説明

増大したメルトフローを示す無機充填ポリアミドおよびポリエステル組成物の製造方法およびそれから形成された物品

メルトフローの増大した、無機充填ポリアミドおよびポリエステルの製造方法であって、ポリアミドまたはポリエステルが、少なくとも1種の芳香族カルボン酸および/または無水物、無機充填剤、および任意選択的に1種以上の追加の成分と溶融ブレンドされ、芳香族カルボン酸および/または無水物は、ポリアミドまたはポリエステルの融点吸熱の開始温度以下の融点を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増大したメルトフローを示す無機充填ポリアミドおよびポリエステル組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高メルトフロー(または低溶融粘度、これらの用語は区別なく用いられる)は、溶融処理可能なポリマー樹脂組成物の非常に望ましい特性である。というのは、射出成形等のプロセスに非常に用い易くなるためである。高メルトフローおよび低溶融粘度の組成物は、この特性を持たない他の樹脂に比べて非常に容易に射出成形することができる。このような組成物は、低い射出圧力および温度でかなりの程度まで鋳型を充填する能力、ならびに、薄い断面の複雑な鋳型設計を充填できる高い能力を有する。線状ポリマーについては、ポリマー分子量と溶融粘度の間には、通常、正相関がある。
【0003】
無機充填剤を添加して、所望の物理的特性を得るのも望ましいことが多い。しかしながら、無機充填剤の存在によって、得られる樹脂の溶融粘度の増大につながることが多い。さらに、充填剤は、典型的に、溶融ブレンドプロセスを用いて添加され、ポリマーマトリックスに十分よく分散されて、最良の物理的特性を得るのが好ましい。溶融ブレンド中の成分の分散は、ポリマーマトリックスが高溶融粘度を有しているときに、より効率的に生じることが多いため、充填された組成物を製造するのに用いるには、このような高溶融粘度を有するポリマーマトリックスを選択するのが望ましいことが多い。
【0004】
従って、改善されたメルトフローを有する無機充填ポリアミドまたはポリエステル組成物を製造する方法が望まれている。さらに、多くの流量増加剤と反応する炭酸カルシウム等の反応性無機充填剤を存在させて、このような組成物を製造することが望まれている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に開示および特許請求されているのは、高メルトフローを示す無機強化組成物の製造方法であって、少なくとも1種のポリアミドおよび/または少なくとも1種のポリエステルを含む熱可塑性ポリマーを、ポリアミドおよび/またはポリエステルの総重量を基準として、約0.1〜約10重量パーセントの少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸無水物、芳香族トリカルボン酸および/または芳香族トリカルボン酸無水物と、少なくとも1種の無機充填剤と、任意選択的に1種または複数種の追加の成分と溶融ブレンドすることを含み、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸無水物、芳香族トリカルボン酸無水物および/または芳香族トリカルボン酸無水物は、ポリアミドまたはポリエステルの融点吸熱の開始温度以下の融点を有する方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
改善されたメルトフローを有する無機充填ポリアミドおよびポリエステル組成物を製造する方法が提供される。本方法は、ポリアミドおよび/またはポリエステルを、少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸無水物、芳香族トリカルボン酸および/または芳香族トリカルボン酸無水物(本明細書では「芳香族カルボン酸および/または無水物」と称す)と、少なくとも1種の無機充填剤と、任意選択的に1種または複数種の追加の成分と溶融ブレンドすることを含み、芳香族ジカルボン酸および/または無水物は、ポリアミドまたはポリエステルの融点吸熱の開始温度以下の融点を有する。
【0007】
