増殖分化因子−8
【課題】 新規な増殖分化因子とその利用を提供すること。
【解決手段】 増殖分化因子−8(GDF−8)のポリヌクレオチド配列及びアミノ酸配列、ならびにGDF−8ポリペプチド及びポリヌクレオチド配列を用いる診断及び治療方法。
【解決手段】 増殖分化因子−8(GDF−8)のポリヌクレオチド配列及びアミノ酸配列、ならびにGDF−8ポリペプチド及びポリヌクレオチド配列を用いる診断及び治療方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
1.発明の分野
本発明は、広くは増殖因子に関し、特定的にはトランスフォーミング増殖因子β (TGF−β) スーパーファミリーの増殖分化因子−8 (GDF−8) といわれる新規なメンバーに関する。
【背景技術】
【0002】
2.関連技術の説明
トランスフォーミング増殖因子β (TGF−β) スーパーファミリーは、胚発生の間の分化過程の広い範囲に影響を及ぼす構造的に関連する一群のタンパク質を包含する。このファミリーには、正常な雄性発生に必要なミュラー管阻害物質 (MIS) (Behringerら, Nature, 345:167, 1990)、背腹軸形成及び成虫原基の形態形成に必要なドロソフィラ・デカペンタプレジック (Drosophila decapentaplegic)(DPP) 遺伝子産物 (Padgett ら, Nature, 325:81-84, 1987)、卵の植物極に局在しているツメガエルVg−1遺伝子産物 (Weeks ら, Cell, 51:861-867, 1987) 、ツメガエルの胚の中胚葉及び前部構造の形成を誘発することができる (Thomson ら, Cell, 63:485, 1990) アクチビン (Mason ら, Biochem. Biophys. Res. Commun., 135:957-964, 1986)、及びデノボ軟骨及び骨形成を誘発できる骨形態形成タンパク質 (BMP,オステオゲニン,OP−1) (Sampathら, J. Biol. Chem., 265:13198, 1990) が含まれる。TGF−β類は、脂質生成、筋発生、軟骨形成、血液生成、及び上皮細胞分化を含む種々の分化過程に影響することができる (委細については、Massague, Cell, 49:437, 1987 を参照のこと) 。
【0003】
TGF−βファミリーのタンパク質は、最初、大きな前駆体タンパク質として合成され、その後にC−末端から約110〜140アミノ酸の塩基性残基のクラスターでタンパク質分解性開裂を受ける。これらタンパク質のC−末端領域又は成熟領域は全て構造的に関連しており、個々のファミリーメンバーはそれらの相同性の程度に基づいて異なるサブグループに分類され得る。特定のサブグループ内の相同性は70%から90%アミノ酸配列同一性の範囲となるが、サブグループ間の相同性はかなり低くて一般に僅か20%から50%の範囲に過ぎない。それぞれの場合において、活性種はC−末端断片のジスルフィド連結ダイマーのようである。TGF−βファミリーのあるメンバーのプロ領域をTGF−βファミリーの他のメンバーの成熟領域と同時発現させると、細胞内二量体化及び生物活性なホモダイマーの分泌が起こることが研究によって示された (Gray, A.と Maston, A., Science, 247:1328, 1990) 。Hammondsらによる更なる研究 (Molec. Endocrin. 5:149, 1991) で、BMP−4成熟領域と結合したBMP−2プロ領域を用いると、成熟BMP−4の発現が劇的に向上したことが示された。研究した殆どのファミリーメンバーについて、そのホモダイマー種が生物活性であることが分かったが、インヒビン (Lingら, Nature, 321:779, 1986) 及びTGF−β類 (Cheifetzら, Cell, 48:409, 1987) のような他のファミリーメンバーについては、ヘテロダイマーが検出され、そしてこれらはそれぞれのホモダイマーとは異なる生物活性を有するようである。
【0004】
発現パターンが組織特異的である新規な因子の同定は、その組織の発生及び機能の深い理解を提供するであろう。
【発明の開示】
【0005】
発明の概要
本発明は、細胞増殖及び分化因子、つまりGDF−8、該因子をコードするポリヌクレオチド配列、及び該因子と免疫反応性である抗体を提供する。この因子は、種々の細胞増殖性疾患、特に筋肉、神経、及び脂肪組織に関連する疾患に関係するようである。
【0006】
かくして、1つの態様においては、本発明は、GDF−8に関係する筋肉、神経、又は脂肪起源の細胞増殖性疾患を検出する方法を提供する。もう1つの態様においては、本発明は、GDF−8活性を抑制するか又は増進することによって細胞増殖性疾患を治療する方法を提供する。
【0007】
従って、本発明は以下の発明を包含する。
1. 配列番号12又は配列番号14に記載されるアミノ酸配列を有する実質的に純粋な増殖分化因子−8(GDF-8)ポリペプチド。
2. 配列番号12又は配列番号14に記載されるアミノ酸配列を有する増殖分化因子−8(GDF-8)ポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド。
3. GDF-8ポリヌクレオチド配列が下記の核酸配列から成る群から選ばれる、2.に記載のポリヌクレオチド。
a. TがUであってもよい、配列番号11
b. TがUであってもよい、配列番号13
c. 配列番号11に相補的な核酸配列
d. 配列番号13に相補的な核酸配列
e. 長さが少なくとも15塩基であり、配列番号12のGDF-8タンパク質をコードするゲノミックDNAに選択的にハイブリダイズするa又はcの断片
f. 長さが少なくとも15塩基であり、配列番号14のGDF-8タンパク質をコードするゲノミックDNAに選択的にハイブリダイズするb又はdの断片
4.ポリヌクレオチドが哺乳動物細胞から単離される、2.のポリヌクレオチド。
5.哺乳動物細胞が、マウス、ラット及びヒトの細胞からなる群から選ばれる、4.のポリヌクレオチド。
6.2.のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
7.ベクターがプラスミドである、6.のベクター。
8.ベクターがウィルスベクターである、6.のベクター。
9.6.のベクターで安定に形質転換された宿主細胞。
10.細胞が原核細胞である、9.の宿主細胞。
11.細胞が真核細胞である、9.の宿主細胞。
12.配列番号12又は配列番号14に記載されるアミノ酸配列を有する増殖分化因子−8(GDF-8)ポリペプチド又はそのエプトープに特異的に反応性のある抗体。
13.抗体がポリクローナルである、12.の抗体。
14.抗体がモノクローナルである、12.の抗体。
【0008】
発明の詳細な説明
本発明は、増殖及び分化因子GDF−8及びGDF−8をコードするポリヌクレオチド配列を提供する。GDF−8は筋肉中で最高レベルで発現され、脂肪組織中ではより低いレベルで発現される。1つの態様においては、本発明は、GDF−8発現に関係する筋肉、神経、又は脂肪起源の細胞増殖性疾患を検出する方法を提供する。他の態様においては、本発明は、GDF−8活性を抑制するか又は増進する物質を用いることによって細胞増殖性疾患を治療する方法を提供する。
【0009】
TGF−βスーパーファミリーは、多くの細胞型内で増殖、分化、及び他の機能を制御する多機能性ポリペプチドからなる。これら多くのペプチドは、他のペプチド増殖因子の正と負の両方の調節作用を有する。本発明のGDF−8タンパク質とTGF−βファミリーのメンバーの間の構造的相同性は、GDF−8が増殖及び分化因子のファミリーの新規なメンバーであることを示している。多くの他のメンバーの既知の活性に基づき、GDF−8もそれを診断及び治療剤として有用なものにする生物活性を有するであろうと期待される。
【0010】
特に、このスーパーファミリーのある種のメンバーは、神経系の機能に関係する発現パターンを有するか又は活性を保持する。例えば、インヒビン及びアクチビンは脳内で発現されることが示され (Meunier ら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85:247, 1988;Sawchenko ら, Nature, 334:615, 1988)、そしてアクチビンが神経細胞生存分子として機能できることが示された (Schubertら, Nature, 344:868, 1990)。もう一つのファミリーメンバー、即ち、GDF−1は、その発現パターンが神経系特異的であり (Lee, S.J., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:4250, 1991) 、そしてVgr−1(Lyons ら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86:4554, 1989;Jones ら, Development, 111:531, 1991) 、OP−1 (Ozkaynakら, J. Biol. Chem., 267:25220, 1992) 及びBMP−4 (Jones ら, Development, 111:531, 1991) の如き一部の他のファミリーメンバーも、神経系で発現されることが知られている。骨格筋は運動ニューロンの生存を促進する1又は複数の因子を産生することが知られている (Brown, Trends Neurosci., 7:10, 1984) ので、筋肉内でのGDF−8の発現は、GDF−8の1つの活性がニューロンのための栄養因子としてのものであることを示唆している。この点で、GDF−8は、筋萎縮性側索硬化症の如き神経変性疾患の治療に、又は培養下の細胞若しくは組織を移植前に維持することに有用であるかも知れない。
【0011】
GDF−8は、筋変性疾患の如き筋肉に関連する疾患過程の治療又は外傷に起因する組織修復にも有用であるかも知れない。これに関して、TGF−βファミリーの他の多くのメンバーも組織修復の重要な媒介物質である。TGF−βはコラーゲンの生成に顕著な作用を有すること及び新生子マウス内でめざましい血管形成反応を起こすことが示されている (Roberts ら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 83:4167, 1986)。TGF−βが培養下の筋芽細胞の分化を阻害することも示されている (Massagueら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 83:8206, 1986)。更には、筋芽細胞は遺伝子治療のために筋肉へ遺伝子を送逹する運搬体として用いることができるので、GDF−8の特性は、移植前に細胞を維持するのに又は融合過程の効率を高めるのに利用できるかも知れない。
【0012】
脂肪組織内でのGDF−8の発現も、肥満症又は脂肪細胞の異常増殖に関連する疾患の治療におけるGDF−8の用途の可能性を思い起こさせる。これに関して、TGF−βが in vitro で脂肪細胞増殖の強力な阻害物質であることが示されている (Ignotz と Massague, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82:8530, 1985) 。
【0013】
ここで用いられる“実質的に純粋”という用語は、他のタンパク質、脂質、炭水化物又はそれが天然に随伴している他の物質を実質的に含まないGDF−8のことをいう。当業者は、タンパク質精製の標準的技術を用いてGDF−8を精製することができる。この実質的に純粋なポリペプチドは、非還元的ポリアクリルアミドゲル上で単一の主バンドを示すであろう。GDF−8ポリペプチドの純度は、アミノ末端のアミノ酸配列分析によっても測定することができる。GDF−8ポリペプチドには、GDF−8の活性が残っている限り、このポリペプチドの機能性断片が含まれる。GDF−8の生物活性を含有するより小さなペプチドが本発明に包含される。
【0014】
本発明は、GDF−8タンパク質をコードするポリヌクレオチドを提供する。これらポリヌクレオチドには、GDF−8をコードするDNA、cDNA及びRNA配列が含まれる。GDF−8の全部又は部分をコードする全てのポリヌクレオチドも、それらがGDF−8活性を有するポリペプチドをコードする限りここに含まれることが了解される。かかるポリヌクレオチドには、天然に存在する、合成の、及び故意に操作したポリヌクレオチドが含まれる。例えば、GDF−8ポリヌクレオチドを部位特異的突然変異誘発に付してもよい。GDF−8のためのポリヌクレオチド配列にはアンチセンス配列も含まれる。本発明のポリヌクレオチドには、遺伝暗号の結果として縮重している配列が含まれる。20の天然アミノ酸があり、その殆どが1を越えるコドンにより規定される。従って、そのヌクレオチド配列によりコードされるGDF−8ポリペプチドのアミノ酸配列が機能的に不変である限り、全ての縮重ヌクレオチド配列が本発明に包含される。
【0015】
GDF−8遺伝子の部分を含有するゲノミックDNA配列が、ここに具体的に開示されている。この配列は、GDF−8前駆体タンパク質の予想C−末端領域に対応するオープンリーディングフレームを含有する。コードされるポリペプチドは、2つの潜在的タンパク質分解性プロセシング部位 (KR 及び RR) を含有すると予想される。この前駆体の下流部位での開裂は、約12,400の予想分子量を有する109アミノ酸の生物活性成熟C−末端断片を生じるであろう。また、完全長マウス及びヒトGDF−8 cDNA配列も開示されている。このマウスプレプロGDF−8タンパク質は長さが376アミノ酸であって、2676塩基対ヌクレオチド配列によりコードされ、それはヌクレオチド104から開始しヌクレオチド1232の TGA 停止コドンまで及ぶ。ヒトGDF−8タンパク質は375アミノ酸であり、ヌクレオチド59から開始しヌクレオチド1184まで及ぶオープンリーディングフレームを有する2743塩基対配列によりコードされる。
【0016】
推定タンパク質分解性プロセシング部位の後ろのGDF−8のC−末端領域は、TGF−βスーパーファミリーの既知メンバーと有意な相同性を示す。このGDF−8配列は、他のファミリーメンバー内に高度に保存されている殆どの残基を含有する (図3を参照のこと) 。TGF−β類とインヒビンβ類のように、GDF−8は、殆ど全ての他のファミリーメンバーに見られる7つのシステインのほかに追加の対のシステイン残基を含有する。既知のファミリーメンバーの中で、GDF−8はVgr−1に最も相同性である (45%配列同一性) (図4を参照のこと) 。
【0017】
組換えGDF−8の一次アミノ酸配列を僅かに修飾すると、ここに記載したGDF−8ポリペプチドに比較して実質的に等しい活性を有するタンパク質が生じ得る。かかる修飾は、部位特異的突然変異誘発のように故意であっても自然に生じたものであっってもよい。GDF−8の生物活性が依然として存在する限り、これら修飾によりもたらされる全てのポリペプチドがここに含まれる。更に、1又は2以上のアミノ酸を欠失させても、その生物活性を有意に変化させることなく、その結果生じる分子の構造の修飾がもたらされる。これは、より広い有用性をもつと思われるより小さな活性分子の開発へと導くことができる。例えば、GDF−8生物活性に不要なアミノ末端又はカルボキシ末端のアミノ酸を除去することができる。
【0018】
本発明のGDF−8ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列には、開示した配列及びその保存的変異体が含まれる。ここで用いる“保存的変異体”という用語は、他の生物学的に類似の残基によるアミノ酸残基の置換を表わす。保存的変異体の例には、イソロイシン、バリン、ロイシン又はメチオニンの如き1つの疎水基の別の疎水基との置換;又はアルギニンのリシンとの置換、グルタミン酸のアスパラギン酸との置換、又はグルタミンのアスパラギンとの置換等の如き1つの極性基の別の極性基との置換が含まれる。“保存的変異体”という用語には、未置換親アミノ酸の代わりに置換アミノ酸を用いることも含まれる。但し、その置換ポリペプチドに対して生じる抗体はその未置換ポリペプチドとも免疫反応することができることを条件とする。
【0019】
本発明のDNA配列は、幾つかの方法により得ることができる。例えば、このDNAは、当該技術分野で周知のハイブリダイゼーション技術を用いて単離することができる。これらには、1)相同性ヌクレオチド配列を検出するためのゲノミック又はcDNAライブラリーとプローブとのハイブリダイゼーション、2) 興味の対象であるDNA配列にアニーリングできるプライマーを用いるゲノミックDNA又はcDNA上でのポリメラーゼ連鎖反応 (PCR) 、及び 3) 共有される構造的特徴を有するクローン化DNA断片を検出するための発現ライブラリーの抗体スクリーニング、が含まれるがこれらに限定されない。
【0020】
好ましくは、本発明のGDF−8ポリヌクレオチドは、哺乳動物、最も好ましくは、マウス、ラット、又はヒトから誘導される。適切なプローブが入手可能であれば、核酸ハイブリダイゼーションに依拠するスクリーニング操作であらゆる生物から任意の遺伝子配列を単離するのが可能である。問題のタンパク質をコードする配列の一部に対応するオリゴヌクレオチドプローブは、化学的に合成することができる。これには、短いオリゴペプチドのアミノ酸配列が既知でなければなない。このタンパク質をコードするDNA配列は遺伝暗号から推定することができるが、遺伝暗号の縮重を考慮に入れなければならない。その配列が縮重したものである場合には混合付加反応 (mixed addition reaction) を行うことが可能である。これは、変性二本鎖DNAの不均一混合液を含む。かかるスクリーニングのために、ハイブリダイゼーションを好ましくは一本鎖DNA又は変性二本鎖DNAのいずれかで行う。興味の対象であるポリペプチドに関連するmRNA配列が極端に少ない量しか存在しない供給源から誘導されるcDNAクローンの検出には、ハイブリダイゼーションが特に有用である。換言すると、非特異的結合の回避に向けたストリンジェントなハイブリダイゼーション条件を用いることにより、例えば、特異的cDNAクローンのオートラジオグラフィーでの可視化を、その標的DNAとその完全な相補体である単一プローブとの混合液中でのハイブリダイゼーションにより可能とすることができる (Wallace ら, Nucleic Acids Res., 9:879, 1981)。
