説明

変性エチレン−ビニルアルコール共重合体およびそれを含有する組成物

【課題】ゲル、ブツが発生しにくく熱安定性に優れ、かつ柔軟性およびガスバリア性の良好な変性エチレン−ビニルアルコール共重合体組成物およびそれを与える変性エチレン−ビニルアルコール共重合体を提供すること。
【解決手段】下記式(1)で示される構造単位(I)をビニルアルコール単位に対して0.02〜1.2モル%有する変性エチレン−ビニルアルコール共重合体。
【化1】


(式中、Rは置換基を有していてもよい炭素数3以下のアルキレンオキシ基、エステル基、アミド基を表し、Rがアルキレンオキシ基またはエステル基の場合は主鎖に対して炭素が結合しており、Rは置換基を有していてもよい炭素数4以下のアルカンジイル基を表し、個々のRは同じであっても異なっていてもよく、Rは水素原子または置換基を有していてもよい炭素数4以下のアルキル基を表し、nは10〜100の範囲の値を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な変性エチレン−ビニルアルコール共重合体に関する。また、本発明はゲル、ブツが発生しにくく熱安定性に優れ、かつ柔軟性およびガスバリア性の良好な変性エチレン−ビニルアルコール共重合体組成物および該組成物からなるバリア材、成形物、フィルムおよびシートに関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン−ビニルアルコール共重合体(以下、EVOHと略することがある)およびその組成物はガスバリア性が高く、耐油性、耐有機溶媒性、保香性、透明性などに優れるため、食品包装材料として広く使用されている。EVOHの中でも特にエチレン単位含有量が20〜27モル%と低含量のEVOHはガスバリア性が良好であり、食品包装用以外の燃料容器や多層構造パイプなどの工業用途としても有用である。EVOHを用いた食品包装材料には、押出成形によるフィルム、ブロー成形によるボトル、真空成形による各種パック類など様々な成形加工法が採用されている。このような食品包装材料は、通常、溶融成形により製造されており、溶融成形時において、長時間の連続成形においてもゲル、ブツの発生に由来するフィッシュアイやスジのない成形物を得るためのロングラン性、良好な機械物性(フィルムや成形品の機械的強度)、外観良好性(着色がなく、ブツ発生が見られない)が求められる。
【0003】
しかしながら、EVOH、特にエチレン単位含有量が20〜27モル%と低含量のEVOHは、溶融成形時にゲル、ブツが発生しやすいという問題点があった。また、EVOHは延伸性および柔軟性に欠けるという問題点があり、かかる欠点を改善するために、EVOHにエチレン−酢酸ビニル共重合体やエチレン−プロピレン共重合体などの柔軟な樹脂をブレンドする方法が知られている。しかし、これらの方法では延伸性、柔軟性はある程度まで改善されるものの、透明性が大きく低下するという別の問題点がある。
【0004】
特許文献1および2には、EVOHに柔軟性を付与する試みとして、ポリエーテル成分を含有するEVOHや、分子量500以下の一価のエポキシ化合物を反応させたEVOHといった変性EVOHが記載されている。特許文献3には、ガスバリア性および強度を付与する試みとして、EVOHに側鎖1,2−グリコール結合を有する構造単位を含有させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−230840号公報
【特許文献2】特開2003−231715号公報
【特許文献3】特開2004−359965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した従来技術では、EVOH、特にエチレン単位含有量20〜27モル%と低含量のEVOHにおいては、熱安定性、柔軟性およびガスバリア性のすべてを同時に満足することができない場合があった。
【0007】
しかして、本発明の目的は、これらの問題点を解決し、ゲル、ブツが発生しにくく熱安定性に優れ、かつ柔軟性およびガスバリア性の良好な変性EVOH組成物およびそれを与える変性EVOHを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、下記式(1)で示される構造単位(I)をビニルアルコール単位に対して0.02〜1.2モル%有する変性エチレン−ビニルアルコール共重合体(以下、単に変性EVOHと称する)を含む組成物が、ゲル、ブツが発生しにくく熱安定性に優れ、かつ柔軟性およびガスバリア性に優れることを見出した。また、該変性EVOH組成物は特にエチレン単位含有量20〜27モル%と低含量のEVOH組成物において有用であることを見出した。これらの知見に基づいてさらに検討を重ね、本発明を完成するに至った。
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、Rは置換基を有していてもよい炭素数3以下のアルキレンオキシ基、エステル基、アミド基を表し、Rがアルキレンオキシ基またはエステル基の場合は主鎖に対して炭素が結合しており、Rは置換基を有していてもよい炭素数4以下のアルカンジイル基を表し、個々のRは同じであっても異なっていてもよく、Rは水素原子または置換基を有していてもよい炭素数4以下のアルキル基を表し、nは10〜100の範囲の値を表す。)
【0011】
