説明

変異型ナトリウム利尿ペプチドB受容体、当該受容体をコードする遺伝子及びその利用

【課題】CNPの刺激なしにcGMPを生産する変異型ナトリウム利尿ペプチドB受容体、該受容体をコードする遺伝子、及び効果的に細胞内cGMPを増加させることができる薬剤並びに該受容体をコードする遺伝子がゲノム中に導入されているトランスジェニック非ヒト哺乳動物等の提供。
【解決手段】以下のいずれかのポリペプチドである変異型ナトリウム利尿ペプチドB受容体、又はその塩。(a)特定のアミノ酸配列を有するポリペプチド(b)特定のアミノ酸配列のうち1〜複数個のアミノ酸が欠失、付加、又は置換したアミノ酸配列を有し、かつCNPの刺激なしにcGMPを生産する活性を有するポリペプチド(c)特定の塩基配列からなるDNA又は特定の配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるポリペプチドであって、かつCNPの刺激なしにcGMPを生産する活性を有するポリペプチド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リガンドの刺激なしに環状グアノシン3’,5’−一リン酸を生産する変異型ナトリウム利尿ペプチドB受容体、該受容体をコードする遺伝子及びそれらの利用に関する。
【背景技術】
【0002】
環状グアノシン3’,5’−一リン酸(以下、cGMPともいう)は、種々の生物活性を有する重要なセカンドメッセンジャーである。cGMPは、血管拡張、軟骨及び骨の伸長、神経伝達等に関わっている。cGMPは、ナトリウム利尿ペプチドB受容体(以下、NPR−Bともいう)によって、細胞内でGTPから合成される。NPR−Bは、膜貫通型タンパク質であり、細胞外にC型ナトリウム利尿ペプチド(以下、CNPともいう)と結合するリガンド結合型ドメインを有し、細胞内にGTPからcGMPを合成するグアニル酸シクラーゼ活性を有する酵素領域を有する。野性型NPR−Bは、リガンドであるCNPが結合することによって活性化され、GTPからcGMPを合成する。また、cGMPは、環状ヌクレオチドホスホジエステラーゼの働きにより、加水分解されて5’−GMPとなる。
【0003】
細胞内のcGMPの減少は、種々の疾患の一次的又は二次的原因となることが知られている。cGMPの減少を抑制する方法として、従来、cGMPを分解するホスホジエステラーゼ阻害薬を用いることで細胞内cGMP濃度を高める方法が一般的であった(非特許文献1)。cGMP分解酵素の阻害薬は、勃起不全、肺高血圧、心不全等の治療薬として開発されている。しかしながら、現在開発されているcGMP分解酵素阻害薬は、阻害薬としての特異性の問題や効果持続が短いこと、全身性の副作用(低血圧等)等の問題があり、より安全に、より効果的に細胞内cGMP水準(cGMPレベル)を増加させる薬剤の開発が望まれている。
【0004】
細胞内のcGMPを増加させる物質として、可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激剤であるriociguat BAY63-2521がBayer HealthCareによって開発中である(非特許文献2)。しかしながら、より安全でより効果的に細胞内cGMPを増加させる薬剤の開発が望まれている。非特許文献3には、グアニル酸シクラーゼA(GC−A)の活性型変異を作製したことが報告されているが、グアニル酸シクラーゼB(GC−B)であるNPR−Bについては記載されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Circulation Heart Failure, 2008; 1; 272-280
【非特許文献2】European Respiratory Journal; 2008, vol. 32, no. 4, 881-891 (http://erj.ersjournals.com/content/32/4/881.long)
【非特許文献3】Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1997, vol.94, 459-462
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題に鑑み、CNPの刺激なしにcGMPを生産する変異型ナトリウム利尿ペプチドB受容体、該受容体をコードする遺伝子、及び該受容体又は遺伝子を用いる、効果的に細胞内cGMPを増加させることができる薬剤、並びに変異型ナトリウム利尿ペプチドB受容体をコードする遺伝子がゲノム中に導入されているトランスジェニック非ヒト哺乳動物等を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために研究を重ねた結果、野生型NPR−Bは、リガンドであるCNPが存在するとき(CNPが結合したとき)にのみcGMPを産生するが、CNPがない状態でも常にcGMPを産生する変異型ナトリウム利尿ペプチドB受容体(変異型NPR−B)を見出した。これまでに、野生型NPR−Bのアミノ酸配列において、アミノ酸が置換された受容体はいくつか報告されているが、これまでに見出された変異型受容体は、いずれもcGMP産生能が野生型NPR−Bより低いものであった。本発明者らが見出した配列番号2のアミノ酸配列からなる変異型NPR−Bは、野生型ヒトNPR−Bのアミノ酸配列において883番目のバリンがメチオニンで置換されたアミノ酸配列からなるポリペプチドであり、これまでに見出された変異型NPR−Bとは異なる新規なものであった。野生型ヒトNPR−Bの塩基配列は、GenBank(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez?db=nucleotide)にaccession No: NM_003995.3で登録されている。
【0008】
本発明者らが見出した配列番号2のアミノ酸配列からなる変異型NPR−Bは、CNPがない状態でも常にcGMPを産生するが、さらに、該変異型NPR−BにCNPを添加すると、CNP濃度依存的にcGMP産生量が増加することから、通常のサイクルによる触媒領域の活性化も起こることを見出した。
【0009】
これまでに開発されたcGMP分解酵素阻害薬では、阻害薬としての特異性の問題や効果持続が短いことや全身性の副作用(低血圧等)等の問題があった。前記変異型NPR−Bは、細胞内cGMP濃度を効果的に増加させることができるものであり、低いcGMP水準(低cGMPレベル)と関連する疾患の予防又は治療に有用なものである。また、このような変異型NPR−Bを遺伝子導入技術を使用して投与すれば、投与あたりの薬剤持続時間を長時間とすることができる。すなわち1回の投与により、長時間低cGMPレベルを改善できる。また、例えば、前記変異型NPR−Bを発現させるベクターをカテーテル検査時に導入することで、新規の肺高血圧治療が可能になる。
【0010】
さらに、前記変異型NPR−Bの立体構造を解析することで、持続的な酵素活性を発揮するために必要な構造変化を解明することができる。低分子化合物等で、この構造変化をもたらすものが、野生型受容体を組み込んだ細胞を用いた薬剤スクリーニングで見いだせれば、cGMPを介する新しい薬剤の開発につながる。
また、前記変異型NPR−Bは、CNP濃度依存的にcGMP産生量が増加することから、該変異型NPR−Bを組み込んだ細胞を用いた薬剤スクリーニングによっても、cGMP産生を増加させる化合物をスクリーニングすることができる。
【0011】
また、前記変異型NPR−Bを組み込んだ細胞を用いた薬剤スクリーニングによって変異型NPR−Bの酵素活性を阻害又は調節する物質を見出せば、高いcGMP水準と関連する疾患の予防又は治療剤の開発につながる。
従って、前記変異型NPR−B及びこれをコードする遺伝子を用いることによって、cGMPが関連する疾患の新しい予防又は治療剤を開発することができる。
【0012】
本発明者らはさらに、マウス受精卵に、前記変異型NPR−Bをコードする遺伝子を含む発現ベクターを注入し、変異型NPR−Bをコードする遺伝子がゲノム中に導入されたトランスジェニック非ヒト哺乳動物を作製した。この変異型NPR−Bをコードする遺伝子がゲノム中に導入されたトランスジェニック非ヒト哺乳動物では、野生型の非ヒト哺乳動物と比較して骨の伸長が認められた。従って、このトランスジェニック非ヒト哺乳動物を組織学的に解析する等により、CNP/NPR−B/cGMPシグナル系の骨伸長作用、高身長症等の患者に認められた骨伸長作用、骨粗鬆症の原因等を解明することができる。これにより、成長障害、骨粗鬆症等に対する治療ターゲットを解明することができる。また、このトランスジェニック非ヒト哺乳動物に候補物質を投与することにより、成長障害、骨粗鬆症等に対する治療剤等をスクリーニングすることができる。
【0013】
本発明は、上記知見に基づき完成されたものであり、以下の発明を提供する。
項1.以下の(a)〜(c)のいずれかのポリペプチドである変異型ナトリウム利尿ペプチドB受容体、又はその塩。
(a)配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド
(b)配列番号2に示されるアミノ酸配列のうち1〜複数個のアミノ酸が欠失、付加、又は置換したアミノ酸配列を有し、かつCNPの刺激なしにcGMPを生産する活性を有するポリペプチド
(c)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA又は配列番号1と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるポリペプチドであって、かつCNPの刺激なしにcGMPを生産する活性を有するポリペプチド
項2.以下の(a)〜(c)のいずれかのポリペプチドをコードする遺伝子。
(a)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド
(b)配列番号2に示されるアミノ酸配列のうち1〜複数個のアミノ酸が欠失、付加、又は置換したアミノ酸配列からなり、かつCNPの刺激なしにcGMPを生産する活性を有するポリペプチド
(c)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA又は配列番号1と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるポリペプチドであって、かつCNPの刺激なしにcGMPを生産する活性を有するポリペプチド
項3.以下の(a)〜(c)のいずれかのDNAを含むことを特徴とすることを特徴とする発現ベクター。
(a)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするDNA
(b)配列番号2に示されるアミノ酸配列のうち1〜複数個のアミノ酸が欠失、付加、又は置換したアミノ酸配列からなり、かつCNPの刺激なしにcGMPを生産する活性を有するポリペプチドをコードするDNA
(c)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA又は配列番号1と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであって、かつCNPの刺激なしにcGMPを生産する活性を有するポリペプチドをコードするDNA
項4.項1に記載の変異型ナトリウム利尿ペプチドB受容体又はその薬理学的に許容される塩を含むことを特徴とする低いcGMP水準と関連する疾患の予防又は治療剤。
項5.項2に記載の遺伝子又は項3に記載の発現ベクターを含むことを特徴とする低いcGMP水準と関連する疾患の予防又は治療剤。
項6.低いcGMP水準と関連する疾患が、肺高血圧、低身長、勃起不全、心不全、認知症、又は癌である項4又は5に記載の予防又は治療剤。
項7.(I)項1に記載の変異型ナトリウム利尿ペプチドB受容体の構造を解析する工程を含むことを特徴とするナトリウム利尿ペプチドB受容体活性化物質のスクリーニング方法。
項8.(II)工程(I)の解析結果から、ナトリウム利尿ペプチドB受容体を活性化する候補物質を選択する工程、(III)in vitro又は非ヒト哺乳動物中で野生型ナトリウム利尿ペプチドB受容体に該候補物質を接触させる工程、(IV)細胞内におけるcGMP量をモニターする工程、及び(V)候補物質を接触させない場合と比較して、工程(IV)において細胞内におけるcGMP量の増加が検出された候補物質をナトリウム利尿ペプチドB受容体活性化剤として選択する工程を含むことを特徴とする項7に記載のナトリウム利尿ペプチドB受容体活性化剤のスクリーニング方法。
【0014】
項9.項1に記載の変異型ナトリウム利尿ペプチドB受容体をコードする遺伝子がゲノムに導入されていることを特徴とするトランスジェニック非ヒト哺乳動物。
項10.変異型ナトリウム利尿ペプチドB受容体をコードするDNAが、軟骨特異的な発現を可能にする発現制御配列の制御下にある項9に記載のトランスジェニック非ヒト哺乳動物。
項11.非ヒト哺乳動物が、マウス又はラットである項9又は10に記載のトランスジェニック非ヒト哺乳動物。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、CNPの刺激なしにcGMPを生産する変異型ナトリウム利尿ペプチドB受容体及び該受容体をコードする遺伝子を提供することができる。このような変異型受容体又は該受容体をコードする遺伝子を用いることにより、細胞内のcGMP濃度を効果的に増加させることができることから、cGMPの減少に起因する疾患又は症状の予防、改善又は治療に有効な医薬等を開発することができる。前記変異型受容体を利用することにより、cGMPの減少に起因する疾患又は症状の予防、改善又は治療に有効な医薬を効率よくスクリーニングすることができる。また、本発明のトランスジェニック非ヒト哺乳動物は、成長障害、骨粗鬆症等に対する治療剤の開発等において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、野生型NPR−B及び変異型NPR−Bの発現をウェスタンブロッティングにより調べた結果を示す図である。
