説明

変速機の入力軸ダンパ

【課題】相対的に小さな空間を占めながらも変速機の入力軸に十分な慣性を提供し、共振によるラトル騷音を顕著に低減させるのはもちろん、設置空間上の問題を解決できるようにした変速機の入力軸ダンパを提供する。
【解決手段】本発明は、変速機の入力軸(1)に相対回転可能に装着された慣性体アセンブリー(3)と、前記入力軸(1)の回転力の入力を受けて前記慣性体アセンブリー(3)に増速して出力するように前記入力軸(1)に設置された遊星ギアセット(5)と、を含んで構成されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速機の入力軸ダンパに係り、より詳しくは、変速機の入力軸に慣性を追加して特定回転数領域での共振を回避し、変速機のラトル騷音を低減させる変速機の入力軸ダンパに関する。
【背景技術】
【0002】
下記の先行技術文献のように、変速機の入力軸に慣性プレートを含んで構成される入力軸ダンパISD(Input Shaft Damper)を備えることにより、DMF(Dual Mass Flywheel)を使用せずに、変速機のラトル騷音が問題となる特定回転数帯域の共振を効果的に回避することができる。
しかし、上記のようなISDにより適切な効果を得るためには、大きな慣性と強度を入力軸に付与する必要があるが、通常の方法で大きな慣性と強度を入力軸に付与するとISD自体の嵩が相当に大きくなるため、その設置位置や空間の制約が多いという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】KR10−2007−0039819 A
【特許文献2】KR10−2009−0049295 A
【特許文献3】特開2000−039048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、相対的に小さな空間を占めながらも変速機の入力軸に十分な慣性を提供し、共振によるラトル騷音を顕著に低減させるのはもちろん、設置空間上の問題を解決できるようにした変速機の入力軸ダンパを提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、変速機の入力軸(1)に相対回転可能に装着された慣性体アセンブリー(3)と、前記入力軸(1)の回転力の入力を受けて前記慣性体アセンブリー(3)に増速して出力するように前記入力軸(1)に設置された遊星ギアセット(5)と、を含んで構成されることを特徴とする。
【0006】
前記遊星ギアセット(5)は、前記慣性体アセンブリー(3)と一体に連結されて前記入力軸(1)の外側に回転可能に挿入されたサンギア(S)と、前記サンギア(S)の外側に噛合わされた多数の遊星ギアの回転軸を提供して前記入力軸(1)に一体で連結されたキャリア(C)と、前記多数の遊星ギアの外側に噛合わされ変速機ケース(7)に対して固定されたリングギア(R)と、を含んで構成されることを特徴とする。
【0007】
前記慣性体アセンブリー(3)は、前記サンギア(S)と一体に連結されて前記入力軸(1)の外周面に回転可能に挿入される中空軸(9)と、前記中空軸(9)の外周面に回転が拘束された状態で設置されるドライブプレート(11)と、前記中空軸(9)の外周面に回転自在な状態で設置される慣性プレート(13)と、前記ドライブプレート(11)と慣性プレート(13)間の相互の回転方向の流動を緩衝することができるように設置されたダンピングスプリング(15)と、前記ドライブプレート(11)と慣性プレート(13)の軸方向の連結状態を確保しながら相互の回転変位を制限するように設置されるストッパーピン(17)と、を含んで構成されることを特徴とする。
【0008】
前記サンギア(S)と中空軸(9)は、第1ベアリング(19)を通じて前記入力軸(1)に回転可能に挿入され、前記慣性プレート(13)は、第2ベアリング(21)を通じて前記中空軸(9)の外周面に回転可能に結合されたことを特徴とする。
【0009】
