説明

増強した成分プロファイルを有する加工したECM材料

それらの成分プロファイルに関して改良された性質を有する医療用移植片材料及び装置が記載されている。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、その内容の全体を参考として引用し本明細書に含めた、「増強した成分プロファイルを有する加工したECM材料(PROCESSED ECM MATERIALS WITH ENHANCED COMPONENT PROFILES)」という名称にて、2006年10月23日付けで出願された、米国仮特許出願第60/853,584号明細書の利益を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本発明は、全体として、医療用移植片材料、特に、組織材料から得られた医療用移植片材料に関する。
【背景技術】
【0003】
多岐に亙る加工した細胞外マトリックス(ECM)材料が医療用移植、細胞培養、及びその他の関連した用途のため提案されている。例えば、小腸、胃、又は膀胱組織から得られた粘膜下組織を含む医療用移植片及び細胞培養材料が提案されている。例えば、米国特許第4,902,508号明細書、米国特許第4,956,178号明細書、米国特許第5,281,422号明細書、米国特許第5,554,389号明細書、米国特許第6,099,567号明細書、及び米国特許第6,206,931号明細書を参照されたい。更に、インディアナ州、ウェストラファイエットのクックバイオテックインコーポレーテッド(Cook Biotech Incorporated)は、現在、サーグィシス(SURGISIS)(登録商標名)、ストラタシス(STRATASIS)(登録商標名)、及びオアシス(OASIS)(登録商標名)という商標名にて小腸の粘膜下組織由来の多岐に亙る医療用製品を製造している。
【0004】
肝臓の基底膜から得られた医療材料も、例えば、米国特許第6,379,710号明細書にて提案されている。同様に、羊膜から得られたECM材料(例えば、米国特許第4,361,552号明細書、及び米国特許第6,576,618号明細書を参照)及び腎臓被膜薄膜から得られたECM材料(2003年1月9日付けで国際公開されたPCT国際特許出願WO03/002165号明細書を参照)が医療用及び(又は)細胞培養の用途のため提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4,902,508号明細書
【特許文献2】米国特許第4,956,178号明細書
【特許文献3】米国特許第5,281,422号明細書
【特許文献4】米国特許第5,554,389号明細書
【特許文献5】米国特許第6,099,567号明細書
【特許文献6】米国特許第6,206,931号明細書
【特許文献7】米国特許第6,379,710号明細書
【特許文献8】米国特許第4,361,552号明細書
【特許文献9】米国特許第6,576,618号明細書
【特許文献10】PCT国際特許出願WO03/002165号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
コラーゲン以外の医学的に重要な物質を保持する加工したECM材料を提供するための試みが為されている。しかし、望ましくない成分が除去された、加工したECMを作成するため、材料は、典型的に、材料内に含まれた望ましい成分に対し望ましくない結果を及ぼすであろう一連の操作を受ける。例えば、粘膜下組織及びその他のECM材料は、材料の生物活性に、また、医療用移植及びその他の用途にてその価値に寄与することのできる、コラーゲン以外の多岐に亙る望ましい成分を含むことが示されている。例として、ECM材料は、加工したECM内に保持されたとき、有益となるであろう成長因子、細胞接着タンパク質、及びプロテオグリカンを含むことができる。しかし、医学的に許容可能な移植片を作成するとき、高レベルの望ましくない成分を除去する一方にて、これらの成分を選択的に保持することは難しい。
【0007】
必要な物理的性質及び高レベルの生体適合性並びに滅菌性のみならず、有益な成分の望ましいレベルをも保持する生体材料が依然として必要とされている。これらの材料を作成し且つ使用する方法並びに、これらの材料から形成された医療用装置も必要とされている。本発明は、こうした必要性に対応するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つの態様において、本発明は、加工した細胞外マトリックス(ECM)材料を含む医療用移植片材料を提供する。ECM材料は、コラーゲン及び非コラーゲン成分を保持し、また、望ましくは、アンギオゲニンの特徴(angiogenic character)を示すものとする。これと同時に、ECM材料は、天然脂質、核酸(例えば、DNA)及び(又は)免疫グロブリンA(IgA)成分のような、望ましくない成分のレベルは低い。好ましい実施の形態において、ECM材料は粘膜下組織を含む。
【0009】
1つの実施の形態において、本発明は、滅菌の、非細胞化した(decellularized)細胞外マトリックス(ECM)材料を含む医療用移植片材料を提供する。ECM材料は、20μg/g以下のレベルの天然の線維芽細胞増殖因子−2(FGF−2)及び天然の免疫グロブリンA(IgA)を含む。幾つかの形態において、材料は、約4%以下の脂質含有量を有することができる。好ましい実施の形態において、隔離したECM材料は、粘膜下組織を含み、また、5μg/g以下のレベルの天然IgA及び約3%以下の天然脂質の含有量を有する。
【0010】
更に別の態様において、本発明は、滅菌の、非細胞化した細胞外マトリックス(ECM)材料を含む、医療用移植片材料を提供する。ECM材料は、少なくとも約10ng/gの天然FGF−2と、(i)約20μg/g以下のレベルの天然IgA、(ii)重量比にて約4%以下のレベルの天然脂質、(iii)少なくとも約50μg/gのレベルの天然ヒアルロン酸、及び(iv)少なくとも約500μg/gのレベルの天然硫酸化グリコサミノグリカンの少なくとも1つ、また、幾つかの形態にて、これらの各々とを保持している。特定の好ましい実施の形態において、ECM材料は粘膜下組織を含む。更なる形態において、ECM材料は、約5μg/g以下のレベルの天然IgA、及び重量比にて約3%以下の天然脂質含有量を有する。
【0011】
本発明により患者を治療する方法が更に提供される。この方法は、本発明の医療用移植片材料を患者に移植する工程を含む。
【0012】
本発明は、医療用移植片材料を作成する方法を更に提供する。この方法は、開始細胞外マトリックス(ECM)材料を提供する工程を含む。開始ECM材料は、その材料が顕著なレベルの成長因子、プロテオグリカン及び(又は)、グリコサミノグリカンを保持する一方にて、脂質、核酸、及び(又は)IgA及び(又は)材料のその他の免疫グロブリンの含有量が減少するよう処理される。特定の実施の形態において、この方法は、細胞及び核膜に障害を生じさせる(disrupt)よう稀釈したイオン系洗剤溶液にて、また、DNA及びその他の核酸材料を可溶化し且つ除去するため塩基性溶液にて開始ECM材料を処理する工程を含む。この方法は、脂質を材料から除去するためECM材料を有機質溶剤にて処理する工程及び(又は)材料を殺菌するため、例えば、ペルオキシ化合物を保持する酸化性の殺菌溶液にてECM材料を処理する工程を更に含むことができる。これらの溶液により残った残留物を除去するため、ECM材料は、すすぎ洗いされることが好ましい。
【0013】
本発明の医療用移植片材料は、多岐に亙る形態にて提供することができる。例えば、医療用移植片材料は、1つ以上のシート、ペースト、スポンジ、非ゲル状水性溶液、粉体、又はゲルとして提供することができる。これらの形態物の組み合わせとすることも考えられる。
【0014】
医療用移植片材料の色々な形態物は、多岐に亙る医療用途(獣医学を含む)にて使用することができる。これらの例は、神経組織、皮膚組織(例えば、傷の手当て)、心血管組織(血管組織及び心臓組織を含む)、心膜組織、筋組織、膀胱組織、眼組織、歯周組織、骨、腱又は靭帯のような、結合組織及びその他のような組織を修復し又は再構築することを含む。
【0015】
本発明の追加的な実施の形態及び特徴並びに利点は、以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】温血脊椎動物の組織から隔離された細胞外マトリックス(ECM)材料の単一層にて形成された本発明の医療用移植片材料を示す。
【図2】温血脊椎動物の組織から隔離されたECM材料の2つの層にて形成された本発明の医療用移植片材料を示す。
【図3】フレームに装着したECM材料を含む本発明の1つの補綴用弁装置の側面図である。
【図4】図3に示した補綴用弁装置の左側面図である。
【図5】図3に示した補綴用弁装置の右側側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の原理の理解を促進する目的のため、本明細書の特定の実施の形態について以下に説明し、その説明のため、特定の語を使用する。しかし、これにより本発明の説明の範囲を何ら限定することを意図するものではなく、説明した実施の形態の変更例及び更なる改変例並びに図示した本発明の原理の更なる応用例は本発明が関係する技術分野の当業者に通常、案出されることを理解すべきである。
【0018】
上記に開示したように、1つの態様にて、本発明は、顕著なレベルの望ましい成分を保持しつつ、望ましくない成分が減少した独創的な成分プロファイルを有する細胞外マトリックス移植片材料を提供する。これらの独創的な材料は、成長因子、プロテオグリカン、及び(又は)グリコサミノグリカン(GAGs)のような、望ましい成分の顕著なレベルを保持しつつ、核酸、脂質及びIgAのような免疫グロブリンの如き望ましくない成分の含有量が減少するよう比較的不純なECM原材料を処理する工程を含む加工方法により作成することができる。典型的に、ECM開始材料は、イオン系又は非イオン系洗剤溶液のような、穏やかな洗剤溶液にて処理されよう。洗剤が低濃度であることは、上述したもののような、望ましい成分の顕著なレベルを保持することを可能にする。特定の作用モードにおいて、ECM材料は、約0.05%から約1%、より好ましくは、約0.05%から約0.3%の洗剤濃度にてドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の水性溶液にて又は別のイオン系又は非イオン系洗剤にて処理されよう。この処理は、細胞及び核膜に障害を生じさせ、また、約0.1時間から約10時間、より典型的には、約0.5時間から約2時間の範囲内にてECM材料の免疫性グロブリン(例えば、IgA)含有量を減少させるのに有効な期間だけ行うことができる。この仕方にて隔離したECM材料を加工することは、細胞及び核膜に障害を生じさせ、その結果、そのIgA含有量が著しく減少した材料となり、これにより材料の免疫原性を減少させる点にて好ましい。例えば、本発明の加工したECM材料は、約20μg/g以下の天然IgA含有量を有することができる。好ましい実施の形態において、本発明のECM材料は、15μg/g以下、10μg/g以下、又は5μg/g以下さえもの天然IgAの含有量を有することができる。特定の実施の形態において、加工したECM材料は、実質的に天然IgA無しである。「実質的にIgA無し」という意味は、隔離したECM材料が含むIgAは検出可能なレベル以下であることを意味する。IgAを検出する手段は、当該技術分野にて周知であり、また、例えば、酵素免疫測定法(ELISA)を含む。この点に関して、異なる供給源から得られたECM材料は、組織内に優勢的に存在する異なる免疫グロビリンを有することが理解されよう。本明細書に開示した加工技術は、供給源組織内に優勢的に存在するものを含んで、その他の免疫グロビリン中のECM材料の含有量を減少させるのに有効であろう。従って、本発明のその他の態様は、(i)供給源組織中の所定の免疫グロブリンのレベルが実質的に減少し(例えば、約20μg/g以下)、又は(ii)全免疫グロブリン含有量(組織中の全免疫グロブリンの合計値)を有するECM材料を隔離することに関する。
