説明

壁面探査装置

【課題】下地(2)に埋め込まれた物体(3)を探知するための壁面探査装置(1)およびこの装置が用いる方法であって、正確な深度情報が得られる装置および方法を提案する。
【解決手段】壁面探査装置(1)に、測定周波数(f)の広帯域・高周波交流電場(9)を下地(2)に印加するための探知アンテナ(5)と、この探知アンテナ(5)に接続された、交流電場(9)の物体(3)との遅延相互作用を測定するための測定システム(6)と、測定信号から物体(3)を探知し、およびその深度情報を特定するための計算手段(7)とを設け、誘電率測定手段(8)に、測定周波数よりも低い誘電率測定周波数(f)の場合における下地の誘電率測定信号を測定するための、少なくとも1個の追加電圧プレート(11)を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁面内部に埋め込まれた物体、例えば鉄筋やプラスチック管を探知するための壁面探査装置、およびその測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建設業では、下地に含まれる物体、例えば壁面(側壁、天井、床)内部の鉄筋やプラスチック管の位置を決定するのに、レーダ技術(例えば、特許文献1参照)またはUWB(Ultra-Wide-Band: 超広帯域)技術(例えば、特許文献2参照)を利用した装置が適合する。探査されるべき下地に探知アンテナにより高周波交流電場を印加すると、この交流電場と物体との相互作用が、探知アンテナに遅延反応を及ぼす。周波数領域で作動するよりも、むしろこのように時間領域で作動する測定システムを有する装置が存在する。このような公知の探知用測定システム自体は本発明の対象外であるが、本発明にとって必要な部分を構成する。
【特許文献1】独国特許第19847688号明細書
【特許文献2】欧州特許第1478949号明細書
【0003】
広周波数帯域を用いるのは、すべての測定システムに共通である。このような帯域は、充分な深度解像度を得るのに必要である。建設業において物体の位置を決定するには、0.1〜10GHzの帯域の測定周波数が適切である。使用状況に応じて、充分な側面解像度、充分な深度解像度および充分な侵入度(測定深度)が得られるように、このような広周波数帯域が選択される。すなわち、周波数帯域の中間周波数は、解像度と測定深度を勘案して選択する。より高い周波数ではより高い解像度が得られるが、より大きな減衰が発生し、到達可能な測定深度がより浅くなる。
【0004】
媒体における交流電磁場の伝播速度vは、真空中の光速Cと比較してε1/2分の1倍であり、このεは媒体の比誘電率を意味する。交流電磁場の時間変化または周波数変化から下地における物体の深度を正確に測定するためには、下地の比誘電率も知る必要がある。下地(例えばコンクリート)自体は同じであっても、誘電率は、湿度の関数として大きく変化しうる。乾燥したコンクリートの比誘電率εconcreteは5前後であるのに対して、水の平衡状態における比誘電率εwaterは80前後である。コンクリート(および、レンガや軽量コンクリートといったほとんどの建築材料)の気孔率は高く、およそ14体積%であるので、かなり多くの水分が吸収されうる。したがって、湿度は下地の比誘電率εを決定するにあたって支配的な影響要因である。
【0005】
特許文献2には、下地に埋め込まれた物体を探知するための壁面探査装置が記載されており、この壁面探査装置は、下地に高周波交流電場を印加するための探知アンテナと、この探知アンテナに接続された、物体による交流電場の遅延相互作用を測定するための測定システムと、測定信号から物体を探知し、さらにその深度を決定するための計算手段とを有し、これらにより、手続ステップにおいて物体の信号部分と下地の信号部分とを分離し、後者から、参照値との相関を利用して媒体の比誘電率を算出し、物体の信号部分の位相情報と合わせて、物体の深度の決定に用いる。
【0006】
交流電磁場に対するさらなる影響要因は、下地の含塩量である。塩は、大部分間隙水に溶解するが、これにより伝導率σが増加し、従ってオーム損失が増加する。これは、貫通深度に依存する、印加された交流電磁場の下地による減衰量αを増加させる。深い場所に存在する物体を探知するのに必要な実効性能を得るには、下地による減衰量αが高いほど、必要な信号‐ノイズ割合を得るためより高い出力で下地に電磁場を印加しなければならない。