【図2】図2は、変異型NPR−BのcGMP生産活性を解析した結果を示す図である(*:野生型NPR−B発現細胞のcGMP生産量に対して、P<0.05)。
【図3】図3は、マウスに導入するのに用いたCol11a2 promoter-HA tagged human NPR-B V883Mトランスジーンコンストラクトの構造を示す図である。
【図4】図4は、トランスジェニックマウス(Tg(+))及び野生型マウス(Tg(-))における変異型NPR−B遺伝子(mRNA)の発現量を、リアルタイムPCR(上図)、及びRT−PCR(下図)により調べた結果を示す図である。
【図5】図5は、トランスジェニックマウス(Tg)及び野生型マウス(Wt)の全身レントゲン写真である。
【図6】図6は、トランスジェニックマウス(Tg)及び野生型マウス(Wt)の背のレントゲン写真である。
【図7】図7は、トランスジェニックマウス(Tg)及び野生型マウス(Wt)の尾のレントゲン写真である。
【図8】図8は、トランスジェニックマウス(Tg)及び野生型マウス(Wt)の後足の指のレントゲン写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の変異型NPR−Bは、CNPの刺激なしにcGMPを生産する活性を有するポリペプチドである。
本発明の変異型ナトリウム利尿ペプチドB受容体(NPR−B)は、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドである。好ましくは、配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドである。
配列番号2に示されるアミノ酸配列は、野生型ヒトNPR−Bのアミノ酸配列において、883番目のバリンがメチオニンで置換された配列である。
【0018】
本発明の変異型NPR−Bは、本発明の効果を奏することになる限り、配列番号2に示されるアミノ酸配列のうち1〜複数個のアミノ酸が欠失、付加、又は置換したアミノ酸配列を有するものであってもよい。配列番号2に示されるアミノ酸配列のうち1〜複数個のアミノ酸が欠失、付加、又は置換したアミノ酸配列を有し、かつCNPの刺激なしにcGMPを生産する活性を有するポリペプチドも、本発明の変異型NPR−Bに含まれる。複数個とは、通常10個程度、好ましくは5個程度、より好ましくは3個程度、さらに好ましくは2個程度である。「1〜複数個」は、通常1〜10個程度、好ましくは1〜5個程度、より好ましくは1〜3個程度、さらに好ましくは1〜2個程度、最も好ましくは1個である。
ただし、野生型ヒトNPR−Bのアミノ酸配列(配列番号2に示されるアミノ酸配列において883番目のメチオニンがバリンであるアミノ酸配列)における以下のいずれか又は2以上の部位において置換、欠損又は付加したアミノ酸配列は、本発明における前記配列番号2に示されるアミノ酸配列のうち1〜複数個のアミノ酸が欠失、付加、又は置換したアミノ酸配列に、通常含まれない;
P32T、W115G、D176E、Y338C、A409T、G413E、Y708C、R776W、L885R、R957C、G959A、Q282X、T297M、R371X+P438fsX441、A409T、D176E+R388X、P432fsX476、Q500X、G630fsX、Y708C、W769X、R776W、G959A+K480X、R1020fsX1025、L658F、及びI364fsX376(Am. J. Hum. Genet. 75:27-34, 2004、Human Molecular Genetics, 2009, Vol. 18, No.2, 267-277、J. Clin. Endocrinol. Metab. 2006 91:1229-1232、J. Clin. Endocrinol. Metab. 2007 92:4009-4014)。「fs」は、フレームシフト(frameshift)変異を、「X」は、終止コドン(ターミネーション:termination)を意味する。例えば、「P32T」は、野生型ヒトNPR−Bのアミノ酸配列の32番目のプロリンがトレオニンで置換されたことを意味する。「Q282X」は、282番目のグルタミンが塩基置換によりtermination(終止コドン)になったことを意味する。「R371X+P438fsX441」は、371番目のアルギニンが塩基置換によりtermination(終止コドン)となり、かつ438番目のプロリンが塩基欠失によりフレームシフトを起こし441番目のアミノ酸がtermination(終止コドン)になったことを意味する。
【0019】
本発明の変異型NPR−Bとして、配列番号1に示される塩基配列からなるDNA又は配列番号1と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるポリペプチドであって、かつCNPの刺激なしにcGMPを生産する活性を有するポリペプチドも好適である。
【0020】
変異型NPR−BがcGMPの生産活性を有することは、市販のcGMP測定キットを用いて確認することができる。市販のcGMP測定キットとして、例えば、cyclic GMP EIA kit (商品名、Cayman Chemical Company社製、www.caymanchem.com (http://www.caymanchem.com/))等を用いることができる。このようなcGMP測定キットを用いて、該キットに添付された使用説明書に記載された方法に従って操作を行なうことにより、cGMPの生産活性を測定することができる。前記市販のcGMP測定キットを用いる方法においてCNPを添加せずにcGMP生産活性が検出された場合に、CNPの刺激なしにcGMPを生産する活性を有すると判定される。
【0021】
本発明の変異型NPR−Bは、塩を形成していてもよい。変異型NPR−Bの塩としては、酸又は塩基との生理学的に許容される塩が挙げられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)との塩等が挙げられる。変異型NPR−Bの塩は、自体公知の方法により変異型NPR−Bから調製される。
【0022】
本発明の変異型NPR−Bをコードする遺伝子も、本発明に包含される。例えば、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド(好ましくは、配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド)をコードする遺伝子は、本発明の好ましい態様の1つである。配列番号2に示されるアミノ酸配列のうち1〜複数個のアミノ酸が欠失、付加、又は置換したアミノ酸配列を有し(ただし、通常、前述した野生型ヒトNPR−Bのアミノ酸配列におけるP32T、W115G、D176E、Y338C、A409T、G413E、Y708C、R776W、L885R、R957C、G959A、Q282X、T297M、R371X+P438fsX441、A409T、D176E+R388X、P432fsX476、Q500X、G630fsX、Y708C、W769X、R776W、G959A+K480X、R1020fsX1025、L658F、及びI364fsX376のいずれか又は2以上の欠失、付加、又は置換を有する配列除く)、かつCNPの刺激なしにcGMPを生産する活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子も、本発明に包含される。
【0023】
配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは、例えば、配列番号1に示される塩基配列からなるDNAによってコードされる。配列番号1の塩基配列は、野生型ヒトNPR−BをコードするDNA配列において、2647番目のグアニン(G)がアデニン(A)で置換された配列である。
配列番号1に示される塩基配列からなるDNAを含む前記変異型ナトリウム利尿ペプチドB受容体をコードする遺伝子も、本発明に包含される。
【0024】
配列番号1に示される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであって、かつCNPの刺激なしにcGMPを生産する活性を有するポリペプチドをコードするDNAも、本発明の変異型NPR−Bをコードする遺伝子として好適である。配列番号1に示される塩基配列に相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであって、かつCNPの刺激なしにcGMPを生産する活性を有するポリペプチドをコードするDNAも、本発明の変異型NPR−Bをコードする遺伝子として好適である。
【0025】
前記「ストリンジェントな条件」とは、少なくとも約90%の同一性、好ましくは少なくとも約95%の同一性、最も好ましくは少なくとも約98%の同一性が配列間に存在するときにのみハイブリダイゼーションが起こることを意味し、例えば、60℃で2×SSC 洗浄条件下で結合することを意味する。上記ハイブリダイゼーションは、「Molecular Cloning (Third Edition)」(J. Sambrook & D. W. Russell, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2001)に記載されている方法等、従来公知の方法で行うことができる。通常、温度が高いほど、塩濃度が低いほどストリンジェンシーは高く(ハイブリダイズし難く)なり、より相同なDNAを取得することができる。
「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズ」とは、具体的には、例えば、ハイブリダイゼーション溶液(50%ホルムアミド、5×SSC(150mMのNaCl、15mMのクエン酸三ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハート液、10%硫酸デキストラン、及び20μg/mlの変性剪断サケ精子DNAを含む)中にて42℃で一晩インキュベーションした後、約65℃にて0.1×SSC中でフィルター洗浄する条件でも依然として陽性のハイブリダイズのシグナルが観察されることを表す。
【0026】
配列番号1に示される塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAとして具体的には、配列番号1に示される塩基配列と好ましくは約90%以上、より好ましくは約95%以上、特に好ましくは約98%以上の相同性を有する塩基配列を有するDNA等が挙げられる。
【0027】
配列番号2に示されるアミノ酸配列を有する変異型NPR−B等の本発明の変異型NPR−Bは、例えば、ヒト等の哺乳類から単離することができる。また、組換えDNA技術及び/又は化学的合成によって製造することもできる。例えば組換えDNA技術を用いた製法においては、配列番号2に示されるアミノ酸配列をコードする遺伝子、具体的には、例えば、配列番号1に示される塩基配列からなるDNAを含む発現ベクターにより形質転換された宿主細胞を培養し、当該培養物から目的のペプチドを採取することにより本発明の変異型NPR−Bを得ることができる。形質転換細胞等からの変異型NPR−Bの抽出及び精製、又は合成ポリペプチドの製造は、それ自体公知の方法に従って行われて良い。
【0028】
本発明の変異型NPR−Bをコードする遺伝子を組み込むベクターとしては、例えば大腸菌のベクター(pBR322、pUC18、pUC19等)、枯草菌のベクター(pUB110、pTP5、pC194等)、酵母のベクター(YEp型、YRp型、YIp型)、又は動物細胞のベクター(レトロウィルス、ワクシニアウィルス、レンチウイルス等)等が挙げられるが、その他のものであっても、宿主細胞内で安定に目的遺伝子を保持できるものであれば、いずれをも用いることができる。当該ベクターは、適当な宿主細胞に導入される。目的の遺伝子をベクター(プラスミド)に組み込む方法や宿主細胞への導入方法としては、例えば、Molecular Cloninng (Sambrook et al., 1989)に記載された方法が利用できる。あらかじめプロモーターが組み込まれたベクターを用いてもよい。
【0029】
前記ベクター(プラスミド)において目的のペプチド遺伝子を発現させるために、通常、当該遺伝子の上流にはプロモーターを機能するように接続させる。
【0030】
本発明において用いられるプロモーターとしては、目的遺伝子の発現に用いる宿主細胞に対応して適切なプロモーターであればいかなるものでもよい。例えば、形質転換する宿主細胞がEscherichia属の場合はlacプロモーター、trpプロモーター、lppプロモーター、λPLプロモーター、recAプロモーター等を用いることができ、Bacillus属の場合はSPO1プロモーター、SPO2プロモーター等を用いることができ、酵母の場合はGAPプロモーター、PHO5プロモーター、ADHプロモーター等を用いることができ、動物細胞の場合は、SV40由来プロモーター、レトロウィルス由来プロモーター、サイトメガロウイルス由来プロモーター等を用いることができる。
【0031】
前記のようにして得られた目的遺伝子を含有する発現ベクター(発現プラスミド)を用いて公知の手法により宿主細胞を形質転換し、形質転換細胞を得る。宿主細胞としては細菌(例えば、Escherichia属、Bacillus属等)、酵母(Saccharomyces属、Pichia属、Candida属等)、動物細胞(CHO細胞、COS細胞等)等を用いることができる。
【0032】
形質転換細胞を培養する際の培地としては、通常液体培地が適当であり、当該培地中には培養する形質転換細胞の生育に必要な炭素源、窒素源等が含まれることが特に好ましい。所望によりビタミン類、成長促進因子、血清、薬剤などを添加することができる。
【0033】
