説明

変性ノボラック型フェノール樹脂及びその製造方法並びにレジスト材料

【解決手段】p−クレゾールを50質量%以上含有するノボラック型フェノール樹脂に架橋剤を反応させて得られる変性ノボラック型フェノール樹脂。
【効果】本発明の変性ノボラック型フェノール樹脂の合成方法を行うことにより、既存のp−クレゾールを50質量%以上含有するノボラック型フェノール樹脂の分子量を高分子量化し、フォトレジスト用フェノール樹脂として有用な耐熱性のある変性ノボラック型フェノール樹脂を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、p−クレゾールを50質量%以上含有するフェノール類を用いて得られるノボラック型フェノール樹脂と架橋剤とを反応させて得られる変性フェノール樹脂及びその製造方法並びに該樹脂を使用したレジスト材料に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂であるノボラック型フェノール樹脂の重量平均分子量を向上させる手法としては、種々報告されている。例えば、二段階の反応を行うことによって、重量平均分子量を大きくしながら、フェノールダイマーを低減する合成方法としては、特開2005−306987号公報(特許文献1)が挙げられる。他にも、重量平均分子量を高くしながら、未反応フェノール類を削減するトリアジン変性ノボラック型フェノール樹脂を製造する報告が、特開2004−292791号公報(特許文献2)で開示されている。しかしながら、これらの報告では、一段階目のノボラック型フェノール樹脂を合成する際に、リン酸類での重合を行うことを必須とする限定的な手法であり、汎用性が高いとは言い難い。加えて、フェノールダイマーもしくは未反応のフェノール類を低減するために、二段階目の反応時に、pHを制御し、アルデヒド類の添加を必要としている点からも、制限の多い手法となっており、簡便にノボラック型フェノール樹脂の分子量を高くしているとは言い難い。また、フェノール・アミノ縮合樹脂として、特開2000−309617号公報(特許文献3)では、フェノール誘導体、アルデヒド及びトリアジン誘導体との縮合物が報告されているが、この報告は、メチロール基含有量とメチレン結合含有量のモル比を限定し、かつトリアジン誘導体とアルデヒドの共存下で反応を行い重合するという手法のため、上記と同様に限定的な手法であり、ノボラック型フェノール樹脂の分子量を短時間で簡便に高くしているとは言い難い。
【0003】
一方、熱硬化性樹脂であるレゾール型フェノール樹脂においては、特開平3−243613号公報(特許文献4)で、メラミンとの共縮合物の製造方法が報告されている。しかしながら、原料樹脂となるフェノール樹脂の合成方法が、ノボラック型とレゾール型では異なるために、同手法をノボラック型フェノール樹脂へ応用することは、困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−306987号公報
【特許文献2】特開2004−292791号公報
【特許文献3】特開2000−309617号公報
【特許文献4】特開平3−243613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みなされたもので、p−クレゾールを50質量%以上含有するフェノール類を用いて公知の手法で重合されたノボラック型フェノール樹脂について、汎用性の高い手法で短時間で簡便に高分子量化すると共に、耐熱性の高い性能を有し、かつフォトレジスト材料として使用可能な変性ノボラック型フェノール樹脂及びその製造方法、並びに該変性ノボラック型フェノール樹脂を用いたレジスト材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、酸触媒下で、p−クレゾールを50質量%以上含有するフェノール類を用いて得られるノボラック型フェノール樹脂と架橋剤を反応させることによって製造された変性ノボラック型フェノール樹脂が、耐熱性の高い特性を有し、かつフォトレジスト用フェノール樹脂として使用可能であることを見出し、本発明をなすに至った。
【0007】
即ち、本発明者らは、p−クレゾールを50質量%以上含有するフェノール類を用いて得られたノボラック型フェノール樹脂を高分子量化する製造方法として、酸性触媒下で、該ノボラック型フェノール樹脂と架橋剤を反応する手法を見出し、得られる変性ノボラック型フェノール樹脂が特徴的な性能を有していることを見出した。
【0008】
従って、本発明は、下記変性ノボラック型フェノール樹脂及びその製造方法並びにレジスト材料を提供する。
<1> p−クレゾールを50質量%以上含有するフェノール類とアルデヒド類との縮合により得られたノボラック型フェノール樹脂(A)又はp−クレゾールとアルデヒド類との縮合により得られたp−クレゾールノボラック樹脂(b−1)50質量%以上とp−クレゾール以外のフェノール類とアルデヒド類との縮合により得られた他のノボラック型フェノール樹脂(b−2)残量との混合物(B)に、架橋剤を反応させて得られることを特徴とする変性ノボラック型フェノール樹脂。
<2> ノボラック型フェノール樹脂(A)におけるフェノール類の50〜80質量%がp−クレゾールであり、残量が他のフェノール類である<1>記載の変性ノボラック型フェノール樹脂。
<3> 混合物(B)におけるp−クレゾールノボラック樹脂(b−1)の割合が50〜80質量%であり、残量がノボラック型フェノール樹脂(b−2)である<1>記載の変性ノボラック型フェノール樹脂。
<4> ノボラック型フェノール樹脂(A)又はp−クレゾールノボラック樹脂(b−1)と他のノボラック型フェノール樹脂(b−2)の重量平均分子量がそれぞれ1,500以上10,000以下である<1>〜<3>のいずれかに記載の変性ノボラック型フェノール樹脂。
<5> 架橋剤が、ホルマリン又はホルマリン−アルコールにより変性されたアミノ縮合物、1分子中に平均して2個以上のメチロール基又はアルコキシメチロール基を有するフェノール化合物、及び1分子中に平均して2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物から選ばれる1種又は2種以上である<1>〜<4>のいずれかに記載の変性ノボラック型フェノール樹脂。
<6> 架橋剤が、変性メラミン縮合物又は変性尿素縮合物である<5>記載の変性ノボラック型フェノール樹脂。
