説明

外断熱用複合パネルおよびこれを用いた目地構造

【課題】 コンクリートの外壁面に取り付けて使用したり、型枠と兼用するいずれの外断熱工法にも適用でき、外装材などの支持強度が高く、目地部でのパネル同士の通気性を確保できる外断熱用複合パネルおよびこれを用いた目地構造を提供すること。
【解決手段】 硬質発泡プラスチックの断熱ボード11と、この断熱ボード11の屋外側表面に設けられた外装下地材12とで外断熱用複合パネル10を構成することで、外装下地材12による支持強度を向上するようにし、断熱ボード11の屋外側表面に上下方向に沿う複数本の縦通気溝13と上下端部より内側の左右方向に沿う少なくとも上下一本ずつの横通気溝14により、上下方向に通気性を確保するとともに、例え縦通気溝13の上端が塞がれてもをその内側の横通気溝14で通気性を確保するようにする。さらに、施工に際してパネル10の上下寸法などを調整する必要が生じても少なくとも一方の横通気溝14を残すことで、通気性を確保できるようにしてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、外断熱用複合パネルおよびこれを用いた目地構造に関し、鉄筋コンクリートなどの建築物に取り付けたり、あるいはコンクリート打設用の型枠と兼用することで、通気層を備える外断熱施工ができるようにしたもので、特に目地部においてもパネル同士の通気状態を確保できるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄筋コンクリート造の集合住宅やオフィスビルなどの建築物では、省エネルギーや快適居住のため外気と接する外壁部や屋根部などを断熱材で覆って断熱性を高める断熱施工が普及しつつある。
【0003】
このようなコンクリート建築物の断熱施工には、壁面の内側に断熱材を設ける内断熱工法と、壁面の外側に断熱材を設ける外断熱工法とがあり、これまでは、内断熱工法が主流となっている。
【0004】
このような内断熱工法における施工の効率化を図るため、断熱型枠パネルが開発されており(例えば、特許文献1参照)、硬質発泡プラスチックボードの室内側面に複数の縦桟木と横桟木を半埋め込み式で取り付けて構成されている。
【0005】
そして、縦桟木と横桟木とが取り付けられた断熱型枠パネルを内型枠とし、打設空間を空けて外型枠を建て込み、コンクリートを打設した後、外型枠だけを取り外して内側の断熱型枠パネルをそのまま残して断熱材とし、縦桟木と横桟木を利用して内装下地材を設けて内装施工するようにしている。
【特許文献1】特開2000−199288号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
最近、建築物に対する断熱性能の向上が求められ、これまでの内断熱工法に代え、壁面の外側を断熱材で覆う外断熱工法が採用される傾向にある。
【0007】
そこで、これまでの内断熱工法に用いられてきた断熱型枠パネルをそのまま外断熱工法に使用して型枠と兼用したり、コンクリートの外壁面に取り付けて使用することが考えられるが、次のような問題があり、そのまま転用することができない。
【0008】
上記の内断熱工法では、断熱型枠パネルの桟木を利用して内装下地材を取り付け、この内装下地材の上に壁紙などの内装材を接着するなどの内装施工が行われるのに対し、外断熱工法では、断熱型枠パネルの外側の桟木に外装下地材や外装材を取り付ける外装施工を行うが、外装材などは、内装下地材および内装材に比べ重量があり、大きな荷重を支持することができないという問題がある。
【0009】
さらに、タイルや窯業系など外装材の材質によっては、内装材に比べて透湿性が低く外装材の内側に結露が生じ易く、またコンクリートからの水分が外装材の内側に放出されることから、内断熱工法に比べ、断熱型枠パネルと外装下地材や外装材との間の通気性を大幅に高める必要があるという問題がある。
【0010】
また、外装下地材や外装材が外気に曝されるため、日射による熱膨張・収縮の影響を受けるとともに、寒冷地などでは、凍結・融解による影響があり、これによって外装下地材や外装材の耐久性が低下するという問題があり、一層断熱パネルと外装下地材や外装材との間の通気性を大幅に高める必要があり、特にパネル同士の目地部分の通気性を確保しなければならないという問題がある。