【0007】
特許文献1には、測定信号に加えて、送信アンテナの側方に離間配置された受信アンテナに向かって放射された高周波クロストーク信号を、下地の減衰量αおよび誘電率を決定するために利用し、決定された減衰量に応じて壁面探査装置の出力を制御するレーダ型壁面探査装置が記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、壁面探査装置、およびこの装置が用いる正確な深度情報を得るための方法を実現することにある
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、基本的には独立請求項に記載の特徴によって達成される。従属項に、好適な実施態様を示す。
【0010】
すなわち、下地に埋め込まれた物体を探知するための壁面探査装置は、測定周波数の広帯域・高周波交流電場を下地に印加するための探知アンテナと、この探知アンテナに接続された、交流電場の物体との遅延相互作用を測定するための測定システムと、測定信号から物体を探知し、およびその深度情報を特定するための計算手段と、測定周波数よりも低い誘電率測定周波数の場合における下地の誘電率測定信号を測定するための、少なくとも1個の追加電圧プレートが設けられた誘電率測定手段とを有する。
【0011】
探知アンテナによって下地に印加された測定周波数の広帯域・高周波交流電場と物体との遅延相互作用を測定する、測定システムによって実行される測定ステップと、測定信号から前記物体を探知し、およびその深度情報を特定する、計算手段によって実行される探知ステップとを有する、下地に埋め込まれた物体を探知するための測定方法では、誘電率測定手段によって実行される、時系列的に先行する誘電率測定ステップにおいて、測定周波数よりも低い誘電率測定周波数により誘電率信号が測定され、誘電率測定ステップより時系列的に後続の誘電率決定ステップにおいて、計算手段により、記憶された材料モデルを用いて測定周波数に対する下地の比誘電率が決定される。
【0012】
誘電率測定手段に、測定周波数よりも周波数の低い別の誘電率測定周波数によって下地の誘電率を決定する少なくとも1個の追加電圧プレートを設けることにより、埋め込まれた物体が誘電率の決定に与える影響が、測定開始当初から大幅に抑えられる。この周波数のより低い誘電率測定周波数は、下地に対する浸入度が基本的に高く、かつ埋め込まれた物体との相互作用が基本的に小さいからである。従って、正確な材料モデルによって間接的に決定された、測定周波数に対する下地の誘電率から、埋め込まれた物体の深度情報も同様に正確に決定することができる。
【0013】
理論的な背景を整理するために、以下では簡潔に物理的な基礎について述べる。誘電定数とも呼称される比誘電率εは、誘電分極の電気感受率に1を加えた値であり、それ自体、連続体近似における純粋な物質特性であるが、ミクロ物理的な「体」(ここでは、点電荷)の動力学に基づくものであるので、時間または周波数に依存する。一般に、このような感受率は、緩和関数(高減衰を仮定した運動方程式の一般解)によってよく記述される。周知でかつ特に水に関して適切な解にはデバイ(DEBYE)緩和関数があり、これは、均一な電場における独立で理想的な緩和関数である。これによると、数ディケイドの範囲において時間または周波数に依存する複素数量、すなわち複素誘電率εの実部によって比誘電率εがあらわされ、虚部によって伝導率が表され、この複素誘電率ε自体は、振幅および位相またはその変換量により実験的に測定可能である。それゆえ、デバイモデルが有効な範囲において、低い誘電率測定周波数の場合に決定される誘電率を、基本的に(2から3ディケイド)高い測定周波数の場合の誘電率に外挿する。同様の方法は、デバイモデルを基礎とする、特定のCRI(Complex-Refraction-Index:複素屈折率)モデルにも有効であり、このモデルは気孔を有する構造物質と水との混合もさらに記述する。
【0014】
誘電率測定周波数が、中程度の波長の測定周波数と比較して、少なくとも2ディケイド低い周波数であると好適であり、少なくとも3ディケイド低い周波数であるとさらに好適である。これによって、誘電率の測定を、埋め込まれた物体の影響をあまり受けず、かつ高い侵入度で実行することができる。