<7> p−クレゾールを50質量%以上含有するフェノール類とアルデヒド類との縮合により得られたノボラック型フェノール樹脂(A)又はp−クレゾールとアルデヒド類との縮合により得られたp−クレゾールノボラック樹脂(b−1)50質量%以上とp−クレゾール以外のフェノール類とアルデヒド類との縮合により得られた他のノボラック型フェノール樹脂(b−2)残量との混合物(B)に、架橋剤を混合し、酸性触媒を同時又は後添加して反応させることを特徴とする変性ノボラック型フェノール樹脂の製造方法。
<8> ノボラック型フェノール樹脂(A)におけるフェノール類の50〜80質量%がp−クレゾールであり、残量が他のフェノール類である<7>記載の変性ノボラック型フェノール樹脂の製造方法。
<9> 混合物(B)におけるp−クレゾールノボラック樹脂(b−1)の割合が50〜80質量%であり、残量がノボラック型フェノール樹脂(b−2)である<7>記載の変性ノボラック型フェノール樹脂の製造方法。
<10> ノボラック型フェノール樹脂(A)又はp−クレゾールノボラック樹脂(b−1)と他のノボラック型フェノール樹脂(b−2)の重量平均分子量がそれぞれ1,500以上10,000以下である<7>〜<9>のいずれかに記載の変性ノボラック型フェノール樹脂の製造方法。
<11> 架橋剤が、ホルマリン又はホルマリン−アルコールにより変性されたアミノ縮合物、1分子中に平均して2個以上のメチロール基又はアルコキシメチロール基を有するフェノール化合物、及び1分子中に平均して2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物から選ばれる1種又は2種以上である<7>〜<9>のいずれかに記載の変性ノボラック型フェノール樹脂の製造方法。
<12> 架橋剤が、変性メラミン縮合物又は変性尿素縮合物である<11>記載の変性ノボラック型フェノール樹脂の製造方法。
<13> 酸性触媒が、塩酸、硫酸、ホウ酸、蓚酸、酢酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、p−フェノールスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸のいずれか1種以上である<7>〜<12>のいずれかに記載の変性ノボラック型フェノール樹脂の製造方法。
<14> 酸性触媒が、有機スルホン酸化合物である<7>〜<12>のいずれかに記載の変性ノボラック型フェノール樹脂の製造方法。
<15> 酸性触媒を同時又は後添加させて反応させる反応工程中に10℃以上となる工程を含む<7>〜<14>のいずれかに記載のノボラック型フェノール樹脂の製造方法。
<16> <1>〜<6>のいずれかに記載の変性ノボラック型フェノール樹脂をベース樹脂として含有することを特徴とするレジスト材料。
<17> ポジ型材料である<16>記載のレジスト材料。
<18> 1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物を含む<16>又は<17>記載のレジスト材料。
<19> 1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物が、<1>〜<4>のいずれかに記載の変性ノボラック型フェノール樹脂の変性フェノール性水酸基の一部分もしくは全部と1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸とのエステル化合物である<18>記載のレジスト材料。
【発明の効果】
【0009】
本発明の変性ノボラック型フェノール樹脂の合成方法を行うことにより、既存のp−クレゾールを50質量%以上含有するフェノール類を用いて得られたノボラック型フェノール樹脂の分子量の高分子量化が簡易であり、フォトレジスト用フェノール樹脂として有用な耐熱性のある変性ノボラック型フェノール樹脂を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の変性ノボラック型フェノール樹脂(I)を得るために用いられるノボラック型フェノール樹脂(II)は、p−クレゾールを50質量%以上含有するフェノール類とアルデヒド類との縮合により得られた単独重合又は共重合ノボラック型フェノール樹脂(A)であってもよく、あるいはp−クレゾールとアルデヒド類との縮合により得られた単独重合体であるp−クレゾールノボラック樹脂(b−1)50質量%以上とp−クレゾール以外のフェノール類とアルデヒド類との縮合により得られた他の(p−クレゾール非使用の)単独重合又は共重合ノボラック型フェノール樹脂(b−2)残量との混合物(B)であってもよい。この場合、上記ノボラック型フェノール樹脂の製造は公知の方法で行うことができる。つまり、フェノール類とアルデヒド類とを原料とし、公知の酸性触媒を用い、必要に応じて反応補助溶剤を使用して製造することができる。
【0011】
この場合、フェノール類としては、p−クレゾールを必須として、必要に応じてp−クレゾール以外のフェノール類として置換又は非置換のフェノールを用いることができる。具体的には、m−クレゾール、o−クレゾール、フェノール、2−アリルフェノール、2,3−キシレノール、2,5−キシレノール、3,5−キシレノール、3,4−キシレノール等のキシレノール類、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、o−エチルフェノール、2,3,5−トリメチルフェノール、2,3,5−トリエチルフェノール、4−tert−ブチルフェノール、3−tert−ブチルフェノール、2−tert−ブチルフェノール、2−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2−tert−ブチル−5−メチルフェノール、6−tert−ブチル−3−メチルフェノール等のアルキルフェノール類、p−メトキシフェノール、m−メトキシフェノール、p−エトキシフェノール、m−エトキシフェノール、p−プロポキシフェノール、m−プロポキシフェノール等のアルコキシフェノール類、o−イソプロペニルフェノール、p−イソプロペニルフェノール、2−メチル−4−イソプロペニルフェノール、2−エチル−4−イソプロペニルフェノール等のイソプロペニルフェノール類、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ビスフェノールA、フェニルフェノール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ピロガロール等のポリヒドロキシフェノール類、α−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン類等を挙げることができる。
