説明

壁埋込形器具

【課題】 器具本体を固定するためのベースブラケットを施工壁面に保持するものであって、その保持強度を得るために左右2箇所に設置した挟み込みプレートを利用した挟み込み構造において、挟み込みプレートの壁裏への落下防止の機能を残したまま、壁裏への挿入性と挟み込み強度のを両方得ることを目的とする。
【解決手段】 施工壁面に設けられた枠状のベースブラケットと、施工壁面の裏面に設けられる一対の挟み込みプレートと、前記ベースブラケットに取付けられる器具本体とを備え、前記ベースブラケットと前記挟み込みプレートとで施工壁面を挟持する壁埋込形器具であって、前記ベースブラケット内周の左右夫々の縦辺上下に設けられた一対の貫通孔において、一方の貫通孔はそこを挿通するねじが傾斜できるように長孔形状に形成されおり、他方の貫通孔はねじの外形と略等しい円形状に形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施工壁面に設けられた埋込孔に器具本体が埋込固定される壁埋込形器具に関するものであり、詳しくは、器具本体を取付けたベースブラケットと施工壁面の裏面側の挟み込みプレートとで施工壁面を挟み込むことで埋込孔に器具本体が埋込固定される壁埋込形器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、家庭用コンセントなど電装機器周辺の公知の固定構造として挟み込み金具の構造が広く用いられてきた。この構造を簡単に説明すると、まず、施工壁面に設けられた埋込孔に対し、孔を囲うように設置したベースブラケットをかぶせる。このベースブラケットの上下には1対の貫通孔が存在し、埋込孔より寸法の大きい挟み込みプレートを壁を挟み込むように設置し互いをねじ込むことで、壁への固定を可能とした。
【0003】
施工手順から確認すると、ベースブラケットに設けられた上下1対の貫通孔のうち、片側にねじを貫通させ、挟み込みプレートに設けられた上下1対の片側にねじを数回転ねじ込む。この状態にて施工を行うが、挟み込みプレートは埋込孔に対し寸法が大きいため、まず、埋込孔をまたぐ様にし壁裏へ挿入させ、壁裏へ設置した後はベースブラケットのもう一方の貫通孔にねじを通し、挟み込みプレートのもう一方へねじ込むことで、ねじのねじ込みが壁固定につながる原理となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−188030
【特許文献2】特開2008−253020
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
今回、製品を固定する構造としてこの挟み込み構造を応用するが、コンセントと比べ大きく、重量のある製品の固定には常に加わる自重だけでなく、操作時のくり返し荷重にも耐える必要があるため、強度、信頼性を必要とする製品固定において左右2箇所への固定構造が必要と考えた。左右2つの挟み込みプレート設置に対し、上下方向2箇所と言った選択肢もあったが、通常製品固定で開けた開口孔に対し、事前に壁裏に準備する電気配線の多くは開口孔中央部の上から垂れ下がることが一般的であるため、電気配線の挟み込み防止を考慮して上下の挟み込みは不適切と判断し、左右設置とすることを検討した。
【0006】
このように、製品を強度、信頼性の考えより左右2箇所の固定構造としたが、施工の際、壁裏への挟み込みプレートの落下を防止するため、挟み込みプレートと対となるねじ孔の片側のみを先に一部(数回転)ねじ込み、挟み込みプレートがねじを介してベースブラケットとつながった状態で、施工壁面に設けられた埋込孔へ挿入させ、施工壁面を挟み込み込む固定構造が必要であったが、左右2箇所の固定構造に対し挟み込みプレートとベースブラケットとがつながった状態では挟み込みプレートの可動範囲が制約されるため、埋込孔へ挟み込みプレートを挿入させると、挟み込みプレートが埋込孔と干渉し、挿入し難い、最悪は挿入できない問題が発生した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題を解決するために、請求項1記載の発明においては、施工壁面に設けられた矩形形状の埋込孔の周囲を囲む枠状のベースブラケットと、施工壁面の裏面において前記ベースブラケットの左右夫々の縦辺に沿って対向する一対の挟み込みプレートと、前記ベースブラケットに取付けられる器具本体とを備え、前記ベースブラケット内周の左右夫々の縦辺上下に設けられた一対の貫通孔にねじを挿入し、該ねじを前記挟み込みプレートのねじ孔に螺合することで、前記ベースブラケットと前記挟み込みプレートとで施工壁面を挟持する壁埋込形器具であって、前記ベースブラケット内周の左右夫々の縦辺上下に設けられた一対の貫通孔において、一方の貫通孔はそこを挿通するねじが傾斜できるように長孔形状に形成されおり、他方の貫通孔はねじの外形と略等しい円形状に形成されていることを特徴とする。