培養後、培養物から本発明に係る変異型NPR−Bを常法により分離精製することができる。例えば、培養菌体又は細胞から目的物質を抽出するには、培養後、菌体又は細胞を集め、これをタンパク質変性剤(塩酸グアニジンなど)を含む緩衝液に懸濁し、超音波などにより菌体又は細胞を破砕した後、遠心分離を行う。次に上清から目的物質を精製するには、目的物質の分子量、溶解度、荷電(等電点)、親和性等を考慮して、ゲル濾過、限外濾過、透析、SDS-PAGE、各種クロマトグラフィーなどの分離精製方法を適宜組み合わせて行うことができる。
【0034】
本発明に係る変異型NPR−Bは常法により化学合成することができる。例えば、保護基の付いたアミノ酸を液相法及び/又は固相法により縮合、ペプチド鎖を延長させ、酸で全保護基を除去し、得られた粗生成物を前記の精製方法で精製することにより得られる。またペプチドの製造法は従来既に種々の方法が知られており、本発明に係る変異型NPR−Bの製造も公知の方法に従って容易に製造でき、例えば古典的なペプチド合成法に従ってもよいし、固相法に従っても容易に製造できる。また、組換えDNA技術と化学合成を併用した製法を用いてもよい。
【0035】
本発明における配列番号1に示される塩基配列を含むDNA等の変異型NPR−Bをコードする遺伝子は、ゲノムDNA、細胞又は組織由来のcDNA、合成DNAのいずれでもよい。本発明で用いられる変異型NPR−Bをコードする遺伝子は公知の方法により得ることができる。
【0036】
例えば、本発明の変異型NPR−Bをコードする遺伝子のクローニングは、例えば、まず野生型ヒトNPR−Bをコードする遺伝子をクローニングし、該野生型NPR−Bをコードする遺伝子を基に、公知の手法により変異を導入することにより行うことができる。野生型ヒトNPR−Bをコードする遺伝子のクローニングは、例えば、野生型NPR−B mRNAを発現しているヒト軟骨や血管組織などより公知の手法によりmRNAを採取し、RT−PCRにより野生型NPR−BをコードするcDNAを作製することにより行うことができる。作製した野生型ヒトNPR−BをコードするcDNAを用いて、公知の手法により変異遺伝子への置換を行って、本発明の変異型NPR−Bをコードする遺伝子を得ることができる。具体的には、例えば野生型ヒトNPR−BをコードするDNA配列において、2647番目のグアニン(G)をアデニン(A)に置換することにより、本発明の変異型NPR−Bをコードする遺伝子の1つである配列番号1に示される塩基配列からなるDNAを得ることができる。
【0037】
また、本発明の変異型NPR−Bをコードする遺伝子を直接クローニングする場合には、例えば、両母趾の過成長が観察されるヒト等の軟骨や血管組織を採取し、採取した組織から公知の手法によりmRNAを採取し、NPR−Bをコードする部分をPCR法にて増幅し、発現ベクターに組み込むことにより行うことができる。得られた配列をシークエンスすることにより、変異型にcDNAが組換わったことを確認できる。
また、細胞・組織よりmRNA画分を調製したものを用いて、直接RT−PCR法によって増幅することもできる。さらに、得られた遺伝子に対して公知の処理を施してもよい。また、制限酵素で消化したり、リンカーを付加したりすることもできる。さらに、翻訳開始コドン(ATG)や翻訳終止コドン(TAA、TGA又はTAG)を適当な合成DNAアダプターを用いて付加することもできる。
【0038】
本発明の変異型NPR−Bをコードする遺伝子は、細胞内でのその安定性を高めるために修飾されていてもよい。このような修飾には、公知の手法を用いることができる。
【0039】
本発明の変異型NPR−Bをコードする遺伝子は、そのまま用いてもよいが、例えば、製剤化する際には、ベクターに挿入した形態で用いることが好ましい。本発明の変異型NPR−Bをコードする遺伝子を含む発現ベクターも、本発明の1つである。
【0040】
本発明の発現ベクターにおける変異型NPR−Bをコードする遺伝子として、以下の(a)〜(c)のDNA等が好ましい。
(a)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするDNA
(b)配列番号2に示されるアミノ酸配列のうち1〜複数個のアミノ酸が欠失、付加、又は置換したアミノ酸配列からなり、かつCNPの刺激なしにcGMPを生産する活性を有するポリペプチドをコードするDNA
(c)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA又は配列番号1と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであって、かつCNPの刺激なしにcGMPを生産する活性を有するポリペプチドをコードするDNA
中でも、上記(a)のDNAを含む発現ベクターが好適である。例えば、配列番号1に示される塩基配列からなるDNAを含む発現ベクターは、本発明の好ましい態様の1つである。
【0041】
前記発現ベクターは、本発明の変異型NPR−Bをコードする遺伝子を発現することができればよく、哺乳類細胞において変異型NPR−Bをコードする遺伝子を発現することができることが好ましい。例えば、本発明の変異型NPR−BをコードするDNA断片が適当なプロモーターの下流に連結されている発現ベクターなどが挙げられる。
【0042】
前記発現ベクターに用いられるベクターとしては、既存のベクターを使用することができる。例えば、大腸菌由来のプラスミド(例、pCR4、pCR2.1、pBR322、pBR325、pUC12、pUC13)、枯草菌由来のプラスミド(例、pUB110、pTP5、pC194)、酵母由来プラスミド(例、pSH19、pSH15)、λファージなどのバクテリオファージ、レトロウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アデノウイルス、レンチウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルス、ポックスウイルス、ヘルペスウイルス、単純ヘルペスウイルス、レンチウイルス(HIV)、センダイウイルス(HVJ-Eベクター)、エプスタイン−バーウイルス(EBV)、ワクシニアウイルス、ポリオウイルス、シンビスウイルス、SV40等のウイルスなどのウイルス由来のベクターの他、pA1−11、pXT1、pRc/CMV、pRc/RSV、pcDNAI/Neoなどが用いられる。中でも、ウイルス由来のベクターが好ましく、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アデノウイルス、レトロウイルス、ポックスウイルス、ヘルペスウイルス、単純ヘルペスウイルス、レンチウイルス(HIV)、センダイウイルス、エプスタイン−バーウイルス(EBV)、ワクシニアウイルス、ポリオウイルス、シンビスウイルス、SV40由来のベクター等を用いることが好ましい。
【0043】
前記プロモーターとしては、宿主、すなわち標的細胞又は標的組織における遺伝子の発現に適切なプロモーターであればいかなるものでもよい。例えば、SRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMVプロモーター、HSV−TKプロモーター、レトロウィルス由来プロモーター、サイトメガロウイルス由来プロモーター、アデノウイルス由来プロモーター、ホスホグリセリン酸キナーゼ−1(PGK−1)プロモーター、Col11a2遺伝子(XI型コラーゲンα2鎖遺伝子)のプロモーター、CAGプロモーター、伸長因子2(EF−2)プロモーター、MC−1プロモーターなどが挙げられる。これらのうち、例えば、CMVプロモーター、SRαプロモーターなどを用いるのが好ましい。
【0044】
前記発現ベクターは、本発明の変異型NPR−Bをコードする遺伝子及びプロモーターの他に、所望によりエンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー又はSV40複製オリジンなどを有していてもよい。選択マーカーとしては、例えばジヒドロ葉酸還元酵素(以下dhfrと略称する場合がある)遺伝子(メソトレキセート(MTX)耐性)、アンピシリン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子(G418耐性)等が挙げられる。
本発明の変異型NPR−Bをコードする遺伝子を含む発現ベクターは、前記既存のベクターを用いて、自体公知の方法に従って作製できる。例えば、前記変異型NPR−Bをコードする塩基配列を有するDNA断片を、適当なベクター中のプロモーターの下流に公知の手法により連結することにより製造することができる。
【0045】
本発明においては、製剤化の際に本発明の変異型NPR−Bをコードする遺伝子又は前記遺伝子を含む発現ベクターを、リポソーム、マイクロカプセル、ミクロスフェア、サイトフェクチン、DNA―タンパク質複合体又はバイオポリマー等の人工ベクターに内包させた形態で用いてもよい。中でも、リポソーム又はマイクロカプセルに内包することが好ましい。
【0046】
ここで、リポソームとは内部に水層を有する脂質二重膜でできた閉鎖小胞体であり、その脂質二分子膜構造が生体膜に極めて近似していることが知られている。リポソームを製造するに際し使用されるリン脂質としては、例えばレシチン、リゾレシチン等のホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール等の酸性リン脂質、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴミエリン等のスフィンゴリン脂質等が挙げられる。また、コレステロール等を添加することもできる。リポソームは、自体公知の方法に従って製造することができる。リポソームには、膜融合リポソーム、HVJ−膜融合リポソーム(Kaneda. Y et al., Biol. Chem, 264, p12126-12129 (1989)、Kato. K et al., Biol. Chem, 266, p3361-3364 (1991)、Tomita. N et al., Biochem. Biophys. Res., 186, p129-134 (1992)、Tomota. N et al., Cric. Res., 73, p898-905 (1993))、陽イオン性リポソーム(特表2000−510151号公報、特表2000−516630号公報)等が知られている。センダウイルス(HVJ)と融合させたHVJ−膜融合リポソームを用いることが本発明において好ましい。リポソームの表面にHVJの糖タンパクを組み込み、又は共有結合させてポリエチレングリコール等を添加すると、細胞への遺伝子導入効率が上昇する。マイクロカプセルはフィルムコートされた粒子であり、膜形成ポリマー誘導体、疎水性可塑剤、表面活性剤又は/及び潤滑剤窒素含有ポリマーの混合物からなるコーティング材料でコートされた粒子等で構成されるものが挙げられる。
【0047】
本発明の変異型NPR−Bは、CNPの刺激なしにcGMPを生産する活性を有するものであることから、細胞内のcGMPを増加させることができる。該変異型NPR−Bをコードする遺伝子及び該遺伝子を含む発現ベクターは、細胞に導入されると該変異型NPR−Bを発現できることから、細胞内のcGMPを増加させることができる。従って、本発明の変異型NPR−B、これをコードする遺伝子及び該遺伝子を含む発現ベクターは、細胞においてcGMPレベルを増加させて、低いcGMP水準(低cGMPレベル)を効率よく改善できることから、例えば、cGMP水準と関連する疾患の予防又は治療に好適に用いられるものである。
【0048】
前記変異型ナトリウム利尿ペプチドB受容体又はその薬理学的に許容される塩を含む低いcGMP水準と関連する疾患の予防又は治療剤も、本発明に包含される。変異型ナトリウム利尿ペプチドB受容体は、好ましくは、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドである。より好ましくは、配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドである。また、前述した、配列番号2に示されるアミノ酸配列のうち1〜複数個のアミノ酸が欠失、付加、又は置換したアミノ酸配列を有し(ただし、通常、前述した野生型ヒトNPR−Bのアミノ酸配列におけるP32T、W115G、D176E、Y338C、A409T、G413E、Y708C、R776W、L885R、R957C、G959A、Q282X、T297M、R371X+P438fsX441、A409T、D176E+R388X、P432fsX476、Q500X、G630fsX、Y708C、W769X、R776W、G959A+K480X、R1020fsX1025、L658F、及びI364fsX376のいずれか又は2以上の欠失、付加、又は置換を有する配列除く)、かつCNPの刺激なしにcGMPを生産する活性を有するポリペプチドも、用いることができる。配列番号1に示される塩基配列からなるDNA又は配列番号1と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるポリペプチドであって、かつCNPの刺激なしにcGMPを生産する活性を有するポリペプチドも、変異型NPR−Bとして好適に用いられる。変異型NPR−Bの薬理学的に許容される塩としては、上述した塩等が挙げられる。
【0049】
前記変異型NPR−Bをコードする遺伝子又は該遺伝子を含む発現ベクターを含む低いcGMP水準と関連する疾患の予防又は治療剤も、本発明に包含される。
例えば、前記配列番号1の塩基配列からなるDNAを含む遺伝子又は該遺伝子を含む発現ベクターを含む低いcGMP水準と関連する疾患の予防又は治療剤は、本発明の好ましい実施態様の1つである。
好ましくは、配列番号1に示される塩基配列からなるDNAを含む発現ベクターを有効成分として用いる。
【0050】
低いcGMP水準(cGMPレベル)と関連する疾患は、一次的又は二次的な原因が、cGMP生産及び/又は放出の低減である疾患であればよい。このような疾患として、例えば、肺高血圧、低身長、勃起不全、心不全、認知症、又は癌等が挙げられる。本発明の予防又は治療剤は、このような疾患の予防又は治療に有用なものである。
【0051】
