説明

変位計測装置

【課題】二平面を備える層の両方の面に局所的な変形が生じた場合にも、より正確に層間変位を計測することができる変位計測装置を提供する。
【解決手段】変位計測装置1Aは、天井2から床3へ基準光LSを照射して基準変位を計測する基準変位計測部4と、天井2から床3へ基準光LSに対し所定角度α傾いた参照光LRを照射して参照変位を検出する参照変位計測部5とを備える。照射部6として拡散光を放射する光源が用いられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変位計測装置に関し、特に二平面を備える層の層間変位を計測する場合に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
この種の変位計測装置としては、レーザ光と撮像手段とを用いて、観測点から見た変位検出対象物の観察軸と垂直平面上との変位、或いは垂直平面の傾きを測定している計測システムが知られている(例えば、特許文献1、2参照)。このような計測システムでは、変位検出対象物に向けて照射したレーザ光の入射部位の光点位置を、カメラ等の撮像手段で撮像し、得られた画像に所定の画像処理を施して変位検出対象物の三方向の変位を計測し得るようになされている。
【0003】
ところが、上記特許文献1に係る発明では、レーザや撮像手段を設置する天井又は床が、局所的に変形すると、この変形によって水平方向の変位に誤差が生じる。このような局所的な変形による角度誤差は、地震によって発生することが知られている。なお、局所的な変形は天井又は床の回転と考えることができ、これによって水平方向の変位に生じる誤差を本明細書では角度誤差と呼ぶ。この角度誤差が生じることにより、従来の計測システムでは、測定した層間変位に角度誤差が混合されて出力されてしまうので、正確な変位計測が困難であった。
【0004】
また、複数の受光素子を用いて測定対象のx、y、z座標および3軸回転を計測可能としたセンサが開示されている(例えば、特許文献3、および非特許文献1)。これらのセンサを用いることにより、天井または床の角度を検出することが一応可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2970867号公報
【特許文献2】特開2009−216402公報
【特許文献3】米国特許第5,883,803号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「Measurement of fine 6-degrees-of-freedom displacement of rigid bodies through splitting a laser beam: experimental investigation」、2002年Optical Engineering、Opt. Eng. 41(4)、p.860-871
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献3または非特許文献1では、いずれも測定器本体を固定点に配置することを前提としているので、例えば天井にセンサを取り付けた場合、天井は回転しないものと仮定する必要がある。したがって、測定器本体に回転が生じ得る系に適用しても、センサを取り付けた箇所の回転による角度誤差を消去することができないので、天井および床の両方に局所的な変位が生じ得る系では、正確に層間変位を計測することができない、という問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、二平面を備える層の両方の面に局所的な変形が生じた場合にも、より正確に層間変位を計測することができる変位計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る発明は、第1平面と、前記第1平面に対し所定間隔を隔てて設けられた第2平面とを備える層間の層間変位を、放射状に伝播する拡散光を用いて計測する変位計測装置であって、前記第1平面から前記第2平面に向かって基準光を照射して、基準変位を検出する基準変位計測部と、前記第1平面から前記第2平面に向かって前記基準光に対し所定角度傾いた参照光を照射して、参照変位を検出する参照変位計測部とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る発明は、前記基準変位計測部は、前記第1平面から前記第2平面に向かって基準光を照射する基準照射部を有し、前記参照変位計測部は、前記基準照射部を原点とするXY座標のX軸上から前記第2平面に向かって、前記基準光に対し所定角度傾いた第1参照光を照射する第1参照照射部と、前記XY座標のY軸上から前記第2平面に向かって、前記基準光に対し所定角度傾いた第2参照光を照射する第2参照照射部とを有することを特徴とする。
