説明

増幅回路

【課題】 低消費電力等、好適な増幅が可能な増幅回路を提供する。
【解決手段】 増幅回路(100)は、増幅部(50)と、この増幅部に電源電圧を供給する電源回路部(20)と、を含む。このうち電源回路部は、第1ノード(ND1)と第2ノード(ND2)との間に設けられるコイル(L)に加えて、図示する複数のトランジスタ(Tr1〜Tr6)、これらのオンオフを制御する変調部(10)、並びに、第1及び第2容量素子(C1,C2)、等を備えている。変調部は、入力信号に応じてパルス幅変調信号(OUTPG,OUTNG等)を生成し、この信号を用いて前記各トランジスタのオンオフを制御してコイルに流れる電流方向を制御するとともに充電されるべき容量素子(C1又はC2)を選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増幅回路に関する。
【背景技術】
【0002】
増幅回路は様々な観点から分類される。その中にはD級増幅回路がある。D級増幅回路は、入力信号を振幅が一定なパルス幅変調信号に変換して、電力増幅するものであり、例えばオーディオ信号の電力増幅に用いられる。D級増幅回路は、2値で動作するため、トランジスタの損失を大幅に下げることができる。さらに、入力信号の振幅の大小にかかわらずリニア増幅器より効率が高いといった利点がある。このようなD級増幅回路としては、例えば特許文献1に開示されているようなものが知られている。
一方、増幅回路の種類には、D級増幅回路のほか、A級、B級、AB級等々のアナログの増幅回路があることが知られている。これらの区別は、主に、増幅回路の動作点の別(バイアスの大きさ)に応じたものである。
また、増幅回路は、回路の接続方式に応じて分類されることもあり、その中の1つとしては、SEPP(SingLe Ended Push-PuLL)接続方式等を含むプッシュプル増幅回路が含まれることが広く知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−33336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のような各種の増幅回路(特に、非デジタルの増幅回路)に関しては、次のような問題がある。
すなわち、前述のD級増幅回路以外のA級等の増幅回路を用いる場合は、既に述べたようなD級増幅回路を利用することによる各種利点は当然には享受できない。
加えて、これらの増幅回路では、増幅素子を駆動するための電源回路が出力する電源の変動等の外乱に注意を払う必要がある。また、増幅すべき入力信号と、電源回路との間には、一般的にいって常に関連性が持たされているわけでは必ずしもないので、入力信号の状態の如何に関わらず、電力が消費される場合が考えられ、その結果、増幅回路の消費電力が増大するおそれがある。
【0005】
本発明は、上述した各種弊害を伴うことなく、好適に入力信号の増幅を行うことの可能な増幅回路を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の観点に係る増幅回路は、上述した課題を解決するため、増幅部と、当該増幅部のための電源電圧を供給する電源回路部と、を含む増幅回路であって、前記電源回路部は、第1ノードと第2ノードとの間に設けられるコイルと、高位側電源線と、前記第1ノードとの間に配置される第1トランジスタと、前記高位側電源線と、前記第2ノードとの間に配置される第2トランジスタと、前記第1ノードと、低位側電源線との間に配置される第3トランジスタと、前記第2ノードと、前記低位側電源線との間に配置される第4トランジスタと、前記第2ノードと前記増幅部との間に設けられる第5トランジスタと、一方の電極が前記第5トランジスタと前記増幅部との接続点に接続され、他方の電極に固定電位が供給される第1容量素子と、前記第2ノードと前記増幅部との間に設けられ、当該第2ノードからみて前記第5トランジスタと並列関係となるように配置される第6トランジスタと、一方の電極が前記第6トランジスタと前記増幅部との接続点に接続され、他方の電極に前記固定電位が供給される第2容量素子と、前記第1乃至第6トランジスタの各々のオンオフを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、入力信号に応じて第1状態と第2状態とを切り替え、前記第1状態では、前記コイルと前記増幅部とを電気的に切り離した状態で、前記第1ノードから前記第2ノードへ向かう電流を前記コイルに流した後、前記コイルと前記増幅部とを電気的に接続して、前記第1ノードから前記第2ノードへ向かう電流を前記増幅部に流すとともに前記第1容量素子を充電するように、前記第1乃至第6トランジスタのオンオフを制御し、前記第2状態では、前記コイルと前記増幅部とを電気的に切り離した状態で、前記第2ノードから前記第1ノードへ向かう電流を前記コイルに流した後、前記コイルと前記増幅部とを電気的に接続して、前記第2ノードから前記第1ノードへ向かう電流を前記増幅部に流すとともに前記第2容量素子を充電するように、前記第1乃至第6トランジスタのオンオフを制御する。
