説明

外因性タンパク質をサイトゾルに運搬する方法およびその使用

【課題】外因性の抗原をサイトゾルに運搬する方法、新規な融合タンパク質、および
その使用を提供することを課題とする。
【解決手段】上記課題は、標的抗原を二量体タンパク質
エキソトキシンの断片を含むが対応する防御抗原は含まない輸送因子に結合させることに
よって、外因性タンパク質をサイトゾルに運搬する方法により解決された。好ましくは、標的
抗原は、輸送因子に融合している。好ましい輸送因子は、B.anthracisからの
致死因子(LFn)の防御抗原結合ドメインが挙げられ、該ドメインは、アミノ酸1〜2
55,好ましくはLFnに対して少なくとも80%のホモロジーを示す少なくとも80ア
ミノ酸の断片、および、PAに結合しないカルボキシ部分からの約105アミノ酸の断片
を含む。標的抗原は、CMI応答を引き出すことが望ましいいかなる分子でもよく、例え
ばウイルス性抗原および腫瘍抗原である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、国立医療研究所(National Institutes of Hea
lth)の助成AI47539により支持されたものであり、米国政府は、特定の権利を
それに与えている。
【0002】
発明の分野
本願は、外因性タンパク質をサイトゾルへ運搬する方法、新規な融合タンパク質、およ
び、その使用に向けられる。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
多くの注目が、免疫反応を発生させる方法に集中している。外因性の抗原に対する免疫
反応の1つのクラスは、抗体生産であり、一般的に体液性免疫と呼ばれている。免疫反応
の第二の形態は、抗原提示細胞(APC)による抗原提示に起因する。このタイプの免疫
反応は、概して、細胞性免疫(CMI)、またはT細胞応答と呼ばれる。双方のタイプの
免疫反応が重要であるにもかかわらず、近年、相当な労力がCMIにおかれている。ヒト
免疫不全ウィルス(HIV)により引き起こされるAIDSのような感染症を扱う際、ウ
イルスとその部分に対する抗体応答は、免疫性を論議するのに十分な程証明されていない
。同様に、多くの悪性病変に関連する外因性タンパク質を扱う際も、抗体応答は、十分に
証明されていない。従って、推測は、CMI応答を発生させることに重点をおいている。
【0004】
CMIを発生させるために、抗原は、APC表面上の主要組織適合複合体(MHC)ク
ラスIまたはII分子に結合しなければならない。一般的にクラスI分子は、外部的に抗
原(例えば内在性タンパク質、ウイルス感染から生じた抗原、および腫瘍抗原)を提示す
る。一般的に、病原体により誘導された(またはガン性の)ペプチドエピトープ(通常、
8〜10個のアミノ酸)が宿主クラスIMHCによりコードされた分子により提示される
場合、抗原特異的T細胞は感染した標的細胞を認識する(7)。これらエピトープは、プ
ロテオソームにより小さいペプチド断片に分割された細胞質のタンパク質から誘導される
。次にこれらは、小胞体(ER)の内腔に輸送され、そこでそれらは新たに合成されたM
HC−I分子と複合体を形成し、その後、細胞表面に輸送され、そこでT細胞による認識
が起こる(8〜13)。一般的に、細胞外の液体中の抗原(外因性の抗原)は、殆どの細
胞において、この処理区画に接近しない。従って、ワクチンを用いてCMIを引き出すこ
とに対する意義深いチャレンジは、MHCクラスI分子による提示のために、外因性の抗
原をサイトゾルに運搬することである。HIVのような多種多様の感染症、同様に前立腺
ガン、乳ガンおよび黒色腫のようなガンに対するワクチンを生成可能であることが望まし
い。
【0005】
例えば、顕著になりつつある証拠によれば、HIV感染の制御においてCMIが主要な
役割を有することが示される(Ogg et al.,Science 279:210
3−6(1998);Schmitz et al.,Science 283:857
−60(1999),Brodle et al.,Nat.Med.5:34−41(
1999))。HIVに晒されたが未感染のままの個体は、しばしば抗ウイルス性CMI
を起こすが、抗体応答は起こさない。一次感染のウイルス血症は、特異抗体の発達前のウ
イルス特異的な細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の発達と分析されている(Letvin
,Science 280:1875−96(1998))。これらデータは、HIV感
染の制御においてCMIが果たす中心的な役割を説明する。
【0006】
多くの腫瘍は、特定のタンパク質の発現および/または特定のタンパク質の過剰発現に
関連する。例えば、前立腺ガンは、前立腺特異的抗原(PSA)のようなタンパク質のレ
ベルが上昇することに関連する。乳ガンは、Her−2、Muc−1、CEAなどのよう
なタンパク質の発現および/または過剰発現に関連する。従って、相当な労力が、免疫反
応を発生させようとする試み、特にこのような悪性病変の治療においてこのような抗原に
対するCMIを開発することに向けられている。
【0007】
細胞性免疫を感染症に対して開発するアプローチは、例えば、遺伝子操作した不活性化
ウイルスを作成すること、または、不活性化感染因子を用いることによって、感染因子全
体を用いることが含まれていた。他のアプローチは、サブユニットワクチンであり、これ
は、1またはそれ以上の抗原(ただしウイルス全体ではない)を被験者に提示する。
【0008】
CMIを発生させるために、抗原は、細胞内部に運搬されなければならない。外因性タ
ンパク質は、細胞に吸収されにくい。従って、好ましい方法は、ウイルスベクター、リポ
ソーム、裸のDNAのような方法、または類似のアプローチを用いることであった。しか
しながら、このようなアプローチは、多くの不利益がある。例えば、多くの組換えウイル
スは、繰り返しの投与でそれ自身が抗原反応を起こす。一般的に、免疫反応を発生させる
標準的な形態は、初期注入(仕込み(prime)と呼ばれる)と、後続注入(ブースト
と呼ばれる)とを良好な免疫性を達成させるために必要とするため、これは深刻な問題と
なり得る。その上、多くの労力がウイルスベクターの安全性を高めることに置かれてはい
るが、ある程度の危険は常に存在する。例えば、HIV感染固体群のような標的個体群の
多くは、弱まった免疫系を有する可能性がある。従って、多くの個体において完全に安全
な特定のウイルスベクターは、これら個体にある程度の危険を与える可能性がある。現時
点で、タンパク質を細胞に運搬する方法も、完全に満足行くほど解明されていない。従っ
て、CMIを刺激するための、抗原をサイトゾルに運搬する新規で簡単な方法が必要であ
る。
【0009】
CMI応答を開発する試みにおいて、これら応答を測定することの難しさに関する技術
的な問題も存在する。
細胞性免疫反応を検出する現在利用可能な実験分析は、特に様々な臨床条件における大
規模なワクチン効率試験に適用する場合に、深刻な短所がある。これは、当分野において
、現在の技術を用いてCMIを測定するのに必要な利用可能な器具と技術的サポートが、
それらが必要とされる環境においてしばしば最小限であるためである。CTLは、HIV
−1感染の制御において重大な役割を有すると考えられており、多くのHTV−1ワクチ
ン候補が、T細胞応答を刺激し、同様に抗体を中和するように設計される(1〜6)。し
かしながら、HIV−特異的CTLのようなCMIを検出するための標準的な実験方法は
複雑で、時間がかかり、しばしば極めて特殊化された設備に制限される。T細胞応答を測
定する改良方法は、全てのT細胞依存性ワクチンまたは免疫療法の開発に重要な効果を持
ち得る。この方策は、CMI応答が、病気の予防およびコントロールにおいて重要な役割
を有することが知られているようなその他の研究分野に、適用可能であるかもしれない。
【0010】
インビトロでCMI応答を確実に検出することにおける一つの問題は、抗原提示に関す
る特有な必要性に起因する。上述したように、MHCクラスI分子によりT細胞へ提示さ
せるための、外因性タンパク質のサイトゾルへの運搬は、意義深いチャレンジを象徴する
。この物理的なクラスI経路の区画は、インビトロでT細胞応答を検出するための主要な
バリアーであった。その結果として、CMI測定における現在の実験方法の多くは、抗原
をサイトゾルへ運搬するのに生きたウイルスベクターまたは細菌ベクターを利用しており
、その際、ワクシニアウイルスのような組換えpoxが最も一般的に使用される。他のア
プローチは、既知のCTLエピトープから誘導された合成ペプチド(10〜20個のアミ
ノ酸)と共に、MHC−I分子を標的細胞の表面に外部的にローディングさせることであ
る。これら方法は、一般的な臨床的使用において深刻な制限がある。組換えワクシニアウ
イルスのような生きたウイルスベクターの使用は、訓練を積み、かつ免疫された実験技師
、加えて、予防面で安全な処置として最低限遮蔽された施設を必要とする。合成ペプチド
は、法外に高価であるだけでなく、様々な個体群で様々なMHC−I分子に適合する「ユ
ニバーサル」ペプチドのプロファイル設計が極めて難しい。それゆえに、T細胞応答を測
定する分析の開発に関するチャレンジは、生きた組換えウイルスベクターまたは細菌ベク
ターに頼ることなく大きな外因性の抗原をサイトゾルに運搬することである。
【0011】
従って、インビトロでCMIを測定するのに使用可能なキットを有することが望ましい
。HIVに対するワクチンのような多数のワクチン候補を試験する多くの提案があるアフ
リカ、インドおよびアジアのような遠隔地で容易に使用可能なキットを有することが、特
に望ましい。
【0012】
我々は、ここで、Bacillus anthracisのような二量体(bipar
tite)タンパク質エキソトキシンのファミリーが、タンパク質のような外因性の抗原
をサイトゾルに運搬するのに用いることができる断片を含むことを見出した。これらタン
パク質からの1つの好ましいタンパク質断片は、防御抗原(PA)結合ドメインを含むN
末端部分から得られるが、それらの細胞に対して毒性となる部分からは得られない。より
好ましくは、該断片は、PAに結合する特異的なドメインを除去するように改変されてい
る。
【0013】
B.anthracisは、動物およびヒトにおける炭疽の原因物質である。B.an
thracisにより生産される毒素は、2種の二量体タンパク質エキソトキシンと、致
死性毒(LT)と、浮腫毒とからなる。LTは、防御抗原(PA)と致死因子(LF)と
から成り、一方で浮腫毒は、PAと浮腫因子(EF)とからなる。これら3種の成分、P
A、LF、およびEPのうちいずれも単独では毒性ではない。しかしながら、1度組み合
わさると、動物およびヒトにおいて、浮腫毒は浮腫を引き起こし、LTは全身性ショック
による死を引き起こす。双方の毒の形成におけるその重要な役割と一致して、PAは、炭
疽に対するワクチンにおける防御成分として同定されている。目下、炭疽毒作用の分子メ
カニズムは、以下のように推測される:PAは、細胞性受容体により哺乳動物細胞の表面
に結合する735個のアミノ酸ポリペプチドである。1度結合したら、PAは、細胞性プ
ロテアーゼによる、標的細胞の細胞質膜におけるリング型7量体を形成することができる
63kDa分子へのタンパク分解性の開裂によって活性化される(図1)(6,7)。次
にPA7量体は、EFまたはLPのいずれかに結合し、エンドサイトーシスにより吸収さ
れる。エンドソーム酸性化の後、おそらくは7量体により形成された孔により、PAは、
EFまたはLFをサイトゾルに入れさせることができる。サイトゾル内部で、EFはアデ
ニレートシクラーゼとして作用し(8)、ATPをcAMPに変換させる。異常に上昇し
たcAMPレベルにより、細胞の代謝がかき乱される。
【0014】
サイトゾルにおけるLFの作用は、宿主細胞の死を招くが、そのメカニズムは十分に理
解されていない。LFは、多数のリンフォカインの過剰生産を誘導し(9)、宿主動物に
おいて致死的な全身性ショックに寄与する。最近の研究はまた、LFが2種の酵素活性を
有することを示している:LFは、亜鉛メタロプロテアーゼとして作用可能であり(10
)、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼを不活性化する(11)。LFのこれら2種
