説明

壁紙

【課題】寸法安定性があり、十分な密着性を維持しつつ、貼り替えや貼り直しの際には容易に剥離が可能である壁紙を提供すること。
【解決手段】少なくとも基材シートと表面発泡樹脂層とからなる壁紙において、前記基材シートが、ポリエチレン合成繊維15〜80重量%と木材パルプ繊維20〜85重量%とからなる混抄紙と、ポリプロピレン合成繊維15〜80重量%と木材パルプ繊維20〜85重量%とからなる混抄紙の2層の積層構造を有することで、寸法安定性に優れ、密着性も保っている。また、木材パルプを含んでいるため、発泡樹脂層を形成する際にコーティング方式により製造することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に住宅内装に用いる壁紙に関し、特に施工適性を向上させ、かつリフォームにおける貼り替え、貼り直しを容易とした壁紙に関する。
【背景技術】
【0002】
前記用途の壁紙としては、天然繊維やそれに水酸化アルミニウム等の充填剤を配合した紙の表面側に発泡ポリ塩化ビニル樹脂層を設けた壁紙が知られている。
しかしながら、紙基材の場合、施工においてはでんぷん糊等の水性樹脂を用いるため、施工時の水分による水伸縮が激しく、寸法安定性が出ないため、貼り合わせ部分が重なったり開いたりてしまっていた。
また、施工後に貼り替えや貼り直しをする場合は、層間で剥離させていたのだが、糊分が染込んで層間の密着があがったり、紙層で破壊が発生したりなどといった問題点があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、前記問題点を解決するものであり、その課題とするところは、寸法安定性があり、十分な密着性を維持しつつ、貼り替えや貼り直しの際には容易に剥離が可能である壁紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の壁紙は前記課題を解決するものであり、即ち請求項1記載の発明は、少なくとも基材シートと表面発泡樹脂層とからなる壁紙において、前記基材シートが、ポリエチレン合成繊維15〜80重量%と木材パルプ繊維20〜85重量%とからなる混抄紙と、ポリプロピレン合成繊維15〜80重量%と木材パルプ繊維20〜85重量%とからなる混抄紙の2層の積層構造を有することを特徴とする壁紙である。
【発明の効果】
【0005】
本発明の請求項1記載の発明は、前記基材シートの構成により、ポリエチレン合成繊維とポリプロピレン合成繊維をそれぞれ15重量%以上含んでいるので、吸湿、吸水による伸縮が極めて少なく、寸法安定性に優れている。また、混抄紙の界面で剥離するようになっている。さらに剥離性と密着性のバランスをとるため木材パルプ繊維を20重量%以上含んでいるので密着性も保っている。また、木材パルプを含んでいるため、発泡樹脂層を形成する際にコーティング方式により製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明を図面に基づき詳細に説明する。図1に本発明の壁紙の一実施例の断面の構造を示す。基材シート1はポリエチレン合成繊維を含有した混抄紙11とポリプロピレン合成繊維を含有した混抄紙12とからなり、この上に発泡樹脂層2を設けてなる。この上に適宜絵柄層3を印刷したり、エンボス加工4を施しても良い。
【0007】
本発明で用いる基材シート1としては、ポリエチレン合成繊維を含有した混抄紙11とポリプロピレン合成繊維を含有した混抄紙12とからなるが、どちらを基材シートの表層とするかは特に限定するものではない。混抄紙11,12に用いる木材パルプ繊維としては、針葉樹や広葉樹などからなる木材のパルプから選ばれる繊維を適宜用いればよく、特に限定されるものではない。
【0008】
本発明で用いるポリエチレン合成繊維、ポリプロピレン合成繊維としては、繊維長として1〜10mmのものが望ましい。10mmを越えると、毛羽が目立ち、1mm未満では、分散性に劣る。また、繊維形状については特に限定しないが、表面積が増え、フィブリル化したものが望ましい。
【0009】
ポリエチレン合成繊維を含有した混抄紙11におけるポリエチレン合成繊維の含有割合は15〜80重量%である。20重量%未満では、層間剥離させる際、きれいに層間で剥離できない。また、吸湿、吸水の際に伸縮し、0.5%以上の寸法変化を示すので、壁紙の継ぎ目部分における目隙き又は突き上げ等の原因となり易い。一方、80重量%を超えると、パルプ分が20重量%未満と少ないので、ポリプロピレン合成繊維を含有した混抄紙12との密着力が20N/m以下となり、剥離しやすくなり過ぎ、壁紙自体の重みで剥離する可能性が出てくる。また、発泡樹脂層を形成する際に、ポリ塩化ビニルや水性エマルジョン樹脂等を用いたコーティング方式では、十分な密着性を得られなくなる。
【0010】
ポリプロピレン合成繊維を含有した混抄紙12におけるポリプロピレン合成繊維の含有割合は15〜80重量%である。20重量%未満では、層間剥離させる際、きれいに層間で剥離できない。また、吸湿、吸水の際に伸縮し、0.5%以上の寸法変化を示すので、壁紙の継ぎ目部分における目隙き又は突き上げ等の原因となり易い。一方、80重量%を超えると、パルプ分が20重量%未満と少ないので、ポリエチレン合成繊維を含有した混抄紙11との密着力が20N/m以下となり、剥離しやすくなり過ぎ、壁紙自体の重みで剥離する可能性が出てくる。また、発泡樹脂層を形成する際に、ポリ塩化ビニルや水性エマルジョン樹脂等を用いたコーティング方式では、十分な密着性を得られなくなる。
【0011】
本発明で用いる発泡樹脂層2としては、ポリ塩化ビニル樹脂、水性エマルジョン樹脂、ポリオレフィン系樹脂を用いることができる。またこれら各樹脂に発泡剤、隠蔽剤、充填剤、可塑剤(ポリ塩化ビニル樹脂の場合は)などを配合して用いることができる。
【0012】
