説明

壁紙、この壁紙を用いた建材、及び壁状体の被覆構造

【課題】外観を損ねることなく、かつ簡単な構成で湿度の調整や臭いの除去、有害ガス成分の無害化などを図り得る壁紙構造を提供する。
【解決手段】通気性を有する壁紙本体2と、この壁紙本体2の表面2oに接着されかつ通気性を有するカバー層3とを含み、かつ前記カバー層3は、前記壁紙本体2の表面2oを外部から視認可能な透明性を有するフィルム体5と、該フィルム体5の前記壁紙本体と接触していない表面5aに担持された光触媒6とを有する。また、壁紙本体2と前記カバー層3とを接着した複合体の透湿度が、温度40℃及び湿度90%において、200g/m2・24hr以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば住宅の室内用の壁材又は天井材などの建材に貼り付けられることにより、室内空間の外観を損ねることなく、かつ簡単な構成で湿度の調整や臭いの除去、有害ガス成分の無害化などを図り得る壁外、該壁紙を用いた建材、及び壁状体の被覆構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、住宅の室内壁の仕上げ材の表面に、酸化チタン等の光触媒を担持させる技術が提案されている(例えば下記特許文献1参照)。光触媒は、紫外線を受けることにより、強い酸化分解作用を発揮する。これにより、仕上げ材表面に付着した有機物等が分解され、仕上げ材表面の汚濁や細菌の繁殖などが防止される。また、室内空気の臭い(例えば、タバコ臭、ペット臭及び/又は生ゴミ臭など)の除去や有害ガス成分(例えばホルムアルデヒド)の無害化といった空気浄化作用が得られる。このような光触媒は、多くの場合、微細化されて粒子状として塗料液中に分散配合され、仕上げ材の表面に塗装されることにより固定される。
【0003】
【特許文献1】特開2004−76494号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば家屋等の室内壁は、剛性を有する壁状基体の表面に壁紙を貼り付けることにより仕上げられている。ここで、壁状基体としては、例えば珪藻土、石膏ボード又は木質系素材といった吸放湿性能を有する多孔質材料が多用される。このような材料は、例えば室内が多湿時にはその湿気を吸収保持することで室内空間の湿度を低下させる一方、乾燥時には、保持していた湿気を室内に放出することにより、室内空間の湿度を上げる働きをする。この結果、室内空間は、略一定の湿度範囲に調整され、居住者に対して快適な湿度環境を提供する利点がある。
【0005】
しかしながら、このような吸放湿性材料に対して、光触媒を配合した塗料を塗装、硬化させると、表面の孔部が閉塞され、上述の吸放湿性能が十分に機能し得ないという欠点がある。また、光触媒が、吸放湿性材料の多孔部の内部に入り込み、十分な紫外線を受けることができず、ひいては上述の酸化分解作用も不十分となるおそれがある。
【0006】
本発明は、以上のような実情に鑑み案出なされたもので、通気性を有する壁紙本体に、透明なフィルム体と該フィルム体の前記壁紙本体と接触していない表面に担持された光触媒とを有する通気性を有するカバー層を接着するとともに、これらの透湿度を一定範囲に限定することを基本として、例えば住宅の室内壁などに利用されることにより、室内空間の外観を損ねることなく、かつ簡単な構成で湿度の調整や臭いの除去、有害ガス成分の無害化などを図り得る壁紙、この壁紙を用いた建材、及び壁状体の被覆構造を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のうち請求項1記載の発明は、通気性を有する壁紙本体と、この壁紙本体の表面に接着されかつ通気性を有するカバー層とを含み、かつ前記カバー層は、前記壁紙本体の表面を外部から視認可能な透明性を有するフィルム体と、該フィルム体の前記壁紙本体と接触していない表面に担持された光触媒とを有するとともに、前記壁紙本体と前記カバー層とを接着した状態での透湿度が、温度40℃及び湿度90%において、200g/m・24hr以上であることを特徴とする。