の酵素活性がどのように関連しているのか未だはっきりしていないが、双方ともLP毒性
に必要である。以前に、炭疽毒Bの一部分が、PA存在下で免疫系により順番に抗体応答
を引き出すエピトープ(eptiope)を運搬するのに用いることができるということ
が報告されている(WO97/23236)。
【0015】
LFは、796個のアミノ酸からなるポリペプチドであり、双方の酵素活性に関する機
能的ドメインはアミノ酸383と796との間に位置する(図2A)(12)。PAと混
合され、培養マクロファージに添加された場合、または、動物に注入された場合、この触
媒ドメインを含まないN末端平滑化LFは、いかなる毒作用も完全に欠如されている。し
かしながら、LFは、実際上、PAに結合したままである。LFのPA結合ドメイン(L
Fn)は、アミノ酸1〜255からなる(図2B)(12)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
発明の要約
本発明は、外因性の抗原をサイトゾルに運搬する方法、新規な融合タンパク質、および
その使用を提供する。
【0017】
我々は、現在、毒性ドメインを不活性化するように改変された致死因子である輸送因子
、LFnおよびLFnの断片のようなその断片(これは例えば、輸送因子として該断片の
カルボキシ部分を含み、抗原をサイトゾルに運搬するためのPAを用いずに標的抗原に融
合した断片である)が使用可能であることをさらに見出した。好ましくは、輸送因子は、
LFnまたはその断片である。1つの好ましい群は、PA結合ドメインを含まないLFn
断片である。より好ましくは、輸送因子は、LFn断片である。例えば、LFnの60個
のカルボキシ主成分アミノ酸は、輸送因子として用いることができる;さらにより好まし
くは、80個のカルボキシ主成分アミノ酸である。また、他の断片を用いることもできる
。例えば、毒素部分が不活性化されるのであれば、より多くの致死因子タンパク質を含む
断片を用いることができる。好ましくは、輸送因子断片は、LFnの80個のカルボキシ
主成分アミノ酸残基の部分を含み、毒性を含むその部分が除去されているのであれば、該
断片の他の部分を含む。好ましくは、該断片は、350個またはそれ未満のアミノ酸であ
り、さらにより好ましくは300個またはそれ未満のアミノ酸であり、さらにより好まし
くは250個またはそれ未満のアミノ酸である。1つの好ましい断片は、105個または
それ未満のアミノ酸である。より好ましい断片は、80個またはそれ未満のアミノ酸であ
る。次にこの輸送因子は、サイトゾルへ運搬することが望まれる抗原に結合する。これは
、当業界周知の技術によりなされ得る。例えば、抗原を含む融合タンパク質、または、細
胞のサイトゾルへ運搬することが望まれる抗原を調製することができる。
【0018】
本発明の好ましい方法は、処理した動物において、細胞性免疫反応の形成が引き起こさ
れる新規なポリペプチドによって特徴付けられる。
本発明は、本発明の新規な融合ポリペプチドをコードするDNA配列、当該DNA配列
によって特徴付けられる組換えDNA分子、当該DNA配列および分子で形質転換された
単細胞宿主、ならびに、新規なポリペプチドおよび本発明の望ましい抗原に対するCMI
免疫反応を発生させるための、当該配列、分子および宿主を用いる方法を提供する。
【0019】
他の好ましい実施形態において、本発明は、1またはそれ以上の本発明の新規な融合ペ
プチドを含む医薬組成物を提供する。このような組成物は、細胞性免疫反応を引き起こす
のに有効である。1つの好ましい実施形態において、該組成物は、ワクチンとして用いる
ことができる。他の実施形態において、これら融合タンパク質は、生産細胞、好ましくは
多種多様なタンパク質、特にこのような細胞で発現させることが困難であることが証明さ
れているタンパク質の細菌の生産細胞を作成するのに用いることができる。
【0020】
他の好ましい実施形態において、本発明は、細胞性免疫反応を測定する方法を提供する

さらに好ましい実施形態において、本発明は、インビトロで細胞性免疫反応を測定する
キットを提供する。
【0021】
本発明は、例えば以下を提供する。
(項目1)
標的抗原を細胞のサイトゾルに運搬する方法であって、標的抗原を輸送因子に結合させ
ることを含み、輸送因子は、細胞に対して毒性ではない二量体タンパク質エキソトキシン
の断片を含み、防御抗原(PA)は用いられない、前記方法。
(項目2)
輸送因子が、配列番号2(LFn)またはその部分を含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
輸送因子が、配列番号2のPAに結合する部分を含まない断片である、項目2に記載
の方法。
(項目4)
輸送因子が、LFnの80個のカルボキシ主成分アミノ酸である、項目3に記載の方
法。
(項目5)
輸送因子が、配列番号2のアミノ酸1〜149を含まない、項目3に記載の方法。
(項目6)
輸送因子が、配列番号3によりコードされる、項目3に記載の方法。
(項目7)
輸送因子が、配列番号2と少なくとも80%のホモロジーを有する少なくとも80アミ
ノ酸の断片である、項目1に記載の方法。
(項目8)
輸送因子が、350個またはそれ未満のアミノ酸の断片である、項目1に記載の方法

(項目9)
輸送因子が、300個またはそれ未満のアミノ酸である、項目1に記載の方法。
(項目10)
輸送因子が、250個またはそれ未満のアミノ酸である、項目1に記載の方法。
(項目11)
輸送因子が、105個またはそれ未満のアミノ酸である、項目1に記載の方法。
(項目12)
輸送因子が、配列番号2の、150〜253個またはそれ未満のアミノ酸である、請求
項11に記載の方法。
(項目13)
標的抗原が、ウイルス性抗原、細菌の抗原、および腫瘍抗原からなる群より選択される
、項目1に記載の方法。
(項目14)
ウイルス性抗原がHIV抗原である、項目13に記載の方法。
(項目15)
輸送因子が、融合ポリペプチドの発現により標的抗原に結合し、単一の核酸コーディン
グ配列により輸送因子と標的抗原との双方がコードされる、項目1に記載の方法。
(項目16)
輸送因子が、化学結合により標的抗原に結合する、項目1に記載の方法。
(項目17)
輸送因子が、細胞に対して毒性ではない二量体タンパク質エキソトキシンの断片を含み
、標的抗原を細胞のサイトゾルに運搬するように機能する、標的抗原と輸送因子とを含む
単離されたポリペプチド。
(項目18)
輸送因子が、対応する防御抗原(PA)に結合するドメインを含まない、項目17に
記載の単離されたポリペプチド。
(項目19)
項目18に記載のポリペプチドをコードする単離されたDNA。
(項目20)
ペプチドの発現のための少なくとも1つのプロモーター配列を含む5’−フランキング
領域をさらに含む、項目16に記載の単離されたDNA。
(項目21)
項目20に記載の単離されたDNAを含むベクター。
(項目22)
標的抗原と輸送因子とを含む単離されたポリペプチドの免疫原性の量を含む医薬組成物
であって、輸送因子は、細胞に対して毒性ではない二量体タンパク質エキソトキシンの断
片を含み、標的抗原を細胞のサイトゾルに運搬するように機能し、対応する防御抗原が存
在しない、前記医薬組成物。
(項目23)
アジュバントをさらに含む、項目22に記載の医薬組成物。
(項目24)
アジュバントがミョウバンである、項目23に記載の医薬組成物。
(項目25)
哺乳動物に項目22に記載の医薬組成物を投与することを含む、哺乳動物において細
胞性免疫反応を発生させる方法。
(項目26)
医薬組成物が、皮下または筋肉内投与により投与される、項目25に記載の方法。
(項目27)
医薬組成物が、口での摂取により投与される、項目25に記載の方法。
(項目28)
項目18に記載の単離された核酸を細胞中で発現させることを含む、タンパク質を生
産する方法。
(項目29)
細胞が、細菌の細胞、昆虫細胞、および哺乳動物細胞からなる群より選択される、請求
項28に記載の方法。
(項目30)
細胞が細菌の細胞である、項目29に記載の方法。
(項目31)
細胞性免疫反応分析において項目17に記載のポリペプチドを用いることを含む、細
胞性免疫反応を測定する方法。
(項目32)
細胞性免疫反応分析が、Elispot分析、および、フローに基づく細胞内のサイト
カイン分析からなる群より選択される、項目31に記載の方法。
(項目33)
項目17に記載の新規なポリペプチドを含む、インビトロでの細胞性免疫反応を測定
するキット。

【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】エンドサイトーシスを介した細胞へのLFnのPA介在の侵入と、それに続くMHCクラスI分子による提示とを描写する図面である。
【図2】様々な致死断片(LF)ポリペプチドのアミノ酸配列を示す(配列番号1)。図2Aは、LFの全長アミノ酸配列を示す。図2Bは、LFnの最初の289アミノ酸のアミノ酸配列を示す(配列番号2)。図2Cは、致死因子のアミノ酸185〜289の配列(場合によっては断片3と呼ばれる)を示す(配列番号3)。
【図3A】標的のLFn提示がPA非依存性であることを示すグラフである。標準的なクロム放出分析で、よく特徴付けられたCTLクローンの活性を、エフェクター:標的(E:T)を10:1で試験した。標的は、PAの存在または非存在下でLFNで一晩感作したHLA−適合EBV−形質転換細胞系であった。用いられたコントロールは、組換えワクシニアベクター(コントロールとしてNYCBH、および、適切なクローンとしてrVV−NefまたはEnvペプチド)であった。図3Aは、Nef組換えワクシニアベクター、PAおよびLFnNefまたはLFnNef単独と共に一晩インキュベートしたB60制限標的細胞に対する、Nef特異的クローン(KM)の活性を試験したことをを示す。各標的に関するバックグラウンド/コントロールが含まれる(コントロール,PA−LFn,LFn)。
【図3B】標的のLFn提示がPA非依存性であることを示すグラフである。標準的なクロム放出分析で、よく特徴付けられたCTLクローンの活性を、エフェクター:標的(E:T)を10:1で試験した。標的は、PAの存在または非存在下でLFNで一晩感作したHLA−適合EBV−形質転換細胞系であった。用いられたコントロールは、組換えワクシニアベクター(コントロールとしてNYCBH、および、適切なクローンとしてrVV−NefまたはEnvペプチド)であった。図3Bは、Env特異的CTLクローン(SP511)がLFnEnvで標識した標的を用量に依存して認識し、再びPA非依存性であったことを示す。用いられたコントロールは、ペプチドEnv106B(100μg/ml)であった。LFn構築物の用量は、μg/ml(LfnEnv5=5μ/mlのLfhEnv)として列挙される。
【図4A】LFn−HIV認識がHLAで制限されることを示すグラフである。4Aは、HLA−B14制限Gagクローン(AC13)の活性を、LFnP24で感作したHLA適合および非適合B−LCLを用いて試験し、標準的なクロム放出分析で試験したことを示す。Rvv−Gagは、コントロールとして用いられた。
【図4B】LFn−HIV認識がHLAで制限されることを示すグラフである。2Bは、B60Nefクローン(KM)に対するHLA制限は、LFnNefで感作したHLA適合および非適合標的を用いて示されたことを示す。TAP欠失(T2)、HLA−B60標的細胞をLFnNefと最適なNefペプチドとで感作し、溶解に関して試験した。T2LFnNef標的細胞に関する活性の欠失は、プロテオソームプロセシングの必要性を示している。全てのクローンをE:T=10:1で用い、溶解レベルをバックグラウンドコントロールのレベルから引算した。NYCBHを組換えワクシニアウイルスコントロールとして用い、LFn単独をLFnP24およびLFnNefとして用いた。ポジティブコントロールとしては、Nefペプチド180および組換えワクシニアベクターGag(rvv−Gag)が含まれる。
【図5A】LFn−HIVの内部移行とプロセシングとを示すグラフである。5Aは、ブレフェルジンA、サイトカラシンBおよびクロロキンの存在下での、LFnNefで感作したHLA−適合標的細胞のNef特異的クローン(KM)溶解を、LFnNef単独と比較して示す。サイトカラシンBおよびブレフェルジンAとのコ−インキュベーションにより、Nef特異的クローンによる認識が失われたが、クロロキンでは失われなかった。