本発明の方法で使用されるポリアミドは、少なくとも1種の熱可塑性ポリアミドである。好適なポリアミドは、ジカルボン酸とジアミンおよび/またはアミノカルボン酸の縮合生成物、および/または環状ラクタムの開環重合生成物である。好適なジカルボン酸としては、これらに限られるものではないが、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジ酸、イソフタル酸およびテレフタル酸が挙げられる。好適なジアミンとしては、これらに限られるものではないが、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、2−メチルオクタメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ビス(p−アミノシクロヘキシル)メタン、m−キシレンジアミンおよびp−キシレンジアミンが挙げられる。好適なアミノカルボン酸は、11−アミノドデカン酸である。好適な環状ラクタムは、カプロラクタムおよびラウロラクタムである。好ましいポリアミドとしては、脂肪族ポリアミド、例えば、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド4,6、ポリアミド6,10、ポリアミド6,12、ポリアミド11、ポリアミド12、半芳香族ポリアミド、例えば、ポリ(m−キシリレンアジパミド)(ポリアミドMXD,6)、ポリ(ドデカメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド12,T)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド10,T)、ポリ(ノナメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド9,T)、ヘキサメチレンアジパミド/ヘキサメチレンテレフタルアミドコポリアミド(ポリアミド6,T/6,6)、ヘキサメチレンテレフタルアミド/2−メチルペンタメチレンテレフタルアミドコポリアミド(ポリアミド6,T/D,T)ならびにこれらのポリマーのコポリマーおよび混合物が挙げられる。ポリアミドは、非晶質ポリアミドまたは半結晶であってもよい。好適な非晶質ポリアミドの例としてヘキサメチレンテレフタルアミド/ヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマーが挙げられる。
【0008】
本発明の方法で使用されるポリエステルは、少なくとも1種の熱可塑性ポリエステルである。好ましいポリエステルとしては、固有粘度が0.3以上のポリエステルが挙げられ、通常、ジオールとジカルボン酸の線状飽和縮合生成物またはこれらの反応性誘導体である。好ましくは、8〜14個の炭素原子を有する芳香族ジカルボン酸と、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールおよび式HO(CH)nOH(式中、nは2〜10の整数)の脂肪族グリコールの縮合生成物を含む。20モルパーセントまでのジオールは、アクゾノーベルケミカルズ社(Akzo Nobel Chemicals,Inc.)よりジアノール(Dianol)220という商品名で販売されているエトキシル化ビスフェノールA、ヒドロキノン、ビスフェノールまたはビスフェノールA等の芳香族ジオールであってよい。50モルパーセントまでの芳香族ジカルボン酸は、8〜14個の炭素原子を有する少なくとも1種の異なる芳香族ジカルボン酸に置換でき、かつ/または20モルパーセントまでを、2〜12個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸に置換することができる。コポリマーは、2種以上のジオールまたはその反応性等価物および少なくとも1種のジカルボン酸またはその反応性等価物または2種以上のジカルボン酸またはその反応性等価物および少なくとも1種のジオールまたはその反応性等価物から調製してよい。ヒドロキシ安息香酸やヒドロキシナフトエ酸等の二官能性ヒドロキシ酸モノマーを用いてもよい。
【0009】
好ましいポリエステルとしては、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)(PBT)、ポリ(プロピレンテレフタレート)(PPT)、ポリ(1,4−ブチレンナフタレート)(PBN)、ポリ(エチレンナフタレート)(PEN)、ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)(PCT)およびこれらのコポリマーおよび混合物が挙げられる。同じく好ましいのは、1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート/イソフタレートコポリマー、イソフタル酸、ビベンゾイック酸、1,5−、2,6−および2,7−ナフタレンジカルボン酸をはじめとするナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、エチレン−ビス−p−安息香酸、1,4−テトラメチレンビス(p−オキシ安息香)酸、エチレンビス(p−オキシ安息香)酸、1,3−トリメチレンビス(p−オキシ安息香)酸および1,4−テトラメチレンビス(p−オキシ安息香)酸をはじめとする芳香族ジカルボン酸から誘導されたその他線状ホモポリマーエステル、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノールからなる群より選択されるグリコール、一般式HO(CH)nOH(式中、nは2〜10の整数)の脂肪族グリコール、例えば、エチレングリコール、1,3−トリメチレングリコール、1,4−テトラメチレングリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、1,8−オクタメチレングリコール、1,10−デカメチレングリコール、1,3−プロピレングリコールおよび1,4−ブチレングリコールである。