外来混入ウイルスの同定に使用するための組成物
本発明は、ウイルス核酸のセグメントの増幅とそれに続く分子量分析によるウイルスの迅速な同定のためのオリゴヌクレオチドプライマー、それを含む組成物およびキットを提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、一般に外来混入ウイルスの遺伝的同定および定量の分野に関し、分子量分析または塩基組成分析と組み合わせたときに、この目的に有用な方法、組成物、およびキットを提供する。
【0002】
関連出願
本出願は、2005年11月28日出願の米国特許仮出願第60/740,617号の優先権の利益を主張する。生物学的因子(bioagent)の同定のための方法は、米国特許出願第10/156,608号、第09/891,793号、第10/418,514号、第10/660,997号、第10/660,122号、第10,660,996号、第10/660,998号、第10/728,486号、第10/405,756号、第11/060,135号、第11/073,362号、および第60/545,425号に開示および請求され、これら出願の全ては共同所有され、全体としてすべての趣旨で参照により本明細書に組み入れられる。
【0003】
政府の支援の記載
本発明は、NIH契約番号N01 AI40100の米国政府支援を受けてなされたものである。米国政府は、本発明に一定の権利を有し得る。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
外来ウイルス性因子は、培養細胞、細胞系の細胞基質由来生物学的物質(ヒトに使用するためのワクチンおよび抗体を含む)の使用に関連する重大なリスクとなる。したがって、細胞および生物学的物質中、ならびにヒト試料中のこれらのウイルスを検出する方法が必要である。ウイルス混入の可能性は、初代培養、樹立培養、ならびにマスター細胞バンク、最終産物細胞、および原体採集液に存在する。形質転換のメカニズムが未知である腫瘍性不死化細胞の使用への重大な障害は、これらの細胞が発癌ウイルスを含有する高いリスクを有するおそれがあることである。したがって、ワクチンの安全性を確認するためには、潜在的に外来性の因子の存在についての大規模な試験が必要である。この目的に使用される方法の中には、動物への接種、電子顕微鏡法、およびウイルス性因子についての選別を行うインビトロ分子アッセイおよび抗体アッセイがある。
【0005】
安全性を評価するために考慮すべき重大な事柄は、トリ、マウス、非ヒト霊長類、およびヒト細胞系を使用する間の内因性レトロウイルス配列の検出である。内因性レトロウイルス配列は、真核生物ゲノムの構成部分であり、これらの配列の大部分は不完全であるが、少数が長期培養に応じて自然発生的に、または正常な生産システムの一部であり得る様々な化学薬剤もしくはその他の薬剤を用いた処理後に誘導的にのいずれかで、感染性ウイルスを生成するおそれがある。生物製剤の生産のために使用される細胞基質中で内因性感染性レトロウイルスが活性化される潜在性は、特に高いワクチン力価を保つために精製および不活性化段階が最小化されているウイルス生ワクチンの場合に重大な安全上の懸念である。
【0006】
現在確立されている、逆転写酵素(RT)活性を測定する方法には、1〜10ビリオンを検出することができる高感度の産物増強逆転写酵素アッセイ(PERT)および感染性レトロウイルス粒子を同定するために使用される透過電子顕微鏡法(TEM)が含まれる。しかし、これらの技法は特異的ではなく、RT活性の起源に関して全く情報を提供しない。PCRに基づくレトロウイルスの検出は、検出感度を上げるため、または被験試料に存在する特定の外来因子を同定するために、逆転写酵素、電子顕微鏡法、感染性、または同時培養などの他のアッセイと共に使用することができる。低レベルのRT活性は一般に複製因子と関連しないことを、一部の研究が実証しているが、宿主ゲノム組み込みの可能性を有する、ワクチンにおけるそのような非生産性、非複製性不完全感染の影響に関して重大な懸念が残る。
【0007】
レトロウイルスにより誘導される腫瘍形成は、複製適格配列と複製欠損配列との間の組換えおよび/またはレトロウイルス配列の上流もしくは下流の挿入が原因の末端反復配列(LTR)による細胞性癌遺伝子の活性化により、新規な病原ウイルスの生成を伴うことがある。RT含有粒子によるヒト細胞での外来性レトロウイルス配列の組み込みの可能性と取り組むために、多数のPCR戦略が使用されてきた。これらには、高度に保存されたpol領域由来のプライマーを使用したDNアーゼ処理接種物の直接PCR、および組み込み体のウイルス-細胞DNA接合部を特異的に増幅するAluプライマーと共にLTRプライマーを使用したAlu PCRが含まれる。
【0008】
外来因子を検出する将来的な戦術は、三つの基本的な問題と理想的に取り組むであろう。第一に、潜在的混入物である多数の公知のウイルス性因子があり、それは、それぞれ多数の潜在的株変異体を有する。第二に、歴史から、全ての外来因子が予測されるウイルス科に入るわけではないことが示されたため、予測されないウイルス科もまた考慮しなければならない。第三に、標準化された、ハイスループットな、品質管理されたやり方で多数の試料にて行うために、試験は実際的でなければならない。本明細書に開示される化合物、組成物、および方法は、これまでに未知/性質未決定のウイルスおよび内因性レトロウイルスを含む広範囲の外来ウイルス性因子を検出するために広範囲の生物学的因子を迅速、高感度、費用効果的に検出するための、広範囲なPCR反応物の質量分析を包含する、最近開発および確認された方法の使用に基づく。
【0009】
パルボウイルス科には、約4〜5キロ塩基長の小型一本鎖DNAウイルスを有するパルボウイルス亜科が含まれ、複数の属が含まれる。例えば、ディペンドウイルス属にはヒトヘルパー依存性アデノ随伴ウイルス(AAV)血清型1から8 (AAV1〜8)および自律的なトリパルボウイルスが含まれ、エリスロウイルス属には、ウシ、シマリス、および自律的な霊長類パルボウイルス(ヒトウイルスB19およびV9を含む)が含まれ、パルボウイルス属には、マウス微小ウイルス(MMV)を含む、他の動物ならびに齧歯類(シマリス以外の)、肉食動物、およびブタのパルボウイルスが含まれる。これらのパルボウイルス科のメンバー、すなわちパルボウイルスは、いくつかの細胞型に感染することができ、臨床試料中に記載されている。特にAAVは、他のウイルスの複製、伝播、および増殖の減少に関連づけられている。
【0010】
外因性レトロウイルスは、広範囲の種にわたる動物に様々な悪性疾患および非悪性疾患を引き起こすことが知られている。これらのウイルスは大部分の公知の動物および齧歯類に感染する。例には、デルタレトロイドウイルス(Deltaretroidvirus)(HTLV1〜4、STLV1〜3)、ガンマレトロウイルス(マウス白血病ウイルス、PERV)、アルファレトロウイルス(トリ白血病ウイルスおよびトリ内在性ウイルス)、およびヒト免疫不全ウイルス1および2が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0011】
ポリオーマウイルスは小型dsDNAウイルスであり、ヒト、霊長類、齧歯類、ウサギ、および鳥類を含むいくつかの種に感染することができる。それらの腫瘍原性および癌原性の潜在能力が原因で、ワクチン生産に使用されている細胞基質中のこれらのウイルスについて試験することが重要である。
【0012】
パピローマウイルス科のウイルスは、様々な宿主特異性および配列相同性を示す150を超える既知種を有する。これらは、哺乳類(ヒト、サル、ウシ、イヌ、ヒツジ)および鳥類で同定されている。ヒトパピローマウイルス(HPV)の大部分は、伝統的に性器HPVおよび粘膜HPVと呼ばれる全ての型のHPVを含めて上位群Aに属する。上位群Aの中には11群があり、これらの中で医学的に最も重要なのはヒトパピローマウイルスHPV16、HPV18、HPV31、HPV45、HPV11、HPV6、およびHPV2である。これらのそれぞれは、医学文献で「ハイリスク」ウイルスと報告されている。
【0013】
潜在的外来混入物である他のウイルス科には、ヘルペスウイルス科(ヒトヘルペスウイルス1型から8型、ウシヘルペスウイルス、イヌヘルペスウイルス、およびサルサイトメガロウイルス)、ヘパドナウイルス科(B型肝炎ウイルス[HBV]を含む)、ヘペウイルス科(E型肝炎ウイルス)、デルタウイルス(δ型肝炎ウイルス)、アデノウイルス科(ヒトアデノウイルスA〜Fおよびマウスアデノウイルス)、フラビウイルス科(ウシウイルス性下痢ウイルス、TBE、黄熱ウイルス、デングウイルス1型〜4型、WNV、およびC型肝炎ウイルス)、トガウイルス科(西部ウマ脳脊髄炎ウイルス)、ピコルナウイルス科(ポリオ(1〜13型)、ヒトA型肝炎ウイルス、ヒトコクサッキーウイルス、ヒトカルジオウイルス、ヒトライノウイルス、およびウシライノウイルス)、レオウイルス科(マウスロタウイルス、レオウイルス3型、およびコロラドダニ熱ウイルス)、およびラブドウイルス科(水疱性口内炎ウイルス)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0014】
パラミクソウイルス科は、相互にはっきり異なる二つの亜科および七つの属を代表的なものとして含む。この科の主要なウイルス属のいくつかには、レスピロウイルス(主要種:ヒトおよびサルパラインフルエンザウイルス1型および3型(PIV1、PIV3)、ならびにセンダイウイルス)、ニューモウイルス、ルムラウイルス(Rumulavirus)、およびアブラウイルスが含まれる。ニューモウイルス亜科には、ニューモウイルス属およびメタニューモウイルス属の両方が含まれる。これらの群のいくつかの主要なメンバーには、ヒトおよびウシ呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、ヒトメタニューモウイルス(HMPV)、およびマウス肺炎ウイルスが含まれる。パラミクソウイルス科にはまた、サルパラインフルエンザウイルス5型も含まれる。
【0015】
とりわけ本明細書に提供されるのは、外来混入ウイルスを同定する方法である。オリゴヌクレオチドプライマー、プライマー対、そのオリゴヌクレオチドプライマーを含む組成物およびキットもまた提供され、これらのプライマーは、ウイルス性生物学的因子同定用アンプリコンを規定し、増幅に応じて対応する増幅産物を生成し、その増幅産物の分子量は、種または亜種レベルで外来混入ウイルスを同定する手段を提供する。
【発明の開示】
【0016】
発明の概要
とりわけ本明細書に提供するのは、外来混入ウイルスを検出、その存在もしくは非存在を判定、それを同定、またはそれを定量する方法である。保存された配列領域にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプライマーおよびプライマー対を含めた化合物もまた提供し、その各対は、ウイルス性生物学的因子同定用アンプリコンを規定している可変領域または介在可変領域に隣接する。本明細書に提供する化合物を含む組成物およびキット、ならびに外来混入ウイルスの存在または非存在の同定、定量、検出、および/または判定のために、そのようなプライマー、プライマー対、組成物、およびキットを使用するための方法もまた提供する。保存された配列領域および可変領域を増幅して、ウイルス遺伝子をコードしている核酸のウイルス性生物学的因子同定用アンプリコンすなわち増幅産物を生成するように、これらのプライマーを設計する。プライマー対を含む組成物およびそれを含むキットは、外来混入ウイルスの種および亜種の同定、検出、ならびに特徴付けを提供するように設計する。本明細書においてパルボウイルス科、ヘパドナウイルス科、およびパラミクソウイルス科、ならびにパルボウイルス亜科、ディペンドウイルス、パルボウイルス、エリスロウイルス、HBV、ニューモウイルス亜科、レスピロウイルス、アブラウイルス、およびルブラウイルスという亜科、属、および種、ならびにその亜種および株のメンバーを同定および検出するために、例えば、組成物、プライマー対、キット、および方法を提供する。
【0017】
いくつかの態様では、試料中の外来混入ウイルスの存在または非存在を同定、検出、または判定する方法を提供する。いくつかの態様では、ウイルス由来の核酸は、本明細書に開示する化合物を使用して増幅され、増幅産物が得られる。増幅産物の分子量を判定する。判定された分子量は、外来混入ウイルス同定用アンプリコンの複数のインデックス付き分子量を含むデータベースと比較され、ここで、判定された分子量とデータベース中の分子量との間の一致は、外来混入ウイルスの存在を同定または表示する。いくつかの態様では、分子量を質量分析により測定する。いくつかの態様では、質量分析はフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析(FT-IRC-MS)である。いくつかの態様では、質量分析は飛行時間型質量分析である(TOF-MS)。いくつかの態様では、少なくとも一つのプライマー対を使用する。いくつかの態様では、少なくとも二つのプライマー対を使用する。いくつかの態様では、少なくとも四つのプライマー対を使用する。いくつかの態様では、増幅する段階を多重PCRにより実施する。
【0018】
いくつかの態様では、増幅産物の塩基組成を、判定された分子量から算出する。算出された塩基組成は、外来混入ウイルス同定用アンプリコンの複数のインデックス付き塩基組成を含むデータベースと比較され、ここで、算出された塩基組成とデータベース中の塩基組成との一致は、外来混入ウイルスの存在を同定または表示する。
【0019】
いくつかの態様では、外来混入ウイルスはパルボウイルス科のメンバー、すなわちパルボウイルス科ウイルスである。いくつかの局面では、パルボウイルス科のメンバーはディペンドウイルス属のメンバーである。いくつかの局面では、それはエリスロウイルス属のメンバーである。いくつかの態様では、それはパルボウイルス属のメンバーである。いくつかの態様では、パルボウイルス科ウイルスを同定する方法に使用される保存された配列領域は、NS1タンパク質をコードしている遺伝子の部分を含む。いくつかの態様では、パルボウイルス科ウイルスを同定する方法に使用される保存された配列領域は、VP1タンパク質をコードしている遺伝子の部分を含む。したがって場合によっては、プライマーはNS1タンパク質をコードしている核酸にハイブリダイズするが、場合によっては、それらのプライマーはVP1タンパク質をコードしている核酸にハイブリダイズする。
【0020】
いくつかの態様では、外来混入ウイルスは、パラミクソウイルス科のメンバー、すなわちパラミクソウイルス科ウイルスである。いくつかの局面では、パラミクソウイルス科のメンバーはレスピロウイルス属のメンバーである。いくつかの局面では、それはアブラウイルス属のメンバーである。いくつかの態様では、それはルブラウイルス属のメンバーである。いくつかの態様では、パラミクソウイルス科のメンバーはニューモウイルス亜科のメンバーである。いくつかの態様では、パラミクソウイルス科ウイルスを同定する方法に使用される保存された配列領域は、RbRpタンパク質をコードしている遺伝子の部分を含む。したがって場合によっては、それらのプライマーはRbRpタンパク質をコードしている核酸にハイブリダイズする。
【0021】
いくつかの態様では、外来混入ウイルスはヘパドナウイルス科のメンバー、すなわちヘパドナウイルス科ウイルスである。いくつかの局面では、ヘパドナウイルス科のメンバーはHBVウイルスである。いくつかの態様では、ヘパドナウイルス科ウイルスを同定する方法に使用される保存された配列領域は、配列番号:338のヌクレオチド180〜453の部分、配列番号:338のヌクレオチド1375〜1436の部分、または配列番号:338のヌクレオチド1777〜1876の部分を含む。したがっていくつかの態様では、ヘパドナウイルス科ウイルスを同定するために使用されるプライマー対は、配列番号:338のヌクレオチド180〜453の部分、配列番号:338のヌクレオチド1375〜1436の部分、または配列番号:338のヌクレオチド1777〜1876の部分にハイブリダイズする。この配列は、単に参照配列として提示する。本明細書に提供する化合物が、保存された配列領域にハイブリダイズすることから、それらの化合物は、標的配列と必ずしも100%相補的ではなく、多くの場合に複数の配列に結合することができ、例えば一つの態様ではゲノム内の全種に結合できる。
【0022】
いくつかの態様では、試料中の外来混入ウイルスの量の判定のための化合物、組成物、キット、および方法を提供する。試料を、本明細書に記載する組成物と、公知の量の較正ポリヌクレオチドもしくは較正配列を含む較正物質とを接触させる。試料中の外来混入ウイルス由来の核酸および較正ポリヌクレオチド由来の核酸は、本明細書上記に提供された化合物を用いて同時に増幅され、外来混入ウイルス同定用アンプリコンを含む第一増幅産物および較正アンプリコンを含む第二増幅産物の両方が得られる。外来混入ウイルス同定用アンプリコンおよび較正アンプリコンについての分子量および存在量を判定する。外来混入ウイルス同定用アンプリコンは、分子量に基づき較正アンプリコンと区別され、ここで外来混入ウイルス同定用アンプリコンの存在量および較正アンプリコンの存在量の比較は、試料中の外来混入ウイルスの量を表示する。いくつかの態様では、外来混入ウイルス同定用アンプリコンの塩基組成が判定される。
【0023】
いくつかの態様では、本明細書に提供する方法に使用するための、本明細書に提供する化合物を使用するキットを提供する。いくつかの局面では、キットは、少なくとも一つの較正ポリヌクレオチドを含む。いくつかの局面では、キットは、磁気ビーズに結合した少なくとも一つのイオン交換樹脂を含む。いくつかの局面では、それらのキットは多重反応に使用することができ、本明細書に提供するプライマー対は、多重PCR反応に使用されるように設計される。
【0024】
いくつかの態様では、提供する化合物および組成物は、少なくとも一つの修飾された核酸塩基を含む。いくつかの局面では、修飾された核酸塩基は、質量修飾された核酸塩基またはユニバーサル核酸塩基を含む。いくつかの局面では、それは5-ヨード-Cである。いくつかの局面では、それは5-プロピニルウラシルまたは5-プロピニルシトシンである。いくつかの局面では、それはイノシンである。いくつかの態様では、プライマーは5'末端に鋳型をもたない(non-templated)T残基を含む。いくつかの態様では、それらは少なくとも一つの非鋳型タグを含む。いくつかの態様では、それらは少なくとも一つの分子量修飾タグを含む。
【0025】
いくつかの態様では、化合物、組成物、またはキットは、本明細書に開示するプライマー対と、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を有するプライマー対を含む。
【0026】
態様の詳細な説明
本発明に関連して、「生物学的因子」は、生存もしくは死滅している任意の生物、細胞、もしくはウイルス、またはそのような生物、細胞、もしくはウイルス由来の核酸である。生物学的因子の例には、ヒト臨床試料、細胞培養物、細菌細胞および他の病原体を非限定的に含む細胞、ウイルス、ウイロイド、真菌、原生生物、寄生虫、ならびに病原性マーカー(病原性アイランド、抗生物質耐性遺伝子、病原性因子、毒素遺伝子、および他の生物学的調節化合物を非限定的に含む)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。試料は、生存もしくは死滅していてもよく、栄養生長状態(例えば栄養型細菌または胞子)であってもよく、封入または生物学的に操作されていてもよい。本発明に関連して、「病原体」は、疾患または障害を引き起こす生物学的因子である。
【0027】
本明細書で使用する場合、「インテリジェントプライマー(intelligent primer)」、「プライマー」、または「オリゴヌクレオチドプライマー」は、介在可変領域に隣接する、生物学的因子の核酸の高度に保存された配列領域に結合するように設計されたオリゴヌクレオチドである。「オリゴヌクレオチドプライマー対」または「プライマー対」という用語は、増幅に応じて増幅産物すなわち生物学的因子同定用アンプリコンを生じる二つのプライマー(フォワードプライマーおよびリバースプライマー)を表す。
【0028】
いくつかの態様では、生物学的因子同定用アンプリコンすなわち増幅産物は、約45から約200核酸塩基(すなわち約45から約200個の連結したヌクレオシド)を含む。当業者は、本発明が、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、および200核酸塩基長、またはその中の任意の範囲の化合物を具体化することを認識しているであろう。
【0029】
増幅産物すなわちアンプリコンは、個別の生物学的因子を識別するのに十分な塩基組成可変性を理想的には提供し、これは分子量分析に受け入れられる。塩基組成および分子量の可変性は、塩基組成および/または分子量の識別に基づき一つまたは複数の個別の生物学的因子の同定を可能にする。本明細書に提供するプライマー対は、ある命名法により名付けられる。各プライマー対は「プライマー対番号」および「プライマー対名」が与えられる。プライマー対の中の各プライマー(フォワードおよびリバース)もまた「プライマー名」が与えられる。プライマー対の中の各プライマーは、配列番号もまた割り付けられ、本明細書におけるいくつかの場合では、配列番号の対を使用してプライマー対を同定する。例えば、「配列番号70:275により表されるプライマー対」または単に「配列番号70:239」は、フォワードプライマーが配列番号:70を含み、リバースプライマーが配列番号:239を含むプライマー対を表す。
【0030】
本明細書に開示する「プライマー名」および「プライマー対名」は、標準命名法により与えられ、各プライマー対についての参照配列の呼称を含む。例えば、プライマー対番号377についてのフォワードプライマー番号は、RLV_X03614_2256_2279_Fである。「F」は、このプライマーがその対のフォワードプライマーであることを示す。X03614は、プライマーがハイブリダイズまたは標的化される配列の例である参照配列を表す。この場合、参照配列はGenBankアクセッション番号X03614である。参照配列識別子の後の数字は、そのプライマーがハイブリダイズする参照配列中の残基(2256〜2279)を同定する。「RLV」はプライマー対識別子であり、このプライマーがレスピロウイルスにハイブリダイズすることを示す。本明細書に提供するプライマーは保存された配列領域にハイブリダイズし、したがって複数の生物学的因子に、多くの場合一つまたは複数の種または株にハイブリダイズすることから、プライマー対識別子および参照配列識別子は単に参照目的であって、そのプライマーがその参照配列にのみハイブリダイズすることを示すことを意図しない。表2に本明細書で使用するプライマー対ウイルス識別子の名および説明を列挙する。
【0031】
「高度に保存された」という用語により、その配列領域が全ての中で約80〜100%、約90〜100%、もしくは約95〜100%の同一性、または属、種、もしくは株の少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも99%を示すことを意味する。さらに、本明細書に提供するプライマー対のプライマーメンバーの配列は、参照配列の保存された配列領域に必ずしも完全には相補的でない。むしろこれらの保存された配列領域を含む複数の生物学的因子の間で「最良適合」するように、プライマーを設計する。したがって、プライマー対のメンバーは、参照配列を含めた、生物学的因子配列の保存された領域と実質的な相補性を有する。
【0032】
本明細書で使用する場合、「実質的な相補性」という用語は、標的配列または参照配列に対する約70%から約100%、約80%から約100%、約90%から約100%、約95%から約100%、または約99%から約100%の相補性を表す。これらの相補性の範囲は、列挙する範囲の数に包含される全体数または部分数の全てを含む。例えば限定ではなく、75.667%、82%、91.2435%、および97%は、全て上に列挙する約70%から約100%の範囲に入ることから、この記載の一部を形成している。したがって、本明細書に提供するプライマーは、本明細書に開示するプライマー配列と約70%から約100%、約80%から約100%、約90%から約100%、約95%から約100%、または約99%から約100%の配列同一性を含んでもよい。
【0033】
本明細書で使用する場合、「ハウスキーピング遺伝子」は、生物学的因子の生存および再生に必要な基本的機能に関与するタンパク質またはRNAをコードしている遺伝子を表す。ハウスキーピング遺伝子には、翻訳、複製、組換えおよび修復、転写、ヌクレオチド代謝、アミノ酸代謝、脂質代謝、エネルギー発生、取込み、分泌等に関与するRNAまたはタンパク質をコードしている遺伝子が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0034】
本明細書で使用する場合、「広範囲調査(broad range survey)プライマー」は、特定の階級(例えば目、科、綱、クレード、属、または生物学的因子の種レベルよりも上の生物学的因子の他のそのような分類)のメンバーとして未知の生物学的因子を同定するために設計されたインテリジェントプライマーである。場合によっては、広範囲調査プライマーは、種レベルまたは亜種レベルで未知の生物学的因子を同定することができる。本明細書で使用する場合、「階級全域(division-wide)プライマー」は、生物学的因子を種レベルで同定するために設計されたインテリジェントプライマーであり、「掘り下げ(drill-down)」プライマーは、生物学的因子を亜種レベルで同定するために設計されたインテリジェントプライマーである。本明細書で使用する場合、「亜種」レベルの同定には、株、亜型、変種、および単離物が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0035】
本明細書で使用する場合、「生物学的因子の階級」は、種レベルよりも上の生物学的因子の群と定義され、これには、門、科、綱、クレード、属、または種レベルよりも上の生物学的因子の他のそのような分類が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0036】
本明細書で使用する場合、「亜種特性」は、同じ生物学的因子種の二つのメンバーを識別する手段を提供する遺伝的特性である。例えば、一つのウイルス株は、RNA依存性RNAポリメラーゼなどの、ウイルス遺伝子の一つに遺伝子変化(例えばヌクレオチドの欠失、付加、または置換)を有することにより同一種の別のウイルス株と識別することができよう。
【0037】
本明細書で使用する場合、「生物学的因子同定用アンプリコン」という用語は、増幅反応において生物学的因子から増幅され、1) 各個別の生物学的因子を識別するのに十分な可変性を提供し、2) その分子量が塩基組成を算出しやすいポリヌクレオチドを表す。
【0038】
本明細書で使用する場合、「塩基組成」は、所与の核酸配列中の各核酸塩基(A、T、C、およびG)の正確な数である。塩基組成は、生物学的因子同定用アンプリコンの分子量から算出することができる。
【0039】
本明細書で使用する場合、「塩基組成確率雲(probability cloud)」は、所与の種の異なる単離物の間で起きる配列変動に起因する塩基組成の多様性を表示したものである。「塩基組成確率雲」は、それぞれの種についての塩基組成の制約を表し、典型的には疑似四次元プロットを使用して視覚化される。
【0040】
本明細書で使用する場合、「データベース」という用語は、分子量および/または塩基組成のデータのコレクションを表すために使用する。データベース中の塩基組成および分子量のデータは、生物学的因子およびプライマー対に対してインデックスを付与される。データベースに報告される塩基組成データは、各プライマーを使用して各生物学的因子について生成されるアンプリコン中の各ヌクレオシドの数を含む。データベースに経験的なデータを投入することができる。データベースに投入するこの局面では、生物学的因子が選択され、アンプリコンを生成するためにプライマー対を使用する。アンプリコンの分子量を、質量分析装置およびそれから算出された塩基組成を使用して判定する。データベースへの登録は、使用する生物学的因子およびプライマー対と塩基組成を関連づけるために行われる。データベースに、生物学的因子の情報を含む他のデータベースを使用して投入してもよい。例えば、GenBankデータベースを使用して、プライマー対の電子表示を使用して電子PCR(electronic PCR)を行うことができる。このインシリコ法は、GenBankデータベースに保存されている任意または全ての選択された生物学的因子についての塩基組成を提供するものである。次に、この情報を使用して、上記のように塩基組成データベースに投入する。塩基組成データベースは、一般にインシリコ、書かれた表、参考書物、スプレッドシート、またはデータベースにしやすい任意の形式であってよい。好ましくは、それはインシリコである。
【0041】
本明細書で使用する場合、「ゆらぎ塩基」は、DNAトリプレットの3番目のヌクレオチド位置にみられるコドンにおける変動である。配列の保存された領域における変動は、アミノ酸コードの冗長性が原因で3番目のヌクレオチド位置にみられることが多い。
【0042】
本発明に関連して、「未知の生物学的因子」という用語は、(i) 存在が公知である(例えば周知の細菌種黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)など)が、分析される試料中に存在することは分かっていない生物学的因子、または (ii) 存在が未知の生物学的因子(例えば2003年4月以前にはSARSコロナウイルスは未知であった)のいずれかを意味し得る。例えば、共同所有される米国特許出願第10/829,826号(その全体が参照により本明細書に組み入れられる)に開示されたコロナウイルスの同定の方法を、2003年4月以前に採用し、臨床試料中のSARSコロナウイルスを同定した場合、2003年4月以前にSARSコロナウイルスは科学界に未知であり、どの生物学的因子(この場合はコロナウイルス)が試料中に存在するかも未知であったことから、両方の意味の「未知の」生物学的因子が適用可能である。他方で、米国特許出願第10/829,826号の方法を、2003年4月以降に採用し、臨床試料中のSARSコロナウイルスを同定した場合、SARSコロナウイルスが2003年4月以降に科学界に公知になり、試料中にどの生物学的因子が存在するかは未知であったことから、最初の意味(i)の「未知の」生物学的因子だけが適用されたであろう。
【0043】
本明細書で使用する場合、「三角同定(triangulation identification)」は、生物学的因子の同定のための複数の生物学的因子同定用アンプリコンの採用を意味する。
【0044】
本発明に関連して、「ウイルス核酸」は、DNA、RNA、または例えば逆転写反応を行うことなどによってウイルスRNAから得られたDNAが含まれるが、それらに限定されるわけではない。ウイルスRNAは、一本鎖(陽極性または陰極性の)または二本鎖のいずれかであってよい。
【0045】
本明細書で使用する場合、「病因」という用語は、疾患または異常な生理状態の原因または起源を表す。
【0046】
本明細書で使用する場合、「核酸塩基」という用語は、「ヌクレオチド」、「デオキシヌクレオチド」、「ヌクレオチド残基」、「デオキシヌクレオチド残基」、「ヌクレオチド三リン酸(NTP)」、またはデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)を含む、当技術分野で使用される他の用語と同義である。
【0047】
本発明は、生物学的因子同定用アンプリコンを使用した偏らない方式で生物学的因子を検出および同定する方法を提供する。生物学的因子に由来する核酸の保存された配列領域にハイブリダイズするようにプライマーが選択され、プライマーが可変配列領域をはさむことで生物学的因子同定用アンプリコンが得られ、そのアンプリコンを増幅することができ、そのアンプリコンは分子量判定しやすい。次に分子量は、生物学的因子の可能性のある独自性(identity)を事前に知る必要なしに、その生物学的因子を独特に同定する手段を提供する。次に、増幅産物の分子量または対応する塩基組成のシグネチャーを、分子量または塩基組成のシグネチャーのデータベースと照合する。さらに、この方法は、迅速平行多重分析に適用することができ、その結果は、三角同定戦略に採用することができる。本方法は、迅速なスループットを提供し、生物学的因子の検出および同定のために、増幅された標的配列の核酸配列決定を必要としない。
【0048】
莫大な生物学的多様性にかかわらず、地球上の全ての形態の生物は、不可欠な共通の特徴のセットをそれらのゲノムに共有している。遺伝子データは本発明の方法による生物学的因子の同定のために根本的な基礎を提供することから、各個別の生物学的因子を識別するのに十分な可変性を理想的に提供し、分子量が分子量判定しやすい核酸のセグメントを選択することが必要である。
【0049】
全ての生物にわたり多数の遺伝子の保存(すなわちハウスキーピング遺伝子)を示す細菌ゲノムとは異なり、ウイルスは、全てのウイルス科の間で不可欠でありかつ保存されている遺伝子を共有しない。したがって、ウイルスの同定は、特定のウイルス科または属のメンバーなどの、小さな群の関連ウイルス内で実現される。例えば、RNA依存性RNAポリメラーゼは、全ての一本鎖RNAウイルスに存在し、ウイルス科内の広域プライミングおよび分解(resolution)のために使用することができる。
【0050】
いくつかの態様では、少なくとも一つのウイルス核酸セグメントが、生物学的因子を同定する工程で増幅される。したがって、本明細書に開示するプライマーにより増幅することができ、各個別の生物学的因子を識別するのに十分な可変性を提供し、その分子量が分子量判定しやすい核酸セグメントを、本明細書において生物学的因子同定用アンプリコンとして記載する。
【0051】
生物学的因子同定用アンプリコンを構成するのは、プライマーがハイブリダイズする生物学的因子核酸セグメントの部分(ハイブリダイゼーション部位)と、プライマーハイブリダイゼーション部位間の可変領域との組み合わせである。
【0052】
いくつかの態様では、本明細書に記載するプライマーにより生成され、分子量判定しやすい生物学的因子同定用アンプリコンは、特定様式の分子量判定に適合する長さの予測可能な断片を得るために、特定様式の分子量判定と適合するまたは予測可能な断片化パターンを提供する手段に適合する、長さ、サイズ、もしくは質量のいずれかである。増幅産物の予測可能な断片化パターンを提供するそのような手段には、例えば制限酵素または切断プライマーを用いた切断があるが、それらに限定されるわけではない。したがって、いくつかの態様では、生物学的因子同定用アンプリコン、すなわち増幅産物は、200核酸塩基よりも大きく、制限消化後に分子量判定しやすい。制限酵素および切断プライマーを使用する方法は、当業者に周知である。
【0053】
いくつかの態様では、生物学的因子同定用アンプリコンに対応する増幅産物は、分子生物学の分野の専門家にとって日常的な方法であるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して得られる。リガーゼ連鎖反応(LCR)、低ストリンジェンシー単一プライマーPCR、および多鎖置換増幅(MDA)などの他の増幅法を使用することができる。これらの方法もまた当業者に公知である。
【0054】
介在可変領域に隣接する生物学的因子同定用アンプリコンの高度に保存された配列領域に結合し、各個別の生物学的因子を識別するのに十分な可変性を理想的に提供し、分子量分析しやすい増幅産物を生じるように、プライマーは設計される。いくつかの態様では、高度に保存された配列領域は、種、亜種、株、または属の中で約80〜100%、または約90〜100%、または約95〜100%の同一性、または約99〜100%の同一性を示す。所与の増幅産物の分子量は、可変領域の可変性が原因で、その増幅産物が得られた生物学的因子を同定する手段を提供する。したがって、プライマーの設計は、所与の生物学的因子の独自性を解明するのに適した可変性を有する可変領域の選択を必要とする。生物学的因子同定用アンプリコンは、理想的に生物学的因子の独自性に特異的である。
【0055】
生物学的因子の同定は、各個別レベルの同定の分解にふさわしいプライマーを使用して異なるレベルで実現することができる。広範囲調査プライマーは、特定の階級(例えば目、科、属、または生物学的因子の種レベルより上の生物学的因子の他のそのような分類)のメンバーとして生物学的因子を同定する目的で設計される。いくつかの態様では、広範囲調査インテリジェントプライマーは、種または亜種レベルで生物学的因子の同定が可能である。
【0056】
掘り下げプライマーは、亜種の特性に基づき亜種レベル(株、亜型、変種、および単離物を含む)で生物学的因子を同定する目的で設計される。広範囲調査インテリジェントプライマーが場合によってはこの同定目的を実現するに十分である同定用分解を提供することがあるため、掘り下げインテリジェントプライマーは、必ずしも亜種レベルでの同定に必要ではない。
【0057】
プライマー選択および確認工程で使用する代表的な工程フローチャートを図1に概略する。各群の生物について、候補標的配列を同定し(200)、その配列からヌクレオチドアライメントを作製し(210)、分析する(220)。次に、適切なプライミング領域を選択することにより、プライマーを設計し(230)、候補プライマー対の選択が容易になる(240)。次に、電子PCR(ePCR)により、プライマー対をインシリコ分析に供し(300)、ここで、生物学的因子同定用アンプリコンがGenBankまたは他の配列コレクションなどの配列データベースから得られ(310)、インシリコ特異性についてチェックされる(320)。GenBank配列から得られた生物学的因子同定用アンプリコン(310)は、所与のアンプリコンが未知の生物学的因子を同定する能力を予測する確率モデルによってもまた分析することができ、それにより好都合な確率スコアを有するアンプリコンの塩基組成が、次に塩基組成データベースに保存される(325)。または、プライマーおよびGenBank配列から得られた生物学的因子同定用アンプリコンの塩基組成は、塩基組成データベースに直接登録することができる(330)。候補プライマー対(240)は、生物のコレクション由来の核酸のPCR分析(400)などの方法によるインビトロ増幅により確認される(410)。このようにして得られた増幅産物を分析し、増幅産物を得るために使用されたプライマーの感度、特異性、および再現性を確認する(420)。
【0058】
生物兵器因子として最大の懸念である生物を含む、重要な病原体の多くは、完全に配列決定された。この努力は、未知の生物学的因子を検出するためのプライマーおよびプローブの設計を大きく促進した。広域プライミングと階級全域および掘り下げプライミングとの組み合わせは、生物戦争の脅威因子についての環境サーベイランスおよび医学的に重要な病原体についての臨床試料分析を含む、いくつかの技術応用に非常にうまく使用されてきた。
【0059】
プライマーの合成は、当技術分野において周知および日常的である。プライマーは、固相合成の周知の技法により好都合および日常的に作製することができる。そのような合成のための装置は、例えばApplied Biosystems (Foster City, CA)を含むいくつかの業者により販売されている。当技術分野において公知のそのような合成のための他の任意の手段を、追加的または代替的に採用してもよい。
【0060】
プライマーは、以下のようなウイルス性生物学的因子の同定のための方法に使用する組成物として採用される:プライマー対組成物を、未知のウイルス性生物学的因子の核酸(例えばDNAウイルス由来のDNA、またはRNAウイルスのRNAから逆転写されたDNAなど)と接触させる。次に核酸は、例えばPCRなどの核酸増幅技法により増幅され、生物学的因子同定用アンプリコンに相当する増幅産物が得られる。二本鎖増幅産物の各鎖の分子量は、例えば質量分析などの分子量測定技法により判定され、この技法では、二本鎖増幅産物の二つの鎖はイオン化工程の間に分離される。いくつかの態様では、質量分析は、エレクトロスプレーフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析(ESI-FTICR-MS)またはエレクトロスプレー飛行時間型質量分析(ESI-TOF-MS)である。可能な塩基組成のリストは、各鎖について得られた分子量の値について作製することができ、そのリストからの正確な塩基組成の選択は、一方の鎖の塩基組成をもう一方の鎖の相補的塩基組成と照合することにより促進される。このように判定された分子量または塩基組成は、次に公知のウイルス性生物学的因子についての類似の生物学的因子同定用アンプリコンのインデックス付き分子量またはインデックス付き塩基組成を含むデータベースと比較される。増幅産物の分子量または塩基組成と、公知のウイルス性生物学的因子についての類似の生物学的因子同定用アンプリコンの分子量または塩基組成との一致は、その未知の生物学的因子の独自性を示す。いくつかの態様では、使用するプライマー対は、表2のプライマー対の一つである。いくつかの態様では、異なるプライマー対を使用してこの方法が繰り返され、同定工程における潜在的な曖昧さが解決されるか、または同定の割り付けに関する信頼レベルが向上する。
【0061】
いくつかの態様では、例えば低ストリンジェンシー単一プライマーPCR (LSSP-PCR)などの適切な増幅法が選択されるならば、生物学的因子同定用アンプリコンは、単一のプライマー(任意の所与のプライマー対のフォワードまたはリバースプライマーのいずれか)だけを使用して生成することができる。生物学的因子同定用アンプリコンを生成するためのこの増幅法の適応は、過度の実験をせずに当業者により実現され得る。
【0062】
いくつかの場合、広範囲調査プライマー対により規定される生物学的因子同定用アンプリコンの分子量または塩基組成は、種レベルで、またはそれよりも下位で、生物学的因子を明確に同定するのに十分な分解を提供しない。これらの場合は、少なくとも一つの追加の広範囲調査プライマー対から、または少なくとも一つの追加の階級全域プライマー対から生成した一つまたは複数の生物学的因子同定用アンプリコンのさらなる分析から、利益を得る。生物学的因子を同定するための複数の生物学的因子同定用アンプリコンの採用は、本明細書において三角同定と呼ばれる。
【0063】
他の態様では、オリゴヌクレオチドプライマーは、ある属内の複数の種の遺伝子をコードしている核酸にハイブリダイズする階級全域プライマーである。他の態様では、オリゴヌクレオチドプライマーは、亜種特性の同定を可能にする掘り下げプライマーである。掘り下げプライマーは、増幅条件で核酸と接触した場合に、株の分類などの掘り下げ分析のための生物学的因子同定用アンプリコンを生成する機能を提供する。そのような亜種特性の同定は、感染の適正な臨床的処置を判定するために重大なことが多い。いくつかの態様では、亜種特性は、広範囲調査プライマーだけを使用して同定され、階級全域プライマーおよび掘り下げプライマーは使用されない。
【0064】
いくつかの態様では、増幅のために使用するプライマーは、ゲノムDNA、細菌プラスミドのDNA、DNAウイルスのDNA、またはRNAウイルスのRNAから逆転写されたDNAにハイブリダイズしてそれを増幅する。
【0065】
いくつかの態様では、増幅のために使用するプライマーは、ウイルスRNAに直接ハイブリダイズし、ウイルスRNAの直接増幅からDNAを得るための逆転写プライマーとして作用する。逆転写酵素を使用してcDNAを生成するためにRNAを増幅する方法は、当業者に周知であり、過度の実験をせずに日常的に確立することができる。
【0066】
本明細書に記載するプライマーは、特定の標的核酸を標的とする。増幅プライマーの設計分野の技術者は、核酸にハイブリダイズし、増幅反応において相補的核酸鎖の合成を効果的にプライミングするために、所与のプライマーが標的核酸に100%相補的である必要がないことを認識しているであろう。さらにプライマーは、一つまたは複数のセグメントにわたりハイブリダイズすることにより、介在または隣接セグメントがハイブリダイゼーション事象に関与しないことがある。(例えば、ループ構造またはヘアピン構造)。本明細書に記載するプライマーは、表2に挙げる任意のプライマーと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%の配列同一性を含んでもよく、標的核酸配列に少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%相補的であり得る。したがっていくつかの態様では、本明細書に開示する特異的プライマー配列に関して、70%から100%の変動度、またはその範囲内の任意の割合の配列同一が可能である。配列同一性の判定を以下の例に記載する:別の20核酸塩基のプライマーと配列同一性を共有するが、非同一の2残基を有する20核酸塩基長のプライマーは、もう一方のプライマーと合計20残基のうち18残基が同一であり(18/20=0.9)、したがって90%の配列同一性を有する。別の例では、17核酸塩基長のプライマーの15核酸塩基セグメントと全ての残基が同一の15核酸塩基長のプライマーは、その17核酸塩基プライマーと15/17=0.88235、すなわち88.235%の配列同一性を有するであろう。相補率は、同様に判定される。例えば標的核酸の20核酸塩基のセグメントに20の相補的残基のうち18残基のみがハイブリダイズ可能な20核酸塩基のプライマーは、18/20、すなわち0.9の相補性を有し、標的核酸配列と90%相補的である。
【0067】
相同率、配列同一性、または相補性は、例えばデフォルトの設定を使用して、SmithおよびWatermanのアルゴリズム(Adv. Appl. Math., 1981, 2, 482-489)を使用するGapプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package, Version 8 for UNIX, Genetics Computer Group, University Research Park, Madison WI)により判定することができる。いくつかの態様では、ウイルス核酸の保存されたプライミング領域に関するプライマーの相補性は、約70%から約80%である。他の態様では、相同性、配列同一性、または相補性は、約80%から約90%である。なお他の態様では、相同性、配列同一性、または相補性は、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%であるか、または100%である。
【0068】
いくつかの態様では、本明細書に記載するプライマーは、本明細書に具体的に開示するプライマー配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも98%、または少なくとも99%、または100% (またはその中の任意の範囲)の配列同一性を含む。
【0069】
当業者は、配列同一率または配列相同率を算出することができ、過度の実験をせずに、対応する生物学的因子同定用アンプリコンの増幅産物を生成するために核酸相補鎖の合成をプライミングする際のプライマーの役割におけるそのプライマーの機能に及ぼすプライマー配列同一性の変動の効果を判定することができる。
【0070】
本発明のいくつかの態様では、オリゴヌクレオチドプライマーは13から35核酸塩基長(13から35個の連結したヌクレオチド残基)である。これらの態様は、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、もしくは35核酸塩基長、またはその中の任意の範囲のオリゴヌクレオチドプライマーを含む。
【0071】
いくつかの態様では、任意の所与のプライマーは、プライマーの5'末端に鋳型をもたないT残基(すなわち付加されたT酸基は増幅される核酸に必ずしもハイブリダイズしない)の付加を含む修飾を含む。鋳型をもたないT残基の付加は、分子量分析から生じる曖昧な結果に至るおそれがある出来事である、Taqポリメラーゼの非特異的酵素活性の結果としての鋳型をもたないA残基の付加を最小にする効果を有する(Magnuson et al., Biotechniques, 1996, 21, 700-709)。
【0072】
本発明のいくつかの態様では、プライマーは、一つまたは複数のユニバーサル塩基を含むことがある。種間で保存された領域における任意の変異(3番目の位置におけるコドンのゆらぎが原因)が、DNA (またはRNA)トリプレットの3番目の位置で起こる見込みがあることから、オリゴヌクレオチドプライマーは、この位置に対応するヌクレオチドが、本明細書において「ユニバーサル核酸塩基」と呼ばれる、複数のヌクレオチドに結合することができる塩基であるように設計することができる。例えば、この「ゆらぎ」対形成において、イノシン(I)はU、C、またはAに結合し、グアニン(G)はUまたはCに結合し、ウリジン(U)はUまたはCに結合する。ユニバーサル核酸塩基の他の例には、5-ニトロインドールもしくは3-ニトロピロールなどのニトロインドール(Loakes et al., Nucleosides and Nucleotides, 1995, 14, 1001-1003)、縮重ヌクレオチドdPもしくはdK (Hill et al.)、5-ニトロインダゾール含有非環式ヌクレオシドアナログ(Van Aerschot et al., Nucleosides and Nucleotides, 1995, 14, 1053-1056)、またはプリンアナログ1-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-イミダゾール-4-カルボキサミド(Sala et al., Nucl. Acids Res., 1996, 24, 3302-3306)が含まれる。
【0073】
いくつかの態様では、ゆらぎ塩基による多少弱い結合を補償するために、オリゴヌクレオチドプライマーは、各トリプレットの1番目および2番目の位置が、未修飾ヌクレオチドよりも大きい親和性で結合するヌクレオチドアナログにより占有されるように設計される。これらのアナログの例には、チミンに結合する2,6-ジアミノプリン、アデニンおよび5-プロピニルシトシンに結合する5-プロピニルウラシル、ならびにGに結合するG-clampを含むフェノキサジンが含まれるが、それらに限定されるわけではない。プロピニル化ピリミジンは米国特許第5,645,985号、第5,830,653号、および第5,484,908号に記載されており、これら特許のそれぞれは共同所有され、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。プロピニル化プライマーは、米国付与前公開第2003-0170682号に記載されており、これもまた共同所有され、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。フェノキサジンは、米国特許第5,502,177号、第5,763,588号、および第6,005,096号に記載されており、これらのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。G-clampは米国特許第6,007,992号および第6,028,183号に記載されており、これらのそれぞれはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0074】
いくつかの態様では、急速に進化しているRNAウイルスの広範囲のプライミングを可能にするために、プライマーのハイブリダイゼーションは、5-プロピニルデオキシ-シチジンおよびデオキシ-チミジンヌクレオチドを含有するプライマーおよびプローブを使用して高められる。これらの修飾プライマーおよびプローブは、親和性および塩基対形成の選択性の増加を提供する。
【0075】
いくつかの態様では、増幅効率を高めるために、非鋳型プライマータグを使用してプライマー-鋳型二本鎖の融解温度(Tm)を上げる。非鋳型タグは、鋳型に相補的ではない、プライマー上の少なくとも三つの連続するAまたはTヌクレオチド残基である。任意の所与の非鋳型タグにおいて、AはCまたはGに置き換えることができ、TもまたCまたはGに置き換えることができる。ワトソン-クリックハイブリダイゼーションは、鋳型に比べて非鋳型タグでは起こると予想されないが、A-T対に比べてG-C対における余分の水素結合は、プライマー-鋳型二本鎖の安定性増加を付与し、プライマーが以前のサイクルで合成された鎖にハイブリダイズした後の増幅サイクルについての増幅効率を高める。
【0076】
他の態様では、二つまたはそれ以上の5-プロピニルシチジンまたは5-プロピニルウリジン残基がプライマー上の鋳型一致残基と置き換わった、プロピニル化タグは、非鋳型タグと類似した方法で使用することができる。他の態様では、プライマーは例えばホスホロチオエート結合などの修飾ヌクレオシド間結合を有する。
【0077】
いくつかの態様では、プライマーは質量修飾タグを有する。特定の分子量の核酸の可能な塩基組成の総数を減少させることは、増幅産物の塩基組成の判定にあいまいさが繰り返し出現する原因を回避する手段を提供する。所与のプライマーのある核酸塩基に質量修飾タグを付加することは、所与の生物学的因子同定用アンプリコンの分子量からその塩基組成を新規に判定することの簡略化を招くであろう。
【0078】
本発明のいくつかの態様では、質量修飾核酸塩基は、以下のうち一つまたは複数を含む:例えば7-デアザ-2'-デオキシアデノシン-5-三リン酸、5-ヨード-2'-デオキシウリジン-5'-三リン酸、5-ブロモ-2'-デオキシウリジン-5'-三リン酸、5-ブロモ-2'-デオキシシチジン-5'-三リン酸、5-ヨード-2'-デオキシシチジン-5'-三リン酸、5-ヒドロキシ-2'-デオキシウリジン-5'-三リン酸、4-チオチミジン-5'-三リン酸、5-アザ-2'-デオキシウリジン-5'-三リン酸、5-フルオロ-2'-デオキシウリジン-5'-三リン酸、O6-メチル-2'-デオキシグアノシン-5'-三リン酸、N2-メチル-2'-デオキシグアノシン-5'-三リン酸、8-オキソ-2'-デオキシグアノシン-5'-三リン酸、またはチオチミジン-5'-三リン酸。いくつかの態様では、質量修飾核酸塩基は、15Nまたは13Cまたは15Nおよび13Cの両方を含む。
【0079】
場合によっては、所与の生物学的因子同定用アンプリコンの分子量は、それだけでは所与の生物学的因子を明白に同定するのに十分な分解を提供しない。生物学的因子の同定のために複数の生物学的因子同定用アンプリコンを採用することは、本明細書において三角同定と呼ばれる。三角同定は、複数のハウスキーピング遺伝子の中から選択された複数の生物学的因子同定用アンプリコンを分析することによって遂行される。この工程は、偽陰性および偽陽性シグナルを減らすために使用され、ハイブリッドまたは別の方法で操作された生物学的因子の起源の再構築を可能にする。例えば、炭疽菌(B. anthracis)ゲノムから予想されるシグネチャーの非存在下で、炭疽菌に典型的な三部分の毒素遺伝子が同定されること(Bowen et al., J. Appl. Microbiol., 1999, 87, 270-278)は、遺伝子工学事象を示唆するであろう。
【0080】
いくつかの態様では、三角同定工程は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用した大量平行方式で生物学的因子同定用アンプリコンの特徴付けにより遂行することができ、PCRの例には、複数のプライマーが同一の増幅反応混合物に採用される多重PCR、またはプライマーの異なる独特な対が、それ以外は同一の反応混合物を含有する複数のウェルに使用されるマルチウェルプレート形式のPCRがある。そのような多重PCRおよびマルチウェルPCR法は、核酸の迅速スループット増幅の分野における技術者に周知である。他の関連する態様では、ウェルまたは容器1個あたり一つのPCR反応を実施することができ、異なるウェルの増幅産物を単一のウェルまたは容器中で混合するアンプリコンプール段階がそれに続き、それを次に分子量分析に供する。プールされたアンプリコンの組み合わせは、個別のアンプリコンの分子量の予想される範囲が重複せず、したがってシグナルの同定を複雑にしないように選択することができる。
【0081】
いくつかの態様では、所与の生物学的因子同定用アンプリコンの分子量は、質量分析により判定される。質量分析はいくつかの利点を有し、なかでも軽視できない利点は、広範囲の質量電荷比(m/z)にわたり多数の分子ピークを分離(および単離)する能力を特徴とする高いバンド幅である。したがって、各増幅産物がその分子量により同定されることから、質量分析は、本質的に放射性標識または蛍光標識の必要のない平行検出スキームである。質量分析における分野の現状は、フェムトモル未満の量の物質を容易に分析して、試料の分子含量に関する情報を与えることができるというものである。物質の分子量の正確な評価は、試料の分子量が数百であるか、または10万原子質量単位(amu)すなわちダルトンを超えるかにかかわらず、迅速に得ることができる。
