説明

壁背後アンテナシステム

【課題】建築構造物の壁や床のように一方の面から入射した電波が減衰させられて、他方の面の空間に伝達された電波を利用する壁背後アンテナシステムを提供する。
【解決手段】本発明による壁背後アンテナシステムは、壁5と、電波を反射し壁背後に電界強度の高い領域を形成する収束性反射面(コーナーレフレクタ12)と、壁5と前記収束性反射面間の電界強度が周辺より大きい領域に配置されるアンテナ21と、アンテナ21に接続された伝送線路22とを含んでいる。壁5の前面と前記反射面間に共振空間を形成し、壁5と前記反射面間の距離を調整し、アンテナ21のインピーダンスと壁前方空間のインピーダンスとの整合状態を形成し、壁背後電波を直接的に利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築構造物の壁や床のように一方の面から入射した電波が減衰させられて、他方の面の空間(以下本願では壁背後、または壁背後空間)に伝達された電波を利用する壁背後アンテナシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
情報通信ネットワークの中で、空間を伝搬する電波を利用する無線通信技術の応用範囲が拡大している。情報通信に使われる電波に対して、建築等の構造物の壁(例えばコンクリート製の建築物の壁や床)は伝搬損失を与えることが知られている。
この影響を避ける為に数多くの提案、例えは壁で減衰させられる前に専用のアンテナで受信して伝送線路を介して他の空間に電気信号として導くとか、さらには増幅して室内に放射する等の対策が実施されている。
特許文献1記載のアンテナ装置は電波に不透明な壁等で分離された空間で外部の電波情報を利用するために、外部(一方)の空間で受信し、受信した電波を伝送線路を介して内部(他方)の空間に導入し、増幅して再度アンテナを介して内部空間に放出し、内部の利用者が個別の受信装置で受信して利用する方式(一般的に用いられている方式)を示している。
また特許文献2記載の発明は壁材に電波透過部を設けた建物用壁材及び無線伝送システムに関するものであって、壁に穴を設けその穴にレンズアンテナを設け壁の両側のアンテナ間の通信を可能にしている。
また特許文献3記載の埋設無線装置に係る発明はマンホール内部の地下アンテナから放出された電波をマンホールの鉄蓋の外周のコンクリート環状の放射面から外部に放出し、地上のアンテナに接続する構造を提案している。
【特許文献1】特開平8−331028号公報
【特許文献2】特開2007−270459号公報
【特許文献3】特開2007−43280号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、前述のように壁に加工を施すことなくコンクリート壁等による電波伝搬損失の影響を軽減する技術の開発に向けられたものである。
本件発明者等は、壁を透過し強度が低下した電波をなるべく広い面積にわたって収集し、収集した電波を狭い面積に集中させて電界強度の高い領域をつくることができることに着目した。
本発明の目的は、電波を減衰させる壁を含めて壁背後アンテナシステムを形成し、壁を透過し強度が低下した電波をなるべく広い面積にわたって収集し、収集した電波を狭い面積に集中させて電界強度の高い領域をつくることにより、壁背後における電波の利用を図る壁背後アンテナシステムを提供することにある。
【0004】
前記目的を達成するために、本発明による請求項1記載の壁背後アンテナシステムは、
壁と、電波を反射し壁背後に電界強度の高い領域を形成する収束性反射面と、前記壁と前記収束性反射面間の電界強度が周辺より大きい領域に配置されるアンテナと、前記アンテナに接続された伝送線路とを含み、
前記壁の前面と前記反射面間に共振空間を形成し、前記壁と反射面間の距離を調整し、前記アンテナのインピーダンスと壁前方空間のインピーダンスとの整合状態を形成し、壁背後で電波を直接的に利用することを特徴とするものである。
【0005】
本発明による請求項2記載の壁背後アンテナシステムは、請求項1記載の壁背後アンテナシステムにおいて、
前記壁の背後にλ/4の誘電体板を配置したことを特徴とするものである。
本発明による請求項3記載の壁背後アンテナシステムは、請求項1または2記載の壁背後アンテナシステムにおいて、
前記収束性反射面(第1の収束性反射面)と前記アンテナ(第1のアンテナ)を第1のアンテナ組立とし、
前記第1の収束性反射面と背中合わせに配置される第2の収束性反射面とこの第2の収束性反射面に対応して設けられ前記伝送線路に接続されている放射用の第2のアンテナとから第2のアンテナ組立を形成し、
壁背後空間にさらに前記第2のアンテナ組立による電界分布を形成することを特徴とするものである。
本発明による請求項4記載の壁背後アンテナシステムは、請求項1または2記載の壁背後アンテナシステムにおいて、
前記伝送線路に増幅器が接続されていることを特徴とするものである。
【0006】
本発明による請求項5記載の壁背後アンテナシステムは、請求項3記載の壁背後アンテナシステムにおいて、
前記第1および第2の収束性反射面はコーナーレフレクタ反射面であり、
前記第1および第2のアンテナは各々1以上のダイポールアンテナであることを特徴とするものである。
