説明

壁式構造の枠材、壁パネルおよび壁式構造

【課題】要求耐力に応じた適切な枠材の断面設定が可能となりコスト低減を図ることができる壁式構造の枠材、壁パネルおよび壁式構造を提供すること。
【解決手段】角形鋼管からなる主枠材71に少なくとも2本の副枠材72,73を固定して枠材7を構成することで、枠材7の耐力を容易に向上させつつ耐力調節の幅を拡げることができる。従って、主枠材71の幅寸法や板厚寸法を過大にしなくても副枠材72,73による耐力向上が見込めるので、主枠材71としては上下階で共通した角形鋼管を用いることができるとともに、大きな耐力が必要とされる下階において副枠材72,73による大幅な耐力向上を図る、一方、上階では、副枠材72,73の断面寸法や板厚寸法を小さくしたり副枠材72,73を省略したりすることで、要求耐力に応じた断面設定が可能となって部材コストの低減を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁式構造の枠材、壁パネルおよび壁式構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ツーバイフォー構造や木質壁パネル構造、薄板軽量形鋼造などの枠組壁工法建築物において、木材や形鋼からなる枠組材に面材である鋼製折板を固定した耐力壁(壁式構造)が一般的に用いられている。そして、枠組壁工法建築物では、地震や風等により建築物に作用する水平力(外力)に対し、耐力壁の面材がせん断力として水平力を負担することで、建物全体としての水平耐力が確保されるようになっている。
このような耐力壁を用いた建築物では一般的に、最下層の耐力壁の枠組材脚部がホールダウン金物等を介して基礎のアンカーボルトに連結され(例えば、特許文献1参照)、上下階の耐力壁の枠組材同士がバイパス金物等を介して互いに連結され(例えば、特許文献2参照)ており、建物自重等の鉛直力が枠組材を介して基礎まで伝達されるとともに、地震時等に耐力壁が負担したせん断力の鉛直成分も枠組材および金物を介して基礎まで伝達されるようになっている。また、耐力壁の枠組材は、1本のリップ溝形鋼や2本のリップ溝形鋼を背中合わせに組み合わせたものとなっており、これらの溝形鋼のフランジに鋼製折板がねじ止め固定されるとともに、溝形鋼内部におけるウェブの側面にホールダウン金物やバイパス金物がねじ止め固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4167609号公報
【特許文献2】特許第4364177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1、2に記載された従来の壁式構造では、耐力壁において枠組材の耐力を高める場合、溝形鋼の板厚寸法を大きくするか、溝形鋼の本数を増やすことが考えられる。しかしながら、板厚寸法を大きくし過ぎると折板を固定するねじが螺合できなかったり、せん断力負担時にねじの倒れが拘束されることからねじが破断しやすくなったりなどの不都合が生じ、また、溝形鋼の本数を増やしたとしても、各溝形鋼同士での応力伝達が不十分であれば、耐力向上が見込めないため、多数のねじ等で互いに固定したり、溶接固定したりなど、構造が複雑化してしまうという問題を生じる。一方、複数階建ての建築物において、下階における耐力壁の枠組材には高い耐力が要求されるものの、上階における耐力壁の枠組材にはさほど高い耐力が不要であるため、上階の枠組材である溝形鋼の板厚寸法を小さく設定することが考えられるが、板厚寸法を小さくし過ぎると折板を固定するねじが抜け出すなどの不都合が生じる。以上のように、従来の構造では、要求耐力に応じた適切な枠組材の断面設定が困難であり、部材コストの低減に制約を受けることから、これらの課題を解決可能な壁式構造の開発が求められていた。
【0005】
本発明の目的は、要求耐力に応じた適切な枠材の断面設定が可能となりコスト低減を図ることができる壁式構造の枠材、壁パネルおよび壁式構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の壁式構造の枠材は、角形鋼管からなり上下に延びる主枠材と、
前記主枠材の4側面のうち少なくとも2側面に沿って上下に延びる少なくとも2本の副枠材とを備え、