【0021】
GDF−8をコードする特定のDNA配列の開発は、1) ゲノミックDNAからの二本鎖DNA配列の単離;2) 興味の対象であるポリペプチドの必要なコドンを得るためのDNA配列の化学的製造;及び 3) 真核ドナー細胞から単離したmRNAの逆転写による二本鎖DNA配列の in vitro 合成、によっても得ることができる。後者の場合には、一般にcDNAといわれるmRNAの二本鎖DNA相補体が最終的に生成する。
【0022】
組換え操作に用いる特定DNA配列を開発するための上記の3種の方法のうち、ゲノミックDNA単離物の単離が最も普通ではない。これは、特に、イントロンの存在のために哺乳動物ポリペプチドを微生物で発現させることが望ましい場合に当てはまる。
【0023】
DNA配列の合成は、所期のポリペプチド産物のアミノ酸残基の全配列が既知であるときは、しばしば最適の方法となる。所期のポリペプチドのアミノ酸残基の全配列が未知であるときには、DNA配列の直接合成は可能ではないので、最上の方法はcDNA配列の合成となる。興味の対象であるcDNA配列を単離する標準的操作の中で抜きん出ているのは、高レベルの遺伝子発現を有するドナー細胞内に豊富なmRNAの逆転写から誘導されるプラスミド又はファージ保有cDNAライブラリーの形成である。ポリメラーゼ連鎖反応法と組み合わせて用いると、希薄な発現産物であってもクローン化できる。ポリペプチドのアミノ酸配列のかなりの部分が分かっている場合には、標的cDNA中に存在すると推定される配列を複写する標識した一本又は二本鎖のDNA又はRNAプローブ配列を作って、一本鎖型に変性されたcDNAのクローン化コピー上で行われるDNA/DNAハイブリダイゼーション操作に用いることができる (Jay ら, Nucl. Acid Res., 11:2325, 1983) 。
【0024】
λgt11の如きcDNA発現ライブラリーは、GDF−8に特異的な抗体を用いて、少なくとも1つのエピトープを有するGDF−8ペプチドについて間接的にスクリーニングすることができる。かかる抗体はポリクローナル的に誘導されてもモノクローナル的に誘導されてもよく、GDF−8 cDNAの存在を示す発現産物を検出するのに用いることができる。
【0025】
GDF−8をコードするDNA配列は、適する宿主細胞内へのDNA移入により in vitro で発現させることができる。“宿主細胞”は、ベクターがその中で増殖できてそのDNAを発現しうる細胞である。この用語は、宿主細胞の如何なる子孫も包含する。複製の間に突然変異が起こることがあるので、全ての子孫が親細胞と同一という訳ではないことが了解される。しかしながら“宿主細胞”という用語を用いるときは、かかる子孫が含まれる。安定な移入は、外来DNAを宿主内に継続的に維持することを意味するのであるが、その方法は当該技術分野で既知である。
【0026】
本発明では、GDF−8ポリヌクレオチド配列を組換え発現ベクター内に挿入してもよい。“組換え発現ベクター”という用語は、GDF−8遺伝子配列の挿入又は組み込みにより操作されたプラスミド、ウィルス又は当該技術分野で既知のその他の運搬体のことをいう。かかる発現ベクターは、宿主の挿入遺伝子配列の効率的な転写を促進するプロモーター配列を含有する。この発現ベクターは、典型的には、複製起点、プロモーター、並びにその形質転換細胞の表現型選択を可能にする特定遺伝子を含有する。本発明に用いるのに適するベクターには、細菌内での発現のためのT7に基づく発現ベクター (Rosenberg ら, Gene, 56:125, 1987) 、哺乳動物細胞内での発現のためのpMSXND発現ベクター (Lee と Nathans, J. Biol. Chem., 263:3521, 1988) 及び昆虫細胞内での発現のためのバキュロウィルス誘導ベクターが含まれるが、これらに限定されない。DNAセグメントは、調節要素、例えば、プロモーター (例えば、T7、メタロチオネインI、又はポリヘドリンプロモーター) に機能しうる状態で連結されたベクター内に存在することができる。
【0027】
GDF−8をコードするポリヌクレオチド配列は、原核生物内でも真核生物内でも発現させることができる。宿主には、微生物、酵母、昆虫及び哺乳動物が含まれ得る。原核生物内で真核性又はウィルス性配列を有するDNA配列を発現させる方法は、当該技術分野で周知である。宿主内で発現及び複製できる生物学的に機能性のウィルス及びプラスミドDNAベクターは、当該技術分野で周知である。かかるベクターが、本発明のDNA配列を組み込むのに用いられる。好ましくは、GDF−8の成熟C−末端領域は、GDF−8の全コーディング配列を含有するcDNAクローンから発現される。また、GDF−8のC−末端部分を、TGF−βファミリーの別のメンバーのプロ領域との融合タンパク質として発現させても、別のプロ領域と同時発現させてもよい (例えば、Hammondsら, Molec. Endocrin. 5:149, 1991;Gray, A.と Mason, A., Science, 247:1328, 1990を参照のこと) 。
【0028】
組換えDNAでの宿主細胞の形質転換は、当業者にとって周知である慣用的技術により行うことができる。宿主が大腸菌の如き原核生物である場合、DNA取込み能を有するコンピテント細胞は、対数増殖期後に採取してからCaCl2 法により処理した細胞から当該技術分野で周知の操作を用いて調製することができる。また、MgCl2 又はRbClを用いることができる。形質転換は、必要なら宿主細胞のプロトプラストを形成した後に行うこともできる。
【0029】
宿主が真核生物である場合、リン酸カルシウム共沈;マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、リポソーム内に保持させたプラスミドの挿入の如き慣用的な機械的操作;又はウィルスベクター;の如きDNAのトランスフェクションを用いることができる。真核細胞は、本発明のGDF−8をコードするDNA配列、及び単純ヘルペスチミジンキナーゼ遺伝子の如き選択可能な表現型をコードする第二外来DNA分子で同時形質転換することもできる。他の方法は、シミアンウィルス40 (SV40)又はウシパピローマウィルスの如き真核性ウィルスベクターを用いて、真核細胞を一時的に感染又は形質転換して本タンパク質を発現させることである (例えば、Eukaryotic Viral Vectors, Cold Spring Harbor Laboratory, Gluzman編, 1982 を参照のこと) 。
【0030】
本発明により提供される微生物発現ポリペプチド又はその断片の単離及び精製は、分取クロマトグラフィー及びモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体を関与させる免疫学的分離法を含む慣用的手段により行うことができる。
【0031】
本発明は、GDF−8ポリペプチド又はその機能性断片と免疫反応性の抗体を包含する。異なるエピトープ特異性を有するプールしたモノクローナル抗体から本質的になる抗体、並びに明確に異なるモノクローナル抗体調製物が提供される。モノクローナル抗体は、当業者にとって周知の方法により本タンパク質の断片を含有する抗原から作られる (Kohlerら, Nature, 256:495, 1975)。本発明で用いる抗体という用語は、GDF−8上のエピトープ決定基に結合できる無傷の抗体分子並びにFab及びF (ab')2 の如きその断片を包含するものである。
【0032】
“細胞増殖性疾患”という用語は、形態学的にも遺伝子型的にもしばしば周辺組織と相違して見える悪性並びに非悪性の細胞集団を表わす。悪性細胞 (即ち、癌) は、多段階経過の結果発生する。アンチセンス分子であるGDF−8ポリヌクレオチドは、種々の器官系、特に、例えば、筋肉内の細胞又は脂肪組織の悪性腫瘍を治療に有用である。本質的に、GDF−8の変化した発現に病因学的に関連するあらゆる疾患は、GDF−8抑制剤での治療に感受性であると考えられる。かかる疾患の1つは、例えば、悪性細胞増殖性疾患である。
【0033】
本発明は、抗GDF−8抗体をGDF−8関連疾患を有する疑いがある細胞に接触させ、そして該抗体への結合を検出することを含む、筋肉又は脂肪組織の細胞増殖性疾患を検出する方法を提供する。GDF−8と反応性の抗体は、GDF−8への結合の検出を可能にする化合物で標識される。本発明の目的のためには、GDF−8ポリペプチドに特異的な抗体を用いて、生物学的液体及び組織中のGDF−8のレベルを検出する。検出できる量の抗原を含有するあらゆる検体を用いることができる。本発明の好ましいサンプルは筋肉組織である。疑いのある細胞内のGDF−8のレベルを正常細胞内のレベルと比較して、その被験体がGDF−8関連細胞増殖性疾患を有するかどうか確認することができる。好ましくは、被験体はヒトである。
【0034】
本発明の抗体は、in vitro 又は in vivo の免疫診断又は免疫治療を施すのが望ましいあらゆる被験体に用いることができる。本発明の抗体は、例えば、それらを液相で用いるか又は固相担体に結合させるイムノアッセイに用いるのに適している。加えて、これらイムノアッセイにおける抗体は、種々の方法で検出できるように標識することができる。本発明の抗体を用いることができるイムノアッセイのタイプの例は、直接又は間接のいずれかの形式の競合及び非競合イムノアッセイである。かかるイムノアッセイの例は、ラジオイムノアッセイ (RIA) 及びサンドイッチ (イムノ) アッセイである。本発明の抗体を用いる抗原の検出は、フォワード、リバース、又は同時モードのいずれかで行われる、生理学的サンプルに対する免疫組織化学的アッセイを含むイムノアッセイを用いて行うことができる。当業者は、過度に実験を重ねることなく他のイムノアッセイ形式を知っているか又は容易に識別できるであろう。
【0035】
本発明の抗体は、多くの異なる担体に結合させて、本発明のポリペプチドを含む抗原の存在を検出するのに用いることができる。周知の担体の例には、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然又は変性セルロース、ポリアクリルアミド、アガロース及び磁鉄鉱が含まれる。担体の性質は、本発明の目的のためには可溶性であっても不溶性であってもよい。当業者は、結合抗体のための他の適する担体を知っているか、又は定型的な実験を用いてそうしたものを探知できるであろう。
【0036】
当業者にとって既知の多くの異なる標識及び標識方法がある。本発明に用いることができる標識のタイプの例には、酵素、放射性同位元素、蛍光化合物、コロイド状金属、化学発光化合物、リン光化合物、及び生物発光化合物が含まれる。当業者は、抗体への結合のための他の適する標識を知っているか、又は定型的な実験を用いてそうしたものを探知できるであろう。
【0037】
より大きな感度をもたらすことができる他の技術は、低分子量ハプテンへの抗体のカップリングからなるものである。次いで、これらハプテンを第二反応により特異的に検出することができる。例えば、アビジンと反応するビオチン、又は特異的抗ハプテン抗体と反応できるジニトロフェノール、ピリドキサール、及びフルオレセインの如きハプテンを用いるのが普通である。
【0038】
抗原の in vivo 検出のために本発明のモノクローナル抗体を用いるには、検出できるように標識された抗体を診断に有効な量で与える。“診断に有効な”という用語は、検出できるように標識されたモノクローナル抗体の量が、そのモノクローナル抗体が特異的である本発明のポリペプチドを含む抗原を有する部位の検出を可能にするのに十分な量で投与されることを意味する。
【0039】
投与される標識モノクローナル抗体の濃度は、ポリペプチドを有する細胞への結合がバックグランドに比較して検出可能となるのに十分であるべきである。更に、検出できるように標識されたモノクローナル抗体は、最良の標的対バックグランドのシグナル比が得られるように、循環系から速やかに浄化されるのが望ましい。
【0040】
一般に、in vivo 診断のための標識モノクローナル抗体の投与量は、その個体の年齢、性別、及び疾患の程度の如き要因に依存して変動するであろう。かかる投与量は、例えば、多数回注射するかどうか、抗原負担、及び当業者にとって既知の他の要因に依存して変動してもよい。
【0041】
in vivo 診断的画像化 (diagnostic imaging) については、利用できる検出装置の型が所与の放射性同位元素を選択するに際しての主要な要因となる。選ばれる放射性同位元素は、所与の型の装置にとって検出可能なタイプの崩壊を持たなければならない。in vivo 診断のための放射性同位元素を選択するに際してのいま一つ重要な要因は、宿主に対して有害な放射線を最小限とすることである。理想的には、in vivo 画像化に用いる放射性同位元素は粒子の放出を欠いているが、慣用的なガンマカメラで容易に検出できる140〜250keV幅の多数の光子を生じるであろう。
【0042】
in vivo 診断のため、放射性同位元素は直接にでも中間官能基を用いて間接にでもイムノグロブリンに結合させることができる。金属イオンとして存在する放射性同位元素をイムノグロブリンに結合させるのにしばしば用いられる中間官能基は、ジエチレントリアミン五酢酸 (DTPA) 及びエチレンジアミン四酢酸 (EDTA) 及び類似の分子の如き二官能性キレート剤である。本発明のモノクローナル抗体に結合できる金属イオンの典型例は、 111In、97Ru、67Ga、68Ga、72As、89Zr、及び 201Tlである。
【0043】
本発明のモノクローナル抗体は、磁気共鳴画像化 (MRI) 又は電子スピン共鳴(ESR) におけるように、in vivo 診断の目的で常磁性同位元素で標識することもできる。一般に、診断画像を可視化するあらゆる慣用的方法を用いることができる。通常、ガンマ及び陽電子放出放射性同位元素がカメラ画像化に用いられ、MRIには常磁性同位元素が用いられる。かかる技術に特に有用な元素には、 157Gd、55Mn、 162Dy、52Cr、及び56Feが含まれる。
【0044】
本発明のモノクローナル抗体を in vitro 及び in vivo で用いて被験体におけるGDF−8関連疾患の改善の経過を追跡することができる。かくして、例えば、本発明のポリペプチドを含む抗原を発現する細胞の数の増加若しくは減少又は種々の体液中に存在する、かかる抗原の濃度の変化を測定することによって、GDF−8関連疾患を改善することを狙った特定の治療法が有効であるかどうかを確認することが可能となろう。“改善”という用語は、治療を受けている被験体のGDF−8関連疾患の好ましくない作用が少なくなることを表わす。
【0045】
本発明は、正常細胞内での発現に比較して変わったやり方で発現され得るヌクレオチド配列を同定するものであり、従ってこの配列に向けた適切な治療又は診断技術をデザインすることが可能となる。かくして、細胞増殖性疾患がGDF−8の発現と関係している場合には、翻訳レベルでGDF−8発現を妨害する核酸配列を用いることができる。このアプローチは、例えば、アンチセンス核酸及びリボザイムを用いて特定のGDF−8 mRNAの翻訳を遮断するものであって、それはそのmRNAをアンチセンス核酸でマスクするか又はそれをリボザイムで開裂させるかのいずれかによりなされる。かかる疾患には、例えば、神経変性疾患が含まれる。
【0046】
アンチセンス核酸は、特定のmRNA分子の少なくとも一部分に相補的なDNA又はRNA分子である (Weintraub, Scientific American, 262:40, 1990) 。細胞内でこのアンチセンス核酸は対応するmRNAとハイブリダイズして二本鎖分子を形成する。細胞は二本鎖であるmRNAを翻訳しないだろうから、このアンチセンス核酸はこのmRNAの翻訳を妨害することになる。約15ヌクレオチドのアンチセンスオリゴマーが好ましい。というのは、それらは容易に合成されかつ標的GDF−8産生細胞内に導入した際により大きな分子よりもあまり問題を起こしそうにないからである。遺伝子の in vitro 翻訳を阻害するためにアンチセンス法を用いることは、当該技術分野で周知である (Marcus-Sakura, Anal. Biochem., 172:289, 1988) 。
【0047】
リボザイムは、DNA制限エンドヌクレアーゼと類似のやり方で他の一本鎖RNAを特異的に開裂する能力を有すRNA分子である。これらRNAをコードするヌクレオチド配列の修飾を通して、あるRNA分子内の特定のヌクレオチド配列を認識してそれを開裂する分子を工学的に作ることが可能である (Cech, J. Amer. Med. Assn., 260:3030, 1988)。このアプローチの主要な利点は、それらが配列特異的なので、特定の配列を有するmRNAだけを不活性化する点である。
【0048】
2つの基本的な型のリボザイム、即ち、テトラヒメナ型 (Hasselhoff, Nature, 334:585, 1988) 及び“ハンマーヘッド”型がある。テトラヒメナ型リボザイムは長さが4塩基の配列を認識し、“ハンマーヘッド”型リボザイムは長さが11〜18塩基の塩基配列を認識する。認識配列が長ければ長いほど、その配列が標的mRNA種内に独占的に存在する可能性が大きくなる。従って、特定のmRNA種を不活性化するには、ハンマーヘッド型リボザイムがテトラヒメナ型リボザイムよりも好ましく、しかも18塩基認識配列がより短い認識配列よりも好ましい。