上述したとおり、アジピン、セバシン、アゼライン、ドデカンジ酸または1,4−シクロヘキサンジカルボン酸から誘導された1種または複数種の脂肪族酸から誘導された20モルパーセントまでの繰り返し単位が存在し得る。同じく好ましいのは、1,4−ブタンジオール、エトキシル化ビスフェノールAおよびテレフタル酸またはその反応性等価物から誘導されたコポリマーである。同じく好ましいのは、少なくとも2種のPET、PBTおよびPPTのランダムコポリマー、少なくとも2種のPET、PBTおよびPPTの混合物およびこれらの混合物である。
【0010】
ポリエステルはまた、ポリ(アルキレンオキシド)ソフトセグメントを含有するコポリマーの形態であってもよい。ポリ(アルキレンオキシド)セグメントは、ポリエステルの重量を基準として100重量部当たり約1〜約15重量部で存在し得る。ポリ(アルキレンオキシド)セグメントの数平均分子量は、約200〜約3250、より好ましくは、約600〜約1500の範囲である。好ましいコポリマーは、PETまたはPBT鎖に組み込まれたポリ(エチレンオキシド)を含有する。組み込み方法は、当業者に知られており、重合反応中に、コモノマーとしてポリ(アルキレンオキシド)ソフトセグメントを用いて、ポリエステルを形成することが含まれる。PETは、PBTのコポリマーおよび少なくとも1種のポリ(アルキレンオキシド)とブレンドしてよい。ポリ(アルキレンオキシド)はまた、PET/PBTコポリマーとブレンドしてもよい。ポリ(アルキレンオキシド)ソフトセグメントを組成物のポリエステル部分に含めると、ポリエステルの結晶化速度が促進される。
【0011】
本発明の方法で用いる芳香族カルボン酸および/または無水物は、その融点が、ポリアミドまたはポリエステルの融点吸熱の開始温度以下の融点を有するようなものを選択する。
【0012】
「芳香族ジカルボン酸」とは、少なくとも2つのカルボン酸部分が、芳香族環に結合した有機化合物のことを意味する。「芳香族ジカルボン酸無水物」とは、少なくとも2つのカルボン酸部分が、芳香族環に結合した有機化合物のジカルボン酸無水物のことを意味する。「芳香族トリカルボン酸」とは、少なくとも3つのカルボン酸部分が、芳香族環に結合した有機化合物のことを意味する。「芳香族トリカルボン酸無水物」とは、少なくとも3つのカルボン酸部分が、芳香族環に結合した有機化合物のジカルボン酸無水物のことを意味する。
【0013】
芳香族カルボン酸および/または無水物を参照して本明細書で用いる際、「融点」という用語は、有機酸が融点を有していない場合には、昇華点または分解点のことを指す。好適な芳香族カルボン酸および/または無水物としては、フタル酸、無水フタル酸および無水トリメリト酸が例示される。
【0014】
ポリアミドまたはポリエステルの「融点吸熱の開始温度」とは、ASTM法D3418−82(改訂1988年)に従って、示差走査熱量計(DSC)により測定される、ポリアミドまたはポリエステルの融解曲線の外挿開始温度(T)を意味する。ポリアミドまたはポリエステルが、2つ以上の融点吸熱を有する場合は、最低融点吸熱の開始温度を選択する。2種以上のポリアミドまたはポリエステルを用いる場合には、最低融点吸熱開始温度のポリアミドまたはポリエステルの融点吸熱の開始温度を選択する。
【0015】
芳香族カルボン酸および/または無水物は、約0.01〜約10重量パーセント、好ましくは約0.05〜約2重量パーセント、より好ましくは約0.1〜約1重量パーセントで用いる。重量百分率は、ポリアミドまたはポリエステルの総重量を基準とする。
【0016】
用いるポリアミドまたはポリエスエルプラス芳香族カルボン酸および/または無水物の量は、ポリアミドおよび/またはポリエステル、無機充填剤、芳香族カルボン酸および/または無水物ならびに任意の追加の成分の総量を基準として、好ましくは、約40〜約95重量パーセント、より好ましくは約50〜約90重量パーセント、より好ましくは約60〜約85重量パーセントである。
【0017】
無機充填剤は、任意の非繊維状無機物で、フレーク、板状、顆粒、球状、立方体、管状、歯状、矩形、不規則等の形態を有していてよい。「繊維状」という用語は、繊維状または針状形態を有し、数平均アスペクト比が少なくとも約5の材料のことを意味する。好適な充填剤としては、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、か焼クレイ、硫酸マグネシウム、リザーダイト、セラミックビーズ、ヒュームドシリカ、珪灰石、水酸化カルシウム、バライト、長石、グラファイト、パーライト、バーミキュライトおよびアタパルジャイトが例示される。用いる無機充填剤の量は、ポリアミドおよび/またはポリエステル、無機充填剤、芳香族カルボン酸および/または無水物ならびに任意の追加の成分の総量を基準として、好ましくは約5〜約60重量パーセント、より好ましくは約10〜約50重量パーセント、さらに好ましくは約15〜約40重量パーセントである。