【0011】
この発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、コンクリートの外壁面に取り付けて使用したり、型枠と兼用するいずれの外断熱工法にも適用することができ、外装材などの支持強度が高く、目地部でのパネル同士の通気性を確保することができる外断熱用複合パネルおよびこれを用いた目地構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記従来技術の課題を解決するため、この発明の請求項1記載の外断熱用複合パネルは、 硬質発泡プラスチックの断熱ボードと、この断熱ボードの屋外側表面に設けられた外装下地材とからなる外断熱用複合パネルであって、前記断熱ボードの屋外側表面に上下方向に沿う縦通気溝を複数本形成するとともに、この断熱ボードの屋外側表面の上下端部より内側に左右方向に沿う横通気溝を少なくとも一本ずつ形成したことを特徴とするものである。
この外断熱用複合パネルによれば、硬質発泡プラスチックの断熱ボードと、この断熱ボードの屋外側表面に設けられた外装下地材とで外断熱用複合パネルを構成することで、外装下地材による支持強度を向上するようにし、断熱ボードの屋外側表面に上下方向に沿う複数本の縦通気溝と上下端部より内側の左右方向に沿う少なくとも上下一本ずつの横通気溝により、上下方向に通気性を確保するとともに、例え縦通気溝の上端が塞がれてもその内側の横通気溝で通気性を確保するようにしてある。さらに、施工に際してパネルの上下寸法を調整する必要が生じても少なくとも一方の横通気溝を残すことで、通気性を確保できるようにしてある。
【0013】
また、この発明の請求項2記載の外断熱用複合パネルは、請求項1記載の構成に加え、前記断熱ボードの屋外側表面の縦通気溝の少なくとも上端に、横目地部をシールするシーリング材の当該縦通気溝への浸入を防止するシート部材を装着する横装着溝を形成してなることを特徴とするものである。
この外断熱用複合パネルによれば、断熱ボードの屋外側表面の縦通気溝の少なくとも上端に、横目地部をシールするシーリング材の当該縦通気溝への浸入を防止するシート部材を装着する横装着溝を形成することで、シール部材を横装着溝に装着してその上に次ぎのパネルを連結すると縦通気溝の表面が覆われ、目地部でのシーリング材の浸入を防止でき、通気性を確保できるようになる。
【0014】
さらに、この発明の請求項3記載の外断熱用複合パネルは、請求項1または2記載の構成に加え、前記断熱ボードの屋外側表面の横通気溝の少なくとも一端に、縦目地部をシールするシーリング材の当該横通気溝への浸入を防止するシート部材を装着する縦装着溝を形成してなることを特徴とするものである。
この外断熱用複合パネルによれば、断熱ボードの屋外側表面の横通気溝の少なくとも一端に、縦目地部をシールするシーリング材の当該横通気溝への浸入を防止するシート部材を装着する縦装着溝を形成することで、シール部材を縦装着溝に装着してその横に次ぎのパネルを連結すると横通気溝の表面が覆われ、目地部でのシーリング材の浸入を防止でき、通気性を確保できるようになる。
【0015】
また、この発明の請求項4記載の外断熱用複合パネルの目地構造は、前記請求項1記載の外断熱用複合パネルを横目地部を介して上下に、および/または縦目地部を介して左右に配置し、当該横目地部の上下の縦通気溝の表面に、および/または当該縦目地部の左右の横通気溝の表面に、シーリング材の浸入を防止するシート部材を取り付け、このシート部材を介してシーリング材を充填して縦通気溝同士を上下に連通させて横目地部を構成し、および/またはこのシート部材を介してシーリング材を充填して横通気溝同士を左右に連通させて縦目地部を構成したことを特徴とするものである。
この外断熱用複合パネルの目地構造によれば、前記請求項1記載の外断熱用複合パネルを横目地部を介して上下に配置したり、あるいは縦目地部を介して左右に配置したり、これら上下の横目地部および左右の縦目地部を組み合わせて配置する場合に、縦通気溝の表面や横通気溝の表面にシート部材を取り付けることで、シーリング材の浸入を防止することができ、縦通気溝同士を上下に連通させて横目地部を構成したり、横通気溝同士を左右に連通させて縦目地部を構成して目地部の通気性を確保できるようになる。
