検出技術が米国特許第6,391,558号(Henkensら)に開示されており、この文献は参照によりその全文が明示的に本明細書に組み入れられる。
【0028】
本発明のいくつかの好ましい実施形態には、検出ゾーンにおけるポリヌクレオチドハイブリダイゼーションの検出が含まれる。一般に、検出ゾーンはアッセイチップ上に設置され、ハイブリダイゼーションの検出は、酸化還元反応によって生成する電流を検出することによって行なわれるだろう。多くの有利な実施形態の基礎となる理論は、プローブと標的との間にハイブリダイゼーションが起こった場合にのみ、酸化還元反応が起こること、または酸化還元反応の程度が強くなることである。
【0029】
通例、この技術を実行する際には、関心対象の配列に相補的な複数の核酸プローブを使用する。汎用チップを使用する場合は、核酸プローブが、標的鎖に取り付けられたタグに相補的な配列を含有するだろう。また、その標的鎖は関心対象の配列も含有する。したがって、試料中の配列を検出するとは、生物学的試料からの天然配列またはネイティブ配列を直接検出することを指すか、または処理された試料(この場合、処理された試料は生物学的試料に由来する配列を改変するか生物学的試料に由来する配列に付加することによって作製される)中の何らかの他の配列(タグ配列など)を検出することを指しうる。
【0030】
一定の好ましい実施形態では、プローブの長さは約10〜25塩基対の範囲にあり、約17塩基対の長さが最も好ましい。好ましくは、プローブ鎖は検出ゾーン内に位置する。特に好ましい実施形態では、検出ゾーンが、液体媒質と接触している電極などの表面を含み、プローブ鎖はその表面上に、プローブ鎖もまたその液体媒質と接触するような形で固定化される。好ましくは、表面は、電極への核酸プローブ鎖の取り付けが容易になるようにアビジンまたはストレプトアビジンなどのタンパク質層で被覆される金電極または炭素電極である。このタンパク質層は、イオンまたは他の電子移動化学種が液体媒質から電極へと通過でき、そしてその逆も起こりうるように、多孔性を示すべきである。プローブ鎖をアビジン層に取り付ける際には、まずプローブ鎖をビオチン複合体に共有結合し、次にそのビオチンをアビジンに付着させることが好ましい。もう一つの選択肢として、例えば金電極に核酸を共有結合させるためにチオール結合を使用することなどにより、プローブ鎖を表面に直接取り付けることもできる。炭素電極または他の任意の適切な導体の電極も使用することができる。
【0031】
この技術をさらに実行するにあたって、プローブに対して検査すべき核酸試料は、当業者に知られている任意の適切な方法でプローブと接触させることができる。例えば、試料は複数の標的鎖を含みうる。標的鎖を上述の液体媒質に導入し、固定化プローブと混じり合わせることができる。標的鎖がプローブ鎖の一領域に相補的な領域を含有する場合は、ハイブリダイゼーションが起こりうる。
【0032】
好ましくは、各プローブ鎖が標的鎖と相互作用してハイブリダイゼーションに参加する機会が最大になるように、標的鎖の数はプローブ鎖の数を超える。しかし、いくつかの実施形態では、標的鎖の数が比較的少数になるだろう。そのような実施形態には、特定の標的を単離または増幅することが不可能であるか、非現実的であるか、望ましくないアッセイが含まれる。細菌またはウイルスなどの病原体の存在を検出する場合は、そうであることが多い。
【0033】
どの標的鎖も関心対象の配列を含有しない場合は、固定化プローブと導入した標的との間には、一般に、ハイブリダイゼーションはほとんど、または全く起こらないだろう。しかし、標的鎖が関心対象の配列(または汎用チップを使用している場合は適切なタグ)を含有する場合は、それがプローブ鎖に結合しうる。1以上のハイブリダイゼーション事象が起こった後は、そのハイブリダイゼーションを検出するために使用できる技術が数種類ある。
【0034】
いくつかの技術では、酸化還元反応に参加する能力を持つ部分を、ハイブリダイズしたDNAと静電引力によって会合するように導入することができる。別の技術では、酸化還元反応に参加する能力を持つ部分を、配列特異的検出子プローブを使って導入することができる。検出子プローブは一般に、標的鎖の一領域に相補的な領域を含有する核酸鎖であり、検出子プローブと酸化還元反応に参加する能力を持つ部分との間で相互作用が可能であるような形で、1以上の部分にカップリングされる。いくつかの好ましい実施態様では、検出子プローブがフルオレセイン分子に連結され、酸化還元部分がHRPであり、そしてまたそれはフルオレセインに結合する能力を持つフルオレセイン抗体にコンジュゲートされる。もう一つの選択肢として、ストレプトアビジンまたはアビジンHRPコンジュゲートに結合するビオチン部分に、検出子プローブを連結することができる。さらに、HRP以外の酵素を酸化還元部分として用いることができる。そのような酵素には、例えばグルコースオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、および他のペルオキシダーゼ、例えば熱安定性大豆ペルオキシダーゼおよびミクロペルオキシダーゼなどがある。
【0035】
さらに、本発明のいくつかの実施形態は、以下のステップの任意の組合せを含みうる:特定の配列を持つ第1核酸を試料が含有するまたは含有すると疑われるような患者試料源または環境試料源から生物学的試料を抽出するステップ;生物学的試料から第1核酸を精製または単離するステップ;ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)またはローリングサークル増幅(rolling circle amplification:RCA)などの技術を使って第1核酸を増幅するステップ;一本鎖型の第1核酸(またはその増幅産物)を単離するステップ;第1核酸を伸長または他の方法により拡張する目的で、第2核酸を環化させるステップステップ;第2核酸を伸長または他の方法により拡張するステップ;上記核酸の1以上をハイブリダイゼーションが可能なアッセイ環境に導入するステップ;相補性の度合いに基づいて、一部の核酸はハイブリダイズし、他の核酸はハイブリダイズしないように、ハイブリダイゼーションストリンジェンシーを制御するステップ;ハイブリダイズした核酸の1以上をチップ上で増幅するステップ;およびハイブリダイゼーションを、好ましくは触媒的酸化還元部分を使って、検出するステップ。
【0036】
ハイブリダイズした核酸のシグナルを増強するために一定の技術を使用できることを発見した。これらの技術は、試料中に少量のDNAが存在するアッセイでは特に有用であることがわかった。例えば、この技術は感染性疾患を検出するためのアッセイに特に有用である。なぜなら、被疑病原体から利用できる核酸の量は通例、抽出される試料と比較して極めて少ないからである。ハイブリダイズした核酸のシグナルを増強するのに特に有用な技術には、触媒的検出およびオンチップ増幅が含まれる。本発明の技術は、場合によっては、1〜10分子の量しかない試料中の核酸を検出することができる。
【0037】
触媒的検出
いくつかの実施形態には、電極表面でそれ自体が電子移動を起こす対イオン(例えばルテニウム錯体)の代わりに触媒的検出部分を使用することが含まれる。触媒的検出スキームでは、通例、酸化/還元を起こすことができる2以上の部分が存在し、それらの少なくとも一つは1サイクルを超える酸化還元サイクルに参加することができる。これらの部分の一部はこのようにして「再利用」されるので、検出可能なシグナルは、それらの部分の全てが1回の酸化還元サイクルしか起こさない場合よりも、大きくなるだろう。いくつかの実施形態では、触媒的検出部分が、自らは消耗されることなく数多くの酸化/還元サイクルに参加することができる酵素である。
【0038】
いくつかの好ましい実施形態では、電子移動スキームに、過酸化水素から水への酸化還元変換を利用する。そのような実施形態では、この反応を触媒するためにセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)などのペルオキシダーゼを使用することが有利である。HRPは、その安定性、高い回転率、および高感度電気化学媒介物質の入手しやすさゆえに、好ましい検出試薬である。ホスファターゼ、ミクロペルオキシダーゼを含む他のペルオキシダーゼ、およびオキシダーゼなどの他の酵素も、この目的に使用することができる。特に好ましい実施形態では、HRPを使った電気化学的検出が、以下のように進行する。:
HRPR+H2O2+2H+→HRPO+2H2O
HRPO+MedR→HRPR+MedO
MedO+ne−→MedR
【0039】
上記の反応において、下付き文字Rは、ある化学種がその還元型であることを示し、下付き文字Oは酸化型を示す。
【0040】
上記の第1ステップでは、還元状態にあるHRPが過酸化水素と水素との反応に電子を供給して水を生じさせ、酸化状態のHRPが残る。次のステップでは、酸化状態にあるHRPが、電極表面から酵素へと電子を往復輸送することができる電子移動媒介物質(Medと表記)から電子を受け取る。好ましい媒介物質には、テトラメチルベンジジン(TMB)およびフェロセン誘導体が含まれる。第3ステップでは、移動媒介物質が電極表面から電子を受け取る。この特定例では、電子が電極から移動媒介物質、酵素を経て、最終的に水分子に至る。水の形成は基本的に、HRPにおける電子不足が電子移動を誘発し、電極を通る検出可能な電流を生み出すように、反応を駆り立てる。
【0041】
図1に、H2O2から水への変換においてHRPおよびTMBを用いる触媒サイクルを示す。HRPの代わりに他の酵素、特に他のペルオキシダーゼを使用できること、およびTMBの代わりに他の電子移動媒介物質を使用できることは、当業者には理解されるだろう。
【0042】
検出可能な酸化還元プロセスがハイブリダイゼーション事象の信頼できる指示薬として役立つように、ペルオキシダーゼなどの酵素を、ハイブリダイズした核酸に会合させるために使用することができる特に有用な技術が、二つある(それぞれ図2Aおよび2Bに示す)。
【0043】
これらのうち第1の技術の一例を図2Aに示す。図示するように、電極表面10は固定化捕捉プローブ20を含有する。標的核酸鎖22を捕捉プローブ20にハイブリダイズさせる。捕捉プローブ20および標的鎖22の両方の核酸鎖に会合した複数の酸化還元部分24が示されている。いくつかの実施形態では、酸化還元部分24がHRPなどの酵素である。酸化還元部分は酵素コンジュゲートであってもよい。これは、核酸と会合させる目的でアッセイに導入する前に、ある酵素が別の化学種にコンジュゲートされることを意味する。一定の有利な実施形態では、酵素がポリアミン、カチオン性ペプチド、またはカチオン性ポリマーにコンジュゲートされる。スペルミジンまたはスペルミンなどのポリアミンは、過ヨウ素酸カップリング化学またはグルタルアルデヒドによるコンジュゲーションを含むさまざまなコンジュゲーションスキームによって、HRPにコンジュゲートすることができる。有用なカチオン性ペプチドとして、ポリリジンおよびポリアルギニンが挙げられる。カチオン性ポリマー、例えばアミン基を含有するものなども、使用することができる。いくつかの実施形態では、コンジュゲーションがEDC促進(EDC−facilitated)コンジュゲーションを使って達成される。これは、例えばHermanson,Greg T.「Bioconjugate Techniques」(1996,Acadmic Press,サンディエゴ)の420〜435頁などに記載されており、その全文は参照により明示的に本明細書に組み入れられる。酵素の上にまたは酵素にカップリングされる部分の上にカチオン電荷を置く技術は、当技術分野では他にも種々知られており、それらも使用することができる。
【0044】
次に、カチオン性酵素コンジュゲートは、標的の負に帯電したリン酸エステル主鎖と会合することができる。次に、酵素によって触媒される反応が電流を生成し、その電流を、試料中に標的核酸が存在するしるしとして測定することができる。いくつかの好ましい実施形態では、酵素がHRPであり、反応が、水を生じる過酸化水素と水素との反応である。いくつかの好ましい実施形態では、DNA標的またはRNA標的をまず、電極表面上に固定化されている捕捉プローブにハイブリダイズさせる。次に、ポリアミン−HRPコンジュゲートを溶解した状態で提供することにより、標的に結合させる。未結合のHRPを洗浄した後、電極を電気化学モニターに接続する。H2O2と媒介物質がどちらも十分な濃度で存在する場合は、固定電位で強い触媒電流が表面固定化HRPから生じる。生成する電流は表面固定化HRPの量に比例し、結果として、標的中のヌクレオチド塩基数に比例する。
【0045】
代替的方法として、第2の検出方法の一例を図2Bに示す。ここでは、電極表面10が、ハイブリダイズした標的鎖22を持つ固定化捕捉プローブ20を含有している。追加の核酸検出子プローブ30は、標的鎖22に(好ましくは標的鎖の増幅された領域で)ハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、試料由来の標的鎖を捕捉プローブに直接ハイブリダイズさせる。別の実施形態では、試料中の標的鎖を増幅し、その結果得られた増幅産物を捕捉プローブにハイブリダイズさせる。そしてまた、検出子プローブ30はハプテン32で標識され、そのハプテンには、酸化還元部分24に連結された抗体34が結合しうる。数多くの適切なハプテンを使用することができる。好ましいハプテンの例はフルオレセイン、ジゴキシゲニン、またはビオチンであり、その場合、対応する抗体は、それぞれフルオレセイン抗体、ジゴキシゲニン抗体、またはビオチン抗体であるだろう。もう一つの選択肢として、ビオチンをハプテンとして使用する場合は、アビジンまたはアビジン類似体を、そのビオチンへの結合親和性ゆえに、抗体の代替物として使用することができる。抗体32は、適当な酸化還元部分24、例えばHRPのような酵素に連結することが有利である。いくつかの実施形態では、抗体をアビジン−HRPコンストラクトに連結することができる。単一の標的に結合することができる複数の検出子プローブを使用することが、一般に有利である。ハイブリダイゼーションの検出は、ここでも、HRPなどの酸化還元部分の存在による触媒的電流に基づく。電流は酸化還元部分の存在量に比例し、その存在量は、捕捉された標的にハイブリダイズした検出子プローブの数に比例する。いくつかの実施形態では、酵素−抗体複合体が付着しうる部位を各検出子プローブが複数含有することで、電気シグナルをさらに増強することができる。
【0046】
このタイプの触媒的検出は一般にさまざまな利点を示す。例えば、定量分析に関して、感度および検出限界が有意に改善されうる。各標的分子が1つの検出試薬で標識される他の大部分の検出方法とは異なり、高感度酵素触媒電気化学反応による1標的分子あたり複数ラベルの検出が可能である。
【0047】
さらに、本発明のいくつかの実施形態は、以前の技術よりも低い検出ノイズレベルを特徴とする。メチルホスホネートDNAまたはPNAなどの非荷電捕捉プローブを使用すると、電流検出範囲は約0ナノアンペア〜100マイクロアンペアになりうる。非荷電捕捉プローブは同時係属中の米国特許出願第10/429291号および第10/429293号に詳述されており、その全文は参照により明示的に本明細書に組み入れられる。
【0048】
また、触媒的検出技術を用いることによって、反応時間を短縮し、アッセイを単純化することができる。
【0049】
オンチップ増幅
チップなどの基板上にある核酸二重鎖のシグナルを増強するためのもう一つの技術は、捕捉プローブへのハイブリダイゼーション後に標的核酸を増幅または延長することである。次に、増幅または延長された標的核酸を検出試薬に結合させることができる。好ましくは、ハイブリダイズしていない捕捉プローブでの電流と、プローブ/標的二重鎖での電流との差が、できる限り大きくなるように、標的鎖を伸長する。この技術は「オンチップ増幅」と呼ぶことができ、米国特許出願第10/429293号に開示されている(この出願は参照によりその全文が明示的に本明細書に組み入れられる)。
【0050】
さまざまなオンチップ増幅法を使用することができる。オンチップ増幅の一方法を図3Aに図示する。この場合、ハイブリダイズした標的鎖の3’末端または5’末端を、電極上のDNA量を増大させる頭尾(head−to−tail)重合の標的にすることができる。通例、ここに示すように(固定化プローブおよび標的鎖は数えないで)3つの異なるオリゴヌクレオチドが使用されるだろう。すなわち、第1オリゴマーは、ハイブリダイズした標的鎖の3’末端に相補的であり(プライマー配列の相補鎖を標的とする)、その5’末端に配列Aを含有する。第2オリゴマーは、5’−A*B−3’という配列を持つ(ここにA*はAに対して相補的である)。第3オリゴヌクレオチドは5’−AB*−3’という配列を持つ。図3Aに図示するように、これらのオリゴマーは示したとおりのポリマー産物を形成することができる。頭尾重合は鎖が所望の長さに達するまで続けることができる。一般に、頭尾重合を行なう場合、最終的なポリヌクレオチドの長さは、一つには、頭尾オリゴマーの競合する環化反応によって制限される。しかし一般的には、液体媒質中の頭尾オリゴマーの濃度が高いほど、電極に取り付けられる線状ポリマーは長くなるだろう。
【0051】
オンチップ増幅のもう一つの方法を図3Bに図示する。この方法ではローリングサークル増幅(RCA)を用いる。好ましくは、試料由来の結合した標的核酸またはそこから生じさせた増幅産物もしくは伸長産物の3’末端に相補的な領域を持つ前形成のサークル(約40〜300ヌクレオチド)を、捕捉プローブにハイブリダイズさせた標的核酸またはそこから生じさせた増幅産物もしくは伸長産物にハイブリダイズさせる。次に、RCAが起こって、試料由来の結合した標的核酸またはそこから生じさせた増幅産物もしくは伸長産物が伸長されるように、連続移動性(processive)DNAポリメラーゼを加えることができる。好ましくは、試料由来の標的核酸を、約10〜10,000コピーのサークルによって伸長させる。次に、検出試薬をRCA産物に結合させる。
【0052】
オンチップ増幅のためのさらにもう一つの技術を図3Cに図示する。この技術は「ブリッジ(bridge)」増幅または「分岐(branch)」増幅と呼ぶことができる。というのも「ブリッジ化(bridging)」と「分岐化(branching)」は、この文脈では同義だからである。この方法では、試料由来の標的核酸またはそこから生じさせた増幅産物または伸長産物を、捕捉プローブにハイブリダイズさせる。第1前形成サークルを試料由来の標的核酸またはそこから生じさせた増幅産物もしくは伸長産物にハイブリダイズさせ、RCAを行なって第1RCA産物を生じさせる。第1RCA産物中の配列に相補的な配列と第2前形成サークル中の配列に相補的な配列とを含むブリッジ核酸を用意する。ブリッジ核酸を第1RCA産物にハイブリダイズさせ、第2前形成サークルを使って第2RCA手続きを行なうことにより、第2RCA産物を生じさせる。次に、検出試薬を、試料由来の標的核酸またはそこから生じさせた増幅産物もしくは伸長産物、第1RCA産物、ブリッジ核酸、第2RCA産物、あるいは先に挙げた核酸の任意の2以上に結合させる。所望であれば、第1RCA手続きおよび/または第2RCA手続きを頭尾重合または他の伸長手続きで置き換えうることは、理解されるだろう。また、ローリングサークル増幅に前形成のサークルを使用するのではなく、標的核酸またはそこから生じさせた増幅産物もしくは伸長産物あるいはブリッジ核酸にハイブリダイズする配列を各末端に含有する線状分子を、ハイブリダイゼーション後に環化させて、RCA用の環状テンプレート生成させうることも理解されるだろう。
【0053】