【0015】
少なくとも1個の追加電圧プレートを、探知アンテナに対して対称(鏡面対称または回転対称)に配置すると好適であり。これによって、誘電率測定の中心位置をちょうど探知測定位置と同じにすることができる。
【0016】
誘電率測定手段に接続された、ちょうど1個の追加電圧プレートを設け、この追加電圧プレートが、さらなる電圧プレートとして機能する探知アンテナと共に開放コンデンサを構成し、その誘電体が下地によって構成されるようにすると好適であり、これにより、探知アンテナの多重利用が可能になる。
【0017】
探知アンテナをデカップリング手段(電気的なスイッチまたはローパスフィルタ)を介して誘電率測定手段と接続すると好適であり、これによって、高感度の誘電率測定手段が、高エネルギーで高周波の測定信号から確実に遮断される。
【0018】
誘電率測定手段を発振器とし、その発振回路またはブリッジ回路において、下地を誘電体として有する追加電圧プレートが測定キャパシティを形成するようにすると好適であり、これによって、複素比誘電率が定常的な振動の振幅および位相シフトから簡単に測定可能である。
【0019】
代案として、誘電率測定手段をスイッチ制御されたQT(電荷移動)センサとし、このセンサにより、下地を誘電体として有する追加電圧プレートが一定の測定キャパシティを形成するようにすると好適であり、これによって、比誘電率が、スイッチ制御され電荷移動の原理により蓄積された応力比により、妨害から遮断されかつ高精度で測定される。この場合、減衰は様々なパルス幅を用いることによって決定される。
【0020】
測定方法の誘電率測定ステップにおいて、材料モデルをデバイモデルまたは特定の緩和関数を記述するモデル(測定されたキャリブレーションカーブを含む)とすると好適であり、2から3ディケイドの周波数または時間領域における誘電率および減衰量の高精度な外挿が可能になる。
【0021】
誘電率決定ステップにおける外挿ステップにおいて、誘電率測定ステップで測定された(複素)誘電率に応じて、予め与えられた構造物質誘電率のもとで構造物質への混合を考慮した材料モデル(CRIモデルまたは他の混合モデル)によって含水率を決定し、この含水率を固定パラメータとして材料モデルを用いることにより、測定周波数の場合の下地の複素誘電率が外挿されるようにすると好適であり、これによって、湿度に依存する含水率に関して、その緩和作用を考慮に入れることができる。
【0022】
外挿ステップの後に続く計算ステップにおいて、外挿の結果から下地における交流電磁場の伝播速度vおよび深度に従属する下地の減衰量αが計算されるようにすると好適であり、これによって、探知ステップで高精度の深度決定を行うために、および随意選択的に行われる出力制御のために、必要なパラメータを選択することができる。
【0023】
誘電率決定ステップにおいて、時系列的に先行する分類化ステップで、誘電率測定ステップにおいて測定された複素誘電率に応じて、予め与えられた分類基準値により複数の構造物質分類のうちちょうど1個に当てはめ、得られた構造物質比誘電率を固定パラメータとして選択するようにすると好適であり、これによって、様々な建築材料を考慮することがきる。
【0024】
後続の計算手段による出力制御ステップにおいて、測定システムが、外挿された測定周波数fの場合の下地の減衰量αおよび必要な測定深度に応じて、下地に印加されるべき交流電場の出力強度を、充分な実効性能を得るために必要な出力値として予め選択するようにすると好適であり、これによって、測定に必要な水準よりも高い出力強度で、探知アンテナにより下地に電場を印加することがなくなる。
【0025】
誘電率測定ステップおよび後続の誘電率決定ステップが複数回繰り返されるようにすると好適であり、(n回目の)測定ステップの前に必ず実行されるようにするとさらに好適である。これによって、走査測定の間に壁面探査装置に生じる下地の変化(湿度の変化など)が認識され、探知された物体の深度情報を特定する際、および随意に出力強度の制御にあたり、適切に考慮に入れられる。
【0026】