好適な実施態様では、変性EVOHにおけるエチレン単位含有量が18〜44モル%である。また、好適な実施態様では、変性EVOHにおけるRがメチレンオキシ基または置換されたメチレンオキシ基である。好適な実施態様では、変性EVOHにおけるRがエチレン基、プロピレン基、エチルエチレン基およびテトラメチレン基からなる群より選択される少なくとも1種である。さらに好適な実施形態では、Rがエチレン基およびプロピレン基より選択される少なくとも1種である。さらに、Rが水素原子、メチル基およびブチル基からなる群より選択される1種である。
【0012】
好適な実施態様では、構造単位(I)の含有量が0.5〜20質量%である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ゲル、ブツが発生しにくく熱安定性に優れ、かつ柔軟性およびガスバリア性の良好な変性EVOH組成物およびそれを与える変性EVOHが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明の変性EVOHは、下記式(1)で示される構造単位(I)を、該変性EVOH中のビニルアルコール単位に対して0.02〜1.2モル%の範囲で含有する。
【0015】
【化2】

(式中、Rは置換基を有していてもよい炭素数3以下のアルキレンオキシ基、エステル基、アミド基を表し、Rがアルキレンオキシ基またはエステル基の場合は主鎖に対して炭素が結合しており、Rは置換基を有していてもよい炭素数4以下のアルカンジイル基を表し、個々のRは同じであっても異なっていてもよく、Rは水素原子または置換基を有していてもよい炭素数4以下のアルキル基を表し、nは10〜100の範囲の値を表す。)
【0016】
上記式(1)で示される構造単位(I)中、Rが表す置換基を有していてもよい炭素数3以下のアルキレンオキシ基としては、メチレンオキシ基、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基、トリメチレンオキシ基が挙げられる。Rが表す置換基を有していてもよい炭素数4以下のアルカンジイル基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、1−メチルトリメチレン基、2−メチルトリメチレン基、1,2−ジメチルエチレン基、エチルエチレン基が挙げられる。個々のRは同じであっても異なっていてもよく、異なっている場合それらはランダム状に並んでいるものもブロック状に並んでいるものも同様に使用が可能である。Rが表す置換基を有していてもよい炭素数4以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基などが挙げられる。R、RおよびRが有していてもよい置換基としては、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基などが挙げられる。ここでR、RおよびRにおけるアルキレンオキシ基、アルカンジイル基およびアルキル基の炭素数には置換基の炭素は含まない。
【0017】
本発明の好適な実施態様では、構造単位(I)のRがメチレンオキシ基または置換されたメチレンオキシ基である。より好適な実施態様では、構造単位(I)のRがメチレンオキシ基または置換されたメチレンオキシ基であり、かつRがエチレン基、プロピレン基、エチルエチレン基およびテトラメチレン基からなる群より選択される少なくとも1種である。個々のRは同じであっても異なっていてもよく、異なっている場合それらはランダム状に並んでいるものもブロック状に並んでいるものも同様に使用が可能である。さらに好適な実施態様では、構造単位(I)のRがメチレンオキシ基または置換されたメチレンオキシ基であり、かつRがエチレン基またはプロピレン基より選択される少なくとも1種である。構造単位(I)のRがメチレンオキシ基または置換されたメチレンオキシ基であり、Rがエチレン基またはプロピレン基より選択される少なくとも1種であり、かつRが水素原子、メチル基、およびn−ブチル基からなる群より選択される1種であるものが、合成に必要なモノマーが市販されており入手が容易である点において特に好ましい。
【0018】
上記式(1)で示される構造単位(I)におけるnの範囲としては、10〜100であり、12〜90であることが好ましく、15〜80であることが更に好ましい。nが10より小さい場合および100より大きい場合のいずれにおいてもガスバリア性が低下する。
【0019】
変性EVOHが有する構造単位(I)の含有量は、該変性EVOH中のビニルアルコール単位に対して0.02〜1.2モル%の範囲であり、0.1〜1.0モル%の範囲であることが好ましく、0.2〜0.9モル%の範囲であることがより好ましい。構造単位(I)の含有量が0.02モル%より少ないと、柔軟性及びゲル、ブツの改善効果が小さく、1.2モル%より多いとガスバリア性が大きく低下し、ゲル、ブツが逆に増大する。
【0020】
本発明の変性EVOHは、エチレン単位含有量が18〜44モル%の範囲であるのが好ましく、19〜38モル%の範囲であるのがより好ましく、20〜27モル%の範囲であるのがさらに好ましい。エチレン単位含有量が18モル%より少ない場合は、成形性および高湿度下でのガスバリア性が悪化する傾向となり、一方、エチレン単位含有量が44モル%より多い場合はガスバリア性が悪化する傾向となる。
【0021】
本発明の変性EVOHの、オストワルド粘度管を用いてフェノール/水=85/15(質量比)の含水フェノール溶媒中で30℃で測定した極限粘度を[η]としたとき、該極限粘度[η]は、通常、0.085〜0.135L/gの範囲であり、0.095〜0.130L/gの範囲であるのがより好ましく、0.100〜0.120L/gの範囲であるのがさらに好ましい。[η]が0.085L/gより小さい場合は機械的強度が低下する傾向となり、一方、0.135L/gより大きい場合は溶融成形時にブツが発生しやすい傾向となる。
【0022】
本発明の変性EVOH中の構造単位(I)の含有量は0.5〜20質量%の範囲であることが好ましく、1〜15質量%であることがより好ましい。構造単位(I)の含有量が0.5質量%より少ない場合は柔軟性及び熱安定性の改善効果が低下する傾向があり、20質量%より多い場合はガスバリア性が低下する傾向がある。
【0023】
本発明の変性EVOHは、エチレン、ビニルエステル単量体および下記式(2)の構造で示される化合物(以下、化合物(II)と称する)とを共重合し、ついでアルカリ触媒または酸触媒を用いてけん化することにより得られる。
【0024】
【化3】

(式中、R、R、Rおよびnの定義および好適な態様は式(1)の場合と同様である。)
【0025】
化合物(II)は公知技術により合成することが可能であり、市販のものを用いることもできる。市販のものとしては、例えば、ポリエチレングリコールアリルエーテル(日油株式会社製ユニオックスPKA−5004(平均分子量750)、ユニオックスPKA−5005(平均分子量1500));メトキシポリエチレングリコールアリルエーテル(日油株式会社製ユニオックスPKA−5009(平均分子量550)、ユニオックスPKA−5010(平均分子量1500));ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールアリルエーテル(日油株式会社製ユニセーフPKA−5011(平均分子量750)、ユニセーフPKA−5012(平均分子量2000)、ユニルーブPKA−5013(平均分子量2000));ポリプロピレングリコールアリルエーテル(日油株式会社製ユニセーフPKA−5014(平均分子量1500))、ポリプロピレングリコールアリルエーテル(平均分子量1000);ブトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールアリルエーテル(日油株式会社製ユニセーフPKA−5015(平均分子量1600)、ユニセーフPKA−5016(平均分子量1600)、ユニセーフPKA−5017(平均分子量2500))などが使用できる。
【0026】
本発明の変性EVOHは、エチレン単位と構造単位(I)以外に、実質的にビニルアルコール単位またはビニルエステル単位からなる。本発明の変性EVOHはまず、エチレン、ビニルエステル単量体および化合物(II)を共重合させ、得られたビニルエステル系共重合体をアルカリ触媒または酸触媒存在下でけん化することで得られる。ビニルエステル単量体としては、例えば蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニルなどが挙げられ、通常、酢酸ビニルが好適に用いられる。
【0027】
共重合反応は加圧下で行うことが通常であり、ここで加圧(重合エチレン圧)の下限値は0.05MPa以上であることが好ましく、0.1MPa以上であることがより好ましく、0.15MPa以上であることがさらに好ましい。また、加圧の上限値は10MPa以下が好ましく、7MPa以下であることがより好ましく、6MPa以下であることがさらに好ましい。
【0028】
本発明において、エチレンの加圧下でエチレン、ビニルエステル単量体および化合物(II)の共重合を行う反応器としては、エチレンの圧力を保つことができる加圧系の反応器であればその形式は特に限定されず、撹拌機などについても公知の物を用いることができる。共重合方法としては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などの公知の方法が挙げられる。その中でも、無溶媒あるいはアルコールなどの溶媒中で重合する塊状重合法や溶液重合法が通常採用される。溶液重合時に溶媒として使用されるアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノールなどが挙げられる。また、溶媒としてジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランなどを用いることもできる。これらを2種またはそれ以上混合して重合溶媒として用いることもできる。共重合に使用される重合開始剤としては、α,α’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ系開始剤や、過酸化ベンゾイル、n−プロピルパーオキシジカーボネートなどの過酸化物系開始剤などの公知の開始剤が挙げられる。回分重合方式が採用される場合には2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)のような半減期の長い重合開始剤を用いることが好ましい。重合温度については特に制限はないが、0℃〜150℃の範囲が適当である。
【0029】