【0012】
ここで、フェノール類としては、p−クレゾールを50質量%以上用いてノボラック型フェノール樹脂を製造するもので、p−クレゾールを100質量%用いてp−クレゾールの単独重合体(p−クレゾールノボラック樹脂)としてもよいが、全フェノール中p−クレゾールを50〜80質量%、特に55〜70質量%用い、残量を他のフェノール類とする共重合体とすることが、樹脂の平均分子量をより高くできる点で好ましい。
【0013】
この場合、上記のような共重合体を用いる代りに、p−クレゾールの単独重合体(p−クレゾールノボラック樹脂)50質量%以上、好ましくは50〜80質量%、より好ましくは55〜70質量%と、p−クレゾール以外の他のフェノール類の単独重合体又は2種以上の他のフェノール類の共重合体からなる他のノボラック型フェノール樹脂との混合物を用いてもよい。
【0014】
他のフェノール類としては上述した通りであるが、特にm−クレゾール、o−クレゾール、フェノール、2−アリルフェノール、2,3−キシレノール、2,5−キシレノール、3,5−キシレノール、3,4−キシレノール等が挙げられる。
【0015】
なお、p−クレゾールの使用量が全フェノール中の50質量%未満であるノボラックフェノール樹脂や、p−クレゾールノボラック樹脂の含有量が50質量%未満である混合物を用いると、現像前後のレジスト膜の厚さの変異が大きくなり易く、その場合、エッチングや電解メッキ等の次工程以降で問題が発生するために、好ましくない。
【0016】
一方、ノボラック型フェノール樹脂を得るために用いるアルデヒド類としては、公知のものが使用し得、具体的には、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、クロロアセトアルデヒド、ジクロロアセトアルデヒド、ブロモアセトアルデヒド、トリオキサン、ベンズアルデヒド、アセトアルデヒド、p−ニトロベンズアルデヒド、p−アセトキシベンズアルデヒド、p−アセチルアミノベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、ジヒドロキシベンズアルデヒド、バニリン、エチルバニリン、グリオキザール、アクロレイン、メタクロレイン等が挙げられ、特にホルムアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロロアセトアルデヒドが好ましい。
【0017】
上記p−クレゾールを50質量%以上含有するフェノール類とアルデヒド類との縮合により得られたノボラック型フェノール樹脂(A)、p−クレゾールとアルデヒド類との縮合により得られたp−クレゾールノボラック樹脂(b−1)、p−クレゾール以外のフェノール類とアルデヒド類との縮合により得られた他のノボラック型フェノール樹脂(b−2)の分子量は、特に制限されるものではないが、効果的に高分子量化するためには、それぞれゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量が、少なくとも1,500以上、好ましくは3,000以上、より好ましくは5,000以上であることが望ましい。その上限は必ずしも制限されないが、30,000以下、特に20,000以下であることが望ましい。
【0018】
本発明においては、上記ノボラック型フェノール樹脂(A)又は混合物(B)からなるノボラック型フェノール樹脂(II)に架橋剤(III)を反応させて変性ノボラック樹脂(I)を得る。
【0019】
この場合、架橋剤としては、ホルマリン又はホルマリン−アルコールにより変性されたアミノ縮合物、1分子中に平均して2個以上のメチロール基又はアルコキシメチロール基を有するフェノール化合物、及び1分子中に平均して2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。
【0020】
上記ホルマリン又はホルマリン−アルコールにより変性されたアミノ縮合物としては、例えばホルマリン又はホルマリン−アルコールにより変性されたメラミン縮合物、又はホルマリン又はホルマリン−アルコールより変性された尿素縮合物が挙げられる。
【0021】
上記ホルマリン又はホルマリン−アルコールにより変性されたメラミン縮合物の調製は、例えば、まず公知の方法に従ってメラミンモノマーをホルマリンでメチロール化して変性、又はこれを更にアルコールでアルコキシ化して変性した、下記一般式(1)で示される変性メラミンが挙げられる。なお、上記アルコールとしては、低級アルコール、例えば炭素数1〜4のアルコールが好ましい。
【0022】
【化1】

(式中、R1は同一でも異なってもよく、メチロール基、炭素数1〜4のアルコキシ基を含むアルコキシメチル基、又は水素原子であるが、少なくとも1つはメチロール基又は上記アルコキシメチル基である。)
【0023】
上記R1としては、例えば、メチロール基、メトキシメチル基、エトキシメチル基等のアルコキシメチル基、及び水素原子等が挙げられる。
【0024】
上記一般式(1)の変性メラミンとして、具体的にはトリメトキシメチルモノメチロールメラミン、ジメトキシメチルモノメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサメトキシメチロールメラミン等が挙げられる。
【0025】
次いで、一般式(1)の変性メラミン又はこの多量体(例えば二量体、三量体等のオリゴマー体)を、常法に従って、ホルムアルデヒドと所望の分子量になるまで付加縮合重合させることにより、ホルマリン又はホルマリン−アルコールにより変性されたメラミン縮合物が得られる。
【0026】
また、上記ホルマリン又はホルマリン−アルコールにより変性された尿素縮合物の調製は、例えば公知の方法に従って、所望の分子量の尿素縮合物をホルマリンでメチロール化して変性し、又はこれを更にアルコールでアルコキシ化して変性する。
【0027】
上記ホルマリン又はホルマリン−アルコールにより変性された尿素縮合物の具体例としては、例えば、メトキシメチル化尿素縮合物、エトキシメチル化尿素縮合物、プロポキシメチル化尿素縮合物等が挙げられる。
【0028】
