説明

外壁用洗浄剤

【課題】本発明の目的は、外壁を損傷することがなく、内分泌攪乱作用の疑いがなく、生分解性に優れ、更に泡立ちが低く、優れた洗浄力を有する外壁用洗浄剤を提供することにある。
【解決手段】本発明の外壁用洗浄剤は、(A)成分として、下記一般式(1)
【化1】


(Rは、炭素数8〜20のアルキル基もしくはアルケニル基を表し、Aは、炭素数2〜4の2種以上のアルキレン基を表し、且つエチレン基がAO鎖全体の50モル%以上であり、nは、6〜30の数を表す。)
で表される界面活性剤と、
(B)成分として、塩基性窒素化合物のアルキレンオキシド付加物と、
(C)成分として、オキシカルボン酸及び/又はオキシカルボン酸塩を必須成分として含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外壁の汚れの効果的な除去に有用であり、環境にも優しい外壁用洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
建造物の外壁には、コンクリート、タイル、金属、合成樹脂、岩石、ガラス、あるいはそれらの上に塗料を塗布したもの等が知られているが、これらの外壁は長期間の風雨や、車より排出される排気ガス等によって汚染される。汚染の種類としては、水あか、砂ぼこり、炭化水素、窒素酸化物、硫黄酸化物、酸化ケイ素等が知られるが、環境や汚染期間等によって、その汚れは様々な複合体となり、有機物及び無機物の絡み合った複雑な汚れとなる。その結果、建造物の外観の美観を大きく阻害するのみならず、場合によっては、これらの建造物の腐食劣化を促進し、建造物の寿命を縮めることにもなる。そこで様々な種類の洗浄剤が、外壁の汚れを落とす目的で使われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、(A)下記一般式(1)で表されるアルキレングリコールアルキルエーテル系溶剤であって、該溶剤中の主成分以外の分子量50〜300の物質の含有量が、ヘッドスペースGC−MS分析において、前記溶剤のピークエリアに対する前記主成分以外の物質のピークエリアの比が0.5%以下となる量であることを特徴とするアルキレングリコールアルキルエーテル系溶剤0.1〜20重量%
RO(CO)(CO)R’ (1)
(ここで、R、R’はそれぞれ水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表し、R、R’が同時にHであることはない。X、Yは0≦X≦3、0≦Y≦3の整数であって、X、Yが同時に0であることはない。)
(B)下記一般式(2)〜(5)で表されるアミン化合物の一種以上0.01〜20重量%
【化1】

(式中、R、R、R、R、R10、R12、R13はそれぞれ水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R、R、R、R、R、R11はそれぞれ水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数2〜3のヒドロヒキアルキル基を示す。)
(C)界面活性剤
を含有してなることを特徴とする洗浄剤組成物が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、フッ化アンモニウムとヒドロキシル化有機酸の混合水溶液からなる構築物表面等のタイル洗浄剤が開示されている。更に、特許文献3には、カルボキシル基を有する不飽和単量体及びその塩からなる群より選ばれる1種以上を含む不飽和単量体混合物を乳化重合して得られ、かつ最低造膜温度(MFT)が20〜130℃であるミクロポリマーエマルジョンを必須成分として含有する建築物外壁用洗浄組成物が開示されている。また、特許文献4には、有機酸1〜50重量%と、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸1〜50重量%と、界面活性剤0.1〜10重量%とを含有する洗浄用水溶液、および該洗浄用水溶液を中和するアルカリ性水溶液からなる建造物外壁用洗浄剤が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平5−214392号公報 特許請求の範囲
【特許文献2】特開2000−1697号公報 特許請求の範囲
【特許文献3】特開平10−251699号公報 特許請求の範囲
【特許文献4】特開平10−306300号公報 特許請求の範囲
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び2のように、比較的分子量の小さいグリコール系の溶剤を使用した場合、溶剤効果により汚れの除去には効果があるが、溶剤が樹脂や塗料等を損傷して、樹脂の割れや塗料がはげる等の問題が生じる。
また、特許文献3では、ノニルフェノールに代表されるアルキルフェノールを使用している。しかしながら、ノニルフェノールには、生物に対し擬似ホルモン作用を発現し、内分泌系を撹乱する作用があるのではないかという、いわゆるエンドクリン問題があるため、屋外で使用したこれらの界面活性剤が自然界に入り、環境汚染につながるという問題が懸念されている。また、フェノール化合物は生分解性に劣るため、自然界に長時間残ってしまうという問題もある。
更に、特許文献3及び4のように、アニオン界面活性剤やポリオキシエチレンアルキルエーテル等の泡立ち及び泡持ちの良い界面活性剤を使用すると、洗浄中に大量の泡が出るため洗浄が困難になったり、また、洗浄後に大量の泡が残るため、それらの泡を消したり除去したりする等の余分な作業も必要になる。
【0007】
従って、本発明の目的は、外壁を損傷することがなく、内分泌攪乱作用の疑いがなく、生分解性に優れ、更に泡立ちが低く、優れた洗浄力を有する外壁用洗浄剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明者等は、鋭意検討した結果、特定の配合により、これらの条件を全て満たす外壁用洗浄剤を見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、(A)成分として、下記一般式(1)
【化2】