【0008】
また請求項2記載の発明は、前記壁紙本体は、少なくとも1層の壁紙基材と、該壁紙基材に接着されるとともに通気性を有する化粧層とを含み、前記化粧層の表面に、前記カバー層が接着されている請求項1記載の壁紙である。
【0009】
また請求項3記載の発明は、前記カバー層の透湿度は、温度40℃及び湿度90%において、1000g/m・24hr以上である請求項1又は2に記載の壁紙である。
【0010】
また請求項4記載の発明は、前記カバー層は、厚さが10〜50μmであり、かつ、最大径が0.01〜1mmの小孔が1m2当たり10000〜1000000個形成されている請求項1乃至3のいずれかに記載の壁紙である。
【0011】
また請求項5記載の発明は、前記化粧層は、紙質系、布質系、不織布系又は樹脂系のシート材である請求項2に記載の壁紙である。
【0012】
また請求項6記載の発明は、前記化粧層は、0.5〜2.0mmの厚さを有するとともに、前記カバー層の表面には深さが0.1〜1.0mmの凹凸模様が複数形成されている請求項2又は5に記載の壁紙である。
【0013】
また請求項7記載の発明は、吸放湿性能を有する壁状基体を前記請求項1乃至6のいずれかに記載された壁紙で被覆したことを特徴とする建材である。
【0014】
また請求項8記載の発明は、壁状体の被覆構造であって、吸放湿性能を有する壁状基体と、その表面に接着された通気性を有するカバー層とを含み、かつ前記カバー層は、前記壁状基体の前記表面を外部から透視可能な透明性を有するフィルム体と、該フィルム体の前記壁状基体と接触していない表面に担持された光触媒とを有するとともに、前記カバー層の透湿度が、温度40℃及び湿度90%において、200g/m・24hr以上であることを特徴とする壁状体の被覆構造である。
【0015】
また請求項9記載の発明は、前記壁状基体は、珪藻土、石膏ボード又は木質系素材からなる請求項7又は8記載の壁状体の被覆構造である。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明では、通気性を有する壁紙本体と、この壁紙本体の表面に接着されかつ通気性を有するカバー層とを含む壁紙が提供される。このような壁紙は、壁紙本体及びカバー層が、いずれも通気性を有するので、吸放湿性能を有する壁状基体に貼り付けられてもその吸放湿性能を損ねることがない。しかも、壁紙本体と前記カバー層とが接着された状態での透湿度が、温度40℃及び湿度90%において、200g/m・24hr以上であるため、壁状基体の吸放湿性能をより確実に発揮させ得る。また、カバー層は、壁紙本体を透視可能な透明性を有するので、該壁紙本体に表されている化粧模様などの視認性を阻害しない。従って、外観の悪化を防止しうる。さらに、光触媒は、カバー層を構成するフィルム体の壁紙本体と接触していない表面に固定されるため、確実に紫外線を受けることが可能となり、ひいては効率良く酸化分解作用を発現しうる。
【0017】
このように、請求項1に係る発明では、簡単な構造で、壁紙基体の吸放湿性能及び化粧層の外観を損ねることなく光触媒による酸化分解作用を発揮できる。従って、請求項7に係る発明のように、吸放湿性能を有する壁状基体をこのような壁紙で被覆された建材は、表面の汚濁を長期に亘って防止しうるとともに、室内空間の空気清浄作用などを効率良く発揮できる。
【0018】
また、請求項8の壁状体の被覆構造に関する発明にあっては、吸放湿性能を有する壁状基体と、その表面に接着された透湿度が限定された通気性を有するカバー層とを含み、かつ該カバー層が、壁状基体の表面を外部から透視可能な透明性を有するフィルム体と、該フィルム体の前記壁基体と接触していない表面に担持された光触媒とを有する。従って、上記同様、簡単な構造で、壁状基体の吸放湿性能及び外観を損ねることなく光触媒による酸化分解作用を効率良く発揮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の一形態を図面に基づき説明する。
