説明

外壁材の固定具、建物外壁構造、および、建物外壁工法

【課題】外壁材の固定具について、その固定具と外壁材の間の隙間からの水の浸入を防ぐことを可能とする新規な構造について提案する。
【解決手段】外壁材20を建物躯体(梁、柱、間柱、胴縁など)に固定するための固定具10であって、前記固定具10は、先端がセルフドリリング形状であるスクリュー部が形設される軸部15と、前記先端とは反対側の前記軸部15の端部に形成される頭部11と、前記軸部15の外周を取り囲むようにして前記軸部15と同軸上に配置される水密部材16と、を有し、前記水密部材16は弾性を有し、前記頭部11の座面と前記外壁材20の間に挟装されて弾性変形するものとし、前記頭部11の座面には、前記水密部材16が挟装された状態で、弾性変形した前記水密部材16を頭部11の外周よりも内側に納めるための溝部17aを有する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の外壁材を柱材や胴縁材などに固定するための固定具に関するものであり、また、この固定具を用いた建物外壁構造、及び、建物外壁工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の外壁材により建物の耐震性能と防火性能を向上させる技術が知られており、これについて開示する文献も存在する(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1では、先端がセルフドリリング形状である固定具(固定部材)を用いて、耐震性及び防火性を有する建物の外壁材を、胴縁に留め付ける技術を提案している。このような先端がセルフドリリング形状の固定具を用いることによれば、固定具が外壁材の材料を除去(切削)しながら進入するので、留め付けの過程で外壁材に亀裂が生じることや、内部応力が大きくなることを防ぐことができる。そして、これにより、耐震性、防火性の向上が図れるものとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−240266
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示されるような構成では、固定具と外壁材の間に隙間が形成されてしまうことが懸念される。そして、この隙間からの水の浸入が発生し、これによる外壁材の劣化、ひいては、耐震性、防火性の低下が懸念される。
【0006】
即ち、先端がセルフドリリング形状とする特許文献1に開示される固定具は、「外壁材を除去(切削)し得るための十分な表面硬さ」を有するステンレスなどの金属にて構成することが想定され、固定具の頭部(ボルト頭)の座面についても他の部位と同等の表面硬さを有するものと考えられる。そして、このような表面硬さのため、頭部の座面は外壁材の表面に対して追従しない、つまりは、座面が変形しないために外壁材の凹凸表面を吸収することができず、この座面と凹凸表面の間に隙間が形成されてしまうことが考えられる。
【0007】
一方で、外壁材の表面が頭部の座面によって押圧されることで、外壁材の表面が座面に追従して変形し、隙間が吸収されることも考えられるが、座面にて押圧され変形した外壁材の部位には、局所的に応力が集中するため、この集中した箇所に経年により亀裂が生じることが懸念される。
【0008】
また、固定具は、外壁材を除去(切削)しながら進入するため、いわゆる、「切り粉」が発生することが想定される。そして、固定具を締結する際において、頭部の座面と外壁材の表面の間に切り粉が残ったままとなってしまうと、この切り粉の存在によっても、頭部の座面と外壁材の表面の間に隙間が形成されることが懸念される。
【0009】
他方、一般的なボルトの締結においては、座金(ワッシャー)を用いることにより、ゆるみ止めや材料表面が保護が図られるものであるが、このような座金を用いた場合でも、その素材が金属であるため、上記で述べた課題の解決には至らない。また、座金の外径は、頭部の外径よりも大きく設計されるため、座金の存在により、外壁材の外観の意匠が損なわれることも懸念される。
【0010】
そこで本発明は、以上の問題に鑑み、外壁材の固定具について、その固定具と外壁材の間の隙間からの水の浸入を防ぐことを可能とする新規な構造について提案する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0012】
即ち、請求項1に記載のごとく、
外壁材を建物躯体に固定するための固定具であって、
前記固定具は、