【図5B】LFn−HIVの内部移行とプロセシングとを示すグラフである。5Bは、Nefを発現する組換えワクシニアウイルスで一晩で感染させた標的、または、最適なエピトープペプチドNef180単独で感作した標的を用いた、または、クロロキン、サイトカラシンBまたはブレフェルジンAの存在下での、同じNefクローンの活性を示す。標的細胞とCTLクローンを、サイトカラシンB、クロロキンまたはブレフェルジンAの存在下でインキュベートした場合、活性の顕著な減少は見られなかった。示された溶解レベルを、10%未満のバックグラウンド溶解から引算する。
【図6】Elispot分析におけるLFn−HIV発現を示したグラフである。既知のHTV特異的CTL活性またはエピトープを有するHTV−1感染個体からの凍結保存されたPBMCを、組換えワクシニアウイルスまたはLFn−HIVを用いたElispot分析で用いた。LFn単独およびNYCBHは、コントロールとして用いられた。二連のウェルにおいて、ウェル当たり100K個の細胞を用いた。結果を、SFC/100万(100万当たりのスポット形成細胞)として報告する。
【図7】FACSプロットであり、細胞内のフローに基づく分析においてLFn−HIV発現を示す。Nef特異的クローンにおける細胞内のIFN−γ生産(KM)(A)、同様に、Env特異的CTL活性を有する血清陽性の個体(AC2)のPBMCからの細胞内のIFN−γ生産(KM)(B)である。刺激していない細胞をネガティブコントロールとして用い(1)、組換えワクシニアウイルスをポジティブコントロールとして用い(2)、LFnNefとLfaEnvとをそれぞれ用いた(3)。
【図8】LFn融合タンパク質を描写する図面である。
【図9】LFn融合タンパク質を描写する一連の図面である。
【図10ABCDEF】LFn−GFPのCHO細胞への細胞摂取を示す。CHO細胞を、コラーゲン処理したチャンバースライドで80%の群集になるように培養し、続いて精製したLFn−GFPと共に1時間インキュベートし、続いてPBS、および、プロテアーゼを添加したPBSでよく洗浄し、膜結合タンパク質を除去した。次に、細胞を抗トランスフェリン抗体で染色し、パラホルムアルデヒドで固定した。そのスライドを共焦点顕微鏡法で、それぞれ緑色(GFP、図10A〜Dで示される)、および、赤色(抗トランスフェリン、図10E〜Hで示される)に関して試験した。第三のイメージは、各フィールドに対して、過剰露出した緑色のイメージにより、同じ細胞の赤色のイメージと共に(図10I〜L)示される。その結果として、黄色のスポットは、GFPがトランスフェリンタンパク質と同じスポットにあることを示し、従って細胞内部のGFPの位置の参照を提供する。図10A〜Dで示したように、相当数の緑色のスポットが、LFn−GFPで標的化された細胞中で1時間で可視化され、これはLFn−GFPが実際に細胞に侵入できることを示す。
【図10GHIJKL】LFn−GFPのCHO細胞への細胞摂取を示す。CHO細胞を、コラーゲン処理したチャンバースライドで80%の群集になるように培養し、続いて精製したLFn−GFPと共に1時間インキュベートし、続いてPBS、および、プロテアーゼを添加したPBSでよく洗浄し、膜結合タンパク質を除去した。次に、細胞を抗トランスフェリン抗体で染色し、パラホルムアルデヒドで固定した。そのスライドを共焦点顕微鏡法で、それぞれ緑色(GFP、図10A〜Dで示される)、および、赤色(抗トランスフェリン、図10E〜Hで示される)に関して試験した。第三のイメージは、各フィールドに対して、過剰露出した緑色のイメージにより、同じ細胞の赤色のイメージと共に(図10I〜L)示される。その結果として、黄色のスポットは、GFPがトランスフェリンタンパク質と同じスポットにあることを示し、従って細胞内部のGFPの位置の参照を提供する。図10A〜Dで示したように、相当数の緑色のスポットが、LFn−GFPで標的化された細胞中で1時間で可視化され、これはLFn−GFPが実際に細胞に侵入できることを示す。
【図11ABCDE】図10で説明した条件を用いた、GFPのCHO細胞への細胞摂取を示す。図11A、D、およびGは、CHO細胞をGFPと共に1時間インキュベートした結果を示す;図11B〜C、E〜F、およびH〜Iは、CHO細胞をGFPと共に2時間インキュベートした結果を示す。図11A〜Cは、緑色(GFP)に関して共焦点顕微鏡法で試験された細胞のフィールドを示す;図11D〜Fは、それぞれ赤色(抗トランスフェリン)に対応する、共焦点顕微鏡法で試験されたフィールドを示す。第三のイメージは、各フィールドに対して、過剰露出した緑色のイメージにより、同じ細胞の赤色のイメージ(図11G〜I)と共に示される。GFP処理細胞において、緑色のスポットはほとんど示されなかった(図11)。
【図11FGHI】図10で説明した条件を用いた、GFPのCHO細胞への細胞摂取を示す。図11A、D、およびGは、CHO細胞をGFPと共に1時間インキュベートした結果を示す;図11B〜C、E〜F、およびH〜Iは、CHO細胞をGFPと共に2時間インキュベートした結果を示す。図11A〜Cは、緑色(GFP)に関して共焦点顕微鏡法で試験された細胞のフィールドを示す;図11D〜Fは、それぞれ赤色(抗トランスフェリン)に対応する、共焦点顕微鏡法で試験されたフィールドを示す。第三のイメージは、各フィールドに対して、過剰露出した緑色のイメージにより、同じ細胞の赤色のイメージ(図11G〜I)と共に示される。GFP処理細胞において、緑色のスポットはほとんど示されなかった(図11)。
【図12ABCDEF】図10で上述したのと同一の実験方法を用いて、GFPの共存(co−localization)、および、リソソームを示すLAMP−2免疫蛍光を示す。図12A〜Dは、赤色(LAMP−2)に関して共焦点顕微鏡法で試験された細胞のフィールドを示す;図12E〜Hは、を示す緑色(LN−GFP)に関して共焦点顕微鏡法で試験された対応するフィールドを示す。第三のイメージは、各フィールドに対して、過剰露出した緑色のイメージにより、同じ細胞の赤色のイメージ(図12I〜L)と共に示される。
【図12GHIJKL】図10で上述したのと同一の実験方法を用いて、GFPの共存(co−localization)、および、リソソームを示すLAMP−2免疫蛍光を示す。図12A〜Dは、赤色(LAMP−2)に関して共焦点顕微鏡法で試験された細胞のフィールドを示す;図12E〜Hは、を示す緑色(LN−GFP)に関して共焦点顕微鏡法で試験された対応するフィールドを示す。第三のイメージは、各フィールドに対して、過剰露出した緑色のイメージにより、同じ細胞の赤色のイメージ(図12I〜L)と共に示される。
【図13ABCDEF】図10で上述したのと同一の実験方法を用いて、GFPの共存、および、エンドソームを示すEEA−1に対する免疫蛍光を示す。図13A〜Dは、共焦点顕微鏡法で試験された赤色(EEA−1)に関する細胞のフィールドを示す;図13 E〜Hは、共焦点顕微鏡法で試験されたに関して緑色(LN−GFP)対応するフィールドを示す。第三のイメージは、各フィールドに対して、過剰露出した緑色のイメージにより、同じ細胞の赤色のイメージ(図13I〜L)と共に示される。
【図13GHIJKL】図10で上述したのと同一の実験方法を用いて、GFPの共存、および、エンドソームを示すEEA−1に対する免疫蛍光を示す。図13A〜Dは、共焦点顕微鏡法で試験された赤色(EEA−1)に関する細胞のフィールドを示す;図13 E〜Hは、共焦点顕微鏡法で試験されたに関して緑色(LN−GFP)対応するフィールドを示す。第三のイメージは、各フィールドに対して、過剰露出した緑色のイメージにより、同じ細胞の赤色のイメージ(図13I〜L)と共に示される。
【図14ABC】図10で上述したのと同一の実験方法を用いた、GFPと抗ゴルジ抗体との共存を示す。図14A−Bは、共焦点顕微鏡法で試験された赤色(抗ゴルジ抗体)に関する細胞のフィールドを示す;図14C〜Dは、共焦点顕微鏡法で試験された緑色(LN−GFP)に関して対応するフィールドを示す。第三のイメージは、各フィールドに対して、過剰露出した緑色のイメージにより、同じ細胞の赤色のイメージ(図14E〜F)と共に示される。
【図14DEF】図10で上述したのと同一の実験方法を用いた、GFPと抗ゴルジ抗体との共存を示す。図14A−Bは、共焦点顕微鏡法で試験された赤色(抗ゴルジ抗体)に関する細胞のフィールドを示す;図14C〜Dは、共焦点顕微鏡法で試験された緑色(LN−GFP)に関して対応するフィールドを示す。第三のイメージは、各フィールドに対して、過剰露出した緑色のイメージにより、同じ細胞の赤色のイメージ(図14E〜F)と共に示される。
【図15ABCDEF】プロテオソームを示すGFPの共存、および、抗20s免疫蛍光を示す。HeLa細胞を40μg/mlのLNgfpと共に2時間インキュベートしたことを除いては、図10で用いられた条件と類似の条件を用いた。図15A〜Dは、共焦点顕微鏡法で試験された赤色(抗20s抗体)に関する細胞のフィールドを示す;図15E〜Hは、それぞれ共焦点顕微鏡法で試験された緑色(LN−GFP)に関して対応するフィールドを示す。第三のイメージは、各フィールドに対して、過剰露出した緑色のイメージにより、同じ細胞の赤色のイメージ(図15I〜L)と共に示される。図12〜15の異なるイメージを比較することにより、最も黄色のスポットを含む過剰露出したイメージは図15で示したイメージであって、それにおいて、細胞内のLFn−GFPを示す緑色のスポットが、細胞性プロテオソームを示す赤色のスポットと顕著にオーバーラップしている。
【図15GHIJKL】プロテオソームを示すGFPの共存、および、抗20s免疫蛍光を示す。HeLa細胞を40μg/mlのLNgfpと共に2時間インキュベートしたことを除いては、図10で用いられた条件と類似の条件を用いた。図15A〜Dは、共焦点顕微鏡法で試験された赤色(抗20s抗体)に関する細胞のフィールドを示す;図15E〜Hは、それぞれ共焦点顕微鏡法で試験された緑色(LN−GFP)に関して対応するフィールドを示す。第三のイメージは、各フィールドに対して、過剰露出した緑色のイメージにより、同じ細胞の赤色のイメージ(図15I〜L)と共に示される。図12〜15の異なるイメージを比較することにより、最も黄色のスポットを含む過剰露出したイメージは図15で示したイメージであって、それにおいて、細胞内のLFn−GFPを示す緑色のスポットが、細胞性プロテオソームを示す赤色のスポットと顕著にオーバーラップしている。
【図16ABCDEF】図15で用いた条件と類似した条件下でPA添加しても、細胞内部の緑色のスポットの数がPA非存在下での数と比較して増加しなかったことを示す。図16A〜Fは、PA非存在下での、LN−GFPを伴うHeLa細胞のインキュベーションを示す;図16G〜Lは、PA存在下でHeLa細胞のインキュベーションを示す。図16A〜BおよびG〜Hは、赤色(抗20s抗体)に関して共焦点顕微鏡法で試験された細胞のフィールドを示す;図16C〜DおよびI〜Jは、それぞれ緑色(LN−GFP)に関して共焦点顕微鏡法で試験された対応するフィールドを示す。第三のイメージは、各フィールドに対して、過剰露出した緑色のイメージにより、同じ細胞の赤色のイメージ(図16E〜PおよびK〜L)と共に示される。
【図16GHIJKL】図15で用いた条件と類似した条件下でPA添加しても、細胞内部の緑色のスポットの数がPA非存在下での数と比較して増加しなかったことを示す。図16A〜Fは、PA非存在下での、LN−GFPを伴うHeLa細胞のインキュベーションを示す;図16G〜Lは、PA存在下でHeLa細胞のインキュベーションを示す。図16A〜BおよびG〜Hは、赤色(抗20s抗体)に関して共焦点顕微鏡法で試験された細胞のフィールドを示す;図16C〜DおよびI〜Jは、それぞれ緑色(LN−GFP)に関して共焦点顕微鏡法で試験された対応するフィールドを示す。第三のイメージは、各フィールドに対して、過剰露出した緑色のイメージにより、同じ細胞の赤色のイメージ(図16E〜PおよびK〜L)と共に示される。
