説明

壁用断熱ユニットおよび壁断熱構造

【課題】外壁材を十分に支えることができ、かつ、建物の断熱効果を向上させて省エネルギー化を図ることを課題とする。
【解決手段】耐力面材2の内外両側には断熱材3,4がそれぞれ貼着されており、内側の断熱材3の所定箇所には壁躯体構造を構成する柱体である柱5、間柱6および横架材7を嵌合するための切欠き部8A,8B,8Cが形成されている壁用断熱ユニット1を提供する。また、該壁躯体構造の内側には内壁材10が固定されており、該該壁躯体構造の外側には上記の壁用断熱ユニット1が固定されており、該壁用断熱ユニット1の外側には胴縁12を介して外壁材13が固定されており、該壁躯体構造の柱体である柱5、間柱6および横架材7は該壁用断熱ユニット1の内側の断熱材3の切欠き部8A,8B,8Cに嵌合されている壁断熱構造9を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建物の壁用断熱ユニットおよび該壁用断熱ユニットを用いた建物の壁断熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の外断熱壁構造として、建物の躯体の外壁面上に断熱材層を設け、さらにその上に外壁材仕上げ材を設置する外断熱壁構造が一般に提供されている(特許文献1〜3参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−002747号公報(第4−5頁、第1図)
【特許文献2】特許第3215826号公報
【特許文献3】特開2004−52362号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記従来の構成では、建物の断熱効果を向上させて省エネルギー化を図るべく断熱材層を厚くしようとすると、該断熱材層を厚くした分だけ該建物の木構造躯体と該外壁仕上げ材との間隔が大きくなり、該建物の躯体に該外壁仕上げ材を取付けた場合、該外壁仕上げ材の重みを支えることが困難になるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するための手段として、耐力面材2の内外両側には断熱材3,4がそれぞれ貼着されており、外側の断熱材4は該耐力面材2と縦横同寸法に設定され、内側の断熱材3の所定箇所には壁躯体構造を構成する柱体5,6を嵌合するための切欠き部8A,8B,8Cが形成されている壁用断熱ユニット1を提供するものである。
また本発明では、壁躯体構造の内側には内壁材10が固定されており、該壁躯体構造の外側には請求項1に記載の壁用断熱ユニット1が固定されており、該壁用断熱ユニット1の外側には胴縁12を介して外壁材13が固定されている構成であって、該壁躯体構造を構成する柱体5,6は該壁用断熱ユニット1の内側の断熱材3の切欠き部8A,8B,8Cに嵌合されている壁断熱構造9が提供される。
該壁用断熱ユニット1は締結材11によって該柱体5,6に固定されており、該締結材11の頭部14は該耐力面材2の外側表面に達していることが望ましく、また該締結材11は上下二段の頭部14A,14Bを有する釘であり、該釘11は下側の頭部11Aが該耐力面材2の外側表面にまで達していることが望ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明の壁用断熱ユニット1および壁断熱構造9では、耐力面材2の内外両側に断熱材3,4がそれぞれ貼着され、内側の断熱材3の切欠き部8A,8B,8Cに壁躯体構造を構成する柱体5,6が嵌合されているので、建物の断熱効果を向上させて省エネルギー化を図るために断熱材3,4の厚みを増加させる場合に、断熱材3,4の厚みの増加分を内側の断熱材3と外側の断熱材4とに分けることができ、外側の断熱材4の厚みの増加分を1/2以下に低減することができる。
したがって、外側の断熱材4の厚みの増加分を低減させた分だけ壁躯体構造と外壁材13との間隔が大きくなることを抑えることができるため、壁躯体構造によって外壁材13を十分に支えることができるとともに、建物の断熱効果を向上させて省エネルギー化を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明を図1〜図6に示す一実施例によって説明する。