【0011】
本発明に係る発明は、前記参照光は、前記基準光の一部を前記第1平面から前記第2平面へ向かって反射する反射部によって照射されることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る発明は、前記基準光の一部を前記第2平面から前記第1平面に向かって反射する反射部と、前記反射部によって反射された反射光を前記第1平面から前記第2平面に向かって反射する拡散板とを備え、前記拡散板によって前記参照光を照射することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、基準光を照射して基準変位を計測する基準変位計測部と、基準光に対し所定角度傾いた参照光を照射して参照変位を検出する参照変位計測部とを備えると共に、照射部として拡散光を放射する光源が用いられていることにより、第1平面および第2平面において局所的な変形が生じた場合にもより正確に層間変位を計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施形態に係る変位計測装置の全体構成を示す模式図である。
【図2】第1実施形態に係る変位計測装置の各部の配置箇所を模式的に示す斜視図である。
【図3】第1実施形態に係る変位計測装置の使用状態を示す模式図である。
【図4】第1実施形態に係る変位計測装置の全体構成を示す模式図であり、傾きが生じた状態を示す図である。
【図5】第2実施形態に係る変位計測装置の全体構成を示す模式図である。
【図6】第3実施形態に係る変位計測装置の全体構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
(1)第1実施形態
(全体構成)
図1に示す変位計測装置1Aは、第1平面としての建物の天井2と、当該天井2に対向して所定間隔Hだけ隔てて略平行に形成された第2平面としての床3とで構成される層間に設置されている。この変位計測装置1Aは、例えば地震等の災害によって天井2に生じる水平方向の変位(以下、層間変位という)を計測し得るように設置されている。
【0016】
変位計測装置1Aは、天井2と床3の間に垂直に基準光LSを照射して基準変位を計測する基準変位計測部4と、天井2と床3の間に基準光LSに対し所定角度α傾いた参照光LRを照射して参照変位を検出する参照変位計測部5とを備える。基準変位計測部4と、参照変位計測部5とは、それぞれ照射部6と、受光部7と、当該受光部7と対となるレンズ8とを有する。レンズ8は凸レンズが用いられる。
【0017】
照射部6は、放射状に伝播する拡散光を照射する光源からなる。本実施形態の場合、照射部6は、LED(Light Emitting Diode)が用いられ、天井2に設置されている。なお、拡散光を照射する光源の場合、当該光源の設置箇所、この場合天井2の回転は基準変位および参照変位に影響を与えないことが実験により確認されている。したがって、本発明では、照射部6として拡散光を放射する光源が天井に設けられていることにより、天井2の回転を無視し得る。
【0018】
受光部7は、種々のものを選択することができるが、例えば、平板状の光位置センサ(PSD; Position Sensitive Detector)を好適に用いることができる。また、受光部7は、算出部9に電気的に接続されている。算出部9は、検出された基準変位および参照変位から層間変位を算出し得るように構成されている。
【0019】
基準変位計測部4は、照射部6としての基準照射部10と、受光部7としての基準受光部11とを有する。基準照射部10は、天井2から鉛直下方に向かって基準光LSを照射し得るように設けられている。基準受光部11は、レンズ8としての基準レンズ12を通過した基準光LSを垂直に受光し得るように、受光面が床3に対し平行に配置されている。この基準受光部11によって検出される変位を基準変位(x、y)と呼ぶ。
【0020】
本実施形態の場合、基準受光部11と基準レンズ12とは変位検出部16に設けられている。変位検出部16は、床3に配置され、筐体17と、当該筐体17内に設けられる基台18とを有する。基準レンズ12は、光軸を鉛直方向とした状態で筐体17上面に保持されている。基準受光部11は、受光面が基準レンズ12に対向するように床3に対し平行に配置した状態で、基台18に固定されている。これにより、変位検出部16は、基準照射部10から照射された基準光LSを基準レンズ12によって前記基準受光部11に集光させ得るように構成されている。