本発明による請求項6記載の壁背後アンテナシステムは、請求項5記載の壁背後アンテナシステムにおいて、
前記第1および第2のアンテナ組立はさらに上導体板および下導体板を有することを特徴とするものである。
本発明による請求項7記載の壁背後アンテナシステムは、請求項3記載の壁背後アンテナシステムにおいて、
前記第2のアンテナは、前記第2の収束性反射面のさらに後方にさらに他の電界強度が周辺より大きい領域(ホットスポット)を形成することを特徴とするものである。
【0007】
本発明による請求項8記載の壁背後アンテナシステムは、請求項7記載の壁背後アンテナシステムにおいて、
前記第2のアンテナ組立は、後方上導体板および後方下導体板を有し、前記後方上下導体板の放出側からの反射波を惹起することを特徴とするものである。
本発明による請求項9記載の壁背後アンテナシステムは、請求項8記載の壁背後アンテナシステムにおいて、
前記第2のアンテナ組立の後方上導体板および後方下導体板は、半円形形状を有することを特徴とするものである。
本発明による請求項10記載の壁背後アンテナシステムは、請求項7記載の壁背後アンテナシステムにおいて、
前記ホットスポットにLAN室内中継装置を組み合わせて利用することを特徴とするものである。
【0008】
本発明による請求項11記載の壁背後アンテナシステムは、請求項3記載の壁背後アンテナシステムにおいて、
前記第1のアンテナで収集した電波を前記第2のアンテナ組立で縦方向と横方向に集束して電界強度の高い放射ビームを放出することを特徴とするものである。
本発明による請求項12記載の壁背後アンテナシステムは、請求項11記載の壁背後アンテナシステムにおいて、
前記第1および第2のアンテナ組立はコーナーレフレクタ反射面を背中合わせに組み合わせて構成し、前記各組立のアンテナはダイポールアンテナアレーであることを特徴とするものである。
本発明による請求項13記載の壁背後アンテナシステムは、請求項12記載の壁背後アンテナシステムにおいて、
前記第2のアンテナ組立のコーナーレフレクタ反射面の頂角は第1のアンテナ組立のコーナーレフレクタ反射面の頂角よりは小さいことを特徴とするものである。
本発明による請求項14記載の壁背後アンテナシステムは、請求項12記載の壁背後アンテナシステムにおいて、
前記ダイポールアンテナアレーの隣接素子間の静電結合によるリアクタンス成分の大きさの違いにより、電磁界を前記アンテナの整列方向に集中させたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明による請求項1記載の壁背後アンテナシステムでは、開放形の共振装置を形成することができ、壁前面の電波を有効に捕捉できる。
請求項2記載の壁背後アンテナシステムによれば、壁内の定在波の発生を防止し電波の壁透過効率を向上させることができる。また、調整が極めて容易となる。
請求項3記載の壁背後アンテナシステムでは、第1の収束性反射面と背中合わせに配置される第2の収束性反射面とこの第2の収束性反射面に対応して設けられ伝送線路に接続されている放射用の第2のアンテナとから第2のアンテナ組立を形成し、壁背後空間にさらに第2のアンテナ組立による電界分布を形成することができる。
請求項4記載の壁背後アンテナシステムによれば、伝送線路に増幅器を接続することで第1のアンテナの受信出力を直接利用できる。
本発明による請求項5〜10記載の壁背後アンテナシステムは、第2のアンテナ組立によりホットスポットを形成できる。
本発明による請求項11〜14記載の壁背後アンテナシステムは、第2のアンテナ組立で縦方向と横方向に集束して電界強度の高い放射ビームを放出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下図面等を参照して本発明による壁背後アンテナシステムを説明する。
まず、本発明によるシステムが適用される環境を例示して詳細に説明する。
〔電波の周波数と壁の特性〕電波の周波数として、現在無線LANなどに広く使われている2.4GHz帯を用いることにする。壁としては、コンクリート壁を選び、その誘電特性は、ITU Report 1238 に示されている1GHzにおけるコンクリートの誘電特性を示す複素誘電率:7.0−j0.85が推奨値として与えられているから、ここではこの値を2.4GHzの値として使う。
この値は、εr = 7.0,tanδ=0.1214 に相当する。
【0011】
〔環境のモデル空間1〕図1,図2に示すように、コンクリート壁の厚さを10cmと仮定し、厚さ10cmのコンクリート壁による2.4GHzの伝搬損失を検討することにより、壁背後アンテナシステムの特性を評価する。
厚さ10cmのコンクリート壁に2.4GHz平面波が入射した場合の電波伝搬の様子を、3次元電磁界シミュレーションで解析することにより、このモデル空間の電界を可視化した。
【0012】
図1は、環境のモデル空間1に2.4GHz電波が厚さ10cmのコンクリート壁5を透過する際の電界強度分布を示している(λ/4誘電体層を用いない例)。
コンクリート壁5のεr =7.0 tanδ=0.1214である。
入射波は、1V/mの垂直偏波平面波(進行方向1)である。図右側に強度を示すグレースケールを示してある。
【0013】