さらに、ブリッジ増幅技術を使用する場合は、「超ブリッジ化(hyperbridging)」または「超分岐化(hyperbranching)」と呼ばれる技術を使って分岐化の程度を増加させることが有利になりうる。超ブリッジ化の一例を図3Dに示す。ここでは、第2RCA産物中の配列に相補的な配列と第3前形成サークル中の配列に相補的な配列とを含む第2ブリッジ核酸が用意される。第2ブリッジ核酸を第2RCA産物にハイブリダイズさせ、第3前形成サークルを使って第3RCA手続きを行なうことにより、第3RCA産物を生じさせる。次に、検出試薬を、試料由来の標的核酸またはそこから生じさせた増幅産物もしくは伸長産物、第1RCA産物、第1ブリッジ核酸、第2RCA産物、第2ブリッジ核酸、第3RCA産物、あるいは先に挙げた核酸の任意の2以上に結合させる。所望であれば、第1RCA手続き、第2RCA手続き、第3RCA手続き、またはそれらの任意の組合せを、頭尾重合または他の伸長手続きで置き換えうることは、理解されるだろう。また、RCA手続きのいずれかに前形成のサークルを使用するのではなく、標的核酸またはそこから生じさせた増幅産物もしくは伸長産物、第1ブリッジ核酸、あるいは第2ブリッジ核酸にハイブリダイズする配列を各末端に含有する線状分子を、ハイブリダイゼーション後に環化させて、RCA用の環状テンプレート生成させうることも理解されるだろう。
【0054】
ローリングサークル増幅または頭尾重合などの伸長技術を、超ブリッジ化プロセスと一緒に使用することが、一般に有利である。伸長は一般に、ハイブリダイズした核酸をハイブリダイズしていない核酸と識別しやすくするために、電気化学的に検出することができる核酸材料を付加する目的を満たすが、このプロセスは、核酸が長いほど追加のブリッジを付加することができる位置が多くなるという点でも有益でありうる。
【0055】
ブリッジ化および超ブリッジ化は、核酸の存在量を指数的に増加させることができるので、とりわけ有用な技術になりうる。ブリッジ化技術および超ブリッジ化技術のさらなる議論は、例えばUrdea,Biotechnology 12:926(1994)、Hornら,Nucleic Acids Res. 25(23):4835−4841(1997)、Lizardiら,Nature Genetics 19,225−232(1998)、Kingsmoreら(米国特許第6,291,187号)、Lizardiら(PCT出願WO97/19193)などに見いだすことができ、これらは全て参照により本明細書に組み入れられる。
【0056】
オンチップ増幅を含むアッセイを行なう場合は、ブリッジ化ステップを使ってまたはブリッジ化ステップを使わずに、ハイブリダイゼーションを検出することができる。ハイブリダイズした核酸にHRPを会合させるために検出プローブを使用すると仮定すると、以下の2つの例は、ブリッジ化を特徴としないアッセイおよびブリッジ化を特徴とするアッセイにおいて取られうるステップを、それぞれ略述するものである。
【0057】
ブリッジ化を用いない方法は、一般に以下のステップを含む:1)標的をプローブに結合させる;2)(随意)ライゲーションにより特異性を決定する;3)結合した標的上でRCAを行なう;4)フルオレセインなどのエピトープを含有する検出プローブを加える;抗体がエピトープに結合することができるような形で酸化還元部分に連結された抗体を加える;5)酸化還元部分の存在に関係する酸化還元活性を検出する。
【0058】
ブリッジ化ステップを特徴とする方法は、一般に以下のステップを含む:1)標的をプローブに結合させる;2)(随意)ライゲーションにより特異性を決定する;3)結合した標的上でRCAを行なう;4)ブリッジ核酸および第2サークルを加える;5)ブリッジでRCAを行なう;6)RCA産物にハイブリダイズする検出子プローブであって、フルオレセインなどのエピトープを含有するものを加える;7)エピトープに結合することができるような形で酸化還元部分に連結された抗体を加える;8)酸化還元部分の存在に関係する酸化還元活性を検出する。
【0059】
オンチップ増幅を行なった後、増加したDNA量は、より大きくより検出しやすいシグナルを生成することができる。これはアッセイ目的には有利でありうる。なぜなら、プローブと標的の両方が通例、何らかの検出可能シグナルを生じるからである。標的のシグナルが増強されると、ハイブリダイズした捕捉プローブとハイブリダイズしていない捕捉プローブとの相違が大きくなるだろう。しかし、場合によっては、メチルホスホネートおよびPNAなどの核酸類似体を捕捉プローブとして使用することができる。別の実施形態では、メチルホスホネートおよびPNAなどの核酸類似体を、検出子プローブとして使用することができる。
【0060】
したがって、核酸のオンチップ増幅は、ハイブリダイズした標的のシグナルを増強するのに有用な技術の一つである。オンチップ増幅は単独で使用するか、触媒的検出などの他のシグナル増強技術と一緒に使用することができる。したがって、いくつかの好ましい実施形態は、以下のステップを含む:(1)電極表面上に固定化した捕捉プローブに標的をハイブリダイズさせるステップ;(2)高い連続移動性および鎖置換能を持つポリメラーゼを使ってオンチップローリングサークル増幅を行なうステップ;(3)チップ上の増幅産物に検出子プローブを結合させるステップ;および(4)高い電気化学反応性を持つ酵素から生成される触媒的シグナルを検出するステップ。
【0061】
オンチップ増幅とHRPによる触媒的検出との両方を使って直接病原体検出を行なうためのシグナル増幅を、図4に図解する。基板8上に位置する2つの電極表面10Aおよび10Bが示されている。捕捉プローブ20Aおよび20B(異なる配列を持つもの)がそれぞれ電極表面10Aおよび10Bに固定化される。標的鎖22がアッセイに導入される。この標的22は捕捉プローブ20Aに相補的であるが、捕捉プローブ20Bには相補的でない。したがって標的22は捕捉プローブ20Aにハイブリダイズするが、20Bにはハイブリダイズしない。標的22がハイブリダイズすると、それはオンチップ増幅によって伸長され、その結果伸長した部分はオンチップRCA産物23と呼ぶことができる。次に、複数の酸化還元部分24がアッセイに導入される。これらの部分はカチオン電荷を含有し、核酸のリン酸基と静電的に会合する。酸化還元部分は捕捉プローブ20Aおよび20B、標的鎖22、およびRCA産物23と会合する。複数の酸化還元反応28が各酸化還元部分で起こる。これらの酸化還元反応は電子の移動を含み、それは、電子が電極10Aおよび10Bを通過する際に電流を生成する。10A電極における反応量は10B電極における反応量を超えるので、10A電極における検出可能な電気シグナルの方が大きくなる。これは、20A捕捉プローブが標的22に相補的であり、かつ捕捉プローブ20Bは標的22に相補的でないと、アッセイ使用者が結論できるということを意味する。
【0062】
RCAおよびシグナル結合のスキームを図5に示す。この実例では、存在するDNAをさらに増加させ、シグナルを増強するために、分岐化(「ブリッジ化」ともいう)が用いられる。ここでは捕捉プローブ10が電極表面10に固定化される。次に、第1サークル50をプローブ20に(捕捉プローブ10上の「P2」がサークル50上の「C2」に相補的である区域で)ハイブリダイズさせる。ハイブリダイゼーション後にRCAが進行して、固定化された捕捉プローブ20から伸びる第1RCA産物23Aが生成する。次に、ブリッジ60を第1RCA産物23Aにハイブリダイズさせる(第1RCA産物23Aの「Pt」領域はブリッジ60の「Ct」領域に相補的である)。次に、第1サークル50Bがブリッジ60にハイブリダイズする(ブリッジ60の「Px16」領域は、第2サークル50Bの「Cx16」領域に相補的である)。次に、第2サークル50Bがブリッジ60にハイブリダイズした場所でRCAが進行して、第2RCA産物23Bが生成する。次に、検出子プローブ30が第2RCA産物23Bにハイブリダイズする。検出子プローブ30に取り付けられたフルオレセイン(FL)が示されており、そのフルオレセインにはHRPが(例えば抗体複合体によって)カップリングされる。その場合、HRPは酸化還元反応に参加して、電極10で検出可能な電子の流れを誘発することができる。核酸配列も記載する。
【0063】
いくつかの実施形態では、オスターヤング矩形波ボルタンメトリー(OSWV)を使って、RCAによるシグナル増幅を記録することができる。この技術を使った場合、非サークル対照は−200mVの電圧で約0.050μAの電流を生成することが観察された(「非サークル」対照では、ハイブリダイゼーション後にRCAが起こらない)。非相補対照捕捉プローブ(配列65.5)も、−200mVの電圧で約0.05μAの電流を生じることが観察された(「非相補」対照では、標的が捕捉プローブに相補的でなく、したがってハイブリダイズしない)。しかし、ハイブリダイズし、RCAによる増幅を受けた標的は、−200mVの電圧で約0.450μAの電流を生成した。
【0064】
固定化プローブのin−situライゲーションを用いる代替的伸長方法の一例を図6に示す。図示するように、捕捉プローブ20を電極10上に固定化し、固定化プローブの遊離端を超えて伸びる領域を持つ相補的標的22を、捕捉プローブ20にハイブリダイズさせる。次に、標的22のうち捕捉プローブ30を超えて伸びている区間に相補的な領域を持つ第3ポリヌクレオチド80を、ハイブリダイズした標的22にハイブリダイズさせる。次に、第3ポリヌクレオチド80を固定化捕捉プローブ30にライゲートする。これを達成するために、第3ポリヌクレオイド80は、標的22がプローブ20に相補的である領域の直ぐ隣に位置する標的22中の配列に、ハイブリダイズしうる。もう一つの選択肢として、プローブ20に相補的な標的配列と第3ポリヌクレオチド80に相補的な標的配列との間にはギャップが存在してもよい。ギャップが存在する実施形態では、ライゲーションに先だってポリメラーゼを使ってギャップを埋めることができる。第3ポリヌクレオチド80を例えばローリングサークル増幅などによって延長すると有利である。また、多くの実施形態では、固定化された核酸にブリッジ60をハイブリダイズさせることも有利である。これらのブリッジの伸長は、電極上に固定化された核酸の量をさらに増強する。次に、図6に示すように、遷移金属錯体(例えばルテニウム錯体)または酵素(例えばHRP)などの酸化還元部分24が、最初に起こったプローブ/標的ハイブリダイゼーションの指示薬として、核酸と会合しうる。
【0065】
病原体検出の一例を図7に示す。ここでは、病原体由来の標的ヌクレオチド22が固定化プローブ20にハイブリダイズし、ブリッジ60が標的22に取り付けられ、ブリッジ60がローリングサークル増幅によって伸長されることにより、RCA産物23が作られる。この例では、酸化還元部分24がブリッジ60およびRCA産物23とだけ会合する。これは病原体検出において有利である。なぜなら、検出に利用できる標的の量は非常に少ない場合が多いからである。酸化還元部分24がプローブ20および標的22と会合するのを防ぐような形でのアッセイの調製は、荷電主鎖を含有しないホスホネートおよびPNAなどの核酸類似体を用いることによって達成することができる。この技術は、核酸ハイブリダイゼーションが起こっていない電極での電子移動が引き起こす背景ノイズを最小限に抑えることにより、真の陽性結果を、比較上はるかに顕著にするために使用することができる。
【実施例】
【0066】
実施例1:オンチップ増幅、ブリッジ化、および触媒的検出を用いる核酸アッセイ
以下のプロセスを核酸検出アッセイに使用した。
【0067】
NeutrAvidin(Pierce Biotechnology, Inc.から入手可能な脱グリコシル化型アビジン)で修飾した電極表面にビオチン化捕捉プローブを固定化した。この固定化捕捉プローブはDNA伸長のプライマーとしても役だった。
【0068】
電極表面に固定化された捕捉プローブに、環状58マーDNA(サークル1)をハイブリダイズさせた。ローリングサークル増幅(RCA)によるプライマー伸長を、Bst DNAポリメラーゼおよび他の必要な化学薬品の存在下で開始させた。RCAの作用により、dNTPsが、前記サークルの何千もの反復コピーから構成される一本鎖コンカテマーDNA分子に変換された。使用したサークルの量は極めて少なく、数百〜数千DNA分子の範囲だった。
【0069】
ステップ2におけるRCA産物と第2環状DNA(サークル2)の間をブリッジするもう一つのDNA分子を、ステップ2で生成したコンカテマーDNA分子にハイブリダイズさせた。次に第2環状DNAを、そのブリッジDNA分子にハイブリダイズさせた。RCA反応を再び行なった。この第2RCA反応は分岐DNAをもたらした。したがって逐次的なRCAによるシグナル増幅は指数的である。
【0070】
RCAによって生じた分岐DNAの一部に相補的でありかつ2つのフルオレセイン分子で修飾されている15マーDNA分子を、分岐DNAにハイブリダイズさせた。次に、検出子プローブとして役立つように、その15マーフルオレセイン修飾DNAに、抗フルオレセインPODを結合させた。
【0071】
サークル1の検出は、TMBを媒介物質として、PODによるH2O2の水への還元によって行なった。読出しは定常状態電流−時間曲線である。極めて低濃度のサークル1の存在下での電流応答は、サークル不在下での電流応答より数倍大きかった。
【0072】
実施例2:オンチップ増幅、ブリッジ化、および触媒的検出を用いる代替的核酸アッセイ
電極表面上に固定化したアビジンによって固定化された捕捉プローブは、標的に相補的な配列を含有する。次に、試料核酸をプローブにハイブリダイズさせる。標的内の配列に相補的な配列を含有する環状プローブを加える。このサークルは、後続のステップで使用する検出子プローブに相補的な特異的配列も含有する。
【0073】
好ましくは100ntより小さいサイズを持つこのサークルは、まず、電極上に固定化したプローブにハイブリダイズさせた標的核酸に結合する。ポリメラーゼ酵素の存在下で、標的核酸をプライマーとして、サークル配列は一定温度で複数回コピーされる。その結果、検出子プローブに相補的である複数コピーの配列を含むサークルの配列に相補的な複数の反復配列を含有する表面固定化伸長DNA分子が得られる。オンチップRCA用の好ましいDNAポリメラーゼには、高い連続移動性および強い鎖置換特徴を持つもの、例えばΦ29 DNAポリメラーゼ、Bst DNAポリメラーゼ、大腸菌DNAポリメラーゼの大(クレノウ)フラグメント、およびシークエナーゼなどがある。
【0074】
洗浄後に、伸長されたDNA産物を、RCA産物の一部に相補的なハプテン標識検出子プローブにハイブリダイズさせる。次に、フルオレセインまたはジゴキシギニン(Digoxiginin)などのハプテンが抗体−HRPコンジュゲートに結合し、電子移動媒介物質および過酸化水素の存在下で、酵素的電子移動反応により、触媒的電流を生成する。
【0075】
あるいは、上述のように検出子プローブをRCA産物にハイブリダイズさせるのではなく、以下のように第2RCA産物を生成させる。この実施形態では、RCA産物の一部に相補的なヌクレオチド配列および第2環状プローブに相補的な核酸配列を含む線状ブリッジ核酸を、そのブリッジ核酸が第1サークルからの増幅産物をその5’末端で、そして第2サークルをその3’末端でブリッジするように、RCA産物にハイブリダイズさせる。RCA時に、第1サークルは第1サークルの相補配列の繰り返しを複数含有する線状DNA産物を生成し、一方、第2サークルは第2RCA産物を生成する。結果として、数百万倍〜数十億倍の増幅が一定温度で数時間のうちに達成され、DNA標的の高感度な検出が可能になる。増幅後に、両サークルから生成したDNA産物中に存在する反復配列に、検出子プローブを結合させる。最後に、抗Fl−HRPコンジュゲートが検出子プローブに結合し、触媒的電気化学的検出により、シグナルがさらに増幅される。
【0076】
手続きを簡単にするために検出子プローブを増幅溶液中に加えることもできる。
【0077】
実施例3:パッドロック(padlock)プローブサークルの使用
パッドロックプローブサークル(PLPC)を以下の核酸検出アッセイで抗フルオレセイン−HRPコンジュゲートと共に使用した。
【0078】
FV−PLP 75.03(PLPC,配列番号13)の250nM試料を使って、1:100、1:1000、および1:10,000の希釈液を調製した。捕捉プローブ(65.4)(配列番号26)をチップ上に固定化した後、各希釈度のサークルを捕捉プローブに37℃で15分間結合させた。次に、結合したサークルを利用するオンチップRCA反応を60℃で1時間進行させた。
【0079】
次に、固定化核酸を0.25μM FL−T7−FLシグナルプローブと共にハイブリダイゼーション緩衝液中、室温で20分間インキュベートした。PBS/カゼイン中の抗フルオレセイン−HRPの1:200希釈液をチップと共に室温で20分間インキュベートした。定常状態電流測定を、Enhanced K−Blue溶液(Neogen Corp.から入手したもの)中で30秒間行なった。
【0080】
結果を表1に示す。表示のとおり、電極あたりのPLPC分子数は、電極における検出可能電流と直接的関係を持つことが観察された。
【0081】
【表1】
【0082】
HRP触媒法を使った検出をルテニウム錯体静電検出と比較した。例えば、ルテニウムヘキサミン(ruthenium hexamine)などのルテニウム錯体を使った検出は、触媒的プロセスではなく、移動した電子をルテニウム錯体に渡し、移動した電子はそこに留まる。これは、還元されたルテニウム錯体が再利用されてより多くの電子を受け取るようにはならないことを意味している。したがって、このように非触媒的であるプロセスは、使用される酸化還元部分(ルテニウムヘキサミンなど)の量によって、その正確さが制限される。触媒的検出を非触媒的検出と比較した結果を図8に示す。図の上側に、触媒的検出を棒グラフとして、対応する時間経過と共に示す。ルテニウム錯体を使った非触媒的検出は、下部の4つの線グラフに示す。ルテニウム結果において、各グラフについて12のシグナルは4パッドチップでの3回の読みに対応する。最も低い4シグナルのセットはNeutrAvidinのみであり、次の4つはNeutrAvidin+捕捉プローブを表し、最も高い4つはNeutrAvidin+捕捉プローブ+捕捉されたアンプリコンのRCA産物を表す。
【0083】
図8に示すように、触媒的検出の方が、極めて希薄な試料では特に、高い感度が可能である。例えば触媒的検出法では、1:100、1:1000、1:10,000、および0の希釈度は全て、対応する電流に基づいて互いに容易に識別される。しかしルテニウム検出では、1:100および1:1000の希釈度は容易に識別されるが、1:10,000の希釈度と0の希釈度に対応する電流の間には認知できる相違がない。したがって、ルテニウムを使った場合、検出限界は希釈度1:1000と希釈度1:10,000の間のどこかにあるが、HRPを使った場合の検出限界がそれよりかなり低い。
【0084】
実施例4:定量的検出
試料中の標的核酸を定量することができる本発明のさらなる応用例を図9に示す。図示するように、濃度が25pM、250pM、および2500pMの標的核酸を、触媒的プロセスを使って検出した。検出可能な電流は存在する標的核酸の濃度と共に変化した。これにより、実際の濃度がわからない場合に、試料中の標的核酸濃度を、検出された電流に基づいて予測することが可能になるだろう。この実施形態の実用的応用例には、例えば特定試料における病原体の蔓延を決定することが含まれる。より具体的には、この技術は、特定ウイルスによる感染を患っている患者におけるウイルス量を決定するために使用することができるだろう。
【0085】