【0021】
参照変位計測部5は、照射部6としての参照照射部13Aと、受光部7としての参照受光部14とを有する。参照照射部13Aは、基準光LSに対し所定角度αだけ傾けて参照光LRを照射する。参照受光部14は、レンズ8としての参照レンズ15を通過した参照光LRを垂直に受光するように床3に対し角度αだけ傾けて設けられている。
【0022】
参照変位計測部5の構成について、図2を参照してさらに詳細に説明する。本図において、天井2における基準照射部10の設置位置を原点Oとする天井表面のXY座標を考える。参照照射部13Aは、XY座標のX軸上に設置された第1参照照射部20と、Y軸上に設置された第2参照照射部21とからなる。XY座標において、第1参照照射部20の位置を(−d,0)、第2参照照射部21の位置を(0,−d)とする。
【0023】
また、原点Oの鉛直下方であって床3における基準受光部11の中央を原点oとする床表面のxy座標を考える。参照受光部14は、x軸上に設置される第1参照受光部22と、y軸上に設置される第2参照受光部23とからなる。xy座標において、第1参照受光部22の位置を(l,0)、第2参照受光部23の位置を(0,l)とする。この第1参照受光部22で検出される変位を第1参照変位(x、y)、第2参照受光部23で検出される変位を第2参照変位(x、y)と呼ぶ。
【0024】
本実施形態の場合、第1参照受光部22と第2参照受光部23と参照レンズ15とは、基準受光部11と基準レンズ12と共に、変位検出部16に設けられている。参照レンズ15は、光軸が鉛直方向に対し角度αだけ傾けた状態で、筐体17の上部隅に保持されている(図1)。第1参照受光部22と第2参照受光部23とは、受光面が参照レンズ15に対向するように鉛直方向に対し角度αだけ傾けた状態で、基台18に固定されている。すなわち、第1参照受光部22は受光面がx軸に対し角度αだけ傾けた状態で固定されている。また、第2参照受光部23は受光面がy軸に対し角度αだけ傾けた状態で固定されている。
【0025】
このように配置された第1参照照射部20は、基準光LSに対し角度αだけ傾いた第1参照光LR1をx軸上の第1参照受光部22に向かって照射する。また、第2参照照射部21は、基準光LSに対し角度αだけ傾いた第2参照光LR2をy軸上の第2参照受光部23に向かって照射する。
【0026】
これにより、変位検出部16は、第1参照照射部20から照射された第1参照光LR1を参照レンズ15によって第1参照受光部22に集光させ得るように構成されている。また、変位検出部16は、第2参照照射部21から照射された第2参照光LR2を参照レンズ15によって第2参照受光部23に集光させ得るように構成されている。
【0027】
なお、第1平面と第2平面の相対的なねじれ回転の角度は、Z軸回りを正としてψと表記する。また、床3の回転角度は、x軸周りの回転角度をθ、y軸周りの回転角度をθと表記する。
【0028】
(作用および効果)
本実施形態に係る変位計測装置1Aの作用および効果について説明する。天井2に基準照射部10、第1参照照射部20、および第2参照照射部21を設置すると共に、床3に変位検出部16を配置する。図示しない電源をオンすることにより、基準照射部10は基準光LSを照射する。また、第1参照照射部20は第1参照光LR1を照射する。さらに、第2参照照射部21は第2参照光LR2を照射する。
【0029】
基準照射部10から照射された基準光LSは、鉛直下方に向かって放射状に照射される。この基準光LSは、基準レンズ12を通過して基準受光部11で受光され基準受光位置11Pとして検出される。
【0030】
また、第1参照照射部20から照射された第1参照光LR1は、基準光LSに対し角度αだけ傾いた方向に放射状に照射される。この第1参照光LR1は対応する参照レンズ15を通過して第1参照受光部22で受光され第1参照受光位置22Pとして検出される。
【0031】
さらに、第2参照照射部21から照射された第2参照光LR2は、基準光LSに対し角度αだけ傾いた方向に放射状に照射される。この第2参照光LR2は対応する参照レンズ15を通過して第2参照受光部23で受光され第2参照受光位置23Pとして検出される。
【0032】
この状態で、天井2が床3に対し水平方向、および回転方向に変位したとすると、変位検出部16において、基準受光位置11P、第1参照受光位置22P、および第2参照受光位置23Pもそれぞれ移動する。これにより、変位検出部16は、基準受光位置11Pの移動量から基準変位(x、y)を検出し、第1参照受光位置22Pの移動量から第1参照変位(x、y)を検出し、第2参照受光位置23Pの移動量から第2参照変位(x、y)を検出する。なお、上記したとおり、天井2の回転は無視し得る。