先端がセルフドリリング形状であるスクリュー部が形設される軸部と、
前記先端とは反対側の前記軸部の端部に形成される頭部と、
前記軸部の外周を取り囲むようにして前記軸部と同軸上に配置される水密部材と、
を有し、
前記水密部材は弾性を有し、前記頭部の座面と前記外壁材の間に挟装されて弾性変形するものとし、
前記水密部材は、挟装された状態で前記頭部の外周よりも内側に納められる構成とするとするものである。
【0013】
また、請求項2に記載のごとく、
前記頭部の座面には、前記水密部材が挟装された状態で、弾性変形した前記水密部材を頭部の外周よりも内側に納めるための溝部を有する構成とするものである。
【0014】
また、請求項3に記載のごとく、
前記水密部材の弾性は、前記外壁材の表面の凹凸に沿って変形して、前記表面に対して密着されることが可能な弾性とする、構成とするものである。
【0015】
また、請求項4に記載のごとく、
前記溝部は環状に構成され、
前記水密部材は環状に構成される、
構成とするものである。
【0016】
また、請求項5に記載のごとく、
前記頭部に形設される工具挿入穴はスクエア形状とするものである。
【0017】
また、請求項6に記載のごとく、
前記固定具を用い、外壁材を建物躯体に固定する建物外壁構造とするものである。
【0018】
また、請求項7に記載のごとく、
前記固定具を用い、外壁材を建物躯体に固定する建物外壁工法とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0020】
即ち、請求項1に記載の発明においては、固定具にて外壁材を固定した状態では、固定具の頭部と外壁材の切穴との間の水密性が確保され、この切穴への水の浸入による外壁材の劣化を防止することができる。また、水密部材が頭部に隠されて外観に現れない意匠を構成することができる。
【0021】
また、請求項2に記載の発明においては、固定具にて外壁材を固定した状態では、固定具の頭部と外壁材の切穴との間の水密性が確保され、この切穴への水の浸入による外壁材の劣化を防止することができる。また、水密部材が頭部に隠されて外観に現れない意匠を構成することができる。
【0022】
また、請求項3に記載の発明においては、水密部材と表面の間の隙間が塞がれて、水密部材と表面の間への水の浸入が防がれることから、外壁材に形成された切穴内へ水が浸入することを確実に防止することができる。
【0023】
また、請求項4に記載の発明においては、外壁材に形成された切穴の周囲が、水密部材によって取り囲まれ、切穴内へ水が浸入することを確実に防止することができる。
【0024】
また、請求項5に記載の発明においては、工具のトルク伝達のために工具挿入穴を大きく構成したとしても、デザイン性と機能性(トルク伝達)を兼ね備えることが可能となる。
【0025】
また、請求項6に記載の発明においては、固定具の存在箇所において、外壁材に亀裂や大きな内部応力の発生が防がれるため、この亀裂や内部応力が原因で、外壁材に割れが生じるなどの不具合を防止することができる。特に、外壁材が耐震性能や防火性能を有する場合では、割れの防止によって確実な耐震性能や防火性能を維持することが可能となり、ひいては、壁厚の低減による材料費の削減や、他の耐震材などの使用を省くことによるコスト削減を図ることが可能となる。
【0026】
また、請求項7に記載の発明においては、固定具の存在箇所において、外壁材に亀裂や大きな内部応力の発生が防がれるため、この亀裂や内部応力が原因で、外壁材に割れが生じるなどの不具合を防止することができる。特に、外壁材が耐震性能や防火性能を有する場合では、割れの防止によって確実な耐震性能や防火性能を維持することが可能となり、ひいては、壁厚の低減による材料費の削減や、他の耐震材などの使用を省くことによるコスト削減を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施例に係る固定具を利用して外壁材を固定する概念について説明する図。
【図2】外壁材が固定される建物躯体の構成の実施例について示す図。
【図3】(a)は、本発明の一実施例にかかる固定具の側面図。(b)は、固定具の軸方向中心線と平行な切断面による頭部付近の断面図。(c)は、頭部の工具挿入穴側から臨む固定具の側面図。
【図4】(a)は、固定具を外壁材、胴縁に対し進行させる状態について示す断面図。(b)は、水密部材が外壁材の表面に当着した状態について示す断面図。(c)は、胴縁に対し進行させる状態について示す断面図。
【図5】(a)は、水密部材を挟装する前の状態について示す断面図。(b)は、水密部材を挟装した状態について示す断面図。