【図17】BALB/cマウスの3つのグループ(各グループ中4匹)を、それぞれ異なる抗原配合(15μgのLFn−p24+4μgのPA、15μgのLPn−p24+4μgのPA+ミョウバン、15LFn−p24単独+ミョウバン)で腹腔内に免疫した。免疫化後1週間で、免疫化BALB/cマウスの脾臓の単核細胞を、CTL源として用いた。脾臓培養物中のCTLを、非免疫化動物のガンマ放射したペプチドパルスBALB/c脾細胞と培養することによりインビトロで活性化した。37℃のCOインキュベーターで6日培養した後、成熟CTL(エフェクター細胞)を、51Cr標識化P20ペプチドパルスP815細胞(ポジティブ標的)または51Cr標識化媒体パルス細胞(ネガティブ標的)のいずれかを溶解させるそれらの能力に関して試験した。示された溶解の割合を、ネガティブ標的のバックグラウンド溶解から引算し、各グループの平均として示した。
【図18】BALB/cマウスの3つのグループ(各グループ中4匹)を、それぞれ15μgのLFn−p24、15μgのMLFn−p24、および15μgのp24で腹腔内に免疫した。脾臓組織中のCTLを、免疫化の後連続して試験した。
【発明を実施するための形態】
【0023】
発明の詳細な説明
我々は、ここで、防御抗原(PA)の非存在下で、標的抗原(例えばタンパク質)を二
量体タンパク質エキソトキシンの断片を含む輸送因子に結合させることによって、外因性
タンパク質をサイトゾルに運搬する方法を見出した。好ましくは、該標的抗原は、輸送因
子に融合される。好ましくは、該輸送因子は、アミノ酸1〜288からなる(配列番号2
)B.anthracisからの致死因子の防御抗原結合ドメインであるか、または、カ
ルボキシ部分のようなPA結合ドメインを含まないその断片である。例えば、輸送因子に
関するアミノ酸LFn1アミノ酸断片の好ましい群の、約80個のカルボキシ主成分アミ
ノ酸の断片は、デフォルト設定におけるBlastで配列番号2に少なくとも80%のホ
モロジーを示す少なくとも80アミノ酸を含む。さらにより好ましくは、該断片は、それ
に対して少なくとも90%のホモロジーを有し、さらにより好ましくは、それに対して少
なくとも95%のホモロジーを有する。好ましくは、上記断片は、PA結合ドメインを含
まない。好ましい輸送因子は、LFn断片またはその部分である。より好ましくは、該輸
送因子は、少なくともLFnの60個のカルボキシ主成分アミノ酸を含むが、PA結合ド
メインは含まない。1つの好ましい断片は、配列番号2のカルボキシ部分からの約105
個またはそれ未満のアミノ酸を含む。
【0024】
該標的抗原としては、CMI応答を引き出すのに望ましいと思われる全ての分子が可能
であり、例えばウイルス性抗原および腫瘍抗原である。
本発明の一実施形態は、発生させるための新規な融合ポリペプチドを含む組成物を提供
する。本発明の他の実施形態は、外因性タンパク質をサイトゾルに運搬することによって
CMI応答を測定するための分析を含む。好ましい実施形態は、CMI応答を測定するた
めのキットを提供する。
【0025】
本発明の新規な融合ポリペプチドは、標的抗原に結合した輸送因子を含む。該輸送因子
は、いかなる毒性の断片も含まない、防御抗原の非存在下でタンパク質をサイトゾルに運
搬するいかなる二量体タンパク質エキソトキシンの断片を含み得る。この輸送方法は、P
A関連経路に非依存性であり、従って、PAは不必要である。好ましいエキソトキシンは
、B.anthracisの致死因子(LF)である(配列番号1)(図2A)。LFの
PA結合ドメインは、細胞膜を貫通可能なLFnの部分またはその断片であり、アミノ酸
1〜255(配列番号2)(図2B)からなる。LFnのいかなる断片も、輸送因子とし
て用いることができる。好ましくは、それが、PA結合ドメイン(LFnのN末端の半分
(アミノ酸1〜149)に存在する)を含まない。1つの好ましい断片は、配列番号2の
カルボキシ部分からの105個またはそれ未満のアミノ酸を含む。好ましくは、60個の
カルボキシ主成分アミノ酸であり、さらにより好ましくは、80個のカルボキシ主成分ア
ミノ酸である。好ましい輸送因子は、断片3である(配列番号3)(図2C)。
【0026】
輸送因子として他の断片を用いることもできる。該輸送因子は、好ましくは350個ま
たはそれ未満のアミノ酸であり、さらにより好ましくは300個またはそれ未満のアミノ
酸であり、さらにより好ましくは250個またはそれ未満のアミノ酸である。
【0027】
輸送因子として好ましいその他の断片は、LFnの断片3に対して少なくとも55%の
ホモロジーを有する(配列番号3)(図2C)。例えば、B.anthracisの浮腫
因子の断片は、デフォルト設定におけるBlastを用いて、断片3に対して約57%
のホモロジーを有する。より好ましくは、それに対して少なくとも65%のホモロジーを
有し;さらにより好ましくは、それに対して少なくとも75%のホモロジーを有し;さら
により好ましくは、それに対して少なくとも80%のホモロジーを有し;さらにより好ま
しくは、それに対して少なくとも90%のホモロジーを有し;さらにより好ましくは、そ
れに対して少なくとも95%のホモロジーを有する。
【0028】
該輸送因子は、サイトゾルへの運搬が望まれるいかなる抗原に結合させることができる
。好ましくは、結合は、融合タンパク質の形態である。しかしながら、当業界既知のその
他のリンカーを生成することができる。例えば、リンカーユニットは、次に化学的に標的
抗原に結合できる輸送体の部分であり得る。好ましい抗原としては、ウイルス抗原、細菌
の抗原、寄生虫の抗原、および腫瘍関連抗原が挙げられる。好ましいウイルス性抗原とし
ては、細胞性免疫反応が望ましい場合、いずれのウイルスからのタンパク質が挙げられる
。特に好ましいウイルスとしては、HIV−1、HTV−2、肝炎ウイルス(肝炎Bおよ
びCを含む)、エボラウイルス、西ナイルウイルス、およびHSV−2のようなヘルペス
ウイルスが挙げられる。好ましい細菌の抗原としては、S.typhiおよびマイコバク
テリア(M.tuberculosis)からの抗原が挙げられる。好ましい寄生虫の抗
原としては、Plasmodium(P.falciparumを含む)からの抗原が挙
げられる。
【0029】
好ましい腫瘍抗原としては、T細胞応答の誘発において認識されるエピトープが挙げら
れ、例えば、これらに限定されないが、以下が挙げられる:前立腺ガン抗原(例えばPS
A、PSMAなど)、乳ガン抗原(例えばHER2/neu、mini−MUC、MUC
−1、HER2受容体、mammoglobulin、labyrinthine、SC
P−1、NY−ESO−1、SSX−2、N末端がブロックされた可溶性サイトケラチン
、43kDのヒトガン抗原、PRAT、TUAN、Lb抗原、癌胎児性抗原、ポリアデニ
ル酸ポリメラーゼ、p53、mdm−2、p21、CA15−3、オンコプロテイン18
/スタスミン、およびヒト腺性カリクレイン)、黒色腫抗原などである。
【0030】
好ましくは、被験者において免疫反応を発生させようと試みる場合に免疫アジュバント
を用いてもよい。アジュバントは当業界既知であり、サイトカイン、例えばIL−2、I
g−IL−2、CM−CSF、CpG、RIBL Detox(Ribi Immuno
chemical)、QS21(Cambridge Biotech)、不完全フロイ
ントアジュバントなどが挙げられる。我々は、意外にも、実際にミョウバンがCTL誘導
を阻害することができるが、本システムにおいて、特異的なCTLを刺激するのにミョウ
バンが好ましいことを見出した。
【0031】
本発明の方法はまた、以下で説明するように、輸送因子と融合した腫瘍抗原のライブラ
リーをCMI分析と併せて作成することによって追加のガン抗原を同定するのに用いるこ
とができる。
【0032】
標的抗原のサイズは、サイトゾルへの運搬が可能であればどのようなサイズでもよい。
好ましくは、標的抗原は、750個未満のアミノ酸、さらにより好ましくは、600個未
満のアミノ酸、さらにより好ましくは、500個未満のアミノ酸である。本発明の新規な
融合ポリペプチドは、単一の融合タンパク質の部分として、単一の標的抗原、または、複
数の標的抗原を含み得る。好ましい融合ポリペプチドとしては、いくつかのHIV−1タ
ンパク質の断片、例えばGagおよびnefが挙げられる(図8、9)。
【0033】
また、HIVのような感染性ウイルスの複数の系を用いてエピトープを作成することも
できる(図9を参照)。
新規な融合ポリペプチドは、組換えにより製造される、または、化学的に合成される大
きい多量体分子の部分でもよい。このような多量体はまた、脂質および炭水化物などのア
ミノ酸以外の成分に融合または結合したポリペプチドでもよい。
【0034】
好ましくは、多量体タンパク質は、同じ分子内で、ランダムに、または、間にスペーサ
ー(アミノ酸など)を含んで繰り返される複数のT細胞エピトープからなる。
これら新規な融合タンパク質をコードするDNA配列は、容易に製造することができる
。例えば、LFnをコードする配列は周知であり、既知の技術によって改変することがで
き、例えば望ましくない領域(例えば可変ループ)を除き、追加の望ましいコーディング
配列(例えばリンカーセグメント)のいずれかを挿入することによって改変することがで
きる。様々な標的抗原をコードする配列も当業界既知である。加えて、様々なアミノ酸残
基に関するコドンが知られており、標準的な技術により代わりのコーディング配列を容易
に調製することができる。
【0035】
新規な融合タンパク質を発現させるために、DNA配列を各種動物で用いることができ
、それにより、以下で説明するワクチン組成物やCMI分析などの多種多様な用途に用い
ることができる。
【0036】
新規な融合タンパク質をコードするDNA配列は、多種多様の宿主/ベクターの組み合
わせで発現させることができる。ベクターとしては、WO93/04701で説明されて
いるような化学的な共役(これはターゲティング部分(例えば細胞表面受容体に対するリ
ガンド)および核酸結合部分(例えばポリリシン)を有する)、ウイルスベクター(例え
ばDNAまたはRNAウイルスベクター)、プラスミド、ファージなどが挙げられる。該
ベクターは、染色体系、非染色体系または合成であり得る。
【0037】
真核性宿主に有用な発現ベクターとしては、例えば、SV40、ウシパピローマウイル
ス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、サイトメガロウイルスおよびレトロウイルス
からの発現コントロール配列を含むベクターが挙げられる。細菌の宿主に有用な発現ベク
ターとしては、細菌のプラスミド、例えばE.coliからのプラスミド、例えばpBl
uescript、pGEX−2T、pUCベクター、col El、pCRl、pBR
322、pMB9およびそれらの誘導体、幅広い宿主範囲のプラスミド、例えばRP4、
ファージDNA類、例えば多数のファージラムダ誘導体、例えばラムダ.GT10および
ラムダ.GT11、ならびにその他のファージが挙げられる。酵母細胞に有用な発現ベク
ターとしては、2ミクロン、プラスミドおよびその誘導体が挙げられる。昆虫細胞に有用
なベクターとしては、pVL941が挙げられる。
【0038】
好ましいベクターとしては、ウイルスベクター、融合タンパク質、および、化学的な共
役が挙げられる。レトロウイルスベクターとしては、モロニーマウス白血病ウイルス、お
よび、HIVベースのウイルスが挙げられる。1つの好ましいHIVベースのウイルスベ
クターは、少なくとも2つのベクターを含み、ここでgagおよびpol遺伝子がHIV
ゲノム由来であり、env遺伝子が他のウイルス由来である。DNAウイルスベクターが
好ましい。これらベクターとしては、ヘルペスウイルスベクター、例えば単純ヘルペスI
ウイルス(HSV)ベクター(Geller,A.I.et al,J.Neuroch
em 64:487,1995;Lim,F.et al.,in DNA Cloni
ng:Mammalian Systems,D.Glover,Ed.,Oxford
Univ.Press,Oxford England,199);Geller,A
.I.,Proc.Natl.Acad.Sci USA 90:7603,1993;
Geller,A.I.,I Proc Natl.Acad Sci USA 87:
1149,1990)、アデノウイルスベクター(LeGal LaSalle et
al.,Science 259:988,1993;Davidson,et al.
