説明

変成シリコーン樹脂発泡体

【課題】優れた触感や柔軟性を維持しつつ、設備的な負荷が少なく、安価な設備で発泡成形が可能な変成シリコーン樹脂発泡体を提供する。
【解決手段】分子鎖中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する硬化剤(A)、分子鎖中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、主鎖を構成する繰り返し単位がオキシアルキレン系単位からなる重合体(B)、ヒドロシリル化触媒(C)および重炭酸塩と有機酸または有機酸塩からなる化学発泡剤(D)を含む発泡性液状樹脂組成物を硬化させることにより、上記特性を有する変成シリコーン樹脂発泡体を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変成シリコーン樹脂からなる発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
触感が良好で、優れた柔軟性を有する軟質発泡体として、変成シリコーン樹脂を用いた発泡体が提案されている(特許文献1)。変成シリコーン樹脂を用いた発泡体は、従来の軟質発泡体であるポリウレタンからなる発泡体よりも触感が良好で、低硬度、低反発弾性率といった優れた柔軟性を有しており、また、毒性の懸念されるイソシアネートを使用していないことから、寝具や各種クッション材等の素材として好適である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2008/117734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、優れた触感や柔軟性を維持しつつ、設備的な負荷が少なく、安価な設備で発泡成形が可能な変成シリコーン樹脂発泡体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題に関して鋭意検討を行った結果、発泡剤として重炭酸塩と有機酸または有機酸塩からなる化学発泡剤を使用することにより、発泡体作製時に爆発の危険性が高い水素ガスを発生することがないために、設備面での負荷を低減できることを見出し、発明を完成させるに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、以下の構成を有するものである。
【0007】
1). 分子鎖中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する硬化剤(A)、分子鎖中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、主鎖を構成する繰り返し単位がオキシアルキレン系単位からなる重合体(B)、ヒドロシリル化触媒(C)および重炭酸塩と有機酸または有機酸塩からなる化学発泡剤(D)を含む発泡性液状樹脂組成物を硬化してなる、変成シリコーン樹脂発泡体。
【0008】
2). 重合体(B)が、数平均分子量15000以上50000以下であることを特徴とする、1)に記載の変成シリコーン樹脂発泡体。
【0009】
3). 重合体(B)の主鎖を構成する繰り返し単位がプロピレンオキシドである、1)または2)に記載の変成シリコーン樹脂発泡体。
【0010】
4). 密度が30kg/m以上300kg/m以下である、1)〜3)の何れか一項に記載の変成シリコーン樹脂発泡体。
【0011】
5). 分子鎖中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する硬化剤(A)、分子鎖中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、主鎖を構成する繰り返し単位がオキシアルキレン系単位からなる重合体(B)、ヒドロシリル化触媒(C)および重炭酸塩と有機酸または有機酸塩からなる化学発泡剤(D)を含む発泡性液状樹脂組成物を発泡させることを特徴とする1)〜4)のいずれか一項に記載の変成シリコーン樹脂発泡体の製造方法。
【0012】