【0007】
本発明によれば、第1及び第2状態間の適切な切替によって、増幅部にとっての正側(第1容量素子が関与する。)及び負側(第2容量素子が関与する。)の電源電圧を好適に生成することができる。また、第1及び第2状態の切替は入力信号に応じることから、どのような電源電圧が生成されるかについても、入力信号に応じることになる。
【0008】
この発明に係る増幅回路では、前記制御部は、前記入力信号をパルス幅変調してパルス幅変調信号を生成し、当該パルス幅変調信号を、前記第1乃至第6トランジスタの各々のゲートへ出力する、ように構成してもよい。
この態様によれば、第1乃至第6トランジスタの制御をより的確に行うことができる。また、これにより当然、増幅部のための電源電圧の生成はより好適に行われる。
【0009】
本発明の第2の観点に係る増幅回路では、上述した課題を解決するため、増幅部と、当該増幅部のための電源電圧を供給する電源回路部と、を含む増幅回路であって、前記電源回路部は、第1ノードと第2ノードとの間に設けられるコイルと、高位側電源線と、前記第1ノードとの間に配置される第1トランジスタと、前記第1ノードと、低位側電源線との間に配置される第3トランジスタと、前記第2ノードと、前記低位側電源線との間に配置される第4トランジスタと、前記第2ノードと前記増幅部との間に設けられる第5トランジスタと、一方の電極が前記第5トランジスタと前記増幅部との接続点に接続され、他方の電極に固定電位が供給される第1容量素子と、前記第1乃至第5トランジスタの各々のオンオフを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、入力信号に応じて、前記コイルと前記増幅部とを電気的に切り離した状態で、前記第1ノードから前記第2ノードへ向かう電流を前記コイルに流した後、前記コイルと前記増幅部とを電気的に接続して、前記第1ノードから前記第2ノードへ向かう電流を前記増幅部に流すとともに前記第1容量素子を充電するように、前記第1乃至第5トランジスタのオンオフを制御する。
【0010】
本発明によれば、第1及び第2状態間の切替はないものの、例えば増幅部がBTL(Bridged TransLess)方式等のリニアアンプである場合等、正側・負側双方の電源電圧を準備する必要がない場合に、好適に対応可能である。特に、本発明では、前述した第1の観点に係る発明に比べて、回路要素の数を減ずることができるのが大きな利点である。この第2の観点に係る発明が具体化された一例は、後述する実施形態中、<第2実施形態>として説明される。
なお、本発明において、「第2トランジスタ」が存在しないのに「第1」「第3」トランジスタが存在し、また、「第2」以降がないのに「第1容量素子」が存在しているのは、前述した第1の観点に係る発明を構成する要素と、この第2の観点に係る発明を構成する要素との対応関係を見やすいようにするため、単に、対応関係・相当関係にある構成要素のネーミングの共通化を図った結果であって、それ以上の深い意味は特にない。そのような配慮が払われているものの、両発明は全く別個の発明であることは言うまでもない。
【0011】
本発明の第3の観点に係る増幅回路では、上述した課題を解決するため、複数チャネルに対応する複数の増幅部と、当該複数の増幅部の各々のための電源電圧を供給する電源回路部と、を含む増幅回路であって、前記電源回路部は、前記複数の増幅部それぞれの正側及び負側の電源電圧を供給する正側及び負側電源回路部を含み、前記正側電源回路部は、正側回路内第1ノードと正側回路内第2ノードとの間に設けられる正側回路内コイルと、高位側電源線と、前記正側回路内第1ノードとの間に配置される第1トランジスタと、前記正側回路内第1ノードと、低位側電源線との間に配置される正側回路内第3トランジスタと、前記正側回路内第2ノードと、前記低位側電源線との間に配置される第4トランジスタと、前記正側回路内第2ノードと前記増幅部との間に設けられる第5トランジスタと、一方の電極が前記第5トランジスタと前記増幅部との接続点に接続され、他方の電極に固定電位が供給される第1容量素子と、前記第1トランジスタ、前記正側回路内第3トランジスタ、前記第4トランジスタ、及び前記第5トランジスタの各々のオンオフを制御する正側回路内制御部と、を含み、前記負側電源回路部は、負側回路内第1ノードと負側負側回路内第2ノードとの間に設けられる負側回路内コイルと、高位側電源線と、前記負側回路内第2ノードとの間に配置される第2トランジスタと、前記負側回路内第1ノードと、低位側電源線との間に配置される負側回路内第3トランジスタと、前記負側回路内第2ノードと前記増幅部との間に設けられる第6トランジスタと、一方の電極が前記第6トランジスタと前記増幅部との接続点に接続され、他方の電極に前記固定電位が供給される第2容量素子と、前記第2トランジスタ、前記負側回路内第3トランジスタ、及び前記第6トランジスタの各々のオンオフを制御する負側回路内制御部と、を含み、前記正側制御部及び前記負側制御部は、入力信号に応じて第1状態と第2状態とを切り替え、前記第1状態では、前記正側回路内コイルと前記増幅部とを電気的に切り離した状態で、前記正側回路内第1ノードから前記正側回路内第2ノードへ向かう電流を前記正側回路内コイルに流した後、前記正側回路内コイルと前記増幅部とを電気的に接続して、前記正側回路内第1ノードから前記正側回路内第2ノードへ向かう電流を前記増幅部に流すとともに前記第1容量素子を充電するように、前記第1トランジスタ、前記正側回路内第3トランジスタ、前記第4トランジスタ、及び前記第5トランジスタのオンオフを制御し、前記第2状態では、前記負側回路内コイルと前記増幅部とを電気的に切り離した状態で、前記負側回路内第2ノードから前記負側回路内第1ノードへ向かう電流を前記負側回路内コイルに流した後、前記負側回路内コイルと前記増幅部とを電気的に接続して、前記負側回路内第2ノードから前記負側回路内第1ノードへ向かう電流を前記増幅部に流すとともに前記第2容量素子を充電するように、前記第2トランジスタ、前記負側回路内第3トランジスタ、及び前記第6トランジスタのオンオフを制御する。
【0012】
本発明によれば、複数チャネルに対応する複数の増幅部のための電源電圧の生成を好適に行うことができる。この第3の観点に係る発明が具体化された一例は、後述する実施形態中、<第3実施形態>として説明される。
なお、本発明においても、「第1トランジスタ」、「第5トランジスタ」、あるいは「正側回路内『第3トランジスタ』」等々、前述した第1の観点に係る発明を構成する要素のネーミングと共通のネーミングが利用されているのは、前記第2の観点に係る発明を構成する要素のネーミングについて説明したのと同様の事情による。
【0013】
なお、前述の第2及び第3の観点に係る発明においても、前記第1の観点に係る発明と同様に、「制御部」(あるいは、「正側回路内制御部」「負側回路内制御部」)は、入力信号をパルス幅変調することによって、各トランジスタを制御するためのパルス幅変調信号を生成して好適である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態に係る増幅回路(100)の構成を示すブロック図である。
【図2】第1状態の動作を示すタイミングチャートである。
【図3】第1状態における電源回路部の状態(その1)を示す図である。
【図4】第1状態における電源回路部の状態(その2)を示す図である。
【図5】第2状態の動作を示すタイミングチャートである。
【図6】第2状態における電源回路部の状態(その1)を示す図である。
【図7】第2状態における電源回路部の状態(その2)を示す図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る増幅回路(100A)の構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係る増幅回路(100B)の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1実施形態>
以下では、本発明に係る第1の実施の形態について図1乃至図7を参照しながら説明する。
本発明の第1実施形態の増幅回路100は、図1に示すように、電源回路部20及び増幅部50を備える。このうち電源回路部20は変調部10を含み、この変調部10は、入力信号DINを振幅が一定なパルス幅変調信号(OUTPP,OUTMP,OUTPN,OUTMN,OUTPG,OUTNG)に変調する。第1実施形態では、入力信号DINはデジタルの音声信号である。電源回路部20は、このパルス幅変調信号(OUTPP,OUTMP,OUTPN,OUTMN,OUTPG,OUTNG)に基づいて、増幅部50のための電源電圧を生成する。増幅部50は、SEPP(SingLe Ended Push-PuLL)接続方式のリニアアンプであり、入力信号DINを増幅した上で、これに基づき負荷(例えばスピーカ)30を駆動する。
【0016】