【0016】
さらに、この発明の請求項5記載の外断熱用複合パネルの目地構造は、請求項4記載の構成に加え、前記請求項2記載の外断熱用複合パネルを用い、前記上下には、当該外断熱用複合パネルを横目地部を介して上下に配置し、当該横目地部の上下の縦通気溝の表面に形成した前記横装着溝に、シーリング材の浸入を防止するシート部材を装着し、このシート部材を介してシーリング材を充填して縦通気溝同士を上下に連通させて横目地部を構成したことを特徴とするものである。
この外断熱用複合パネルの目地構造によれば、前記請求項2記載の外断熱用複合パネルを用い、上下の目地部で、横装着溝にシート部材を装着することで、シーリング材の浸入を防止することができ、縦通気溝同士を上下に連通させて横目地部を構成して目地部の通気性を確保できるようになる。
【0017】
また、この発明の請求項6記載の外断熱用複合パネルの目地構造は、請求項4または5記載の構成に加え、前記請求項3記載の外断熱用複合パネルを用い、前記左右には、縦目地部を介して当該外断熱用複合パネルを左右に配置し、当該縦目地部の左右の横通気溝の表面に形成した前記縦装着溝にシーリング材の浸入を防止するシート部材を装着し、このシート部材を介してシーリング材を充填して横通気溝同士を左右に連通させて縦目地部を構成したことを特徴とするものである。
この外断熱用複合パネルの目地構造によれば、前記請求項3記載の外断熱用複合パネルを用い、左右の目地部では、縦装着溝にシート部材を装着することで、シーリング材の浸入を防止することができ、横通気溝同士を左右に連通させて縦目地部を構成して目地部の通気性を確保できるようになる。
【発明の効果】
【0018】
この発明の請求項1記載の外断熱用複合パネルによれば、硬質発泡プラスチックの断熱ボードと、この断熱ボードの屋外側表面に設けられた外装下地材とで外断熱用複合パネルを構成することで、外装下地材による支持強度を向上することができ、断熱ボードの屋外側表面に上下方向に沿う複数本の縦通気溝と上下端部より内側の左右方向に沿う少なくとも上下一本ずつの横通気溝を形成することで、上下方向に通気性を確保するとともに、例え縦通気溝の上端が塞がれてもその内側の横通気溝で通気性を確保することができる。さらに、施工に際して外断熱用複合パネルの上下寸法を調整する必要が生じても少なくとも一方の横通気溝を残すことで、パネル全面の通気性を確保することができる。
【0019】
また、この発明の請求項2記載の外断熱用複合パネルによれば、断熱ボードの屋外側表面の縦通気溝の少なくとも上端に、横目地部をシールするシーリング材の当該縦通気溝への浸入を防止するシート部材を装着する横装着溝を形成したので、シール部材を横装着溝に装着してその上に次ぎのパネルを連結すると縦通気溝の表面を覆うことができ、目地部でのシーリング材の浸入を防止することで、通気性を確保することができる。
【0020】
さらに、この発明の請求項3記載の外断熱用複合パネルによれば、断熱ボードの屋外側表面の横通気溝の少なくとも一端に、縦目地部をシールするシーリング材の当該横通気溝への浸入を防止するシート部材を装着する縦装着溝を形成したので、シール部材を縦装着溝に装着してその横に次ぎのパネルを連結すると横通気溝の表面を覆うことができ、目地部でのシーリング材の浸入を防止することで、通気性を確保することができる。
【0021】
また、この発明の請求項4記載の外断熱用複合パネルの目地構造によれば、前記請求項1記載の外断熱用複合パネルを横目地部を介して上下に配置したり、あるいは縦目地部を介して左右に配置したり、これら上下の横目地部および左右の縦目地部を組み合わせて配置する場合に、縦通気溝の表面や横通気溝の表面にシート部材を取り付けるようにしたので、シーリング材の浸入を防止することができ、縦通気溝同士を上下に連通させて横目地部を構成することができるとともに、横通気溝同士を左右に連通させて縦目地部を構成することができ、目地部の通気性を確保することができる。
【0022】
さらに、この発明の請求項5記載の外断熱用複合パネルの目地構造によれば、前記請求項2記載の外断熱用複合パネルを用い、上下の目地部で、横装着溝にシート部材を装着するようにしたので、シーリング材の浸入を防止することができ、縦通気溝同士を上下に連通させて横目地部を構成して目地部の通気性を確保することができる。
