説明

増幅器

【課題】 小型かつ低価格で、広範囲な出力電力で高効率特性を有する増幅器を提供する。
【解決手段】 制御回路30が機能制御用電源供給部20に電力制御信号を出力して、低出力動作時は、高出力増幅器兼低損失抵抗器11が入力信号を増幅せず、高出力動作時は入力信号を増幅するように、高出力増幅器兼低損失抵抗器11への供給電力を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型高出力増幅器に関する。特に携帯端末のような電池で動作する無線装置に適用される増幅器に関する。
【背景技術】
【0002】
近無線送信装置の最終出力段に用いられる高出力増幅器には、無線装置全体の低消費電力化のために高効率特性、小型、低価格が要求される。一般に増幅器は出力電力が下がると効率が下がってくる。高効率特性を出力電力の広範囲にわたり維持するためには、低出力電カ時でも増幅器の効率を改善しなくてはならない。
この問題を解決する方法として、高出力増幅器の電源電圧を制御する方法や多段に接続された増幅器の最も消費電力の高い最終段の増幅器をスイッチによりバイパスする方法が知られている。
第1の電源電圧制御の方法は、出力電力に応じて電源電圧を制御し効率を改善する方法であり、DCDCコンバータを用いる。
また、第2のバイパス方式は、図4のように2個の増幅器と2個のスイッチを従属接続し、高出力動作時には2つの増幅器1,2を動作させ、低出力動作時には2段目の増幅器2をバイパスさせるとともに、2段目の増幅器2をOFFにして、電流を流さないようにすることで効率を改善する(特許文献1を参照)。
【特許文献1】特表2000−513544号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した第1の電源電圧制御の方法はDCDCコンバータを用いるため、その周辺回路まで考慮するとサイズが大きくなり、価格が高くなるという問題がある。また、DCDCコンバータの変換損失は電源電圧が低くなるとき(出力電力が低いとき)は効率が悪くなるので、増幅器とDCDCコンバータを合わせたときの効率は劣化するという問題がある。
また、第2のバイパス方式は、低出力動作時に増幅器1の出力の伝送路に損失を持った2個のスイッチが入るために、スイッチのロス分だけ効率が劣化しまう、スイッチ回路か入るために小型化に難点がある、スイッチの価格分だけ価格か増加してしまうという問題がある。
【0004】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、小型かつ低価格で、広範囲な出力電力で高効率特性を有する増幅器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は上記の課題を解決すべくなされたもので、本発明は、多段に接続された第1、第2の増幅部を有する増幅器において、前記第2の増幅部に電力を供給する電源供給部と、前記第2の増幅部が、低出力動作時は入力信号を電力消費の無い低損失伝送路として伝送させ、高出力動作時は入力信号を増幅するように、前記電源供給部の電力供給を制御する制御部とを具備することを特徴とする。
【0006】
また、本発明は、前記電源供給部は、前記第2の増幅部の機能制御用電源供給部と、DC電源供給部とからなり、前記制御部は、低出力動作時は、前記DC電源供給部から前記第2の増幅部への電力供給を停止させるとともに、前記機能制御用電源供給部から前記第2の増幅部へ所定の電力を供給させ、高出力動作時は、前記DC電源供給部から前記第2の増幅部へ電力を供給させるとともに、前記機能制御用電源供給部から前記第2の増幅部へ所定の電力を供給させることを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、前記第2の増幅部は、ゲート、ドレイン、ソースの3端子からなる半導体素子であって、ゲート接地とし、前記制御部は、低出力動作時は、前記DC電源供給部から前記第2の増幅部のドレインへの電力供給を停止させるとともに、前記機能制御用電源供給部から前記第2の増幅部のゲートへ0Vの電圧を供給させ、高出力動作時は、前記DC電源供給部から前記第2の増幅部のドレインへ電力を供給させるとともに、前記機能制御用電源供給部から前記第2の増幅部のゲートへ所定の電圧を供給させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように、本発明によれば、多段に接続された第1、第2の増幅部を有する増幅器において、第2の増幅部が、低出力動作時は入力信号を電力消費の無い低損失伝送路として伝送させ、高出力動作時は入力信号を増幅するように、第2の増幅部に電力を供給する電源供給部を制御する。