6). 発泡性液状樹脂組成物を40℃以上150℃以下の温度で発泡させることを特徴とする5)記載の変成シリコーン樹脂発泡体の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の変成シリコーン樹脂発泡体は、重炭酸塩と有機酸または有機酸塩からなる化学発泡剤を発泡剤として用いることから、水素等の可燃性ガスが発生しないため、防火・防爆仕様の設備にすることなく、発泡体を製造することができる。また、本発明の変成シリコーン樹脂発泡体は、優れた触感・柔軟性を有することからから寝具、各種クッション材、等の用途向け素材として好適に使用される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の発泡体を構成する変成シリコーン樹脂発泡体は、分子鎖中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する硬化剤(A)、分子鎖中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、主鎖を構成する繰り返し単位がオキシアルキレン系単位からなる重合体(B)、ヒドロシリル化触媒(C)、重炭酸塩と有機酸または有機酸塩からなる化学発泡剤(D)を含んでなる発泡性液状樹脂組成物を、硬化してなる発泡体である。
【0015】
・硬化剤(A)について
本発明における分子鎖中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する硬化剤(A)は、分子鎖中に少なくとも2個、好ましくは3個以上のヒドロシリル基を有する化合物である。ヒドロシリル基数の上限は、好ましくは100個、より好ましくは70個、さらに好ましくは50個である。
【0016】
本発明における硬化剤(A)は分子鎖中にヒドロシリル基を有するため、それぞれのヒドロシリル基が、分子鎖中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、主鎖を構成する繰返し単位がオキシアルキレン系単位からなる重合体(B)の分子鎖中に存在するアルケニル基と反応して、硬化する。硬化剤(A)中のヒドロシリル基の数が少ないと、本発明の液状樹脂組成物をヒドロシリル化反応により硬化させる際の硬化速度が遅くなり、発泡と硬化の速度のバランスが取れず、不良な構造体となる。また、硬化剤(A)中のヒドロシリル基の個数が多くなると、硬化剤(A)の安定性、すなわち液状樹脂組成物の安定性が悪くなったり、硬化後も多量のヒドロシリル基が発泡体中に残存しやすくなり、経時で次第に柔軟性を失う傾向がある。
【0017】
なお本発明において、ヒドロシリル基の数は、Si原子に直接結合したHの数とも言うことができ、例えば、SiHの場合にはヒドロシリル基の数は2個となる。1つのSiに結合するHの数は、1つであることにより硬化性は良くなり、また、柔軟性の点からも好ましい。
【0018】
本発明における硬化剤(A)の数平均分子量Mnは、分散性や加工性等の点から、上限値としては30000が好ましく、20000がより好ましく、15000以下であることがさらに好ましい。重合体(B)との反応性や相溶性まで考慮すると、硬化剤(A)の数平均分子量Mnは、300以上10000以下が特に好ましい。
【0019】
本発明における硬化剤(A)の構造は、分子鎖中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有していれば、そのヒドロシリル基が分子の主鎖にあっても側鎖にあっても特に制限はないが、入手のしやすさ、反応性等の観点から、ポリメチルハイドロジェンシロキサン(メチルハイドロジェンシリコーンオイル)、メチルハイドロジェンシロキサンとジメチルシロキサンの共重合体、メチルハイドロジェンシロキサンとジフェニルシロキサンの共重合体、メチルハイドロジェンシロキサンとメチルフェニルシロキサンの共重合体、および、これらのスチレンもしくはαメチルスチレンの変成体等が好ましく用いられる。
【0020】
硬化剤(A)は、公知の方法により合成することができ、市販されているものについては、市販品をそのまま使用することができる。例えば、信越化学工業(株)製のKF−99、KF−9901、Gelest社製のHMS−151、HMS−301、HMS−991、東レ・ダウコーニング(株)製のSH1107、Momentive Perfomance Materials社製のTSF484、旭化成ワッカーシリコーン(株)製のH−Siloxane等を挙げることができる。
【0021】
・重合体(B)について
