説明

壁面緑化用金具、足場用金具及び壁面緑化装置

【課題】防犯性及び安全性の向上を図ることができるとともに、壁面緑化装置の骨組みとなるフレーム枠を省略し、建物の外観を損なうことなく壁面緑化することが可能な壁面緑化用金具を提供する。
【解決手段】建物壁面40にネットを配設するための壁面緑化用金具1であって、2本のパイプ11、12と、これらパイプ11、12内に挿入され、これらパイプ11、12を折り曲げ自在に連結するスプリング13と、このスプリング13によって連結された折り曲げ自在パイプ10の一端を建物壁面40に固定するための固定具11aと、折り曲げ自在パイプ10の他端に設けられたネットの保持具30と、を備えた構成としてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁面にネットを張るために用いる壁面緑化用金具、足場用金具及びこれを用いた壁面緑化装置に関し、特に、防犯性及び安全性の向上を図ることができるとともに、壁面緑化装置の骨組みとなるフレーム枠を省略し、建物の外観を損なうことなく壁面緑化することが可能な壁面緑化用金具、足場用金具及び壁面緑化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、学校、病院、工場、倉庫、駐車場などの建築物の壁面を植物で緑化し、夏季における壁面の表面温度を低下させて冷房負荷の低減を図り、省エネルギーや地球温暖化防止に寄与することが推進されている。そして、従来から建物の壁面を植物で覆って緑化する種々の装置が提案されている。
【0003】
例えば、特開2008−289462号(特許文献1)及び特開2007−274948号(特許文献2)では、建物の壁面に装置の骨組みとなるフレーム枠(支柱や梁など)を縦横格子状に組み、このフレーム枠に複数のプランタを保持させて、壁面全体を緑化する構成の壁面緑化装置が提案されている。
【0004】
また、特開2007−215516号(特許文献3)及び特開2002−34350号(特許文献5)では、建物の壁面に組んだフレーム枠にネットを張り、このネットに蔓植物を絡ませて壁面全体を緑化する構成の壁面緑化装置が提案されている。
【0005】
さらに、特開2005−68753号(特許文献4)では、建物の壁面に組んだフレーム枠に植生マットを保持させて、この植生マットに芝生や玉竜等の地被類を植生させ、壁面全体を緑化する構成の壁面緑化装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−289462号公報
【特許文献2】特開2007−274948号公報
【特許文献3】特開2007−215516号公報
【特許文献4】特開2005−68753号公報
【特許文献5】特開2002−34350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上述した従来の壁面緑化装置は、いずれも堅固なフレーム枠を建物の壁面に組み付ける構成となっていたので、このフレーム枠を足場にして2階以上の窓から建物内に侵入されるおそれがあった(防犯性の問題)。また、防犯上だけではなく、子供がいたずらにフレーム枠をよじ登り、誤って落下する危険もあった(安全性の問題)。
【0008】
また、縦横格子状に組まれたフレーム枠は、その外観も建築に用いられる足場に類似しており、美しくデザインされた建物の外観を損なう要因となる(外観上の問題)。このため、従来の壁面緑化装置は、比較的に外観が重視されない古い建物、工場、駐車場、フェンス又は擁壁などには適用されるが、デザインにこだわった建物には適用しにくいという問題があった。
【0009】
さらに、図3(b)に示すように、フレーム枠が組み付けられるコンクリート製の壁40や柱の内部には、これら壁40や柱を成形するためのコンクリート型枠を固定していたセパレートボルト41が埋め捨てられている。従来の壁面緑化装置では、これらセパレートボルト41と無関係にフレーム枠をコンクリート製の壁40や柱にアンカーボルトで固定する構成となっており、既存のセパレートボルト41を何ら有効利用するものではなかった。
【0010】