【0023】
また、この発明の請求項6記載の外断熱用複合パネルの目地構造によれば、前記請求項3記載の外断熱用複合パネルを用い、左右の目地部では、縦装着溝にシート部材を装着するようにしたので、シーリング材の浸入を防止することができ、横通気溝同士を左右に連通させて縦目地部を構成して目地部の通気性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1〜図5は、この発明の外断熱用複合パネルおよびこれを用いた目地構造の一実施の形態にかかり、図1は外断熱用複合パネルの一部を切り欠いた正面図、側面図および底面図、図2は目地部での連結状態の概略斜視図、図3は縦目地部での連結状態の通常時およびパネルカット時の端面図、図4は横目地部での連結状態の通常時およびパネルカット時の端面図、図5は通気層の連通状態の説明図である。
【0025】
この外断熱用複合パネルは、コンクリート建築物のコンクリート表面に取り付けることで外断熱と、外装下地材の取り付けとを行う複合パネルとして用いられたり、コンクリート建築物のコンクリート型枠として用いられ、内型枠と組み立てコンクリートを打設した後そのまま残すことで、コンクリートの外壁面に外装下地材および断熱ボードを取り付けた状態とする複合パネルとして用いることもできるもので、外装下地材と断熱ボードとの間に通気層を形成するようにしたものである。
なお、以下の説明では、既設のコンクリート表面に目地部を介して上下・左右に並べて取り付けて使用する外断熱用複合パネルの場合を例に説明する。
【0026】
この外断熱用複合パネル10は、例えば図1に示すように、硬質発泡プラスチックの断熱ボード11と、この硬質発泡プラスチックの断熱ボード11の屋外側に設けられる外装下地材12とを備えて構成してある。そして、断熱ボード11の屋外側の表面に上下方向に沿う縦通気溝13が複数本形成されるとともに、上下端より内側の上下部にそれぞれ左右方向に沿う横通気溝14が一本ずつ形成してある。さらに、外装下地材12の上下・左右周囲端部は、横目地部15および縦目地部16を形成するため断熱ボード11より上下・左右がわずかに小さくしてあり、例えば横目地部15および縦目地部16として10mm程度の目地幅となるようにしてある。
【0027】
この外断熱用複合パネル10を構成する硬質発泡プラスチックの断熱ボード11は、断熱効果の高い熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂素材で形成された発泡プラスチックのボードで、例えばポリスチレンフォーム、ポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム、フェノールフォームなどが用いられる。
なかでも硬質発泡プラスチックの断熱ボード11としては、外断熱工法としてコンクリートの外面に取り付けられることから、コンクリートに含まれる湿度分を透過させることができる、透湿性に優れたものが好ましく、金型成形により縦通気溝13および横通気溝14の溝加工が容易な硬質ポリスチレンフォームのビーズ法によるものが好ましい。
【0028】
このビーズ法の硬質ポリスチレンフォームは、水は通さないが、水蒸気(湿度分)は通し、その透湿係数は、100〜300ng/m2sPa程度であり、コンクリートの透湿係数が15〜30ng/m2sPaであるのに比べ、透湿性に優れる。
【0029】
この硬質発泡プラスチックの断熱ボード11としては、密度が20kg/m3以上のものが熱伝導率の点で好ましく、より好ましくは密度が27kg/m3以上のものであり、厚さは25〜100mmとし、好ましくは次世代省エネの点から厚さは40〜60mm必要である。
【0030】
このような硬質発泡プラスチックの断熱ボード11には、屋外側となる表面に建て込んだ状態で上下方向に沿う縦通気溝13が複数本形成されるとともに、上下端の内側に左右方向に沿う横通気溝14がそれぞれ一本ずつ形成してあり、これら縦通気溝13および横通気溝14によって外装下地材12との接着面積が変化し、これによって接着強度が変化することになる。