【0033】
このようにして検出された基準変位(x、y)、第1参照変位(x、y)、および第2参照変位(x、y)から、算出部9は、層間変位と角度誤差を分離する。これにより、変位計測装置1Aは、より正確な層間変位を計測することができる。なお、x軸方向の層間変位をδ、y軸方向の層間変位をδとする。
【0034】
なお、本実施形態の場合、基準照射部10、第1参照照射部20、および第2参照照射部21は、照射部6として拡散光を放射する光源が用いられていることにより、天井2の回転を無視し得る構成とした。したがって、変位計測装置1Aは、床3の角度誤差のみを基準変位(x、y)から消去することにより、より正確に層間変位を計測することができる。層間変位δおよびδを計測する手順について、以下、具体的に説明する。なお、基準受光部11および参照受光部14の受光面と、床3の表面の間の距離は、天井2と床3との距離に比較して微少であるので、実際上、受光面と床3の表面とは一致しているものとして考える。
【0035】
(基準変位)
基準受光部11で検出される基準変位(x、y)について説明する。図3は、変位が生じる前の床3の模式図(xz座標)である。この場合の基準受光位置11Pを原点oとする。
【0036】
この状態で、床3がy軸を中心として角度θだけ回転した場合は、図4に示すように、基準照射部10がHθだけ相対変位した状態と同様に考えることができる。そうすると、基準受光位置11Pは、基準レンズ12の焦点距離による倍率をb/aとすると、x方向に[b/a×(Hθ)]だけ移動する。
【0037】
したがって、x方向の基準変位xは、次式で表される。
【0038】
【数1】

【0039】
同様に、床3がx軸を中心として角度θだけ回転した場合は、基準照射部10がHθだけ相対変位した状態と同様に考えることができる。そうすると、基準受光位置11Pは、基準レンズ12の焦点距離による倍率をb/aとするとy方向に[b/a×(Hθ)]だけ移動する。
【0040】
したがって、y方向の基準変位yは、次式で表される。
【0041】
【数2】

【0042】
(参照変位)
まず、第1参照受光部22で検出される第1参照変位(x、y)について説明する。層間変位をδ、y軸を中心とする回転角度をθ、基準受光部11と第1参照受光部22との距離をl、参照レンズ15の焦点距離による倍率をb’/a’とする。
【0043】
第1参照受光部22はx軸に対し角度αだけ傾いて設置されているので、第1参照受光位置22Pのx方向の移動量はcosα倍となる。また、第1参照照射部20と第1参照受光部22との距離は、H/cosαである。床3がy軸を中心として角度θだけ回転した場合は、第1参照照射部20が(Hθ/cosα)だけ相対変位した状態と同様に考えることができる。そうすると、第1参照受光位置22Pは、x方向に[b’/a’×(Hθ/cosα)]だけ移動する。
【0044】
この場合、x方向の第1参照変位xは、次式で得られる。
【0045】
【数3】

【0046】
なお、(−lsinα・θ)の項は、床3がy軸を中心として回転したことにより、第1参照受光部22がlθだけ上下動することによって生じる相対変位である。
【0047】
また、層間変位をδ、x軸を中心とする回転角度をθ、z軸を中心とする回転角度をψ、基準受光部11と第1参照受光部22との距離をlとする。床3がx軸を中心として角度θだけ回転した場合は、第1参照照射部20がHθだけ相対変位した状態と同様に考えることができる。そうすると、第1参照受光位置22Pは、y方向に[b’/a’×(Hθ)]だけ移動する。
【0048】
この場合、y方向の第1参照変位yは、次式で表される。
【0049】
【数4】

【0050】
次に、第2参照受光部23で検出される第2参照変位(x、y)について説明する。層間変位をδ、y軸を中心とする回転角度をθ、z軸を中心とする回転角度をψ、基準受光部11と第2参照受光部23との距離をl、参照レンズ15の焦点距離による倍率をb’/a’とする。床3がy軸を中心として角度θだけ回転した場合は、第2参照照射部21がHθだけ相対変位した状態と同様に考えることができる。そうすると、第2参照受光位置23Pは、x方向に[b’/a’×(Hθ)]だけ移動する。
【0051】
この場合、x方向の第2参照変位xは、次式で表される。
【0052】
【数5】

【0053】