実施例5:標的、ブリッジ、およびサークルの濃度を変化させつつ、オンチップ増幅および触媒的検出を使って行なったハイブリダイゼーションの検出
ハイブリダイゼーションアッセイにおいて以下のプロセスを使用した。
【0086】
表2に列挙する成分を使って、電極表面上に沈着させる薄膜を調製した。
【0087】
【表2】
【0088】
この溶液2μlを遺伝子チップ上のさまざまな電極スポットに移し、乾燥させた。安定な被膜が施され、真空乾燥された。乾燥した薄膜を乾燥器中に一晩保存した。
【0089】
乾燥した薄膜を10mM Hepes+250mM LiCl+0.05%Tween 20中に37℃で15分間置いた後、10mM Hepes+10mM NaCl中ですすぎ洗いした。
【0090】
このアッセイで使用した配列を図10(図10‐1、図10‐2)に示す。標的(70.52)(配列番号7)、ブリッジ(39.29)(配列番号11)、およびサークル(75.03)(配列番号13)のハイブリダイゼーションは、10mM Hepes+1M LiClまたは10mM Tris+1M NaCl+1mM EDTA中で2.5nMの各成分を混合することにより、溶液状態で行なった。その混合物を80℃まで10分間加熱し、室温に冷却した。
【0091】
捕捉プローブへの上記混合物のハイブリダイゼーションは、混合物10μlを各チップ表面に適用し、37℃で15分間インキュベートし、実験台上で室温まで冷却することによって行なった。
【0092】
ハイブリダイゼーション後に、チップ表面上の溶液を吸い取り紙で取り除き、続いてpH7.5の10mM Hepes+1M LiClまたは10mM Tris+1M NaClで洗浄した。
【0093】
電極を吸い取り紙で乾燥させ、RCA作業溶液20μlを各チップの表面に移した。RCAを37℃で1時間行なった。RCA作業溶液10μlは、10X緩衝液1μl、10mM dNTP 1.5μl、2M KCl 0.5μl、水6.5μlおよびphi29 DNAポリメラーゼ0.5μlを含有した。
【0094】
チップ表面に残っているRCA作業溶液を吸い取り紙で乾燥させた後、10mM Tris+200mM NaClですすぎ洗いし、10mM Tris+200mM NaClに保存した。
【0095】
次に検出子プローブ(2つのフルオレセインで修飾されたT7配列の一部)とのハイブリダイゼーションを行なった。これを達成するために、10mM Tris+1M NaCl+1mM EDTA+0.05%BSA中、0.25μMの検出子プローブを、ハイブリダイゼーション溶液中に用意した。ハイブリダイゼーションは37℃で15分間行い、実験台上で室温まで冷却した。
【0096】
吸い取り紙でチップを乾燥し、1 XPBS(0.008M NaPi+0.002M Kpi+0.14M NaCl+0.01M KCl pH7.4)ですすぎ洗いした。
【0097】
チップ表面に残っているPBS溶液を吸い取り紙で除去した。次に、0.5%カゼインを含有するPBS中の抗フルオレセイン−PODの1:200希釈液を含有するハイブリダイゼーションウェルにチップを適用した。
【0098】
チップを吸い取り紙で乾燥させた後、1XPBSですすぎ洗いし、1XPBS中に保存した。
【0099】
K−blue溶液を受け取ったままの状態で使用した。測定はAg/AgCl(Ag線)に対して−200mVで30秒間行なった。
【0100】
チップ上に沈着させる溶液を調製する際に、2種類の標的核酸濃度を使用し、4種類のブリッジ核酸濃度およびサークル核酸濃度を使用した。それらの濃度を表3に示す。
【0101】
【表3】
【0102】
アッセイの結果を図11に示す。図示するように、標的、ブリッジ、およびサークル核酸鎖の濃度を変化させると、標的核酸の濃度と相関関係にある電流レベルがもたらされたことから、試料中に存在する標的核酸のレベルの定量における上述した方法の有効性が実証された。
【0103】
実施例6:HRPを使った検出を伴う2段階RCA
以下の実施例では、電気化学的検出アッセイを行なう際に「2段階」RCA手続きを使用した。このプロセスを図12に図解する。図示するように、合成的に調製された第1サークル100が、捕捉プローブによって捕捉され、プライマー伸長が起こる。図12では、セグメント化されたサークルおよび線状核酸分子が描かれている。各セグメントはそれが含有するユニークな塩基配列によって定義される。RCAプロセスが起こると、サークルが回転を完了する度に、それらのセグメントが反復される。例えば、4つのセグメントを含有する第1サークル100を示し、そのうちの1つのセグメントを「Cx247」と呼ぶ。「Cx247」セグメントは、最初に固定化された鎖の第1アンプリコン102上の「Px247」と呼ばれるセグメントに相補的である。第1サークルのもう一つのセグメントを「Cn」と呼ぶ。「Cn」セグメントはアンプリコン102上の相補的「Pn」セグメントに相補的である。
【0104】
次のステップでは、第2サークル110にハイブリダイズしたプライマーを含有するRCA開始複合体を使って、二次増幅が起こる。図12に示す第2サークル110は3つのセグメントを含有し、そのうちの2つは、それぞれ「Px247]および「T7」と呼ばれる。次にこのRCA開始複合体が第2RCAプロセスを実行する。さらに、第2RCAの産物は、第1RCAの産物にハイブリダイズすることができる。図12に示すように、第1アンプリコン102はセグメントPx247を含有し、第2アンプリコン112は配列Cx247を含有する。Px247とCx247は相補的であるので、これら2つの鎖の間にこれらのセグメントでハイブリダイゼーションが起こりうる。ハイブリダイゼーションの結果は、電極に取り付けられる核酸の量を効果的に増加させ、それによって、核酸の存在に基づく検出可能な電気シグナルを増強するということである。
【0105】
さらに、追加のRCA開始複合体(第3環状分子にハイブリダイズしたプライマーを含有するもの)を利用する「多段階」RCA手続きを使用することができる。図12に示すように、第3サークル120は、第3RCAを行なって第3アンプリコン122を生じさせることができる第2RCA開始複合体中に使用される。ここでは、「t7」と呼ばれるセグメントが、第2アンプリコン112上のPt7と呼ばれるセグメントに相補的である。先ほどと同様に、相補的領域はハイブリダイズすることができ、電極に取り付けられた核酸の量をさらに増加させることができる。さらに、多段階RCA手続きは追加のRCA開始複合体を伴い、例えば第4、第5、第6、および/または第7RCAプロセスあるいはそれ以上の、追加のRCA手続きを特徴とすることができると考えられる。そのような手続きのRCA産物は、それらがアッセイ内で他の任意のRCA産物にハイブリダイズすることができるように調製することができる。さまざまなRCA産物のそれぞれが別の鎖にハイブリダイズすることができて、各RCA産物が最初に固定化された鎖に直接的または間接的に取り付けられることになるように、さまざまなRCA産物を設計することが有利である。
【0106】
HRPによる検出を伴う2段階RCAを以下のように行なった。電極表面上に捕捉プローブを固定化することにより、それぞれが12個の電極を含有するアッセイチップを調製した。プローブは、検査対象であるライゲートされたPLPサークル標的に特異的であるという理由で選択された。次にチップを10mM Hepes、pH7.5/200mM NaCl中に37℃で20分間浸漬した。矩形波ボルタンメトリー(SWV)を、10mM Tris/10mM NaCl緩衝液中の5μM Ru(NH3)63+内で行なった。12パッドチップ上に標的含有溶液20μlを加えることによって、標的ハイブリダイゼーションを行なった。チップを60℃で10分間および室温で30分間インキュベートした。チップを10mM Tris/200mM NaCl緩衝液ですすぎ洗いした。50mM Tris(pH7.5)を含有するRCA溶液を1チップに20μLずつ、150mM KCl、10mM Mg2Cl、4mM DTT、10mM硫酸アンモニウム、1.5mM dNTP、フルオレセインタグを含有する検出子プローブ400nM、およびφ29 DNAポリメラーゼ20単位と共に加えた。次に、RCAを室温で5分間進行させた。10nM汎用PLPおよび15nM RCA開始複合体のライゲーションによって得た汎用サークル溶液2μlを各チップに加え、37℃で1時間インキュベートした。チップをPBS緩衝液ですすぎ洗いした。PBS/0.5%カゼイン中の1:200希釈抗フルオレセインHRPコンジュゲート50μlを各チップに加え、室温で30分間インキュベートした。チップをPBS/0.05%Tween 20ですすぎ洗いした。定常状態電流をK−Blue溶液中でAg線に対して−200mVで測定した。
【0107】
結果を図13に示す。図示するように、観察された電流は第2RCA段階後の方が、第1RCA段階後よりも高い。
【0108】
実施例7:ルテニウムヘキサミンを使った検出を伴う2段階RCA
Ru(NH3)63+を使った矩形波ボルタンメトリー(SWV)による検出を伴う2段階RCAを以下のように行なった。ライゲートされたPLPサークルに特異的な捕捉プローブを固定化したチップを、10mM Hepes、pH7.5/200mM NaClに37℃で20分間浸漬した。矩形波ボルタンメトリー(SWV)を10mM Tris/10mM NaCl緩衝液中の5μM Ru(NH3)63+内で行なった。12パッドチップ上に標的含有溶液20μlを加えることによって、標的ハイブリダイゼーションを行なった。チップを60℃で10分間および室温で30分間インキュベートした。チップを10mM Tris/200mM NaCl緩衝液ですすぎ洗いした。50mM Tris(pH7.5)を含有するRCA溶液を1チップに20μLずつ、150mM KCl、10mM Mg2Cl、4mM DTT、10mM硫酸アンモニウム、1.5mM dNTP、およびφ29 DNAポリメラーゼ20単位と共に加えた。次に、RCAを室温で5分間進行させた。10nM汎用PLPおよび15nM RCA開始複合体のライゲーションによって得た汎用サークル溶液2μlを各チップに加え、37℃で70分間インキュベートした。チップをPBS緩衝液ですすぎ洗いした。SWVを10mM Tris/10mM NaCl緩衝液中の5μM Ru(NH3)63+内で行なった。
【0109】
結果を図14に示す。図示するように、観察される電流はRCA後の方がRCA前より高く、RCA後の検出可能電流は濃度と相関関係を示す。
【0110】
本明細書に記載した技術を用いることにより、ブリッジ化、伸長、触媒的検出、およびそれらのさまざまな組合せによって、DNA標的の超高感度検出を可能にすることができる。オンチップRCAは標的の限局的増幅および検出を可能にする。したがって、PCRまたは他のタイプの増幅スキームより優れた、DNA診断の多重化ならびに細菌またはウイルスの検出を行なうための技術を実施することができる。
【0111】
本発明のいくつかの実施形態は、電気化学的検出だけでなく、他のタイプの検出様式、例えば蛍光、化学発光、および比色法などにも使用することができる。いくつかの実施形態は、マイクロプレートアッセイ、マイクロアレイアッセイ、メンブレンおよびフィルターアッセイ、ならびにさまざまな形式の電極基板上での電気化学的アッセイに使用することができる。
【0112】
さらに、いくつかの実施形態は、PCRおよび細胞培養などの標的増幅を行なわずに用いることができる。例えば細菌を検出する場合、1個の細菌細胞は数千コピー〜数十億コピーのrRNAを含有し、その各々は、数千ヌクレオチド〜数十万ヌクレオチドの範囲にわたる長さを持つ。ここに開示する技術には、1標的分子につき複数の検出子試薬および酵素触媒型電気化学的検出という利点があり、これを感染性疾患の迅速かつ直接的な検出に利用することができる。
【0113】
さらに、いくつかの実施形態は、試料中の標的核酸のレベルを定量するために用いることができる。ある個体中で病原生物がどの程度増殖しているかを測定する場合にそのような定量は役立つ。特に、いくつかの実施形態は、感染した個体におけるウイルス量を測定するのに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】HRPおよびTMBを使ってH2O2を水に変換する触媒サイクルを表す図である。
【図2A】ハイブリダイズした核酸に静電的に会合した検出部分を表す図である。
【図2B】ハイブリダイズした核酸に検出子プローブを使って会合した検出部分を表す図である。
【図3A】頭尾重合を用いるオンチップ増幅を説明する図である。
【図3B】ローリングサークル増幅を用いるオンチップ増幅を説明する図である。
【図3C】分岐技術をローリングサークル増幅と併せて用いるオンチップ増幅を説明する図である。
【図3D】超分岐技術をローリングサークル増幅と併せて用いるオンチップ増幅を説明する図である。
【図4】オンチップ増幅と触媒的検出の両方を用いる病原体直接検出用のシグナル増幅を説明する図である。
【図5】オンチップ増幅と、検出子プローブ(そこにHRPがカップリングできるもの)のハイブリダイゼーションとの両方を用いるプロセスを表す図である。
【図6】in−situライゲーションおよびRCAを用いるハイブリダイゼーションの直接検出の一例を表す図である。
【図7】病原体検出の一例を表す図である。
【図8A】HRPを用いる触媒的検出と、ルテニウム錯体を用いる標準的な電気化学的検出との比較を表す図である。
【図8B】HRPを用いる触媒的検出と、ルテニウム錯体を用いる標準的な電気化学的検出との比較を表す図である。
【図8C】HRPを用いる触媒的検出と、ルテニウム錯体を用いる標準的な電気化学的検出との比較を表す図である。
【図9】試料中の核酸標的の濃度と検出可能電流との関係を表す図である。
【図10−1】HPV検出アッセイにおいて標的、捕捉プローブ、およびブリッジとして使用した核酸配列を表す図である。
【図10−2】HPV検出アッセイにおいて標的、捕捉プローブ、およびブリッジとして使用した核酸配列を表す図である。
【図11A】標的、ブリッジ、およびサークル核酸鎖の濃度を変化させたアッセイの結果を表す図である。
【図11B】標的、ブリッジ、およびサークル核酸鎖の濃度を変化させたアッセイの結果を表す図である。
【図11C】標的、ブリッジ、およびサークル核酸鎖の濃度を変化させたアッセイの結果を表す図である。
【図12】サークルが捕捉プローブによって捕捉され、捕捉された核酸を増幅するために多段階RCAが行なわれるRCA手続きを表す図である。
【図13A】2段階RCAとHRPを使った検出とを用いるアッセイの結果を表す図である。
【図13B】2段階RCAとHRPを使った検出とを用いるアッセイの結果を表す図である。
【図14A】2段階RCAとルテニウムヘキサミンを使った検出とを用いるアッセイの結果を表す図である。
【図14B】2段階RCAとルテニウムヘキサミンを使った検出とを用いるアッセイの結果を表す図である。
【図14C】2段階RCAとルテニウムヘキサミンを使った検出とを用いるアッセイの結果を表す図である。
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、2003年11月10日に出願された「NUCLEIC ACID DETECTION METHOD HAVING INCREASED SENSITIVITY(増加した感度を持つ核酸検出方法)」と題する米国仮特許出願第60/518,816号に基づく優先権を主張し、前記仮特許出願の開示は全て参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本発明は増加した感度を持つ核酸検出方法に関する。いくつかの有利な実施形態において、本方法は、合成的に延長された核酸と電極表面との間で起こる触媒サイクルの電気化学的検出を含む。
【背景技術】
【0003】
少なくとも一部に相補的ヌクレオチド配列を持つ他のポリヌクレオチドに対するワトソン−クリック型の塩基対形成によるポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションの検出は、広範囲にわたる多様な研究用途、医学的用途、および工業的用途に役立つ基本的プロセスである。標的配列を含有するポリヌクレオチドに対するプローブのハイブリダイゼーションは、遺伝子発現解析、DNA配列決定、およびゲノム解析に有用である。具体的用途としては、例えばSambrookら「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」第2版(Cold Spring Harbor Laboratory,ニューヨーク,1989)、KellerおよびManak「DNA Probes」第2版(Stockton Press,ニューヨーク,1993)、Milliganら,1993,J Med Chem,36:1923−1937、Drmanacら,1993.Science,260:1649−1652、Bains,1993,J DNA Seq Map,4:143−150などに記載されているように、診断アッセイにおける疾患関連ポリヌクレオチドの同定、試料中の新規標的ポリヌクレオチドに関するスクリーニング、ポリヌクレオチド混合物中の特異的標的ポリヌクレオチドの同定、変異配列の同定、遺伝子タイピング、特異的標的ポリヌクレオチドの増幅、および不適切に発現される遺伝子の治療的遮断などが挙げられる。
【0004】
各固定化プローブが支持体に機能的に接続され、固定化プローブに対するポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションを検出することができる場合、固定化プローブは標的ヌクレオチド配列を含有するポリヌクレオチドの検出に有用である。最も一般的には、DNAプローブを使って、そのプローブ配列に相補的な標的ヌクレオチド配列を含有するポリヌクレオチドが検出される。固定化プローブの支持体はしばしば「チップ」と呼ばれる平坦な表面であるか、ビーズまたは他の粒子の表面であることができる。プローブは通常、既知の配置またはアレイで固定化され、それが、塩基対形成規則に基づいて既知ポリヌクレオチドと未知ヌクレオチドとを対応づけるための媒体になる。好ましくは、プローブアレイを使って同定される未知物を同定するプロセスが自動化される。アイデンティティが既知である多数の固定化プローブを持つマイクロアレイは、相補的結合を決定するために用いられ、遺伝子発現および遺伝子発見の超並列的な研究を可能にする。例えば、単一のDNAチップを使った実験により、研究者は何千もの遺伝子に関する情報を得ることができる。例えばHashimotoらは、固定化一本鎖プローブのアレイであって、少なくとも一つのプローブが検出すべき標的遺伝子に相補的なヌクレオチド配列を持ち、各プローブが電極の表面または光ファイバーの先端に固定化され、二本鎖核酸に結合する能力を持つ電気化学的または光学的に活性な物質を使って、相補的固定化プローブに対する標的遺伝子のハイブリダイゼーションが検出されるようになっているものを開示している(米国特許第5,776,672号および第5,972,692号)。
【0005】
核酸ハイブリダイゼーションが起こっているかどうかを検出するためのもう一つの方法は、核酸を取り囲む対イオンの量を反映するシグナルを検出することである。したがって、ハイブリダイズした核酸は、一本鎖核酸よりも多くの対イオンに取り囲まれる傾向を示すだろう。対イオンは通例、例えば三価イオンの二価イオンへの還元などにより、電気化学的反応によって検出される、このように、対イオンは電子移動化学種として機能する。
【0006】