【図6】(a)は、水密部材及び溝部の他の構成例について示す断面図。(b)は、水密部材及び溝部を二重に設ける構成例について示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、本発明の一実施例に係る固定具10を利用して外壁材20を固定する概念について説明する図である。この図1の例では、建物1の開口部に、窓2・2・・・、玄関ドア3が設けられ、他の部位が外壁材20・20にて覆われるようにして外装が構成されている。また、外壁材20は、固定具10によって図示せぬ胴縁などに対して固定されることとしている。
【0029】
また、図2は、外壁材20が固定される建物躯体4の構成の実施例について示す図である。この図2の例では、上下の梁5・5の間に柱6、間柱7が配置され、柱6、間柱7を跨ぐように胴縁8・8が設けられている。また、胴縁8・8の室内側には透湿防水シート9が配置される一方、胴縁8・8の室外側には外壁材20が配置される。
【0030】
また、図2の例では、外壁材20は、胴縁8若しくは間柱7に対し、室外側から固定具10・10によって固定されるようになっており、固定具10・10が所定の間隔で外観に現れるようになっている。なお、外壁材20については、窯業系サイディング、セラミック系サイディング、金属系サイディングなどを挙げることができる。
【0031】
次に、図3(a)などを用いて固定具10の構成について説明する。
まず、図3(a)に示すごとく、固定具10は、先端13がセルフドリリング形状であるスクリュー部14が形設される軸部15と、先端13とは反対側の軸部15の端部に形成される頭部11と、軸部15の外周を取り囲むようにして軸部15と同軸上に配置される水密部材16と、を有する構成としている。
【0032】
また、図3(a)及び図4(a)に示すごとく、固定具10の軸部15において、先端13の形状である「セルフドリリング形状」とは、軸中心に回転されつつ、軸方向に荷重が付与されることで、外壁材20や胴縁8などの材料を除去(切削)しつつ進行することができる形状を意味し、例えば、ドリル刃の形状等を挙げることができる。また、軸部15において、この先端13のセルフドリリング形状と連続してスクリュー部14が形設され、図4(c)に示すごとく、外壁材20を固定具10にて胴縁8に固定した状態では、スクリュー部14が胴縁8に噛合うようにして結合し、胴縁8からの抜けが生じないようになっている。
【0033】
また、図3(a)に示すごとく、固定具10の素材は特に限定されるものではないが、ボルトやネジの素材として広く一般に用いられるものであって、外壁材20や胴縁8などに対して捻じ込む際に破損せず、長期間外壁材20の固定を維持できるのに十分な耐久性を有するものが好ましい。
【0034】
また、図3(a)(b)に示すごとく、固定具10の軸部15における頭部11側は、スクリュー部14が形設されない円柱周面構成部15aにて構成されており、この円柱周面構成部15aに頭部11が連続して設けられている。
【0035】
また、図3(a)(b)に示すごとく、円柱周面構成部15aを取り囲むようにして、円環状の水密部材16が設けられている。この水密部材16は、ゴム、樹脂、発泡体などの弾性を有する素材にて構成されて、接合部において液体や気体の漏れを防止する機能を果たすものであり、後述するように、固定具10にて外壁材を固定した状態において、外壁材の表面の凹凸を吸収するように変形し、外壁材と固定具10の頭部11との隙間を塞ぐことで水密性の確保を可能とするものである。
【0036】
また、図3(a)(b)に示すごとく、水密部材16と円柱周面構成部15aの間には僅かな隙間が形成され、水密部材16が円柱周面構成部15aの軸方向に移動できるようになっている。また、水密部材16の外径d1は、固定具10の頭部11の外径D1よりも小さく構成されており、図3(c)に示すごとく、反軸部15側から頭部11を臨んだ状態では、頭部11によって水密部材16が隠されるように構成されている。
【0037】
また、図3(b)に示すごとく、固定具10の頭部11は、軸部15側において平面を形成する座面17を有している。この座面17には、円柱周面構成部15aを中心とする環状の溝部17aが形設されており、この溝部17aに対して水密部材16が対向するように配置される。また、水密部材16の外径d1は、溝部17aの外周輪郭17bの外径D2よりも小さく構成されている。また、この溝部17aの深さ(軸部15の軸方向の寸法)は、水密部材16の厚さ(軸部15の軸方向の寸法)よりも小さく設定されることで、図5(b)に示すように、固定具10にて外壁材20を固定した状態では、外装材20の表面21と固定具10の頭部11の間で、水密部材16が押し挟まれた状態で挟装されるようになっている。