電源回路部20は、図1に示すように、第1〜第6トランジスタTr1〜Tr6、コイルL、及び容量素子C1及びC2を備える。第1トラジスタTr1〜第4トランジスタTr4は、電源電位VDDが供給される電源線41と、接地電位GND(<VDD)が供給される接地線43との間に配置される。Nチャネル型の第1トランジスタTr1は、電源線41と第1ノードND1との間に配置される。第1トランジスタTr1のゲートには、パルス幅変調信号OUTPPが供給される。Nチャネル型の第2トランジスタTr2は、電源線41と第2ノードND2との間に配置される。第2トランジスタTr2のゲートには、パルス幅変調信号OUTMPが供給される。Nチャネル型の第3トランジスタTr3は、第1ノードND1と接地線43との間に配置される。第3トランジスタTr3のゲートには、パルス幅変調信号OUTMNが供給される。Nチャネル型の第4トランジスタTr4は、第2ノードND2と接地線43との間に配置される。第4トランジスタTr4のゲートには、パルス幅変調信号OUTPNが供給される。
【0017】
第1ノードND1と第2ノードND2との間にはコイルLが設けられる。第2ノードND2と増幅部50との間には、Nチャネル型の第5トランジスタTr5及び第6トランジスタTr6が設けられる。このうち第5トランジスタTr5のゲートには、パルス幅変調信号OUTPGが供給され、第6トランジスタTr6のゲートには、パルス幅変調信号OUTNGが供給される。
容量素子C1は、第1電極D1と第2電極D2とを有する。第1電極D1は、第5トランジスタTr5から増幅部50へ至る電流経路上に介在する第3ノードND3に接続される一方、第2電極D2は接地線43に接続される。他方、容量素子C2も、容量素子C1と同様、第1電極E3と第2電極E4とを有する。第1電極E3は、第6トランジスタTr6から増幅部50へ至る電流経路上に介在する第4ノードND4に接続される一方、第2電極E4は接地線43に接続される。
【0018】
第1実施形態において、変調部10は、入力信号DINに応じて第1状態と第2状態とを切り替えるように、パルス幅変調信号(OUTPP,OUTMP,OUTPN,OUTMN,OUTPG,OUTNG)を生成する。「第1状態」では、コイルLと増幅部50とが電気的に切り離された状態で、第1ノードND1から第2ノードND2へ向かう電流がコイルLを流れ、その後、コイルLと増幅部50とが電気的に接続されて、第1ノードND1から第2ノードND2へ向かう電流が増幅部50に流れるとともに容量素子C1に充電される。他方、「第2状態」では、コイルLと増幅部50とが電気的に切り離された状態で、第2ノードND2から第1ノードND1へ向かう電流がコイルLを流れ、その後、コイルLと増幅部50とが電気的に接続されて、第2ノードND2から第1ノードND1へ向かう電流が増幅部50に流れるとともに容量素子C2に充電される。
【0019】
変調部10には、ゲインGによる増幅、オフセットOFSの加算を受けた入力信号DINが入力される。前述の第1及び第2状態の別に応じたパルス幅変調信号の生成は、このような入力信号の状態に応じる。
より詳細には、これら第1及び第2状態の別は、入力信号DINの正負の別に応じる。すなわち、入力信号DINが正のときには、第1状態がとられて容量素子C1への充電が行われ、負のときには、第2状態がとられて容量素子C2への充電が行われる。
なお、増幅部50には、DAコンバータ90を介して入力信号DINが入力される。また、前述したゲインG及びオフセットOFSの大きさは、増幅部50を駆動するために必要な電源電圧よりも大きな電圧が得られるように予め調整しておくことが好ましい。
【0020】
以下、第1及び第2状態の各々における具体的な動作を説明する。図2及び図5に示すように、第1実施形態に係る増幅回路100は、第1及び第2状態のいずれにおいても、コイルLと増幅部50とが電気的に切り離された状態で、電源線41からの電流がコイルLに流れる第1期間T1と、コイルLと増幅部50とが電気的に接続されて、コイルLを流れる電流が増幅部50へ供給される第2期間T2とを1サイクルとして動作する。第1期間T1及び第2期間T2の時間長は、パルス幅変調信号に応じて可変に設定される。
【0021】
まず、図2〜図4を参照しながら、入力信号DINが正の場合に対応する第1状態における動作を説明する。第1期間T1が開始すると、図2に示すように、パルス幅変調信号OUTPPとパルス幅変調信号OUTPNとがハイレベルに設定される一方、パルス幅変調信号OUTPG、パルス幅変調信号OUTNG、パルス幅変調信号OUTMP、及びパルス幅変調信号OUTMNがローレベルに設定される。したがって、図3に示すように、第1トランジスタTr1と第4トランジスタTr4とがオン状態に制御される一方、第2トランジスタTr2、第3トランジスタTr3、第5トランジスタTr5、及び第6トランジスタTr6がオフ状態に制御される。これにより、電源線41からの電流が、第1トランジスタTr1、コイルL及び第4トランジスタTr4を介して接地線43へ流れる。第1実施形態において、コイルLを流れる電流は、第1ノードND1から第2ノードND2へ向かう方向を正とするから、図2に示すように、第1期間T1においてコイルLを流れる電流の電流値は経時的に上昇する。