また、層間変位をδ、x軸を中心とする回転角度をθ、基準受光部11と第2参照受光部23との距離をlとする。第2参照照射部21と第2参照受光部23との距離は、H/cosαである。第2参照受光部23はy軸に対し角度αだけ傾いて設置されているので、第2参照受光位置23Pのy方向の移動量はcosα倍となる。また、床3がx軸を中心として角度θだけ回転した場合は、第2参照照射部21がHθだけ相対変位した状態と同様に考えることができる。そうすると、第2参照受光位置23Pは、y方向に[b’/a’×(Hθ/cosα)]だけ移動する。
【0054】
この場合、y方向の第2参照変位yは、次式で表される。
【0055】
【数6】

【0056】
なお、(−lsinα・θ)の項は、床3がx軸を中心として回転したことにより、第2参照受光部23がlθだけ上下動することによって生じる相対変位である。
【0057】
以上の式からδ、δ、θ、θ、ψをそれぞれ算出することにより、変位計測装置1Aは基準変位(x、y)から層間変位δおよびδを分離することができる。
【0058】
本実施形態に係る変位計測装置1Aは、天井2から床3へ基準光LSを照射して基準変位を計測する基準変位計測部4と、天井2から床3へ基準光LSに対し所定角度α傾いた参照光LRを照射して参照変位を計測する参照変位計測部5とを備えることにより、基準変位から角度誤差を消去することができるので、天井2および床3において局所的な変形が生じた場合にもより正確に層間変位を計測することができる。
【0059】
特に変位計測装置1Aは、照射部6として拡散光を放射する光源が用いられていることにより、天井2の回転を無視し得る構成とした。これにより、変位計測装置1Aは、天井2および床3において局所的に変形が生じた場合でも、床3の角度誤差のみを基準変位から消去することにより、精度のよい層間変位を計測することができるので、全体として構成を簡略化することができる。
【0060】
また、変位計測装置1Aは、変位検出部16に基準受光部11と参照受光部14とを一体に設けたことにより、全体として小型化を実現することができる。
【0061】
さらに、変位計測装置1Aは、参照変位計測部5が、基準光LSに対しそれぞれ異なる方向に照射される第1参照光LR1と第2参照光LR2により参照変位を検出し得る構成としたことにより、θ、θ、ψをそれぞれ算出することができるので、より確実に精度を向上することができる。
(2)第2実施形態
図5に示すように、本実施形態に係る変位計測装置1Bは、参照照射部の構成のみが上記第1実施形態と異なる。すなわち、参照照射部13Bは、反射部30と、拡散板31とからなる。反射部30は、変位検出部16の上面に設けられ、基準照射部10から照射される基準光LSの一部を天井2に向かって反射する。拡散板31は、天井2に設けられ、前記反射部30によって反射された反射光を天井2から床3に向かって反射する。
【0062】
このような構成により、参照照射部13Bは、基準光LSの一部を拡散板31で反射することによって、基準光LSに対し角度αの方向へ参照光LRを照射する。
【0063】
これにより、本実施形態に係る変位計測装置1Bは、第1参照照射部20および第2参照照射部21にLED光源を用いている上記第1実施形態に比べ、LED光源を2個省略することができる。
【0064】
また、本実施形態に係る変位計測装置1Bは、天井2と床3の間に基準光LSを照射して基準変位を計測する基準変位計測部4と、天井2と床3の間に基準光LSに対し所定角度α傾いた参照光LRを照射して参照変位を検出する参照変位計測部5とを備えるので、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
(3)第3実施形態
図6に示すように、本実施形態に係る変位計測装置1Cは、参照照射部の構成のみが上記第1実施形態と異なる。すなわち、参照照射部13Cは、LED光源に換えて反射部35のみからなる。反射部35は、天井2に設けられ、基準照射部10から照射される基準光LSの一部を天井2から床3に向かって反射する。
【0065】
このような構成により、参照照射部13Cは、基準光LSの一部を反射部35で反射することによって、基準光LSに対し角度αの方向へ参照光LRを照射する。なお、本実施形態を適用するには、「天井2の回転角がゼロである」と仮定できる必要がある。ちなみに、反射部に写る基準照射部10の鏡像は、参照受光部14と反射部を結ぶ直線の延長線上となる。
【0066】
これにより、本実施形態に係る変位計測装置1Cは、第1参照照射部20および第2参照照射部21にLED光源を用いている上記第1実施形態に比べ、LED光源を2個省略することができる。
【0067】
