説明

変更可能な透過性の程度をもつ材料によるバルブ

本発明は、第1の領域6から第2の領域7への粒子の通行を制御するバルブ2に関する。バルブ2は、変更可能な透過性の程度をもつバルブ材料4と、バルブ材料4を含むバルブ領域16と、を有し、バルブ領域16及びバルブ材料4は、粒子が、バルブ2を通過して第1の領域6から第2の領域7に移動される場合、粒子がバルブ材料4を透過しなければならないように構成される。バルブ2の開く程度は、例えばバルブ材料4の温度を変更することによって、バルブ材料4の透過性の程度を変更することによって、容易に制御されることができる。更に、バルブ材料4を透過することによって、粒子は、粒子を含む流体のような他の要素から分離されることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の領域から第2の領域への粒子の通行を制御するバルブ及び該バルブを有するマルチ領域装置に関する。本発明は更に、バルブを製造する方法及びマルチ領域装置を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第6,679,729B1号公報は、流体ガイド構造の流体連絡チャネル内の流体フローの状態を切り替えるように適応された流体バルブを開示している。二相バルブ素子の加熱は、高い粘性状態から低い粘性状態への二相バルブ素子の状態の変化を生じさせる。バルブが閉じている場合、二相バルブ素子は高い粘性状態にあり、流体連絡チャネルをふさぐ。バルブを開くために、流体連絡チャネルをふさぐ二相バルブ素子は、二相バルブ素子が低い粘性状態である間に、流体に対する圧力の印加によって流体連絡チャネルの膨張された部分に押し込まれることができ、それにより流体通信チャネルのふさがりを除く。バルブを閉じるために、二相バルブ素子は、二相バルブ素子が低い粘性状態である間に、ポンプ入口でソースチャンバに入るポンプ流体を使用することによって、バルブ素子ソースチャンバから流体連絡チャネルに押し入れられることができ、ここで、流体連絡チャネルに押し入れられる二相バルブ素子は、高い粘性状態に切り替えられ、流体連絡チャネルをふさぐ。従って、二相バルブ素子の粘性状態を制御し、流体連絡チャネルから二相バルブ素子を押し出し、二相バルブ素子を流体連絡チャネルに押し入れることにより、バルブを開閉するために、相対的に複雑な構造が必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、より少ない技術的な複雑さをもつ構造によって、第1の領域から第2の領域への粒子の通行を制御することを可能にするバルブを提供することである。本発明の他の目的は、バルブを有する対応するマルチ領域装置、並びにバルブ及びマルチ領域装置を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の見地において、第1の領域から第2の領域への粒子の通行を制御するバルブであって、変更可能な透過性の程度をもつバルブ材料及びバルブ材料を含むバルブ領域を有し、バルブ領域及びバルブ材料は、粒子がバルブを通過して第1の領域から第2の領域へ移動される場合に、粒子がバルブ材料を透過しなければならないように構成される、バルブが提示される。
【0005】
バルブ材料の透過性の程度が変更可能であり、バルブ材料は、粒子がバルブを通過して第1の領域から第2の領域へ移動される場合に粒子がバルブ材料を透過しなければならないように、構成されるので、バルブの開口の程度は、バルブ材料の透過性の程度を変更することによって、容易に制御されることができる。
【0006】
透過性の程度は、バルブ制御ユニットによって容易に制御されることができ、バルブ制御ユニットは、所望の透過性の程度が達成されるように、バルブ材料を制御する。他の制御ユニット及び例えばバルブを開閉するために、連絡チャネルからバルブ素子を押し出し又は連絡チャネルにバルブ素子を押し込む圧力手段を提供する必要がない。これは、技術的により少ない複雑さをもつバルブを提供することを可能にする。
【0007】
更に、第1の領域に粒子を含む流体が存在する場合、a)粒子が第1の領域から第2の領域に移動されることを可能にするように、粒子がバルブ材料を透過することができるように、及びb)流体が、実質的にバルブ材料を透過することができないように、バルブ材料の透過性の程度が制御されることができる。これは、第1の領域に存在する流体から粒子を分離することを可能にする。
【0008】
第1のチャンバでありうる第1の領域及び第2のチャンバでありうる第2の領域は、粒子がバルブ領域を介して第1の領域から第2の領域へ移動されることができるように、バルブ領域によって接続される。バルブ材料は、好適には、バルブ領域内に位置し、従って、粒子が第1の領域から第2の領域に移動されるためにバルブを通過する場合、粒子は、バルブ材料を透過しなければならない。
【0009】
バルブ材料は、好適には、磁性粒子がバルブ材料を透過することを可能にするように適応される。バルブ材料の透過性の程度が、磁性粒子がバルブ材料を透過することができるように制御される場合、磁性粒子は、好適には、磁性粒子をバルブ材料に通過させる磁界によって駆動される。第1の領域において、磁性粒子が、好適には、流体中に供給されており、その場合、磁性粒子は、バルブを通過することによって、該流体から分離される。
【0010】
透過性の程度は、好適には、好適には3nm乃至10000nm、更に好適には10nm乃至5000nm、一層好適には50nm乃至3000nm、の直径を有する粒子に関して、変更可能である。
【0011】
更に好適には、バルブは、バルブ材料の透過性の程度を制御するバルブ制御ユニットをも有する。
【0012】
更に好適には、バルブ制御ユニットは、透過性の程度を制御するために、バルブ材料の相及び粘性の少なくとも1つを制御するように構成される。
【0013】
例えば、バルブ制御ユニットは、固体状態から流体状態へバルブ材料の相を変化させるように構成されることができ、この場合、透過性の程度は、バルブ材料を固体状態から流体状態に変えることによって増大される。同様に、バルブ制御ユニットが、バルブ材料の状態を流体状態から固体状態に変える場合、透過性の程度が低下される。他の実施形態において、バルブ制御ユニット及びバルブ材料は、バルブ材料の透過性の程度を増大させるために粘性を高い粘性から低い粘性に変更し、透過性の程度を低下させるために粘性を低い粘性から高い粘性に変更するように、構成されることができる。バルブ材料が、粘弾性的特性を有する場合、バルブ制御ユニット及びバルブ材料は、バルブ材料の粘弾性的特性が変化されることにより、バルブ材料の粘性を増大させ又は低下させて、透過性の程度を低下させ又は増大させるように、構成されることができる。
【0014】
バルブ材料は、相変化材料及び/又は粘性変化材料であるので、バルブ材料は、例えば保管中のような大部分の時間、安定した非透過可能な状態に保たれることができ、好適には、粒子の移動が必要なときにのみ透過可能な状態に変えられる。移動は、その透過可能な状態のバルブを、流体の(生物)化学組成に短い時間だけ暴露する迅速なプロセスでありうる。従って、(生物)化学組成が、バルブ材料の特性を変更するとともに、バルブ材料の安定性又は再現性を変える能力を有する場合、流体の(生物)化学組成は、バルブ材料を変化させるために、非常に短い時間しか要しない。バルブ材料が透過可能である状態とバルブ材料が透過可能でない状態との間の迅速な切り替えは、多様の種類の(生物)化学組成を有する、特に多様な種類の(生物)化学流体組成を有するバルブを使用することを可能にし、バルブの良好な安定性及び再現性を提供する。バルブ材料を変化させることが可能な企図される(生物)化学組成は、界面活性剤、塩類、酵素等である。
【0015】
バルブ材料及びバルブ制御ユニットは、好適には、透過性の程度が、粒子がバルブ材料を透過することができない非透過可能な状態とバルブ材料が透過可能である透過可能な状態との間で制御されるように、構成される。こうして、バルブ制御ユニット及びバルブ材料は、好適には、バルブ材料が非透過可能な状態と透過可能な状態との間で切り替え可能であるように、構成される。
【0016】
更に好適には、バルブ材料及びバルブ制御ユニットは、バルブ材料が、透過性の程度が低減される固体状態と透過性の程度が増大される液体状態との間で切り替え可能であるように、構成される。
【0017】
バルブ材料は、一例において、保管温度以下で、特に約20°又はそれ以下の室温で、固体状態である。
【0018】
更に好適には、バルブ材料は、バルブ材料の透過性の程度が温度依存であるように適応される。これは、バルブ材料の温度を制御することによって容易にバルブ材料の透過性の程度を制御することを可能にする。バルブ材料の温度は、好適には、バルブ制御ユニットによって制御される。
【0019】