前記サンギア(S)と中空軸(9)は、第1ブッシュを通じて前記入力軸(1)に回転可能に挿入され、前記慣性プレート(13)は、第2ブッシュを通じて前記中空軸(9)の外周面に回転可能に結合されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、相対的に小さな空間で変速機の入力軸に十分な慣性を提供できるようにし、共振によるラトル騷音を顕著に低減できるのはもちろんのこと、入力軸ダンパの設置空間の問題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による変速機の入力軸ダンパの構造を説明した図面である。
【図2】図1の遊星ギア装置を側方から観測した状態を図示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1、2に示す通り、本発明の変速機の入力軸ダンパ(ISD)の実施例は、変速機の入力軸(1)に相対回転可能に装着された慣性体アセンブリー(3)と、 入力軸(1)の回転力の入力を受け、慣性体アセンブリー(3)に増速して出力するように入力軸(1)に設置された遊星ギアセット(5)を含んで構成される。
【0013】
すなわち、従来とは異なり入力軸(1)に慣性を付与する慣性体アセンブリー(3)を入力軸(1)と分離して回転可能な状態とし、入力軸(1)の回転力を遊星ギアセット(5)を通じて増速して慣性体アセンブリー(3)に提供することにより、逆に慣性体アセンブリー(3)で遊星ギアセット(5)のギア比に応じて増加したトルクが入力軸(1)に加えられる状況となる。さらに、慣性体アセンブリー(3)と遊星ギアセット(5)が占める嵩に相当する従来の単純な慣性体アセンブリー(3)を入力軸(1)に直接連結した場合に比べて、何倍もの慣性増大効果を得ることができるようにしたものである。
【0014】
遊星ギアセット(5)は、慣性体アセンブリー(3)と一体に連結され、入力軸(1)の外側に回転可能に挿入されたサンギア(S)と、 サンギア(S)の外側に噛合わされる多数の遊星ギア(P)の回転軸を提供し入力軸(1)に一体に連結されたキャリア(C)と、 多数の遊星ギア(P)の外側に噛合わされ変速機ケース(7)に対して固定されたリングギア(R)を含んで構成される。
【0015】
慣性体アセンブリー(3)は、サンギア(S)と一体連結されて入力軸(1)の外周面に回転可能に挿入される中空軸(9)と、 中空軸(9)の外周面に回転が拘束された状態で設置されるドライブプレート(11)と、 中空軸(9)の外周面に回転自在な状態で設置される慣性プレート(13)と、 ドライブプレート(11)と慣性プレート(13)間の相互の回転方向流動を緩衝することができるように設置されたダンピングスプリング(15)と、 ドライブプレート(11)と慣性プレート(13)の軸方向の連結状態を確保しながら相互の回転変位を制限するように設置されるストッパーピン(17)を含んで構成される。
【0016】
サンギア(S)と中空軸(9)は、第1ベアリング(19)を通じて入力軸(1)に回転可能に挿入され、慣性プレート(13)は、第2ベアリング(21)を通じて中空軸(9)の外周面に回転可能に結合される。
もちろん第1ベアリング(19)と第2ベアリング(21)は、それぞれブッシュで代替され、入力軸(1)とサンギア(S)及び中空軸(9)の間に設置される第1ブッシュと、中空軸(9)と慣性プレート(13)の間に設置される第2ブッシュで構成することもできる。
【0017】
慣性体アセンブリー(3)は、従来技術のISD(Input Shaft Damper)と同一の概念であり、それ自体の回転慣性が変速機の入力軸(1)の慣性を変更させて特定回転数帯域での共振を回避するようにする機能と、前記のようにドライブプレート(11)と慣性プレート(13)がダンピングスプリング(15)を間に置いて回転方向に相互変位を形成することにより、エンジンから入力される回転振動を自体的に吸収して消滅させる機能を兼ねて行うものである。
【0018】
もちろん、ドライブプレート(11)と慣性プレート(13)の間には、相互間の摩擦力の発生によりヒステリシスを形成するようにし、前記回転振動の吸収性能をさらに向上させるように構成することもできる。