図1には本実施形態の壁紙1の拡大平面図、図2にはそのA−A端面図がそれぞれ示される。本実施形態の壁紙1は、例えば建材、とりわけ室内用の壁材又は天井材といった建材の表面を被覆するものとして好適に用いられる。即ち、本実施形態の壁紙1は、家屋や建物の室内側に面するように配されるのが良い。
【0020】
前記壁紙1は、通気性を有する壁紙本体2と、この壁紙本体2の表面2oに接着されかつ通気性を有するカバー層3とを含んで構成されるとともに、該カバー層3は、壁紙本体2の前記表面2oを外部から透視可能な透明性を有するフィルム体5と、該フィルム体5の前記壁紙本体2と接触していない表面5aに担持された光触媒6とから構成される。
【0021】
本実施形態において、前記壁紙本体2は、1層かつシート状の壁紙基材2Aと、裏面2Biが壁紙基材2Aに接着されるとともに通気性を有する化粧層2Bとからなる。そして、この化粧層2Bの表面2Boは、前記壁紙本体2の表面2oをなす。
【0022】
前記壁紙基材2Aは、例えば壁紙1の基本的な剛性を確保するための基材であって、通気性を有するシート状のものであれば、特に限定されることなく種々の材料が採用され得る。例えば、紙質系、木質系、布質系又は不織布系のシート材(2以上の異なる材料を積層した複合積層体をも含む。)などが好適に壁紙基材2Aとして用いられる。また、通気性を有するものであれば、例えば連続気泡を有する樹脂製のシート材なども用いることができ、ここに列挙されたシート材に限定されるものではない。本実施形態では、紙質系の1枚のシート材により壁紙基材2Aが形成されたものが示されるが、2層以上のシート材を積層して壁紙基材2Aを形成することもできる。
【0023】
壁紙基材2Aの厚さは、使用する材料の強度等に応じて適宜設定される。従って、特に限定されるものではない。壁紙基材2Aの耐久性と施工性などをバランス良く向上させるために、その厚さは、好ましくは0.5〜2.0mm程度が望ましい。
【0024】
なお、図示していないが、壁紙本体2の裏面2iとなる該壁紙基材2Aの裏面2Aiには、例えば粘着層を設け、さらにその粘着層を覆うように剥離紙を貼着しておくこともできる。このような壁紙は、現場での壁紙施工作業の能率化に役立つ。
【0025】
本実施形態において、前記化粧層2Bは、壁紙基材2Aに接着剤7にて固着された裏面2Biと、その反対側の面である表面2Boとを有し、該表面2Boには壁紙1の外観を決定付ける化粧仕上げが施される。該化粧仕上げとは、外部から視認されることを前提として見映え良く形成された全ての仕上げ態様を含む趣旨であり、例えば印刷等によって平面模様、立体模様及び/又は色彩模様が形成される場合の他、単色の無地無模様の表面仕上げであっても勿論構わない。なお、前記壁紙基材2と化粧層2Bとは、例えば壁紙用のでんぷん糊のように固化することによって収縮するものや、接着剤7を非常に薄く塗布することなどにより、両者の通気性が妨げられないように接着される。
【0026】
また、化粧層2Bも、壁紙基材2Aの通気性を損ねることがないように、通気性を有するシート材で形成される。このような材料としては、特に限定されるものではないが、例えば紙質系、布質系又は不織布系のシート材が好適である。とりわけ、主成分がエチレンー酢酸ビニル共重合体、エチレンーアクリル酸エステル共重合体、ポリ塩化ビニルから選ばれる少なくとも1種のポリマーを含む樹脂系シート剤が好適である。また、前記壁紙基材2Aの表面を一部の露出させつつ樹脂塗料などを吹き付けることにより化粧層2Bが形成されても良い。なお、本実施形態の化粧層3は、1層で形成されるが、2層以上のシート材を積層することにより形成されても良い。
【0027】
前記カバー層3は、壁紙本体2の前記表面2oを外部から透視可能な透明性を有ししかも通気性を有するフィルム体5と、該フィルム体5の表面5aに担持された多数の粒子状の光触媒6とから構成される。
【0028】
