説明

変速機駆動装置

【課題】装置の小型化を図ることができる変速機駆動装置を提供すること。
【解決手段】シフトセレクト軸15の先端部が、ハウジング22内に収容されている。ハウジング22は、挿通孔110が厚み方向に貫通して形成された第1側壁111を有している。第1すべり軸受101は、挿通孔110の内周に固定され、シフトセレクト軸15をその中心軸線17周りに回転可能にかつ軸方向M4移動可能に支持している。第1側壁111の外表面には、第1すべり軸受101の外周を取り囲む環状溝115が形成されている。挿通口108は、環状溝115内に進入する環状部107を有するキャップ部材105によって閉塞されている。キャップ部材105は、シフトセレクト軸15に固定されている。環状部107と挿通孔110の内周との間は、第1すべり軸受101と軸方向に重複するシール部材103によってシールされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、変速機を駆動するための変速機駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
変速機駆動装置は、たとえば、自動車用の平行歯車式変速機の変速操作を自動化するために用いられる。
変速機駆動装置は、変速機の変速操作用のシフトセレクト軸を有している。シフトセレクト軸は、変速機駆動装置に含まれる電動アクチュエータにより駆動される。これにより、シフトセレクト軸は、その中心軸線周りの回転によってシフト動作し、また、軸方向移動によってセレクト動作する。特許文献1には、この変速機駆動装置の一例を示す。
【0003】
特許文献1では、シフトセレクト軸の一端部の外周には、当該シフトセレクト軸を軸方向移動させるためのピニオンが噛み合うラック部が形成されている。また、シフトセレクト軸におけるラック部と軸方向に異なる位置(特許文献1ではたとえば他端部)の外周には、スプライン部が形成されている。スプライン部には、当該シフトセレクト軸を回転移動させるための機械要素(たとえば歯車)がスプライン嵌合している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−30637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シフトセレクト軸をシフト動作させるための機構とシフトセレクト軸をセレクト動作させるための機構とを集約し、これらの機構をハウジング内に収容して電動アクチュエータを構成する場合、シフトセレクト軸をハウジング内に、その中心軸線周りに回転可能にかつ軸方向移動可能に支持させる必要がある。このシフトセレクト軸の支持には、たとえば、シフトセレクト軸の外周に摺接してシフトセレクト軸を支持するすべり軸受が用いられる。また、かかる場合、ごみや埃がハウジング内に侵入しないように、ハウジングにおけるシフトセレクト軸が挿通する挿通孔に関し、ハウジングとシフトセレクト軸の外周との間を、シール部材を用いてシールする必要もある。そのため、シフトセレクト軸のハウジング内に収容される部分の全周に、すべり軸受やシール部材を取り付ける必要がある。
【0006】
しかしながら、シフトセレクト軸にスプライン部やラック部が形成される場合は、すべり軸受やシール部材を、シフトセレクト軸の外周におけるスプライン部やラック部を除く位置に取り付ける必要がある。そして、すべり軸受やシール部材を軸方向に並ぶように配置させる必要もある。そのため、シフトセレクト軸におけるハウジング内に収容される部分の軸長を長く設定する必要がある。これにより、ハウジングが軸方向に長くなり、電動アクチュエータが大型化するおそれがある。
【0007】
そこで、この発明の目的は、シフトセレクト軸におけるハウジング内に収容されるべき部分の軸長を短縮することができ、これにより、装置の小型化を図ることができる変速機駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、変速機変速用のシフトセレクト軸(15)と、前記シフトセレクト軸が挿通する筒状の挿通孔(110)が厚み方向に貫通して形成された隔壁(111)を有し、前記シフトセレクト軸の先端部(15A)を含む部分を収容するハウジング(22)と、前記隔壁における前記挿通孔の内周に固定され、前記シフトセレクト軸の外周に摺接して、前記シフトセレクト軸をその中心軸線(17)周りに回転可能にかつ軸方向(M4)移動可能に支持するすべり軸受(101)とを含み、前記隔壁における、当該隔壁に対し前記シフトセレクト軸の先端部側と反対側の面である外表面には、前記すべり軸受の外周を取り囲む環状溝(115)が形成されており、前記環状溝内に進入して前記すべり軸受の外周を取り囲む環状部(107)を有し、前記シフトセレクト軸に固定されて、前記外表面において前記挿通孔が開口して形成される挿通口(108)を覆うキャップ部材(105)と、前記環状部の外周と、前記隔壁における前記環状溝の外周との間をシールする環状のシール部材(103)とをさらに含み、前記すべり軸受と前記シール部材とは軸方向に重複している、変速機駆動装置(3)である。
【0009】
なお、括弧内の数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
この構成によれば、すべり軸受は、隔壁における挿通孔の内周に固定され、シフトセレクト軸の外周に摺接してシフトセレクト軸を支持している。また、隔壁の挿通口がシフトセレクト軸に固定されたキャップ部材によって覆われるとともに、キャップ部材と隔壁との間が、すべり軸受に軸方向に重複するシール部材によってシールされている。
【0010】
すべり軸受およびシール部材が軸方向に重複しているので、すべり軸受およびシール部材を軸方向に沿って並べる場合に比較して、シフトセレクト軸におけるハウジング内に収容されるべき部分の軸長を短縮することができる。ゆえに、装置の小型化を図ることができる。
請求項2記載の発明は、少なくとも先端部(15A)が中空の変速機変速用のシフトセレクト軸(15)と、前記シフトセレクト軸の先端部内に挿通する突起(205)を有し、前記シフトセレクト軸のシフトセレクト軸の前記先端部を含む部分を収容するハウジング(22)と、前記突起の外周に固定され、前記シフトセレクト軸の内周に摺接して、前記シフトセレクト軸をその中心軸線(17)周りに回転可能にかつ軸方向(M4)移動可能に支持するすべり軸受(202)とを含み、前記シフトセレクト軸の先端部の外周には、当該シフトセレクト軸に対して駆動力を付与する歯車(36)と噛み合うためのラック部(122)が形成されており、前記すべり軸受と前記ラック部とは軸方向に重複している、変速機駆動装置(300)である。