本発明において、「予防」には発症を抑制する又は遅延させることが含まれる。「治療」には、症状又は疾病及び/又はその付随する症候を緩和し、又は治癒すること、及び緩和することを意味するものとする。
【0052】
本発明の予防又は治療剤の投与対象としては、ヒトを含む哺乳動物が挙げられるが、cGMPレベルを増大させる処置の必要な患者が好適である、例えば、低いcGMP水準と関連する疾患の患者が好適であり、中でも、肺高血圧、低身長、勃起不全、心不全、認知症、癌などの患者が好適である。
【0053】
本発明の変異型NPR−B又はその薬理学的に許容される塩、該変異型NPR−Bをコードする遺伝子、又は該遺伝子を含む発現ベクターを有効成分として含む本発明の予防又は治療剤は、薬理学的に許容しうる担体、賦形剤、増量剤などと有効成分とを混合等して個体(例えば、ヒト、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウサギ、ウシ、ウマ、ブタ、サル等)に対して用いることができる。
【0054】
本発明の予防又は治療剤の剤型は、通常、非経口投与剤とすればよいが、経口投与剤とすることもできる。本発明の医薬の有効成分はタンパク質又は遺伝子であるから、剤型は、吸収され易い非経口投与剤が好ましい。非経口投与剤としては、注射剤、吸入剤、カテーテル等が好適である。注射剤の場合は、投与対象である個体に対して、例えば静脈内、皮下、筋肉或いは腹腔内への注射により、所定量を単回又は複数回に分けて投与することができる。また、例えば、肺高血圧の治療に用いる場合には、配列番号1に示される塩基配列からなるDNA等の変異型NPR−Bをコードする遺伝子を含む発現ベクターを、心カテーテル検査と同じ手法で肺動脈もしくは右心室まで挿入し、そこで発現ベクターを注入し、肺血管細胞に導入することができる。
【0055】
本発明において予防又は治療剤の投与量は特に限定されず、使用目的や投与対象の個体の年齢、体重、個体の種類、症状、状態及び併用薬剤等に応じて適宜選択可能であるが、単回〜複数回を成熟した個体に投与する場合、有効成分である変異型NPR−Bとして1回あたり約0.001〜100mgの範囲投与することが好ましく、1回あたり約0.01mg〜10mgがより好ましくい。該変異型NPR−BをコードするDNAを投与する場合には、該DNAとして1回あたり約0.1μg〜100mgの範囲投与することが好ましく、1回あたり約1μg〜10mgがより好ましく、約10μg〜10mgがさらに好ましい。
【0056】
薬学的に許容される担体としては、製剤素材として慣用の各種有機又は無機担体物質が用いられ、固形製剤における賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤;液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤等として配合される。また必要に応じて、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤などの製剤添加物を用いることもできる。
【0057】
賦形剤の好適な例としては、例えば乳糖、白糖、D-マンニトール、デンプン、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸などが挙げられる。
滑沢剤の好適な例としては、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、コロイドシリカなどが挙げられる。
結合剤の好適な例としては、例えば結晶セルロース、白糖、D-マンニトール、デキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
【0058】
崩壊剤の好適な例としては、例えばデンプン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウムなどが挙げられる。
溶剤の好適な例としては、例えば注射用水、アルコール、プロピレングリコール、マクロゴール、ゴマ油、トウモロコシ油などが挙げられる。
【0059】
溶解補助剤の好適な例としては、例えばポリエチレングリコール、プロピレングリコール、D-マンニトール、安息香酸ベンジル、エタノール、トリスアミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0060】
懸濁化剤の好適な例としては、例えばステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、モノステアリン酸グリセリンなどの界面活性剤;例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどの親水性高分子などが挙げられる。
【0061】
等張化剤の好適な例としては、例えば塩化ナトリウム、グリセリン、D-マンニトールなどが挙げられる。
緩衝剤の好適な例としては、例えばリン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩などの緩衝液などが挙げられる。
無痛化剤の好適な例としては、例えばベンジルアルコールなどが挙げられる。
【0062】
防腐剤の好適な例としては、例えばパラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸などが挙げられる。
抗酸化剤の好適な例としては、例えば亜硫酸塩、アスコルビン酸などが挙げられる。
【0063】
例えば、注射剤等の形態の医薬は、有効成分と共に適切な緩衝液、糖溶液、等張化剤、pH調節剤、無痛化剤、防腐剤などの1又は2以上の製剤用添加物を注射用蒸留水に溶解して滅菌(フィルター)濾過後にアンプル又はバイアル詰めするか、滅菌濾過した溶液を凍結乾燥して凍結乾燥製剤とすることにより調製し提供することができる。このような製剤は、用時に注射用蒸留水や生理食塩水などを添加して溶解することにより注射剤又は点滴剤として使用できる。注射液又は点滴液は、例えば肺等であれば、カテーテルによって投与することもできる。また、経粘膜投与には、点鼻剤や鼻腔内スプレー剤などの鼻腔内投与剤(経鼻投与剤)等も好適であり、経肺投与には吸入剤等も好適である。吸入剤としては、エアゾール剤、吸入用粉末剤、吸入用液剤(例えば、吸入用溶液、吸入用懸濁剤等)、カプセル状吸入剤等が挙げられる。吸入用液剤は、公知の製造方法により製造できる。吸入用液剤は用時に水又は他の適当な媒体に溶解又は懸濁させて使用する形態であってもよい。
【0064】
1製剤中の有効成分の含有量は特に限定されないが、例えば、有効成分がタンパク質の場合には、好ましくは約0.001mg〜100mg、より好ましくは約0.01mg〜10mgである。有効成分の含有量は、有効成分が遺伝子の場合には、変異型NPR−BをコードするDNAとして、1製剤中、好ましくは約0.1μg〜100mg、より好ましくは約1μg〜10mg、さらに好ましくは約10μg〜10mgである。該製剤を1日1回ないし数回投与することができる。
【0065】
本発明はまた、(I)前記変異型ナトリウム利尿ペプチドB受容体の構造を解析する工程を含むナトリウム利尿ペプチドB受容体活性化物質のスクリーニング方法も包含する。
前記変異型NPR−Bの構造を解析することで、持続的な酵素活性を発揮するために必要な構造変化が明らかとなる。構造解析の方法としては、公知のタンパク質の構造解析手法を用いることができる。変異型NPR−Bは、前述したような塩を形成していてもよい。
【0066】
本発明のスクリーニング方法は、(II)前記工程(I)の解析結果から、ナトリウム利尿ペプチドB受容体を活性化する候補物質を選択する工程、(III)in vitro又は非ヒト哺乳動物中で野生型NPR−B又は本発明の変異型NPR−Bに該候補物質を接触させる工程、(IV)細胞内におけるcGMP量をモニターする工程、及び(V)候補物質を接触させない場合と比較して、工程(IV)において細胞内におけるcGMP量の増加が検出された候補物質をナトリウム利尿ペプチドB受容体活性化剤として選択する工程を含むことが好ましい。工程(III)においては、好ましくは、in vitro又は非ヒト哺乳動物中で野生型NPR−Bに該候補物質を接触させる。
【0067】
前記工程(II)においては、工程(I)で得られた結果を基に、例えば、NPR−Bの酵素領域を変化させる可能性がある候補物質を選択することが好ましい。
本発明における候補物質としては、例えば、核酸、ペプチド、タンパク、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、細胞培養上清、植物抽出液、哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ブタ、ウシ、ヒツジ、サル、ヒト等)の組織抽出液、血漿等が挙げられる。候補物質は、新規な物質であってもよいし、公知の物質であってもよい。これら候補物質は塩を形成していてもよく、候補物質の塩としては、生理学的に許容される酸や塩基との塩が用いられる。
【0068】
例えば、ある候補物質を野生型又は変異型NPR−B(好ましくは野生型NPR−B)に接触させた場合に、該候補物質を接触させない場合と比較して、細胞内におけるcGMP量(cGMPレベル)の増加が検出される場合には、用いた候補物質をNPR−B活性化剤として選択することができる。細胞内におけるcGMP量は、前述した市販のcGMP測定キット、例えば、cyclic GMP EIA kit (商品名、Cayman Chemical Company社製、www.caymanchem.com (http://www.caymanchem.com/)) 等を用いて、添付の使用説明書に記載された方法に従って測定することができる。
【0069】
前記方法により選択されるNPR−B活性化剤は、NPR−BのcGMP生産活性を増加させるものである。このようなNPR−B活性化剤は、上述したcGMPの低水準と関連する疾患の予防、改善又は治療に有用である。
【0070】
候補物質を野生型NPR−Bに接触させる方法として、野生型NPR−Bを発現している非ヒト哺乳動物に候補物質を投与する方法、in vitroで野生型NPR−Bを発現している細胞に候補物質を添加する方法等が挙げられる。野生型NPR−Bを発現していることは、哺乳動物から公知の手法により野生型NPR−Bを多く発現している組織(軟骨や血管など)を採取し、該組織中から公知の手法により遺伝子(mRNA)を採取して解析することにより確認できる。
【0071】
候補物質を変異型NPR−Bに接触させる方法として、前記変異型NPR−Bを発現している非ヒト哺乳動物に候補物質を投与する方法、in vitroで変異型NPR−Bを発現している細胞に候補物質を添加する方法等が挙げられる。変異型NPR−Bを発現している非ヒト哺乳動物は、後述するトランスジェニック非ヒト哺乳動物が好適である。変異型NPR−Bを発現しているトランスジェニック非ヒト哺乳動物は、例えば、非ヒト哺乳動物に前記変異型NPR−BをコードするcDNAを含むトランスジーンコンストラクト(例えば、配列番号1に示される塩基配列からなるDNA等の前記変異型NPR−Bをコードする遺伝子を含む発現ベクター)を導入することにより作製することができる。一例を挙げれば、何らかの臓器又は組織に特異的に発現するプロモーターを有する変異型NPR−B cDNAを組み込んだトランスジーン(例えば、何らかの臓器に特異的に発現するプロモーターの下流に、前記配列番号1に示される塩基配列からなるDNA等が挿入された発現ベクター)を非ヒト哺乳動物の受精卵にインジェクション(injection)し、その受精卵を仮親へ移植した後に変異型NPR−Bが組み込まれた産仔(トランスジェニック動物)を得る。変異型NPR−Bを発現していることは、該コンストラクトを導入した非ヒト哺乳動物(トランスジェニック動物)から公知の手法によりNPR−Bを特異的に発現している組織(例えば、プロモーターが軟骨特異的発現プロモーターであれば軟骨から)を採取し、該組織中から公知の手法によりmRNAを採取し、例えばRT−PCRを行うことにより解析、確認できる。
【0072】
前記スクリーニング方法において用いられる非ヒト哺乳動物は、野生型非ヒト哺乳動物(正常非ヒト哺乳動物)又は変異型NPR−Bを発現している前記トランスジェニック動物を用いることができるが、対象疾患のモデル動物を用いることが好ましい。好ましくは、ラット又はマウスであり、より好ましくはマウスである。
【0073】
非ヒト哺乳動物に候補物質を投与する方法としては、例えば、経口投与、静脈注射、塗布、皮下投与、皮内投与、腹腔投与、カテーテルによる投与、吸入等が用いられ、候補物質の性質等にあわせて適宜選択することができる。また、候補物質の投与量は、投与方法、候補物質の性質等にあわせて適宜選択することができる。
【0074】
In vitroの方法において用いられる野生型又は変異型NPR−Bを発現している細胞は、自体公知の遺伝子工学的手法に従って、ベクターに導入した野生型又は変異型NPR−B遺伝子を宿主細胞に導入して発現させることにより野生型又は変異型NPR−Bを細胞膜に有する細胞を得ることができる。宿主細胞や使用するベクターは、前述したものと同様のものを使用できる。野生型NPR−Bの発現及び変異型NPR−Bの発現を測定する方法は特に限定されず、例えば、ウェスタンブロット等の方法により測定することができる。
【0075】
スクリーニング方法により選択された物質は、他の成分と混合等して医薬等とすることができる。さらに、選択したNPR−B活性化剤を対象疾患のモデル動物に投与することにより、対象疾患に対する有用性を評価することができる。
【0076】
本発明のスクリーニング方法の具体例として、例えば、まず変異型NPR−Bの高次構造をそのアミノ酸配列からコンピュータで予測し、その構造がcGMPを産生するのに重要であることを明らかにする。コンピュータ上で、変異型と野生型のNPR−Bの構造の違いを描出し、その変化をもたらすことができる化学物質を予測する。また、例えば、X線結晶解析、NMR、CD、紫外吸収、蛍光分析等を用いて構造解析をすることもできる。その上で、実際にその化学物質が、野生型NPR−Bを組み込んだ細胞におけるcGMPの産生を促進するか検討する。さらに、この化学物質をguanylyl cyclase stimulatorと名付け、臨床応用するために上記治療対象疾患モデル動物(マウス、ラット等)に投与して、その効果を判定する。この方法により新規治療剤の発見につながる。