【0038】
また、図3(b)(c)に示すごとく、固定具10の頭部11は、反軸部15側において半球状のおもて面18を有している。おもて面18には、円柱周面構成部15aの軸中心線上に工具挿入穴12が形設されている。工具挿入穴12は、略正方形の穴断面を有しており、この穴断面の形状に対応する工具を用いることにより、固定具10を外壁材20や胴縁8などに捻じ込むことができるようになっている。
【0039】
次に、図4などを用いて、固定具10による外壁材20の固定について説明する。
図4(a)に示すごとく、図示せぬ工具を用い、固定具10の先端13を外壁材20の表面21に当接させ、右方向に荷重をかけつつ固定具10を回転させることで、固定具10の先端13によって外壁材20の材料が除去されて切穴20aが形成されながら、固定具10は右方向へ進行する。そして、先端13は胴縁8に到達し、胴縁8の材料が除去されて切穴8aが形成されながら、固定具10は右方向へ進行する。
【0040】
そして、図4(b)に示すごとく、固定具10がさらに右方向へ進行すると、水密部材16が外壁材20の表面21に当着し、この状態から固定具10がさらに右方向へ進行すると、図4(c)に示すごとく、頭部11と外壁材20の表面21の間に水密部材16が挟装される(押し挟まれる)ようにして、固定具10による外壁材20の固定が完了される。
【0041】
この図4(a)から(c)の一連の流れにおいて、固定具10の先端13はセルフドリリング形状としているため、固定具10は材料を除去(切削)しながら外壁材20、及び胴縁8に対して進行するので、固定具10による外壁材20の固定の過程で亀裂が生じたり、外壁材20や胴縁8の固定具10が存在する箇所において内部応力が大きくなったりすることがない。仮に、外壁材20における固定具10の存在箇所に亀裂や大きな内部応力が存在する場合には、地震時などで建物が揺れた場合に、この亀裂や内部応力が原因で、外壁材20に割れが生じることが懸念されるが、本実施例の構成によれば、このような割れの発生を防ぐことが可能となる。特に、外壁材20が耐震性能や防火性能を有する場合では、割れの防止によって確実な耐震性能や防火性能を維持することが可能となり、ひいては、壁厚の低減による材料費の削減や、他の耐震材などの使用を省くことによるコスト削減を図ることが可能となる。
【0042】
ここで、図5(a)(b)に示すごとく、外壁材20の表面21には凹凸22が存在する。この凹凸22は、表面21に設けた模様により規則的に形設される場合や、ランダムに形設される場合などもある。また、固定具10は、外壁材20を除去(切削)しながら進入するため、いわゆる、「切り粉」が発生し、その切り粉によって凹凸が形成されているという状況も想定される。
【0043】
このような凹凸22に対し、水密部材16は弾性を有するため、図5(b)に示すごとく、水密部材16は凹凸22に沿って変形し、凹凸22を吸収するように変形して表面21に対して密着される。これにより、水密部材16と表面21の間の隙間が塞がれ、水密部材16と表面21の間への水の浸入が防がれ、外壁材20に形成された切穴20a内へ水が浸入することを確実に防止することができる。このような水の浸入の防止によって、外壁材20や胴縁の劣化、ひいては、耐震性、防火性の低下を防止することが可能となる。
【0044】
また、図5(a)(b)に示すごとく、水密部材16は弾性を有するため、図5(b)に示すごとく、水密部材16は固定具10の頭部11に形設された溝部17aに入り込むように変形し、溝部17aの表面17cに対して密着される。これにより、水密部材16と表面17cの隙間が塞がれて、水密部材16と表面17cの間への水の浸入が防がれることから、固定具10の軸部15を伝って、外壁材20に形成された切穴20a内へ水が浸入することを確実に防止することができる。このような水の浸入の防止によって、外壁材20や胴縁の劣化、ひいては、耐震性、防火性の低下を防止することが可能となる。
【0045】
また、図3(b)に示すごとく、水密部材16の外径d1は、溝部17aの外周輪郭17bの外径D2よりも小さく構成される。これにより、図5(b)に示すごとく、水密部材16が溝部17a内へ入り込むように変形し、溝部17aと外壁材20の表面21の間で押し潰されて外径d1が増加した場合には、水密部材16は溝部17a内に納められる。つまりは、溝部17aによって、水密部材16は頭部11の外周よりも内側に納められるのである。こうして、水密部材16が頭部11からはみ出すことがなく、外観に現れることもない。