本発明における分子鎖中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、主鎖を構成する繰り返し単位がオキシアルキレン系単位からなる重合体(B)は、硬化剤(A)とヒドロシリル化反応して硬化する成分であり、分子鎖中に少なくとも1個のアルケニル基を有するため、ヒドロシリル化反応が起こって高分子状となり、硬化する。重合体(B)に含まれるアルケニル基の数は、硬化剤(A)とヒドロシリル化反応するという点から、少なくとも1個必要であるが、硬化性、柔軟性の点からは、主鎖もしくは分岐部の分子鎖の両末端にアルケニル基が存在するのが好ましい。
【0022】
本発明における重合体(B)の構造としては、直鎖状であっても、分岐が主鎖の分子量よりも少ない範囲で分岐構造を有していても構わないが、直鎖状であるほうが柔軟性の観点から好ましい。
【0023】
本発明における重合体(B)の分子量は、柔軟性・触感および反応性のバランスの点から、数平均分子量Mnが15000以上であることが好ましく、17000以上であることがより好ましい。数平均分子量Mnの上限値には特に限定は無いが、50000以下が好ましく、45000以下がより好ましく、40000以下がさらに好ましい。
【0024】
本発明における重合体(B)は、主鎖を構成する繰返し単位がオキシアルキレン系単位であるため、主鎖を形成する出発物質として活性水素を2個以上有する化合物を重合させることにより製造されることができる。例えば、重合体(B)は、エチレングリコール、プロピレングリコール、ビスフェノール化合物、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリストール等を用い、C〜Cのアルキレンオキシドを重合させることにより製造することができる。
【0025】
本発明における重合体(B)の主鎖の具体例としては、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリブチレンオキシド;エチレンオキシド、プロピレンオキシド、及びブチレンオキシドから選ばれる2種以上のランダムまたはブロック共重合体、等が挙げられる。重合体(B)は、これらの群より選ばれる主鎖の少なくとも1種の末端に、アルケニル基を導入することが好ましい。柔軟性、及び触感の点から、主鎖の繰返し単位は、ポリプロピレンオキシドであることがより好ましい。
【0026】
本発明における硬化剤(A)および重合体(B)の含有割合は、柔軟性、及び触感の点から硬化剤(A)中のヒドロシリル基の含有量が、重合体(B)中のアルケニル基1モル当り0.1モル以上50モル以下となるように配合することが好ましく、0.2〜30モルとなるように配合することがより好ましい。
【0027】
ヒドロシリル基の含有量が少ない場合、本発明の液状樹脂組成物をヒドロシリル化反応により硬化させる際の硬化速度が遅くなり、発泡と硬化の速度のバランスが取れず、不良な構造体となる。また、ヒドロシリル基の含有量が多くなると、硬化後も多量のヒドロシリル基が発泡体中に残存しやすくなり、経時で次第に柔軟性を失う傾向がある。
【0028】
・ヒドロシリル化触媒(C)について
本発明におけるヒドロシリル化触媒(C)としては、ヒドロシリル化触媒として使用し得るものである限り、特に制限はなく、任意のものを使用し得る。ヒドロシリル化触媒(C)の具体例としては、白金の担体;アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に固体白金を担持させたもの;塩化白金酸;塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等の錯体;白金−オレフィン錯体や白金−ビニルシロキサン錯体;白金−ホスフィン錯体;白金−ホスファイト錯体;ジカルボニルジクロロ白金、等が挙げられる。
【0029】
本発明におけるヒドロシリル化触媒(C)の含有量は、重合体(B)のアルケニル基1モルに対して10−8モル以上10−1モル以下が好ましく、10−6モル以上10−2モル以下がより好ましい。ヒドロシリル化触媒(C)の含有量が10−8モルより少ないと、十分に硬化が進行しない場合がある。また、ヒドロシリル化触媒(C)の含有量が10−1モルよりも多いと、液状樹脂組成物の硬化の制御が困難な場合や、得られた変成シリコーン樹脂発泡体が着色する場合がある。
【0030】
・化学発泡剤(D)について
本発明では、重炭酸塩と有機酸または有機酸塩からなる化学発泡剤(D)を用いる。重炭酸塩と有機酸または有機酸塩からなる化学発泡剤(D)は、本発明での硬化剤(A)および重合体(B)の硬化反応(ヒドロシリル化反応)と併行して、炭酸ガスを発生する化合物であり、水素等の可燃性ガスが発生しないため、防火・防爆仕様の設備にすることなく、発泡体を製造することができる。