(Rは、炭素数8〜20のアルキル基もしくはアルケニル基を表し、Aは、炭素数2〜4の2種以上のアルキレン基を表し、且つエチレン基がAO鎖全体の50モル%以上であり、nは、6〜30の数を表す。)
で表される界面活性剤と、
(B)成分として、塩基性窒素化合物のアルキレンオキシド付加物と、
(C)成分として、オキシカルボン酸及び/又はオキシカルボン酸塩を必須成分として含有することを特徴とする外壁用洗浄剤に係るものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果は、外壁に対して汚染性がなく、生分解性に優れ、泡立ちが低く、更に優れた洗浄力を有する外壁用洗浄剤を提供したことにある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の外壁用洗浄剤において、(A)成分は一般式(1)で表される化合物からなる界面活性剤である:
【化3】

【0011】
一般式(1)で表される化合物のRは、ROHで表されるアルコールから水酸基を除いたものであり、炭素数8〜20のアルキル基もしくはアルケニル基を表し、例えば、オクチル基、2−エチルヘキシル基、2級オクチル基、ノニル基、2級ノニル基、デシル基、2級デシル基、ウンデシル基、2級ウンデシル基、ドデシル基、2級ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、2級トリデシル基、2級トリデシル、テトラデシル基、2級テトラデシル基、ヘキサデシル基、2級ヘキサデシル基、ステアリル基、エイコシル基等が挙げられる。
【0012】
これらの中でも、炭素数8〜18のアルキル基又はアルケニル基が好ましく、炭素数8〜18で天然油脂から作られる混合アルコールから誘導されるものがより好ましい。天然油脂としては、例えば、アマニ油、エノ油、オイチシカ油、オリーブ油、カカオ脂、カポック油、白カラシ油、ゴマ油、コメヌカ油、サフラワー油、シアナット油、シナキリ油、大豆油、茶実油、ツバキ油、コーン油、ナタネ油、パーム油、パーム核油、ひまし油、ひまわり油、綿実油、ヤシ油、木ロウ、落花生油等の植物性油脂;馬脂、牛脂、牛脚脂、牛酪脂、豚脂、山羊脂、羊脂、乳脂、魚油、鯨油等の動物性油脂が挙げられる。これらの中でも、パーム核油、ヤシ油が最も好ましい。
【0013】
一般式(1)において、Aは、炭素数2〜4の2種以上のアルキレン基で、Aとしては、エチレン、プロピレン、メチルエチレン、ブチレン、1−メチルプロピレン、2−メチルプロピレン、エチルエチレン等が挙げられ、これらは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン(1,4−ブチレンオキシド)等から導くことができる。
Aは、2種以上のアルキレン基で、エチレン基が50モル%以上あればいずれの組み合わせでもよい。エチレン基と組み合わせる他のアルキレンオキシドとしては、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドが好ましく、プロピレンオキシドが最も好ましい。付加させるアルキレンオキシドの重合形態は限定されず、エチレンオキシドと他の1種もしくは2種以上のアルキレンオキシドのランダム共重合、ブロック共重合又はランダム/ブロック共重合等であってよい。これらの中でも、洗浄性と泡立ちのバランスから、ランダム共重合が好ましい。
また、洗浄性と泡立ちのバランスから、AO鎖に占めるエチレン基の割合は、好ましくは50〜99モル%、より好ましくは60〜95モル%、更に好ましくは65〜92モル%である。エチレン基の割合が50モル%未満の場合、洗浄力が足りなくなる場合があり、エチレン基が100モル%になると、泡立ちが大きくなるため好ましくない。
【0014】
nは、6〜30の数を表し、好ましくは8〜25、より好ましくは8〜20、更に好ましくは8〜18である。nが6未満の場合は、洗浄力が足りなくなる場合があり、nが30を超えると、配合安定性が悪くなる場合がある。
【0015】
本発明の(B)成分は、塩基性窒素化合物のアルキレンオキシド付加物であり、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン等のアンモニアのアルキレンオキシド付加物;エチレンジアミン1EO(エチレンオキシド)付加物、エチレンジアミン2EO付加物、エチレンジアミン3EO付加物、エチレンジアミン4EO付加物、エチレンジアミン1PO(プロピレンオキシド)付加物、エチレンジアミン2PO付加物、エチレンジアミン3PO付加物、エチレンジアミン4PO付加物、エチレンジアミンのEO、POブロック共重合体、エチレンジアミンのEO、POランダム共重合体等のエチレンジアミンのアルキレンオキシド付加物;アルキルモノエタノールアミン、アルキルジエタノールアミン、アルキルモノプロパノールアミン、アルキルジプロパノールアミン、ポリオキシアルキレンアルキルアミン等のアルキルアミンのアルキレンオキシド付加物である。このような化合物の中でも、アンモニアやエチレンジアミンの誘導体が好ましく、エチレンジアミンのEO、POブロック及びランダム共重合体がより好ましく、特に好ましいのは下記一般式(2)で表される化合物である。
【0016】
【化4】