【0022】
続いて、第2期間T2が開始すると、パルス幅変調信号OUTPPとパルス幅変調信号OUTPNとがローレベルに変化し、パルス幅変調信号OUTPGとパルス幅変調信号OUTMNとがハイレベルに変化する。したがって、図4に示すように、第1トランジスタTr1と第4トランジスタTr4とがオフ状態に遷移し、第3トランジスタTr3と第5トランジスタTr5とがオン状態に遷移する。第1トランジスタTr1がオフ状態に遷移することで、電源線41からコイルLへ流れる電流は遮断されるが、コイルLに発生する誘導起電力によって、第1ノードND1から第2ノードND2へ向かう電流がコイルLを流れ続ける。ただし、図2に示すように、第2期間T2においてコイルLを流れる電流の電流値は経時的に減少する。そして、当該電流は、第5トランジスタTr5を介して増幅部50へ供給される。これにより、第3ノードND3の電位は、経時的に上昇する(図2参照)。
【0023】
パルス幅変調信号OUTPG及びOUTMNがローレベルに変化して第3トランジスタTr3及び第5トランジスタTr5がオフ状態に遷移することで第2期間T2が終了する。第2期間T2の終点における第3ノードND3の電位は、次のサイクルにおける第2期間T2が開始されるまでの期間、容量素子C1によって保持される。これにより、第2期間T2が終了した後、第3ノードND3の電位が変化することを抑制できるから、不要電磁輻射(EMI:Electro Magnetic Interference)の量を低減できるという利点がある。
【0024】
次に、図5〜図7を参照しながら、入力信号DINが負の場合に対応する第2状態における動作を説明する。図5に示すように、第1期間T1が開始すると、パルス幅変調信号OUTMPとパルス幅変調信号OUTMNとがハイレベルに設定される一方、パルス幅変調信号OUTPP、パルス幅変調信号OUTPN、パルス幅変調信号OUTPG及びパルス幅変調信号OUTNGがローレベルに設定される。したがって、図6に示すように、第2トランジスタTr2と第3トランジスタTr3とがオン状態に制御される一方、第1トランジスタTr1、第4トランジスタTr4、第5トランジスタTr5及び第6トランジスタTr6がオフ状態に制御される。これにより、電源線41からの電流が、第2トランジスタTr2、コイルL及び第3トランジスタTr3を介して接地線43へ流れる。第2ノードND2から第1ノードND1へ向かう方向に流れる電流は負の値となるから、図5に示すように、第1期間T1においてコイルLを流れる電流の電流値は経時的に減少する(電流値の絶対値は経時的に上昇する)。
【0025】
続いて、第2期間T2が開始すると、パルス幅変調信号OUTMPがローレベルに変化する一方、パルス幅変調信号OUTNGがハイレベルに変化する。したがって、図7に示すように、第2トランジスタTr2がオフ状態に遷移する一方、第6トランジスタTr6がオン状態に遷移する。第2トランジスタTr2がオフ状態に遷移することで、電源線41からコイルLへ流れる電流は遮断されるが、コイルLに発生する誘導起電力によって、第2ノードND2から第1ノードND1へ向かう電流がコイルLを流れ続ける。図5に示すように、第2期間T2においてコイルLを流れる電流の電流値は経時的に上昇する(電流値の絶対値は経時的に減少する)。そして、当該電流は、第6トランジスタTr6を介して増幅部50へ供給される。すなわち、前述の第1状態とは逆方向の電流が増幅部50を流れる。このとき、第4ノードND4に存在する電荷は、第6トランジスタTr6、コイルL及び第3トランジスタTr3を介して接地線43へ移動する(吸い込まれる)から、第4ノードND4の電位は経時的に減少する(図5参照)。
【0026】
パルス幅変調信号OUTNG及びOUTMNがローレベルに変化して第3トランジスタTr3及び第6トランジスタTr6がオフ状態に遷移することで第2期間T2が終了する。前述の第1状態と同様に、第2期間T2の終点における第4ノードND4の電位は、次のサイクルにおける第2期間T2が開始されるまでの期間、容量素子C2によって保持される。
【0027】
以上に説明したように、第1実施形態においては、入力信号DINに応じて電源回路部20の動作状態が変化し、これに応じて、増幅部50へ供給するための電源電圧が調整可能となっている。