【0031】
重炭酸塩としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム等が挙げられる。有機酸としては多価カルボン酸、例えば、クエン酸、シュウ酸、フマル酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸等が挙げられる。有機酸塩としては、前記有機酸のナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、アルミニウム、亜鉛等の金属塩等が挙げられる。これらのうち本発明では、硬化剤(A)および重合体(B)の硬化反応(ヒドロシリル化反応)が適切に進行する温度領域で分解することが好ましいことから、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム等の重炭酸塩と多価カルボン酸の混合物、あるいは前記重炭酸塩と前記有機酸の金属塩の混合物が好ましい。
【0032】
本発明の重炭酸塩と有機酸または有機酸塩からなる化学発泡剤(D)の含有量は、重合体(B)100重量部に対する重炭酸塩の含有量は、1部以上が好ましく、2部以上がより好ましい。また、重炭酸塩と有機酸または有機酸塩の比率は、重炭酸塩/有機酸または有機酸塩(重量比)が1/4以上であることが好ましく、1/3以上であることがより好ましい。重炭酸塩の含有量が少ない、または重炭酸塩と有機酸の比率が低いと、熱分解する炭酸ガスの量が少なく、発泡倍率が低下する傾向にある。
【0033】
本発明では、前記重炭酸塩と有機酸または有機酸塩からなる化学発泡剤(D)以外の化学発泡剤を併用しても良い。重炭酸塩と有機酸または有機酸塩からなる化学発泡剤(D)以外の化学発泡剤としては、アゾ化合物、ニトロソ化合物、ヒドラジン誘導体、セミカルバジド化合物、テトラゾール化合物等の有機系熱分解型発泡剤、炭酸塩、亜硝酸塩等の無機系熱分解型発泡剤等が挙げられる。
【0034】
アゾ化合物としては、例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、バリウムアゾジカルボキシレート、ジアゾアミノベンゼン等が挙げられる。
ニトロソ化合物としては、例えば、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)が挙げられる。
【0035】
ヒドラジン誘導体としては、例えば、p,p’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)、パラトルエンスルホニルヒドラジド(TSH)、ヒドラゾジカルボンアミド(HDCA)等が挙げられる。
セミカルバジド化合物としては、例えば、p−トルエンスルホニルセミカルバジドが挙げられる。
【0036】
テトラゾール化合物としては、例えば、5−フェニルテトラゾール、1−Hテトラゾール塩、1,4−ビステトラゾール等が挙げられる。
有機系熱分解型発泡剤としては、さらに、トリヒドラジノトリアジン等も挙げられる。炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム等が挙げられる。亜硝酸塩としては、例えば亜硝酸アンモニウムが挙げられる。これらは、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0037】
本発明においては、化学発泡剤以外の発泡剤を併用しても良い。化学発泡剤以外の発泡剤としては、例えば、通常、ポリウレタン、フェノール、ポリスチレン、ポリオレフィン等の有機発泡体に用いられる、常温大気圧下では揮発性液体や気体の物理発泡剤が挙げられる。
【0038】
物理発泡剤としては、化学発泡剤の分解やヒドロシリル化反応を阻害しないものであれば特に限定はないが、発泡性や作業性と安全性の点から、物理発泡剤の沸点は、100℃以下であることが好ましく、さらには65℃以下、特には50℃以下が好ましい。具体的には、炭化水素、フロン、塩化アルキル、エーテル等の有機化合物、二酸化炭素、窒素、空気等の無機化合物が挙げられるが、環境適合性の観点から、炭化水素、エーテル、二酸化炭素、窒素、空気から選ばれる化合物を用いることが好ましい。
【0039】
