説明

変性共役ジエン系重合体の製造方法、変性共役ジエン系重合体、及び変性共役ジエン系重合体組成物、及びタイヤ

【課題】低ヒステリシスロス性能とウェットスキッド抵抗性能に優れ、これらの性能バランスに優れ、耐摩耗性と破壊強度とのバランスに優れた変性共役ジエン系重合体組成物、これを構成する変性共役ジエン系重合体が提供する。
【解決手段】少なくとも1個の重合器に、炭化水素溶媒と、アルカリ金属系開始剤及び/又はアルカリ土類金属系開始剤と、共役ジエン化合物、又は共役ジエン系化合物と芳香族ビニル化合物とを添加して、活性末端を有する共役ジエン系重合体を得る工程と、その後、シリル基に結合したアルコキシ基の総数が4個以上であり、1つ以上の窒素原子を有する変性剤(A)、及びシリル基に結合したアルコキシ基の総数が2又は3個であり、1つ以上の窒素原子を有する変性剤(B)を連続的に添加し、共役ジエン系重合体の活性末端と変性剤(A)及び/又は変性剤(B)を反応させる変性反応工程を含む変性共役ジエン系重合体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性共役ジエン系重合体の製造方法、変性共役ジエン系重合体、変性共役ジエン系重合体組成物、及びタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境に対する社会的配慮から、自動車に対しても省燃費化の要求が高まっている。
具体的には、自動車走行時に路面との抵抗の小さいタイヤ用の材料が求められ、特に路面と直接接するタイヤトレッドにおいて、転がり抵抗の小さい材料が求められている。また、自動車の省燃費化と併せて、安全性への改善要求も強まっている。
上述したような、省燃費化及び安全性改善の要求は、自動車のタイヤ性能に寄与する部分が大きく、タイヤ用ゴムの開発、及びタイヤ用ゴム組成物の改良検討がなされている。
例えば、自動車のタイヤ性能として、省燃費性向上にはヒステリシスロスの小さい材料、操縦安定性向上には、ウェットスキッド抵抗の高い材料、耐久性向上には耐摩耗性と破壊強度に優れた材料が求められている。
しかし、低ヒステリシスロス性能とウェットスキッド抵抗との関係、耐摩耗性とウェットスキッド抵抗との関係は、それぞれ背反関係にあるため、これらの要求性能をバランスよく維持しながら、各々の性能を向上させたタイヤ用ゴム組成物の開発が重要となる。
タイヤ用ゴム組成物の改良方法としては、BR(ブタジエンゴム)やSBR(スチレンブタジエンゴム)のような原料ゴムの改良、シリカやカーボンブラック等の補強用充填剤、加硫剤、可塑剤等の構造や組成改良が行われている。
【0003】
前記補強用充填剤としては、従来、カーボンブラックが主流であったが、近年、カーボンブラックに代わって、シリカを用いる技術が注目されている。
例えば、特定構造のBRやSBRにシリカを補強用充填剤として配合して、タイヤ用ゴム組成物の混練り条件を調整し、低ヒステリシスロス性能とウェットスキッド抵抗性能のバランスを改良する検討もなされている。
しかし、シリカ表面は親水性であるため、共役ジエン系ゴムとの親和性が低く、カーボンブラックに比べて分散性が悪くなるため、耐摩耗性や破壊強度に劣るという欠点を有している。
この欠点を改良するために、共役ジエン系重合体の活性末端、又は共役ジエン系共重合体の活性末端を、アルコキシシリル基を有する化合物で変性することにより、ゴム中におけるシリカの分散性を改良し、さらにゴム分子末端のアルコキシ基とシリカ表面の水酸基を結合させることで、ヒステリシスロスを低減化する技術が検討されている。
例えば、特許文献1には、共役ジエン系化合物を重合して得られる共役ジエン系重合体、又は共役ジエン系化合物と芳香族ビニル化合物を共重合して得られる共役ジエン系重合体に分子中に3級アミノ基を2個以上及びアルコキシシリル基を1個以上有する低分子化合物を反応させて変性共役ジエン系重合体を得たり、前記重合体の活性末端と前記低分子化合物とを反応させる前、後、反応と同時のいずれかのタイミングにおいて、該重合体の活性末端を多官能性変性剤でカップリングしたりすることによって、シリカ分散性の向上を図る技術の提案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2008−013090号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1には、該重合体の活性末端を多官能性変性剤でカップリングすることで、該変性共役ジエン系重合体の成分中に、高分岐重合体を含ませ、これにより成型された該変性共役ジエン系重合体を保管、又は輸送するときの流動変形(コールドフロー)を起こし難くする効果が得られると記載されているが、背反する低ヒステリシスロス性能とウェットスキッド抵抗性能のバランスを改良するのに十分ではないという問題を有している。
そこで本発明は、耐コールドフロー性に優れ、低ヒステリシスロス性能とウェットスキッド抵抗性能に優れ、これらのバランスに優れ、さらには耐摩耗性と破壊強度とのバランスにも優れた、変性共役ジエン系重合体組成物、これを構成する変性共役ジエン系重合体、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、炭化水素溶媒中で、アルカリ金属系開始剤及び/又はアルカリ土類金属系開始剤を用い、共役ジエン化合物を重合、あるいは共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを共重合させて、重合活性末端を有する共役ジエン系重合体を得、当該共役ジエン系重合体に、シリル基に結合したアルコキシ基の総数が4個以上であり、1つ以上の窒素原子を有する変性剤(A)、シリル基に結合したアルコキシ基の総数が2又は3個であり、1つ以上の窒素原子を有する変性剤(B)を、順不同で連続的に添加することにより得られた変性共役ジエン系重合体は、成型された該変性共役ジエン系重合体を保管、又は輸送するときの耐コールドフロー性に優れ、シリカ系無機充填剤を配合して、更に加硫物とした変性共役ジエン系重合体組成物は、低ヒステリシスロス性能とウェットスキッド抵抗性能とのバランスに優れ、かつ高い耐摩耗性、破壊強度を有していることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0007】
〔1〕
少なくとも1個の重合器に、
炭化水素溶媒と、
アルカリ金属系開始剤及び/又はアルカリ土類金属系開始剤と、
共役ジエン化合物、又は共役ジエン系化合物と芳香族ビニル化合物とを、連続的に添加して、活性末端を有する共役ジエン系重合体を連続的に得る工程と、
その後、シリル基に結合したアルコキシ基の総数が4個以上であり、1つ以上の窒素原子を有する変性剤(A)、及びシリル基に結合したアルコキシ基の総数が2又は3個であり、1つ以上の窒素原子を有する変性剤(B)を連続的に添加し、前記共役ジエン系重合体の活性末端と前記変性剤(A)及び/又は変性剤(B)を反応させる変性反応工程を、含む変性共役ジエン系重合体の製造方法。
〔2〕
前記変性剤(A)が、下記一般式(1)、又は一般式(2)で表される化合物である、前記〔1〕に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【0008】
【化1】

【0009】
前記一般式(1)中、R1〜R4は、各々独立して、炭素数1〜20のアルキル基又はアリール基を表し、R8及びR9は、炭素数1〜20のアルキレン基を表し、mは1又は2の整数であり、nは2又は3の整数である。なお、一般式(1)で表される化合物において、炭素数1〜20のアルコキシ基の数の合計は4以上である。
【0010】
【化2】

【0011】
前記一般式(2)中、R1〜R4は、各々独立して、炭素数1〜20のアルキル基又はアリール基を表し、R8及びR9は、炭素数1〜20のアルキレン基を表し、R8、R9及びA1が、複数存在するときは、それらは、各々同一であっても異なっていてもよい。t及びvは、それぞれ0〜3の整数である。
pは0〜20の整数であり、pが2以上の場合、(R9−A1−R8)で表される複数の繰り返し単位は、相異なるものであってもよい。なお、一般式(2)で表される化合物において、炭素数1〜20のアルコキシ基の数の合計は4以上である。A1は下記一般式(a)、(b)、(c)のいずれかで表される基である。
【0012】
【化3】

【0013】
前記一般式(a)において、R10及びR11は炭素数1〜20のアルキレン基であり、かつ隣接する2つのNとともに5員環以上の環構造を形成する。
【0014】
【化4】

【0015】
前記一般式(b)において、R7は炭素数1〜20のアルキル基又はアリール基、活性水素を持たないヘテロ原子で置換されている炭素数1〜20の炭化水素基、及び3有機置換シリル基からなる群より選ばれるいずれかである。
【0016】
【化5】

【0017】
前記一般式(c)において、R10は炭素数1〜20のアルキレン基であり、R5及びR6は炭素数1〜20のアルキル基又はアリール基である。rは0〜3の整数である。
【0018】
〔3〕
前記変性剤(B)が、下記一般式(3)、一般式(4)、一般式(5)、一般式(6)、一般式(7)、及び一般式(8)からなる群より選ばれるいずれか一の化合物である前記〔1〕又は〔2〕に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【0019】
【化6】

【0020】
前記一般式(3)中、R1、R2は、各々独立して、炭素数1〜20のアルキル基又はアリール基を表し、R8、R9は炭素数1〜20のアルキレン基を表し、R12、R13、R14はSi、O、又はNを含み、活性水素を持たない有機基で置換されていてもよい炭素数1〜20の炭化水素基である。iは1〜3の整数である。
【0021】
【化7】

【0022】
前記一般式(4)中、R1、R2は、各々独立して炭素数1〜20のアルキル基又はアリール基であり、R9は炭素数1〜20のアルキレン基であり、R17、R18は炭素数1〜6の炭化水素基であって、隣接する2つのNとともに5員環以上の環構造をなし、R15は炭素数1〜20の炭化水素基、活性水素を持たないヘテロ原子で置換されている炭素数1〜20の炭化水素基、又は3有機置換シリル基であり、nは2又は3の整数である。
【0023】
【化8】

【0024】
前記一般式(5)中、R1、R2は、各々独立して炭素数1〜20のアルキル基又はアリール基であり、R9は炭素数1〜20のアルキレン基であり、R17、R18は炭素数1〜6の炭化水素基であって、隣接する2つのNとともに5員環以上の環構造をなし、R15、R16は炭素数1〜20の炭化水素基、活性水素を持たないヘテロ原子で置換されている炭素数1〜20の炭化水素基、又は3有機置換シリル基であり、nは2又は3の整数である。
【0025】
【化9】

【0026】
前記一般式(6)において、A2は三級アミン、ピリジン、シアン、イミンの中から選ばれる少なくとも一種の官能基を有する一価の基であり、R1及びR2は、各々独立して、炭素数1〜20のアルキル基又はアリール基であり、R8は炭素数1〜20のアルキレン基である。nは2又は3の整数である。
【0027】
【化10】

