説明

外周研削加工治具

【課題】軸受外輪の内径側に形成した軌道輪が加工済で外周面を加工する研削加工治具を提供する。
【解決手段】外周研削加工治具10は、シャフト11に大径部12が設けられている。軸受外輪13の内径側の軌道輪14は既に加工済であり、軌道輪14には該軌道輪14の軌道曲率よりも小さい曲率のボール15が隙間なく蜜に装着され、ボール15の内径側に大径部12が嵌挿されてボール15を軌道輪14に蜜に接触させると共に、該シャフト11により軸受外輪13が回転自在に支持されている。シャフト11にはボール押え17、第1及び第2のボルト取付板18、19が設けられ、該ボール押え17、該第1及び第2のボルト取付板18、19に第1〜第3のストッパボルト22〜24が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転がり軸受又は転がり軸受のように軌道輪が内径側に設けられ、該軌道輪が既に加工済みの状態における外輪を再度、研削加工する場合の外周研削加工治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光コネクタ用のフェノールのガラス管の小径穴を基準として外径を芯出して加工する場合には、図2に示すように円錐形状のセンタ38にてフェノール31に装着したガラス管33の小径穴32を基準として外径を把持して矢印35に示すように回転させ、砥石36にてコネクタ用フェノール31の外径を円筒研削加工するのが一般的に行われていた(例えば、特許文献1参照。)。
さらに、図3に示すセンターレス研削機において、垂直板状のブレード41の頂面は斜面42に形成され、調整砥石43は水平な回転軸(紙面と垂直)を有する回転砥石であって、ブレード41と調整砥石43とによって円柱状の被加工物44が支持される。調整砥石43が矢印R1方向に回転し、被加工物44は矢印R2方向に回転せしめられる。研削砥石45は水平な回転軸(紙面と垂直)を有する回転砥石であって、前記被加工物44よりも大きい周速で矢印R3方向に回転せしめられ、被加工物44に接触してこれを研削する(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62−236659号公報
【特許文献2】特開平7−276196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2では転がり軸受若しくは転がり軸受のように軌道輪が内径側に設けられ該軌道輪のみが既に加工済みの場合で軸受外輪の外周面を研削加工する場合、加工済みの軌道に対して軸受外周に偏肉が生じるという問題があった。
本発明は、前記の課題を解決するためになされたもので、転がり軸受若しくは転がり軸受にように軌道輪が内径側に設けられ該軌道輪のみが既に加工済みの場合で軸受外輪の外周面を研削加工する場合、加工済みの軌道輪に対して軸受外輪に偏肉が生じないようにする外周研削加工治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の課題を解決するため本発明の請求項載の発明は、研削盤のセンタに回転自在に支 持され軸心方向に円錐形状の大径部を有する軸状部材と、
加工部材である軸受外輪の内径側の軌道輪に隙間なく嵌着し、該軌道輪に軌道曲率よりも小さい曲率を有するボール部材と、
前記軸状部材の前記大径部近傍に設けられ前記ボール部材を該軸状部材の軸心方向より押圧し該ボール部材を前記軌道輪に押圧するボール押え部材と、
前記軸状部材に設けられ前記大径部の両側面の対向位置にあって前記軸状部材に設けられた第1及び第2のボルト取付板部材と、
前記第1及び第2のボルト取付板部材に進退自在に螺着し前記軸受外輪の両側面を押圧する第1及び第2のストッパボルト部材と、
前記第1のボルト取付板部材に進退自在に螺着し前記ボール押え部材を押圧する第3のストッパボルト部材と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、軸受外輪の軌道輪に軌道曲率よりも小さい曲率のボール部材を蜜に挿入して軸受外輪の両端面とボール部材を固定することにより、軌道輪を基準にして該軌道輪が固定でき、安定して軸受外輪の外周面を研削加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施の形態に係る外周研削加工治具の概略構造を示す正面図である。
【図2】従来の研削加工の概略図である。
【図3】従来のセンターレス研削加工の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係る外周研削加工治具につき好適の実施の形態を挙げ、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る外周研削加工治具10の概略構造図である。