電気化学的定量はA.B.Steelら「Electrochemical Quantitation of DNA Immobilized on Gold(金上に固定化されたDNAの電気化学的定量)」Anal. Chem. 70:4670−77(1998)に記載されている(この論文は参照によりその全文が明示的に本明細書に組み入れられる)。この刊行物においてSteelらは、表面固定化DNAと相互作用する化学種としてのコバルト(III)トリスビピリジルおよびルテニウム(III)ヘキサアミン(ruthenium (III) hexaamine)の使用を記述している。
【0007】
汎用チップ
場合によっては、検出すべき特異的配列に相補的になるように設計された一組の固定化プローブを使って、各チップを、検出すべき配列に対して専用に製造しなければならないことが、チップ技術の欠点になる。単一生物に特異的なチップは大きな製造投資を必要とし、そのチップは狭く限定された範囲の試料にしか使用することができない。対照的に、「汎用チップ」または「汎用アレイ」は、プローブが生物特異的な配列または産物を標的としていないので、生物非依存的である。遺伝子発現解析にしばしば用いられる特定の組織、生理状態、または発生段階に特異的なチップも同様に、限定された範囲の試料に使用するために、かなりの製造投資を必要とする。汎用チップは、関心対象の組織、生理状態、または発生段階を研究するための制約のないアプローチを提供する。ポリヌクレオチド検出に汎用チップを用いることにより、製造品質管理を改善することができる。
【0008】
汎用チップ設計へのアプローチの一つでは、5、6、7、8、9、10ヌクレオチドまたはそれ以上の長さを持つオリゴヌクレオチドの考えうる配列を全て含む一組のオリゴヌクレオチドプローブをチップ表面に取り付ける。これらのアレイに必要なプローブは、簡単な組合せアルゴリズムを使って設計することができる。チップを、DNA、cDNA、RNAまたはハイブリダイズ可能な他の材料を含有しうる混合物と共にインキュベートし、既知の配列を持つ各プローブに対するハイブリダーゼションを測定する。しかしそのようなアレイの特異性は損なわれる場合がある。なぜなら、配列が異なると、ストリンジェントなハイブリダイゼーションのための要件も異なりうるからである。また、そのような汎用アレイではフレームシフトに起因する偽陽性が防止されない。例えば、6ヌクレオチド長のプローブを持つ汎用アレイの場合、試料ポリヌクレオチドの最後の4ヌクレオチドは、ある6ヌクレオチドプローブの相補的な最後の4ヌクレオチドにハイブリダイズしうるが、この試料ポリヌクレオチドはその6ヌクレオチドプローブ配列全体にはハイブリダイズしないだろう。
【0009】
Suyamaら(2000,Curr Comp Mol Biol 7:12−13)は、試料の遺伝子発現プロファイリングを行なうための汎用チップシステムを開示している。このチップシステムではプローブに対する転写物の結合に代えて「DNAコンピューティング」を利用する。SuyamaらのDNAコンピューティングシステムでは、汎用チップ上の一組の汎用固定化プローブに対するコード化されたアダプターの結合を測定することによって、どの転写物が存在するかを間接的に決定する。試料中に存在する転写物の一領域に相補的な領域を持つコード化されたアダプターだけが、その後の操作および処理ステップを受けて、汎用チップ上のプローブに結合する能力を持つアダプターを生成させることになる。
【0010】
タグ
汎用チップを製造するためのもう一つのアプローチでは、標的ポリヌクレオチド中に自然には存在しない一組のタグ配列を使用し、これらのタグが汎用チップ上の相補的プローブに結合する。そのような用途を持つタグは、時には「アドレスタグ」または「ジップコード」と呼ばれたり、標的を同定するための「バーコード」に類似しているとみなされたりする。そして、検出、同定、追跡、選別、回収、その他の操作は、標的ポリヌクレオチドの配列ではなく、タグ配列に対して行われる。オリゴヌクレオチドタグは、ポリヌクレオチドに共有結合させるか、ポリヌクレオチド中に組み込むことができる。少なくとも二つのドメイン(プローブに相補的なタグ配列を持つドメインと、標的ポリヌクレオチドの少なくとも一部に相補的な配列を持つドメイン)を持つことでリンカーとして機能する別個のオリゴヌクレチドのハイブリダイゼーションにより、タグは、あるポリヌクレオチドと関係づけられた状態になりうる。オリゴヌクレオチドタグを使用するシステムは、複雑な混合物中の個々の分子を操作し同定するための手段として、例えば標的ヌクレオチド配列を持つポリヌクレオチドを検出するための手段として、または薬物候補を求めてゲノムライブラリー、cDNAライブラリー、もしくはコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングする際の補助手段などとして、提案されている。BrennerおよびLerner,1992,Proc Natl Acad Sci,89:5381−5383、Alper,1994,Science,264:1399−1401、Needelsら,1993,Proc Nat Acad Sci,90:10700−10704。
【0011】
偽シグナル
タグ付きポリヌクレオチドの有用性は、あるタグと、表面に固定化されたその相補的プローブとの間で達成される特異的ハイブリダイゼーションの成功に大きく依存する。オリゴヌクレオチドタグによるポリヌクレオチドの同定を成功させるには、偽陽性シグナルおよび偽陰性シグナルの数を最小限に抑えるべきである。残念なことに、偽シグナルは珍しくない。なぜなら、塩基対形成および塩基スタッキングの自由エネルギーは、二重鎖構造または三重鎖構造をとっているヌクレオチド配列の間で、大きなばらつきを持ちうるからである。例えば、グアノシン−シトシン(G−C)対の数がもう一つの二重鎖と比べて相違しているタグ−プローブ二重鎖は異なる融点を有するので、ハイブリダイゼーションに関するストリンジェンシー要件も相違しているだろう。また、スタッキングエネルギーが相違するので、アデノシン(A)とチミジン(T)の反復配列がその相補鎖に結合しているものからなるタグ−プローブ二重鎖は、GとCの反復配列がミスマッチを含有する部分的に相補的な標的に結合しているものからなる同じ長さの二重鎖より、安定性が低いということも起こりうる。このようなスタッキングエネルギーの相違を埋め合わせるには、特殊な試薬がしばしば必要になる。
【0012】
偽シグナルは上述の「フレームシフト」にも起因しうる。この問題は、「無コンマ(comma−less)」コードを用いることによって対処されてきた。この無コンマコードは、その相補的タグに対して見当ずれ(フレームシフト)を起こしたプローブが、そのコドンのそれぞれについて一つ以上のミスマッチを持つ二重鎖をもたらし、それが不安定な二重鎖を形成させることを保証する。
【0013】
偽シグナルに関わる上記の問題を考慮して、十分なタグレパートリーを提供するが、それと同時に、自然の塩基対形成および塩基スタッキング自由エネルギー差を変化させるために特殊な試薬を使用したり、無コンマコード用のコード化システムを苦心して作ったりしなくても、偽陽性シグナルおよび偽陰性シグナルの発生を最小限に抑えるような、オリゴヌクレオチドに基づくさまざまなタグ付けシステムが、研究者によって開発されている。そのようなタグ付けシステムは、例えばコンビナトリアル化合物ライブラリーの構築および使用、DNAの大規模マッピングおよび配列決定、遺伝子による同定、および医学的診断など、多くの分野に応用される。
【0014】
Brennerらは、ポリヌクレオチド断片の末端に反応性部分を介してタグを取り付ける「汎用」チップシステムを開示している。このシステムでは、あるタグとそれとは別のタグに対する相補鎖との間に形成される任意のミスマッチ二重鎖またはミスマッチ三重鎖の安定性が、そのタグとそれ自身の相補鎖との間に形成される完全にマッチしたどの二重鎖よりも、はるかに低くなるような配列を持つ多サブユニットオリゴヌクレチドタグのレパートリーを設計することによって、偽シグナルが回避される。米国特許第5,604,097号、第5,654,413号、第5,846,719号、第5,863,722号、第6,140,489号、第6,150,516号、第6,172,214号、第6,172,218号、第6,352,828号、第6,235,475号。Morrisら(米国特許第6,458,530号、EP0799897)は、タグおよび相補的プローブのアレイを使って、細胞およびウイルスを含む組成物を標識し追跡すること、ならびに細胞およびウイルス表現型の解析を容易にすることを開示している。
【0015】
ある代替方法では、多成分タグ付けシステムであって、タグがポリヌクレオチドに取り付けられるではなく、所定のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを適合させ、インデックス化し、かつ/または検出するためにポリヌクレオチドにハイブリダイズさせる別個の成分上に、タグが見いだされるようなシステムを使用する。米国特許第6,261,782号ならびにその関連特許および関連出願(Lizardiら)に開示されている方法では、核酸切断試薬を使って「付着末端」を生成させ、さまざまな付着末端に相補的な末端を持つアダプター−インデクサー(adapter−indexer)オリゴヌクレオチドを試料に加えることで、切断されたポリヌクレオチド断片を何組かにインデックス化し、アダプター−インデクサーの付着末端に相補的な付着末端を持つライゲーター−ディテクター(ligator−detector)オリゴヌクレオチドを加え、試料全体を複数の検出子プローブとハイブリダイズさせ、ライゲーター−ディテクターを検出子プローブに共有結合させ、最後に、検出子プローブへのライゲーター−ディテクターのカップリングを検出することによって、試料中の標的ポリヌクレオチドを選別し、同定することを可能にする。
【0016】
汎用アレイ中の固定化捕捉プローブにハイブリダイズするドメインと標的を含有する分析物にハイブリダイズするドメインとを持つ二官能性リンカーを使用するもう一つの多成分システムが、Balchらによって米国特許第6,331,441号に開示されている。Balchらは、標的配列と、捕捉プローブに相補的なユニーク汎用配列との両方を含有するアンプリコンを生成させるための、標的ポリヌクレオチドの増幅も開示しており、このユニーク汎用配列は、PCRプライマーまたはLCRプライマーによって導入することができる(米国特許第6,331,441号)。
【0017】
既存の電流測定技術によって得られる感度よりも高い核酸検出感度を得ることが望ましい場合がある。例えば、標的鎖がプローブにハイブリダイズしているかどうかを識別することは、標的が試料中に極めて少量しか存在しない場合や、ハイブリダイゼーションに先だって標的を(PCRまたはRCAなどによって)増幅することが不可能もしくは非現実的である場合は特に、既存の技術では困難なことがある。したがって当技術分野では、増加した感度を持つ核酸検出方法が必要とされながらも、まだ満たされていない。
【発明の開示】
【0018】
本発明の一態様は、試料が標的ポリヌクレオチドを含有するかどうかを決定する方法であって、試料を、標的ポリヌクレオチド中の配列の少なくとも一部に相補的な捕捉プローブポリヌクレオチドを含有する検出ゾーンと、標的ポリヌクレオチドが捕捉プローブポリヌクレオチドにハイブリダイズすることを許す条件下で、接触させるステップ;捕捉プローブポリヌクレオチドにハイブリダイズしている任意の標的ポリヌクレオチドを延長するステップ;および試料中の標的ポリヌクレオチドの存在を示すシグナルであって、自らは消耗されずに複数のシグナルを生じさせることができる触媒的検出試薬によって生成されるシグナルが、生成しているかどうかを決定するステップ、を含む方法である。
【0019】
本発明のもう一つの態様は、試料が標的ポリヌクレオチドを含有するかどうかを決定する方法であって、試料を、標的ポリヌクレオチド中の配列の少なくとも一部に相補的な捕捉プローブポリヌクレオチドを含有する検出ゾーンと、標的ポリヌクレオチドが捕捉プローブポリヌクレオチドにハイブリダイズすることを許す条件下で、接触させるステップ;捕捉プローブポリヌクレオチドにハイブリダイズしている任意の標的ポリヌクレオチドに、第1ブリッジをハイブリダイズさせるステップ;および試料中の標的ポリヌクレオチドの存在を示すシグナルであって、自らは消耗されずに複数のシグナルを生じさせることができる触媒的検出試薬によって生成されるシグナルが、生成しているかどうかを決定するステップ、を含む方法である。
【0020】
本発明のさらにもう一つの態様は、試料が標的ポリヌクレオチドを含有するかどうかを決定する方法であって、試料を、標的ポリヌクレオチド中の配列の少なくとも一部に相補的な捕捉プローブポリヌクレオチドを含有する検出ゾーンと、標的ポリヌクレオチドが捕捉プローブポリヌクレオチドにハイブリダイズすることを許す条件下で、接触させるステップ;標的ポリヌクレオチドを第3ポリヌクレオチドにハイブリダイズさせるステップ;第3ポリヌクレオチドをプローブポリヌクレオチドにライゲートするステップ;および試料中の標的ポリヌクレオチドの存在を示すシグナルであって、自らは消耗されずに複数のシグナルを生じさせることができる触媒的検出試薬によって生成されるシグナルが、生成しているかどうかを決定するステップ、を含む方法である。
【0021】
本発明のさらなる態様は、試料中の標的ポリヌクレオチドの量を定量する方法であって、試料を、標的ポリヌクレオチド中の配列の少なくとも一部に相補的な捕捉プローブポリヌクレオチドを含有する検出ゾーンと、標的ポリヌクレオチドが捕捉プローブポリヌクレオチドにハイブリダイズすることを許す条件下で、接触させるステップ;捕捉プローブポリヌクレオチドにハイブリダイズしている任意の標的ポリヌクレオチドを延長するステップ;試料中の標的ポリヌクレオチドの存在を示すシグナルであって、自らは消耗されずに複数のシグナルを生じさせることができる触媒的検出試薬によって生成されるシグナルを、検出するステップ;およびシグナルのレベルに基づいて試料中に存在する標的ポリヌクレオチドの量を定量するステップ、を含む方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明は、概して、ある試料における特定配列を持つ標的核酸の存在を検出する方法に関する。本発明のいくつかの好ましい実施形態には、検出ゾーンにおけるポリヌクレオチドハイブリダイゼーションを使った標的核酸の検出が含まれる。いくつかの有利な実施形態では、そのような検出ゾーンが電極表面を含み、アッセイチップ上(好ましくは汎用アッセイチップ上)に設置される。
【0023】
いくつかの実施形態では、アッセイチップ上でのプローブ核酸への標的核酸のハイブリダイゼーションに起因する電気シグナル(電流または電圧など)を測定することによって、標的核酸が検出される。特定の実施形態では、検出試薬(例えば酸化または還元されうる薬剤)を、プローブ核酸にハイブリダイズさせた標的核酸と会合させることによって、電流を生成させることができる。いくつかの実施形態では、検出試薬が電子の移動に1回だけ参加する。しかし、いくつかの実施形態では、検出試薬が消耗されることなく酸化還元反応に繰り返し参加することができる。検出試薬が繰り返し参加できる場合、それを「触媒的」検出試薬と呼ぶことができる。いくつかの実施形態では、触媒的検出試薬が酵素などの酸化還元部分である。いくつかのさらなる実施形態では、ハイブリダイズした標的核酸のそれぞれに多くの検出剤を会合させることによって、および/または触媒的酸化/還元反応に参加する検出試薬を利用することによって、プローブへの標的核酸のハイブリダイゼーションに起因する電流の振幅を増加させる。
【0024】
いくつかの実施形態では、本方法は、標的と、静電的相互作用によって標的核酸と会合するポリアミン、他のカチオン性ペプチド、またはカチオン性ポリマーに連結した検出試薬(酸化還元部分など)との相互作用により、負に帯電した標的鎖の存在を検出することに基づく。別の実施形態では、本方法は、標的鎖を、追加プローブ、すなわち「検出子プローブ」(次にこれを酸化還元部分と連携させる)へのその配列特異的ハイブリダイゼーションに基づいて検出することに基づく。検出子プローブを「シグナルプローブ」と呼ぶ場合もある。検出子プローブと連携させる酸化還元部分の例は本明細書で論じる。
【0025】
核酸検出に役立つさまざまな技術および電子移動化学種は、WO2004/044549、2003年4月24日に出願された「UNIVERSAL TAG ASSAY(汎用タグアッセイ)」と題する米国特許出願第10/424,542号に開示されており、これらはどちらも参照によりその全文が本明細書に組み入れられる。さらなる実施形態は、2003年5月2日に出願された「ELECTROCHEMICAL METHOD TO MEASURE DNA ATTACHMENT TO AN ELECTRODE SURFACE IN THE PRESENCE OF MOLECULAR OXYGEN(分子状酸素の存在下で電極表面へのDNAの付着を測定するための電気化学的方法)」と題する米国特許出願10/429,291号、2003年5月2日に出願された「METHOD OF ELECTROCHEMICAL DETECTION OF SOMATIC CELL MUTATIONS(体細胞突然変異の電気化学的検出方法)」と題する米国特許出願第10/429,293号、および2004年8月23日に出願された同時係属中のPCT出願PCT/US2004/027412で議論されており、これらは全て参照によりその全文が本明細書に組み入れられる。
【0026】
特に、米国特許出願第10/429,293号では、標的鎖がプローブ鎖にハイブリダイズした後に標的鎖を伸長することによってシグナルを増強する方法が議論されており、この技術は「オンチップ増幅」と呼ばれることもある。この出願は線状オンチップ増幅および分岐状オンチップ増幅を開示している。
【0027】
フルオレセインおよびセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)の使用を含む他のさまざまな核酸検出技術が米国特許第6,391,558号(Henkensら)に開示されており、この文献は参照によりその全文が明示的に本明細書に組み入れられる。
【0028】
本発明のいくつかの好ましい実施形態には、検出ゾーンにおけるポリヌクレオチドハイブリダイゼーションの検出が含まれる。一般に、検出ゾーンはアッセイチップ上に設置され、ハイブリダイゼーションの検出は、酸化還元反応によって生成する電流を検出することによって行なわれるだろう。多くの有利な実施形態の基礎となる理論は、プローブと標的との間にハイブリダイゼーションが起こった場合にのみ、酸化還元反応が起こること、または酸化還元反応の程度が強くなることである。
【0029】
通例、この技術を実行する際には、関心対象の配列に相補的な複数の核酸プローブを使用する。汎用チップを使用する場合は、核酸プローブが、標的鎖に取り付けられたタグに相補的な配列を含有するだろう。また、その標的鎖は関心対象の配列も含有する。したがって、試料中の配列を検出するとは、生物学的試料からの天然配列またはネイティブ配列を直接検出することを指すか、または処理された試料(この場合、処理された試料は生物学的試料に由来する配列を改変するか生物学的試料に由来する配列に付加することによって作製される)中の何らかの他の配列(タグ配列など)を検出することを指しうる。
【0030】