【0028】
前記一般式(7)において、R1、R2、R6は、各々独立して、炭素数1〜20のアルキル基又はアリール基を表し、R8は炭素数1〜20のアルキレン基を表す。R3、R4及びR5は、各々独立に炭素数1〜20のアルキル基又はアリール基であるか、又はそれらの2つは互いに結合してそれらが結合しているケイ素原子と一緒になって環を形成してもよい。
wは1〜2の整数であり、fは1〜10の整数である。
【0029】
【化11】

【0030】
前記一般式(8)において、R1、R2は、各々独立して、炭素数1〜20のアルキル基又はアリール基を表し、R8は炭素数1〜20のアルキレン基を表す。R3、R4及びR5は、各々独立に炭素数1〜20のアルキル基又はアリール基であるか、又はそれらの2つは互いに結合してそれらが結合しているケイ素原子と一緒になって環を形成してもよい。
【0031】
〔4〕
前記変性剤(A)又は前記変性剤(B)を連続的に添加した後、1回目に添加した変性剤とは異なる変性剤(A)又は変性剤(B)を連続的に添加する工程を有し、
未変性の共役ジエン系重合体の活性末端1モルに対して、1回目に添加する変性剤(A)、又は変性剤(B)の添加モル数(Z)が、下記式(9)の範囲である、前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
(Z)=(Y)/(X) ・・・(9)
(X)は、1回目に添加される変性剤(A)、又は変性剤(B)1分子に含まれるシリル基に結合したアルコキシ基の総数。
(Y)は、0.1〜0.6
(Y)は、未変性の共役ジエン系重合体の活性末端1モルに対して、1回目に添加される変性剤(A)、又は変性剤(B)の添加当量数。
【0032】
〔5〕
前記〔1〕乃至〔4〕のいずれか一に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法によって得られる変性共役ジエン系重合体。
【0033】
〔6〕
前記〔5〕に記載の変性共役ジエン系重合体を含むゴム成分100質量部に対して、シリカ系無機充填剤0.5〜300質量部を、さらに含有する変性共役ジエン系重合体組成物。
【0034】
〔7〕
前記変性共役ジエン系重合体を20質量部以上含有するゴム成分100質量部に対し、カーボンブラックを0.5〜100質量部、さらに含有する前記〔6〕に記載の変性共役ジエン系重合体組成物。
〔8〕
前記〔6〕又は〔7〕に記載の変性共役ジエン系重合体組成物を含むタイヤ。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、低ヒステリシスロス性能とウェットスキッド抵抗性能に優れ、これらの性能バランスに優れ、耐摩耗性と破壊強度とのバランスに優れた変性共役ジエン系重合体組成物、これを構成する、耐コールドフロー性に優れた変性共役ジエン系重合体が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について詳細に説明する。
なお、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0037】
〔変性共役ジエン系重合体の製造方法〕
本実施形態の変性共役ジエン系重合体の製造方法は、
少なくとも1個の重合器に、
炭化水素溶媒と、
アルカリ金属系開始剤及び/又はアルカリ土類金属系開始剤と、
共役ジエン化合物、又は共役ジエン系化合物と芳香族ビニル化合物とを、連続的に添加して、活性末端を有する共役ジエン系重合体を連続的に得る工程と、
その後、シリル基に結合したアルコキシ基の総数が4個以上であり、1つ以上の窒素原子を有する変性剤(A)、及びシリル基に結合したアルコキシ基の総数が2又は3個であり、1つ以上の窒素原子を有する変性剤(B)を連続的に添加し、前記共役ジエン系重合体の活性末端と前記変性剤(A)及び/又は変性剤(B)とを反応させる変性反応工程とを、含む。
【0038】
2種の変性剤(A)及び変性剤(B)を併用し、連続的に添加することは、耐コールドフロー性に優れ、低ヒステリシスロス性能とウェットスキッド抵抗性能に優れ、耐摩耗性と破壊強度とのバランスに優れた変性共役ジエン系重合体組成物、これを構成する変性共役ジエン系重合体を得るための製造方法として、好ましい。
変性剤(A)と変性剤(B)を添加する順序は特に限定されず、変性剤(A)と変性剤(B)を単独で添加してもよく、同時に添加してもよいが、最初に変性剤(A)を添加し、その後、変性剤(B)を添加することが、耐コールドフロー性に優れ、低ヒステリシスロス性能とウェットスキッド抵抗性能に優れ、耐摩耗性と破壊強度とのバランスに優れた変性共役ジエン系重合体組成物、これを構成する変性共役ジエン系重合体を得る観点から好ましい。添加する回数は、変性剤(A)と変性剤(B)とが、それぞれ少なくとも1回以上添加されれば、特に限定されない。
【0039】
(共役ジエン系重合体の製造工程)
先ず、所定の1個以上の反応器を用いて、炭化水素溶媒と、アルカリ金属系開始剤及び/又はアルカリ土類金属系開始剤と、共役ジエン化合物、又は共役ジエン系化合物と芳香族ビニル化合物とを連続的に添加して、活性末端を有する共役ジエン系重合体を得る。
共役ジエン系重合体は、炭化水素溶媒中で、アルカリ金属系開始剤及び/又はアルカリ土類金属系開始剤を用い、アニオン重合反応により成長して得られる。特に、リビングアニオン重合による成長反応によって活性末端を有する(共)重合体を得ることが好ましい。これにより、後述する変性工程により、高変性率の変性共役ジエン系重合体を得ることができる。
重合様式としては、特に限定されないが、回分式、連続式等の重合様式で行うことができる。連続式においては、1個又は2個以上の連結された反応器を用いることができる。反応器は、攪拌機付きの槽型、管型等の、いずれでもよい。
【0040】
以下、重合工程に用いる材料、重合工程の条件について説明する。
【0041】
前記共役ジエン化合物としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘプタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。これらの中で、1,3−ブタジエンが好ましい。
【0042】
前記芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルエチルベンゼン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、ジフェニルエチレン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。これらの中で、スチレンが好ましい。
【0043】
前記炭化水素溶媒としては、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0044】
前記アルカリ金属系開始剤及び/又はアルカリ土類金属系開始剤としては、例えば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert −ブチルリチウム、n−プロピルリチウム、iso−プロピルリチウム、ベンジルリチウム等のモノ有機リチウム化合物等のアニオン重合開始剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0045】
また、ポリビニル芳香族化合物、共役ジエン系炭化水素及び有機リチウムの3者を反応させることにより得られる多官能アニオン重合開始剤も使用できる。
前記多官能アニオン重合開始剤の調製に用いる前記ポリビニル芳香族化合物としては、例えば、o,m及びp−ジビニルベンゼン、o,m及びp−ジイソプロペニルベンゼン、1,2,4−トリビニルベンゼン、1,2−ビニル−3,4−ジメチルベンゼン、1,3−ジビニルナフタレン、1,3,5−トリビニルナフタレン、2,4−ジビニルビフェニル、3,5,4'−トリビニルビフェニル、1,2−ジビニル−3,4−ジメチルベンゼン、1,5,6−トリビニル−3,7−ジエチルナフタレン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
特に、ジビニルベンセン、ジイソプロペニルベンゼンが好ましく、これらのo−,m−,p−の異性体の混合物であってもよい。工業的利用を行う場合には、これら異性体混合物を用いる方が経済的に有利である。
多官能アニオン重合開始剤の調整に用いる前記共役ジエン系炭化水素としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘプタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられ、好ましい単量体としては、1,3−ブタジエンが挙げられる。
多官能アニオン重合開始剤の調整に用いる前記有機リチウムとしては、例えば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert −ブチルリチウム、n−プロピルリチウム、iso−プロピルリチウム、ベンジルリチウム等のモノ有機リチウム化合物挙げられ、好ましいモノ有機リチウム化合物としては、n−ブチルリチウムが挙げられる。
【0046】
前記多官能アニオン重合開始剤は、n−ブチルリチウム1モルに対してジビニルベンゼンを好ましくは0.01〜1.0モル、より好ましくは0.01〜0.5モルの範囲、1,3ブタジエンを3〜200モルの範囲で反応させたものが好ましい。
【0047】
共役ジエン系重合体の重合反応においては、芳香族ビニル化合物を共役ジエン化合物とランダムに共重合させる目的で、共役ジエン部のミクロ構造を制御するためのビニル化剤として、あるいは重合速度の改善等の目的で、少量の極性化合物を添加してもよい。
極性化合物としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジメトキシベンゼン、2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン等のエーテル類;テトラメチルエチレンジアミン、ジピペリジノエタン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、キヌクリジン等の第三級アミン化合物;カリウム−t−アミラート、カリウム−t−ブチラート、ナトリウム−t−ブチラート、ナトリウムアミラート等のアルカリ金属アルコキシド化合物;トリフェニルホスフィン等のホスフィン化合物等が挙げられる。これらの極性化合物は、それぞれ単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
極性化合物の添加量は、特に限定されず、目的と効果の程度に応じて選択される。通常、重合開始剤1モルに対して0.01〜100モルが好ましい。
このような極性化合物(ビニル化剤)は重合体共役ジエン部分のミクロ構造の調節剤として、所望のビニル結合量に応じて、適量用いることができる。
多くの極性化合物は、同時に共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との共重合において有効なランダム化効果を有し、芳香族ビニル化合物の分布の調整やスチレンブロック量の調整剤として用いることができる。共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とをランダム化する方法としては、特開昭59−140211号公報に記載されているような、共重合の途中に1,3−ブタジエンの一部を断続的に添加する方法を用いてもよい。
【0048】
共役ジエン系重合体の重合温度は、リビングアニオン重合が進行する温度であれば、特に限定されないが、生産性の観点から、0℃以上であることが好ましく、重合終了後の活性末端に対する変性剤の反応量を充分に確保する観点から、120℃以下であることが好ましい。
20℃〜120℃の範囲がより好ましく、さらに好ましくは30℃〜100℃の範囲である。
【0049】
(共役ジエン系重合体)
上述した重合工程により得られる共役ジエン系重合体は、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよい。
前記ランダム共重合体としては、ブタジエン−イソプレンランダム共重合体、ブタジエン−スチレンランダム共重合体、イソプレン−スチレンランダム共重合体、ブタジエン−イソプレン−スチレンランダム共重合体等が挙げられる。
共重合体鎖中の各単量体の組成分布としては、統計的ランダムな組成に近い完全ランダム共重合体、もしくはテーパー状に組成に分布があるテーパーランダム共重合体等がある。
共役ジエンの結合様式、すなわち1,4−結合と1,2−結合等の組成は均一であっても分布があってもよい。
【0050】
前記ブロック共重合体としては、ブロックが2個からなる2型ブロック共重合体、3個からなる3型ブロック共重合体、4個からなる4型ブロック共重合体等がある。
例えば、スチレン等の芳香族ビニル化合物からなるブロックをSで、ブタジエンやイソプレン等の共役ジエン化合物からなるブロック及び/又は芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体からなるブロックをBで表すと、S−B2型ブロック共重合体、S−B−S3型ブロック共重合体、S−B−S−B4型ブロック共重合体等で表される。
上式において、各ブロックの境界は必ずしも明瞭に区別される必要はない。
ブロックBが芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体の場合、ブロックB中の芳香族ビニル化合物は均一に分布していても、又はテーパー状に分布していてもよい。またブロックBには、芳香族ビニル化合物が均一に分布している部分及び/又はテーパー状に分布している部分がそれぞれ複数個共存していてもよい。またブロックBには、芳香族ビニル化合物含有量が異なるセグメントが複数個共存していてもよい。ブロック共重合体中にブロックS、ブロックBがそれぞれ複数存在する場合、それらの分子量や組成等の構造は同一でも、異なっていてもよい。
【0051】
前記ブロック共重合体として、より一般的には、例えば次の一般式で表されるような構造が挙げられる。
(S−B)n、 S−(B−S)n、B−(S−B)n、(S−B)m−X、
[(S−B)nm−X、[(B−S)n−B]m−X、[(S−B)n−S]m−X
(nは1以上の整数、好ましくは1〜5の整数である。mは2以上の整数、好ましくは2〜11の整数である。Xはカップリング剤の残基又は多官能開始剤の残基を示す。また、Xに結合しているポリマー鎖の構造は同一でも異なっていてもよい。)
本実施形態の変性共役ジエン系重合体の変性前の状態である共役ジエン系重合体は、上記一般式で表される構造を有するものの任意の混合物でもよい。
【0052】
共役ジエン系重合体中の結合芳香族ビニル量は、特に限定されないが、5〜70質量%であることが好ましく、10〜50質量%であることがより好ましい。
結合芳香族ビニル量が上記範囲であると、本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物を加硫物としたとき、低ヒステリシスロス性とウェットスキッド抵抗性のバランスがさらに優れ、耐摩耗性や破壊強度も優れたものとなる。
ここで、結合芳香族ビニル量は、フェニル基の紫外吸光によって測定でき、ここから結合共役ジエン量も求めることができる。具体的には、後述する実施例に従った方法により測定することができる。
【0053】
また、共役ジエン系重合体が共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との共重合体である場合、芳香族ビニル単位が30以上連鎖しているブロックの数が少ないか又は無いものであることが好ましい。
具体的には、共役ジエン系重合体がブタジエン−スチレン共重合体の場合、Kolthoffの方法(I.M.KOLTHOFF,et al.,J.Polym.Sci.1,429(1946)に記載の方法)により共役ジエン系重合体を分解し、メタノールに不溶なポリスチレン量を分析する公知の方法において、芳香族ビニル単位が30以上連鎖しているブロックが、重合体量に対して好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。
【0054】
(変性工程)
上述のようにして共役ジエン系重合体を得た後、活性末端に対して、シリル基に結合したアルコキシ基の総数が4個以上であり、1つ以上の窒素原子を有する変性剤(A)、及びシリル基に結合したアルコキシ基の総数が2又は3個であり、1つ以上の窒素原子を有する変性剤(B)を、連続的に添加し、前記共役ジエン系重合体の活性末端と前記変性剤(A)及び/又は変性剤(B)とを反応させ、変性共役ジエン系重合体を得る。
【0055】
<変性剤(A)>
前記シリル基に結合したアルコキシ基の総数が4個以上であり、1つ以上の窒素原子を有する変性剤(A)としては、例えば、下記一般式(1)又は一般式(2)が挙げられる。
【0056】
【化12】