前記副枠材は、前記主枠材の側面に当接して固定されるウェブと、このウェブの両端部に連続して前記主枠材から離れる方向に延びる一対のフランジとを有していることを特徴とする。
【0007】
以上の本発明によれば、角形鋼管からなる主枠材に少なくとも2本の副枠材を固定することで、これらの主枠材と副枠材を組み合わせて構成した枠材の耐力を容易に向上させることができる。従って、主枠材の幅寸法や板厚寸法を過大にしなくても副枠材による耐力向上が見込めるので、主枠材としては下階から上階まで必要な範囲で共通した角形鋼管を用いることができるとともに、大きな耐力が必要とされる下階において副枠材による大幅な耐力向上を図ることができる。一方、大きな耐力が不要な上階では、副枠材の断面寸法や板厚寸法を小さくしたり副枠材を省略したりすることで、要求耐力に応じた適切な枠材の断面設定が可能となり、部材コストの低減を図ることができる。
【0008】
この際、本発明の壁式構造の枠材では、前記副枠材の内部には、上下階の当該枠材同士を接合するかまたは基礎アンカー材に接合する接合金物が配置され、この接合金物は、前記副枠材のウェブを貫通するとともに前記主枠材の側面に固着する固着具を介して固定されていることが好ましい。
このような構成によれば、副枠材の内部に設ける接合金物を固定する固着具を副枠材のウェブに貫通させて主枠材の側面に固着することで、固着具による接合金物の固定とともに、副枠材と主枠材との固定を兼用することができ、構造の複雑化を招くことなく接合金物、副枠材および主枠材を一体化し、これらの各部材間で応力を適切に伝達させることができる。
【0009】
さらに、本発明の壁式構造の枠材では、前記壁式構造を構成する面材が前記主枠材の側面にねじ止め固定されていることが好ましい。
このような構成によれば、主枠材の側面に面材をねじ止め固定することで、面材が負担したせん断力を主枠材に確実に伝達することができる。そして、前述したように主枠材の板厚寸法を過大にしなくても副枠材による耐力向上が見込めるので、面材を固定するねじ止めに適した範囲で主枠材の板厚を設定しておけばよいため、ねじ止めが不能になったりねじが破断しやすくなったり、逆にねじが抜け出しやすくなったりなどの不具合を防止することができる。
【0010】
また、本発明の壁式構造の枠材では、上下階に設けられる当該枠材における前記主枠材は、互いに同一の幅寸法を有しかつ図心が一致して配置されていることが好ましい。
このような構成によれば、上下階において主枠材を同一幅で通して配置することにより、上下の主枠材間での応力伝達がスムーズに行えるとともに、周辺部材との納まり等も共通化することができる。
【0011】
一方、本発明の壁パネルは、前述の枠材と、この枠材を構成する主枠材の側面にねじ止め固定される面材とを備えたことを特徴とする。
このような構成によれば、前述のように、面材が負担したせん断力を主枠材に確実に伝達可能な壁パネルを構成することができ、主枠材の板厚寸法を過大にしなくてもよいことから、ねじ止めが不能になったりねじが破断しやすくなったりすることが防止でき、逆に主枠材の板厚寸法を適宜に設定しておくことで、ねじの抜け出しを防止することができる。
【0012】
また、本発明の壁式構造は、前記いずれかの枠材を備えた壁式構造であって、上下階に設けられる前記枠材を構成する主枠材は、互いに同一の幅寸法を有しかつ図心が一致して配置されていることを特徴とする。
この際、本発明の壁式構造では、前記主枠材および前記少なくとも2本の副枠材を有した前記枠材が下階に設けられ、これよりも上階においては、前記枠材に対して前記副枠材の板厚寸法が小さく設定されるか、当該副枠材の幅寸法が小さく設定されるか、または当該副枠材の少なくとも1本が省略された上階用枠材が設けられていることが好ましい。
このような壁式構造によれば、主枠材としては下階から上階まで必要な範囲で共通した角形鋼管を用いることができるとともに、大きな耐力が必要とされる下階において副枠材による大幅な耐力向上を図ることができ、大きな耐力が不要な上階では、副枠材の断面寸法や板厚寸法が小さいあるいは副枠材を省略した上階用枠材を用いることで、要求耐力に応じた枠材の断面設定が可能となり、部材コストの低減を図ることができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のような本発明の壁式構造の枠材、壁パネルおよび壁式構造によれば、要求耐力に応じた枠材の耐力設定が容易にでき、各部材間で確実に応力伝達できるとともに部材の無駄を省いて低コストな壁式構造を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る壁式構造を備えた建築物を示す側面図である。