なお、これら変性メラミン縮合物及び変性尿素縮合物の1種又は2種以上を混合して使用することもできる。
【0029】
また、1分子中に平均して2個以上のメチロール基又はアルコキシメチロール基を有するフェノール化合物としては、例えば(2−ヒドロキシ−5−メチル)−1,3−ベンゼンジメタノール、2,2’,6,6’−テトラメトキシメチルビスフェノールA等が挙げられる。なお、これらフェノール化合物の1種又は2種以上を架橋剤として使用することができる。
【0030】
更に、1分子中に平均して2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、トリフェノールアルカン型エポキシ樹脂及びその重合物、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン環含有エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0031】
これらの架橋剤の中で特に変性メラミン縮合物及び変性尿素縮合物が、反応を制御しやすく、好適に用いることができる。
【0032】
なお、上記架橋剤(III)は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。架橋剤の添加量については、ノボラック型フェノール樹脂(I)100質量部に対し、0.1〜50質量部が好ましく、より好ましくは0.5〜30質量部で好適に用いることができる。添加量が0.1質量部未満であると本発明の効果を得ることが困難な場合があり、50質量部を超える添加量では、樹脂の反応が進みすぎて、ゲル化を起こす可能性が出てくる場合がある。
【0033】
本発明では、ノボラック型フェノール樹脂(II)と架橋剤(III)を酸性触媒下で反応する際に、有機溶剤中で反応を行うことが好ましく、その際に好適に用いられる有機溶剤としては、アルコール類、グリコール類、ケトン類、エーテル類、ラクトン類、芳香族類が挙げられる。具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、1,3−ブタンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール等のジオール類、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類、γ−ブチロラクトン等のラクトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類を挙げることができるが、p−クレゾールを50質量%以上含有するノボラック型フェノール樹脂と架橋剤を均一に溶解できる溶剤であれば、上記に限定されない。
【0034】
上記有機溶剤は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、有機溶剤の添加量については、ノボラック型フェノール樹脂(II)と架橋剤(III)が均一に溶解できる量以上であれば、本発明に制限を与えることなく、好適に用いることができる。具体的に、溶剤はノボラック型フェノール樹脂(II)100質量部に対し0.5〜100倍質量部、好ましくは、0.8〜50倍質量部、最も好ましくは、1.0〜10倍質量部である。
【0035】
本発明で用いられる酸性触媒は、塩酸、硫酸、ホウ酸等の無機酸類、蓚酸、酢酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、p−フェノールスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸等の有機酸類が挙げられ、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができ、好ましくは、有機溶剤への溶解性が高く、強い酸である点で有機スルホン酸化合物を用いることがよい。
【0036】
なお、酸性触媒の添加量については、ノボラック型フェノール樹脂(II)100質量部に対して0.1〜70質量部であれば良く、好ましくは0.5〜50質量部、最も好ましくは1.0〜30質量部である。これらの酸は、最初から、ノボラック型フェノール樹脂(II)及び架橋剤(III)と併せて同時に溶解してもよく、ノボラック型フェノール樹脂(II)と架橋剤(III)を溶解した有機溶剤中に、後から滴下しながら加えてもよい。
その中でも本発明で好ましくは、架橋剤を添加した後に酸性触媒を添加することがよい。
なお、酸性触媒を最初からノボラック型フェノール樹脂(II)及び架橋剤(III)と混合した場合、もしくは、後から添加する場合、どちらについても、反応中の溶液の温度は、10℃以上であることが好ましく、これより低い温度で酸性触媒を添加しても、反応が進みづらくなってしまうおそれがある。また、反応中の温度については、高温にするほど、反応時間を短くすることができるが、極端に高温にしてしまうと、反応を制御しづらくなるために、必須ではないが、100℃以下の温度で反応を行うことが好ましい。より好ましくは10〜80℃である。
【0037】
なお、反応終了後は、残存している未反応の酸性触媒を失活させるために、ピリジン、トリエチルアミン等の塩基性物質を添加し、pHを制御し反応を確実に停止することが好ましい。また、塩基性物質での中和処理が困難である場合、もしくは適さない場合については、反応後の溶液に純水を添加後、撹拌・静置し、分離した水層を系外へ除去する工程を複数回繰り返すことによって、酸性触媒を反応溶液から除去しても構わない。この際、純水にピリジン等の塩基性物質を溶解し、中和と水洗を同時に行っても構わない。また、反応を完全に停止する必要がなければ、これらの触媒除去工程を省略しても構わない。更に必要に応じて、溶剤置換を行ってもよいし、蒸発乾固により溶剤を除去しても構わない。
【0038】
このような工程下を経て、ノボラック型フェノール樹脂(II)の一部のフェノール性水酸基の水素原子が、該当架橋剤(III)に置換された変性樹脂(I)が得られる。
【0039】
この場合、本発明では、GPCによるポリスチレン換算重量平均分子量として、分子量の増加した2,000以上、好ましくは4,000以上、より好ましくは6,000以上30,000以下の高分子量の架橋変性された樹脂(I)が得られる。この場合、分子量の増加は、分子量が増加する範囲であればよいが、好ましくは最初のノボラック型フェノール樹脂(II)の分子量が500以上、より好ましくは1,500以上増加されたものが好ましい。なお、その増加分子量の上限は制限されないが、通常20,000以下である。
