説明

外断熱用発泡体および外断熱外壁施工方法

【課題】外壁仕上げが簡便におこなえる外断熱用発泡体を提供することおよび作業性よく不燃性の外断熱外壁を提供可能な外断熱外壁施工方法を提供すること。
【解決手段】少なくとも炭酸カルシウムを含んだ無機質充填材と塩化ビニル樹脂との総和を100wt%としたときに塩化ビニル樹脂が30wt%以上70wt%以下となるようにし、これに、発泡剤と、有機溶剤と、を添加して、加熱発泡させて独立気泡構造を有するように形成したことを特徴とする外断熱用発泡体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外断熱用発泡体および外断熱外壁施工方法に関し、特に、モルタルとの接着性を確保しつつ作業性よく不燃性外壁を形成可能な外断熱用発泡体および外断熱外壁施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、独立気泡によって発泡させた発泡体は、軽量で断熱性に優れ、各種装置や建物等の断熱材その他に広く用いられている。特に、塩化ビニル樹脂発泡体は、耐薬品性、機械的強度等の点においても優れており、広く一般的に用いられている。また、近年では、マンションその他のコンクリート建造物への外断熱の導入実績も増え、その優位性が認識されつつある。
【0003】
【特許文献1】特公昭46−2184号公報
【特許文献2】特開昭51−28163号公報
【特許文献3】特開昭56−129236号公報
【特許文献4】特開昭59−215331号公報
【特許文献5】特公昭62−56113号公報
【特許文献6】特開平11−349720号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、塩化ビニル樹脂のみによる発泡体は難燃性ではあるものの不燃性ではない。また、外断熱は、発泡体をそのまま屋外に暴露することはなく、発泡体表面に仕上施工、具体的には、モルタル塗り、モルタルを介したタイル貼りをする。ここで、塩化ビニル樹脂の含有量が高い発泡体であると、モルタルののりが悪く、強度低下を招来してしまう場合がある。
【0005】
また、近年では、建築物の外観がデザイン処理され、曲面が多用されつつある。ここで、従来の不燃性発泡体はある程度の可撓性を有するものの、曲面に追従できない場合があった。従って、高い可撓性を有しつつ不燃性外壁を構築する発泡体ないし施工方法が模索されていた。
【0006】
本発明は上記に鑑みてなされたものであって、外壁仕上げが簡便におこなえる外断熱用発泡体を提供することおよび作業性よく不燃性の外断熱外壁を提供可能な外断熱外壁施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の外断熱用発泡体は、少なくとも炭酸カルシウムを含んだ無機質充填材と塩化ビニル樹脂との総和を100wt%としたときに塩化ビニル樹脂が30wt%以上70wt%以下となるようにし、これに、発泡剤と、有機溶剤と、を添加して、加熱発泡させて独立気泡構造を有するように形成したことを特徴とする。
【0008】
すなわち、請求項1にかかる発明は、塩化ビニル樹脂を70wt%以下としてモルタルとの接着性(親和性)を確保し、また、30wt%以上として、圧縮強度と曲げ強度と引張強度を確保する。また、炭酸カルシウムにより難燃性ないし不燃性を高めると共に塩化ビニル樹脂が火に当たって塩素ガスが発生する状況下でもこれを無毒化させることが可能となる。また、独立気泡構造により断熱性を高めつつモルタルとのメカニカルロックを確保する。なお、塩化ビニルそのものの柔軟性と気泡構造とにより発泡体は可撓性を有し曲面構造にもなじみやすいが、別途、可塑剤を含ませるようにしてもよい。
【0009】
また、請求項2に記載の外断熱用発泡体は、請求項1に記載の外断熱用発泡体において、無機質充填材には、粒径が10ミクロン以下のタルクまたはカオリンを含むことを特徴とする。
【0010】
すなわち、請求項2にかかる発明は、タルク等の無機質より難燃性ないし不燃性が高まるのみならず、塩化ビニルの気泡体の表面のタルク等微粒子が介在することによりモルタルとの親和性が高まり(この結果良好なモルタルとの接着性を発揮し)、また、滑剤としての良好な作業性(混練性、金型の中での伸展性)とともに良好な発泡性と成形性をも発揮する。なお、粒径は好ましくは8ミクロン以下である。タルクまたはカオリンの添加割合は、炭酸カルシウムの含有量や製造条件にも依存するが、塩化ビニル樹脂の重量の2割〜6割が好ましい。
【0011】
また、請求項3に記載の外断熱用発泡体は、請求項2に記載の外断熱用発泡体において、比重が70kg/m以下となるように発泡倍率を調整したことを特徴とする。
【0012】