【0077】
(I)in vitro又は非ヒト哺乳動物中で本発明の変異型NPR−Bに該候補物質を接触させる工程、(II)細胞内におけるcGMP量をモニターする工程、及び(III)候補物質を接触させない場合と比較して、工程(II)において細胞内におけるcGMP量の減少が検出された候補物質をナトリウム利尿ペプチドB受容体阻害剤として選択する工程を含むNPR−B阻害剤のスクリーニング方法も、本発明に包含される。候補物質を変異型NPR−Bに接触させる方法、及び細胞内におけるcGMP量の測定方法等は、前記と同様である。
このようなスクリーニング方法により選択された物質は、cGMPの高水準に関する疾患の予防、改善又は治療に有用である。
【0078】
本発明は、前記変異型NPR−Bをコードする遺伝子がゲノムに導入されているトランスジェニック非ヒト哺乳動物も包含する。
変異型NPR−Bをコードする遺伝子及びその好ましい態様は、上述した通りである。中でも、配列番号1に示される塩基配列からなるDNAを含む遺伝子が好ましい。
【0079】
本発明のトランスジェニック非ヒト哺乳動物について、より詳細に説明する。
非ヒト哺乳動物は特に限定されず、ラット、マウス、ウサギ、モルモット、イヌ、ブタ、ヤギ、ヒツジ等が挙げられる好ましくは、ラット又はマウスであり、より好ましくはマウスである。例えばマウスであれば、C57BL/6系統マウス等が好適に用いられる。
【0080】
本発明のトランスジェニック非ヒト哺乳動物は、上述したように、非ヒト哺乳動物に前記変異型NPR−BをコードするcDNAを含む発現ベクターを導入することにより作製することができる。トランスジェニックマウスであれば、例えば、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77, 7380-7384 (1980)に記載の方法等により作出することができる。
より詳細には、前記変異型NPR−BをコードするcDNAを含む発現ベクターを、非ヒト哺乳動物の全能性細胞に導入し、この細胞を個体へと発生させることにより、前記変異型NPR−Bをコードする遺伝子がゲノムに導入されているトランスジェニック非ヒト哺乳動物を得ることができる。
このような、変異型NPR−BをコードするcDNAを含む発現ベクターを非ヒト哺乳動物の全能性細胞に導入する工程、及び該全能性細胞由来のトランスジェニック非ヒト哺乳動物を作製する工程を含むトランスジェニック非ヒト哺乳動物の作製方法も、本発明に包含される。
【0081】
発現ベクターは、導入される動物細胞中で変異型NPR−Bを発現可能なものであればよく、例えば、上述した本発明の発現ベクター等を適宜選択して用いることができる。発現ベクターに使用されるベクター(ベクター骨格)、プロモーター等の発現制御配列は、導入される動物細胞中で目的遺伝子を発現可能なものであればよく、変異型NPR−Bを発現させる動物、組織等に応じて適宜選択すればよい。
【0082】
発現ベクター中では、変異型NPR−Bをコードする遺伝子は、プロモーター等の発現制御配列により制御される。発現制御配列としては、例えば、全身(組織非特異的な)発現を可能とするプロモーター、又は特定の臓器若しくは組織に特異的に発現するプロモーター等が挙げられる。例えば、全身(組織非特異的な)発現を可能とするプロモーターとして、CAGプロモーター等が挙げられる。例えば、変異型NPR−Bが軟骨特異的に発現するようなトランスジェニックマウスを作製する場合には、軟骨特異的発現プロモーター等を好適に用いることができる。
【0083】
トランスジェニック非ヒト哺乳動物の作製に用いる発現ベクターにおいて、発現制御配列として、例えば、全身(組織非特異的な)発現を可能とする発現制御配列を用いると、変異型NPR−Bを全身に発現するトランスジェニック非ヒト哺乳動物を作製することができる。また、特定の臓器又は組織に特異的に発現する発現制御配列を用いると、該臓器又は組織に特異的に変異型NPR−Bを発現するトランスジェニック非ヒト哺乳動物を作製することができる。本発明においては、例えば、成長障害を対象とする場合(成長障害のモデル動物とする場合等)には、軟骨特異的な発現を可能にする発現制御配列を用いることが好ましい。具体的には、軟骨特異的な発現を可能にするプロモーター及び/又はエンハンサーが挙げられる。このようなプロモーターとして、例えば、Col11a2遺伝子(XI型コラーゲンα2鎖遺伝子)、II型コラーゲン遺伝子等のプロモーターが挙げられる。変異型NPR−Bをコードする遺伝子が、軟骨特異的な発現を可能にする発現制御配列の制御下にあるトランスジェニック非ヒト哺乳動物は、本発明の好ましい実施態様の1つである。このようなトランスジェニック非ヒト哺乳動物は、通常、軟骨中に特異的に前記変異型NPR−Bを発現しているトランスジェニック非ヒト哺乳動物である。
【0084】
全能性細胞としては、受精卵、胚期卵のほかに、ES細胞(胚性幹細胞)等の多能性細胞が挙げられる。初期胚を用いる場合、8細胞期以前の胚が好ましい。発現ベクターの細胞への導入方法は特に限定されず、公知の方法を採用することができる。例えば、マイクロインジェクション法、パーティクルガン法、リン酸カルシウム法、電気パルス法、リポフェクション法、DEAE−デキストラン法、レトロウイルス感染法、凝集法等により行うことができる。中でも、マイクロインジェクション法が好ましく、受精卵へのマイクロインジェクションがより好ましい。より好ましくは、マウス受精卵であり、マウスの受精卵の雄性前核へのマイクロインジェクションがさらに好ましい。
【0085】
次いで、変異型NPR−Bをコードする遺伝子を導入した細胞を、通常仮親の子宮又は卵管に移植、出産させ、産仔を得る。仮親としては、例えば、公知の手法により偽妊娠状態としたメスが好適である。
【0086】
移植後、仮親から生まれた産仔から、変異型NPR−Bをコードする遺伝子を含む発現ベクターがゲノムに組み込まれた個体を選抜する。選抜は、通常、産仔の尾部より分離抽出した染色体DNAに、目的とする発現ベクターが含まれていることを、サザンハイブリダイゼーション又はPCR法等の方法により確認する方法により行うことができる。選抜された個体(ファウンダー(F))は、遺伝子導入については、通常ヘテロ接合体(ヘテロ型トランスジェニック非ヒト哺乳動物)である。ファウンダー(F)を、同種の野生型非ヒト哺乳動物と交配することにより、F非ヒト哺乳動物を作製することができる。F非ヒト哺乳動物から、変異型NPR−Bをコードする遺伝子がゲノム中に導入されたヘテロ接合体を、上記と同様の方法により選抜する。本発明においては、ヘテロ接合体が変異型NPR−Bを発現する表現型であるため、該ヘテロ接合体(ヘテロ型トランスジェニック非ヒト哺乳動物)を本発明のトランスジェニック非ヒト哺乳動物として好適に使用できる。ヘテロ接合体の維持は、公知の方法により行うことができる。
また、選抜したヘテロ接合体同士を1世代以上交配することにより、ホモ接合体(ホモ型トランスジェニック非ヒト哺乳動物)を得ることができる。該ホモ接合体も、本発明に包含される。
【0087】
本発明の変異型NPR−Bをコードする遺伝子がゲノムに導入されているトランスジェニック非ヒト哺乳動物は、好ましくは、全身又は標的組織若しくは標的臓器において該変異型NPR−Bを発現するトランスジェニック非ヒト哺乳動物である。変異型NPR−Bを発現していることは、組み込んだベクターに特異的なプライマーを用いて、RT−PCRを行うことにより確認することができる。
【0088】
前記変異型NPR−Bを、軟骨中に発現しているトランスジェニック非ヒト哺乳動物は、本発明の好ましい態様の1つである。より好ましくは、軟骨中に特異的に前記変異型NPR−Bを発現しているトランスジェニック非ヒト哺乳動物である。このようなトランスジェニック非ヒト哺乳動物は、通常、上述した作製方法に用いる発現ベクターにおいて、軟骨特異的な発現を可能にするプロモーター等の発現制御配列を用いることにより作製することができる。
【0089】
本発明のトランスジェニック非ヒト哺乳動物には、例えば、変異型NPR−Bを軟骨中で発現する場合には、高身長、側彎、指が長い、指先の屈曲変形等の骨表現型が現れる。本発明のトランスジェニック非ヒト哺乳動物は、骨伸長のメカニズムの解明、骨粗鬆症のメカニズムの解明等に用いることができる。また、NPR−B遺伝子の異常が関与する疾患、例えば、NPR−B遺伝子機能獲得型変異家系(実施例1の家系)のモデル動物、成長障害、骨粗鬆症等のモデル動物として利用することができる。また、本発明の非ヒト哺乳動物は、成長障害、骨粗鬆症等の治療剤のスクリーニング等に用いることができる。さらに、NPR−B遺伝子を標的とする標的分子薬のスクリーニング又は開発に用いることができる。
【0090】
例えば、スクリーニングは、本発明のトランスジェニック非ヒト哺乳動物(好ましくは変異型NPR−Bを軟骨中で発現するトランスジェニック非ヒト哺乳動物)に、上述したように候補物質を投与し、該トランスジェニック非ヒト哺乳動物において以下の効果の少なくとも1つの効果が認められるか否かを指標に、成長障害、骨粗鬆症等の治療剤として用い得る物質を選択することができる。
(i)骨伸長を緩和する。
(ii)骨粗鬆症の進行を抑制する。
【0091】
上述したように、本発明の変異型NPR−B又は該変異型NPR−Bをコードする遺伝子を用いることにより、細胞内のcGMP濃度を効果的に増加させることができることから、cGMPの減少に起因する疾患又は症状の予防、改善又は治療に有効な医薬等を開発することができる。前記変異型NPR−Bを利用することにより、cGMPの減少又は増加に起因する疾患又は症状の予防、改善又は治療に有効な医薬を効率よくスクリーニングすることができる。また、本発明のトランスジェニック非ヒト哺乳動物は、成長障害、骨粗鬆症等の原因の解明、成長障害、骨粗鬆症等に対する治療剤の開発等において有用である。
【実施例】
【0092】
(実施例1)
1996年CNP(C型Na利尿ペプチド)-NPRB(Na利尿ペプチド受容体B)シグナル系が内軟骨性骨化に重要な役割を担うことが報告された。2004年にはこの系はcGMPを介してFGFR3を抑制することが示され軟骨無形成症の治療ターゲットとしても期待されている。今回、CNP-NPRB系の異常により高身長を呈した家系を経験したので報告する。
【0093】
症例
12歳10ヵ月男児、経過:2回の骨折歴、骨密度低値などを認めたことから当科紹介受診。身長177.0cm(+2.7SD)、体重55.6kg(+0.8SD)、arm span 176.5cm、正常血圧、顔貌異常なし。手指はくも状で両母趾の過成長が特徴的であった。母親、母方祖母にも同様の身体所見が認められた。染色体転座によるCNP過剰発現の症例(2007年Bocciardi Rら)に類似した表現型であったが本児に染色体異常は認められなかった。
【0094】
目的
CNP-NPRB系の遺伝子異常検索および同定した変異の機能解析。
方法と結果
NPPCおよびNPRB遺伝子をdirect sequence法により解析し、本児および母親、母方祖母にNPRB catalytic domainの同一部位にアミノ酸置換を伴う点変異を同定した。変異NPRB遺伝子をHEK293A細胞に強制発現後、CNPに対するcGMP反応を解析したところ、変異型受容体発現細胞ではCNP無添加条件において既にcGMP濃度は上昇しており、さらにCNP添加によりcGMP濃度は濃度依存的に、野生型受容体発現細胞より上昇した。実際、本児および母親、母方祖母の血中、尿中cGMP濃度は高値であった。
【0095】
まとめ
NPRB遺伝子の機能獲得型変異による高身長の家系を世界で初めて見出した。NPRBの活性化、cGMPの上昇を認めたが、症状は骨・軟骨に限定的であった。
【0096】
(実施例2)
実施例1の12歳10ヵ月男児から単離したヒトNPPB遺伝子の配列はPCR(polymerase chain reaction)法を用いて遺伝子を増幅後、蛍光標識して直接シークエンスをすることで行った。
具体的には、以下の通りである。
【0097】
1996年CNP(C型Na利尿ペプチド)-NPRB(Na利尿ペプチド受容体B)シグナル系が内軟骨性骨化に重要な役割を担うことが報告された。2004年にはこの系はcGMPを介してFGFR3を抑制することが示され軟骨無形成症の治療ターゲットとしても期待されている。今回、CNP-NPRB系の異常により高身長を呈した家系を経験した。12歳10ヵ月男児、経過:2回の骨折歴、骨密度低値などを認めたことから当科(すなわち大阪大学付属病院小児科(日本国大阪府吹田市山田丘2番15号))紹介受診。身長177.0cm(+2.7SD)、体重55.6kg(+0.8SD)、arm span 176.5cm、正常血圧、顔貌異常なし。手指はくも状で両母趾の過成長が特徴的であった。母親、母方祖母にも同様の身体所見が認められた。染色体転座によるCNP過剰発現の症例(2007年Bocciardi Rら)に類似した表現型であったが本児に染色体異常は認められなかった。そこでリガンドであるCNP及び受容体であるNPR-B遺伝子異常を疑い、患児(12歳10ヵ月男児)末梢血から単離したDNAを用いてヒトCNP及びヒトNPR-B遺伝子の解析を行った。DNAの単離は、QuickGene DNA whole blood kit(FUJIFILM社製)を用いて行った。ヒトNPP-B遺伝子の配列はPCR(polymerase chain reaction)法を用いて遺伝子を増幅後、蛍光標識して直接シークエンスをすることで行った。
【0098】
1.配列決定
genomicNPR-B遺伝子のPrimerの配列とPCRの条件を以下に記す。
(ヒトNPR-B遺伝子primer)
Ex.1(1)
F: CTGTAGGCCAGAGCAGCC(配列番号3)
R: AACCAGAGGCCACAGCAC(配列番号4)

