説明

壁面緑化パネルおよびそれを用いた壁面緑化工法

【課題】 手間がかからずに簡単でかつ外壁との一体感を出すことができる壁面緑化パネルおよび壁面緑化工法を提供することである。
【解決手段】 壁面緑化パネル1は、矩形の枠体2の表面の収納凹部3に植生パッド4が収納され、該植生パッド4の表面を覆うネット5が枠体2に取り付けられ、この枠体2の上下部には収納凹部3に連通した灌水用通水口7が設けられ、枠体の裏面には定着アンカー16が突設されたことである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は建物の意匠性の確保やヒートアイランド現象の抑制を図るための壁面緑化パネルおよびそれを用いた壁面緑化工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、建物の意匠性の確保やヒートアイランド現象の抑制を図るために建物の壁面を緑化する壁面緑化パネルや壁面緑化工法が考えられている。この壁面を緑化するものとしては、例えば、特開2006−112129号公報の発明が知られている。これは壁材として用いた軽量気泡コンクリートパネルの外表面に所定の間隔をおいて平行かつ一体的に緑化パネルを設けたものであり、軽量気泡コンクリートパネル内に緑化パネル取付用アンカーを埋設し、この緑化パネル取付用アンカーに間隔保持部材を介して緑化パネルを取り付けたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−112129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のような壁面緑化工法は大がかりとなって手間がかかると共に、緑化パネルを壁面に後から取り付ける後付であるために、取って付けた感じがして意匠的にも優れていなかった。
【0005】
本願発明はこれらの問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、手間がかからずに簡単でかつ外壁との一体感を出すことができる壁面緑化パネルおよび壁面緑化工法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するための壁面緑化パネルは、矩形の枠体の表面の収納凹部に植生パッドが収納され、該植生パッドの表面を覆うネットが枠体に取り付けられ、この枠体の上下部には収納凹部に連通した灌水用通水口が設けられ、枠体の裏面には定着アンカーが突設されたことを特徴とする。また収納凹部は内側面が表面から奥側に向かって漸次外側に傾斜したことを含むものである。
【0007】
また壁面緑化工法は、矩形の枠体の表面の収納凹部に植生パッドが収納され、該植生パッドの表面を覆うネットが枠体に取り付けられ、この枠体の上下部には収納凹部に連通した灌水用通水口が設けられ、枠体の裏面には定着アンカーが突設された壁面パネルを使用するものであり、該壁面パネルの枠体を上下左右に繋ぎ合わせて外枠とした壁型枠を組み立て形成するとともに、該壁型枠内にコンクリートを打設し、該コンクリートが硬化した後に枠体の収納凹部に植生パッドを収納し、該植生パッドの表面を覆うネットを枠体に取り付けることを特徴とする。また収納凹部は内側面が表面から奥側に向かって漸次外側に傾斜したことを含むものである。
【発明の効果】
【0008】
壁面緑化パネルの枠体を上下左右に連続して繋ぎ合わせることにより壁型枠の外枠として使用することができる。また壁面緑化パネルを建物の外壁に一体に取り付けることができるので、手間がかからずに壁面緑化をすることができる。また枠体を外枠とした壁型枠内にコンクリートを打設することにより、壁面緑化パネルが外壁と一体的になるため外観の一体感を出すことができる。また壁面緑化パネルを壁型枠の外枠と兼用することができるので、型枠体を省略することができる。また建物の構築と同時に外観の意匠性の向上とヒートアイランド現象の抑制とを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施の形態の壁面緑化パネルであり、(1)は正面図、(2)は(1)のA−A線断面図、(3)は固定プレートの斜視図、(4)は同断面図である。
【図2】第1の実施の形態の壁面緑化パネルであり、(1)は正面図、(2)は(1)のB−B線断面図である。
【図3】壁面緑化工法の正面図である。
【図4】壁面緑化工法の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本願発明の壁面緑化パネルおよび壁面緑化工法の実施の形態を図面に基づいて説明する。まず壁面緑化パネルの実施の形態について説明し、その後に、この壁面緑化パネルを使用した壁面緑化工法の実施の形態について説明するが、各実施の形態において同じ構成は同じ符号を付して説明し、異なった構成にのみ異なった符号を付して説明する。
【0011】
図1は第1の実施の形態の壁面緑化パネル1である。この壁面緑化パネル1は、平面長方形の枠体2の表面に形成された収納凹部3に植生パッド4が収納され、該植生パッド4がネット5で覆われて枠体2に固定されて構成されている。この枠体2はGRCまたはFRPで適宜厚さに形成され、二つの収納凹部3の内側面6が奥側に向かって漸次外側に傾斜して形成されて、灌水が収納凹部3から流れ出さないようになっている。またこの収納凹部3の上下部には、枠体2を上下に重ねたときに上側からの灌水を下に流すための灌水用通水口7が二つ開口されている。
【0012】