バルブ材料の温度は、電気加熱素子を使用することによって及び好適には冷却素子を使用することによって、制御されることができる。バルブ材料の温度は更に、バルブ材料を加熱するために、バルブ材料によって吸収される光をバルブ材料へ向けることによって、制御されることができる。バルブ材料は、光の吸収を増大させるために、カーボンブラックのように黒色色素を含むことができる。バルブ材料を加熱するための光源として、レーザ又は非レーザ光源が、使用されることができる。
【0020】
バルブ材料は、好適には、溶解可能である。バルブ材料は、好適には、パラフィン又はポリエチレングリコールのようなワックスである。好適なパラフィンワックスは、25℃乃至50℃、44℃乃至46℃、53℃乃至57℃、58℃乃至62℃、又は70℃乃至80℃である融解点を有する。好適なパラフィンワックスは、Sigma-Aldrich社から入手可能なパラフィンワックスである。0℃乃至100℃の融解点が明示できる。
【0021】
更に好適には、バルブ材料は疎水性である。
【0022】
バルブ材料が疎水性である場合、バルブ材料が水性流体と混合する可能性が、低減される。バルブが、水性流体と共に使用されるように適応される場合、これは、バルブ材料及びゆえにバルブの寿命を増大させる。
【0023】
バルブ制御ユニットは、他のユニットから独立して、バルブ材料の透過性の程度を制御するように構成される制御ユニットでありえ、又はバルブ制御ユニットは、他のユニットと協働して、透過性の程度を制御するように構成されることができる。例えば、バルブは、バルブ材料を加熱するための加熱素子を含むことができ、この場合、加熱素子を制御するための制御ユニットは、バルブ材料の透過性の程度を制御するための加熱素子に接続可能である外部ユニットでありうる。
【0024】
バルブ制御ユニットは更に、バルブに組み込まれない外部ユニットでありうる。例えば、バルブを含むマルチ領域装置は、外部ホルダに導入されることができ、この場合、この外部ホルダは、加熱素子と、バルブ材料の透過性の程度を制御するバルブ制御ユニットを形成する加熱素子制御ユニットと、を有する。この外部ユニットは更に、バルブを通り抜けるように粒子を駆動させるための及び/又は粒子を解析するための機能を有することができる。
【0025】
更に好適には、バルブ材料は親水性である。
【0026】
バルブ材料が親水性である場合、バルブ材料が、疎水性流体、特に油性流体と混合する可能性が低減される。バルブが、疎水性流体、特に油性流体と共に使用されるように適応される場合、これは、バルブ材料及びゆえにバルブの寿命時間を増大させる。
【0027】
粒子がバルブ材料を透過する状態では、バルブ材料は、具体例として、100mN/mより低い、より好適には72mN/mより低い、より好適には50mN/mより低い、より好適には25mN/mより低い、及びより好適には10mN/mより低い、水に対する界面張力を有する。一実施形態において、バルブ材料が、粒子にとって透過可能である状態である場合、水に対する界面張力は、60mN/mである。水に対する界面張力がこのような低い値を有する場合、第1の領域からバルブ材料を通り抜けて第2の領域に粒子を移動させるために、小さい駆動力のみが必要とされる。
【0028】
更に、一例において、水に対する界面張力は、1mN/mより大きい。一実施形態において、バルブ材料は、1.52mN/mの水に対する界面張力を有する。
【0029】
更に好適には、バルブ材料は不活性である。バルブ材料は、好適には、化学的不活性であるので、それは、バルブ材料と接触する、特にバルブ材料を透過する要素に対して、実質的に化学的不活性であり、すなわち、バルブ材料は、水、磁性粒子等の流体でありうるこれらの要素と実質的に反応しない。これは、バルブ材料及びゆえにバルブの長い寿命をもたらす。
【0030】
特に、バルブ材料は、好適には、水に対して不混和性であり、不活性である。従って、バルブは、親水性領域及び疎水性領域を提供することによって、容易に製造されることができ、水及びバルブ材料が、これらの領域に適用される。水は、バルブ材料が実質的に疎水性領域に位置することを可能にするように、親水性領域にのみ実質的に配置される。従って、バルブは、疎水性領域及び親水性領域を提供し、水及び流体状態のバルブ材料を親水性領域及び疎水性領域にそれぞれ適用し、バルブ材料が固体になるようにバルブ材料の粘性を変化させることによって、容易に製造されることができる。バルブ材料が固体になった後、水は除去され、第1及び第2の領域並びにバルブ制御ユニットと共にバルブを形成するバルブ材料は残る。
【0031】
好適には、親水性領域及び疎水性の領域を提供することによってバルブを製造するために、水及びバルブ材料が、これらの領域に適用されるが、まず、水が適用され、次いで、流体、特に液体のバルブ材料が適用される。
【0032】
本発明の他の見地において、マルチ領域装置であって、
−第1の領域及び第2の領域と、
−請求項1に記載のバルブと、を有し、バルブが、第1の領域から第2の領域への粒子の通行を制御するように、第1の領域と第2の領域との間に配置される、マルチ領域装置が提供される。
【0033】
マルチ領域装置は、好適には、マルチチャンバ診断装置である。
【0034】
マルチ領域装置は、好適には、例えば核酸解析、タンパク質解析又は細胞解析のための試料調製装置である。例えば、装置において、細胞は溶解されることができ、DNAは、それぞれ異なるチャンバ内での異なる洗浄ステップによって精製されることができる。これらの洗浄ステップは、例えば粒子がバルブ材料を透過することを可能にするが、流体又は他の粒子は、バルブ材料を透過することを可能にされず、それによって、特定の粒子を流体から又は他の粒子から分離することによって、実施されることができる。
【0035】
粒子は、任意の力によってバルブ材料を通り抜けるように駆動されることができる。例えば、粒子は、磁気力、電気力、毛細血管力等によって、バルブ材料を通り抜けるように駆動されることができる。好適には、粒子は、磁気駆動ユニットを使用することによってバルブ材料を通り抜けるように強いられる磁性粒子であり、磁気駆動ユニットは、バルブ材料を通り抜けるように磁性粒子を駆動するための磁気力を生成する磁界生成ユニットであり又は磁界生成ユニットを有する。磁界生成ユニットは、例えば永久磁石又は電子磁石のような磁石又は電流ワイヤである。
【0036】
好適には、第1の領域及び第2の領域が、親水性表面を有する。
【0037】
更に好適には、請求項10に記載のマルチ領域装置は、第1及び第2の領域を規定する親水性領域をもつ表面を具える層を有し、バルブ材料を含むバルブ領域が、親水性領域の間に位置する。
【0038】
層は、好適には、第1及び第2の領域を規定する親水性領域及び該親水性領域の間に位置する疎水性領域をもつ表面を具えるガラス又はプラスチック基板のような基板であり、疎水性領域は、バルブ材料を含むバルブ領域である。親水性領域と、好適にはバルブ領域である疎水性領域とをもつ表面を具える層は、好適には、筐体の一部であり、層上の第1の親水性領域が、第1のチャンバを規定し、層上の第2の親水性領域が、第2のチャンバを規定し、疎水性領域が、バルブ材料を含むバルブ領域を規定する。
【0039】
本発明の他の見地において、粒子駆動装置であって、粒子駆動装置は、請求項9に記載のマルチ領域装置を受け入れるためのマルチ領域装置受け入れ領域を有し、マルチ領域装置が、マルチ領域装置受け入れ装置内に位置する場合、粒子駆動装置は、バルブを通じて第1の領域から第2の領域へ粒子を移動させるために、第1の領域に位置する粒子を、第2の領域の方向へ動かすように駆動するように構成される。
【0040】
これは、使い捨ての可能な装置としてマルチ領域装置を提供し、再使用可能な装置として粒子駆動装置を提供することを可能にする。粒子駆動装置は、流体及び/又は粒子を解析するユニットのような他の機能を有することができる。
【0041】
好適には、粒子駆動装置は更に、バルブの透過性の程度を制御するためのバルブ制御ユニットを有する。例えば、粒子駆動装置は、バルブ材料の温度を変化させるための加熱素子と、バルブ材料の温度を制御するための加熱素子制御ユニットとを有する。粒子駆動装置は、バルブ材料の近傍の温度を検知する温度センサを更に有することができ、従って、前記温度は、測定された温度に依存して加熱素子を制御することによって、制御されることができる。加熱素子、加熱素子制御ユニット及び好適には温度センサは、バルブ制御ユニットを形成する。
【0042】
本発明の他の見地において、第1の領域から第2の領域への粒子の通行を制御するバルブを製造する方法であって、
−変更可能な透過性の程度を有するバルブ材料を提供するステップと、
−バルブ領域を提供するステップと、
−バルブ領域にバルブ材料を配置し、粒子が、第1の領域から第2の領域に移動されるためにバルブを通過する場合に、粒子がバルブ材料を透過しなければならないように、バルブ領域及びバルブ材料を適応させるステップと、
を含む方法が提示される。
【0043】
本発明の他の見地において、マルチ領域装置を製造する方法であって、
−第1の領域及び第2の領域を提供するステップと、
−請求項1に記載のバルブを提供するステップと、