【0040】
本発明によって得られた変性ノボラック型フェノール樹脂(I)は、公知の感光剤、光酸発生剤、塩基性化合物、架橋剤、溶解促進剤、溶解阻害剤、染料、界面活性剤等を組み合わせることにより、レジスト材料として好適に用いることができる。
【0041】
まず、本発明によって得られた変性ノボラック型フェノール樹脂(I)をネガ型レジスト材料として用いる場合、変性ノボラック型フェノール樹脂(I)100質量部に対し、光酸発生剤0.05〜50質量部、架橋剤1〜50質量部をレジスト溶剤に溶解し、必要であれば塩基性化合物、界面活性剤、染料、溶解促進剤等、公知の添加剤を添加することにより、ネガ型レジスト溶液を得ることができる。この溶液を、ネガ型レジスト溶液として直接使用しても構わないし、公知の手法を用いて、レジスト溶液を塗膜し、脱溶剤を行い、均一な膜を作製し、これをネガ型レジストフィルムとして用いても構わない。
【0042】
本発明によって得られた変性ノボラック型フェノール樹脂(I)はポジ型レジスト材料に用いることが好ましいが、この場合、以下の形態で使用することができる。
【0043】
(1)本発明の変性ノボラック型フェノール樹脂と1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸により一部又は全部のフェノール性水酸基が置換されたフェノール化合物。必要に応じて、変性していないノボラック型フェノール樹脂、又は1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸により一部又は全部のフェノール性水酸基が置換された変性していないノボラック型フェノール樹脂を含有する組成物。
【0044】
(2)本発明の変性ノボラック型フェノール樹脂の一部又は全部のフェノール性水酸基の水素原子を1,2−ナフトキノンジアジドスルホニル基で置換した変性ノボラック型フェノール樹脂。必要であれば、1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸により一部又は全部のフェノール性水酸基が置換されたフェノール化合物、及び/又は、変性していないノボラック型フェノール樹脂、及び、この樹脂の一部又は全部のフェノール性水酸基を1,2−ナフトキノンジアジドスルホニル基で置換した変性していないノボラック型フェノール樹脂を含有する組成物。
【0045】
上記(1)又は(2)の組成物に対して、必要に応じて、界面活性剤、光酸発生剤、染料、架橋剤、溶解促進剤など公知の添加剤成分を添加し、公知の有機溶剤に溶解することによって、ポジ型レジスト溶液を得ることができる。この溶液を、ポジ型レジスト溶液として直接使用しても構わないし、公知の手法を用いて、レジスト溶液を塗膜し、脱溶剤を行い、均一な膜を作製し、これをポジ型レジストフィルムとして用いても構わない。
【0046】
なお、以上の組成において、本発明では、変性ノボラック型フェノール樹脂に対し、ナフトキノンジアジドスルホン酸化合物を0.1〜40質量%、好ましくは0.5〜30質量%配合して用いることができる。
【0047】
ナフトキノンジアジドスルホン酸化合物を樹脂に導入する場合には、トリエチルアミン等の塩基性下でナフトキノンジアジドスルホン酸ハライド(特にナフトキノンジアジドスルホン酸クロライド)を5〜60℃の温度範囲のもと、ノボラック型フェノール樹脂100質量部に対し0.1〜40質量部のナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドを配合して置換させることにより導入することができる。
【0048】
(3)本発明の変性ノボラック型フェノール樹脂の一部のフェノール性水酸基に公知の酸不安定基を導入することも可能であり、例えば、フェノール性水酸基とハロゲン化アルキルエーテル化合物を用いて、塩基の存在下で反応させることにより、部分的にフェノール性水酸基がアルコキシアルキル基で保護された(該水酸基の水素原子がアルコキシアルキル基で置換された)変性ノボラック型フェノール樹脂を得ることができる。この時、反応溶媒としては、アセトニトリル、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒が好ましく、単独でも2種以上混合して使用しても構わない。塩基としては、トリエチルアミン、ピリジン、ジイソプロピルアミン、炭酸カリウム等が好ましく、その使用量は反応するフェノール性水酸基の水素原子をその全水酸基の1モルに対して10モル%以上であることが好ましい。反応温度としては−50〜100℃、好ましくは0〜60℃であり、反応時間としては0.5〜100時間、好ましくは1〜20時間である。
【0049】
酸不安定基の導入については、これらに限定されるものではなく、フェノール性水酸基に酸不安定基を導入する公知の方法であれば、何ら制限を受けるものではない。
【0050】
このようにして得られた部分的に酸不安定基を導入した変性ノボラック型フェノール樹脂と光酸発生剤を有機溶剤に溶解することによって、ポジ型レジスト組成物溶液を得ることができる。更に、必要に応じて、塩基性化合物、界面活性剤、染料、架橋剤、溶解促進剤、溶解阻害剤等、公知の添加剤を添加することができる。この溶液を、ポジ型レジスト溶液として直接使用しても構わないし、公知の手法を用いて、レジスト溶液を塗膜し、脱溶剤を行い、均一な膜を作製し、これをポジ型レジストフィルムとして用いても構わない。その際、使用される支持フィルムは、単一でも複数の重合体フィルムを積層した多層フィルムでもよい。材質としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂フィルムがあるが、適度の可とう性、機械的強度及び耐熱性を有するポリエチレンテレフタレートが好ましい。また、これらのフィルムについては、コロナ処理や剥離剤が塗布されたような各種処理が行われたものでもよい。
【0051】