すなわち、従来の外断熱用発泡体は、軽くても90kg/mであるところ、無機質充填材の割合を相対的に少なくし、かつ、発泡倍率を向上させるべく相対的に塩化ビニル樹脂の割合を多くし、作業性に優れる軽い外断熱用発泡体を提供可能となる。また、発泡倍率が高いためこれによっても可撓性が発揮され、曲面にもなじみやすくなる。発泡倍率を調整するとは、発泡剤の種類および添加量を調整することと加温による発泡率ないし膨張率を調整することをいずれも意味するものとする。
【0013】
また、請求項4に記載の外断熱外壁施工方法は、板状に成形された請求項1、2または3に記載の外断熱用発泡体の表面に、モルタルを直に塗布して、不燃性断熱外壁を形成することを特徴とする。
【0014】
すなわち、請求項4にかかる発明は、モルタルとの複合化により不燃性を実現可能となる。なお、板状とは、平板のみならず曲率をもつものであってもよく、この意味で、板状とは、縦横の長さに比して厚みが小さいことをいう。ここで、モルタルには、樹脂等が混和されていない単純モルタルであることが好ましいが、全体として不燃性を有するのであれば樹脂が混入されていてもよい。また、モルタルを介してタイルその他の外壁仕上材を貼り付けてもよい。
【0015】
また、請求項5に記載の外断熱外壁施工方法は、請求項4に記載の外断熱外壁施工方法において、モルタルの厚みを5mm以上とすることを特徴とする。
【0016】
すなわち、請求項5にかかる発明は、自己消火性を有する塩化ビニル樹脂と不燃である無機材との組合せとの複合化により協働して不燃性を実現する。
【0017】
また、請求項6に記載の外断熱外壁施工方法は、請求項4または5に記載の外断熱外壁施工方法において、モルタルを塗布する側の外断熱用発泡体の表面を、はつりないし切断により独立気泡に基づく凹凸が表れるように形成したことを特徴とする。
【0018】
すなわち、請求項6にかかる発明は、外壁の接着強度を向上させる。外壁がモルタル仕上げである場合には、モルタルがはがれにくく、また、タイル等の外壁仕上材である場合には、タイル等がはがれにくくなる(引張強度が確保される)。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、外壁仕上げが簡便におこなえる外断熱用発泡体を提供することが可能となり、作業性よく不燃性の外断熱外壁を提供可能な外断熱外壁施工方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。本発明は、全体として断熱性を確保することはもちろんのこと、強度と可撓性の観点から塩化ビニルの含有量を高め、不燃性の発揮はモルタルとの複合化により担保し、かつ、タルク(またはカオリン)の粒度を従来の建築土木分野で用いられていた15ミクロン以上ではなく、医薬化粧品分野で用いられる10ミクロン以下とすることにより、良好な作業性、発泡性・成形性およびモルタルとの親和性が得られることを発見したことに基づく。
【0021】
ここでは、まず、外断熱用発泡体について説明し、次に、外断熱外壁施工方法について説明する。
【0022】
〔外断熱用発泡体〕
本発明の外断熱用発泡体は、材料として、塩化ビニル樹脂、無機質系充填材、発泡剤、および、有機溶剤を用いる。
【0023】
塩化ビニル樹脂とは、塩化ビニルまたは塩化ビニリデンの単独重合体またはこれら単量体と共重合可能な単量体、たとえばエチレン、プロピレン、酢酸ビニル、アクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、スチレン等との共重合体などを挙げることができる。
【0024】
この中でも塩化ビニル単独、またはこれらと酢酸ビニルを重合または共重合した塩化ビニル樹脂または塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体が充填材との混和性と難燃性の観点から好適である。
【0025】
無機質系充填材としては、炭酸カルシウムのほか、炭酸マグネシウム等の炭酸化合物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化物、石膏、硫酸アルミニウム等の結晶水を有する化合物などが挙げられる。また、タルク、カオリンクレーを添加することにより、部材の混和性や伸びが向上する。これらの化合物は、単独または2種以上混合して用いることもできる。
【0026】