Ex.1(2)
F: GACCCCGACCTGCTGTTAG(配列番号5)
R: AGCTTTAGGGACACAGCGAC(配列番号6)

Ex.2
F: GGGACATCCCAGTGATTCAG(配列番号7)
R: ACAATTCCTGCCTGGTTCC(配列番号8)

Ex.3
F: AAGTTTCCCTGTCCTGCATC(配列番号9)
R: AGAGAAGCCCTTCCCCAAAG(配列番号10)

Ex.4+5
F: ACCCCAGAGAGAGGGGAAG(配列番号11)
R: ACTGAACCCTTGAAAGCTGG(配列番号12)

Ex.6+7
F: GAAACAGCTGGGGTCTGG(配列番号13)
R: CTTCAGCCAGAGGTTGTGTG(配列番号14)

Ex.8+9
F: AACCCTGCTGTTGGCTTG(配列番号15)
R: GATGGGGATGAGACAGGATG(配列番号16)

Ex.10+11
F: CCACTGCTCTCTAGCATTTCC(配列番号17)
R: CAGTATAACTTTGGGTCTATCCTTCC(配列番号18)

Ex.12
F: ATGCTGGGTGATAGCTGGTG(配列番号19)
R: CCACAATCAAAGAACAGTGGAAG(配列番号20)

Ex.13+14
F: AGCTAGCCAGTGCCCATCTC(配列番号21)
R: TCTCTGAGGGTGATCAAAGG(配列番号22)

Ex.15+16
F: TACCCACAGCCTCTTCTTCC(配列番号23)
R: GATGAGGCAGAGCCCAAC(配列番号24)

Ex.17+18
F: TGCAGCCACATACACTTTCC(配列番号25)
R: TGAGTTTCAAAGCGGGTCTC(配列番号26)

Ex.19+20
F: GTGTCAAGCTTGTCTCCCTC(配列番号27)
R: GGGATTATGAAAAGAAGAAAAGGG(配列番号28)