【0082】
いくつかの態様では、無傷の分子イオンは、試料を気相に変換する多様なイオン化技法のうち一つを使用して、増幅産物から生成させる。これらのイオン化法には、エレクトロスプレーイオン化(ES)、マトリックス支援レーザ脱離イオン化(MALDI)、および高速原子衝撃(FAB)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。イオン化すると、異なる電荷を有するイオンの形成が原因で、一つの試料からいくつかのピークが観察される。単一の質量スペクトルから得られた分子量の複数の読み取りを平均することは、生物学的因子同定用アンプリコンの分子量の推定値を与える。エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)は、著しい量の断片化を起こさずに試料の多荷電分子の分布をもたらすことから、これは10kDaよりも大きい分子量を有するタンパク質および核酸などの非常に高分子量のポリマーに特に有用である。
【0083】
本発明の方法に使用する質量検出器には、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析(FT-ICR-MS)、飛行時間型(TOF)、イオントラップ、四重極、磁場型、Q-TOF、三連四重極が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0084】
インテリジェントプライマーを使用して得られる増幅産物の分子量は、生物学的因子の同定のための手段を提供するが、分子量データから塩基組成シグネチャーへの変換はある種の分析に有用である。本明細書で使用する場合、「塩基組成」は、生物学的因子同定用アンプリコンの分子量から判定される各核酸塩基(A、T、C、およびG)の正確な数である。一つの態様では、塩基組成は特定の生物の指標を提供する。
【0085】
いくつかの態様では、パターン分類モデルアルゴリズムの使用により、以前に観察されていない塩基組成を、所与の系統発生に割り付けることができる。塩基組成は、配列のように例えば種の中の株ごとにわずかに変動する。いくつかの態様では、パターン分類モデルは突然変異確率モデルである。他の態様では、パターン分類はポリトープモデルである。突然変異確率モデルおよびポリトープモデルは、共に共同所有され、米国特許出願第11/073,362号に記載されており、この出願は、全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0086】
一つの態様では、各種について「塩基組成確率雲」を組成の制約の周囲に構築することによりこの多様性を管理することが可能である。これは、配列分析に類似した方法で生物の同定を可能にする。「疑似四次元プロット」は、塩基組成確率雲の概念を視覚化するために使用することができる。最適のプライマー設計には、生物学的因子同定用アンプリコンの最適な選択を必要とし、個別の生物学的因子の塩基組成シグネチャーの間の分離を最大にする。雲が重なる面積は、誤分類を招くおそれのある領域を示し、誤分類は、塩基組成確率雲の重複により影響されない生物学的因子同定用アンプリコンを使用した三角同定工程により克服される問題である。
【0087】
いくつかの態様では、塩基組成確率雲は、塩基組成の潜在的誤分類を避けるために潜在的プライマー対をスクリーニングするための手段を提供する。他の態様では、生物学的因子の核酸配列の進化的変転が原因で、割り付けられた塩基組成が以前に観察されておらず、かつ/または生物学的因子同定用アンプリコンの塩基組成データベースにインデックスが付けられていない生物学的因子の独自性を予測する手段が、塩基組成確率雲により提供される。したがって、プローブに基づく技法とは対照的に、質量分析による塩基組成の判定は、測定を行うために組成または配列を予め知っておく必要がない。
【0088】
本発明は、所与の生物学的因子を同定するのに十分なレベルで、DNA配列決定および系統発生分析に類似した生物学的因子分類情報を提供する。さらに、所与の生物学的因子について以前に未知の塩基組成(例えば配列情報が入手できない場合)を判定する工程は、塩基組成データベースに投入するための追加の生物学的因子インデックス付き情報を提供することによって、その後に有用性を有する。したがって、より多くのBCS指標が、塩基組成データベース内で入手可能になることから、将来的な生物学的因子の同定工程は大きく向上する。
【0089】
いくつかの態様では、未知生物学的因子の独自性および量は、図9に示す工程を使用して判定することができる。プライマー(500)および公知量の較正ポリヌクレオチド(505)を、未知生物学的因子の核酸を有する試料に添加する。次に、試料中の総核酸が増幅反応(510)に付され、増幅産物が得られる。増幅産物の分子量が判定され(515)、そこから分子量および存在量データが得られる。生物学的因子同定用アンプリコンの分子量(520)は、その同定(525)のための手段を提供し、較正ポリヌクレオチド(530)から得られる較正アンプリコンの分子量は、その同定のための手段を提供する(535)。生物学的因子同定用アンプリコンの存在量データを記録し(540)、較正データに対する存在量データを記録し(545)、その両方は、試料中の未知生物学的因子の量を判定する計算に使用する(550)。
【0090】
生物学的因子由来の核酸の増幅のための手段を提供するプライマー対および較正配列を含む公知量のポリヌクレオチドと、未知の生物学的因子を含む試料を接触させる。生物学的因子の核酸および較正配列の核酸を増幅し、増幅速度は生物学的因子の核酸および較正配列の核酸について類似していると合理的に仮定する。次に増幅反応は、生物学的因子同定用アンプリコンおよび較正アンプリコンの二つの増幅産物を生成する。生物学的因子同定用アンプリコンおよび較正アンプリコンは、本質的に同じ速度で増幅している限り、分子量により識別可能なはずである。差次的分子量をもたらすことは、較正配列として代表的な生物学的因子同定用アンプリコン(特定種の生物学的因子由来)を選択し、例えば二つのプライミング部位の間の可変領域の中で2〜8核酸塩基の欠失または挿入を行うことにより実現することができる。生物学的因子同定用アンプリコンおよび較正アンプリコンを有する増幅された試料を、次に例えば質量分析による分子量分析に供する。結果として生じた、生物学的因子および較正配列の核酸の分子量分析は、生物学的因子および較正配列の核酸についての分子量データおよび存在量データを提供する。生物学的因子の核酸について得られた分子量データは、未知の生物学的因子の同定を可能にし、存在量データは、試料と接触した較正ポリヌクレオチドの量の知識に基づき、生物学的因子の量の算出を可能にする。
【0091】
いくつかの態様では、試料に加えられる較正ポリヌクレオチドの量が変動する標準曲線の構築は、試料中の生物学的因子の量の判定のための追加の分解および信頼度の向上を提供する。分子の量の分析判定のために標準曲線を使用することは、当業者に周知であり、過度に実験せずに行うことができる。
【0092】
いくつかの態様では、複数の生物学的因子同定用アンプリコンが複数のプライマー対を用いて増幅され、該プライマー対がまた対応する標準較正配列も増幅する、多重増幅が行われる。この態様または他の態様では、標準較正配列は、較正ポリヌクレオチドとして機能する単一ベクターの中に任意で含まれる。多重増幅法は、当業者に周知であり、過度に実験せずに行うことができる。
【0093】
いくつかの態様では、増幅条件およびその後の分析段階が測定可能なアンプリコンを生成することに成功することを確認するための内部陽性対照として、較正ポリヌクレオチドを使用する。生物学的因子ゲノムのコピーの非存在下でも、較正ポリヌクレオチドは較正アンプリコンを生じさせるはずである。測定可能な較正アンプリコンを生成しないことは、増幅の失敗、またはアンプリコンの精製もしくは分子量判定などのその後の分析段階の失敗を示す。そのような失敗がそれ自体起こったという結論に達することは有用な事象である。
【0094】
いくつかの態様では、較正配列はDNAから構成される。いくつかの態様では、較正配列はRNAから構成される。
【0095】
いくつかの態様では、較正配列はベクターに挿入され、そのベクターは次にそれ自体較正ポリヌクレオチドとして機能する。いくつかの態様では、複数の較正配列が、較正ポリヌクレオチドとして機能するベクターに挿入される。そのような較正ポリヌクレオチドは、本明細書において「組み合わせ較正ポリヌクレオチド」と名付けられる。ベクターにポリヌクレオチドを挿入する工程は、当業者に日常的であり、過度に実験せずに行うことができる。したがって、較正法が本明細書に記載する態様に限定されるべきではないことを認識されたい。較正法は、適切な標準較正ポリヌクレオチド配列が設計され、使用される場合に、任意の生物学的因子同定用アンプリコンの量の判定に適用することができる。較正物質を挿入するために適切なベクターを選択する工程もまた、過度に実験せずに当業者により実現することができる日常的な作業である。
【0096】
本発明の他の態様では、インテリジェントプライマーは、外来混入ウイルスの安定で高度に保存された領域の中に、生物学的因子同定用アンプリコンを生成する。高度に保存された領域の中のアンプリコンを特徴付ける利点は、その領域がプライマー認識点を超えて進化する確率が低いことであり、プライマー認識点を超えて進化する場合には、増幅段階は失敗するであろう。したがって、そのようなプライマーセットは、広範囲調査型プライマーとして有用である。本発明の別の態様では、インテリジェントプライマーは上記の安定な領域よりも迅速に進化する領域の中に、生物学的因子同定用アンプリコンを生成する。進化するゲノム領域に対応する生物学的因子同定用アンプリコンの特徴付けの利点は、新生の株変異体を識別するために有用なことである。
【0097】
本発明はまた、新生ウイルスにより起こる疾患を同定するためのプラットフォームとしても顕著な利点を有する。本発明は、ハイブリダイゼーションプローブを生成するために生物学的因子の配列を事前に知っておく必要性を排除する。したがって別の態様では、本発明は、ウイルス同定の工程を臨床的状況で実施する場合に、そしてそのウイルスが以前に全く観察されていない新種の場合でさえも、ウイルス感染の原因を判定する手段を提供する。これが可能であるのは、その方法が、生物学的因子同定用アンプリコンの生成のための鋳型として作用する配列中に生じる自然進化変異(迅速に進化するウイルスを特徴付けに関する重大な懸念)により混乱しないからである。分子量の測定および塩基組成の判定は、配列の偏見なしに偏らない方法で実現される。
【0098】
異なる場所から得られた複数の試料を、疫学的状況で上記の方法により分析する場合に、本発明の別の態様は、ウイルスの任意の種または株の拡大を追跡する手段もまた提供する。一つの態様では、複数の異なる場所からの複数の試料は、生物学的因子同定用アンプリコンを生成するプライマーを用いて分析され、その試料のサブセットは特異的ウイルスを有する。ウイルス含有サブセットのメンバーの対応する場所は、その対応する場所への特異的ウイルスの拡大を示す。
【0099】
本発明はまた、本明細書に記載する方法を実施するためのキットも提供する。いくつかの態様では、生物学的因子由来の標的ポリヌクレオチドに対して増幅反応を実施し、生物学的因子同定用アンプリコンを形成するのに十分な量の一つまたは複数のプライマー対が、キットに含まれてもよい。いくつかの態様では、キットは、1から50プライマー対、1から20プライマー対、1から10プライマー対、または2から5プライマー対を含んでもよい。いくつかの態様では、キットは、表2に列挙する一つまたは複数のプライマーを含んでもよい。
【0100】
いくつかの態様では、キットは、一つまたは複数の広範囲調査プライマー、階級全域プライマー、もしくは掘り下げプライマー、またはその任意の組み合わせを含んでもよい。キットは、特定の生物学的因子の同定のための特定のプライマー対を含むように設計されてもよい。例えば外来混入ウイルスまたは遺伝子操作された外来混入ウイルスの異なる亜種型を識別するために、掘り下げキットを使用してもよい。いくつかの態様では、外来混入ウイルスを同定を可能にするため、広範囲調査プライマーおよび階級全域プライマーの組み合わせを含むように、これらのキットのうち任意のものを組み合わせてもよい。
【0101】
いくつかの態様では、キットは、内部増幅較正物質として使用するための標準化較正ポリヌクレオチドを有してもよい。
【0102】
いくつかの態様では、キットはまた、上記の増幅工程のために、十分な量の逆転写酵素(例えばRNAウイルスを同定しようとする場合)、DNAポリメラーゼ、適切なヌクレオシド三リン酸(上記のうち任意のものを含む)、DNAリガーゼ、および/もしくは反応緩衝液、またはその任意の組み合わせも含んでもよい。キットは、キットの特定の態様に適切説明書、例えばその方法の実施のためのプライマー対および増幅条件を記載している説明書をさらに含むことがある。キットはまた、マイクロ遠沈管等の増幅反応用容器も含んでもよい。キットはまた、生物学的因子の核酸または生物学的因子同定用アンプリコンを、増幅産物から単離するための、例えば洗剤、溶媒、または磁気ビーズと結合してもよいイオン交換樹脂を含む試薬または他の物質も含んでよい。キットはまた、キットのプライマー対を使用して測定または算出された、生物学的因子の分子量および/または塩基組成の表も含んでもよい。
【0103】
本発明を、その態様のあるものに従って具体的に説明したが、以下の実施例は本発明を例示するためにのみ役立ち、それを限定することを意図しない。本明細書に開示する発明をさらに効率的に理解するために、実施例を以下に提供する。これらの実施例は単に例示目的であり、いかなる様式でも本発明を限定するものであると解釈されないことが、理解されるべきである。
【0104】
実施例
実施例1:外来混入ウイルスのための生物学的因子同定用アンプリコンを規定するプライマーの設計および確認の選択
外来混入ウイルス同定用アンプリコンを規定するプライマーの設計のために、一連の外来混入ウイルスのゲノムセグメントの配列を得て、アライメントし、かつPCRプライマー対が約45から約150ヌクレオチド長の産物を増幅し、種および/または個別の株をそれらの分子量または塩基組成により相互に識別する領域についてスキャンした。図1に示す典型的な工程をこの種の分析のために採用する。プライマー対の確認は、図2に示す一部または全ての段階により実施する。
【0105】
各プライマー領域について予想される塩基組成のデータベースは、(ePCR)などのインシリコPCR検索アルゴリズムを使用して作製した。現存するRNA構造検索アルゴリズム(Macke et al., Nucl. Acids Res., 2001, 29, 4724-4735、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)は、ハイブリダイゼーション条件、ミスマッチ、および熱力学的計算などのPCRパラメータを含むように修飾されている(SantaLucia, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 1998, 95, 1460-1465、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)。これはまた、選択されたプライマー対のプライマー特異性に関する情報も提供する。
【0106】
(表1)外来混入ウイルスの同定のためのプライマー対
【0107】
合計205プライマー対を設計し、それを表1に示す。この表は、本明細書に記載する方法を使用して外来混入ウイルスを同定するために設計されたプライマーのコレクション(プライマー対の番号で分別する)を示す。「I」はイノシンを表す。Tpはプロピニル化Tを表し、Cpはプロピニル化Cを表す。プロピン修飾は塩基の5-位にある。各プライマー対番号は、社内データベースインデックス番号である。表1に示す各フォワードまたはリバースプライマー名は、そのプライマーが参照配列に比べてハイブリダイズする、ウイルスゲノムの遺伝子領域を示す。例えば、フォワードプライマー名RVL_X03614_2256_2279_Fは、フォワードプライマー(_F)がレスピロウイルス(パラミクソウイルス科)(RLV)配列(GenBankアクセッション番号X03614)の残基2256〜2279にハイブリダイズすることを示す。この例では、RLVはプライマー対名ウイルス識別子である。表2は、本明細書に開示するプライマー対についてのプライマー対名ウイルス識別子を示す。
【0108】
(表2)選択されたウイルスについてのプライマー対名識別子
【0109】
レトロウイルス同定用プライマーの設計
このウイルスファミリーについてのプライマー設計の目的は、各属群の全ての公知のメンバーおよび今までに未知の変異体についてのレトロウイルス同定用アンプリコンをプライミングおよび生成するプライマー対を得ることであった。デルタレトロウイルス属のメンバーであるTリンパ球指向性ウイルスは霊長類に感染し、白血病および神経疾患を起こす。これらの9キロベースの一本鎖RNAウイルスは高度に感染性である。転写活性化因子(tax)遺伝子を標的化しているプライマー対は、ヒトTリンパ球指向性ウイルス(HTLV-1およびHTLV-2ならびに新たに発見されたHTLV-3およびHTLV-4)およびサルTリンパ球指向性ウイルス(STLV-1、SLTV-2、およびSLTV-3)を含む全ての公知の霊長類Tリンパ球指向性ウイルスを広範囲にプライミングし分解するように設計された。図3は、プライマー対番号2293 (配列番号:76:245)および2294 (配列番号:77:246)が共にHTLV-1およびHTLV-2のtax遺伝子の核酸セグメントを増幅して増幅産物を生じ、その増幅産物の分子量がこれらの二つのウイルスを識別するのに十分なほど異なることを示している。図4Aおよび4Bに示すのは、サルおよびヒトTリンパ球指向性ウイルス種のレトロウイルス同定用アンプリコンの塩基組成の3Dプロットであり、これらの図は、プライマー対がそれらの塩基組成に基づき識別可能な増幅産物を得ることができることを示している。
【0110】
ポリオーマウイルス同定用プライマーの設計
約200個の完全ポリオーマウイルスゲノム配列をGenBankから得た。これらのゲノム配列(約5.3キロベース長)は、社内で組み立てた生物情報学ツールを使用して相互にアライメントし、保存された標的領域についてスキャンした。ゲノムアライメントの初回調査から、霊長類ウイルス(SV40)およびヒトウイルス(BKおよびJC)の間で高度の相同性が明らかとなったが、残りの種は大いに多岐にわたり、これら上記の種とあまり大きな配列相同性を共有しなかった。プライマー設計目的で、SV40、BK、およびJCウイルス種を一つの群に分類した。9個の異なるプライマー対(プライマー対2549〜2557)をこのクラスターに設計した(表1参照)が、これらのプライマー対は三つの重要なポリオーマウイルス種の重複する検出および分解を提供すると予想される。これらのプライマーの大部分は、ポリオーマウイルスのラージT抗原遺伝子に標的化された。三つの追加のプライマー対(VIR2559〜2561)は、上記クラスターにリンパ球指向性パポバウイルス(LPV、アフリカミドリザルパポバウイルス)を含むように設計した。これらの新しいプライマーは任意の一つの種にわたりあまりよく保存されていなかったが、それでもなおこの科の中でウイルス検出をより広くカバーするであろう。残りのウイルス種(マウス、トリ、ウシなど)を標的化している追加のプライマー対(RS10〜14)もまた設計した。総合すれば、これらのプライマーは全ての公知のポリオーマウイルスを完全にカバーするであろう。
【0111】
複数の標的種に対して、全てのプライマー対を性能および感度について試験した。これらのプライマーの性能を試験するために、完全長SV40 (ATCC:VRMC-4)およびJCウイルス(ATCC:VRMC-1) DNAを有するプラスミドクローンをATCCから得た。プラスミド濃度をOD測定により判定し、入力ウイルスDNA鋳型の量のおおよその推定値として使用した。プラスミドの10倍系列希釈は、検出限界の推定のために使用した。これらは、12個のプライマー対(VIR2549〜61)のパネル全体に対して試験した。プライマーは、最初各プラスミドの10-7および10-8倍希釈で試験し、プライマー2555を除き信頼できる検出が示された。これらのプライマーのサブセットの追加試験は、いくつかのプライマーが追加の低希釈を検出することができたが、プライマーの中には10-9希釈よりも下で脱落したことを示した。この最初の試験に基づき、細胞系での特徴付けに使用するために6個のプライマーのパネル(VIR2550、2551、2553、2554、2557、および2559)を選択した。これらのプライマーをSV40および他のポリオーマウイルスを有する公知の細胞系に対して試験する。
【0112】
細胞系の日常的スクリーニングのために、上記のわずかに二つのプライマー対と一緒にした動物ポリオーマウイルスを標的化している四つのプライマーが、全ての公知のポリオーマウイルスおよび潜在的に新規なポリオーマウイルスを完全にカバーすることができると予測される。サルウイルス40の位置32でコドンが欠失していることから、ラージ腫瘍抗原遺伝子の中の核酸セグメントは、ヒトおよびサル種にわたる広範囲のプライミングのための機会を提供し、それは、プライマー対番号2555 (配列番号:135:301)により例示される。SV40ウイルス、BKウイルス、およびJCウイルスの種の区別は、図5に示され、ここで、ポリオーマウイルスの仮定上の増幅産物の塩基組成を3D図で示す。図6に示すのは、プライマー対番号2560 (配列番号:140:306)を用いて生成された仮定上の増幅産物の塩基組成の3D図である。マウス向肺ウイルス(Murine pneumonotropic virus)、アフリカミドリザルPyVウイルス、SV40ウイルス、BKウイルス、JCウイルス、ハムスターPyVウイルス、およびマウスPyVウイルスは、プライマー対番号2560を用いて生成される増幅産物の塩基組成に基づき相互に識別することができる。
【0113】
パピローマウイルス同定用プライマーの設計
重要なヒトパピローマウイルス(HPV16、18、31、45、11、6、2)のセットをカバーしている広範囲プライマー対を設計した(プライマー対番号2533〜2536)。これらは異なる群に属するが、全て文献で「ハイリスク」と報告されている。上記の群特異的プライマー対と組み合わせてこれらの種の全てを広くカバーすることは大きな価値があろう。そのうえ、パピローマウイルスの単一の群の中で、または複数の群にわたり広くカバーして検出の頑健性を上げるために、いくつかのプライマー対を設計した。
【0114】
全てのプライマー対は、ATCCから得られたパピローマウイルスのパネルに対して試験した。以下のウイルスを完全長プラスミドクローンとして得た:ATCC45150D (HPV-6b);ATCC45151D (HPV-11);ATCC45152D (HPV-18);およびATCC45113D (HPV-16)。広範囲プライマー対のうち二つ(番号2534および2536)は、プラスミドの二つの異なる希釈で試験した四つのウイルス全てを増幅した。プライマー対番号2535は被験単離物の二つだけを増幅したが、プライマー対2533は試験したどのウイルスも増幅しなかった。これらの初回の結果に基づき、プライマー対番号2534および2536をさらなる最適のために選択した。潜在的配列ミスマッチを克服するためのイノシンの使用を含む一連のプライマー修飾をフォワードプライマーおよびリバースプライマー対に導入した。試験した修飾プライマーの大部分は、試験単離物にわたり性能の向上を示した。主要種を広く標的化しているプライマーに加えて、30を超える異なるパピローマウイルスを説明するパピローマウイルスの群であるA7、A9、およびA10を標的化している一連のプライマーもまた試験した。図7に示すのは、プライマー対番号2534 (配列番号:116:286)を用いて生成されたヒトパピローマウイルスの仮定上の増幅産物の塩基組成の3D図である。表3にパピローマウイルスの同定に使用したプライマー対を提供し、試験した単離物、標的ウイルス群、およびカバーされる主要種を示す。
【0115】
(表3)ヒトパピローマウイルスを標的化しているプライマー対
【0116】
パピローマウイルスの同定のために設計されたプライマー対の確認
追加の試験および確認のために、HPV-18に感染した二つの異なるHeLa細胞系をATCCから得た(CCL-2およびCCL-2.2)。これらは、上に試験されたプライマーのサブセットを使用して限界希釈で試験した。結果を下に示す。この試験に使用したプライマー対は、主要なヒトPaVプライマー対である2534、2536、および2685、多群プライマー2542、群A7標的化プライマー2544〜5、および群A10プライマー2546を含んだ。
【0117】
細胞系に及ぼすプライマーの性能を試験することに加えて、HPV-6bを有するプラスミドDNAをCCL-2細胞系に加え、二つのウイルス、すなわち細胞系由来HPV-18およびプラスミド由来HPV-6bの検出のダイナミックレンジを同時判定した。行った全ての試験において、広範囲プライマーおよび群A7プライマーは、両細胞系において1ウェルあたり1〜10細胞の投入レベルでHPV-18の検出を示した。1細胞あたり約20個のHPV-18ゲノムという推定コピー数では、これはパピローマウイルス配列を有する細胞系由来の20〜200ゲノムの検出感度に対応する。これらの細胞系にHPV-6bプラスミドを同時添加して行った実験では、検出範囲は類似していた。HPV-6bは、1ウェルあたり200コピーおよび2000コピーという二つの異なる一定濃度で加えた。図8Aは二つのウイルスの検出における広範囲プライマー対2534の性能を示す。図8Aは、1ウェルあたり1000から0個の濃度範囲のCCL-2細胞にプラスミドDNAを2000コピーで加えたときの、HPV-6bおよびHPV-18の同時検出を示す。HPV-18は、2000コピーのHPV-6bの存在下で、最低投入レベル(10細胞/ウェル)を除く全てのウェルで検出された。HPV-6b (2000コピー)は、最大600細胞/ウェルのHeLa細胞負荷の存在下の有効HPV-18濃度約12000ゲノム/ウェルで検出された。図8Bは、1ウェルあたり約200コピーのプラスミド添加を使用した類似した曲線を示す。この場合、HPV-18は、最低細胞濃度10細胞/ウェルを含む全ての試験濃度で検出された。図6cおよびdは、上記実験の4回の繰り返しでHPV-18および/またはHPV-6が検出されたウェルの率を示す。二つのウイルスの同時検出のためのダイナミックレンジは、下端および上端で5〜10倍であり、相互の存在下で競合する鋳型の検出について約25倍の全体的なダイナミックレンジを与える。上記実験は、二つまたはそれ以上のウイルスを同一のアッセイを使用して同時に検出することができるTIGER HPVアッセイの強度をさらに際立たせる。
【0118】
パルボウイルス科同定用プライマーの設計
細胞系におけるパルボウイルス科の存在を検出するために、ディペンドウイルス、エリスロウイルス、およびパルボウイルスを含む、パルボウイルス亜科の特異的な属を広く標的化するプライマーを設計した。最も大きい医学的関心事であるパルボウイルス科は、B19、AAV、およびマウス微小ウイルスである。約500の完全パルボウイルス科ゲノム配列は、GenBankから得た。これらのゲノム配列(それぞれ約5キロベース長)をアライメントし、保存された標的領域についてスキャンした。ゲノムアライメントの初回調査は、三つの主要属(パルボウイルス、ディペンドウイルス、エリスロウイルス)にわたり非常にわずかな相同性しか示さなかった。しかし、保存された配列領域は、プライマー設計のための標的であった各属の中で顕著な相同性を有して同定された。全ての3属において、保存された配列領域は、一つがNS1タンパク質をコードしているrep遺伝子の中、もう一つが糖タンパク質VP1タンパク質をコードしているキャプシド(cap)遺伝子の中である二つの主要なノード(node)の中であった。これら各属内の種の公知の全実例にわたりプライミングするこの能力は、公知のパルボウイルス科メンバーのサーベイランス、ならびに細胞および細胞由来物質中の今まで未知であったパルボウイルス科の種/株の検出を可能にするであろうと考えられる。
【0119】
パルボウイルス科の同定のために設計されたプライマーの確認