【0011】
この構成によれば、シフトセレクト軸の先端部は中空であり、その外周にはラック部が形成されている。このシフトセレクト軸の先端部は、その内部を挿通する突起によって支持されている。また、すべり軸受は、突起の外周に固定され、シフトセレクト軸の内周に摺接してシフトセレクト軸を支持している。
すべり軸受およびラック部が軸方向に重複しているので、すべり軸受を、シフトセレクト軸の外周におけるラック部を除く位置に取り付ける場合に比較して、シフトセレクト軸におけるハウジング内に収容されるべき部分の軸長を短縮することができる。ゆえに、装置の小型化を図ることができる。
【0012】
請求項3記載の発明は、少なくとも先端部(15A)が中空の変速機変速用のシフトセレクト軸(15)と、前記シフトセレクト軸の先端部内に挿通する突起(205)が形成されるとともに、前記シフトセレクト軸が挿通する筒状の挿通孔(110)が厚み方向に貫通して形成された隔壁(111)とを有し、前記シフトセレクト軸の前記先端部を含む部分を収容するハウジング(22)と、前記隔壁における前記挿通孔の内周に固定され、前記シフトセレクト軸の外周に摺接して、前記シフトセレクト軸をその中心軸線(17)周りに回転可能にかつ軸方向(M4)移動可能に支持する第1すべり軸受(101)と、前記突起の外周に固定され、前記シフトセレクト軸の内周に摺接して、前記シフトセレクト軸をその中心軸線周りに回転可能にかつ軸方向移動可能に支持する第2すべり軸受(202)とを含み、前記隔壁における、当該隔壁に対し前記シフトセレクト軸の先端部側と反対側の面である外表面には、前記第1すべり軸受の外周を取り囲む環状溝(115)が形成されており、前記環状溝内に進入して前記第1すべり軸受の外周を取り囲む環状部(107)を有し、前記シフトセレクト軸に固定されて、前記外表面において前記挿通孔が開口して形成される挿通口(108)を覆うキャップ部材(105)と、前記環状部の外周と、前記隔壁における前記環状溝の外周との間をシールする環状のシール部材(103)とをさらに含み、前記シフトセレクト軸の先端部の外周には、当該シフトセレクト軸に対して駆動力を付与する歯車(36)と噛み合うためのラック部(112)が形成されており、前記第1すべり軸受と前記シール部材とは軸方向に重複し、前記第2すべり軸受と前記ラック部とは軸方向に重複している、変速機駆動装置(200)である。
【0013】
この構成によれば、第1すべり軸受は、隔壁における挿通孔の内周に固定され、シフトセレクト軸の外周に摺接してシフトセレクト軸を支持している。また、隔壁の挿通口がシフトセレクト軸に固定されたキャップ部材によって覆われるとともに、キャップ部材と隔壁との間が、第1すべり軸受に軸方向に重複するシール部材によってシールされている。
第1すべり軸受およびシール部材が軸方向に重複しているので、第1すべり軸受およびシール部材を軸方向に沿って並べる場合に比較して、シフトセレクト軸におけるハウジング内に収容されるべき部分の軸長を短縮することができる。
【0014】
また、シフトセレクト軸の先端部は中空であり、その外周にはラック部が形成されている。このシフトセレクト軸の先端部は、その内部を挿通する突起によって支持されている。また、第2すべり軸受は、突起の外周に固定され、シフトセレクト軸の内周に摺接してシフトセレクト軸を支持している。
第2すべり軸受およびラック部が軸方向に重複しているので、第2すべり軸受を、シフトセレクト軸の外周におけるラック部を除く位置に取り付ける場合に比較して、シフトセレクト軸におけるハウジング内に収容されるべき部分の軸長をより一層短縮することができる。ゆえに、装置の小型化を図ることができる。
【0015】
請求項4記載の発明は、変速機変速用のシフトセレクト軸(15)と、前記シフトセレクト軸が挿通する筒状の挿通孔(410)が形成された隔壁(411)を有し、前記シフトセレクト軸の先端部(15A)を含む部分を収容するハウジング(22)と、前記隔壁における前記挿通孔の内周に固定され、前記シフトセレクト軸の外周を取り囲んで当該外周に摺接して、前記シフトセレクト軸をその中心軸線(17)周りに回転可能にかつ軸方向(M4)移動可能に支持する円筒状のすべり軸受(401)と、前記隔壁に前記径方向に出没可能に設けられた嵌合部材(405)とを含み、前記シフトセレクト軸の外周面には、前記嵌合部材の先端部と嵌合するための嵌合溝(406)が形成されており、前記嵌合部材が、前記すべり軸受に形成された通過用孔(407;421;422)を通して、前記嵌合溝に嵌合するようになっている、変速機駆動装置(400)である。
【0016】
この構成によれば、シフトセレクト軸の外周に形成された嵌合溝と嵌合部材とが嵌合することにより、シフトセレクト軸の軸方向移動が阻止された状態にされる。
変速機における車両などへの搭載姿勢により、シフトセレクト軸が上下方向に沿って延びる場合には、シフトセレクト軸に、そのシフトセレクト軸の自重による下向きの力(下方方向力)が作用する。シフトセレクト軸が駆動源などと連結されている場合には、シフトセレクト軸はその軸方向移動が規制されるが、シフトセレクト軸を駆動するための駆動機構に含まれるクラッチ機構の切換えにより、シフトセレクト軸が駆動源などと非連結である場合は、シフトセレクト軸が下降し、これに伴って、駆動機構に逆向きの駆動力が入力されるおそれがある。しかしながら、この構成によれば、クラッチ機構の切換えによりシフトセレクト軸が駆動源などと非連結になっても、シフトセレクト軸の軸方向移動が阻止されているので、シフトセレクト軸が下降することを防止することができる。
【0017】
請求項4の構成では、すべり軸受に形成された通過用孔を通して、嵌合部材と嵌合溝とが嵌合するので、嵌合部材および嵌合溝の対とすべり軸受とが軸方向に重複している。したがって、すべり軸受と、嵌合部材および嵌合溝の対とを軸方向に沿って並べる場合に比較して、シフトセレクト軸におけるハウジング内に収容されるべき部分の軸長を短縮することができる。ゆえに、装置の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態の変速機駆動装置が適用された変速装置の概略構成の分解斜視図である。
【図2】図1に示す電動アクチュエータの構成を示す断面図である。
【図3】図2の切断面線III‐IIIで切断したときの断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態の変速機駆動装置が適用された変速装置の要部構成を示す断面図である。