前述の、エチレン、ビニルエステル単量体および化合物(II)を共重合して得られたビニルエステル系共重合体のけん化には、通常のエチレン−ビニルエステル共重合体のけん化で用いられるアルカリけん化または酸けん化の手法がそのまま適用できる。すなわち、アルカリけん化の場合は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシドなどのアルカリ触媒を、酸けん化の場合には鉱酸やp−トルエンスルホン酸などの酸触媒を用いて、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールなどのアルコール、酢酸メチルなどのエステル、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどを溶媒として用いてけん化反応を行う。エチレン−ビニルエステル系重合体や触媒の溶解性を向上するためにテトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、アセトンなどの溶媒を適宜少量混合して用いても何ら差し支えない。また、ヒドロキノンやp−メトキシフェノールなどのラジカル重合禁止剤などを添加する場合もある。けん化反応の条件は、ビニルエステル系共重合体の構造や目的とするけん化度によって適宜調整されるが、通常、触媒濃度/ビニルエステル単位濃度(モル比)=0.001〜5.0、反応温度:20〜180℃、反応時間:0.1〜20時間の範囲で実施される。触媒は、けん化反応の初期に一括添加してもよいし、けん化反応の途中で追加添加してもよい。バッチ法や連続法など公知の方法が適用可能である。
【0030】
本発明の変性EVOHのけん化度は、通常70モル%以上99.99モル%未満であり、80モル%以上99.99モル%未満がより好ましく、85モル%以上99.99モル%未満がさらに好ましく、90モル%以上99.99モル%未満が特に好ましい。けん化度が70モル%より低い場合にはガスバリア性が低下する傾向がある。一方、けん化度が99.99モル%以上と高い場合は生産が難しく実用的ではない。
【0031】
前述のけん化反応で得られる変性EVOHを含む反応溶液から、変性EVOHを取り出してペレット化する方法は特に限定されない。好適には、変性EVOHを含む反応溶液を、凝固浴中にストランド状に析出させた後、該ストランドを切断することにより含水ペレットを得ることができる。析出に際しては、溶液を予め濃縮することによってけん化反応時よりも変性EVOHの濃度を上昇させておいてもよいし、溶媒の一部または全部を水で置換して、変性EVOHの水/水以外の混合溶液または変性EVOHの含水組成物としておいてもよい。これを水中、あるいはアルコールを少量含むアルコール水溶液中に押し出してストランド状に析出させてから切断することで含水ペレットが得られる。また、ストランド状に析出させずに、流動状のままで切断し、水中で凝固させてペレットを製造することもできる。
【0032】
上記のようにして得られる含水ペレットは多孔質であり、けん化反応に用いた触媒残渣を洗浄除去しやすく、その後の添加剤の添加や、乾燥操作も容易である。このような含水ペレットの含水率は、該操作上の利点から含水ペレットの全質量に対して10〜80質量%であることが好ましく、20〜70質量%であることがより好ましく、30〜60質量%であることがさらに好ましい。
【0033】
含水ペレットの洗浄液としては、メタノール、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、ヘキサン、水などが挙げられ、これらの中でもメタノール、酢酸メチル、水の単独もしくは混合液がより好ましい。洗浄温度としては、5〜80℃が好ましく、20〜70℃がより好ましい。洗浄時間としては20分間〜10時間が好ましく、1時間〜6時間がより好ましい。具体的な洗浄方法としては、ペレット状の変性EVOHを多量の水に投入して撹拌する方法、シャワー水を吹き付ける方法、塔型洗浄器を用いて連続的に洗浄する方法などが挙げられる。
【0034】
本発明の変性エチレン−ビニルアルコール組成物(以下、変性EVOH組成物と称する)は前記変性EVOHを含有するが、必要に応じてさらに以下の化合物を含有していてもよい。
【0035】
本発明の変性EVOH組成物はアルカリ金属元素を含有していることが熱安定性の観点から好ましく、その含有量がアルカリ金属元素換算で500ppm以下であることが好ましい。アルカリ金属元素の含有量を前記範囲に調整する方法は特に限定されないが、けん化反応後の変性EVOHは、通常、けん化触媒残渣としてアルカリ金属元素を含有しているので、前記の方法を用いてけん化反応後の変性EVOHを洗浄してアルカリ金属元素を除去した後、改めてアルカリ金属元素を所定量含有させ、変性EVOH組成物を得る方法が好ましい。変性EVOHにアルカリ金属元素を含有させる方法としては、変性EVOHをアルカリ金属元素を含む溶液に浸漬させる方法、変性EVOHを溶融させてアルカリ金属元素を含む化合物またはアルカリ金属元素を含む溶液と混合する方法、変性EVOHを適当な溶媒に溶解させてアルカリ金属元素を含む化合物と混合させる方法などが挙げられる。変性EVOHをアルカリ金属元素を含む溶液に浸漬する場合において、該溶液中のアルカリ金属元素の濃度は特に限定されない。また溶液の溶媒も特に限定されないが、取り扱いやすさなどの観点から水溶液であることが好ましい。変性EVOHを浸漬する際の溶液質量は、通常は乾燥時の変性EVOHの質量に対して3倍以上であり、10倍以上であることが好ましい。浸漬時間は変性EVOHの形態によってその好適な範囲は異なるが、通常1時間以上、好ましくは2時間以上である。溶液への浸漬処理は特に限定されず、複数の溶液に分けて浸漬してもよく、一度に処理しても構わないが、工程の簡素化の点から一度に処理することが好ましい。塔式の装置を用いて、浸漬の処理を連続的に行うことも好適に用いられる。