【0057】
一般式(1)中、R1〜R4は、各々独立して、炭素数1〜20のアルキル基又はアリール基を表し、R8及びR9は、炭素数1〜20のアルキレン基を表し、mは1又は2の整数であり、nは2又は3の整数である。なお、一般式(1)で表される化合物において、炭素数1〜20のアルコキシ基の数の合計は4以上である。
【0058】
前記一般式(1)で表される変性剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1−(3−トリメトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジエトキシ−1−(3−トリエトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジメトキシ−1−(4−トリメトキシシリルブチル)−1−アザ−2−シラシクロヘキサン、2,2−ジメトキシ−1−(5−トリメトキシシリルペンチル)−1−アザ−2−シラシクロヘプタン、2,2−ジメトキシ−1−(3−ジメトキシメチルシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジエトキシ−1−(3−ジエトキシエチルシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2−メトキシ−2−メチル−1−(3−トリメトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2−エトキシ−2−エチル−1−(3−トリエトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2−メトキシ−2−メチル−1−(3−ジメトキシメチルシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2−エトキシ−2−エチル−1−(3−ジエトキシエチルシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン等が挙げられる。
これらの中でも、変性剤(A)の官能基と、後述するシリカ等の無機充填剤との反応性及び相互作用の観点や、後述する本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物の加工性の観点から、mが2、nが3であるものが好ましい。具体的には、2,2−ジメトキシ−1−(3−トリメトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジエトキシ−1−(3−トリエトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタンが好ましい。
【0059】
【化13】

【0060】
前記一般式(2)中、R1〜R4は、各々独立して、炭素数1〜20のアルキル基又はアリール基を表し、R8及びR9は、炭素数1〜20のアルキレン基を表す。
8、R9及びA1が、複数存在するときは、それらは、各々同一であっても異なっていてもよい。t及びvは、それぞれ0〜3の整数である。
pは0〜20の整数であり、pが2以上の場合、(R9−A1−R8)で表される複数の繰り返し単位は、互いに異なるものであってもよい。なお、一般式(2)で表される化合物において、炭素数1〜20のアルコキシ基の数の合計は4以上である。A1は下記一般式(a)、(b)、(c)のいずれかで表される基である。
【0061】
【化14】

【0062】
一般式(a)において、R10及びR11は炭素数1〜20のアルキレン基であり、かつ隣接する2つのNとともに5員環以上の環構造を形成する。
【0063】
【化15】

【0064】
前記一般式(b)において、R7は、炭素数1〜20のアルキル基又はアリール基、活性水素を持たないヘテロ原子で置換されている炭素数1〜20の炭化水素基、及び3有機置換シリル基からなる群より選ばれるいずれかである。
【0065】
【化16】

【0066】
前記一般式(c)において、R10は炭素数1〜20のアルキレン基であり、R5及びR6は炭素数1〜20のアルキル基又はアリール基である。rは0〜3の整数である。
【0067】
前記一般式(2)で表される変性剤(A)としては、以下の化合物が挙げられる。
上記一般式(2)中のA1が、一般式(a)に示す基である場合の化合物としては、例えば、1,4−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]ピペラジン、1,4−ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]ピペラジン、1,4−ビス[3−(ジメトキシメチルシリル)プロピル]ピペラジン、1,3−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]イミダゾリジン、1,3−ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]イミダゾリジン、1,3−ビス[3−(ジエメトキシエチルシリル)プロピル]イミダゾリジン、1,3−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]ヘキサヒドロピリミジン、1,3−ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]ヘキサヒドロピリミジン、1,3−ビス[3−(トリブトキシシリル)プロピル]−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン等が挙げられる。
また、前記一般式(2)中のA1が、一般式(b)に示す基である場合の化合物としては、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)メチルアミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)エチルアミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)プロピルアミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ブチルアミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)フェニルアミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ベンジルアミン、ビス(トリエトキシシリルメチル)メチルアミン、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)メチルアミン、ビス(トリエトキシシリルメチル)プロピルアミン、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)プロピルアミン及びこれらのトリエトキシシリル化合物に対応するトリメトキシシリル化合物、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)N−トリメチルシリルアミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)N−トリメチルシリルアミン、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)N−トリメチルシリルアミン化合物等が挙げられる。
さらに、前記一般式(2)中のA1が、一般式(c)に示す基である場合の化合物としては、例えば、トリス(トリエトキシシリルメチル)アミン、トリス(2−トリエトキシシリルエチル)アミン、トリス(3−トリエトキシシリルプロピル)アミン及びこれらのトリエトキシシリル化合物に対応するトリメトキシシリル化合物等が挙げられる。
これらの中でも、変性剤(A)の官能基と後述するシリカ等の無機充填剤との反応性及び相互作用性の観点や、後述する本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物の加工性の観点から、m及びnが3であるものが好ましい。具体的には、1,4−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]ピペラジン、1,4−ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]ピペラジン、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)N−トリメチルシリルアミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)N−トリメチルシリルアミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)メチルアミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)エチルアミン、トリス(トリエトキシシリルメチル)アミンが好ましい。
【0068】
<変性剤(B)>
シリル基に結合したアルコキシ基の総数が2又は3個であり、1つ以上の窒素原子を有する変性剤(B)としては、例えば、下記一般式(3)、一般式(4)、一般式(5)、一般式(6)、一般式(7)、一般式(8)で表される化合物が挙げられる。
なお、後述する〔実施例〕においては、変性剤(B)として、下記一般式(4)の化合物を使用し、具体的には、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−4−メチルピペラジンを使用した。
【0069】
【化17】

【0070】
前記一般式(3)中、R1、R2は、各々独立して、炭素数1〜20のアルキル基又はアリール基を表し、R8、R9は炭素数1〜20のアルキレン基を表し、R12、R13、R14はSi、O、又はNを含み、活性水素を持たない有機基で置換されていてもよい炭素数1〜20の炭化水素基である。iは1〜3の整数である。
【0071】
前記一般式(3)で表される化合物としては、例えば、N−[2−(トリメトキシシラニル)−エチル]−N,N',N'−トリメチルエタン−1,2−ジアミン、N−[2−(ジメトキシメチルシラニル)−エチル]−N−エチル−N',N'−ジメチルエタン−1,2−ジアミン、N−[3−(トリメトキシシラニル)−プロピル] −N,N',N'−トリメチルプロパン−1,3−ジアミン、N−[3−(ジメトキシメチルシラニル)−プロピル] −N−エチル−N',N'−ジメチルプロパン−1,3−ジアミン、N−[3−(トリエトキシシラニル)−プロピル]−N,N',N'−トリエチル−2−メチルプロパン−1,3−ジアミン、N−[3−(ジメトキシメチルシラニル)−プロピル]−2,N,N',N'−テトラメチルプロパン−1,3−ジアミン、N−(2−ジメチルアミノエチル)−N'−[2−(トリメトキシシラニル)−エチル]−N,N'−ジメチルエタン−1,2−ジアミン、N−[2−(ジエトキシプロピルシラニル)−エチル]−N'−(3−エトキシプロピル)−N,N'−ジメチルエタン−1,2−ジアミン、N−[2−(トリメトキシシラニル)−エチル]−N'−メトキシメチル−N,N'−ジメチルエタン−1,2−ジアミン、N−[2−(トリメトキシシラニル)−エチル]−N,N'−ジメチル−N'−(2−トリメチルシラニルエチル)−エタン−1,2−ジアミン、N−[2−(トリエトキシシラニル)−エチル]−N,N'−ジエチル−N'−(2−ジブチルメトキシシラニルエチル)−エタン−1,2−ジアミン等が挙げられる。
好ましい化合物としては、N−[2−(トリメトキシシラニル)−エチル]−N,N',N'−トリメチルエタン−1,2−ジアミンである。
この化合物で変性された変性共役ジエン系重合体を含有する組成物は、加硫処理を施したときに、ウェットスキッド特性、低ヒステリシスロス性、耐摩耗性、破壊強度のバランスに特に優れる。
【0072】
【化18】