【0049】
本発明は、GDF−8タンパク質により媒介される細胞増殖性疾患又は免疫疾患を治療するための遺伝子治療も提供する。かかる治療は、GDF−8アンチセンスポリヌクレオチドを増殖性疾患を有する細胞内に導入することによりその治療効果をもたらすことになる。アンチセンスGDF−8ポリヌクレオチドの送逹は、キメラウィルスの如き組換え発現ベクター又はコロイド分散系を用いて行うことができる。アンチセンス配列の治療的送逹に特に好ましいのは、ターゲット(標的設定)されたリポソームを用いることである。
【0050】
ここに教示した遺伝子治療に用いることができる種々のウィルスベクターには、アデノウィルス、ヘルペスウィルス、ワクシニアウィルス又は、好ましくは、レトロウィルスの如きRNAウィルスが含まれる。好ましくは、レトロウィルスベクターは、マウス又は鳥類レトロウィルスの誘導体である。単一の外来遺伝子を挿入することができるレトロウィルスの例には、モロニーマウス白血病ウィルス (MoMuLV) 、ハーベイ (Harvey) マウス肉腫ウィルス (HaMuSV) 、マウス乳癌ウィルス(MuMTV) 、及びラウス肉腫ウィルス (RSV) が含まれるが、これらに限定されない。多くの更なるレトロウィルスベクターが多様な遺伝子を取り込むことができる。導入細胞が同定されて世代形成できるように、これら全てのベクターは、選択マーカー用の遺伝子を移入するか又は組み込むことができる。興味の対象であるGDF−8配列を、例えば、特定の標的細胞上のレセプターのためのリガンドをコードする別の遺伝子と一緒にウィルスベクターの中に挿入することにより、そのベクターはその時点で標的特異性となる。例えば、糖、糖脂質又はタンパク質を付けることにより、レトロウィルスベクターを標的特異性にすることができる。好ましいターゲッティングは、そのレトロウィルスベクターをターゲットとするための抗体を用いることにより行われる。当業者は、過度な実験を重ねることなく、GDF−8アンチセンスポリヌクレオチドを含有するレトロウィルスベクターの標的特異的送逹を可能にするためにレトロウィルスゲノム内に挿入できるか又はウィルスエンベロープに付けることができる特定のポリヌクレオチド配列を知っているか、又は容易に探知できるであろう。
【0051】
組換えレトロウィルスは欠損ウィルスであるので、それらは感染性ベクター粒子を生成させるために助けを必要とする。この助けは、例えば、レトロウィルスの全ての構造遺伝子をそのLTR内の調節配列の制御下でコードするプラスミドを含有するヘルパー細胞系を用いることにより提供することができる。これらプラスミドは、そのパッケージングメカニズムがキャプシド化のためのRNA転写産物を認識するのを可能にするヌクレオチド配列を欠いている。このパッケージングシグナルの欠失を有するヘルパー細胞系には、例えば、Ψ2、PA317及びPA12が含まれるが、これらに限定されない。これら細胞系は、ゲノムがパッケージされていないので、空のウィルス粒子を産生する。レトロウィルスベクターを、パッケージングシグナルは完全であるが構造遺伝子が興味の対象の他の遺伝子により置換されている細胞内に導入すると、そのベクターはパッケージされてベクターウィルス粒子を産生することができる。
【0052】
また、NIH3T3又は他の組織培養細胞は、レトロウィルス構造遺伝子gag、pol及びenvをコードするプラスミドで慣用的なリン酸カルシウムトランスフェクションにより直接トランスフェクトすることができる。次いで、これら細胞を興味の対象の遺伝子を含有するベクタープラスミドでトランスフェクトする。得られる細胞は、培地中にそのレトロウィルスベクターを放出する。
【0053】
GDF−8アンチセンスポリヌクレオチドのもう1つのターゲットされた送逹系は、コロイド分散系である。コロイド分散系には、巨大分子複合体;ナノカプセル;マイクロスフェア;ビーズ;及び水中油エマルジョン、ミセル、混合ミセル及びリポソームを含む脂質をベースとした系;が含まれる。本発明の好ましいコロイド系はリポソームである。リポソームは、in vitro 及び in vivo での送逹ベヒクルとして有用である人工膜小胞である。サイズが0.2〜4.0μmの大型の単ラメラ小胞 (large unilamellar vesicle, LUV) は巨大分子を含有する水性緩衝液を相当なパーセンテージで保持できることが示された。RNA、DNA及び無傷ウィルス粒子をその水性内部に保持させて、生物活性な形で細胞に送逹することができる (Fraleyら, Trends Biochem. Sci., 6:77, 1981) 。哺乳動物細胞に加えて、リポソームは、植物、酵母、及び細菌細胞におけるポリヌクレオチドの送逹に用いられてきた。リポソームが有効な遺伝子移入ベヒクルであるためには、次の特徴が存在すべきである:(1) 興味の対象である遺伝子を高い効率で保持するがそれらの生物活性を弱めないこと;(2) 非標的細胞に比較して標的細胞に優先的かつ強固に結合すること;(3) 標的細胞の細胞質にその小胞の水性内容物を高い効率で送逹すること;及び (4) 遺伝子情報を正確かつ効率的に発現すること (Mannino ら, Biotechniques, 6:682, 1988) 。
【0054】
リポソームの組成は、通常、リン脂質、特に高い相転移温度のリン脂質の組み合わせで、通常は、ステロイド、特にコレステロールとの組み合わせである。他のリン脂質又は他の脂質を用いることもできる。リポソームの物理的特性は、pH、イオン強度、及び二価カチオンの存在に依存する。
【0055】
リポソーム形成に有用な脂質の例には、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴ脂質、セレブロシド及びガングリオシドの如きホスファチジル化合物が含まれる。特に有用なのは、脂質部分が14〜18炭素原子、特に16〜18炭素原子を含有しそして飽和であるジアシルホスファチジルグリセロールである。代表的なリン脂質には、卵ホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン及びジステアロイルホスファチジルコリンが含まれる。
【0056】
リポソームのターゲッティングは、解剖学的及び機械学的要因に基づいて分類される。解剖学的分類は、選択性のレベル、例えば、器官特異性、細胞特異性及びオルガネラ特異性のレベルに基づく。機械学的ターゲッティングは、それが受動的であるか能動的であるかに基づいて区別することができる。受動的ターゲッティングは、洞様毛細血管を含む器官内の細網内皮系 (reticulo-endothelialsystem, RES) の細胞に分布するリポソームの自然的傾向を用いる。一方、能動的ターゲッティングは、リポソームをモノクローナル抗体、糖、糖脂質又はタンパク質の如き特異的リガンドにカップリングさせることにより又はリポソームの組成若しくはサイズを変えることによりリポソームを変更して、天然に存在する局在化部位以外の器官及び細胞型に標的を定めることを包含する。
【0057】
ターゲットされた送逹系の表面をいろいろな方法で修飾することができる。ターゲットされたリポソーム送逹系の場合には、脂質基をリポソームの脂質二重層内に組み込んで、標的指向性リガンドをそのリポソーム二重層との安定な結合状態で維持するようにできる。脂質鎖を標的指向性リガンドに結合するために種々の連結基を用いることができる。
【0058】
筋肉及び脂肪組織内でのGDF−8の発現のために、本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド及び抗体を用いるこれら組織に関連する種々の用途がある。かかる用途には、神経組織の如きこれら及び他の組織に関係する細胞増殖性疾患の治療が含まれる。加えて、GDF−8は、種々の遺伝子治療法に有用であり得る。
【0059】
実施例6のデータは、ヒトGDF−8遺伝子が染色体2にあることを示している。GDF−8の染色体位置を種々のヒトの疾患のマップ位置と比較することにより、GDF−8遺伝子内の突然変異がヒトの疾患の病因に関連しているかどうかを確認することが可能な筈である。例えば、若年筋萎縮性側索硬化症の常染色体性劣性型は、染色体2にあることが示された (Hentati ら, Neurology, 42 [Suppl.3]:201, 1992) 。GDF−8のより正確なマッピング及びこれら患者からのDNAの分析で、GDF−8が実際にこの疾患において害された遺伝子であることを示すことができる。さらに、GDF−8は染色体2を他の染色体から区別するのに有用である。
【0060】
以下の実施例は、本発明を説明するものであって限定を意図するものではない。それらは用いることができるものの代表であるが、当業者にとって既知の他の方法を代わりに用いてもよい。
(実施例1) 新規なTGF−βファミリーメンバーの同定及び単離
TGF−βスーパーファミリーの新規なメンバーを同定するために、既知のファミリーメンバー間の2つ保存領域に対応する縮重オリゴヌクレオチドを設計した。一方の領域はMISを除く全てのファミリーメンバーで保存されている2つのトリプトファン残基に及び、他方の領域はC−末端の近くの非変異システイン残基に及ぶ領域であった。これらプライマーをマウスゲノミックDNA上でポリメラーゼ連鎖反応に用いた後、それらプライマーの5'末端に位置する制限部位を用いてPCR産物をサブクローン化し、これらサブクローン化挿入体を保有する個々の大腸菌コロニーを拾い上げ、そしてランダム配列決定及びハイブリダイゼーション分析の組み合わせを用いてこのスーパーファミリーの既知メンバーを除いた。
【0061】
下記プライマーで得られたPCR産物の混合物からGDF−8を同定した。
SJL141:5'-CCGGAATTCGGITGG(G/C/A)A(G/A/T/C)(A/G)A(T/C) TGG(A/G)TI(A/G)TI(T/G)CICC-3' ( 配列番号:1)
SJL147:5'-CCGGAATTC(G/A)CAI(G/C)C(G/A)CA(G/A)CT(G/A/T/C)TCIACI(G/A)(T/C)CAT-3' (配列番号:2)
これらプライマーを用いるPCRは2μgのマウスゲノミックDNAを用いて94℃で1分間、50℃で2分間、そして72℃で2分間の40サイクルを行った。
【0062】
約280bpのPCR産物をゲル精製し、EcoRIで消化し、再度ゲル精製し、そして Bluescript ベクター (Stratagene,San Diego, CA) 内にサブクローン化した。個々のサブクローンを保有する細菌コロニーを96ウェルマイクロタイタープレート内に拾い取り、そしてそれら細胞をニトロセルロース上にプレートすることにより多数のレプリカを調製した。これらレプリカフィルターをこのファミリーの既知メンバーに相当するプローブにハイブリダイズさせ、そして配列分析用に非ハイブリダイズコロニーからDNAを調製した。
【0063】
アミノ酸配列 GW(H/Q/N/K/D/E)(D/N)W(V/I/M)(V/I/M)(A/S)P (配列番号:9) 及び M(V/I/M/T/A)V(D/E)SC(G/A)C (配列番号:10) をそれぞれコードするSJL141及びSJL147のプライマーの組み合わせを用いたところ、分析した110のサブクローンの中から以前に同定された4種の配列 (BMP−4、インヒビンβB、GDF−3及びGDF−5) と1種の新規な配列が得られ、これをGDF−8と名付けた。
【0064】
下記のプライマーを用いてヒトGDF−8を単離した。
ACM13:5'-CGCGGATCCAGAAGTCAAGGTGACAGACACAC-3' (配列番号:3) ;
及び
ACM14:5'-CGCGGATCCTCCTCATGAGCACCCACAGCGGTC-3'(配列番号:4)
これらプライマーを用いるPCRは1μgのヒトゲノミックDNAを用いて94℃で1分間、58℃で2分間、そして72℃で2分間の30サイクルを行った。このPCR産物をBamHIで消化し、ゲル精製し、そして Bluescript ベクター (Stratagene, San Francisco, CA) 内にサブクローン化した。
【0065】
(実施例2) GDF−8の発現パターン及び配列
GDF−8の発現パターンを調べるために、種々の成体組織から調製したRNAサンプルをノーザン分析によりスクリーニングした。RNA単離及びノーザン分析は、ハイブリダイゼーションを5×SSPE、10%硫酸デキストラン、50%ホルムアミド、1%SDS、200μg/mlサケDNA、及び各0.1%のウシ血清アルブミン、フィコール、及びポリビニルピロリドン中で行ったことを除いて、以前に記載された通りに行った (Lee, S.J., Mol. Endocrinol. 4:1034, 1990) 。各組織から調製した5μgの2度ポリA選択RNA (筋肉については2μgのRNAしか用いなかった) をホルムアルデヒドゲル上で電気泳動し、ブロットし、そしてGDF−8で釣り上げた。図1に示すように、このGDF−8プローブを用いて、筋肉中で最高レベルで発現されそして脂肪組織中ではかなり低いレベルでしか発現されない単一のmRNA種を検出した。
【0066】
GDF−8遺伝子のより大きなセグメントを得るために、マウスゲノミックライブラリーをGDF−8PCR産物から誘導したプローブでスクリーニングした。GDF−8ゲノミッククローンの部分配列を図2aに示す。この配列は、GDF−8前駆体タンパク質の推定C−末端領域に対応するオープンリーディングフレームを含有する。この推定GDF−8配列は、ボックスで囲んだ2つの潜在的タンパク質分解性プロセシング部位を含有する。これら部位の2番目でのこの前駆体の開裂により、12,400の
予想分子量を有する長さが109アミノ酸の成熟C−末端断片が生ずるであろう。ヒトGDF−8の部分配列を図2bに示す。このヒトクローンの単離中にPCRで引き起こされる誤りがなかったと仮定すると、この領域におけるヒト及びマウスのアミノ酸配列は100%同一である。
【0067】
推定タンパク質分解性プロセシング部位のあとに続くGDF−8のC−末端領域は、TGF−βスーパーファミリーの既知メンバーに対して有意な相同性を示す (図3) 。図3は、GDF−8のC−末端配列と、ヒトGDF−1 (Lee, S.J., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:4250-4254, 1991)、ヒトBMP−2及び4 (Wozneyら, Science, 242:1528-1534, 1988) 、ヒトVgr−1 (Celeste ら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:9843-9847, 1990) 、ヒトOP−1 (Ozkaynakら, EMBO J., 9:2085-2093, 1990)、ヒトBMP−5 (Celeste ら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA,87:9843-9847, 1990) 、ヒトBMP−3 (Wozneyら, Science, 242:1528-1534, 1988) 、ヒトMIS (Cateら, Cell, 45:685-698, 1986) 、ヒトインヒビンα、βA、及びβB (Mason ら, Biochem. Biophys. Res. Commun., 135:957-964, 1986)、ヒトTGF−β1 (Derynct ら, Nature, 316:701-705, 1985)、ヒトTGF−β2 (deMartinら, EMBO J., 6:3673-3677, 1987) 、及びヒトTGF−β3 (ten Dijke ら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85:4715-4719, 1988) の対応する領域とのアラインメントを示す。保存システイン残基をボックスで囲んである。短い横線はアラインメントを最大にするために空けた空所を表わす。
【0068】
GDF−8は、他のファミリーメンバーに高度に保存された殆どの残基を含有し、それらには7つのシステイン残基がそれらの特徴的な間隔と共に含まれる。TGF−β類とインヒビンβ類のように、GDF−8は、2つの追加のシステイン残基も含有する。TGF−β2の場合には、これら2つの追加のシステイン残基が分子内ジスルフィド結合を形成することが知られている (Daopinら, Science, 257:369, 1992;Schlunegger と Grutter, Nature, 358:430, 1992)。
【0069】
図4は、TGF−βスーパーファミリーの異なるメンバー間のアミノ酸相同性を示す。数字は、第1保存システインからC−末端まで計算したそれぞれの対の間のアミノ酸同一性のパーセントを表わす。ボックスは、特定のサブグループ内で高度に関連するメンバー間の相同性を表わす。この領域では、GDF−8がVgr−1に最も相同性である (45%配列同一性) 。
【0070】
(実施例3) マウス及びヒトGDF−8をコードするcDNAクローンの単離
マウス及びヒトGDF−8をコードする完全長cDNAクローンを単離するために、cDNAライブラリーをλZAPIIベクター (Stratagene) 中に骨格筋から調製したRNAを用いて調製した。マウス及びヒト筋肉から調製した5μgの2度ポリA選択RNAから、それぞれ4.4×106及び1.9×106の組換えファージからなるcDNAライブラリーを Stratagene により提供された使用説明書に従って構築した。これらライブラリーを増幅しないでスクリーニングした。cDNA挿入体のライブラリースクリーニング及び特性決定は以前に記載された通りに行った (Lee, S.J., Mol. Endocrinol. 4:1034-1040)。
【0071】
マウス筋肉cDNAライブラリーからスクリーニングした2.