ディペンドウイルスNS1またはVP1タンパク質をコードしている核酸を標的化するように表1に開示するプライマー対(2864〜2875)を設計し、AAV-2完全長クローンの増幅を行い、質量分析により増幅産物の分子量を判定し、そして本明細書上記の方法を使用して塩基組成を算出した後にAAV-2の同定を招くことにより、これらのプライマーがAAV-2を検出する能力について試験した。AAV-2プラスミドは、John Chiorini博士、National Institutes of Health, Bethesda MD(Katano et al., BioTechniques, 2004, 36(4), 676-680)から供与された。プライマー対の初回試験は、プラスミドクローンの限界希釈で行った。出発物質のOD推定に基づき、1ウェルあたりAAV-2プラスミド5000コピー/ゲノムを系列希釈し、プライマー性能について試験した。結果を表4に示す。「X」は、表示されたプライマー対および表示されたコピー数を用いて標的が検出されたことを示す。
【0120】
(表4)パルボウイルスプライマー対の確認
【0121】
表4に示すように、機能するプライマー対は、1ウェルあたり少なくとも78ゲノムの濃度でAAV-2プラスミドを検出することができたが、いくつかはさらに薄い濃度を検出することができた。表4に示す結果に基づき、7個の最も感受性の高いプライマー対(2865、2866、および2867 [NS1に標的化]、ならびに2869、2870、2871、および2874 [VP1に標的化])を、追加の試験および確認のために選択した。これらのプライマーを包含する領域を含む合成DNA較正物質を使用したプライマーの試験を作製し、7個のプライマー対のうち4個(2865、2866, 2869、および2874)を用いた確認実験に使用した。結果を図10に示す。これらのプライマー対を用いて、較正物質の検出は表3に示す結果と類似していた。
【0122】
上記アッセイにプライマー対2866を使用して作製された増幅産物に関して行った質量分析は、データベースにインデックスを付けられた、以前に公知のAAV-2単離物の塩基組成と独特の一致を与えた質量および塩基組成を明らかにした。結果は、関連配列の塩基組成と一致しなかった。
【0123】
本明細書に記載する方法を使用して、パルボウイルス科の属に標的化されたプライマーは、ヒト試料、樹立細胞培養物、マスター細胞バンク、最終産物細胞、腫瘍性不死化細胞系、一次および原体採集液を含む細胞基質由来生物学的物質、抗体、ならびにウイルスワクチンを含むワクチン中のこの科の種および株を特異的に検出し、ワクチンを含む細胞由来物質中の混入物について試験することおよびその細胞由来物質の安全性を判定することに有用であろうと考えられる。
【0124】
ヘパドナウイルス科(HBVを含む)同定用プライマーの設計
HBVを標的化しているプライマーは、本明細書上記の方法を使用して設計した。プライマーは、HBVについて構築された複数の配列アライメントの最も高度に保存された領域に対して設計された。プライマー配列は、融解温度および潜在的二量体化すなわち二次構造に関する適合性について分析した。全てのプライマー対配列は、本明細書上記の社内法を使用して、GenBankデータベースにおける配列および全てのヒト染色体配列に対する特異性についてスクリーニングした。GenBankアクセッション番号NC_003977 (配列番号:338として本明細書に組み入れられる)の三つの保存された領域の一つの範囲内でハイブリダイズするようにプライマーを設計した。図11aに示すように、三つの保存された領域の最初のものは、配列番号:338のヌクレオチド180〜453 (糖タンパク質HBVgp2およびポリメラーゼgp1をコードするヌクレオチドを含む)を含み、2番目の領域は、配列番号:338のヌクレオチド1375〜1436 (gp3およびgp1をコードするヌクレオチドを含む)を含み、3番目の保存された領域は、配列番号:338のヌクレオチド1777〜1876 (gp3およびgp4またはコアタンパク質をコードしているヌクレオチドを含む)を含む。HBVを同定するように設計されたプライマー対を表1に挙げるが、この表にはプライマー対番号1245〜1254が含まれる。具体的には、プライマー対番号1246 (配列番号:67:236)および1247 (配列番号:68:237)を確認研究で試験するために選択し、上記方法を使用して、六つの異なるウイルス株(Zeptometrix, Buffalo, NY)から単離された(Qiagen Virusスピンキット(Qiagen, Valencia, CA)を使用して調製された)ウイルスゲノム物質を使用して、検出特異性について試験した。両プライマー対の使用は、患者の血漿由来のHBVの存在下で独特の適切なアンプリコンの生成を招いた。分子量から算出された塩基組成は、HBVに独特であった(図11b)。ヘパドナウイルス科に属さない五つの追加のウイルスは、HBV標的化プライマーにより検出されなかった(図11b)。HBVプライマーは、わずか100ゲノムコピーを検出することができた(HBV増幅産物の増幅効果を意味し、その分子量および塩基組成は本明細書に記載する方法により判定および算出することができた)。プライマー対1247はまた、別のHBV源(Woodchuck)を使用しても確認され、予想されるHBVアンプリコンを正しい塩基数で生成した。
【0125】
そのうえ、プライマー結合部位を有するが、長さおよび塩基組成が標的ウイルスエレメントとは異なる内部較正対照をプライマー対のそれぞれについて作製した。これらの対照は、プラスミドベクターに構築され、配列決定により確認された。ベクター由来のRNAランオフ転写物を定量し、定量アッセイに使用する。
【0126】
本明細書に記載する方法を使用して、ヘパドナウイルス科のメンバー、例えばHBVに標的化されたプライマーは、ヒト試料、樹立細胞培養物、マスター細胞バンク、最終産物細胞、腫瘍性不死化細胞系、一次および原体採集液を含む細胞基質由来生物学的物質、抗体、ならびにウイルスワクチンを含むワクチン中のこの科の種および株を特異的に検出し、ワクチンを含む細胞由来物質中の混入物について試験することおよびその細胞由来物質の安全性を判定することに有用であろうと考えられる。
【0127】
パラミクソウイルス科同定用プライマーの設計
パラミクソウイルス科の存在を検出するために、本明細書上記の多様な属および種を広く標的化するためにプライマーを設計した。100個を超える完全および部分ゲノム配列をGenBankから得て(それぞれ約15KB長)、社内で構築された生物情報学ツールを使用してそれらを相互にアライメントし、保存された標的領域についてそれらをスキャンした。ゲノムアライメントの初回調査は、主要な属(レスピロウイルス、ニューモウイルス、ルブラウイルス、およびアブラウイルス)にわたりほとんど相同性を示さなかった。しかし、各属の中の領域は顕著な相同性を示し、それをプライマー設計に使用した。全ての主要な属において、保存された領域は、主にRNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)遺伝子の中であった。プライマーを設計し、ATCCから得られた物質(表5に示す)を使用して試験する。ヒトおよびウシPIV1およびPIV3、ならびにセンダイウイルスを含む全てのレスピロウイルス種のRdRpを標的化するようにプライマーを設計した。図12に示すように、これらのプライマーは、これらの種の全ての公知の変異体を増幅し、本明細書に記載する方法を使用してそれらを区別するものである。これらのプライマーを表1に示す。初回試験のために二つの異なる構築物を設計した。最初のものは、鋳型としてATCC VR-1380 (PIV-1)由来のT7 RNAランオフ産物を使用する。結果として生じたRNAは確認に使用する。プライマーの設計のために選択された領域のみを含む2番目の合成構築物もまた作製し、それは、本明細書に記載する感度および検出法のための定量試験物質を提供する。
【0128】
プライマーを設計し、ニューモウイルス亜科に標的化した。そのようなプライマーの例を表1に挙げる。図13に示すように、これらのプライマーは、ヒトおよびウシ呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、マウス肺炎ウイルス、およびヒトメタニューモウイルス(HMPV)を含む全ての公知のニューモウイルス亜科の種を増幅するため、個別の種を独特に同定するために使用することができる。ニューモウイルス亜科標的化プライマー対は、本明細書に開示する方法を使用して、最初に鋳型としてATCCからのT7 RNAランオフ産物(VR-1400、RSV-B)を使用して試験した。このアッセイを使用して、試験した全てのプライマー対(プライマー対番号:2442、2452、2441、および2448を含む)は、判定された塩基組成を有する増幅産物を生成し、その増幅産物は、データベース中のRSV-B塩基組成と独特に一致し、その群の全ての他の種と明らかに区別された。さらなる定量試験の実験において、本明細書に記載する方法を使用して、四つのプライマー対ならびに二つの異なる合成対照構築物である内部較正対照および内部陽性対照(類似しているが長さおよび組成が異なる)を試験した。各対照は、Blue Heron Technologies (Bothell, WA)からの精製プラスミド調製物として得て、Nanodropスペクトロメータを使用して正確に定量した。アッセイ結果は、わずか5コピーの内部陽性対照の信頼できる検出を示し、40コピーまたはそれ以上では頑健な検出を示した。このアッセイは、二つの標準を等量(300コピー)で含んだ場合に、それらの1:1の定量を示した。
【0129】
この定量試験において最良性能の二つのプライマー対(プライマー対番号2441-配列番号:103:274およびプライマー対番号2448-配列番号:109:278)を選択し、それぞれATCCストックの1000倍希釈物を加えた三つのRSV-B単離物(VR-955、VR-1400、およびVR-1401)を使用したさらなる試験に供した。本明細書に記載する方法を使用して、両プライマーは、三つのウイルス単離物全てから頑健なアンプリコンを生成した(図13b)。これらのアンプリコンから算出した塩基組成は、データベースに独特にインデックス付けされた登録RSV-Bと一致し、RSV-Aを含むこの亜科の他の全種と明らかに区別された。
【0130】
ニューカッスル病ウイルスおよび他のトリパラミキソウイルスを含むアブラウイルス属、またはパラインフルエンザウイルスPIV-2、サルパラインフルエンザ(SIV-5)、ブタパラインフルエンザ、およびムンプスウイルスを含むルブラウイルスを標的化するようにプライマー対を設計した。これらの各プライマーは、RdRp遺伝子領域に標的化した。例を表1に挙げるが、それらには、プライマー対番号2435、2436、2437、2438、2439、および2440が含まれる。これらのプライマー対は、それぞれの属の全ての公知のメンバーを増幅し、種の同定に使用することができる。これらのプライマーは、本明細書に記載する方法を使用して試験および確認する。
【0131】
本明細書に記載する方法を使用して、パラミクソウイルス亜科および属に標的化されたプライマーは、樹立細胞培養物、マスター細胞バンク、最終産物細胞、腫瘍性不死化細胞系、一次および原体採集液を含む細胞基質由来生物学的物質、抗体、ならびにウイルスワクチンを含むワクチン中のこの科の種および株を特異的に検出し、ワクチンを含む細胞由来物質中の混入物について試験することおよびその細胞由来物質の安全性を判定することに有用であろうと考えられる。
【0132】
(表5)プライマーの試験および確認に使用するパラミクソウイルス
【0133】
実施例2:試料の調製およびPCR
ウイルスゲノム物質を得るためにQiagen QIAamp Virus BioRobot MDx Kitを使用して試料を処理した。結果として生じたゲノム物質は、MJ Thermocycler Dyadユニットを使用して増幅し、アンプリコンはBruker Daltonics MicroTOF装置で特徴付けした。結果として生じたデータは、GenXソフトウェア(SAIC, San Diego, CAおよびIbis, Carlsbad, CA)を使用して分析した。
【0134】
全てのPCR反応は、Packard MPII液体取扱い用ロボットプラットフォームおよびM.J. Dyadサーモサイクラー(MJ research, Waltham, MA)を使用した96ウェルマイクロタイタープレート形式で50μL反応体積に集めた。PCR反応混合物は、Amplitaq Gold、1×buffer II (Applied Biosystems, Foster City, CA)4ユニット、1.5mM MgCl2、0.4Mベタイン、800μM dNTP混合物、および250nMの各プライマーからなった。以下の典型的なPCR条件を使用した:95℃10分間に続いて、95℃30秒間、48℃30秒間、および72℃30秒間を8サイクル、48℃のアニーリング温度は8サイクルのそれぞれで0.9℃ずつ上げる。次にPCRは、95℃15秒間、56℃20秒間、および72℃20秒間の追加の37サイクル継続した。
【0135】
実施例3:イオン交換樹脂-磁気ビーズを用いた質量分析のためのPCR産物の溶液捕捉精製
磁気ビーズに結合したイオン交換樹脂を用いた核酸の溶液捕捉のために、BioCloneアミン末端超常磁性ビーズの2.5mg/mL懸濁液25μlを、約10pMの典型的なPCR増幅産物を含有するPCR (またはRT-PCR)反応液25から50μlに添加した。ボルテックス処理またはピペット操作により上記懸濁液を約5分間混合し、その後、磁気分離装置を使用後に液体を除去した。結合したPCR増幅産物を有するビーズを次に50mM重炭酸アンモニウム/50%MeOHまたは100mM重炭酸アンモニウム/50%MeOHで3回洗浄し、続いて50%MeOHでさらに3回洗浄した。結合したPCRアンプリコンは、ペプチド較正標準を含む25mMピペリジン、25mMイミダゾール、35%MeOHの溶液で溶出させた。
【0136】
実施例4:質量分析および塩基組成分析
ESI-FTICR質量分析装置は、能動遮蔽型(actively shielded) 7テスラ超電導磁石を採用するBruker Daltonics (Billerica, MA) ApexII 7Oeエレクトロスプレーイオン化フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析装置に基づいた。能動遮蔽は、超電導磁石からの大部分の漏れ磁場を比較的小さな体積に束縛する。したがって、CRTモニター、ロボット構成要素、および他のエレクトロニクスなどの、浮遊磁場により有害な影響を受けるおそれのある構成要素が、FTICRスペクトロメータに近接して作動することができる。パルスシーケンス制御およびデータ取得の全ての局面は、Windows NT 4.0オペレーティングシステムでBruker's Xmassソフトウェアを実行している600MHz Pentium IIデータステーションで行った。試料の一定分量、典型的には15μlは、FTICRデータステーションによりトリガーされたCTC HTS PALオートサンプラー(LEAP Technologies, Carrboro, NC)を使用して96ウェルマイクロタイタープレートから直接抽出した。試料を、ESI源に流速100μl/hrで供給する流体工学ハンドリングシステムと統合された10μl試料ループに直接インジェクトした。ガラス製脱溶媒キャピラリーの金属被覆末端から約1.5cmに位置する軸外し研磨エレクトロスプレープローブを採用している修正Analytica (Branford, CT)源でエレクトロスプレーイオン化によりイオンを形成させた。データ取得の間、ガラス製キャピラリーの大気圧末端は、ESIニードルに対して6000Vにバイアスをかけた。乾燥N2の向流を採用して、脱溶媒工程を援助した。イオンは、rfのみの六重極、スキマーコーン(skimmer cone)、および補助ゲート電極から構成される外部イオンリザーバーに蓄積してから、トラップイオンセル(trapped ion cell)にインジェクトし、そこでイオンを質量分析した。イオン検出の間に外部イオンリザーバーにイオンを同時に蓄積させることによって、>99%というイオン化のデューティーサイクルを実現した。各検出事象は、2.3秒にわたりデジタル化された1Mのデータポイントからなった。信号雑音比(S/N比)を向上させるために、合計74sのデータ取得時間について32回のスキャンを同時加算した。
【0137】
ESI-TOF質量分析装置は、Bruker Daltonics MicroTOF (商標)に基づく。ESI源からのイオンは、直交型イオン取り出し(orthogonal ion extraction)を受け、リフレクトロンで集束されてから検出される。TOFおよびFTICRは、上記の同一の自動化試料取扱いおよび流体工学を備える。イオンは、FTICR ESI源と同じ軸外しスプレー装置およびガラス製キャピラリーを備える標準MicroTOF (商標) ESI源に形成される。その結果、イオン源の状態は上記と同じであった。データ取得の間のイオン化のデューティーサイクルを上げるために、外部イオン蓄積もまた採用した。TOFに関する各検出事象は、75μsにわたりデジタル化された75,000データポイントから構成された。
【0138】
試料の送達スキームは、試料の一定分量を高い流速でエレクトロスプレー源に迅速にインジェクトさせ、続いて高いESI感度のためにずっと低い流速でエレクトロスプレーさせる。試料をインジェクトする前に、大量の緩衝液を高い流速でインジェクトし、輸送ラインおよびスプレーニードルをすすいで試料の混入/持ち越しを回避した。すすぎ段階の後で、オートサンプラーは次の試料をインジェクトし、流速は低流動にスイッチした。短時間の平衡遅れの後で、データ取得を開始する。スペクトルを同時加算するときに、オートサンプラーは、シリンジのすすぎ、ならびにインジェクターおよび試料輸送ラインをすすぐための緩衝液の吸い上げを継続した。一般に、試料の持ち込みを最小化するために2回のシリンジすすぎおよび1回のインジェクターのすすぎが必要であった。日常的なスクリーニングプロトコールの間に、新しい試料混合物を106秒毎にインジェクトした。最近になって、シリンジニードル用の高速洗浄ステーションが実施されたが、それは、短い取得時間と組み合わせると、1スペクトル/分をちょうど下回る速度で質量スペクトルの取得を促進する。
【0139】
生の質量スペクトルは、内部質量標準を用いて後較正を行い、モノアイソトピック分子量にデコンボリューションした。明白な塩基組成は、相補的一本鎖オリゴヌクレオチドの正確な質量測定から得られた。定量結果は、1ウェルに500分子で各PCRに存在した内部PCR較正標準とピーク高を比較することにより得られる。較正法は、共同所有され、米国仮特許出願第60/545,425号に開示されており、この出願は、全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0140】
実施例5:分子量修飾デオキシヌクレオチド三リン酸を使用した増幅産物の塩基組成の新規判定
四つの天然核酸塩基の分子量が比較的狭い分子量範囲を有することから(A=313.058、G=329.052、C=289.046、T=304.046、表6参照)、塩基組成の割り付けにおける曖昧さの持続的原因は、以下のように起こり得る:異なる塩基組成を有する二つの核酸鎖は、その二つの鎖の間の塩基組成の差がG←→A (-15.994)と同時にC←→T (+15.000)の場合、約1Daの差を有する可能性がある。例えば、A27G30C21T21の塩基組成を有する一つの99塩基長核酸鎖は、理論的分子量30779.058を有するが、塩基組成A26G31C22T20を有する別の99塩基長核酸鎖は、理論的分子量30780.052を有する。分子量における1Daの差は、分子量測定の実験誤差の範囲内のことがあるため、比較的狭い分子量範囲の四つの天然核酸塩基は不確実な要因を課す。
【0141】
本発明は、一つの質量タグ付き核酸塩基および三つの天然核酸塩基を用いた核酸の増幅によって、この理論的に1Daという不確実な要因を除去するための手段を提供する。本明細書で使用する「核酸塩基」という用語は、「ヌクレオチド」、「デオキシヌクレオチド」、「ヌクレオチド残基」、「デオキシヌクレオチド残基」、「ヌクレオチド三リン酸(NTP)」、またはデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)を含む、当技術分野において使われている他の用語と同義である。
【0142】
増幅反応において、またはプライマー自体に四つの核酸塩基(dNTP)のうち一つに顕著な質量を付加することは、G←→Aと同時のC←→T事象から生じる曖昧さから生じる増幅産物(1Daよりも顕著に大きい)の質量に顕著な差を招くものである(表6)。したがって、同じG←→A (-15.994)事象と同時の5-ヨード-C←→T (-110.900)事象は、分子量の差126.894を招く。塩基組成A27G305-ヨード-C21T21の分子量(33422.958)を、A26G315-ヨード-C22T20(33549.852)と比較するならば、理論的な分子量の差は+126.894である。分子量測定の実験誤差は、この分子量の差に関して有意ではない。さらに、99塩基長核酸の測定された分子量と一致する唯一の塩基組成は、A27G305-ヨード-C21T21である。対照的に、質量タグなしの同様の増幅は、18個の可能な塩基組成を有する。
【0143】
(表6)天然核酸塩基および質量修飾核酸塩基である5-ヨード-Cの分子量ならびに移行の結果として生じる分子量の差
【0144】
生物学的因子同定用アンプリコンの質量スペクトルは、レーダー信号処理に広く使用されているものなどの最尤処理装置を使用して独立して分析した。GenXと呼ばれるこの処理装置は、最初に入力データに各塩基組成集合体についての整合フィルターを適用することによって、各プライマーについて質量分析装置への入力の最尤推定を行う。これは、各プライマーについての較正物質に対するGenXの応答を含む。
【0145】
このアルゴリズムは、天然生物および環境混入物という複雑な背景を伴う条件に関する誤検出の確率に対する検出確率のプロットを最大にする性能予測を際立たせる。整合フィルターは、各生物学的因子のために使用されるプライマーセットに与えられた信号値の先験的な期待値である。ゲノム配列データベースは、質量塩基数整合フィルターを規定するために使用される。該データベースは、公知の細菌性生物学的因子の配列を有し、脅威生物および良性バックグラウンド生物を含む。後者は、バックグラウンド生物により生成されたスペクトルシグネチャーを推定し、差し引くために使用される。公知のバックグラウンド生物の最尤検出は、整合フィルターおよび雑音共分散の累積和推定を使用して実行される。バックグラウンドシグナル強度が推定され、整合フィルターと共に使用され、シグネチャーが形成され、そのシグネチャーが次に差し引かれる。最尤工程は、生物のための整合フィルターおよび浄化されたデータのための雑音-共分散の累積和推定を採用して同様の方法でこの「浄化された」データに適用される。
【0146】
各プライマーについての生物学的因子同定用アンプリコンの全塩基組成の振幅を較正し、複数の単一プライマー推定値に基づき、生物毎に最終的な最尤増幅推定を行う。全てのシステム雑音のモデルをこの二段階最尤計算に因子として含める。処理装置は、スペクトルに含まれる各塩基組成の分子数を報告する。増幅反応の完了時に残余するプライマーの量と同様に、適切なプライマーセットに対応する増幅産物の量を報告する。
【0147】
塩基数のぶれは、以下のように実施することができる。「電子PCR」を所望の生物学的因子のヌクレオチド配列に行って、各プライマー対について得ることができるであろう種々の予想される塩基数を得ることができる。例えば、ncbi.nlm.nih.gov/sutils/e-pcr/; Schuler, Genome Res. 7:541-50, 1997を参照されたい。例示的な一つの態様では、Microsoftエクセルワークブックなどの一つまたは複数のスプレッドシートは複数のワークシートを有する。この例では最初に、ワークブック名に類似した名のワークシートがあり、このワークシートは生の電子PCRデータを有する。第二に、生物学的因子名および塩基数を有する「フィルター処理された生物学的因子塩基数」という名のワークシートがあり、ある属および種と同定されない配列を除き、10株未満を有する生物学的因子についての全ての配列を除いた後の、各株についての別々の記録がある。第三に、このプライマー対についての置換、挿入、または欠失の頻度を有するワークシート「シート1」がある。このデータは、「フィルター処理された生物学的因子塩基数」ワークシートの中のデータからピボットテーブルを最初に作成し、次にエクセルVBAマクロを実行することにより生成する。このマクロは、同じ種であるが異なる株である生物学的因子についての塩基数における差のテーブルを作成する。当業者は、過度に実験せずに類似のテーブルの差を得るための追加の経路を了解することができる。
【0148】
例示的なスクリプトの適用は、ユーザが各生物学的因子についての塩基数の参照セットにより表される、株の画分を特定化する閾値を規定することを伴う。各生物学的因子についての塩基数の参照セットは、閾値を満たすかまたは閾値を超えるために必要な数の異なる塩基数を有してもよい。参照塩基数のセットは、最も豊富に存在する株の塩基型組成を取得し、参照セットにそれを加算することによって規定され、次にそれからその閾値に一致するか、それを超えるまで、その次に最も存在度の大きい株の塩基型組成を加算する。現在のセットのデータは、経験的に得られた閾値55%を使用して得られたものである。
【0149】
この生物学的因子についての参照塩基数セットに含まれない各塩基数について、スクリプトは、次に現在の塩基数が参照セットの中の各塩基数と異なる様式を判定するように進行する。この差は、置換Si=Xi、および挿入Ii=Yi、または欠失Di=Ziの組み合わせとして表すことができる。複数の参照塩基数があるならば、報告される差は、変化数を最小にすること、そして同じ変化数の場合には挿入または欠失数を最小にすることを目標にした規則を使用して選択される。したがって、主要な規則は、最小和(Xi+Yi)または(Xi+Zi)、例えば二つの置換よりも一つの挿入に関する差を同定することである。最小和に関して二つまたはそれ以上の差があるならば、報告される差は最も多く置換を有する差である。
【0150】
塩基数および参照組成の間の差は一つ、二つ、またはそれ以上の置換、一つ、二つ、またはそれ以上の挿入、一つ、二つ、またはそれ以上の欠失、および置換と挿入または欠失との組み合わせに分類される。異なるクラスの核酸塩基変化およびそれらの発生確率は、米国特許出願公開第2004209260 (米国出願第10/418,514号)に述べられており、この出願は、全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0151】
本明細書に記載する修飾に加えて、本発明の様々な修飾は、前述の説明から当業者に明白であろう。そのような修飾もまた、添付の特許請求の範囲内に入ると意図される。本出願に引用される(雑誌の記事、米国および米国以外の特許、特許出願公開、国際特許出願公開、遺伝子バンクアクセッション番号、インターネットのウェブサイトなどを非限定的に含む)各参照は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。当業者は、多数の変更および修飾が本発明の態様に加えられ得ること、およびそのような変更および修飾が本発明の精神から逸脱せずに加えられ得ることを認識しているものである。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の精神および範囲の中に入る全てのそのような等価な変形を包含すると意図される。
【図面の簡単な説明】
【0152】
本発明の前述の概要および以下の本発明の詳細な説明は、限定ではなく例示として含まれる添付の図面と共に読むと、よりよく理解される。
【0153】
【図1】代表的なプライマー対選択工程を図解する工程図である。
【図2】代表的なプライマー対確認工程を図解する工程図である。
【図3】プライマー対番号2293および2294を用いた、HTLV-1およびHTLV-2の核酸の増幅により得られた、HTLV-1およびHTLV-2の増幅産物の質量スペクトルを示す。
【図4】ヒトおよびサルレトロウイルスHTLVおよびSTLVの増幅産物の3D塩基組成プロットを示す。
【図5】SV40ウイルス、BKウイルス、およびJCウイルスの増幅産物の3D塩基組成プロットを示す。
【図6】ポリオーマウイルスの増幅産物の3D塩基組成プロットを示す。
【図7】パピローマウイルスの増幅産物の3D塩基組成プロットを示す。