電界強度観測線9に沿った電界強度プロフィルを図2に示す。
電界強度観測線9(図1)上の電界強度分布を示し、縦軸の単位はV/mである。
入射波1の電界強度1V/mが10cmのコンクリート壁5を通過することによって0.35V/mに低減している。空気(前方空気層3)―コンクリート壁5との界面では、誘電率の不連続性によって反射波が生じ、壁前方と壁内部に定在波が立っている。
コンクリート壁5による電波伝搬損失は
20log10(0.35/1.0)=−9.12dB
である。
【0014】
〔環境のモデル空間2〕図1に示したモデルに対してコンクリート壁5の背面にλ/4の誘電体板6を設けてある。コンクリート壁5のεr =7.0 tanδ=0.1214である点は前述と異ならない。λ/4の誘電体板6(εr =2.65)が設けられている点で環境のモデル空間1と異なる。
図3にモデル空間2の中央垂直断面における電界強度分布を示す。図右側に強度を示すグレースケールを示してある。図4に、図3に示した電界強度観測線9上の電界強度のグラフを示す。
【0015】
〔環境のモデル空間1と2の比較〕ここで、図2と図4を比較すると図4では、コンクリート壁5中には定在波は発生せず単に減衰していることが分かる。
後方空気層7における電界強度は0.39V/mであって、図2の0.35V/mに比較して0.04V/mだけコンクリート壁5中の損失が少なくなっており、λ/4の誘電体板6を利用することが好ましいことを示している。
すなわち、図2と図4を比較して、λ/4の誘電体板の導入によってコンクリート壁内部の定在波が消滅したことが分かる。その結果、壁による電波吸収が低下し、後方空気層内の電界強度が僅かだが上昇した。
λ/4の誘電体板を導入したことによる効果として、上記の効果に加えて第2番目の効果があるが、それについては、[0023]で述べる。
【0016】
本発明による壁背後アンテナシステムの壁背後において、一旦集められた電波の利用の形態は、以下の3種類に大別される。
〔基本利用形態〕壁背後にコーナーレフレクタ付きダイポールアンテナを配置し、ダイポールアンテナで、一旦コーナーレフレクタで集められた電波を捕捉する。
〔利用形態1〕ダイポールアンテナ出力を受信機入力として直接用いる利用形態で、請求項1,2に従属する請求項4により規定される形態である。
〔利用形態2〕ダイポールアンテナ受信電力を伝送線路を介して反射板の後方空間に導き、アンテナ後方空間にホットスポットを形成する利用形態で、請求項1〜3に従属する請求項7〜10により規定される形態である。なおホットスポットは「電界強度が周辺より大きい領域」の意味で用いている。この形態では、点ではなくある一定以上の電界強度の等強度閉局面で囲まれる領域を指し、球状,棒状の領域等が考えられる。
〔利用形態3〕アンテナ受信電力を伝送線路を介して反射板の後方空間に導き、高指向性アンテナを駆動して電界強度を高めた放射ビームをアンテナ背後空間に形成する利用形態であり、請求項1〜3に従属する請求項11〜14により規定される形態である。
【0017】
次に図5,図6を参照して、前述の基本利用形態の実施例を説明する。
壁5の背後にコーナーレフレクタ12付きダイポールアンテナ21を配置し、ダイポールアンテナ21で電波を捕捉する。
コーナーレフレクタ12の前向き表面は、壁5と入射波1を反射し、壁背後(反射面の前方)に電界強度の高い領域を形成する収束性反射面の役割を果している。アンテナ21は、壁5とコーナーレフレクタ12の反射面間の電界強度の高い領域に配置される。
壁5の前面(空気層との境界面)とコーナーレフレクタ12の反射面間に特定の波長λにおける共振空間を形成する。
そのために壁5の前面とコーナーレフレクタ12の反射面間の距離を調整し、アンテナ21のインピーダンスと壁前方空間のインピーダンスとの整合状態を形成する。
なおこのシステムで壁5の背後にλ/4の誘電体板6を配置すると前述のように壁5内における定在波の発生を防止することができる。
【0018】
図5は、図3に示す環境のモデル空間2に第1アンテナ組立11を配置したときの位置関係を示す略図である。
図6は第1アンテナ組立11を取り出して示した斜視図であり、λ/4の誘電体板6を組立11の一部として示してある。図3に示す環境のモデル空間2は、誘電体板6のみをコンクリート壁5に接触または付着した状態に対応する。
【0019】
第1アンテナ組立11は、コーナーレフレクタ12、上導体板13、下導体板15を含んでいる。図5に示す軸線9上にダイポールアンテナ21がエレメントが垂直になるように伝送線路(同軸線路)22により支持されており、信号出力端子23は後方に引き出されている。コーナーレフレクタ12の頂角は90°であり、壁5と誘電体板6を介して侵入した電波を壁方向に反射する。
本願実施例において第1アンテナ組立11は、λ/4の厚さの誘電体板6を上下の導体板13,15でコーナーレフレクタ12と一体化してアンテナ部を構成してある。この第1アンテナ組立11のλ/4の誘電体板6をコンクリート壁5に押し当てて使用する。
【0020】
図6はこの第1アンテナ組立11を取り出して示しており、上下の導体板13,15とコーナーレフレクタ12の取り付け状態を調節して、コーナーレフレクタ12のアンテナ21とλ/4の誘電体板6間の距離を最適値に保つ。