【図5】本発明の第3実施形態の変速機駆動装置が適用された変速装置の要部構成を示す断面図である。
【図6】本発明の第4実施形態の変速機駆動装置が適用された変速装置の要部構成を示す断面図である。
【図7】ロックボール、嵌合溝および第1すべり軸受の構成を説明するための拡大断面図である。
【図8】図6に示す第1すべり軸受の一例を示す斜視図である。
【図9】第1すべり軸受の他の例を示す斜視図である。
【図10】第1すべり軸受の他の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態の変速機駆動装置3が適用された変速装置1の概略構成の分解斜視図である。
変速装置1は、変速機2と、変速機2を変速駆動する変速機駆動装置3とを備えている。
【0020】
変速機2は、公知の常時噛み合い式の平行歯車式変速機(図示しない)であり、乗用車やトラックなどの車両に搭載される。
変速機2は、ギヤハウジング7と、ギヤハウジング7内に収容される平行歯車式の変速機構(図示せず)と、変速機構にシフトセレクト動作を行わせるシフトセレクト軸15と、シフトセレクト軸15をシフト動作またはセレクト動作させるための共通の駆動源として用いられる電動アクチュエータ21とを備えている。
【0021】
シフトセレクト軸15の途中部には、ギヤハウジング7内に収容されるインターナルレバー16の一端16aが、同伴回転可能にかつシフトセレクト軸15の軸方向M4に移動可能に支持されている。より詳しくは、インターナルレバー16の一端16aに固定されている。インターナルレバー16は、シフトセレクト軸15の中心軸線17周りに、シフトセレクト軸15と同伴回転する。シフトセレクト軸15の一端部(図1で示す右上側端部)は、ギヤハウジング7外に突出している。
【0022】
ギヤハウジング7内には、互いに平行に延びる複数のシフトロッド10A,10B,10Cが収容されている。各シフトロッド10A,10B,10Cには、インターナルレバー16の他端16bと係合するシフトブロック12A,12B,12Cが固定されている。また、各シフトロッド10A,10B,10Cには、クラッチスリーブ(図示せず)と係合するシフトフォーク11が設けられている(図1では、シフトロッド10Aに設けられたシフトフォーク11のみを示す)。
【0023】
電動アクチュエータ21によりシフトセレクト軸15がその中心軸線17周りに回転されると、インターナルレバー16が、シフトセレクト軸15の中心軸線17周りに揺動する。その結果、インターナルレバー16と係合しているシフトブロック12A,12B,12Cが、シフトロッド10A,10B,10Cの軸方向M1,M2,M3に移動し、これにより、シフト動作が達成される。
【0024】
一方、電動アクチュエータ21により、シフトセレクト軸15が、その軸方向M4に移動されると、インターナルレバー16が、シフトセレクト軸15の軸方向M4に移動される。その結果、インターナルレバー16の他端16bが所要のシフトブロック12A,12B,12Cに係合し、これによりセレクト動作が達成される。
電動アクチュエータ21は、有底略筒状のハウジング22を備えている。電動アクチュエータ21は、ギヤハウジング7の外表面または車両の所定箇所に固定されている。ハウジング22には、シフトセレクト軸15の先端部15A(図3参照)を含む部分が収容されている。
【0025】
図2は、図1に示す電動アクチュエータ21の構成を示す断面図である。図3は、図2の切断面線III‐IIIで切断したときの断面図である。
電動アクチュエータ21は、電動モータ23と、電動モータ23の回転トルクを、シフトセレクト軸15を中心軸線17周りに回転させる力に変換するためのシフト変換機構24と、電動モータ23の回転トルクを、シフトセレクト軸15をその軸方向M4(図2に示す紙面に直交する方向。図3に示す左右方向)に移動させる力に変換するためのセレクト変換機構25と、電動モータ23の回転駆動力の伝達先を、シフト変換機構24とセレクト変換機構25との間で切り換えるため切換ユニット26とを備えている。これら電動モータ23、シフト変換機構24、セレクト変換機構25および切換ユニット26は、ハウジング22内に収容されている。
【0026】
ハウジング22には、シフトセレクト軸15がその中心軸線17周りに回転可能にかつ軸方向M4(図2に示す紙面に直交する方向。図3に示す左右方向)移動可能に支持されている。
ハウジング22の開口部(図2に示す左側)は、略板状の蓋27によって閉塞されている。このハウジング22および蓋27はたとえば鋳鉄やアルミニウムなどの材料を用いて形成されており、蓋27の外周がハウジング22の開口部に嵌め合わされている。蓋27にはその内面(図2に示す右面)と外面(図2に示す左面)とを貫通する円形の貫通孔29が形成されている。
【0027】
電動モータ23としては、たとえばブラシレスモータが採用されている。電動モータ23はハウジング22外に露出するように取り付けられている。電動モータ23の出力軸40は、シフトセレクト軸15と直交する所定の方向(図2に示す左右方向)に沿って延びている。
切換ユニット26は、電動モータ23の出力軸40と同軸に連結された第1伝達軸41と、第1伝達軸41と同軸にかつ、同伴回転可能に設けられた第1ロータ42と、第1伝達軸41に同軸にかつ、同伴回転可能に設けられた第2ロータ44と、第1ロータ42と第2ロータ44との間で第1伝達軸41の連結先を切り換えるためのクラッチ機構39とを備えている。第2ロータ44は、第1伝達軸41に対し、電動モータ23側に配置されている。
【0028】
第1伝達軸41は、電動モータ23側に設けられた小径の主軸部46と、主軸部46に連続して第1ロータ42側に設けられ、主軸部46よりも大径の大径部47とを備えている。第1伝達軸41の大径部47に対し、第1ロータ42と反対側には、第1伝達軸41の主軸部46の外周を取り囲む第2ロータ44が設けられている。すなわち、第1および第2ロータ42,44が、第1伝達軸41の大径部47を挟むように配置されている。
【0029】
クラッチ機構39は、第1伝達軸41と第1ロータ42とを連結/解放する第1電磁クラッチ43と、第1伝達軸41と第2ロータ44とを連結/解放する第2電磁クラッチ45とを備えている。このクラッチ機構39によって、第1伝達軸41が第1ロータ42に連結された状態と、第1伝達軸41が第2ロータ44に連結された状態との間で選択的に切り換えられるようになっている。