【0008】
この請求項1記載の発明によれば、長孔形状にすることにより挟み込みプレートと連結したねじをベースブラケット内側へ傾ける角度を増すことができ、これは埋込孔に対し挟み込みプレートの挿入性改善方向へ可動範囲が広がったことを意味するため、挿入性困難(埋込孔寸法によっては挿入できない)問題を解決することができる。
【0009】
また、請求項2記載の発明においては、前記長孔形状に形成された貫通孔は、前記ベースブラケットの下辺から縦辺方向に所定角度傾斜して形成されており、前記ベースブラケットの一対の貫通孔の縦辺側における間隔と前記前記挟み込みプレートの一対のねじ孔の間隔とが等しいことを特徴とする。
【0010】
この請求項2記載の発明によれば、挿入後は挟み込みプレートをベースブラケット対し正しく設置し、もう一方のねじを用いて挟み込むことで壁に固定することができる。ここで重要となるのが長孔の位置および角度関係である。長孔の位置は、挟み込みプレートの上下1対のねじ間距離に対し、長孔の最も外側となる位置に合わせることである。上下2箇所のねじをねじ込む際、ねじ間距離は挟み込みプレートのねじ間距離に依存するため、締め込むと、ベースブラケットの貫通孔に対するねじ位置は長孔の最も外側位置へ誘導される。つまり、挟み込みプレートの最も外側への移動は埋込孔の周囲面積を最も広く挟み込むことができ、これは挟み込み強度を得るための最適な位置関係となる。
【0011】
一方、同じ長孔でも孔角度が、例えば水平方向の場合、ねじ締込みの際、挟み込みプレートは位置が定まらず中央へ移動し挟み込み強度を得る最適な位置へ留めることができない。また、長孔でも孔角度が垂直方向の場合、挟み込みプレートが接続されたねじを金属フレーム中央に向け傾けることができないため挿入性の改善が見込めない結果となってしまう。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、器具本体を固定するためのベースブラケットを施工壁面に保持するものであって、その保持強度を得るために左右2箇所に設置した挟み込みプレートを利用した挟み込み構造において、上下1対に設けたベースブラケットの貫通孔の片側を長孔にし、適切な位置へ、角度へ設置することで、挟み込みプレートの壁裏への落下防止の機能を残したまま、壁裏への挿入性と挟み込み強度のを両方得ることを可能とした。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の製品固定の関係を示す斜視図である。
【図2】本発明の壁への固定構造を示す斜視図である。
【図3】本発明の施工状況を示す斜視図である。
【図4】本発明のベースブラケットに設けた長孔貫通孔を示す図である。
【図5】本発明の長孔貫通孔に伴うねじの傾きイメージを示す図である。
【図6】本発明に伴う挟み込みプレートの傾きイメージを示す斜視図である。
【図7】本発明のベースブラケット貫通孔と挟み込みプレートねじ孔の位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態を図1〜図7を用い詳細に説明する。
【0015】
図1に示すように石膏ボードおよびパーテーション等により構成される施工壁面1を所定寸法に切り欠き形成された埋込孔2が形成されており、埋込孔2の周囲を囲う形で施工壁面に固定されるベースブラケット10と、該ベースブラケット10に対し施工壁面1と反対側の面にベースブラケット10の一部と対向して重ね合わせた形で左右2箇所に結合される一対の挟み込みプレート11が取り付けられる。
【0016】
前記ベースブラケット10は、例えば板金を打抜き、曲げ加工を用い形状を形成するが、四隅に設けられた貫通孔にねじ12を挿入し、該ねじを施工壁面から操作することで該ベースブラケット10と前記挟み込みプレート11とで施工壁面を挟持することで該ペースブラケット10を施工壁面に固定し、このベースブラケット10に製品本体3を固定する際は、まず製品本体3をベースブラケット中央開口部10cへ挿入し、製品本体に設けたフランジ3aとベースブラケットに設けたフランジ10dとを製品本体固定ねじ5でねじ結合することで製品の固定が行える構造である。