【図2】前記壁式構造の枠材を示す横断面図であり、図1にII−II線で示す断面図である。
【図3】前記壁式構造の枠材を示す横断面図であり、図1にIII−III線で示す断面図である。
【図4】前記壁式構造の枠材を示す横断面図であり、図1にIV−IV線で示す断面図である。
【図5】前記壁式構造の枠材を示す横断面図であり、図1にV−V線で示す断面図である。
【図6】前記壁式構造の枠材の変形例を示す横断面図である。
【図7】前記壁式構造の枠材の他の変形例を示す横断面図である。
【図8】前記壁式構造の枠材のさらに他の変形例を示す横断面図である。
【図9】前記壁式構造の枠材のさらに他の変形例を示す横断面図である。
【図10】前記壁式構造の枠材のさらに他の変形例を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る建築物1の概略構成を示す側面図であり、建築物1は、地盤上に構築された鉄筋コンクリート製の基礎2と、この基礎2上に構築される4階建ての建物本体3とを備え、建物本体3が壁式構造を有した薄板軽量形鋼造の住宅(スチールハウス)などに好適な建築物である。また、建物本体3は、梁や床パネル4によって各階が上下に仕切られるとともに、各階における外壁位置には、耐力壁として機能する耐力壁部5と、窓などが取り付けられる開口部6とが設けられている。
【0016】
耐力壁部5は、上下に延びる枠材7と、枠材7の屋外側に固定される面材としての鋼製折板8とを有して構成され、1階における枠材7の下端部は、接合金物であるホールダウン金物9を介して基礎2のアンカーボルト(基礎アンカー材)2Aに接合され、床パネル4を挟んで上下に隣り合う上下階の枠材7は、接合金物であるバイパス金物10および床パネル4を貫通するボルト11を介して互いに接合されている。鋼製折板8は、板厚が0.5mm〜1.0mm程度の鋼板を折り曲げて形成され、交互に設けられて左右に延びる山部と谷部とを有し、その谷部が枠材7にねじ8Aによって固定されている。すなわち、鋼製折板8は、枠材7を構成する主枠材71および副枠材72,73(後述)よりも板厚寸法が小さい鋼板から形成され、例えば、主枠材71および副枠材72,73が板厚1.0mm以上の鋼材から構成されるのに対して、鋼製折板8は、1.0mm以下(0.6mm程度)の鋼板から形成されていることが望ましい。
枠材7は、1階〜4階の各階において構成が相違しており、以下、図2〜図5に基づいて、各階の枠材7A〜7Dの構成やホールダウン金物9およびバイパス金物10について説明する。
【0017】
図2に示すように、1階の枠材7Aは、薄板軽量形鋼の角形鋼管からなる主枠材71と、薄板軽量のリップ溝形鋼からなる一対の副枠材72,73とを有して構成されている。すなわち、主枠材71は、屋内外方向に対向する一対の第1側面部71A,71Aと、外壁面に沿った左右方向に対向する一対の第2側面部71B,71Bとを有し、例えば、板厚が2.2mmであり、第1側面部71Aの幅寸法が50mm、第2側面部71Bの幅寸法が100mmに設定された長方形状角形鋼管である。副枠材72,73は、それぞれ主枠材71の第2側面部71Bに沿って延びるウェブ72A,73Aと、この72A,73Aの屋内外両端部に連続して主枠材71から離れる方向に延びる一対のフランジ72B,73Bと、フランジ72B,73Bの先端から折れ曲がったリップ部72C,73Cとを有し、例えば、板厚が3.0mmであり、ウェブ72A,73Aの幅寸法が略100mm、フランジ72B,73Bの幅寸法が略75mmに設定された断面C字形の形鋼である。
【0018】