一定の好ましい実施形態では、プローブの長さは約10〜25塩基対の範囲にあり、約17塩基対の長さが最も好ましい。好ましくは、プローブ鎖は検出ゾーン内に位置する。特に好ましい実施形態では、検出ゾーンが、液体媒質と接触している電極などの表面を含み、プローブ鎖はその表面上に、プローブ鎖もまたその液体媒質と接触するような形で固定化される。好ましくは、表面は、電極への核酸プローブ鎖の取り付けが容易になるようにアビジンまたはストレプトアビジンなどのタンパク質層で被覆される金電極または炭素電極である。このタンパク質層は、イオンまたは他の電子移動化学種が液体媒質から電極へと通過でき、そしてその逆も起こりうるように、多孔性を示すべきである。プローブ鎖をアビジン層に取り付ける際には、まずプローブ鎖をビオチン複合体に共有結合し、次にそのビオチンをアビジンに付着させることが好ましい。もう一つの選択肢として、例えば金電極に核酸を共有結合させるためにチオール結合を使用することなどにより、プローブ鎖を表面に直接取り付けることもできる。炭素電極または他の任意の適切な導体の電極も使用することができる。
【0031】
この技術をさらに実行するにあたって、プローブに対して検査すべき核酸試料は、当業者に知られている任意の適切な方法でプローブと接触させることができる。例えば、試料は複数の標的鎖を含みうる。標的鎖を上述の液体媒質に導入し、固定化プローブと混じり合わせることができる。標的鎖がプローブ鎖の一領域に相補的な領域を含有する場合は、ハイブリダイゼーションが起こりうる。
【0032】
好ましくは、各プローブ鎖が標的鎖と相互作用してハイブリダイゼーションに参加する機会が最大になるように、標的鎖の数はプローブ鎖の数を超える。しかし、いくつかの実施形態では、標的鎖の数が比較的少数になるだろう。そのような実施形態には、特定の標的を単離または増幅することが不可能であるか、非現実的であるか、望ましくないアッセイが含まれる。細菌またはウイルスなどの病原体の存在を検出する場合は、そうであることが多い。
【0033】
どの標的鎖も関心対象の配列を含有しない場合は、固定化プローブと導入した標的との間には、一般に、ハイブリダイゼーションはほとんど、または全く起こらないだろう。しかし、標的鎖が関心対象の配列(または汎用チップを使用している場合は適切なタグ)を含有する場合は、それがプローブ鎖に結合しうる。1以上のハイブリダイゼーション事象が起こった後は、そのハイブリダイゼーションを検出するために使用できる技術が数種類ある。
【0034】
いくつかの技術では、酸化還元反応に参加する能力を持つ部分を、ハイブリダイズしたDNAと静電引力によって会合するように導入することができる。別の技術では、酸化還元反応に参加する能力を持つ部分を、配列特異的検出子プローブを使って導入することができる。検出子プローブは一般に、標的鎖の一領域に相補的な領域を含有する核酸鎖であり、検出子プローブと酸化還元反応に参加する能力を持つ部分との間で相互作用が可能であるような形で、1以上の部分にカップリングされる。いくつかの好ましい実施態様では、検出子プローブがフルオレセイン分子に連結され、酸化還元部分がHRPであり、そしてまたそれはフルオレセインに結合する能力を持つフルオレセイン抗体にコンジュゲートされる。もう一つの選択肢として、ストレプトアビジンまたはアビジンHRPコンジュゲートに結合するビオチン部分に、検出子プローブを連結することができる。さらに、HRP以外の酵素を酸化還元部分として用いることができる。そのような酵素には、例えばグルコースオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、および他のペルオキシダーゼ、例えば熱安定性大豆ペルオキシダーゼおよびミクロペルオキシダーゼなどがある。
【0035】
さらに、本発明のいくつかの実施形態は、以下のステップの任意の組合せを含みうる:特定の配列を持つ第1核酸を試料が含有するまたは含有すると疑われるような患者試料源または環境試料源から生物学的試料を抽出するステップ;生物学的試料から第1核酸を精製または単離するステップ;ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)またはローリングサークル増幅(rolling circle amplification:RCA)などの技術を使って第1核酸を増幅するステップ;一本鎖型の第1核酸(またはその増幅産物)を単離するステップ;第1核酸を伸長または他の方法により拡張する目的で、第2核酸を環化させるステップステップ;第2核酸を伸長または他の方法により拡張するステップ;上記核酸の1以上をハイブリダイゼーションが可能なアッセイ環境に導入するステップ;相補性の度合いに基づいて、一部の核酸はハイブリダイズし、他の核酸はハイブリダイズしないように、ハイブリダイゼーションストリンジェンシーを制御するステップ;ハイブリダイズした核酸の1以上をチップ上で増幅するステップ;およびハイブリダイゼーションを、好ましくは触媒的酸化還元部分を使って、検出するステップ。
【0036】
ハイブリダイズした核酸のシグナルを増強するために一定の技術を使用できることを発見した。これらの技術は、試料中に少量のDNAが存在するアッセイでは特に有用であることがわかった。例えば、この技術は感染性疾患を検出するためのアッセイに特に有用である。なぜなら、被疑病原体から利用できる核酸の量は通例、抽出される試料と比較して極めて少ないからである。ハイブリダイズした核酸のシグナルを増強するのに特に有用な技術には、触媒的検出およびオンチップ増幅が含まれる。本発明の技術は、場合によっては、1〜10分子の量しかない試料中の核酸を検出することができる。
【0037】
触媒的検出
いくつかの実施形態には、電極表面でそれ自体が電子移動を起こす対イオン(例えばルテニウム錯体)の代わりに触媒的検出部分を使用することが含まれる。触媒的検出スキームでは、通例、酸化/還元を起こすことができる2以上の部分が存在し、それらの少なくとも一つは1サイクルを超える酸化還元サイクルに参加することができる。これらの部分の一部はこのようにして「再利用」されるので、検出可能なシグナルは、それらの部分の全てが1回の酸化還元サイクルしか起こさない場合よりも、大きくなるだろう。いくつかの実施形態では、触媒的検出部分が、自らは消耗されることなく数多くの酸化/還元サイクルに参加することができる酵素である。
【0038】
いくつかの好ましい実施形態では、電子移動スキームに、過酸化水素から水への酸化還元変換を利用する。そのような実施形態では、この反応を触媒するためにセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)などのペルオキシダーゼを使用することが有利である。HRPは、その安定性、高い回転率、および高感度電気化学媒介物質の入手しやすさゆえに、好ましい検出試薬である。ホスファターゼ、ミクロペルオキシダーゼを含む他のペルオキシダーゼ、およびオキシダーゼなどの他の酵素も、この目的に使用することができる。特に好ましい実施形態では、HRPを使った電気化学的検出が、以下のように進行する。:
HRPR+H2O2+2H+→HRPO+2H2O
HRPO+MedR→HRPR+MedO
MedO+ne−→MedR
【0039】
上記の反応において、下付き文字Rは、ある化学種がその還元型であることを示し、下付き文字Oは酸化型を示す。
【0040】
上記の第1ステップでは、還元状態にあるHRPが過酸化水素と水素との反応に電子を供給して水を生じさせ、酸化状態のHRPが残る。次のステップでは、酸化状態にあるHRPが、電極表面から酵素へと電子を往復輸送することができる電子移動媒介物質(Medと表記)から電子を受け取る。好ましい媒介物質には、テトラメチルベンジジン(TMB)およびフェロセン誘導体が含まれる。第3ステップでは、移動媒介物質が電極表面から電子を受け取る。この特定例では、電子が電極から移動媒介物質、酵素を経て、最終的に水分子に至る。水の形成は基本的に、HRPにおける電子不足が電子移動を誘発し、電極を通る検出可能な電流を生み出すように、反応を駆り立てる。
【0041】
図1に、H2O2から水への変換においてHRPおよびTMBを用いる触媒サイクルを示す。HRPの代わりに他の酵素、特に他のペルオキシダーゼを使用できること、およびTMBの代わりに他の電子移動媒介物質を使用できることは、当業者には理解されるだろう。
【0042】
検出可能な酸化還元プロセスがハイブリダイゼーション事象の信頼できる指示薬として役立つように、ペルオキシダーゼなどの酵素を、ハイブリダイズした核酸に会合させるために使用することができる特に有用な技術が、二つある(それぞれ図2Aおよび2Bに示す)。
【0043】
これらのうち第1の技術の一例を図2Aに示す。図示するように、電極表面10は固定化捕捉プローブ20を含有する。標的核酸鎖22を捕捉プローブ20にハイブリダイズさせる。捕捉プローブ20および標的鎖22の両方の核酸鎖に会合した複数の酸化還元部分24が示されている。いくつかの実施形態では、酸化還元部分24がHRPなどの酵素である。酸化還元部分は酵素コンジュゲートであってもよい。これは、核酸と会合させる目的でアッセイに導入する前に、ある酵素が別の化学種にコンジュゲートされることを意味する。一定の有利な実施形態では、酵素がポリアミン、カチオン性ペプチド、またはカチオン性ポリマーにコンジュゲートされる。スペルミジンまたはスペルミンなどのポリアミンは、過ヨウ素酸カップリング化学またはグルタルアルデヒドによるコンジュゲーションを含むさまざまなコンジュゲーションスキームによって、HRPにコンジュゲートすることができる。有用なカチオン性ペプチドとして、ポリリジンおよびポリアルギニンが挙げられる。カチオン性ポリマー、例えばアミン基を含有するものなども、使用することができる。いくつかの実施形態では、コンジュゲーションがEDC促進(EDC−facilitated)コンジュゲーションを使って達成される。これは、例えばHermanson,Greg T.「Bioconjugate Techniques」(1996,Acadmic Press,サンディエゴ)の420〜435頁などに記載されており、その全文は参照により明示的に本明細書に組み入れられる。酵素の上にまたは酵素にカップリングされる部分の上にカチオン電荷を置く技術は、当技術分野では他にも種々知られており、それらも使用することができる。
【0044】
次に、カチオン性酵素コンジュゲートは、標的の負に帯電したリン酸エステル主鎖と会合することができる。次に、酵素によって触媒される反応が電流を生成し、その電流を、試料中に標的核酸が存在するしるしとして測定することができる。いくつかの好ましい実施形態では、酵素がHRPであり、反応が、水を生じる過酸化水素と水素との反応である。いくつかの好ましい実施形態では、DNA標的またはRNA標的をまず、電極表面上に固定化されている捕捉プローブにハイブリダイズさせる。次に、ポリアミン−HRPコンジュゲートを溶解した状態で提供することにより、標的に結合させる。未結合のHRPを洗浄した後、電極を電気化学モニターに接続する。H2O2と媒介物質がどちらも十分な濃度で存在する場合は、固定電位で強い触媒電流が表面固定化HRPから生じる。生成する電流は表面固定化HRPの量に比例し、結果として、標的中のヌクレオチド塩基数に比例する。
【0045】
代替的方法として、第2の検出方法の一例を図2Bに示す。ここでは、電極表面10が、ハイブリダイズした標的鎖22を持つ固定化捕捉プローブ20を含有している。追加の核酸検出子プローブ30は、標的鎖22に(好ましくは標的鎖の増幅された領域で)ハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、試料由来の標的鎖を捕捉プローブに直接ハイブリダイズさせる。別の実施形態では、試料中の標的鎖を増幅し、その結果得られた増幅産物を捕捉プローブにハイブリダイズさせる。そしてまた、検出子プローブ30はハプテン32で標識され、そのハプテンには、酸化還元部分24に連結された抗体34が結合しうる。数多くの適切なハプテンを使用することができる。好ましいハプテンの例はフルオレセイン、ジゴキシゲニン、またはビオチンであり、その場合、対応する抗体は、それぞれフルオレセイン抗体、ジゴキシゲニン抗体、またはビオチン抗体であるだろう。もう一つの選択肢として、ビオチンをハプテンとして使用する場合は、アビジンまたはアビジン類似体を、そのビオチンへの結合親和性ゆえに、抗体の代替物として使用することができる。抗体32は、適当な酸化還元部分24、例えばHRPのような酵素に連結することが有利である。いくつかの実施形態では、抗体をアビジン−HRPコンストラクトに連結することができる。単一の標的に結合することができる複数の検出子プローブを使用することが、一般に有利である。ハイブリダイゼーションの検出は、ここでも、HRPなどの酸化還元部分の存在による触媒的電流に基づく。電流は酸化還元部分の存在量に比例し、その存在量は、捕捉された標的にハイブリダイズした検出子プローブの数に比例する。いくつかの実施形態では、酵素−抗体複合体が付着しうる部位を各検出子プローブが複数含有することで、電気シグナルをさらに増強することができる。
【0046】
このタイプの触媒的検出は一般にさまざまな利点を示す。例えば、定量分析に関して、感度および検出限界が有意に改善されうる。各標的分子が1つの検出試薬で標識される他の大部分の検出方法とは異なり、高感度酵素触媒電気化学反応による1標的分子あたり複数ラベルの検出が可能である。
【0047】
さらに、本発明のいくつかの実施形態は、以前の技術よりも低い検出ノイズレベルを特徴とする。メチルホスホネートDNAまたはPNAなどの非荷電捕捉プローブを使用すると、電流検出範囲は約0ナノアンペア〜100マイクロアンペアになりうる。非荷電捕捉プローブは同時係属中の米国特許出願第10/429291号および第10/429293号に詳述されており、その全文は参照により明示的に本明細書に組み入れられる。
【0048】
また、触媒的検出技術を用いることによって、反応時間を短縮し、アッセイを単純化することができる。
【0049】
オンチップ増幅
チップなどの基板上にある核酸二重鎖のシグナルを増強するためのもう一つの技術は、捕捉プローブへのハイブリダイゼーション後に標的核酸を増幅または延長することである。次に、増幅または延長された標的核酸を検出試薬に結合させることができる。好ましくは、ハイブリダイズしていない捕捉プローブでの電流と、プローブ/標的二重鎖での電流との差が、できる限り大きくなるように、標的鎖を伸長する。この技術は「オンチップ増幅」と呼ぶことができ、米国特許出願第10/429293号に開示されている(この出願は参照によりその全文が明示的に本明細書に組み入れられる)。
【0050】
さまざまなオンチップ増幅法を使用することができる。オンチップ増幅の一方法を図3Aに図示する。この場合、ハイブリダイズした標的鎖の3’末端または5’末端を、電極上のDNA量を増大させる頭尾(head−to−tail)重合の標的にすることができる。通例、ここに示すように(固定化プローブおよび標的鎖は数えないで)3つの異なるオリゴヌクレオチドが使用されるだろう。すなわち、第1オリゴマーは、ハイブリダイズした標的鎖の3’末端に相補的であり(プライマー配列の相補鎖を標的とする)、その5’末端に配列Aを含有する。第2オリゴマーは、5’−A*B−3’という配列を持つ(ここにA*はAに対して相補的である)。第3オリゴヌクレオチドは5’−AB*−3’という配列を持つ。図3Aに図示するように、これらのオリゴマーは示したとおりのポリマー産物を形成することができる。頭尾重合は鎖が所望の長さに達するまで続けることができる。一般に、頭尾重合を行なう場合、最終的なポリヌクレオチドの長さは、一つには、頭尾オリゴマーの競合する環化反応によって制限される。しかし一般的には、液体媒質中の頭尾オリゴマーの濃度が高いほど、電極に取り付けられる線状ポリマーは長くなるだろう。
【0051】
オンチップ増幅のもう一つの方法を図3Bに図示する。この方法ではローリングサークル増幅(RCA)を用いる。好ましくは、試料由来の結合した標的核酸またはそこから生じさせた増幅産物もしくは伸長産物の3’末端に相補的な領域を持つ前形成のサークル(約40〜300ヌクレオチド)を、捕捉プローブにハイブリダイズさせた標的核酸またはそこから生じさせた増幅産物もしくは伸長産物にハイブリダイズさせる。次に、RCAが起こって、試料由来の結合した標的核酸またはそこから生じさせた増幅産物もしくは伸長産物が伸長されるように、連続移動性(processive)DNAポリメラーゼを加えることができる。好ましくは、試料由来の標的核酸を、約10〜10,000コピーのサークルによって伸長させる。次に、検出試薬をRCA産物に結合させる。
【0052】
オンチップ増幅のためのさらにもう一つの技術を図3Cに図示する。この技術は「ブリッジ(bridge)」増幅または「分岐(branch)」増幅と呼ぶことができる。というのも「ブリッジ化(bridging)」と「分岐化(branching)」は、この文脈では同義だからである。この方法では、試料由来の標的核酸またはそこから生じさせた増幅産物または伸長産物を、捕捉プローブにハイブリダイズさせる。第1前形成サークルを試料由来の標的核酸またはそこから生じさせた増幅産物もしくは伸長産物にハイブリダイズさせ、RCAを行なって第1RCA産物を生じさせる。第1RCA産物中の配列に相補的な配列と第2前形成サークル中の配列に相補的な配列とを含むブリッジ核酸を用意する。ブリッジ核酸を第1RCA産物にハイブリダイズさせ、第2前形成サークルを使って第2RCA手続きを行なうことにより、第2RCA産物を生じさせる。次に、検出試薬を、試料由来の標的核酸またはそこから生じさせた増幅産物もしくは伸長産物、第1RCA産物、ブリッジ核酸、第2RCA産物、あるいは先に挙げた核酸の任意の2以上に結合させる。所望であれば、第1RCA手続きおよび/または第2RCA手続きを頭尾重合または他の伸長手続きで置き換えうることは、理解されるだろう。また、ローリングサークル増幅に前形成のサークルを使用するのではなく、標的核酸またはそこから生じさせた増幅産物もしくは伸長産物あるいはブリッジ核酸にハイブリダイズする配列を各末端に含有する線状分子を、ハイブリダイゼーション後に環化させて、RCA用の環状テンプレート生成させうることも理解されるだろう。
【0053】
さらに、ブリッジ増幅技術を使用する場合は、「超ブリッジ化(hyperbridging)」または「超分岐化(hyperbranching)」と呼ばれる技術を使って分岐化の程度を増加させることが有利になりうる。超ブリッジ化の一例を図3Dに示す。ここでは、第2RCA産物中の配列に相補的な配列と第3前形成サークル中の配列に相補的な配列とを含む第2ブリッジ核酸が用意される。第2ブリッジ核酸を第2RCA産物にハイブリダイズさせ、第3前形成サークルを使って第3RCA手続きを行なうことにより、第3RCA産物を生じさせる。次に、検出試薬を、試料由来の標的核酸またはそこから生じさせた増幅産物もしくは伸長産物、第1RCA産物、第1ブリッジ核酸、第2RCA産物、第2ブリッジ核酸、第3RCA産物、あるいは先に挙げた核酸の任意の2以上に結合させる。所望であれば、第1RCA手続き、第2RCA手続き、第3RCA手続き、またはそれらの任意の組合せを、頭尾重合または他の伸長手続きで置き換えうることは、理解されるだろう。また、RCA手続きのいずれかに前形成のサークルを使用するのではなく、標的核酸またはそこから生じさせた増幅産物もしくは伸長産物、第1ブリッジ核酸、あるいは第2ブリッジ核酸にハイブリダイズする配列を各末端に含有する線状分子を、ハイブリダイゼーション後に環化させて、RCA用の環状テンプレート生成させうることも理解されるだろう。
【0054】
ローリングサークル増幅または頭尾重合などの伸長技術を、超ブリッジ化プロセスと一緒に使用することが、一般に有利である。伸長は一般に、ハイブリダイズした核酸をハイブリダイズしていない核酸と識別しやすくするために、電気化学的に検出することができる核酸材料を付加する目的を満たすが、このプロセスは、核酸が長いほど追加のブリッジを付加することができる位置が多くなるという点でも有益でありうる。