このようなカバー層3は、透明性を有するフィルム体5を具えることにより、化粧層3の外観(化粧仕上げ)を妨げることがない。従って、壁紙1としての室内装飾機能が損なわれることがない。ここで、フィルム体5は、完全な無色透明のものに限定されるものではなく、実質的に化粧層3を透視しうるものであれば、有色透明や半透明であっても構わない。
【0029】
また、カバー層3のフィルム体5の表面5aには、多数の粒子状の光触媒6が担持されているので、該光触媒6が紫外線を受けることにより、その強い酸化分解作用でフィルム体5の表面5aに付着した汚れや細菌の他、悪臭等を二酸化炭素と水とに分解しうる。これにより、壁紙1の表面の除菌及び抗菌作用が長期に亘って永続的に得られる他、室内空気の浄化及び脱臭等の効果を発揮できる。
【0030】
さらに、壁紙本体2及びカバー層3がともに通気性を有する。これにより、壁紙1を介して、該壁紙1が貼り付けられる吸放湿性能を有する例えば石膏ボード等の壁状基体と、室内空気とを連通させることが可能になる。従って、壁状基体が有する吸放湿性能を利用した室内調湿機能が損なわれることも無い。
【0031】
前記カバー層3は種々の方法で作ることができる。例えば、図3に示されるように、粒子状の光触媒6を含むコート液Lを透明なフィルム体5の上に直接又はプライマー層(図示省略)などを介して塗布する塗工工程S1と、該コート液Lを乾燥させることによりフィルム体5に光触媒6を担持させた複合シート体Fを形成する乾燥工程S2と、該複合シート体Fに貫通する多数の小孔を形成する穿孔工程S3とを含んで製造し得る。
【0032】
前記透明なフィルム体5としては、例えば、ポリエステル、塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン又はエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)を主成分とするものが望ましい。これらは、エンボス等の凹凸模様を付与する際に良好な加工性が得られる。なお、前記「主成分」とは、全成分の少なくとも50%を占める成分として定義される。
【0033】
また、前記光触媒6には、紫外線等の光を受けて上述の光触媒反応を示すものであれば、特に限定されるものではなく種々の材料を用いることができる。例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化鉛、酸化第二鉄、三酸化二ビスマス、三酸化タングステン又はチタン酸ストロンチウム等の1ないし複数の金属酸化物が光触媒6として好適である。とりわけ、無害で化学的に安定しておりかつ低コストという観点より、二酸化チタンが望ましい。前記二酸化チタンとしては、アナターゼ型二酸化チタン、ルチル型二酸化チタン又はブルックライト型二酸化チタンなどが知られているが、光触媒反応の高活性なアナターゼ型二酸化チタンが特に好ましい。
【0034】
光触媒6の粒子径は、特に限定されるものではないが、該粒子径が大きくなると、カバー層3の透明性を損ねる傾向があるし、逆に小さすぎるとコストが上昇するおそれがある。このような観点より、光触媒6は、動的散乱測定法による平均粒径が好ましくは1〜500nm、より好ましくは3〜400nm、さらに好ましくは5〜300nmであるのが好ましい。
【0035】
前記コート液Lは、溶媒中に前記粒子状の光触媒6を混合することにより得られる。溶媒は、有機溶媒及び水を含む他、例えば光触媒6の密着を高めるために、シランカップリング剤等の無機バインダーを含ませるのが好ましい。また、前記有機溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の一価低級アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコール類、及びそれらのエステルであるセルソルブ、酢酸エチル、メチルイソブチルケトン、イソブタノール、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン等を好適に使用できる。一価低級アルコール、中でもイソプロピルアルコール及びエタノールを用いるのが好ましい。