,Nat.Genet 3:219,1993;Yang,et al.,J.Viro
l.69:2004,1995)、およびアデノ随伴ウイルスベクター(Kaplitt
,M.G.,et al.,Nat.Genet 8:148,1994)が挙げられる
。DNA配列は、宿主細胞中での発現を可能にするプロモーターに実施可能に結合してい
る。このようなプロモーターは当業界で周知であり、容易に選択することができる。
【0039】
多種多様の単細胞宿主細胞が、本発明のDNA配列を発現させるのに有用である。これ
ら宿主としては、周知の真核および原核宿主、例えばE.coli系、Pseudomo
nas系、Bacillus系、Streptomyces系、菌類、酵母、昆虫細胞、
例えばSpodoptera frugiperda(SF9)、動物細胞、例えばCH
Oおよびマウス細胞、アフリカミドリザル細胞、例えばCOS1、COS7、BSC1、
BSC40、およびBMT10、ならびに、ヒト細胞、同様に、組織培養における植物細
胞が挙げられる。本発明の分子は、各種生産細胞を作成するのに用いることができる。こ
れは特に、細胞中で大量に発現させることが目下困難な特定のタンパク質に関して有用で
ある。
【0040】
本発明のDNA配列でコードされる新規な融合ポリペプチドを含む分子を、多種多様な
通常の方法のいずれかを用いて発酵または細胞培養物から単離し、精製しすることができ
、該方法としては、:液体クロマトグラフィー(例えばHPLC、FPLCなどを用いた
、通常の液体クロマトグラフィーまたは逆相液体クロマトグラフィー);アフィニティー
クロマトグラフィー(例えば無機リガンドまたはモノクローナル抗体を用いたもの);サ
イズ排除クロマトグラフィー;固定化金属キレートクロマトグラフィー;ゲル電気泳動;
などが挙げられる。当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく最も適切な単離
と精製技術とを選択することができる。
【0041】
これら新規な融合タンパク質の安定型を、例えば、ポリ(アルキレンオキシド)の共役の
ような共役により、容易に作成することができる。共役は、好ましくは、ポリ(アルキレ
ンオキシド)のヒドロキシル末端と、そのコンフォメーションに影響を及ぼすことのない
融合タンパク質の部分中の遊離アミノ基とを共有結合させることにより形成される。その
他の当業界で認められた、これら材料を共役させる方法としては、アミドまたはエステル
結合が挙げられる。共有結合、同様に、親油性または親水性相互作用のような非共有結合
の共役も用いることができる。
【0042】
共役は、非抗原性の高分子物質、例えばデキストラン、ポリビニルピロリドン、多糖類
、スターチ、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、または、その他の実質的に非
免疫原性(immunogenic)のポリマーで構成することができる。ポリエチレングリコール
(PEG)が好ましい。その他のポリ(アルキレンオキシド)としては、モノメトキシ−
ポリエチレングリコールポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールのブロック
コポリマー、およびポリプロピレングリコールなどが挙げられる。該ポリマーはまた、モ
ノメトキシ基の代わりにC1〜4のアルキルで末端をキャップすることができる。用いら
れるポリ(アルキレンオキシド)は、室温で、液体に可溶性でなければならない。従って
、それらは、好ましくは、約200〜約20,000ダルトン、より好ましくは約2,0
00〜約10,000、さらにより好ましくは約5,000の分子量を有する。
【0043】
当業界で標準的な技術を有するものであれば、多種多様な可能な成分が結果生じる本発
明の新規な融合タンパク質にカップリングされ得ることを理解できるだろう。例えば、“
Conjugate Vaccines”,Contributions to Mic
robiology and Immunology,J.M.Cruse and R
.E.Lewis,Jr(eds.),Carger Press,New York,
1989が参照され、その全内容は引用により本発明に加入される。
【0044】
カップリングは、新規な融合タンパク質と他の成分とがそれらそれぞれの活性が保持さ
れさえすれば、2種の分子を結合させ得るいかなる化学反応によって達成することができ
る。この結合としては、多くの化学的メカニズム、例えば共有結合、親和性結合、相互作
用、配位結合および錯化が挙げられる。しかしながら、好ましい結合は共有結合である。
共有結合は、存在する側鎖の直接の縮合、または、外部の架橋分子の組み込みのいずれか
により達成することができる。多くの二価または多価リンキング剤が、本発明の抗体のよ
うなタンパク質分子を他の分子にカップリングするのに有用である。例えば、代表的なカ
ップリング剤としては、有機化合物、例えばチオエステル、カルボジイミド、スクシンイ
ミドエステル、ジイソシアネート(disocyanates)、グルタルアルデヒド、ジアゾベンゼ
ン、および、ヘキサメチレンジアミンが挙げられる。この列挙は、当業界既知のカップリ
ング剤の様々なクラスを包括することを意図しているのではなく、むしろ、より一般的な
カップリング剤の例である(Killen and Lmdstrom,J.Immun
ol.133:1335−2549,1984;Jansen,F.K.,etal.,
Imm.Rev.62:185−216,1982;およびVitetta et al
.(上述した通り)を参照)。
【0045】
好ましいリンカーが文献で説明されている。例えば、Ramakrishnan,S.
,et al.,Cancer Res.44:201−208(1984)(MBS(
M−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル)の使用を説明する
)を参照。また、Umemoto et al.,米国特許第5,030,719号(オ
リゴペプチドリンカーにより抗体に結合したハロゲン化アセチルヒドラジド誘導体の使用
を説明する)を参照。特に好ましいリンカーとしては、:(i)EDC(1−エチル−3
−(3−ジメチルアミノ−プロピル)カルボジイミド塩酸塩;(ii)SMPT(4−ス
クシンイミジルオキシカルボニル−アルファ−メチル−アルファ−(2−ピリジル−ジチ
オ)−トルエン(Pierce Chem.Co.,Cat.(21558G);(ii
i)SPDP(スクシンイミジル−6[3−(2−ピリジルジチオ)プロピロンアミド]
ヘキサノエート(Pierce Chem.Co.,Cat#216510);(iv)
スルホ−LC−SPDP(スルホスクシンイミジル6[3−(2−ピリジルジチオ)−プ
ロピオンアミド]ヘキサノエート(Pierce Chem.Co.Cat.#2165
−G);および(v)EDCに共役したスルホ−NHS(N−ヒドロキシスルホ−スクシ
ンイミド:Pierce Chem.Co.,Cat.#24510)が挙げられる。
【0046】
上述のリンカーは、異なる特性を有する成分を含み、それにより異なる生理化学的な特
性を有する共役を得る。例えば、アルキルカルボキシレートのスルホ−NHSエステルは
、芳香族カルボキシレートのスルホ−NHSエステルより安定である。NHS−エステル
含有リンカーは、スルホ−NHSエステルより可溶性が低い。さらに、リンカーSMPT
は、立体的に込み合ったジスルフィド結合を含み、共役を形成し安定性を増加させること
ができる。ジスルフィド結合は、一般的に、他の結合に比べて不安定であり、なぜなら、
ジスルフィド結合はインビトロで開裂し、利用可能な共役がわずかしか生じないためであ
る。スルホ−NHSは、特に、カルボジイミド(carbodimide)カップリングの安定性を
増強することができる。カルボジイミド(carbodimide)カップリング(例えばEDC)
は、スルホ−NHSと併用される場合、カルボジイミド(carbodimide)カップリング反
応単独よりも加水分解に対して耐性なエステルを形成する。
【0047】
本発明の新規な融合タンパク質は、安定なタンパク質発現のために用いることができる
。例えば、特定のタンパク質は、特定の発現系、例えば細菌の発現系において発現させる
ことが難しい。LFnのような輸送因子への融合により、特定のこのようなタンパク質を
安定化することができる。我々は、輸送因子が、好ましくは250個またはそれ未満のア
ミノ酸、さらにより好ましくは150個またはそれ未満のアミノ酸、より好ましくは10
5個またはそれ未満のアミノ酸、さらにより好ましくは80個またはそれ未満のアミノ酸
であることを見出した。
【0048】
本発明の新規な融合タンパク質は、免疫反応を発生させるのに用いることができる。例
えば、ワクチンとしてである。
代表的な医薬組成物は、治療上有効な量の新規な融合タンパク質であり、該融合タンパ
ク質は、免疫反応を誘導することができ、それにより予防の免疫原として作用し、必要に
応じて製薬上許容でき、かつ適合可能な担体に含ませる。本明細書で用いられ、以下でよ
り詳細に説明される「製薬上許容でき、かつ適合可能な担体」という用語は、(i)ヒト
または他の動物への投与に適切な、1またはそれ以上の適合可能な固体または液体、充填
剤、希釈剤または封入物質、および/または(ii)分子を標的細胞に運搬することがで
きるシステム、を含む。従って、本発明において「担体」という用語は、有機または無機
成分、天然または合成を示し、適用を容易にするために本発明の分子はそれらと結合する
。「治療上有効な量」という用語は、治療しようとする特定の状態において望ましい結果
が生じる、または望ましい影響を働かせる本発明の医薬組成物の量である。例えば、免疫
反応を発生させるのに必要な量は、予防的な保護を提供することができる。一般的に、本
組成物が予防の免疫原として用いようとする場合、少なくとも1つの「ブースト」が、第
1回目の投与の後、定期的な間隔で投与され得る。同じ成分を含む組成物を調製する際に
、様々な濃度を用いることができ、治療しようとする患者の年齢、状態の重症度、治療期
間および投与様式におけるバリエーションを提供する。
【0049】
好ましい実施形態において、免疫原性ポリペプチドでもある本発明の新規な融合ポリペ
プチドは、その他の免疫原性ポリペプチドを含み得る多成分ワクチンに含ませる。多成分
ワクチンは、T細胞応答を引き出す本発明の新規な融合タンパク質、同様にB細胞応答を
引き出すその他の抗原を含み得る。
【0050】
一つの好ましい免疫化方法において、新規な融合タンパク質を提供し、次に異なる新規
な融合タンパク質で追加免疫する。
また、多種多様な異なる新規な融合タンパク質を含むカクテルを提供し、多種多様な異
なる新規な融合タンパク質または複数の抗原を含む融合タンパク質のいずれかで追加免疫
してもよい(図8、9)。
【0051】
新規な融合タンパク質は、多種多様な抗原(例えば異なるHTV系からの抗原)を認識
し、相互作用する各種T細胞を発生させるのに用いることができる。新規な融合タンパク
質をコードするDNA配列もまた、サブユニットワクチンとして用いることができる。
【0052】
例えばワクチン組成物を用いて免疫反応を発生させる試みにおいて、アジュバントを用
いることも好ましい。アジュバントとしては、これらに限定されないが、ミョウバン、R
IBI Detox(Ribi Immunochemical)、QS21(Camb
ridge Biotech)、および不完全フロイントアジュバントが挙げられる。ミ
ョウバンは好ましいアジュバントである。アジュバントのその他のグループとしては、免
疫促進物質、例えばIL−12、IL−4のようなサイトカイン、および、B7のような
副刺激分子が挙げられる。免疫促進効果を有する様々な分子が知られており、例えばIC
AMおよびLFAのようなアクセサリー分子である。好ましい実施形態において、GM−
CSFは、第1回目の免疫投与の前に患者に投与される。GM−CSFは、医薬製剤中の
ウイルスベクターまたは単離タンパク質を用いて投与され得る。アジュバントのみ合わせ
(例えばCM−CSF、I CAMおよびLFA)を用いることができる。一般的に感染
症抗原に対して強い免疫反応が発生する一方で、一般的に腫瘍関連抗原に対してはより弱
い免疫反応が発生する。従って、上述したような免疫促進物質は、それらと共に用いられ
ることが好ましい。上述したように、ミョウバンが好ましいアジュバントである。
【0053】
本発明の免疫刺激組成物は、他の治療の処方計画(regiment)を用いて有利に使用でき
る。例えば、該システムは、ガンのための従来の治療選択肢(手術、放射線療法、化学療
法およびホルモン療法など)と併せて用いることができる。例えば、新規な本発明の融合
タンパク質を含む乳ガンワクチンは、エストロゲン活性に干渉するクエン酸タモキシフェ
ンと併用することができる。該システムはまた、例えばHerceptin(TM)(t
rastuzumab)、HER2受容体をブロックするように開発された抗HER2ヒ
ト化モノクローナル抗体を用いた免疫療法;骨髄移植と併用することもでき;および、末
梢血液幹細胞療法も用いることができる。本発明の組成物と併用できる他の好ましい治療
の処方計画(regiment)としては、血管新生、阻害剤および細胞毒性の薬剤が挙
げられる。
【0054】
「適合可能な(compatible)」という用語は、本明細書で用いられるように、医薬組成
物の成分が、本発明の小さい分子、核酸および/またはポリペプチドを、互いに望ましい
医薬的な効能を実質的に損なわないような方法で混合することができる、ということを意
味する。
【0055】
本発明の医薬組成物の用量は、被験者および用いられる特定の投与経路に応じて変更す