炭化水素としては、メタン、エタン、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、n−ヘキサン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタンクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。また、エーテル類としては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ブチルメチルエーテル、ブチルエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、tert−ブチルエチルエーテル、1,1−ジメチルプロピルメチルエーテル等が挙げられる。
【0040】
なお、発泡体製造時に、空気中で機械的な攪拌を行う場合は、攪拌に伴って巻き込まれた空気により気泡が形成される場合があり、これもまた物理発泡剤のひとつであると考える。ただし、これら物理発泡剤を使用する場合、残存物による発泡体成形後の物性変化が懸念されること等から、発泡体製造後、使用した物理発泡剤の沸点以上の温度で加熱養生することにより、残留発泡剤を取り除いておくことが好ましい。
【0041】
・その他添加剤について
本発明において、変性シリコーン樹脂発泡体の柔軟性や成型加工性を調整する目的で可塑剤(F)を添加することができる。
【0042】
本発明の変成シリコーン樹脂発泡体には、本発明の効果を損なわない限り、耐光性安定剤、紫外線吸収剤、貯蔵安定剤、気泡調整剤、界面活性剤等を必要に応じて添加しても良い。
【0043】
前記耐光性安定剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、及びイオウ原子、リン原子、1級アミン、2級アミンを含まないヒンダードアミン系光安定剤が挙げられる。ここで、耐光性安定剤とは、紫外線領域の波長の光を吸収してラジカルの生成を抑制する機能、または、光吸収により生成したラジカルを捕捉して熱エネルギーに変換し無害化する機能等を有し、光に対する安定性を高める化合物である。
【0044】
前記紫外線吸収剤としては、特に限定されるものではないが、ベンゾオキサジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤等が例示される。ここで、紫外線吸収剤とは、紫外線領域の波長の光を吸収してラジカルの生成を抑制する機能を有する化合物である。
【0045】
本発明における耐光性安定剤、紫外線吸収剤の添加量としては、それぞれ、重合体(B)100重量部に対して、0.01重量部以上5重量部以下が好ましく、0.1重量部以上3重量部以下がより好ましく、0.3重量部以上2.0重量部以下がさらに好ましい。耐光性安定剤、紫外線吸収剤の添加量が当該範囲であると、経時的な表面粘着性の上昇を抑制する効果が得やすい。
【0046】
前記貯蔵安定性改良剤としては、硬化剤(A)の貯蔵安定剤として知られている通常の安定剤で所期の目的を達成するものであれば使用することができる。
【0047】
前記貯蔵安定性改良剤の好ましい例としては、例えば、脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機硫黄化合物、チッ素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物等が挙げられる。これらを単独使用、または2種以上併用してもよい。具体的には、2−ベンゾチアゾリルサルファイド、ベンゾチアゾール、チアゾール、ジメチルアセチレンダイカルボキシレート、ジエチルアセチレンダイカルボキシレート、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、ブチルヒドロキシアニソール、ビタミンE、2−(4−モルフォジニルジチオ)ベンゾチアゾール、3−メチル−1−ブテン−3−オール、アセチレン性不飽和基含有オルガノシロキサン、アセチレンアルコール、3−メチル−1−ブチン−3−オール、2−メチル−3−ブチン−2−オール、ジアリルフマレート、ジアリルマレエート、ジエチルフマレート、ジエチルマレエート、ジメチルマレエート、2−ペンテンニトリル、2,3−ジクロロプロペン等が挙げられる。
【0048】
本発明における貯蔵安定性改良剤の使用量は、硬化剤(A)および重合体(B)に均一に分散される限り、ほぼ任意に選ぶことができるが、硬化剤(A)中のSiH基1モルに対し、10−6モル以上10−1モル以下の範囲で用いるのが好ましい。貯蔵安定性改良剤の使用量が10−6モル未満では、硬化剤(A)の貯蔵安定性が充分に改良されない場合があり、10−1モルを超えると、硬化性が不充分になる場合がある。