【0030】
第1電磁クラッチ43の稼動状態(第1電磁クラッチ43に含まれる電磁コイルの励磁状態)では、第2電磁クラッチ45は非稼動状態(第2電磁クラッチ45に含まれる電磁コイルの無励磁状態)にある。第2電磁クラッチ45の稼動状態(第2電磁クラッチ45に含まれる電磁コイルの励磁状態)では、第1電磁クラッチ43は非稼動状態(第1電磁クラッチ43に含まれる電磁コイルの無励磁状態)にある。したがって、クラッチ機構39によって、第1伝達軸41が第1ロータ42に連結された状態と、第1伝達軸41が第2ロータ44に連結された状態とが選択的に切り換えられる。第1伝達軸41と第1ロータ42との連結状態では、第1伝達軸41と第2ロータ44とが解放されており、第1伝達軸41と第2ロータ44との連結状態では、第1伝達軸41と第1ロータ42とが解放されている。
【0031】
第2ロータ44の外周には、比較的小径の円環状の第1歯車56が外嵌固定されている。第1歯車56は、第2ロータ44と同軸に設けられている。第1歯車56は転がり軸受57によって支持されている。転がり軸受57の外輪は、第1歯車56に内嵌固定されている。転がり軸受57の内輪は、第1伝達軸41の主軸部46の外周に外嵌固定されている。
【0032】
シフト変換機構24は、ボールねじ機構58と、このボールねじ機構58のナット59およびシフトセレクト軸15とを連結する連結ロッド60とを備えている。ボールねじ機構58は、第1ロータ42に連結されて、第1ロータ42と同軸(または第1伝達軸41と同軸)のねじ軸61と、このねじ軸61に取り付けられるナット59とを備えている。ねじ軸61の雄ねじと、ナット59の雌ねじとの間に、複数のボール(図示しない)が転動可能に介在しており、ボールねじ機構58は第1ロータ42の回転移動を、ナット59のねじ軸61に沿う方向の直線移動に変換する。
【0033】
ねじ軸61の一端部(図2に示す左端部)は、転がり軸受64によって支持されている。転がり軸受64の内輪は、ねじ軸61の一端部に外嵌固定されている。また、転がり軸受64の外輪は、ハウジング22に固定されたユニットケーシングの底壁65の内外面を貫通する貫通孔に内嵌されている。また、転がり軸受64の外輪にはロックナット66が係合されて、軸方向他方(図2に示す右方)への移動が規制されている。ねじ軸61の一端部における転がり軸受64よりも電動モータ23側(図2に示す左側)の部分は、第1ロータ42の内周に挿通されて、この第1ロータ42に同伴回転可能に連結されている。
【0034】
ねじ軸61の他端部(図2に示す右端部)は、転がり軸受67によって支持されている。転がり軸受67の外輪は、ハウジング22に固定されている。ナット59の両側面には、シフトセレクト軸15に沿う方向(図2における紙面に直交する方向。図3に示す左右方向)に延びる一対の円柱状の係合軸70(図2では一方のみ図示)が突出形成されている。
【0035】
連結ロッド60は、ナット59に連結するための第1連結部72と、シフトセレクト軸15に連結するための第2連結部73(図3参照)と、第1連結部72と第2連結部73とを接続する接続ロッド74とを備えている。第1連結部72は、各係合軸70と係合するU字係合溝78を有する支持板部76を一対備えている。第2連結部73は、円筒状をなし、シフトセレクト軸15に外嵌されている。第2連結部73の内周には、シフトセレクト軸15の外周のスプライン部121にスプライン嵌合するスプライン溝75(図3参照)が形成されている。
【0036】
セレクト変換機構25は、第1歯車56と、第1伝達軸41と平行に延び、回転可能に設けられた第2伝達軸95と、第2伝達軸95における一端部(図2に示す左端部)寄りの所定位置に同軸に固定された第2歯車81と、第2伝達軸95の他端部(図2に示す右端部)寄りの所定位置に同軸に固定された小径のピニオン36とを備えている。なお、第2歯車81は、第1歯車56およびピニオン36の双方よりも大径に形成されている。
【0037】
第2伝達軸95の一端部(図2に示す左端部)は、ハウジング22に固定された転がり軸受96によって支持されている。転がり軸受96の内輪は、第2伝達軸95の一端部(図2に示す左端部)に外嵌固定されている。また、転がり軸受96の外輪は、ハウジング22の開口部を覆う蓋27の内面に形成された円筒状の凹部97内に固定されている。また、第2伝達軸95の他端部(図2に示す右端部)は、転がり軸受84によって支持されている。
【0038】
第2伝達軸95の回転量は、第1回転量センサ87によって測定される。ハウジング22の底壁(蓋27とは反対側の内壁。図2に示す右側の内壁)には、その内外面を貫通するセンサ用孔85が形成されている。第1回転量センサ87は、センサ部(図示しない)と、センサ部に連結された第1センサ軸99とを備えている。第1センサ軸99の先端部は、センサ用孔85を通って第2伝達軸95の第2端部82に同伴回転可能に連結されている。第2伝達軸95の回転に伴って第1センサ軸99が回転され、この第1センサ軸99の回転量を測定することにより、第2伝達軸95の回転量が測定される。第1回転量センサ87による測定値は、後述するECU88に入力される。
【0039】
また、ハウジング22内には、シフトセレクト軸15の回転量を測定するための第2回転量センサ89(図3には不図示。図2参照)が設けられている。第2回転量センサ89は、センサ部(図示しない)が内蔵された本体90と、センサ部に連結された第2センサ軸94と、第2センサ軸94に外嵌固定されたセクタ歯車91とを備えている。このセクタ歯車91は、シフトセレクト軸15に同伴回転可能に設けられた(外嵌固定された)センサ用歯車92(図3には不図示。図2参照)と噛み合っている。シフトセレクト軸15の回転に伴ってセンサ用歯車92、セクタ歯車91および第2センサ軸94が回転され、この第2センサ軸94の回転量を測定することにより、シフトセレクト軸15の回転量が検出される。第2回転量センサ89の検出値は次に述べるECU88に入力される。
【0040】
車両のシフトノブ93が操作されると、シフトノブ93の操作検出センサからの信号が、ECU88(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)に与えられる。ECU88は、モータドライバ(図示しない。)を介して電動モータ23を駆動制御する。また、ECU88は、リレー回路(図示しない。)を介して第1および第2電磁クラッチ43,45を駆動制御する。
【0041】