次に、本発明の好適な実施例に従って、図面と共に本発明を詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1および図2に示す壁面探査装置1は、下地2に埋め込まれた物体3を探知するために、走査方向Sに沿って壁面4上を移動する。この装置の探知アンテナ5は、広帯域・高周波交流電場9を下地2に向けて印加する。探知アンテナ5は広帯域・高周波測定システム6に接続し、この測定システム6は、探知アンテナ5が向けられた測定周波数f=2GHzの交流電場9において生じる、物体3による遅延相互作用を測定する。測定システム6と接続され、マイクロコントローラμCとして構成された計算手段7は、測定信号から物体3を探知し、およびその物体3の深度情報を特定し、この深度情報は入力/出力手段8に表示される。同様に計算手段7に接続された誘電率測定手段10は、測定周波数fと比較してより低周波な誘電率測定周波数f=10MHzによって下地2の複素誘電率εを測定する。この誘電率測定手段10は、少なくとも1個の追加電圧プレート11を有し、この追加電圧プレート11により、複素誘電率εに依存する測定キャパシティCが形成される。
【0028】
図1に示す発振器として構成された誘電率測定手段10は、2個の両側から探知アンテナに近接させて配置された追加電圧プレート11を有し、これらの間に測定キャパシティCが形成される。
【0029】
図2に示す変形態様では、QTセンサーとして構成された誘電率測定手段10は、ちょうど1個の追加電圧プレート11に接続され、かつローパスフィルタとして構成されたデカップリング手段13を介してさらに別の電圧プレートとして作用する探知アンテナに接続され、これらの間に測定キャパシティCが形成される。追加電圧プレート11は、高周波探知アンテナ5、測定システム6およびデカップリング手段13を覆う鍋状のカバー12の壁面側に配置し、かつ探知アンテナ5に対して回転対称をなすように構成する。
【0030】
図3は、計算手段に記憶された材料モデル14の両対数グラフであり、この材料モデル14は、数ディケイドの範囲における周波数fに従属し、複素誘電率εについて近似している。複素誘電率εの実部ε′=Re(ε)は比誘電率εと相関し、虚部ε″=Im(ε)は伝導率σと相関する。実部ε′=Re(ε)は単調減少し、これに対して虚部ε″=Im(ε)が最大値をとるのは、緩和関数に特有の性質である。指定する公式とパラメータは、水に関するデバイモデルに従う。計算手段は、このような材料モデルを基礎として、誘電率測定周波数f=10MHzの場合に測定される複素誘電率εを、3ディケイドだけ高い周波数の測定周波数f=10GHzの場合の外挿値15に外挿する。
【0031】
図4は、上記の装置で用いられる、下地に埋め込まれた物体を探知するための方法を示しており、この方法は計算手段により実行アルゴリズム16を用いてプログラム制御され、測定システムによって実行される測定ステップ23において、探知アンテナによって下地に印加された測定周波数fの広帯域・高周波交流電場と物体との遅延相互作用を測定する。時系列的に続いて、計算手段によって実行される探知ステップ24において、測定信号から物体が探知され、下地における交流電磁場の伝播速度vにより、物体の深度情報が特定され、次の出力ステップ25において出力される。測定ステップ23、探知ステップ24および出力ステップ25自体は、一般的なものであり、それゆえ、本発明の新規な特徴ではないため、本技術分野の当業者は、上述の背景技術、好適には、当欄に記載の本発明が関連する開示内容を取り入れた文書における記述を参照されたい。測定ステップ23よりも時系列的に前に位置する誘電率測定ステップ17において、誘電率測定手段により、測定周波数fよりも低い誘電率測定周波数fを用いて誘電率信号が測定され、時系列的に後続の誘電率決定ステップ18において、この信号から計算手段により記憶された材料モデル14を用いて、測定周波数fに対する比誘電率εおよび減衰量αを外挿する。その際、誘電率決定ステップでは、まず、分類化ステップ19において、誘電率測定ステップで測定された複素誘電率εに応じて、予め与えた離散的な分類基準値Kを用いて、i=1,2,…,5からなる構造物質分類のうちちょうど1個に当てはめ、これによって得られた乾燥時構造物質比誘電率εを固定パラメータとして選択する。