Ex.21+22
F: TCGGGCACGGTGCTATAC(配列番号29)
R: GTGTGTGCAGACATGGTGG(配列番号30)
【0099】
(ヒトNPR-B遺伝子PCR条件)
Ex.1-1、1-2、2、3、4+5、6+7、8+9、12、13+14、15+16、17+18、及び21+22については、以下の条件でPCRを行なった。
酵素:Hot Star Taq
条件:95℃で15分、35サイクル: 94℃で30秒、60℃で30秒、及び72℃で1分、最後に72℃で10分。
【0100】
Ex.10+11、及び19+20については、以下の条件でPCRを行なった。
酵素:Ex Taq
条件: 94℃で3分、35サイクル: 94℃で30秒、64℃で1分、及び72℃で1分、最後に72℃で7分。
【0101】
前記条件のPCRにより増幅させた前記患者由来のヒトNPR−B遺伝子について、Big Dye terminator cycle sequencing kit (version 3.1; Applied Biosystems, Foster City, CA)によりシークエンス反応を行った後、シークエンサー(機器名ABI 3130x automated sequencer、Applied Biosystems社製)によって配列を解析した。前記患者から単離したヒトNPR−B遺伝子の配列を、配列番号1に示す。また、この遺伝子にコードされる変異型NPR−Bのアミノ酸配列を、配列番号2に示す。この変異型NPR−Bのアミノ酸配列(配列番号2)は、野生型ヒトNPR−Bのアミノ酸配列において、883番目のバリンがメチオニンで置換された配列であった。なお前記患者において、CNP遺伝子に変異は認められなかった(PCR条件は省略)。
【0102】
この変異型NPR−Bは、健常成人112アレルで認められず新規変異であると考えられた。患者血漿中及び尿中cGMPを測定したところ(cGMP測定キット(ヤマサ社)により測定)いずれも高値でありNPR−Bの機能獲得型変異を疑った。
【0103】
2.変異型NPR−Bを発現するベクター(pcDNA3.1(+)/HA hNPR-B(変異型))の作製
HAタグで標識されたヒト野生型NPR−Bを含む発現ベクター(国立大学法人 東京医科歯科大学 難治疾患研究所 分子代謝医学分野(日本国東京都千代田区神田駿河台2-3-10)より譲渡された)を用いて、変異型NPR−Bを含む発現ベクターを構築した。
このHAタグで標識されたヒト野生型NPR−Bを含む発現ベクターは、例えばJ Clin Endocrinol Metab, October 2007,92(10):4009-4014で紹介されている手法により作製可能である。この論文では発現ベクターとしてpcDNA3.1(+)ベクター(Invitrogen社)を用いて作製されており、今回使用した、前記HAタグで標識されたヒト野生型NPR−Bを含む発現ベクターを、pcDNA3.1(+)/HA hNPR-B(野生型)と命名する。このpcDNA3.1(+)/HA hNPR-Bの遺伝子配列を、配列番号31に示す。今回認められた変異塩基は、pcDNA3.1(+)/HA hNPR-B(野生型)(配列番号31における一番初めのG(グアニン)をこの遺伝子配列の第1番目塩基とする)では3594番目のグアニン(G)であり、3500番目のBsrGI(BioLabs社)及び4092番目のXhoI(BioLabs社)制限酵素部位で挟むような形で変異遺伝子へ置き換えることとした。
置き換える遺伝子をPCR法により作製する手順は、以下のとおりである。
【0104】
上流は、配列番号31の塩基配列において3405番目から3607番目の遺伝子を以下のprimer(M1-reverse内に変異を置き換えたprimer)
M1-forward: 5’ACACAGGCCTATCTGGAGGA3’(配列番号32)
M1- reverse: 5’TTAAGAAGTGTCATTACCTGCA3’ (配列番号33)
を用いて、
酵素:Hot Star taq
条件: 95℃で15分、35サイクル: 94℃で30秒、56℃で30秒、及び72℃で1分、最後に72℃で10分
により増幅させた。
【0105】
下流は、配列番号31の塩基配列において3586番目から4203番目の遺伝子を以下のprimer(M2-forward内に変異を置き換えたprimer)
M2- forward: 5’TGCAGGTAATGACACTTCTTAA3’ (配列番号34)
M2- reverse: 5’ CACCTTCCAGGGTCAAGGA3’ (配列番号35)
を用いて、
酵素:Hot Star taq
条件: 95℃で15分、35サイクル: 94℃で30秒、56℃で30秒、及び72℃で1分、最後に72℃で10分
により増幅させた。
【0106】
これら2つのPCR産物をGel Extraction kit(QIAGEN)で精製した後、これら上流、下流PCR産物を鋳型(template)として、Primer M1-forward(配列番号32)及びM2-reverse(配列番号35)を用いて、
酵素:Hot Star taq
条件: 95℃で15分、35サイクル: 94℃で30秒、58℃で30秒、及び72℃で1分、最後に72℃で10分
により増幅させ、変異遺伝子をもつ3405番目から4203番目までのPCR産物を作製した。
【0107】
このPCR産物及びpcDNA3.1(+)/HA hNPR-B(野生型)をそれぞれ、3500番目のBsrGI(BioLabs社)及び4092番目のXhoI(BioLabs社)制限酵素部位で37℃、90分で酵素消化し(それぞれinsertDNA BsrGI* XhoI 、pcDNA3.1NPR-B(野生型) BsrGI* XhoIと呼ぶことにする)、それぞれGel Extraction kit(QIAGEN)で精製した後、insertDNA BsrGI* XhoI 及びpcDNA3.1NPR-B(野生型) BsrGI* XhoIをDNA ligation kit ver.2.1(TaKaRa)を用いて、添付文書に従いライゲーションし、コンピテントセルにトランスフォーメーションし、アンピシリン入りLBプレート培地で培養した。およそ15時間後コロニーが形成されていることを確認し、それぞれのコロニーをアンピシリン入りLB液体培地で培養した後、QIA prep Spin Miniprep kit(QIAGEN)を用いて作製した変異型NPR-Bを発現するベクター(以下、「pcDNA3.1(+)/HA hNPR-B(変異型)」という)を精製し、pcDNA3.1(+)/HA hNPRB 特異的primer(以下に列挙する)により、変異部位も含めNPR-B遺伝子の全長を前述の手法と同様にダイレクトシークエンス法により確認した。
【0108】
pcDNA3.1(+)/HA hNPRB 特異的primer
pcDNA3.1hNPRB 1F:TAATACGACTCACTATAGGG(配列番号36)
pcDNA3.1hNPRB 1R:ACCAGGGTACGATAATGGTC(配列番号37)
pcDNA3.1hNPRB 2F :ACCTCAAGCTGTACCATGAC(配列番号38)
pdDNA3.1hNPRB 2R :AGACTCTCCCCAAAGACATC(配列番号39)
pcDNA3.1hNPRB 3F :GGGCGCATTGTGTATATCT(配列番号40)
pcDNA3.1hNPRB 3R :TCTCGGTCATTGTTCTTGTC(配列番号41)
pcDNA3.1hNPRB 4F :TGATGGGATCCTGCTATATG(配列番号42)
pcDNA3.1hNPRB 4R :GTGATAACGCTCTGAGTTGC(配列番号43)
pcDNA3.1hNPRB 5F :TTCCAGCTTCCTAATTTTCC(配列番号44)
pcDNA3.1hNPRB 5R :CGACTATCCACCACACAGTT(配列番号45)
pcDNA3.1hNPRB 6F :AAATGACAGCATCAACTTGG(配列番号46)
pcDNA3.1hNPRB 6R :AGCCCTTAATCTGTCCAAAG(配列番号47)
pcDNA3.1hNPRB 7F :ATATTTCCGGCCAAGCAT(配列番号48)
pcDNA3.1hNPRB 7R :GCCAGATACCACCATGTAAG(配列番号49)
pcDNA3.1hNPRB 8F :AGTGACATTGTTGGCTTCAC(配列番号50)
pcDNA3.1hNPRB 8R :CAGTATGTTCGCATCTTTCC(配列番号51)
pcDNA3.1hNPRB 9F :CGTATGGCCCTAGCATTACT(配列番号52)
pcDNA3.1hNPRB 9R :AAGGCACAGTCGAGG(配列番号53)
【0109】
新たに作製したpcDNA3.1(+)/HA hNPR-B(変異型)遺伝子配列を配列番号54に示す(一番初めのG(グアニン)をこの遺伝子配列の第1番目塩基とする)。pcDNA3.1(+)/HA hNPR-B(変異型)の遺伝子配列(配列番号54)は、pcDNA3.1(+)/HA hNPR-B(野生型)の遺伝子配列(配列番号31)において、3594番目のグアニン(G)がアデニン(A)に置換された配列である。
【0110】
3.GFPを発現するベクター(コントロール)の作製
更にコントロールとして、GFPをコードする遺伝子を用いた以外は、前記2.と同様にして、GFPを発現するベクターを作製した(以下、このベクターをpcDNA4 GFPという)。
【0111】
4.野生型NPR−B又は変異型NPR−BをコードするDNAが導入されたHEK293A細胞のcGMP生産能の確認
遺伝子導入実験として、前記で作製した野生型NPR−B遺伝子を有する発現ベクター(pcDNA3.1(+)HA hNPR-B(野生型))、及び変異型NPR−B遺伝子を有する発現ベクター(pcDNA3.1(+)HA hNPR-B(変異型))をそれぞれリポフェクション法(FuGENE6 Roche社)によりHEK293A細胞に導入して、野生型NPR−B又は変異型NPR−Bを強制発現させた。同様にして、GFPを発現するベクター(pcDNA4 GFP)もHEK293A細胞に導入した。
【0112】
具体的には、12穴プレート(FALCON社製)の各ウェルに、HEK293A細胞を(10万)個接種した。DMEM(nacalai tesque社製)+10%FBS、0.1mM non-essential amino acid、2mM L-glutamine+1%penicillin/streptomycin(いずれのメーカーでも購入可能)培地を1mL添加後、24時間培養し、次いで、FuGene6(Roche社製)を用いて、添付説明書の通り、野生型NPR−B遺伝子を有する発現ベクター(pcDNA3.1(+)HA hNPR-B(野生型))、変異型NPR−B遺伝子を有する発現ベクター(pcDNA3.1(+)HA hNPR-B(変異型))及び対照としてGFPを発現するベクター(pcDNA4 GFP)をトランスフェクションした。
発現ベクターをトランスフェクション48時間後、培養上清を分取し、培地を0.1M HCl 300μLに置換し、細胞を融解回収し、cGMP測定キット(CaymanChemical社製)の説明書に従いcGMPを測定した。
【0113】
導入した野生型NPR−B又は変異型NPR−BがHEK293A細胞において発現されていることは、HAタグを標識としてウェスタンブロットによって確認した。
ウェスタンブロットでは、一次抗体として、抗HAタグ抗体(cellsignaling、1:1000)、コントロールとしての一次抗体はβ−アクチン(Sigma、1:4000)を、二次抗体としてはanti-mouse IgG、horseradish peroxidase-linked sheep antibody(Promega、1:1000)を使用した。
ウェスタンブロットの手順は、抗体として前記抗体を用いた以外は、J Clin Endocrinol Metab, October 2007,92(10):4009-4014に記載された方法に従った。
結果を図1に示す。
【0114】
図1は、HEK293A細胞における野生型NPR−B(Wt)及び変異型NPR−B(Mut)の発現をウェスタンブロッティングにより調べた結果を示す図である。図1に示すように、野生型NPR−B遺伝子を有する発現ベクターを導入した細胞(図1中、Wt)及び変異型NPR−B遺伝子を有する発現ベクターを導入した細胞(図1中、Mut)では、NPR−Bのバンドに相当する位置にバンドを認め、それぞれ野生型NPR−B及び変異型NPR−Bを発現していることが確認された。GFPを発現するベクター(コントロール)を導入した細胞(図1中、GFP)では、NPR−Bの発現は認められなかった。図1より、GFPを発現するベクター、野生型NPR−B遺伝子を有する発現ベクター及び変異型NPR−B遺伝子を有する発現ベクターのいずれを導入した細胞においても、β−アクチンは同程度に発現していることが分かる。
【0115】