図1〜図3に示すように、壁用断熱ユニット1は、耐力面材2と、該耐力面材2の内外両側にそれぞれ貼着されている内側の断熱材3および外側の断熱材4とを有しており、該内側の断熱材3には、壁躯体構造を構成する柱5、間柱6、横梁材7、土台19等の柱体の柱5を嵌合するための切欠き部8Aが横方向両端(外周)に形成され、間柱6を嵌合するための切欠き部8Bが横方向中央(中通)に形成され、そして横架材7を嵌合するための切欠き部8C,8Cが上下両端(外周)に形成されている。なお、該内側の断熱材3に該切欠き部8A,8B,8Cを設ける位置は、建物の設計図のCADデータに基づいて設定されている。
【0008】
本実施例では、該耐力面材2としては、例えば合板、火山性ガラス質複層板(商品名:ダイライト(登録商標))、ケイカル板、MDF(中質繊維板)、OSB(オリエンテッドストランドボード)、パーティクルボード、ハードボード等の機械的強度の高い板材が使用される。
また、該断熱材3,4の材料としては、例えばポリスチレン発泡体やポリエチレン発泡体、ポリプロピレン発泡体、ポリウレタン発泡体等のプラスチック発泡体または繊維シート等の断熱性の高い材料が使用される。
【0009】
上記の壁用断熱ユニット1を用いた壁断熱構造9では、図6に示すように、壁躯体構造を構成する柱体である柱5、間柱6および横架材7の内側には内壁材10が固定されており、該柱5および間柱6の外側には壁用断熱ユニット1がビスまたは釘11によって固定されており、該柱5、間柱6および横架材7は該壁用断熱ユニット1の内側の断熱材3の切欠き部8A,8B,8Cにそれぞれ嵌合されている。そして、該壁用断熱ユニット1の外側には胴縁12が取り付けられており、該胴縁12を介して該壁用断熱ユニット1の外側には外壁材13が固定されている。
なお、該壁用断熱ユニット1は、該耐力面材2の外周において、柱5に対して100mm間隔、該耐力面材2の中通において間柱6に対して200mm間隔でビスまたは釘11によって固定されて耐力面材2として機能している。
【0010】
本実施例では、壁用断熱ユニット1を固定するためのビスまたは釘11の頭部14は外側の断熱材4を貫通して耐力面材2の外側表面まで達しており、それによって該壁用断熱ユニット1は十分な固定強度で柱5、間柱6および横架材7に固定されている。
【0011】
このようにビスまたは釘11の頭部14を耐力面材2の外側表面にまで達するように釘打ちを行なうには、ポンチあるいはエア釘打機でピストンが断熱材4の厚みに等しいかまたは若干長いものを使用する。また図7に示すような二重頭部14A,14Bを有する釘11Aを使用すると、断熱材4に深く頭部14Aを打込む必要がなくなるから釘打ちが容易になる。通常外側の頭部14Aは断熱材4の外側表面より10mm程度食い込んだ深さとする。
【0012】
また、該外側の断熱材4にできた貫通孔15にはコーキング16が充填されており、該コーキング16によって該貫通孔15の部分で断熱欠損が生じることが防止されている。
更に、該外側の断熱材4の外面において貫通孔15の開口部を覆うように防水テープ17が貼着されており、該防水テープ17によって十分な防水性が確保されている。
【0013】
上記の壁用断熱ユニット1を製造する場合には、まず、耐力面材2の内外両面にそれぞれ内側の断熱材3と外側の断熱材4を貼着し、その後、建物の設計図のCADデータがインプットされNC制御されたルーターや熱線切断機等の工作機械(図示せず)によって該内側の断熱材3の所定箇所を切除し、該内側の断熱材3に切欠き部8A,8B,8Cを形成する(図1、図3参照)。
【0014】
そして、上記の壁用断熱ユニット1を用いて壁断熱構造9を構築する場合には、まず、図4に示すように、壁用断熱ユニット1と同様の耐力面材2Aの外側に断熱材4Aが貼着された受材18を建物の柱体である土台19や横架材7の所定位置に、壁用断熱ユニット1の場合と同様にしてビスまたは釘(図示せず)によって固定する。
【0015】
つぎに、図5に示すように、壁用断熱ユニット1の内側の断熱材3の切欠き部8A,8B,8Cを柱5、間柱6および横架材7に嵌合し、前記したように該壁用断熱ユニット1を該柱5、間柱6および横架材7の外側にビスまたは釘11によって固定する。そして、該外側の断熱材4にできた貫通孔15にコーキング16を充填し、該外側の断熱材4の外面において貫通孔15の開口部を覆うように防水テープ17を貼着する。
このとき、該壁用断熱ユニット1の耐力面材2と外側の断熱材4の下部は該受材18によって支持されるとともに、該壁用断熱ユニット1の内側の断熱材3の下部は横架材7によって支持されている(図4参照)。
【0016】