【0019】
ECM材料を洗剤媒質にて処理することに加えて、ECM材料は、所望のECM成分プロファイルの実現に実質的に関与するその他の化学剤と接触させることができる。例えば、ECM材料は、水性媒質、好ましくは、DNAが可溶な塩基にて処理することができる。かかる媒質は、特定の形態にて、約7から約9の範囲のpHを有するものとし、幾つかの実施の形態にて、pHは約8から約8.5の範囲であることが特に有益である。塩基性の水性媒質は、望ましくは、三(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)のような生体適合性緩衝剤のような緩衝剤及び(又は)エチレンジアミン四酢酸(EDTA)のようなキレート剤を含むことができる。1つの好ましい形態において、核酸の可溶化媒質は、TRIS−ホウ酸塩−EDTA(TBE)緩衝剤溶液である。別の好ましい形態において、核酸の可溶化媒質は、水酸化アンモニウム溶液である。DNA可溶化媒質によるこの処理は、ECM材料のDNA含有量を減少させるのに有効な時間、典型的に、約0.1時間から約10時間、より典型的に、約0.5時間から約2時間の範囲、行なうことができる。
【0020】
洗剤及びDNA−可溶化媒質にて処理することに加えて、本発明の医療用移植片材料を作成する方法は、液体媒質にて処理し、その結果、ECM材料の脂質レベルを著しく低下させる工程を含むことができる。例えば、ECM材料にて形成させる天然脂質の含有量は、特定の実施の形態にて、約4%以下に低下させることができる。これは、例えば、脂質が可溶な液体の有機質溶剤にてECM材料を処理する工程を含む作成過程により実現することができる。適当なかかる有機質溶剤は、例えば、極性有機溶剤を含む、水混和性溶剤を包含する。これらは、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、及びブタノール、アセトン、クロロホルム、及びその他のような低分子量(例えば、CからC)アルコールを含む。更なる有機溶剤は、ヘキサン、ベンゼン、トルエン及び同様のもののような、非極性溶剤を含む。より好ましい実施の形態において、加工したECM材料は、天然脂質の含有量が約3%以下、又は約2.5%以下となるように加工されよう。脂質−除去媒質による、この処理は、ECM材料の脂質含有量を減少させるのに有効な時間、典型的に、約0.1時間から約10時間、より典型的には、約0.1時間から約1時間の範囲、行なうことができる。特定の実施の形態において、かかる処理は多数回(2回以上)行われよう。更に、上述したように脂質−減少媒質による処理は、上述したように、洗剤媒質及び(又は)水性(好ましくは、塩基性)のDNA−減少媒質による処理前に又は処理後に実施することができる。特定の好ましい実施の形態において、脂質−減少媒質による処理は、洗剤媒質及び(又は)水性(好ましくは、塩基性)媒質による処理の前に行われる。
【0021】
ECM材料は、殺菌溶液にて処理することもできる。殺菌溶液は、アルコール、ペルオキシ化合物、又はその他の酸化性又は非酸化性殺菌剤のような殺菌剤を含むことができる。特定の形態にて、殺菌溶液は、約0.1%から約0.3%の過酢酸濃度の過酢酸溶液とする。過酢酸及び例えば、上述した米国特許第6,206,931号明細書に記載されたもののようなその他の酸化性殺菌剤の処理溶液を使用することができる。
【0022】
ECM材料は、導入されて材料の内部又はその上に残る化学剤の残留物を除去し得るようその作成の全体を通じて色々な段階にてすすぐこともできる(例えば、水道水、高純度水又は緩衝剤により)。好ましい実施の形態において、洗剤の残留物の少なくとも約90%は材料から除去される。より好ましくは、洗剤の残物の少なくとも約95%、又は少なくとも約97%が材料から除去されるものとする。
【0023】
洗剤、DNA−可溶化、脂質可溶化、すすぎ洗い及び潜在的にその他の液体媒質による処理は、任意の適宜な態様にて且つ、ECM材料が媒質と接触する、任意の適宜な順序にて行なうことができる。例えば、ECM材料は、処理時間の間、場合によっては、撹拌によって媒質中に浸漬させてもよい。媒質をECM材料に噴霧し又は散布するといったようなその他の接触方法を使用することもできる。同様に、処理は、任意の適宜な温度にて実施することができる。0℃から約50℃の温度は、ECM材料のコラーゲン及びその他の望ましい成分の実質的な変性を最小にし又は回避することを可能にする点にて好ましい。より好ましくは、処理温度は、約0℃から約37℃の範囲、より典型的には、約20℃から約37℃の範囲である。しかし、本発明のより広い態様にてその他の温度を使用可能であることが理解されよう。管状又はその他の閉塞可能な構造が形成される実施の形態において、腔を含むECM材料は、一端にて締止めし、腔を媒質にて充填し且つ、他端にて締止めし、管状のECM材料の基端及び末端を実質的に閉じるようにすることができる。腔が充填された管状のECM材料は、同一又は異なる媒質でよい媒質内に漬けることができる。このようにして、腔の各々、及び管状のECM材料の外面は、必ずしも処理媒質がECM材料を通って拡散するすなわち別言すれば通過することを必要とせずに処理することができる。この過程は、任意のすすぎ洗い工程を含んで、本発明にて使用される任意の媒質と共に繰り返すことができる。
【0024】
上述したような処理、及び(又は)その他の化学的及び(又は)機械的処理は、ECM組織を非細胞化し、その結果、望ましいことに、供給源組織から得られた生存細胞が無い加工したECM組織が得られよう。しかし、このようにして得られた無細胞のECM材料は、例えば、以下に説明する特定のもののような、特定の実施の形態にて細胞を培養し又は播種するため使用することができる。
【0025】
本発明の加工したECM材料は、望ましくは、顕著なコラーゲン状結合組織を含む任意の適宜な器官又はその他の組織源から得ることができる。ヒト又はその他の動物の組織源を使用することができる。非ヒト動物源は、哺乳類を含んで、温血脊椎動物でよく、ウシ、羊、ヤギ及び豚の源が適している。これらの組織源から得られた適宜なECM材料は、粘膜下組織、腎被膜、皮膚コラーゲン、硬膜、心膜、大腿筋膜、漿膜、腹膜、又は、肝臓基底膜を含む、基底膜層を含むことができる。これらの目的に適した粘膜下層材料は、例えば、小腸粘膜下組織を含む腸粘膜下組織、胃粘膜下組織、膀胱粘膜下組織、子宮粘膜下組織を含む。粘膜下組織を含むECMを隔離するとき、供給源組織からの生の粘膜下組織の一部又は全ては、場合によっては、1つ以上の隣接する組織層から得られた材料と共に、保持することが可能であることが十分に理解されよう。同様の原理は、その他のコラーゲン豊富層又は本明細書にて言及するその他の組織にも当てはまる(回収されたECM材料は、供給源組織内に当初に存在する特定の組織の一部又は全てを含むことがあり且つ(又は)最終の加工ECM材料中の隣接する組織と結合されたままであろう)。
【0026】
本発明の加工した天然由来のECM材料は、典型的に、乾燥重量に基づいて、重量コラーゲン当たり少なくとも約80%にて最も一般的に構成される多量のコラーゲンを含む。かかる天然由来のECM材料は、殆どの場合、例えば、全体的な単軸又は多軸であるが、規則的に背向したファイバとして現れる非ランダム背向のコラーゲンファイバを含む。天然の生物学的成分を保持するよう加工されたとき、ECM材料は、固体として考えられるこれらの成分をコラーゲンファイバの間にて、その上に及び(又は)その内部に保持することができる。本発明にて使用することが特に望まれる天然由来のECM材料は、光顕微鏡検査にて容易に確認可能なかかる拡散した非コラーゲン状固体を多量に含む。かかる非コラーゲン状固体は、特定の本発明の実施の形態にて、ECM材料の乾燥重量の顕著な比率、例えば、本発明の色々な実施の形態において、重量比にて少なくとも約1%、少なくとも約3%及び少なくとも約5%を構成するものとすることができる。
【0027】
本発明の加工したECM材料は、血管形成の特徴を示し、このため、材料を移植した宿主内にて血管形成を誘導するのに効果的である。この点に関して、血管形成は、身体が新血管を形成し、組織への血液の供給を増大させる過程である。このため、血管形成材料は、宿主組織と接触したとき、新血管の形成を促進し又は励起する。生物材料の植え込みに応答する血管形成をin vivoにて測定する方法が開発されている。例えば、かかる方法の1つは、材料の血管形成の特徴を決定するため、経皮的インプラントモデルを使用する。C.ヘッセン(Heeschen)らによる、ネイチャメディシン(Nature Medicine)7(2001)No.7、833−839を参照。蛍光ミクロ血管造影技術と組み合わせたとき、このモデルは、生体材料内への血管形成の定量的及び定性的測定値を提供することができる。C.ジョンソン(Johnson)らによるサーキュレーションリサーチ(Circulation Research)94(2004)、No.2、262−268を参照。
【0028】
医療用移植片材料及び本発明の方法のため生物学的に形態変化可能なECM材料を作成することが望ましい。生物学的に形態変化可能であり、また、細胞の侵入及び内部成長を促進するかかる材料は、特別に有利な効果を提供する。この点に関して生物学的に形態変化可能な材料を使用して、本発明の医療用移植片材料が植え込まれる箇所内における細胞の成長を促進することができる。
【0029】
上述したように、加工した粘膜下組織(粘膜下組織−保持)ECM材料及び任意のその他のECM材料は、供給源組織にとって多岐にわたる天然の成長因子又はその他の有益な生物活性成分を保持することができる。例えば、粘膜下組織又はその他のECMは、繊維芽細胞増殖因子(FGF−2)、形質転換成長因子ベータ(TGF−ベータ)、上皮成長因子(EGF)、結合組織成長因子(CTGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)及び(又は)血小板由来増殖因子(PDGF)のような1つ以上の天然の成長因子を含むことができる。同様に、本発明にて使用される粘膜下組織又はその他のECMは、プロテオグリカンのようなその他の生体材料及び(又は)ヘパリン、ヘパリン硫酸、ヒアルロン酸、フィブロネクチン及び同様のもののようなグリコサミノグリカンを含むことができる。このように、一般的にいって、加工したECM材料は、直接的に又は間接的に、細胞の形態、増殖、成長、タンパク質又は遺伝子発現の変化のような細胞応答を誘導する天然の生物活性成分を少なくとも1つ含むであろう。
【0030】
好ましい実施の形態において、加工したECM材料は、次の非コラーゲン状成分が表記した量にて存在する成分プロファイルを示す。
【0031】
成分 好ましい範囲 より好ましい範囲
脂質: 5%以下 3%以下
FGF−2: 2ng/g以上 5ng/g以上
IgA: 5μg/g以下 1μg/g以下
HA: 50μg/g以上 100μg/g以上
sGAG: 1000μg/g以上 2000μg/g以上
視認可能な核200/0.263mm以下 100/0.263mm以下