【0017】
(POは、−CO−基を表し、EOは、−CO−基を表し、k、p、r及びtはそれぞれ1〜50の数を表し、m、q、s及びwはそれぞれ1〜100の数を表す。)
一般式(2)におけるk、p、r及びtはそれぞれオキシプロピレン基の重合度を表す。それぞれ1〜50の数を表し、好ましくは2〜40、より好ましくは3〜30、更に好ましくは5〜20である。k、p、r及びtの数が50より大きくなると、配合安定性が悪くなる場合がある。また、m、q、s及びwはそれぞれオキシエチレン基の重合度を表す。それぞれ1〜100の数を表し、好ましくは3〜80、より好ましくは5〜60、更に好ましくは5〜50である。m、q、s及びwの数が100より大きくなると、洗浄力が劣る場合がある。
【0018】
一般式(2)の化合物は、水に溶解もしくは分散することが好ましく、オキシプロピレン基とオキシエチレン基の合計モル数に対するオキシエチレン基の割合は、20〜80モル%が好ましく、30〜70モル%がより好ましく、30〜60モル%が更に好ましい。オキシエチレン基の割合が20モル%未満であると、水に溶解もしくは分散しない場合があり、80モル%を超えると、洗浄力が劣る場合がある。
【0019】
本発明の(C)成分は、オキシカルボン酸及び/又はオキシカルボン酸塩であり、例えば、乳酸、クエン酸、グルコン酸、酒石酸、リンゴ酸、アラボ糖酸、イド糖酸、オキシステアリン酸、キシロ糖酸、タルトロン酸、リシノール酸、リボ糖酸、及びこれらの塩が挙げられる。塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩や、アンモニウム塩を挙げることができ、本発明の外壁用洗浄剤は、これら(C)成分から選ばれる1種または2種以上を含有することができる。これらの中でも、乳酸、クエン酸、グルコン酸、酒石酸、リンゴ酸、及びこれらの塩が好ましく、乳酸、グルコン酸、クエン酸、及びこれらの塩がより好ましく、グルコン酸、クエン酸、及びこれらの塩が更に好ましく、クエン酸及びクエン酸塩が最も好ましい。
【0020】
(A)成分、(B)成分、(C)成分の好ましい配合割合は、以下のように規定することができる。
(A)成分1質量部に対して(B)成分は0.01〜100質量部の割合が好ましく、より好ましくは0.05〜50質量部、更に好ましくは0.1〜10質量部、最も好ましくは0.3〜3質量%である。(A)成分1質量部に対して(B)成分が0.01質量部未満及び100質量部を超える場合は、油汚れに対する洗浄力が悪くなる。
また、(A)成分1質量部に対して(C)成分は0.01〜10質量部の割合であればよく、より好ましくは0.02〜5質量部、更に好ましくは0.05〜3質量部、最も好ましくは0.1〜1質量部である。(C)成分が0.01質量部未満の場合は、水垢汚れに対する洗浄力が悪くなり、10質量部を超えると配合安定性が悪くなる。
【0021】
更に本発明の外壁用洗浄剤は、上記(A)〜(C)の必須成分の他に、(D)成分を配合することができる。本発明の(D)成分は、(C)成分を除くビルダーであり、例えば、コハク酸、グルタル酸、マロン酸等のジカルボン酸及びこれらの塩、エチレンジアミン四酢酸、ヒドロキシエチレンジアミン酢酸等のアミノカルボン酸及びこれらの塩、オルトリン酸、トリメタリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸等のリン酸化合物及びこれらの塩が挙げられる。塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩や、アンモニウム塩を挙げることができる。
【0022】
更に、ビルダーとしてはアルカリ剤を用いることもでき、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、酸化ナトリウム等の水酸化若しくは酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、セスキ炭酸ナトリウム等の炭酸塩;硼酸カリウム、硼酸ナトリウム等の硼酸塩;硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム、硫酸水素マグネシウム等の硫酸塩;ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、メタケイ酸カリウム、ゼオライト等の無機アルカリ金属塩;ギ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウム等の有機アルカリ金属塩;トリエチルアミン等のアルキル基鎖長が炭素数1〜4までのアルキル置換アミン類が挙げられることができ、本発明の外壁用洗浄剤は、これら(D)成分から選ばれる1種または2種以上を含有することができる。
【0023】
上記(D)成分の好ましい配合量は、(A)成分1質量部に対して、0〜5質量部、より好ましくは0.01〜3質量部、更に好ましくは0.02〜1質量部、最も好ましくは0.05〜1質量部である。上記配合量が5質量部を超えると、水系での配合上、安定性に劣る場合がある。
【0024】