【0055】
ブリッジ化および超ブリッジ化は、核酸の存在量を指数的に増加させることができるので、とりわけ有用な技術になりうる。ブリッジ化技術および超ブリッジ化技術のさらなる議論は、例えばUrdea,Biotechnology 12:926(1994)、Hornら,Nucleic Acids Res. 25(23):4835−4841(1997)、Lizardiら,Nature Genetics 19,225−232(1998)、Kingsmoreら(米国特許第6,291,187号)、Lizardiら(PCT出願WO97/19193)などに見いだすことができ、これらは全て参照により本明細書に組み入れられる。
【0056】
オンチップ増幅を含むアッセイを行なう場合は、ブリッジ化ステップを使ってまたはブリッジ化ステップを使わずに、ハイブリダイゼーションを検出することができる。ハイブリダイズした核酸にHRPを会合させるために検出プローブを使用すると仮定すると、以下の2つの例は、ブリッジ化を特徴としないアッセイおよびブリッジ化を特徴とするアッセイにおいて取られうるステップを、それぞれ略述するものである。
【0057】
ブリッジ化を用いない方法は、一般に以下のステップを含む:1)標的をプローブに結合させる;2)(随意)ライゲーションにより特異性を決定する;3)結合した標的上でRCAを行なう;4)フルオレセインなどのエピトープを含有する検出プローブを加える;抗体がエピトープに結合することができるような形で酸化還元部分に連結された抗体を加える;5)酸化還元部分の存在に関係する酸化還元活性を検出する。
【0058】
ブリッジ化ステップを特徴とする方法は、一般に以下のステップを含む:1)標的をプローブに結合させる;2)(随意)ライゲーションにより特異性を決定する;3)結合した標的上でRCAを行なう;4)ブリッジ核酸および第2サークルを加える;5)ブリッジでRCAを行なう;6)RCA産物にハイブリダイズする検出子プローブであって、フルオレセインなどのエピトープを含有するものを加える;7)エピトープに結合することができるような形で酸化還元部分に連結された抗体を加える;8)酸化還元部分の存在に関係する酸化還元活性を検出する。
【0059】
オンチップ増幅を行なった後、増加したDNA量は、より大きくより検出しやすいシグナルを生成することができる。これはアッセイ目的には有利でありうる。なぜなら、プローブと標的の両方が通例、何らかの検出可能シグナルを生じるからである。標的のシグナルが増強されると、ハイブリダイズした捕捉プローブとハイブリダイズしていない捕捉プローブとの相違が大きくなるだろう。しかし、場合によっては、メチルホスホネートおよびPNAなどの核酸類似体を捕捉プローブとして使用することができる。別の実施形態では、メチルホスホネートおよびPNAなどの核酸類似体を、検出子プローブとして使用することができる。
【0060】
したがって、核酸のオンチップ増幅は、ハイブリダイズした標的のシグナルを増強するのに有用な技術の一つである。オンチップ増幅は単独で使用するか、触媒的検出などの他のシグナル増強技術と一緒に使用することができる。したがって、いくつかの好ましい実施形態は、以下のステップを含む:(1)電極表面上に固定化した捕捉プローブに標的をハイブリダイズさせるステップ;(2)高い連続移動性および鎖置換能を持つポリメラーゼを使ってオンチップローリングサークル増幅を行なうステップ;(3)チップ上の増幅産物に検出子プローブを結合させるステップ;および(4)高い電気化学反応性を持つ酵素から生成される触媒的シグナルを検出するステップ。
【0061】
オンチップ増幅とHRPによる触媒的検出との両方を使って直接病原体検出を行なうためのシグナル増幅を、図4に図解する。基板8上に位置する2つの電極表面10Aおよび10Bが示されている。捕捉プローブ20Aおよび20B(異なる配列を持つもの)がそれぞれ電極表面10Aおよび10Bに固定化される。標的鎖22がアッセイに導入される。この標的22は捕捉プローブ20Aに相補的であるが、捕捉プローブ20Bには相補的でない。したがって標的22は捕捉プローブ20Aにハイブリダイズするが、20Bにはハイブリダイズしない。標的22がハイブリダイズすると、それはオンチップ増幅によって伸長され、その結果伸長した部分はオンチップRCA産物23と呼ぶことができる。次に、複数の酸化還元部分24がアッセイに導入される。これらの部分はカチオン電荷を含有し、核酸のリン酸基と静電的に会合する。酸化還元部分は捕捉プローブ20Aおよび20B、標的鎖22、およびRCA産物23と会合する。複数の酸化還元反応28が各酸化還元部分で起こる。これらの酸化還元反応は電子の移動を含み、それは、電子が電極10Aおよび10Bを通過する際に電流を生成する。10A電極における反応量は10B電極における反応量を超えるので、10A電極における検出可能な電気シグナルの方が大きくなる。これは、20A捕捉プローブが標的22に相補的であり、かつ捕捉プローブ20Bは標的22に相補的でないと、アッセイ使用者が結論できるということを意味する。
【0062】
RCAおよびシグナル結合のスキームを図5に示す。この実例では、存在するDNAをさらに増加させ、シグナルを増強するために、分岐化(「ブリッジ化」ともいう)が用いられる。ここでは捕捉プローブ10が電極表面10に固定化される。次に、第1サークル50をプローブ20に(捕捉プローブ10上の「P2」がサークル50上の「C2」に相補的である区域で)ハイブリダイズさせる。ハイブリダイゼーション後にRCAが進行して、固定化された捕捉プローブ20から伸びる第1RCA産物23Aが生成する。次に、ブリッジ60を第1RCA産物23Aにハイブリダイズさせる(第1RCA産物23Aの「Pt」領域はブリッジ60の「Ct」領域に相補的である)。次に、第1サークル50Bがブリッジ60にハイブリダイズする(ブリッジ60の「Px16」領域は、第2サークル50Bの「Cx16」領域に相補的である)。次に、第2サークル50Bがブリッジ60にハイブリダイズした場所でRCAが進行して、第2RCA産物23Bが生成する。次に、検出子プローブ30が第2RCA産物23Bにハイブリダイズする。検出子プローブ30に取り付けられたフルオレセイン(FL)が示されており、そのフルオレセインにはHRPが(例えば抗体複合体によって)カップリングされる。その場合、HRPは酸化還元反応に参加して、電極10で検出可能な電子の流れを誘発することができる。核酸配列も記載する。
【0063】
いくつかの実施形態では、オスターヤング矩形波ボルタンメトリー(OSWV)を使って、RCAによるシグナル増幅を記録することができる。この技術を使った場合、非サークル対照は−200mVの電圧で約0.050μAの電流を生成することが観察された(「非サークル」対照では、ハイブリダイゼーション後にRCAが起こらない)。非相補対照捕捉プローブ(配列65.5)も、−200mVの電圧で約0.05μAの電流を生じることが観察された(「非相補」対照では、標的が捕捉プローブに相補的でなく、したがってハイブリダイズしない)。しかし、ハイブリダイズし、RCAによる増幅を受けた標的は、−200mVの電圧で約0.450μAの電流を生成した。
【0064】
固定化プローブのin−situライゲーションを用いる代替的伸長方法の一例を図6に示す。図示するように、捕捉プローブ20を電極10上に固定化し、固定化プローブの遊離端を超えて伸びる領域を持つ相補的標的22を、捕捉プローブ20にハイブリダイズさせる。次に、標的22のうち捕捉プローブ30を超えて伸びている区間に相補的な領域を持つ第3ポリヌクレオチド80を、ハイブリダイズした標的22にハイブリダイズさせる。次に、第3ポリヌクレオチド80を固定化捕捉プローブ30にライゲートする。これを達成するために、第3ポリヌクレオイド80は、標的22がプローブ20に相補的である領域の直ぐ隣に位置する標的22中の配列に、ハイブリダイズしうる。もう一つの選択肢として、プローブ20に相補的な標的配列と第3ポリヌクレオチド80に相補的な標的配列との間にはギャップが存在してもよい。ギャップが存在する実施形態では、ライゲーションに先だってポリメラーゼを使ってギャップを埋めることができる。第3ポリヌクレオチド80を例えばローリングサークル増幅などによって延長すると有利である。また、多くの実施形態では、固定化された核酸にブリッジ60をハイブリダイズさせることも有利である。これらのブリッジの伸長は、電極上に固定化された核酸の量をさらに増強する。次に、図6に示すように、遷移金属錯体(例えばルテニウム錯体)または酵素(例えばHRP)などの酸化還元部分24が、最初に起こったプローブ/標的ハイブリダイゼーションの指示薬として、核酸と会合しうる。
【0065】
病原体検出の一例を図7に示す。ここでは、病原体由来の標的ヌクレオチド22が固定化プローブ20にハイブリダイズし、ブリッジ60が標的22に取り付けられ、ブリッジ60がローリングサークル増幅によって伸長されることにより、RCA産物23が作られる。この例では、酸化還元部分24がブリッジ60およびRCA産物23とだけ会合する。これは病原体検出において有利である。なぜなら、検出に利用できる標的の量は非常に少ない場合が多いからである。酸化還元部分24がプローブ20および標的22と会合するのを防ぐような形でのアッセイの調製は、荷電主鎖を含有しないホスホネートおよびPNAなどの核酸類似体を用いることによって達成することができる。この技術は、核酸ハイブリダイゼーションが起こっていない電極での電子移動が引き起こす背景ノイズを最小限に抑えることにより、真の陽性結果を、比較上はるかに顕著にするために使用することができる。
【実施例】
【0066】
実施例1:オンチップ増幅、ブリッジ化、および触媒的検出を用いる核酸アッセイ
以下のプロセスを核酸検出アッセイに使用した。
【0067】
NeutrAvidin(Pierce Biotechnology, Inc.から入手可能な脱グリコシル化型アビジン)で修飾した電極表面にビオチン化捕捉プローブを固定化した。この固定化捕捉プローブはDNA伸長のプライマーとしても役だった。
【0068】
電極表面に固定化された捕捉プローブに、環状58マーDNA(サークル1)をハイブリダイズさせた。ローリングサークル増幅(RCA)によるプライマー伸長を、Bst DNAポリメラーゼおよび他の必要な化学薬品の存在下で開始させた。RCAの作用により、dNTPsが、前記サークルの何千もの反復コピーから構成される一本鎖コンカテマーDNA分子に変換された。使用したサークルの量は極めて少なく、数百〜数千DNA分子の範囲だった。
【0069】
ステップ2におけるRCA産物と第2環状DNA(サークル2)の間をブリッジするもう一つのDNA分子を、ステップ2で生成したコンカテマーDNA分子にハイブリダイズさせた。次に第2環状DNAを、そのブリッジDNA分子にハイブリダイズさせた。RCA反応を再び行なった。この第2RCA反応は分岐DNAをもたらした。したがって逐次的なRCAによるシグナル増幅は指数的である。
【0070】
RCAによって生じた分岐DNAの一部に相補的でありかつ2つのフルオレセイン分子で修飾されている15マーDNA分子を、分岐DNAにハイブリダイズさせた。次に、検出子プローブとして役立つように、その15マーフルオレセイン修飾DNAに、抗フルオレセインPODを結合させた。
【0071】
サークル1の検出は、TMBを媒介物質として、PODによるH2O2の水への還元によって行なった。読出しは定常状態電流−時間曲線である。極めて低濃度のサークル1の存在下での電流応答は、サークル不在下での電流応答より数倍大きかった。
【0072】
実施例2:オンチップ増幅、ブリッジ化、および触媒的検出を用いる代替的核酸アッセイ
電極表面上に固定化したアビジンによって固定化された捕捉プローブは、標的に相補的な配列を含有する。次に、試料核酸をプローブにハイブリダイズさせる。標的内の配列に相補的な配列を含有する環状プローブを加える。このサークルは、後続のステップで使用する検出子プローブに相補的な特異的配列も含有する。
【0073】
好ましくは100ntより小さいサイズを持つこのサークルは、まず、電極上に固定化したプローブにハイブリダイズさせた標的核酸に結合する。ポリメラーゼ酵素の存在下で、標的核酸をプライマーとして、サークル配列は一定温度で複数回コピーされる。その結果、検出子プローブに相補的である複数コピーの配列を含むサークルの配列に相補的な複数の反復配列を含有する表面固定化伸長DNA分子が得られる。オンチップRCA用の好ましいDNAポリメラーゼには、高い連続移動性および強い鎖置換特徴を持つもの、例えばΦ29 DNAポリメラーゼ、Bst DNAポリメラーゼ、大腸菌DNAポリメラーゼの大(クレノウ)フラグメント、およびシークエナーゼなどがある。
【0074】
洗浄後に、伸長されたDNA産物を、RCA産物の一部に相補的なハプテン標識検出子プローブにハイブリダイズさせる。次に、フルオレセインまたはジゴキシギニン(Digoxiginin)などのハプテンが抗体−HRPコンジュゲートに結合し、電子移動媒介物質および過酸化水素の存在下で、酵素的電子移動反応により、触媒的電流を生成する。
【0075】
あるいは、上述のように検出子プローブをRCA産物にハイブリダイズさせるのではなく、以下のように第2RCA産物を生成させる。この実施形態では、RCA産物の一部に相補的なヌクレオチド配列および第2環状プローブに相補的な核酸配列を含む線状ブリッジ核酸を、そのブリッジ核酸が第1サークルからの増幅産物をその5’末端で、そして第2サークルをその3’末端でブリッジするように、RCA産物にハイブリダイズさせる。RCA時に、第1サークルは第1サークルの相補配列の繰り返しを複数含有する線状DNA産物を生成し、一方、第2サークルは第2RCA産物を生成する。結果として、数百万倍〜数十億倍の増幅が一定温度で数時間のうちに達成され、DNA標的の高感度な検出が可能になる。増幅後に、両サークルから生成したDNA産物中に存在する反復配列に、検出子プローブを結合させる。最後に、抗Fl−HRPコンジュゲートが検出子プローブに結合し、触媒的電気化学的検出により、シグナルがさらに増幅される。
【0076】
手続きを簡単にするために検出子プローブを増幅溶液中に加えることもできる。
【0077】
実施例3:パッドロック(padlock)プローブサークルの使用
パッドロックプローブサークル(PLPC)を以下の核酸検出アッセイで抗フルオレセイン−HRPコンジュゲートと共に使用した。
【0078】
FV−PLP 75.03(PLPC,配列番号13)の250nM試料を使って、1:100、1:1000、および1:10,000の希釈液を調製した。捕捉プローブ(65.4)(配列番号26)をチップ上に固定化した後、各希釈度のサークルを捕捉プローブに37℃で15分間結合させた。次に、結合したサークルを利用するオンチップRCA反応を60℃で1時間進行させた。
【0079】
次に、固定化核酸を0.25μM FL−T7−FLシグナルプローブと共にハイブリダイゼーション緩衝液中、室温で20分間インキュベートした。PBS/カゼイン中の抗フルオレセイン−HRPの1:200希釈液をチップと共に室温で20分間インキュベートした。定常状態電流測定を、Enhanced K−Blue溶液(Neogen Corp.から入手したもの)中で30秒間行なった。
【0080】
結果を表1に示す。表示のとおり、電極あたりのPLPC分子数は、電極における検出可能電流と直接的関係を持つことが観察された。
【0081】
【表1】
【0082】
HRP触媒法を使った検出をルテニウム錯体静電検出と比較した。例えば、ルテニウムヘキサミン(ruthenium hexamine)などのルテニウム錯体を使った検出は、触媒的プロセスではなく、移動した電子をルテニウム錯体に渡し、移動した電子はそこに留まる。これは、還元されたルテニウム錯体が再利用されてより多くの電子を受け取るようにはならないことを意味している。したがって、このように非触媒的であるプロセスは、使用される酸化還元部分(ルテニウムヘキサミンなど)の量によって、その正確さが制限される。触媒的検出を非触媒的検出と比較した結果を図8に示す。図の上側に、触媒的検出を棒グラフとして、対応する時間経過と共に示す。ルテニウム錯体を使った非触媒的検出は、下部の4つの線グラフに示す。ルテニウム結果において、各グラフについて12のシグナルは4パッドチップでの3回の読みに対応する。最も低い4シグナルのセットはNeutrAvidinのみであり、次の4つはNeutrAvidin+捕捉プローブを表し、最も高い4つはNeutrAvidin+捕捉プローブ+捕捉されたアンプリコンのRCA産物を表す。
【0083】
図8に示すように、触媒的検出の方が、極めて希薄な試料では特に、高い感度が可能である。例えば触媒的検出法では、1:100、1:1000、1:10,000、および0の希釈度は全て、対応する電流に基づいて互いに容易に識別される。しかしルテニウム検出では、1:100および1:1000の希釈度は容易に識別されるが、1:10,000の希釈度と0の希釈度に対応する電流の間には認知できる相違がない。したがって、ルテニウムを使った場合、検出限界は希釈度1:1000と希釈度1:10,000の間のどこかにあるが、HRPを使った場合の検出限界がそれよりかなり低い。
【0084】
実施例4:定量的検出
試料中の標的核酸を定量することができる本発明のさらなる応用例を図9に示す。図示するように、濃度が25pM、250pM、および2500pMの標的核酸を、触媒的プロセスを使って検出した。検出可能な電流は存在する標的核酸の濃度と共に変化した。これにより、実際の濃度がわからない場合に、試料中の標的核酸濃度を、検出された電流に基づいて予測することが可能になるだろう。この実施形態の実用的応用例には、例えば特定試料における病原体の蔓延を決定することが含まれる。より具体的には、この技術は、特定ウイルスによる感染を患っている患者におけるウイルス量を決定するために使用することができるだろう。
【0085】
実施例5:標的、ブリッジ、およびサークルの濃度を変化させつつ、オンチップ増幅および触媒的検出を使って行なったハイブリダイゼーションの検出
ハイブリダイゼーションアッセイにおいて以下のプロセスを使用した。
【0086】
表2に列挙する成分を使って、電極表面上に沈着させる薄膜を調製した。
【0087】
【表2】
【0088】
この溶液2μlを遺伝子チップ上のさまざまな電極スポットに移し、乾燥させた。安定な被膜が施され、真空乾燥された。乾燥した薄膜を乾燥器中に一晩保存した。
【0089】
乾燥した薄膜を10mM Hepes+250mM LiCl+0.05%Tween 20中に37℃で15分間置いた後、10mM Hepes+10mM NaCl中ですすぎ洗いした。
【0090】
このアッセイで使用した配列を図10(図10‐1、図10‐2)に示す。標的(70.52)(配列番号7)、ブリッジ(39.29)(配列番号11)、およびサークル(75.03)(配列番号13)のハイブリダイゼーションは、10mM Hepes+1M LiClまたは10mM Tris+1M NaCl+1mM EDTA中で2.5nMの各成分を混合することにより、溶液状態で行なった。その混合物を80℃まで10分間加熱し、室温に冷却した。
【0091】
捕捉プローブへの上記混合物のハイブリダイゼーションは、混合物10μlを各チップ表面に適用し、37℃で15分間インキュベートし、実験台上で室温まで冷却することによって行なった。
【0092】
ハイブリダイゼーション後に、チップ表面上の溶液を吸い取り紙で取り除き、続いてpH7.5の10mM Hepes+1M LiClまたは10mM Tris+1M NaClで洗浄した。
【0093】