【0031】
この接着強度は、例えば断熱ボード11としてビーズ法発泡スチレンボードを用い、外装下地材12として繊維混合無機板を用いる場合、断熱ボード11の密度により多少異なるが、平均3.0kg/cm2の接着強度を確保することができる。一方、この外断熱用複合パネル10には、風圧力、地震時の垂直応力あるいは水平応力、外装材の重量などが加わることから、安全率を考慮して少なくとも1000kg/m2の荷重強度が必要となる。なお、外型枠と兼用する場合には、さらに、コンクリート打設時の側圧は、6ton/m2程度加わることになる。
【0032】
そこで、断熱ボード11としてのビーズ法発泡スチレンボードと、外装下地材12としての繊維混合無機板とを接着した型枠兼用外断熱パネル10では、接着した構造体としての曲げ弾性が重要であるから、たわみを1.0mm以下にするには、縦通気溝13および横通気溝14以外の有効接着面積を、約33%以下にすることはできないことになる。
【0033】
そこで、この外断熱用複合パネル10では、その大きさを、例えば縦900mm、横900mm、厚さ35mmとし、縦通気溝13の1本の溝幅を20mm、深さを10mm、として9本形成するとともに、横通気溝14の1本の溝幅を20mm、深さを10mm、として2本形成することで、有効接着面積を約75%確保するようにしている。
なお、縦・横通気溝13,14の大きさについては、溝幅は、10〜100mm、深さは、5〜25mmであれば良い。また、横通気溝14については、上下端の内側に左右方向に沿って形成しているが、2本とする場合に限らず、有効接着面積が33%以下とならなければ、さらに本数を増加しても良い。
【0034】
次に、この外断熱用複合パネル10の外装下地材12は、硬質発泡プラスチックの断熱ボード11の屋外側に設けられることから、内側の断熱ボード11に対して外側に取り付けられる外装下地材12や外装材の透湿係数が外側ほど大きくなる素材とすることが好ましい。
外装下地材として使用可能な市販の多くのパネルは、透湿係数がビーズ法のポリスチレンフォームより小さいことから、少なくとも透湿係数が100ng/m2sPa以上(500ng/m2sPa以下)のものを選択するのが良く、好ましくは200ng/m2sPa以上のものが好ましい。
一方、外装材との関系から、例えば外装用の塗装材の透湿係数としては500ng/m2sPa程度のものが多く、外装下地材の透湿係数は、500ng/m2sPa以下、好ましくは400ng/m2sPa以下のものが好ましい。
したがって、この外断熱用複合パネル10と組み合わせて使用する外装下地材12は、その透湿係数が、200〜400ng/m2sPa程度のものが好ましく、例えば外装下地材12として軽量モルタル板(透湿係数:243ng/m2sPa)を、外装材として塗装材(透湿係数:500ng/m2sPa)を使用すれば良く、外装下地材12としては、厚みが10〜16mm、比重が0.9〜1.1の無機板、例えば軽量モルタル板や繊維混合セメント板を使用すれば良い。
【0035】
さらに、この外装下地材12には、その上下・左右周端部に、横目地部15および縦目地部16を形成するため、断熱ボード11より小さくしてあり、例えば5mm以上小さくすることで、連結した状態で10mm以上の目地幅を確保するようにしてあり、ここでは、目地幅を10mmとし、それぞれの端部で5mm小さくしてある。
【0036】
この外断熱用複合パネル10では、横目地部15および縦目地部16を介して連結する場合に、縦通気溝13および横通気溝14をシーリング材17で塞がないようにする必要があり、図1および図2に示すように、横目地部15で上下に連結される縦通気溝13の端部表面、すなわち断熱ボード11の屋外側表面の上下端に、シート部材18を装着する横装着溝19が形成され、9本の縦通気溝13を連通し、左右端に開口しない状態で形成してある。したがって、上下に連結される外断熱用複合パネル10、10同士の横装着溝19、19によって一つの連通した溝が形成されることになる。同様に、縦目地部16で左右に連結される横通気溝14の端部表面、すなわち断熱ボード11の屋外側表面の左右端に、縦装着溝20が形成され、上下2本の横通気溝14のそれぞれに独立して形成してある。したがって、左右に連結される外断熱用複合パネル10、10同士の縦装着溝20、20によって上下それぞれに1つの連通した溝が形成されることになる。