これによりアンテナインピーダンスを壁前方空間のインピーダンスに整合させ前述した開放形の共振器が形成される。
図5と図6に示した構造により、コンクリート壁5の前面とコーナーレフレクタ12で共振器を形成し、その一部に電界強度の高い領域をつくる。そこにダイポールアンテナ21を配置して第1アンテナ組立11を高感度受信アンテナとして実現する。
図5において、a5 ,b5 およびc5 は壁前方の計算空間を示し、それぞれ32cm,36cmおよび15cmである。壁の厚さd5 は10cmである。
図6において、誘電体板6のf6 ,g6 およびh6 はそれぞれ高さ, 幅および厚さを示し、それぞれ25cm,32cmおよび1.8cmである。上導体板13と下導体板15の前幅はg6 と等しく、奥行きe6 は24.5cmである。
【0021】
図7は、ダイポールアンテナ21、伝送線路22、コーナーレフレクタ12の関係を説明するための拡大図である。
図7に示すダイポールアンテナ21の放射インピーダンスおよび同軸線路インピーダンスは50オームである。
入射波1が前方空気層3からコンクリート壁5に入射されλ/4の誘電体板6を介して後方空気層7に到達し、入射波1の成分はコーナーレフレクタ12で反射され後方空気層7に周辺よりも電界強度の高い領域を形成する。この入射波1の成分をダイポールアンテナ21が前記領域で受信する。ダイポールアンテナ21のアンテナ要素21aは、伝送線路(同軸線路)22の中心導体222に接続されており、他のアンテナ要素21bは、伝送線路(同軸線路)22の外導体221に接続されている。
伝送線路22はコーナーレフレクタ12の頂角(図7のh7 )に接続されている。中心導体222の他端23は出力端子として使用されることがある。
【0022】
次に、図7に示す実施例の各部の数値を示す。アンテナ要素21aおよびアンテナ要素21bの長さa7 はそれぞれ1.97cm、太さg7 は0.4cmである。
コーナーレフレクタ12の頂角(図7のh7 )からアンテナ要素21a,21bまでの距離e7 は4.925cmである。
伝送線路(同軸線路)22の外導体221の直径b7 は1.024cm、外導体221の内径c7 は0.80cm、中心導体222の直径d7 は0.224cmであり、外導体221の長さi7 は4.525cmである。伝送線路(同軸線路)22内の誘電体f7 の誘電率εr は2.33である。
【0023】
与えられた動作周波数(この実施例では2.4GHz)で、所定のアンテナインピーダンスをもち、最大受信感度を達成するためには、アンテナ21と壁後方境界面間の距離とアンテナ21とレフレクタ12の頂角(図7のh7 )間の距離を同時に最適化する必要がある。
最適化は次の手順で達成できる。
図6のモデルから誘電体板を取り除いたモデルを用意する。このモデルの同軸線路終端に信号源(内部インピーダンス50Ω)を接続し、コーナーレフレクタのダイポールアンテナを送信アンテナとして駆動し、その動作特性を数値シミュレーションで解析する。
ダイポールアンテナとレフレクタ頂角の距離を走査しながら数値計算を繰り返し、2.4GHzでアンテナインピーダンスが50Ωとなる距離を見出す。
次に、図5のモデル(ダイポールアンテナとレフレクタ頂角の距離は最適値に固定)を使いシミュレーションを実行する。このシミュレーションでは壁前方空間から平面波を入射し、アンテナシステムを受信モードで動作させる。コンクリート壁背面とレフレクタアンテナ先端の距離を走査しながら、出力ポート(あるいは伝送線路上)の信号電界強度が最大となる距離(最適値)を見出す。この実施例では、最適距離は約10cmとなる。他方、距離が最適値から僅かにずれたとき信号電界強度が大幅に低下する状態は実用的見地から望ましくない。コンクリート壁背面上にλ/4の誘電体板を配置することによって、距離の変化に対する信号電界強度の変動幅を低減できる。その理由は、図5で誘電体板の後面から前方を見込んだときのインピーダンスが自由空間の波動インピーダンスに近い値となるからである。
上記の効果がλ/4の誘電体板を導入したことによる第2番目の効果である。第1番目の効果(コンクリート壁内部の定在波が消滅し損失が軽減される効果(図2と図4の比較)については[0015]で既に述べた。
【0024】
図5に示した構造の動作を図8と図9を参照して説明する。
図8は、λ/4の誘電体板6と、コーナーレフレクタ12とダイポールアンテナ21を上下2枚の導体板13,15で一体化した構造(第1のアンテナ組立)をコンクリート壁5の背後に配置したアンテナシステムの3次元電磁界のある瞬間のありさま(スナップショット)を示す中央縦断面図である。
左端面にて強度1V/mの垂直偏波平面波1で励振する。グレースケール等高線図を図面の右側に示してある。
【0025】
図9は、図5に示した構造の3次元電磁界のある瞬間のありさま(スナップショット)を示す中央横断面図(電界強度観測線9を含む水平面で切断して示している)である。
電界強度観測線(アンテナ軸から2mm下方)に沿った電界強度分布プロフィルを図10に示す。
図10において、同軸線路終端における電界強度は12.2V/mであり、同軸線路外導体221と中心導体222間の距離2.88mm(=0.4cm−0.112cm)にかかる電圧の概算値は12.2(V/m)×2.88(mm)=35mVとなっている。