ることができる。投与量は、1日当たり0.1〜100,000μg/kg、より好まし
くは1〜10,000μg/kgの範囲であり得る。本組成物の好ましい用量は、好まし
くは少なくとも2μg/mlである。単に例として、例えば、約1μg〜約300μgの
全用量の範囲が、ヒト用途で用いることができる。この用量は、本組成物に基づき、定期
的な間隔で運搬することができる。例えば、少なくとも2回の別々の機会において、約4
週間の間隔をあけることが好ましい。その他の化合物を毎日投与してもよい。本発明の医
薬組成物はまた、多種多様なその他のよく特徴付けられたプロトコールに従って被験者に
投与することもできる。例えば、特定の現在容認された免疫化の処方計画は、以下のもの
を含んでよい:(i)投与時間は、選択された日程に第1回の用量;第1回の用量から1
ヶ月後に第2回の用量;および、それに続く日程、例えば第2回の用量から5ヶ月後に第
三の用量、である。製品情報、Physician’s Desk Reference
,Merck Sharp&Dohme(1990),at 1442−43を参照(例
えば肝炎Bワクチン型プロトコール);(ii)例えば他のワクチンに関して、子供の推
奨投与は、選択された日程に第1回の用量(6週齢またはそれ以上);第1回の用量から
4〜8週間後に第2回の用量;第2回の用量から4〜8週間後に第三の用量;第三の用量
から6〜12ヶ月後に第4回の用量;4〜6歳で第5回の用量;および、最後の用量から
10年ごとにさらなる追加免疫、である。製品情報、Physician’s Desk
Reference,Merck Sharp&Dohme(1990)、at 87
9(例えばジフテリア、破傷風および百日咳型ワクチンプロトコール)を参照。特定の組
成物の複数の用量を運搬するのに望ましい時間間隔は、たんに慣例的な実験法を実施でき
る当業界の通常のスキルを有するものにより、決定することができる。
【0056】
本発明の新規な融合タンパク質はまた、それ自体で(そのものの(neat))、また
は、製薬上許容できる塩の形態で投与することができる。医薬で用いる場合、該塩は、製
薬上許容できるものであるべきだが、製薬上許容できない塩も製薬上許容できるその塩を
調製するのに都合よく用いることができ、本発明の範囲から排除されない。このような製
薬上許容できる塩としては、これらに限定されないが、以下の酸から調製される塩が挙げ
られる:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、p−
トルエン−スルホン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、マロン酸、コハク
酸、ナフタレン−2−スルホン酸、およびベンゼンスルホン酸。また、製薬上許容できる
塩は、アルカリ金属またはアルカリ土類塩として調製することができ、例えばカルボン酸
基のナトリウム、カリウムまたはカルシウム塩である。従って、本発明はまた、医薬的な
使用のための医薬組成物を提供し、該医薬組成物は、1またはそれ以上の製薬上許容でき
るその担体、および、必要に応じてその他のいかなる治療成分と共に、本発明の核酸およ
び/またはポリペプチドを含む。
【0057】
該組成物としては、全て本発明の材料を用いる投与経路として用いることが可能な、口
、直腸、膣内、局所的、鼻、眼、または、非経口投与に適切な組成物が挙げられる。その
他の適切な投与経路としては、脊髄液に直接のクモ膜下投与(CSP)、動脈表面への直
接注入、および、器官の標的領域へ直接の実質内注入が挙げられる。非経口投与に適切な
組成物が好ましい。「非経口の」という用語は、皮下注入、静脈内、筋肉内、胸骨内注入
または点滴技術を含む。筋肉内投与が好ましい。
【0058】
該組成物は、都合よく単位供与量形態で存在させることができ、薬学分野で周知の方法
のいずれかによって調製することができる。一般的に、方法は、本発明の活性成分を1ま
たはそれ以上の補助的な成分で構成される担体と結合させる工程を含む。
【0059】
経口投与に適切な本発明の組成物は、カプセル、カシェ剤、錠剤またはロゼンジのよう
な個別のユニットとして提供でき、それぞれ予め決められた量の本発明の核酸および/ま
たはポリペプチドを、リポソーム中に含むか、または、シロップ、エリキシル、または乳
濁液のような水性の水剤または非水性の液体中の懸濁液として含む。
【0060】
非経口投与に適切な好ましい組成物は、好ましくはレシピエントの血液と等張な本発明
の分子の滅菌水性製剤を都合よく含む。この水性調製は、既知の方法に従って、適切な分
散剤または湿潤剤および懸濁化剤を用いて配合することができる。滅菌注射用製剤はまた
、非毒性の非経口的に許容できる希釈剤または溶媒中の滅菌注射用溶液または懸濁液であ
り得る(例えば1,3−ブタンジオール溶液)。使用され得る許容できる賦形剤および溶
媒としては、水、リンガー液および等張塩化ナトリウム溶液が挙げられる。加えて、滅菌
した不揮発性油が溶媒または懸濁媒体として慣例的に用いられる。この目的において、合
成モノまたはジグリセリドなどの無刺激の不揮発性油のいずれかを用いることができる。
加えて、注射可能な製剤において、オレイン酸のような脂肪酸の使用が見出されている。
【0061】
さらに改良するために、本発明により提供されるような細胞媒介応答、本発明のヌクレ
オチド配列によりコードされたポリペプチドのアミノ酸配列を発生させる可能性が、受容
体結合に関連する可能性のある望ましいアミノ酸配列の部分を同定するために分析され得
る。例えば、ポリペプチド配列は、このような部位を同定するために、コンピューター分
析にかけることができる。
【0062】
本発明の分子と形成される複合体は、CMI分析(以下で説明する)のような適切な分
析、および、その他の通常のタイプの免疫分析により、検出することができる。
本発明は、インビトロで細胞性免疫反応を測定するための分析を提供する。CMI応答
を検出する現在利用可能な実験分析は、特に様々な臨床条件における大規模なワクチン効
率試験に適用する場合に、深刻な短所がある。これは、利用可能な器具と技術的サポート
が最小限であるためである。上述したように、HTV−1感染の制御においてCTLが重
要な役割を有するという確信において、多くのHIV−1ワクチン候補が、T細胞応答を
刺激し、同様に抗体を中和するように設計される(1〜6)。
【0063】
本発明のT細胞応答を測定する方法は、全てのT細胞依存性ワクチンまたは免疫療法の
開発において、顕著な効果を有する。この方策は、病気の予防および制御においてCMI
応答が重要な役割を有するような他の研究分野に適用可能である。
【0064】
好ましい実施形態において、本発明は、Elispot分析における新規な融合ポリペ
プチドの使用を提供する。Elispot分析の主な利点は、大勢のヒトにおいて多数の
CTL応答が効果的かつ効率的に評価できる点である(例えば、Lalvani et
al.,J.Exp.Med.186:859−65(1997)を参照)。Elisp
ot分析は、いかなる標準的な細胞、例えば凍結保存されたPBMC、同様にCD8+C
TL細胞が使用可能である。例えば、HIV−1陽性個体からのCD8+CTLクローン
である。
【0065】
他の好ましい実施形態は、フローに基づく細胞内サイトカイン分析における新規な融合
ポリペプチドのの使用を提供する。フローサイトメトリーに基づく分析は、インビトロで
の抗原特異的T細胞を刺激した後のサイトカイン細胞内の集積を検出する。CTLは、抗
原で刺激され、ブレフェルジンA(これは、タンパク質輸送し、サイトカインのような新
たに合成されたタンパク質を細胞内に集積させる)とインキュベートする。表面マーカー
(CD8,CD3)およびIFN−γおよびCD69の細胞内の染色により、特徴付けら
れていないMHCバックグラウンドに照らした、抗原性のエピトープに対して特異的な細
胞群の検出および定量が可能になる。
【0066】
本発明の新規な融合ポリペプチドを用いたCMI分析を、多様なウイルス性抗原、細菌
の抗原、および腫瘍抗原に対する細胞性免疫反応を評価するのに用いることができる。該
分析を、ワクチン効率を評価すること、または、感染性病原体による感染の像(stat
ues)を阻止することのいずれかにおいて用いることができる。
【0067】
本発明の新規な融合ポリペプチドを用いたCMI分析はまた、ガン抗原を検出するため
の初期診断キットとして用いることができる。
本発明はまた、CMI応答を検出するためのキットを提供する。1つの好ましいキット
は、これらチューブ、ウェル等の中に新規な融合タンパク質を含む。該キットは、好まし
くは、インビトロでCMI応答を検出するためのウイルスまたは腫瘍含有試薬を含む。好
ましくは、該キットは、血液のような生物学的な検体を採取するための装置を含む。好ま
しい実施形態において、該キットは、CMI応答を検出するための使用説明書を含む。好
ましくは、該キットは、新規な融合タンパク質を凍結乾燥形態でを含む。
【0068】
好ましいキットは新規な融合タンパク質を含み、該タンパク質は、凍結乾燥され、血液
回収に用いられたチューブの内部にコーティングされる。それにより、血液を個体から直
接チューブに引き込み、数時間(例えば4時間)インキュベートし、続いて固定すること
ができる。このような固定化サンプルは、長時間(例えば2週間)のCMI分析で使用し
ても安定である。該キットは、例えば一般的に遠隔地で行われるワクチン効率試験の際に
、現地でサンプルを回収するのに特に有用である。同様に、他の好ましい実施形態は、少
量の生物学的な検体の添加が可能なディッシュ、ウェル、またはチューブのようないずれ
かの表面にコーティングされた、凍結乾燥されたタンパク質を含む。好ましい生物学的な
検体としては、血液、尿、痰、便、脳脊髄液の上清、および細胞サンプルが挙げられる。
【0069】
特定の実施例において、上述のしたようなLFnのカルボキシ部分のみを含むLFn融
合タンパク質は、PA非存在下でCTL標的細胞を、MHC−I制限した方法で感作させ
ることができる。この、外因性タンパク質抗原をMHC−I経路に提示させる新規な方法
において、抗原のサイトゾルへの運搬は、生きたウイルスベクターまたは細菌ベクターを
頼ることなく、細胞内の抗原プロセシングに関連する機能的輸送に依存する。これらLF
n断片は、サイトゾルからMHC−I経路に入る新しいタンパク質クラスの一例である。
例えば、LFnがPA非存在下でHIV−1抗原をサイトゾルに運搬することができると
いう事実は、炭疽の致死性の毒がどのように働くかという現在の仮説に反する(32)。
通常のケースにおいて、LF(炭疽致死因子)は、その毒作用を働かせるために、PAに
依存し、場合によってはLFの毒性ドメインは細胞の侵入を防ぐ未知の機能を有する可能
性がある。
【0070】
加えて、LFn−HIVのような融合タンパク質は、ワクチン試験においてT細胞応答
を検出する方法を洗練し、簡便化するためのツールとして用いることができる。この方法
はまた、ウイルス性肝炎、TB、およびマラリアのような、他の細胞内のウイルスの病気
または細菌の病気の研究に有用でもある。本発明は、現在のCMI分析における生きた組
換えワクシニアウイルスを用いる必要性を回避することができる。本発明はまた、高価な
上に、HLA−I多様性を有する異なる個体群のそれらの理論上の範囲が未だ証明されて
いないオーバーラップする合成ペプチドに対して、いくつかの利点を有する。新規な抗原
の運搬は、現場使用に広く適用可能な簡易化したCMI分析を提供する。その上、これら
LFn融合タンパク質は、E.coliで容易に生産され、比較的簡単な方法で精製され
、さらに安定である。
【0071】
本発明で提供される全ての新規な融合ポリペプチド、およびそれをコードするDNA配
列は、B.anthracisの防御抗原またはその断片を実質的に含ないので、宿主へ
の故意でないダメージの危険なく、多種多様な用途で安全に用いることができる。従って
、本発明の新規な融合ポリペプチドは、多様な標的抗原への細胞性応答を発生させる組成
物および方法において特に有利である。
【実施例】
【0072】
以下の実施例は、本発明を説明するために提供され、本発明を制限することはいかなる
方法によっても意図されない。
実施例1
材料および方法
LFn−HIV融合タンパク質
HIV−HXBからのenv gp120、gag p24をコードするDNA断片を
PCRで増幅し、LFn発現プラスミドpET15bLFnにクローニングし、LFnと
HIVコーディング配列との間のインフレーム融合を検証するために配列解析する。Ne
fコーディング配列をHIV−ELLから増幅した。LFnのタンパク質発現ベクターお
よびその融合誘導体は、pET15bプラスミド(Novagen;Madison,W
I)である。このベクター系の主要な特徴は、誘導性T7プロモーター、タンパク質精製
のための内部のHis−Tag、および複数のクローニング部位が挙げられる。組換えL
Fnは、そのN末端に6個のタンデムヒスチジン残基を有する細胞内の可溶性タンパク質
としてE.coliで発現される(14)。10リットルのBioflow 2000
bench top bioreactor(New Brunswick Scien
tific,NJ)で細菌を培養した。His標識タンパク質を、市販のキットを用いて
製造者プロトコールに従って精製した(Novagen)。LFnの断片は、LFnコー
ディング領域を既知の技術により改変することにより作製できる。
【0073】
試薬
Applied Biosystems社のペプチドシンセサイザー(モデル430A
)で合成ペプチドを合成した。用いられた組換えワクシニアウイルスは、コントロールワ
クシニアベクターとしてNYCHを含む、vAbT141(Gag)、vAbT299(