【0049】
本発明の変成シリコーン樹脂発泡体には、必要であれば、気泡調整剤を添加しても良い。気泡調整剤の種類には特に限定はなく、通常使用される、例えば、タルク、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、シリカ等の無機固体粉末や、ポリエーテル変成シリコーンオイル等のシリコーンオイル系化合物、フッ素系化合物等が挙げられる。これらは、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0050】
本発明における気泡調整剤の使用量は、硬化剤(A)、重合体(B)、ヒドロシリル化触媒(C)の合計量を100重量部とした場合、0.1重量部以上100重量部以下が好ましく、0.5重量部以上50重量部以下がより好ましい。
【0051】
本発明においては、硬化剤(A)、重合体(B)、ヒドロシリル化触媒(C)、重炭酸塩と有機酸または有機酸塩からなる化学発泡剤(D)を含んでなる発泡性液状樹脂組成物の相溶性を向上する目的で、界面活性剤を添加することもできる。
【0052】
界面活性剤の具体例としては、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化アルコキシプロピルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム液、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルジメチルアミンオキサイド、アルキルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、アルキルアミドプロピルベタイン、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤等が挙げられる。これらは、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0053】
本発明においては、特に硬化剤(A)の相溶性を向上する目的では、ポリオキシアルキレン−ポリジメチルシロキサンブロック共重合体のようなシリコーン系界面活性剤を添加することもできる。
【0054】
ポリオキシアルキレン−ポリジメチルシロキサンブロック共重合体としては、特に限定されず、例えば、AB型のジブロック体、ABA型のトリブロック体、(AB)型のマルチブロック体のほか、枝分かれ型、ペンダント型、星型等が挙げられる。また、ポリオキシアルキレンの具体的な構造としては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシテトラメチレン、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体等が挙げられ、また、その末端構造についても、OH基末端、メトキシ、t−ブトキシ等のエーテル末端、反応性のアリル基末端等が挙げられる。
【0055】
本発明においては、その他、必要に応じて、可塑剤、充填剤、ラジカル禁止剤、接着性改良剤、難燃剤、整泡剤、酸あるいは塩基性化合物(不明確なため削除)、保存安定改良剤、オゾン劣化防止剤、増粘剤、カップリング剤、導電性付与剤、帯電防止剤、放射線遮断剤、核剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、金属不活性化剤、物性調整剤等を、本発明の目的や効果を損なわない範囲において添加することができる。
【0056】
変成シリコーン樹脂発泡体の製造方法は、硬化剤(A)、重合体(B)、ヒドロシリル化触媒(C)、重炭酸塩と有機酸または有機酸塩からなる化学発泡剤(D)を含む発泡性液状樹脂組成物を発泡すれば特に限定なく製造できる。
【0057】
発泡性液状樹脂組成物の製造方法としては、硬化剤(A)、重合体(B)、ヒドロシリル化触媒(C)、重炭酸塩と有機酸または有機酸塩からなる化学発泡剤(D)の成分を混合すれば特に限定はないが、発泡性液状樹脂組成物中の各成分は良く混合された状態であることが好ましい。
【0058】
各成分の混合順序は特に限定はないが、重合体(B)、ヒドロシリル化触媒(C)および重炭酸塩と有機酸または有機酸塩からなる化学発泡剤(D)を混合した後、硬化剤(A)を混合して発泡性液状樹脂組成物を製造することが好ましい。