4×106 組換えファージから、280より多くの陽性ファージを実施例1に記載したゲノミッククローンから誘導したマウスGDF−8プローブを用いて同定した。最長cDNA挿入体の分析した全ヌクレオチド配列を図5a及び配列番号:11に示す。この2676塩基対配列は、ヌクレオチド104のメチオニンコドンから開始してヌクレオチド1232の TGA 停止コドンまで及ぶ1本の長いオープンリーディングフレームを含有する。この推定開始メチオニンコドンの上流には、ヌクレオチド23の同一フレーム内 (in-frame) 停止コドンがある。この予想プレプロGDF−8タンパク質は長さが376アミノ酸である。この配列は、N−末端において分泌のためのシグナルペプチドを示唆する疎水性アミノ酸のコア (図6a) を、アスパラギン72に1つの潜在的N−グリコシル化部位を、アミノ酸264〜267に推定 RXXR タンパク質分解性開裂部位を、そしてTGF−βスーパーファミリーの既知メンバーに対して有意な相同性を示すC−末端領域を含有する。推定 RXXR 部位における前駆体タンパク質の開裂は、約12,400の予想分子量を有する109アミノ酸の長さの成熟C−末端GDF−8断片を生じるであろう。
【0072】
ヒト筋肉cDNAライブラリーからスクリーニングした1.9×106 組換えファージから、4個の陽性ファージをヒトゲノミックDNAでのポリメラーゼ連鎖反応により誘導したヒトGDF−8プローブを用いて同定した。最長cDNA挿入体の全ヌクレオチド配列を図5b及び配列番号:13に示す。この2743塩基対配列は、ヌクレオチド59のメチオニンコドンから開始してヌクレオチド1184の TGA 停止コドンまで及ぶ1本の長いオープンリーディングフレームを含有する。この予想プレプロGDF−8タンパク質は長さが375アミノ酸である。この配列は、N−末端に分泌のためのシグナルペプチドを示唆する疎水性アミノ酸のコア (図6a) を、アスパラギン71に1つの潜在的N−グリコシル化部位を、そしてアミノ酸263〜266に推定 RXXR タンパク質分解性開裂部位を含有する。図7は、予想マウス (上方) 及びヒト (下方) GDF−8アミノ酸配列の比較を示す。数字は、N−末端からのアミノ酸の位置を示す。これら2つの配列間の同一性を垂直線により表わす。マウス及びヒトのGDF−8は、予想プロ領域内で約94%同一性であり、予想 RXXR 開裂部位の後ろで100%同一性である。
【0073】
(実施例4) GDF−8に対する抗体の調製及び哺乳動物細胞内でのGDF−8の発現
GDF−8に対する抗体を調製するために、GDF−8抗原を細菌内で融合タンパク質として発現させた。アミノ酸268から376に及ぶマウスGDF−8 cDNAの部分 (成熟領域) をpRSETベクター(Invitrogen) 内に、GDF−8コーディング配列がこのベクター内に存在する開始メチオニンコドンと同じフレーム内に配置されるように挿入した。得られた構築体には、約16,600の分子量を有する融合タンパク質をコードするオープンリーディングフレームができた。この融合構築体をBL21 (DE3) (pLysS) 細胞内に形質転換し、この融合タンパク質の発現を記載された通りにイソプロピルチオ−β−ガラクトシドにより誘発した (Rosenberg ら, Gene, 56:125-135) 。次いで、この融合タンパク質を Invitrogen により提供された使用説明書に従って金属キレートクロマトグラフィーにより精製した。未精製及び精製融合タンパク質のクマシーブルー染色ゲルを図8に示す。
【0074】
この精製融合タンパク質を用いてウサギ及びニワトリの両方を免疫感作した。ウサギの免疫感作は Spring Valley Labs (Sykesville, MD) により実施され、ニワトリの免疫感作は HRP, Inc. (Denver, PA) により実施された。免疫感作したウサギ及び免疫感作したニワトリの両方からの血清のウェスタン分析により、この融合タンパク質に対する抗体の存在が証明された。
【0075】
哺乳動物細胞内でGDF−8を発現させるために、ヌクレオチド48〜1303からのマウスGDF−8 cDNA配列をpMSXND発現ベクター内のメタロチオネインIプロモーターの下流に両方向でクローン化した。このベクターは、SV40から誘導したプロセシングシグナル、ジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子、及び抗生物質G418に対する耐性を付与する遺伝子を含有する。 (Lee と Nathans, J. Biol. Chem., 263:3521-3527) 得られた構築体をチャイニーズハムスター卵巣細胞内に形質転換し、そして安定な形質転換体をG418の存在下で選択した。G418耐性細胞から調製した2mlの馴化培地を透析し、凍結乾燥し、変性還元条件下で電気泳動し、ニトロセルロースに移行させ、そして抗GDF−8抗体 (上記のもの) 及び〔125I〕ヨードプロテインAと共にインキュベートした。
【0076】
図9に示すように、ウサギGDF−8抗体 (1:500希釈)は、GDF−8の成熟C−末端断片のおよその予想分子量をもつタンパク質を、GDF−8がメタロチオネインプロモーターに関して正しい (センス) 方向にクローン化された構築体により形質転換された細胞の馴化培地中に検出した (レーン2) 。このバンドは、対照のアンチセンス構築体で形質転換された細胞から調製した類似のサンプル中では検出されなかった (レーン1) 。ニワトリより調製した抗体を用いて同様な結果が得られた。それゆえ、GDF−8は分泌され、これらトランスフェクト哺乳動物細胞による加水分解プロセシングを受ける。
【0077】
(実施例5) GDF−8の発現パターン
GDF−8の発現パターンを調べるために、種々のマウス組織源から調製した5μgの2度ポリA選択RNAをノーザン分析に付した。図10aに示すように (そして実施例2に示したように) 、GDF−8プローブは、検分した多くの成体組織間で殆ど骨格筋にだけ存在する単一のmRNA種を検出した。同ブロットをもっと長く露出すると、かなり低いが検出可能なレベルのGDF−8 mRNAが、脂肪、脳、胸腺、心臓、及び肺に見られた。このことから、これら結果は、骨格筋中でのGDF−8発現の高度な特異性を確認するものである。GDF−8 mRNAは、マウス胚内においても検査した両妊娠期間 (交尾後12.5日及び18.5日) で検出されたが、胎盤では種々の発生段階において検出されなかった(図10b)。
【0078】
(実施例6) GDF−8の染色体での位置確認
GDF−8の染色体位置をマッピングするために、ヒト/げっ歯類体細胞ハイブリッド (Drwinga ら, Genomics, 16:311-413,1993;Dubois と Naylor, Genomics, 16:315-319, 1993) からのサンプルをポリメラーゼ連鎖反応とこれに続くサザーンブロッティングにより分析した。ポリメラーゼ連鎖反応は、プライマー#83,5'-CGCGGATCCGTGGATCTAAATGAGAACAGTGAGC-3' (配列番号:15) 及びプライマー#84:5'-CGCGAATTCTCAGGTAATGATTGTTTCCGTTGTAGCG-3' (配列番号:16) を用いて、94℃で2分間、60℃で1分間、そして72℃で2分間の40サイクルを行った。これらプライマーは、それぞれヒトGDF−8 cDNA配列内のヌクレオチド119から143まで (BamHI認識配列が隣にある) 、及びヌクレオチド394から418まで (EcoRI認識配列が隣にある) に相当する。PCR産物をアガロースゲルで電気泳動し、ブロットし、そしてプライマー#83及び#84によってはさまれた領域の内部の配列に相当するオリゴヌクレオチド#100,5'-ACACTAAATCTTCAAGAATA-3' (配列番号:17) で釣り上げた。フィルターを6×SSC、1×Denhardt溶液、100μg/ml酵母トランスファーRNA、及び0.05%ピロリン酸ナトリウム中で50℃でハイブリダイズさせた。
【0079】
図11に示すように、ヒト特異的プローブにより、陽性対照サンプル (全ヒトゲノミックDNA) 中で及びヒト/げっ歯類ハイブリッドパネルからの1つのDNAサンプル中で予想サイズ (約320塩基対) のバンドが検出された。この陽性シグナルは、ヒト染色体2に相当する。それぞれのハイブリッド細胞系内に含有されるヒト染色体は、始めの24レーン (1〜22、X及びY)のそれぞれの最上部において確認される。M、CHO及びHと名付けたレーンでは、出発DNA鋳型は、それぞれマウス、ハムスター、及びヒト起源の全ゲノミックDNAであった。B1の記号を付けたレーンでは、鋳型DNAは用いなかった。左側の数字は、DNAスタンダードの移動度を示す。これらデータは、ヒトGDF−8遺伝子が染色体2に位置することを示している。
【0080】
現時点で好ましい態様に関して本発明を説明してきたが、本発明の精神から逸脱することなく種々の変更を行うことができることが理解されるべきである。従って、本発明は、次の請求の範囲によってのみ限定される。
配列の概要
配列番号:1は、クローンSJL141の核酸配列である。
配列番号:2は、クローンSJL147の核酸配列である。
配列番号:3は、クローンACM13の核酸配列である。
配列番号:4は、クローンACM14の核酸配列である。
配列番号:5は、マウスGDF−8の部分ヌクレオチド配列及び推定アミノ酸配列である。
配列番号:6は、マウスGDF−8の推定部分アミノ酸配列である。
配列番号:7は、ヒトGDF−8の部分ヌクレオチド配列及び推定アミノ酸配列である。
配列番号:8は、ヒトGDF−8の推定部分アミノ酸配列である。
配列番号:9は、プライマーSJL141のアミノ酸配列である。
配列番号:10は、プライマーSJL147のアミノ酸配列である。
配列番号:11は、マウスGDF−8のヌクレオチド配列及び推定アミノ酸配列である。
配列番号:12は、マウスGDF−8の推定アミノ酸配列である。
配列番号:13は、ヒトGDF−8のヌクレオチド配列及び推定アミノ酸配列である。
配列番号:14は、ヒトGDF−8の推定アミノ酸配列である。
配列番号:15及び16は、それぞれプライマー#83及び#84のヌクレオチド配列であり、ヒト/げっ歯類体細胞ハイブリッド内でのヒトGDF−8のマッピングに用いたものである。
配列番号:17は、プライマー#83及び#84によってはさまれた領域の内部の配列に相当するオリゴヌクレオチド#100のヌクレオチド配列である。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】図1は、成体組織内でのGDF−8 mRNAの発現を示すノーザンブロットである。そのプローブは部分的マウスGDF−8クローンであった。
【図2a】図2aは、マウスGDF−8 のヌクレオチド配列及び予想アミノ酸配列を示す。該マウス配列中の推定二塩基プロセシング部位をボックスで囲んである。
【図2b】図2bは、ヒトGDF−8のヌクレオチド配列及び予想アミノ酸配列を示す。該マウス配列中の推定二塩基プロセシング部位をボックスで囲んである。
【図3】図3は、GDF−8とTGF−βスーパーファミリーの他のメンバーとのC−末端配列のアラインメント(並列化)を示す。保存システイン残基をボックスで囲んである。短い横線はアラインメントを最大にするために空けた空所を表わす。
【図4】図4は、TGF−βスーパーファミリーの異なるメンバー間のアミノ酸相同性を示す。数字は、第1保存システインからC−末端まで計算したそれぞれの対の間のアミノ酸同一性のパーセントを表わす。ボックスは、特定のサブグループ内で高度に関連するメンバー間の相同性を表わす。
【図5a】図5aはマウスGDF−8 cDNAクローンのヌクレオチド及びアミノ酸配列を示す。数字は、5'末端からのヌクレオチドの位置を示す。コンセンサスN結合グリコシル化シグナルを暗くしてある。推定 RXXR タンパク質分解性開裂部位をボックスで囲んである。
【図5b】図5bはマウスGDF−8 cDNAクローンのヌクレオチド及びアミノ酸配列(続き)を示す。数字は、5'末端からのヌクレオチドの位置を示す。コンセンサスN結合グリコシル化シグナルを暗くしてある。推定 RXXR タンパク質分解性開裂部位をボックスで囲んである。
【図5c】図5cはヒトGDF−8 cDNAクローンのヌクレオチド及びアミノ酸配列を示す。数字は、5'末端からのヌクレオチドの位置を示す。コンセンサスN結合グリコシル化シグナルを暗くしてある。推定 RXXR タンパク質分解性開裂部位をボックスで囲んである。
【図5d】図5dはヒトGDF−8 cDNAクローンのヌクレオチド及びアミノ酸配列(続き)を示す。数字は、5'末端からのヌクレオチドの位置を示す。コンセンサスN結合グリコシル化シグナルを暗くしてある。推定 RXXR タンパク質分解性開裂部位をボックスで囲んである。
【図6a】図6aは、GDF−8のハイドロパシシティ (hydropathicity)プロフィールを示す。マウス (図6a) GDF−8についての平均疎水性値を Kyte と Doolittle の方法 (J. Mol. Biol., 157:105-132, 1982) を用いて計算した。正の数値は疎水性の増加を示す。
【図6b】図6bは、GDF−8のハイドロパシシティ (hydropathicity)プロフィールを示す。ヒト (図6b) GDF−8についての平均疎水性値を Kyte と Doolittle の方法 (J. Mol. Biol., 157:105-132, 1982) を用いて計算した。正の数値は疎水性の増加を示す。
【図7】図7は、マウスGDF−8アミノ酸配列とヒトGDF−8アミノ酸配列の比較を示す。予想マウス配列を上側の列に示し予想ヒト配列を下側の列に示す。数字は、N−末端からのアミノ酸の位置を示す。これら2つの配列間の同一性を垂直線により表してある。
【図8】図8は、細菌内でのGDF−8の発現を示す。pRSET/GDF−8発現プラスミドを保有するBL21 (DE3) (pLysS) 細胞をイソプロピルチオ−β−ガラクトシドで誘発し、そしてGDF−8融合タンパク質を金属キレートクロマトグラフィーにより精製した。レーン:全体=全細胞溶解産物;可溶物=可溶性タンパク質画分;不溶物=カラムに充填した不溶性タンパク質画分 (10mMトリスpH8.0、50mMリン酸ナトリウム、8M尿素、及び10mMβ−メルカプトエタノール〔緩衝液B〕中に再懸濁させた) ;ペレット=カラムに充填する前に廃棄した不溶性タンパク質画分;流出物=カラムに結合しなかったタンパク質;洗浄液=示したpHで緩衝液Bで行った洗浄の洗浄液。分子量スタンダードの位置を右側に示している。矢印はGDF−8融合タンパク質の位置を示す。
【図9】図9は、哺乳動物細胞内でのGDF−8の発現を示す。チャイニーズハムスター卵巣細胞をpMSXND/GDF−8発現プラスミドで形質転換してG418中で選択した。G418耐性細胞からの馴化培地 (GDF−8をアンチセンス又はセンス方向のいずれかでクローン化した構築体でトランスフェクトした細胞から調製した) を濃縮し、還元条件下で電気泳動し、ブロットし、そして抗GDF−8抗体及び〔125I〕ヨードプロテインAで釣り上げた。矢印はプロセシングされたGDF−8タンパク質の位置を示す。
【図10a】図10は、GDF−8 mRNAの発現を示す。成体組織 (図10a)から調製したポリA選択RNA (各5μg) をホルムアルデヒドゲル上で電気泳動し、ブロットし、そして完全長マウスGDF−8で釣り上げた。
【図10b】図10は、GDF−8 mRNAの発現を示す。示した妊娠日数における胎盤及び胚 (図10b) から調製したポリA選択RNA (各5μg) をホルムアルデヒドゲル上で電気泳動し、ブロットし、そして完全長マウスGDF−8で釣り上げた。
【図11】図11は、ヒトGDF−8の染色体マッピングを示す。ヒト/げっ歯類体細胞ハイブリッド系から調製したDNAサンプルをPCRに付し、アガロースゲル上で電気泳動し、ブロットし、そして釣り上げた。それぞれのハイブリッド細胞系内に含有されるヒト染色体が始めの24レーン (1〜22、X及びY) のそれぞれの最上部において確認される。M、CHO及びHと名付けたレーンでは、出発DNA鋳型は、それぞれマウス、ハムスター、及びヒト由来の全ゲノミックDNAであった。B1の記号を付けたレーンでは、鋳型DNAは用いなかった。左側の数字は、DNAスタンダードの移動度を示す。
【技術分野】
【0001】
発明の背景
1.発明の分野
本発明は、広くは増殖因子に関し、特定的にはトランスフォーミング増殖因子β (TGF−β) スーパーファミリーの増殖分化因子−8 (GDF−8) といわれる新規なメンバーに関する。
【背景技術】
【0002】
2.関連技術の説明