ハウジング22は、電動モータ23、シフト変換機構24、セレクト変換機構25、切換ユニット26、およびシフトセレクト軸15の先端部を除く部分を収容する有底箱状のハウジング本体22Aを備えている。ハウジング本体22Aは、シフトセレクト軸15が挿通する挿通孔110を有する第1側壁(隔壁)111と、第1側壁111の内面に対向する内面を有する第2側壁112とを備えている。挿通孔110は円筒状の挿通孔であり、第1側壁111の厚み方向に貫通して形成されている。第1側壁111の厚みB1は小さく設定されている。ハウジング22は、第2側壁112から、第2側壁112に対し挿通孔110側と反対側に(すなわち外方に)膨出してシフトセレクト軸15の先端部を収容する膨出部113(図3参照)をさらに備えている。膨出部113の第2側壁112からの膨出量はA1に設定されている。膨出部113の内面には、シフトセレクト軸15の先端部を収容する円筒状の収容凹部114が形成されている。
【0042】
シフトセレクト軸15は、第1および第2すべり軸受101,102(図3参照)によって、その中心軸線17周りに回転可能にかつ軸方向M4移動可能に支持されている。また、ごみや埃がハウジング22内に侵入しないように、挿通孔110に関連して設けられるシール部材103によって、ハウジング22とシフトセレクト軸15の外周との間がシールされている。
【0043】
第1すべり軸受101は、円筒状をなしており、挿通孔110の内周に固定されている。第1すべり軸受101は、シフトセレクト軸15の外周を周方向全周にわたって取り囲み、シフトセレクト軸15の外周に摺接している。第1すべり軸受101は、第1側壁111の外表面(図3に示す左側表面)と第1側壁111の内表面(図3に示す右側表面)との中間に配置されている。
【0044】
第2すべり軸受102は、円筒状をなしており、収容凹部114の内周に固定されている。第2すべり軸受102は、シフトセレクト軸15の外周全周を取り囲んでいる。第2すべり軸受102はシフトセレクト軸15の先端部の外周に摺接し、当該部分を支持している。第1すべり軸受101は、シフトセレクト軸15における先端部よりもやや基端側に摺接し、当該部分を支持している。
【0045】
第1側壁111の外表面(第1側壁111における、第1側壁111に対しシフトセレクト軸15の先端部側と反対側の面)には、挿通孔110の内周よりもやや径方向外方位置に、第1すべり軸受101の外周を取り囲む環状溝115が形成されている。環状溝115の内周には、シフトセレクト軸15の中心軸線17を中心とする第1円筒面116が形成されている。環状溝115の外周には、シフトセレクト軸15の中心軸線17を中心とする第2円筒面117が形成されている。
【0046】
第1側壁111の外表面には、挿通孔110が開口して挿通口108が形成されている。挿通口108は、シフトセレクト軸15に固定されたキャップ部材105によって覆われ閉塞されている。
キャップ部材105は全体として円筒カップ状をなしている。キャップ部材105は、シフトセレクト軸15の外周に固定された円環板状部106と、円環板状部106の外周から、円環板状部106に直交する方向に延びる円筒状の環状部107とを備えている。環状部107は、環状溝115内に進入して、第1すべり軸受101の外周を取り囲んでいる。キャップ部材105の第1側壁111への取付け状態では、環状部107の内周と環状溝115の外周との間には隙間が形成されている。円環板状部106は、たとえばねじ嵌合によりシフトセレクト軸15の外周に固定されている。
【0047】
シール部材103は、環状部107の外周と、環状溝115の外周との間をシールする環状のものである。シール部材103は、環状溝115の周方向全周にわたって設けられており、第2円筒面117に内嵌固定されている。シール部材103は、第1すべり軸受101に軸方向に重複する位置に配置されている。
シフトセレクト軸15の外周における第1すべり軸受101が摺接する部分と第2すべり軸受102が摺接する部分との間には、雄スプラインからなるスプライン部121と、ピニオン36が噛み合うラック部122とが、第1すべり軸受101側からこの順に形成されている。
【0048】
第2連結部73のスプライン溝75とシフトセレクト軸15のスプライン部121とがスプライン嵌合している。言い換えれば、シフトセレクト軸15の外周には第2連結部73が、当該シフトセレクト軸15に対して相対回転不能にかつ相対軸方向移動が許容された状態で連結されている。
すなわち、第1電磁クラッチ43が稼動状態にあり、かつ第2電磁クラッチ45が非稼動状態であるときは、第1電磁クラッチ43が連結状態にあり、第2電磁クラッチ45が解放状態にある。このとき、電動モータ23の回転トルクは、第1ロータ42を介してねじ軸61に付与される。そして、ボールねじ機構58により、ねじ軸61の回転移動が、ナット59の直線移動に変換され、ナット59がねじ軸61に沿って移動する。このナット59の直線移動に伴って連結ロッド60が、シフトセレクト軸15の中心軸線17周りに揺動し、この連結ロッド60の揺動に伴ってシフトセレクト軸15が、その中心軸線17周りに回転する。これにより、シフト動作が行われる。
【0049】
また、第1電磁クラッチ43が非稼動状態にあり、かつ第2電磁クラッチ45が稼動状態であるときは、第1電磁クラッチ43が連結状態にあり、第2電磁クラッチ45が解放状態にある。このとき、電動モータ23の回転トルクは、第2ロータ44を介して第1歯車56に付与される。そして、第1歯車56に付与された回転トルクは、第2歯車81および第2伝達軸95を介してピニオン36に付与される。そして、ピニオン36がラック部と噛み合っているので、ピニオン36の回転に伴って、シフトセレクト軸15がその軸方向M4に移動する。これにより、セレクト動作が行われる。
【0050】
以上によりこの実施形態によれば、第1すべり軸受101は、第1側壁111における挿通孔110の内周に固定され、シフトセレクト軸15の外周に摺接してシフトセレクト軸15を支持している。また、第1側壁111の挿通口108がシフトセレクト軸15に固定されたキャップ部材105によって覆われるとともに、キャップ部材105と第1側壁111との間が、第1すべり軸受101に軸方向に重複するシール部材103によってシールされている。
【0051】
第1すべり軸受101およびシール部材103が軸方向に重複しているので、第1すべり軸受101およびシール部材103を軸方向に沿って並べる場合に比較して第1側壁111の厚みB1を小さく設定することができ、これにより、シフトセレクト軸15におけるハウジング22内に収容されるべき部分の軸長を短縮することができる。ゆえに、電動アクチュエータ21の小型化を図ることができる。