【0036】
本発明の変性EVOH組成物は、遊離のカルボン酸を10〜500ppm含有していてもよい。カルボン酸としてはコハク酸、アジピン酸、安息香酸、カプリン酸、ラウリン酸、グリコール酸、乳酸、蟻酸、酢酸、プロピオン酸などが挙げられるが、これらの中でも、酸性度が適当であり、変性EVOH組成物のpHを制御しやすい観点から、酢酸、プロピオン酸、乳酸がより好ましく、酢酸またはプロピオン酸が特に好ましい。カルボン酸の含有量が500ppmを越える場合は、変性EVOH組成物の熱安定性が悪化し、得られる成形物に着色、フィッシュアイ、縦筋などの外観不良が生じやすくなる。カルボン酸の含有量の上限は450ppm以下であることが好ましく、400ppm以下であることがより好ましい。一方、カルボン酸の含有量の下限は15ppm以上であることがより好ましく、20ppm以上であることがさらに好ましい。
【0037】
また、本発明の変性EVOH組成物は、リン酸化合物をリン酸根換算で1〜500ppm含有していることが好ましい。リン酸化合物の種類は特に限定されず、リン酸、亜リン酸などの各種の酸やその塩を用いることができる。リン酸塩としては、第一リン酸塩、第二リン酸塩、第三リン酸塩のいずれの形でもよく、そのカチオン種も特に限定されないが、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩であることが好ましい。中でも、リン酸、リン酸2水素ナトリウム、リン酸2水素カリウム、リン酸水素2ナトリウムおよびリン酸水素2カリウムの形でリン酸化合物を含有していることが好ましく、リン酸、リン酸2水素ナトリウムおよびリン酸2水素カリウムの形でリン酸化合物を添加することがより好ましい。リン酸化合物の含有量の上限は、リン酸根換算で400ppm以下であることが好ましく、300ppm以下であることがより好ましい。また、リン酸化合物の含有量の下限は、3ppm以上であることがより好ましく、5ppm以上であることがさらに好ましく、10ppm以上であることが特に好ましい。
【0038】
また、本発明の目的を阻害しない範囲であれば、変性EVOH組成物はホウ素化合物を含有していてもよい。ホウ素化合物としては、オルトホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸などのホウ酸類;ホウ酸エステル、ホウ酸塩、水素化ホウ素化合物類などが挙げられる。ホウ酸塩としては上記の各種ホウ酸類のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、ホウ砂などが挙げられる。これらの化合物の中でもオルトホウ酸が好ましい。ホウ素化合物を添加する場合、その含有量はホウ素元素換算で20〜2000ppmの範囲であることが好ましく、50〜1800ppmの範囲であることがより好ましい。
【0039】
以上のように、本発明の変性EVOH組成物は、必要に応じてカルボン酸、リン酸化合物およびホウ素化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有していてもよいが、かかる変性EVOH組成物を製造する方法は特に限定されない。例えば、前述のアルカリ金属元素を含有させる方法と同様の方法が採用される。
【0040】
本発明の変性EVOH組成物には、本発明の作用効果が阻害されてない範囲で、必要に応じて各種の添加剤あるいは他の高分子化合物を配合することもできる。このような添加剤の例としては、酸化防止剤、可塑剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤、フィラーなどが挙げられる。
【0041】
本発明の変性EVOH組成物の製造方法としては、上記で得られた変性EVOH、好適にはペレット形状での変性EVOHを、前記処理液に接触させて変性EVOH組成物とした後、必要に応じて脱液してから乾燥工程に供される。乾燥方法は特に限定されず、熱風を用いた流動式または静置式の乾燥方法、真空乾燥、凍結乾燥といった通常の乾燥方法に加えて、ベント付きの押出機中で溶融混練しながら乾燥させるといった方法も可能である。乾燥時の劣化を抑制できるという点では乾燥を窒素雰囲気下で行う方法も好ましく用いることができる。また、乾燥時に電磁波を照射することで乾燥速度を向上させ、短時間で乾燥するといった方法も好ましい。これらの乾燥方法を組み合わせて使用することも可能である。乾燥温度は特に限定されず、通常40〜180℃の温度が採用され、乾燥が進行するに伴って温度を上昇させることもできる。乾燥後の含水率は通常1質量%以下であり、好適には0.5質量%以下である。
【0042】
本発明の変性EVOH組成物は、好適には溶融成形によりフィルム、シート、容器、パイプ、ホース、繊維等、各種の成形体に成形される。これらの成形物は再使用の目的で粉砕し再度成形することも可能である。溶融成形法としては押出成形、溶融紡糸、射出成形、射出ブロー成形等が可能である。溶融温度は変性EVOHの融点等により異なるが120〜270℃程度が好ましい。
【0043】