−第1の領域から第2の領域への粒子の通行を制御するために、第1の領域と第2の領域との間にバルブを配置するステップと、
を含む方法が提示される。
【0044】
更に好適には、第1の領域及び第2の領域を提供するステップと、第1の領域と第2の領域との間にバルブを配置するステップが、
−その表面上に親水性領域及び疎水性領域を含む第1の層を提供し、
−水が親水性領域に配置され、バルブ材料が疎水性領域に配置されるように、表面上に水及びバルブ材料を提供する、ことによって実施される。
【0045】
他の例において、製造方法であって、少なくとも1つの孔が第1の層又は第2の層に設けられ、バルブ材料が、孔を通じてバルブに適用される製造方法が請求項に示される。
【0046】
他の例において、製造方法であって、粒子の移動方向に垂直な少なくとも1つのチャネルが提供され、該チャネルの端部に孔が配置され、チャネルが移動方向と交差し、粒子が、毛管力によってチャネルを通じて移動される製造方法が請求項に示される。
【0047】
上述の方法は双方とも、特に、設けられた孔を通じてバルブにバルブ材料を充填することによって、少ない複雑さをもつ製造法を提供する。
【0048】
請求項1に記載のバルブ、請求項6に記載のマルチ領域装置、請求項8に記載の粒子駆動装置、請求項9に記載のバルブを製造する方法及び請求項10に記載のマルチ領域装置を製造する方法は、従属請求項に規定される同様の及び/又は同一の好適な実施形態を有することが理解されるべきである。
【0049】
本発明の好適な実施形態は更に、従属請求項と個々の独立請求項との任意の組み合わせでありうることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】マルチ領域装置の一実施形態を概略的に及び例示的に示す図。
【図2】マルチ領域装置が導入された粒子駆動装置の実施形態を概略的に及び例示的に示す図。
【図3】マルチ領域装置の一実施形態を概略的に及び例示的に示す上面図。
【図4】磁性粒子及び流体を含むマルチ領域装置の一実施形態を概略的に及び例示的に示す上面図。
【図5】磁性粒子がバルブのバルブ材料を通り抜けるようにするための磁気駆動手段の実施形態を概略的に及び例示的に示す図。
【図6】磁性粒子がバルブのバルブ材料を通り抜けるようにするための磁気駆動手段の実施形態を概略的に及び例示的に示す図。
【図7】磁性粒子がバルブのバルブ材料を通り抜けるようにするための磁気駆動手段の実施形態を概略的に及び例示的に示す図。
【図8】磁性粒子がバルブのバルブ材料を通り抜けるようにするための磁気駆動手段の実施形態を概略的に及び例示的に示す図。
【図9】マルチ領域装置の親水性領域及び疎水性領域の異なる分布を概略的に及び例示的に示す図。
【図10】マルチ領域装置の疎水性領域及び親水性領域並びに磁気駆動手段を概略的に及び例示的に示す展開図。
【図11】バルブを製造する方法を例示的に示すフローチャート。
【図12】マルチ領域装置を製造する方法を例示的に示すフローチャート。
【図13】孔を具備するマルチ領域装置の層の上面図。
【図14】図13の層上に適用される両面接着テープの上面図。
【図15】第1の領域及び第2の領域を有するバルブ及び図13、図14に記載の孔を通じてこれらの領域の間に適用されたバルブ材料の側面図。
【図16】図17、図18と共に、図13−図15に記載のマルチ領域装置及びバルブ材料を通り抜けて第1の領域から第2の領域へ移動される粒子の集合を概略的に示す上面図。
【図17】図16、図18と共に、図13−図15に記載のマルチ領域装置及びバルブ材料を通り抜けて第1の領域から第2の領域へ移動される粒子の集合を概略的に示す上面図。
【図18】図16、図17と共に、図13−図15に記載のマルチ領域装置及びバルブ材料を通り抜けて第1の領域から第2の領域に移動される粒子の集合を概略的に示す上面図。
【図19】層の最上部に孔を具備するマルチ領域装置の代替層を概略的に示す上面図。
【図20】図19の層上に適用される代替の両面接着テープを示す上面図。
【図21】第1の領域及び第2の領域を有するバルブ及び図19−図20に記載の孔を通じてこれらの領域の間に適用されるバルブ材料の側面図。
【図22】図23、図24と共に、図19−図21に記載のマルチ領域装置及びバルブ材料を通り抜けて第1の領域から第2の領域に移動される粒子の集合を示す概略的な上面図。
【図23】図22、図24と共に、図19−図21に記載のマルチ領域装置及びバルブ材料を通り抜けて第1の領域から第2の領域に移動される粒子の集合を示す概略的な上面図。
【図24】図22、図23と共に、図19−図21に記載のマルチ領域装置及びバルブ材料を通り抜けて第1の領域から第2の領域に移動される粒子の集合を示す概略的な上面図。
【図25】精製プロシージャにおける、本発明の例のバルブのチャンバ内の蛍光トレーサ染料の濃度に関するヒストグラム。
【図26】結合バッファからの特定のDNAのコピーの特定の量の精製の比較に関するヒストグラム。
【発明を実施するための形態】
【0051】
図1は、第1の領域6及び第2の領域7を有するマルチ領域装置1の一実施形態を概略的に及び例示的に示している。バルブ2が、第1の領域6から第2の領域7への粒子の通行を制御するために、第1の領域6と第2の領域7との間に配置されている。マルチ領域装置は、好適には、マルチチャンバ診断装置である。
【0052】
マルチ領域装置1は、ガラス又はプラスチック基板である第1の層11と、同じくガラス又はプラスチック基板である対向する第2の層12とを有する。マルチ領域装置は更に、マルチ領域装置1内に流体を閉じ込めるための壁を形成する閉じ込め素子13を有する。この実施形態において、マルチ領域装置1は更に、他のバルブ3を有し、層11、12、閉じ込め素子13及びバルブ2、3は、第1の領域6、第2の領域7及び解析領域8を規定する幾つかのチャンバを形成する。
【0053】
第2の層12は、流体が第1の領域6に導入されることを可能にする入口開口26と、空気のようなガス及び/又は導入された流体がマルチ領域装置を去ることを可能にする出口開口27とを有する。
【0054】
バルブ2、3は、変更可能の透過性の程度をもつバルブ材料4、5を有し、バルブ材料4、5は、バルブ領域16、28内に配置され、従って、粒子が、第1の領域6から第2の領域7へ、又は第2の領域7から解析領域8へ移動されるために、バルブ2、3を通過する場合、粒子は、バルブ材料4、5を透過しなければならない。バルブ材料4、5の透過性の程度は、変更可能である。バルブ材料4、5は、粒子がバルブ2、3を通過して第1の領域6から第2の領域7へ又は第2の領域7から解析領域8へ移動される場合、粒子がバルブ材料4、5を透過しなければならないように、適応される。バルブ2、3の開口の程度は、バルブ材料4、5の透過性の程度を変更することによって、容易に制御されることができる。
【0055】
好適には、磁性粒子を含む流体が、入口開口26を通ってマルチ領域装置1の第1の領域6に導入される。次に、バルブ材料4及び更にバルブ材料5は、好適には、a)磁性粒子が第1の領域6から第2の領域7へ及び第2の領域7から解析領域8へそれぞれ移動されることを可能にするために、磁性粒子が、バルブ材料を透過することができるように、及びb)流体がバルブ材料4又はバルブ材料5を透過することが実質的に不可能であるように、適応され制御される。これは、磁性粒子を、第1の領域6に存在する流体から分離することを可能にする。
【0056】
磁性粒子がバルブ材料4、5を透過することができるように、バルブ材料4、5の透過性の程度が制御される場合、磁性粒子は、好適には、磁性粒子がバルブ材料4、5を通り抜けるようにさせる磁界によって駆動される。磁界による磁性粒子の駆動は、更に以下に詳しく記述される。
【0057】
バルブ材料4、5の透過性の程度は、好適には3nm乃至10000nm、更に好適には10nm乃至5000nm、一層好適には50nm乃至3000nm、の直径を有する粒子に対して変化可能である。
【0058】
バルブ2、3は更に、バルブ材料4、5の透過性の程度を制御するためのバルブ制御ユニットを有する。バルブ制御ユニットは、マルチ領域装置に完全に組み込まれることができ、又は粒子駆動装置のような別個の装置に組み込まれることができる。この場合、他の外部装置及びマルチ領域装置は、透過性の程度を制御するために協働する。更に、バルブ制御ユニットの第1の部分が、マルチ領域装置に組み込まれることができ、バルブ制御ユニットの他の部分が、他の外部装置に組み込まれることができる。バルブ制御ユニットを含む粒子駆動装置である他の外部装置は、図2に概略的に及び例示的に示されている。
【0059】