【0046】
そして、以上の構成によれば、図1に示すごとく、外観において水密部材16が現れることなく、固定具10の頭部11のみが外壁材20に配置されることになるため、外観において無駄な部材が現れず、雑な印象を与えない、シンプルな外観意匠を構成することが可能となる。
【0047】
また、図1に示すごとく、外観意匠に関し、固定具10の工具挿入穴12が、略正方形の穴断面を有する構成とすることで、一般的なネジに採用される十字や六角形の工具挿入穴とは異なったスクエア形状の外観意匠を構成することが可能となる。ここで、本実施例の固定具10の場合、外壁材20を除去(切削)しながら進入させるため、頭部11に対し大きなトルクを伝達させる必要があり、工具挿入穴12は十分な大きさを確保する必要がある。仮に、一般的な十字の外観を現す工具挿入穴の場合、その工具挿入穴が大きく構成されると、いかにも一般的なネジであるという印象が目だってしまうことになる。一方で、本実施例のようにスクエア形状とすることによれば、そのスクエア形状によってもデザイン性を発揮することが可能となり、デザイン性と機能性(トルク伝達)を兼ね備えることが可能となるのである。
【0048】
以上の構成により、本発明を実施することが可能となる。
即ち、図1乃至図5に示すごとく、
外壁材20を建物躯体(梁5、柱6、間柱7、胴縁8など)に固定するための固定具10であって、
前記固定具10は、
先端13がセルフドリリング形状であるスクリュー部14が形設される軸部15と、
前記先端13とは反対側の前記軸部15の端部に形成される頭部11と、
前記軸部15の外周を取り囲むようにして前記軸部15と同軸上に配置される水密部材16と、
を有し、
前記水密部材16は弾性を有し、前記頭部11の座面17と前記外壁材20の間に挟装されて弾性変形するものとし、
前記水密部材16は、挟装された状態で前記頭部11の外周よりも内側に納められる構成とするものである。
また、前記頭部11の座面17には、前記水密部材16が挟装された状態で、弾性変形した前記水密部材16を頭部11の外周よりも内側に納めるための溝部17aを有する構成とするものである。
【0049】
これにより、固定具10にて外壁材20を固定した状態では、固定具10の頭部11と外壁材20の切穴20aとの間の水密性が確保され、この切穴20aへの水の浸入による外壁材20の劣化を防止することができる。また、水密部材16が頭部11に隠されて外観に現れない意匠を構成することができる。
【0050】
なお、以上の実施例では、図3(b)に示すごとく、頭部11の座面17に溝部17aを形設し、この溝部17aに水密部材16の一部を納めさせることにより、水密部材16の頭部11からのはみ出しを無くす構成としたが、図3(b)に示す構成において、溝部17aを形設せずに、水密部材16の外径d1を頭部11の外径D2よりも十分に小さく構成することで、この水密部材16の頭部11からのはみ出しを無くす構成としてもよい。また、以上の実施例では、水密部材16と頭部11(及び軸部15)とを別部材にて構成したが、水密部材16を座面17に接着させた状態で設けることとするなどしてもよい。
【0051】
また、図5(b)に示すごとく、
前記水密部材16の弾性は、前記外壁材20の表面21の凹凸22に沿って変形して、前記表面21に対して密着されることが可能な弾性とする、構成とするものである。
【0052】
これにより、水密部材16と表面21の間の隙間が塞がれて、水密部材16と表面21の間への水の浸入が防がれることから、外壁材20に形成された切穴20a内へ水が浸入することを確実に防止することができる。
【0053】
また、図1乃至図5に示すごとく、
前記溝部17aは環状に構成され、
前記水密部材16は環状に構成される、
構成とするものである。
【0054】
これにより、外壁材20に形成された切穴20aの周囲が、水密部材16によって取り囲まれ、切穴20a内へ水が浸入することを確実に防止することができる。なお、上記の実施例では、円環上としたが、この他、楕円の環状や、四角などの多角形の環状であってもよい。また、環は連続せずに、不連続部分や、複数の部材にて構成されている場合であっても、水密部材が変形することによって、連続性が確保できるものであれば、性能を確保できることとなる。
【0055】
また、図1に示すごとく、前記頭部11に形設される工具挿入穴12はスクエア形状とするものである。