本発明の変性EVOH組成物は、好適には押出成形品として用いられる。押出成形品の製造方法は特に限定されないが、フィルム押出キャスト成形、シート押出キャスト成形。パイプ押出成形、ホース押出成形、異形押出成形、押出ブロー成形、インフレーション押出成形等が好適なものとして例示される。また、これらの成形方法によって得られた押出成形品を、一軸または二軸延伸、あるいは熱成形などの二次加工に供することも可能である。
【0044】
本発明で得られる変性EVOH組成物は、ゲル、ブツが発生しにくく熱安定性に優れ、かつ柔軟性およびガスバリア性が良好である。
【実施例】
【0045】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例によって本発明は何ら限定されるものではない。なお、実施例等における「部」は、特に断りがない限り質量部を表す。
【0046】
〔1〕変性EVOHのエチレン単位含有量
H−NMR測定により求めた。すなわち、各実施例及び比較例で得られた変性EVOHをジメチルスルホキシド(DMSO)−dに溶解し、500MHzのH−NMR(日本電子株式会社製、GX−500)を用いて80℃で測定し、エチレン単位、構造単位(I)、ビニルアルコール単位、ビニルエステル単位のメチンプロトン(0.6〜2.1ppm)、およびポリアルキレンオキシド部位のプロトン(3.3〜3.6ppm)のピーク強度比よりエチレン単位含有量を算出した。
【0047】
〔2〕変性EVOHのけん化度
H−NMR測定により求めた。すなわち、各実施例及び比較例で得られた変性EVOHをDMSO−dに溶解し、500MHzのH−NMR(日本電子株式会社製、GX−500)を用いて80℃で測定し、ビニルエステル単位の側鎖部位プロトン、ビニルアルコール単位のメチンプロトン(3.15〜4.15ppm)のピーク強度比より算出した。
【0048】
〔3〕変性EVOH中の式(1)で示される構造単位(I)の含有量
変性EVOHの前駆体である変性エチレン−ビニルエステル共重合体のH−NMR測定により求めた。共重合反応で得られた変性エチレン−ビニルエステル共重合体を含む反応溶液の一部をサンプリングし、アセトンに溶解/n−ヘキサンに析出させる操作を3回行った後、80℃の水により3回洗浄し、60℃で減圧乾燥して、分析用変性エチレン−ビニルエステル共重合体を得た。該共重合体をCDClに溶解し、500MHzのH−NMR(日本電子株式会社製、GX−500)を用いて室温で測定し、変性エチレン−ビニルエステル共重合体のビニルエステル単位のメチンプロトンとポリアルキレンオキシド部位のプロトン(3.0〜3.8ppm)のピーク強度比より算出した。
【0049】
〔4〕変性EVOH組成物の融点
各実施例及び比較例で得られた変性EVOH組成物について、JIS K7121に準じて、30℃から220℃まで10℃/分の速度にて昇温した後100℃/分で30℃まで急冷して再度30℃から220℃まで10℃/分の昇温速度にて測定を実施した(セイコー電子工業株式会社製示差走査熱量計(DSC)RDC220/SSC5200H型)。温度の校正にはインジウムと鉛を用いた。2ndランのチャートから前記JISでいう融解ピーク温度(Tpm)を求め、これを融点とした。
【0050】
〔5〕変性EVOH組成物中のナトリウム元素含有量
各実施例及び比較例で得られた変性EVOH組成物0.5gをテフロン(登録商標)製圧力容器に入れ、ここに濃硝酸5mLを加え30分間室温分解した。30分後蓋をし、湿式分解装置(株式会社アクタック製 MWS−2)により150℃で10分、次いで180℃で5分間加熱することで分解を行い、その後室温まで冷却した。この処理液を50mLのメスフラスコ(TPX製)に移し純水でメスアップした。この溶液について、ICP発光分光分析装置(パーキンエルマー製 OPTIMA4300DV)により含有金属分析を行い、ナトリウムイオン含有量を求め、ナトリウム元素含有量とした。
【0051】
実施例1
(1)ジャケット、撹拌機、窒素導入口、エチレン導入口および開始剤添加口を備えた50L加圧反応槽に酢酸ビニル(VAc)を16.3kg、メタノール(MeOH)を5.9kg、ポリプロピレングリコールアリルエーテル(ユニセーフPKA−5014:日油株式会社製、平均分子量1500、R=メチレンオキシ基、R=プロピレン基、R=水素原子、n=24.9)を710g仕込み、60℃に昇温した後30分間窒素バブリングにより系中を窒素置換した。次いで反応槽圧力(Et圧)が2.6MPaとなるようにエチレンを導入した。開始剤として2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(AMV)をメタノールに溶解した濃度2.5g/L溶液を調製し、窒素ガスによるバブリングを行って窒素置換した。上記の重合槽内温度を60℃に調整した後、上記の開始剤溶液51mLを注入し重合を開始した。重合中はエチレンを導入して反応槽内圧力を2.5MPaに、重合温度を60℃に維持し、上記の開始剤溶液を用いて158mL/時間でAMVを連続添加して重合を実施した。5時間後に重合率が40%となったところで冷却して重合を停止した。反応槽を開放して脱エチレンした後、窒素ガスをバブリングして脱エチレンを完全に行った。次いで減圧下で未反応の酢酸ビニルモノマーを除去した後、共重合により化合物(II)が導入された変性エチレン−酢酸ビニル共重合体にメタノールを添加して20質量%メタノール溶液とした。
【0052】