これにより、第1実施形態では、第1に、電源変動等の外乱ノイズついて特別に心配する必要がない(仮に、それがあっても、増幅部50で十分吸収可能である。)。第2に、前述のように、増幅部50用の電源電圧は入力信号DINに応じて変化するようになっているから、無駄な電力が消費されるおそれは殆どない。
また、第1実施形態では、入力信号DINの変動と増幅部50用の電源電圧の調整との間をとりもっているのが、変調部10が生成するパルス幅変調信号であることから、当該電源電圧の調整には、いわば一種のデジタル制御が利用されているとみることができ、これにより、前述した第1及び第2に係る効果は、より実効的に享受可能となっている。
【0028】
なお、上記第1実施形態においては、容量素子C1の電圧と容量素子C2の電圧との比をモニターし、これに関するフィードバックをかければ、より効率よく電源電圧の調整を行うことができる。
【0029】
<第2実施形態>
以下では、本発明に係る第2の実施の形態について図8を参照しながら説明する。なお、この第2実施形態は、増幅部の構成(及びそれに関わる構成)等が上記第1実施形態からみて変更を受けている点について特徴があり、それ以外の点については、上記第1実施形態の構成及び動作ないし作用と同様である。したがって、以下では、前記相違点について主に説明を行うこととし、それ以外の点についての説明は適宜簡略化し、あるいは省略する。このような取扱いは、以下の第3実施形態においても同様である。
【0030】
第2実施形態の増幅回路100Aは、図8に示すように、増幅部51を備える。この増幅部51は、BTL(Bridged TransLess)接続方式のリニアアンプであり、入力信号DINを増幅した上で、これに基づき負荷30を駆動する。
また、増幅回路100Aは、増幅部51がBTL接続方式であることに応じて、容量素子C1及びコイルLの組を一組だけを含む電源回路部21を備える。また、同じ理由から、電源回路部21は、図1に示す第2トランジスタTr2、第6トランジスタTr6、及び容量素子C2を含まない。つまり、この電源回路部21では、第6トランジスタTr6等が関与する前記第2状態に係る動作は行われず、前記第1状態に係る動作のみが行われる。このような構成が採用可能であるのは、増幅部51が、第1実施形態のようにSEPP方式ではなくて、BTL方式であることにより、この増幅部51のためには、正側の電源電圧だけが準備されればよいからである。
なお、第2実施形態においては、このようなことから入力信号DINの正負の別に拘らない。したがって、第1実施形態で行われていたゲインG及びオフセットOFSによる調整は、正負の入力信号DINの絶対値をとった後、この絶対値による比較においてより大きい値をとるものに対して行われるようになっている(図8の符号95、参照)。
【0031】
このような第2実施形態の増幅回路100Aによっても、上記第1実施形態によって奏された作用効果と同様の作用効果が奏されることは明白である。
しかも、この第2実施形態によれば、第1実施形態に比べて明らかに、使用する回路要素の数の減少が達成されることから、その分のコストダウン等を実現することができる。
【0032】
<第3実施形態>
以下では、本発明に係る第3の実施の形態について図9を参照しながら説明する。
この第3実施形態の増幅回路100Bは、図9に示すように、Lチャネル及びRチャネルの別に応じた2つの負荷30−L及び30−Rを含む。また、増幅回路100Bは、これらの負荷30-L及び30-Rの別に応じて、これらそれぞれのための増幅部50-L及び50-Rを含み、さらに、DAコンバータ90-L及び90-Rを含む。入力信号DINも、Lチャネル用の入力信号DIN−L、及び、Rチャネル用の入力信号DIN−Rを含む。なお、増幅部50−L及び50−Rは、第1実施形態と同様、SEPP方式のリニアアンプである。
【0033】
また、増幅回路100Bは、2つの増幅部50-L及び50-Rを駆動するための電源電圧を生成する電源回路部22+及び22−を備える。このうち電源回路部22+は、増幅部50-L及び50-Rの正側の電源電圧に対応し、電源回路部22−はその負側の電源電圧に対応する。電源回路部22+は、図9に示すように、図1に示す第1トランジスタTr1、第3トランジスタTr3、第4トランジスタTr4、及び第5トランジスタTr5相当のトランジスタのみを含む一方、電源回路部22−は、第2トランジスタTr2、第3トランジスタTr3、及び第6トランジスタTr6相当のトランジスタのみを含む。なお、図中、第3トランジスタの符号に関し、Tr3+,Tr3−というように末尾に「+」,「−」の符号が付されているのは、両者を区別するための便宜上の措置にすぎない。各電源回路部22+,22−に対応するコイルL+,L−、第1ノードND1+,ND1−、及び第2ノードND2+,ND2−等についても同様である。