【0037】
これら横装着溝19および縦装着溝20に装着されるシート部材18は、縦通気溝13あるいは横通気溝14へのシーリング材17が浸入して塞ぐことによる通気性の阻害を防止するだけでなく、シーリング材17が横目地部15あるいは縦目地部16の両側面に接着されても底面には接着しないようにすることで、外断熱用複合パネル10、10の外装下地材12の熱膨張や熱収縮などによるシーリング材17の亀裂や破損を防止するものである。
【0038】
このシート部材18としては、シーリング材17が接着せず、しかもシーリング材17の充填ガンによる充填圧力で撓むことがないものであれば良く、通常の外壁パネル等の目地部のシーリングに用いられている厚さが0.05mm程度のテープ状のフィルム(通称、ボンドブレーカー)では、剛性が不足して通気溝13、14内に膨らむことで使用することはできず、例えばポリプロピレン(PP)製のシートが使用でき、通気溝13、14の溝幅やシーリング材17の充填圧力によっても異なるが、その厚さは0.5mm以上必要であり、厚さが1.0mm以上のシートが好ましい。
【0039】
また、シート部材18のシート幅は、連結される2つの横装着溝19、19の全幅や連結される2つの縦装着溝20、20の全幅より小さければ、装着可能であるが、好ましくは外断熱用複合パネル10の大きさを調整するためパネルをカットする場合があり、この場合には、一方の装着溝だけにシート部材18を装着することなるため、図3(b)および図4(b)に示すように、目地幅を確保するためカットしたカットパネル10´に当てる目地材21の表面を覆うことができるシート幅としておくことで、いずれの場合にも同一仕様のシート部材18を用いることが可能となる。
【0040】
次に、このように構成した外断熱用複合パネル10を用いて構築する目地構造について、図2〜図4により説明する。
外断熱用複合パネル10を上下に連結する場合には、2つの外断熱用複合パネル10、10を横目地部15を介して連結することになり、上下の縦通気溝13、13の通気性の確保の必要がある。そこで、図2および図3に示すように、下側の外断熱用複合パネル10をコンクリートビス22などで取り付けたのち、上端の横装着溝19にシート部材18を装着する。そして、上側の外断熱用複合パネル10を落とし込むようにして下端の横装着溝19に上方に突き出しているシート部材18を挿入するようにしたのち、上側の外断熱用複合パネル10をコンクリートビス22などで取り付ける。
そして、横目地部15にシーリング材17を充填し、目地底部ではシート部材18によって非接着状態として横目地部15の施工が完了する。
【0041】
また、寸法調整のため、例えば上側の外断熱用複合パネルをカットしたカットパネル10´を用いる場合には、図3(b)に示すように、外断熱用複合パネルの下部を所定寸法に断熱ボード11および外装下地材12の切断面が平坦面となるように切断したのち、カットパネル10´の切断面の断熱ボード11に目地幅を一定にするため、例えば発泡ポリスチレン製の目地材21を接着しておく。
そして、下側の外断熱用複合パネル10をコンクリートビス22などで取り付けたのち、横装着溝19にシート部材18を装着し、上側のカットしたカットパネル10´を当てるように建て込んで、コンクリートビス22などで固定する。
すると、シート部材18で目地材21の表面を含む横目地部15の目地幅全体が覆われた状態となり、しかも上側のカットパネル10´とシール部材18が干渉することなく取り付けられた状態となり、通常の場合と同様にしてシーリング材17を充填することで横目地部15の施工を行うことができる。
【0042】
このような外断熱用複合パネル10同士やカットパネル10´との上下方向の取り付けを繰り返すことで、外装下地材12の施工と外断熱施工が完了する。
【0043】