【0017】
図2はベースブラケット10と挟み込みプレート11とで壁を挟み込むことで固定されることを示す。施工壁面と反対側に重ね合わせた形で設置される挟み込みプレート11は、例え板金を打抜き、ねじ加工を行い形状を形成するが、上下2箇所に設置されたねじ孔11aは前記ベースブラケット10の四隅に設けられた貫通孔と対となる位置に形成される。左右どちらかに縦方向にて組まれる挟み込みプレート11はベースブラケット10の左右片側の2箇所の孔をまずはねじ12を貫通させ、次に挟み込みプレート11の対となる位置のねじ孔11aに対しねじ込むことで、対となる上下2箇所のねじを締め込むことにより、ベースブラケット10が壁に固定される。挟み込んだ際、挟み込みプレート手前に凸形状に設置した折り返し部11dが施工壁面1へ食い込むことで、埋込孔2に対するベースブラケット10および挟み込みプレート11のズレが防止される。ベースブラケット10のズレ防止は、それに固定された製品本体3のズレ防止にもつながる。
【0018】
上記挟み込み構造は家庭用コンセントなど電装機器周辺の公知の固定構造として広く用いられてきた。今回、製品を固定する構造としてこの基本構造を応用するが、コンセントと比べ大きく、重量のある製品の固定は常に加わる自重だけでなく、操作時のくり返し荷重にも耐える必要があるため、強度、信頼性を必要とする製品固定において左右2箇所へ設置し、ベースブラケット10の四隅を固定する構造として必要であると考えた。
【0019】
実際の施工の流れを図3で説明する。施工壁面1に設けられた埋込孔2の周囲を囲う形で施工壁面に固定するベースブラケット10において、壁面を挟み込むため挟み込みプレート11を壁裏へ埋込孔2より挿入させ、対となるベースブラケットの孔10a、10bと挟み込みプレート11aとの位置を合わせながらねじ12をねじ込む方法が通常であるが、この方法であると施工の際、挟み込みプレート11を壁面裏へ落としてしまう可能性が多く生じる。挟み込みプレートを落とすと代用部品がないため、作業が中断し部品の取り寄せなど重大な問題が生じる。
【0020】
この問題を解決するため、挟み込みプレート11と対となるねじ孔11aの片側のみを先に一部(数回転)ねじ込み、挟み込みプレート11がねじ12を介してベースブラケット10とつながった状態で、施工壁面1に設けられた埋込孔2へ挿入させ、挟み込みプレート11の位置を合せ、対となるもう一方のねじ12をねじ込むことで、挟み込みプレート11の壁裏への落下を抑制することができ、前記コンセントの施工でも同様の方法が取られてきた。
【0021】
しかしながら、今回採用する挟み構造は製品を、強度、信頼性の考えより左右2箇所の固定構造としたが、2箇所の挟み込みプレート11とベースブラケットとがつながった状態では埋込孔2へ挟み込みプレート11を挿入させる際、挟み込みプレート11が埋込孔2と干渉し、挿入し難い、最悪は挿入できない問題が発生した。問題を解決させるためには埋込孔2を大きくする、もしくは挟み込みプレート11を小さくするなどの方法は容易に考えられるが、壁を挟み込む強度は壁を挟み込める面積に比例するため、強度を求める製品固定において安易に行うことができない。つまり、挟み込み強度と挿入性はトレードオフの関係となり、左右2箇所の固定構造において改善が必要であった。因みに、コンセントの固定構造である1箇所の挟み込み構造では、挟み込みプレートを埋込孔中央へ移動させ、壁裏へ挿入、元の位置へ戻し固定するなど左右への動きが行えるため1箇所の固定構造では今回の問題は発生してこない。
【0022】
上記問題を解決する方法が本発明であり図4に示す。前記挟み込みプレートの少なくとも一つを固定するための一対のねじが挿通される前記ベースブラケット10内周の左右夫々の縦辺上下に設けられた一対のねじ貫通孔において、一方のねじ貫通孔はそこを挿通するねじが傾斜できるように長孔形状10bに形成させることを特徴としており、もう一方のねじ孔10aはねじの外形と略等しい円形状に形成されている。図5に前記ベースブラケット10に設けた長孔貫通孔10bによるねじ12の傾きのイメージ図を示す。ねじ12に対するベースブラケット10の孔は貫通孔であり、貫通孔の径はねじ12の外形と略等しく隙間が小さいため、ねじ12を傾けることを試みても傾きは小さい。それに比べ、長孔貫通孔10bとすると、長孔の長さに比例してねじ12を傾けることを可能にする。
【0023】