また、本発明のポジ型レジスト材料を用いたレジストパターン形成方法は、常法であれば特に限定されるものでない。Si、SiO2、SiN、SiON、TiN、WSi、BPSG、SOG等の基板に加え、Au、Ti、W、Cu、Ni−Fe、Ta、Zn、Co、Pb等の金属基板、有機反射防止膜等の基板上にスピンコート、ロールコート、フローコート、ディップコート、スプレーコート、ドクターブレードコート等の適当な塗布方法により、所望の膜厚になるよう塗布し、ホットプレート上で60〜150℃,1〜10分間、好ましくは80〜120℃,1〜5分間プリベークする。次いで、紫外線、遠紫外線、電子線等から選ばれる光源、好ましくは200〜500nmの露光波長で目的とするパターンを所定のマスクを通じて露光を行う。露光量は1〜1,000mJ/cm2程度、好ましくは10〜800mJ/cm2程度となるように露光することが好ましい。ホットプレート上で60〜150℃,1〜5分間、好ましくは80〜120℃,1〜3分間ポストエクスポージャベーク(PEB)する。
【0052】
更に、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等のアルカリ水溶液の現像液を用い、0.1〜60分間、好ましくは0.5〜10分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法で現像することにより基板上に目的のパターンが形成される。次いで、金属膜をスパッタリング法、蒸着法等により形成した後、レジストパターンと該パターン上の金属膜を一緒に剥離して、基板上に金属配線を形成すればよい。
【実施例】
【0053】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例等に制限されるものではない。
【0054】
[実施例1]
GPCでの重量平均分子量(ポリスチレン換算)が7,000であるクレゾールノボラック型フェノール樹脂(ガラス転移温度:105℃、フェノール類としてp−クレゾールを55質量%、m−クレゾールを45質量%含有するものを使用し、アルデヒド類としてホルムアルデヒドを使用)300g、下記式(2)で表される架橋剤CL−1(ニカラックMW−390、(株)三和ケミカル製)3.0gをシクロペンチルメチルエーテル600gで溶解した溶液に、室温でp−トルエンスルホン酸6.0gをシクロペンチルメチルエーテル60gに溶解した溶液を10分間かけて滴下し、そのまま25℃で2時間撹拌を行った。得られた溶液をGPCにて測定したところ、分子量で8,200である変性樹脂が得られた。
【化2】

CL−1
【0055】
[実施例2〜9]
表1に示す成分を用い、実施例1と同様にしてノボラック型フェノール樹脂と架橋剤との反応を行い、変性樹脂を得た。結果を下表に示す。
【0056】
【表1】

【0057】
Mw7,000のノボラック型フェノール樹脂としては、実施例1と同様のものを用いた。Mw3,000のノボラック型フェノール樹脂としては、ガラス転移温度90℃,p−クレゾール含有量60質量%、m−クレゾール含有量35質量%、2,5−キシレノール含有量5質量%のものを用いた。アルデヒド類は上記と同様である。
【0058】
ニカラックMX−270:メチル化尿素樹脂
【化3】

【0059】
ニカラックMW−390
【化4】

【0060】
DIC(株)製EXA−850CRP
【化5】

【0061】
【表2】


ガラス転移温度測定;示差走査熱量計(メトラー・トレド社製)
【0062】
【表3】

【0063】
なお、比較例5で用いたクレゾールノボラック型フェノール樹脂は、フェノール類としてp−クレゾールが40質量%、m−クレゾールが60質量%であるものを用い、ガラス転移温度が50℃であった。反応終了後のガラス転移温度は55℃であった。
【0064】
次に、下記応用例の実施のため、実施例1で得られた樹脂溶液に、ピリジン2.76gを添加した後、減圧乾燥を行い、固形分として290gを回収した。
【0065】
[応用例1]
得られた固形分50gと式(2)で表されるCL−1(前出)を3g、式(3)で表される光酸発生剤PAG−1を0.3g、界面活性剤X−70−093(信越化学工業(株)製)0.1gを、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100gに溶解し、孔径0.2μmのメンブレンフィルターで濾過を行った。
【0066】
得られた溶液をシリコンウェハー上にスピンコート法を用いて塗布し、ホットプレートで100℃,120秒間のプリベークを行い、6μmの膜厚を得た。
【0067】
次に、ズース製マスクアライナーMA−8でマスクを介し、i線露光した後、ホットプレートで100℃,120秒間のPEBを行い、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)2.38質量%の現像液で200秒間現像し、30秒間純水でリンスした後、スピンドライを行った。得られた基板に対して電界放出形走査電子顕微鏡S−4700(商品名、(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて観察したところ、10μmのラインとスペースの繰り返しパターンが問題なく形成されていることを確認した。また、n=5箇所での現像前後のレジスト膜厚の減りを光干渉式膜厚計で測定したところ、いずれも20nm以下であった。
【0068】
本発明においては、塗布後のレジスト膜厚に対して、現像後の膜厚が90%未満になっている場合を膜減りが発生したと定義している。
【0069】
【化6】

【0070】
次に、実施例1の樹脂溶液を減圧乾燥することによって得られた固形分95gと1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロライド7.1gを1,4−ジオキサン300gに撹拌溶解した。得られた溶液に室温でトリエチルアミン2.8gを滴下しながら添加した。添加終了後、1時間撹拌を続け、その後、反応溶液を大量の0.1N塩酸水溶液中に投入して、析出した樹脂を回収した。回収した樹脂を減圧乾燥して、目的とする感光性樹脂である、部分的に1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニル化された変性ノボラック型フェノール樹脂100gを得た。得られた部分的に1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニル化された変性ノボラック型フェノール樹脂100gと界面活性剤X−70−093、0.1gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート200gに溶解し、孔径0.2μmのメンブレンフィルターで濾過を行った。得られた溶液をシリコンウェハー上にスピンコート法を用いて塗布し、ホットプレートで100℃,120秒間のプリベークを行い、6μmの膜厚を得た。次に、ズース製マスクアライナーMA−8で露光した後、TMAH2.38質量%の現像液で200秒間現像し、30秒間純水でリンスした後、スピンドライを行った。得られた基板に対して電界放出形走査電子顕微鏡S−4700を用いて観察したところ、10μmのラインとスペースの繰り返しパターンが問題なく形成されていることを確認した。更に、この基板に対し、120℃,5分間の加熱を行い、加熱後の10μmのラインとスペースの繰り返しパターンを電子顕微鏡にて観察したところ、加熱前後で、形状及び寸法の変動が見られなかった。