更に、天然の生物活性成分を保持することに加えて、遺伝子組み換え技術又はその他の方法により合成的に生産されたもののような、非天然の生物活性成分を、粘膜下組織又はその他のECM材料中に含めることができる。これらの非天然の生物活性成分は、ECM組織内にて自然に生ずるものに相応する天然由来の又は遺伝子組み換えにより生産したタンパク質とすることができるが、場合によっては、異なる種(例えば、豚のような、その他の動物からのコラーゲン状ECMに適用されたヒトタンパク質)とすることも考えられる。非天然の生物活性成分は薬剤物質であってもよい。本発明にて使用されるECM材料中に且つ(又は)その上に含めることのできる一例としての薬剤物質は、例えば、抗生物質、例えば、トロンビン、フィブリノゲン及び同様のもののような血液凝固因子の如き、血栓−促進物質とすることができる。これらの物質は、方法を行なう直前に、又は材料を患者に移植する間又は移植した後、予め製造する工程としてECM材料に施すことができる(例えば、材料をセファゾリンのような適宜な抗生物質を含む溶液に浸漬させることにより)。
【0032】
非天然の生物活性成分は、任意の適当な手段により粘膜下組織又はその他のECM組織に施すことができる。適宜な手段は、例えば、噴霧、含浸、浸漬等を含む。非天然の生物活性成分は、材料を細長い部材に添着前又は添着後の何れかにてECM組織に施すことができる。同様に、その他の化学的又は生物学的成分がECM組織内に含まれる場合、非天然の生物学的活性成分は、これらのその他の成分の前に、これらと同時に、又はその後の何れかにて施すことができる。
【0033】
本発明の加工した粘膜下組織又はその他のECM組織は、約12エンドトキシン単位量(EU)/g以下、好ましくは、5EU/g以下、より好ましくは、1EU/g以下のエンドトキシンレベルを示すことが好ましい。更に好ましくは、粘膜下組織又はその他のECM材料は、約1コロニー形成単位(CFU)/g以下、より好ましくは、0.5CFU/g以下のバイオバーデンを有するものとする。菌レベルは、例えば、約1CFU/g以下、より好ましくは、0.5CFU/g以下のように同様に低いことが望ましい。核酸レベルは、約2μg/mg以下であることが好ましく、より好ましくは、約1μg/mg以下であるものとし、ウィルスレベルは、約50プラーク形成単位(PFU)/g以下、より好ましくは、約5PFU/g以下であることが好ましい。
【0034】
特定の実施の形態において、エンドトキシンレベルは、ECM材料の1つ以上の隔離した単一のシートの表面積について調査することができる。かかる場合、ECM材料のシートは、約0.25EU/cm以下のエンドトキシンレベルを示すことができる。好ましい実施の形態において、ECM材料のシートは、約0.2EU/cm以下、約0.1EU/cm以下、約0.05EU/cm以下さえものエンドトキシンレベルを示す。最も好ましい実施の形態において、ECM材料のシートは、約0.025EU/cm以下のエンドトキシンレベルを示す。接合したすなわち別言すれば結合した複数のECM材料のシートを含む多層のECM構造体は、全体的な多層構造体の表面積に基づいて同様のエンドトキシンレベルを示すことができる。
【0035】
本発明の加工したECM材料は、脱水し又は水和化した状態にて包装するすなわち別言すれば貯蔵することができる。本発明の医療用移植片材料の脱水は、当該技術の分野にて既知の任意の手段により実現することができる。好ましくは、脱水は、凍結乾燥又は真空プレス法の何れかにて行なうことができるが、例えば、空気乾燥のような、その他の技術を使用してもよい。乾燥状態にて貯蔵されるとき、使用する前、加工したECM材料を再水和化することが望ましいことが多いであろう。この点にて、例えば、水又は緩衝剤を加えた食塩水溶液を含む、医療材料を再水和化するための任意の湿性化媒質を使用することができる。
【0036】
特定の実施の形態において、加工したECM材料は、架橋結合することができる。医療用移植片材料内の又は医療用移植片材料の2つ以上の層間の架橋結合の量(又は数)を増加させることを通じてその強度を増すことができる。しかし、医療用移植片材料内の架橋結合は、その生物学的形態変化又はその他の生物活性の特徴に影響を与えることもある。その結果、特定の実施の形態において、その天然の架橋結合レベルを実質的に保持する、生物学的形態変化可能なECM材料が提供され、又は、ECM材料中の追加された架橋結合の量及び(又は)型式は、生物学的形態変化又はその他の生物活性の特徴の所望のレベルを保持するように慎重に選ぶことができる。
【0037】
本発明にて使用するため、光架橋結合技術、又は化学架橋結合剤を使用するような、架橋結合剤の施工、又は脱水又はその他の手段により誘導されたタンパク質の架橋結合により、加工したECM材料の導入された任意の架橋結合を実現することができる。使用可能な化学架橋結合剤は、例えば、グルタルアルデヒドのようなアルデヒド、カルボジイミドのようなジイミド、例えば、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、リボース又はその他の糖、アシルアジド、スルホ−N−ヒドロキシサクシンアミド又はエポキシド化合物を含み、このエポキシド化合物は、例えば、日本、大阪のナガセケミカル(Nagese Chemical)Coからデナコル(DENACOL)EX810(登録商標名)にて販売されているエチレングリコールジグリシジルエーテル、及び同様にナガセケミカルからデナコルEX313(登録商標名)にて販売されているグリセロールポリグリセロールエーテルのようなグリシジルエーテルを含む。典型的に、使用されるとき、ポリグリセロールエーテル又はその他のポリエポキシド化合物は、分子当たり2から約10のエポキシ基を有する。好ましくは、医療用移植片材料は、トランスグルタミネーゼを含む架橋結合剤にて架橋結合されるものとする。
【0038】
本発明の加工したECM材料は、多岐にわたる医療用途に適するよう多様な物理的形態に製造することができる。例えば、隔離したECM材料は、1つ以上のシート、ペースト、発泡材、非ゲル状水性溶液、粉体又はゲルとして提供することができる。これら形態を組み合わせることも考えられる。この点に関して、ECM材料の形態は、本明細書に記載したように、ECM材料を加工する前又は加工後、実現することができる。更に、ECM複合材料は、より大きいバルク寸法にて製造し、次に、より小さい製品に分割することができる。更に、ECM材料は、天然由来の層の形態にて提供し又は、それ自体、天然由来のECM材料から作成されたスポンジ又は成形シートのような、製造物としてもよい。
【0039】
本発明の医療用移植片材料は、多岐にわたる(獣医学を含む)用途にて使用することができる。それらの例は、潰瘍(例えば、糖尿病又はその他の慢性潰瘍)、心血管組織(脈管組織及び心臓組織を含む)、心膜組織、筋組織、眼組織、歯周組織、骨、腱又は靭帯のような結合組織、消化管瘻(例えば、肛門直腸、直腸膣又は腸管皮膚瘻のような瘻の少なくとも主開口部を閉塞する栓の形態にて加工された)の治療を含むが、これらにのみ限定されない、神経組織、例えば、外表皮傷への施術のような傷の癒着時におけるような表皮組織の如き組織の修復又は再構築並びにその他を含む。
【0040】
1つの実施の形態において、加工したECM材料は、例えば、米国特許5,275,826号明細書、米国特許5,516,533号明細書に記載されたような技術を使用して流動化した組成物となるよう形成される。この点に関して、ECM材料の溶液又は懸濁物は、材料を可溶化し且つ実質的に均質な溶液を形成するのに十分な時間、材料をプロテアーゼ(例えば、トリプシン又はペプシン)にて粉砕し且つ又は消化させることにより作成することができる。ECM材料は、裂断、切断、摩砕、せん断又は同様のものによって粉砕することが望ましい。材料片の懸濁物を高速度混合機にて処理し、また、必要であれば、余剰な廃物を遠心分離し且つ排水することにより脱水することにより良好な結果を得ることができるが、材料を凍結し又は凍結乾燥状態にて摩砕することが望ましい。粉砕した材料は、乾燥させ、例えば、凍結乾燥させ粉体を形成することができる。その後、所望であれば、粉体は、脱水するすなわち水又は緩衝食塩水と、また、選択的に、その他の薬学的に許容可能な賦形剤と組み合わせて、例えば、25℃にて約2から約300,000cpsの粘度を有する流体組織の移植片組成物を形成することができる。より高粘度の移植片組成物はゲル又はペーストのコンシステンシーを有することができる。
【0041】
本発明の流動化したECM材料は、最も典型的に、外傷又は疾患に起因する組織の欠陥を矯正するため、修復又は補強を必要とする、骨又は柔軟な組織のような、組織に対する注入可能な異種移植片としての用途がある。本発明の流動化した組成物は、例えば、美容又は外傷−治療の外科手術にて使用するため、密封した(縫合した)パウチとなるよう形成されたコラーゲン状ECM材料の1つ以上のシートから成るインプラント構造用フィラーとして有益に使用することも可能である。
【0042】
一例としての作成法において、本明細書に記載したように作成したECM材料は、平坦な底部のステンレススチール容器に装填される小片となるよう小さくする(例えば、切断により)。試料を凍結させるため液体窒素が容器内に導入され、次に、その試料は、凍結状態にある間、粉砕して粗い粉体を形成する。かかる加工は、例えば、凍結試料の頂部に円筒状の黄銅インゴットが配置された手動のアーバープレスにて実現することができる。
【0043】
インゴットは、試料とプレスのアーバーとの間の境界面として機能する。液体窒素を定期的に試料に添加して試料を凍結状態に保つことができる。
【0044】
ECM材料の試料を粉砕するその他の方法を利用して本発明に従って使用可能な粉体を製造することができる。例えば、ECM材料の試料は、凍結乾燥させ、次に、手動のアーバープレス又はその他の摩砕手段を使用して摩砕することができる。これと代替的に、ECM材料は、高せん断力混合機内にて加工し、脱水及び乾燥したとき、粉体が製造されるようにしてもよい。
【0045】
予冷却した、すり鉢及びすりこぎを用いてECM材料の粉体の更なる摩砕を使用して均質で、より細かく割った製品を製造することができる。この場合にも、最終的な摩砕中、固体の凍結粒子を維持するため必要に応じて液体窒素が使用される。粉体は、例えば、緩衝食塩水を使用して容易に水和化し、所望の粘度にて本発明の流動化した組織移植片材料を製造することができる。
【0046】
別の好ましい流動化した材料を作成するため、ECM材料の粉体は、金網を通してふるい掛けし、集め且つタンパク質分解を受けさせ、実質的に均質な溶液を形成することができる。例えば、粉体は、室温にて48時間、HClによってpH2.5に調節された0.1Mの酢酸及び1mg/mlのペプシン(モンタナ州、セントルイスのシグマケミカルコーポレーション(Sigma Chemical Co.))にて分解することができる。この処理後、反応媒質は、水酸化ナトリウム(NaOH)にて中和し、ペプシン活性を不能にすることができる。次に、可溶化した粘膜下組織は、溶液の塩析出により濃縮し且つ、更なる精製及び(又は)凍結乾燥のため分離し、プロテアーゼで可溶化したコラーゲン状ECM材料を粉体の形態にて形成することができる。
【0047】
本発明の流動化した組織物は、組織の置換、強化及び(又は)修復のため広い用途がある。流動化した組成物は、既存の欠陥部の領域内にて天然の結合組織又は骨の再成長を誘導すべく使用することができる。治癒を必要とする組織の欠陥部又は傷の箇所に有効な量の流動化した組成物を注入することにより、コラーゲン状ECM材料のバイオトロピックな性質を容易に活用することができる。
【0048】
整形外科の用途において、本発明の医療用移植片材料は、例えば、米国特許第5,641,518号明細書に記載された一般的な技術を使用して骨の組織を修復するため使用することができる。このように、修復するため粉体形態の材料を損傷し又は疾患した骨領域内に植え込むことができる。粉体は、単独にて、又は、生理学的に適合可能な鉱物、成長因子、抗生物質、化学療法剤、抗原、抗体、酵素及びホルモンのような1つ以上の追加的な生物活性剤と組み合わせて使用することができる。好ましくは、粉体形態のインプラントは、所定の三次元的形状体となるように圧縮し、この形状体は骨領域内に植え込んで、移植片を内因性組織にて置換する間、実質的にその形状を保持するようにする。