一方、外断熱用複合パネル10を左右に連結する場合には、2つの外断熱用複合パネル10、10を縦目地部16を介して連結することになり、左右の横通気溝14、14の通気性の確保の必要がある。そこで、図2および図4に示すように、左側の外断熱用複合パネル10をコンクリートビス22などで取り付けたのち、右端の縦装着溝20にシート部材18を装着する。そして、右側の外断熱用複合パネル10を押し当て連結するようにして左端の縦装着溝20に右方に突き出しているシート部材18を挿入するようにしたのち、右側の外断熱用複合パネル10をコンクリートビス22などで取り付ける。
そして、縦目地部16にシーリング材17を充填し、目地底部ではシート部材18によって非接着状態として縦目地部16の施工が完了する。
【0044】
また、寸法調整のため、例えば右側の外断熱用複合パネルをカットしたカットパネル10´を用いる場合には、図4(b)に示すように、外断熱用複合パネルの左部を所定寸法に断熱ボード11および外装下地材12の切断面が平坦面となるように切断したのち、切断面の断熱ボード11に目地幅を一定にするため、例えば発泡ポリスチレン製の目地材21を接着してカットパネル10´としておく。
そして、左側の外断熱用複合パネル10をコンクリートビス22などで取り付けたのち、縦装着溝20にシート部材18を装着し、右側のカットしたカットパネル10´を当てるように建て込んで、コンクリートビス22などで固定する。
すると、シート部材18で目地材21の表面を含む縦目地部16の目地幅全体が覆われた状態となり、しかも右側のカットパネル10´とシール部材18が干渉することなく取り付けられた状態となり、通常の場合と同様にしてシーリング材17を充填することで縦目地部16の施工を行うことができる。
【0045】
このような外断熱用複合パネル10同士、あるいはカットパネル10´との左右方向の取り付けを繰り返すことで、外装下地材12の施工と外断熱施工が完了する。
【0046】
このような外断熱用複合パネル10によれば、断熱ボード11と外装下地材12とを接着することで、支持強度を確保することができるとともに、縦通気溝13および横通気溝14によって簡単に通気層を形成することができる。
【0047】
また、この外断熱用複合パネル10を用いることで、図5に示すように、コンクリート壁面に窓などの開口部23や庇などの突起物24があっても外断熱用複合パネル10の少なくとも上下いずれかに設けた横通気溝14によって通気溝13、14を連通させることができ、通気性を確保することができる。さらに、寸法を調整するため外断熱用複合パネル10の一部をカットしたカットパネル10´を使用する場合でも通気溝13、14を連通させて通気性を確保することができる。
【0048】
このような通気層を設けることで、外装下地材12やこの外装下地材12に取り付ける外装材の凍結・融解による影響を緩和することができるとともに、日射による熱膨張・収縮の影響を緩和することができ、外断熱用複合パネル10の耐久性を向上することが可能となる。
【0049】
また、この外断熱用複合パネルの目地構造によれば、横目地部15や縦目地部16で連結しても縦通気溝13や横通気溝14の連続性を確保することができルとともに、シーリング材17をシート部材18によって目地底部で非接着状態にすることができ、外断熱用複合パネル10の外装下地材12の熱膨張や熱収縮などによるシーリング材17の亀裂や破損を防止することができ、目地部のシール性よび耐久性を向上することができる。
【0050】
なお、上記実施の形態では、外断熱用複合パネルの断熱ボードの屋外側表面に、シート部材を装着する横装着溝や縦装着溝を形成してシート部材を取り付けるようにしたが、いずれか一方の装着溝を省略したり、両方の装着溝を省略して直接シート部材を接着するなどで取り付けてシーリング材の目地底部への接着を防止するとともに、通気溝が塞がることを防止するようにしても良い。
【0051】
また、上記実施の形態では、外断熱用複合パネルを既設のコンクリート壁面に取り付ける場合を例に説明したが、コンクリード打設用の型枠と兼用して用いる型枠兼用パネルとして使用することもでき、この場合には、1回の打設高さ分の上下方向に長い外断熱用複合パネルとして用いることで、横目地部を減少させて施工を容易とすることができる。さらに、外断熱用複合パネルの連結される目地部に段差部を形成して噛み合わせるようにして連結するようにすれば、打設されるコンクリートののろなどの漏洩を防止して簡単に施工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】この発明の外断熱用複合パネルおよびこれを用いた目地構造の一実施の形態にかかる外断熱用複合パネルの一部を切り欠いた正面図、側面図および底面図である。