更に、本発明の外壁用洗浄剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の成分と併用することができる。その他の成分としては、例えば、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;ベンゼンスルフォン酸塩、トルエンスルフォン酸塩等の低級アルキルスルフォン酸塩等の低温安定化剤;2,6−ジ第三ブチル−p−クレゾール、2,6−ジフェニル−4−オクタデシロキシフェノール、2、5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、DL−α−トコフェノール等の酸化防止剤、香料、色素、防腐剤等を配合することができる。更に、外壁への汚染性がない範囲において、3−メチル−1,3−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,8−オクタンジオール等のアルキレングリコール系溶剤、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレングリコールモノブチルエーテル等のアルキレングリコールアルキルエーテル系溶剤、リモネン、ピネン、ジペンテン等のテルペン炭化水素系溶剤等を合わせて配合することができる。
【0025】
また、本発明の外壁用洗浄剤のpHは特に限定されないが、ひどい汚れを除去する場合には、アルカリ剤等を使用して、pHを7.0〜14.0の範囲に、好ましくは9.0〜14.0の範囲にすることもできる。
【0026】
本発明の外壁用洗浄剤は、従来知られている任意の方法で使用することができ、例えば、本発明の外壁用洗浄剤を塗布してブラッシングした後、拭き取ることにより汚れを除去することができる。塗布の方法としては、例えば、布やブラシにしみ込ませてそのまま塗布する方法、ハンドスプレーや機械スプレーにおいてスプレーする方法等が挙げられる。また、ブラッシングする方法としては、例えば、ウエス、布ブラシ、金属ブラシ、樹脂製ブラシ等を使用して、人手あるいは機械によってブラッシングする方法等が挙げられる。なお、拭き取る方法としては、ウエス等で拭き取ればよい。また、自動清掃装置や超音波を使用した洗浄方法でもよく、更に、洗浄後に水ですすぎを行ってもよいし、本発明の外壁用洗浄剤の高濃度品を水で希釈して使用してもよい。
【0027】
本発明の外壁用洗浄剤は高濃度で使用してもよいが、水で希釈して使用するのが好ましい。水で希釈する場合、(A)成分の濃度が0.1〜50質量%になるように希釈してから使用するのが好ましく、0.3〜30質量%がより好ましく、0.5〜10質量%が更に好ましく、1〜5質量%が最も好ましい。(A)成分の濃度が0.1質量%未満の場合、洗浄力が悪くなる場合があり、50質量%を超えた場合、性能的にはほとんど変化なく、高濃度にする意味が経済的にも薄れるからである。また、上記のように(A)成分を希釈するのと同時に、(B)成分が0.1〜50質量%になるように希釈するのが好ましく、0.3〜30質量%がより好ましく、0.5〜10質量%が更に好ましく、1〜5質量%が最も好ましく、更に、(C)成分を0.01〜20質量%になるように希釈するのが好ましく、0.03〜10質量%がより好ましく、0.1〜5質量%が更に好ましく、0.2〜1質量%が最も好ましい。(A)、(B)及び(C)の3つの成分が上記のような濃度範囲にあるとき、本発明の外壁用洗浄剤は最も効果的に作用する。
【0028】
本発明の外壁用洗浄剤は、コンクリート、タイル、金属、合成樹脂、岩石、ガラス、あるいはそれらの上に塗料を塗布した建造物の外壁、更に、ゴム製品、自動車の車体等の洗浄にも使用することができ、特に、道路脇の建造物やトンネル内部等、自動車の排気ガス等で汚れがひどい外壁の洗浄に有用である。
【実施例】
【0029】
以下、本発明の外壁用洗浄剤を実施例により更に具体的に説明する。尚、以下の実施例等において「%」及び「部」は、特に記載が無い限り質量基準である。
洗浄液、試験板の作成及び試験方法を以下に記す。なお、試験結果は表3に記した。
<外壁用洗浄剤溶液の調製>
撹拌機の付いた1000mlのビーカーに水を700ml入れた後、表1及び表2に記されている配合表に従い、撹拌しながら各成分を順次添加した。全ての成分を添加後、30分間撹拌して均一な外壁用洗浄剤溶液を調製した。なお、実施例13及び14については、水を入れずに各成分のみで本発明の外壁用洗浄剤を調整した後、水で指定の濃度まで希釈した。この時、水の入っていない外壁用洗浄剤は両方とも、安定な均一液体であった。
【0030】
<洗浄試験板>
洗浄試験板として以下の2種類のスレート板を用意した。
水垢スレート板:10cm×20cmのスレート板を3ヶ月間屋外に置き水垢を付着させた。
油汚れスレート板:カーボンブラック(三菱化学:MA100)10質量部を鉱油(日石三菱:スーパーオイルN22)140質量部に均一に混ぜたものを擬似汚れとし、10cm×20cmのスレート板に塗った。その後擬似汚れを塗ったスレート板を150℃の高温槽に6時間入れ、油汚れを劣化させて、スレート板に付着させた。
【0031】
<洗浄方法>
上記2種類の汚れの付いたスレート板を、評価用の洗浄剤を含ませたウレタン製のスポンジに約500gの荷重をかけて5往復こすった。その後のスレート板の汚れを、目視によって下記5段階で評価した。
評価用の洗浄剤を含ませたウレタン製のスポンジを使用し、交通量の多い道路脇にある築20年の建築物のコンクリート壁を、人間の手によって洗浄した。洗浄方法は、同一人物が均一の力で、スポンジを10往復したものであり、目視によって下記5段階で評価した。
1…汚れ落ちが非常に良好
2…汚れ落ちが良好
3…ところどころに落とせなかった汚れがある
4…汚れ落ちにかなりムラがある
5…若干汚れが落ちる程度
【0032】
<泡立ちの測定>
上記2種類のスレート板の洗浄試験で、試験終了後の洗浄面での泡立ちを目視で評価した。評価は下記5段階で行った。
1…泡が見られない
2…わずかに小さな泡が発生する
3…比較的大きな泡がわずかに発生する
4…目立つ泡がかなり発生する
5…大量の泡が発生する
【0033】
<調製原料>
下記構造式中のEOは、−CHCHO−を表し、POは、−CO−を表す。なお、配合比については表1、表2に記す。
A−1:
【化5】