【0034】
このような電源回路部22+,22−の各々は、変調部10+,10−を含む。パルス幅変調信号(OUTPP,OUTMP,OUTPN,OUTMN,OUTPG,OUTNG)は、各電源回路部22+,22−に含まれるトランジスタが必要とする制御信号(ゲート信号)に応じて振り分けられており、変調部10+,10−は、その振り分けられたパルス幅変調信号のみを生成するようになっている(図9参照)。すなわち、変調部10+は、パルス幅変調信号OUTPP,OUTPG,OUTPN、及びOUTMNを生成し、変調部10-は、パルス幅変調信号OUTMP,OUTNG,及びOUTMNを生成する。
なお、変調部10+,10−の各々には、図9に示すように、それぞれ異なるゲインG+,G−、及び、異なるオフセットOFS+,OFS−が対応する。より詳細には、Lチャネル用の入力信号DIN-Lにおいて、プラス側でその最大値をとるものはゲインG+による増幅、オフセットOFS+の加算を受け、マイナス側で最小値をとるものはゲインG−による増幅、オフセットOFS−の加算を受ける、というようである(図9の符号96+、96−参照)。Rチャネル用の入力信号DIN-Rについても同様である。
【0035】
このような第3実施形態の増幅回路100Bによっても、上記第1実施形態によって奏された作用効果と同様の作用効果が奏されることは明白である。
しかも、この第3実施形態によれば、第1実施形態に比べて明らかに、使用する回路要素の数の減少が達成されることから、その分のコストダウン等を実現することができる(図9との対比例として、第1実施形態として示した増幅回路100を、Lチャネル及びRチャネル双方のために、2組用意する場合を想定するとよい。このような形態と第3実施形態とを対比すれば、後者の方が明らかに、回路要素の数は少なくて済む。)。
【符号の説明】
【0036】
100,100A,100B……増幅回路、10,10+,10−……変調部、20,21,22+,22−……電源回路部、30……負荷、50,51,50−L,50−R……増幅部、41……電源線、43……接地線、Tr1〜Tr6……第1〜第6トランジスタ、C1,C2……容量素子、DIN……入力信号、ND1〜ND4……第1〜第4ノード、GND……接地電位、VDD……電源電位


【特許請求の範囲】
【請求項1】
増幅部と、当該増幅部のための電源電圧を供給する電源回路部と、を含む増幅回路であって、
前記電源回路部は、
第1ノードと第2ノードとの間に設けられるコイルと、
高位側電源線と、前記第1ノードとの間に配置される第1トランジスタと、
前記高位側電源線と、前記第2ノードとの間に配置される第2トランジスタと、
前記第1ノードと、低位側電源線との間に配置される第3トランジスタと、
前記第2ノードと、前記低位側電源線との間に配置される第4トランジスタと、
前記第2ノードと前記増幅部との間に設けられる第5トランジスタと、
一方の電極が前記第5トランジスタと前記増幅部との接続点に接続され、他方の電極に固定電位が供給される第1容量素子と、
前記第2ノードと前記増幅部との間に設けられ、当該第2ノードからみて前記第5トランジスタと並列関係となるように配置される第6トランジスタと、
一方の電極が前記第6トランジスタと前記増幅部との接続点に接続され、他方の電極に前記固定電位が供給される第2容量素子と、
前記第1乃至第6トランジスタの各々のオンオフを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
入力信号に応じて第1状態と第2状態とを切り替え、
前記第1状態では、
前記コイルと前記増幅部とを電気的に切り離した状態で、前記第1ノードから前記第2ノードへ向かう電流を前記コイルに流した後、前記コイルと前記増幅部とを電気的に接続して、前記第1ノードから前記第2ノードへ向かう電流を前記増幅部に流すとともに前記第1容量素子を充電するように、前記第1乃至第6トランジスタのオンオフを制御し、
前記第2状態では、
前記コイルと前記増幅部とを電気的に切り離した状態で、前記第2ノードから前記第1ノードへ向かう電流を前記コイルに流した後、前記コイルと前記増幅部とを電気的に接続して、前記第2ノードから前記第1ノードへ向かう電流を前記増幅部に流すとともに前記第2容量素子を充電するように、前記第1乃至第6トランジスタのオンオフを制御する、
ことを特徴とする増幅回路。
【請求項2】
前記制御部は、
前記入力信号をパルス幅変調してパルス幅変調信号を生成し、
当該パルス幅変調信号を、前記第1乃至第6トランジスタの各々のゲートへ出力する、