Env)、およびNef(15)であった。ブレフェルジンA、サイトカラシンBおよび
クロロキン(Sigma,St Louis,MO)を、細胞培養物に2時間加え、2回
洗浄した後、細胞に添加し返した。フロー分析用の抗体をBecton−Dickins
on(San Jose,CA)から得た。
【0074】
フローに基づく細胞内のサイトカイン染色
凍結保存されたPBMCを、LFN−HIV(30μg/ml)、組換えワクシニアベ
クター(MOI3〜5)またはペプチド(10μg/ml)と共に、37℃で、5%CO
で、一晩インキュベートした。自己由来B−LCLを、最適なペプチド(10μg/m
l)、LFn−HIV(10μg/ml)または組換えワクシニアウイルス(MOI3〜
5)と共に、一晩インキュベートし、2回洗浄し、副刺激の抗CD28および抗CD49
d(1μg/ml,Becton−Dickinson,San Jose,CA)の存
在下でE:T比が10:1でエフェクター細胞に加えた。その後、ブレフェルジンA(1
0μlのImg/ml)を加え、細胞培養物を37℃で6時間インキュベートし、アイソ
タイプコントロール(APC,PE,PerCPに対してはIgGI、および、FITC
に対してはIgG2b)またはアロフィコシアニン(APC)標識CD3モノクローナル
抗体(Mab)、フィコエリトリン(PE)標識抗CDS Mab(Becton Di
ckinson)の飽和溶液で染色した。暗所で4℃で20分間インキュベートした後、
細胞をFACS洗剤で2回洗浄した。100μlの試薬A(Fix and Perm
kit,Caltag Laboratories,Austria)を加え、暗所で室
温(RT)で20分間インキュベートした後、細胞をFACS洗剤で2回洗浄した。次に
、100μlの試薬B(Fix and Perm kit)を加え、細胞をRTで5分
間インキュベートした。FITC−IFNガンマおよびペリディニンクロロフィルタンパ
ク質(PerCP)共役CD69Mab(CD69perCP)抗体を加え、暗所で4℃
でインキュベートした後、その細胞をFACS洗剤で2回洗浄し、Becton Dic
kinson社製のFACScaliburフローサイトメーターで、Cell Que
stソフトウェアを用いて分析した。
【0075】
FACSCaliburフローサイトメーター(Becton Dickinson)
とCellquestソフトウェア(Becton Dickinson)を用いた4色
染色でサンプルを分析した。用いられたネガティブおよびポジティブコントロールは、刺
激していない細胞、同様に、それぞれマイトジェンフェマトヘマグルチニン(phema
tohemaglutinin)PHA(0.25μg/ml,Murex Biote
ch)で刺激した細胞であった。
【0076】
細胞系および培養条件
自己由来エプスタイン−バーウイルス(EBV)形質転換Bリンパ芽球様細胞系、同様
にT1およびT2(HLA−B60)細胞系を抗原提示細胞(APC)として用いた。標
的細胞を適切なインデックスペプチドまたはLFn−HIV構築物でパルスするか、また
は、一晩組換えワクシニアウイルスに感染させた。AC13(HLA B14制限p24
[DRFYKTLRA])およびKM(HLV B60制限Nef[KEKGGLEGL
])は、GagおよびNef特異的クローン(それぞれ)、および、AC2(HLA B
44制限gp120[AENLWVTVY])である。全て、HIV感染個体(該固体の
CTL応答はよく特徴付けられている)(Rosenberg,personal co
mmunication)から得られ、および、Env特異クローン(SP511)は血
清陽性のウガンダ人から生成された(16)。Elispot研究で用いられたPMBC
は、セネガルおよびウガンダからのHTV−1感染個体であった(15,16)。LFn
−HIVのMHCクラスI制限提示におけるブレフェルジンA、サイトカラシンBまたは
クロロキンの効果を調べるために:,APCをタンパク質構築物で標識し、RPMI16
40m10%FCSで培養し、各試薬と共に1時間共培養し、続いて洗浄し、標準的なク
ロム放出分析で試験した。
【0077】
Elispot
凍結保存されたPBMCでElispot分析を行った。96−ウェルニトロセルロー
スプレート(Millititer,Millipore Corp.,Bedford
,MA)を、0.5mg/mlのモノクローナル抗体1−D1K(Mabtech,St
ockholm,Sweden)で4℃で一晩プレコーティングした。次にそのプレート
をリン酸緩衝食塩水(PBS)で6回洗浄し、PBMCを、それぞれ二連のウェルに加え
、50,000細胞/ウェルおよび25,000細胞/ウェルにした。そのプレートを、
5%COで、37℃で一晩インキュベートし、続いてビオチン化モノクローナル抗体の
抗IFN−Mab(Mabtech)を0.5mg/mlで加え(100分間)、続いて
ストレプトアビジン−ALP(Mabtech)を室温で加えた(1時間)。そのプレー
トをPBSで3回洗浄し、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルリン酸塩およびニト
ロブルー(Sigma)を加えて反応を進行させた。15分後にTap waterを加
えて反応を止めた。個々のサイトカイン生産細胞が黒いスポットとして検出され、黒いス
ポットは可視化され、SFC/ウェル(スポット形成コロニー/ウェル)として定量され
た。CTL頻度(CTLp)を、コントロールウェルから差し引きされ、4つのウェルを
平均したスポット数から計算した。最終的なCTLpを10細胞あたりの平均頻度とし
て報告した。SFCがコントロールの少なくとも2倍であれば、応答を陽性とみなした。
バックグラウンドSFCは、平均して15/ウェル未満であった。
【0078】
クロム放出分析:
CD8+CTLクローンを、組換えIL−2の存在下で、抗CDSモノクローナル抗体
(12F6)で刺激し、7日以内に活性を試験した。自己由来B−LCLまたはHLA適
合APCを含む標的細胞を、HTV−1遺伝子産物を発現する組換えワクシニアウイルス
(感染多重度は3〜5)またはLFnタンパク質(5〜30μg/ml)で一晩感染させ
、放射性クロム(51Cr)で標識した。二連のウェルで行われた全ての分析に関して、
最終容量200μl中、エフェクター:標的細胞の比(E:T)は10:1であった。4
時間後に上清液を回収し、特異的な溶解のパーセントを、式:100×[(実験での放出
−自発的放出)/(最大放出−自発的な放出)]により決定した。HIV−特異的CTL
活性を、バックグラウンド/コントロールを超えて10%と定義した。全ての分析に関し
て、自発的な放出は最大放出の<30%であった。
【0079】
LFn−HIV介在HTV−l抗原侵入およびPAなしのプロセシング:
LFn−HIVが細胞表面でMHC−I分子と結合するための能力を評価するために、
リンパ芽球様B細胞系(B−LCL)をPAの存在または非存在下でLFn−HIVで感
作し、いくつかのよく特徴付けられたHIV−特異的CTLクローンを用いて標準的なク
ロム放出分析で試験した(図3)。我々は、CTLが、PAの存在または非存在下で同等
にLFn−HIVで感作した標的細胞を認識することを見出した。溶解レベルは、用量依
存性であり、B−LCLを同じHTV抗原を発現する組換えワクシニアウイルスで感染さ
せた場合のポジティブコントロールに匹敵するレベルを達成した。HTV−特異的CTL
活性は、標的がLFn−HIVとより長い時間(1時間に対して8時間)インキュベーシ
ョンされる場合にのみ明らかであり(データは示さず)、これは、表面抗原の出現におけ
る遅れと、細胞内プロセシングの必要性とを示す。
【0080】
LFn−HIVは、典型的なMHC−I経路において提示される
次に我々は、これら構築物のCTLによる認識がHLA−I制限であることを実証する
ことによって、LFn−HIVが典型的なMHC−I経路により提示されることを確認し
た(図4)。2つのNef−(KM)およびGag特異的(AC13)クローン(それぞ
れHLA B60制限およびB14制限)を、LFnNefまたはLFn−p24を提示
するHLA適合および非適合標的で試験した。HLA−適合標的のみが顕著な溶解を示し
、LFn−HIVのMHC−I提示が確かめられた。
【0081】
我々は、LFn−HIVの摂取およびプロセシングの可能性のあるメカニズムをさらに
試験した。表面でのLFn−HTVの内部移行が活発に処理されるかどうかを調べるため
に、我々は、B−LCLを、100μMのサイトカラシンB(17,18)、食細胞活動
阻害剤と共にプレインキュベーションし、その後、LFn−HIV抗原を加えた。CTL
認識はサイトカラシンBの存在下で失われたことから、エンドサイトーシス介在内部移行
による処理が示された。
【0082】
外因性LFn融合タンパク質が導入され、その後サイトゾルで処理される場合、TAP
タンパク質(抗原プロセシングに関連する輸送体)は、MHC−Iに結合させるためにペ
プチドをER内腔に輸送する必要性がある(19〜21)。エンドサイトーシス後に抗原
によるプロセシングが必要かどうかを評価するために、我々は、B60発現細胞系T1お
よびT2を感作し、CTLにより溶解させるLFn−HIV融合タンパク質の能力を試験
した。T2細胞(22〜24)は、MHC−Iに結合させるためにペプチドをプロテオソ
ームからER内腔へ輸送するTAP機能を欠くT1細胞誘導体である(19,20)。T
2細胞での認識は失われ(図4B)、これは、プロセシング後にエピトープを輸送する必
要性を示す。同じクローンによるこのTAP欠失標的の認識は、細胞内プロセシングの必
要性を通過して細胞が最適なエピトープペプチドで表面が「空の」MHC−I分子に直接
パルスされた場合、維持される。
【0083】
外因性タンパク質のMHCクラスI経路への侵入メカニズムをさらに検証するために、
標的細胞をブレフェルジンA(ERおよびゴルジ体からのタンパク質のエキソサイトーシ
スを阻害し、新しく構築されたペプチド−MHC複合体が細胞表面に達することを防ぐ)
で処理した(25)。標的細胞をLFn−HIVで提示させる前のブレフェルジンA添加
は、効果的にCTLによる認識をブロックする(図5)。この発見は、HLA制限および
TAP必要性に関する上記の実証と共に、MHCクラスI経路でLFn−HIVが処理さ
れ、B−LCLにより提示されることが確かめられた。
【0084】
LFn−HIVのプロセシングはクロロキン非感受性である
MHC−I分子上での多くの外因性の抗原の提示は、細胞内区画でのタンパク質分解を
伴い(26〜28)、その後、ペプチドはサイトゾルに接近し、そこでMHCクラスI経
路に侵入する。LFn介在抗原提示が酸性ベシクルでのタンパク質分解を必要とするかど
うかを調べるために、我々は、LFn−HIVへ晒す際に、B−LCLをクロロキンで処
理した(図5)。クロロキンは、エンドソーム区画およびリソソーム区画でpHを高め、
それにより、活性のために酸性環境が必要なカテプシンによるタンパク質加水分解を抑制
することが知られている(29,30)。我々の発見によれば、漏れやすい性質を有する
ファゴソームが、LFn−HIVのサイトゾルへの侵入に必要ないというこが示される。
【0085】
標的がその表面で最適な8−merエピトープでパルスされた場合、サイトカラシンB
、ブレフェルジンAまたはクロロキンのいずれかを添加しても標的細胞の認識および溶解
に影響を及ぼさなかったが、これは、これら試薬がCTL機能にも標的の生存能力にも影
響を及ぼさなかったことを示す(図5)。
【0086】
様々なCMI分析におけるLFn−HIVと組換えワクシニアウイルスとの比較
MHC−I分子を用いて細胞表面でCTLエピトープを提示するLFn−HIVの能力
を実証したことから、我々は、酵素結合スポット(Elispot)分析やフローに基づ
く細胞内インターフェロン分析などの様々なCMI分析におけるLFn融合タンパク質の
適応性の試験を続行した。これら分析は、より簡単でより迅速なT細胞応答の推測を提供
し、理論上より大規模な臨床試験に(特にワクチン研究に関する)適している。Elis
pot分析の主な利点は、HIV−特異的CTL応答が効果的に評価でき、大勢のヒトで
も効率的に評価できることである(31)。目下、HIV抗原を発現する組換えワクシニ
アウイルスまたはオーバーラッピング合成ペプチドなどの様々な抗原刺激がこの分析で用
いられている。凍結保存されたPBMC、同様にいくつかのHTV−1陽性個体からのC
D8+CTLクローンを、Elispot分析で、LFn−gp120に対してLFn−
p24、LFnNefを用いて、同じ抗原を発現する組換えワクシニアウイルスと並行し
て試験した。比較のスポット形成コロニーがLFn−HIVに関して観察され、いくつか
の例において、明らかにバックグラウンドスポットが組換えワクシニアウイルスの場合よ
り少なかった(図6)。
【0087】
インビトロで抗原特異的T細胞を刺激した後に細胞内のサイトカイン集積が、フローサ
イトメトリーに基づく分析で検出される。CTLを抗原で刺激し、でブレフェルジンA(
タンパク質輸送を阻害し、新しく合成されたサイトカイン(例えばIFN−γ)を細胞内
に集積させる)でインキュベートする。表面マーカー(CD8,CD3)およびIFN−
γおよびCD69の細胞内の染色により、特徴付けられていないHLA−Iバックグラウ
ンドに対して抗原性のエピトープに特異的なT細胞群を検出することができる。Nef特
異的クローン(KM)をLFnNefで刺激し、その後、細胞内でのインターフェロン生
産をフロー分析により評価した(図7A)。Nef特異的応答がLFnNefを用いて検
出され、同様にCD8+の細胞群でNefを発現する組換えワクシニアウイルスが検出さ
れた。既知のgp120エピトープを有する個体(AC2)からの、新しく単離した刺激