1階の枠材7Aにおいて、主枠材71の屋外側の第1側面部71Aに鋼製折板8がねじ8Aによって固定されている。また、開口部6側(図2中、左側)の副枠材72には、板厚1.0mm程度の薄鋼板を断面コ字形に曲げ加工した窓枠固定材74が固定され、この窓枠固定材74に木製の窓枠下地材75が固定されている。そして、ホールダウン金物9は、左右両側の副枠材72,73の内部に設けられるとともに、固着具としてのねじ9Aによって枠材7Aに固定されている。ねじ9Aは、屋内外方向に2列かつ上下方向に複数段(例えば、5段〜10段程度)で設けられ、ホールダウン金物9のねじ穴に挿通されるとともに、副枠材72,73のウェブ72A,73Aを貫通し、主枠材71の第2側面部71Bに螺合して固着することで、ホールダウン金物9を枠材7Aに固定するようになっている。なお、図示を省略するが、1階の枠材7Aの上端部において、2個のバイパス金物10は、ホールダウン金物9と同様のねじ10A(後述)で枠材7Aに固定されている。このように、主枠材71と副枠材72,73とは、ホールダウン金物9およびバイパス金物10の固着具である複数のねじ9A,10Aによって互いに固定されて一体化されている。
【0019】
図3に示すように、2階の枠材7Bは、1階の枠材7Aと略同様に、薄板軽量形鋼の角形鋼管からなる主枠材71と、薄板軽量のリップ溝形鋼からなる一対の副枠材72,73とを有し、開口部6側に窓枠固定材74および窓枠下地材75が固定されている。2階の主枠材71は、1階の主枠材71と同一の断面(例えば、板厚が2.2mmであり、第1側面部71Aの幅寸法が50mm、第2側面部71Bの幅寸法が100mm)を有した長方形状角形鋼管である。一方、2階の副枠材72,73は、1階の副枠材72,73とは異なる断面を有し、例えば、板厚が2.2mmであり、ウェブ72A,73Aの幅寸法が略100mm、フランジ72B,73Bの幅寸法が略50mmに設定された断面C字形の形鋼である。2階の枠材7Bにおいても、主枠材71の屋外側の第1側面部71Aに鋼製折板8がねじ8Aによって固定されている。そして、バイパス金物10は、左右両側の副枠材72,73の内部に設けられるとともに、固着具としてのねじ10Aによって枠材7Bに固定されている。ねじ10Aは、屋内外方向に2列かつ上下方向に複数段(例えば、5段〜10段程度)で設けられ、バイパス金物10のねじ穴に挿通されるとともに、副枠材72,73のウェブ72A,73Aを貫通し、主枠材71の第2側面部71Bに螺合して固着することで、バイパス金物10を枠材7Bに固定するようになっている。このように、主枠材71と副枠材72,73とは、バイパス金物10の固着具である複数のねじ10Aによって互いに固定されて一体化されている。また、窓枠固定材74は、そのフランジに切り込みを入れて折り曲げた爪部74Aを屋内外一対かつ高さ方向の2箇所に有し、これらの爪部74Aを副枠材72のリップ部72Cに当接させることで位置決めされ、位置決めされた状態で副枠材72に固定されている。
【0020】
図4に示すように、3階の枠材7Cは、薄板軽量形鋼の角形鋼管からなる主枠材71と、薄板軽量のリップ溝形鋼からなる1本の副枠材73とを有し、1、2階の枠材7A,7Bから副枠材72が省略されるとともに、主枠材71の開口部6側に窓枠固定材74および窓枠下地材75が固定されている。3階の主枠材71は、1、2階の主枠材71とは異なる板厚(例えば、板厚が1.6mm)で、同一形状(第1側面部71Aの幅寸法が50mm、第2側面部71Bの幅寸法が100mm)を有した長方形状角形鋼管である。3階の副枠材73は、1、2階の副枠材73とは異なる断面を有し、例えば、板厚が1.0mmであり、ウェブ73Aの幅寸法が略100mm、フランジ73Bの幅寸法が略40mmに設定された断面C字形の形鋼である。3階の枠材7Cにおいても、主枠材71の屋外側の第1側面部71Aに鋼製折板8がねじ8Aによって固定され、バイパス金物10がねじ10Aによって枠材7Cに固定され、複数のねじ10Aによって主枠材71と副枠材73とが互いに固定されて一体化されている。
【0021】
図5に示すように、4階の枠材7Dは、薄板軽量形鋼の角形鋼管からなる主枠材71のみからなり、3階の枠材7Cからさらに副枠材73が省略され、主枠材71の開口部6側に窓枠固定材74および窓枠下地材75が固定されている。4階の主枠材71は、1〜3階の主枠材71とは異なる板厚(例えば、板厚が1.2mm)で、同一形状(第1側面部71Aの幅寸法が50mm、第2側面部71Bの幅寸法が100mm)を有した長方形状角形鋼管である。そして、4階の枠材7Dにおいても、主枠材71の屋外側の第1側面部71Aに鋼製折板8がねじ8Aによって固定されている。一方、4階の枠材7Dにおいては、バイパス金物10がねじ10Aによって主枠材71の第2側面部71Bに直接固定されている。