【0049】
本発明の加工したECM材料は、例えば、内皮、線維芽細胞、胎児の皮膚、骨肉腫及び腺癌細胞のような、真核細胞の如き、被験者の細胞成長を支える栄養物と組み合わせて、一例としてシート、ペースト又はゲルの形態にて細胞の増殖基質として使用することができる(例えば、国際特許出願第WO96/24661号明細書を参照)。好ましい形態において、基質の組成は、ヒト細胞を含んで、哺乳類の細胞の増殖及び(又は)分化を支えるであろう。
【0050】
本発明の加工したECM材料は、例えば、1995年の美容整形手術年鑑、35:3740380及び1996年の関節手術Resの60:107−114に記載されたものと類似の技術を使用して、ヘルニアのような、腹壁の欠陥を修復する場合を含んで、体壁の修復時に使用することもできる。かかる適用例において、本発明の好ましい医療用移植片材料は、形態変化した組織内にて有益な組織化、血管新生及びコンスタンシーを促進する。皮膚科の適用例において、本発明の医療用移植片材料は、当該技術及び文献にて既知である(例えば、1995年の美容整形手術年鑑、35:381−388を参照)一般的な移植技術を使用して部分又は全厚さの傷口の修復及び真皮の強化のとき使用することができる。更に、火傷の治療領域にて、培養した表皮移植片(好ましくは、培養した表皮自家移植片すなわちCEA’s)が移植される代用真皮を提供することが一般に知られている。かかる培養した移植片は、典型的に、角化細胞及び(又は)線維芽細胞を代用真皮に移植する工程を含む。本発明に従って、医療用移植片材料は、例えば、シートの形態にて、代用真皮として使用することができ、これに応じてCEAを材料に移植してもよい。本発明のこの態様を実施する1つのモードにおいて、角化細胞は、例えば、角化細胞シートを粘膜下組織の粘膜側に播種し又は移すことにより移植してもよい。線維芽細胞は、粘膜及び(又は)粘膜下組織の反対側(腔側の反対側)に移植してもよい。
【0051】
本発明の加工したECM材料は、尿生殖器の適用例にて組織の植え込み時に使用することもできる。例えば、医療用移植片材料は、米国特許第5,645,860号明細書、1995年泌尿器学(Urology)46:396−400号及び1996年J.泌尿器学155:2098号に一般的に記載されたものに相応する技術を用いて膀胱の修復に使用し、膀胱の再生のための足場を提供することができる。流動化した形態にて、本発明の医療用移植片材料は、膀胱尿管逆流を矯正するため内視鏡的注入方法の用途もある。かかる用途において、注入は、例えば、患者の尿路口の下方の領域内にて行ない、注入箇所における平滑筋の成長及びコラーゲンの形成を誘導することができる。
【0052】
全体として、組織の移植片として使用する形態とされたとき、本発明の加工したECM材料は、その最終用途のため所望の寸法となるように切断するすなわち別言すれば形成可能な1つ以上のECM材料のシートを含むことができる。移植片材料は、多くの場合、この移植片材料が使用される組織の欠陥部よりも大きい寸法とされる。このようにして医療用移植片材料の寸法とすることは、周囲組織への容易な装着を許容することになる。
【0053】
このような寸法としたECM材料が欠陥部上に、その内部に又はその回りに配置されたとき、材料は、任意の幾つかの既知の適宜な装着手段を使用して周囲組織に装着することができる。適宜な装着手段は、例えば、生体適合性接着剤(例えば、フィブリン糊)、ステープル止め、縫合及び同様のものを含む。好ましくは、医療用移植片材料は、縫合糸により周囲組織に装着されたものとする。縫合糸として使用するため当該技術にて現在利用可能な多岐にわたる合成材料がある。例えば、プロレン(Prolene)(登録商標名)、バイクリル(Vicryl)、メルシレン(Mersilene)(登録商標名)、パナクリル(Panacryl)(登録商標名)、モノクリル(Monocryl)(登録商標名)から成る縫合糸を、本発明にて使用することが考えられる。当該技術の当業者には、その他の縫合糸材料が周知であろう。このため、上述した材料は、単に、一例として作用し、従って、何らの意味にても限定的なものではない。
【0054】
その他の領域において、本発明のECM材料にて形成された医療用移植片材料は、例えば、外傷、腫瘍の切開又は脱圧縮法に起因する欠陥部を修復するため耐久性のある代替物を必要とする技術のような、泌尿科の適用例にて使用することができる。
【0055】
シート形態にて、本発明の加工したECM材料は、単一層又は多数層の材料から成るものとすることができる。このように、特定の実施の形態において、ECM材料の単一の隔離層又は多数薄膜のECM構造を使用することができる。本発明にて使用するため一例としての多層薄膜のECM構造は、例えば、互いに積層した2から約10の隔離したECM層を有することができる。
【0056】
本発明にて使用される多層薄膜のECM構造は、任意の適宜な態様にて作成することが可能である。この点に関して、ECM層を互いに積層させる多岐にわたる技術を使用することができる。これらは、例えば、接着剤、糊又はその他の接合剤を使用して加熱し、加熱せず又は凍結乾燥状態下にて脱水熱接合し、化学剤又は放射線(紫外光線を含む)にて架橋結合し又はこれらを互いに又は任意その他の適宜な方法と組み合わせた方法を含む。本発明にて使用可能な多層薄膜のECM構造、及びそれらを作成する方法に関する更なる情報について、例えば、米国特許第5,711,969号明細書、米国特許第5,755,791号明細書、米国特許第5,855,619号明細書、米国特許第5,955,110号明細書、米国特許第5,968,096号明細書、及び米国特許出願公開20050049638号明細書を参照することができる。
【0057】
本発明にて使用される単一層のECM又は多層薄膜のECM構造又はその他の生体適合性材料は、それらの構造に孔又はスリットを有するか又はこれらが無いものとしてもよく、また、特定の実施の形態において、例えば、米国特許出願公開20050021141号明細書に記載されたような、メッシュ式構造を有するようなものとしてもよい。かかるメッシュパターン化した構造は、本発明にて使用するため極めて変形可能なECM又はその他のインプラントセグメントを提供すべく使用することができる。
【0058】
更なる実施の形態において、本発明の加工したECMは、材料を膨張させる過程を受けることができる。特定の形態において、かかる膨張した材料は、材料が膨張する迄、ECM材料が1つ以上のアルカリ性物質と制御された状態にて接触するようにし、また、膨張した材料を隔離することにより形成することができる。一例として、この接触は、ECM材料をその当初バルク容積の少なくとも120%(すなわち1.2倍)まで、又は、幾つかの形態にて、その当初容積の少なくとも約2倍まで膨張させるのに十分なものとすることができる。その後、膨張した材料は、選択的に、例えば、中和及び(又は)すすぎ洗いによりアルカリ性媒質から隔離することができる。集めた、膨張した材料は、医療用装置を作成するとき、任意の適宜な態様にて使用することができる。一例として、膨張した材料は、所望の形状又は形態の移植片構造体を形成するとき、生物活性成分を豊富に含み、乾燥させ且つ(又は)成形等することができる。特定の実施の形態において、膨張したECM材料にて形成された医療用移植片材料及び(又は)装置は、極めて可圧縮性(又は可膨張性)とし、材料は、カニューレ式送込み装置の管腔内等から送り込みのため圧縮することができ、また、その後、装置から配備したとき、膨張させ、患者の体内に定着させ且つ(又は)患者の体内の管路を閉じることができる。
【0059】
膨張したECM材料は、上述したような加工したECM材料を水性溶液又は水酸化ナトリウムを含むその他の媒質と制御された状態にて接触させることにより形成することができる。材料をアルカリ処理することは、材料の物理的構造に変化を生じさせる一方、この変化により材料は膨張する。かかる変化は、材料中のコラーゲンの変性を含むことができる。特定の実施の形態において、材料をその当初バルク容積の少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、又は少なくとも約6倍又はそれ以上、膨張させることが好ましい。膨張程度は、例えば、膨張すべき材料を処理するときに使用されるアルカリ性媒質の濃度又はpH、曝露時間及び温度を含む、幾つかの因子に関係している。
【0060】
膨張した材料を形成し得るよう加工することのできるECM材料は、本明細書にて開示されたものの任意のもの又はその他の適宜なECMを含むことができる。典型的なECM材料は、自然に生ずる分子間の架橋結合及び自然に生ずる分子内部の架橋結合を有するコラーゲン原線維ネットワークを含む。本明細書に記載したように膨張加工したとき、自然に生ずる分子間の架橋結合及び自然に生ずる分子内の架橋結合は、コラーゲン状マトリックス材料を無傷のコラーゲン状シート材料として維持するのに十分、加工したコラーゲン状マトリックス材料内に保持することができる。しかし、コラーゲン状シート材料中のコラーゲン原線維は、変性させることができ、また、コラーゲン状シート材料は、原材料の厚さよりも厚い、例えば、当初厚さの少なくとも120%、又は少なくとも当初厚さの少なくとも2倍の厚さのアルカリ加工後の厚さを有するようにすることができる。
【0061】
一例として、形態変化可能な材料の処理のためのアルカリ性物質の濃度は、約0.5から約2Mの範囲とすることができ、約1Mの濃度であることがより好ましい。更に、アルカリ性物質のpHは、特定の実施の形態において、約8から約14の範囲とすることができる。好ましい態様にて、アルカリ性物質は、約10から約14の範囲、最も好ましくは、約12から約14のpHを有するであろう。
【0062】
濃度及びpHに加えて、上述したように、温度及び曝露時間のようなその他の因子が膨張の程度に寄与するであろう。この点にて、特定の変形例において、アルカリ性物質に対するコラーゲン状物質の曝露は、約4から約45℃の温度にて行われる。好ましい実施の形態において、この曝露は、約25から約40℃の温度にて行われ、37℃であることが最も好ましい。更に、この曝露時間は、少なくとも約1分から約5時間以上の範囲としてもよい。幾つかの実施の形態において、この曝露時間は、約1から約2時間である。特に好ましい実施の形態において、コラーゲン状材料は、約1.5から2時間、約37℃の温度にてpH14を有するNaOHの1M溶液に曝露させる。かかる処理の結果、コラーゲンは変性し、形態変化可能な材料は実質的に膨張する。材料のコラーゲンマトリックスの変性は、材料のコラーゲンの充填特徴の変化として観察することができ、例えば、開始材料の緊密に結合したコラーゲン状ネットワークが実質的に障害を受けることになる。非膨張のECM又はその他のコラーゲン状材料は、肉眼にて、又は例えば、100xの倍率のような、小倍率により観察したとき、実質的に均一で連続した面を提供する。これと逆に、膨張したコラーゲン状材料は、極めて異なる面を有するようにしてもよく、その面は連続せず、多くの領域内にてコラーゲンストランド又はバンドルを提供し、これらの領域は、例えば、約100xのような同一の倍率にて観察したとき、ストランド又はバンドルの間にて材料中の実質的な空隙により分離されている。これと逆に、膨張したコラーゲン状材料は、典型的に、相応する非膨張のコラーゲン状材料よりも多孔質であるように見える。更に、多くの場合、膨張したコラーゲン状材料は、例えば、未処理の開始材料と比較して、例えば、水又はその他の流体の通過に対する透過率の増加について測定することにより、増大した多孔度を有することを実証することができる。膨張したECM又はその他のコラーゲン状材料がより発泡性で且つより多孔質の構造体であればある程、材料は、医療用材料及び装置を作成するため使用すべく多岐にわたるスポンジ又は発泡の形状体となるように成形する、すなわち別言すれば作成することを許容することができる。このことは、極めて可圧縮性であり、また、圧縮後、膨張する構造を作成することを更に許容することができる。かかる性質は、例えば、作成した医療用移植片材料を圧縮し且つ、患者の体内に送り込む配備装置(例えば、その管腔)内に装填し、その後、植え込み箇所にて膨張するよう配備すべきとき、有用であろう。