【0073】
前記一般式(4)中、R1、R2は、各々独立して炭素数1〜20のアルキル基又はアリール基であり、R9は炭素数1〜20のアルキレン基であり、R17、R18は炭素数1〜6の炭化水素基であって、隣接する2つのNとともに5員環以上の環構造をなし、R15は炭素数1〜20の炭化水素基、活性水素を持たないヘテロ原子で置換されている炭素数1〜20の炭化水素基、又は3有機置換シリル基であり、nは2又は3の整数である。
【0074】
前記一般式(4)で表される化合物としては、例えば、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−4−メチルピペラジン、1−[3−(ジエトキシエチルシリル)プロピル]−4−メチルピペラジン、1−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−3−メチルイミダゾリジン、1−[3−(ジエトキシエチルシリル)プロピル]−3−エチルイミダゾリジン、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−3−メチルヘキサヒドロピリミジン、1−[3−(ジメトキシメチルシリル)プロピル]−3−メチルヘキサヒドロピリミジン、3−[3−(トリブトキシシリル)プロピル]−1−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン、3−[3−(ジメトキシメチルシリル)プロピル]−1−エチル−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン、1−(2−エトキシエチル)−3−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]イミダゾリジン、(2−{3−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]テトラヒドロピリミジン−1−イル}エチル)ジメチルアミン、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−4−(トリメチルシリル)ピペラジン、1−[3−(ジメトキシメチルシリル)プロピル]−4−(トリメチルシリル)ピペラジン、1−[3−(トリブトキシシリル)プロピル]−4−(トリメチルシリル)ピペラジン、1−[3−(ジエトキシエチルシリル)プロピル]−3−(トリエチルシリル)イミダゾリジン、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−3−(トリメチルシリル)イミダゾリジン、1−[3−(ジメトキシメチルシリル)プロピル]−3−(トリメチルシリル)ヘキサヒドロピリミジン、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−3−(トリメチルシリル)ヘキサヒドロピリミジン、1−[4−(トリエトキシシリル)ブチル]−4−(トリメチルシリル)ピペラジン等が挙げられる。
これらの中でも1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−4−メチルピペラジン、1−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−3−メチルイミダゾリジン、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−3−メチルヘキサヒドロピリミジン、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−4−(トリメチルシリル)ピペラジン、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−3−(トリメチルシリル)イミダゾリジン、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−3−(トリメチルシリル)ヘキサヒドロピリミジンが好ましく用いられ、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−4−メチルピペラジン、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−4−(トリメチルシリル)ピペラジンがより好ましい。
【0075】
【化19】

【0076】
前記一般式(5)中、R1、R2は、各々独立して炭素数1〜20のアルキル基又はアリール基であり、R9は炭素数1〜20のアルキレン基であり、R17、R18は炭素数1〜6の炭化水素基であって、隣接する2つのNとともに5員環以上の環構造をなし、R15、R16は炭素数1〜20の炭化水素基、活性水素を持たないヘテロ原子で置換されている炭素数1〜20の炭化水素基、又は3有機置換シリル基であり、nは2又は3の整数である。
【0077】
前記一般式(5)で表される化合物としては、例えば、2−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−1,3−ジメチルイミダゾリジン、2−(ジエトキシエチルシリル)−1,3−ジエチルイミダゾリジン、2−(トリエトキシシリル)―1,4−ジエチルピペラジン、2−(ジメトキシメチルシリル)−1,4−ジメチルピペラジン、5−(トリエトキシシリル)−1,3−ジプロピルヘキサヒドロピリミジン、5−(ジエトキシエチルシリル)−1,3−ジエチルヘキサヒドロピリミジン、{2−[3−(2−ジメチルアミノエチル)−2−(エチルジメトキシシリル)−イミダゾリジン−1−イル]−エチル}−ジメチルアミン、5−(トリメトキシシリル)−1,3−ビス−(2−メトキシエチル)−ヘキサヒドロピリミジン、5−(エチルジメトキシシリル)−1,3−ビス−(2−トリメチルシリルエチル)−ヘキサヒドロピリミジンル)−1,3−ジメチルイミダゾリジン、2−(3−ジエトキシエチルシリル−プロピル)−1,3−ジエチルイミダゾリジン、2−(3−トリエトキシシリル−プロピル)−1,4−ジエチルピペラジン、2−(3−ジメトキシメチルシリル−プロピル)−1,4−ジメチルピペラジン、5−(3−トリエトキシシリル−プロピル)−1,3−ジプロピルヘキサヒドロピリミジン、5−(3−ジエトキシエチルシリル−プロピル)−1,3−ジエチルヘキサヒドロピリミジン、{2−[3−(2−ジメチルアミノエチル)−2−(3−エチルジメトキシシリル−プロピル)−イミダゾリジン−1−イル]−エチル}−ジメチルアミン、5−(3−トリメトキシシリル−プロピル)−1,3−ビス−(2−メトキシエチル)−ヘキサヒドロピリミジン、5−(3−エチルジメトキシシリル−プロピル)−1,3−ビス−(2−トリメチルシリルエチル)−ヘキサヒドロピリミジン、2−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−1,3−ビス(トリメチルシリル)イミダゾリジン、2−(ジエトキシエチルシリル)−1,3−ビス(トリエチルシリル)イミダゾリジン、2−(トリエトキシシリル)−1,4−ビス(トリメチルシリル)ピペラジン、2−(ジメトキシメチルシリル)−1,4−ビス(トリメチルシリル)ピペラジン、5−(トリエトキシシリル)−1,3−ビス(トリプロピルシリル)ヘキサヒドロピリミジン等が挙げられる。
これらの中でも、2−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−1,3−ジメチルイミダゾリジン、2−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−1,3−(ビストリメチルシリル)イミダゾリジンが好ましい。
【0078】
【化20】

【0079】
前記一般式(6)において、A2は三級アミン、ピリジン、シアン、イミンの中から選ばれる少なくとも一種の官能基を有する一価の基であり、R1及びR2は、各々独立して、炭素数1〜20のアルキル基又はアリール基であり、R8は炭素数1〜20のアルキレン基である。nは1〜3の整数である。
【0080】
前記一般式(6)で表される化合物としては、例えば、[3−(1−ヘキサメチレンイミノ)プロピル]トリエトキシシラン、[(1−ヘキサメチレンイミノ)メチル]トリエトキシシシラン、[2−(1−ヘキサメチレンイミノ)エチル]トリエトキシシラン、[3−(1−ピロリジニル)プロピル]トリエトキシシラン、[3−(1−ヘプタメチレンイミノ)プロピル]トリエトキシシラン、[3−(1−ドデカメチレンイミノ)プロピル]トリエトキシシラン、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−4,5−ジヒドロイミダゾール、3−[10−(トリエトキシシリル)デシル]−4−オキサゾリン及びこれらのトリエトキシシリル化合物に対応するトリメトキシシリル化合物、メチルジエトキシシリル化合物、エチルジエトキシシリル化合物、メチルジメトキシシリル化合物、エチルジメトキシシリル化合物等が挙げられる。
また、[3−(ジメチルアミノ)プロピル]]トリエトキシシラン、[3−(ジエチルアミノ)プロピル]トリエトキシシラン、[2−(ジメチルアミノ)エチル]トリエトキシシラン、[3−(ジブチルアミノ)プロピル]トリエトキシシラン、 [(3−メチル−3−エチルアミノ)プロピル]トリエトキシシラン及びこれらのトリエトキシシリル化合物に対応するトリメトキシシリル化合物、メチルジエトキシシリル化合物、エチルジエトキシシリル化合物、メチルジメトキシシリル化合物、エチルジメトキシシリル化合物等が挙げられる。
さらに、2−(トリエトキシシリルエチル)ピリジン及びこれらのトリエトキシシリル化合物に対応するトリメトキシシリル化合物、メチルジエトキシシリル化合物、エチルジエトキシシリル化合物、メチルジメトキシシリル化合物、エチルジメトキシシリル化合物等が挙げられる。2−シアノエチルトリエトキシシラン、3−シアノプロピルトリエトキシシラン、11−シアノウンデシルトリエトキシシラン及びこれらのトリエトキシシリル化合物に対応するトリメトキシシリル化合物、メチルジエトキシシリル化合物、エチルジエトキシシリル化合物、メチルジメトキシシリル化合物、エチルジメトキシシリル化合物等が挙げられる。
これらの中で、3−シアノプロピルトリエトキシシランが好ましい。
一般式(6)中、A2がイミンを含む場合、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1−メチルエチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−エチリデン−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1−メチルプロピリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(4−N,N−ジメチルアミノベンジリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(シクロヘキシリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン及びこれらのトリエトキシシリル化合物に対応するトリメトキシシリル化合物、メチルジエトキシシリル化合物、エチルジエトキシシリル化合物、メチルジメトキシシリル化合物、エチルジメトキシシリル化合物等が挙げられる。
【0081】
【化21】

【0082】
前記一般式(7)において、R1、R2、R6は、各々独立して、炭素数1〜20のアルキル基又はアリール基を表し、R8は炭素数1〜20のアルキレン基を表す。
3、R4及びR5は、各々独立に炭素数1〜20のアルキル基又はアリール基であるか、又はそれらの2つは互いに結合してそれらが結合しているケイ素原子と一緒になって環を形成してもよい。
wは1〜2の整数であり、fは1〜10の整数である。
【0083】
前記一般式(7)で表される化合物としては、例えば、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリエトキシシラン及びこれらのトリエトキシシリル化合物に対応するトリメトキシシリル化合物、メチルジエトキシシリル化合物、エチルジエトキシシリル化合物、メチルジメトキシシリル化合物、エチルジメトキシシリル化合物等が挙げられる。
【0084】
【化22】