電極を吸い取り紙で乾燥させ、RCA作業溶液20μlを各チップの表面に移した。RCAを37℃で1時間行なった。RCA作業溶液10μlは、10X緩衝液1μl、10mM dNTP 1.5μl、2M KCl 0.5μl、水6.5μlおよびphi29 DNAポリメラーゼ0.5μlを含有した。
【0094】
チップ表面に残っているRCA作業溶液を吸い取り紙で乾燥させた後、10mM Tris+200mM NaClですすぎ洗いし、10mM Tris+200mM NaClに保存した。
【0095】
次に検出子プローブ(2つのフルオレセインで修飾されたT7配列の一部)とのハイブリダイゼーションを行なった。これを達成するために、10mM Tris+1M NaCl+1mM EDTA+0.05%BSA中、0.25μMの検出子プローブを、ハイブリダイゼーション溶液中に用意した。ハイブリダイゼーションは37℃で15分間行い、実験台上で室温まで冷却した。
【0096】
吸い取り紙でチップを乾燥し、1 XPBS(0.008M NaPi+0.002M Kpi+0.14M NaCl+0.01M KCl pH7.4)ですすぎ洗いした。
【0097】
チップ表面に残っているPBS溶液を吸い取り紙で除去した。次に、0.5%カゼインを含有するPBS中の抗フルオレセイン−PODの1:200希釈液を含有するハイブリダイゼーションウェルにチップを適用した。
【0098】
チップを吸い取り紙で乾燥させた後、1XPBSですすぎ洗いし、1XPBS中に保存した。
【0099】
K−blue溶液を受け取ったままの状態で使用した。測定はAg/AgCl(Ag線)に対して−200mVで30秒間行なった。
【0100】
チップ上に沈着させる溶液を調製する際に、2種類の標的核酸濃度を使用し、4種類のブリッジ核酸濃度およびサークル核酸濃度を使用した。それらの濃度を表3に示す。
【0101】
【表3】
【0102】
アッセイの結果を図11に示す。図示するように、標的、ブリッジ、およびサークル核酸鎖の濃度を変化させると、標的核酸の濃度と相関関係にある電流レベルがもたらされたことから、試料中に存在する標的核酸のレベルの定量における上述した方法の有効性が実証された。
【0103】
実施例6:HRPを使った検出を伴う2段階RCA
以下の実施例では、電気化学的検出アッセイを行なう際に「2段階」RCA手続きを使用した。このプロセスを図12に図解する。図示するように、合成的に調製された第1サークル100が、捕捉プローブによって捕捉され、プライマー伸長が起こる。図12では、セグメント化されたサークルおよび線状核酸分子が描かれている。各セグメントはそれが含有するユニークな塩基配列によって定義される。RCAプロセスが起こると、サークルが回転を完了する度に、それらのセグメントが反復される。例えば、4つのセグメントを含有する第1サークル100を示し、そのうちの1つのセグメントを「Cx247」と呼ぶ。「Cx247」セグメントは、最初に固定化された鎖の第1アンプリコン102上の「Px247」と呼ばれるセグメントに相補的である。第1サークルのもう一つのセグメントを「Cn」と呼ぶ。「Cn」セグメントはアンプリコン102上の相補的「Pn」セグメントに相補的である。
【0104】
次のステップでは、第2サークル110にハイブリダイズしたプライマーを含有するRCA開始複合体を使って、二次増幅が起こる。図12に示す第2サークル110は3つのセグメントを含有し、そのうちの2つは、それぞれ「Px247]および「T7」と呼ばれる。次にこのRCA開始複合体が第2RCAプロセスを実行する。さらに、第2RCAの産物は、第1RCAの産物にハイブリダイズすることができる。図12に示すように、第1アンプリコン102はセグメントPx247を含有し、第2アンプリコン112は配列Cx247を含有する。Px247とCx247は相補的であるので、これら2つの鎖の間にこれらのセグメントでハイブリダイゼーションが起こりうる。ハイブリダイゼーションの結果は、電極に取り付けられる核酸の量を効果的に増加させ、それによって、核酸の存在に基づく検出可能な電気シグナルを増強するということである。
【0105】
さらに、追加のRCA開始複合体(第3環状分子にハイブリダイズしたプライマーを含有するもの)を利用する「多段階」RCA手続きを使用することができる。図12に示すように、第3サークル120は、第3RCAを行なって第3アンプリコン122を生じさせることができる第2RCA開始複合体中に使用される。ここでは、「t7」と呼ばれるセグメントが、第2アンプリコン112上のPt7と呼ばれるセグメントに相補的である。先ほどと同様に、相補的領域はハイブリダイズすることができ、電極に取り付けられた核酸の量をさらに増加させることができる。さらに、多段階RCA手続きは追加のRCA開始複合体を伴い、例えば第4、第5、第6、および/または第7RCAプロセスあるいはそれ以上の、追加のRCA手続きを特徴とすることができると考えられる。そのような手続きのRCA産物は、それらがアッセイ内で他の任意のRCA産物にハイブリダイズすることができるように調製することができる。さまざまなRCA産物のそれぞれが別の鎖にハイブリダイズすることができて、各RCA産物が最初に固定化された鎖に直接的または間接的に取り付けられることになるように、さまざまなRCA産物を設計することが有利である。
【0106】
HRPによる検出を伴う2段階RCAを以下のように行なった。電極表面上に捕捉プローブを固定化することにより、それぞれが12個の電極を含有するアッセイチップを調製した。プローブは、検査対象であるライゲートされたPLPサークル標的に特異的であるという理由で選択された。次にチップを10mM Hepes、pH7.5/200mM NaCl中に37℃で20分間浸漬した。矩形波ボルタンメトリー(SWV)を、10mM Tris/10mM NaCl緩衝液中の5μM Ru(NH3)63+内で行なった。12パッドチップ上に標的含有溶液20μlを加えることによって、標的ハイブリダイゼーションを行なった。チップを60℃で10分間および室温で30分間インキュベートした。チップを10mM Tris/200mM NaCl緩衝液ですすぎ洗いした。50mM Tris(pH7.5)を含有するRCA溶液を1チップに20μLずつ、150mM KCl、10mM Mg2Cl、4mM DTT、10mM硫酸アンモニウム、1.5mM dNTP、フルオレセインタグを含有する検出子プローブ400nM、およびφ29 DNAポリメラーゼ20単位と共に加えた。次に、RCAを室温で5分間進行させた。10nM汎用PLPおよび15nM RCA開始複合体のライゲーションによって得た汎用サークル溶液2μlを各チップに加え、37℃で1時間インキュベートした。チップをPBS緩衝液ですすぎ洗いした。PBS/0.5%カゼイン中の1:200希釈抗フルオレセインHRPコンジュゲート50μlを各チップに加え、室温で30分間インキュベートした。チップをPBS/0.05%Tween 20ですすぎ洗いした。定常状態電流をK−Blue溶液中でAg線に対して−200mVで測定した。
【0107】
結果を図13に示す。図示するように、観察された電流は第2RCA段階後の方が、第1RCA段階後よりも高い。
【0108】
実施例7:ルテニウムヘキサミンを使った検出を伴う2段階RCA
Ru(NH3)63+を使った矩形波ボルタンメトリー(SWV)による検出を伴う2段階RCAを以下のように行なった。ライゲートされたPLPサークルに特異的な捕捉プローブを固定化したチップを、10mM Hepes、pH7.5/200mM NaClに37℃で20分間浸漬した。矩形波ボルタンメトリー(SWV)を10mM Tris/10mM NaCl緩衝液中の5μM Ru(NH3)63+内で行なった。12パッドチップ上に標的含有溶液20μlを加えることによって、標的ハイブリダイゼーションを行なった。チップを60℃で10分間および室温で30分間インキュベートした。チップを10mM Tris/200mM NaCl緩衝液ですすぎ洗いした。50mM Tris(pH7.5)を含有するRCA溶液を1チップに20μLずつ、150mM KCl、10mM Mg2Cl、4mM DTT、10mM硫酸アンモニウム、1.5mM dNTP、およびφ29 DNAポリメラーゼ20単位と共に加えた。次に、RCAを室温で5分間進行させた。10nM汎用PLPおよび15nM RCA開始複合体のライゲーションによって得た汎用サークル溶液2μlを各チップに加え、37℃で70分間インキュベートした。チップをPBS緩衝液ですすぎ洗いした。SWVを10mM Tris/10mM NaCl緩衝液中の5μM Ru(NH3)63+内で行なった。
【0109】
結果を図14に示す。図示するように、観察される電流はRCA後の方がRCA前より高く、RCA後の検出可能電流は濃度と相関関係を示す。
【0110】
本明細書に記載した技術を用いることにより、ブリッジ化、伸長、触媒的検出、およびそれらのさまざまな組合せによって、DNA標的の超高感度検出を可能にすることができる。オンチップRCAは標的の限局的増幅および検出を可能にする。したがって、PCRまたは他のタイプの増幅スキームより優れた、DNA診断の多重化ならびに細菌またはウイルスの検出を行なうための技術を実施することができる。
【0111】
本発明のいくつかの実施形態は、電気化学的検出だけでなく、他のタイプの検出様式、例えば蛍光、化学発光、および比色法などにも使用することができる。いくつかの実施形態は、マイクロプレートアッセイ、マイクロアレイアッセイ、メンブレンおよびフィルターアッセイ、ならびにさまざまな形式の電極基板上での電気化学的アッセイに使用することができる。
【0112】
さらに、いくつかの実施形態は、PCRおよび細胞培養などの標的増幅を行なわずに用いることができる。例えば細菌を検出する場合、1個の細菌細胞は数千コピー〜数十億コピーのrRNAを含有し、その各々は、数千ヌクレオチド〜数十万ヌクレオチドの範囲にわたる長さを持つ。ここに開示する技術には、1標的分子につき複数の検出子試薬および酵素触媒型電気化学的検出という利点があり、これを感染性疾患の迅速かつ直接的な検出に利用することができる。
【0113】
さらに、いくつかの実施形態は、試料中の標的核酸のレベルを定量するために用いることができる。ある個体中で病原生物がどの程度増殖しているかを測定する場合にそのような定量は役立つ。特に、いくつかの実施形態は、感染した個体におけるウイルス量を測定するのに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】HRPおよびTMBを使ってH2O2を水に変換する触媒サイクルを表す図である。
【図2A】ハイブリダイズした核酸に静電的に会合した検出部分を表す図である。
【図2B】ハイブリダイズした核酸に検出子プローブを使って会合した検出部分を表す図である。
【図3A】頭尾重合を用いるオンチップ増幅を説明する図である。
【図3B】ローリングサークル増幅を用いるオンチップ増幅を説明する図である。
【図3C】分岐技術をローリングサークル増幅と併せて用いるオンチップ増幅を説明する図である。
【図3D】超分岐技術をローリングサークル増幅と併せて用いるオンチップ増幅を説明する図である。
【図4】オンチップ増幅と触媒的検出の両方を用いる病原体直接検出用のシグナル増幅を説明する図である。
【図5】オンチップ増幅と、検出子プローブ(そこにHRPがカップリングできるもの)のハイブリダイゼーションとの両方を用いるプロセスを表す図である。
【図6】in−situライゲーションおよびRCAを用いるハイブリダイゼーションの直接検出の一例を表す図である。
【図7】病原体検出の一例を表す図である。
【図8A】HRPを用いる触媒的検出と、ルテニウム錯体を用いる標準的な電気化学的検出との比較を表す図である。
【図8B】HRPを用いる触媒的検出と、ルテニウム錯体を用いる標準的な電気化学的検出との比較を表す図である。
【図8C】HRPを用いる触媒的検出と、ルテニウム錯体を用いる標準的な電気化学的検出との比較を表す図である。
【図9】試料中の核酸標的の濃度と検出可能電流との関係を表す図である。
【図10−1】HPV検出アッセイにおいて標的、捕捉プローブ、およびブリッジとして使用した核酸配列を表す図である。
【図10−2】HPV検出アッセイにおいて標的、捕捉プローブ、およびブリッジとして使用した核酸配列を表す図である。
【図11A】標的、ブリッジ、およびサークル核酸鎖の濃度を変化させたアッセイの結果を表す図である。
【図11B】標的、ブリッジ、およびサークル核酸鎖の濃度を変化させたアッセイの結果を表す図である。
【図11C】標的、ブリッジ、およびサークル核酸鎖の濃度を変化させたアッセイの結果を表す図である。
【図12】サークルが捕捉プローブによって捕捉され、捕捉された核酸を増幅するために多段階RCAが行なわれるRCA手続きを表す図である。
【図13A】2段階RCAとHRPを使った検出とを用いるアッセイの結果を表す図である。
【図13B】2段階RCAとHRPを使った検出とを用いるアッセイの結果を表す図である。
【図14A】2段階RCAとルテニウムヘキサミンを使った検出とを用いるアッセイの結果を表す図である。
【図14B】2段階RCAとルテニウムヘキサミンを使った検出とを用いるアッセイの結果を表す図である。
【図14C】2段階RCAとルテニウムヘキサミンを使った検出とを用いるアッセイの結果を表す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料が標的ポリヌクレオチドを含有するかどうかを決定する方法であって、
前記試料を、前記標的ポリヌクレオチド中の配列の少なくとも一部に相補的な捕捉プローブポリヌクレオチドを含有する検出ゾーンと、前記標的ポリヌクレオチドが前記捕捉プローブポリヌクレオチドにハイブリダイズすることを許す条件下で、接触させるステップ、
前記捕捉プローブポリヌクレオチドにハイブリダイズしている任意の標的ポリヌクレオチドを延長するステップ、および
前記試料中の前記標的ポリヌクレオチドの存在を示すシグナルであって、消耗されずに複数のシグナルを生じさせることができる触媒的検出試薬によって生成されるシグナルが、生成しているかどうかを決定するステップ
を含む方法。
【請求項2】
検出ゾーンが電極を含む、請求項1の方法。
【請求項3】
前記標的ポリヌクレオチドが生物学的試料に由来する核酸配列を含む、請求項1の方法。
【請求項4】
前記標的ポリヌクレオチドが核酸タグ配列を含む、請求項1の方法。
【請求項5】
標的ポリヌクレオチドを延長するステップが、前記標的ポリヌクレオチドを第1環状分子にハイブリダイズさせ、前記標的ポリヌクレオチドを前記第1環状分子に沿って延長することにより、第1ローリングサークル増幅産物を生じさせることを含む、請求項1の方法。
【請求項6】
標的ポリヌクレオチドを延長するステップが頭尾増幅手続きを実行することを含む、請求項1の方法。
【請求項7】
前記触媒的検出試薬を前記延長された標的ポリヌクレオチドと会合させることをさらに含む、請求項1の方法。
【請求項8】
前記触媒的検出試薬が、消耗されずに何度も酸化および還元されうる試薬を含む、請求項1の方法。
【請求項9】
前記触媒的検出試薬がペルオキシダーゼを含み、前記決定ステップが、電極から前記ペルオキシダーゼへの電子の移動によって電圧または電流が生成されているかどうかを決定することを含む、請求項1の方法。
【請求項10】
電子移動媒介物質が前記電極から電子を受け取り、前記電子を前記ペルオキシダーゼに移動させる、請求項9の方法。
【請求項11】
前記ペルオキシダーゼが電子を過酸化水素に移動させる、請求項10の方法。
【請求項12】
前記ペルオキシダーゼが核酸プローブに結合される、請求項9の方法。
【請求項13】
前記ペルオキシダーゼが核酸と静電的に相互作用する分子に結合される、請求項9の方法。
【請求項14】
核酸と静電的に相互作用する前記分子が、カチオン性ポリマー、カチオン性ペプチド、ポリアミン、スペルミジン、およびスペルミンからなる群より選択される、請求項13の方法。
【請求項15】
前記ペルオキシダーゼがセイヨウワサビペルオキシダーゼである、請求項9の方法。
【請求項16】
前記触媒的検出試薬を前記延長された標的ポリヌクレオチドと会合させる、請求項1の方法。
【請求項17】
前記第1ローリングサークル増幅産物中の配列に相補的な配列および第2環状分子中の配列に相補的な配列を含む第1ブリッジ核酸を、前記第1ローリングサークル増幅産物および前記第2環状分子にハイブリダイズさせること、および
前記ブリッジ核酸を前記第2環状分子に沿って延長することにより、第2ローリングサークル増幅産物を生成させること
をさらに含む、請求項5の方法。
【請求項18】
前記決定ステップが、前記第1ローリングサークル増幅産物、前記第2ローリングサークル増幅産物、前記ブリッジ核酸、または先に挙げた核酸の任意の2以上に結合される触媒的検出試薬によって、シグナルが生じているかどうかを決定することを含む、請求項17の方法。
【請求項19】
前記触媒的検出試薬が前記第2ローリングサークル増幅産物に結合される、請求項17の方法。
【請求項20】
前記第2ローリングサークル増幅産物中の配列に相補的な配列および第3環状分子中の配列に相補的な配列を含む第2ブリッジ核酸を、前記第2ローリングサークル増幅産物および前記第3環状分子にハイブリダイズさせること、および
前記ブリッジ核酸を前記第2環状分子に沿って延長することにより、第2ローリングサークル増幅産物を生成させること
をさらに含む、請求項17の方法。
【請求項21】
前記決定ステップが、前記第1ローリングサークル増幅産物、前記第2ローリングサークル増幅産物、前記第3ローリングサークル増幅産物、前記第1ブリッジ核酸、前記第2ブリッジ核酸または先に挙げた核酸の任意の2以上に結合される触媒的検出試薬によってシグナルが生じているかどうかを決定することを含む、請求項20の方法。
【請求項22】
前記触媒的検出試薬が前記第3ローリングサークル増幅産物に結合される、請求項21の方法。
【請求項23】
試料が標的ポリヌクレオチドを含有するかどうかを決定する方法であって、
前記試料を、前記標的ポリヌクレオチド中の配列の少なくとも一部に相補的な捕捉プローブポリヌクレオチドを含む検出ゾーンと、前記標的ポリヌクレオチドが前記捕捉プローブポリヌクレオチドにハイブリダイズすることを許す条件下で、接触させるステップ、
前記捕捉プローブポリヌクレオチドにハイブリダイズしている任意の標的ポリヌクレオチドに、第1ブリッジをハイブリダイズさせるステップ、および
前記試料中の前記標的ポリヌクレオチドの存在を示すシグナルであって、消耗されずに複数のシグナルを生じさせることができる触媒的検出試薬によって生成されるシグナルが、生成しているかどうかを決定するステップ
を含む方法。
【請求項24】
前記標的ポリヌクレオチドが生物学的試料に由来する核酸配列を含む、請求項23の方法。
【請求項25】
前記標的ポリヌクレオチドが核酸タグ配列を含む、請求項23の方法。
【請求項26】
第1ブリッジが延長される、請求項23の方法。
【請求項27】
第1ブリッジがローリングサークル増幅によって延長される、請求項26の方法。
【請求項28】
第2ブリッジが前記第1ブリッジに取り付けられる、請求項23の方法。
【請求項29】
触媒的検出試薬がペルオキシダーゼを含む、請求項23の方法。
【請求項30】
ペルオキシダーゼがセイヨウワサビペルオキシダーゼである、請求項29の方法。
【請求項31】
試料が標的ポリヌクレオチドを含有するかどうかを決定する方法であって、
前記試料を、前記標的ポリヌクレオチド中の配列の少なくとも一部に相補的な捕捉プローブポリヌクレオチドを含有する検出ゾーンと、前記標的ポリヌクレオチドが前記捕捉プローブポリヌクレオチドにハイブリダイズすることを許す条件下で、接触させるステップ、
前記標的ポリヌクレオチドを第3ポリヌクレオチドにハイブリダイズさせるステップ、