トランスフォーミング増殖因子β (TGF−β) スーパーファミリーは、胚発生の間の分化過程の広い範囲に影響を及ぼす構造的に関連する一群のタンパク質を包含する。このファミリーには、正常な雄性発生に必要なミュラー管阻害物質 (MIS) (Behringerら, Nature, 345:167, 1990)、背腹軸形成及び成虫原基の形態形成に必要なドロソフィラ・デカペンタプレジック (Drosophila decapentaplegic)(DPP) 遺伝子産物 (Padgett ら, Nature, 325:81-84, 1987)、卵の植物極に局在しているツメガエルVg−1遺伝子産物 (Weeks ら, Cell, 51:861-867, 1987) 、ツメガエルの胚の中胚葉及び前部構造の形成を誘発することができる (Thomson ら, Cell, 63:485, 1990) アクチビン (Mason ら, Biochem. Biophys. Res. Commun., 135:957-964, 1986)、及びデノボ軟骨及び骨形成を誘発できる骨形態形成タンパク質 (BMP,オステオゲニン,OP−1) (Sampathら, J. Biol. Chem., 265:13198, 1990) が含まれる。TGF−β類は、脂質生成、筋発生、軟骨形成、血液生成、及び上皮細胞分化を含む種々の分化過程に影響することができる (委細については、Massague, Cell, 49:437, 1987 を参照のこと) 。
【0003】
TGF−βファミリーのタンパク質は、最初、大きな前駆体タンパク質として合成され、その後にC−末端から約110〜140アミノ酸の塩基性残基のクラスターでタンパク質分解性開裂を受ける。これらタンパク質のC−末端領域又は成熟領域は全て構造的に関連しており、個々のファミリーメンバーはそれらの相同性の程度に基づいて異なるサブグループに分類され得る。特定のサブグループ内の相同性は70%から90%アミノ酸配列同一性の範囲となるが、サブグループ間の相同性はかなり低くて一般に僅か20%から50%の範囲に過ぎない。それぞれの場合において、活性種はC−末端断片のジスルフィド連結ダイマーのようである。TGF−βファミリーのあるメンバーのプロ領域をTGF−βファミリーの他のメンバーの成熟領域と同時発現させると、細胞内二量体化及び生物活性なホモダイマーの分泌が起こることが研究によって示された (Gray, A.と Maston, A., Science, 247:1328, 1990) 。Hammondsらによる更なる研究 (Molec. Endocrin. 5:149, 1991) で、BMP−4成熟領域と結合したBMP−2プロ領域を用いると、成熟BMP−4の発現が劇的に向上したことが示された。研究した殆どのファミリーメンバーについて、そのホモダイマー種が生物活性であることが分かったが、インヒビン (Lingら, Nature, 321:779, 1986) 及びTGF−β類 (Cheifetzら, Cell, 48:409, 1987) のような他のファミリーメンバーについては、ヘテロダイマーが検出され、そしてこれらはそれぞれのホモダイマーとは異なる生物活性を有するようである。
【0004】
発現パターンが組織特異的である新規な因子の同定は、その組織の発生及び機能の深い理解を提供するであろう。
【発明の開示】
【0005】
発明の概要
本発明は、細胞増殖及び分化因子、つまりGDF−8、該因子をコードするポリヌクレオチド配列、及び該因子と免疫反応性である抗体を提供する。この因子は、種々の細胞増殖性疾患、特に筋肉、神経、及び脂肪組織に関連する疾患に関係するようである。
【0006】
かくして、1つの態様においては、本発明は、GDF−8に関係する筋肉、神経、又は脂肪起源の細胞増殖性疾患を検出する方法を提供する。もう1つの態様においては、本発明は、GDF−8活性を抑制するか又は増進することによって細胞増殖性疾患を治療する方法を提供する。
【0007】
従って、本発明は以下の発明を包含する。
1. 配列番号12又は配列番号14に記載されるアミノ酸配列を有する実質的に純粋な増殖分化因子−8(GDF-8)ポリペプチド。
2. 配列番号12又は配列番号14に記載されるアミノ酸配列を有する増殖分化因子−8(GDF-8)ポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド。
3. GDF-8ポリヌクレオチド配列が下記の核酸配列から成る群から選ばれる、2.に記載のポリヌクレオチド。
a. TがUであってもよい、配列番号11
b. TがUであってもよい、配列番号13
c. 配列番号11に相補的な核酸配列
d. 配列番号13に相補的な核酸配列
e. 長さが少なくとも15塩基であり、配列番号12のGDF-8タンパク質をコードするゲノミックDNAに選択的にハイブリダイズするa又はcの断片
f. 長さが少なくとも15塩基であり、配列番号14のGDF-8タンパク質をコードするゲノミックDNAに選択的にハイブリダイズするb又はdの断片
4.ポリヌクレオチドが哺乳動物細胞から単離される、2.のポリヌクレオチド。
5.哺乳動物細胞が、マウス、ラット及びヒトの細胞からなる群から選ばれる、4.のポリヌクレオチド。
6.2.のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
7.ベクターがプラスミドである、6.のベクター。
8.ベクターがウィルスベクターである、6.のベクター。
9.6.のベクターで安定に形質転換された宿主細胞。
10.細胞が原核細胞である、9.の宿主細胞。
11.細胞が真核細胞である、9.の宿主細胞。
12.配列番号12又は配列番号14に記載されるアミノ酸配列を有する増殖分化因子−8(GDF-8)ポリペプチド又はそのエプトープに特異的に反応性のある抗体。
13.抗体がポリクローナルである、12.の抗体。
14.抗体がモノクローナルである、12.の抗体。
【0008】
発明の詳細な説明
本発明は、増殖及び分化因子GDF−8及びGDF−8をコードするポリヌクレオチド配列を提供する。GDF−8は筋肉中で最高レベルで発現され、脂肪組織中ではより低いレベルで発現される。1つの態様においては、本発明は、GDF−8発現に関係する筋肉、神経、又は脂肪起源の細胞増殖性疾患を検出する方法を提供する。他の態様においては、本発明は、GDF−8活性を抑制するか又は増進する物質を用いることによって細胞増殖性疾患を治療する方法を提供する。
【0009】
TGF−βスーパーファミリーは、多くの細胞型内で増殖、分化、及び他の機能を制御する多機能性ポリペプチドからなる。これら多くのペプチドは、他のペプチド増殖因子の正と負の両方の調節作用を有する。本発明のGDF−8タンパク質とTGF−βファミリーのメンバーの間の構造的相同性は、GDF−8が増殖及び分化因子のファミリーの新規なメンバーであることを示している。多くの他のメンバーの既知の活性に基づき、GDF−8もそれを診断及び治療剤として有用なものにする生物活性を有するであろうと期待される。
【0010】
特に、このスーパーファミリーのある種のメンバーは、神経系の機能に関係する発現パターンを有するか又は活性を保持する。例えば、インヒビン及びアクチビンは脳内で発現されることが示され (Meunier ら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85:247, 1988;Sawchenko ら, Nature, 334:615, 1988)、そしてアクチビンが神経細胞生存分子として機能できることが示された (Schubertら, Nature, 344:868, 1990)。もう一つのファミリーメンバー、即ち、GDF−1は、その発現パターンが神経系特異的であり (Lee, S.J., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:4250, 1991) 、そしてVgr−1(Lyons ら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86:4554, 1989;Jones ら, Development, 111:531, 1991) 、OP−1 (Ozkaynakら, J. Biol. Chem., 267:25220, 1992) 及びBMP−4 (Jones ら, Development, 111:531, 1991) の如き一部の他のファミリーメンバーも、神経系で発現されることが知られている。骨格筋は運動ニューロンの生存を促進する1又は複数の因子を産生することが知られている (Brown, Trends Neurosci., 7:10, 1984) ので、筋肉内でのGDF−8の発現は、GDF−8の1つの活性がニューロンのための栄養因子としてのものであることを示唆している。この点で、GDF−8は、筋萎縮性側索硬化症の如き神経変性疾患の治療に、又は培養下の細胞若しくは組織を移植前に維持することに有用であるかも知れない。
【0011】
GDF−8は、筋変性疾患の如き筋肉に関連する疾患過程の治療又は外傷に起因する組織修復にも有用であるかも知れない。これに関して、TGF−βファミリーの他の多くのメンバーも組織修復の重要な媒介物質である。TGF−βはコラーゲンの生成に顕著な作用を有すること及び新生子マウス内でめざましい血管形成反応を起こすことが示されている (Roberts ら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 83:4167, 1986)。TGF−βが培養下の筋芽細胞の分化を阻害することも示されている (Massagueら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 83:8206, 1986)。更には、筋芽細胞は遺伝子治療のために筋肉へ遺伝子を送逹する運搬体として用いることができるので、GDF−8の特性は、移植前に細胞を維持するのに又は融合過程の効率を高めるのに利用できるかも知れない。
【0012】
脂肪組織内でのGDF−8の発現も、肥満症又は脂肪細胞の異常増殖に関連する疾患の治療におけるGDF−8の用途の可能性を思い起こさせる。これに関して、TGF−βが in vitro で脂肪細胞増殖の強力な阻害物質であることが示されている (Ignotz と Massague, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82:8530, 1985) 。
【0013】
ここで用いられる“実質的に純粋”という用語は、他のタンパク質、脂質、炭水化物又はそれが天然に随伴している他の物質を実質的に含まないGDF−8のことをいう。当業者は、タンパク質精製の標準的技術を用いてGDF−8を精製することができる。この実質的に純粋なポリペプチドは、非還元的ポリアクリルアミドゲル上で単一の主バンドを示すであろう。GDF−8ポリペプチドの純度は、アミノ末端のアミノ酸配列分析によっても測定することができる。GDF−8ポリペプチドには、GDF−8の活性が残っている限り、このポリペプチドの機能性断片が含まれる。GDF−8の生物活性を含有するより小さなペプチドが本発明に包含される。
【0014】
本発明は、GDF−8タンパク質をコードするポリヌクレオチドを提供する。これらポリヌクレオチドには、GDF−8をコードするDNA、cDNA及びRNA配列が含まれる。GDF−8の全部又は部分をコードする全てのポリヌクレオチドも、それらがGDF−8活性を有するポリペプチドをコードする限りここに含まれることが了解される。かかるポリヌクレオチドには、天然に存在する、合成の、及び故意に操作したポリヌクレオチドが含まれる。例えば、GDF−8ポリヌクレオチドを部位特異的突然変異誘発に付してもよい。GDF−8のためのポリヌクレオチド配列にはアンチセンス配列も含まれる。本発明のポリヌクレオチドには、遺伝暗号の結果として縮重している配列が含まれる。20の天然アミノ酸があり、その殆どが1を越えるコドンにより規定される。従って、そのヌクレオチド配列によりコードされるGDF−8ポリペプチドのアミノ酸配列が機能的に不変である限り、全ての縮重ヌクレオチド配列が本発明に包含される。
【0015】
GDF−8遺伝子の部分を含有するゲノミックDNA配列が、ここに具体的に開示されている。この配列は、GDF−8前駆体タンパク質の予想C−末端領域に対応するオープンリーディングフレームを含有する。コードされるポリペプチドは、2つの潜在的タンパク質分解性プロセシング部位 (KR 及び RR) を含有すると予想される。この前駆体の下流部位での開裂は、約12,400の予想分子量を有する109アミノ酸の生物活性成熟C−末端断片を生じるであろう。また、完全長マウス及びヒトGDF−8 cDNA配列も開示されている。このマウスプレプロGDF−8タンパク質は長さが376アミノ酸であって、2676塩基対ヌクレオチド配列によりコードされ、それはヌクレオチド104から開始しヌクレオチド1232の TGA 停止コドンまで及ぶ。ヒトGDF−8タンパク質は375アミノ酸であり、ヌクレオチド59から開始しヌクレオチド1184まで及ぶオープンリーディングフレームを有する2743塩基対配列によりコードされる。
【0016】
推定タンパク質分解性プロセシング部位の後ろのGDF−8のC−末端領域は、TGF−βスーパーファミリーの既知メンバーと有意な相同性を示す。このGDF−8配列は、他のファミリーメンバー内に高度に保存されている殆どの残基を含有する (図3を参照のこと) 。TGF−β類とインヒビンβ類のように、GDF−8は、殆ど全ての他のファミリーメンバーに見られる7つのシステインのほかに追加の対のシステイン残基を含有する。既知のファミリーメンバーの中で、GDF−8はVgr−1に最も相同性である (45%配列同一性) (図4を参照のこと) 。
【0017】
組換えGDF−8の一次アミノ酸配列を僅かに修飾すると、ここに記載したGDF−8ポリペプチドに比較して実質的に等しい活性を有するタンパク質が生じ得る。かかる修飾は、部位特異的突然変異誘発のように故意であっても自然に生じたものであっってもよい。GDF−8の生物活性が依然として存在する限り、これら修飾によりもたらされる全てのポリペプチドがここに含まれる。更に、1又は2以上のアミノ酸を欠失させても、その生物活性を有意に変化させることなく、その結果生じる分子の構造の修飾がもたらされる。これは、より広い有用性をもつと思われるより小さな活性分子の開発へと導くことができる。例えば、GDF−8生物活性に不要なアミノ末端又はカルボキシ末端のアミノ酸を除去することができる。
【0018】
本発明のGDF−8ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列には、開示した配列及びその保存的変異体が含まれる。ここで用いる“保存的変異体”という用語は、他の生物学的に類似の残基によるアミノ酸残基の置換を表わす。保存的変異体の例には、イソロイシン、バリン、ロイシン又はメチオニンの如き1つの疎水基の別の疎水基との置換;又はアルギニンのリシンとの置換、グルタミン酸のアスパラギン酸との置換、又はグルタミンのアスパラギンとの置換等の如き1つの極性基の別の極性基との置換が含まれる。“保存的変異体”という用語には、未置換親アミノ酸の代わりに置換アミノ酸を用いることも含まれる。但し、その置換ポリペプチドに対して生じる抗体はその未置換ポリペプチドとも免疫反応することができることを条件とする。
【0019】
本発明のDNA配列は、幾つかの方法により得ることができる。例えば、このDNAは、当該技術分野で周知のハイブリダイゼーション技術を用いて単離することができる。これらには、1)相同性ヌクレオチド配列を検出するためのゲノミック又はcDNAライブラリーとプローブとのハイブリダイゼーション、2) 興味の対象であるDNA配列にアニーリングできるプライマーを用いるゲノミックDNA又はcDNA上でのポリメラーゼ連鎖反応 (PCR) 、及び 3) 共有される構造的特徴を有するクローン化DNA断片を検出するための発現ライブラリーの抗体スクリーニング、が含まれるがこれらに限定されない。
【0020】
好ましくは、本発明のGDF−8ポリヌクレオチドは、哺乳動物、最も好ましくは、マウス、ラット、又はヒトから誘導される。適切なプローブが入手可能であれば、核酸ハイブリダイゼーションに依拠するスクリーニング操作であらゆる生物から任意の遺伝子配列を単離するのが可能である。問題のタンパク質をコードする配列の一部に対応するオリゴヌクレオチドプローブは、化学的に合成することができる。これには、短いオリゴペプチドのアミノ酸配列が既知でなければなない。このタンパク質をコードするDNA配列は遺伝暗号から推定することができるが、遺伝暗号の縮重を考慮に入れなければならない。その配列が縮重したものである場合には混合付加反応 (mixed addition reaction) を行うことが可能である。これは、変性二本鎖DNAの不均一混合液を含む。かかるスクリーニングのために、ハイブリダイゼーションを好ましくは一本鎖DNA又は変性二本鎖DNAのいずれかで行う。興味の対象であるポリペプチドに関連するmRNA配列が極端に少ない量しか存在しない供給源から誘導されるcDNAクローンの検出には、ハイブリダイゼーションが特に有用である。換言すると、非特異的結合の回避に向けたストリンジェントなハイブリダイゼーション条件を用いることにより、例えば、特異的cDNAクローンのオートラジオグラフィーでの可視化を、その標的DNAとその完全な相補体である単一プローブとの混合液中でのハイブリダイゼーションにより可能とすることができる (Wallace ら, Nucleic Acids Res., 9:879, 1981)。
【0021】
GDF−8をコードする特定のDNA配列の開発は、1) ゲノミックDNAからの二本鎖DNA配列の単離;2) 興味の対象であるポリペプチドの必要なコドンを得るためのDNA配列の化学的製造;及び 3) 真核ドナー細胞から単離したmRNAの逆転写による二本鎖DNA配列の in vitro 合成、によっても得ることができる。後者の場合には、一般にcDNAといわれるmRNAの二本鎖DNA相補体が最終的に生成する。