【0026】
前述したシステムと比較対照モデルとを対比する。
比較対照モデルは、基準アンテナとして、動作(共振)周波数2.4GHz、輻射抵抗50Ωのダイポールアンテナを使う。この基準アンテナを自由空間中に置き、平面波を照射する。アンテナ出力端子空隙(5mm)の中心を通る直線(電界強度観測線)上の電界強度分布を図11に示す。終端開放条件の下での値である。進行波の強度は図11のピーク値7V/mの1/2となるので3.5V/mである。3.5V/mに対応する空隙電圧は、
3.5×5×10-3=0.0175V=17.5mV となる。
【0027】
次に、同じダイポールアンテナをコンクリート壁背後に配置し、壁前方から平面波(強度1V/m)で照射する。この場合の観測直線上の電界強度分布を図12に示す。
図12は、基準ダイポールアンテナをコンクリート壁背後に置き壁前方から平面波(強度1V/m)で照射した場合の1次元電界強度分布を示す。終端開放条件下の電界強度ピーク値は2.45V/m、進行波の電界強度は1.23V/mとなる。
1.23V/mに対応する端子電圧は
1.23×5×10-3=0.00615V=6.15mV
コンクリート壁による伝搬損失は
20log10(6.15mV/17.5mV)=−9.08dB
となる。この値は、図1から算出された値
20log10(0.35/1)=−9.12dB
と大略一致する。基準ダイポールと比較して約9.1dB以上の利得をもつ受電装置を実現できれば、コンクリート壁による伝搬損失を軽減する有効な手段となる。
本発明で提案したコーナーレフレクタダイポールアンテナの利得は
20log10(35mV/6.15mV)=15.10dB
と見積ることができる。これは9.1dBを大きく上回るので、有効な対策であると結論できる。
【0028】
利用形態1は、伝送線路(同軸線路)22の出力端子23に受信機を直接接続して入射波1に含まれる信号を検出して利用するものである。
【0029】
次に、利用形態2(壁背後ホットスポットアンテナ)について説明する。
利用形態2は、環境のモデル空間2に第1および第2アンテナ組立を設けたものである。そして、第2アンテナ組立の第2の反射面のさらに後方にさらに他の電界強度がその周辺より大きい領域(ホットスポット)を形成するものである。この構成を実施例を参照して説明する。
図13は、壁背後ホットスポットアンテナの実施例と壁等の関係を示す略図的斜視図である。図14の(A)は図13のシステムの縦断面図,(B)は水平断面図である。図15は、壁背後ホットスポットアンテナの実施例の壁背後の構造部分を取り出して示した縦断面図である。
【0030】
入射波1,前方空気層3,コンクリート壁5,λ/4の誘電体板6,電界強度観測線9の位置関係、第1アンテナ21を含む第1アンテナ組立11等の構成は前述した実施例と略同じである。第2アンテナ組立は、第1アンテナ組立11のコーナーレフレクタ12と背中合わせに対応する後方コーナーレフレクタ41、第2アンテナ31、後方上下導体板33,35を含んでいる。受信ダイポールアンテナ(第1アンテナ)21に送信ダイポールアンテナ(第2アンテナ)31が平行2線伝送線路37(70Ω)により接続されている。さらに、前述した上下導体板13,15の後半部が第2アンテナ組立の上下に延び出しており、さらに、両側面導体板39,39が設けられている。また、後方コーナーレフレクタ41は第2アンテナ31に対応させられている。
この構造でさらに、前述した後方上導体板33と後方下導体板35は、それぞれの後方半円形終端部で反射波を発生させ、ホットスポットをアンテナ軸(電界強度観測線9)上のほぼ一定位置に誘起する。なお、後方上導体板33と後方下導体板35は、後方上傾斜導体板32と後方下傾斜導体板36により、上導体板13と下導体板15にそれぞれ固定されている。このように後方の高さ方向の寸法を絞ることで電界強度を高めている。
【0031】
なお各部の寸法は次のとおりである。なお前方空気層3,コンクリート壁5,誘電体板6の構成形状は前述の実施例と異ならないから説明を省略する。
コンクリート壁5の後面から両側面導体板39,39の後端面までの距離a13(a14)は45cm、両側面導体板39の長さd14は41cm、両側面導体板39,39間の距離b13(e14)は23cmである。誘電体板6の後面から上下導体板13,15の後端までの距離d13は43.2cmである。後方上導体板33と後方下導体板35の距離b14(e15)は6.25cmである。
誘電体基板38の前方の軸方向の長さb15は5.073cm、誘電体基板38の後方の軸方向の長さc15は4.673cmであり、誘電体基板38の高さd15は4.85cmである。上導体板13,下導体板15間の距離c13(c14,a15)は18.75cmである。
【0032】
前述の構造の壁背後ホットスポットアンテナの動作の結果を図16と図17に示す。図16はモデル中央垂直断面内の電界強度分布スナップショット、図17はモデル中央水平断面内電界(垂直方向)強度分布スナップショットである。入射波は強度1V/mの垂直偏波平面波である。図16と図17のHSpと示した位置にホットスポットが形成されていることが分かる。
【0033】