一般に、コンクリート製の壁40や柱の表面には、セパレートボルト41から除去したPコン(プラスチックコーン)42の跡(穴)40aが残存するが、建築現場では、多数のPコン跡40aを穴埋めする作業が必要であった。この穴埋め作業は、壁40や柱に点在する多数のPコン跡40aに、1つずつモルタルを充填してコテで仕上げるというものであり、綺麗に補修するためには大変な労力を要する。また、このような労力を軽減するために、近年では合成樹脂製の穴埋め補修キャップ43が市販されている。しかし、建物全てのPコン跡40aと同数の穴埋め補修キャップ43が必要であり、建物の規模に比例してコストが嵩むという問題がある。仮に、壁面緑化装置の構成要素として、埋め捨てられるはずのセパレートボルト41を有効利用することができるなら、Pコン跡40aの穴埋め作業に要する労力及び費用を削減することが可能である。
【0011】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、防犯性及び安全性の向上を図ることができるとともに、壁面緑化装置の骨組みとなるフレーム枠を省略し、建物の外観を損なうことなく壁面緑化することが可能な壁面緑化用金具、足場用金具及び壁面緑化装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の壁面緑化用金具は、建物壁面にネットを配設するための壁面緑化用金具であって、2本のパイプと、これらパイプ内に挿入され、これらパイプを折り曲げ自在に連結するスプリングと、このスプリングによって連結された折り曲げ自在パイプの一端を建物壁面に固定するための固定具と、前記折り曲げ自在パイプの他端に設けられたネットの保持具と、を備えた構成としてある。前記ネットの保持具は、例えば、互いに対向する2枚の板部材を備え、これら板部材の間に前記ネットを挟持する構成としてもよい。
【0013】
上記構成によれば、建物壁面に所定の間隔で行列配置した複数の折り曲げ自在パイプによって、蔓植物を絡ませるためのネットを建物壁面に配設することができる。不審者や子供がよじ登ろうとしてネットに荷重を加えると、折り曲げ自在パイプが折れ曲がり、ネットを下方へ撓ませる。これがネットをよじ登ろうとする者に、ネットを保持するパイプが途中で折れたのと同じ不安定感ないし脱力感を与え、ネットのよじ登りを躊躇させる。
【0014】
また、壁面に点在する細い折り曲げ自在パイプは、従来の格子状に組んだフレーム枠と比較して極めてシンプルな構造であり、外観上も目立たず、建物のデザインを損なうことなく壁面緑化することが可能である。
【0015】
好ましくは、前記固定具を、コンクリート内に埋設されたセパレートボルトに螺合するナットとし、このナットを前記折り曲げ自在パイプの一端に内蔵した構成とする。
【0016】
建物の壁や柱を成形するためのセパレートボルトは、建物壁面等に所定の間隔で設けられており、本壁面緑化用金具を建物壁面等に所定の間隔で行列配置するのに好適である。このようなセパレートボルトを本壁面緑化用金具の固定に有効利用することで、Pコン跡の穴埋め作業に要する労力及び費用を削減することができる。
【0017】
好ましくは、本壁面緑化用金具が、前記折り曲げ自在パイプの一端に連結され、又は前記折り曲げ自在パイプの一端が挿通される正面板と、縦方向に配索されるワイヤの挿通孔を穿設した水平板と、横方向に配索されるワイヤの挿通孔を穿設した垂直板とを有するブラケットを備えた構成とする。
【0018】
上記構成からなるブラケットを設けた場合は、建物壁面の縦横方向にワイヤを配索することができ、例えば、これらワイヤにプランタを吊り下げ、又はこれらワイヤにネットを結び付けてばたつきを防止することができる。
【0019】
また、建物壁面のセパレートボルトを利用しない場合は、折り曲げ自在パイプをブラケットの一端を正面板に連結し、この正面板を建物壁面にアンカーボルトで固定することにより、本壁面緑化用金具を建物壁面に配設することができる。
【0020】