【0052】
図4は、本発明の第2実施形態の変速機駆動装置200が適用された変速装置の要部構成を示す断面図である。この第2実施形態において、図1〜図3に示す実施形態(第1実施形態)に示された各部に対応する部分には、第1実施形態と同一の参照符号を付して示し、説明を省略する。また、必要に応じて、図1および図2を併せて参照する。
第2実施形態の変速機駆動装置200が第1実施形態の変速機駆動装置3と相違する主たる点は、シフトセレクト軸15の先端部15Aを中空に形成した点である。
【0053】
ハウジング本体22Aは、第1側壁(隔壁)111と、第1側壁111の内面に対向する内面を有する第2側壁212とを備えている。
ハウジング22は、第2側壁212から、第2側壁212に対し挿通孔110側と反対側に(すなわち外方に)膨出してシフトセレクト軸15の先端部15Aを収容する膨出部213をさらに備えている。膨出部213の内面には、シフトセレクト軸15の先端部を収容する円筒状の収容凹部214が形成されている。膨出部213の第2側壁212からの膨出量A2は、第1実施形態の変速機駆動装置3における膨出部113の第2側壁112からの膨出量A1よりも小さくされている(A2<A1)。収容凹部214には、第2側壁212と直交する方向に延びる円柱状の回転軸(突起)205が、第2側壁212から突出して形成されている。
【0054】
シフトセレクト軸15の先端部15Aは中空円筒状に形成されている。シフトセレクト軸15の先端部15Aの内部には、円柱状の回転軸205が挿通されている。回転軸205の周面には、第2すべり軸受202が外嵌固定されている。第2すべり軸受102は、円筒状をなし、シフトセレクト軸15をその中心軸線17周りに回転可能にかつ軸方向M4に移動可能に支持している。第2すべり軸受102は、シフトセレクト軸15の先端部15Aに全周を取り囲まれている。第2すべり軸受102はシフトセレクト軸15の先端部15Aの内周に摺接し、当該部分を支持している。シフトセレクト軸15の先端部15Aの外周には、ピニオン36が噛み合うラック部122が形成されている。
【0055】
以上によりこの実施形態によれば、第1すべり軸受101は、第1側壁111における挿通孔110の内周に固定され、シフトセレクト軸15の外周に摺接してシフトセレクト軸15を支持している。また、第1側壁111の挿通口108がシフトセレクト軸15に固定されたキャップ部材105によって覆われるとともに、キャップ部材105と第1側壁111との間が、第1すべり軸受101に軸方向に重複するシール部材103によってシールされている。
【0056】
第1すべり軸受101およびシール部材103が軸方向に重複しているので、第1すべり軸受101およびシール部材103を軸方向に沿って並べる場合に比較して第1側壁111の厚みB1を小さく設定することができ、これにより、シフトセレクト軸15におけるハウジング22内に収容されるべき部分の軸長を短縮することができる。
また、シフトセレクト軸15の先端部15Aは中空であり、その外周にはラック部122が形成されている。このシフトセレクト軸15の先端部15Aは、その内部を挿通する回転軸205によって支持されている。また、第2すべり軸受202は、回転軸205の外周に固定され、シフトセレクト軸15の内周に摺接してシフトセレクト軸15を支持している。
【0057】
第2すべり軸受202およびラック部122が軸方向に重複しているので、膨出部213の膨出量A2を小さく設定することができる。これにより、第2すべり軸受202を、シフトセレクト軸15の外周におけるラック部122を除く位置に取り付ける場合に比較して、シフトセレクト軸15におけるハウジング22内に収容されるべき部分の軸長をより一層短縮することができる。ゆえに、電動アクチュエータ21の小型化を図ることができる。
【0058】
図5は、本発明の第3実施形態の変速機駆動装置300が適用された変速装置の要部構成を示す断面図である。この第3実施形態において、図4に示す実施形態(第2実施形態)に示された各部に対応する部分には、第2実施形態と同一の参照符号を付して示し、説明を省略する。また、必要に応じて、図1および図2を併せて参照する。
第3実施形態の変速機駆動装置300が第2実施形態の変速機駆動装置200と相違する主たる点は、シフトセレクト軸15にキャップ部材105を設けず、かつハウジング22に環状溝115を設けない構成とした点である。
【0059】
ハウジング本体22Aは、シフトセレクト軸15が挿通する挿通孔210を有する第1側壁(隔壁)211と、第1側壁211の内面に対向する内面を有する第2側壁212とを備えている。第1側壁211の厚みB2は、第1実施形態の変速機駆動装置3における第1側壁111の厚みB1よりも大きく設定されている(B2>B1)。挿通孔210は、円筒状の挿通孔であり、第1側壁211の厚み方向に貫通して形成されている。
【0060】
シフトセレクト軸15は、第1すべり軸受201および第2すべり軸受202によって、その中心軸線17周りに回転可能にかつ軸方向M4移動可能に支持されている。また、ごみや埃がハウジング22内に侵入しないように、挿通孔210に関連して設けられるシール部材203によって、ハウジング22とシフトセレクト軸15の外周との間がシールされている。
【0061】
第1すべり軸受201は、円筒状をなしており、挿通孔210の内周に固定されている。第1すべり軸受201は、シフトセレクト軸15の外周を周方向全周にわたって取り囲み、シフトセレクト軸15の外周に摺接している。シール部材203は、挿通孔210の内周に固定されており、挿通孔210の内周とシフトセレクト軸15の外周との間をシールしている。シール部材203は、シフトセレクト軸15の周方向全周にわたって設けられている。第1すべり軸受201およびシール部材203は、第1側壁211の外表面側から、この順に配置されている。
【0062】
以上によりこの実施形態によれば、シフトセレクト軸15の先端部15Aは中空であり、その外周にはラック部122が形成されている。このシフトセレクト軸15の先端部15Aは、その内部を挿通する回転軸205によって支持されている。また、第2すべり軸受202は、回転軸205の外周に固定され、シフトセレクト軸15の内周に摺接してシフトセレクト軸15を支持している。
【0063】