このように構成することで、低出力動作時は第1の増幅部のみが動作し、高出力動作時は第1、2の増幅部が動作する。
したがって、広範囲な出力電力で高効率特性を得ながら、増幅部の伝送路にスイッチを介在させることなく、スイッチのロス分の効率劣化を防止することができる効果が得られる。
【0009】
また、本発明によれば、低出力動作時は、DC電源供給部から第2の増幅部への電力供給を停止させるとともに、機能制御用電源供給部から第2の増幅部へ所定の電力を供給させ、高出力動作時は、DC電源供給部から第2の増幅部へ電力を供給させるとともに、機能制御用電源供給部から第2の増幅部へ所定の電力を供給させることで、第2の増幅部が低出力動作時は入力信号を電力消費の無い低損失伝送路として伝送させ、高出力動作時は入力信号を増幅するように制御する。
このように構成することで、低出力動作時は機能制御用電源供給部のみが動作し、第2の増幅部には電流が流れず、高出力動作時のみ、DC電源供給部が動作して、第2の増幅部には電流が流れる。
したがって、低出力動作時において、もっとも消費電力の高い増幅部に電流が流れないことから高効率の増幅作用が実現できる効果が得られる。
【0010】
また、本発明によれば、第2の増幅部は、ゲート、ドレイン、ソースの3端子からなる半導体素子であって、ゲート接地され、低出力動作時は、DC電源供給部から第2の増幅部のドレインへの電力供給を停止させるとともに、機能制御用電源供給部から第2の増幅部のゲートへ0Vの電圧を供給させ、高出力動作時は、DC電源供給部から第2の増幅部のドレインへ電力を供給させるとともに、機能制御用電源供給部から第2の増幅部のゲートへ所定の電圧を供給させる。
このように構成することで、第2の増幅部は、低出力動作時は低損失の抵抗器として動作し、高出力動作時は増幅部として動作する。
したがって、単純な回路構成により、広範囲な出力電力範囲にわたり、高効率、小型、低価格で高出力増幅器が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の増幅器の一実施形態について説明する。図1は、本実施形態の増幅器1の構成図である。
図1に示すように、本実施形態の増幅器1は、多段に接続された増幅部10、高出力増幅部兼低損失抵抗器11(以下、簡単のため、高出力増幅部11とする)を有しており、増幅部10の後段に高出力増幅部11が設けられる。高出力増幅部11には、入力信号を増幅するための電力を供給する電源供給部2が接続される。電源供給部2は、制御回路30と接続されており、電力制御信号を制御回路30から入力して、高出力増幅部11に対する電力供給/電力供給停止を実行する。具体的には、電源供給部2は、高出力増幅部11が低出力動作時は入力信号を増幅せず、高出力動作時は入力信号を増幅するように、制御回路30から電力供給制御を受ける。
電源供給部2は、高出力増幅部11の機能制御用電源供給部20と、DC電源供給部21とからなる。機能制御用電源供給部20、DC電源供給部21は、図1に示すように、制御回路30と接続される。制御回路30は、低出力動作時は、DC電源供給部21へ電力供給指令信号を出力して、高出力増幅部11への電力供給を停止させるとともに、機能制御用電源供給部20へ電力供給指令信号を出力して、高出力増幅部11へ所定の電力を供給させ、高出力動作時は、DC電源供給部21から高出力増幅部11へ電力を供給させるとともに、機能制御用電源供給部20から第2の増幅器へ所定の電力を供給させる。
【0013】
以下、増幅器1のより具体的な構成について説明する。図2は、図1に示す増幅器1の具体的な実装例を示す。増幅器1は、広範囲な出力電力範囲で効率を改善するために、動作を低出力動作、高出力動作に分けて高出力増幅部11を動作させる。図2においては、最終段の高出力増幅部11として、D−modeのFETまたはHEMTを採用している。