以上のように、1階〜4階の枠材7A〜7Dにおいては、下階から上階に向かって主枠材71の板厚が小さくなるように適宜に調節され、さらに、一対の副枠材72,73の一方または両方が省略されるとともに、副枠材72,73の断面幅や板厚が小さくなるように適宜に調節されている。従って、開口部6側における窓との収まりや鋼製折板8の固定構造を共通にしたままで、枠材7A〜7Dの耐力が下階から上階に向かって徐々に小さくなるように設定されている。
【0022】
以上の本実施形態によれば、以下のような効果が得られる。
すなわち、各階の枠材7A〜7Dにおいて、主枠材71の板厚や、副枠材72,73の数、断面幅、板厚などを適宜に設定することで、要求耐力が大きな下階における枠材7Aの耐力を増加させつつ、要求耐力が徐々に小さくなる上階における枠材7B〜7Dの耐力を適宜に調節することができる。さらに、枠材7A〜7Dの耐力を上階に向かって小さくする際に、主枠材71の断面寸法(第1および第2側面部71A,71Bの幅寸法)を変更せずに、上下階に主枠材71を通して配置することで、ホールダウン金物9およびバイパス金物10の接合重心位置、すなわち、アンカーボルト2Aおよびボルト11の芯を上下階に渡って通すことができ、円滑な荷重伝達を実現することができる。
【0023】
また、ホールダウン金物9やバイパス金物10の固着具である複数のねじ9A,10Aによって主枠材71と副枠材72,73とが一体化されることで、主枠材71と副枠材72,73との一体性を高めることができ、これらの間での荷重伝達を確実にすることができる。また、各階の主枠材71の第1側面部71Aに鋼製折板8がねじ8Aで固定されることで、上下階に渡って鋼製折板8の固定位置を通すことができ、地震などの水平力が作用した際の鋼製折板8から枠材7A〜7Dへの荷重伝達ならびに上下階の荷重伝達を円滑にすることができる。さらに、副枠材72,73の数、断面幅、板厚などによって枠材7A〜7Dの耐力調節が行えることから、主枠材71の板厚を上下階でさほど大きく変動させる必要がなく、所定の板厚範囲に設定することができるので、鋼製折板8を固定するねじ8Aと主枠材71の第1側面部71Aとの固着強度を確保しつつ、鋼製折板8が水平力を負担した際の第1側面部71Aに対するねじ8Aの適度な倒れを確保することもでき、耐力壁としての良好なせん断耐力および変形性能が実現できる。
【0024】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
例えば、前記実施形態においては、4階建ての枠組壁工法の建築物1に本発明の枠材7A〜7Dおよび鋼製折板8を設置するものとしたが、建築物としては、3階建て以下のものや5階建て以上のものでもよく、また建築物の用途も特に限定されない。さらに、耐力壁を構成する面材としては、鋼製折板8から構成されたものに限らず、構造用合板やセメント成形板や石膏ボード等の各種板材が使用可能である。
また、枠材7における主枠材と副枠材の構成および面材の固定構造としては、前記実施形態で説明したものに限らず、以下の図6〜図10に示すような各種の変形例に係る枠材7E〜7Iが利用可能である。
【0025】
図6において、枠材7Eは、二方向の鋼製折板8がT字形に交差する交差部に設けられ、長方形状角形鋼管からなる主枠材71と、リップ溝形鋼からなる3本の副枠材72,73,76とを有して構成されている。主枠材71は、前記実施形態と同様に、一対の第1側面部71A,71Aと、一対の第2側面部71B,71Bとを有して構成されている。副枠材72,73は、前記実施形態と同様に、それぞれ主枠材71の第2側面部71Bに沿ったウェブ72A,73Aと、一対のフランジ72B,73Bと、リップ部72C,73Cとを有して構成され、副枠材76は、主枠材71の第1側面部71Aに沿ったウェブ76Aと、一対のフランジ76Bと、リップ部76Cとを有して構成されている。また、主枠材71の第2側面部71Bの幅寸法は、副枠材72,73のウェブ72A,73Aの幅寸法よりも大きく形成され、主枠材71の第1側面部71Aおよび副枠材76のウェブ76Aは、略同一の幅寸法に形成されている。そして、副枠材72,73の内部に設けられたホールダウン金物9は、固着具としてのねじ9Aによって副枠材72,73のウェブ72A,73Aおよび主枠材71の第2側面部71Bに固定されている。また、副枠材76の内部に設けられたホールダウン金物9は、固着具としてのねじ9Aによって副枠材76のウェブ76Aおよび主枠材71の第1側面部71Aに固定されている。