【0063】
かかるアルカリ処理の後、材料は、アルカリ性媒質から隔離し且つ更なる使用のため加工することができる。一例として、本発明の医療用移植片材料を形成し得るように材料を更に加工する前、集めた材料は、水にて中和し且つ(又は)すすぎ洗いして、材料からアルカリ度を除去することができる。
【0064】
本発明の医療用移植片材料は、多岐にわたる医療装置を製造するため1つ以上の第二の構成要素と共に使用することもできる。特定の実施の形態において、加工したECM材料は、自己膨張式又は強制的に膨張可能な(例えば、バルーン膨張可能な)ステント又はフレームのような、可膨張性部材に添着される。本発明のかかる装置は、動脈又は静脈内を含む、心血管系内に配備し得るようにすることができる。特定の装置は、例えば、動脈内に又は静脈不全を治療するため、脚又は足の静脈内に経皮的植え込まれる脈管弁として機能し得るようにすることができる。
【0065】
本発明の加工したECM材料にて形成された補綴用弁装置は、フレーム無し弁装置として体内通路に植え込むことができ、又は、上述したように、ECM材料は、可膨張性フレームに装着することができる。ECM材料は、スリーブのような生体適合性被覆物を形成し且つ(又は)小葉又はその他の弁構造を形成するよう使用することができる(国際特許出願WO99/62431号明細書及び国際特許出願WO01/19285号明細書参照)。弁構造を形成する1つのモードにおいて、加工したECM材料は、互いに一方向への流れに抵抗する1つ、2つ又はより多くの小葉、尖頭、ポケット又は同様の構造を形成するような態様にてステントに装着することができる。かかる装置の特定の適用例において、脈管弁の構造とされたかかる装置は、例えば、脚にて生ずる、人間の静脈不全を治療すべく植え込まれる。
【0066】
次に、図1を参照すると、温血脊椎動物の組織から得られた本発明の加工したECM材料11の単一層から形成された、シートの形態をした医療用移植片10が示されている。図2には、本発明の加工したECM材料11の2層から形成された医療用移植片装置20が示されている。図1及び図2に示したシート形態の医療用移植片装置は、傷の手当て及び柔軟な組織を支える用途を含むが、これらにのみ限定されない、本明細書に記載した多岐にわたる移植の用途にて使用することができる。
【0067】
次に、図3−図5を参照すると、本発明の補綴用弁装置31の色々な側面図が示されている。本発明の加工したECM材料は、フレーム要素33に装着され且つ、患者の体内に植え込む形態とされた2つの尖弁34、35を提供する。特に、図3は、尖弁34、35の接合上端縁34a、35aに対し平行な方向に沿った補綴用弁装置31の側面図を示す。図4は、左側から見た、図3に示した装置31の図を示す。図5は、右側から見た、図3に示した装置31の図を示す。装置31は、患者の脈管通路内に植え込むといったような、脈管への適用例に特に適している。
【0068】
図3−図5から理解し得るよう、尖弁34、35は互いに且つそれぞれの固定の端縁36、40と接合するためそれぞれの自由端縁34a、35aを含み、これらの固定の端縁36、40は、各々、装置31を血管壁を部分的に取り囲む経路内に植え込んだとき、脈管壁に押し付けられて、各々、血液を捕捉する要素を形成する。図示した装置31において、血管壁と接触する尖弁の端縁の経路は、カップ形成部分と接触する血管壁に沿って実質的に長手方向に伸びる実質的な部分を含んでおり、該カップ形成部分は、血管壁に沿って長手方向に及び、血管壁の回りにて周方向に伸びている。特に、尖弁34の固定の端縁36は、各々、カップ形成部分39の反対側まで伸びる、対向した長手方向伸長部分37、38を含む。これに相応して、尖弁35の固定の端縁40は、各々、カップ形成部分43の反対側まで伸びる、対向した長手方向伸長部分41、42を含む。
【0069】
尖弁領域が接触し又は接合する程度は、多数の異なる仕方にて表すことができる。インプラントの当初形態の接合長さ(例えば、LOC)は、少なくとも約2mmであることが望ましく、また、弁補綴具の形態に依存して約50mm以上のように大きくてもよい。本発明の特定の実施の形態において、接合長さは、インプラントの当初の形態にて、典型的に、約5から約30mm、より典型的には、約5から約15mmの範囲とすることができる。接合長さは、弁補綴具の全長の実質的な比率、例えば、補綴具の全長の少なくとも約5%、又は少なくとも約10%となるようにしてもよい。特定の実施の形態において、尖弁の接合長さは、全体的な装置の長さの10%から80%、典型的に、約30%から約60%、より典型的には、約35%から約55%となる。
【0070】
更なる態様において、尖弁の外端縁をかなりの距離にわたって互いに近接してフレームに沿って実質的に長手方向に向き決めすることにより、長尺の接合長さを提供することができる。このように、説明の目的のため、図3−図5を参照すると、尖弁34の外側尖弁端縁部分37は、例えば、2から50mm、典型的に、約5から約30mm、より典型的に、約5から約15mmのかなりの距離をわたって、尖弁35の外側尖弁端縁部分41に近接して血管壁に沿って接触する形態とされている。このことは、血管壁の反対側部に沿って伸長する尖弁端縁部分(例えば、端縁部分38、42、図3−図5)にもあてはまる。尖弁端縁は、例えば、約5mm、より好ましくは、約3mm、最も好ましくは、約1mm以内のこれらの距離にわたって近接した状態にあることが好ましい。この近接さは、尖弁端縁が血管壁に沿って互いに近接して伸長するように、又は、これらが実質的に同一の経路に沿って(例えば、共にフレームの単一のストラッツに沿って)装着され、このため、血管壁に沿って伸長するとき、互いに実質的に全く分離しないようにすることが理解されよう。
【0071】
本発明の態様の更なる理解を促進する目的のため、次の特定の例を掲げる。これらの例は単に一例であり、本発明を限定するものではないことが理解されよう。
【実施例】
【0072】
実施例1
この実施例は、本発明の1つの加工したECM材料の作成について説明するものである。
【0073】
ウシの小腸を包装工場から受け取り、断片化し且つ裂き開いて、それらの内側部分を露出させた。小腸内に含まれた中身を除去するため最初に洗浄した後、小腸の各々を、各側部にて機械的に摩擦させ、粘膜層及び漿膜層を除去し、また、更なる加工のため粘膜下組織を含む主たる結合組織層を隔離した。粘膜下層は、37℃にて1時間、1:10(重量:容積)0.1%ドシデル硫酸ナトリウム(SDS)溶液にて処理し、その後、37℃にて1時間、1:10(重量:容積)89mMトリス、ホウ酸塩、エチレンジアミン四酢酸(TBE)溶液にて処理した。こうした最初の処理の後、粘膜下組織は、周囲温度にて5分間、1:10(重量:容積)高純度水にてすすぎ洗いした。このすすぎ洗い工程は、2回繰り返し、その後、周囲温度にて30分間、粘膜下組織を1:5(重量:容積)100%イソプロピルアルコール(IPA)溶液にて処理した。このIPA処理工程は、2回繰り返し、その後、粘膜下組織を上述したように2回、すすぎ洗いした。次に、粘膜下組織は、周囲温度にて2時間、1:10(重量:容積)0.2%PAA/5%の特別変性アルコール溶液にて処理した。最後に、粘膜下組織は、周囲温度にて5分間、1:10(重量:容積)高純度水にてすすぎ洗いした。このすすぎ洗い工程は、合計4回繰り返し、その後、SDSの残留分について粘膜下組織を試験した。SDSの含有量は、洗剤検出キット(ケメトリック(Chemetrics))を使用して測定し、その値は、当初の洗剤の97%以上が除去されたことを示した。得られた粘膜下組織は以下の実施例にて使用した。
【0074】
実施例2
この実施例は、粘膜下組織のECM材料を作成する別の過程と比較したとき、実施例1にて説明した過程を使用して脂質の含有量の減少程度が向上したことを実証する。
【0075】
裂いたウシの小腸の10個のロットを得て、ほぼ等しい2つのグループに分けた。1つのグループは、米国特許第6,206,931号明細書の実施例1に記載したように加工した(以下、「対照グループ」と称する)。簡単に説明すれば、生の小腸を最初に、過酢酸にて処理し、その後、各側部を機械的に摩擦して粘膜下組織層を隔離し且つ、すすぎ洗いして化学剤の残留物を除去した。第二のグループは、実施例1にて上述したように作成した(以下「試験グループ」と称する)。
【0076】
材料のロットの各々を使用して、4つの粘膜下層(湿性)を重ね合わせ且つ、形成されたスタックを凍結乾燥することにより、凍結乾燥した4−層のシートを3つ形成した。4−層のシートは、低温度エチレン酸化物サイクルを使用して滅菌した。脂質含有量の分析のため、シートの各々から、1cm×1cmの試料を切り取った。3つの試料をロット当たりグループ毎に(3試料×10ロット)分析し、グループの各々に対し合計30の試料を分析した。試料の各々を計量し(初期重量)、次に、24時間、100%エタノール溶液にて処理し、その後、24時間、アセトン溶液にて処理し、脂質を抽出した。試料は、その後、約48時間、乾燥させ且つ計量した(最終重量)。(初期重量−最終重量の値)÷初期重量により脂質の含有量を計算した。
【0077】
データの各組の各々に対してどの分布(正規、対数正規、ワイブル、又はガンマ)が最も良く適しているかを決定するため、分布分析を行った。分布分析の結果、対照グループの脂質含有量は、8.06+/−5.59%の平均脂質含有量に相応する、対数−正規分布に最も良く適していることが分かった。分布分析の結果、2.51+/−2.51%の平均脂質含有量に相応する脂質含有量がワイブル分布に最も良く適することが分かった。
【0078】
試料の全てにて不対のt−試験を利用して1.08×10−5のp値を実現した。ロットに適合した対照グループの結果を相応する試験グループの結果と比較するため、対のt−試験を利用して、6.2×10−5のp値が実現された。双方のp値は、0.05以下であり、対照材料と比較したとき、試験材料の脂質含有量は統計学的に著しく減少していることを示す。
【0079】
実施例3
この実施例は、実施例1に示した過程を利用してIgA含有量が改良された程度に減少したことを実証する。
【0080】
裂いたウシの小腸の10個のロットを得て、また、ほぼ等しい2つのグループに分けた。1つのグループは、米国特許第6,206,931号明細書の実施例1(以下に、「対照グループ」と称される)として記載されたように加工した。簡単に説明すると、生の小腸を最初に、過酢酸にて処理し、その後、各側部にて摩擦し粘膜下組織層を隔離し且つ、すすぎ洗いして化学剤の残留物を除去した。第二のグループは、実施例1にて上述したように作成した(以下「試験グループ」と称する)。
【0081】
材料のロットの各々は、4つの粘膜下層(湿性)を重ね合わせ且つ、形成されたスタックを凍結乾燥することにより、凍結乾燥した3つの4−層に形成した。4−層のシートを低温度エチレン酸化物サイクルを利用して滅菌した。免疫グロブリンA(IgA)含有量の分析のため、シートの各々から、1cm×1cmの試料を切り取った。3つの試料は、ロット当たりグループ毎に分析し(3試料×10ロット)、グループ毎に合計30個の試料を分析した。試料の各々を、計量し(初期重量)、1.5mLの遠心分離管内に入れ、400μlのリン酸緩衝食塩水(PBS)内にて90秒間、摩砕した。その後、試料を遠心分離し、上澄み液を隔離し且つ、滅菌PBSにて1:5に希釈した。これらの希釈した試料は、テキサス州、ベーセルの、ベーセルラボラトリーズ(Bethyl Laboratories)からのキットを使用してELISAによりIgA含有量の試験のため分析した。試験グループのIgAの含有量を対照グループの初期重量で割ることによりIgAの重量含有量を計算した。