【0085】
前記一般式(8)において、R1、R2は、各々独立して、炭素数1〜20のアルキル基又はアリール基を表し、R8は炭素数1〜20のアルキレン基を表す。R3、R4及びR5は、各々独立に炭素数1〜20のアルキル基又はアリール基であるか、又はそれらの2つは互いに結合してそれらが結合しているケイ素原子と一緒になって環を形成してもよい。
【0086】
上記一般式(8)で表される化合物としては、例えば、1−トリメチルシリル−2,2−ジエトキシ−1−アザ−2−シラシクロペンタン及びこれらのジエトキシシリル化合物に対応するジメトキシシリル化合物、メチルエトキシシリル化合物、エチルエトキシシリル化合物、メチルメトキシシリル化合物、エチルメトキシシリル化合物等が挙げられる。
【0087】
<変性剤(A)、(B)の添加タイミング>
上述した共役ジエン系重合体の変性反応に用いる変性剤、すなわち上述した変性剤(A)、変性剤(B)の添加タイミングについては、特に制限されるものではないが、1回目の添加タイミングについては、共役ジエン系重合体溶液の反応基内での重合が完全に終了した後、1分以内に添加するのが好ましく、2回目以降の添加タイミングについては、1回目の変性剤添加完了後、1分以内に添加するのが好ましい。
変性反応時間についても特に制限されるものではないが、10秒以上反応させることが好ましい。
【0088】
<変性剤の添加速度>
変性剤(A)、(B)の添加速度については、特に制限されるものではないが、添加した変性剤中のシリル基に結合したアルコキシ基1モルに対して、単位時間あたり0.8〜1000ミリモル/秒とすることが好ましい。
【0089】
<変性反応温度>
上述した変性剤(A)及び(B)を、共役ジエン系重合体の重合活性末端に反応させる際の、反応温度については、特に制限されるものではないが、0℃以上120℃以下で反応させることが好ましい。50〜100℃の範囲で反応させることがより好ましい。
【0090】
<変性剤の添加量>
上述した変性工程で使用する、シリル基に結合したアルコキシ基の総数が4個以上であり1つ以上の窒素原子を有する変性剤(A)、及びシリル基に結合したアルコキシ基の総数が2又は3個であり、1つ以上の窒素原子を有する変性剤(B)を、添加する時の、変性剤(A)及び変性剤(B)中のシリル基に結合したアルコキシ基の合計モル数は、変性前の共役ジエン系重合体の活性末端のモル数に対して1倍〜5倍の範囲となるように添加することが好ましく、より好ましくは1倍〜2.5倍の範囲となるように添加することが好ましい。
【0091】
本実施形態の変性共役ジエン系重合体の製造方法においては、上述した変性剤(A)又は変性剤(B)を連続的に添加した後、最初に添加した変性剤とは異なる変性剤(A)又は変性剤(B)を連続的に添加する。
未変性の共役ジエン系重合体の活性末端の1モルに対して、1回目に添加する変性剤(A)、又は変性剤(B)の添加モル数(Z)が、下記式(9)の範囲にある。
(Z)=(Y)/(X) ・・・(9)
(X)は、1回目に添加される変性剤(A)、又は変性剤(B)1分子に含まれるシリル基に結合したアルコキシ基の総数。
(Y)は、未変性の共役ジエン系重合体の活性末端の1モルに対して、1回目に添加される変性剤(A)、又は変性剤(B)の添加当量数。
であり、(Y)の範囲は0.1〜0.6であり、好ましくは、0.2〜0.5であり、より好ましくは0.2〜0.4である。
共役ジエン系重合体に添加される、1回目に添加する変性剤の添加モル数を上げることで、優れた耐コールドフロー性能を発現するが、背反して低ヒステリシスロス性能とウェットスキッド抵抗性能が低下する。1回目に添加する変性剤の添加モル数を、上記のように特定することにより、優れた耐コールドフロー性を有し、かつ低ヒステリシスロス性能とウェットスキッド抵抗性能に優れ、これらの特性バランスに優れた変性共役ジエン系重合体、特に加硫物が得られる。
【0092】
<変性率>
変性共役ジエン系重合体中の官能基成分を有する重合体の含有量、すなわち変性率は、本実施形態の変性共役ジエン系重合体を用いた組成物を加硫物とした場合において、低ヒステリシスロス性とウェットスキッド抵抗性とのバランスが良好なものとなり、実用上十分な耐摩耗性、破壊特性を得るためには、75質量%以上とすることが好ましく、85質量%以上でとすることがより好ましく、90質量%以上とすることがさらに好ましい。
変性率は、共役ジエン化合物中の不純物であるアレン類、アセチレン類の濃度やこれらの処理方法、及び重合温度を制御することによって、上記のように60質量%以上の変性率を得ることができる。
官能基成分を有する重合体の含有量、すなわち変性率の測定方法としては、官能基含有の変性成分と非変性成分を分離できるクロマトグラフィーによる測定方法が好ましい。
このクロマトグラフィーによる測定方法としては、官能基成分を吸着するシリカ等の極性物質を充填剤としたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)カラムを使用し、非吸着成分の内部標準を比較に用いて定量する方法が好適である。
【0093】
<反応停止処理>
上述した変性剤により、共役ジエン系重合体の変性反応を行った後、重合体溶液中に、必要に応じて反応停止剤を添加してもよい。反応停止剤としては、通常、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類;ステアリン酸、ラウリン酸、オクタン酸等の有機酸:水等が使用できる。
【0094】
<その他の処理>
また、共役ジエン系重合体の変性反応を行った後、必要に応じて、重合体に含まれる金属類を脱灰してもよい。脱灰の方法としては、例えば、水、有機酸、無機酸、過酸化水素等の酸化剤等を、重合体溶液に接触させて金属類を抽出し、その後水層を分離する方法が用いられる。
また、共役ジエン系重合体の変性反応を行った後、重合体溶液に、酸化防止剤を添加してもよい。酸化防止剤としては、フェノール系安定剤、リン系安定剤、イオウ系安定剤等が挙げられる。
【0095】
<水素化処理>
変性工程を経た後の状態である変性共役ジエン系重合体は、変性後に共役ジエン系重合体の二重結合の全部又は一部を飽和炭化水素に変換した水素化共役ジエン系重合体であってもよい。
このような二重結合の全部又は一部が飽和炭化水素に変換された重合体は、耐熱性、耐候性が向上するため、高温で加工する場合の製品の劣化を防止することができ、また、分子の運動性を変化させ、あるいは他の高分子化合物との相容性を改善することができる。
その結果、自動車用途等、種々の用途で優れた性能を発揮するため、好ましい。
より具体的には、共役ジエン化合物に基づく不飽和二重結合の水素化率(すなわち水添率)は、目的に合わせて任意に選択でき、特に限定されない。耐熱老化性及び耐候性の良好な重合体を得る場合、(共)重合体中の共役ジエン化合物に基づく不飽和二重結合の水添率は70%を超えることが好ましい。より好ましくは75%以上、更に好ましくは85%以上、特に好ましくは90%以上である。また、熱安定性、分子運動性又は樹脂との相容性の改良には、(共)重合体中の水添率は好ましくは3%〜70%、より好ましくは5%〜65%、さらに好ましくは10%〜60%である。
なお、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との共重合体中の芳香族ビニル化合物に基づく芳香族二重結合の水添率については特に制限はないが、水添率を50%以下とすると好ましく、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは20%以下である。
上述した水添率は、核磁気共鳴装置(NMR)により測定することができる。
【0096】
水素化の方法としては公知の方法が利用できる。
特に好適な水素化の方法は、触媒の存在下、重合体溶液に気体状水素を吹き込む方法である。
触媒としては、不均一系触媒として、貴金属を多孔質無機物質に担持させた触媒、均一系触媒として、ニッケル、コバルト等の塩を可溶化し有機アルミニウム等と反応させた触媒、チタノセン等のメタロセンを用いた触媒等が挙げられる。このうち、特にマイルドな水素化条件を選択できるチタノセン触媒が好適である。また、芳香族基の水素化は貴金属の担持触媒を用いることによって可能である。
例えば、共役ジエン化合物に基づく不飽和二重結合を水添する触媒として(1)Ni、Pt、Pd、Ru等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等に担持させた担持型不均一系水添触媒、(2)Ni、Co、Fe、Cr等の有機酸塩又はアセチルアセトン塩等の遷移金属塩と有機アルミニウム等の還元剤とを用いる、いわゆるチーグラー型水添触媒、(3)Ti、Ru、Rh、Zr等の有機金属化合物等のいわゆる有機金属錯体等が挙げられる。具体例としては、特公昭42−8704号公報、特公昭43−6636号公報、特公昭63−4841号公報、特公平1−37970号、公報、特公平1−53851号公報、特公平2−9041号公報、特開平8−109219号公報に記載された水素化触媒を使用することができる。好ましい水素化触媒としてはチタノセン化合物と還元性有機金属化合物との反応混合物が挙げられる。
【0097】
<変性共役ジエン系重合体回収方法>
本実施形態における変性共役ジエン系重合体を、重合体溶液から取得する方法としては、従来公知の方法を適用できる。
例えば、スチームストリッピング等で溶媒を分離した後、重合体を濾別し、さらにそれを脱水及び乾燥して重合体を取得する方法、フラッシングタンクで濃縮し、さらにベント押し出し機等で脱揮する方法、ドラムドライヤー等で直接脱揮する方法等が適用できる。
【0098】
〔変性共役ジエン系重合体〕
<変性率>
本実施形態の変性共役ジエン系重合体は、後述するように、シリカ系無機充填剤を配合し、さらには加硫物とした場合に、低ヒステリシスロス性能とウェットスキッド抵抗性能のバランスに優れるものとするために、変性率、すなわち変性剤の官能基が反応している共役ジエン系共重合体の含有量が75質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。
変性率は、変性成分と非変性成分を分離できるクロマトグラフィーによって測定することができる。
測定方法としては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で変性成分を吸着できるシリカ系カラムと変性成分を吸着しないポリスチレン系ゲルカラムを用いて、カラムに吸着しない標準ポリスチレンを内標として試料に添加して測定することで、得られたRIの差分から変性率を求めることができる。
【0099】
<ビニル芳香族炭化水素の含有量>
本実施形態の変性共役ジエン系重合体は、当該変性共役ジエン系重合体中のビニル芳香族炭化水素の含有量が20質量%〜50質量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは20質量%〜40質量%、さらに好ましくは20質量%〜30質量%である。
ビニル芳香族炭化水素量が上記範囲であると、低ヒステリシスロス性能とウェットスキッド抵抗性能のバランスに優れ、耐摩耗性、破壊強度においても実用上良好な特性を有する変性共役ジエン系共重合体組成物の加硫物を得ることができる。
ビニル芳香族炭化水素の含有量は、分光光度計により測定でき、具体的には、後述する実施例に記載されている方法を参照して求めることができる。
【0100】
<ビニル結合量>
また、変性共役ジエン系重合体の共役ジエン結合単位中のビニル結合量は、特に限定されないが、10〜75モル%であることが好ましく、10〜70モル%であることがより好ましく、25〜65モル%であることがさらに好ましい。
ビニル結合量が上記範囲であると、低ヒステリシスロス性とウェットスキッド抵抗性のバランスがさらに優れ、耐摩耗性や破壊強度も満足する加硫物を得ることができる。
ここで、変性共役ジエン系重合体がブタジエンとスチレンの共重合体である場合には、ハンプトンの方法(R.R.Hampton,Analytical Chemistry,21,923(1949))により、ブタジエン結合単位中のビニル結合量(1,2−結合量)を求めることができる。
具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定できる。
【0101】
<ガラス転移温度>
ミクロ構造(上記変性共役ジエン系重合体中の各結合量)が上記範囲にあり、さらには変性共役ジエン系重合体のガラス転移温度が−45〜−15℃の範囲にあるときに、低ヒステリシスロス性とウェットスキッド抵抗性とのバランスが一層優れた加硫物を得ることができる。
ガラス転移温度については、ISO22768:2006に従い、所定の温度範囲で昇温しながらDSC曲線を記録し、DSC微分曲線のピークトップ(Inflection point)をガラス転移温度と定義する。
具体的には、後述する実施例に記載されている方法により測定できる。
【0102】
<ムーニー粘度>
本実施形態の変性共役ジエン系重合体のムーニー粘度は40〜70程度であることが、加工性と性能バランスの観点から好ましい。ムーニー粘度が40より低くなると、変性共役ジエン系重合体が、輸送時や保存時に流動変形(塑性変形)してしまい、変性共役ジエン系重合体組成物を得るための練り段階で、取り扱い性が悪化したり、練り機に入り難くなったりする等の問題が生じるおそれがある。変性共役ジエン系重合体のムーニー粘度が70以上になると粘度が上がり過ぎて、シリカ等の配合剤の分散不良や変性共役ジエン系共重合体組成物の粘度が上がってしまい、加工性を悪化させるおそれがある。
ムーニー粘度は、後述する実施例に示すように、ムーニー粘度計を使用して、JIS K6300により、変性共役ジエン系共重合体を、100℃で予熱を1分間行った後に、ローターを毎分2回転させ4分後の粘度を測定することにより得られる。
変性共役ジエン系共重合体組成物のムーニー粘度は、第三段混練工程後の配合物(組成物)を、上記ムーニー粘度測定と同じ測定方法で粘度を測定することにより得られる。
【0103】
〔変性共役ジエン系重合体組成物〕
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物は、上記に亘って説明した本実施形態の変性共役ジエン系重合体を含む、ゴム成分全体を100質量部に対し、シリカ系無機充填剤を0.5〜300質量部、含有する。
【0104】
(ゴム成分)
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物は、上述したように、本実施形態の変性共役ジエン系重合体を含有し、必要に応じて、その他のゴム状重合体を本実施形態の変性共役ジエン系重合体と組み合わせ、上記ゴム成分として使用できる。
<変性共役ジエン系重合体以外のゴム状重合体>
このようなゴム状重合体としては、例えば、共役ジエン系重合体又はその水添物、共役ジエン系化合物とビニル芳香族化合物とのランダム共重合体又はその水添物、共役ジエン系化合物とビニル芳香族化合物とのブロック共重合体又はその水添物、非ジエン系重合体、天然ゴム等が挙げられる。
具体的には、ブタジエンゴム又はその水添物、イソプレンゴム又はその水添物、スチレン−ブタジエンゴム又はその水添物、スチレン−ブタジエンブロック共重合体又はその水添物、スチレン−イソプレンブロック共重合体又はその水添物等のスチレン系エラストマー、アクリロニトリル−ブタジエンゴム又はその水添物等が挙げられる。
また、非ジエン系重合体としては、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、エチレン−ブテン−ジエンゴム、エチレン−ブテンゴム、エチレン−ヘキセンゴム、エチレン−オクテンゴム等のオレフィン系エラストマー、ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、α、β−不飽和ニトリル−アクリル酸エステル−共役ジエン共重合ゴム、ウレタンゴム、多硫化ゴム等が挙げられる。
上述した各種ゴム状重合体は、官能基を付与した変性ゴムであってもよい。
これらのゴム状重合体は、単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態における変性共役ジエン系重合体に、上述したゴム状重合体を組み合わせ、上記ゴム成分として使用する場合、これらの比率は、変性共役ジエン系重合体/上述したゴム状重合体として、20/80〜100/0が好ましく、30/70〜90/10がより好ましく、50/50〜80/20がさらに好ましい。
【0105】
(シリカ系無機充填剤)
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物に含有されているシリカ系無機充填剤としては、SiO2、又はSi3Alを、構成単位の主成分とする固体粒子が使用できる。
例えば、シリカ、クレイ、タルク、マイカ、珪藻土、ウォラストナイト、モンモリロナイト、ゼオライト、ガラス繊維等の無機繊維状物質等が挙げられる。
また、表面を疎水化したシリカ系無機充填剤や、シリカ系無機充填剤とシリカ系以外の無機充填剤との混合物も使用できる。
これらの中でも、シリカ及びガラス繊維が好ましく、シリカがより好ましい。
シリカとしては、乾式シリカ、湿式シリカ、合成ケイ酸塩シリカ等が使用できるが、中でも破壊特性の改良効果並びにウェットスキッド抵抗性の両立効果が最も顕著である湿式シリカが好ましい。
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物において、実用上良好な耐摩耗性や破壊特性を得る観点から、シリカ系無機充填剤のBET吸着法で求められる窒素吸着比表面積は、170〜300m2/gであることが好ましく、200〜300m2/gであることがより好ましく、170〜250m2/gであることがさらに好ましい。
上記のように、変性共役ジエン系重合体組成物におけるシリカ系無機充填剤の含有量は、変性共役ジエン系重合体を含有するゴム成分100質量部に対し、0.5〜300質量部であるが、5〜200質量部が好ましく、20〜100質量部がより好ましい。
シリカ系無機充填剤の含有量が0.5質量部以上とすることにより添加効果が発現でき、300質量部以下とすることにより分散性の劣化が生じず、組成物において良好な加工性、高い機械強度が得られる。
【0106】
(その他の成分)
<カーボンブラック>
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物には、上述したシリカ系無機充填剤以外の補強性充填剤として、カーボンブラックを添加してもよい。
カーボンブラックは、SRF、FEF、HAF、ISAF、SAF等の各クラスのカーボンブラックが使用でき、窒素吸着比表面積が50m2/g以上、DBP(ジブチルフタレート)吸油量が80mL/100gのカーボンブラックが好ましい。
カーボンブラックの含有量は、変性共役ジエン系重合体を20質量部以上含有するゴム成分100質量部に対し、0.5〜100質量部が好ましく、3〜100質量部がより好ましく、5〜50質量部がさらに好ましい。
ドライグリップ性能や導電性等のタイヤ等の用途に求められる性能を発現するためには0.5質量部以上添加することが好ましいが、分散性の観点から100質量部以下とすることが好ましい。
【0107】
<金属酸化物、金属水酸化物>
なお、本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物には、上述したシリカ系無機充填剤やカーボンブラック以外に、金属酸化物や金属水酸化物を、さらに添加してもよい。
金属酸化物とは、化学式Mxy(Mは金属原子、x、yは各々1〜6の整数)を構成単位の主成分とする固体粒子のことをいい、例えばアルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛等を用いることができる。また金属酸化物と金属酸化物以外の無機充填剤の混合物も使用できる。