【0026】
さらに、二方向の鋼製折板8は、図6の下側にて左右に延びる2枚と図6の左側にて上下に延びる1枚との計3枚で構成されている。左右に延びる2枚の鋼製折板8のうち、副枠材72に沿った鋼製折板8は、ねじ8Aによって主枠材71の第1側面部71Aに固定され、副枠材73に沿った鋼製折板8は、ねじ8Aによって主枠材71の第1側面部71Aに固定されている。一方、図6の上下に延びる鋼製折板8は、副枠材76に沿って副枠材72近傍まで延びるとともに、ねじ8Aによって主枠材71の第2側面部71Bに固定されている。このように二方向3枚の鋼製折板8の全てが主枠材71に固定されることで、鋼製折板8が負担するせん断力を主枠材71に集約的させて伝達することができ、荷重伝達を円滑かつ確実にすることができる。
【0027】
図7において、枠材7Fは、図6の枠材7Eと略同様の構成を備えるものの、主枠材71の第1側面部71Aの幅寸法が副枠材76のウェブ76Aの幅寸法よりも小さく形成され、副枠材76のウェブ76Aと副枠材73のフランジ73Bとの間に接続部材77が設けられている点が枠材7Eと相違する。接続部材77は、リップ溝形鋼からなり、そのウェブが主枠材71の第2側面部71Bにねじ77Aで固定され、この接続部材77のフランジにホールダウン金物9のねじ9Aが螺合することで、副枠材76が接続部材77を介して主枠材71に一体化されている。
【0028】
図8において、枠材7Gは、二方向の鋼製折板8がL字形に交差する交差部のうち出隅部に設けられ、略正方形状角形鋼管からなる主枠材71と、リップ溝形鋼からなる2本の副枠材72,73とを有して構成されている。主枠材71は、図中下側および左側の第1側面部71A,71Aと、これらに対向する図中上側および右側の第2側面部71B,71Bとを有して構成されている。副枠材72,73は、それぞれ主枠材71の第2側面部71Bに沿ったウェブ72A,73Aを有し、当該副枠材72,73の内部に設けられたホールダウン金物9のねじ9Aによって、ウェブ72A,73Aと第2側面部71Bとが固着されることで、副枠材72,73と主枠材71とが一体化されている。また、二方向の鋼製折板8のうち、図中上下に延びて副枠材72に沿った鋼製折板8は、ねじ8Aによって主枠材71の左側の第1側面部71Aに固定され、図中左右に延びて副枠材73に沿った鋼製折板8は、ねじ8Aによって主枠材71の下側の第1側面部71Aに固定されている。
【0029】
図9において、枠材7Hは、二方向の鋼製折板8がL字形に交差する交差部のうち入隅部に設けられ、略正方形状の1つの角部を凹ませた角形鋼管からなる主枠材71と、リップ溝形鋼からなる2本の副枠材72,73とを有して構成されている。主枠材71は、図中下側および左側の第1側面部71A,71Aと、これらに対向する図中上側および右側の第2側面部71B,71Bと、第2側面部71B,71B同士の角部をL字形に凹ませた第3側面部71C,71Cとを有して構成されている。副枠材72,73は、それぞれ主枠材71の第2側面部71Bに沿ったウェブ72A,73Aを有し、当該副枠材72,73の内部に設けられたホールダウン金物9のねじ9Aによって、ウェブ72A,73Aと第2側面部71Bとが固着されることで、副枠材72,73と主枠材71とが一体化されている。また、二方向の鋼製折板8は、それぞれねじ8Aによって主枠材71の第3側面部71Cに固定されている。
【0030】