【図8】二つのウイルス(細胞系由来HPV-18およびプラスミド由来HPV-6b)の検出のダイナミックレンジの判定を示す。
【図9】較正法の態様を例示する工程図である。
【図10】合成DNA較正物質に対するプライマーの感度の試験を示す。表4からのプライマーサブセットを限界希釈研究に使用した(1ウェルあたり5,000コピーから始めた較正物質構築物の2倍希釈系列)。
【図11】図11aは、プライマーが設計されたHBV核酸配列(配列番号:338)の高度に保存された領域を示す。図11bは、プライマー対1245および1247の実験的確認における質量スペクトルおよび算出された塩基組成。各対は、独特な予想される増幅産物を生成した。1247は、反応に含まれた他の非HBV性非ヘパドナウイルス科ウイルスを検出しなかった。
【図12】AGCT空間における全ての公知のレスピロウイルス単離物の分布を示す3D塩基組成プロットである。
【図13】図13aは、プニューモノウイルス(Pneumonovirinae)亜科の分布を示す3D塩基組成プロットである。図13bは、三つの異なるATCC培養単離物(VR955、1400、および1401)を使用し、プライマー対2441 (上)および2448 (下)を用いたRSV-Bの検出。産物はRSV-B検出について予想される塩基組成と一致する。
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、一般に外来混入ウイルスの遺伝的同定および定量の分野に関し、分子量分析または塩基組成分析と組み合わせたときに、この目的に有用な方法、組成物、およびキットを提供する。
【0002】
関連出願
本出願は、2005年11月28日出願の米国特許仮出願第60/740,617号の優先権の利益を主張する。生物学的因子(bioagent)の同定のための方法は、米国特許出願第10/156,608号、第09/891,793号、第10/418,514号、第10/660,997号、第10/660,122号、第10,660,996号、第10/660,998号、第10/728,486号、第10/405,756号、第11/060,135号、第11/073,362号、および第60/545,425号に開示および請求され、これら出願の全ては共同所有され、全体としてすべての趣旨で参照により本明細書に組み入れられる。
【0003】
政府の支援の記載
本発明は、NIH契約番号N01 AI40100の米国政府支援を受けてなされたものである。米国政府は、本発明に一定の権利を有し得る。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
外来ウイルス性因子は、培養細胞、細胞系の細胞基質由来生物学的物質(ヒトに使用するためのワクチンおよび抗体を含む)の使用に関連する重大なリスクとなる。したがって、細胞および生物学的物質中、ならびにヒト試料中のこれらのウイルスを検出する方法が必要である。ウイルス混入の可能性は、初代培養、樹立培養、ならびにマスター細胞バンク、最終産物細胞、および原体採集液に存在する。形質転換のメカニズムが未知である腫瘍性不死化細胞の使用への重大な障害は、これらの細胞が発癌ウイルスを含有する高いリスクを有するおそれがあることである。したがって、ワクチンの安全性を確認するためには、潜在的に外来性の因子の存在についての大規模な試験が必要である。この目的に使用される方法の中には、動物への接種、電子顕微鏡法、およびウイルス性因子についての選別を行うインビトロ分子アッセイおよび抗体アッセイがある。
【0005】
安全性を評価するために考慮すべき重大な事柄は、トリ、マウス、非ヒト霊長類、およびヒト細胞系を使用する間の内因性レトロウイルス配列の検出である。内因性レトロウイルス配列は、真核生物ゲノムの構成部分であり、これらの配列の大部分は不完全であるが、少数が長期培養に応じて自然発生的に、または正常な生産システムの一部であり得る様々な化学薬剤もしくはその他の薬剤を用いた処理後に誘導的にのいずれかで、感染性ウイルスを生成するおそれがある。生物製剤の生産のために使用される細胞基質中で内因性感染性レトロウイルスが活性化される潜在性は、特に高いワクチン力価を保つために精製および不活性化段階が最小化されているウイルス生ワクチンの場合に重大な安全上の懸念である。
【0006】
現在確立されている、逆転写酵素(RT)活性を測定する方法には、1〜10ビリオンを検出することができる高感度の産物増強逆転写酵素アッセイ(PERT)および感染性レトロウイルス粒子を同定するために使用される透過電子顕微鏡法(TEM)が含まれる。しかし、これらの技法は特異的ではなく、RT活性の起源に関して全く情報を提供しない。PCRに基づくレトロウイルスの検出は、検出感度を上げるため、または被験試料に存在する特定の外来因子を同定するために、逆転写酵素、電子顕微鏡法、感染性、または同時培養などの他のアッセイと共に使用することができる。低レベルのRT活性は一般に複製因子と関連しないことを、一部の研究が実証しているが、宿主ゲノム組み込みの可能性を有する、ワクチンにおけるそのような非生産性、非複製性不完全感染の影響に関して重大な懸念が残る。
【0007】
レトロウイルスにより誘導される腫瘍形成は、複製適格配列と複製欠損配列との間の組換えおよび/またはレトロウイルス配列の上流もしくは下流の挿入が原因の末端反復配列(LTR)による細胞性癌遺伝子の活性化により、新規な病原ウイルスの生成を伴うことがある。RT含有粒子によるヒト細胞での外来性レトロウイルス配列の組み込みの可能性と取り組むために、多数のPCR戦略が使用されてきた。これらには、高度に保存されたpol領域由来のプライマーを使用したDNアーゼ処理接種物の直接PCR、および組み込み体のウイルス-細胞DNA接合部を特異的に増幅するAluプライマーと共にLTRプライマーを使用したAlu PCRが含まれる。
【0008】
外来因子を検出する将来的な戦術は、三つの基本的な問題と理想的に取り組むであろう。第一に、潜在的混入物である多数の公知のウイルス性因子があり、それは、それぞれ多数の潜在的株変異体を有する。第二に、歴史から、全ての外来因子が予測されるウイルス科に入るわけではないことが示されたため、予測されないウイルス科もまた考慮しなければならない。第三に、標準化された、ハイスループットな、品質管理されたやり方で多数の試料にて行うために、試験は実際的でなければならない。本明細書に開示される化合物、組成物、および方法は、これまでに未知/性質未決定のウイルスおよび内因性レトロウイルスを含む広範囲の外来ウイルス性因子を検出するために広範囲の生物学的因子を迅速、高感度、費用効果的に検出するための、広範囲なPCR反応物の質量分析を包含する、最近開発および確認された方法の使用に基づく。
【0009】
パルボウイルス科には、約4〜5キロ塩基長の小型一本鎖DNAウイルスを有するパルボウイルス亜科が含まれ、複数の属が含まれる。例えば、ディペンドウイルス属にはヒトヘルパー依存性アデノ随伴ウイルス(AAV)血清型1から8 (AAV1〜8)および自律的なトリパルボウイルスが含まれ、エリスロウイルス属には、ウシ、シマリス、および自律的な霊長類パルボウイルス(ヒトウイルスB19およびV9を含む)が含まれ、パルボウイルス属には、マウス微小ウイルス(MMV)を含む、他の動物ならびに齧歯類(シマリス以外の)、肉食動物、およびブタのパルボウイルスが含まれる。これらのパルボウイルス科のメンバー、すなわちパルボウイルスは、いくつかの細胞型に感染することができ、臨床試料中に記載されている。特にAAVは、他のウイルスの複製、伝播、および増殖の減少に関連づけられている。
【0010】
外因性レトロウイルスは、広範囲の種にわたる動物に様々な悪性疾患および非悪性疾患を引き起こすことが知られている。これらのウイルスは大部分の公知の動物および齧歯類に感染する。例には、デルタレトロイドウイルス(Deltaretroidvirus)(HTLV1〜4、STLV1〜3)、ガンマレトロウイルス(マウス白血病ウイルス、PERV)、アルファレトロウイルス(トリ白血病ウイルスおよびトリ内在性ウイルス)、およびヒト免疫不全ウイルス1および2が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0011】
ポリオーマウイルスは小型dsDNAウイルスであり、ヒト、霊長類、齧歯類、ウサギ、および鳥類を含むいくつかの種に感染することができる。それらの腫瘍原性および癌原性の潜在能力が原因で、ワクチン生産に使用されている細胞基質中のこれらのウイルスについて試験することが重要である。
【0012】
パピローマウイルス科のウイルスは、様々な宿主特異性および配列相同性を示す150を超える既知種を有する。これらは、哺乳類(ヒト、サル、ウシ、イヌ、ヒツジ)および鳥類で同定されている。ヒトパピローマウイルス(HPV)の大部分は、伝統的に性器HPVおよび粘膜HPVと呼ばれる全ての型のHPVを含めて上位群Aに属する。上位群Aの中には11群があり、これらの中で医学的に最も重要なのはヒトパピローマウイルスHPV16、HPV18、HPV31、HPV45、HPV11、HPV6、およびHPV2である。これらのそれぞれは、医学文献で「ハイリスク」ウイルスと報告されている。
【0013】
潜在的外来混入物である他のウイルス科には、ヘルペスウイルス科(ヒトヘルペスウイルス1型から8型、ウシヘルペスウイルス、イヌヘルペスウイルス、およびサルサイトメガロウイルス)、ヘパドナウイルス科(B型肝炎ウイルス[HBV]を含む)、ヘペウイルス科(E型肝炎ウイルス)、デルタウイルス(δ型肝炎ウイルス)、アデノウイルス科(ヒトアデノウイルスA〜Fおよびマウスアデノウイルス)、フラビウイルス科(ウシウイルス性下痢ウイルス、TBE、黄熱ウイルス、デングウイルス1型〜4型、WNV、およびC型肝炎ウイルス)、トガウイルス科(西部ウマ脳脊髄炎ウイルス)、ピコルナウイルス科(ポリオ(1〜13型)、ヒトA型肝炎ウイルス、ヒトコクサッキーウイルス、ヒトカルジオウイルス、ヒトライノウイルス、およびウシライノウイルス)、レオウイルス科(マウスロタウイルス、レオウイルス3型、およびコロラドダニ熱ウイルス)、およびラブドウイルス科(水疱性口内炎ウイルス)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0014】
パラミクソウイルス科は、相互にはっきり異なる二つの亜科および七つの属を代表的なものとして含む。この科の主要なウイルス属のいくつかには、レスピロウイルス(主要種:ヒトおよびサルパラインフルエンザウイルス1型および3型(PIV1、PIV3)、ならびにセンダイウイルス)、ニューモウイルス、ルムラウイルス(Rumulavirus)、およびアブラウイルスが含まれる。ニューモウイルス亜科には、ニューモウイルス属およびメタニューモウイルス属の両方が含まれる。これらの群のいくつかの主要なメンバーには、ヒトおよびウシ呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、ヒトメタニューモウイルス(HMPV)、およびマウス肺炎ウイルスが含まれる。パラミクソウイルス科にはまた、サルパラインフルエンザウイルス5型も含まれる。
【0015】
とりわけ本明細書に提供されるのは、外来混入ウイルスを同定する方法である。オリゴヌクレオチドプライマー、プライマー対、そのオリゴヌクレオチドプライマーを含む組成物およびキットもまた提供され、これらのプライマーは、ウイルス性生物学的因子同定用アンプリコンを規定し、増幅に応じて対応する増幅産物を生成し、その増幅産物の分子量は、種または亜種レベルで外来混入ウイルスを同定する手段を提供する。
【発明の開示】
【0016】
発明の概要
とりわけ本明細書に提供するのは、外来混入ウイルスを検出、その存在もしくは非存在を判定、それを同定、またはそれを定量する方法である。保存された配列領域にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプライマーおよびプライマー対を含めた化合物もまた提供し、その各対は、ウイルス性生物学的因子同定用アンプリコンを規定している可変領域または介在可変領域に隣接する。本明細書に提供する化合物を含む組成物およびキット、ならびに外来混入ウイルスの存在または非存在の同定、定量、検出、および/または判定のために、そのようなプライマー、プライマー対、組成物、およびキットを使用するための方法もまた提供する。保存された配列領域および可変領域を増幅して、ウイルス遺伝子をコードしている核酸のウイルス性生物学的因子同定用アンプリコンすなわち増幅産物を生成するように、これらのプライマーを設計する。プライマー対を含む組成物およびそれを含むキットは、外来混入ウイルスの種および亜種の同定、検出、ならびに特徴付けを提供するように設計する。本明細書においてパルボウイルス科、ヘパドナウイルス科、およびパラミクソウイルス科、ならびにパルボウイルス亜科、ディペンドウイルス、パルボウイルス、エリスロウイルス、HBV、ニューモウイルス亜科、レスピロウイルス、アブラウイルス、およびルブラウイルスという亜科、属、および種、ならびにその亜種および株のメンバーを同定および検出するために、例えば、組成物、プライマー対、キット、および方法を提供する。
【0017】
いくつかの態様では、試料中の外来混入ウイルスの存在または非存在を同定、検出、または判定する方法を提供する。いくつかの態様では、ウイルス由来の核酸は、本明細書に開示する化合物を使用して増幅され、増幅産物が得られる。増幅産物の分子量を判定する。判定された分子量は、外来混入ウイルス同定用アンプリコンの複数のインデックス付き分子量を含むデータベースと比較され、ここで、判定された分子量とデータベース中の分子量との間の一致は、外来混入ウイルスの存在を同定または表示する。いくつかの態様では、分子量を質量分析により測定する。いくつかの態様では、質量分析はフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析(FT-IRC-MS)である。いくつかの態様では、質量分析は飛行時間型質量分析である(TOF-MS)。いくつかの態様では、少なくとも一つのプライマー対を使用する。いくつかの態様では、少なくとも二つのプライマー対を使用する。いくつかの態様では、少なくとも四つのプライマー対を使用する。いくつかの態様では、増幅する段階を多重PCRにより実施する。
【0018】
いくつかの態様では、増幅産物の塩基組成を、判定された分子量から算出する。算出された塩基組成は、外来混入ウイルス同定用アンプリコンの複数のインデックス付き塩基組成を含むデータベースと比較され、ここで、算出された塩基組成とデータベース中の塩基組成との一致は、外来混入ウイルスの存在を同定または表示する。
【0019】
いくつかの態様では、外来混入ウイルスはパルボウイルス科のメンバー、すなわちパルボウイルス科ウイルスである。いくつかの局面では、パルボウイルス科のメンバーはディペンドウイルス属のメンバーである。いくつかの局面では、それはエリスロウイルス属のメンバーである。いくつかの態様では、それはパルボウイルス属のメンバーである。いくつかの態様では、パルボウイルス科ウイルスを同定する方法に使用される保存された配列領域は、NS1タンパク質をコードしている遺伝子の部分を含む。いくつかの態様では、パルボウイルス科ウイルスを同定する方法に使用される保存された配列領域は、VP1タンパク質をコードしている遺伝子の部分を含む。したがって場合によっては、プライマーはNS1タンパク質をコードしている核酸にハイブリダイズするが、場合によっては、それらのプライマーはVP1タンパク質をコードしている核酸にハイブリダイズする。
【0020】
いくつかの態様では、外来混入ウイルスは、パラミクソウイルス科のメンバー、すなわちパラミクソウイルス科ウイルスである。いくつかの局面では、パラミクソウイルス科のメンバーはレスピロウイルス属のメンバーである。いくつかの局面では、それはアブラウイルス属のメンバーである。いくつかの態様では、それはルブラウイルス属のメンバーである。いくつかの態様では、パラミクソウイルス科のメンバーはニューモウイルス亜科のメンバーである。いくつかの態様では、パラミクソウイルス科ウイルスを同定する方法に使用される保存された配列領域は、RbRpタンパク質をコードしている遺伝子の部分を含む。したがって場合によっては、それらのプライマーはRbRpタンパク質をコードしている核酸にハイブリダイズする。
【0021】
いくつかの態様では、外来混入ウイルスはヘパドナウイルス科のメンバー、すなわちヘパドナウイルス科ウイルスである。いくつかの局面では、ヘパドナウイルス科のメンバーはHBVウイルスである。いくつかの態様では、ヘパドナウイルス科ウイルスを同定する方法に使用される保存された配列領域は、配列番号:338のヌクレオチド180〜453の部分、配列番号:338のヌクレオチド1375〜1436の部分、または配列番号:338のヌクレオチド1777〜1876の部分を含む。したがっていくつかの態様では、ヘパドナウイルス科ウイルスを同定するために使用されるプライマー対は、配列番号:338のヌクレオチド180〜453の部分、配列番号:338のヌクレオチド1375〜1436の部分、または配列番号:338のヌクレオチド1777〜1876の部分にハイブリダイズする。この配列は、単に参照配列として提示する。本明細書に提供する化合物が、保存された配列領域にハイブリダイズすることから、それらの化合物は、標的配列と必ずしも100%相補的ではなく、多くの場合に複数の配列に結合することができ、例えば一つの態様ではゲノム内の全種に結合できる。
【0022】
いくつかの態様では、試料中の外来混入ウイルスの量の判定のための化合物、組成物、キット、および方法を提供する。試料を、本明細書に記載する組成物と、公知の量の較正ポリヌクレオチドもしくは較正配列を含む較正物質とを接触させる。試料中の外来混入ウイルス由来の核酸および較正ポリヌクレオチド由来の核酸は、本明細書上記に提供された化合物を用いて同時に増幅され、外来混入ウイルス同定用アンプリコンを含む第一増幅産物および較正アンプリコンを含む第二増幅産物の両方が得られる。外来混入ウイルス同定用アンプリコンおよび較正アンプリコンについての分子量および存在量を判定する。外来混入ウイルス同定用アンプリコンは、分子量に基づき較正アンプリコンと区別され、ここで外来混入ウイルス同定用アンプリコンの存在量および較正アンプリコンの存在量の比較は、試料中の外来混入ウイルスの量を表示する。いくつかの態様では、外来混入ウイルス同定用アンプリコンの塩基組成が判定される。
【0023】
いくつかの態様では、本明細書に提供する方法に使用するための、本明細書に提供する化合物を使用するキットを提供する。いくつかの局面では、キットは、少なくとも一つの較正ポリヌクレオチドを含む。いくつかの局面では、キットは、磁気ビーズに結合した少なくとも一つのイオン交換樹脂を含む。いくつかの局面では、それらのキットは多重反応に使用することができ、本明細書に提供するプライマー対は、多重PCR反応に使用されるように設計される。
【0024】
いくつかの態様では、提供する化合物および組成物は、少なくとも一つの修飾された核酸塩基を含む。いくつかの局面では、修飾された核酸塩基は、質量修飾された核酸塩基またはユニバーサル核酸塩基を含む。いくつかの局面では、それは5-ヨード-Cである。いくつかの局面では、それは5-プロピニルウラシルまたは5-プロピニルシトシンである。いくつかの局面では、それはイノシンである。いくつかの態様では、プライマーは5'末端に鋳型をもたない(non-templated)T残基を含む。いくつかの態様では、それらは少なくとも一つの非鋳型タグを含む。いくつかの態様では、それらは少なくとも一つの分子量修飾タグを含む。
【0025】
いくつかの態様では、化合物、組成物、またはキットは、本明細書に開示するプライマー対と、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を有するプライマー対を含む。
【0026】
態様の詳細な説明
本発明に関連して、「生物学的因子」は、生存もしくは死滅している任意の生物、細胞、もしくはウイルス、またはそのような生物、細胞、もしくはウイルス由来の核酸である。生物学的因子の例には、ヒト臨床試料、細胞培養物、細菌細胞および他の病原体を非限定的に含む細胞、ウイルス、ウイロイド、真菌、原生生物、寄生虫、ならびに病原性マーカー(病原性アイランド、抗生物質耐性遺伝子、病原性因子、毒素遺伝子、および他の生物学的調節化合物を非限定的に含む)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。試料は、生存もしくは死滅していてもよく、栄養生長状態(例えば栄養型細菌または胞子)であってもよく、封入または生物学的に操作されていてもよい。本発明に関連して、「病原体」は、疾患または障害を引き起こす生物学的因子である。
【0027】
本明細書で使用する場合、「インテリジェントプライマー(intelligent primer)」、「プライマー」、または「オリゴヌクレオチドプライマー」は、介在可変領域に隣接する、生物学的因子の核酸の高度に保存された配列領域に結合するように設計されたオリゴヌクレオチドである。「オリゴヌクレオチドプライマー対」または「プライマー対」という用語は、増幅に応じて増幅産物すなわち生物学的因子同定用アンプリコンを生じる二つのプライマー(フォワードプライマーおよびリバースプライマー)を表す。
【0028】
いくつかの態様では、生物学的因子同定用アンプリコンすなわち増幅産物は、約45から約200核酸塩基(すなわち約45から約200個の連結したヌクレオシド)を含む。当業者は、本発明が、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、および200核酸塩基長、またはその中の任意の範囲の化合物を具体化することを認識しているであろう。
【0029】
増幅産物すなわちアンプリコンは、個別の生物学的因子を識別するのに十分な塩基組成可変性を理想的には提供し、これは分子量分析に受け入れられる。塩基組成および分子量の可変性は、塩基組成および/または分子量の識別に基づき一つまたは複数の個別の生物学的因子の同定を可能にする。本明細書に提供するプライマー対は、ある命名法により名付けられる。各プライマー対は「プライマー対番号」および「プライマー対名」が与えられる。プライマー対の中の各プライマー(フォワードおよびリバース)もまた「プライマー名」が与えられる。プライマー対の中の各プライマーは、配列番号もまた割り付けられ、本明細書におけるいくつかの場合では、配列番号の対を使用してプライマー対を同定する。例えば、「配列番号70:275により表されるプライマー対」または単に「配列番号70:239」は、フォワードプライマーが配列番号:70を含み、リバースプライマーが配列番号:239を含むプライマー対を表す。
【0030】
本明細書に開示する「プライマー名」および「プライマー対名」は、標準命名法により与えられ、各プライマー対についての参照配列の呼称を含む。例えば、プライマー対番号377についてのフォワードプライマー番号は、RLV_X03614_2256_2279_Fである。「F」は、このプライマーがその対のフォワードプライマーであることを示す。X03614は、プライマーがハイブリダイズまたは標的化される配列の例である参照配列を表す。この場合、参照配列はGenBankアクセッション番号X03614である。参照配列識別子の後の数字は、そのプライマーがハイブリダイズする参照配列中の残基(2256〜2279)を同定する。「RLV」はプライマー対識別子であり、このプライマーがレスピロウイルスにハイブリダイズすることを示す。本明細書に提供するプライマーは保存された配列領域にハイブリダイズし、したがって複数の生物学的因子に、多くの場合一つまたは複数の種または株にハイブリダイズすることから、プライマー対識別子および参照配列識別子は単に参照目的であって、そのプライマーがその参照配列にのみハイブリダイズすることを示すことを意図しない。表2に本明細書で使用するプライマー対ウイルス識別子の名および説明を列挙する。
【0031】
「高度に保存された」という用語により、その配列領域が全ての中で約80〜100%、約90〜100%、もしくは約95〜100%の同一性、または属、種、もしくは株の少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも99%を示すことを意味する。さらに、本明細書に提供するプライマー対のプライマーメンバーの配列は、参照配列の保存された配列領域に必ずしも完全には相補的でない。むしろこれらの保存された配列領域を含む複数の生物学的因子の間で「最良適合」するように、プライマーを設計する。したがって、プライマー対のメンバーは、参照配列を含めた、生物学的因子配列の保存された領域と実質的な相補性を有する。
【0032】
本明細書で使用する場合、「実質的な相補性」という用語は、標的配列または参照配列に対する約70%から約100%、約80%から約100%、約90%から約100%、約95%から約100%、または約99%から約100%の相補性を表す。これらの相補性の範囲は、列挙する範囲の数に包含される全体数または部分数の全てを含む。例えば限定ではなく、75.667%、82%、91.2435%、および97%は、全て上に列挙する約70%から約100%の範囲に入ることから、この記載の一部を形成している。したがって、本明細書に提供するプライマーは、本明細書に開示するプライマー配列と約70%から約100%、約80%から約100%、約90%から約100%、約95%から約100%、または約99%から約100%の配列同一性を含んでもよい。
【0033】
本明細書で使用する場合、「ハウスキーピング遺伝子」は、生物学的因子の生存および再生に必要な基本的機能に関与するタンパク質またはRNAをコードしている遺伝子を表す。ハウスキーピング遺伝子には、翻訳、複製、組換えおよび修復、転写、ヌクレオチド代謝、アミノ酸代謝、脂質代謝、エネルギー発生、取込み、分泌等に関与するRNAまたはタンパク質をコードしている遺伝子が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0034】
本明細書で使用する場合、「広範囲調査(broad range survey)プライマー」は、特定の階級(例えば目、科、綱、クレード、属、または生物学的因子の種レベルよりも上の生物学的因子の他のそのような分類)のメンバーとして未知の生物学的因子を同定するために設計されたインテリジェントプライマーである。場合によっては、広範囲調査プライマーは、種レベルまたは亜種レベルで未知の生物学的因子を同定することができる。本明細書で使用する場合、「階級全域(division-wide)プライマー」は、生物学的因子を種レベルで同定するために設計されたインテリジェントプライマーであり、「掘り下げ(drill-down)」プライマーは、生物学的因子を亜種レベルで同定するために設計されたインテリジェントプライマーである。本明細書で使用する場合、「亜種」レベルの同定には、株、亜型、変種、および単離物が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0035】
本明細書で使用する場合、「生物学的因子の階級」は、種レベルよりも上の生物学的因子の群と定義され、これには、門、科、綱、クレード、属、または種レベルよりも上の生物学的因子の他のそのような分類が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0036】
本明細書で使用する場合、「亜種特性」は、同じ生物学的因子種の二つのメンバーを識別する手段を提供する遺伝的特性である。例えば、一つのウイルス株は、RNA依存性RNAポリメラーゼなどの、ウイルス遺伝子の一つに遺伝子変化(例えばヌクレオチドの欠失、付加、または置換)を有することにより同一種の別のウイルス株と識別することができよう。
【0037】
本明細書で使用する場合、「生物学的因子同定用アンプリコン」という用語は、増幅反応において生物学的因子から増幅され、1) 各個別の生物学的因子を識別するのに十分な可変性を提供し、2) その分子量が塩基組成を算出しやすいポリヌクレオチドを表す。
【0038】
本明細書で使用する場合、「塩基組成」は、所与の核酸配列中の各核酸塩基(A、T、C、およびG)の正確な数である。塩基組成は、生物学的因子同定用アンプリコンの分子量から算出することができる。
【0039】
本明細書で使用する場合、「塩基組成確率雲(probability cloud)」は、所与の種の異なる単離物の間で起きる配列変動に起因する塩基組成の多様性を表示したものである。「塩基組成確率雲」は、それぞれの種についての塩基組成の制約を表し、典型的には疑似四次元プロットを使用して視覚化される。