金属水酸化物とは、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム等である。
【0108】
<シランカップリング剤>
また、本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物においては、シランカップリング剤を含有させてもよい。
シランカップリング剤は、ゴム成分とシリカ系無機充填剤との相互作用を緊密にする機能を有しており、ゴム成分及びシリカ系無機充填剤のそれぞれに対する親和性又は結合性の基を有している。
シランカップリング剤としては、例えば、ビス−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−テトラスルフィド、ビス−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−ジスルフィド、ビス−[2−(トリエトキシシリル)−エチル]−テトラスルフィド等が挙げられる。
シランカップリング剤の含有量は、上述したシリカ系無機充填剤100質量部に対して、0.1〜30質量部が好ましく、0.5〜20質量部がより好ましく、1〜15質量部がさらに好ましい。
シランカップリング剤の含有量が、シリカ系無機充填剤100質量部に対して0.1質量部以上であると有効な使用効果が得られ、また、30質量部を超えて配合する必要はない。
【0109】
<加硫剤>
本実施形態の変性共役ジエン系共重合体組成物は、加硫剤により加硫処理を施した加硫組成物としてもよい。
加硫剤としては、例えば、有機過酸化物及びアゾ化合物等のラジカル発生剤、オキシム化合物、ニトロソ化合物、ポリアミン化合物、硫黄、硫黄化合物が使用できる。
硫黄化合物には、一塩化硫黄、二塩化硫黄、ジスルフィド化合物、高分子多硫化合物等が含まれる。
加硫剤の含有量は、通常は、変性共役ジエン系重合体を含むゴム成分100質量部に対して0.01〜20質量部であるものとし、0.1〜15質量部が好ましい。
加硫方法としては、従来公知の方法を適用でき、加硫温度は、例えば、120〜200℃、好適には140〜180℃とすることができる。
【0110】
<加硫促進剤、加硫助剤>
また、上述した加硫に際しては、必要に応じて加硫促進剤を用いてもよい。
加硫促進剤としては、従来公知の材料を用いることができ、例えば、スルフェンアミド系、グアニジン系、チウラム系、アルデヒド−アミン系、アルデヒド−アンモニア系、チアゾール系、チオ尿素系、ジチオカルバメート系等の加硫促進剤が挙げられる。
また、加硫助剤としては、亜鉛華、ステアリン酸等を使用できる。
加硫促進剤の含有量は、通常、変性共役ジエン系重合体を含有するゴム成分100質量部に対し0.01〜20質量部であるものとし、0.1〜15質量部が好ましい。
加硫助剤の使用量は、変性共役ジエン系重合体100質量部に対し、0.01〜20質量部が好ましく、より好ましくは0.1〜15質量部の割合で用いられる。
【0111】
<ゴム用軟化剤>
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物には、加工性の改良を図るために、ゴム用軟化剤を配合してもよい。
ゴム用軟化剤としては、鉱物油、又は液状若しくは低分子量の合成軟化剤が好適である。
ゴムの軟化、増容、加工性の向上を図るために使用されているプロセスオイル又はエクステンダーオイルと呼ばれる鉱物油系ゴム用軟化剤は、芳香族環、ナフテン環、及びパラフィン鎖の混合物であり、パラフィン鎖の炭素数が全炭素中50%以上を占めるものがパラフィン系と呼ばれ、ナフテン環炭素数が30〜45%のものがナフテン系、芳香族炭素数が30%を超えるものが芳香族系と呼ばれている。本実施形態において用いるゴム用軟化剤としては、ナフテン系及び/又はパラフィン系のものが好ましい。
ゴム用軟化剤の含有量は、変性共役ジエン系重合体を含有するゴム成分100質量部に対し0〜100質量部が好ましく、10〜90質量部がより好ましく、30〜90質量部がさらに好ましい。
ゴム用軟化剤の含有量が前記ゴム成分100質量部に対して100質量部以下とすることによりブリードアウトの発生を防止でき、組成物表面にベタツキが生じなくなるため、好ましい。
【0112】
<その他の添加剤>
本実施形態における変性共役ジエン系重合体組成物には、本発明の目的を損なわない範囲内で、上述した以外の軟化剤や充填剤、さらに、耐熱安定剤、帯電防止剤、耐候安定剤、老化防止剤、着色剤、滑剤等の各種添加剤を用いてもよい。
充填剤としては、具体的には炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸バリウム等が挙げられる。
目的とする製品の硬さや流動性を調節するために、必要に応じて配合する軟化剤としては、例えば、流動パラフィン、ヒマシ油、アマニ油等が挙げられる。
耐熱安定剤、帯電防止剤、耐候安定剤、老化防止剤、着色剤、潤滑剤としては、公知の材料を適用できる。
【0113】
〔変性共役ジエン系重合体組成物の製造方法〕
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物は、上述した変性共役ジエン系重合体と、必要に応じてその他のゴム成分と、シリカ系無機充填剤とを、混合することにより製造できる。
その他必要に応じてカーボンブラックやその他の充填剤、シランカップリング剤、加硫剤、任意の添加剤等を混合することができる。
混合方法については、特に限定されるものではない。
例えば、オープンロール、バンバリーミキサー、ニーダー、単軸スクリュー押出機、2軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機等の一般的な混和機を用いた溶融混練方法、各成分を溶解混合後、溶剤を加熱除去する方法等が挙げられる。
これらのうち、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー、押出機による溶融混練法が生産性、良混練性の観点から好ましい。
また、変性共役ジエン系重合体と各種配合剤とを一度に混練する方法、複数の回数に分けて混合する方法のいずれも適用可能である。
【0114】
〔タイヤ〕
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物は、常法に従い加硫成形することにより、タイヤとすることができる。
様々なタイヤ部材として使用することができるが、中でもタイヤトレッド材として使用することが好ましい。
【実施例】
【0115】
以下、具体的な実施例と比較例を挙げて本発明について詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0116】
〔分析方法〕
実施例及び比較例の試料の分析は、下記に示す方法により行った。
<(1)結合スチレン量>
変性共役ジエン系重合体の試料をクロロホルム溶液とし、スチレンのフェニル基によるUV254nmの吸収により結合スチレン量(質量%)を測定した。
測定装置としては、JASCO V−550を使用した。
【0117】
<(2)ブタジエン部分のミクロ構造(1,2−ビニル結合量)>
変性共役ジエン系重合体の試料を薄膜にして、パーキンエルマージャパン(株)FT−IR Spectrum100を用い、1回反射ATR法(減衰全反射法:attenuated total reflection)で、赤外線スペクトルを600〜1000cm-1の範囲で測定し、所定の波数における吸光度を使い、ハンプトン法の計算式に従い、ブタジエン部分のミクロ構造を求めた。
【0118】
<(4)変性率>
シリカ系ゲルを充填剤としたGPCカラムに、変性した成分が吸着する特性を利用し、試料及び分子量5000の標準ポリスチレン(ポリスチレンはカラムに吸着しない)を含む試料溶液を用いて、前記ポリスチレン系ゲルカラムのGPCと、シリカ系カラム(ガードカラム:DIOL 4.6×12.5mm 5micron、カラム:Zorbax PSM−1000S、PSM−300S、PSM−60S、オーブン温度40℃、THF流量0.5ml/分)のGPC(東ソー製CCP8020シリーズ ビルドアップ型GPCシステム:AS−8020、SD−8022、CCPS、CO−8020、RI−8021)の両クロマトグラムを、RI検出器を用いて測定し、それらの差分よりシリカカラムへの吸着量を測定し変性率を求めた。
試料は、20mLのTHFに対して10mgを標準ポリスチレン5mgとともに溶解し、200μL注入して測定した。
具体的な手順としては、ポリスチレン系カラムを用いたクロマトグラムのピーク面積の全体を100として、サンプルピーク面積をP1、標準ポリスチレンのピーク面積をP2とし、シリカ系カラムを用いたクロマトグラムのピーク面積の全体を100として、サンプルピーク面積をP3、標準ポリスチレンのピーク面積をP4として、変性率(%)は[1−(P2×P3)/(P1×P4)]×100の計算式により算出した。
表1に変性率を示す。表1においては、それぞれの例で用いた変性剤で変性反応を行った後に得られた変性共役ジエン系重合体の、最終的な変性率を示した。
【0119】
<(5)ムーニー粘度>
ムーニー粘度計を使用し、JIS K6300により、変性共役ジエン系共重合体を、100℃で予熱を1分間行った後に、ローターを2回転で回転させ4分後の粘度を測定した。
【0120】
<(6)ガラス転移温度(Tg)>
ISO22768:2006に従い、マックサイエンス社製DSC3200Sを用い、ヘリウム50ml/分の流通下、−100℃〜20℃/分で昇温しながらDSC曲線を記録し、DSC微分曲線のピークトップ(Inflection Point)をガラス転移温度とした。
【0121】
〔変性共役ジエン系重合体の物性〕
<コールドフロー性>
試料を3cm×3cm×8cmに裁断後、3cm×3cmの面を傾き30°の台にゴム糊で固定した。
コールドフロー性は30℃、5時間後に試料の様子から観測した。
結果は以下の基準によって評価した。
◎:試料はほぼ元の形状を維持していた
○:試料の一部が変形していた
×:試料が大きく変形していた
【0122】
〔変性共役ジエン系重合体の重合方法〕
後述する実施例と比較例の変性共役ジエン系重合体の重合反応は、以下の方法で行った。
内容積10Lの攪拌機とジャケットを有するオートクレーブを反応器として使用して、反応器内にシクロヘキサンとノルマルブチルリチウムを添加して洗浄した後、窒素置換を行い、下記表1に示す試料、添加量、添加順序に従い、重合反応及び変性反応を行った。
前記ノルマルブチルリチウム溶液は、ノルマルブチルリチウム/シクロヘキサンの重量混合比20/80の溶液を使用した。
【0123】
(実施例1)
反応器内にノルマルヘキサンを8647g/hr、スチレンを428g/hr、1,3−ブタジエンを1219g/hr、極性化合物として2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパンを14.3mmol/hr、重合開始剤として、ノルマルブチルリチウムを19.6mmol/hrのフィード速度で連続的にフィードして、反応器内の滞留時間を43分とした。
反応器内の温度を80℃に維持した後、反応器上部から、重合した共役ジエン系重合体溶液を、オーバーフロー配管を通して、変性剤と共役ジエン系重合体を混合反応させるための、ミキシング部へ移送した。
共役ジエン系重合体が、反応器からオーバーフローした10秒後に、変性剤(A)として、2,2−ジメトキシ−1−(3−トリメトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタンを0.90mmol/hrのフィード速度で連続的にフィードして、ミキシング部分で10秒間変性反応を行った。変性剤(A)をフィード開始した20秒後に、更に、変性剤(B)として、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−4−メチルピペラジンを11.56mmol/hrのフィード速度で連続的にフィードして、次のミキシング部で変性反応を行い、変性共役ジエン系重合体(試料A)を得た。
【0124】
(実施例2)
極性化合物として2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパンを15.3mmol/hr、重合開始剤として、ノルマルブチルリチウムを20.9mmol/hrのフィード速度で連続的にフィードして、オーバーフロー配管で移送中の該共役ジエン系重合体溶液に、変性剤(A)として、2,2−ジメトキシ−1−(3−トリメトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタンを1.88mmol/hrのフィード速度で連続的にフィードして、その後、更に、変性剤(B)として、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−4−メチルピペラジンを10.87mmol/hrのフィード速度で連続的にフィードした。
その他の条件は、実施例1と同様の方法で、変性共役ジエン系重合体(試料B)を得た。
【0125】
(実施例3)
極性化合物として2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパンを13.6mmol/hr、重合開始剤として、ノルマルブチルリチウムを18.6mmol/hrのフィード速度で連続的にフィードして、オーバーフロー配管で移送中の該共役ジエン系重合体溶液に、変性剤(B)として、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−4−メチルピペラジンを1.67mol/hrのフィード速度で連続的にフィードして、その後、更に、変性剤(A)として、2,2−ジメトキシ−1−(3−トリメトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタンを6.51mmol/hrのフィード速度で連続的にフィードした。
その他の条件は、実施例1と同様の方法で、変性共役ジエン系重合体(試料C)を得た。
【0126】
(実施例4)
極性化合物として2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパンを14.2mmol/hr、重合開始剤として、ノルマルブチルリチウムを19.4mmol/hrのフィード速度で連続的にフィードして、オーバーフロー配管で移送中の該共役ジエン系重合体溶液に、変性剤(B)として、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−4−メチルピペラジンを2.77mmol/hrのフィード速度で連続的にフィードして、その後、更に、変性剤(A)として、2,2−ジメトキシ−1−(3−トリメトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタンを6.09mmol/hrのフィード速度で連続的にフィードした。
その他の条件は、実施例1と同様の方法で、変性共役ジエン系重合体(試料D)を得た。
【0127】
(比較例1)
極性化合物として2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパンを15.7mmol/hr、重合開始剤として、ノルマルブチルリチウムを21.4mmol/hrのフィード速度で連続的にフィードして、共役ジエン系重合体が、反応器からオーバーフローした10秒後に、変性剤(B)として、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−4−メチルピペラジンを17.12mmol/hrのフィード速度で連続的にフィードして、ミキシング部分で10秒間変性反応を行った。
その他の条件は、実施例1と同様の方法で、変性共役ジエン系重合体(試料E)を得た。
【0128】
(比較例2)
極性化合物として2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパンを14.3mmol/hr、重合開始剤として、ノルマルブチルリチウムを19.6mmol/hrのフィード速度で連続的にフィードして、オーバーフロー配管で移送中の該共役ジエン系重合体溶液に、グリシジル化合物として、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンを1.47mmol/hrのフィード速度で連続的にフィードして、その後、更に、変性剤(B)として、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−4−メチルピペラジンを11.17mmol/hrのフィード速度で連続的にフィードした。
その他の条件は、実施例1と同様の方法で、変性共役ジエン系重合体(試料F)を得た。
【0129】
上述のようにして作製した変性共役ジエン系重合体(試料A〜F)の分析結果と物性値を下記表1に示す。
【0130】
〔変性共役ジエン系重合体組成物の作製方法〕
上述のようにして作製した実施例1〜4及び比較例1〜2の変性共役ジエン系重合体(試料A〜F)を原料ゴムとして、以下に示す配合で、変性共役ジエン系重合体組成物、すなわちゴム組成物を得た。
【0131】
変性共役ジエン系重合体 70.0質量部
天然ゴム 30.0質量部
シリカ(Degussa社製ウルトラジルVN3) 45.0質量部
カーボンブラック(東海カーボン社製シーストKH) 5.0質量部
シランカップリング剤(Degussa社製Si69) 4.5質量部
オイル(ジャパンエナジー社製NC140:SRAEオイル) 5.0質量部
亜鉛華 3.0質量部
ステアリン酸 2.0質量部
老化防止剤(N−イソプロピル−N'−フェニル-P-フェニレンジアミン) 1.0質量部
硫黄 1.4質量部
加硫促進剤(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)1.0質量部
加硫促進剤(ジフェニルグアニジン) 1.5質量部
合計 169.4質量部
【0132】
混練り方法はJIS K6299に準拠して以下の方法で行った。
温度制御装置を付属した密閉混練機(内容量0.3リットル)を使用し、第一段の混練として、充填率65%、ローター回転数50/57rpmの条件で、原料ゴム、充填剤(シリカ及びカーボンブラック)、有機シランカップリング剤、オイル、亜鉛華、ステアリン酸を混練した。
この際、密閉混練機の温度を制御し、155〜160℃の排出温度で組成物を得た。
次に、第二段の混練として、第一段の混錬で得た組成物に老化防止剤を加え、シリカの分散を向上させるため再度混練した。
この場合も、密閉混練機の温度制御により組成物の排出温度を155〜160℃に調整した。
次に、第三段の混練として、第二段の混錬で得た組成物に硫黄、加硫促進剤を加えて、70℃に設定したオープンロールにて混練を行った。
第三段の混錬で得られた組成物を成型し、160℃でT90+5分間(90%の加硫がなされる時間にさらに5分間継続した時間)、加硫プレスにて加硫し、得られた加硫ゴムの物性を測定した。
【0133】
組成物の各物性の測定方法は以下の方法で実施した。
<(1)粘弾性パラメータ>
レオメトリックス・サイエンティフィック社製粘弾性試験装置「ARES」を用い、ねじりモードで粘弾性パラメータを測定した。
0℃において周波数10Hz、歪み1%で測定したtanδをウェットスキッド性能の指標とした。指数値が大きいほどウェットスキッド性能が良好であることを示す。
また、50℃において周波数10Hz、歪み5%で測定したtanδを省燃費特性の指標とした。指数値が大きいほど省燃費性能が良好であることを示す。
【0134】
<(2)引張強さ(破壊強度)>
JIS K6251の引張試験法により測定し、破断強度×破断伸び/2の値を破壊強度とした。指数値が大きいほど破壊強度が良好であることを示す。
【0135】
<(3)耐摩耗性>
アクロン摩耗試験機を使用し、荷重6ポンド、1000回転の摩耗量を測定し、指数化した。指数値が大きいほど耐摩耗性が優れることを示す。
【0136】
【表1】