上記目的を達成するために、本発明の足場用金具は、上述した本発明の壁面緑化用金具に着脱自在な足場用金具であって、建物壁面に固定された前記折り曲げ自在パイプの外側に装着され、前記折り曲げ自在パイプの長手方向に亘って当接する上面板を備えた断面略コ字形の足場金具本体と、この足場金具本体の一端側に設けられた水平方向の板部材であり、その板面にはボルトの挿通孔が穿設され、前記足場金具本体が前記折り曲げ自在パイプの外側に装着されたときに、前記ブラケットの水平板と重なり合い、前記ボルトの挿通孔が前記水平板に穿設された縦方向のワイヤの挿通孔と一致する固定板と、前記足場金具本体の一端側に設けられた水平方向に突出する棒部材であり、前記足場金具本体が前記折り曲げ自在パイプの外側に装着されたときに、前記ブラケットの垂直板に穿設された横方向のワイヤ挿通孔に挿通される支持棒と、を備えた構成としてある。
【0021】
上記構成からなる本足場用金具によれば、本足場用金具の非装着時には、折り曲げ自在パイプの折れ曲がりによって、ネットのよじ登りを防止することができるとともに、本足場用金具の装着時には、折り曲げ自在パイプを施工用又はメンテナンス用の足場として用いることが可能となる。
【0022】
上記目的を達成するために、本発明の壁面緑化装置は、上述した本発明の壁面緑化用金具を用いた壁面緑化装置であって、1本のパイプの一端に建物壁面への固定具を設けるとともに、他端にネットの保持具を設けた折り曲げ不可なネット固定金具を備え、緑化する建物壁面の上部に、複数の前記ネット固定金具を少なくとも横1列に所定間隔をあけて配設するとともに、建物壁面の前記ネット固定金具よりも下部に、複数の前記壁面緑化用金具を少なくとも横1列に所定間隔をあけて配設し、前記ネット固定金具及び壁面緑化用金具の各保持具にネットを保持させた構成としてある。
【0023】
上記構成からなる本壁面緑化装置では、折れ曲がり不可なネット固定金具がネットの上部を保持し、ネットとこれに絡んだ蔓植物等の重量を支えている。また、折れ曲がり自在な壁面緑化用金具がネットの下部を保持し、不審者や子供がネットをよじ登ろうとしてネットの下部に荷重を加えると、折り曲げ自在パイプが折れ曲がり、ネットを下方へ撓ませ、不審者等のよじ登りを躊躇させる。その後、ネットの下部の荷重が解除されると、ネット固定金具に上部を保持されたネットが上方に引っ張られて元通りの状態に復元し、折り曲げ自在パイプも真っ直ぐな状態に戻る。
【発明の効果】
【0024】
本発明の壁面緑化用金具及びこれを用いた壁面緑化装置によれば、不審者や子供がよじ登ろうとしてネットに荷重を加えると、折り曲げ自在パイプが折れ曲がり、ネットを下方へ撓ませる。これがネットをよじ登ろうとする者に、ネットを保持するパイプが途中で折れたのと同じ不安定感ないし脱力感を与え、ネットのよじ登りを躊躇させる。
【0025】
また、壁面に点在する細い折り曲げ自在パイプは、従来の格子状に組んだフレーム枠と比較して極めてシンプルな構造であり、外観上も目立たず、建物のデザインを損なうことなく壁面緑化することが可能である。
【0026】
さらに、本壁面緑化用金具の固定に、既存のセパレートボルトを有効利用する構成とした場合は、Pコン跡の穴埋め作業に要する労力及び費用を削減することができる。
【0027】
これに加え、本発明の足場用金具を折り曲げ自在パイプに装着することで、折り曲げ自在パイプを施工用又はメンテナンス用の足場として用いることが可能となり、本壁面緑化装置の施工及びメンテナンスを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態に係る壁面緑化用金具を示すものであり、同図(a)は斜視図、同図(b)は同図(a)のA部拡大図である。
【図2】図1(a)に示す上記壁面緑化用金具の分解斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る壁面緑化装置に用いる金具を示すものであり、同図(a)はネット固定金具の断面図、同図(b)は上記壁面緑化用金具の断面図である。
【図4】上記壁面緑化装置の施工状態を示す斜視図である。
【図5】同図(a)、(b)は上記壁面緑化装置における壁面緑化用金具の動作を示す説明図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る足場用金具を示すものであり、同図(a)は上記壁面緑化用金具に装着する前の状態の斜視図、同図(b)は上記壁面緑化用金具に装着した状態の部分断面正面図、同図(c)は上記壁面緑化用金具に装着した状態の部分断面側面図である。