図18は、電界強度観測線9上の電界(垂直方向)強度分布であり、送信(後方)ダイポールアンテナ(第2アンテナ)31の後方14.5cm付近の空間にホットスポットが形成されている。
図18の縦軸スケールを拡大したプロットを図19に示す。図19に示すように送信(後方)ダイポールアンテナ(第2アンテナ)31の後方13.5cm付近の空間にホットスポットが形成されている。電界強度が0.7V/m(=2×0.35V/m)以上となる領域でホットスポットを定義すると、その直径は6.99cmとなる。ホットスポット中心(距離66.04cm)における電界強度は1.72V/mで入射波の電界強度1V/mを大きく超える。
【0034】
壁後方ホットスポットアンテナの利用法として、LAN室内中継器やルーター受信機のアンテナをホットスポットに配置して信号を受信することを想定している。図18と図19において、ホットスポットの中心領域では電界強度が入射波の電界強度を超えることを示している。ホットスポット中心領域からコンクリート壁を通して前方空間を見るとき、コンクリート壁は実効的に透明であると言える。
【0035】
次に、図20,図21を参照して、利用形態3(壁背後空間放射ビーム形成)の実施例を説明する。この実施形態によれば、壁背後空間に電界強度が増強された放射ビームを形成することができる。つまり、壁背後空間で収集した電波を縦方向と横方向で集中して電界強度の高い放射ビームが作り出される。
図20の(A)は壁背後ビームを形成する実施例の斜視図,(B)は平面断面図,(C)は縦断面図である。図21はコンクリート壁501に前記実施例の誘電体板601を密着させた状態を示す略図的な斜視図である。
前方コーナーレフレクタ121の頂角は90°で、後方コーナーレフレクタ411の頂角は55°であり、互いに背中合わせに配置され、それぞれの中央部に3対のダイポールアンテナを縦方向に配置してある。
【0036】
前方コーナーレフレクタ121の前方にλ/4の誘電体板601が配置され、誘電体板601とアンテナ構造を上下導体板131,151で一体化してある。
受信ダイポールアンテナ211(上,中,下)に対応する送信ダイポールアンテナ311(上,中,下)は、それぞれ伝送線路511で対に接続されている。この実施例の主要な部分の寸法は次のとおりである。
λ/4の誘電体板601の高さa20は43.75cm、幅b20は32cmである。上下導体板131,151の長さe20は42cmである。
前方コーナーレフレクタ121の開口幅c20は24cmで深さ(軸方向の長さ)f20は12cmである。後方コーナーレフレクタ411の開口幅d20は20cmで深さ(軸方向の長さ)g20は20cmである。
【0037】
前述の構成の壁背後空間放射ビーム形成の実施形態の振る舞いを図22〜26を参照して説明する。なお図21に示す様に各受送信アンテナ対の軸線をC1,C2,C3のようにあらわす。
【0038】
図22は、環境のモデル空間2に前述の壁背後空間放射ビーム形成の実施形態(第1アンテナ組立と第2アンテナ組立)を適用し、第2アンテナ組立後方に壁背後ビームを形成する壁背後アンテナシステムの電界強度観測線C2を含む垂直平面における電界強度の分布を示す説明図である。入射波は1V/mの垂直偏波平面波である。
【0039】
図23は、第2アンテナ組立後方に壁背後ビームを形成する壁背後アンテナシステムの電界強度観測線C2を含む水平平面における電界強度の分布を示す説明図である。
図22と図23は、受信ダイポールアンテナ211で収集された電波が伝送線路511を介して送信ダイポールアンテナ311に送られ、後方空間へ放射される様子を示している。図22はその過程で、電波が縦方向に集中する様子を、図23は横方向に集中する様子を示している。
図22は、送信アンテナ側で中央の素子近傍に電波が集中している様子を示す。この電界集中効果は次のように説明できる。中央のアンテナ素子は近接する上下両側のアンテナ素子の影響を受け、容量性リアクタンスが両側の素子に比べて大きい。そのため、入射平面波で同相励振された時、中央素子上に励起される信号の位相が両側の素子の信号位相より遅れる。その結果、入射波は平面波であるが後方空間への放射波は中央素子近傍の狭い領域に集中する。
【0040】
図24は、第2アンテナ組立後方に壁背後ビームを形成する壁背後アンテナシステムの電界強度観測線C2(中央のアンテナ対の軸)上の電界強度分布を示すグラフである。
図25は、第2アンテナ組立後方に壁背後ビームを形成する壁背後アンテナシステムの電界強度観測線C2(中央のアンテナ対の軸)上の電界強度分布を図24の縦軸尺度を拡大して示したグラフである。横軸は解析モデルの左端からの距離(cm)を示している。
送信ダイポールアンテナ311から後方へ11.6cmまでの領域で電界強度は1V/mを越えており、21.2cmまでの領域で電界強度は0.7V/mを越えており、53.7cmまでの領域で電界強度は0.35V/mを越えている。
【0041】
図26は、第2アンテナ組立後方に壁背後ビームを形成する壁背後アンテナシステムの電界強度観測線C1(C3)に沿った電界強度分布を示すグラフである。
図25と図26を比較して、送信アンテナ側では電磁界が中央のアンテナの軸上に集中していることが分かる。
【0042】