また植生パッド4を覆うネット5はメッシュ筋や金網などであり、枠体2の前面を全て覆って収納凹部3の周囲に設けた固定プレート8で枠体2に固定されている。この固定プレート8は上部プレート9と下部プレート10とからなり、上部プレート9にはボルト11の両側に鉄筋挿入用凹部12が形成され、該鉄筋挿入用凹部12にメッシュ筋などの鉄筋13が挿入され、これを下部プレート10で挟むようにしてボルト11で枠体2に固定している。この下部プレート10はボルトの雄ネジ14にネジ込まれているため、ナット15で上部プレート9を締め付けることによりネットの鉄筋13を挟み付けることができるようになっている。また枠体2の周囲に設けた固定プレート8は上下左右の壁面緑化パネル1を接合するための連結プレートを兼ね、これでこれらを接合するものとする。
【0013】
また、枠体2の背面には定着アンカー16が適宜間隔をもって突設され、この定着アンカー16で壁面緑化パネル2をコンクリートの壁面に定着するようになっている。また植生パッド4は従来周知のものであり、植物の種または植物の苗が植生され、収納凹部の底面17に突設したフック18によって固定されている。
【0014】
また図2は第2の実施の形態の壁面緑化パネル20である。この壁面緑化パネル20は、ネット5で枠体2の前面の全てを覆うのではなく、植生パッドの前面のみを覆うようにして植生パッド4を収納凹部3に固定したものであり、これ以外は第1の実施の形態の壁面緑化パネル1と同じ構成である。これは収納凹部3に収納した植生パッド4よりやや小さなネット5を植生パッド4の前面に設置して固定プレート8で固定したものであり、この固定プレート8のボルト11は収納凹部の底面17にねじ込まれている。
【0015】
なお、上記の第1および第2の実施の形態において収納凹部3は二つ形成されているが、これは二つに限らず、これ以上またはこれ以下であっても良い。
【0016】
次に、第1の実施の形態の壁面緑化パネル1を使用した壁面緑化工法を図3および図4に基づいて説明する。まず壁型枠21を組み立て形成するが、この壁型枠21の外枠22を壁面緑化パネルの枠体2で形成する。これは植生パッド4を収納凹部3に入れていない枠体2を上下左右に連続して設置し、これらを固定プレート8で接合して仮固定することにより外枠22を形成するとともに、内枠23をコンパネなどの通常の堰板で形成して壁型枠21を組み立て形成する。このとき枠体2の収納凹部3には植生パッド4が収納されていないためネット5も取り付けられていないが、定着アンカー16は壁型枠21内に設置されている。また上下の枠体2の灌水用通水口7同士が接合されて、収納凹部3に灌水された水が上側の枠体2の収納凹部3から下側の枠体2の収納凹部3に流れるようになっている。
【0017】
次に、この壁型枠21内にコンクリート24を打設し、このコンクリート24が硬化した後に、枠体2同士を仮固定していた連結プレー兼用の固定プレート8を取り外すと、外枠兼用であった各枠体2がコンクリート壁25の前面に一体的に取り付けられる。そして、各枠体2の収納凹部3に植生パッド4を収納し、この植生パッド4の表面を覆うネット5を枠体2の前面に固定プレート8で固定すると、コンクリート壁25の前面に壁面緑化パネル1が一体的に形成される。すなわちコンクリート壁25の壁型枠21内にコンクリート24を打設すると同時に壁面緑化パネル1をコンクリート壁25に一体的に取り付けることができるものである。また植生パッド4には植物の種または植物の苗が植えられているため、これらがコンクリート壁25の意匠性を優れたものにするとともに、ヒートアイランド現象の抑制を図ることができるようになる。
【符号の説明】
【0018】
1、20 壁面緑化パネル
2 枠体
3 収納凹部
4 植生パッド
5 ネット
6 収納凹部の内側面
7 灌水用通水口
8 固定プレート
9 上部プレート
10 下部プレート
11 ボルト
12 鉄筋挿入用凹部
13 鉄筋
14 雄ネジ
15 ナット
16 定着アンカー
17 収納凹部の底面
18 フック
21 壁型枠
22 外枠
23 内枠
24 コンクリート
25 コンクリート壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形の枠体の表面の収納凹部に植生パッドが収納され、該植生パッドの表面を覆うネットが枠体に取り付けられ、この枠体の上下部には収納凹部に連通した灌水用通水口が設けられ、枠体の裏面には定着アンカーが突設されたことを特徴とする壁面緑化パネル。
【請求項2】
収納凹部は内側面が表面から奥側に向かって漸次外側に傾斜したことを特徴とする請求項1に記載の壁面緑化パネル。
【請求項3】
請求項1の壁面パネルを使用するものであり、該壁面パネルの枠体を上下左右に繋ぎ合わせて外枠とした壁型枠を組み立て形成するとともに、該壁型枠内にコンクリートを打設し、該コンクリートが硬化した後に枠板の収納凹部に植生パッドを収納し、該植生パッドの表面を覆うネットを枠体に取り付けることを特徴とする壁面緑化工法。
【請求項4】
収納凹部は内側面が表面から奥側に向かって漸次外側に傾斜したことを特徴とする請求項3に記載の壁面緑化パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−193741(P2010−193741A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−40503(P2009−40503)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(000166432)戸田建設株式会社 (328)
【Fターム(参考)】