【0059】
発泡性液状樹脂組成は、型枠に注入する、或いは、ベルトコンベア上の基材に広げる、垂らす、等した後、あるいは押出機で発泡性液状樹脂組成物を押し出しと同時あるいは押し出し後すぐに発泡させることができる。なかでも型枠、或いは、ベルトコンベア
を用いて発泡させることが好ましい。発泡させる際には、用いる化学発泡剤(D)が、硬化剤(A)および重合体(B)の硬化反応(ヒドロシリル化反応)が適切に進行する温度領域で分解することが好ましい。
【0060】
その温度としては40℃以上150℃以下が、さらには50℃以上140℃以下、特には55℃以上130℃以下が好ましい。この温度で発泡させることで、硬化と発泡が進行し、好ましい本発明の変成シリコーン樹脂発泡体が得られる。この温度に保持する時間(加熱時間)は特に制約はないが、5分以上3時間以下、さらには30分以上2時間以下、特には40分以上90分以下の温度に保持することにより好ましい本発明の変成シリコーン樹脂発泡体が得られる。
【0061】
さらに、得られた変成シリコーン樹脂発泡体は、加熱養生を行うことが、圧縮残留ひずみを低減させることができる傾向があるため、好ましい。加熱養生の条件としては、特に限定するものではないが、40℃以上200℃以下で、10分以上72時間以下の条件で加熱養生を行うことが、圧縮残留ひずみが減少するため好ましい。
【0062】
本発明の変成シリコーン樹脂発泡体の密度は300kg/m以下であることが好ましく、より好ましくは270kg/m以下さらには250kg/m以下、特には230kg/m以下がより好ましい。密度が当該範囲であると、例えば、寝具やクッション等として製品化した場合、比較的軽量であり日常的な持ち運びが楽になるものと想定される。
【0063】
発泡体の密度の下限は、特に限定するものではないが、強いて好ましい値を例示すれば、25kg/m以上であることが好ましく、より好ましくは30kg/m以上さらには50kg/m以上、特には70kg/m以上が好ましい。密度が小さすぎる場合は、寝具やクッション等として使用する際、圧縮により底付きする場合がある。
【0064】
本発明の変成シリコーン樹脂発泡体は、有害な副生物の発生が懸念される物質を含まず、柔軟性が高く触感が良いので、枕、マットレス等の寝具や各種クッション材として好適に使用することができる。柔軟性は硬度計により測定することが出来る。
【0065】
本発明の変成シリコーン樹脂軟質発泡体は、25℃における豆腐用硬度計((株)大場計器製作所製)での硬さが0.70N以下であることが好ましく、より好ましくは0.60以下、さらには0.50以下、特には0.45以下であることが好ましい。当該範囲であれば、柔軟な触感であるといえる。
【0066】
変成シリコーン樹脂発泡体を寝具して使用する場合は、そのまま、あるいは発泡成形時に形成される表皮層を切除したり、適当な形状に切り出したり、打ち抜いたりしたものを使用することができる。あるいは、柔軟性が高く触感が良い特徴を生かす範囲であれば、未発泡体であるプラスチック、発泡倍率の異なる変成シリコーン樹脂発泡体、フィルム、布、不織布、紙、繊維等の素材と一体成形して用いても良く、変成シリコーン樹脂発泡体の表面に綿、アクリル繊維、毛、ポリエステル繊維等でできた織布や不織布を、張り合わす、縫合する等して組み合わせて使用しても良い。
【実施例】
【0067】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例、及び比較例中の測定、評価は、次の条件・方法により行った。なお、特に断りがない場合、実施例および比較例での「部」および「%」は、「重量部」および「重量%」を示す。
【0068】
<発泡体の密度>
得られた変成シリコーン樹脂発泡体から30mm角程度の立方体を切り出し、3辺のサイズを測定して体積(m)を算出し、測定した重さ(kg)から除することにより、密度を算出した。
【0069】
<触感>
得られた変成シリコーン樹脂発泡体を掌で圧縮した際の触感を、以下の基準で評価した。
○:やわらかくてさわり心地がよく、さらに、指で底づき感を感じるまで押して、横にずらした際に、低い力で横ずり変形ができる。ゲル素材と同程度。
△:指で底づき感を感じるまで押して、横にずらした際に、強い力だと横ずり変形ができる。
×:指で底づき感を感じるまで押して、横にずらした際に、強い力でも横ずり変形ができない。
【0070】
<柔軟性>