A−2:
【化6】


A−3:
【化7】

【0034】
B−1:トリエタノールアミン
B−2:
【化8】


B−3:
【化9】

【0035】
C−1:クエン酸ナトリウム
C−2:グルコン酸ナトリウム
C−3:リシノール酸カリウム
【0036】
D−1:メタケイ酸ナトリウム
D−2:エチレンジアミン四酢酸4ナトリウム
D−3:トリポリリン酸ナトリウム
D−4:トリエチルアミン
【0037】
E−1:
【化10】


E−2:
【化11】


E−3:
【化12】

【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

【0040】
【表3】

【0041】
<生分解性試験>
上記と同様にして以下の表4に示す配合表に従い、外壁用洗浄剤を調製した。得られた外壁用洗浄剤について、JIS K0102に準拠してBOD5を測定した。植種として市販の混合菌(SYBRON CHEMICALS INC. BI-CHEM BOD Seed)を希釈水500mlに溶解して植種液とした。用いた希釈水は、水1リットルに対して、SYBRON CHEMICALS INC.より市販されている、希釈用調整試薬A液、B液、C液、D液の4種類を、それぞれ1ml加えてpH7.2に調整したものである。なお、測定値は、水の入っていない外壁用洗浄剤での値である。数値が高い程、生分解性が良好であることを示す。
【0042】
<調製原料>
G−1:
【化13】