粒子駆動装置9は、マルチ領域装置を受け入れるためのマルチ領域装置受け入れ領域10を含む。図9に示される状況において、マルチ領域装置1は、粒子駆動装置9のマルチ領域装置受け入れ領域10に導入されている。粒子駆動装置9は、マルチ領域装置1がマルチ領域装置受け入れ領域10に位置する場合、第1の領域6に位置する磁性粒子を第2の領域7の方向に移動させるように駆動して、バルブ2を通じて粒子を第1の領域6から第2の領域7に移動させるように構成される。粒子駆動装置9は更に、マルチ領域装置1がマルチ領域装置受け入れユニット10に位置する場合、第2の領域7に位置する粒子を解析領域8の方向に移動させるように駆動して、バルブ3を通じて粒子を第2の領域7から解析領域8に移動させるように構成される。バルブ2を通じて第1の領域6から第2の領域7へ及びバルブ3を通じて第2の領域7から解析領域8へ磁性粒子を動かすために、粒子駆動装置9は、制御ユニット18によって制御される磁気駆動手段19を有する。磁気駆動手段19の好適な実現例は、以下に詳しく記述される。
【0060】
粒子駆動装置9は更に、バルブ材料2、3の温度を変化させるための加熱素子17、29を有する。加熱素子17、29は、制御ユニット18によって制御され、それにより、制御ユニット18及び加熱素子17、29が、バルブ制御ユニットを形成する。バルブ材料4、5の温度を制御することによって、バルブ材料4、5の相及び粘性の少なくとも1つが制御され、それによって、磁性粒子に対するバルブ材料4、5の透過性の程度を制御する。
【0061】
この実施形態において、バルブ材料4、5が、磁性粒子に対する透過性の程度が低減される固体状態と、磁性粒子に対する透過性の程度が増大される液体状態との間で切り替え可能であるように、バルブ材料4、5及びバルブ制御ユニット17、29、18が適応される。好適には、固体状態では、磁性粒子及び好適には磁性粒子が投与されうる流体は、バルブ材料4、5を透過することができず、液体状態では、磁性粒子のみが、バルブ材料4、5を透過することができ、磁性粒子が投与されうる流体は、透過することができない。
【0062】
バルブ材料4、5は、好適には、保管温度以下で、特に約20℃の室温において又はそれ以下で、固体状態である。バルブ材料4、5は、好適には溶解可能であり、好適にはパラフィン又はポリエチレングリコールのようなワックスである。
【0063】
好適には、バルブ材料4、5が液体状態である場合に水性液体がバルブ材料4、5と混合しうるリスクを最小限にするために、バルブ材料4、5は疎水性である。マルチ領域装置が、疎水性の、特に油性の、液体と共に使用されるように構成される別の実施形態では、バルブ材料が液体状態である場合にバルブ材料と疎水性の、特に油性の、液体が混合するリスクを最小限にするために、バルブ材料は、好適には、親水性材料で作られる。
【0064】
バルブ材料4、5は、好適には化学不活性であり、すなわち、バルブ材料4、5は、バルブ材料4、5と接触する、特にバルブ材料4、5を透過する、他の要素と実質的に反応しない。これは、バルブ材料4、5及びゆえにバルブ2、3の長い寿命をもたらす。
【0065】
粒子駆動装置9は更に、マルチ領域装置1の解析領域8に最終的に到達した粒子を解析する解析ユニット21を有する。解析ユニット21は、例えば、解析領域8内の磁性粒子の量又は濃度を光学的に又は磁気的に判定するように適応されうる。更に、解析ユニット21は、好適には、制御ユニット18によって制御される。
【0066】
図1を再び参照して、マルチ領域装置1は、第1及び第2の領域6、7及び解析領域8内の第1の層11上に親水性領域14をもち、バルブ領域16、28内の第1の層11上に疎水性領域15をもつ表面を更に有する。従って、第1及び第2の領域6、7及び解析領域8は、親水性領域14によって規定され、バルブ領域16、28は、疎水性領域15によって規定される。第1の層11が、これらの親水性領域及び疎水性領域14、15を含むので、及びバルブ材料が好適には、水に対して不混和性且つ不活性であるので、マルチ領域装置1内のそれぞれ異なる領域は、水及びバルブ材料4、5をこれらの領域に適用することによって、容易に製造されることができる。水は、親水性領域14にのみ実質的に配置され、バルブ材料4、5が疎水性領域15にのみ実質的に位置することを可能にする。従って、バルブ2、3は、疎水性及び親水性領域14、15を提供し、水及び流体状態のバルブ材料2、3を疎水性領域及び親水性領域14、15に適用し、バルブ材料4、5が固体になるようにバルブ材料4、5の状態を変化させることによって、容易に製造されることができる。バルブ材料4、5が固体になった後、水が除去され、第1及び第2の領域6、7と、本実施形態において更に解析領域8と、バルブ材料4、5を含むバルブ領域16、28とは残る。
【0067】
マルチ領域装置1は、好適には、コンパクト且つロバストであり、ユーザ支援されるほんの少数のステップのみが必要とされるように構成される診断装置である。好適には、ユーザは、マルチ領域装置に血液又は唾液のサンプルのようなサンプルを加えることのみを必要とし、サンプルを解析するために必要でありうるすべての他の試薬は、マルチ領域装置内にすでに存在する。マルチ領域装置は、好適には、マルチ領域装置が1度だけ使用されるような使い捨てのカートリッジであるが、粒子駆動装置は、数回、使用されることができる。
【0068】
試薬が、マルチ領域装置に存在しなければならない場合、これらの試薬は、好適には、乾燥形態で存在する。この理由は、湿潤試薬は、漏出及び乾燥のリスクをともなうので、最終的なアッセイにおいて試薬の濃度を制御することが困難であるからである。乾燥試薬は、移動せず又は漏出せず、マルチ領域装置内で非常に安定しうる。
【0069】
バルブ材料は、ガス又は液体のような流体又は固体でありうる。20℃の室温のような保管温度以下で固体であって、粒子がバルブ材料を透過することができない状態で固体であるバルブ材料は、このようなバルブ材料が一般に蒸発、拡散又はクリープしないので、マルチ領域装置全体が非常に安定しうるという利点を与える。更に、例えば、概して固体であって、好適には磁性粒子がバルブ材料を透過すべきである場合にのみ液体であるバルブ材料に代わって、油が使用される場合、最初に油は、疎水性領域及び親水性領域を湿潤させる。従って、油が移動される必要があるので、サンプル及び/又は試薬流体によってマルチ領域装置を充填するために圧力が必要とされる。更に、毛管力による自律的な充填は、非常に困難であり又は実現可能でない。
【0070】
バルブ材料が概して固体である場合、バルブ材料は、毛管領域、特に毛管チャネル、を規定することができ、これは、自律的な充填を可能にする毛管力によって、サンプル流体がマルチ領域内を進められることを可能にする。更に、概して固体であって、磁性粒子がバルブ材料を透過するべき場合のみ液体状態であるバルブ材料の使用は、マルチ領域装置内に保管される乾燥試薬がバルブ材料によって汚染される可能性を低減する。バルブ材料は、好適には、例えば20℃の保管温度以下で固体である材料である。特に、バルブ材料は、好適には、常に固体であって、粒子がバルブ材料を透過するべき場合のみ液体である材料である。更に、バルブ材料は、好適には、マルチ領域装置に導入されることが予定される流体に対して、特に水に対して、不活性且つ不混和性である。
【0071】
液体状態において、バルブ材料は、好適には、それぞれ異なる粘性の値を有し、例えば、バルブ材料は、高い粘性状態及び低い粘性状態になることができる。バルブ材料は、バルブ材料の現在の粘性値に関係なく、好適には水に対して不混和性且つ不活性である。バルブ材料が好適には約1000mPa・s(1000cp)の粘性を有する低い粘性状態において、バルブ材料は、一例において、約0.06N/mの、水に対する低い界面張力を有する。
【0072】
バルブ材料は、その粘弾性特性が調節されることが可能なバルブ材料でありうる。バルブ材料は、好適には、例えばマルチチャンバ診断装置であるマルチ領域装置内に位置する切り替え可能な障壁材料を提供する。駆動される磁性粒子によるバルブ材料の透過性の程度は、物理的な変化によって制御される。具体的には、すでに上述したように、バルブ材料は、好適には、パラフィンのような溶解可能な物質であり、その粘弾性特性は、バルブ材料の温度を制御することによって調節される。
【0073】
バルブ材料は、例えばSigma-Aldrich社から入手できるワックスである。バルブ材料は、好適には、40℃より高い、より好適には50℃より高い、更に好適には60℃より高い融解温度を有する。一実施形態において、バルブ材料は、例えば44−46℃又は53−57℃のレンジの融解温度を有する。特に、バルブ材料は、好適には、44−46℃のレンジの融解温度を有するパラフィンである。しかしながら、例えばマルチ領域装置内に存在しうる試薬が蒸発する温度以下であるように、又はマルチ領域装置内に存在しうる不安定蛋白質のような感受性材料が影響を受ける温度以下であるように、より低い融解温度を有するバルブ材料を使用することも可能である。一実施形態において、融解温度は、約30℃又はそれより低い。小さい融解温度を有するバルブ材料は、短い時間だけ加熱を適用することを可能にする。例えば、30℃のような小さい融解温度が、達成されなければならない場合、バルブ材料の溶解は、例えば数秒のうちに達せられることができる。従って、バルブは、非常に短い時間のうちに切り替えられることができる。
【0074】