【0071】
また、実施例1の樹脂溶液を減圧乾燥することによって得られた固形分50g、式(4)で示される光酸発生剤PAC−1を15g、界面活性剤X−70−093を0.1g、これらをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100gに溶解し、孔径0.2μmのメンブレンフィルターで濾過を行った。得られた溶液をシリコンウェハー上にスピンコート法を用いて塗布し、ホットプレートで100℃,120秒間のプリベークを行い、6μmの膜厚を得た。次に、ズース製マスクアライナーMA−8で露光した後、TMAH2.38質量%の現像液で200秒間現像し、30秒間純水でリンスした後、スピンドライを行った。得られた基板に対して電界放出形走査電子顕微鏡S−4700を用いて観察したところ、10μmのラインとスペースの繰り返しパターンが問題なく形成されていることを確認した。
【0072】
【化7】

【0073】
更に、実施例1の樹脂溶液を減圧乾燥することによって得られた固形分100gとメタンスルホン酸2gをシクロペンチルメチルエーテル200gとテトラヒドロフラン200gの混合溶液に溶解後、氷浴中で3℃に冷却し、その後エチルビニルエーテル20gを滴下した。滴下終了後、トリエチルアミン6.3gを添加し、10分後に氷浴を取り外し、90分後に25℃になっていることを確認した。この溶液を、0.1質量%酢酸水溶液を用いて、pH<4になるまで、洗浄を繰り返した。その後、減圧乾燥を行い、固形分として、116gを回収した。
【0074】
得られた樹脂100g、光酸発生剤PAG−1を1.5g、トリエタノールアミンを0.1g、界面活性剤X−70−093を0.1g、これらをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート200gに溶解し、孔径0.2μmのメンブレンフィルターで濾過を行った。得られた溶液をシリコンウェハー上にスピンコート法を用いて塗布し、ホットプレートで120℃,120秒間のプリベークを行い、6μmの膜厚を得た。次に、ズース製マスクアライナーMA−8でi線露光した後、ホットプレートで100℃,120秒間のPEBを行い、TMAH2.38質量%の現像液で200秒間現像し、30秒間純水でリンスした後、スピンドライを行った。得られた基板に対して電界放出形走査電子顕微鏡S−4700を用いて観察したところ、10μmのラインとスペースの繰り返しパターンが問題なく形成されていることを確認した。
【0075】
次に、比較例2の樹脂溶液を減圧乾燥することによって得られた固形分95gと1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロライド7.1gを1,4−ジオキサン300gに撹拌溶解した。得られた溶液に室温で、トリエチルアミン2.8gを滴下しながら添加した。添加終了後、1時間撹拌を続け、その後、反応溶液を大量の0.1N塩酸水溶液中に投入して、析出した樹脂を回収した。回収した樹脂を減圧乾燥して、目的とする感光性樹脂である、部分的に1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニル化された変性ノボラック型フェノール樹脂100gを得た。得られた部分的に1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニル化された変性ノボラック型フェノール樹脂と界面活性剤X−70−093、0.1gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート200gに溶解し、孔径0.2μmのメンブレンフィルターで濾過を行った。得られた溶液をシリコンウェハー上にスピンコート法を用いて塗布し、ホットプレートで100℃,120秒間のプリベークを行い、6μmの膜厚を得た。次に、ズース製マスクアライナーMA−8を用いて露光波長としてi線を用いて露光した後、TMAH2.38質量%の現像液で200秒間現像し、30秒間純水でリンスした後、スピンドライを行った。得られた基板に対して電界放出形走査電子顕微鏡S−4700を用いて観察したところ、10μmのラインとスペースの繰り返しパターンが問題なく形成されていることを確認した。更に、この基板に対し、120℃,5分間の加熱を行い、加熱後の10μmのラインとスペースの繰り返しパターンを電子顕微鏡にて観察したところ、加熱後のパターン形状は、矩形性が低下し、基板接地部分のライン幅が太くなっていたことから、樹脂の耐熱性が低いために、パターンが熱フローにより変形したものと判断できた。
【0076】
最後に、比較例5で得られた樹脂溶液を減圧乾燥することによって得られた固形分95gと1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロライド10.1gを1,4−ジオキサン300gに撹拌溶解した。得られた溶液に室温で、トリエチルアミン2.8gを滴下しながら添加した。添加終了後、1時間撹拌を続け、その後、反応溶液を大量の0.1N塩酸水溶液中に投入して、析出した樹脂を回収した。回収した樹脂を減圧乾燥して、目的とする感光性樹脂である、部分的に1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニル化された変性ノボラック型フェノール樹脂100gを得た。得られた部分的に1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニル化された変性ノボラック型フェノール樹脂と界面活性剤X−70−093、0.1gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート200gに溶解し、孔径0.2μmのメンブレンフィルターで濾過を行った。得られた溶液をシリコンウェハー上にスピンコート法を用いて塗布し、ホットプレートで100℃,120秒間のプリベークを行い、6μmの膜厚を得た。次に、ズース製マスクアライナーMA−8を用いて露光波長としてi線を用いて露光した後、TMAH2.38質量%の現像液で200秒間現像し、30秒間純水でリンスした後、スピンドライを行った。現像後の膜厚を測定すると、プリベーク後の膜厚に対し、68%の膜厚となっており、実用上、問題がある結果であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