【0036】
また、好ましい実施形態として、前記コート液Lは、光触媒6を固形分濃度で0.2〜20重量%、より好ましくは5〜10重量%含むことが望ましい。光触媒6の配合量が0.2重量%未満の場合、十分な光触媒反応が発揮できないおそれがあり、逆に20重量%を超える場合、カバー層3の透明性を損ねるおそれがある。
【0037】
前記塗工工程S1は、特に限定されるものではないが、例えば、グラビアコート、スプレーコート又はデイップコート等、各種の塗工方法が選択され得る。とりわけ、図3に略示されるように、グラビアロールコーターを用いるのが好ましい。
【0038】
前記乾燥工程S2は、例えば加熱温度80〜100℃、乾燥熱風風速10〜30m/s及び乾燥時間20〜180秒程度の条件で行われるのが望ましい。また、乾燥時の熱によるフィルム体5の伸びを抑制するために、該フィルム体5は、80〜100℃の温度領域において、100MPa以上の弾性率を有することが望ましい。これによって、乾燥時の伸びが確実に抑制され、ひいては寸法安定性が確保されるとともに、光触媒6の粒子の割れ等が効果的に抑制され得る。なお、カバー層3の形成時における張力等によって破断するのを防止するために、フィルム体5は、好ましくは10〜50μmの厚さを有することが望ましい。
【0039】
前記穿孔工程S3では、フィルム体5と光触媒6との複合シート体Fに、表面に多数の針状部材を設けたローラR1又はR2が押圧される。これにより、図1及び図2に示されるように、カバー層3には、貫通する多数の小孔hが形成される。このような小孔hは、カバー層3に十分な通気性及び透湿度を付与しうる点で望ましい。なお、前記ロータR1及びR2に代えて、針状部材を有しかつ上下に移動可能なプレス型などを用いて穿孔しても良い。本実施形態のカバー層5は、このような小孔hが形成されることによって通気性を具えるものとなる。
【0040】
前記小孔hの個数や最大径rは、特に限定されるものではない。しかしながら、前記小孔hの個数が少なくなったり又はその最大径が小さくなると、壁紙本体2に形成されている空気を通すための通気口と、カバー層3の前記小孔hとが互いに連通しづらくなり、ひいては壁紙本体2とカバー層3とを接着した際に該複合体としての通気性が十分に得られないおそれがある。このような観点より、前記小孔hの個数は、1m当たり10000個以上、より好ましくは100000個以上が望ましい。同様に、小孔hの最大径rは、好ましくは0.01mm以上、より好ましくは0.05mm以上が望ましい。
【0041】
他方、前記小孔hの最大径rが大きすぎる場合又はカバー層3の1m当たりの小孔hの個数が多くなりすぎると、良好な通気性は得られやすいものの、該小孔hが外部から視認されやすくなって壁紙1の外観や耐久性を悪化させたり、カバー層3の耐久性を低下させるおそれがある。このような観点より、前記小孔hの個数は、1m当たり1000000個以下、より好ましくは500000個以下が望ましい。同様に、小孔hの最大径rは、好ましくは1mm以下、より好ましくは0.5mm以下が望ましい。
【0042】
ここで、小孔hの最大径rは、図1に示されるように、平行な二直線で挟まれる小孔hの最も大きな外径として測定される。
【0043】
また、小孔hは、ランダムなピッチで分散形成されても良いが、図1に示されるように、一定のピッチa及びb(a=bであっても勿論良い)で縦横にグリッド状に形成されるのが特に望ましい。これにより、カバー層3の強度が均一に確保されるとともに、壁紙本体2と接着されたときに偏りのない均一な通気性を得ることができる点で望ましい。
【0044】
そして、該カバー層3を、予め壁紙基材2Aと化粧層2Bとを接着した壁紙本体2の前記表面2iに接着することにより、壁紙1が製造される。なお、特に限定はされないが、施工性などを考慮すると、壁紙1の全厚さは、好ましくは0.5〜2.0mm程度が望ましい。
【0045】