第2すべり軸受202およびラック部122が軸方向に重複しているので、膨出部213の膨出量A2を小さく設定することができる。これにより、第2すべり軸受202を、シフトセレクト軸15の外周におけるラック部122を除く位置に取り付ける場合に比較して、シフトセレクト軸15におけるハウジング22内に収容されるべき部分の軸長を短縮することができる。ゆえに、電動アクチュエータ21の小型化を図ることができる。
【0064】
図6は、本発明の第4実施形態の変速機駆動装置400が適用された変速装置の要部構成を示す断面図である。この第4実施形態において、図1〜図3に示す実施形態(第1実施形態)に示された各部に対応する部分には、第1実施形態と同一の参照符号を付して示し、説明を省略する。また、必要に応じて、図1および図2を併せて参照する。
第4実施形態の変速機駆動装置400が第1実施形態の変速機駆動装置3と相違する主たる点は、ハウジング22側にシフトセレクト軸15の外周面に形成された嵌合溝406と嵌合(係合)して、シフトセレクト軸15を、その軸方向M4への移動を阻止するためのロックボール(嵌合部材)405を設けた点である。
【0065】
ハウジング本体22Aは、シフトセレクト軸15が挿通する挿通孔410を有する第1側壁(隔壁)411と、第1側壁411の内面に対向する内面を有する第2側壁112とを備えている。第1側壁411の厚みB3は、第1実施形態の変速機駆動装置3における第1側壁111の厚みB1よりも大きく設定されている(B3>B1)。挿通孔410は円筒状の挿通孔であり、第1側壁411の厚み方向に貫通して形成されている。第1側壁411内の外表面には凹部412が形成されている。
【0066】
シフトセレクト軸15は、第1すべり軸受401および第2すべり軸受102によって、その中心軸線17周りに回転可能にかつ軸方向M4移動可能に支持されている。また、ごみや埃がハウジング22内に侵入しないように、挿通孔410に関連して設けられるシール部材403によって、ハウジング22とシフトセレクト軸15の外周との間がシールされている。
【0067】
第1すべり軸受401は、円筒状をなしており、挿通孔410の内周に固定されている。第1すべり軸受401は、シフトセレクト軸15の外周を周方向全周にわたって取り囲み、シフトセレクト軸15の外周に摺接している。シール部材403は、挿通孔410の内周に固定されており、挿通孔410の内周とシフトセレクト軸15の外周との間をシールしている。シール部材403は、シフトセレクト軸15の周方向全周にわたって設けられている。第1すべり軸受401およびシール部材403は、第1側壁411の外表面側から、この順に配置されている。
【0068】
この第4実施形態では、変速装置1を車両に搭載した状態で、シフトセレクト軸15が上下方向(鉛直方向。または鉛直方向に近い方向)に沿って延びている。このとき、シフトセレクト軸15に自重による下向きの力(下方方向力)が作用し、シフトセレクト軸11の自重に基づく回転力が伝達軸95に作用する。前述のように、クラッチ機構39が、第1伝達軸41が第1ロータ42に連結された状態と、第1伝達軸41が第2ロータ44に連結された状態とを選択的に切り換えるものである。また、前述のように、第1伝達軸41と第1ロータ42との連結状態では、第1伝達軸41と第2ロータ44とが解放されており、第1伝達軸41と第2ロータ44との連結状態では、第1伝達軸41と第1ロータ42とが解放されている。
【0069】
したがって、クラッチ機構39により第1伝達軸41が第2ロータ44に連結された状態では、第1伝達軸41が第2ロータ44、第1歯車56および第2歯車81を介して第1伝達軸41(電動モータ23の出力軸40)に連結される。この場合、シフトセレクト軸15の軸方向移動が第1伝達軸41によって規制されるので、シフトセレクト軸15がその自重を受けて下降する(軸方向M4に移動する)ことはない。しかしながら、この実施形態では、クラッチ機構39にブレーキ機構などが設けられていない。そのため、クラッチ機構39により第1伝達軸41が第1ロータ42に連結された状態、すなわち第1伝達軸41と第2ロータ44とが解放された状態では、第1伝達軸41(電動モータ23の出力軸40)とシフトセレクト軸15とが非連結であるので、シフトセレクト軸15が下降するおそれがある。そのため、ECU88の制御によらずにシフトセレクト軸15の軸方向位置(セレクト位置)が変化するおそれ(逆入力のおそれ)があり、好ましくない。
【0070】
図7は、ロックボール405、嵌合溝406および第1すべり軸受401の構成を説明するための拡大断面図である。図8は、第1すべり軸受401の一例を示す斜視図である。次に、図6〜図8を参照して、ロックボール405、嵌合溝406および第1すべり軸受401の構成について説明する。
第1側壁411内には凹部412の側面と挿通孔410の外周とを貫通する円筒状の貫通孔408が、シフトセレクト軸15に直交する方向に延びて形成されている。この貫通孔408にロックボール405が収容されている。ロックボール405は、略円柱状をなしている。ロックボール405の先端部が半球状をなしている。ロックボール405には駆動部材(図示しない)が結合されている。
【0071】
シフトセレクト軸15の外周における第1すべり軸受401に摺接する部分には、複数本(たとえば3本)の嵌合溝406が形成されている。各嵌合溝406は周方向に延び、その周方向長さは全周に亘り設定されている。複数の嵌合溝406は等間隔を空けて配置されている。
第1すべり軸受401には、第1すべり軸受401の内外面を貫通する通過用孔としての丸孔407が形成されている。丸孔407は、挿通孔410の内周における貫通孔408の開口に対応して(合致するように)形成されている。ロックボール405のシフトセレクト軸15の外周との嵌合時には、ロックボール405は、丸孔407を通って、その先端部が第1すべり軸受401の内周面よりも内方に突出し、嵌合溝406に嵌合する。ロックボール405と嵌合溝406との間の嵌合により、シフトセレクト軸15に軸方向M4への移動が阻止される。
【0072】
以上によりこの実施形態によれば、ロックボール405と嵌合溝406との間の嵌合により、シフトセレクト軸15に軸方向M4への移動が阻止される。そのため、クラッチ機構39の切換えによってシフトセレクト軸15と第1伝達軸41とが非連結となった場合であっても、シフトセレクト軸15が下降することを防止することができる。