【図7】上記足場用金具の変更例を示す部分断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の一実施形態に係る壁面緑化用金具、壁面緑化装置及び足場用金具について、図面を参照しつつ順に説明する。
【0030】
[壁面緑化用金具]
まず、本実施形態に係る壁面緑化用金具について、図1〜3を参照しつつ説明する。図1(a)、(b)及び図2において、壁面緑化金具1は、折り曲げ自在パイプ10、ブラケット20及び保持具30からなっている。
【0031】
<折り曲げ自在パイプ>
折り曲げ自在パイプ10は、短い第1パイプ11と、長い第2パイプ12とを、これらの内部に挿通したスプリング13によって連結した構成となっている。このような折り曲げ自在パイプ10は、荷重を受けると継ぎ目(図1(a)中の鎖線で囲ったA部を参照)で折れ曲がった状態となり、荷重が解除されると真っ直ぐな状態に復元する。
【0032】
本実施形態では、折り曲げ自在パイプ10を直径16mm、全長200mmのステンレス製とし、第1パイプ11と第2パイプ12との長さ比率を概ね1:2程度に設定してある。但し、第1パイプ11と第2パイプ12とが折り曲げ可能であれば、両者の長さ比率は特に限定されるものではない。
【0033】
短い第1パイプ11は、図2に示す建物の壁40に固定されるものであり、その一端側には、固定具としてのナット11aが内蔵してある。このナット11aは、壁40に埋設された、例えば、2分5厘のセパレートボルト40aと螺合する。また、図1(b)に示すように、第1パイプ11の他端縁の外側にテーパ部11bを設け、このテーパ部11bが第2パイプ12の一端縁の内側と滑らかに接合するようになっている。長い第2パイプ12の他端側には、保持具30のボルト部31b(例えば、2分5厘のボルト)と螺合するナット12aが内蔵してある。
【0034】
スプリング13は、第1及び第2パイプ11、12の内径とほぼ同じ外径を有し、第1パイプ11の他端側から第2パイプ12の一端側にわたって挿入されている。図3(b)に示すように、スプリング13の一端側は、係止ピン13aによって第1パイプ11内に固定され、スプリング31の他端側は、係止ピン13bによって第2パイプ12内に固定されている。
【0035】
<ブラケット>
本実施形態におけるブラケット20は、建物の壁40に縦横のワイヤ(図4中の符号61、62を参照)を配索するとともに、後述する足場用金具3を取り付けるためのものである。このブラケット20は、図2に示すように、互いの一辺どうしが連成ないし接合された正面板21、水平板22及び垂直板23からなっている。このようなブラケット20は、例えば、厚さ3mmのスチール板を加工し、全体を亜鉛メッキして錆と腐食を防止する。
【0036】
正面板21の中央には、第1パイプ11の一端を挿通することが可能な直径のパイプ挿通孔21aが設けてある。また、正面板21のパイプ挿通孔21aよりも下方には、2つのアンカーボルト挿通孔21b、21bが穿設してある。ブラケット20は、これらアンカーボルト挿通孔21b、21bを介して打設したアンカーボルト24、24によって壁40に固定される。
【0037】
一方、水平板22の自由端側には、縦方向に配索されるワイヤを保持するためのワイヤ挿通孔22aが穿設してあり、垂直板23の下端側には、横方向に配索されるワイヤを保持するためのワイヤ挿通孔23aが穿設してある。
【0038】
なお、セパレートボルト41を利用しないで、本壁面緑化用金具1を建物の壁40に施工する場合は、このブラケット20が本壁面緑化用金具1を壁40に固定するための固定具となる。この場合は、例えば、正面板21にパイプ挿通孔21aを設ける代わりに、2分5厘のボルトを立設する。このボルトに第1パイプ11のナット11aを螺合させ、正面板21をアンカーボルト24、24で壁40に固定すればよい。
【0039】
<保持具>
保持具30は、細長い第1及び第2プレート31、32を備え、これらプレート31、32の間にネット70(図4参照)を挟持する構成となっている。このような第1及び第2プレート31、32は、例えば、上述したブラケット20と同様に厚さ3mmのスチール板を加工し、全体を亜鉛メッキした構成とする。