【0018】
本発明のプロセスで用いる任意の追加の成分は、約3を超えるアスペクト比を有する繊維状強化材を含むことができる。好適な強化材としては、ガラス繊維、カーボン繊維、珪灰石、アラミド、ホウ酸アルミニウムウィスカ等が例示される。存在するとき、用いる強化材の量は、ポリアミドおよび/またはポリエステル、無機充填剤、芳香族カルボン酸および/または無水物、強化材ならびに任意の追加の成分の総量を基準として、好ましくは約5〜約50重量パーセント、より好ましくは約10〜約40重量パーセント、さらに好ましくは約15〜約30重量パーセントである。
【0019】
本発明のプロセスで用いられる他の任意選択の追加成分として、1種または複数種の衝撃改質剤、可塑剤、熱安定剤、酸化安定剤、UV光安定剤、難燃剤、化学安定剤、潤滑剤、離型剤、着色剤(例えば、カーボンブラックやその他染料、顔料)、核形成剤、ナノクレイ等を挙げることができる。
【0020】
本発明のプロセスにおいて、ポリアミドまたはポリエステルおよび有機酸および任意の追加の成分は溶融ブレンドされる。成分は全て、溶融ブレンドの前にドライブレンドしてもよい。無機充填剤と予め溶融ブレンドしたポリアミドまたはポリエステルの混合物を、芳香族カルボン酸および/または無水物と溶融ブレンドしてもよい。無機充填剤と予め溶融ブレンドしたポリアミドまたはポリエステルの混合物を、芳香族カルボン酸および/または無水物と追加の添加剤と溶融ブレンドしてもよい。
【0021】
溶融ブレンドは、当業者に知られた任意の適切な方法を用いて実施してよい。好適な方法としては、単軸または二軸押出し機、ブレンダー、ニーダー、バンバリーミキサー、成形機等を用いることが挙げられる。二軸押出し機が好ましい。
【0022】
本発明のプロセスにより作製された組成物は、高メルトフローを有し、射出成形、回転成形技術およびその他溶融処理技術を用いて、様々な物品へと簡単に成形される。
【0023】
物品としては、コンピュータハウジング、ファンおよびファンシュラウド、ホイールカバーおよびスイッチハウジング等のハウジングが例示される。
【0024】
本発明のプロセスは、高メルトフローの無機強化ポリアミドおよびポリエステル組成物を製造する方法を意外にも提供するという点で有利である。本プロセスは、プロセスに用いる芳香族酸および/または無水物と大いに反応することが予測される炭酸カルシウム等の反応性無機充填剤の存在により、良好なメルトフローを有するポリアミドおよびポリエステル組成物を製造する方法を意外にもさらに提供するという点で特に有利である。
【実施例】
【0025】
(組成物の調製)
表1、2、4および5に示した成分を、9つのバレル押出し機で溶融ブレンドし、全ての成分をダイから最も遠いバレルに添加した。ただし、ガラス繊維と無機充填剤については、供給口から6番目のバレルに添加した。供給口から2番目のバレルの温度は、約280℃に設定し、残りのバレルは約300℃に設定した。ダイ温度は、約310℃に設定した。表1の組成物は、40mmのワーナーフライダー(Werner&Pfleiderer)共回転二軸押出し機で、約150ポンド/時の速度でコンパウンディングした。表2に示す組成物は、58mm共回転二軸押出し機で、約400ポンド/時の速度でコンパウンディングした。
【0026】
実施例A〜K(表5)の場合には、組成物は、二軸押出し機で、一連のカルボン酸化合物無し(対照組成物を製造するため)と、有り(無水カルボン酸を含む)の両方でポリアミドを溶融ブレンドすることにより調製した。組成物は、25重量パーセントの表に示す無機充填剤、15重量パーセントのガラス繊維、0.25重量パーセントのイルガフォス(Irgafos)(登録商標)168、0.5重量パーセントのナウガード(Naugard)(登録商標)445、1.54重量パーセントのカーボンブラック濃縮物、0.6重量パーセントの表に示したポリアミドとのニグロシン濃縮物、任意選択的に表に示したカルボン酸化合物を溶融ブレンドすることにより調製した。カルボン酸化合物を用いたときは、0.3重量パーセントで添加し、ポリアミドは56.81重量パーセントで添加した。カルボン酸化合物を用いなかったときは、ポリアミドは57.11重量パーセントで添加した。実施例A、D、E、G、HおよびIの場合には、2種のポリアミドのブレンドを用い、それぞれの相対重量比は表に示す。カルボン酸化合物を用いずに調製した得られた組成物の溶融粘度を測定し、「カルボン酸化合物無しのMV」として表5に示す。カルボン酸化合物を用いて調製した対応の組成物の溶融粘度を測定し、各組成物についての結果を、カルボン酸化合物を用いずに調製した組成物のMVの百分率で表1に示す。対照組成物の約85%以下までMVが減少しているのが望ましい。対照組成物の約115%以上までMVが増加するのは極めて望ましくない。フタル酸、無水フタル酸または無水トリメリト酸を用いて作製した組成物は、本発明の範囲内である。