マルチ領域装置の第1の層は、好適には、プラスチック又はガラス基板である下部部材である。一実施形態において、第1の層は、パーフルオロデシルトリエトキシシランの自己組織化単分子層(SAM)が適用される顕微鏡ガラススライドである。SAMは、親水性領域のパターンを残しつつ、酸素プラズマ処理によって部分的に除去され、親水性領域のパターンは、疎水性バックグラウンド中のアイランドのような、親水性チャンバとして考えられることができる。第2の層は、好適には、プラスチック又はガラス基板である最上部材である。一実施形態において、最上部材は、PMMAの未処理のスライドである。閉じ込め素子は、好適には、第1の層と第2の層との間に配置される両面テープによって形成される。両面テープは、好適には約100μmの厚さを有する。バルブ材料は、好適には、バルブ材料の融解温度より高い温度で適用される。すなわち、バルブ材料は、好適には、液体状態で適用され、一方、親水性チャンバは、水で充填される。特に、好適にはパラフィンが、バルブ材料として50℃で適用され、親水性チャンバが水で充填される。このようにして、バルブ材料は、親水性チャンバ周辺でのみ湿潤する。室温に冷却した後、バルブ材料は、固体になり、不透明になる。マルチ領域装置内のそれぞれ異なる領域の結果として得られる分布は、図3の上面図に概略的及び例示的に示されている。
【0075】
図3に示されるマルチ領域装置101内の異なる領域の分布は、疎水性のバルブ領域116に固体化されたバルブ材料104を含み、これは、バルブ102を形成する。それぞれの疎水性バルブ領域116の間には、親水性領域が存在し、すなわち第1の領域106、第2の領域107及び第3の領域108が存在する。これらの領域106、107及び108は、親水性チャンバを規定し、これらは、疎水性バルブ領域116のバルブ材料104によって隔てられる。
【0076】
図4は、マルチ領域装置101内の異なる領域の分布に関する上面図を概略的及び例示的に示しており、磁性ビーズの集合は、第1の領域106から第3の領域108に運ばれた。好適にはパラフィンであるバルブ材料が、好適には約50℃の温度で液相である間に、磁性粒子である磁性ビーズが運ばれた。バルブ材料が固体化した後、バルブは閉じられ、磁性ビーズは、領域を去ることができない。
【0077】
磁性ビーズは、第1の領域106から第3の領域108の方へ運ばれた。領域106は、リン酸緩衝生理食塩水バッファ(PBS)に磁性粒子である超常磁性ビーズの溶液122を含む。領域107は、コスメニルブルー(cosmenyl blue)で染色された水121を含む。領域108は、純水120及び運ばれた磁性ビーズの集合123を含む。
【0078】
加熱素子によって、特に図2に概略的に及び例示的に示される加熱素子17、29によって実施される加熱は、いくつかの方法によって適用されることができる。例えば、加熱は、電気抵抗加熱、電磁場又は磁性誘導加熱による加熱、又は光学的照射及び吸収等による加熱でありうる。加熱は、マルチ領域装置の全体に、又は非常に特定的な場所に、例えば磁性粒子がバルブ材料を通過する必要がある場所及びそのときにのみ適用されることができる。加熱は、粒子駆動装置のような外部装置によって又はマルチ領域装置に組み込まれる熱源によって、適用されることができる。組み込まれる加熱は、バルブ材料の透過性の程度の調整又は変更の空間的及び時間的解像度を改善することができる。更に、加熱は一度だけ適用されることができ、又は幾つかの加熱及び冷却サイクルが適用されることができる。
【0079】
上述した実施形態において、パラフィンが好適にはバルブ材料として使用されるが、パラフィンに代わって、任意の他の材料が使用されることができ、かかる材料の物理的な特性は、上述の磁性粒子のような粒子に対するバルブ材料の透過性の程度が調整又は変更されることができるように、調整又は変更されることができる。バルブ材料は、単一の物質又は1より多い物質の混合物でありうる。例えば、バルブ材料は、1又は複数の他の物質とパラフィンとの混合物でありうる。一実施形態において、Brij72のような表面活性剤が、水に対する界面張力を低下させるためにパラフィンに添加されることができる。更に、パラフィンのようなバルブ材料は、その密度、その表面張力、その熱容量、その光吸収等のようなその特性を調節させるために薬剤と混合されることができる。
【0080】
マルチ領域装置の領域の形状、特に親水性パターンの形状は、マルチ領域装置の毛管充填を容易にするように、及び/又はマルチ領域装置のバルブのバルブ材料を粒子が横断することを容易にするように、適応されることができる。
【0081】
バルブ材料の透過性の程度、具体的にはバルブ材料の相及び/又は粘性及び/又は粘弾性特性は、サンプル流体によるマルチ領域装置の充填の前又はマルチ領域装置がサンプル流体で充填された後、変更されることができる。
【0082】
バルブは、好適には水と不混和性であるバルブ様の構造によるチャンバの分離を必要とするマルチチャンバマイクロフルイディック装置において使用されることが好ましい。より具体的には、バルブは、核酸テスティングにおけるサンプル前処理のために、マルチチャンバマイクロフルイディック装置において好適に使用される。
【0083】
「バルブ」という語は、少なくとも第1の領域から第2の領域への磁性粒子のような粒子の移動を制御するための素子をさし、第1の領域及び第2の領域は、バルブによって隔てられている。従って、バルブは、第1の領域から第2の領域への磁性粒子のような粒子の輸送を調節する及び/又は制御する装置である。「バルブ」という語は、流体のフローを統制するための装置に限定されない。
【0084】
図5は、バルブ材料を介した第1の領域から第2の領域への磁性粒子の駆動を示している。この例において、第1の固体基板である第1の層211は、親水性領域214及び疎水性領域215をもつパターン化された表面を有する。第2の固体基板である第2の層212は、完全に疎水性の表面を有する。第1の層211上の親水性領域214の間には、バルブ材料204を含むバルブ領域が形成される。第1の層211上の親水性領域214によって規定される空間は、水性液体224のような流体サンプルで満たされ、水性液体224は、それが疎水性表面で取り囲まれるので、適当な位置に保たれる。図5の左側の流体224は、付加的に、磁性粒子223のクラウドを含む。磁気駆動手段は、この例では、図5の第1の親水性領域及び疎水性バルブ領域215の境界下に配置される永久磁石225である。磁気駆動手段の存在は、磁性粒子223を、流体サンプル224のこの領域に集まらせる。バルブ材料204が、磁性粒子223にバルブ材料204を透過させることを可能にする状態である場合、矢印50によって示される方向に磁気駆動手段を動かすことによって、磁性粒子223は、この移動に従うようにされ、ゆえに、バルブ材料204を通って移動される。
【0085】
図5に関して、マルチ領域装置は、例示的に記述されており、上部基板である上側の第2の層は、疎水性表面を有するが、別の実施形態において、第2の層は更に、第1の層と向かい合う親水性表面を有してもよい。
【0086】
図6乃至図8は、マルチ領域装置301の下に配置される磁気駆動手段のそれぞれ異なる実施形態を例示的に及び概略的に示している。マルチ領域装置301は、図5に示されるマルチ領域装置201に同様であるが、上部基板312である第2の層が、第1の層、すなわち内側の親水性表面と向き合う親水性表面を有する点で異なる。
【0087】
図6において、磁気駆動手段319は、レールのような走行機構331を有する。走行機構331は、マルチ領域装置301の第1及び第2の層に対して平行に磁石330を動かすことを可能にし、それにより磁界332を動かし、ゆえに、流体224中の磁性粒子223を動かして、磁性粒子223がバルブ材料304を通り抜けることを可能にする。
【0088】
図7は、調整される態様でオン/オフを切り替えられることができる電磁石アレイ433を有する磁気駆動手段419を概略的に及び例示的に示している。こうして、磁界は、個々の電磁石433を調整されたシーケンスで起動させ、停止させることによって移動する。スイッチ434は、スイッチング機構を表すが、これは、機械的スイッチに限定されず、トランジスタのような半導体スイッチ、論理スイッチ、又は電磁石アレイの磁界の調整された移動を可能にする当分野で知られている任意の他の装置でありうる。
【0089】
図8は、印刷回路基板536上に配置された電磁コイルのアレイ535を含む磁気駆動手段519の他の実施形態を概略的に及び例示的に示している。図8に示される以外に、電磁コイルのアレイ535は多層化されてもよい。電磁コイルは、調整された態様でオン/オフを切り替えられることができる。こうして、磁界は、個々のコイルを調整されたシーケンスで起動させ停止させることにより移動し、それにより、磁性粒子223は、第1の領域から第2の領域へバルブ材料304を通り抜けるようにされる。さらに、電磁界は、好適には、静磁界を生成する永久磁石537によって増大される。更に、永久磁石537は、電磁石と置き換えられることもできる。永久磁石537は、移動する磁界の強さを増大するためだけでなく、必要に応じて磁性粒子を磁化させるためにも使用されることができる。