【0022】
組換え操作に用いる特定DNA配列を開発するための上記の3種の方法のうち、ゲノミックDNA単離物の単離が最も普通ではない。これは、特に、イントロンの存在のために哺乳動物ポリペプチドを微生物で発現させることが望ましい場合に当てはまる。
【0023】
DNA配列の合成は、所期のポリペプチド産物のアミノ酸残基の全配列が既知であるときは、しばしば最適の方法となる。所期のポリペプチドのアミノ酸残基の全配列が未知であるときには、DNA配列の直接合成は可能ではないので、最上の方法はcDNA配列の合成となる。興味の対象であるcDNA配列を単離する標準的操作の中で抜きん出ているのは、高レベルの遺伝子発現を有するドナー細胞内に豊富なmRNAの逆転写から誘導されるプラスミド又はファージ保有cDNAライブラリーの形成である。ポリメラーゼ連鎖反応法と組み合わせて用いると、希薄な発現産物であってもクローン化できる。ポリペプチドのアミノ酸配列のかなりの部分が分かっている場合には、標的cDNA中に存在すると推定される配列を複写する標識した一本又は二本鎖のDNA又はRNAプローブ配列を作って、一本鎖型に変性されたcDNAのクローン化コピー上で行われるDNA/DNAハイブリダイゼーション操作に用いることができる (Jay ら, Nucl. Acid Res., 11:2325, 1983) 。
【0024】
λgt11の如きcDNA発現ライブラリーは、GDF−8に特異的な抗体を用いて、少なくとも1つのエピトープを有するGDF−8ペプチドについて間接的にスクリーニングすることができる。かかる抗体はポリクローナル的に誘導されてもモノクローナル的に誘導されてもよく、GDF−8 cDNAの存在を示す発現産物を検出するのに用いることができる。
【0025】
GDF−8をコードするDNA配列は、適する宿主細胞内へのDNA移入により in vitro で発現させることができる。“宿主細胞”は、ベクターがその中で増殖できてそのDNAを発現しうる細胞である。この用語は、宿主細胞の如何なる子孫も包含する。複製の間に突然変異が起こることがあるので、全ての子孫が親細胞と同一という訳ではないことが了解される。しかしながら“宿主細胞”という用語を用いるときは、かかる子孫が含まれる。安定な移入は、外来DNAを宿主内に継続的に維持することを意味するのであるが、その方法は当該技術分野で既知である。
【0026】
本発明では、GDF−8ポリヌクレオチド配列を組換え発現ベクター内に挿入してもよい。“組換え発現ベクター”という用語は、GDF−8遺伝子配列の挿入又は組み込みにより操作されたプラスミド、ウィルス又は当該技術分野で既知のその他の運搬体のことをいう。かかる発現ベクターは、宿主の挿入遺伝子配列の効率的な転写を促進するプロモーター配列を含有する。この発現ベクターは、典型的には、複製起点、プロモーター、並びにその形質転換細胞の表現型選択を可能にする特定遺伝子を含有する。本発明に用いるのに適するベクターには、細菌内での発現のためのT7に基づく発現ベクター (Rosenberg ら, Gene, 56:125, 1987) 、哺乳動物細胞内での発現のためのpMSXND発現ベクター (Lee と Nathans, J. Biol. Chem., 263:3521, 1988) 及び昆虫細胞内での発現のためのバキュロウィルス誘導ベクターが含まれるが、これらに限定されない。DNAセグメントは、調節要素、例えば、プロモーター (例えば、T7、メタロチオネインI、又はポリヘドリンプロモーター) に機能しうる状態で連結されたベクター内に存在することができる。
【0027】
GDF−8をコードするポリヌクレオチド配列は、原核生物内でも真核生物内でも発現させることができる。宿主には、微生物、酵母、昆虫及び哺乳動物が含まれ得る。原核生物内で真核性又はウィルス性配列を有するDNA配列を発現させる方法は、当該技術分野で周知である。宿主内で発現及び複製できる生物学的に機能性のウィルス及びプラスミドDNAベクターは、当該技術分野で周知である。かかるベクターが、本発明のDNA配列を組み込むのに用いられる。好ましくは、GDF−8の成熟C−末端領域は、GDF−8の全コーディング配列を含有するcDNAクローンから発現される。また、GDF−8のC−末端部分を、TGF−βファミリーの別のメンバーのプロ領域との融合タンパク質として発現させても、別のプロ領域と同時発現させてもよい (例えば、Hammondsら, Molec. Endocrin. 5:149, 1991;Gray, A.と Mason, A., Science, 247:1328, 1990を参照のこと) 。
【0028】
組換えDNAでの宿主細胞の形質転換は、当業者にとって周知である慣用的技術により行うことができる。宿主が大腸菌の如き原核生物である場合、DNA取込み能を有するコンピテント細胞は、対数増殖期後に採取してからCaCl2 法により処理した細胞から当該技術分野で周知の操作を用いて調製することができる。また、MgCl2 又はRbClを用いることができる。形質転換は、必要なら宿主細胞のプロトプラストを形成した後に行うこともできる。
【0029】
宿主が真核生物である場合、リン酸カルシウム共沈;マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、リポソーム内に保持させたプラスミドの挿入の如き慣用的な機械的操作;又はウィルスベクター;の如きDNAのトランスフェクションを用いることができる。真核細胞は、本発明のGDF−8をコードするDNA配列、及び単純ヘルペスチミジンキナーゼ遺伝子の如き選択可能な表現型をコードする第二外来DNA分子で同時形質転換することもできる。他の方法は、シミアンウィルス40 (SV40)又はウシパピローマウィルスの如き真核性ウィルスベクターを用いて、真核細胞を一時的に感染又は形質転換して本タンパク質を発現させることである (例えば、Eukaryotic Viral Vectors, Cold Spring Harbor Laboratory, Gluzman編, 1982 を参照のこと) 。
【0030】
本発明により提供される微生物発現ポリペプチド又はその断片の単離及び精製は、分取クロマトグラフィー及びモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体を関与させる免疫学的分離法を含む慣用的手段により行うことができる。
【0031】
本発明は、GDF−8ポリペプチド又はその機能性断片と免疫反応性の抗体を包含する。異なるエピトープ特異性を有するプールしたモノクローナル抗体から本質的になる抗体、並びに明確に異なるモノクローナル抗体調製物が提供される。モノクローナル抗体は、当業者にとって周知の方法により本タンパク質の断片を含有する抗原から作られる (Kohlerら, Nature, 256:495, 1975)。本発明で用いる抗体という用語は、GDF−8上のエピトープ決定基に結合できる無傷の抗体分子並びにFab及びF (ab')2 の如きその断片を包含するものである。
【0032】
“細胞増殖性疾患”という用語は、形態学的にも遺伝子型的にもしばしば周辺組織と相違して見える悪性並びに非悪性の細胞集団を表わす。悪性細胞 (即ち、癌) は、多段階経過の結果発生する。アンチセンス分子であるGDF−8ポリヌクレオチドは、種々の器官系、特に、例えば、筋肉内の細胞又は脂肪組織の悪性腫瘍を治療に有用である。本質的に、GDF−8の変化した発現に病因学的に関連するあらゆる疾患は、GDF−8抑制剤での治療に感受性であると考えられる。かかる疾患の1つは、例えば、悪性細胞増殖性疾患である。
【0033】
本発明は、抗GDF−8抗体をGDF−8関連疾患を有する疑いがある細胞に接触させ、そして該抗体への結合を検出することを含む、筋肉又は脂肪組織の細胞増殖性疾患を検出する方法を提供する。GDF−8と反応性の抗体は、GDF−8への結合の検出を可能にする化合物で標識される。本発明の目的のためには、GDF−8ポリペプチドに特異的な抗体を用いて、生物学的液体及び組織中のGDF−8のレベルを検出する。検出できる量の抗原を含有するあらゆる検体を用いることができる。本発明の好ましいサンプルは筋肉組織である。疑いのある細胞内のGDF−8のレベルを正常細胞内のレベルと比較して、その被験体がGDF−8関連細胞増殖性疾患を有するかどうか確認することができる。好ましくは、被験体はヒトである。
【0034】
本発明の抗体は、in vitro 又は in vivo の免疫診断又は免疫治療を施すのが望ましいあらゆる被験体に用いることができる。本発明の抗体は、例えば、それらを液相で用いるか又は固相担体に結合させるイムノアッセイに用いるのに適している。加えて、これらイムノアッセイにおける抗体は、種々の方法で検出できるように標識することができる。本発明の抗体を用いることができるイムノアッセイのタイプの例は、直接又は間接のいずれかの形式の競合及び非競合イムノアッセイである。かかるイムノアッセイの例は、ラジオイムノアッセイ (RIA) 及びサンドイッチ (イムノ) アッセイである。本発明の抗体を用いる抗原の検出は、フォワード、リバース、又は同時モードのいずれかで行われる、生理学的サンプルに対する免疫組織化学的アッセイを含むイムノアッセイを用いて行うことができる。当業者は、過度に実験を重ねることなく他のイムノアッセイ形式を知っているか又は容易に識別できるであろう。
【0035】
本発明の抗体は、多くの異なる担体に結合させて、本発明のポリペプチドを含む抗原の存在を検出するのに用いることができる。周知の担体の例には、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然又は変性セルロース、ポリアクリルアミド、アガロース及び磁鉄鉱が含まれる。担体の性質は、本発明の目的のためには可溶性であっても不溶性であってもよい。当業者は、結合抗体のための他の適する担体を知っているか、又は定型的な実験を用いてそうしたものを探知できるであろう。
【0036】
当業者にとって既知の多くの異なる標識及び標識方法がある。本発明に用いることができる標識のタイプの例には、酵素、放射性同位元素、蛍光化合物、コロイド状金属、化学発光化合物、リン光化合物、及び生物発光化合物が含まれる。当業者は、抗体への結合のための他の適する標識を知っているか、又は定型的な実験を用いてそうしたものを探知できるであろう。
【0037】
より大きな感度をもたらすことができる他の技術は、低分子量ハプテンへの抗体のカップリングからなるものである。次いで、これらハプテンを第二反応により特異的に検出することができる。例えば、アビジンと反応するビオチン、又は特異的抗ハプテン抗体と反応できるジニトロフェノール、ピリドキサール、及びフルオレセインの如きハプテンを用いるのが普通である。
【0038】
抗原の in vivo 検出のために本発明のモノクローナル抗体を用いるには、検出できるように標識された抗体を診断に有効な量で与える。“診断に有効な”という用語は、検出できるように標識されたモノクローナル抗体の量が、そのモノクローナル抗体が特異的である本発明のポリペプチドを含む抗原を有する部位の検出を可能にするのに十分な量で投与されることを意味する。
【0039】
投与される標識モノクローナル抗体の濃度は、ポリペプチドを有する細胞への結合がバックグランドに比較して検出可能となるのに十分であるべきである。更に、検出できるように標識されたモノクローナル抗体は、最良の標的対バックグランドのシグナル比が得られるように、循環系から速やかに浄化されるのが望ましい。
【0040】
一般に、in vivo 診断のための標識モノクローナル抗体の投与量は、その個体の年齢、性別、及び疾患の程度の如き要因に依存して変動するであろう。かかる投与量は、例えば、多数回注射するかどうか、抗原負担、及び当業者にとって既知の他の要因に依存して変動してもよい。
【0041】
in vivo 診断的画像化 (diagnostic imaging) については、利用できる検出装置の型が所与の放射性同位元素を選択するに際しての主要な要因となる。選ばれる放射性同位元素は、所与の型の装置にとって検出可能なタイプの崩壊を持たなければならない。in vivo 診断のための放射性同位元素を選択するに際してのいま一つ重要な要因は、宿主に対して有害な放射線を最小限とすることである。理想的には、in vivo 画像化に用いる放射性同位元素は粒子の放出を欠いているが、慣用的なガンマカメラで容易に検出できる140〜250keV幅の多数の光子を生じるであろう。
【0042】
in vivo 診断のため、放射性同位元素は直接にでも中間官能基を用いて間接にでもイムノグロブリンに結合させることができる。金属イオンとして存在する放射性同位元素をイムノグロブリンに結合させるのにしばしば用いられる中間官能基は、ジエチレントリアミン五酢酸 (DTPA) 及びエチレンジアミン四酢酸 (EDTA) 及び類似の分子の如き二官能性キレート剤である。本発明のモノクローナル抗体に結合できる金属イオンの典型例は、 111In、97Ru、67Ga、68Ga、72As、89Zr、及び 201Tlである。
【0043】
本発明のモノクローナル抗体は、磁気共鳴画像化 (MRI) 又は電子スピン共鳴(ESR) におけるように、in vivo 診断の目的で常磁性同位元素で標識することもできる。一般に、診断画像を可視化するあらゆる慣用的方法を用いることができる。通常、ガンマ及び陽電子放出放射性同位元素がカメラ画像化に用いられ、MRIには常磁性同位元素が用いられる。かかる技術に特に有用な元素には、 157Gd、55Mn、 162Dy、52Cr、及び56Feが含まれる。
【0044】
本発明のモノクローナル抗体を in vitro 及び in vivo で用いて被験体におけるGDF−8関連疾患の改善の経過を追跡することができる。かくして、例えば、本発明のポリペプチドを含む抗原を発現する細胞の数の増加若しくは減少又は種々の体液中に存在する、かかる抗原の濃度の変化を測定することによって、GDF−8関連疾患を改善することを狙った特定の治療法が有効であるかどうかを確認することが可能となろう。“改善”という用語は、治療を受けている被験体のGDF−8関連疾患の好ましくない作用が少なくなることを表わす。
【0045】
本発明は、正常細胞内での発現に比較して変わったやり方で発現され得るヌクレオチド配列を同定するものであり、従ってこの配列に向けた適切な治療又は診断技術をデザインすることが可能となる。かくして、細胞増殖性疾患がGDF−8の発現と関係している場合には、翻訳レベルでGDF−8発現を妨害する核酸配列を用いることができる。このアプローチは、例えば、アンチセンス核酸及びリボザイムを用いて特定のGDF−8 mRNAの翻訳を遮断するものであって、それはそのmRNAをアンチセンス核酸でマスクするか又はそれをリボザイムで開裂させるかのいずれかによりなされる。かかる疾患には、例えば、神経変性疾患が含まれる。
【0046】
アンチセンス核酸は、特定のmRNA分子の少なくとも一部分に相補的なDNA又はRNA分子である (Weintraub, Scientific American, 262:40, 1990) 。細胞内でこのアンチセンス核酸は対応するmRNAとハイブリダイズして二本鎖分子を形成する。細胞は二本鎖であるmRNAを翻訳しないだろうから、このアンチセンス核酸はこのmRNAの翻訳を妨害することになる。約15ヌクレオチドのアンチセンスオリゴマーが好ましい。というのは、それらは容易に合成されかつ標的GDF−8産生細胞内に導入した際により大きな分子よりもあまり問題を起こしそうにないからである。遺伝子の in vitro 翻訳を阻害するためにアンチセンス法を用いることは、当該技術分野で周知である (Marcus-Sakura, Anal. Biochem., 172:289, 1988) 。
【0047】
リボザイムは、DNA制限エンドヌクレアーゼと類似のやり方で他の一本鎖RNAを特異的に開裂する能力を有すRNA分子である。これらRNAをコードするヌクレオチド配列の修飾を通して、あるRNA分子内の特定のヌクレオチド配列を認識してそれを開裂する分子を工学的に作ることが可能である (Cech, J. Amer. Med. Assn., 260:3030, 1988)。このアプローチの主要な利点は、それらが配列特異的なので、特定の配列を有するmRNAだけを不活性化する点である。
【0048】
2つの基本的な型のリボザイム、即ち、テトラヒメナ型 (Hasselhoff, Nature, 334:585, 1988) 及び“ハンマーヘッド”型がある。テトラヒメナ型リボザイムは長さが4塩基の配列を認識し、“ハンマーヘッド”型リボザイムは長さが11〜18塩基の塩基配列を認識する。認識配列が長ければ長いほど、その配列が標的mRNA種内に独占的に存在する可能性が大きくなる。従って、特定のmRNA種を不活性化するには、ハンマーヘッド型リボザイムがテトラヒメナ型リボザイムよりも好ましく、しかも18塩基認識配列がより短い認識配列よりも好ましい。
【0049】
本発明は、GDF−8タンパク質により媒介される細胞増殖性疾患又は免疫疾患を治療するための遺伝子治療も提供する。かかる治療は、GDF−8アンチセンスポリヌクレオチドを増殖性疾患を有する細胞内に導入することによりその治療効果をもたらすことになる。アンチセンスGDF−8ポリヌクレオチドの送逹は、キメラウィルスの如き組換え発現ベクター又はコロイド分散系を用いて行うことができる。アンチセンス配列の治療的送逹に特に好ましいのは、ターゲット(標的設定)されたリポソームを用いることである。