していないPBMCを、LFn−Envで、同様にEnvを発現する組換えワクシニアウ
イルス(rVV−Env)で感作した。CD8+細胞群における細胞内のIFN−γのパ
ーセンテージは、LFn−Envに晒された細胞において、rVV−Envと共にインキ
ュベートした細胞より高かった(図7B)。
【0088】
実施例2
PA非存在下のLPn融合タンパク質はまた、MHCが制限された方法で、CTL標的
細胞を感作することができる。このLFn融合タンパク質のサイトゾル運搬は、抗原提示
細胞内部の細胞内の抗原プロセシングに関連する機能的輸送に依存する(Cao H,A
grawal D,Kushner N,Touzjian N,Essex M、およ
び、Lu Y.J.Infect Dis.185:244−251(2002))。目
下我々は、LFnに融合した緑色蛍光タンパク質(GFP)がPA非存在下で細胞に侵入
できることを実証し、我々はさらに、この、外因性GFPのPA非依存性LFn運搬は、
細胞性プロテオソームに関連すると考えられることを示し、これはこれまでの観察と一致
する。
【0089】
LFn−GFPおよびGFPの構築および精製
pEGFP−C1(Clontech)からのGFPオープンリーディングフレームを
LFn発現ベクターに挿入することによって、LFn−GFP融合タンパク質を構築した
(過去の研究で説明される)(Lu,Y.,R.et al.,Proc.Natl.A
cad.Sci.USA97:8027−32(2000))。
【0090】
融合タンパク質は、細菌の細胞抽出物中に可溶性であり、一工程のアフィニティークロ
マトグラフィーで精製できる。精製した融合タンパク質は、約55kDの分子量であり、
その溶液は明るい緑色である(データは示さず)。実験に適切なコントロールを得るため
に、発現、精製、ならびにGFPおよびLFn−GFPの使用における唯一の違いがGF
PでのLFn配列の欠失であるようにGFP単独を同じ細菌発現ベクター(pET15b
)に構築した。
【0091】
LFn−GFPはCHO細胞に侵入するが、一方でGFPは侵入できない
CHO細胞をコラーゲン処理したチャンバースライドで80%の群集になるように培養
し、続いて精製LFn−GFPと共に1または2時間インキュベートし、続いてPBS、
および、プロテアーゼを添加したPBSでよく洗浄し、膜結合タンパク質を除去した。次
に、細胞を抗トランスフェリン抗体で染色し、パラホルムアルデヒドで固定した。そのス
ライドを、共焦点顕微鏡法でそれぞれ緑色(GFP)および赤色(抗トランスフェリン)
に関して試験した。第三のイメージは、各フィールドに対して、過剰露出した緑色のイメ
ージにより、同じ細胞の赤色のイメージと共に示される。その結果として、黄色のスポッ
トは、GFPがトランスフェリンタンパク質と同じスポットにあることを示し、従って細
胞内部のGFPの位置の参照を提供することを示す。図10で示したように、相当数の緑
色のスポットが、LFn−GFPで標的化された細胞中で1時間で可視化され、これはL
Pn−GFPが実際に細胞に侵入できることを示す。まったく同じ実験条件で、GFP処
理細胞において、緑色のスポットはほとんど示されなかった(図11)。
【0092】
標的細胞内部のLFn−GFPの位置
図10〜11で上述したのと同一の実験方法を用いて、我々は、抗トランスフェリン抗
体を、それぞれ抗リソソーム抗体(図12)、抗エンドソーム抗体(図13)、抗ゴルジ
抗体(図14)、および抗プロテオソーム抗体(図15)で置き換えた。これら様々なイ
メージを比較すると、最も黄色のスポットを含む過剰に露出したイメージは、図15で示
されるイメージであり、それにおいて、緑色のスポットは、細胞性プロテオソームを示す
赤色のスポットと顕著にオーバーラップした細胞内のLFn-GFPを示す。
【0093】
PAの存在はLFn−GFPの細胞摂取を増強しない
我々は、さらに、PAの存在が、図10〜15に関して用いられた実験条件でLFn−
GFP摂取を増強するかどうかを試験した。図16に示すように、PA添加は、PA非存
在下でのスポットの数と比較して、細胞内部の緑色のスポットの数を増加させなかった。
その上、PAの存在は、黄色のスポットの量を減少させたようにみえる。明らかに、これ
らの条件下で、これら黄色のスポットはそれでもPA非依存性のLFn−GFP侵入を示
している。
【0094】
実施例3
LFnのN末端の半分の欠失、およびLFn免疫化におけるミョウバンのアジュバント
効果
追加の動物免疫化データは、LFnのN末端の半分(PA結合ドメインを含む)は、抗
原運搬に否定的な影響を与えることなく欠失させることができることを示す。まったく意
外にも、我々は、ミョウバン添加により、LFn融合タンパク質によるCTL誘導を顕著
に増強させ得ることを見出した。
【0095】
過去2年間、多く試みが不成功であったが、我々は、免疫化BALB/cマウスにおい
て、PA存在下でのLFn−p24がCTLを刺激できることを示すことができなかった
。以前の研究は、LFn−V3、LFn−LLO、およびLFn−OVAのようなLFn
融合タンパク質は、マウスで、特異的なCTLを刺激することができることを示している
(Lu,Y.,et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA97:80
27−32(2000);Ballard,J.D.et al.,Proc.Natl
.Acad.Sci.USA 93,12531−12534(1996);Balla
rd,J.D.,et al.,Infect.Immun.66,615−619(1
998))。これら融合タンパク質は、わずか12〜33個のアミノ酸しか有さないが、
一方でLFn−p24は約230個のアミノ酸を有する。従って、挿入された抗原の大き
さは、相違を成し得る。我々は、免疫アジュバントの添加によりLFn−p24の免疫原
性を改善できるかどうかを試験することに決めた。我々が試験した試薬は、組換えIL2
,Ig−IL2、CpG、ミョウバンなどである。意外にも、ミョウバンが最良のアジュ
バント活性を示した。QS21およびPCPPのような特定の実験アジュバントは細胞性
免疫反応を増強させるが、一方で、ミョウバンはCTL誘導を実際には阻害することが広
く信じられている(Schiembeck,R.,et al.,J.Immunol.
152:1110−1119(1994);Barouch,D.H.et al.,S
cience290:486(2000);Davis,H.L.et al.,J.I
mmunol.160:870−876(1998);Payne,L.G.et al
.,Dev.Biol.Stand.92:79−87(1998))。
【0096】
図17において、BALB/cマウスの3つのグループ(各グループ中4匹)を、それ
ぞれ異なる抗原配合(15μgのLFn−p24+4μgのPA、15μgのLFn−p
24+4μgのPA+ミョウバン、15LFn−p24単独+ミョウバン)で腹腔内に免
疫した。免疫化後1週間で、免疫化BALB/cマウスの脾臓の単核細胞を、CTL源と
して用いた。脾臓培養物中のCTLを、非免疫化動物のガンマ放射したペプチドパルスB
ALB/c脾細胞と培養することによりインビトロで活性化した。37℃のCOインキ
ュベーターで6日培養した後、成熟CTL(エフェクター細胞)を、51Cr標識化P2
0ペプチドパルスP815細胞(ポジティブ標的)または51Cr標識化媒体パルス細胞
(ネガティブ標的)のいずれかを溶解させるそれらの能力に関して試験した。示された溶
解の割合を、ネガティブ標的のバックグラウンド溶解から引算し、各グループの平均とし
て示した。
【0097】
図17で示すように、ミョウバン添加に関して、我々は、免疫化マウスで、LFn−p
24が、PAの存在または非存在下で特異的なCTLを刺激できることを示すことができ
た。これら結果は、PAの存在はインビボでの抗原運搬に必要でないことをさらに示す。
【0098】
LFnのN末端の半分が欠失したLFn融合タンパク質はそれでも活性である
マウスで、LFn−p24がPA非存在下でCTLを引き出すことができることを確か
めるために、我々は、PAに結合するその能力を失わせるためにLFnのN末端の半分(
1〜149)を欠失させた変異LFn融合タンパク質(MLFn−p24)を構築した。
我々は、PA依存性の膜移動を試験するために特別に設計された実験方法を用いてこれを
確認した。簡単に言えば、トリプシンでニックを入れたPAをCHO−K1細胞と共に4
℃で2時間インキュベートした。次にその細胞を冷PBSで洗浄し、35S標識LFn−
NGまたはLFn−ENVで4℃で2時間インキュベートした。その細胞をよく洗浄し、
MES/グルコナート緩衝液(pH4.8)に37℃で2分間晒した。次にプロナーゼE
または緩衝液を加えて、吸収されていないLFn融合タンパク質を結合させた表面を消化
した。次に、その細胞を再び洗浄し、溶解し、計数した。PAで移動したタンパク質の割
合を以下の式に従って計算した。割合=100×(PA存在下でのカウントおよびプロナ
ーゼ処理細胞−PA非存在下でのカウントおよびプロナーゼ処理細胞)/(PAおよびm
ock処理細胞存在下でのカウント−PAおよびmock処理細胞非存在下でのカウント
)。この特定の分析において、PAは、72%もの膜結合型LFnを細胞に移動させ、一
方でPAにより移動したMLFnの量は検出されなかった。
【0099】
続いて我々は、免疫化マウスで、LFn−p24によるCTL誘導と、MLFn−p2
4によるCTL誘導とを比較した。図18において、BALB/cマウスの3つのグルー
プ(各グループ中4匹)を、それぞれ15μgのLFn−p24、15μgのMLFn−
p24、および15μgのp24で腹腔内に免疫した。脾臓組織中のCTLを、免疫化の
後連続して試験した。
【0100】
図18で示すように、LFn−p24とMLFn−p24との双方が、たった1回の免
疫化の後で、顕著にCTL活性を刺激した。実際に、我々は、改善されたMLFn−p2
4によるCTL誘導をLFn−p24で誘導されたCTL誘導と比較して、繰り返して観
察した。
【0101】
この実験はまた、抗原(p24)からのMLFn配列の欠失により有効なCTL誘導が
失われているため、LFnのC末端の半分(150〜253)が、細胞内の抗原運搬に実
際に関与することを示す。
【0102】
参考文献
【0103】
【表1】

【0104】
【表2】

【0105】
【表3】

【0106】
【表4】

【0107】
【表5】

【0108】
【表6】


[001]本明細書に記載された全ての参考文献は、引用により本明細書に加入される


【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的抗原を細胞のサイトゾルに運搬する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10ABCDEF】
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【図10GHIJKL】
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【図11ABCDE】
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【図11FGHI】
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【図12ABCDEF】
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【図12GHIJKL】
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【図13ABCDEF】
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【図13GHIJKL】
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【図14ABC】
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【図14DEF】
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【図15ABCDEF】
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【図15GHIJKL】
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【図16ABCDEF】
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【図16GHIJKL】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−42008(P2010−42008A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−212567(P2009−212567)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【分割の表示】特願2002−578420(P2002−578420)の分割
【原出願日】平成14年3月28日(2002.3.28)
【出願人】(500491786)プレジデント・アンド・フェローズ・オブ・ハーバード・カレッジ (8)
【出願人】(592017633)ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション (177)
【Fターム(参考)】