【0090】
上述した実施形態において、特定の数及び形状の親水性領域及び疎水性領域、特に疎水性バルブ領域によって隔てられる親水性領域が、記述されているが、本発明は、これらの領域の特定の形状及び数に限定されない。例えば、マルチ領域装置は更に、図9に例示的に示されるように疎水性バルブ領域91によって隔てられる親水性領域90の形状及び数を更に有することができる。好適には、少なくとも1つの疎水性領域91の幅が、その隣接する親水性領域90の幅より小さい。
【0091】
図10は、第1の層611及び磁気駆動手段619を展開図で概略的に及び例示的に示している。マルチ領域装置の他の素子は、明確さの理由で図10に示されてない。サンプル流体を受け入れる親水性領域615は、バルブ材料を含む疎水性領域614によって、互いから隔てられている。磁気駆動手段619は、電磁コイルのアレイを有する印刷回路基板636を有する。 電磁コイルのアレイは、移動する磁界を生成するために、調整された態様でオン/オフを切り替えられることができる。
【0092】
図11は、第1の領域から第2の領域への粒子の移動を制御するためのバルブを製造する方法の一実施形態を示すフローチャートを例示的に示している。ステップ701において、バルブ材料が提供される。バルブ材料は、変更可能な透過性の程度を有する。ステップ702において、第1の層である基板上の領域のようなバルブ領域が提供される。ステップ703において、バルブ材料は、バルブ領域に配置され、バルブ領域及びバルブ材料は、粒子がバルブを通過して第1の領域から第2の領域へ移動される場合に、粒子がバルブ材料を透過しなければならないように適応される。
【0093】
図12は、マルチ領域装置を製造する方法の一実施形態を示すフローチャートを例示的に示している。
【0094】
ステップ801において、第1の領域及び第2の領域は、好適には、第1の層上に設けられ、第1の層は、好適には、顕微鏡ガラススライドのようなガラス又はプラスチックでできている基板である。第1の領域及び第2の領域のこの設置は、好適には、その表面上に親水性及び疎水性領域をもつ第1の層を設けることによって実施され、親水性領域が、第1及び第2の領域を規定する。親水性領域及び疎水性領域のこの設置は、好適には、第1の層上にパーフルオロデシルトリエトキシシランのSAMを適用することによって、実施される。次いで、SAMは、例えば疎水性バックグラウンド中のアイランドとして親水性領域のパターンを残しつつ、酸素プラズマ処理によって部分的に除去され、これにより、親水性及び疎水性チャンバとも考えられることができる親水性及び疎水性領域を生成する。
【0095】
ステップ802において、変更可能な透過性の程度をもつバルブ材料を有するバルブが提供され、ここで、バルブ、すなわちバルブ材料は、第1の領域から第2の領域への粒子の通行を制御するために、第1の領域と第2の領域との間に配置される。バルブ、すなわちバルブ材料のこの設置は、好適には、水が親水性領域に配置され、バルブ材料が疎水性領域に配置されるようにして、親水性領域及び疎水性領域上に水及びバルブ材料を形成することによって実施される。水及びバルブ材料のこの配置は、バルブ材料が液体状態である間に実施される。水が親水性領域に配置され、液体状態のバルブ材料が疎水性領域に配置された後、バルブ材料が固体化されることにより、疎水性領域に固体化されたバルブ材料を提供し、第1及び第2の領域を規定する親水性領域の間にバルブを形成する。
【0096】
上述した実施形態において、第1及び第2の領域及び第1及び第2の領域を隔てるバルブの特定の数が、記述されているが、本発明は、バルブの特定の数及び第1及び第2の領域の特定の数に限定されない。
【0097】
図2に関して上述した実施形態において、バルブ制御ユニットは、粒子駆動装置内に配置されているが、他の実施形態において、例えば加熱素子のようなバルブ制御ユニットの少なくとも一部は、マルチ領域装置に組み込まれることもできる。
【0098】
図2に関して上述した実施形態では、磁性駆動手段、バルブ制御ユニット及び解析ユニットが、単一の装置に組み込まれているが、別の実施形態において、これらの機能は、いくつかの装置に分散されてもよい。例えば、粒子駆動装置は、バルブ制御ユニット及び磁気駆動手段のみを含むことができ、解析ユニットは含まなくてもよい。
【0099】
上述した実施形態において、駆動力は磁気力であるが、他の実施形態において、例えば電気力、毛管力等のような他の力を使用することにより、粒子がバルブ材料を通り抜けるようにすることも可能である。
【0100】
上述の実施形態では、パーフルオロデシルトリエトキシシランの自己組織化単分子層が基板上に適用され、この適用後、自己組織化単分子層が、親水性領域及び疎水性領域のパターンを生成するために部分的に除去されるが、更に他の自己組織化単分子層も可能であり、例えばパーフルオロデシルトリクロロシランの自己組織化単分子層も可能である。更に、他の疎水性コーティングが、親水性及び疎水性領域を生成するためにパターニングされることができる。疎水性コーティングに代わって、親水性自己組織化単分子層又はコーティングが、使用されることもでき、それは、疎水性領域及び親水性領域を生成するようにパターニングされる。
【0101】
解析ユニットは、粒子によって輸送される材料に起因する信号を検出するための任意の適切なセンサでありうる。例えば、生物学的材料(例えば目標材料又はアナライト)が、磁性粒子によって輸送されてもよい。解析ユニットによって、生物学的材料は、磁性粒子上で直接に検出されることができ、又は更に標識化されて検出されることができ、又は更に処理されて検出されることができる。更なる処理の例は、生物学的材料が増幅されること、又は生物学的材料が、タグ付けされ又は標識化されること、又は材料が、溶液処理及び/又は検出のために粒子から溶剤にリリースされること、又は標識の(生物)化学的又は物理的な特性が検出を容易にするために変更されること、又は酵素過程が信号増幅のために使用されること、である。
【0102】
解析ユニットは更に、粒子の任意の特性に基づいて、センサ表面上の又は表面近傍の磁性粒子の存在及び/又は濃度を検出するための任意の適切なセンサでありうる。例えば、解析ユニットは、磁気的方法(例えば磁気抵抗、Hall、コイル)、光学的方法(例えばイメージング、蛍光、化学発光、吸収、散乱、エバネセント場技法、表面プラズマ共鳴、ラマン等)、音波検出(例えば表面音響波、バルク音響波、カンチレバー、水晶等)、電気的検出(例えば導通、インピーダンス、電流測定、レドックスサイクリング)及びこれらの組み合わせによって、粒子を検出するように構成されることができる。磁性粒子が、粒子の磁性特性に基づいて検出される場合、解析ユニットは、好適には、コイル、磁気抵抗センサ、磁気制限(magneto-restrictive)センサ、平面ホールセンサのようなホール(Hall)センサ、フラックスゲートセンサ、SQUID、磁気共鳴センサ又は別の磁気センサを有する。
【0103】
マルチ領域装置及び好適には解析ユニットは、例えば核酸又はタンパク質検出のために分子ベースのアッセイを実施するように構成されることができるが、分子ベースのアッセイに加えて、例えば細胞、ウイルス、細胞又はウイルス画分、組織抽出物等のより大きいモイエティが、検出されることもできる。検出は、マルチ領域装置のバイオセンサ表面に対して、解析ユニットのセンサ素子をスキャンすることの有無にかかわらず、行なわれることができる。測定データは、エンドポイント測定として、及び動態的に又は断続的に信号を記録することによって、得られることができる。磁性粒子は、好適には、検出されなければならない要素を標識化する標識であり、磁性粒子は、検知方法によって直接的に検出されることができ、又は粒子は、検出の前に更に処理されることもできる。更なる処理の例は、材料が粒子に加えられる又は粒子からリリースされること、又は粒子若しくは粒子上の材料の(生物)化学的又は物理的な特性が、検出を容易にするために変更されること、である。マルチ領域装置及び好適には解析ユニットは、例えば結合/非結合アッセイ、サンドイッチアッセイ、競合アッセイ、置換アッセイ、酵素アッセイ、増幅アッセイ等の、幾つかの生化学的アッセイのタイプに関して使用されることもできる。マルチ領域装置及び好適には解析ユニットは、センサ多重化(すなわち異なるセンサ及びセンサ表面の並行利用)、標識多重化(すなわち異なるタイプの標識の並行利用)及びチャンバ多重化(すなわち異なる反応チャンバの並行利用)に関して適応される。マルチ領域装置及び解析ユニットは、小さいサンプルボリュームのための迅速で、ロバストで及び容易なポイントオブケアバイオセンサとして使用されることができる。一実施形態として反応チャンバとみなされうる解析領域は、使い捨てのアイテムでありえ、すなわち、マルチ領域装置は、1又は複数の磁界生成手段及び解析ユニットのような1又は複数の検出手段を有するコンパクトなリーダと共に使用されるための使い捨てのアイテムとして使用されることができる。リーダは、例えば、上述した粒子駆動装置である。マルチ領域装置及び好適には解析ユニットは、自動化された高スループットテスティングとして使用されることができる。この場合、マルチ領域装置は、解析領域を有し、マルチ領域装置は、粒子を解析するための再使用可能なリーダに収まる。