【0082】
どの分布(正規、対数−正規、ワイブル、又はガンマ)がデータの各セットに最も良く適しているかを決定するため、分布分析を行った。分布分析の結果、対照グループのIgA含有量は、50.4+/−27.7μg/gの平均IgA含有量に相応する正規分布に最も適したことが分かった。その他の試験グループの試料の全ては0μg/gにて試験する一方、試験グループの試料の1つは1.54μg/gにて試験した。分布は実質的に単一点であるから、試験グループの分布分析は行なわなかった。
【0083】
全ての試料にて不対のt−試験を利用して1.7×10−13のp値が実現された。ロットに適合した対照グループの結果を相応する試験グループの結果と比較するため、対のt−試験を利用して1.88×10−4のp値を実現した。双方のp値は、0.05以下であり、対照グループと比較したとき、試験グループの材料のIgAの含有量は統計学的に著しく減少していることを示す。
【0084】
実施例4
この実施例は、実施例1にて説明した過程を使用して核数が改良される程度に減少したことを実証する。
【0085】
裂いたウシの小腸の10個のロットを得て、また、ほぼ等しい2つのグループに分けた。1つのグループは、米国特許第6,206,931号明細書の実施例1(以下に、「対照グループ」と称される)として記載されたように加工した。簡単に説明すると、生の小腸を最初に、過酢酸にて処理し、その後、各側部にて摩擦させ粘膜下組織層を隔離し且つ、すすぎ洗いして化学剤の残留物を除去した。第二のグループは、実施例1にて上述したように作成した(以下「試験グループ」と称する)。
【0086】
各グループ内の各ロットからの試料を切断し且つ、核を識別するためヘキスト33258にて染色した。紫外線フィルタを有するオリンパス蛍光顕微鏡を使用してランダムな位置にて各試料中の核の3つの像を得た。像は、スポットインサイトデジタルカメラ(Spot Insight digital camera)の全倍率200xにて撮影し且つ、スポットRTコンピュータソフトウェアを通じて取得した。これらの像は0.263mmの全面積を示す。取得した各像の核を3つの独立的な分析機にてカウントした。像当たりの核数をこれら3つのカウント値の平均値とした。
【0087】
各組のデータにてどの分布(正規、対数−正規、ワイブル、又はガンマ)が最も良く適合するかを判断するため、分布分析を実行した。分布分析の結果、対照グループの核のカウント値は473+/−193核の対照グループに対しフィールド当たりの平均核数に相応するワイブル分布に最も適したことが分かった。分布分析の結果、試験グループに対しフィールド当たり平均核数に相応する、ガンマ分布に最も適した試験グループの核のカウント値は、26.7+/−36.1の核数であることが分かった。
【0088】
ロットに適合した対照グループの結果を相応する試験グループの結果と比較するため、対のt−試験を利用して1.66×10−6のp値が実現された。p値は、0.05以下であり、対照材料と比較したとき、試験試料の核のカウント値が統計学的に著しく減少していることを示す。
【0089】
実施例5
この実施例は、実施例1にて説明した加工したECM材料は天然FGF−2を保持することを実証する。
【0090】
ウシの生小腸の10個のロットを取得し且つ、実施例1に従って加工した。材料ロットの各々は、上記の実施例2にて説明したように、凍結乾燥した3つの4−層のシートに形成し且つ、低温度エチレン酸化物サイクルを利用して滅菌した。FGF−2含有量の分析のため、シートの各々から1cm×1cmの試料を切り取った。ロット当たり3つの試料を分析し(3試料×10ロット)、合計30個の試料を分析した。試料の各々は、計量し(初期重量)、1.5mLの遠心分離管内に入れ、400μlのリン酸緩衝食塩水(PBS)内にて3×30秒間、摩砕した。その後、試料を遠心分離し、上澄み液を隔離し且つ、滅菌PBSにて1:5に希釈した。これらの希釈した試料は、R&DシステムFGF−2 ELISAのキットを使用してFGF−2含有量について、2回分析した。ELISAにより決定されたFGF−2含有量を試料の初期重量で割ることにより、FGF−2の重量含有量を計算した。
【0091】
どの分布(正規、対数−正規、ワイブル、又はガンマ)がデータの各セットに最も良く適しているかを決定するため、分布分析を行った。分布分析の結果、FGF−2の含有量は、25.0ng/g+/−12.9ng/gの平均FGF−含有量の値に相応する、正規分布に最も適したことが分かった。
【0092】
実施例6
この実施例は、実施例1にて説明した加工したECM材料は天然ヒアルロン酸(HA)を保持することを実証する。
【0093】
ウシの生小腸の10個のロットを取得し且つ、実施例1に従って加工した。材料ロットの各々は、上記の実施例2にて説明したように、凍結乾燥した3つの4−層のシートに形成し且つ、低温度エチレン酸化物サイクルを利用して滅菌した。ヒアルロン酸(HA)の含有量分析のため、シートの各々から1cm×1cmの試料を切り取った。ロット当たり3つの試料を分析し(3試料×10ロット)、合計30個の試料を分析した。試料の各々は、計量し(初期重量)、1.5mLの遠心分離管内に入れ、45分間、56℃の450μlのリン酸緩衝食塩水(PBS)内にて50μlプロテイナーゼKで消化させた。その後、試料を遠心分離し、上澄み液を隔離し且つ、滅菌PBSにて1:40に希釈した。これらの希釈した試料は、コロラド州、ウェストミンスターのコルジェニクス(Corgenics)のキットを使用してELISAによりHAの含有量について、2回分析した。ELISAにより決定されたHAの含有量を試料の初期重量で割ることにより、HAの重量含有量を計算した。
【0094】
どの分布(正規、対数−正規、ワイブル、又はガンマ)がデータの各セットに最も良く適しているかを決定するため、分布分析を行った。分布分析の結果、試験試料HAの含有量は、303+/−209μg/gのHAの平均含有量に相応する、対数−正規分布に最も適していることが分かった。
【0095】
実施例7
この実施例は、実施例1にて説明した加工したECM材料は天然硫酸化グリコサミノグリカン(sGAGs)を保持することを実証する。
【0096】
ウシの生小腸の10個のロットを取得し且つ、実施例1に従って加工した。材料ロットの各々は、上記の実施例2にて説明したように、凍結乾燥した3つの4−層のシートに形成し且つ、低温度エチレン酸化物サイクルを利用して滅菌した。s(GAG)の分析のため、シートの各々から1cm×1cmの試料を切り取った。ロット当たり3つの試料を分析し(3試料×10ロット)、合計30個の試料を分析した。試料の各々は、計量し(初期重量)、1.5mLの遠心分離管内に入れ、45分間、56℃の450μlのリン酸緩衝食塩水(PBS)内にて、50μlプロテイナーゼKで消化させた。全ての試料は、5秒間、渦状にし、その後、1.0mLのブリスキャン(Blyscan)染料試薬を追加した。試料の各々から685nmにてスペクトル光度計により吸収読み取り値を3回、測定し、また、へパリン計量線からsGAG濃度を計算した。吸収読み取り値により決定されたs(GAG)の含有量を試料の全重量にて割ることによりsGAGの重量含有量を計算した。
【0097】
どの分布(正規、対数−正規、ワイブル、又はガンマ)がデータの各セットに最も良く適しているかを決定するため、分布分析を行った。分布分析の結果、sGAGの含有量は、7588μg/g+/−6505μg/gのs(GAG)の含有量の平均値に相応する、正規分布に最も適したることが分かった。
【0098】
実施例8
この実施例は、別の工程と比較して実施例1に従って加工したECM材料の隔膜破裂力を実証する。
【0099】
裂いたウシの小腸の10個のロットを得て、ほぼ等しい2つのグループに分けた。1つのグループは、米国特許第6,206,931号明細書に記載したように加工した(以下、「対照グループ」と称する)。簡単に説明すれば、生小腸を最初に、過酢酸にて処理し、その後、両側部を摩擦して粘膜下組織層を隔離し且つ、すすぎ洗いして化学剤の残留物を除去した。第二のグループは、実施例1にて上述したように作成した(以下「試験グループ」と称する)。
【0100】
湿性化した8つの粘膜下層を重ね合わせ且つその構造を真空プレスすることにより、ロットの各々は、上記の実施例2に記載したように凍結乾燥した4−層シートに形成し又は真空プレスした3つの8−層のシートに形成した。これらのシートは、低温度エチレン酸化物サイクルを利用して滅菌した。隔膜破裂力試験のため、シートの各々から、63.5mm×63.5mm(2.5インチ×2.5インチ)の試料を切り取った。凍結乾燥した4−層グループについてロット当たり3つの試料を分析し(3試料×9ロット)、合計27個の試料を分析した。真空プレスした8−層のグループ毎にロット当たり3つの試料を分析し(3試料×10ロット)、合計30個の試料を分析した。試料の各々は、試験する前、少なくとも15分間、リン酸緩衝食塩水(PBS)にて再水和化した。ミューレン破裂力試験機を使用して破断する迄の隔膜破裂力を測定した。
【0101】
どの分布(正規、対数−正規、ワイブル、ガンマ)が各データセットの各々に最も良く適しているかを決定するため、分布分析を行った。分布分析の結果、凍結乾燥した対照4−層の破裂力は359+/−98kPaの平均破裂力に相応する、ワイブル分布に最も良く適合することが分かった。分布分析の結果、凍結乾燥した試験用の4−層の隔膜破裂力は、378+/−79kPaの平均破裂力に相応する、対数−正規分布に最も良く適合することが分かった。2つのグループ間の隔膜破裂力の平均差は5.3%であった。全ての試料にて不対のt−試験を用いて0.458のp値が実現できた。ロットに適合した対照グループの結果を相応する試験グループの結果と比較するため、対のt−試験を用いて0.060のp値が実現できた。これらp値の双方は、0.05以上であり、現在使用されている過程により作成された凍結乾燥した4−層の材料と比較したとき、本発明の凍結乾燥した4−層の材料の隔膜破裂力は統計学的に顕著に減少しなかったことを示す。
【0102】
真空プレスした8−層の材料に関して、分布分析の結果、真空プレスした対照8−層の破裂力は、915+/−234kPaの平均破裂力に相応する、対数−正規分布に最も良く適合することが分かった。分布分析の結果、真空プレスした8−層の破裂力は、872+/−269kPaの平均破裂力に相応する、対数−正規分布に最も良く適合することが分かった。2つのグループ間の破裂力の平均差は、4.8%であった。全ての試料にて不対のt−試験を用いて0.516のp値が実現できた。ロットに適合した対照グループの結果を相応する試験グループの結果と比較するため、対のt−試験を用いて0.217のp値が実現できた。これらp値の双方は、0.05以上であり、真空プレスした8−層の材料と比較したとき、真空プレスした8−層の試験材料の破裂力は統計学的に顕著に減少しなかったことを示す。
【0103】
実施例9
この実施例は、滅菌処理し且つ隔離した粘膜下組織を作成する別の工程と比較したとき、実施例1に従って加工したECM材料の縫合糸の保持強さを実証する。
【0104】
裂いたウシの小腸の10個のロットを得て、また、ほぼ等しい2つのグループに分けた。1つのグループは、米国特許第6,206,931号明細書に記載されたように、加工した(以下、「対照グループ」と称される)。簡単に説明すると、生小腸を最初に、過酢酸にて処理し、その後、両側部を摩擦して粘膜下組織層を隔離し且つ、すすぎ洗いして化学剤の残留物を除去した。第二のグループは、実施例1にて上述したように作成した(以下、「試験グループ」と称する)。