野生型NPR−B又は変異型NPR−Bを強制発現させてから(ベクターをトランスフェクションしてから)48時間経過した細胞に、0.5mM IBMX(3-isobutyl-1-methylxanthine)(Wako社製)を添加して10分間、37℃でインキュベートした後、各種濃度(0mol/L、10−8mol/L、10−7mol/L及び10−6mol/L)のCNP(Biochem社より購入)を添加し、10分、37℃でインキュベートした。その後、細胞培養液を吸引除去した後、cGMP測定キットの説明書通りに0.1M HCL300μLにより、細胞回収液を得た。得られた細胞回収液を用いて、cGMP測定キット(Cayman)でcGMP濃度を測定した。結果を図2に示す。図2の横軸は、添加したCNP濃度であり、縦軸は、産生したcGMP量である。図2中、灰色のバーは野生型NPR−B発現細胞のcGMP生産量であり、黒いバーは、変異型NPR−B発現細胞のcGMP生産量である。図2のデータは、平均値±標準誤差(SE)を示す(n=3)。野生型NPR−B発現細胞のcGMP生産量に対する変異型NPR−B発現細胞のcGMP生産量の有意差は、Student t検定により求めた(*:P<0.05)。
CNPに対するcGMP反応を解析したところ、図2に示すように、変異型NPR−B発現細胞ではCNP無添加(CNP:0mol/L)条件において既にcGMP濃度は上昇しており、さらにCNP添加によりcGMP濃度は濃度依存的に、野生型NPR−B発現細胞より上昇することが確認できた。
【0116】
前記結果より、野生型NPR−Bのアミノ酸配列における883番目のバリンのメチオニンによる置換は、NPR−Bにおける酵素領域の構造的な変化をもたらし、このため変異型NPR−Bは、リガンドのない状態でも常にグアニル酸シクラーゼとしての活性をもつものと考えられた。
また、CNPを添加することにより、cGMP濃度がCNP濃度依存的に上昇することから、通常のサイクルによる触媒領域の活性化も起こることが確認された。このような性質をもつ変異型NPR−Bはこれまで知られておらず、タンパク質構造化学としても興味深い知見である。
【0117】
(実施例3)
軟骨特異的発現トランスジェニックマウスの作製
変異型NPR-B(p.Val883Met)を軟骨特異的に発現するトランスジェニックマウス(Tgマウス)を作製するにあたってp742-Int lacZベクター(Tsumaki N et al. Separable cis-regulatory elements that contribute to tissue-and site-specific alpha 2(XI) collagen gene expression in the embryonic mouse cartilage. J Cell Biol 1996;134:1573-82)を使用した。このベクターはCol11a2遺伝子(XI型コラーゲンα2鎖遺伝子)のプロモーター及びイントロン・エンハンサーを含んでおり、制限酵素NotIでインサートであるlacZ(3.5kb)を切り出して捨て、ベクター部分をT4DNA polymeraseで平滑末端化したのちに、Alkaline Phosphatase(Calf intestine)(商品名、タカラバイオ社製)を用いてCIAP処理した。
【0118】
インサート(変異型NPR−B)調製のために、実施例2で調製したpcDNA3.1(+)/HA hNPR-B(変異型)から制限酵素HindIII/XhoIで切り出した断片をKlenowで平滑末端化した。得られた平滑化断片と、上記で処理したp742-Int lacZベクターとを用いてライゲーションを行った(得られたプラスミドをp742NPR-B V883M Intと呼ぶ)。Tgマウス作製のため、このp742NPR-B V883M Intからプロモーター/HA-NPR-B/イントロン以外の余分な部分を除去するために制限酵素HindIII/PvuIで処理した後、目的の断片(約7.3kb)をQIAquick Gel Extraction Kit(Quiagen社製)を用いて精製した。得られたコンストラクト(Col11a2 promoter-HA tagged human NPR-B V883Mトランスジーンコンストラクト)を日本エスエルシー株式会社(〒431-1103静岡県浜松市西区湖東町3371-8)に委託してC57BL/6系統マウス受精卵250個にマイクロインジェクション法により挿入した後、仮親マウスへ戻した。自然分娩させて産仔を得た。図3に、マウスに導入したCol11a2 promoter-HA tagged human NPR-B V883Mトランスジーンコンストラクトの構造を示す。このトランスジーンコンストラクト中、ベクター由来の配列は、Col11a2 promote(Col11a2遺伝子のプロモーター)、SV40 intron(SV40イントロン)、SV40 polyA、及びCoi11a2 first intron(Col11a2遺伝子の第一イントロン)である。
【0119】
生まれてきたマウスがTgマウスであるかどうかを確認するために、マウスの尾からDNAを抽出し、プライマー(配列番号55及び配列番号56)を用いて、以下の条件でPCRを行った(genotyping)。
使用機器:Quiagen社製
酵素:Hot Star Taq
95℃15分、(94℃30秒+58℃30秒+72℃1分)×30回、72℃10分
【0120】
その結果、生まれてきたマウスのうち4匹でtransgeneが陽性であった。すなわち変異型NPR−Bを含むコンストラクトが導入されていた。これらのtransgene陽性マウス(Tg陽性マウス)を、それぞれ、Tg陽性マウスNo.19、23、28、4-1と命名した。またこれら4匹のTg陽性マウスにおいて変異型NPR-B(NPR-B V883M)mRNAが発現しているかどうかを、マウスの尾の骨からRNeasy Mini Kit(Quiagen社製)を用いてRNAを抽出し、同プライマー(配列番号55及び配列番号56)を用いたRT-PCRを行って確認した。その結果、4匹全てのマウスでNPR-B V883M mRNAが陽性であることを確認した。それぞれのマウスのNPR-B V883M mRNAの発現量の定量には、軟骨特異的に発現しているSOX9遺伝子のmRNA発現量をハウスキーピング遺伝子(housekeeping gene)(分母)として同プライマー(配列番号55及び配列番号56)を用いてRealtime-PCRを行った。SOX9遺伝子のmRNA発現の確認は、配列番号57及び配列番号58のプライマーを用いて行った。RT-PCRは、以下の条件で行った。
使用機器:Quiagen社製
酵素:Hot Star Taq
95℃15分、(94℃30秒+58℃30秒+72℃1分)×30回、72℃10分
【0121】
結果を、図4に示す。図4中のグラフ(上図)は、TgマウスのNPR-B V883M mRNA発現量(Realtime-PCR)を示す。図4の下図は、RT-PCRによりTgマウスにおける変異型NPR-B(NPR-B V883M)mRNAの発現を調べた結果を示す(図4の下図中の上:変異型NPR-B(NPR-B V883M)mRNA、下:SOX9 mRNA)。図4中、Tg(-)10は、野生型マウス(C57BL/6系統マウス)である。Tg(+)19、Tg(+)23、Tg(+)28、及びTg(+)4-1はそれぞれ、Tg陽性マウスNo.19、23、28、及び4-1である。
【0122】
NPR-B V883M mRNA発現量の最も高かったTg陽性マウスNo.4-1(Tg(+)4-1)は高度亀背を含めた骨変形により生後6週で死亡した。NPR-B V883M mRNA発現量の低かったTg陽性マウスNo.19(Tg(+)19)、及びTg陽性マウスNo.23(Tg(+)23)には外表上、亀背を含めて骨変形は認めなかった(Tg陽性マウスNo.19は交配後分娩中のトラブルにより死亡した)。中等度の発現量を認めたTg陽性マウスNo.28(Tg(+)28)は外表上高身長で亀背を認め、指や尾が長い、指の先が屈曲変形しているといった骨変形を認めた。このTg陽性マウスNo.28のレントゲン写真を図4〜8に示す。図4〜8中、TgはTg陽性マウスNo.28(Tg(+)28)であり、Wtは野生型マウスである。
現在Tg陽性マウスNo.19、及びTg陽性マウスNo.28それぞれを野生型C57BL/6マウスと交配させてコロニーを作製中であるが、順調に妊娠分娩している。
【0123】
Tg陽性マウスNo.28(Tg(+)28)では以前解析した高身長家系と同じような高身長、側彎、指が長い、指先の屈曲変形などの骨表現型を認めており、この家系のモデルマウスを作製することができた。このモデルマウスを用いて、内軟骨性骨化において骨が伸びるのにNPR-B遺伝子がどのようにシグナル伝達に関わっているのかを組織化学的又は細胞、分子レベルで解析することができる。また本家系では骨粗鬆症も認めているが、このモデルマウスを用いることによりNPR-B遺伝子と骨粗鬆症の関連に関しても研究することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(a)〜(c)のいずれかのポリペプチドである変異型ナトリウム利尿ペプチドB受容体、又はその塩。
(a)配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド
(b)配列番号2に示されるアミノ酸配列のうち1〜複数個のアミノ酸が欠失、付加、又は置換したアミノ酸配列を有し、かつCNPの刺激なしにcGMPを生産する活性を有するポリペプチド
(c)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA又は配列番号1と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるポリペプチドであって、かつCNPの刺激なしにcGMPを生産する活性を有するポリペプチド
【請求項2】
以下の(a)〜(c)のいずれかのポリペプチドをコードする遺伝子。
(a)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド
(b)配列番号2に示されるアミノ酸配列のうち1〜複数個のアミノ酸が欠失、付加、又は置換したアミノ酸配列からなり、かつCNPの刺激なしにcGMPを生産する活性を有するポリペプチド
(c)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA又は配列番号1と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAにコードされるポリペプチドであって、かつCNPの刺激なしにcGMPを生産する活性を有するポリペプチド
【請求項3】
以下の(a)〜(c)のいずれかのDNAを含むことを特徴とすることを特徴とする発現ベクター。
(a)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするDNA
(b)配列番号2に示されるアミノ酸配列のうち1〜複数個のアミノ酸が欠失、付加、又は置換したアミノ酸配列からなり、かつCNPの刺激なしにcGMPを生産する活性を有するポリペプチドをコードするDNA
(c)配列番号1に示される塩基配列からなるDNA又は配列番号1と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであって、かつCNPの刺激なしにcGMPを生産する活性を有するポリペプチドをコードするDNA
【請求項4】
請求項1に記載の変異型ナトリウム利尿ペプチドB受容体又はその薬理学的に許容される塩を含むことを特徴とする低いcGMP水準と関連する疾患の予防又は治療剤。
【請求項5】
請求項2に記載の遺伝子又は請求項3に記載の発現ベクターを含むことを特徴とする低いcGMP水準と関連する疾患の予防又は治療剤。
【請求項6】
低いcGMP水準と関連する疾患が、肺高血圧、低身長、勃起不全、心不全、認知症、又は癌である請求項4又は5に記載の予防又は治療剤。
【請求項7】
(I)請求項1に記載の変異型ナトリウム利尿ペプチドB受容体の構造を解析する工程を含むことを特徴とするナトリウム利尿ペプチドB受容体活性化物質のスクリーニング方法。
【請求項8】
(II)工程(I)の解析結果から、ナトリウム利尿ペプチドB受容体を活性化する候補物質を選択する工程、(III)in vitro又は非ヒト哺乳動物中で野生型ナトリウム利尿ペプチドB受容体に該候補物質を接触させる工程、(IV)細胞内におけるcGMP量をモニターする工程、及び(V)候補物質を接触させない場合と比較して、工程(IV)において細胞内におけるcGMP量の増加が検出された候補物質をナトリウム利尿ペプチドB受容体活性化剤として選択する工程を含むことを特徴とする請求項7に記載のナトリウム利尿ペプチドB受容体活性化剤のスクリーニング方法。
【請求項9】
請求項1に記載の変異型ナトリウム利尿ペプチドB受容体をコードする遺伝子がゲノムに導入されていることを特徴とするトランスジェニック非ヒト哺乳動物。
【請求項10】
変異型ナトリウム利尿ペプチドB受容体をコードする遺伝子が、軟骨特異的な発現を可能にする発現制御配列の制御下にある請求項9に記載のトランスジェニック非ヒト哺乳動物。
【請求項11】
非ヒト哺乳動物が、マウス又はラットである請求項9又は10に記載のトランスジェニック非ヒト哺乳動物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−95639(P2012−95639A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62193(P2011−62193)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】