前記第3ポリヌクレオチドを前記プローブポリヌクレオチドにライゲートするステップ、および
前記試料中の前記標的ポリヌクレオチドの存在を示すシグナルであって、消耗されずに複数のシグナルを生じさせることができる触媒的検出試薬によって生成されるシグナルが、生成しているかどうかを決定するステップ
を含む方法。
【請求項32】
前記標的ポリヌクレオチドが生物学的試料に由来する核酸配列を含む、請求項31の方法。
【請求項33】
前記標的ポリヌクレオチドが核酸タグ配列を含む、請求項31の方法。
【請求項34】
前記第3ポリヌクレオチドを伸長することをさらに含む、請求項31の方法。
【請求項35】
第1ブリッジを前記伸長された第3ポリヌクレオチドにハイブリダイズさせることをさらに含む、請求項34の方法。
【請求項36】
第1ブリッジがローリングサークル増幅によって伸長される、請求項35の方法。
【請求項37】
第2ブリッジを前記伸長された第1ブリッジにハイブリダイズさせる、請求項36の方法。
【請求項38】
触媒的検出試薬がペルオキシダーゼを含む、請求項31の方法。
【請求項39】
ペルオキシダーゼがセイヨウワサビペルオキシダーゼである、請求項38の方法。
【請求項40】
試料中の標的ポリヌクレオチドの量を定量する方法であって、
前記試料を、前記標的ポリヌクレオチド中の配列の少なくとも一部に相補的な捕捉プローブポリヌクレオチドを含有する検出ゾーンと、前記標的ポリヌクレオチドが前記捕捉プローブポリヌクレオチドにハイブリダイズすることを許す条件下で、接触させるステップ、
前記捕捉プローブポリヌクレオチドにハイブリダイズしている任意の標的ポリヌクレオチドを延長するステップ、
前記試料中の前記標的ポリヌクレオチドの存在を示すシグナルであって、消耗されずに複数のシグナルを生じさせることができる触媒的検出試薬によって生成されるシグナルを、検出するステップ、および
シグナルのレベルに基づいて試料中に存在する標的ポリヌクレオチドの量を定量するステップ
を含む方法。
【請求項41】
前記標的ポリヌクレオチドが生物学的試料に由来する核酸配列を含む、請求項40の方法。
【請求項42】
前記標的ポリヌクレオチドが核酸タグ配列を含む、請求項40の方法。
【請求項43】
検出ゾーンが電極を含む、請求項40の方法。
【請求項44】
標的ポリヌクレオチドを延長するステップが、前記標的ポリヌクレオチドを第1環状分子にハイブリダイズさせること、および前記標的ポリヌクレオチドを前記第1環状分子に沿って延長することにより、第1ローリングサークル増幅産物を生じさせることを含む、請求項40の方法。
【請求項45】
標的ポリヌクレオチドを延長するステップが頭尾増幅手続きを実行することを含む、請求項40の方法。
【請求項46】
前記触媒的検出試薬を前記延長された標的ポリヌクレオチドと会合させることをさらに含む、請求項40の方法。
【請求項47】
前記触媒的検出試薬が、消耗されずに何度も酸化および還元されうる試薬を含む、請求項40の方法。
【請求項48】
前記触媒的検出試薬がペルオキシダーゼを含み、前記決定ステップが、電極から前記ペルオキシダーゼへの電子の移動によって電流が生成しているかどうかを決定することを含む、請求項40の方法。
【請求項49】
電子移動媒介物質が前記電極から電子を受取り、前記電子を前記ペルオキシダーゼに移動させる、請求項48の方法。
【請求項50】
前記ペルオキシダーゼが電子を過酸化水素に移動させる、請求項49の方法。
【請求項51】
前記ペルオキシダーゼが核酸プローブに結合される、請求項48の方法。
【請求項52】
前記ペルオキシダーゼが核酸と静電的に相互作用する分子に結合される、請求項48の方法。
【請求項53】
核酸と静電的に相互作用する前記分子が、カチオン性ポリマー、カチオン性ペプチド、ポリアミン、スペルミジン、およびスペルミンからなる群より選択される、請求項52の方法。
【請求項54】
前記ペルオキシダーゼがセイヨウワサビペルオキシダーゼである、請求項48の方法。
【請求項55】
前記触媒的検出試薬を前記延長された標的ポリヌクレオチドと会合させる、請求項40の方法。
【請求項56】
前記第1ローリングサークル増幅産物中の配列に相補的な配列および第2環状分子中の配列に相補的な配列を含む第1ブリッジ核酸を、前記第1ローリングサークル増幅産物および前記第2環状分子にハイブリダイズさせること、および
前記ブリッジ核酸を前記第2環状分子に沿って延長することにより、第2ローリングサークル増幅産物を生成させること
をさらに含む、請求項44の方法。
【請求項57】
前記決定ステップが、前記第1ローリングサークル増幅産物、前記第2ローリングサークル増幅産物、前記ブリッジ核酸、または先に挙げた核酸の任意の2以上に結合される触媒的検出試薬によってシグナルが生じているかどうかを決定することを含む、請求項56の方法。
【請求項58】
前記触媒的検出試薬が前記第2ローリングサークル増幅産物に結合される、請求項56の方法。
【請求項59】
前記第2ローリングサークル増幅産物中の配列に相補的な配列および第3環状分子中の配列に相補的な配列を含む第2ブリッジ核酸を、前記第2ローリングサークル増幅産物および前記第3環状分子にハイブリダイズさせること、および
前記ブリッジ核酸を前記第2環状分子に沿って延長することにより、第2ローリングサークル増幅産物を生成させること
をさらに含む、請求項56の方法。
【請求項60】
前記決定ステップが、前記第1ローリングサークル増幅産物、前記第2ローリングサークル増幅産物、前記第3ローリングサークル増幅産物、前記第1ブリッジ核酸、前記第2ブリッジ核酸または先に挙げた核酸の任意の2以上に結合される触媒的検出試薬によってシグナルが生じているかどうかを決定することを含む、請求項59の方法。
【請求項61】
前記触媒的検出試薬が前記第3ローリングサークル増幅産物に結合される、請求項60の方法。
【請求項1】
試料が標的ポリヌクレオチドを含有するかどうかを決定する方法であって、
前記試料を、前記標的ポリヌクレオチド中の配列の少なくとも一部に相補的な捕捉プローブポリヌクレオチドを含有する検出ゾーンと、前記標的ポリヌクレオチドが前記捕捉プローブポリヌクレオチドにハイブリダイズすることを許す条件下で、接触させるステップ、
前記捕捉プローブポリヌクレオチドにハイブリダイズしている任意の標的ポリヌクレオチドを延長するステップ、および
前記試料中の前記標的ポリヌクレオチドの存在を示すシグナルであって、消耗されずに複数のシグナルを生じさせることができる触媒的検出試薬によって生成されるシグナルが、生成しているかどうかを決定するステップ
を含む方法。
【請求項2】
検出ゾーンが電極を含む、請求項1の方法。
【請求項3】
前記標的ポリヌクレオチドが生物学的試料に由来する核酸配列を含む、請求項1の方法。
【請求項4】
前記標的ポリヌクレオチドが核酸タグ配列を含む、請求項1の方法。
【請求項5】
標的ポリヌクレオチドを延長するステップが、前記標的ポリヌクレオチドを第1環状分子にハイブリダイズさせ、前記標的ポリヌクレオチドを前記第1環状分子に沿って延長することにより、第1ローリングサークル増幅産物を生じさせることを含む、請求項1の方法。
【請求項6】
標的ポリヌクレオチドを延長するステップが頭尾増幅手続きを実行することを含む、請求項1の方法。
【請求項7】
前記触媒的検出試薬を前記延長された標的ポリヌクレオチドと会合させることをさらに含む、請求項1の方法。
【請求項8】
前記触媒的検出試薬が、消耗されずに何度も酸化および還元されうる試薬を含む、請求項1の方法。
【請求項9】
前記触媒的検出試薬がペルオキシダーゼを含み、前記決定ステップが、電極から前記ペルオキシダーゼへの電子の移動によって電圧または電流が生成されているかどうかを決定することを含む、請求項1の方法。
【請求項10】
電子移動媒介物質が前記電極から電子を受け取り、前記電子を前記ペルオキシダーゼに移動させる、請求項9の方法。
【請求項11】
前記ペルオキシダーゼが電子を過酸化水素に移動させる、請求項10の方法。
【請求項12】
前記ペルオキシダーゼが核酸プローブに結合される、請求項9の方法。
【請求項13】
前記ペルオキシダーゼが核酸と静電的に相互作用する分子に結合される、請求項9の方法。
【請求項14】
核酸と静電的に相互作用する前記分子が、カチオン性ポリマー、カチオン性ペプチド、ポリアミン、スペルミジン、およびスペルミンからなる群より選択される、請求項13の方法。
【請求項15】
前記ペルオキシダーゼがセイヨウワサビペルオキシダーゼである、請求項9の方法。
【請求項16】
前記触媒的検出試薬を前記延長された標的ポリヌクレオチドと会合させる、請求項1の方法。
【請求項17】
前記第1ローリングサークル増幅産物中の配列に相補的な配列および第2環状分子中の配列に相補的な配列を含む第1ブリッジ核酸を、前記第1ローリングサークル増幅産物および前記第2環状分子にハイブリダイズさせること、および
前記ブリッジ核酸を前記第2環状分子に沿って延長することにより、第2ローリングサークル増幅産物を生成させること
をさらに含む、請求項5の方法。
【請求項18】
前記決定ステップが、前記第1ローリングサークル増幅産物、前記第2ローリングサークル増幅産物、前記ブリッジ核酸、または先に挙げた核酸の任意の2以上に結合される触媒的検出試薬によって、シグナルが生じているかどうかを決定することを含む、請求項17の方法。
【請求項19】
前記触媒的検出試薬が前記第2ローリングサークル増幅産物に結合される、請求項17の方法。
【請求項20】
前記第2ローリングサークル増幅産物中の配列に相補的な配列および第3環状分子中の配列に相補的な配列を含む第2ブリッジ核酸を、前記第2ローリングサークル増幅産物および前記第3環状分子にハイブリダイズさせること、および
前記ブリッジ核酸を前記第2環状分子に沿って延長することにより、第2ローリングサークル増幅産物を生成させること
をさらに含む、請求項17の方法。
【請求項21】
前記決定ステップが、前記第1ローリングサークル増幅産物、前記第2ローリングサークル増幅産物、前記第3ローリングサークル増幅産物、前記第1ブリッジ核酸、前記第2ブリッジ核酸または先に挙げた核酸の任意の2以上に結合される触媒的検出試薬によってシグナルが生じているかどうかを決定することを含む、請求項20の方法。
【請求項22】
前記触媒的検出試薬が前記第3ローリングサークル増幅産物に結合される、請求項21の方法。
【請求項23】
試料が標的ポリヌクレオチドを含有するかどうかを決定する方法であって、
前記試料を、前記標的ポリヌクレオチド中の配列の少なくとも一部に相補的な捕捉プローブポリヌクレオチドを含む検出ゾーンと、前記標的ポリヌクレオチドが前記捕捉プローブポリヌクレオチドにハイブリダイズすることを許す条件下で、接触させるステップ、
前記捕捉プローブポリヌクレオチドにハイブリダイズしている任意の標的ポリヌクレオチドに、第1ブリッジをハイブリダイズさせるステップ、および
前記試料中の前記標的ポリヌクレオチドの存在を示すシグナルであって、消耗されずに複数のシグナルを生じさせることができる触媒的検出試薬によって生成されるシグナルが、生成しているかどうかを決定するステップ
を含む方法。
【請求項24】
前記標的ポリヌクレオチドが生物学的試料に由来する核酸配列を含む、請求項23の方法。
【請求項25】
前記標的ポリヌクレオチドが核酸タグ配列を含む、請求項23の方法。
【請求項26】
第1ブリッジが延長される、請求項23の方法。
【請求項27】
第1ブリッジがローリングサークル増幅によって延長される、請求項26の方法。
【請求項28】
第2ブリッジが前記第1ブリッジに取り付けられる、請求項23の方法。
【請求項29】
触媒的検出試薬がペルオキシダーゼを含む、請求項23の方法。
【請求項30】
ペルオキシダーゼがセイヨウワサビペルオキシダーゼである、請求項29の方法。
【請求項31】
試料が標的ポリヌクレオチドを含有するかどうかを決定する方法であって、
前記試料を、前記標的ポリヌクレオチド中の配列の少なくとも一部に相補的な捕捉プローブポリヌクレオチドを含有する検出ゾーンと、前記標的ポリヌクレオチドが前記捕捉プローブポリヌクレオチドにハイブリダイズすることを許す条件下で、接触させるステップ、
前記標的ポリヌクレオチドを第3ポリヌクレオチドにハイブリダイズさせるステップ、
前記第3ポリヌクレオチドを前記プローブポリヌクレオチドにライゲートするステップ、および
前記試料中の前記標的ポリヌクレオチドの存在を示すシグナルであって、消耗されずに複数のシグナルを生じさせることができる触媒的検出試薬によって生成されるシグナルが、生成しているかどうかを決定するステップ
を含む方法。
【請求項32】
前記標的ポリヌクレオチドが生物学的試料に由来する核酸配列を含む、請求項31の方法。
【請求項33】
前記標的ポリヌクレオチドが核酸タグ配列を含む、請求項31の方法。
【請求項34】
前記第3ポリヌクレオチドを伸長することをさらに含む、請求項31の方法。
【請求項35】
第1ブリッジを前記伸長された第3ポリヌクレオチドにハイブリダイズさせることをさらに含む、請求項34の方法。
【請求項36】
第1ブリッジがローリングサークル増幅によって伸長される、請求項35の方法。
【請求項37】
第2ブリッジを前記伸長された第1ブリッジにハイブリダイズさせる、請求項36の方法。
【請求項38】
触媒的検出試薬がペルオキシダーゼを含む、請求項31の方法。
【請求項39】
ペルオキシダーゼがセイヨウワサビペルオキシダーゼである、請求項38の方法。
【請求項40】
試料中の標的ポリヌクレオチドの量を定量する方法であって、
前記試料を、前記標的ポリヌクレオチド中の配列の少なくとも一部に相補的な捕捉プローブポリヌクレオチドを含有する検出ゾーンと、前記標的ポリヌクレオチドが前記捕捉プローブポリヌクレオチドにハイブリダイズすることを許す条件下で、接触させるステップ、
前記捕捉プローブポリヌクレオチドにハイブリダイズしている任意の標的ポリヌクレオチドを延長するステップ、
前記試料中の前記標的ポリヌクレオチドの存在を示すシグナルであって、消耗されずに複数のシグナルを生じさせることができる触媒的検出試薬によって生成されるシグナルを、検出するステップ、および
シグナルのレベルに基づいて試料中に存在する標的ポリヌクレオチドの量を定量するステップ
を含む方法。
【請求項41】
前記標的ポリヌクレオチドが生物学的試料に由来する核酸配列を含む、請求項40の方法。
【請求項42】
前記標的ポリヌクレオチドが核酸タグ配列を含む、請求項40の方法。
【請求項43】
検出ゾーンが電極を含む、請求項40の方法。
【請求項44】
標的ポリヌクレオチドを延長するステップが、前記標的ポリヌクレオチドを第1環状分子にハイブリダイズさせること、および前記標的ポリヌクレオチドを前記第1環状分子に沿って延長することにより、第1ローリングサークル増幅産物を生じさせることを含む、請求項40の方法。
【請求項45】
標的ポリヌクレオチドを延長するステップが頭尾増幅手続きを実行することを含む、請求項40の方法。
【請求項46】
前記触媒的検出試薬を前記延長された標的ポリヌクレオチドと会合させることをさらに含む、請求項40の方法。
【請求項47】
前記触媒的検出試薬が、消耗されずに何度も酸化および還元されうる試薬を含む、請求項40の方法。
【請求項48】
前記触媒的検出試薬がペルオキシダーゼを含み、前記決定ステップが、電極から前記ペルオキシダーゼへの電子の移動によって電流が生成しているかどうかを決定することを含む、請求項40の方法。
【請求項49】
電子移動媒介物質が前記電極から電子を受取り、前記電子を前記ペルオキシダーゼに移動させる、請求項48の方法。
【請求項50】
前記ペルオキシダーゼが電子を過酸化水素に移動させる、請求項49の方法。
【請求項51】
前記ペルオキシダーゼが核酸プローブに結合される、請求項48の方法。
【請求項52】
前記ペルオキシダーゼが核酸と静電的に相互作用する分子に結合される、請求項48の方法。
【請求項53】
核酸と静電的に相互作用する前記分子が、カチオン性ポリマー、カチオン性ペプチド、ポリアミン、スペルミジン、およびスペルミンからなる群より選択される、請求項52の方法。
【請求項54】
前記ペルオキシダーゼがセイヨウワサビペルオキシダーゼである、請求項48の方法。
【請求項55】
前記触媒的検出試薬を前記延長された標的ポリヌクレオチドと会合させる、請求項40の方法。
【請求項56】
前記第1ローリングサークル増幅産物中の配列に相補的な配列および第2環状分子中の配列に相補的な配列を含む第1ブリッジ核酸を、前記第1ローリングサークル増幅産物および前記第2環状分子にハイブリダイズさせること、および
前記ブリッジ核酸を前記第2環状分子に沿って延長することにより、第2ローリングサークル増幅産物を生成させること
をさらに含む、請求項44の方法。
【請求項57】
前記決定ステップが、前記第1ローリングサークル増幅産物、前記第2ローリングサークル増幅産物、前記ブリッジ核酸、または先に挙げた核酸の任意の2以上に結合される触媒的検出試薬によってシグナルが生じているかどうかを決定することを含む、請求項56の方法。
【請求項58】
前記触媒的検出試薬が前記第2ローリングサークル増幅産物に結合される、請求項56の方法。
【請求項59】
前記第2ローリングサークル増幅産物中の配列に相補的な配列および第3環状分子中の配列に相補的な配列を含む第2ブリッジ核酸を、前記第2ローリングサークル増幅産物および前記第3環状分子にハイブリダイズさせること、および
前記ブリッジ核酸を前記第2環状分子に沿って延長することにより、第2ローリングサークル増幅産物を生成させること
をさらに含む、請求項56の方法。
【請求項60】
前記決定ステップが、前記第1ローリングサークル増幅産物、前記第2ローリングサークル増幅産物、前記第3ローリングサークル増幅産物、前記第1ブリッジ核酸、前記第2ブリッジ核酸または先に挙げた核酸の任意の2以上に結合される触媒的検出試薬によってシグナルが生じているかどうかを決定することを含む、請求項59の方法。
【請求項61】
前記触媒的検出試薬が前記第3ローリングサークル増幅産物に結合される、請求項60の方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図10−1】
【図10−2】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図10−1】
【図10−2】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【公表番号】特表2007−512810(P2007−512810A)
【公表日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−539763(P2006−539763)
【出願日】平成16年11月10日(2004.11.10)
【国際出願番号】PCT/US2004/037407
【国際公開番号】WO2005/047474
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(504377851)ジーンオーム サイエンシーズ、インク. (9)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月10日(2004.11.10)
【国際出願番号】PCT/US2004/037407
【国際公開番号】WO2005/047474
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(504377851)ジーンオーム サイエンシーズ、インク. (9)
【Fターム(参考)】
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