【0137】
極性化合物:2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン
変性剤(A): 2,2−ジメトキシ−1−(3−トリメトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタン
変性剤(B):1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−4−メチルピペラジン
グリシジル化合物 : テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン
表1中「*1」は、変性前の共役ジエン系重合体の活性末端1モルに対する、変性剤の添加モル数を表す。
表1中の(Z)は、未変性の共役ジエン系重合体の活性末端の1モルに対して、1回目にフィードする変性剤(A)、又は変性剤(B)の添加モル数を表す。
表1中の(X)は、1回目に添加される変性剤(A)、又は変性剤(B)の変性剤1分子中に含まれるシリル基に結合したアルコキシ基の総数を表す。
【0138】
前記表1に示すように、実施例1〜4の変性共役ジエン系重合体組成物を構成する変性共役ジエン系重合体は、いずれも耐コールドフロー性に優れ、実施例1〜4の変性共役ジエン系重合体組成物は、低ヒステリシスロス性能(省燃費性能)に優れ、かつ低ヒステリシスロス性能とウェットスキッド抵抗性能のバランスが良好で、さらには耐摩耗性、破壊性能のバランスも良好であることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明の変性共役ジエン系重合体とシリカ系無機充填剤とを含有する変性共役ジエン系重合体組成物は、加硫組成物とした時に、タイヤトレッド、防振ゴム、ベルト、工業用品、履物、各種発泡体等として、産業上の利用可能性を有している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1個の重合器に、
炭化水素溶媒と、
アルカリ金属系開始剤及び/又はアルカリ土類金属系開始剤と、
共役ジエン化合物、又は共役ジエン系化合物と芳香族ビニル化合物とを、連続的に添加して、活性末端を有する共役ジエン系重合体を連続的に得る工程と、
その後、シリル基に結合したアルコキシ基の総数が4個以上であり、1つ以上の窒素原子を有する変性剤(A)、及びシリル基に結合したアルコキシ基の総数が2又は3個であり、1つ以上の窒素原子を有する変性剤(B)を連続的に添加し、前記共役ジエン系重合体の活性末端と前記変性剤(A)及び/又は変性剤(B)を反応させる変性反応工程を、含む変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項2】
前記変性剤(A)が、下記一般式(1)、又は一般式(2)で表される化合物である請求項1に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【化1】