【0105】
ロットの各々は、実施例8にて説明したように、凍結乾燥した3つの4−層シートに又は、真空プレスした3つの8−層シートとなるように形成した。これらのシートは、低温度エチレン酸化物サイクルを使用して滅菌した。縫合糸の保持強さ試験のため、シートの各々から、1cm×3cmの試料を切り取った。3つの試料は、ロット当たり各グループ毎に分析し(3試料×10ロット)、グループ毎に合計30の試料を分析した。凍結乾燥した4−層の材料を長手方向及び横方向という、2つの主要な方向に切断する一方、8−層材料は、層が直交状に重なり合うため、主要な方向を有しないから、一方向にのみ切断した。試料の各々は、試験前、少なくとも15分間、リン酸緩衝食塩水(PBS)にて再水和化した。臨床的に使用される5−0縫合糸と寸法の点にて同様の302/304ステンレススチールワイヤーを2mmの侵入深さにて試験品の各々の一端に通し、また、引張り強さ試験機の可動ジョーに装着した。試験品の各々の他端は、引張り強さ試験機の静止ジョー内に把持し、また、ワイヤーは、150mm/分の一定の速度にて上方に引っ張った。試料の各々について、最大力、破断時伸び及び破断モードを記録した。試験用試料の全て(180/180、100%)は、スチールワイヤーがSIS材料から引き出される結果、破断した。全ての場合、ステンレスワイヤーは、無傷のままであり、SIS材料は破損した。
【0106】
試験結果は次の通りである(平均値+/−標準偏差)。真空プレスした8−層の対照グループ=12.22+/−2.68N、真空プレスした8−層の試験グループ=12.77+/−1.81N(p=0.3714);凍結乾燥した4−層のグループの横方向=7.58+/−1.68N、凍結乾燥した4−層の試験グループの横方向=7.99+/−1.90N(p=0.3801);凍結乾燥した4−層のグループの長手方向=6.19+/−1.46N、凍結乾燥した4−層の試験グループの長手方向=6.14+/−1.41N(p=0.8929)。正規性についてデータセットにて適合性試験が良好であることは、データセットの何れも正規分布から何ら顕著に逸脱していないことを示す。このため、データグループの各々に対し2つの試料t−試験(対照対試験グループ)を実行した(真空プレスした8−層、凍結乾燥した4−層の横方向、及び凍結乾燥した4−層の長手方向)。p値の全ては、0.3714以上であり、対照材料と比較して、試験材料の縫合糸の保持強さは統計学的に顕著に減少しなかったことを示す。
【0107】
実施例10
この実施例は、滅菌し且つ隔離した粘膜下組織を作成する別の過程と比較したとき、実施例1に従って加工したECM材料の引張り強さを実証する。
【0108】
裂いたウシの小腸の10個のロットを得て、また、ほぼ等しい2つのグループに分けた。1つのグループは、米国特許第6,206,931号明細書に記載されたように、加工した(以下、「対照グループ」と称される)。簡単に説明すれば、生小腸を最初に、過酢酸にて処理し、その後、両側部を摩擦して粘膜下組織層を隔離し且つ、すすぎ洗いして化学剤の残留物を除去した。第二のグループは、実施例1にて上述したように作成した(以下、「試験グループ」と称する)。
【0109】
ロットの各々は、実施例8にて説明したように、凍結乾燥した3つの4−層シートに又は、真空プレスした3つの8−層シートとなるように形成した。引張り強さ試験のため、シートの各々から、「犬骨」の形状をした試料を切り取った。3つの試料は、ロット当たり各グループ毎に分析し(3試料×10ロット)、グループの各々について合計30個の試料を分析した。凍結乾燥した4−層の材料は、長手方向及び横方向という、2つの主要方向に向けて切断する一方、8−層材料は、一方向にのみ切断した。試料の各々は、リン酸緩衝食塩水(PBS)にて再水和化し、インストロン(Instron)を使用して100mm/分の変形率にて破断前の極限引張り力(UTF)の試験をした。
【0110】
どの分布(正規、対数−正規、ワイブル、ガンマ)が各データセットの各々に最も良く適しているかを決定するため、分布分析を行った。分布分析の結果、凍結乾燥した対照4−層の長手方向UTFは3.72+/−1.05lbsの平均UTFに相応する、対数−正規分布に最も良く適合することが分かった。分布分析の結果、凍結乾燥した試験材料の4−層の長手方向UTFは2.92+/−0.88lbsの平均UTFに相応する、正規分布に最も良く適合することが分かった。2つのグループ間のUTFの平均差は21%であった。全ての試料にて不対のt−試験を用いて3.6×10−3のp値が実現できた。ロットに適合した対照グループの結果を相応する試験グループの結果と比較するため、対のt−試験を用いて3.4×10−3のp値が実現できた。これらp値の双方は、0.05以下であり、乾燥凍結した4−層の対照材料と比較したとき、乾燥凍結した4−層の試験材料の長手方向UTFは統計学的に顕著に減少したことを示す。
【0111】
同様に、分布分析の結果、凍結乾燥した対照4−層の横方向UTFは3.2+/−0.96lbsの平均UTFに相応する、対数−正規分布に最も良く適合することが分かった。分布分析の結果、凍結乾燥した試験材料の4−層の長手方向UTFは2.48+/−0.90lbsの平均UTFに相応する、対数−正規分布に最も良く適合することが分かった。2つのグループ間のUTFの平均差は22%であった。不対のt−試験を用いて全ての試料にて7.1×10−3のp値が実現できた。対照グループの結果を相応する試験グループの結果と比較するため、対のt−試験を用いて5.11×10−2のp値が実現できた。これらp値の双方は、0.05以下であり、乾燥凍結した4−層の対照材料と比較したとき、乾燥凍結した4−層の試験材料の長手方向UTFは統計学的に顕著に減少したことを示す。
【0112】
8−層の材料についての分布分析の結果、真空プレスした対照8−層のUTFは10.78+/−3.35lbsの平均UTFに相応する、ワイブル分布に最も良く適合することが分かった。分布分析の結果、真空プレスした試験材料の8−層のUTFは、7.46+/−2.45lbsの平均UTFに相応する、正規分布に最も良く適合することが分かった。2つのグループ間のUTFの平均差は31%であった。全ての試料にて不対のt−試験を用いて6.4×10−5のp値が実現できた。ロットに適合した対照グループの結果を相応する試験グループの結果と比較するため、対のt−試験を用いて9.9×10−7のp値が実現できた。これらp値の双方は、0.05以下であり、真空プレスした8−層の対照材料と比較したとき、真空プレスした8−層の試験材料のUTFは統計学的に顕著に減少したことを示す。
【0113】
実施例11
この実施例は、実施例1の加工したECM材料は、血管形成の特徴を示すことを実証する。
【0114】
植え込まれるディスクは、次の方法にて加工したウシの小腸の粘膜下組織(SIS)にて形成した。凍結乾燥した対照(米国特許第6,206,931号明細書の実施例1に記載したように作成)、真空プレスした対照(米国特許第6,206,931号明細書の実施例1に記載したように作成)、凍結乾燥した試験(実施例1に記載したように作成)、真空プレスした試験(実施例1に記載したように作成)、及び傷の手当て製品プロモグラム(Promogran)(登録商標名)(PR)。対照ディスク及び試験用ディスクは、植え込む前、低温度エチレン酸化物サイクルにて滅菌した。PR製品は、滅菌状態にて受け取り、無菌状態にて加工した。ディスクの各々は、3週間、マウスの皮下背部に植え込んだ。3週間後、ディスクの各々を毛管形成のため、探針した。無傷の機能的微小血管系を映像化する方法である、蛍光ミクロ血管造影法を使用して血管形成を定性的に測定した。血管形成の測定値としての血管の容積は、蛍光ミクロスフェアの脈管灌流法を使用して決定し、その後、キシレンを使用してインプラントから蛍光抽出し、その後、蛍光プレート読取り機にて定量化した。最後に、細胞の内部成長を示すため、インプラントを薄い断片化及びH&E染色により組織学的に検査した。
【0115】
蛍光ミクロ血管造影法の結果、全てのディスクは、血管形成を支えることが分かった。凍結乾燥した試験用ディスクは、凍結乾燥した対照ディスクと同様の結果を示した。真空プレスした試験ディスクの性能は、真空プレスした対照ディスクよりも優れることを示した。PRディスクは、脈管成長が顕著に少なく、検査した2つの試料に対する1つの領域のみが何らかの内部成長を有していた。PRディスクの血管の容積の結果は、対照品よりも著しく少なかった。試験した任意のその他のディスクに対し統計学的差はなかった。組織学的検査はマイクロ血管造影法による知見結果を確認した。凍結乾燥した対照ディスク及び凍結乾燥した試験ディスクは、顕著な線維血管性の内部成長を示した。真空プレスした対照ディスクの貫入程度は僅かであった。真空プレスした試験ディスクは、より多くの細胞内部成長を示し、マイクロ血管造影法の結果を反映するが、この材料の高密度の性質のため、端縁付近にSISを含まない可能性の兆候を示した。PRディスク内にて明確な細胞の内部成長は極めて少なく、機能的形態変化の証拠は殆どないことを示す。
【0116】
実施例12
この実施例は、ラットの腹壁の修復モデルにて使用したとき、実施例1の加工したECMと別の加工したECMとの比較を示す。
【0117】
裂いたウシの小腸10個のロットを得て、また、ほぼ等しい2つのグループに分けた。1つのグループは、米国特許第6,206,931号明細書の実施例2に記載したように加工した(以下、「対照グループ」と称される)。簡単に説明すると、生の小腸を最初に、過酢酸にて処理し、その後、両側部を摩擦し、粘膜下組織層を隔離し且つすすぎ洗いした。第二のグループは、実施例1にて上述したように作成した(以下、「試験グループ」と称する)。
【0118】
材料のロットの各々は、真空プレスした4−層の試験インプラント又は真空プレスした4−層の対照インプラントとなるように形成した。ラットの腹筋膜に2cm×2cmの欠陥を形成し、修復のため、インプラントの各々を植え込んだ。2、4、又は8週間後、ラットを犠牲にし、インプラントを除去した。犬の骨の形状をした片をインプラントの各々から切り取り、機械的強さを試験した。
【0119】
試験インプラントは、破断時の機械的強さを、各時点でそれらの対照の相手方と比較した。更に、外植片にて、あらゆる合併症を観察した。検査した合併症は、感染症、腹部癒着の形成、及び血清腫の形成を含むものとした。各時点にて、試験インプラントは、相応する対照インプラントと比較して、破損に対するUTFは同様であった。試験インプラントは、宿主から誘発される好ましくない反応が少なかった。特に、全ての時点にて試験材料に1つの血清腫のみが観察された一方、対照インプラントには5つの血清腫が観察された。最後に、組織学的検査の結果、形態変化した試験インプラントは、同様に、対照インプラントよりも優れはしないものの、同程度であることが分かった。
【0120】
実施例13
この実施例は、本発明の別の加工したECM材料の作成について説明する。
【0121】