また、壁紙1は、壁紙本体2とカバー層3とが接着された状態での透湿度が、温度40℃及び湿度90%の測定条件において、200g/m・24hr以上に設定され、より好ましくは300g/m・24hr以上、さらに好ましくは400g/m・24hr以上に設定されることが望ましい。
【0046】
壁紙本体2及びカバー層3は、いずれも通気性を有するが、これらを接着すると、双方の通気口が完全に一致せずに通気抵抗が大きくなる場合があるが、本発明の壁紙1では、壁紙本体2とカバー層3との複合体としての透湿度が限定されているので、確実な通気性能及び透湿性能を発揮しうる。なお、前記透湿度は、JIS Z0208「防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)」に準拠して測定されるものとする。
【0047】
なお、カバー層3単体においては、上記と同一の条件、即ち温度40℃及び湿度90%の測定条件における透湿度が1000g/m・24hr以上であるのが望ましい。これによって、上述の複合体としての透湿度を容易に発揮させることができる。
【0048】
このような壁紙1は、図4に示されるように、吸放湿性能(調湿機能)を有する例えば珪藻土、石膏ボード又は木質系素材からなる壁状基体21の表面に、表面仕上げ材として貼り付けられることにより、壁状体の被覆構造を提供する。このような壁状体としては、各種の建材、より具体的には天井材、壁材、間仕切り材、オフィスのパーティションなど種々の用途に用いられる。そして、該壁状体20は、壁状基体21の有する吸放湿性能を損ねることなく、光触媒6によって室内空気の浄化及び表面の汚濁の防止などの作用効果を発揮しうる。また、壁紙1は、壁紙本体2にカバー層3を接着するというきわめて簡単な作業にて製造しうる結果、低コストでありかつ生産性にも優れる。
【0049】
図5には、本発明の他の実施形態の壁紙1が示される。この実施形態では、壁紙本体2を構成する化粧層2Bが、複数の層で形成されたものが例示される。具体的に述べると、化粧層2Bは、例えば壁紙基材2Aと接着剤7で接着されたシート状の内層2Baと、この内層2Baの外側に重ねて配されたシート状の外層2Bbとを含んで構成される。このように、化粧層2Bは複数のシート材の積層体として形成されても良い。なお、図示していないが、壁紙基材2Aについても複数のシート材を積層することにより形成されても良いのは上述の通りである。
【0050】
図6には、さらに本発明の他の実施形態の壁紙1が示される。この実施形態では、表面に凹凸模様(いわゆるエンボス模様)が形成されている。該凹凸模様は、図2に示された壁紙1を、例えばエンボス形成用のロール等にで圧延することにより容易に形成することができる。特に限定されるものではないが、エンボスの深さdは、好ましくは0.1〜1.0mm程度が望ましい。他方、化粧層2Bの厚さは、好ましくは0.5〜2.0mmが望ましい。
【0051】
また、上述のカバー層3は、例えば壁紙1の構成材料としてのみならず、壁状体の被覆材料としても好適に用いられる。例えば、図7には、その一例として壁状体20の部分断面図が示される。本実施形態において、壁状体20は、吸放湿性能を有し外面が化粧仕上げされた木質材からなる壁状基体21と、その表面に接着されかつ小孔hにより通気性を有する前記カバー層3とを含んで構成される。該カバー層3は、室内側において該壁状体20の外表面を形成している。そして、このようなカバー層3の透湿度も、通気性を確実に確保するために、温度40℃及び湿度90%において、200g/m・24hr以上であることが望ましい。
【0052】
また、前記カバー層3は、前記実施形態と同様、壁状基体21の前記表面を外部から透視可能な透明性を有するフィルム体5と、該フィルム体5の前記壁状基体21と接触していない表面に担持された光触媒6とを有するので、簡単な構造で、壁状基体21の吸放湿性能及び外観を損ねることなく光触媒6による酸化分解作用を発揮できる。なお、壁状基体21には、いわゆる壁材のみのならず、天井材や床材のように、家屋ないし建物の室内空間に面する各種の建材を含む概念とする。また、前記壁状基体21には、吸放湿性能を有するものとして、珪藻土、石膏ボード又は木質系素材等が好適に利用される。