G−2
【化14】


G−3:
【化15】

【0043】
【表4】

【0044】
<樹脂汚染性試験>
上記と同様にして以下の表5に示す配合表に従い、外壁用洗浄剤溶液を調製した。得られた外壁用洗浄剤溶液について、下記のようにして樹脂汚染性試験を行った。長さ150mm、幅10mm、厚さ2mmの各種プラスチック板(3)の両端に穴を開け、紐(4)で結んで図1のように湾曲させた。次に、ガラス製シャーレ(1)に、深さが5mmとなるように外壁用洗浄剤溶液(2)を入れ、湾曲させたプラスチック板(3)の中央部分が、外壁用洗浄剤溶液(2)に浸るように設置した。水が蒸発しないように、全体を密封容器に装填した後、30℃の恒温槽に入れてプラスチック板(3)の状態を6時間毎に観察し、プラスチック板(3)の中央部分にひび(クラック)が入るまでの時間を測定した。なお、使用したプラスチック板の種類は、ポリ塩化ビニール(PVC)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS)、フェノール樹脂の3種類であった。
【0045】
<調製原料>
E−4:CH−O−COH
E−5
【化16】


E−6:
【化17】

【0046】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の外壁用洗浄剤は、コンクリート、タイル、金属、合成樹脂、岩石、ガラス、あるいはそれらの上に塗料を塗布した建造物の外壁、更に、ゴム製品、自動車の車体等の洗浄にも使用することができ、特に、道路脇の建造物やトンネル内部等、自動車の排気ガス等で汚れがひどい外壁の洗浄に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1は、樹脂汚染性試験の概要を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
1 ガラス製シャーレ
2 外壁用洗浄剤溶液
3 プラスチック板
4 紐

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分として、下記一般式(1)
【化1】

(Rは、炭素数8〜20のアルキル基もしくはアルケニル基を表し、Aは、炭素数2〜4の2種以上のアルキレン基を表し、且つエチレン基がAO鎖全体の50モル%以上であり、nは、6〜30の数を表す。)
で表される界面活性剤と、
(B)成分として、塩基性窒素化合物のアルキレンオキシド付加物と、
(C)成分として、オキシカルボン酸及び/又はオキシカルボン酸塩を必須成分として含有することを特徴とする外壁用洗浄剤。
【請求項2】
(A)成分1質量部に対する(B)成分の配合量が0.01〜100質量部であり、且つ(A)成分1質量部に対する(C)成分の配合量が0.01〜10質量部である、請求項1記載の外壁用洗浄剤。
【請求項3】
一般式(1)の−[AO]−が、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのランダム共重合により誘導されるものである、請求項1または2記載の外壁用洗浄剤。
【請求項4】
(B)成分の塩基性窒素化合物が、アンモニアもしくはエチレンジアミンである、請求項1ないし3のいずれか1項記載の外壁用洗浄剤。
【請求項5】
(B)成分の塩基性窒素化合物のアルキレンオキシド付加物が、下記一般式(2)
【化2】

(POは、−CO−基を表し、EOは、−CO−基を表し、k、p、r及びtはそれぞれ1〜50の数を表し、m、q、s及びwはそれぞれ1〜100の数を表す。)で表される化合物である、請求項1ないし4のいずれか1項記載の外壁用洗浄剤。
【請求項6】
(C)成分が、グルコール酸、乳酸、クエン酸、グルコン酸、酒石酸、リンゴ酸、及びこれらの塩からなる群から選択される、1種または2種以上である、請求項1ないし5のいずれか1項記載の外壁用洗浄剤。
【請求項7】
(D)成分として、(C)成分を除くビルダーを含有する、請求項1ないし6のいずれか1項記載の外壁用洗浄剤。
【請求項8】
更に、水を含有してなる、請求項1ないし7のいずれか1項記載の外壁用洗浄剤。
【請求項9】
(A)成分として0.1〜50質量%含有する、請求項8記載の外壁用洗浄剤。
【請求項10】
(A)成分として0.1〜50質量%、(B)成分として0.1〜50質量%、(C)成分として0.01〜20質量%含有する、請求項9記載の外壁用洗浄剤。

【図1】
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【公開番号】特開2006−83271(P2006−83271A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−268516(P2004−268516)
【出願日】平成16年9月15日(2004.9.15)
【出願人】(000000387)旭電化工業株式会社 (987)
【Fターム(参考)】