【0040】
第1及び第2プレート31、32の上下両側には、これらプレートを対向配置したときに互いに一致する一対のボルト挿通孔31a、31a及び32a、32aがそれぞれ設けてある。互いに一致させたボルト挿通孔31a、32aに、それぞれボルトを挿通してダブルナットで締結することで、第1及び第2プレート31、32の間にネット70を挟持する。
【0041】
また、第1プレート31の裏面中央には、上述したボルト部31bが溶着してある。このボルト部31bを第2パイプ12のナット12aに螺合させることで、保持具30を折り曲げ自在パイプ10の他端に連結させている。
【0042】
[壁面緑化装置]
次に、上記壁面緑化用金具1及び図3(a)に示すネット固定金具50を用いた本壁面緑化装置について、図3〜5を参照しつつ説明する。
【0043】
<ネット固定金具>
まず、ネット固定金具50の構成について説明する。図3(a)において、ネット固定金具50は、ネット70の上部を保持し、ネットとこれに絡んだ蔓植物等の重量を支えるものである。ネット等の重量を支えるため、ネット固定金具50のパイプ51は、折り曲げ不可の1本となっている。ネット固定金具50のその他の構成は、上記壁面緑化用金具1と同一となっている(図3(a)において、壁面緑化用金具1と同一の構成要素に同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。)。
【0044】
<壁面緑化装置の構成>
図4に本壁面緑化装置2の一例を示す。本実施形態の壁面緑化装置2は、建物の壁面40の上部に3つのネット固定金具50、50、50を横1列に所定間隔をあけて配設するとともに、これらネット固定金具50、50、50よりも下部に、6つの壁面緑化用金具1、1、1及び1、1、1を3つずつ横2列に所定間隔をあけて配設した構成となっている。
【0045】
これらネット固定金具50及び壁面緑化用金具1において、各ブラケット20のワイヤ挿通孔22a、22a、22a(図1参照)には、縦方向のワイヤ61が挿通され、このワイヤ61の上下端は、下又は上に折り返されてワイヤクリップで固定されている。
【0046】
また、各ブラケット20のワイヤ挿通孔23a、23a、23a(図1参照)には、横方向のワイヤ62が挿通され、このワイヤ62の両端は、左又は右に折り返されてワイヤクリップで固定されている。上から2本のワイヤ62には、それぞれ4つのプランタ80、80、80、80がフックによって吊り下げられている。
【0047】
さらに、ネット固定金具50及び壁面緑化用金具1の各保持具30は、四角形のネット70の4辺及び中心部を挟持している。各プランタ80に植えた蔓植物81は、ネット70に絡みついて下方に延び、ネット70の上半分と下半分を短期間で覆い、壁40全体を緑化する。
【0048】
<壁面緑化装置の動作>
図5(a)、(b)に示すように、不審者や子供がよじ登ろうとしてネット70に荷重を加えると、この荷重がネット70を介して、下から2列の各折り曲げ自在パイプ1、1、1、1、1、1のうちの一部に伝わる。すると、荷重を受けた折り曲げ自在パイプ1が折れ曲がり、ネット70を下方へ撓ませる。これがネット70をよじ登ろうとする者に、ネット70を保持するパイプが途中で折れたのと同じ不安定感ないし脱力感を与え、ネット70のよじ登りを躊躇させる。
【0049】
<本実施形態の作用効果>
以上のように、本実施形態に係る壁面緑化用金具1及びこれを用いた壁面緑化装置2によれば、折り曲げ自在パイプ1が荷重を受けて折れ曲がることで、不審者や子供のネットのよじ登りを躊躇させることができ、防犯性及び安全性の向上を図ることができる。
【0050】
また、壁面緑化用金具1及びネット固定金具50を用いることにより、壁面緑化装置2の骨組みとなるフレーム枠を省略することができる。そして、壁面40に点在する壁面緑化用金具1及びネット固定金具50は、主として細いパイプやプレートからなるので、従来の格子状に組んだフレーム枠と比較して極めてシンプルな構造であり、外観上も目立たず、建物のデザインを損なうことなく壁面緑化することが可能である。