(2)ジャケット、撹拌機、窒素導入口、蒸気冷却気及び溶液添加口を備えた100L反応槽に上記で得た変性エチレン−酢酸ビニル共重合体の20質量%メタノール溶液32.4kgを仕込んだ。この溶液に窒素を吹き込みながら60℃に昇温し、水酸化ナトリウムの濃度が10質量%のメタノール溶液を40g/分の速度で1時間添加した。その後、前述の水酸化ナトリウムメタノール溶液を158g/分の速度でさらに1時間添加した。水酸化ナトリウムメタノール溶液の添加終了後、系内温度を60℃に保ちながら2時間撹拌してけん化反応を進行させた。その後酢酸を1.8kg添加してけん化反応を停止した。得られた変性EVOH懸濁液を遠心脱液機(株式会社コクサン製 H−130M)により脱液し、内容物をドラム缶に移した。ここに純水10kgを加えて撹拌し、これを再び遠心脱液機に移して脱液した。この操作を5回繰り返すことにより洗浄し、60℃で24時間乾燥させることで変性EVOH(以下、変性EVOH(1)と称する)の粗乾燥物を得た。この変性EVOH(1)の含水率をハロゲン水分計(METTLER TOLEDO製 HR73)で測定したところ、63質量%であった。
【0053】
(3)ジャケット、撹拌機および還流冷却器を備えた撹拌槽に上記で得た変性EVOH(1)の粗乾燥物4.2kg、水0.3kgおよびメタノール2.9kgを仕込み、85℃に昇温して溶解させた。この溶解液を径2mmの孔を有する金型を通して5℃に冷却した水/メタノール=90/10の混合液中に押し出してストランド状に析出させ、このストランドをストランドカッターでペレット状にカットすることで変性EVOH(1)の含水ペレットを得た。得られた変性EVOH(1)含水ペレットの含水率をハロゲン水分計で測定したところ、56質量%であった。
【0054】
上記で得た変性EVOH(1)の含水ペレット3.5kgをメタノール(浴比20)に投入し、2時間撹拌洗浄した。これを脱液し、さらに0.1質量%の酢酸水溶液(浴比20)に投入して2時間撹拌洗浄した。脱液後、酢酸水溶液を更新し同様の操作を行った。酢酸水溶液洗浄後、脱液したものを水(浴比20)に投入して、撹拌洗浄を2時間行い脱液する操作を3回繰り返して精製を行い、けん化反応時の触媒残渣の除去された、変性EVOH(1)の含水ペレットを得た。該含水ペレット3.2kgを酢酸ナトリウム濃度0.71g/L、酢酸濃度0.53g/Lの水溶液(浴比20)に投入し、定期的に撹拌しながら4時間浸漬させた。これを脱液し、80℃で3時間、120℃で10時間乾燥させることで、ナトリウム元素を含有した変性EVOH(1)組成物を得た。
【0055】
(4)上記(1)において得られた変性エチレン−酢酸ビニル共重合体メタノール溶液を少量サンプリングし、エバポレータによりメタノールを除去した。残留物にアセトンを加えて溶解させ、このアセトン溶液をn−ヘキサンに投入して変性エチレン−酢酸ビニル共重合体を析出させた。この操作を3回繰り返すことで不純物を除去し、真空下、60℃で乾燥させることで変性エチレン−酢酸ビニル共重合体の乾燥品を得た。得られた共重合体についてH−NMR測定により構造単位(I)の含有量を算出したところ、0.25モル%であった。また、上記(3)で得られた変性EVOH(1)組成物について上述に従って分析を行ったところ、エチレン単位含有量は24.3モル%、けん化度は99.96モル%、融点は195℃、ナトリウム元素含有量は194ppmであった。
【0056】
(5)上記(3)で得られたナトリウム元素を含有した変性EVOH(1)組成物について、株式会社東洋精機製作所製20mm押出機D2020(D(mm)=20、L/D=20、圧縮比=2.0、スクリュー:フルフライト)を用いて以下の条件にて単層製膜を行い、変性EVOH組成物の単層フィルムを得た。
シリンダー温度:供給部 175℃
圧縮部 215℃
計量部 215℃
ダイ 205℃
スクリュー回転数:20rpm
吐出量 :0.63kg/時間
引取りロール温度:80℃
引取りロール速度:1.0m/分
フィルム厚み :30μm
【0057】
製膜開始から30時間後のフィルムをサンプリングし、フィルム中の肉眼で確認できるゲル状ブツを下記のように分類し、その個数を数えた。ブツの個数を、1.0mあたりの個数に換算し、ブツ評価として以下の基準により判定した。
判定:基準
A:10個未満
B:10個以上20個未満
C:20個以上100個未満
D:100個以上500個未満
E:500個以上
【0058】
(6)上記で得られた単層フィルムを20℃、65%RHの条件下で3日間調湿後、同条件下で酸素ガス透過量測定(mocon製 OX−TORAN MODEL 2/21)を行った。その結果、酸素透過量(OTR)は0.17cc・20μm/m・day・atmであった。なお、OTR評価は、フィルム厚を20μmに換算した時の値[cc・20μm/m・day・atm]で、以下の基準により判断した。
判定:基準
A:0.4未満
B:0.4以上0.7未満
C:0.7以上1.0未満
D:1.0以上
【0059】
(7)上記で得られた単層フィルムを20℃、65%RHの条件下で3日間調湿したものを試料とし、ASTM D−638に準じて、オートグラフ(株式会社島津製作所製 AGS−H)により、引張速度200%/分の条件でヤング率の測定を行い、柔軟性の指標とした。柔軟性評価は、ヤング率[kg/m]の値によって、以下の基準により判定した。
判定:基準
A:210未満
B:210以上230未満