以上詳しく説明した実施例について、本発明の範囲内で種々の変形を施すことができる。実施例としてコンクリート壁について詳細に説明を行ったが、コンクリート壁以外の電波に対して半透明な壁面や床面等についても本発明を適用できる。
λ/4の誘電体の利用は、利用しないものに比較して、感度を増大させるだけではなく、調整を容易にする。その効果を達成するために、誘電体について壁に対応して、内部の定在波の発生の抑圧に寄与できる種々の変形(材質の選択、枚数の選択)が可能であり、それらの変形は本発明の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明による壁背後アンテナシステムが適用される環境のモデル空間1の3次元電磁界分布を示す斜視図である。
【図2】環境のモデル空間1(図1)において電界強度観測線上での電波の電界強度の変化を示すグラフである。
【図3】本発明による壁背後アンテナシステムが適用される環境のモデル空間2(λ/4の誘電体板を配置)の3次元電磁界分布を示す斜視図である。
【図4】環境のモデル空間2(図3)において電界強度観測線上で入射した電波の電界強度の変化を示すグラフである。
【図5】環境のモデル空間2(図3)に第1アンテナ組立を配置した状態を示す斜視図である。
【図6】第1アンテナ組立を取り出して示した斜視図であり、λ/4の誘電体板を組立の一部として示してある。
【図7】ダイポールアンテナ、伝送線路、コーナーレフレクタの関係を説明するための拡大図である。
【図8】環境のモデル空間2に第1アンテナ組立を適用した実施例の電界強度観測線を含む垂直平面における電界強度の分布を示す説明図である。
【図9】環境のモデル空間2に第1アンテナ組立を適用した実施例の電界強度観測線を含む水平平面における電界強度の分布を示す説明図である。
【図10】環境のモデル空間2に第1アンテナ組立を適用した実施例の電界強度分布プロフィルを示すグラフである。
【図11】基準ダイポールアンテナを自由空間中に置き平面波(強度1V/m)で照射した場合の電界強度分布プロフィルを示すグラフである。
【図12】ダイポールアンテナをコンクリート壁背後に置き壁前方から平面波(強度1V/m)を照射した場合の1次元電界強度分布を示すグラフである。
【図13】環境のモデル空間2に第1および第2アンテナ組立を設け、第2アンテナ組立の第2の反射面のさらに後方にさらに他の電界強度がその周辺より大きい領域(ホットスポット)を形成する壁背後アンテナシステムの斜視図である。
【図14】図13に示したホットスポットを形成する壁背後アンテナシステムの実施例の縦断面図(A)および水平断面図(B)である。
【図15】図13に示したホットスポットを形成する壁背後アンテナシステムの第1および第2アンテナ組立を取り出して示した縦断面図である。
【図16】環境のモデル空間2に第1アンテナ組立と第2アンテナ組立を適用し、第2アンテナ組立後方にホットスポットを形成する壁背後アンテナシステムの実施例の電界強度観測線を含む垂直平面における電界強度の分布を示す説明図である。
【図17】第2アンテナ組立後方にホットスポットを形成する壁背後アンテナシステムの実施例の電界強度観測線を含む水平平面における電界強度の分布を示す説明図である。
【図18】第2アンテナ組立後方にホットスポットを形成する壁背後アンテナシステムの実施例の電界強度観測線上の電界(垂直方向)強度分布を示すグラフである。
【図19】図18の縦軸スケールを拡大して示した強度分布を示すグラフである。
【図20】環境のモデル空間2に第1および第2アンテナ組立を設け、第2アンテナ組立の後方に壁背後ビームを形成する壁背後アンテナシステムの実施例を示す図であって、同図(A)は概略斜視図、同図(B)は平面断面図、同図(C)は縦断面図である。
【図21】図20に示した壁背後ビームを形成する壁背後アンテナシステムの壁とシステムの関係を示す斜視図である。
【図22】環境のモデル空間2に第1アンテナ組立と第2アンテナ組立を適用し、第2アンテナ組立後方に壁背後ビームを形成する壁背後アンテナシステムの電界強度観測線C2を含む垂直平面における電界強度の分布を示す説明図である。
【図23】第2アンテナ組立後方に壁背後ビームを形成する壁背後アンテナシステムの電界強度観測線C2を含む水平平面における電界強度の分布を示す説明図である。
【図24】第2アンテナ組立後方に壁背後ビームを形成する壁背後アンテナシステムの電界強度観測線C2(中央のアンテナ対の軸)上の電界強度分布を示すグラフである。
【図25】第2アンテナ組立後方に壁背後ビームを形成する壁背後アンテナシステムの電界強度観測線C2(中央のアンテナ対の軸)上の電界強度分布を図24の縦軸尺度を拡大して示したグラフである。
【図26】第2アンテナ組立後方に壁背後ビームを形成する壁背後アンテナシステムの電界強度観測線C1(C3)に沿った電界強度分布を示すグラフである。
【符号の説明】
【0044】
1 入射波
3 前方空気層
5 コンクリート壁
6 λ/4の誘電体板
7 後方空気層
9 電界強度観測線
11 第1アンテナ組立
12 コーナーレフレクタ
13 上導体板
15 下導体板
21 ダイポールアンテナ
22 伝送線路(同軸線路)
23 信号出力端子
31 ダイポールアンテナ(第2アンテナ)
32 後方上傾斜導体板
33 後方上導体板(円板)
35 後方下導体板(円板)