この中で、炭酸カルシウムまたはタルク、もしくは、炭酸カルシウムとタルクの混合部材を用いることが好ましい。炭酸カルシウムは、塩素ガスの無毒化に寄与し、また、タルクは塩化ビニル樹脂の伸びを助成し発泡性を維持向上させる。ここで、タルクの粒度は、10ミクロン〜5ミクロンが好ましく、8ミクロンの規格品または8ミクロン〜5ミクロンがより好ましい。10ミクロンを超えると成形性が悪くなり反りや変形が生じる。5ミクロン以下では価格が高くなる。タルクの粒度がこの範囲であると、樹脂の表面に多数のタルクの粒が介在することになり、発泡体とモルタルとの接着性が向上し、また、理由はよく分からず、数値化も困難であるものの、発泡性にも他の無機質充填材には見られない好適な結果をもたらす。特に、8ミクロン程度の平均粒子のタルクを用いると、発泡により延伸された塩化ビニル樹脂中に悪影響を及ぼすこともなく、良好な発泡体となる。
【0027】
発泡剤としては、有機系では、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチルニトリル、ジニトロソペンタテトラミン、P−トルエンスルホニルヒドラジド、P,P’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)等を用いることができ、無機系では重炭酸ソーダ、塩化アンモニウム等を挙げることができる。このうち、特に、アゾジカルボンアミドが生産性・コストの観点から好ましい。
【0028】
有機溶剤としては、一般に用いられているものを広く利用できるが、特にトルエン、キシレン等が好ましい。なお、塩化ビニルに有機溶剤を添加することにより、塩化ビニルが、混練する際、型に流し込む際、発泡させる際等に、適度な延性・柔軟性・粘性をもつようになる。
【0029】
また、本発明の外断熱用発泡体には、このほか、可塑剤や難燃剤を添加してもよい。可塑剤を添加することにより、加熱後の独立気泡発泡体が、コンクリート表面形状によりしなやかに追従し、たとえば、曲率の高い曲面等であっても、現場施工を容易化することが可能となる。また、難燃剤を添加することにより、後述のモルタルと相まって、外壁の耐火性・不燃性をいっそう向上させることが可能となる。
【0030】
可塑剤としては、たとえば、フタル酸ジメチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソノリル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ジシクロヘキシル、リン酸トリクレシル、トリブチルホスフェート、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリ(クロロエチル)ホスフェート、トリスクロロプロピルホスフェート、オルチルジフェニルホスフェート、リン酸トリス(イソプロピルフェニル)、クレジルジフェニルホスフェート、ジオクチルアゼレート、塩化パラフィン等を挙げることができる。
【0031】
難燃剤としては、テトラブロモビスフェノールA、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、ヘキサブロモベンゼン、トリス(2,3−ジブリモプロピル)イソシアヌレート、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、デカブロモジフェニルオキサイドリン酸アンモニウム、トリクレジルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリス(β−クロロエチル)ホスフェート、トリスクロロエチルホスフェート、トリスジクロロプロピルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、赤リン、酸化錫、三酸化アンチモン、水酸化ジルコニウム、メタホウ酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。
【0032】
次に配合を述べる。
本発明では、塩化ビニル樹脂と無機質充填材との重量比を、それらの総和を100wt%としたときに塩化ビニル樹脂が30wt%以上70wt%以下(これに対応して、無機質充填材が70wt%〜30wt%)となるようにする。従来の塩化ビニル樹脂を用いた不燃性無機質発泡板は、塩化ビニル樹脂の混合比が10wt%以下であり、素材単体としての不燃性を主眼としたものであるところ、本発明は、不燃性に関してはモルタルとの複合板により実現し、むしろ、モルタルと発泡板との接着力(さらには、モルタルを介したタイルと発泡板との接着力)を主眼としたものである。
【0033】
すなわち、塩化ビニル樹脂が多すぎると、モルタルののりないしつきが悪くなり、このため、塩化ビニル樹脂の重量を70wt%以下としている。一方、塩化ビニル樹脂が少ないと、発泡性に影響が出るほか、発泡体自体の強度(特にタイルを貼り付けたときの引張強度)が大きくならないため、塩化ビニル樹脂の重量を30wt%以上としている。