続いて、外挿ステップ20において、誘電率測定ステップ17で測定された誘電率測定周波数fに対する複素誘電率εを用いて、予め与えた乾燥時構造物質比誘電率ε、空気の比誘電率εair、標準的な気孔率φ、および水の比誘電率εwater(この値は、デバイモデルに従い複素数値で与えられる)が所与のもとでの、誘電率測定周波数fの場合のCRIモデル(実部および虚部それぞれ個別に適用する)として構成された構造物質への気孔混合が考慮された材料モデル14により、含水率Sが決定され、この値を固定パラメータとして前記材料モデルを用いることにより、測定周波数fの場合における下地の複素誘電率εが外挿される。従って、測定周波数fの場合における下地について、特に実数部分から比誘電率εも決定され、および虚数部分から伝導率σが決定される(図3参照)。次の計算ステップ21において、この値から計算手段により、下地における交流電磁場の伝播速度v(真空中の光速Cに加えて、比誘電率εにも従属する)および深度に従属する下地の減衰量αが計算される。次の出力制御ステップ22において、測定システムは、計算手段を用いて、外挿された測定周波数fの場合における下地の減衰量αおよび予め定められた測定深度Tに応じて、下地に印加されるべき交流電場の出力強度を、充分な実効性能を得るために必要な出力値Pとして予め選択する。ループ26によって、測定ステップ23の前に、必ず、誘電率測定ステップ17、後続の誘電率決定ステップ18および出力制御ステップ22が繰り返される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に従う壁面探査装置の説明図である。
【図2】本発明に従う他の壁面探査装置の説明図である。
【図3】本発明の材料モデルに関する説明図である。
【図4】本発明のアルゴリズムのフローチャートである。
【符号の説明】
【0033】
1 壁面探査装置
2 下地
3 物体
4 壁面
5 探知アンテナ
6 測定システム
7 計算手段
8 入力/出力手段
9 交流電場
10 誘電率測定手段
11 追加電圧プレート
12 カバー
13 デカップリング手段
14 材料モデル
15 外挿値
16 アルゴリズム
17 誘電率測定ステップ
18 誘電率決定ステップ
19 分類化ステップ
20 外挿ステップ
21 計算ステップ
22 出力制御ステップ
23 測定ステップ
24 探知ステップ
25 出力ステップ
26 ループ
S 走査方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地(2)に埋め込まれた物体(3)を探知するための壁面探査装置であって、
測定周波数(f)の広帯域・高周波交流電場(9)を下地(2)に印加するための探知アンテナ(5)と、
前記探知アンテナ(5)に接続された、前記交流電場(9)の前記物体(3)との遅延相互作用を測定するための測定システム(6)と、
測定信号から前記物体(3)を探知し、およびその深度情報を特定するための計算手段(7)とを有する該壁面探査装置において、
誘電率測定手段(8)に、前記測定周波数よりも低い誘電率測定周波数(f)の場合における下地の誘電率測定信号を測定するための、少なくとも1個の追加電圧プレート(11)を設けたことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記誘電率測定周波数(f)が、前記中程度の波長の測定周波数(f)と比較して、少なくとも2ディケイド、随意に少なくとも3ディケイド低い周波数であることを特徴とする請求項1に記載の壁面探査装置。
【請求項3】
前記少なくとも1個の追加電圧プレート(11)を、探知アンテナ(5)に対して対称に配置したことを特徴とする請求項1または2に記載の壁面探査装置。
【請求項4】
前記誘電率測定手段(8)に接続された、ちょうど1個の追加電圧プレート(11)を設け、この追加電圧プレートが、さらなる電圧プレートとして機能する探知アンテナ(5)と共に開放コンデンサを構成し、その誘電体が下地(2)によって構成されることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の壁面探査装置
【請求項5】
前記探知アンテナ(5)がデカップリング手段(13)を介して前記誘電率測定手段(8)に接続されていることを特徴とする請求項4に記載の壁面探査装置。
【請求項6】