36 後方下傾斜導体板
37 平行2線伝送線路
38 誘電体基板
39 側面導体板
41 後方コーナーレフレクタ
121 前方コーナーレフレクタ
131 上導体板
151 下導体板
211(上,中,下) 受信ダイポールアンテナ
311(上,中,下) 送信ダイポールアンテナ
511 伝送線路
411 後方コーナーレフレクタ
HSp ホットスポット
C1,C2,C3 電界強度観測線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁と、電波を反射し壁背後に電界強度の高い領域を形成する収束性反射面と、前記壁と前記収束性反射面間の電界強度が周辺より大きい領域に配置されるアンテナと、前記アンテナに接続された伝送線路とを含み、
前記壁の前面と前記反射面間に共振空間を形成し、前記壁と反射面間の距離を調整し、前記アンテナのインピーダンスと壁前方空間のインピーダンスとの整合状態を形成し、壁背後で電波を直接的に利用することを特徴とする壁背後アンテナシステム。
【請求項2】
請求項1記載の壁背後アンテナシステムにおいて、
前記壁の背後にλ/4の誘電体板を配置したことを特徴とする壁背後アンテナシステム。
【請求項3】
請求項1または2記載の壁背後アンテナシステムにおいて、
前記収束性反射面(第1の収束性反射面)と前記アンテナ(第1のアンテナ)を第1のアンテナ組立とし、
前記第1の収束性反射面と背中合わせに配置される第2の収束性反射面とこの第2の収束性反射面に対応して設けられ前記伝送線路に接続されている放射用の第2のアンテナとから第2のアンテナ組立を形成し、
壁背後空間にさらに前記第2のアンテナ組立による電界分布を形成することを特徴とする壁背後アンテナシステム。
【請求項4】
請求項1または2記載の壁背後アンテナシステムにおいて、
前記伝送線路に増幅器が接続されていることを特徴とする壁背後アンテナシステム。
【請求項5】
請求項3記載の壁背後アンテナシステムにおいて、
前記第1および第2の収束性反射面はコーナーレフレクタ反射面であり、
前記第1および第2のアンテナは各々1以上のダイポールアンテナであることを特徴とする壁背後アンテナシステム。
【請求項6】
請求項5記載の壁背後アンテナシステムにおいて、
前記第1および第2のアンテナ組立はさらに上導体板および下導体板を有することを特徴とする壁背後アンテナシステム。
【請求項7】
請求項3記載の壁背後アンテナシステムにおいて、
前記第2のアンテナは、前記第2の収束性反射面のさらに後方にさらに他の電界強度が周辺より大きい領域(ホットスポット)を形成することを特徴とする壁背後アンテナシステム。
【請求項8】
請求項7記載の壁背後アンテナシステムにおいて、
前記第2のアンテナ組立は、後方上導体板および後方下導体板を有し、前記後方上下導体板の放出側からの反射波を惹起することを特徴とする壁背後アンテナシステム。
【請求項9】
請求項8記載の壁背後アンテナシステムにおいて、
前記第2のアンテナ組立の後方上導体板および後方下導体板は、半円形形状を有することを特徴とする壁背後アンテナシステム。
【請求項10】
請求項7記載の壁背後アンテナシステムにおいて、
前記ホットスポットにLAN室内中継装置を組み合わせて利用することを特徴とする壁背後アンテナシステム。
【請求項11】
請求項3記載の壁背後アンテナシステムにおいて、
前記第1のアンテナで収集した電波を前記第2のアンテナ組立で縦方向と横方向に集束して電界強度の高い放射ビームを放出することを特徴とする壁背後アンテナシステム。
【請求項12】
請求項11記載の壁背後アンテナシステムにおいて、
前記第1および第2のアンテナ組立はコーナーレフレクタ反射面を背中合わせに組み合わせて構成し、前記各組立のアンテナはダイポールアンテナアレーであることを特徴とする壁背後アンテナシステム。
【請求項13】
請求項12記載の壁背後アンテナシステムにおいて、
前記第2のアンテナ組立のコーナーレフレクタ反射面の頂角は第1のアンテナ組立のコーナーレフレクタ反射面の頂角よりは小さいことを特徴とする壁背後アンテナシステム。
【請求項14】
請求項12記載の壁背後アンテナシステムにおいて、
前記ダイポールアンテナアレーの隣接素子間の静電結合によるリアクタンス成分の大きさの違いにより、電磁界を前記アンテナの整列方向に集中させたことを特徴とする壁背後アンテナシステム。

【図2】
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【図4】
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【図7】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図18】
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【図19】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図1】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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