また、第1すべり軸受101に形成された丸孔407を通して、ロックボール405と嵌合溝406とが嵌合するので、ロックボール405および嵌合溝406の対と第1すべり軸受401とが軸方向に重複している。したがって、第1すべり軸受401と、ロックボール405および嵌合溝406の対とを軸方向に沿って並べる場合に比較して、シフトセレクト軸15におけるハウジング内22に収容されるべき部分の軸長を短縮することができる。ゆえに、電動アクチュエータ21の小型化を図ることができる。
【0073】
以上、この発明の4つの実施形態について説明したが、この発明は他の形態で実施することもできる。
たとえば第4実施形態において、第1すべり軸受401に形成される通過用孔として、他の形態のものを採用することもできる。通過用孔として、たとえば図9に示すような、シフトセレクト軸15の軸方向に延びる軸方向孔421が採用されていてもよい。また、たとえば図10に示すような、第1すべり軸受401の一端面(図10に示す右手前側の端面)からシフトセレクト軸15の軸方向に沿って延びて形成された切欠422が通過用孔として採用されていてもよい。
【0074】
また、ロックボール405をシフトセレクト軸15の外周に向けて弾性的に押し付けるための付勢部材が設けられていてもよい。
さらに、第1すべり軸受401およびロックボール405がユニット化されていてもよい。
また、第2および第3実施形態において、シフトセレクト軸15が、一端から他端まで中空の中空軸によって形成されていてもよい。
【0075】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0076】
3…変速機駆動装置、15…シフトセレクト軸、15A…先端部、17…中心軸線、22…ハウジング、101…第1すべり軸受、103…シール部材、105…キャップ部材、107…環状部、108…挿通口、110…挿通孔、111…第1側壁(隔壁)、115…環状溝、200…変速機駆動装置、202…第2すべり軸受、205…回転軸(突起)、300…変速機駆動装置、400…変速機駆動装置、401…第1すべり軸受、405…ロックボール(嵌合部材)、406…嵌合溝、407…丸孔(通過用孔)、410…挿通孔、411…第1側壁(隔壁)、421…軸方向孔(通過用孔)、422…切欠(通過用孔)、M4…軸方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変速機変速用のシフトセレクト軸と、
前記シフトセレクト軸が挿通する筒状の挿通孔が厚み方向に貫通して形成された隔壁を有し、前記シフトセレクト軸の先端部を含む部分を収容するハウジングと、
前記隔壁における前記挿通孔の内周に固定され、前記シフトセレクト軸の外周に摺接して、前記シフトセレクト軸をその中心軸線周りに回転可能にかつ軸方向移動可能に支持するすべり軸受とを含み、
前記隔壁における、当該隔壁に対し前記シフトセレクト軸の先端部側と反対側の面である外表面には、前記すべり軸受の外周を取り囲む環状溝が形成されており、
前記環状溝内に進入して前記すべり軸受の外周を取り囲む環状部を有し、前記シフトセレクト軸に固定されて、前記外表面において前記挿通孔が開口して形成される挿通口を覆うキャップ部材と、
前記環状部の外周と、前記隔壁における前記環状溝の外周との間をシールする環状のシール部材とをさらに含み、
前記すべり軸受と前記シール部材とは軸方向に重複している、変速機駆動装置。
【請求項2】
少なくとも先端部が中空の変速機変速用のシフトセレクト軸と、
前記シフトセレクト軸の先端部内に挿通する突起を有し、前記シフトセレクト軸の先端部を含む部分を収容するハウジングと、
前記突起の外周に固定され、前記シフトセレクト軸の内周に摺接して、前記シフトセレクト軸をその中心軸線周りに回転可能にかつ軸方向移動可能に支持するすべり軸受とを含み、
前記シフトセレクト軸の先端部の外周には、当該シフトセレクト軸に対して駆動力を付与する歯車と噛み合うためのラック部が形成されており、
前記すべり軸受と前記ラック部とは軸方向に重複している、変速機駆動装置。
【請求項3】
少なくとも先端部が中空の変速機変速用のシフトセレクト軸と、
前記シフトセレクト軸の先端部内に挿通する突起が形成されるとともに、前記シフトセレクト軸が挿通する筒状の挿通孔が厚み方向に貫通して形成された隔壁とを有し、前記シフトセレクト軸の先端部を含む部分を収容するハウジングと、
前記隔壁における前記挿通孔の内周に固定され、前記シフトセレクト軸の外周に摺接して、前記シフトセレクト軸をその中心軸線周りに回転可能にかつ軸方向移動可能に支持する第1すべり軸受と、
前記突起の外周に固定され、前記シフトセレクト軸の内周に摺接して、前記シフトセレクト軸をその中心軸線周りに回転可能にかつ軸方向移動可能に支持する第2すべり軸受とを含み、
前記隔壁における、当該隔壁に対し前記シフトセレクト軸の先端部側と反対側の面である外表面には、前記第1すべり軸受の外周を取り囲む環状溝が形成されており、
前記環状溝内に進入して前記第1すべり軸受の外周を取り囲む環状部を有し、前記シフトセレクト軸に固定されて、前記外表面において前記挿通孔が開口して形成される挿通口を覆うキャップ部材と、
前記環状部の外周と、前記隔壁における前記環状溝の外周との間をシールする環状のシール部材とをさらに含み、
前記シフトセレクト軸の先端部の外周には、当該シフトセレクト軸に対して駆動力を付与する歯車と噛み合うためのラック部が形成されており、
前記第1すべり軸受と前記シール部材とは軸方向に重複し、前記第2すべり軸受と前記ラック部とは軸方向に重複している、変速機駆動装置。
【請求項4】
変速機変速用のシフトセレクト軸と、
前記シフトセレクト軸が挿通する筒状の挿通孔が形成された隔壁を有し、前記シフトセレクト軸の先端部を含む部分を収容するハウジングと、
前記隔壁における前記挿通孔の内周に固定され、前記シフトセレクト軸の外周を取り囲んで当該外周に摺接して、前記シフトセレクト軸をその中心軸線周りに回転可能にかつ軸方向移動可能に支持する円筒状のすべり軸受と、
前記隔壁に前記径方向に出没可能に設けられた嵌合部材とを含み、
前記シフトセレクト軸の外周面には、前記嵌合部材の先端部と嵌合するための嵌合溝が形成されており、
前記嵌合部材が、前記すべり軸受に形成された通過用孔を通して、前記嵌合溝に嵌合するようになっている、変速機駆動装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−256988(P2011−256988A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134131(P2010−134131)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】