【0040】
本明細書で使用する場合、「データベース」という用語は、分子量および/または塩基組成のデータのコレクションを表すために使用する。データベース中の塩基組成および分子量のデータは、生物学的因子およびプライマー対に対してインデックスを付与される。データベースに報告される塩基組成データは、各プライマーを使用して各生物学的因子について生成されるアンプリコン中の各ヌクレオシドの数を含む。データベースに経験的なデータを投入することができる。データベースに投入するこの局面では、生物学的因子が選択され、アンプリコンを生成するためにプライマー対を使用する。アンプリコンの分子量を、質量分析装置およびそれから算出された塩基組成を使用して判定する。データベースへの登録は、使用する生物学的因子およびプライマー対と塩基組成を関連づけるために行われる。データベースに、生物学的因子の情報を含む他のデータベースを使用して投入してもよい。例えば、GenBankデータベースを使用して、プライマー対の電子表示を使用して電子PCR(electronic PCR)を行うことができる。このインシリコ法は、GenBankデータベースに保存されている任意または全ての選択された生物学的因子についての塩基組成を提供するものである。次に、この情報を使用して、上記のように塩基組成データベースに投入する。塩基組成データベースは、一般にインシリコ、書かれた表、参考書物、スプレッドシート、またはデータベースにしやすい任意の形式であってよい。好ましくは、それはインシリコである。
【0041】
本明細書で使用する場合、「ゆらぎ塩基」は、DNAトリプレットの3番目のヌクレオチド位置にみられるコドンにおける変動である。配列の保存された領域における変動は、アミノ酸コードの冗長性が原因で3番目のヌクレオチド位置にみられることが多い。
【0042】
本発明に関連して、「未知の生物学的因子」という用語は、(i) 存在が公知である(例えば周知の細菌種黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)など)が、分析される試料中に存在することは分かっていない生物学的因子、または (ii) 存在が未知の生物学的因子(例えば2003年4月以前にはSARSコロナウイルスは未知であった)のいずれかを意味し得る。例えば、共同所有される米国特許出願第10/829,826号(その全体が参照により本明細書に組み入れられる)に開示されたコロナウイルスの同定の方法を、2003年4月以前に採用し、臨床試料中のSARSコロナウイルスを同定した場合、2003年4月以前にSARSコロナウイルスは科学界に未知であり、どの生物学的因子(この場合はコロナウイルス)が試料中に存在するかも未知であったことから、両方の意味の「未知の」生物学的因子が適用可能である。他方で、米国特許出願第10/829,826号の方法を、2003年4月以降に採用し、臨床試料中のSARSコロナウイルスを同定した場合、SARSコロナウイルスが2003年4月以降に科学界に公知になり、試料中にどの生物学的因子が存在するかは未知であったことから、最初の意味(i)の「未知の」生物学的因子だけが適用されたであろう。
【0043】
本明細書で使用する場合、「三角同定(triangulation identification)」は、生物学的因子の同定のための複数の生物学的因子同定用アンプリコンの採用を意味する。
【0044】
本発明に関連して、「ウイルス核酸」は、DNA、RNA、または例えば逆転写反応を行うことなどによってウイルスRNAから得られたDNAが含まれるが、それらに限定されるわけではない。ウイルスRNAは、一本鎖(陽極性または陰極性の)または二本鎖のいずれかであってよい。
【0045】
本明細書で使用する場合、「病因」という用語は、疾患または異常な生理状態の原因または起源を表す。
【0046】
本明細書で使用する場合、「核酸塩基」という用語は、「ヌクレオチド」、「デオキシヌクレオチド」、「ヌクレオチド残基」、「デオキシヌクレオチド残基」、「ヌクレオチド三リン酸(NTP)」、またはデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)を含む、当技術分野で使用される他の用語と同義である。
【0047】
本発明は、生物学的因子同定用アンプリコンを使用した偏らない方式で生物学的因子を検出および同定する方法を提供する。生物学的因子に由来する核酸の保存された配列領域にハイブリダイズするようにプライマーが選択され、プライマーが可変配列領域をはさむことで生物学的因子同定用アンプリコンが得られ、そのアンプリコンを増幅することができ、そのアンプリコンは分子量判定しやすい。次に分子量は、生物学的因子の可能性のある独自性(identity)を事前に知る必要なしに、その生物学的因子を独特に同定する手段を提供する。次に、増幅産物の分子量または対応する塩基組成のシグネチャーを、分子量または塩基組成のシグネチャーのデータベースと照合する。さらに、この方法は、迅速平行多重分析に適用することができ、その結果は、三角同定戦略に採用することができる。本方法は、迅速なスループットを提供し、生物学的因子の検出および同定のために、増幅された標的配列の核酸配列決定を必要としない。
【0048】
莫大な生物学的多様性にかかわらず、地球上の全ての形態の生物は、不可欠な共通の特徴のセットをそれらのゲノムに共有している。遺伝子データは本発明の方法による生物学的因子の同定のために根本的な基礎を提供することから、各個別の生物学的因子を識別するのに十分な可変性を理想的に提供し、分子量が分子量判定しやすい核酸のセグメントを選択することが必要である。
【0049】
全ての生物にわたり多数の遺伝子の保存(すなわちハウスキーピング遺伝子)を示す細菌ゲノムとは異なり、ウイルスは、全てのウイルス科の間で不可欠でありかつ保存されている遺伝子を共有しない。したがって、ウイルスの同定は、特定のウイルス科または属のメンバーなどの、小さな群の関連ウイルス内で実現される。例えば、RNA依存性RNAポリメラーゼは、全ての一本鎖RNAウイルスに存在し、ウイルス科内の広域プライミングおよび分解(resolution)のために使用することができる。
【0050】
いくつかの態様では、少なくとも一つのウイルス核酸セグメントが、生物学的因子を同定する工程で増幅される。したがって、本明細書に開示するプライマーにより増幅することができ、各個別の生物学的因子を識別するのに十分な可変性を提供し、その分子量が分子量判定しやすい核酸セグメントを、本明細書において生物学的因子同定用アンプリコンとして記載する。
【0051】
生物学的因子同定用アンプリコンを構成するのは、プライマーがハイブリダイズする生物学的因子核酸セグメントの部分(ハイブリダイゼーション部位)と、プライマーハイブリダイゼーション部位間の可変領域との組み合わせである。
【0052】
いくつかの態様では、本明細書に記載するプライマーにより生成され、分子量判定しやすい生物学的因子同定用アンプリコンは、特定様式の分子量判定に適合する長さの予測可能な断片を得るために、特定様式の分子量判定と適合するまたは予測可能な断片化パターンを提供する手段に適合する、長さ、サイズ、もしくは質量のいずれかである。増幅産物の予測可能な断片化パターンを提供するそのような手段には、例えば制限酵素または切断プライマーを用いた切断があるが、それらに限定されるわけではない。したがって、いくつかの態様では、生物学的因子同定用アンプリコン、すなわち増幅産物は、200核酸塩基よりも大きく、制限消化後に分子量判定しやすい。制限酵素および切断プライマーを使用する方法は、当業者に周知である。
【0053】
いくつかの態様では、生物学的因子同定用アンプリコンに対応する増幅産物は、分子生物学の分野の専門家にとって日常的な方法であるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して得られる。リガーゼ連鎖反応(LCR)、低ストリンジェンシー単一プライマーPCR、および多鎖置換増幅(MDA)などの他の増幅法を使用することができる。これらの方法もまた当業者に公知である。
【0054】
介在可変領域に隣接する生物学的因子同定用アンプリコンの高度に保存された配列領域に結合し、各個別の生物学的因子を識別するのに十分な可変性を理想的に提供し、分子量分析しやすい増幅産物を生じるように、プライマーは設計される。いくつかの態様では、高度に保存された配列領域は、種、亜種、株、または属の中で約80〜100%、または約90〜100%、または約95〜100%の同一性、または約99〜100%の同一性を示す。所与の増幅産物の分子量は、可変領域の可変性が原因で、その増幅産物が得られた生物学的因子を同定する手段を提供する。したがって、プライマーの設計は、所与の生物学的因子の独自性を解明するのに適した可変性を有する可変領域の選択を必要とする。生物学的因子同定用アンプリコンは、理想的に生物学的因子の独自性に特異的である。
【0055】
生物学的因子の同定は、各個別レベルの同定の分解にふさわしいプライマーを使用して異なるレベルで実現することができる。広範囲調査プライマーは、特定の階級(例えば目、科、属、または生物学的因子の種レベルより上の生物学的因子の他のそのような分類)のメンバーとして生物学的因子を同定する目的で設計される。いくつかの態様では、広範囲調査インテリジェントプライマーは、種または亜種レベルで生物学的因子の同定が可能である。
【0056】
掘り下げプライマーは、亜種の特性に基づき亜種レベル(株、亜型、変種、および単離物を含む)で生物学的因子を同定する目的で設計される。広範囲調査インテリジェントプライマーが場合によってはこの同定目的を実現するに十分である同定用分解を提供することがあるため、掘り下げインテリジェントプライマーは、必ずしも亜種レベルでの同定に必要ではない。
【0057】
プライマー選択および確認工程で使用する代表的な工程フローチャートを図1に概略する。各群の生物について、候補標的配列を同定し(200)、その配列からヌクレオチドアライメントを作製し(210)、分析する(220)。次に、適切なプライミング領域を選択することにより、プライマーを設計し(230)、候補プライマー対の選択が容易になる(240)。次に、電子PCR(ePCR)により、プライマー対をインシリコ分析に供し(300)、ここで、生物学的因子同定用アンプリコンがGenBankまたは他の配列コレクションなどの配列データベースから得られ(310)、インシリコ特異性についてチェックされる(320)。GenBank配列から得られた生物学的因子同定用アンプリコン(310)は、所与のアンプリコンが未知の生物学的因子を同定する能力を予測する確率モデルによってもまた分析することができ、それにより好都合な確率スコアを有するアンプリコンの塩基組成が、次に塩基組成データベースに保存される(325)。または、プライマーおよびGenBank配列から得られた生物学的因子同定用アンプリコンの塩基組成は、塩基組成データベースに直接登録することができる(330)。候補プライマー対(240)は、生物のコレクション由来の核酸のPCR分析(400)などの方法によるインビトロ増幅により確認される(410)。このようにして得られた増幅産物を分析し、増幅産物を得るために使用されたプライマーの感度、特異性、および再現性を確認する(420)。
【0058】
生物兵器因子として最大の懸念である生物を含む、重要な病原体の多くは、完全に配列決定された。この努力は、未知の生物学的因子を検出するためのプライマーおよびプローブの設計を大きく促進した。広域プライミングと階級全域および掘り下げプライミングとの組み合わせは、生物戦争の脅威因子についての環境サーベイランスおよび医学的に重要な病原体についての臨床試料分析を含む、いくつかの技術応用に非常にうまく使用されてきた。
【0059】
プライマーの合成は、当技術分野において周知および日常的である。プライマーは、固相合成の周知の技法により好都合および日常的に作製することができる。そのような合成のための装置は、例えばApplied Biosystems (Foster City, CA)を含むいくつかの業者により販売されている。当技術分野において公知のそのような合成のための他の任意の手段を、追加的または代替的に採用してもよい。
【0060】
プライマーは、以下のようなウイルス性生物学的因子の同定のための方法に使用する組成物として採用される:プライマー対組成物を、未知のウイルス性生物学的因子の核酸(例えばDNAウイルス由来のDNA、またはRNAウイルスのRNAから逆転写されたDNAなど)と接触させる。次に核酸は、例えばPCRなどの核酸増幅技法により増幅され、生物学的因子同定用アンプリコンに相当する増幅産物が得られる。二本鎖増幅産物の各鎖の分子量は、例えば質量分析などの分子量測定技法により判定され、この技法では、二本鎖増幅産物の二つの鎖はイオン化工程の間に分離される。いくつかの態様では、質量分析は、エレクトロスプレーフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析(ESI-FTICR-MS)またはエレクトロスプレー飛行時間型質量分析(ESI-TOF-MS)である。可能な塩基組成のリストは、各鎖について得られた分子量の値について作製することができ、そのリストからの正確な塩基組成の選択は、一方の鎖の塩基組成をもう一方の鎖の相補的塩基組成と照合することにより促進される。このように判定された分子量または塩基組成は、次に公知のウイルス性生物学的因子についての類似の生物学的因子同定用アンプリコンのインデックス付き分子量またはインデックス付き塩基組成を含むデータベースと比較される。増幅産物の分子量または塩基組成と、公知のウイルス性生物学的因子についての類似の生物学的因子同定用アンプリコンの分子量または塩基組成との一致は、その未知の生物学的因子の独自性を示す。いくつかの態様では、使用するプライマー対は、表2のプライマー対の一つである。いくつかの態様では、異なるプライマー対を使用してこの方法が繰り返され、同定工程における潜在的な曖昧さが解決されるか、または同定の割り付けに関する信頼レベルが向上する。
【0061】
いくつかの態様では、例えば低ストリンジェンシー単一プライマーPCR (LSSP-PCR)などの適切な増幅法が選択されるならば、生物学的因子同定用アンプリコンは、単一のプライマー(任意の所与のプライマー対のフォワードまたはリバースプライマーのいずれか)だけを使用して生成することができる。生物学的因子同定用アンプリコンを生成するためのこの増幅法の適応は、過度の実験をせずに当業者により実現され得る。
【0062】
いくつかの場合、広範囲調査プライマー対により規定される生物学的因子同定用アンプリコンの分子量または塩基組成は、種レベルで、またはそれよりも下位で、生物学的因子を明確に同定するのに十分な分解を提供しない。これらの場合は、少なくとも一つの追加の広範囲調査プライマー対から、または少なくとも一つの追加の階級全域プライマー対から生成した一つまたは複数の生物学的因子同定用アンプリコンのさらなる分析から、利益を得る。生物学的因子を同定するための複数の生物学的因子同定用アンプリコンの採用は、本明細書において三角同定と呼ばれる。
【0063】
他の態様では、オリゴヌクレオチドプライマーは、ある属内の複数の種の遺伝子をコードしている核酸にハイブリダイズする階級全域プライマーである。他の態様では、オリゴヌクレオチドプライマーは、亜種特性の同定を可能にする掘り下げプライマーである。掘り下げプライマーは、増幅条件で核酸と接触した場合に、株の分類などの掘り下げ分析のための生物学的因子同定用アンプリコンを生成する機能を提供する。そのような亜種特性の同定は、感染の適正な臨床的処置を判定するために重大なことが多い。いくつかの態様では、亜種特性は、広範囲調査プライマーだけを使用して同定され、階級全域プライマーおよび掘り下げプライマーは使用されない。
【0064】
いくつかの態様では、増幅のために使用するプライマーは、ゲノムDNA、細菌プラスミドのDNA、DNAウイルスのDNA、またはRNAウイルスのRNAから逆転写されたDNAにハイブリダイズしてそれを増幅する。
【0065】
いくつかの態様では、増幅のために使用するプライマーは、ウイルスRNAに直接ハイブリダイズし、ウイルスRNAの直接増幅からDNAを得るための逆転写プライマーとして作用する。逆転写酵素を使用してcDNAを生成するためにRNAを増幅する方法は、当業者に周知であり、過度の実験をせずに日常的に確立することができる。
【0066】
本明細書に記載するプライマーは、特定の標的核酸を標的とする。増幅プライマーの設計分野の技術者は、核酸にハイブリダイズし、増幅反応において相補的核酸鎖の合成を効果的にプライミングするために、所与のプライマーが標的核酸に100%相補的である必要がないことを認識しているであろう。さらにプライマーは、一つまたは複数のセグメントにわたりハイブリダイズすることにより、介在または隣接セグメントがハイブリダイゼーション事象に関与しないことがある。(例えば、ループ構造またはヘアピン構造)。本明細書に記載するプライマーは、表2に挙げる任意のプライマーと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%の配列同一性を含んでもよく、標的核酸配列に少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%相補的であり得る。したがっていくつかの態様では、本明細書に開示する特異的プライマー配列に関して、70%から100%の変動度、またはその範囲内の任意の割合の配列同一が可能である。配列同一性の判定を以下の例に記載する:別の20核酸塩基のプライマーと配列同一性を共有するが、非同一の2残基を有する20核酸塩基長のプライマーは、もう一方のプライマーと合計20残基のうち18残基が同一であり(18/20=0.9)、したがって90%の配列同一性を有する。別の例では、17核酸塩基長のプライマーの15核酸塩基セグメントと全ての残基が同一の15核酸塩基長のプライマーは、その17核酸塩基プライマーと15/17=0.88235、すなわち88.235%の配列同一性を有するであろう。相補率は、同様に判定される。例えば標的核酸の20核酸塩基のセグメントに20の相補的残基のうち18残基のみがハイブリダイズ可能な20核酸塩基のプライマーは、18/20、すなわち0.9の相補性を有し、標的核酸配列と90%相補的である。
【0067】
相同率、配列同一性、または相補性は、例えばデフォルトの設定を使用して、SmithおよびWatermanのアルゴリズム(Adv. Appl. Math., 1981, 2, 482-489)を使用するGapプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package, Version 8 for UNIX, Genetics Computer Group, University Research Park, Madison WI)により判定することができる。いくつかの態様では、ウイルス核酸の保存されたプライミング領域に関するプライマーの相補性は、約70%から約80%である。他の態様では、相同性、配列同一性、または相補性は、約80%から約90%である。なお他の態様では、相同性、配列同一性、または相補性は、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%であるか、または100%である。
【0068】
いくつかの態様では、本明細書に記載するプライマーは、本明細書に具体的に開示するプライマー配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも98%、または少なくとも99%、または100% (またはその中の任意の範囲)の配列同一性を含む。
【0069】
当業者は、配列同一率または配列相同率を算出することができ、過度の実験をせずに、対応する生物学的因子同定用アンプリコンの増幅産物を生成するために核酸相補鎖の合成をプライミングする際のプライマーの役割におけるそのプライマーの機能に及ぼすプライマー配列同一性の変動の効果を判定することができる。
【0070】
本発明のいくつかの態様では、オリゴヌクレオチドプライマーは13から35核酸塩基長(13から35個の連結したヌクレオチド残基)である。これらの態様は、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、もしくは35核酸塩基長、またはその中の任意の範囲のオリゴヌクレオチドプライマーを含む。
【0071】
いくつかの態様では、任意の所与のプライマーは、プライマーの5'末端に鋳型をもたないT残基(すなわち付加されたT酸基は増幅される核酸に必ずしもハイブリダイズしない)の付加を含む修飾を含む。鋳型をもたないT残基の付加は、分子量分析から生じる曖昧な結果に至るおそれがある出来事である、Taqポリメラーゼの非特異的酵素活性の結果としての鋳型をもたないA残基の付加を最小にする効果を有する(Magnuson et al., Biotechniques, 1996, 21, 700-709)。
【0072】
本発明のいくつかの態様では、プライマーは、一つまたは複数のユニバーサル塩基を含むことがある。種間で保存された領域における任意の変異(3番目の位置におけるコドンのゆらぎが原因)が、DNA (またはRNA)トリプレットの3番目の位置で起こる見込みがあることから、オリゴヌクレオチドプライマーは、この位置に対応するヌクレオチドが、本明細書において「ユニバーサル核酸塩基」と呼ばれる、複数のヌクレオチドに結合することができる塩基であるように設計することができる。例えば、この「ゆらぎ」対形成において、イノシン(I)はU、C、またはAに結合し、グアニン(G)はUまたはCに結合し、ウリジン(U)はUまたはCに結合する。ユニバーサル核酸塩基の他の例には、5-ニトロインドールもしくは3-ニトロピロールなどのニトロインドール(Loakes et al., Nucleosides and Nucleotides, 1995, 14, 1001-1003)、縮重ヌクレオチドdPもしくはdK (Hill et al.)、5-ニトロインダゾール含有非環式ヌクレオシドアナログ(Van Aerschot et al., Nucleosides and Nucleotides, 1995, 14, 1053-1056)、またはプリンアナログ1-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-イミダゾール-4-カルボキサミド(Sala et al., Nucl. Acids Res., 1996, 24, 3302-3306)が含まれる。
【0073】
いくつかの態様では、ゆらぎ塩基による多少弱い結合を補償するために、オリゴヌクレオチドプライマーは、各トリプレットの1番目および2番目の位置が、未修飾ヌクレオチドよりも大きい親和性で結合するヌクレオチドアナログにより占有されるように設計される。これらのアナログの例には、チミンに結合する2,6-ジアミノプリン、アデニンおよび5-プロピニルシトシンに結合する5-プロピニルウラシル、ならびにGに結合するG-clampを含むフェノキサジンが含まれるが、それらに限定されるわけではない。プロピニル化ピリミジンは米国特許第5,645,985号、第5,830,653号、および第5,484,908号に記載されており、これら特許のそれぞれは共同所有され、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。プロピニル化プライマーは、米国付与前公開第2003-0170682号に記載されており、これもまた共同所有され、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。フェノキサジンは、米国特許第5,502,177号、第5,763,588号、および第6,005,096号に記載されており、これらのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。G-clampは米国特許第6,007,992号および第6,028,183号に記載されており、これらのそれぞれはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0074】
いくつかの態様では、急速に進化しているRNAウイルスの広範囲のプライミングを可能にするために、プライマーのハイブリダイゼーションは、5-プロピニルデオキシ-シチジンおよびデオキシ-チミジンヌクレオチドを含有するプライマーおよびプローブを使用して高められる。これらの修飾プライマーおよびプローブは、親和性および塩基対形成の選択性の増加を提供する。
【0075】
いくつかの態様では、増幅効率を高めるために、非鋳型プライマータグを使用してプライマー-鋳型二本鎖の融解温度(Tm)を上げる。非鋳型タグは、鋳型に相補的ではない、プライマー上の少なくとも三つの連続するAまたはTヌクレオチド残基である。任意の所与の非鋳型タグにおいて、AはCまたはGに置き換えることができ、TもまたCまたはGに置き換えることができる。ワトソン-クリックハイブリダイゼーションは、鋳型に比べて非鋳型タグでは起こると予想されないが、A-T対に比べてG-C対における余分の水素結合は、プライマー-鋳型二本鎖の安定性増加を付与し、プライマーが以前のサイクルで合成された鎖にハイブリダイズした後の増幅サイクルについての増幅効率を高める。
【0076】
他の態様では、二つまたはそれ以上の5-プロピニルシチジンまたは5-プロピニルウリジン残基がプライマー上の鋳型一致残基と置き換わった、プロピニル化タグは、非鋳型タグと類似した方法で使用することができる。他の態様では、プライマーは例えばホスホロチオエート結合などの修飾ヌクレオシド間結合を有する。
【0077】
いくつかの態様では、プライマーは質量修飾タグを有する。特定の分子量の核酸の可能な塩基組成の総数を減少させることは、増幅産物の塩基組成の判定にあいまいさが繰り返し出現する原因を回避する手段を提供する。所与のプライマーのある核酸塩基に質量修飾タグを付加することは、所与の生物学的因子同定用アンプリコンの分子量からその塩基組成を新規に判定することの簡略化を招くであろう。
【0078】
本発明のいくつかの態様では、質量修飾核酸塩基は、以下のうち一つまたは複数を含む:例えば7-デアザ-2'-デオキシアデノシン-5-三リン酸、5-ヨード-2'-デオキシウリジン-5'-三リン酸、5-ブロモ-2'-デオキシウリジン-5'-三リン酸、5-ブロモ-2'-デオキシシチジン-5'-三リン酸、5-ヨード-2'-デオキシシチジン-5'-三リン酸、5-ヒドロキシ-2'-デオキシウリジン-5'-三リン酸、4-チオチミジン-5'-三リン酸、5-アザ-2'-デオキシウリジン-5'-三リン酸、5-フルオロ-2'-デオキシウリジン-5'-三リン酸、O6-メチル-2'-デオキシグアノシン-5'-三リン酸、N2-メチル-2'-デオキシグアノシン-5'-三リン酸、8-オキソ-2'-デオキシグアノシン-5'-三リン酸、またはチオチミジン-5'-三リン酸。いくつかの態様では、質量修飾核酸塩基は、15Nまたは13Cまたは15Nおよび13Cの両方を含む。
【0079】
場合によっては、所与の生物学的因子同定用アンプリコンの分子量は、それだけでは所与の生物学的因子を明白に同定するのに十分な分解を提供しない。生物学的因子の同定のために複数の生物学的因子同定用アンプリコンを採用することは、本明細書において三角同定と呼ばれる。三角同定は、複数のハウスキーピング遺伝子の中から選択された複数の生物学的因子同定用アンプリコンを分析することによって遂行される。この工程は、偽陰性および偽陽性シグナルを減らすために使用され、ハイブリッドまたは別の方法で操作された生物学的因子の起源の再構築を可能にする。例えば、炭疽菌(B. anthracis)ゲノムから予想されるシグネチャーの非存在下で、炭疽菌に典型的な三部分の毒素遺伝子が同定されること(Bowen et al., J. Appl. Microbiol., 1999, 87, 270-278)は、遺伝子工学事象を示唆するであろう。
【0080】
いくつかの態様では、三角同定工程は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用した大量平行方式で生物学的因子同定用アンプリコンの特徴付けにより遂行することができ、PCRの例には、複数のプライマーが同一の増幅反応混合物に採用される多重PCR、またはプライマーの異なる独特な対が、それ以外は同一の反応混合物を含有する複数のウェルに使用されるマルチウェルプレート形式のPCRがある。そのような多重PCRおよびマルチウェルPCR法は、核酸の迅速スループット増幅の分野における技術者に周知である。他の関連する態様では、ウェルまたは容器1個あたり一つのPCR反応を実施することができ、異なるウェルの増幅産物を単一のウェルまたは容器中で混合するアンプリコンプール段階がそれに続き、それを次に分子量分析に供する。プールされたアンプリコンの組み合わせは、個別のアンプリコンの分子量の予想される範囲が重複せず、したがってシグナルの同定を複雑にしないように選択することができる。