【実施例】
【0053】
本発明の効果を確認するために、表1の仕様に基づいて製造された壁紙を壁状基体に貼り付けて試験片を作成し、これについて下記のテストが行われた。なお、本発明は下記の具体的な実施例に限定されるものではない。
【0054】
各実施例の試験片の壁状基体は、吸放質性能を有する10cm×10cm角の「さわやか石膏ボード」(商品名:チヨダウーテ社製)が用いられた。また、壁紙は、壁状基体の一方の面にのみ壁紙用でんぷん糊を用いて接着された。壁状基体の他の面(裏面及び側面)は、全てアルミテープでシールが施された。ただし、タバコヤニ分解性テストおよびアセトアルデヒド除去テストについては、壁状基体は用いず、壁紙単体で評価が行われた。
【0055】
なお、吸放質性テストにおいて、比較例1の試験片は、壁紙を一切貼り付けずに壁状基体のみで構成された。
【0056】
また、吸放質性テストにおいて、比較例2の試験片は、壁紙として、カバー層のない壁紙本体のみが用いられた。
【0057】
また、吸放質性テストにおいて、実施例の壁紙は、壁紙基材と化粧層とからなる壁紙本体に、カバー層を接着することにより製造された。各部の共通仕様は次の通りである。
【0058】
[壁紙基材]
材料:紙質系
厚さ:1.0mm
【0059】
[化粧層]
材料:EVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)
厚さ:0.5mm
【0060】
[カバー層]
フィルム材料:EVOH(クラレ製 HF−ME)
フィルム厚さ:12μm
【0061】
[光触媒コート液」
日本アエロジル(株)製酸化チタンP−25(アナターゼ型)に分散剤としてクエン酸を加え(酸化チタンに対し0.1モル)、混式粉砕して得た平均粒子径0.3μmのスラリー(A)と、多木化学(株)製酸化チタンゾルM−6(アナターゼ型、平均粒子径20nm)(B)と、多木化学(株)製酸化チタンゾルM−5(アナターゼ型、平均粒子径5nm)(C)と、関東化学(株)製テトラエトキシシラン(D)とを、それぞれ酸化物換算(TiO、SiO)で(B)/((A)+(B)+(C))×100=10%、(D)/((A)+(B)+(C)+(D))=20%の比となるように混合し、水及びエタノールで希釈し、酸化物換算(TiO、SiO)の総固形分濃度8%、エタノール50%の光触媒コート液を得た。そして、この光触媒コート液を上記フィルムにグラビアロールコーターでコートし、乾燥させ、しかる後、穿孔することによりカバー層を得た。ロールスピードは50m/分、塗布量は1g/m、乾燥温度は80℃とした。
【0062】
また、テストの方法は次の通りである。
【0063】
<煙草ヤニ分解性テスト>
ASTM D1925に記載の方法にて試験片の初期の黄ばみ度を測定した。30cm×30cm×30cmの密閉容器内に上述の試験片を入れ、煙草(JT製マイルドセブン)1/3本を薫煙、1時間後に試験片を取出し、ブラックライトにて365nmの紫外線を1mW/cmを4時間照射した。この一連のサイクルを5サイクル行った。その後、再度黄ばみ度を測定し、初期の黄ばみ度との差を求めた。黄ばみ度の差の数値が小さいほど良好である。
【0064】
<アセトアルデヒド除去テスト>
テドラーバック(商品名:テドラー社製)10Lに、10cm×25cmの壁紙試験片及びアセトアルデヒドガス濃度が200ppmの気体を封入し、24時間暗所で保存した。次に、テドラーバックに収容されたままの試験片に、6000Lxの白色蛍光灯を24時間照射したあと、アセトアルデヒド濃度が測定された。ガス濃度が小さいほど良好である。
【0065】
<吸放湿テスト>
試験片を、25℃、50%RHの条件下で24時間放置した後、その重量が測定された(重量A)。その後、同じ試験片を、25℃、90%RHの条件下で24時間放置した後、その重量が測定された(重量B)。さらに、同じ試験片を、25℃、50%RHの条件下で24時間放置した後、重量が測定された(重量C)。そして、次式により吸湿量および放湿量が算出された。数値が大きいほど吸放質性能に優れていることを示す。