ことを特徴とする請求項1に記載の増幅回路。
【請求項3】
増幅部と、当該増幅部のための電源電圧を供給する電源回路部と、を含む増幅回路であって、
前記電源回路部は、
第1ノードと第2ノードとの間に設けられるコイルと、
高位側電源線と、前記第1ノードとの間に配置される第1トランジスタと、
前記第1ノードと、低位側電源線との間に配置される第3トランジスタと、
前記第2ノードと、前記低位側電源線との間に配置される第4トランジスタと、
前記第2ノードと前記増幅部との間に設けられる第5トランジスタと、
一方の電極が前記第5トランジスタと前記増幅部との接続点に接続され、他方の電極に固定電位が供給される第1容量素子と、
前記第1乃至第5トランジスタの各々のオンオフを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
入力信号に応じて、
前記コイルと前記増幅部とを電気的に切り離した状態で、前記第1ノードから前記第2ノードへ向かう電流を前記コイルに流した後、前記コイルと前記増幅部とを電気的に接続して、前記第1ノードから前記第2ノードへ向かう電流を前記増幅部に流すとともに前記第1容量素子を充電するように、前記第1乃至第5トランジスタのオンオフを制御する、
ことを特徴とする増幅回路。
【請求項4】
複数チャネルに対応する複数の増幅部と、当該複数の増幅部の各々のための電源電圧を供給する電源回路部と、を含む増幅回路であって、
前記電源回路部は、
前記複数の増幅部それぞれの正側及び負側の電源電圧を供給する正側及び負側電源回路部を含み、
前記正側電源回路部は、
正側回路内第1ノードと正側回路内第2ノードとの間に設けられる正側回路内コイルと、
高位側電源線と、前記正側回路内第1ノードとの間に配置される第1トランジスタと、
前記正側回路内第1ノードと、低位側電源線との間に配置される正側回路内第3トランジスタと、
前記正側回路内第2ノードと、前記低位側電源線との間に配置される第4トランジスタと、
前記正側回路内第2ノードと前記増幅部との間に設けられる第5トランジスタと、
一方の電極が前記第5トランジスタと前記増幅部との接続点に接続され、他方の電極に固定電位が供給される第1容量素子と、
前記第1トランジスタ、前記正側回路内第3トランジスタ、前記第4トランジスタ、及び前記第5トランジスタの各々のオンオフを制御する正側回路内制御部と、
を含み、
前記負側電源回路部は、
負側回路内第1ノードと負側負側回路内第2ノードとの間に設けられる負側回路内コイルと、
高位側電源線と、前記負側回路内第2ノードとの間に配置される第2トランジスタと、
前記負側回路内第1ノードと、低位側電源線との間に配置される負側回路内第3トランジスタと、
前記負側回路内第2ノードと前記増幅部との間に設けられる第6トランジスタと、
一方の電極が前記第6トランジスタと前記増幅部との接続点に接続され、他方の電極に前記固定電位が供給される第2容量素子と、
前記第2トランジスタ、前記負側回路内第3トランジスタ、及び前記第6トランジスタの各々のオンオフを制御する負側回路内制御部と、
を含み、
前記正側制御部及び前記負側制御部は、
入力信号に応じて第1状態と第2状態とを切り替え、
前記第1状態では、
前記正側回路内コイルと前記増幅部とを電気的に切り離した状態で、前記正側回路内第1ノードから前記正側回路内第2ノードへ向かう電流を前記正側回路内コイルに流した後、前記正側回路内コイルと前記増幅部とを電気的に接続して、前記正側回路内第1ノードから前記正側回路内第2ノードへ向かう電流を前記増幅部に流すとともに前記第1容量素子を充電するように、前記第1トランジスタ、前記正側回路内第3トランジスタ、前記第4トランジスタ、及び前記第5トランジスタのオンオフを制御し、
前記第2状態では、
前記負側回路内コイルと前記増幅部とを電気的に切り離した状態で、前記負側回路内第2ノードから前記負側回路内第1ノードへ向かう電流を前記負側回路内コイルに流した後、前記負側回路内コイルと前記増幅部とを電気的に接続して、前記負側回路内第2ノードから前記負側回路内第1ノードへ向かう電流を前記増幅部に流すとともに前記第2容量素子を充電するように、前記第2トランジスタ、前記負側回路内第3トランジスタ、及び前記第6トランジスタのオンオフを制御する、
ことを特徴とする増幅回路。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−77739(P2011−77739A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−225754(P2009−225754)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】