p−クレゾールを50質量%以上含有するフェノール類とアルデヒド類との縮合により得られたノボラック型フェノール樹脂(A)又はp−クレゾールとアルデヒド類との縮合により得られたp−クレゾールノボラック樹脂(b−1)50質量%以上とp−クレゾール以外のフェノール類とアルデヒド類との縮合により得られた他のノボラック型フェノール樹脂(b−2)残量との混合物(B)に、架橋剤を反応させて得られることを特徴とする変性ノボラック型フェノール樹脂。
【請求項2】
ノボラック型フェノール樹脂(A)におけるフェノール類の50〜80質量%がp−クレゾールであり、残量が他のフェノール類である請求項1記載の変性ノボラック型フェノール樹脂。
【請求項3】
混合物(B)におけるp−クレゾールノボラック樹脂(b−1)の割合が50〜80質量%であり、残量がノボラック型フェノール樹脂(b−2)である請求項1記載の変性ノボラック型フェノール樹脂。
【請求項4】
ノボラック型フェノール樹脂(A)又はp−クレゾールノボラック樹脂(b−1)と他のノボラック型フェノール樹脂(b−2)の重量平均分子量がそれぞれ1,500以上10,000以下である請求項1〜3のいずれか1項記載の変性ノボラック型フェノール樹脂。
【請求項5】
架橋剤が、ホルマリン又はホルマリン−アルコールにより変性されたアミノ縮合物、1分子中に平均して2個以上のメチロール基又はアルコキシメチロール基を有するフェノール化合物、及び1分子中に平均して2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物から選ばれる1種又は2種以上である請求項1〜4のいずれか1項記載の変性ノボラック型フェノール樹脂。
【請求項6】
架橋剤が、変性メラミン縮合物又は変性尿素縮合物である請求項5記載の変性ノボラック型フェノール樹脂。
【請求項7】
p−クレゾールを50質量%以上含有するフェノール類とアルデヒド類との縮合により得られたノボラック型フェノール樹脂(A)又はp−クレゾールとアルデヒド類との縮合により得られたp−クレゾールノボラック樹脂(b−1)50質量%以上とp−クレゾール以外のフェノール類とアルデヒド類との縮合により得られた他のノボラック型フェノール樹脂(b−2)残量との混合物(B)に、架橋剤を混合し、酸性触媒を同時又は後添加して反応させることを特徴とする変性ノボラック型フェノール樹脂の製造方法。
【請求項8】
ノボラック型フェノール樹脂(A)におけるフェノール類の50〜80質量%がp−クレゾールであり、残量が他のフェノール類である請求項7記載の変性ノボラック型フェノール樹脂の製造方法。
【請求項9】
混合物(B)におけるp−クレゾールノボラック樹脂(b−1)の割合が50〜80質量%であり、残量がノボラック型フェノール樹脂(b−2)である請求項7記載の変性ノボラック型フェノール樹脂の製造方法。
【請求項10】
ノボラック型フェノール樹脂(A)又はp−クレゾールノボラック樹脂(b−1)と他のノボラック型フェノール樹脂(b−2)の重量平均分子量がそれぞれ1,500以上10,000以下である請求項7〜9のいずれか1項記載の変性ノボラック型フェノール樹脂の製造方法。
【請求項11】
架橋剤が、ホルマリン又はホルマリン−アルコールにより変性されたアミノ縮合物、1分子中に平均して2個以上のメチロール基又はアルコキシメチロール基を有するフェノール化合物、及び1分子中に平均して2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物から選ばれる1種又は2種以上である請求項7〜9のいずれか1項記載の変性ノボラック型フェノール樹脂の製造方法。
【請求項12】
架橋剤が、変性メラミン縮合物又は変性尿素縮合物である請求項11記載の変性ノボラック型フェノール樹脂の製造方法。
【請求項13】
酸性触媒が、塩酸、硫酸、ホウ酸、蓚酸、酢酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、p−フェノールスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸のいずれか1種以上である請求項7〜12のいずれか1項記載の変性ノボラック型フェノール樹脂の製造方法。
【請求項14】
酸性触媒が、有機スルホン酸化合物である請求項7〜12のいずれか1項記載の変性ノボラック型フェノール樹脂の製造方法。
【請求項15】
酸性触媒を同時又は後添加させて反応させる反応工程中に10℃以上となる工程を含む請求項7〜14のいずれか1項記載のノボラック型フェノール樹脂の製造方法。
【請求項16】
請求項1〜6のいずれか1項記載の変性ノボラック型フェノール樹脂をベース樹脂として含有することを特徴とするレジスト材料。
【請求項17】
ポジ型材料である請求項16記載のレジスト材料。
【請求項18】
1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物を含む請求項16又は17記載のレジスト材料。
【請求項19】
1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物が、請求項1〜4のいずれか1項記載の変性ノボラック型フェノール樹脂の変性フェノール性水酸基の一部分もしくは全部と1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸とのエステル化合物である請求項18記載のレジスト材料。

【公開番号】特開2013−108056(P2013−108056A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−176987(P2012−176987)
【出願日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】