図2に示すように、高出力増幅部11は、ゲート(Gate)、ドレイン(Drain)、ソース(Source)の3端子からなる半導体素子(FET/HEMT)であって、ゲート接地される。制御回路30が、この半導体素子を高出力動作の場合は増幅器として動作させ、低出力動作の時は、FET/HEMTスイッチのスルー状態として動作させる。
具体的には、制御回路30は、低出力動作時は、DC電源供給部21から高出力増幅部11のドレインへの電力供給を停止させるとともに、機能制御用電源供給部20から高出力増幅部11のゲートへ0Vの電圧を供給させ、高出力動作時は、DC電源供給部21から高出力増幅部11のドレインへ電力を供給させるとともに、機能制御用電源供給部20から高出力増幅部11のゲートへ所定の電圧を供給させる。そして、低出力動作時にはFET/HEMTを透過回路として作用させるため可変抵抗器22の値を数Kohmとし、高出力動作時はFET/HEMTに増幅作用を持たせるために数ohm程度になるように制御回路で制御する。
【0014】
機能制御用電源供給部20は、電源部のマイナス(−)側が、可変抵抗器22を介して、高出力増幅部11のゲートと接続され、プラス(+)側が、接地される。また、DC電源供給部21は、DCスイッチと電源部を有しており、電源部のプラス(+)側が、DCスイッチを介して、高出力増幅部11のドレインと接続され、マイナス(−)側が、接地される。
増幅部10と高出力増幅部11の間には、キャパシタ(Capacitor)40が設けられ、キャパシタ40の後段で、高出力増幅部11と分岐する形で、インダクタ(Inductor)50が設けられる。インダクタ50の他端(キャパシタ40、高出力増幅部11端の反対側)は、接地される。
同様に、高出力増幅部11と、出力端の間には、キャパシタ(Capacitor)41が設けられ、高出力増幅部11の後段(及びキャパシタ41の前段)で、キャパシタ41と分岐する形で、インダクタ(Inductor)51が設けられる。インダクタ51の他端(キャパシタ41、高出力増幅部11端の反対側)は、DC電源供給部21のDCスイッチと接続される。
なお、FET/HEMTとしては、E−ModeのFET/HEMTを用いることもでき、D−modeとE−modeでは電源1の極性が反転する。D−Modeの場合には、低出力時にはゲート電圧に0Vを設定し、高出力時にはゲート電圧に最も効率がよくなる所定の電圧を設定する。一方、E−Modeの場合には、低出力時にはゲート電圧にFET/HEMTのDrain−Source間の抵抗値が最小(FET/HEMTスイッチのスルー状態)となる所定の電圧を設定し、高出力時にはゲート電圧に最も効率がよくなる所定の電圧を設定する。
【0015】
以下、本実施形態の増幅器1の動作について説明する。図3は、本実施形態の増幅器1の出力電力と電力付加効率の関係図である。
まず出力電力が設定値より低い低出力動作時において、出力電力が前段の増幅部10の出力電力で賄える場合、高出力増幅部11(FET/HEMT)をスイッチのスルー状態で動作させる。具体的には、制御部30は、DC電源供給部21に電力制御信号を出力して、DCスイッチをOFFにさせて、高出力増幅部11への電圧供給を停止させ、機能制御用電源供給部20に電力制御信号を出力して、高出力増幅部11のゲート側にOVを供給させる。
高出力増幅部11への電力供給をこのように制御することで、出力段の高出力増幅部11は、低損失の抵抗器として動作する。そうすると、入力端から増幅器10に入力されて増幅された入力信号は、抵抗器として動作している高出力増幅部11を通過して、出力端から出力される。したがって、図4に示す従来構成と比較して、スイッチによる損失が1個分で済み、電力付加効率が改善される。また、高出力増幅部11への電力供給をこのように制御することで、最も消費電力の高い増幅器に電流が流れないので、さらに高効率が実現できる効果が得られる。
【0016】
次に出力電力が設定値より高い高出力動作時において、出力電力が前段の増幅部10の出力電力で賄えない場合、高出力増幅部11を増幅部として動作させる。具体的には、制御部30は、DC電源供給部21に電力制御信号を出力して、高出力増幅部11のドレイン側と接続されるDCスイッチをONにさせ、高出力増幅部11のドレイン側に電力を供給させる。また、制御部30は、これと同時に、機能制御用電源供給部20に電力制御信号を出力して、出力電力に適当な電流を高出力増幅部11のゲート側に出力させる。