C:230以上250未満
D:250以上270未満
E:270以上
【0060】
実施例2〜実施例8、比較例2〜比較例4
実施例1(1)において、酢酸ビニルおよびメタノールの仕込み量、化合物(II)の種類および仕込み量、エチレンの圧力、開始剤の濃度が2.5g/Lであるメタノール溶液の投入量ならびに重合時間を表1に示す条件に変更した以外は実施例1(1)と同様にして変性エチレン−酢酸ビニル共重合体のメタノール溶液を得た。得られた変性エチレン−酢酸ビニル共重合体のメタノール溶液を用いて、以後は実施例1(2)および(3)と同様の操作により変性EVOH組成物を得、更に実施例1(4)〜(7)と同様の方法により変性EVOH組成物の分析および評価を実施した。ただし(5)において、シリンダー温度は下記のとおりとした。
シリンダー温度:供給部 175℃
圧縮部 変性EVOH(1)の融点+20℃
計量部 変性EVOH(1)の融点+20℃
ダイ 変性EVOH(1)の融点+10℃
各変性EVOH組成物の分析および評価結果について、表2に示す。
【0061】
比較例1
実施例1(1)において、化合物(II)を仕込まず、更に酢酸ビニルおよびメタノールの仕込み量、エチレンの圧力、開始剤の濃度が2.5g/Lであるメタノール溶液の投入量ならびに重合時間を表1に示す条件に変更した以外は実施例1(1)と同様にしてエチレン−酢酸ビニル共重合体のメタノール溶液を得た。得られたエチレン−酢酸ビニル共重合体のメタノール溶液を用いて、以後は実施例1(2)および(3)と同様の操作によりEVOH組成物を得、更に実施例1(4)〜(7)と同様の方法によりEVOH組成物の分析および評価を実施した。ただし(5)において、シリンダー温度は下記の通りとした。
シリンダー温度:供給部 175℃
圧縮部 変性EVOH(1)の融点+20℃
計量部 変性EVOH(1)の融点+20℃
ダイ 変性EVOH(1)の融点+10℃
各EVOHの分析及び評価結果について、表2に示す。
【0062】
【表1】


【0063】
【表2】


【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の変性エチレン−ビニルアルコール共重合体組成物は、ゲル、ブツが発生しにくく熱安定性に優れ、かつ柔軟性およびガスバリア性が良好である。また、得られる成形物は、柔軟性およびガスバリア性に優れるため、食品包装材料や、食品包装用以外の燃料容器や多層構造パイプなどの工業用途として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示される構造単位(I)をビニルアルコール単位に対して0.02〜1.2モル%有する変性エチレン−ビニルアルコール共重合体。
【化1】

(式中、Rは置換基を有していてもよい炭素数3以下のアルキレンオキシ基、エステル基、アミド基を表し、Rがアルキレンオキシ基またはエステル基の場合は主鎖に対して炭素が結合しており、Rは置換基を有していてもよい炭素数4以下のアルカンジイル基を表し、個々のRは同じであっても異なっていてもよく、Rは水素原子または置換基を有していてもよい炭素数4以下のアルキル基を表し、nは10〜100の範囲の値を表す。)
【請求項2】
エチレン単位の含有量が18〜44モル%である請求項1に記載の変性エチレン−ビニルアルコール共重合体。
【請求項3】
がメチレンオキシ基または置換されたメチレンオキシ基である請求項1または2に記載の変性エチレン−ビニルアルコール共重合体。
【請求項4】
がエチレン基、プロピレン基、エチルエチレン基およびテトラメチレン基からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか1項に記載の変性エチレン−ビニルアルコール共重合体。
【請求項5】
がエチレン基およびプロピレン基より選択される少なくとも1種である請求項4に記載の変性エチレン−ビニルアルコール共重合体。
【請求項6】
が水素原子、メチル基、およびブチル基からなる群より選択される1種である請求項1〜5のいずれか1項に記載の変性エチレン−ビルアルコール共重合体。
【請求項7】
構造単位(I)の含有量が変性エチレン−ビニルアルコール共重合体に対して0.5〜20質量%の範囲である請求項1〜6のいずれか1項に記載の変性エチレン−ビニルアルコール共重合体。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の変性エチレン−ビニルアルコール共重合体を含有する変性エチレン−ビニルアルコール共重合体組成物。
【請求項9】
さらにアルカリ金属元素を500ppm以下含む、請求項8に記載の変性エチレン−ビニルアルコール共重合体組成物。
【請求項10】
請求項8または9に記載の変性エチレン−ビニルアルコール共重合体組成物からなるバリア材。
【請求項11】
請求項8または9に記載の変性エチレン−ビニルアルコール共重合体組成物からなる成形物。
【請求項12】
請求項8または9に記載の変性エチレン−ビニルアルコール共重合体組成物からなるフィルムまたはシート。

【公開番号】特開2011−202052(P2011−202052A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−71326(P2010−71326)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】