前記したように構成された本発明変速機のISDは、入力軸(1)が、リングギア(R)が固定された遊星ギアセット(5)のキャリア(C)と一体に連結されることにより、サンギア(S)に連結された慣性体アセンブリー(3)から遊星ギアセット(5)のギア比に応じて増大された回転慣性トルクの伝達を受けることと同様の状態になり、結果的に慣性体アセンブリー(3)と遊星ギアセット(5)が占める空間に、単純に従来のような形式で入力軸(1)に固定されるISDを構成することに比べて、入力軸(1)の回転慣性を最小限3〜4倍以上増大させることができる。
【0019】
したがって、より狭小な空間にISDを構成できることにより、パワートレインの設計自由度が向上するのはもちろん、同一条件ではエンジンにDMF(Dual Mass Flywheel)を装着した水準以上に共振点を低めることができる効果を有する。
【0020】
以上、本発明に関する好ましい実施形態を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の属する技術分野を逸脱しない範囲での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0021】
1、 入力軸
3、 慣性体アセンブリー
5、 遊星ギアセット
7、 変速機ケース
9、 中空軸
11、 ドライブプレート
13、 慣性プレート
15、 ダンピングスプリング
17、 ストッパーピン
19、 第1ベアリング
21、 第2ベアリング
S、 サンギア
C、 キャリア
P、 遊星ギア
R、 リングギア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変速機の入力軸(1)に相対回転可能に装着された慣性体アセンブリー(3)と、
前記入力軸(1)の回転力の入力を受けて前記慣性体アセンブリー(3)に増速して出力するように前記入力軸(1)に設置された遊星ギアセット(5)と、
を含んで構成されることを特徴とする変速機の入力軸ダンパ。
【請求項2】
前記遊星ギアセット(5)は、
前記慣性体アセンブリー(3)と一体に連結されて前記入力軸(1)の外側に回転可能に挿入されたサンギア(S)と、
前記サンギア(S)の外側に噛合わされた多数の遊星ギアの回転軸を提供して前記入力軸(1)に一体で連結されたキャリア(C)と、
前記多数の遊星ギアの外側に噛合わされ変速機ケース(7)に対して固定されたリングギア(R)と、
を含んで構成されることを特徴とする請求項1に記載の変速機の入力軸ダンパ。
【請求項3】
前記慣性体アセンブリー(3)は、
前記サンギア(S)と一体に連結されて前記入力軸(1)の外周面に回転可能に挿入される中空軸(9)と、
前記中空軸(9)の外周面に回転が拘束された状態で設置されるドライブプレート(11)と、
前記中空軸(9)の外周面に回転自在な状態で設置される慣性プレート(13)と、
前記ドライブプレート(11)と慣性プレート(13)間の相互の回転方向の流動を緩衝することができるように設置されたダンピングスプリング(15)と、
前記ドライブプレート(11)と慣性プレート(13)の軸方向の連結状態を確保しながら相互の回転変位を制限するように設置されるストッパーピン(17)と、
を含んで構成されることを特徴とする請求項1に記載の変速機の入力軸ダンパ。
【請求項4】
前記サンギア(S)と中空軸(9)は、第1ベアリング(19)を通じて前記入力軸(1)に回転可能に挿入され、
前記慣性プレート(13)は、第2ベアリング(21)を通じて前記中空軸(9)の外周面に回転可能に結合されることを特徴とする請求項3に記載の変速機の入力軸ダンパ。
【請求項5】
前記サンギア(S)と中空軸(9)は、第1ブッシュを通じて前記入力軸(1)に回転可能に挿入され、
前記慣性プレート(13)は、第2ブッシュを通じて前記中空軸(9)の外周面に回転可能に結合されることを特徴とする請求項3に記載の変速機の入力軸ダンパ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−96573(P2013−96573A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−71693(P2012−71693)
【出願日】平成24年3月27日(2012.3.27)
【出願人】(591251636)現代自動車株式会社 (1,064)
【Fターム(参考)】