【0051】
さらに、壁面緑化用金具1及びネット固定金具50の固定に、既存のセパレートボルト40を有効利用する構成としてあるので、Pコン跡40aの穴埋め作業に要する労力及び費用を削減することができる。
【0052】
[足場用金具]
次に、上述した壁面緑化装置2の施工やメンテナンスに有用な足場用金具の実施形態について、図6(a)、(b)、(c)及び図7を参照しつつ説明する。
【0053】
図6(a)において、本足場用金具3は、上述した壁面緑化用金具1(及びネット固定金具50)に装着して足場を形成するものであり、断面略コ字形の足場用金具本体91の一端側に、断面略L字形の固定板92と、水平方向に突出する支持棒93とを溶接した構成となっている。このような本足場用金具3は、例えば、上述したブラケット20と同様に厚さ3mmのスチール板を加工し、全体を亜鉛メッキした構成とする。
【0054】
足場用金具本体91は、同図(b)及び(c)に示すように、建物の壁40に固定された折り曲げ自在パイプ10の外側に装着され、その上面板91aが折り曲げ自在パイプ10の長手方向に亘って当接するようになっている。壁面緑化用金具1に対応する足場用金具本体91の寸法としては、例えば、幅35mm、全長190mm、高さ30mmとすることができる。この程度の幅や長さがあれば、作業者の足を足場用金具本体91に乗せることが可能となる。
【0055】
固定板92は、水平方向に延びる板部材であり、その板面にはボルト挿通孔92aが設けてある。この固定板92は、足場金具本体91を折り曲げ自在パイプ10の外側に装着したときに、ブラケット20の水平板22(図1を参照)と重なり合い、そのボルト挿通孔92aが水平板22に穿設された縦方向のワイヤ挿通孔22aと一致するようになっている。
【0056】
支持棒93は、足場金具本体91を折り曲げ自在パイプ10の外側に装着したときに、ブラケット20の垂直板23(図1を参照)に穿設された横方向のワイヤ挿通孔23aに挿通される。この支持棒93は、足場金具本体91に加えられる荷重を支える。
【0057】
上記構成からなる本足場用金具3によれば、本足場用金具3の非装着時には、折り曲げ自在パイプ10の折れ曲がりによって、ネット70のよじ登りを防止することができるとともに、本足場用金具3の装着時には、折り曲げ自在パイプ10を施工用又はメンテナンス用の足場として用いることが可能となる。
【0058】
<変更例>
ここで、上記足場用金具3の変更例を図7に示す。本足場用金具3の下面板には、ボルトによって回動可能に固定された支持脚94が設けてある。支持脚94の先端は尖鋭になっている。一方、建物の壁40には、L字金具95がアンカーボルトによって固定してあり、このL字金具95の水平方向に突出する板面には、支持脚94の先端を受けるための係止孔95aが穿設してある。
【0059】
上記構成からなる本足場用金具3によれば、支持脚94によって足場金具本体91に加えられるより大きな荷重を支えることができ、より安定した足場を形成することが可能となる。また、ボルトを緩めて支持脚94を回動させることができるので、折り曲げ自在パイプ10への着脱を容易に行えるとともに、収納時には支持脚94を折り畳んでコンパクト化することが可能である。
【0060】
[その他の変更]
本発明の壁面緑化用金具、壁面緑化装置及び足場用金具は、上述した各実施形態の構成に限定されるものではなく、本壁面緑化用金具を施工する建物の構造、植物の種類、環境等の要因に応じて、種々の変更が可能である。特に、図4は、本発明の壁面緑化装置の最も基本的な実施態様の一例を示したにすぎず、例えば、ワイヤ61,62の配索の仕方やプランタ80の設け方は、必要に応じて他の態様に変更することが可能である。
【0061】
例えば、ワイヤ61,62は、壁面緑化金具1のブラケット20によって保持する構成に限定されるものではなく、ワイヤ61,62を配索するための専用ブラケットを壁40に設け、ネット70に対して任意のレイアウトでワイヤ61,62を配索することができる。また、本実施形態では、プランタ80をワイヤ61,62に吊したが、例えば、プランタ80を地上、屋上の一方又は両方に設置する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 壁面緑化用金具