このようにして、制御部30は、高出力動作時に、FET/HEMTからなる高出力増幅部11を増幅部として動作させる。
そうすると、入力端から増幅器10に入力されて増幅された入力信号は、増幅器として動作している高出力増幅部11でさらに増幅されて、出力端から出力される。したがって、図4に示す従来構成と比較して、スイッチによる損失が1個分で済み、電力付加効率が改善される。
【0017】
以上説明したように、本実施形態の増幅器1によれば、増幅部10、高出力増幅部11を接続して構成され、高出力増幅部11が、低出力動作時は入力信号を電力消費の無い低損失伝送路として伝送させ、高出力動作時は入力信号を増幅するように、高出力増幅部11に電力を供給する電源供給部2を制御する。このように構成することで、スイッチを用いなくても、低出力動作時は増幅部10のみが動作し、高出力動作時は増幅部10、高出力増幅部11が動作する。
したがって、広範囲な出力電力で高効率特性を得ながら、増幅部10、11の伝送路のスイッチ数を削減させ、低出力時の電力付加効率を改善させることができる。
また、本実施形態の増幅器1は、電源電圧制御方式やバイパス方式に比べて、付加回路を少ない部品点数で構成される。したがって、単純な回路構成により、小型、低価格で高出力増幅器が実現できる。
このため、無線装置全休の低消費電力、小型、低価格が実現できる効果が得られる。特に携帯端末のような電池で動作する無線装置には有効である。また、応用例としては、マイクロ波、ミリ波を用いた無線通信装置の増幅器として広く応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】増幅器1の構成図。
【図2】増幅器1の具体的な実装例。
【図3】出力電力と電力付加効率の関係図。
【図4】バイパス方式の構成図。
【符号の説明】
【0019】
1…増幅器
10…増幅部
11…高出力増幅器兼低損失抵抗器
20…機能制御用電源供給部
21…DC電源供給部
30…制御回路
40、41…キャパシタ
50、51…インダクタ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
多段に接続された第1、第2の増幅部を有する増幅器において、
前記第2の増幅部に電力を供給する電源供給部と、
前記第2の増幅部が、低出力動作時は入力信号を電力消費の無い低損失伝送路として伝送させ、高出力動作時は入力信号を増幅するように、前記電源供給部の電力供給を制御する制御部と
を具備することを特徴とする増幅器。
【請求項2】
前記電源供給部は、前記第2の増幅部の機能制御用電源供給部と、DC電源供給部とからなり、
前記制御部は、低出力動作時は、前記DC電源供給部から前記第2の増幅部への電力供給を停止させるとともに、前記機能制御用電源供給部から前記第2の増幅部へ所定の電力を供給させ、高出力動作時は、前記DC電源供給部から前記第2の増幅部へ電力を供給させるとともに、前記機能制御用電源供給部から前記第2の増幅部へ所定の電力を供給させる
ことを特徴とする請求項1に記載の増幅器。
【請求項3】
前記第2の増幅部は、ゲート、ドレイン、ソースの3端子からなる半導体素子であって、ゲート接地とし、
前記制御部は、低出力動作時は、前記DC電源供給部から前記第2の増幅部のドレインへの電力供給を停止させるとともに、前記機能制御用電源供給部から前記第2の増幅部のゲートへ0Vの電圧を供給させ、高出力動作時は、前記DC電源供給部から前記第2の増幅部のドレインへ電力を供給させるとともに、前記機能制御用電源供給部から前記第2の増幅部のゲートへ所定の電圧を供給させる
ことを特徴とする請求項2に記載の増幅器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−5839(P2006−5839A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−182341(P2004−182341)
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】416,Maetan−dong,Yeongtong−gu,Suwon−si Gyeonggi−do,Republic of Korea
【Fターム(参考)】