【0050】
ここに教示した遺伝子治療に用いることができる種々のウィルスベクターには、アデノウィルス、ヘルペスウィルス、ワクシニアウィルス又は、好ましくは、レトロウィルスの如きRNAウィルスが含まれる。好ましくは、レトロウィルスベクターは、マウス又は鳥類レトロウィルスの誘導体である。単一の外来遺伝子を挿入することができるレトロウィルスの例には、モロニーマウス白血病ウィルス (MoMuLV) 、ハーベイ (Harvey) マウス肉腫ウィルス (HaMuSV) 、マウス乳癌ウィルス(MuMTV) 、及びラウス肉腫ウィルス (RSV) が含まれるが、これらに限定されない。多くの更なるレトロウィルスベクターが多様な遺伝子を取り込むことができる。導入細胞が同定されて世代形成できるように、これら全てのベクターは、選択マーカー用の遺伝子を移入するか又は組み込むことができる。興味の対象であるGDF−8配列を、例えば、特定の標的細胞上のレセプターのためのリガンドをコードする別の遺伝子と一緒にウィルスベクターの中に挿入することにより、そのベクターはその時点で標的特異性となる。例えば、糖、糖脂質又はタンパク質を付けることにより、レトロウィルスベクターを標的特異性にすることができる。好ましいターゲッティングは、そのレトロウィルスベクターをターゲットとするための抗体を用いることにより行われる。当業者は、過度な実験を重ねることなく、GDF−8アンチセンスポリヌクレオチドを含有するレトロウィルスベクターの標的特異的送逹を可能にするためにレトロウィルスゲノム内に挿入できるか又はウィルスエンベロープに付けることができる特定のポリヌクレオチド配列を知っているか、又は容易に探知できるであろう。
【0051】
組換えレトロウィルスは欠損ウィルスであるので、それらは感染性ベクター粒子を生成させるために助けを必要とする。この助けは、例えば、レトロウィルスの全ての構造遺伝子をそのLTR内の調節配列の制御下でコードするプラスミドを含有するヘルパー細胞系を用いることにより提供することができる。これらプラスミドは、そのパッケージングメカニズムがキャプシド化のためのRNA転写産物を認識するのを可能にするヌクレオチド配列を欠いている。このパッケージングシグナルの欠失を有するヘルパー細胞系には、例えば、Ψ2、PA317及びPA12が含まれるが、これらに限定されない。これら細胞系は、ゲノムがパッケージされていないので、空のウィルス粒子を産生する。レトロウィルスベクターを、パッケージングシグナルは完全であるが構造遺伝子が興味の対象の他の遺伝子により置換されている細胞内に導入すると、そのベクターはパッケージされてベクターウィルス粒子を産生することができる。
【0052】
また、NIH3T3又は他の組織培養細胞は、レトロウィルス構造遺伝子gag、pol及びenvをコードするプラスミドで慣用的なリン酸カルシウムトランスフェクションにより直接トランスフェクトすることができる。次いで、これら細胞を興味の対象の遺伝子を含有するベクタープラスミドでトランスフェクトする。得られる細胞は、培地中にそのレトロウィルスベクターを放出する。
【0053】
GDF−8アンチセンスポリヌクレオチドのもう1つのターゲットされた送逹系は、コロイド分散系である。コロイド分散系には、巨大分子複合体;ナノカプセル;マイクロスフェア;ビーズ;及び水中油エマルジョン、ミセル、混合ミセル及びリポソームを含む脂質をベースとした系;が含まれる。本発明の好ましいコロイド系はリポソームである。リポソームは、in vitro 及び in vivo での送逹ベヒクルとして有用である人工膜小胞である。サイズが0.2〜4.0μmの大型の単ラメラ小胞 (large unilamellar vesicle, LUV) は巨大分子を含有する水性緩衝液を相当なパーセンテージで保持できることが示された。RNA、DNA及び無傷ウィルス粒子をその水性内部に保持させて、生物活性な形で細胞に送逹することができる (Fraleyら, Trends Biochem. Sci., 6:77, 1981) 。哺乳動物細胞に加えて、リポソームは、植物、酵母、及び細菌細胞におけるポリヌクレオチドの送逹に用いられてきた。リポソームが有効な遺伝子移入ベヒクルであるためには、次の特徴が存在すべきである:(1) 興味の対象である遺伝子を高い効率で保持するがそれらの生物活性を弱めないこと;(2) 非標的細胞に比較して標的細胞に優先的かつ強固に結合すること;(3) 標的細胞の細胞質にその小胞の水性内容物を高い効率で送逹すること;及び (4) 遺伝子情報を正確かつ効率的に発現すること (Mannino ら, Biotechniques, 6:682, 1988) 。
【0054】
リポソームの組成は、通常、リン脂質、特に高い相転移温度のリン脂質の組み合わせで、通常は、ステロイド、特にコレステロールとの組み合わせである。他のリン脂質又は他の脂質を用いることもできる。リポソームの物理的特性は、pH、イオン強度、及び二価カチオンの存在に依存する。
【0055】
リポソーム形成に有用な脂質の例には、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴ脂質、セレブロシド及びガングリオシドの如きホスファチジル化合物が含まれる。特に有用なのは、脂質部分が14〜18炭素原子、特に16〜18炭素原子を含有しそして飽和であるジアシルホスファチジルグリセロールである。代表的なリン脂質には、卵ホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン及びジステアロイルホスファチジルコリンが含まれる。
【0056】
リポソームのターゲッティングは、解剖学的及び機械学的要因に基づいて分類される。解剖学的分類は、選択性のレベル、例えば、器官特異性、細胞特異性及びオルガネラ特異性のレベルに基づく。機械学的ターゲッティングは、それが受動的であるか能動的であるかに基づいて区別することができる。受動的ターゲッティングは、洞様毛細血管を含む器官内の細網内皮系 (reticulo-endothelialsystem, RES) の細胞に分布するリポソームの自然的傾向を用いる。一方、能動的ターゲッティングは、リポソームをモノクローナル抗体、糖、糖脂質又はタンパク質の如き特異的リガンドにカップリングさせることにより又はリポソームの組成若しくはサイズを変えることによりリポソームを変更して、天然に存在する局在化部位以外の器官及び細胞型に標的を定めることを包含する。
【0057】
ターゲットされた送逹系の表面をいろいろな方法で修飾することができる。ターゲットされたリポソーム送逹系の場合には、脂質基をリポソームの脂質二重層内に組み込んで、標的指向性リガンドをそのリポソーム二重層との安定な結合状態で維持するようにできる。脂質鎖を標的指向性リガンドに結合するために種々の連結基を用いることができる。
【0058】
筋肉及び脂肪組織内でのGDF−8の発現のために、本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド及び抗体を用いるこれら組織に関連する種々の用途がある。かかる用途には、神経組織の如きこれら及び他の組織に関係する細胞増殖性疾患の治療が含まれる。加えて、GDF−8は、種々の遺伝子治療法に有用であり得る。
【0059】
実施例6のデータは、ヒトGDF−8遺伝子が染色体2にあることを示している。GDF−8の染色体位置を種々のヒトの疾患のマップ位置と比較することにより、GDF−8遺伝子内の突然変異がヒトの疾患の病因に関連しているかどうかを確認することが可能な筈である。例えば、若年筋萎縮性側索硬化症の常染色体性劣性型は、染色体2にあることが示された (Hentati ら, Neurology, 42 [Suppl.3]:201, 1992) 。GDF−8のより正確なマッピング及びこれら患者からのDNAの分析で、GDF−8が実際にこの疾患において害された遺伝子であることを示すことができる。さらに、GDF−8は染色体2を他の染色体から区別するのに有用である。
【0060】
以下の実施例は、本発明を説明するものであって限定を意図するものではない。それらは用いることができるものの代表であるが、当業者にとって既知の他の方法を代わりに用いてもよい。
(実施例1) 新規なTGF−βファミリーメンバーの同定及び単離
TGF−βスーパーファミリーの新規なメンバーを同定するために、既知のファミリーメンバー間の2つ保存領域に対応する縮重オリゴヌクレオチドを設計した。一方の領域はMISを除く全てのファミリーメンバーで保存されている2つのトリプトファン残基に及び、他方の領域はC−末端の近くの非変異システイン残基に及ぶ領域であった。これらプライマーをマウスゲノミックDNA上でポリメラーゼ連鎖反応に用いた後、それらプライマーの5'末端に位置する制限部位を用いてPCR産物をサブクローン化し、これらサブクローン化挿入体を保有する個々の大腸菌コロニーを拾い上げ、そしてランダム配列決定及びハイブリダイゼーション分析の組み合わせを用いてこのスーパーファミリーの既知メンバーを除いた。
【0061】
下記プライマーで得られたPCR産物の混合物からGDF−8を同定した。
SJL141:5'-CCGGAATTCGGITGG(G/C/A)A(G/A/T/C)(A/G)A(T/C) TGG(A/G)TI(A/G)TI(T/G)CICC-3' ( 配列番号:1)
SJL147:5'-CCGGAATTC(G/A)CAI(G/C)C(G/A)CA(G/A)CT(G/A/T/C)TCIACI(G/A)(T/C)CAT-3' (配列番号:2)
これらプライマーを用いるPCRは2μgのマウスゲノミックDNAを用いて94℃で1分間、50℃で2分間、そして72℃で2分間の40サイクルを行った。
【0062】
約280bpのPCR産物をゲル精製し、EcoRIで消化し、再度ゲル精製し、そして Bluescript ベクター (Stratagene,San Diego, CA) 内にサブクローン化した。個々のサブクローンを保有する細菌コロニーを96ウェルマイクロタイタープレート内に拾い取り、そしてそれら細胞をニトロセルロース上にプレートすることにより多数のレプリカを調製した。これらレプリカフィルターをこのファミリーの既知メンバーに相当するプローブにハイブリダイズさせ、そして配列分析用に非ハイブリダイズコロニーからDNAを調製した。
【0063】
アミノ酸配列 GW(H/Q/N/K/D/E)(D/N)W(V/I/M)(V/I/M)(A/S)P (配列番号:9) 及び M(V/I/M/T/A)V(D/E)SC(G/A)C (配列番号:10) をそれぞれコードするSJL141及びSJL147のプライマーの組み合わせを用いたところ、分析した110のサブクローンの中から以前に同定された4種の配列 (BMP−4、インヒビンβB、GDF−3及びGDF−5) と1種の新規な配列が得られ、これをGDF−8と名付けた。
【0064】
下記のプライマーを用いてヒトGDF−8を単離した。
ACM13:5'-CGCGGATCCAGAAGTCAAGGTGACAGACACAC-3' (配列番号:3) ;
及び
ACM14:5'-CGCGGATCCTCCTCATGAGCACCCACAGCGGTC-3'(配列番号:4)
これらプライマーを用いるPCRは1μgのヒトゲノミックDNAを用いて94℃で1分間、58℃で2分間、そして72℃で2分間の30サイクルを行った。このPCR産物をBamHIで消化し、ゲル精製し、そして Bluescript ベクター (Stratagene, San Francisco, CA) 内にサブクローン化した。
【0065】
(実施例2) GDF−8の発現パターン及び配列
GDF−8の発現パターンを調べるために、種々の成体組織から調製したRNAサンプルをノーザン分析によりスクリーニングした。RNA単離及びノーザン分析は、ハイブリダイゼーションを5×SSPE、10%硫酸デキストラン、50%ホルムアミド、1%SDS、200μg/mlサケDNA、及び各0.1%のウシ血清アルブミン、フィコール、及びポリビニルピロリドン中で行ったことを除いて、以前に記載された通りに行った (Lee, S.J., Mol. Endocrinol. 4:1034, 1990) 。各組織から調製した5μgの2度ポリA選択RNA (筋肉については2μgのRNAしか用いなかった) をホルムアルデヒドゲル上で電気泳動し、ブロットし、そしてGDF−8で釣り上げた。図1に示すように、このGDF−8プローブを用いて、筋肉中で最高レベルで発現されそして脂肪組織中ではかなり低いレベルでしか発現されない単一のmRNA種を検出した。
【0066】
GDF−8遺伝子のより大きなセグメントを得るために、マウスゲノミックライブラリーをGDF−8PCR産物から誘導したプローブでスクリーニングした。GDF−8ゲノミッククローンの部分配列を図2aに示す。この配列は、GDF−8前駆体タンパク質の推定C−末端領域に対応するオープンリーディングフレームを含有する。この推定GDF−8配列は、ボックスで囲んだ2つの潜在的タンパク質分解性プロセシング部位を含有する。これら部位の2番目でのこの前駆体の開裂により、12,400の
予想分子量を有する長さが109アミノ酸の成熟C−末端断片が生ずるであろう。ヒトGDF−8の部分配列を図2bに示す。このヒトクローンの単離中にPCRで引き起こされる誤りがなかったと仮定すると、この領域におけるヒト及びマウスのアミノ酸配列は100%同一である。
【0067】
推定タンパク質分解性プロセシング部位のあとに続くGDF−8のC−末端領域は、TGF−βスーパーファミリーの既知メンバーに対して有意な相同性を示す (図3) 。図3は、GDF−8のC−末端配列と、ヒトGDF−1 (Lee, S.J., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:4250-4254, 1991)、ヒトBMP−2及び4 (Wozneyら, Science, 242:1528-1534, 1988) 、ヒトVgr−1 (Celeste ら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:9843-9847, 1990) 、ヒトOP−1 (Ozkaynakら, EMBO J., 9:2085-2093, 1990)、ヒトBMP−5 (Celeste ら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA,87:9843-9847, 1990) 、ヒトBMP−3 (Wozneyら, Science, 242:1528-1534, 1988) 、ヒトMIS (Cateら, Cell, 45:685-698, 1986) 、ヒトインヒビンα、βA、及びβB (Mason ら, Biochem. Biophys. Res. Commun., 135:957-964, 1986)、ヒトTGF−β1 (Derynct ら, Nature, 316:701-705, 1985)、ヒトTGF−β2 (deMartinら, EMBO J., 6:3673-3677, 1987) 、及びヒトTGF−β3 (ten Dijke ら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85:4715-4719, 1988) の対応する領域とのアラインメントを示す。保存システイン残基をボックスで囲んである。短い横線はアラインメントを最大にするために空けた空所を表わす。
【0068】
GDF−8は、他のファミリーメンバーに高度に保存された殆どの残基を含有し、それらには7つのシステイン残基がそれらの特徴的な間隔と共に含まれる。TGF−β類とインヒビンβ類のように、GDF−8は、2つの追加のシステイン残基も含有する。TGF−β2の場合には、これら2つの追加のシステイン残基が分子内ジスルフィド結合を形成することが知られている (Daopinら, Science, 257:369, 1992;Schlunegger と Grutter, Nature, 358:430, 1992)。
【0069】
図4は、TGF−βスーパーファミリーの異なるメンバー間のアミノ酸相同性を示す。数字は、第1保存システインからC−末端まで計算したそれぞれの対の間のアミノ酸同一性のパーセントを表わす。ボックスは、特定のサブグループ内で高度に関連するメンバー間の相同性を表わす。この領域では、GDF−8がVgr−1に最も相同性である (45%配列同一性) 。
【0070】
(実施例3) マウス及びヒトGDF−8をコードするcDNAクローンの単離
マウス及びヒトGDF−8をコードする完全長cDNAクローンを単離するために、cDNAライブラリーをλZAPIIベクター (Stratagene) 中に骨格筋から調製したRNAを用いて調製した。マウス及びヒト筋肉から調製した5μgの2度ポリA選択RNAから、それぞれ4.4×106及び1.9×106の組換えファージからなるcDNAライブラリーを Stratagene により提供された使用説明書に従って構築した。これらライブラリーを増幅しないでスクリーニングした。cDNA挿入体のライブラリースクリーニング及び特性決定は以前に記載された通りに行った (Lee, S.J., Mol. Endocrinol. 4:1034-1040)。
【0071】
マウス筋肉cDNAライブラリーからスクリーニングした2.