10 折り曲げ自在パイプ
11 第1パイプ
11a ナット(固定具)
11b テーパ部
12 第2パイプ
12a ナット
13 スプリング
13a、13b 係止ピン
20 ブラケット
21 正面板
21a パイプ挿通孔
21b アンカーボルト挿通孔
22 水平板
22a ワイヤ挿通孔
23 垂直板
23a ワイヤ挿通孔
24 アンカーボルト
30 保持具
31 第1プレート
31a ボルト挿通孔
31b ボルト部
32 第2プレート
32a ボルト挿通孔
40 壁
40a Pコン跡
41 セパレートボルト
42 Pコン
43 穴埋め補修キャップ
2 壁面緑化装置
50 ネット固定金具
51 パイプ
61、62 ワイヤ
63 ワイヤクリップ
70 ネット
80 プランタ
3 足場用金具
91 足場金具本体
91a 上面板
92 固定板
92a ボルト挿通孔
93 支持棒
94 支持脚
95 L字金具
95a 係止孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物壁面にネットを配設するための壁面緑化用金具であって、
2本のパイプと、
これらパイプ内に挿入され、これらパイプを折り曲げ自在に連結するスプリングと、
このスプリングによって連結された折り曲げ自在パイプの一端を建物壁面に固定するための固定具と、
前記折り曲げ自在パイプの他端に設けられたネットの保持具と、
を備えたことを特徴とする壁面緑化用金具。
【請求項2】
前記保持具が、互いに対向する2枚の板部材を備え、これら板部材の間に前記ネットを挟持する構成とした請求項1記載の壁面緑化用金具。
【請求項3】
前記固定具を、コンクリート内に埋設されたセパレートボルトに螺合するナットとし、このナットを前記折り曲げ自在パイプの一端に内蔵した請求項1又は2記載の壁面緑化用金具。
【請求項4】
前記壁面緑化用金具が、前記折り曲げ自在パイプの一端に連結され、又は前記折り曲げ自在パイプの一端が挿通される正面板と、縦方向に配索されるワイヤの挿通孔を穿設した水平板と、横方向に配索されるワイヤの挿通孔を穿設した垂直板とを有するブラケットを備えた請求項1〜3いずれか記載の壁面緑化用金具。
【請求項5】
請求項4記載の壁面緑化用金具に着脱自在な足場用金具であって、
建物壁面に固定された前記折り曲げ自在パイプの外側に装着され、前記折り曲げ自在パイプの長手方向に亘って当接する上面板を備えた断面略コ字形の足場金具本体と、
この足場金具本体の一端側に設けられた水平方向の板部材であり、その板面にはボルトの挿通孔が穿設され、前記足場金具本体が前記折り曲げ自在パイプの外側に装着されたときに、前記ブラケットの水平板と重なり合い、前記ボルトの挿通孔が前記水平板に穿設された縦方向のワイヤの挿通孔と一致する固定板と、
前記足場金具本体の一端側に設けられた水平方向に突出する棒部材であり、前記足場金具本体が前記折り曲げ自在パイプの外側に装着されたときに、前記ブラケットの垂直板に穿設された横方向のワイヤ挿通孔に挿通される支持棒と、
を備えたことを特徴とする足場用金具。
【請求項6】
請求項1〜4記載の壁面緑化用金具を用いた壁面緑化装置であって、
1本のパイプの一端に建物壁面への固定具を設けるとともに、他端にネットの保持具を設けた折り曲げ不可なネット固定金具を備え、
緑化する建物壁面の上部に、複数の前記ネット固定金具を少なくとも横1列に所定間隔をあけて配設するとともに、
建物壁面の前記ネット固定金具よりも下部に、複数の前記壁面緑化用金具を少なくとも横1列に所定間隔をあけて配設し、
前記ネット固定金具及び壁面緑化用金具の各保持具にネットを保持させた、
ことを特徴とする壁面緑化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−87492(P2011−87492A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−242335(P2009−242335)
【出願日】平成21年10月21日(2009.10.21)
【出願人】(500420971)株式会社サンオウ (9)
【Fターム(参考)】