前記水性エマルジョン樹脂としてはアクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物、SBR系、酢酸ビニル系、エチレン−酢酸ビニル共重合体、シリコーン、ポリウレタン、ポリブテン等の少なくとも1種または2種以上からなり、構造上は特に限定されないが、通常の共重合体もしくはコア/シェルの2層構造、ブレンド等を用いることができる。
【0013】
前記ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソプレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体やアイオノマー等から適宜選択が可能で、単一でも複数種の混合でも構わない。
【0014】
本発明における発泡樹脂層2の成形方法としては、水性エマルジョン樹脂やポリ塩化ビニル樹脂のペーストレジンを用いる際は、コーティング方式が好適である。
一方ポリオレフィン系樹脂や、ポリ塩化ビニル樹脂のストレートレジンを用いる際は、カレンダー方式または押し出し方式が好適である。
【実施例1】
【0015】
基材シートの下層としてポリエチレン合成繊維50重量%と木材パルプ製50重量%をテスト抄造機にて混抄した厚さ40g/mの混抄紙を用い、上層としてポリプロピレン合成繊維50重量%と木材パルプ50重量%厚さ40g/mの混抄紙を用い、これらを熱プレス150℃60秒にて貼り合わせた。
【0016】
この上に、表1に示す組成(数字は重量部)のストレートレジン仕様の発泡ポリ塩化ビニル樹脂を用い、カレンダーにて混抄紙上に厚さ150g/mにラミネートを行った。その後、グラビア印刷機にて柄模様を印刷し、190℃にて加熱発泡と同時にロールエンボス版によりエンボス加工を施して壁紙を得た。
【実施例2】
【0017】
前記実施例1において、ストレートレジン仕様の発泡ポリ塩化ビニル樹脂の代わりに、ペーストレジン仕様の発泡ポリ塩化ビニル樹脂を用い、コンマコーターにて厚さ150g/m混に塗工を行い、混抄紙上にラミネートを行い、その他は前記実施例1と同様にして壁紙を得た。
【実施例3】
【0018】
前記実施例1において、ストレートレジン仕様の発泡ポリ塩化ビニル樹脂の代わりに、表1に示す組成の発泡水性エマルジョン樹脂を用い、ダイコータにて混抄紙上に厚さ150g/mに塗工を行い、その他は前記実施例1と同様にして壁紙を得た。
【実施例4】
【0019】
前記実施例1において、ストレートレジン仕様の発泡ポリ塩化ビニル樹脂の代わりに、表1に示す組成の発泡ポリオレフィン系樹脂を用い、カレンダーにて混抄紙上に厚さ150g/mにラミネートを行い、その他は前記実施例1と同様にして本発明の壁紙を得た。
【0020】
<比較例1>
前記実施例1において、下層をポリエチレン合成繊維10重量%と木材パルプ90重量%、上層をポリプロピレン合成繊維10重量%と木材パルプ90重量%を含む混抄紙を用いて、その他は実施例2と同様にして壁紙を得た。
【0021】
<比較例2>
前記実施例1において、下層をポリエチレン合成繊維90重量%と、木材パルプ10重量%、上層をポリプロピレン合成繊維90重量%と木材パルプ10重量%を含む混抄紙を用いて、その他は実施例2と同様にして壁紙を得た。
【0022】
以上の各例について、コーティング時またはカレンダー時の問題の有無と、剥離強さ、水伸縮、施工性(切り目)の評価を行った。
【0023】
<剥離強さ>
層間で剥離させ、その状態を確認(きれいに剥がれているか、凹凸がないか)し、また強度を測定した。20N/m以下では自重により剥離する恐れがあり、35N/m以上ではきれいに層間で剥離できない恐れがある。
【0024】
<水伸縮評価>
各壁紙1mを水の中に60分間浸漬し、取り出した直後の寸法及び24時間風乾後の寸法の、浸漬前の寸法に対する変化率(%)を測定した。
【0025】
<施工性評価>
各壁紙を石膏ボードに貼り付け、カッターナイフにて中央に切り目を入れた。その後、霧吹きにて水を吹きかけ、24時間後に切り目が目立つか目立たないか評価を行った。
【0026】
【表1】

【0027】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の壁紙は、でんぷん糊等水性樹脂を用いて施工後、剥がして、再施工する際、基材シート層間にて剥離しやすく、下地処理等の工程を省き、再施工しやすいするための壁紙かつ施工時に水伸縮が少なく、ジョイント部の目開きが起こりにくいものとして利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の壁紙の一実施例の断面の構造を示す説明図である。
【符号の説明】
【0030】
1…基材シート
11…ポリエチレン合成繊維を含有した混抄紙
12…ポリプロピレン合成繊維を含有した混抄紙
2…発泡樹脂層
3…絵柄層
4…エンボス加工

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも基材シートと発泡樹脂層とからなる壁紙において、前記基材シートが、ポリエチレン合成繊維15〜80重量%と木材パルプ繊維20〜85重量%とからなる混抄紙と、ポリプロピレン合成繊維15〜80重量%と木材パルプ繊維20〜85重量%とからなる混抄紙の2層の積層構造を有することを特徴とする壁紙。

【図1】
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【公開番号】特開2006−103013(P2006−103013A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−289491(P2004−289491)
【出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】