4×106 組換えファージから、280より多くの陽性ファージを実施例1に記載したゲノミッククローンから誘導したマウスGDF−8プローブを用いて同定した。最長cDNA挿入体の分析した全ヌクレオチド配列を図5a及び配列番号:11に示す。この2676塩基対配列は、ヌクレオチド104のメチオニンコドンから開始してヌクレオチド1232の TGA 停止コドンまで及ぶ1本の長いオープンリーディングフレームを含有する。この推定開始メチオニンコドンの上流には、ヌクレオチド23の同一フレーム内 (in-frame) 停止コドンがある。この予想プレプロGDF−8タンパク質は長さが376アミノ酸である。この配列は、N−末端において分泌のためのシグナルペプチドを示唆する疎水性アミノ酸のコア (図6a) を、アスパラギン72に1つの潜在的N−グリコシル化部位を、アミノ酸264〜267に推定 RXXR タンパク質分解性開裂部位を、そしてTGF−βスーパーファミリーの既知メンバーに対して有意な相同性を示すC−末端領域を含有する。推定 RXXR 部位における前駆体タンパク質の開裂は、約12,400の予想分子量を有する109アミノ酸の長さの成熟C−末端GDF−8断片を生じるであろう。
【0072】
ヒト筋肉cDNAライブラリーからスクリーニングした1.9×106 組換えファージから、4個の陽性ファージをヒトゲノミックDNAでのポリメラーゼ連鎖反応により誘導したヒトGDF−8プローブを用いて同定した。最長cDNA挿入体の全ヌクレオチド配列を図5b及び配列番号:13に示す。この2743塩基対配列は、ヌクレオチド59のメチオニンコドンから開始してヌクレオチド1184の TGA 停止コドンまで及ぶ1本の長いオープンリーディングフレームを含有する。この予想プレプロGDF−8タンパク質は長さが375アミノ酸である。この配列は、N−末端に分泌のためのシグナルペプチドを示唆する疎水性アミノ酸のコア (図6a) を、アスパラギン71に1つの潜在的N−グリコシル化部位を、そしてアミノ酸263〜266に推定 RXXR タンパク質分解性開裂部位を含有する。図7は、予想マウス (上方) 及びヒト (下方) GDF−8アミノ酸配列の比較を示す。数字は、N−末端からのアミノ酸の位置を示す。これら2つの配列間の同一性を垂直線により表わす。マウス及びヒトのGDF−8は、予想プロ領域内で約94%同一性であり、予想 RXXR 開裂部位の後ろで100%同一性である。
【0073】
(実施例4) GDF−8に対する抗体の調製及び哺乳動物細胞内でのGDF−8の発現
GDF−8に対する抗体を調製するために、GDF−8抗原を細菌内で融合タンパク質として発現させた。アミノ酸268から376に及ぶマウスGDF−8 cDNAの部分 (成熟領域) をpRSETベクター(Invitrogen) 内に、GDF−8コーディング配列がこのベクター内に存在する開始メチオニンコドンと同じフレーム内に配置されるように挿入した。得られた構築体には、約16,600の分子量を有する融合タンパク質をコードするオープンリーディングフレームができた。この融合構築体をBL21 (DE3) (pLysS) 細胞内に形質転換し、この融合タンパク質の発現を記載された通りにイソプロピルチオ−β−ガラクトシドにより誘発した (Rosenberg ら, Gene, 56:125-135) 。次いで、この融合タンパク質を Invitrogen により提供された使用説明書に従って金属キレートクロマトグラフィーにより精製した。未精製及び精製融合タンパク質のクマシーブルー染色ゲルを図8に示す。
【0074】
この精製融合タンパク質を用いてウサギ及びニワトリの両方を免疫感作した。ウサギの免疫感作は Spring Valley Labs (Sykesville, MD) により実施され、ニワトリの免疫感作は HRP, Inc. (Denver, PA) により実施された。免疫感作したウサギ及び免疫感作したニワトリの両方からの血清のウェスタン分析により、この融合タンパク質に対する抗体の存在が証明された。
【0075】
哺乳動物細胞内でGDF−8を発現させるために、ヌクレオチド48〜1303からのマウスGDF−8 cDNA配列をpMSXND発現ベクター内のメタロチオネインIプロモーターの下流に両方向でクローン化した。このベクターは、SV40から誘導したプロセシングシグナル、ジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子、及び抗生物質G418に対する耐性を付与する遺伝子を含有する。 (Lee と Nathans, J. Biol. Chem., 263:3521-3527) 得られた構築体をチャイニーズハムスター卵巣細胞内に形質転換し、そして安定な形質転換体をG418の存在下で選択した。G418耐性細胞から調製した2mlの馴化培地を透析し、凍結乾燥し、変性還元条件下で電気泳動し、ニトロセルロースに移行させ、そして抗GDF−8抗体 (上記のもの) 及び〔125I〕ヨードプロテインAと共にインキュベートした。
【0076】
図9に示すように、ウサギGDF−8抗体 (1:500希釈)は、GDF−8の成熟C−末端断片のおよその予想分子量をもつタンパク質を、GDF−8がメタロチオネインプロモーターに関して正しい (センス) 方向にクローン化された構築体により形質転換された細胞の馴化培地中に検出した (レーン2) 。このバンドは、対照のアンチセンス構築体で形質転換された細胞から調製した類似のサンプル中では検出されなかった (レーン1) 。ニワトリより調製した抗体を用いて同様な結果が得られた。それゆえ、GDF−8は分泌され、これらトランスフェクト哺乳動物細胞による加水分解プロセシングを受ける。
【0077】
(実施例5) GDF−8の発現パターン
GDF−8の発現パターンを調べるために、種々のマウス組織源から調製した5μgの2度ポリA選択RNAをノーザン分析に付した。図10aに示すように (そして実施例2に示したように) 、GDF−8プローブは、検分した多くの成体組織間で殆ど骨格筋にだけ存在する単一のmRNA種を検出した。同ブロットをもっと長く露出すると、かなり低いが検出可能なレベルのGDF−8 mRNAが、脂肪、脳、胸腺、心臓、及び肺に見られた。このことから、これら結果は、骨格筋中でのGDF−8発現の高度な特異性を確認するものである。GDF−8 mRNAは、マウス胚内においても検査した両妊娠期間 (交尾後12.5日及び18.5日) で検出されたが、胎盤では種々の発生段階において検出されなかった(図10b)。
【0078】
(実施例6) GDF−8の染色体での位置確認
GDF−8の染色体位置をマッピングするために、ヒト/げっ歯類体細胞ハイブリッド (Drwinga ら, Genomics, 16:311-413,1993;Dubois と Naylor, Genomics, 16:315-319, 1993) からのサンプルをポリメラーゼ連鎖反応とこれに続くサザーンブロッティングにより分析した。ポリメラーゼ連鎖反応は、プライマー#83,5'-CGCGGATCCGTGGATCTAAATGAGAACAGTGAGC-3' (配列番号:15) 及びプライマー#84:5'-CGCGAATTCTCAGGTAATGATTGTTTCCGTTGTAGCG-3' (配列番号:16) を用いて、94℃で2分間、60℃で1分間、そして72℃で2分間の40サイクルを行った。これらプライマーは、それぞれヒトGDF−8 cDNA配列内のヌクレオチド119から143まで (BamHI認識配列が隣にある) 、及びヌクレオチド394から418まで (EcoRI認識配列が隣にある) に相当する。PCR産物をアガロースゲルで電気泳動し、ブロットし、そしてプライマー#83及び#84によってはさまれた領域の内部の配列に相当するオリゴヌクレオチド#100,5'-ACACTAAATCTTCAAGAATA-3' (配列番号:17) で釣り上げた。フィルターを6×SSC、1×Denhardt溶液、100μg/ml酵母トランスファーRNA、及び0.05%ピロリン酸ナトリウム中で50℃でハイブリダイズさせた。
【0079】
図11に示すように、ヒト特異的プローブにより、陽性対照サンプル (全ヒトゲノミックDNA) 中で及びヒト/げっ歯類ハイブリッドパネルからの1つのDNAサンプル中で予想サイズ (約320塩基対) のバンドが検出された。この陽性シグナルは、ヒト染色体2に相当する。それぞれのハイブリッド細胞系内に含有されるヒト染色体は、始めの24レーン (1〜22、X及びY)のそれぞれの最上部において確認される。M、CHO及びHと名付けたレーンでは、出発DNA鋳型は、それぞれマウス、ハムスター、及びヒト起源の全ゲノミックDNAであった。B1の記号を付けたレーンでは、鋳型DNAは用いなかった。左側の数字は、DNAスタンダードの移動度を示す。これらデータは、ヒトGDF−8遺伝子が染色体2に位置することを示している。
【0080】
現時点で好ましい態様に関して本発明を説明してきたが、本発明の精神から逸脱することなく種々の変更を行うことができることが理解されるべきである。従って、本発明は、次の請求の範囲によってのみ限定される。
配列の概要
配列番号:1は、クローンSJL141の核酸配列である。
配列番号:2は、クローンSJL147の核酸配列である。
配列番号:3は、クローンACM13の核酸配列である。
配列番号:4は、クローンACM14の核酸配列である。
配列番号:5は、マウスGDF−8の部分ヌクレオチド配列及び推定アミノ酸配列である。
配列番号:6は、マウスGDF−8の推定部分アミノ酸配列である。
配列番号:7は、ヒトGDF−8の部分ヌクレオチド配列及び推定アミノ酸配列である。
配列番号:8は、ヒトGDF−8の推定部分アミノ酸配列である。
配列番号:9は、プライマーSJL141のアミノ酸配列である。
配列番号:10は、プライマーSJL147のアミノ酸配列である。
配列番号:11は、マウスGDF−8のヌクレオチド配列及び推定アミノ酸配列である。
配列番号:12は、マウスGDF−8の推定アミノ酸配列である。
配列番号:13は、ヒトGDF−8のヌクレオチド配列及び推定アミノ酸配列である。
配列番号:14は、ヒトGDF−8の推定アミノ酸配列である。
配列番号:15及び16は、それぞれプライマー#83及び#84のヌクレオチド配列であり、ヒト/げっ歯類体細胞ハイブリッド内でのヒトGDF−8のマッピングに用いたものである。
配列番号:17は、プライマー#83及び#84によってはさまれた領域の内部の配列に相当するオリゴヌクレオチド#100のヌクレオチド配列である。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】図1は、成体組織内でのGDF−8 mRNAの発現を示すノーザンブロットである。そのプローブは部分的マウスGDF−8クローンであった。
【図2a】図2aは、マウスGDF−8 のヌクレオチド配列及び予想アミノ酸配列を示す。該マウス配列中の推定二塩基プロセシング部位をボックスで囲んである。
【図2b】図2bは、ヒトGDF−8のヌクレオチド配列及び予想アミノ酸配列を示す。該マウス配列中の推定二塩基プロセシング部位をボックスで囲んである。
【図3】図3は、GDF−8とTGF−βスーパーファミリーの他のメンバーとのC−末端配列のアラインメント(並列化)を示す。保存システイン残基をボックスで囲んである。短い横線はアラインメントを最大にするために空けた空所を表わす。
【図4】図4は、TGF−βスーパーファミリーの異なるメンバー間のアミノ酸相同性を示す。数字は、第1保存システインからC−末端まで計算したそれぞれの対の間のアミノ酸同一性のパーセントを表わす。ボックスは、特定のサブグループ内で高度に関連するメンバー間の相同性を表わす。
【図5a】図5aはマウスGDF−8 cDNAクローンのヌクレオチド及びアミノ酸配列を示す。数字は、5'末端からのヌクレオチドの位置を示す。コンセンサスN結合グリコシル化シグナルを暗くしてある。推定 RXXR タンパク質分解性開裂部位をボックスで囲んである。
【図5b】図5bはマウスGDF−8 cDNAクローンのヌクレオチド及びアミノ酸配列(続き)を示す。数字は、5'末端からのヌクレオチドの位置を示す。コンセンサスN結合グリコシル化シグナルを暗くしてある。推定 RXXR タンパク質分解性開裂部位をボックスで囲んである。
【図5c】図5cはヒトGDF−8 cDNAクローンのヌクレオチド及びアミノ酸配列を示す。数字は、5'末端からのヌクレオチドの位置を示す。コンセンサスN結合グリコシル化シグナルを暗くしてある。推定 RXXR タンパク質分解性開裂部位をボックスで囲んである。
【図5d】図5dはヒトGDF−8 cDNAクローンのヌクレオチド及びアミノ酸配列(続き)を示す。数字は、5'末端からのヌクレオチドの位置を示す。コンセンサスN結合グリコシル化シグナルを暗くしてある。推定 RXXR タンパク質分解性開裂部位をボックスで囲んである。
【図6a】図6aは、GDF−8のハイドロパシシティ (hydropathicity)プロフィールを示す。マウス (図6a) GDF−8についての平均疎水性値を Kyte と Doolittle の方法 (J. Mol. Biol., 157:105-132, 1982) を用いて計算した。正の数値は疎水性の増加を示す。
【図6b】図6bは、GDF−8のハイドロパシシティ (hydropathicity)プロフィールを示す。ヒト (図6b) GDF−8についての平均疎水性値を Kyte と Doolittle の方法 (J. Mol. Biol., 157:105-132, 1982) を用いて計算した。正の数値は疎水性の増加を示す。
【図7】図7は、マウスGDF−8アミノ酸配列とヒトGDF−8アミノ酸配列の比較を示す。予想マウス配列を上側の列に示し予想ヒト配列を下側の列に示す。数字は、N−末端からのアミノ酸の位置を示す。これら2つの配列間の同一性を垂直線により表してある。
【図8】図8は、細菌内でのGDF−8の発現を示す。pRSET/GDF−8発現プラスミドを保有するBL21 (DE3) (pLysS) 細胞をイソプロピルチオ−β−ガラクトシドで誘発し、そしてGDF−8融合タンパク質を金属キレートクロマトグラフィーにより精製した。レーン:全体=全細胞溶解産物;可溶物=可溶性タンパク質画分;不溶物=カラムに充填した不溶性タンパク質画分 (10mMトリスpH8.0、50mMリン酸ナトリウム、8M尿素、及び10mMβ−メルカプトエタノール〔緩衝液B〕中に再懸濁させた) ;ペレット=カラムに充填する前に廃棄した不溶性タンパク質画分;流出物=カラムに結合しなかったタンパク質;洗浄液=示したpHで緩衝液Bで行った洗浄の洗浄液。分子量スタンダードの位置を右側に示している。矢印はGDF−8融合タンパク質の位置を示す。
【図9】図9は、哺乳動物細胞内でのGDF−8の発現を示す。チャイニーズハムスター卵巣細胞をpMSXND/GDF−8発現プラスミドで形質転換してG418中で選択した。G418耐性細胞からの馴化培地 (GDF−8をアンチセンス又はセンス方向のいずれかでクローン化した構築体でトランスフェクトした細胞から調製した) を濃縮し、還元条件下で電気泳動し、ブロットし、そして抗GDF−8抗体及び〔125I〕ヨードプロテインAで釣り上げた。矢印はプロセシングされたGDF−8タンパク質の位置を示す。
【図10a】図10は、GDF−8 mRNAの発現を示す。成体組織 (図10a)から調製したポリA選択RNA (各5μg) をホルムアルデヒドゲル上で電気泳動し、ブロットし、そして完全長マウスGDF−8で釣り上げた。
【図10b】図10は、GDF−8 mRNAの発現を示す。示した妊娠日数における胎盤及び胚 (図10b) から調製したポリA選択RNA (各5μg) をホルムアルデヒドゲル上で電気泳動し、ブロットし、そして完全長マウスGDF−8で釣り上げた。
【図11】図11は、ヒトGDF−8の染色体マッピングを示す。ヒト/げっ歯類体細胞ハイブリッド系から調製したDNAサンプルをPCRに付し、アガロースゲル上で電気泳動し、ブロットし、そして釣り上げた。それぞれのハイブリッド細胞系内に含有されるヒト染色体が始めの24レーン (1〜22、X及びY) のそれぞれの最上部において確認される。M、CHO及びHと名付けたレーンでは、出発DNA鋳型は、それぞれマウス、ハムスター、及びヒト由来の全ゲノミックDNAであった。B1の記号を付けたレーンでは、鋳型DNAは用いなかった。左側の数字は、DNAスタンダードの移動度を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号12又は配列番号14に記載されるアミノ酸配列を有する実質的に純粋な増殖分化因子−8(GDF-8)ポリペプチド。
【請求項2】
配列番号12又は配列番号14に記載されるアミノ酸配列を有する増殖分化因子−8(GDF-8)ポリペプチド又はそのエプトープに特異的に反応性のある抗体。
【請求項3】
抗体がポリクローナルである、請求項2の抗体。
【請求項4】
抗体がモノクローナルである、請求項2の抗体。
【請求項1】
配列番号12又は配列番号14に記載されるアミノ酸配列を有する実質的に純粋な増殖分化因子−8(GDF-8)ポリペプチド。
【請求項2】
配列番号12又は配列番号14に記載されるアミノ酸配列を有する増殖分化因子−8(GDF-8)ポリペプチド又はそのエプトープに特異的に反応性のある抗体。
【請求項3】
抗体がポリクローナルである、請求項2の抗体。
【請求項4】
抗体がモノクローナルである、請求項2の抗体。
【図1】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図5d】
【図6a】
【図6b】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10a】
【図10b】
【図11】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図5d】
【図6a】
【図6b】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10a】
【図10b】
【図11】
【公開番号】特開2006−117682(P2006−117682A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−326630(P2005−326630)
【出願日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【分割の表示】特願2004−1012(P2004−1012)の分割
【原出願日】平成6年3月18日(1994.3.18)
【出願人】(503070409)ジョーンズ ホプキンス ユニバーシティー スクール オブ メディシン (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【分割の表示】特願2004−1012(P2004−1012)の分割
【原出願日】平成6年3月18日(1994.3.18)
【出願人】(503070409)ジョーンズ ホプキンス ユニバーシティー スクール オブ メディシン (2)
【Fターム(参考)】
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