最後に、図6に示すように、該壁用断熱ユニット1の外側に胴縁12を取り付け、該胴縁12を介して該壁用断熱ユニット1の外側に外壁材13を取付け固定して、壁用断熱ユニット1を用いた壁断熱構造9の構築が完了する。
【0017】
上記のように、本実施例の壁用断熱ユニット1および壁断熱構造9では、耐力面材2の内外両側に断熱材3,4がそれぞれ貼着され、内側の断熱材3の切欠き部8A,8B,8Cに壁躯体構造を構成する柱体の柱5、間柱6および横架材7を嵌合するので、建物の断熱効果を向上させて省エネルギー化を図るために断熱材3,4の厚みを増加させる場合に、断熱材3,4の厚みの増加分を内側の断熱材3と外側の断熱材4とに分けることができ、外側の断熱材4の厚みの増加分を1/2以下に低減することができる。
【0018】
したがって、外側の断熱材4の厚みの増加分を低減させた分だけ建物の壁躯体構造と外壁材13との間隔が大きくなるのを抑えることができるため、該壁躯体構造によって外壁材13を十分に支えることができるとともに、建物の断熱効果を向上させて省エネルギー化を図ることが可能となる。
【0019】
以上、本発明の実施の形態を実施例により説明したが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではなく、請求項に記載された範囲内において目的に応じて変更・変形することが可能である。
例えば、本実施例以外、壁用断熱ユニット1を製造する場合には、まず、建物の設計図のCADデータがインプットされた例えばルーター等の切断工作機械によって該内側の断熱材3の所定箇所を切除して、該内側の断熱材3に切欠き部8を形成し、その後、耐力面材2の内外両面にそれぞれ内側の断熱材3と外側の断熱材4を位置決めして貼着してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、外壁材を十分に支えることができる強度が確保され、かつ、建物の断熱効果を向上させて省エネルギー化を図ることが可能な壁用断熱ユニットおよび壁断熱構造として、産業上利用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】壁用断熱ユニットの平断面図である。
【図2】壁用断熱ユニットの外面図である。
【図3】壁用断熱ユニットの内面図である。
【図4】受材を横架材に固定した様子を示す説明側断面図である。
【図5】壁用断熱ユニットを主柱に固定した様子を示す説明平断面図である。
【図6】壁断熱構造の説明平断面図である。
【図7】二重頭部を有する釘を使用した状態の説明図
【符号の説明】
【0022】
1 壁用断熱ユニット
2 耐力面材
3 断熱材(内側の断熱材)
4 断熱材(外側の断熱材)
5 柱(壁躯体柱体)
6 間柱(壁躯体柱体)
7 横架材(壁躯体柱体)
8,8A,8B,8C 切欠き部
9 壁断熱構造
10 内壁材
11 ビスまたは釘
11A 二重頭部を有する釘
12 胴縁
13 外壁材
14A,14B 二重頭部
18 受材
19 土台(壁躯体柱体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐力面材の内外両側には断熱材がそれぞれ貼着されており、外側の断熱材は該耐力面材と縦横同寸法に設定され、内側の断熱材の所定箇所には壁躯体構造を構成する柱体を嵌合するための切欠き部が形成されていることを特徴とする壁用断熱ユニット。
【請求項2】
壁躯体構造の内側には内壁材が固定されており、該壁躯体構造の外側には請求項1に記載の壁用断熱ユニットが固定されており、該壁用断熱ユニットの外側には胴縁を介して外壁材が固定されている構成であって、該壁躯体構造を構成する柱体は該壁用断熱ユニットの内側の断熱材の切欠き部に嵌合されていることを特徴とする壁断熱構造。
【請求項3】
該壁用断熱ユニットは締結材によって該柱体に固定されており、該締結材の頭部は該耐力面材の外側表面に達している請求項2に記載の壁断熱構造。
【請求項4】
該締結材は上下二段の頭部を有する釘であり、該釘は下側の頭部が該耐力面材の外側表面にまで達している請求項3に記載の壁断熱構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−307439(P2006−307439A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−127747(P2005−127747)
【出願日】平成17年4月26日(2005.4.26)
【出願人】(000104548)キッコーナ株式会社 (10)
【Fターム(参考)】