前記誘電率測定手段(8)が発振器であり、その発振回路またはブリッジ回路において、前記下地(2)を誘電体として有する前記追加電圧プレート(11)が測定キャパシティ(C)を形成することを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか一項に記載の壁面探査装置。
【請求項7】
前記誘電率測定手段(8)がスイッチ制御されたQTセンサであり、このセンサにより、前記下地(2)を誘電体として有する前記追加電圧プレート(11)が一定の測定キャパシティ(C)を形成することを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか一項に記載の壁面探査装置。
【請求項8】
下地(2)に埋め込まれた物体(3)を探知するための測定方法であって、
探知アンテナ(5)によって前記下地(2)に印加された測定周波数(f)の広帯域・高周波交流電場(9)と物体(3)との遅延相互作用を測定する、測定システム(6)によって実行される測定ステップ(23)と、測定信号から前記物体(3)を探知し、およびその深度情報を特定する、計算手段によって実行される探知ステップ(24)とを有する該測定方法において、
誘電率測定手段(8)によって実行される、時系列的に先行する誘電率測定ステップ(17)において、測定周波数(f)よりも低い誘電率測定周波数(f)により誘電率信号が測定され、
前記誘電率測定ステップより時系列的に後続の誘電率決定ステップ(18)において、計算手段(7)により、記憶された材料モデル(14)を用いて測定周波数(f)に対する前記下地(2)の比誘電率(ε)が決定されることを特徴とする方法。
【請求項9】
前記誘電率決定ステップ(18)において、緩和関数が前記材料モデル(14)によって記述されることを特徴とする請求項8に記載の測定方法。
【請求項10】
前記誘電率決定ステップ(18)における外挿ステップ(20)において、誘電率測定ステップ(17)で測定された複素誘電率(ε)に応じて、予め与えられた構造物質誘電率(ε)のもとで構造物質への混合を考慮した材料モデル(14)によって含水率(S)を決定し、この含水率(S)を固定パラメータとして前記材料モデルを用いることにより、測定周波数(f)の場合の下地(2)の複素誘電率(ε)が外挿されることを特徴とする請求項8または9に記載の測定方法。
【請求項11】
前期外挿ステップ(20)の後に続く計算ステップ(21)において、外挿の結果から下地(2)における交流電磁場の伝播速度(v)および深度に従属する下地の減衰量(α)が計算されることを特徴とする請求項10に記載の測定方法。
【請求項12】
前記誘電率決定ステップ(18)において、時系列的に先行する分類化ステップ(19)で、前記誘電率測定ステップ(17)において測定された複素誘電率(ε)に応じて、予め与えられた分類基準値(K)により複数の構造物質分類のうちちょうど1個に当てはめ、得られた構造物質比誘電率(ε)を固定パラメータとして選択することを特徴とする請求項10または11に記載の測定方法。
【請求項13】
後続の前記計算手段(7)による出力制御ステップ(22)において、前記測定システム(6)が、外挿された測定周波数(f)の場合の前記下地(2)の減衰量(α)および必要な測定深度(T)に応じて、下地(2)に印加されるべき交流電場の出力強度を、充分な実効性能を得るために必要な出力値(P)として予め選択することを特徴とする請求項8乃至12のうちいずれか一項に記載の測定方法。
【請求項14】
前記誘電率測定ステップ(17)および後続の前記誘電率決定ステップ(18)が複数回繰り返され、随意に前記測定ステップ(23)実行のたびその前に必ず実行されることを特徴とする請求項8乃至13のうちいずれか一項に記載の測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−47165(P2007−47165A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−216000(P2006−216000)
【出願日】平成18年8月8日(2006.8.8)
【出願人】(591010170)ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト (339)
【Fターム(参考)】