【0104】
粒子は、好適には、3nm乃至10000nm、より好適には10nm乃至5000nm、更に好適には50nm乃至3000nmの間の直径を有する。
【0105】
以下において、2つの製作方法が、図13−図18及び図19−23に関連してそれぞれ記述される。図13は、バルブ102の一部を形成する層101の概略的な上面図を示している。ここで、バルブ102は、マルチ領域装置1に3つの孔130を有するマルチ領域装置1として設計される。層101は、例えばガラスから製造されうる。図14は、層101と同じ寸法を有し、層101に適用されるように形成される両面接着テープ111を示している。テープは、片側のみ接着性であってもよい。両面接着テープ111は、切り抜かれた幾つかの卵形の領域132−135を有し、これらの領域は、親水性材料を適用するために役立つ。領域132−135の間の円形の切り抜き部131は、層101における孔130と本質的に適合する。両面接着層111内の切り抜き部131及び領域132−135は、図14に示されるように、領域132−135と円形切り抜き部131との間の流体フローを可能にするように接続される。層101及び両面テープ111が組み立てられると、更なる製作ステップにおいて、疎水性のバルブ材料104が、層101の孔130を通じて及び両面テープ111の切り抜き部131を通じて適用される。側面図である図15は、親水性領域132、133の間にバルブ材料104を適用した後のバルブ102を示している。バルブ102は、カートリッジ(図示せず)内に供される。最上層は、図13の層101であり、図15には、1つの孔13が図示されており、バルブ材料104が孔13を通って突き出ている。例えばパラフィンのようなバルブ材料104が、加熱された液体の形態で適用される。バルブ材料104は、それがカートリッジに触れるとすぐに固体化し、これは、カートリッジ、親水性領域132、133の毛管空間にバルブ材料104が流れ込むことを防ぐ。結果として、バルブ材料104の良好に規定されたプラグが、まさにバルブ領域131に堆積される。バルブ材料104は、その迅速な固体化のため所定の位置にとどまるので、バルブ領域131が疎水性であることは本質的ではないことに注意されたい。バルブ102の特定の構造において、親水性又は疎水性領域のパターンを設計することは必要でない。この特定の構造は、バルブ材料104としてパラフィンを使用して、バルブ102の簡素な製作を可能にする。任意の加熱手段が実現可能であり、一例において、加熱は、カートリッジの外側の下部で蒸発されるAlTiの集積薄膜ヒータによって提供された。領域132、133は、両面テープ111に切り抜き部として形作られ、親水性材料が、切り抜き部に保管される。マスク(図示せず)が、1又は複数の製作ステップにおいて、親水性又は疎水性領域をもつ層101又は両面テープ111の一方をパターニングするために提供される。
【0106】
図16−図18は、バルブ102の動作モード時の上面図を概略的に示している。左側には第1の領域106が図示され、右側には、流体及び磁性粒子のリザーバとして役立つ第2の領域107が図示されている。第1の領域106と第2の領域107との間には、バルブ材料104が配置されている。以下に記述されるように、粒子は、バルブ材料104の障壁を通って、1つの第2の領域107から第1の領域106へ横断する。第1の領域107のリザーバは、PBSバッファを含み、第2の領域106のリザーバは、100mM Triton X-100を含むL6バッファを有する。最初に、磁性粒子の集合123又はクラウドが、第2の領域107に提供され、別のリザーバへ向かう第1の領域106への移動が予定される。バルブ材料104に配置されるヒータは、バルブ材料104をそれが溶解する点まで加熱する。部分的に又は完全に溶解すると、バルブ材料104は、粒子の集合123に対して透過性をもつようになるが、固体状態になる前は、バルブ材料は非通行可能なストップではない。毛管力は、図16に示されるように、集合123を、右から左へバルブ材料104の方向に引っぱる。図17において、バルブ材料104は、部分的に又は完全に溶解されており、バルブ材料は、それが溶解されると粒子に対して透過性をもつので、粒子が、バルブ材料104を通って移動し始めることができる。粒子の集合123は、バルブ材料104を通り抜けて動き、親水性領域である第1の領域106に入る。図18は、完全に横切って第1の領域106に入った集合123を示している。マルチ領域装置1は、2つの領域106、107に限定されないので、隣接する領域に沿った粒子の更なる移動が適用できる。これは、図16−図18の端部に領域106、107に続く更なるバルブ材料104の一部によって示されている。図15に見られるように、バルブ材料104の余分なボリュームが、バルブ102の上に延びており、バルブ材料4の量が、必ずしも正確に適用されるわけではないことに注意されたい。バルブ材料104が固体化した後、余分に延びるバルブ材料104は、除去されることができる。
【0107】
代替の製作方法によるバルブの異なる構造が、図19−図21及び図22−図24を参照して以下に記述される。上述の製作方法と同様に、図19に層101として示される上部基板が設けられる。層101は、層101を突き抜ける孔130を有する。更に、通気孔132が、この例ではガラスから製作される層101に設けられる。通気孔132は、領域132−135のリザーバの水性液体が、バルブ材料104によって提供されるガイド136の障壁の方へ流れることを確実にする。通気孔132は更に、気泡が磁性粒子のクラウドの通行を妨げることを回避する。上述の製作方法と同様に、両面テープ111は、卵形の領域132−135を具備し、卵形の領域132−135の間には、ガイド136が、チャネルとして部分的に形成されて配置されている。チャネルは、図19−図21に示されるように、領域132−135の開口に向かう方向に広がる。層101及び対応するサイズを有する両面テープ111は、製作ステップにおいて、図21に示される構造を構築するように付着される。バルブ材料104をバルブ102に充填するための層101の孔130は、両面接着テープ111のガイド136の一方の端部に位置付けられる。孔130を通じて適用されるバルブ材料104は、領域132−135の間に障壁を構築するように、毛管力によってガイド136に沿ってガイド136の実質的に中央に引っ張られる。上述の例の製作ステップと同様に、マスク(図示せず)が、親水性又は疎水性領域に関して、基板、層101又は両面テープ111のうちの1つをパターニングするために提供される。
【0108】
図21は、最後に、バルブ102を構築するように完全にアセンブルされているバルブ材料104の適用時の図15と同様の概略的な側面図を示している。疎水性及び親水性領域の分布は、図15の例と比較して、図21の例では異なる。エッジの領域132、133は、図15と同様に親水性であるが、領域132、133とバルブ材料104との間の2つのエリアは、疎水性である。バルブ材料104を含むバルブ102の中央の領域は、図15の例とは異なって親水性である。これは、中央の親水性パターンが、親水性領域周辺の疎水性領域132−135内に提供されていることを意味する。再び、バルブを含むカートリッジが高温である間、例えば液体パラフィンのような高温のバルブ材料104が、親水性パターンの一方の端部に孔130を通じて適用される。バルブ102を含むカートリッジが、製作中、ある時間に加熱される限り、バルブ材料は、液相又はペレットのように固相で適用されることができる。バルブ材料104の小さいボリュームのみが、短い時間に加熱され、従って、バルブ102を通る粒子の輸送は高速であり、言い換えると、バルブ102の切り替え時間は高速である。加熱時、バルブ材料104は、疎水性領域内の親水性領域に制限されたままであり、図21に示される領域から漏出しない。バルブ材料104は、毛管空間に入り、図21の中央の親水性パターンをたどってベント孔132に向かう。親水性領域上で毛管ボリュームより小さいバルブ材料104のボリュームを使用することが重要である。その理由は、この方策が、バルブ材料104がこれ以上利用できない場合に流れが止まることを確実にするからである。カートリッジ又はバルブ102を冷却した後、固体のバルブ材料104のボリュームは、中心の周りの疎水性領域内に存在する、ガイド136の中央の親水性領域の上部に存在する。記述されるバルブ102を有するカートリッジを保管する場合、保管温度は重要でなく、バルブ材料104は漏出しないので、バルブ102の機能に負の影響を与えない。
【0109】