【0081】
いくつかの態様では、所与の生物学的因子同定用アンプリコンの分子量は、質量分析により判定される。質量分析はいくつかの利点を有し、なかでも軽視できない利点は、広範囲の質量電荷比(m/z)にわたり多数の分子ピークを分離(および単離)する能力を特徴とする高いバンド幅である。したがって、各増幅産物がその分子量により同定されることから、質量分析は、本質的に放射性標識または蛍光標識の必要のない平行検出スキームである。質量分析における分野の現状は、フェムトモル未満の量の物質を容易に分析して、試料の分子含量に関する情報を与えることができるというものである。物質の分子量の正確な評価は、試料の分子量が数百であるか、または10万原子質量単位(amu)すなわちダルトンを超えるかにかかわらず、迅速に得ることができる。
【0082】
いくつかの態様では、無傷の分子イオンは、試料を気相に変換する多様なイオン化技法のうち一つを使用して、増幅産物から生成させる。これらのイオン化法には、エレクトロスプレーイオン化(ES)、マトリックス支援レーザ脱離イオン化(MALDI)、および高速原子衝撃(FAB)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。イオン化すると、異なる電荷を有するイオンの形成が原因で、一つの試料からいくつかのピークが観察される。単一の質量スペクトルから得られた分子量の複数の読み取りを平均することは、生物学的因子同定用アンプリコンの分子量の推定値を与える。エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)は、著しい量の断片化を起こさずに試料の多荷電分子の分布をもたらすことから、これは10kDaよりも大きい分子量を有するタンパク質および核酸などの非常に高分子量のポリマーに特に有用である。
【0083】
本発明の方法に使用する質量検出器には、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析(FT-ICR-MS)、飛行時間型(TOF)、イオントラップ、四重極、磁場型、Q-TOF、三連四重極が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0084】
インテリジェントプライマーを使用して得られる増幅産物の分子量は、生物学的因子の同定のための手段を提供するが、分子量データから塩基組成シグネチャーへの変換はある種の分析に有用である。本明細書で使用する場合、「塩基組成」は、生物学的因子同定用アンプリコンの分子量から判定される各核酸塩基(A、T、C、およびG)の正確な数である。一つの態様では、塩基組成は特定の生物の指標を提供する。
【0085】
いくつかの態様では、パターン分類モデルアルゴリズムの使用により、以前に観察されていない塩基組成を、所与の系統発生に割り付けることができる。塩基組成は、配列のように例えば種の中の株ごとにわずかに変動する。いくつかの態様では、パターン分類モデルは突然変異確率モデルである。他の態様では、パターン分類はポリトープモデルである。突然変異確率モデルおよびポリトープモデルは、共に共同所有され、米国特許出願第11/073,362号に記載されており、この出願は、全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0086】
一つの態様では、各種について「塩基組成確率雲」を組成の制約の周囲に構築することによりこの多様性を管理することが可能である。これは、配列分析に類似した方法で生物の同定を可能にする。「疑似四次元プロット」は、塩基組成確率雲の概念を視覚化するために使用することができる。最適のプライマー設計には、生物学的因子同定用アンプリコンの最適な選択を必要とし、個別の生物学的因子の塩基組成シグネチャーの間の分離を最大にする。雲が重なる面積は、誤分類を招くおそれのある領域を示し、誤分類は、塩基組成確率雲の重複により影響されない生物学的因子同定用アンプリコンを使用した三角同定工程により克服される問題である。
【0087】
いくつかの態様では、塩基組成確率雲は、塩基組成の潜在的誤分類を避けるために潜在的プライマー対をスクリーニングするための手段を提供する。他の態様では、生物学的因子の核酸配列の進化的変転が原因で、割り付けられた塩基組成が以前に観察されておらず、かつ/または生物学的因子同定用アンプリコンの塩基組成データベースにインデックスが付けられていない生物学的因子の独自性を予測する手段が、塩基組成確率雲により提供される。したがって、プローブに基づく技法とは対照的に、質量分析による塩基組成の判定は、測定を行うために組成または配列を予め知っておく必要がない。
【0088】
本発明は、所与の生物学的因子を同定するのに十分なレベルで、DNA配列決定および系統発生分析に類似した生物学的因子分類情報を提供する。さらに、所与の生物学的因子について以前に未知の塩基組成(例えば配列情報が入手できない場合)を判定する工程は、塩基組成データベースに投入するための追加の生物学的因子インデックス付き情報を提供することによって、その後に有用性を有する。したがって、より多くのBCS指標が、塩基組成データベース内で入手可能になることから、将来的な生物学的因子の同定工程は大きく向上する。
【0089】
いくつかの態様では、未知生物学的因子の独自性および量は、図9に示す工程を使用して判定することができる。プライマー(500)および公知量の較正ポリヌクレオチド(505)を、未知生物学的因子の核酸を有する試料に添加する。次に、試料中の総核酸が増幅反応(510)に付され、増幅産物が得られる。増幅産物の分子量が判定され(515)、そこから分子量および存在量データが得られる。生物学的因子同定用アンプリコンの分子量(520)は、その同定(525)のための手段を提供し、較正ポリヌクレオチド(530)から得られる較正アンプリコンの分子量は、その同定のための手段を提供する(535)。生物学的因子同定用アンプリコンの存在量データを記録し(540)、較正データに対する存在量データを記録し(545)、その両方は、試料中の未知生物学的因子の量を判定する計算に使用する(550)。
【0090】
生物学的因子由来の核酸の増幅のための手段を提供するプライマー対および較正配列を含む公知量のポリヌクレオチドと、未知の生物学的因子を含む試料を接触させる。生物学的因子の核酸および較正配列の核酸を増幅し、増幅速度は生物学的因子の核酸および較正配列の核酸について類似していると合理的に仮定する。次に増幅反応は、生物学的因子同定用アンプリコンおよび較正アンプリコンの二つの増幅産物を生成する。生物学的因子同定用アンプリコンおよび較正アンプリコンは、本質的に同じ速度で増幅している限り、分子量により識別可能なはずである。差次的分子量をもたらすことは、較正配列として代表的な生物学的因子同定用アンプリコン(特定種の生物学的因子由来)を選択し、例えば二つのプライミング部位の間の可変領域の中で2〜8核酸塩基の欠失または挿入を行うことにより実現することができる。生物学的因子同定用アンプリコンおよび較正アンプリコンを有する増幅された試料を、次に例えば質量分析による分子量分析に供する。結果として生じた、生物学的因子および較正配列の核酸の分子量分析は、生物学的因子および較正配列の核酸についての分子量データおよび存在量データを提供する。生物学的因子の核酸について得られた分子量データは、未知の生物学的因子の同定を可能にし、存在量データは、試料と接触した較正ポリヌクレオチドの量の知識に基づき、生物学的因子の量の算出を可能にする。
【0091】
いくつかの態様では、試料に加えられる較正ポリヌクレオチドの量が変動する標準曲線の構築は、試料中の生物学的因子の量の判定のための追加の分解および信頼度の向上を提供する。分子の量の分析判定のために標準曲線を使用することは、当業者に周知であり、過度に実験せずに行うことができる。
【0092】
いくつかの態様では、複数の生物学的因子同定用アンプリコンが複数のプライマー対を用いて増幅され、該プライマー対がまた対応する標準較正配列も増幅する、多重増幅が行われる。この態様または他の態様では、標準較正配列は、較正ポリヌクレオチドとして機能する単一ベクターの中に任意で含まれる。多重増幅法は、当業者に周知であり、過度に実験せずに行うことができる。
【0093】
いくつかの態様では、増幅条件およびその後の分析段階が測定可能なアンプリコンを生成することに成功することを確認するための内部陽性対照として、較正ポリヌクレオチドを使用する。生物学的因子ゲノムのコピーの非存在下でも、較正ポリヌクレオチドは較正アンプリコンを生じさせるはずである。測定可能な較正アンプリコンを生成しないことは、増幅の失敗、またはアンプリコンの精製もしくは分子量判定などのその後の分析段階の失敗を示す。そのような失敗がそれ自体起こったという結論に達することは有用な事象である。
【0094】
いくつかの態様では、較正配列はDNAから構成される。いくつかの態様では、較正配列はRNAから構成される。
【0095】
いくつかの態様では、較正配列はベクターに挿入され、そのベクターは次にそれ自体較正ポリヌクレオチドとして機能する。いくつかの態様では、複数の較正配列が、較正ポリヌクレオチドとして機能するベクターに挿入される。そのような較正ポリヌクレオチドは、本明細書において「組み合わせ較正ポリヌクレオチド」と名付けられる。ベクターにポリヌクレオチドを挿入する工程は、当業者に日常的であり、過度に実験せずに行うことができる。したがって、較正法が本明細書に記載する態様に限定されるべきではないことを認識されたい。較正法は、適切な標準較正ポリヌクレオチド配列が設計され、使用される場合に、任意の生物学的因子同定用アンプリコンの量の判定に適用することができる。較正物質を挿入するために適切なベクターを選択する工程もまた、過度に実験せずに当業者により実現することができる日常的な作業である。
【0096】
本発明の他の態様では、インテリジェントプライマーは、外来混入ウイルスの安定で高度に保存された領域の中に、生物学的因子同定用アンプリコンを生成する。高度に保存された領域の中のアンプリコンを特徴付ける利点は、その領域がプライマー認識点を超えて進化する確率が低いことであり、プライマー認識点を超えて進化する場合には、増幅段階は失敗するであろう。したがって、そのようなプライマーセットは、広範囲調査型プライマーとして有用である。本発明の別の態様では、インテリジェントプライマーは上記の安定な領域よりも迅速に進化する領域の中に、生物学的因子同定用アンプリコンを生成する。進化するゲノム領域に対応する生物学的因子同定用アンプリコンの特徴付けの利点は、新生の株変異体を識別するために有用なことである。
【0097】
本発明はまた、新生ウイルスにより起こる疾患を同定するためのプラットフォームとしても顕著な利点を有する。本発明は、ハイブリダイゼーションプローブを生成するために生物学的因子の配列を事前に知っておく必要性を排除する。したがって別の態様では、本発明は、ウイルス同定の工程を臨床的状況で実施する場合に、そしてそのウイルスが以前に全く観察されていない新種の場合でさえも、ウイルス感染の原因を判定する手段を提供する。これが可能であるのは、その方法が、生物学的因子同定用アンプリコンの生成のための鋳型として作用する配列中に生じる自然進化変異(迅速に進化するウイルスを特徴付けに関する重大な懸念)により混乱しないからである。分子量の測定および塩基組成の判定は、配列の偏見なしに偏らない方法で実現される。
【0098】
異なる場所から得られた複数の試料を、疫学的状況で上記の方法により分析する場合に、本発明の別の態様は、ウイルスの任意の種または株の拡大を追跡する手段もまた提供する。一つの態様では、複数の異なる場所からの複数の試料は、生物学的因子同定用アンプリコンを生成するプライマーを用いて分析され、その試料のサブセットは特異的ウイルスを有する。ウイルス含有サブセットのメンバーの対応する場所は、その対応する場所への特異的ウイルスの拡大を示す。
【0099】
本発明はまた、本明細書に記載する方法を実施するためのキットも提供する。いくつかの態様では、生物学的因子由来の標的ポリヌクレオチドに対して増幅反応を実施し、生物学的因子同定用アンプリコンを形成するのに十分な量の一つまたは複数のプライマー対が、キットに含まれてもよい。いくつかの態様では、キットは、1から50プライマー対、1から20プライマー対、1から10プライマー対、または2から5プライマー対を含んでもよい。いくつかの態様では、キットは、表2に列挙する一つまたは複数のプライマーを含んでもよい。
【0100】
いくつかの態様では、キットは、一つまたは複数の広範囲調査プライマー、階級全域プライマー、もしくは掘り下げプライマー、またはその任意の組み合わせを含んでもよい。キットは、特定の生物学的因子の同定のための特定のプライマー対を含むように設計されてもよい。例えば外来混入ウイルスまたは遺伝子操作された外来混入ウイルスの異なる亜種型を識別するために、掘り下げキットを使用してもよい。いくつかの態様では、外来混入ウイルスを同定を可能にするため、広範囲調査プライマーおよび階級全域プライマーの組み合わせを含むように、これらのキットのうち任意のものを組み合わせてもよい。
【0101】
いくつかの態様では、キットは、内部増幅較正物質として使用するための標準化較正ポリヌクレオチドを有してもよい。
【0102】
いくつかの態様では、キットはまた、上記の増幅工程のために、十分な量の逆転写酵素(例えばRNAウイルスを同定しようとする場合)、DNAポリメラーゼ、適切なヌクレオシド三リン酸(上記のうち任意のものを含む)、DNAリガーゼ、および/もしくは反応緩衝液、またはその任意の組み合わせも含んでもよい。キットは、キットの特定の態様に適切説明書、例えばその方法の実施のためのプライマー対および増幅条件を記載している説明書をさらに含むことがある。キットはまた、マイクロ遠沈管等の増幅反応用容器も含んでもよい。キットはまた、生物学的因子の核酸または生物学的因子同定用アンプリコンを、増幅産物から単離するための、例えば洗剤、溶媒、または磁気ビーズと結合してもよいイオン交換樹脂を含む試薬または他の物質も含んでよい。キットはまた、キットのプライマー対を使用して測定または算出された、生物学的因子の分子量および/または塩基組成の表も含んでもよい。
【0103】
本発明を、その態様のあるものに従って具体的に説明したが、以下の実施例は本発明を例示するためにのみ役立ち、それを限定することを意図しない。本明細書に開示する発明をさらに効率的に理解するために、実施例を以下に提供する。これらの実施例は単に例示目的であり、いかなる様式でも本発明を限定するものであると解釈されないことが、理解されるべきである。
【0104】
実施例
実施例1:外来混入ウイルスのための生物学的因子同定用アンプリコンを規定するプライマーの設計および確認の選択
外来混入ウイルス同定用アンプリコンを規定するプライマーの設計のために、一連の外来混入ウイルスのゲノムセグメントの配列を得て、アライメントし、かつPCRプライマー対が約45から約150ヌクレオチド長の産物を増幅し、種および/または個別の株をそれらの分子量または塩基組成により相互に識別する領域についてスキャンした。図1に示す典型的な工程をこの種の分析のために採用する。プライマー対の確認は、図2に示す一部または全ての段階により実施する。
【0105】
各プライマー領域について予想される塩基組成のデータベースは、(ePCR)などのインシリコPCR検索アルゴリズムを使用して作製した。現存するRNA構造検索アルゴリズム(Macke et al., Nucl. Acids Res., 2001, 29, 4724-4735、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)は、ハイブリダイゼーション条件、ミスマッチ、および熱力学的計算などのPCRパラメータを含むように修飾されている(SantaLucia, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 1998, 95, 1460-1465、これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)。これはまた、選択されたプライマー対のプライマー特異性に関する情報も提供する。
【0106】
(表1)外来混入ウイルスの同定のためのプライマー対
【0107】
合計205プライマー対を設計し、それを表1に示す。この表は、本明細書に記載する方法を使用して外来混入ウイルスを同定するために設計されたプライマーのコレクション(プライマー対の番号で分別する)を示す。「I」はイノシンを表す。Tpはプロピニル化Tを表し、Cpはプロピニル化Cを表す。プロピン修飾は塩基の5-位にある。各プライマー対番号は、社内データベースインデックス番号である。表1に示す各フォワードまたはリバースプライマー名は、そのプライマーが参照配列に比べてハイブリダイズする、ウイルスゲノムの遺伝子領域を示す。例えば、フォワードプライマー名RVL_X03614_2256_2279_Fは、フォワードプライマー(_F)がレスピロウイルス(パラミクソウイルス科)(RLV)配列(GenBankアクセッション番号X03614)の残基2256〜2279にハイブリダイズすることを示す。この例では、RLVはプライマー対名ウイルス識別子である。表2は、本明細書に開示するプライマー対についてのプライマー対名ウイルス識別子を示す。
【0108】
(表2)選択されたウイルスについてのプライマー対名識別子
【0109】
レトロウイルス同定用プライマーの設計
このウイルスファミリーについてのプライマー設計の目的は、各属群の全ての公知のメンバーおよび今までに未知の変異体についてのレトロウイルス同定用アンプリコンをプライミングおよび生成するプライマー対を得ることであった。デルタレトロウイルス属のメンバーであるTリンパ球指向性ウイルスは霊長類に感染し、白血病および神経疾患を起こす。これらの9キロベースの一本鎖RNAウイルスは高度に感染性である。転写活性化因子(tax)遺伝子を標的化しているプライマー対は、ヒトTリンパ球指向性ウイルス(HTLV-1およびHTLV-2ならびに新たに発見されたHTLV-3およびHTLV-4)およびサルTリンパ球指向性ウイルス(STLV-1、SLTV-2、およびSLTV-3)を含む全ての公知の霊長類Tリンパ球指向性ウイルスを広範囲にプライミングし分解するように設計された。図3は、プライマー対番号2293 (配列番号:76:245)および2294 (配列番号:77:246)が共にHTLV-1およびHTLV-2のtax遺伝子の核酸セグメントを増幅して増幅産物を生じ、その増幅産物の分子量がこれらの二つのウイルスを識別するのに十分なほど異なることを示している。図4Aおよび4Bに示すのは、サルおよびヒトTリンパ球指向性ウイルス種のレトロウイルス同定用アンプリコンの塩基組成の3Dプロットであり、これらの図は、プライマー対がそれらの塩基組成に基づき識別可能な増幅産物を得ることができることを示している。
【0110】
ポリオーマウイルス同定用プライマーの設計
約200個の完全ポリオーマウイルスゲノム配列をGenBankから得た。これらのゲノム配列(約5.3キロベース長)は、社内で組み立てた生物情報学ツールを使用して相互にアライメントし、保存された標的領域についてスキャンした。ゲノムアライメントの初回調査から、霊長類ウイルス(SV40)およびヒトウイルス(BKおよびJC)の間で高度の相同性が明らかとなったが、残りの種は大いに多岐にわたり、これら上記の種とあまり大きな配列相同性を共有しなかった。プライマー設計目的で、SV40、BK、およびJCウイルス種を一つの群に分類した。9個の異なるプライマー対(プライマー対2549〜2557)をこのクラスターに設計した(表1参照)が、これらのプライマー対は三つの重要なポリオーマウイルス種の重複する検出および分解を提供すると予想される。これらのプライマーの大部分は、ポリオーマウイルスのラージT抗原遺伝子に標的化された。三つの追加のプライマー対(VIR2559〜2561)は、上記クラスターにリンパ球指向性パポバウイルス(LPV、アフリカミドリザルパポバウイルス)を含むように設計した。これらの新しいプライマーは任意の一つの種にわたりあまりよく保存されていなかったが、それでもなおこの科の中でウイルス検出をより広くカバーするであろう。残りのウイルス種(マウス、トリ、ウシなど)を標的化している追加のプライマー対(RS10〜14)もまた設計した。総合すれば、これらのプライマーは全ての公知のポリオーマウイルスを完全にカバーするであろう。
【0111】
複数の標的種に対して、全てのプライマー対を性能および感度について試験した。これらのプライマーの性能を試験するために、完全長SV40 (ATCC:VRMC-4)およびJCウイルス(ATCC:VRMC-1) DNAを有するプラスミドクローンをATCCから得た。プラスミド濃度をOD測定により判定し、入力ウイルスDNA鋳型の量のおおよその推定値として使用した。プラスミドの10倍系列希釈は、検出限界の推定のために使用した。これらは、12個のプライマー対(VIR2549〜61)のパネル全体に対して試験した。プライマーは、最初各プラスミドの10-7および10-8倍希釈で試験し、プライマー2555を除き信頼できる検出が示された。これらのプライマーのサブセットの追加試験は、いくつかのプライマーが追加の低希釈を検出することができたが、プライマーの中には10-9希釈よりも下で脱落したことを示した。この最初の試験に基づき、細胞系での特徴付けに使用するために6個のプライマーのパネル(VIR2550、2551、2553、2554、2557、および2559)を選択した。これらのプライマーをSV40および他のポリオーマウイルスを有する公知の細胞系に対して試験する。
【0112】
細胞系の日常的スクリーニングのために、上記のわずかに二つのプライマー対と一緒にした動物ポリオーマウイルスを標的化している四つのプライマーが、全ての公知のポリオーマウイルスおよび潜在的に新規なポリオーマウイルスを完全にカバーすることができると予測される。サルウイルス40の位置32でコドンが欠失していることから、ラージ腫瘍抗原遺伝子の中の核酸セグメントは、ヒトおよびサル種にわたる広範囲のプライミングのための機会を提供し、それは、プライマー対番号2555 (配列番号:135:301)により例示される。SV40ウイルス、BKウイルス、およびJCウイルスの種の区別は、図5に示され、ここで、ポリオーマウイルスの仮定上の増幅産物の塩基組成を3D図で示す。図6に示すのは、プライマー対番号2560 (配列番号:140:306)を用いて生成された仮定上の増幅産物の塩基組成の3D図である。マウス向肺ウイルス(Murine pneumonotropic virus)、アフリカミドリザルPyVウイルス、SV40ウイルス、BKウイルス、JCウイルス、ハムスターPyVウイルス、およびマウスPyVウイルスは、プライマー対番号2560を用いて生成される増幅産物の塩基組成に基づき相互に識別することができる。
【0113】
パピローマウイルス同定用プライマーの設計
重要なヒトパピローマウイルス(HPV16、18、31、45、11、6、2)のセットをカバーしている広範囲プライマー対を設計した(プライマー対番号2533〜2536)。これらは異なる群に属するが、全て文献で「ハイリスク」と報告されている。上記の群特異的プライマー対と組み合わせてこれらの種の全てを広くカバーすることは大きな価値があろう。そのうえ、パピローマウイルスの単一の群の中で、または複数の群にわたり広くカバーして検出の頑健性を上げるために、いくつかのプライマー対を設計した。
【0114】
全てのプライマー対は、ATCCから得られたパピローマウイルスのパネルに対して試験した。以下のウイルスを完全長プラスミドクローンとして得た:ATCC45150D (HPV-6b);ATCC45151D (HPV-11);ATCC45152D (HPV-18);およびATCC45113D (HPV-16)。広範囲プライマー対のうち二つ(番号2534および2536)は、プラスミドの二つの異なる希釈で試験した四つのウイルス全てを増幅した。プライマー対番号2535は被験単離物の二つだけを増幅したが、プライマー対2533は試験したどのウイルスも増幅しなかった。これらの初回の結果に基づき、プライマー対番号2534および2536をさらなる最適のために選択した。潜在的配列ミスマッチを克服するためのイノシンの使用を含む一連のプライマー修飾をフォワードプライマーおよびリバースプライマー対に導入した。試験した修飾プライマーの大部分は、試験単離物にわたり性能の向上を示した。主要種を広く標的化しているプライマーに加えて、30を超える異なるパピローマウイルスを説明するパピローマウイルスの群であるA7、A9、およびA10を標的化している一連のプライマーもまた試験した。図7に示すのは、プライマー対番号2534 (配列番号:116:286)を用いて生成されたヒトパピローマウイルスの仮定上の増幅産物の塩基組成の3D図である。表3にパピローマウイルスの同定に使用したプライマー対を提供し、試験した単離物、標的ウイルス群、およびカバーされる主要種を示す。
【0115】
(表3)ヒトパピローマウイルスを標的化しているプライマー対
【0116】
パピローマウイルスの同定のために設計されたプライマー対の確認
追加の試験および確認のために、HPV-18に感染した二つの異なるHeLa細胞系をATCCから得た(CCL-2およびCCL-2.2)。これらは、上に試験されたプライマーのサブセットを使用して限界希釈で試験した。結果を下に示す。この試験に使用したプライマー対は、主要なヒトPaVプライマー対である2534、2536、および2685、多群プライマー2542、群A7標的化プライマー2544〜5、および群A10プライマー2546を含んだ。
【0117】
細胞系に及ぼすプライマーの性能を試験することに加えて、HPV-6bを有するプラスミドDNAをCCL-2細胞系に加え、二つのウイルス、すなわち細胞系由来HPV-18およびプラスミド由来HPV-6bの検出のダイナミックレンジを同時判定した。行った全ての試験において、広範囲プライマーおよび群A7プライマーは、両細胞系において1ウェルあたり1〜10細胞の投入レベルでHPV-18の検出を示した。1細胞あたり約20個のHPV-18ゲノムという推定コピー数では、これはパピローマウイルス配列を有する細胞系由来の20〜200ゲノムの検出感度に対応する。これらの細胞系にHPV-6bプラスミドを同時添加して行った実験では、検出範囲は類似していた。HPV-6bは、1ウェルあたり200コピーおよび2000コピーという二つの異なる一定濃度で加えた。図8Aは二つのウイルスの検出における広範囲プライマー対2534の性能を示す。図8Aは、1ウェルあたり1000から0個の濃度範囲のCCL-2細胞にプラスミドDNAを2000コピーで加えたときの、HPV-6bおよびHPV-18の同時検出を示す。HPV-18は、2000コピーのHPV-6bの存在下で、最低投入レベル(10細胞/ウェル)を除く全てのウェルで検出された。HPV-6b (2000コピー)は、最大600細胞/ウェルのHeLa細胞負荷の存在下の有効HPV-18濃度約12000ゲノム/ウェルで検出された。図8Bは、1ウェルあたり約200コピーのプラスミド添加を使用した類似した曲線を示す。この場合、HPV-18は、最低細胞濃度10細胞/ウェルを含む全ての試験濃度で検出された。図6cおよびdは、上記実験の4回の繰り返しでHPV-18および/またはHPV-6が検出されたウェルの率を示す。二つのウイルスの同時検出のためのダイナミックレンジは、下端および上端で5〜10倍であり、相互の存在下で競合する鋳型の検出について約25倍の全体的なダイナミックレンジを与える。上記実験は、二つまたはそれ以上のウイルスを同一のアッセイを使用して同時に検出することができるTIGER HPVアッセイの強度をさらに際立たせる。
【0118】
パルボウイルス科同定用プライマーの設計