【図2】この発明の外断熱用複合パネルおよびこれを用いた目地構造の一実施の形態にかかる目地部での連結状態の概略斜視図である。
【図3】この発明の外断熱用複合パネルおよびこれを用いた目地構造の一実施の形態にかかる縦目地部での連結状態の通常時およびパネルカット時の端面図である。
【図4】この発明の外断熱用複合パネルおよびこれを用いた目地構造の一実施の形態にかかる横目地部での連結状態の通常時およびパネルカット時の端面図である。
【図5】この発明の外断熱用複合パネルおよびこれを用いた目地構造の一実施の形態にかかる通気層の連通状態の説明図である。
【符号の説明】
【0053】
10 外断熱用複合パネル
11 硬質発泡プラスチックの断熱ボード
12 外装下地材
13 縦通気溝
14 横通気溝
15 横目地部
16 縦目地部
17 シーリング材
18 シート部材
19 横装着溝
20 縦装着溝
21 目地材
22 コンクリートビス
23 開口部
24 突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質発泡プラスチックの断熱ボードと、この断熱ボードの屋外側表面に設けられた外装下地材とからなる外断熱用複合パネルであって、
前記断熱ボードの屋外側表面に上下方向に沿う縦通気溝を複数本形成するとともに、この断熱ボードの屋外側表面の上下端部より内側に左右方向に沿う横通気溝を少なくとも一本ずつ形成したことを特徴とする外断熱用複合パネル。
【請求項2】
前記断熱ボードの屋外側表面の縦通気溝の少なくとも上端に、横目地部をシールするシーリング材の当該縦通気溝への浸入を防止するシート部材を装着する横装着溝を形成してなることを特徴とする請求項1記載の外断熱用複合パネル。
【請求項3】
前記断熱ボードの屋外側表面の横通気溝の少なくとも一端に、縦目地部をシールするシーリング材の当該横通気溝への浸入を防止するシート部材を装着する縦装着溝を形成してなることを特徴とする請求項1または2記載の外断熱用複合パネル。
【請求項4】
前記請求項1記載の外断熱用複合パネルを横目地部を介して上下に、および/または縦目地部を介して左右に配置し、当該横目地部の上下の縦通気溝の表面に、および/または当該縦目地部の左右の横通気溝の表面に、シーリング材の浸入を防止するシート部材を取り付け、このシート部材を介してシーリング材を充填して縦通気溝同士を上下に連通させて横目地部を構成し、および/またはこのシート部材を介してシーリング材を充填して横通気溝同士を左右に連通させて縦目地部を構成したことを特徴とする外断熱用複合パネルの目地構造。
【請求項5】
前記請求項2記載の外断熱用複合パネルを用い、前記上下には、当該外断熱用複合パネルを横目地部を介して上下に配置し、当該横目地部の上下の縦通気溝の表面に形成した前記横装着溝に、シーリング材の浸入を防止するシート部材を装着し、このシート部材を介してシーリング材を充填して縦通気溝同士を上下に連通させて横目地部を構成したことを特徴とする請求項4記載の外断熱用複合パネルの目地構造。
【請求項6】
前記請求項3記載の外断熱用複合パネルを用い、前記左右には、縦目地部を介して当該外断熱用複合パネルを左右に配置し、当該縦目地部の左右の横通気溝の表面に形成した前記縦装着溝にシーリング材の浸入を防止するシート部材を装着し、このシート部材を介してシーリング材を充填して横通気溝同士を左右に連通させて縦目地部を構成したことを特徴とする請求項4または5記載の外断熱用複合パネルの目地構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−41266(P2009−41266A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−207748(P2007−207748)
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(000000077)アキレス株式会社 (402)
【Fターム(参考)】