(前記一般式(1)中、R1〜R4は、各々独立して、炭素数1〜20のアルキル基又はアリール基を表し、R8及びR9は、炭素数1〜20のアルキレン基を表し、mは1又は2の整数であり、nは2又は3の整数である。なお、一般式(1)で表される化合物において、炭素数1〜20のアルコキシ基の数の合計は4以上である。)
【化2】

(前記一般式(2)中、R1〜R4は、各々独立して、炭素数1〜20のアルキル基又はアリール基を表し、R8及びR9は、炭素数1〜20のアルキレン基を表し、R8、R9及びA1が、複数存在するときは、それらは、各々同一であっても異なっていてもよい。t及びvは、それぞれ0〜3の整数である。
pは0〜20の整数であり、pが2以上の場合、(R9−A1−R8)で表される複数の繰り返し単位は、相異なるものであってもよい。なお、一般式(2)で表される化合物において、炭素数1〜20のアルコキシ基の数の合計は4以上である。A1は下記一般式(a)、(b)、(c)のいずれかで表される基である。)
【化3】

(前記一般式(a)において、R10及びR11は炭素数1〜20のアルキレン基であり、かつ隣接する2つのNとともに5員環以上の環構造を形成する。)
【化4】

(前記一般式(b)において、R7は炭素数1〜20のアルキル基又はアリール基、活性水素を持たないヘテロ原子で置換されている炭素数1〜20の炭化水素基、及び3有機置換シリル基からなる群より選ばれるいずれかである。)
【化5】

(前記一般式(c)において、R10は炭素数1〜20のアルキレン基であり、R5及びR6は炭素数1〜20のアルキル基又はアリール基である。rは0〜3の整数である。)
【請求項3】
前記変性剤(B)が、下記一般式(3)、一般式(4)、一般式(5)、一般式(6)、一般式(7)、及び一般式(8)からなる群より選ばれるいずれか一の化合物である請求項1又は2に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【化6】

(前記一般式(3)中、R1、R2は、各々独立して、炭素数1〜20のアルキル基又はアリール基を表し、R8、R9は炭素数1〜20のアルキレン基を表し、R12、R13、R14はSi、O、又はNを含み、活性水素を持たない有機基で置換されていてもよい炭素数1〜20の炭化水素基である。iは1〜3の整数である。)
【化7】

(前記一般式(4)中、R1、R2は、各々独立して炭素数1〜20のアルキル基又はアリール基であり、R9は炭素数1〜20のアルキレン基であり、R17、R18は炭素数1〜6の炭化水素基であって、隣接する2つのNとともに5員環以上の環構造をなし、R15は炭素数1〜20の炭化水素基、活性水素を持たないヘテロ原子で置換されている炭素数1〜20の炭化水素基、又は3有機置換シリル基であり、nは2又は3の整数である。)
【化8】

(前記一般式(5)中、R1、R2は、各々独立して炭素数1〜20のアルキル基又はアリール基であり、R9は炭素数1〜20のアルキレン基であり、R17、R18は炭素数1〜6の炭化水素基であって、隣接する2つのNとともに5員環以上の環構造をなし、R15、R16は炭素数1〜20の炭化水素基、活性水素を持たないヘテロ原子で置換されている炭素数1〜20の炭化水素基、又は3有機置換シリル基であり、nは2又は3の整数である。)
【化9】

(前記一般式(6)において、A2は三級アミン、ピリジン、シアン、イミンの中から選ばれる少なくとも一種の官能基を有する一価の基であり、R1及びR2は、各々独立して、炭素数1〜20のアルキル基又はアリール基であり、R8は炭素数1〜20のアルキレン基である。nは2又は3の整数である。)
【化10】

(前記一般式(7)において、R1、R2、R6は、各々独立して、炭素数1〜20のアルキル基又はアリール基を表し、R8は炭素数1〜20のアルキレン基を表す。R3、R4及びR5は、各々独立に炭素数1〜20のアルキル基又はアリール基であるか、又はそれらの2つは互いに結合してそれらが結合しているケイ素原子と一緒になって環を形成してもよい。
wは1〜2の整数であり、fは1〜10の整数である。)
【化11】

(前記一般式(8)において、R1、R2は、各々独立して、炭素数1〜20のアルキル基又はアリール基を表し、R8は炭素数1〜20のアルキレン基を表す。R3、R4及びR5は、各々独立に炭素数1〜20のアルキル基又はアリール基であるか、又はそれらの2つは互いに結合してそれらが結合しているケイ素原子と一緒になって環を形成してもよい。)
【請求項4】
前記変性剤(A)又は前記変性剤(B)を連続的に添加した後、1回目に添加した変性剤とは異なる変性剤(A)又は変性剤(B)を連続的に添加する工程を有し、
未変性の共役ジエン系重合体の活性末端1モルに対して、1回目に添加する変性剤(A)、又は変性剤(B)の添加モル数(Z)が、下記式(9)の範囲である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
(Z)=(Y)/(X) ・・・(9)
(X)は、1回目に添加される変性剤(A)、又は変性剤(B)1分子に含まれるシリル基に結合したアルコキシ基の総数。
(Y)は、0.1〜0.6
(Y)は、未変性の共役ジエン系重合体の活性末端1モルに対して、1回目に添加される変性剤(A)、又は変性剤(B)の添加当量数。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法によって得られる変性共役ジエン系重合体。
【請求項6】
請求項5に記載の変性共役ジエン系重合体を含むゴム成分100質量部に対して、シリカ系無機充填剤0.5〜300質量部を、さらに含有する変性共役ジエン系重合体組成物。
【請求項7】
前記変性共役ジエン系重合体を20質量部以上含有するゴム成分100質量部に対し、
カーボンブラックを0.5〜100質量部、さらに含有する請求項6に記載の変性共役ジエン系重合体組成物。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の変性共役ジエン系重合体組成物を含むタイヤ。

【公開番号】特開2013−82843(P2013−82843A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225097(P2011−225097)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】