【0034】
なお、ここでいう引張強度は、「JIS A 1613」壁用ボード類接着剤の接着強さ及びその接着工法の接着強さ試験方法で測定し、強度が0.4N/mm以上あることをいう。なお、従来の塩化ビニル樹脂を用いた不燃性無機質発泡板では同様の試験で発揮される引張強度は0.1N/mm〜0.3N/mmである。
【0035】
好ましい配合としては、塩化ビニル樹脂50重量部〜60重量部、炭酸カルシウム30重量部〜40重量部、タルク10重量部〜20重量部である。
【0036】
有機溶剤の量は特に限定されないが、無機質系充填材50〜95重量部に対して、好ましくは30重量部〜100重量部、より好ましくは40重量部〜90重量部である。
【0037】
また、発泡剤の量も特に限定されないが塩化ビニル樹脂30重量部〜70重量部に対して、好ましくは2重量部〜20重量部、より好ましくは5重量部〜15重量部である。発泡体は、後述するように2段階の発泡工程を経るが、比重が70kg/m以下となるようにする。比重がこの程度以下であると、断熱性や可撓性が良好となり、また、作業性も向上する。
【0038】
なお、有機溶剤と発泡剤を合算した添加量は、塩化ビニル樹脂30重量部〜70重量部に対して、32重量部〜120重量部、好ましくは40重量部〜100重量部、より好ましくは45重量部〜95重量部である。
【0039】
なお、可塑剤に関しては、可塑剤の吸油量を決定する上で、塩化ビニル樹脂および無機質系充填材の粒度に注意する必要がある。たとえば、塩化ビニル樹脂として塩化ビニルを用いる場合には、325メッシュの篩いを全て通過する粒度で必要な分布を有したいわゆるペーストレジンであれば可塑剤の吸油量と無機質系充填材との親密性を保つことができる。また、たとえば、無機質系充填材の炭酸カルシウムについては、塩化ビニル樹脂の燃焼によって発生する塩素と反応させて無毒化させたり、塩化ビニル樹脂と可塑剤との密着性を向上させるため、70〜200メッシュ中に必要な分布をすることが好ましい。
【0040】
次に、上記材料を用いた発泡体の製造方法について説明する。
本発明は、塩化ビニル樹脂と、無機質充填材と、有機溶剤と、発泡剤と、可塑剤とを、それぞれ必要重量部をニーダー等で混合する。この際、発泡しないように、適宜ニーダーを冷却する。おおむね50℃未満であれば、発泡は生じない。
【0041】
次に、この混練したものを第1の金型内に封入し加熱により均一に気泡を生じさせる。すなわち、一次発泡をおこなう。第1の金型の大きさは特に限定されないが、最終的に板体を成形するので、たとえば、80cm×150cm×10cmの金型を用いる。一次発泡の際には、約140℃〜170℃に加熱して気泡を生じさせる。加熱により塩化ビニル樹脂はゲル化する。なお、金型内部が高温になって気泡が発生することにより、金型内部が高圧になり、ゲル化した塩化ビニル樹脂および無機質系充填材の中に、均一に気泡が拡散されることとなる。
【0042】
反応が十分に行われた後、金型の気密を保持したまま室温まで冷却し、プレスを徐圧して金型から生成物を取り出す。この時点で、生成物は目的の発泡倍率の30%〜40%となる(一次発泡)。次いで、生成物を常圧中、再びオーブン等の温風循環装置内で90℃〜120℃に加熱し、目的の発泡倍率である5倍〜20倍になるように膨張させる(二次発泡)。そして、膨張したら再び室温まで温度を下げて、養生させる。なお、発泡倍率とは、得られた発泡体の体積が当初の体積の何倍になるかを示す値である。その後、生成物を徐々に加熱し、有機溶媒を取り除き、発泡体としての製品が得られる。なお、先に示したように、発泡倍率は、比重が70kg/m以下となるようにし、逆に、発泡剤は、そのような比重となるような量を添加する。
【0043】
最後に、中央部分で二枚割りし、または、表面と周縁部をはつり取り、独立気泡の凹凸が発泡体表面に表れるようにする。
【0044】
なお、可塑剤を用いる場合には、原料を常温までの温度範囲および常圧にて混練したのち、可塑剤を加えて、ペースト状のコンパウンドとする。その後、第1の金型内において該コンパウンドを加熱し、少なくとも発泡剤の分解または気化する温度以上で、かつ、塩化ビニル樹脂がゲル化する温度まで加熱する。これによって、塩化ビニル樹脂は溶剤(可塑剤)に溶け、無機質系充填材の微粒子を隅なく包み込み、各微粒子に接着してそれら相互間をも接着せしめる。
【0045】
このようにして製造された発泡板は、無機質系充填材を主体とした独立気泡によって形成されており、軽量で断熱性、吸音性、耐水性を有し、かつ、機械的強度(圧縮強度、曲げ強度、曲げ弾性率、引張強度)も高い。また、火災等により高温になっても、炭酸カルシウムを用いた場合には、塩化水素ガスの発生は極めて微量に抑制されるので、有毒ガスの発生による危険性は極めて少なくなる。