得られた変成シリコーン樹脂発泡体を30mm角程度の立方体を切り出し、25℃で3時間養生した後、豆腐用硬度計[(株)大場計器製作所製]により評価した。
【0071】
(実施例1〜5)、(比較例1、2)
1Lディスポカップ中で重合体(B)[アルケニル基末端ポリプロピレンオキシド系重合体、(株)カネカ製、ACX022、数平均分子量:20000、1分子あたりの平均アリル基数:2]100部に対して、耐光性安定剤としてヒンダードフェノール系酸化防止剤[Irganox245、チバ・ジャパン(株)製]とヒンダードアミン系光安定剤[TINUVIN123、チバ・ジャパン(株)製]、紫外線吸収剤[TINUVIN400、チバ・ジャパン(株)製]をそれぞれ1.0部、表1に示す種類および部数の化学発泡剤(D)[炭酸水素ナトリウム:永和化成製、FE−507、クエン酸:永和化成製、セルボンSC−C]を添加し、十分に混合した。
【0072】
その後、貯蔵安定性改良剤として2−メチル−3−ブチン−2−オール[和光純薬工業(株)製]を0.02部、触媒(C)としてPt−1,3−ジビニル−1,1,3,3,−テトラメチルジシロキサン錯体(3重量%イソプロパノール溶液、エヌ・イー・ケムキャット(株)製、PT−VTSC IPA3.0)を0.02部添加して十分に混合し、さらに、硬化剤(A)としてメチルハイドロジェンシリコーンオイル[信越化学(株)製、KF−99、数平均分子量:3000、1分子あたりの平均ヒドロシリル基数:50]を12部添加してすばやく混合した。得られた混合物を型枠(長さ20cm×幅20cm×高さ5cm)に注入し、100℃に設定したオーブンで60分加熱硬化し、変成シリコーン樹脂軟質発泡体を得た。評価結果を表1に示す。
【0073】
(比較例3)
化学発泡剤に代えて活性水素化合物としてエタノール[和光純薬(株)製]7.7部を用い、触媒(C)の量を0.03部とし、40℃に設定したオーブンで60分加熱硬化した他は実施例1と同様に行い、変成シリコーン樹脂軟質発泡体を得た。評価結果を表1に示す。
【0074】
【表1】

【0075】
表1より、重炭酸塩と有機酸または有機酸塩からなる化学発泡剤を発泡剤として使用することにより、水素のような可燃性ガスの発生がなくとも、低密度で優れた触感と柔軟性を有する発泡体を得られることが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子鎖中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する硬化剤(A)、分子鎖中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、主鎖を構成する繰り返し単位がオキシアルキレン系単位からなる重合体(B)、ヒドロシリル化触媒(C)および重炭酸塩と有機酸または有機酸塩からなる化学発泡剤(D)を含む発泡性液状樹脂組成物を硬化してなる、変成シリコーン樹脂発泡体。
【請求項2】
重合体(B)が、数平均分子量15000以上50000以下であることを特徴とする、請求項1に記載の変成シリコーン樹脂発泡体。
【請求項3】
重合体(B)の主鎖を構成する繰り返し単位がプロピレンオキシドである、請求項1または2に記載の変成シリコーン樹脂発泡体。
【請求項4】
密度が30kg/m以上300kg/m以下である、請求項1〜3の何れか一項に記載の変成シリコーン樹脂発泡体。
【請求項5】
分子鎖中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する硬化剤(A)、分子鎖中に少なくとも1個のアルケニル基を有し、主鎖を構成する繰り返し単位がオキシアルキレン系単位からなる重合体(B)、ヒドロシリル化触媒(C)および重炭酸塩と有機酸または有機酸塩からなる化学発泡剤(D)を含む発泡性液状樹脂組成物を発泡させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の変成シリコーン樹脂発泡体の製造方法。
【請求項6】
発泡性液状樹脂組成物を40℃以上150℃以下の温度で発泡させることを特徴とする請求項5記載の変成シリコーン樹脂発泡体の製造方法。

【公開番号】特開2012−57066(P2012−57066A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202338(P2010−202338)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】