【0027】
表1、2、4および5に示した成分は次のとおりである。
ポリアミドAとは、BASF製の、一次加熱融点が約223℃のウルトラミッド(Ultramid)(登録商標)B3、ポリアミド6のことを指す。
ポリアミドBとは、本願特許出願人製の、一次加熱融点が約263℃のザイテル(Zytel)(登録商標)101NC010、ポリアミド6,6のことを指す。
ポリアミドCとは、本願特許出願人製の、一次加熱融点が約237℃のザイテル(Zytel)(登録商標)FE3365NC010、ポリアミド6/6,6コポリマーのことを指す。
ポリアミドDとは、本願特許出願人製の、一次加熱融点が約224℃のザイテル(Zytel)(登録商標)FE3667NC010、ポリアミド6,10のことを指す。
ポリアミドEとは、本願特許出願人製の、ガラス転移温度が約125℃のHTN503、アモルファスポリアミドのことを指す。
炭酸カルシウム(CaCO)Aとは、スペシャルティミネラルズ(Specialty Minerals)より入手可能で、粒径中央値が8.0μmのビクロン(Vicron)(登録商標)41−8のことを指す。
炭酸カルシウムBとは、スペシャルティミネラルズ(Specialty Minerals)より入手可能で、粒径中央値が3.5μmのビクロン(Vicron)(登録商標)15−15のことを指す。
珪灰石とは、ニューヨーク州ウィルスボローのナイコミネラルズ社(Nyco Minerals,Inc.,Willsboro,NY)より供給される数平均アスペクト比が約3のナイアド(Nyad)(登録商標)475、珪灰石のことを指す。
カオリンとは、ニュージャージー州イセリンのエンジェルハード社(Engelhard Corp.,Iselin,NJ)より供給されるサテントーンスペシャル(Satintone Special)のことを指す。
ガラス繊維とは、サンゴバン(Saint Gobain)より入手可能なベトロテックス(Vetrotex)(登録商標)983のことを指す。
イルガフォス(Irgafos)(登録商標)168とは、チバガイギースペシャルティーズ(Ciba−Geigy Specialties)製トリス−(2−4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイトのことを指す。
ナウガード(Naugard)(登録商標)445とは、クロンプトン(Crompton)より入手可能な4,4’−ジ−(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミンのことを指す。
カーボンブラック濃縮物とは、エチレン/メチルアクリレートに溶融分散された35重量パーセントのカーボンブラックのことを指す。
ニグロシン濃縮物とは、ポリアミド6に溶融分散された40重量パーセントのニグロシンのことを指す。
シランとは、ガンマ−アミノプロピルトリエトキシシランのことを指す。
【0028】
(試験方法)
見かけの溶融粘度(MV)は、ASTM D3835またはISO11443に従って、1000秒−1のせん断速度および280℃で測定した。
破断時引張り強さおよび破断時伸びは、ISO527に従って、5mm/分で測定した。
ノッチ付きシャルピー(Charpy)衝撃強さは、ISO179に従って測定した。引張りモジュラスは、ISO527に従って測定した。
1.8MPaの熱たわみ温度は、ISO75に従って測定した。
融点は、ISO11357に従って測定した。
【0029】
【表1】

【0030】
【表2】

【0031】
【表3】

【0032】
【表4】

【0033】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
高メルトフローを示す無機強化組成物の製造方法であって、少なくとも1種のポリアミドおよび/または少なくとも1種のポリエステルを含む熱可塑性ポリマーを、ポリアミドおよび/またはポリエステルの総重量を基準として、約0.1〜約10重量パーセントの少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸無水物、芳香族トリカルボン酸および/または芳香族トリカルボン酸無水物と、少なくとも1種の無機充填剤と、任意選択的に1種または複数種の追加の成分と溶融ブレンドすることを含み、前記芳香族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸無水物、芳香族トリカルボン酸および/または芳香族トリカルボン酸無水物は、前記ポリアミドまたはポリエステルの融点吸熱の開始温度