図22−図24は、図19−図21に関して記述される第2の製作方法について、図16−図18と同様のバルブの概略的な上面図を示している。図22−図24は、図21のバルブ102の機能を上面図で示している。卵形の領域106、107は、流体を保持するためのリザーバとして設計される。領域106、107の間で、ガイド136が、領域106、107と実質的に平行に突き出ている。領域106、107とガイド136との間には、図22−図24に示すように、中間領域137が設計される。図22−図24に見られるように、バルブ材料104は、ガイド136の一方の端部に孔130を通じて適用可能であり、ガイド136全体に沿って横断する。バルブ材料104は、固体状態では、領域106、107内の流体の障壁として機能し、動作時、液体状態では、輸送手段として機能する。上述のバルブ102の動作と同様に、磁性粒子の集合123は、最初に、図22において、第1の領域106においてリザーバに収容されている。動作時、集合123の輸送が意図される場合、バルブ材料104が加熱され、その結果溶解する。溶解によって、バルブ材料104は、粒子の集合123に対して透過性をもち、集合123は、毛管力によって、又は代替として図22−図24の例のように右方向の磁気力によって引っ張られる。図23において、粒子は、中間領域137を横切ってガイド136に入っている。最後に、粒子の集合123は、図24の第2の領域107に達する。
【0110】
以下において、例示のテスト結果が、図25及び図26によって記述される。精製プロシージャにおいて蛍光トレーサの濃度を監視することによって、バルブ2、102のバルブ動作の効率が調べられた。磁性粒子及び高濃度の蛍光染料を含む溶剤が、第1の領域6、106又はチャンバに注入され、他の領域7、107又はチャンバは、純水で充填された。粒子は、第1の領域6、106から第2の領域7、107へ磁気的に移動され、各々の領域6、106、7、107において、30秒の磁気混合動作を行なった。蛍光染料の濃度は、各々の領域6、106、7、107について、オフチップで測定された。図25は、染料濃度が、マグネト毛管バルブを通る粒子の各々の横断ごとに約100倍低下されていることを示しており、これは、我々のマイクロ技術の非常に効率的な精製の能力を実証する。ここで、図25の左から右に向かって、ヒストグラムのバーは、他のバルブ2、102を通過した後の染料の濃度を表す。数字2によって示されるバーは、第1のバルブ2、102を通過した後の濃度を表し、数字3によって示されるバーは、その後第2のバルブ2、102を通過した後の濃度を表す、というように続く。更に、図25には、水という語によって示されている右側の最後のバーは、最後のチャンバ又は領域内の染料の濃度が、染料のない水バックグラウンドから識別できなかったことを示している。
【0111】
図26は、結合バッファからの特定のDNAのコピーの特定の量の精製の比較に関するヒストグラムを示している。テストは、GuSCNを含む結合バッファからの黄色ブドウ球菌(S. Aureus)プラスミドDNAの1000コピーに基づく。図26の左側のバーは、バイアルにおける標準的な手動精製の場合の約22%の精製効率を示している。図26の右側のバーは、油に基づく例示のバルブ2、102に起因する約20%の精製効率を示している。上述したバルブ2、102を用いて、手動の標準的な方法による精製に匹敵する精製が達成されることが分かった。
【0112】
開示された実施形態の他の変更は、図面、開示及び添付の請求項の検討から、請求項に記載の本発明を実施する際に当業者によって理解され実現されることができる。
【0113】
請求項において、「含む、有する」という語は、他の構成要素又はステップを除外せず、不定冠詞「a」又は「an」は、複数性を除外しない。
【0114】
単一のユニット又は装置は、請求項に列挙される幾つかのアイテムの機能を果たすことができる。特定の手段が相互に異なる従属請求項に列挙されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用されることができないことを示さない。
【0115】
請求項における任意の参照符号は、本発明の範囲を制限するものとして解釈されるべきでない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の領域から第2の領域への粒子の通行を制御するバルブであって、
変更可能な透過性の程度を有するバルブ材料と、
前記バルブ材料を含むバルブ領域と、
を有し、前記バルブ領域及び前記バルブ材料は、前記粒子が前記バルブを通過して前記第1の領域から前記第2の領域に移動される場合に、前記粒子が前記バルブ材料を透過しなければならないように構成される、バルブ。
【請求項2】
前記バルブは、前記バルブ材料の透過性の程度を制御するバルブ制御ユニットを更に有する、請求項1に記載のバルブ。
【請求項3】
前記バルブ制御ユニットは、前記透過性の程度を制御するために前記バルブ材料の相及び粘性の少なくとも1つを制御するように構成され、
前記バルブ材料及び前記バルブ制御ユニットは、前記バルブ材料が、前記透過性の程度が低減される固体状態と前記透過性の程度が増大される液体状態との間で切り替え可能であるように、構成される、請求項2に記載のバルブ。
【請求項4】
前記バルブ材料は、前記バルブ材料の前記透過性の程度が温度依存であるように適応される、請求項1に記載のバルブ。
【請求項5】
前記バルブ材料が、疎水性であり、又は代替として親水性及び/又は不活性である、請求項1に記載のバルブ。
【請求項6】
マルチ領域装置であって、
第1の領域及び第2の領域と、
請求項1に記載のバルブと、
を有し、前記バルブは、前記第1の領域から前記第2の領域への粒子の通行を制御するために前記第1の領域と前記第2の領域との間に配される、マルチ領域装置。
【請求項7】
前記第1の領域及び前記第2の領域が親水性表面を含み、
前記マルチ領域装置は、前記第1及び前記第2の領域を規定する親水性領域を有する表面をもつ層を具備し、
前記バルブ材料を含む前記バルブ領域は、前記親水性領域の間に位置する、請求項6に記載のマルチ領域装置。
【請求項8】
請求項6に規定されるマルチ領域装置を受け入れるマルチ領域装置受け入れ領域を有する粒子駆動装置であって、
前記マルチ領域装置が前記マルチ領域装置受け入れ領域に位置する場合、前記粒子駆動装置は、前記バルブを通じて前記第1の領域から前記第2の領域へ粒子を移動させるために、前記第1の領域に位置する粒子が前記第2の領域の方向に移動するように駆動する、粒子駆動装置。
【請求項9】
第1の領域から第2の領域への粒子の通行を制御するバルブを製造する方法であって、
変更可能な透過性の程度を有するバルブ材料を提供するステップと、
バルブ領域を提供するステップと、
前記バルブ領域に前記バルブ材料を配するとともに、前記粒子が前記バルブを通過して前記第1の領域から前記第2の領域に移動される場合に、前記粒子が前記バルブ材料を透過しなければならないように、前記バルブ領域及び前記バルブ材料を適応させるステップと、
を含む方法。
【請求項10】
マルチ領域装置を製造する方法であって、
第1の領域及び第2の領域を提供するステップと、
請求項1に記載のバルブを提供するステップと、
前記第1の領域から前記第2の領域への前記粒子の通行を制御するために、前記第1の領域と前記第2の領域との間に前記バルブを配するステップと、
を含む方法。
【請求項11】
前記第1の領域及び前記第2の領域を提供する前記ステップ及び前記第1の領域と前記第2の領域との間に前記バルブを配する前記ステップは、
親水性領域及び疎水性領域をその表面上に含む第1の層を提供し、
水が前記親水性領域に配され、前記バルブ材料が前記疎水性の領域に配されるように、水及び前記バルブ材料を前記表面上に提供する、
ことによって実施される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1つの孔が、前記第1の層又は前記第2の層に設けられ、前記バルブ材料が、前記孔を通じて前記バルブに適用される、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項13】
前記粒子の移動方向に対して垂直な少なくとも1つのチャネルが提供され、前記チャネルの端部に孔が配され、前記チャネルは、前記移動方向と交差し、前記粒子は、毛管力によって前記チャネルを通って移動される、請求項9又は10に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公表番号】特表2012−528995(P2012−528995A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513724(P2012−513724)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【国際出願番号】PCT/IB2010/052461
【国際公開番号】WO2010/140128
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】