【0056】
これにより、工具のトルク伝達のために工具挿入穴12を大きく構成したとしても、デザイン性と機能性(トルク伝達)を兼ね備えることが可能となるのである。
【0057】
また、図1に示すごとく、以上の固定具10を用い、外壁材20を建物躯体(胴縁8など)に固定する建物外壁構造や、外壁材20を建物躯体(胴縁8など)に固定する建物外壁工法とすることによれば、固定具10の存在箇所において、外壁材20に亀裂や大きな内部応力の発生が防がれるため、この亀裂や内部応力が原因で、外壁材20に割れが生じるなどの不具合を防止することができる。特に、外壁材20が耐震性能や防火性能を有する場合では、割れの防止によって確実な耐震性能や防火性能を維持することが可能となり、ひいては、壁厚の低減による材料費の削減や、他の耐震材などの使用を省くことによるコスト削減を図ることが可能となる。
【0058】
また、以上に述べた実施形態のほか、図6(a)に示す固定具10Aの頭部11Aのように、溝部17Aを略半球状の溝断面とするとともに、略円形の断面の環状部を有する水密部材16Aとすることや、図6(b)に示す固定具10Bの頭部11Bのように、大小二つの環状の溝部17B・17Cを形成するとともに、大小二つの水密部材16B・16Cを挟装する構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、窯業系サイディング、セラミック系サイディング、金属系サイディングなどの外壁材を胴縁などの建物躯体に固定するための固定具として利用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 建物
2 窓
3 玄関ドア
4 建物躯体
5 梁
6 柱
7 間柱
8 胴縁
9 透湿防水シート
10 固定具
11 頭部
12 工具挿入穴
13 先端
14 スクリュー部
15 軸部
15a 円柱周面構成部
16 水密部材
17 座面
17a 環状溝部
17b 外周輪郭
17c 表面
18 おもて面
20 外壁材
21 表面
22 凹凸
d1 外径
D1 外径
D2 外径



【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁材を建物躯体に固定するための固定具であって、
前記固定具は、
先端がセルフドリリング形状であるスクリュー部が形設される軸部と、
前記先端とは反対側の前記軸部の端部に形成される頭部と、
前記軸部の外周を取り囲むようにして前記軸部と同軸上に配置される水密部材と、
を有し、
前記水密部材は弾性を有し、前記頭部の座面と前記外壁材の間に挟装されて弾性変形するものとし、
前記水密部材は、挟装された状態で前記頭部の外周よりも内側に納められる構成とする固定具。
【請求項2】
前記頭部の座面には、前記水密部材が挟装された状態で、弾性変形した前記水密部材を前記頭部の外周よりも内側に納めるための溝部を有する構成とする、ことを特徴とする請求項1に記載の固定具。
【請求項3】
前記水密部材の弾性は、前記外壁材の表面の凹凸に沿って変形して、前記表面に対して密着されることが可能な弾性とする、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の固定具。
【請求項4】
前記溝部は環状に構成され、
前記水密部材は環状に構成される、
ことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の固定具。
【請求項5】
前記頭部に形設される工具挿入穴はスクエア形状とする、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の固定具。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の固定具を用い、外壁材を建物躯体に固定する建物外壁構造。
【請求項7】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の固定具を用い、外壁材を建物躯体に固定する建物外壁工法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−203089(P2010−203089A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−47590(P2009−47590)
【出願日】平成21年3月2日(2009.3.2)
【出願人】(305003542)旭トステム外装株式会社 (38)
【Fターム(参考)】