また、本実施形態に係る変位計測装置1Cは、天井2と床3の間に基準光LSを照射して基準変位を計測する基準変位計測部4と、天井2と床3の間に基準光LSに対し所定角度α傾いた参照光LRを照射して参照変位を検出する参照変位計測部5とを備えるので、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
(変形例)
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内で適宜変更することが可能である。例えば、上記実施形態では、天井2に照射部13を設け、床3に変位検出部16を設置する場合について説明したが、本発明はこれに限らず、天井2変位検出部16を設置し、床3に照射部13を設けることとしてもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、二平面として天井と床で構成される層間に適用した場合について説明したが、本発明はこれに限らず、相対向して設けられる二平面であればよく、例えば側壁やその他機械構造物に含まれる二平面に適用することもできる。
【0069】
また、上記実施形態において、第1参照光LR1および第2参照光LR2は、いずれも基準光LSに対し角度αだけ傾いている場合について説明したが、本発明はこれに限らず、基準光LSに対し互いに異なる角度だけ傾けることとしてもよい。
【0070】
また、上記実施形態において、レンズに凸レンズを用いた場合について説明したが、本発明はこれに限らず、結像光学系を構成できればよく、例えば、反射式望遠鏡のように凹面鏡と凸面鏡の組み合わせによる結像光学系を用いることとしてもよい。
【0071】
また、上記実施形態において、レンズは、基準レンズと参照レンズとで構成した場合について説明したが、単一の結像光学系によって3枚の受光素子に集光する方式を用いることとしてもよい。
【符号の説明】
【0072】
1A 変位計測装置
1B 変位計測装置
1C 変位計測装置
2 天井(第1平面)
3 床(第2平面)
4 基準変位計測部
5 参照変位計測部
10 基準照射部
11 基準受光部
13A 参照照射部
13B 参照照射部
13C 参照照射部
14 参照受光部
16 変位検出部
20 第1参照照射部
21 第2参照照射部
22 第1参照受光部
23 第2参照受光部
30 反射部
31 拡散板
35 反射部
H 所定間隔
LR 参照光
LR1 第1参照光
LR2 第2参照光
LS 基準光
基準変位
第1参照変位
第2参照変位
基準変位
第1参照変位
第2参照変位
α 所定角度
δ 層間変位
δ 層間変位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1平面と、前記第1平面に対し所定間隔を隔てて設けられた第2平面とを備える層間の層間変位を、放射状に伝播する拡散光を用いて計測する変位計測装置であって、
前記第1平面から前記第2平面に向かって基準光を照射して、基準変位を検出する基準変位計測部と、
前記第1平面から前記第2平面に向かって前記基準光に対し所定角度傾いた参照光を照射して、参照変位を検出する参照変位計測部と
を備えることを特徴とする変位計測装置。
【請求項2】
前記基準変位計測部は、前記第1平面から前記第2平面に向かって基準光を照射する基準照射部を有し、
前記参照変位計測部は、
前記基準照射部を原点とするXY座標のX軸上から前記第2平面に向かって、前記基準光に対し所定角度傾いた第1参照光を照射する第1参照照射部と、
前記XY座標のY軸上から前記第2平面に向かって、前記基準光に対し所定角度傾いた第2参照光を照射する第2参照照射部と
を有する
ことを特徴とする請求項1記載の変位計測装置。
【請求項3】
前記参照光は、前記基準光の一部を前記第1平面から前記第2平面へ向かって反射する反射部によって照射されることを特徴とする請求項1記載の変位計測装置。
【請求項4】
前記基準光の一部を前記第2平面から前記第1平面に向かって反射する反射部と、
前記反射部によって反射された反射光を前記第1平面から前記第2平面に向かって反射する拡散板と
を備え、
前記拡散板によって前記参照光を照射することを特徴とする請求項1記載の変位計測装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−203150(P2011−203150A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−71368(P2010−71368)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(899000068)学校法人早稲田大学 (602)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】