以下の融点を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記芳香族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸無水物、芳香族トリカルボン酸および/または芳香族トリカルボン酸無水物は、ポリアミドおよび/またはポリエステルの総重量を基準として、約0.05〜約2重量パーセントで存在することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記芳香族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸無水物、芳香族トリカルボン酸および/または芳香族トリカルボン酸無水物は、ポリアミドおよび/またはポリエステルの総重量を基準として、約0.1〜約1重量パーセントで存在することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記芳香族ジカルボン酸がフタル酸であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記芳香族ジカルボン酸無水物が無水フタル酸であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記芳香族トリカルボン酸無水物が無水トリメリト酸であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリアミドが、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド4,6、ポリアミド6,10、ポリアミド6,12、ポリアミド11およびポリアミド12からなる群の1つまたは複数から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリアミドが、ポリ(m−キシリレンジアジパミド)、ポリ(ドデカメチレンテレフタルアミド)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド)、ポリ(ノナメチレンテレフタルアミド)、ヘキサメチレンアジパミド/ヘキサメチレンテレフタルアミドコポリアミドおよびヘキサメチレンテレフタルアミド/2−メチルペンタメチレンテレフタルアミドコポリアミドからなる群の1つまたは複数から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリエステルが、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)、ポリ(プロピレンテレフタレート)、ポリ(1,4−ブチレンナフタレン)、ポリ(エチレンナフタレート)およびポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)からなる群の1つまたは複数から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記無機充填剤が、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、か焼クレイ、硫酸マグネシウム、リザーダイト、セラミックビーズ、ヒュームドシリカ、水酸化カルシウム、バライト、長石、グラファイト、パーライト、バーミキュライト、珪灰石およびアタパルジャイトの1つまたは複数から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記無機充填剤が炭酸カルシウムであることを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記組成物が強化材をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記強化材が、ガラス繊維、カーボン繊維、珪灰石およびアラミドの1つまたは複数であることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法により製造された組成物から成形された物品。
【請求項15】
コンピュータハウジング、ファン、ファンシュラウド、ホイールカバーまたはスイッチハウジングの形態にある請求項14に記載の物品。

【公表番号】特表2009−529602(P2009−529602A)
【公表日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−500392(P2009−500392)
【出願日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際出願番号】PCT/US2007/006005
【国際公開番号】WO2007/106379
【国際公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】