【0046】
〔外断熱外壁施工方法〕
次に、本発明の製造方法によって得られた発泡板を用いた外断熱外壁施工方法について説明する。まず、コンクリート打ち込み型枠の外側として発泡板を敷設しコンクリートを打つ。または、既に形成されたコンクリートの外側に接着剤等により発泡板を貼着する。これにより、コンクリート外側が発泡板により覆われる。なお、発泡板の屋外側の表面は、はつり等により独立気泡に基づく凹凸が表れるようにする。本発泡板は比重が軽く、かつ、不燃性をモルタルとともに発揮するようにしているので、薄くすることもでき、コンクリート表面が平坦でなくても追従させることができる。
【0047】
つづいて、発泡板表面にモルタルを直塗りする。モルタルは、単純モルタルである方が好ましく、不燃性を発揮すべく、AE剤や減水剤等以外には、極力有機物を含ませないようにする。モルタルの組成としては、普通ポルトランドセメント25重量部に、水3重量部〜6重量部、細骨材(砂)50重量部〜80重量部とすることができる。
【0048】
モルタルの厚みは5mm以上とする。発泡体が塩化ビニル樹脂を素材としているので自己消火性があり、この物性と相まって不燃性を発揮する厚みは5mmであることを確認した。なお、外壁表面をモルタル仕上げとする場合には、モルタルの直塗りで作業が終了するが、さらにたとえば外壁仕上材としてタイルを貼り付けることもできる。この場合は、モルタルを5mm以上の厚みで塗り込み、その上からタイルを押しつけることによりタイル貼りが可能となる。
【0049】
なお、タイルとモルタルの接着強度は非常に強いため、タイルを貼った状態で引張試験をおこなうと、発泡体とモルタルの界面が破断する。ここで、従来の不燃性断熱材であると接着強度は必ずしも高くないが、本発明の発泡体は、塩化ビニルの含有量が相対的に高くこれに由来する接着強度が高まる(後述の表1参照)。よって、本発明は、接着強度の高い不燃断熱複合板ないし外壁を提供する方法であるということもできる。
【実施例1】
【0050】
次に具体的な発泡板の物性を測定した。本実施例の組成は以下とした。
組成 重量部
塩化ビニル樹脂 60
炭酸カルシウム 30
タルク 10
アゾジカルボンアミド 5
トルエン 80
【0051】
なお、比較例の組成は以下とした(従来品)。
組成 重量部
塩化ビニル樹脂 10
炭酸カルシウム 55
水酸化マグネシウム 35
アゾジカルボンアミド 3
トルエン 80
【0052】
両者の発泡板としての物性を、表1に挙げる。
【表1】

表に示したように、各種データのうち、特に、強度の向上が見られる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明によれば、不燃でありながら、引張強度等が大きく、地震や衝撃などに強い断熱材ないし外壁仕上方法を提供できる。また、タルクの介在により、製造段階では発泡性や混練性向上に寄与し、また、製品段階ではモルタルとの親和性に寄与する。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも炭酸カルシウムを含んだ無機質充填材と塩化ビニル樹脂との総和を100wt%としたときに塩化ビニル樹脂が30wt%以上70wt%以下となるようにし、これに、発泡剤と、有機溶剤と、を添加して、加熱発泡させて独立気泡構造を有するように形成したことを特徴とする外断熱用発泡体。
【請求項2】
無機質充填材には、粒径が10ミクロン以下のタルクまたはカオリンを含むことを特徴とする請求項1に記載の外断熱用発泡体。
【請求項3】
比重が70kg/m以下となるように発泡倍率を調整したことを特徴とする請求項2に記載の外断熱用発泡体。
【請求項4】
板状に成形された請求項1、2または3に記載の外断熱用発泡体の表面に、モルタルを直に塗布して、不燃性断熱外壁を形成することを特徴とする外断熱外壁施工方法。
【請求項5】
モルタルの厚みを5mm以上とすることを特徴とする請求項4に記載の外断熱外壁施工方法。
【請求項6】
モルタルを塗布する側の外断熱用発泡体の表面を、はつりないし切断により独立気泡に基づく凹凸が表れるように形成したことを特徴とする請求項4または5に記載の外断熱外壁施工方法。


【公開番号】特開2009−281099(P2009−281099A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−136240(P2008−136240)
【出願日】平成20年5月26日(2008.5.26)
【出願人】(000112772)フジ化成工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】