図1に示すように外周研削加工治具10は、図示しない研削盤のセンタにシャフト11が回転自在に支持され、該シャフト11には軸心方向に円錐状の大径部12が設けられている。参照符号13は加工部材である軸受外輪を示すもので、該軸受外輪13の内径側の軌道輪14は既に加工済で軸受外輪13の外周面を研削加工する状態を示す。
【0009】
このため、軸受外輪13の軌道輪14には、該軌道輪14の軌道曲率よりも小さい曲率のボール(ボール部材)15が隙間なく蜜に装着され、該ボール15の内径側にシャフト11の大径部12が嵌挿されてボール15を軌道輪14に蜜に接触させると共に、該シャフト11により軸受外輪13が回転自在に支持されている。
シャフト11の中径部16にはボール15の外周面を軸心方向より押圧する円筒状のボール押え(ボール押え部材)17が設けられている。ボール押え17はボール15の外周面に接触する端面部分が軸心方向に対して凹んでリング状に形成されている。
【0010】
大径部12の両側にはシャフト11に嵌挿された第1及び第2の円盤状のボルト取付板
(ボルト取付板部材)18、19が固定ナット20、21により固定されている。第1のボルト取付板18には、円周方向に四等配(図1では一箇所のみ表示する)の位置にシャフト11の軸心方向に進退する第1のストッパボルト(ストッパボルト部材)22が設けられ、その先端(図1で右端)が軸受外輪13の一面(図1で左面)に接触して支持するようなっている。
第2のボルト取付板19には、円周方向に四等配(図1では一箇所のみ表示する)の位置にシャフト11の軸心方向に進退する第2のストッパボルト(ストッパボルト部材)23が設けられ、その先端(図1で左端)が軸受外輪13の他面(図1で右面)に接触して支持するようなっている。
【0011】
さらに、第1のボルト取付板18には、ボール押え17を介してボール15の押圧する第3のストッパボルト(ストッパボルト部材)24が円周方向に四等配(図1では一箇所のみ表示する)の位置にシャフト11の軸心方向に進退するように設けられている。なお、軸受外輪13の両側面に接触する第1及び第2のストッパボルト22及び23、ボール抑え17に接触する第3のストッパボルト24の先端は円錐形状に形成されている。
【0012】
本実施の形態に係る外周研削加工治具10は基本的には以上のように構成されるものであり、次に動作についで説明する。
軸受外輪13は内径側の軌道輪14が既に研削若しくはホーニング、ラップ加工等の加工済の場合で外周面を研削加工する場合について説明する。
先ず、軸受外輪13の軌道輪14に軌道曲率より小さい曲率のボール15を隙間なく蜜に挿入した状態でシャフト11の大径部12を該ボール15により形成される内径側に嵌挿して大径部12の外周面、すなわち円錐面によりボール15が軌道輪14に蜜に接触するようになる。
【0013】
この状態で、シャフト11の中径部16に嵌挿したボール押え17を第3のストッパボルト24によりボール15の外径をシャフト11の軸心方向より押圧し、該ボール15を軌道輪14に押圧することより、軸受外輪13の位置決めをする。
次いで、シャフト11に固定した第1及び第2のボルト取付板18、19に螺着した第1及び第2のストッパボルト22、23により軸受外輪13の両側面を押圧して該両側面を固定する。この状態でシャフト11を図示しない研削盤のセンタの回転自在に支持して、軸受外輪13の外周面を研削加工する。
【符号の説明】
【0014】
10 外周研削加工治具 11 シャフト
12 大径部 13 軸受外輪
14 軌道輪 15 ボール
17 ボール押え 18、19 ボルト取付板
21〜24 ストッパボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
研削盤のセンタに回転自在に支持され軸心方向に円錐形状の大径部を有する軸状部材と 、
加工部材である軸受外輪の内径側の軌道輪に隙間なく嵌着し、該軌道輪に軌道曲率よりも小さい曲率を有するボール部材と、
前記軸状部材の前記大径部近傍に設けられ前記ボール部材を該軸状部材の軸心方向より押圧し該ボール部材を前記軌道輪に押圧するボール押え部材と、
前記軸状部材に設けられ前記大径部の両側面の対向位置にあって前記軸状部材に設けられた第1及び第2のボルト取付板部材と、
前記第1及び第2のボルト取付板部材に進退自在に螺着し前記軸受外輪の両側面を押圧する第1及び第2のストッパボルト部材と、
前記第1のボルト取付板部材に進退自在に螺着し前記ボール押え部材を押圧する第3のストッパボルト部材と、
を備えたことを特徴とする外周研削加工治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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