吸湿量=(重量B−重量A)/試験面積
放湿量=(重量B−重量C)/試験面積
テストの結果を表1に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
テストの結果、実施例の試験片は、いずれも壁状基体の吸放質性能を損ねることなく、空気浄化効果及び表面の黄ばみ防止効果を有意に発揮していることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施形態を示す壁紙1の平面図である。
【図2】そのA−A端面図である。
【図3】カバー層の製造工程を示す概略図である。
【図4】本発明の実施形態の被覆構造を示す壁状体の断面図である。
【図5】本発明の他の実施形態を示す壁紙の断面図である。
【図6】本発明の他の実施形態を示す壁紙の断面図である。
【図7】本発明の他の実施形態の被覆構造を示す壁状体の断面図である。
【符号の説明】
【0069】
1 壁紙
2 壁紙本体
2A 壁紙基材
2B 化粧層
3 カバー層
5 フィルム体
6 光触媒
20 壁状体
21 壁状基体
h 小孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気性を有する壁紙本体と、
この壁紙本体の表面に接着されかつ通気性を有するカバー層とを含み、かつ
前記カバー層は、前記壁紙本体の表面を外部から視認可能な透明性を有するフィルム体と、該フィルム体の前記壁紙本体と接触していない表面に担持された光触媒とを有するとともに、
前記壁紙本体と前記カバー層とを接着した状態での透湿度が、温度40℃及び湿度90%において、200g/m・24hr以上であることを特徴とする壁紙。
【請求項2】
前記壁紙本体は、少なくとも1層の壁紙基材と、該壁紙基材に接着されるとともに通気性を有する化粧層とを含み、
前記化粧層の表面に、前記カバー層が接着されている請求項1記載の壁紙。
【請求項3】
前記カバー層の透湿度は、温度40℃及び湿度90%において、1000g/m・24hr以上である請求項1又は2に記載の壁紙。
【請求項4】
前記カバー層は、厚さが10〜50μmであり、かつ、最大径が0.01〜1mmの小孔が1m2当たり10000〜1000000個形成されている請求項1乃至3のいずれかに記載の壁紙。
【請求項5】
前記化粧層は、紙質系、布質系、不織布系又は樹脂系のシート材である請求項2に記載の壁紙。
【請求項6】
前記化粧層は、0.5〜2.0mmの厚さを有するとともに、前記カバー層の表面には深さが0.1〜1.0mmの凹凸模様が複数形成されている請求項2又は5に記載の壁紙。
【請求項7】
吸放湿性能を有する壁状基体を前記請求項1乃至6のいずれかに記載された壁紙で被覆したことを特徴とする建材。
【請求項8】
壁状体の被覆構造であって、吸放湿性能を有する壁状基体と、その表面に接着された通気性を有するカバー層とを含み、かつ
前記カバー層は、前記壁状基体の前記表面を外部から透視可能な透明性を有するフィルム体と、該フィルム体の前記壁状基体と接触していない表面に担持された光触媒とを有するとともに、
前記カバー層の透湿度が、温度40℃及び湿度90%において、200g/m・24hr以上であることを特徴とする壁状体の被覆構造。
【請求項9】
前記壁状基体は、珪藻土、石膏ボード又は木質系素材からなる請求項7又は8記載の壁状体の被覆構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−52376(P2009−52376A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−222913(P2007−222913)
【出願日】平成19年8月29日(2007.8.29)
【出願人】(000004673)パナホーム株式会社 (319)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】