図6に長孔貫通孔10bのねじ12の傾き、それに伴う挟み込みプレート11の傾きの様子を示す。図より容易に理解できるが、長孔貫通孔10bの向きに合わせねじ12を傾けると、ねじ12の先端にねじ込まれた挟み込みプレート11の傾きが大きくなり、ベースブラケット10の内側まで倒れ込む。つまり、埋込孔2に対し、ベースブラケット10とつながった左右2箇所の挟み込みプレート11が内側まで入り込むため、容易に挟み込みプレート11を壁裏側まで挿入させることができる。
【0024】
長孔貫通孔10bの位置は、対応する挟み込みプレート11のねじ孔11aの間隔であるねじ間距離15に対し、長孔貫通孔10bの縦辺側に寄った最も外側となる位置と円形の貫通孔10aとの間隔が一致するよう配置する。また、長孔貫通孔10bの向き(角度)は、ベースブラケット10の下辺から縦辺方向に所定角度傾斜して形成されている。この傾斜する角度としては、ベースブラケット10の下辺から縦辺方向に向けて約45度の向きに形勢される。長孔貫通孔10bの傾斜角度によって挟み込みプレート11をベースブラケット中央開口10cに向け大きく傾けることができ、壁裏への落下防止のためねじ12の先端にねじ込まれた挟み込みプレート11を落下防止の対応を残したまま最も効率よく傾けることを可能とする。
【0025】
図7はベースブラケット10の貫通孔10a,10bと挟み込みプレー11のねじ孔11aの位置関係を示す。挟み込みプレート11を壁裏へ挿入の後、挟み込みプレート11の位置を合せ、対となるもう一方のねじ孔11aに新たなねじ12をねじ込むが、挟み込みプレート11のねじ孔11aに対する上下一対の2箇所のねじ12をねじ込む際、ベースブラケット10の貫通孔10aと10bにおける縦辺における間隔は、、挟み込みプレート11のねじ間距離15に合わせているため、当然ねじ込めば長孔形状10bの配置は最も外側となる縦辺方向へ誘導される。この誘導された位置は挟み込みプレート11を壁裏の最も外側となる位置に導くことができ、つまり、埋込孔2の周辺に対し、挟み込む壁裏面積を最大にする位置に確実に導くことを意味するため、これは製品固定の際に必要とした挟み込み強度と信頼性を最も得る位置へ導くことにつながる。
【0026】
以上により本発明によれば、製品を固定する挟み込み強度を得るために左右2箇所に設置した挟み込み構造において、ベースブラケット10に設けた貫通孔の一方を長孔形状10bにし、適切な位置、角度へ設置することで、挟み込みプレート11の壁裏への落下防止の方法を残したまま、壁裏への挿入性と挟み込み強度のを両方得ることを可能とした。
【符号の説明】
【0027】
1 施工壁面
2 埋込孔
3 製品本体
3a 製品本体フランジ
4 製品カバー
5 製品本体固定ねじ
10 ベースブラケット
10a 貫通孔(円形状)
10b 貫通孔(長孔形状)
10c ベースブラケット中央開口
10d ベースブラケットフランジ
11 挟み込みプレート
11a ねじ孔
11d 折り返し爪部
12 ねじ
15 ねじ間距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
施工壁面に設けられた矩形形状の埋込孔の周囲を囲む枠状のベースブラケットと、施工壁面の裏面において前記ベースブラケットの左右夫々の縦辺に沿って対向する一対の挟み込みプレートと、前記ベースブラケットに取付けられる器具本体とを備え、前記ベースブラケット内周の左右夫々の縦辺上下に設けられた一対の貫通孔にねじを挿入し、該ねじを前記挟み込みプレートのねじ孔に螺合することで、前記ベースブラケットと前記挟み込みプレートとで施工壁面を挟持する壁埋込形器具であって、
前記ベースブラケット内周の左右夫々の縦辺上下に設けられた一対の貫通孔において、一方の貫通孔はそこを挿通するねじが傾斜できるように長孔形状に形成されおり、他方の貫通孔はねじの外形と略等しい円形状に形成されていることを特徴とする壁埋込形器具。
【請求項2】
前記長孔形状に形成された貫通孔は、前記ベースブラケットの下辺から縦辺方向に所定角度傾斜して形成されており、前記ベースブラケットの一対の貫通孔の縦辺側における間隔と前記前記挟み込みプレートの一対のねじ孔の間隔とが等しいことを特徴とする請求項1記載の壁埋込形器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−134623(P2012−134623A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283073(P2010−283073)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】