図10において、枠材7Iは、二方向の鋼製折板8が十字形に交差する交差部に設けられ、長方形状角形鋼管からなる主枠材71と、リップ溝形鋼からなる2本の副枠材72,73とを有して構成されている。主枠材71は、図中上側および下側の第1側面部71A,71Aと、図中右側および左側の第2側面部71B,71Bとを有して構成されている。副枠材72,73は、それぞれ主枠材71の第2側面部71Bに沿ったウェブ72A,73Aを有して構成され、主枠材71の第2側面部71B,71Bは、ウェブ72A,73Aよりも大きな幅寸法を有し、ウェブ72A,73Aよりも図中上下に延びて設けられている。副枠材72,73は、その内部に設けられたホールダウン金物9のねじ9Aによって、ウェブ72A,73Aと第2側面部71Bとが固着されることで、副枠材72,73と主枠材71とが一体化されている。また、二方向の鋼製折板8のうち、図中左右に延びる2枚の鋼製折板8は、それぞれねじ8Aによって主枠材71の第1側面部71Aに固定され、図中上下に延びる2枚の鋼製折板8は、それぞれねじ8Aによって主枠材71の第2側面部71Bに固定されている。
【0031】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0032】
1…建築物、2…基礎、2A…アンカーボルト(基礎アンカー材)、7,7A,7B,7C,7D,7E,7F,7G,7H,7I…枠材、8…鋼製折板(面材)、8A…ねじ、9…ホールダウン金物(接合金物)、9A…ねじ(固着具)、10…バイパス金物(接合金物)、10A…ねじ(固着具)、71…主枠材、71A…第1側面部、71B…第2側面部、72,73,76…副枠材、72A,73A,76A…ウェブ、72B,73B,76B…フランジ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
角形鋼管からなり上下に延びる主枠材と、
前記主枠材の4側面のうち少なくとも2側面に沿って上下に延びる少なくとも2本の副枠材とを備え、
前記副枠材は、前記主枠材の側面に当接して固定されるウェブと、このウェブの両端部に連続して前記主枠材から離れる方向に延びる一対のフランジとを有していることを特徴とする壁式構造の枠材。
【請求項2】
請求項1に記載の壁式構造の枠材において、
前記副枠材の内部には、上下階の当該枠材同士を接合するかまたは基礎アンカー材に接合する接合金物が配置され、この接合金物は、前記副枠材のウェブを貫通するとともに前記主枠材の側面に固着する固着具を介して固定されていることを特徴とする壁式構造の枠材。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の壁式構造の枠材において、
前記壁式構造を構成する面材が前記主枠材の側面にねじ止め固定されていることを特徴とする壁式構造の枠材。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の壁式構造の枠材において、
上下階に設けられる当該枠材における前記主枠材は、互いに同一の幅寸法を有しかつ図心が一致して配置されていることを特徴とする壁式構造の枠材。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の枠材と、この枠材を構成する主枠材の側面にねじ止め固定される面材とを備えたことを特徴とする壁パネル。
【請求項6】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の枠材を備えた壁式構造であって、
上下階に設けられる前記枠材を構成する主枠材は、互いに同一の幅寸法を有しかつ図心が一致して配置されていることを特徴とする壁式構造。
【請求項7】
請求項6に記載の壁式構造において、
前記主枠材および前記少なくとも2本の副枠材を有した前記枠材が下階に設けられ、これよりも上階においては、前記枠材に対して前記副枠材の板厚寸法が小さく設定されるか、当該副枠材の幅寸法が小さく設定されるか、または当該副枠材の少なくとも1本が省略された上階用枠材が設けられていることを特徴とする壁式構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−122275(P2012−122275A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274738(P2010−274738)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】