ウシの小腸を包装工場から受け取り、また、断片化し且つ裂き開いてそれらの内側部分を露出させた。小腸内に保持された中身を除去するための最初の洗浄後、小腸の各々は、各側部にて機械的に摩擦し、粘膜層及び漿膜層を除去し、更なる加工のため粘膜下組織を含む主たる結合組織層を隔離した。粘膜下層は、周囲温度にて30分間、1:5(重量:容積)99%イソプロピルアルコール(IPA)溶液中に処理した。このIPA処理工程は、2回、繰り返し、その後、粘膜下組織を水道水にて2回、すすぎ洗いした。次に、粘膜下組織は、37℃にて、1時間、1:10(重量:容積)0.1%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)加熱溶液内にて処理し、その後、37℃にて1時間、1:10(重量:容積)89mMトリス、ホウ酸塩、エチレンジアミン四酢酸(TBE)の加熱した溶液にて処理した。次に、処理した粘膜下組織を水道水にて2回、すすぎ洗いした。すすぎ洗い後、粘膜下組織は、周囲温度にて2時間、1:10(重量:容積)0.2%PAA/5%の特殊な変性アルコール溶液にて処理した。これらの処理工程の後、粘膜下組織は、周囲温度にて5分間、1:10(重量:容積)の高純度水にてすすぎ洗いした。このすすぎ洗い工程は、試験及び解放前、合計4回、繰り返した。すすぎ洗い水は、pH、伝導率及びPAA含有量について試験した。粘膜下組織の試料は、殺菌後、バイオバーデン及び物理的属性を試験した。
【0122】
本発明を説明する文章中にて(特に、次の請求項の文章にて)「1つ」及び「該」という語を使用することは、本明細書にて別段の記載がなく、又は、文章上、明確に反対の意味でない限り、単数及び複数の双方を包むものと解釈すべきである。本明細書にて値の範囲を詳述したことは、本明細書にて別段の記載がない限り、単にその範囲に属する別個の値の各々を個々に説明するための便宜な方法として機能することを意図するものであり、別個の値の各々はそれらが個々に本明細書にて言及されているかのように、本明細書に含められるものである。本明細書に説明した全ての方法は、本明細書に別段の表示がなくすなわち別言すれば、文章上、明確に反対の意味とされていない限り、任意の適宜な順序にて実行することができる。本明細書に記載した任意の及び全ての例又は一例としての語(例えば「〜のような」)を使用することは、単に本発明を一層良く示すことを意図するものであり、また、別段の請求がされていない限り本発明の範囲を限定するものではない。本明細書の何れの語も本発明の実施のため必須のものであるとして請求されていない任意の要素を示すものと解釈されるべきではない。
【0123】
本明細書にて本発明を実施する発明者等に既知の最良のモードを含んで本発明の好ましい実施の形態を説明した。勿論、これらの好ましい実施の形態の変形例は、上記の説明を読むことにより、当該技術の当業者に明らかになるであろう。発明者達は、当業者がかかる変形例を適宜に採用することを期待し、また、発明者達は、本明細書にて特に記載された方法以外の方法にて本発明が実施されることを意図する。従って、本発明は、適用可能な法律により許容されるように、本明細書に添付した特許請求の範囲にて言及した主題事項の全ての改変例及び等価物を含む。更に、その全ての可能な変形例における上述した要素の任意の組み合わせは、本明細書にて別段の記載がないすなわち別言すれば、文章上、明確に反対の説明がされない限り、本発明に包合されるものである。更に、本明細書にて言及した全ての出版物は、当該技術の当業者の能力を示し、また、参考として個々に含め且つ完全に記載されているかのように、その全体を参考として引用し本明細書に含めるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用移植片材料において、
コラーゲン成分及び非コラーゲン成分を含む滅菌の、非細胞化した細胞外マトリックス(ECM)材料から成り、
前記非コラーゲン成分は、
(i)約20μg/g以下のレベルの天然IgAと、
(ii)重量比にて約4%以下のレベルの天然脂質と、
(iii)少なくとも約10ng/gのレベルの天然FGF−2と、
(iv)少なくとも約50μg/gのレベルの天然ヒアルロン酸と、
(v)少なくとも約500μg/gのレベルの天然硫酸化グリコサミノグリカンとを含む、医療用移植片材料。
【請求項2】
請求項1に記載の医療用移植片材料において、
前記ECM材料は、粘膜下組織である、医療用移植片材料。
【請求項3】
請求項2に記載の医療用移植片材料において、
前記粘膜下組織は、腸、膀胱又は胃の粘膜下組織である、医療用移植片材料。
【請求項4】
請求項3に記載の医療用移植片製品において、
前記粘膜下組織は小腸の粘膜下組織(SIS)である、医療用移植片製品。
【請求項5】
医療用移植片材料において、
コラーゲン成分及び非コラーゲン成分を含む滅菌の、非細胞化した細胞外マトリックス(ECM)材料から成り、
前記非コラーゲン成分は、20μg/g以下のレベルの天然IgAと、天然FGF−2、天然ヒアルロン酸、天然グリコサミノグリカンの少なくとも1つとを含む、医療用移植片材料。
【請求項6】
請求項5に記載の医療用移植片材料において、
前記ECM材料は、15μg/g以下のレベルの天然IgAを含む、医療用移植片材料。
【請求項7】
請求項5に記載の医療用移植片材料において、
前記ECM材料は、10μg/g以下のレベルの天然IgAを含む、医療用移植片材料。
【請求項8】
請求項5に記載の医療用移植片材料において、
前記ECM材料は、5μg/g以下のレベルの天然IgAを含む、医療用移植片材料。
【請求項9】
請求項5に記載の医療用移植片材料において、
前記ECM材料は、実質的に、天然IgA無しである、医療用移植片材料。
【請求項10】
請求項5に記載の医療用移植片材料において、
前記ECM材料は、約4%以下の脂質含有量を有する、医療用移植片材料。
【請求項11】
請求項5に記載の医療用移植片材料において、
前記ECM材料は、約3%以下の脂質含有量を有する、医療用移植片材料。
【請求項12】
請求項5に記載の医療用移植片材料において、
前記ECM材料は、シート、ゲル、非ゲル状水性化合物、粉体、又はスポンジの1つ以上として形成される、医療用移植片材料。
【請求項13】
請求項12に記載の医療用移植片材料において、
前記ECM材料は、シートとして形成され且つ、凍結乾燥される、医療用移植片材料。
【請求項14】
請求項13に記載の医療用移植片材料において、
前記ECM材料は、少なくとも2つのECM層にて形成され、
前記少なくとも2つのECM層は、互いに連結される、医療用移植片材料。
【請求項15】
請求項5に記載の医療用移植片材料において、
前記ECM材料は、天然FGF−2、天然ヒアルロン酸及び天然グリコサミノグリカンである、医療用移植片材料。
【請求項16】
請求項5から15の何れか1つの項に記載の医療用移植片製品において、
前記ECM材料は、粘膜下組織である、医療用移植片製品。
【請求項17】
請求項16に記載の医療用移植片製品において、
前記粘膜下組織は、腸、膀胱又は胃の粘膜下組織である、医療用移植片製品。
【請求項18】
請求項17に記載の医療用移植片製品において、
前記粘膜下組織は、小腸の粘膜下組織(SIS)である、医療用移植片製品。
【請求項19】
医療用移植片材料において、アンギオゲニンの特徴(angiogenic character)を示し且つ、20μg/g以下のレベルの天然のIgAを含む、滅菌の、非細胞化した細胞外マトリックス材料である、医療用移植片材料。
【請求項20】
請求項19に記載の医療用移植片材料において、
前記ECM材料は、粘膜下組織である、医療用移植片材料。
【請求項21】
請求項20に記載の医療用移植片材料において、
前記粘膜下組織は、腸、膀胱又は胃の粘膜下組織である、医療用移植片材料。
【請求項22】
請求項21に記載の医療用移植片製品において、
前記粘膜下組織は、小腸の粘膜下組織(SIS)である、医療用移植片製品。
【請求項23】
患者を治療する方法であって、
請求項1乃至22の何れかの医療用移植片材料を提供することと、
患者に前記医療用移植片材料を移植することとを備える、患者を治療する方法。
【請求項24】
医療用移植片材料を作成する方法において、
天然IgA及び天然FGF−2を保持する開始細胞外マトリックス(ECM)材料を提供する工程と、
天然IgA含有量を20μg/g以下のレベルまで減少させつつ、天然FGF−2を少なくとも約10ng/gのレベルに保持するよう効果的に、前記開始ECM材料を処理する工程とを備え、
前記処理する工程は、前記開始細胞外マトリックス材料を水性洗剤溶液と接触させる工程を含む、医療用移植片材料を作成する方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法において、
洗剤の残留物の少なくとも90%を材料から除去し得るように、前記処理工程の後、前記ECM材料をすすぎ洗いする工程を更に備える、方法。
【請求項26】
細胞外マトリックス材料において、
温血脊椎動物から隔離された実質的に無細胞の細胞外マトリックス(ECM)材料であって、少なくとも約10ng/gの天然FGF−2含有量と、約4%以下の脂質含有量とを有する前記ECM材料である、細胞外マトリックス材料。
【請求項27】
細胞外マトリックス材料において、
温血脊椎動物から隔離された実質的に無細胞の細胞外マトリックス(ECM)材料であって、少なくとも1つの生物活性成分を保持し且つ、200/0.263mm以下のレベルにて存在する視覚可能な核を有する前記ECM材料である、細胞外マトリックス材料。
【請求項28】
請求項27に記載のECM材料において、
前記少なくとも1つの生物活性成分は、成長因子である、ECM材料。
【請求項29】
細胞外マトリックス材料において、
温血脊椎動物から隔離された実質的に無細胞の細胞外マトリックス(ECM)材料であって、少なくとも1つの生物活性成分を保持し且つ、2μg/g以下の核酸含有量を有する前記ECM材料である、細胞外マトリックス材料。
【請求項30】
請求項29に記載のECM材料において、
前記少なくとも1つの生物活性成分は、成長因子である、ECM材料。
【請求項31】
細胞外マトリックス材料において、
温血脊椎動物から隔離された実質的に無細胞の細胞外マトリックス(ECM)材料であって、少なくとも1つの生物活性成分を保持し且つ、200/0.263mm以下のレベルにて存在する視覚可能な核を有する前記ECM材料である、細胞外マトリックス材料。
【請求項32】
請求項31に記載のECM材料において、
前記少なくとも1つの生物活性成分は、成長因子である、ECM材料。
【請求項33】
細胞外マトリックス材料において、
温血脊椎動物から隔離された実質的に無細胞の細胞外マトリックス(ECM)材料であって、少なくとも1つの生物活性成分を保持し且つ、20μg/g以下の免疫グロブリン含有量を有する前記ECM材料である、細胞外マトリックス材料。
【請求項34】
請求項28に記載のECM材料において、
前記少なくとも1つの生物活性成分は、成長因子である、ECM材料。
【請求項35】
細胞外マトリックス材料において、
温血脊椎動物から隔離された実質的に無細胞の細胞外マトリックス(ECM)材料であって、約4%以下の脂質含有量を有し且つ、約12EU/g以下のエンドトキシンレベルを示す前記ECM材料である、細胞外マトリックス材料。
【請求項36】
請求項35に記載の細胞外マトリックス材料において、
前記材料は、約5EU/g以下のエンドトキシンレベルを示す、細胞外マトリックス材料。
【請求項37】
請求項35に記載の細胞外マトリックス材料において、
前記材料は、粘膜下組織である、細胞外マトリックス材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−507462(P2010−507462A)
【公表日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−534816(P2009−534816)
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【国際出願番号】PCT/US2007/082238
【国際公開番号】WO2008/067085
【国際公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(500355776)クック・バイオテック・インコーポレーテッド (7)
【Fターム(参考)】