細胞系におけるパルボウイルス科の存在を検出するために、ディペンドウイルス、エリスロウイルス、およびパルボウイルスを含む、パルボウイルス亜科の特異的な属を広く標的化するプライマーを設計した。最も大きい医学的関心事であるパルボウイルス科は、B19、AAV、およびマウス微小ウイルスである。約500の完全パルボウイルス科ゲノム配列は、GenBankから得た。これらのゲノム配列(それぞれ約5キロベース長)をアライメントし、保存された標的領域についてスキャンした。ゲノムアライメントの初回調査は、三つの主要属(パルボウイルス、ディペンドウイルス、エリスロウイルス)にわたり非常にわずかな相同性しか示さなかった。しかし、保存された配列領域は、プライマー設計のための標的であった各属の中で顕著な相同性を有して同定された。全ての3属において、保存された配列領域は、一つがNS1タンパク質をコードしているrep遺伝子の中、もう一つが糖タンパク質VP1タンパク質をコードしているキャプシド(cap)遺伝子の中である二つの主要なノード(node)の中であった。これら各属内の種の公知の全実例にわたりプライミングするこの能力は、公知のパルボウイルス科メンバーのサーベイランス、ならびに細胞および細胞由来物質中の今まで未知であったパルボウイルス科の種/株の検出を可能にするであろうと考えられる。
【0119】
パルボウイルス科の同定のために設計されたプライマーの確認
ディペンドウイルスNS1またはVP1タンパク質をコードしている核酸を標的化するように表1に開示するプライマー対(2864〜2875)を設計し、AAV-2完全長クローンの増幅を行い、質量分析により増幅産物の分子量を判定し、そして本明細書上記の方法を使用して塩基組成を算出した後にAAV-2の同定を招くことにより、これらのプライマーがAAV-2を検出する能力について試験した。AAV-2プラスミドは、John Chiorini博士、National Institutes of Health, Bethesda MD(Katano et al., BioTechniques, 2004, 36(4), 676-680)から供与された。プライマー対の初回試験は、プラスミドクローンの限界希釈で行った。出発物質のOD推定に基づき、1ウェルあたりAAV-2プラスミド5000コピー/ゲノムを系列希釈し、プライマー性能について試験した。結果を表4に示す。「X」は、表示されたプライマー対および表示されたコピー数を用いて標的が検出されたことを示す。
【0120】
(表4)パルボウイルスプライマー対の確認
【0121】
表4に示すように、機能するプライマー対は、1ウェルあたり少なくとも78ゲノムの濃度でAAV-2プラスミドを検出することができたが、いくつかはさらに薄い濃度を検出することができた。表4に示す結果に基づき、7個の最も感受性の高いプライマー対(2865、2866、および2867 [NS1に標的化]、ならびに2869、2870、2871、および2874 [VP1に標的化])を、追加の試験および確認のために選択した。これらのプライマーを包含する領域を含む合成DNA較正物質を使用したプライマーの試験を作製し、7個のプライマー対のうち4個(2865、2866, 2869、および2874)を用いた確認実験に使用した。結果を図10に示す。これらのプライマー対を用いて、較正物質の検出は表3に示す結果と類似していた。
【0122】
上記アッセイにプライマー対2866を使用して作製された増幅産物に関して行った質量分析は、データベースにインデックスを付けられた、以前に公知のAAV-2単離物の塩基組成と独特の一致を与えた質量および塩基組成を明らかにした。結果は、関連配列の塩基組成と一致しなかった。
【0123】
本明細書に記載する方法を使用して、パルボウイルス科の属に標的化されたプライマーは、ヒト試料、樹立細胞培養物、マスター細胞バンク、最終産物細胞、腫瘍性不死化細胞系、一次および原体採集液を含む細胞基質由来生物学的物質、抗体、ならびにウイルスワクチンを含むワクチン中のこの科の種および株を特異的に検出し、ワクチンを含む細胞由来物質中の混入物について試験することおよびその細胞由来物質の安全性を判定することに有用であろうと考えられる。
【0124】
ヘパドナウイルス科(HBVを含む)同定用プライマーの設計
HBVを標的化しているプライマーは、本明細書上記の方法を使用して設計した。プライマーは、HBVについて構築された複数の配列アライメントの最も高度に保存された領域に対して設計された。プライマー配列は、融解温度および潜在的二量体化すなわち二次構造に関する適合性について分析した。全てのプライマー対配列は、本明細書上記の社内法を使用して、GenBankデータベースにおける配列および全てのヒト染色体配列に対する特異性についてスクリーニングした。GenBankアクセッション番号NC_003977 (配列番号:338として本明細書に組み入れられる)の三つの保存された領域の一つの範囲内でハイブリダイズするようにプライマーを設計した。図11aに示すように、三つの保存された領域の最初のものは、配列番号:338のヌクレオチド180〜453 (糖タンパク質HBVgp2およびポリメラーゼgp1をコードするヌクレオチドを含む)を含み、2番目の領域は、配列番号:338のヌクレオチド1375〜1436 (gp3およびgp1をコードするヌクレオチドを含む)を含み、3番目の保存された領域は、配列番号:338のヌクレオチド1777〜1876 (gp3およびgp4またはコアタンパク質をコードしているヌクレオチドを含む)を含む。HBVを同定するように設計されたプライマー対を表1に挙げるが、この表にはプライマー対番号1245〜1254が含まれる。具体的には、プライマー対番号1246 (配列番号:67:236)および1247 (配列番号:68:237)を確認研究で試験するために選択し、上記方法を使用して、六つの異なるウイルス株(Zeptometrix, Buffalo, NY)から単離された(Qiagen Virusスピンキット(Qiagen, Valencia, CA)を使用して調製された)ウイルスゲノム物質を使用して、検出特異性について試験した。両プライマー対の使用は、患者の血漿由来のHBVの存在下で独特の適切なアンプリコンの生成を招いた。分子量から算出された塩基組成は、HBVに独特であった(図11b)。ヘパドナウイルス科に属さない五つの追加のウイルスは、HBV標的化プライマーにより検出されなかった(図11b)。HBVプライマーは、わずか100ゲノムコピーを検出することができた(HBV増幅産物の増幅効果を意味し、その分子量および塩基組成は本明細書に記載する方法により判定および算出することができた)。プライマー対1247はまた、別のHBV源(Woodchuck)を使用しても確認され、予想されるHBVアンプリコンを正しい塩基数で生成した。
【0125】
そのうえ、プライマー結合部位を有するが、長さおよび塩基組成が標的ウイルスエレメントとは異なる内部較正対照をプライマー対のそれぞれについて作製した。これらの対照は、プラスミドベクターに構築され、配列決定により確認された。ベクター由来のRNAランオフ転写物を定量し、定量アッセイに使用する。
【0126】
本明細書に記載する方法を使用して、ヘパドナウイルス科のメンバー、例えばHBVに標的化されたプライマーは、ヒト試料、樹立細胞培養物、マスター細胞バンク、最終産物細胞、腫瘍性不死化細胞系、一次および原体採集液を含む細胞基質由来生物学的物質、抗体、ならびにウイルスワクチンを含むワクチン中のこの科の種および株を特異的に検出し、ワクチンを含む細胞由来物質中の混入物について試験することおよびその細胞由来物質の安全性を判定することに有用であろうと考えられる。
【0127】
パラミクソウイルス科同定用プライマーの設計
パラミクソウイルス科の存在を検出するために、本明細書上記の多様な属および種を広く標的化するためにプライマーを設計した。100個を超える完全および部分ゲノム配列をGenBankから得て(それぞれ約15KB長)、社内で構築された生物情報学ツールを使用してそれらを相互にアライメントし、保存された標的領域についてそれらをスキャンした。ゲノムアライメントの初回調査は、主要な属(レスピロウイルス、ニューモウイルス、ルブラウイルス、およびアブラウイルス)にわたりほとんど相同性を示さなかった。しかし、各属の中の領域は顕著な相同性を示し、それをプライマー設計に使用した。全ての主要な属において、保存された領域は、主にRNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)遺伝子の中であった。プライマーを設計し、ATCCから得られた物質(表5に示す)を使用して試験する。ヒトおよびウシPIV1およびPIV3、ならびにセンダイウイルスを含む全てのレスピロウイルス種のRdRpを標的化するようにプライマーを設計した。図12に示すように、これらのプライマーは、これらの種の全ての公知の変異体を増幅し、本明細書に記載する方法を使用してそれらを区別するものである。これらのプライマーを表1に示す。初回試験のために二つの異なる構築物を設計した。最初のものは、鋳型としてATCC VR-1380 (PIV-1)由来のT7 RNAランオフ産物を使用する。結果として生じたRNAは確認に使用する。プライマーの設計のために選択された領域のみを含む2番目の合成構築物もまた作製し、それは、本明細書に記載する感度および検出法のための定量試験物質を提供する。
【0128】
プライマーを設計し、ニューモウイルス亜科に標的化した。そのようなプライマーの例を表1に挙げる。図13に示すように、これらのプライマーは、ヒトおよびウシ呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、マウス肺炎ウイルス、およびヒトメタニューモウイルス(HMPV)を含む全ての公知のニューモウイルス亜科の種を増幅するため、個別の種を独特に同定するために使用することができる。ニューモウイルス亜科標的化プライマー対は、本明細書に開示する方法を使用して、最初に鋳型としてATCCからのT7 RNAランオフ産物(VR-1400、RSV-B)を使用して試験した。このアッセイを使用して、試験した全てのプライマー対(プライマー対番号:2442、2452、2441、および2448を含む)は、判定された塩基組成を有する増幅産物を生成し、その増幅産物は、データベース中のRSV-B塩基組成と独特に一致し、その群の全ての他の種と明らかに区別された。さらなる定量試験の実験において、本明細書に記載する方法を使用して、四つのプライマー対ならびに二つの異なる合成対照構築物である内部較正対照および内部陽性対照(類似しているが長さおよび組成が異なる)を試験した。各対照は、Blue Heron Technologies (Bothell, WA)からの精製プラスミド調製物として得て、Nanodropスペクトロメータを使用して正確に定量した。アッセイ結果は、わずか5コピーの内部陽性対照の信頼できる検出を示し、40コピーまたはそれ以上では頑健な検出を示した。このアッセイは、二つの標準を等量(300コピー)で含んだ場合に、それらの1:1の定量を示した。
【0129】
この定量試験において最良性能の二つのプライマー対(プライマー対番号2441-配列番号:103:274およびプライマー対番号2448-配列番号:109:278)を選択し、それぞれATCCストックの1000倍希釈物を加えた三つのRSV-B単離物(VR-955、VR-1400、およびVR-1401)を使用したさらなる試験に供した。本明細書に記載する方法を使用して、両プライマーは、三つのウイルス単離物全てから頑健なアンプリコンを生成した(図13b)。これらのアンプリコンから算出した塩基組成は、データベースに独特にインデックス付けされた登録RSV-Bと一致し、RSV-Aを含むこの亜科の他の全種と明らかに区別された。
【0130】
ニューカッスル病ウイルスおよび他のトリパラミキソウイルスを含むアブラウイルス属、またはパラインフルエンザウイルスPIV-2、サルパラインフルエンザ(SIV-5)、ブタパラインフルエンザ、およびムンプスウイルスを含むルブラウイルスを標的化するようにプライマー対を設計した。これらの各プライマーは、RdRp遺伝子領域に標的化した。例を表1に挙げるが、それらには、プライマー対番号2435、2436、2437、2438、2439、および2440が含まれる。これらのプライマー対は、それぞれの属の全ての公知のメンバーを増幅し、種の同定に使用することができる。これらのプライマーは、本明細書に記載する方法を使用して試験および確認する。
【0131】
本明細書に記載する方法を使用して、パラミクソウイルス亜科および属に標的化されたプライマーは、樹立細胞培養物、マスター細胞バンク、最終産物細胞、腫瘍性不死化細胞系、一次および原体採集液を含む細胞基質由来生物学的物質、抗体、ならびにウイルスワクチンを含むワクチン中のこの科の種および株を特異的に検出し、ワクチンを含む細胞由来物質中の混入物について試験することおよびその細胞由来物質の安全性を判定することに有用であろうと考えられる。
【0132】
(表5)プライマーの試験および確認に使用するパラミクソウイルス
【0133】
実施例2:試料の調製およびPCR
ウイルスゲノム物質を得るためにQiagen QIAamp Virus BioRobot MDx Kitを使用して試料を処理した。結果として生じたゲノム物質は、MJ Thermocycler Dyadユニットを使用して増幅し、アンプリコンはBruker Daltonics MicroTOF装置で特徴付けした。結果として生じたデータは、GenXソフトウェア(SAIC, San Diego, CAおよびIbis, Carlsbad, CA)を使用して分析した。
【0134】
全てのPCR反応は、Packard MPII液体取扱い用ロボットプラットフォームおよびM.J. Dyadサーモサイクラー(MJ research, Waltham, MA)を使用した96ウェルマイクロタイタープレート形式で50μL反応体積に集めた。PCR反応混合物は、Amplitaq Gold、1×buffer II (Applied Biosystems, Foster City, CA)4ユニット、1.5mM MgCl2、0.4Mベタイン、800μM dNTP混合物、および250nMの各プライマーからなった。以下の典型的なPCR条件を使用した:95℃10分間に続いて、95℃30秒間、48℃30秒間、および72℃30秒間を8サイクル、48℃のアニーリング温度は8サイクルのそれぞれで0.9℃ずつ上げる。次にPCRは、95℃15秒間、56℃20秒間、および72℃20秒間の追加の37サイクル継続した。
【0135】
実施例3:イオン交換樹脂-磁気ビーズを用いた質量分析のためのPCR産物の溶液捕捉精製
磁気ビーズに結合したイオン交換樹脂を用いた核酸の溶液捕捉のために、BioCloneアミン末端超常磁性ビーズの2.5mg/mL懸濁液25μlを、約10pMの典型的なPCR増幅産物を含有するPCR (またはRT-PCR)反応液25から50μlに添加した。ボルテックス処理またはピペット操作により上記懸濁液を約5分間混合し、その後、磁気分離装置を使用後に液体を除去した。結合したPCR増幅産物を有するビーズを次に50mM重炭酸アンモニウム/50%MeOHまたは100mM重炭酸アンモニウム/50%MeOHで3回洗浄し、続いて50%MeOHでさらに3回洗浄した。結合したPCRアンプリコンは、ペプチド較正標準を含む25mMピペリジン、25mMイミダゾール、35%MeOHの溶液で溶出させた。
【0136】
実施例4:質量分析および塩基組成分析
ESI-FTICR質量分析装置は、能動遮蔽型(actively shielded) 7テスラ超電導磁石を採用するBruker Daltonics (Billerica, MA) ApexII 7Oeエレクトロスプレーイオン化フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析装置に基づいた。能動遮蔽は、超電導磁石からの大部分の漏れ磁場を比較的小さな体積に束縛する。したがって、CRTモニター、ロボット構成要素、および他のエレクトロニクスなどの、浮遊磁場により有害な影響を受けるおそれのある構成要素が、FTICRスペクトロメータに近接して作動することができる。パルスシーケンス制御およびデータ取得の全ての局面は、Windows NT 4.0オペレーティングシステムでBruker's Xmassソフトウェアを実行している600MHz Pentium IIデータステーションで行った。試料の一定分量、典型的には15μlは、FTICRデータステーションによりトリガーされたCTC HTS PALオートサンプラー(LEAP Technologies, Carrboro, NC)を使用して96ウェルマイクロタイタープレートから直接抽出した。試料を、ESI源に流速100μl/hrで供給する流体工学ハンドリングシステムと統合された10μl試料ループに直接インジェクトした。ガラス製脱溶媒キャピラリーの金属被覆末端から約1.5cmに位置する軸外し研磨エレクトロスプレープローブを採用している修正Analytica (Branford, CT)源でエレクトロスプレーイオン化によりイオンを形成させた。データ取得の間、ガラス製キャピラリーの大気圧末端は、ESIニードルに対して6000Vにバイアスをかけた。乾燥N2の向流を採用して、脱溶媒工程を援助した。イオンは、rfのみの六重極、スキマーコーン(skimmer cone)、および補助ゲート電極から構成される外部イオンリザーバーに蓄積してから、トラップイオンセル(trapped ion cell)にインジェクトし、そこでイオンを質量分析した。イオン検出の間に外部イオンリザーバーにイオンを同時に蓄積させることによって、>99%というイオン化のデューティーサイクルを実現した。各検出事象は、2.3秒にわたりデジタル化された1Mのデータポイントからなった。信号雑音比(S/N比)を向上させるために、合計74sのデータ取得時間について32回のスキャンを同時加算した。
【0137】
ESI-TOF質量分析装置は、Bruker Daltonics MicroTOF (商標)に基づく。ESI源からのイオンは、直交型イオン取り出し(orthogonal ion extraction)を受け、リフレクトロンで集束されてから検出される。TOFおよびFTICRは、上記の同一の自動化試料取扱いおよび流体工学を備える。イオンは、FTICR ESI源と同じ軸外しスプレー装置およびガラス製キャピラリーを備える標準MicroTOF (商標) ESI源に形成される。その結果、イオン源の状態は上記と同じであった。データ取得の間のイオン化のデューティーサイクルを上げるために、外部イオン蓄積もまた採用した。TOFに関する各検出事象は、75μsにわたりデジタル化された75,000データポイントから構成された。
【0138】
試料の送達スキームは、試料の一定分量を高い流速でエレクトロスプレー源に迅速にインジェクトさせ、続いて高いESI感度のためにずっと低い流速でエレクトロスプレーさせる。試料をインジェクトする前に、大量の緩衝液を高い流速でインジェクトし、輸送ラインおよびスプレーニードルをすすいで試料の混入/持ち越しを回避した。すすぎ段階の後で、オートサンプラーは次の試料をインジェクトし、流速は低流動にスイッチした。短時間の平衡遅れの後で、データ取得を開始する。スペクトルを同時加算するときに、オートサンプラーは、シリンジのすすぎ、ならびにインジェクターおよび試料輸送ラインをすすぐための緩衝液の吸い上げを継続した。一般に、試料の持ち込みを最小化するために2回のシリンジすすぎおよび1回のインジェクターのすすぎが必要であった。日常的なスクリーニングプロトコールの間に、新しい試料混合物を106秒毎にインジェクトした。最近になって、シリンジニードル用の高速洗浄ステーションが実施されたが、それは、短い取得時間と組み合わせると、1スペクトル/分をちょうど下回る速度で質量スペクトルの取得を促進する。
【0139】
生の質量スペクトルは、内部質量標準を用いて後較正を行い、モノアイソトピック分子量にデコンボリューションした。明白な塩基組成は、相補的一本鎖オリゴヌクレオチドの正確な質量測定から得られた。定量結果は、1ウェルに500分子で各PCRに存在した内部PCR較正標準とピーク高を比較することにより得られる。較正法は、共同所有され、米国仮特許出願第60/545,425号に開示されており、この出願は、全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0140】
実施例5:分子量修飾デオキシヌクレオチド三リン酸を使用した増幅産物の塩基組成の新規判定
四つの天然核酸塩基の分子量が比較的狭い分子量範囲を有することから(A=313.058、G=329.052、C=289.046、T=304.046、表6参照)、塩基組成の割り付けにおける曖昧さの持続的原因は、以下のように起こり得る:異なる塩基組成を有する二つの核酸鎖は、その二つの鎖の間の塩基組成の差がG←→A (-15.994)と同時にC←→T (+15.000)の場合、約1Daの差を有する可能性がある。例えば、A27G30C21T21の塩基組成を有する一つの99塩基長核酸鎖は、理論的分子量30779.058を有するが、塩基組成A26G31C22T20を有する別の99塩基長核酸鎖は、理論的分子量30780.052を有する。分子量における1Daの差は、分子量測定の実験誤差の範囲内のことがあるため、比較的狭い分子量範囲の四つの天然核酸塩基は不確実な要因を課す。
【0141】
本発明は、一つの質量タグ付き核酸塩基および三つの天然核酸塩基を用いた核酸の増幅によって、この理論的に1Daという不確実な要因を除去するための手段を提供する。本明細書で使用する「核酸塩基」という用語は、「ヌクレオチド」、「デオキシヌクレオチド」、「ヌクレオチド残基」、「デオキシヌクレオチド残基」、「ヌクレオチド三リン酸(NTP)」、またはデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)を含む、当技術分野において使われている他の用語と同義である。
【0142】
増幅反応において、またはプライマー自体に四つの核酸塩基(dNTP)のうち一つに顕著な質量を付加することは、G←→Aと同時のC←→T事象から生じる曖昧さから生じる増幅産物(1Daよりも顕著に大きい)の質量に顕著な差を招くものである(表6)。したがって、同じG←→A (-15.994)事象と同時の5-ヨード-C←→T (-110.900)事象は、分子量の差126.894を招く。塩基組成A27G305-ヨード-C21T21の分子量(33422.958)を、A26G315-ヨード-C22T20(33549.852)と比較するならば、理論的な分子量の差は+126.894である。分子量測定の実験誤差は、この分子量の差に関して有意ではない。さらに、99塩基長核酸の測定された分子量と一致する唯一の塩基組成は、A27G305-ヨード-C21T21である。対照的に、質量タグなしの同様の増幅は、18個の可能な塩基組成を有する。
【0143】
(表6)天然核酸塩基および質量修飾核酸塩基である5-ヨード-Cの分子量ならびに移行の結果として生じる分子量の差
【0144】
生物学的因子同定用アンプリコンの質量スペクトルは、レーダー信号処理に広く使用されているものなどの最尤処理装置を使用して独立して分析した。GenXと呼ばれるこの処理装置は、最初に入力データに各塩基組成集合体についての整合フィルターを適用することによって、各プライマーについて質量分析装置への入力の最尤推定を行う。これは、各プライマーについての較正物質に対するGenXの応答を含む。
【0145】
このアルゴリズムは、天然生物および環境混入物という複雑な背景を伴う条件に関する誤検出の確率に対する検出確率のプロットを最大にする性能予測を際立たせる。整合フィルターは、各生物学的因子のために使用されるプライマーセットに与えられた信号値の先験的な期待値である。ゲノム配列データベースは、質量塩基数整合フィルターを規定するために使用される。該データベースは、公知の細菌性生物学的因子の配列を有し、脅威生物および良性バックグラウンド生物を含む。後者は、バックグラウンド生物により生成されたスペクトルシグネチャーを推定し、差し引くために使用される。公知のバックグラウンド生物の最尤検出は、整合フィルターおよび雑音共分散の累積和推定を使用して実行される。バックグラウンドシグナル強度が推定され、整合フィルターと共に使用され、シグネチャーが形成され、そのシグネチャーが次に差し引かれる。最尤工程は、生物のための整合フィルターおよび浄化されたデータのための雑音-共分散の累積和推定を採用して同様の方法でこの「浄化された」データに適用される。
【0146】
各プライマーについての生物学的因子同定用アンプリコンの全塩基組成の振幅を較正し、複数の単一プライマー推定値に基づき、生物毎に最終的な最尤増幅推定を行う。全てのシステム雑音のモデルをこの二段階最尤計算に因子として含める。処理装置は、スペクトルに含まれる各塩基組成の分子数を報告する。増幅反応の完了時に残余するプライマーの量と同様に、適切なプライマーセットに対応する増幅産物の量を報告する。
【0147】
塩基数のぶれは、以下のように実施することができる。「電子PCR」を所望の生物学的因子のヌクレオチド配列に行って、各プライマー対について得ることができるであろう種々の予想される塩基数を得ることができる。例えば、ncbi.nlm.nih.gov/sutils/e-pcr/; Schuler, Genome Res. 7:541-50, 1997を参照されたい。例示的な一つの態様では、Microsoftエクセルワークブックなどの一つまたは複数のスプレッドシートは複数のワークシートを有する。この例では最初に、ワークブック名に類似した名のワークシートがあり、このワークシートは生の電子PCRデータを有する。第二に、生物学的因子名および塩基数を有する「フィルター処理された生物学的因子塩基数」という名のワークシートがあり、ある属および種と同定されない配列を除き、10株未満を有する生物学的因子についての全ての配列を除いた後の、各株についての別々の記録がある。第三に、このプライマー対についての置換、挿入、または欠失の頻度を有するワークシート「シート1」がある。このデータは、「フィルター処理された生物学的因子塩基数」ワークシートの中のデータからピボットテーブルを最初に作成し、次にエクセルVBAマクロを実行することにより生成する。このマクロは、同じ種であるが異なる株である生物学的因子についての塩基数における差のテーブルを作成する。当業者は、過度に実験せずに類似のテーブルの差を得るための追加の経路を了解することができる。
【0148】
例示的なスクリプトの適用は、ユーザが各生物学的因子についての塩基数の参照セットにより表される、株の画分を特定化する閾値を規定することを伴う。各生物学的因子についての塩基数の参照セットは、閾値を満たすかまたは閾値を超えるために必要な数の異なる塩基数を有してもよい。参照塩基数のセットは、最も豊富に存在する株の塩基型組成を取得し、参照セットにそれを加算することによって規定され、次にそれからその閾値に一致するか、それを超えるまで、その次に最も存在度の大きい株の塩基型組成を加算する。現在のセットのデータは、経験的に得られた閾値55%を使用して得られたものである。
【0149】
この生物学的因子についての参照塩基数セットに含まれない各塩基数について、スクリプトは、次に現在の塩基数が参照セットの中の各塩基数と異なる様式を判定するように進行する。この差は、置換Si=Xi、および挿入Ii=Yi、または欠失Di=Ziの組み合わせとして表すことができる。複数の参照塩基数があるならば、報告される差は、変化数を最小にすること、そして同じ変化数の場合には挿入または欠失数を最小にすることを目標にした規則を使用して選択される。したがって、主要な規則は、最小和(Xi+Yi)または(Xi+Zi)、例えば二つの置換よりも一つの挿入に関する差を同定することである。最小和に関して二つまたはそれ以上の差があるならば、報告される差は最も多く置換を有する差である。
【0150】
塩基数および参照組成の間の差は一つ、二つ、またはそれ以上の置換、一つ、二つ、またはそれ以上の挿入、一つ、二つ、またはそれ以上の欠失、および置換と挿入または欠失との組み合わせに分類される。異なるクラスの核酸塩基変化およびそれらの発生確率は、米国特許出願公開第2004209260 (米国出願第10/418,514号)に述べられており、この出願は、全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0151】
本明細書に記載する修飾に加えて、本発明の様々な修飾は、前述の説明から当業者に明白であろう。そのような修飾もまた、添付の特許請求の範囲内に入ると意図される。本出願に引用される(雑誌の記事、米国および米国以外の特許、特許出願公開、国際特許出願公開、遺伝子バンクアクセッション番号、インターネットのウェブサイトなどを非限定的に含む)各参照は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。当業者は、多数の変更および修飾が本発明の態様に加えられ得ること、およびそのような変更および修飾が本発明の精神から逸脱せずに加えられ得ることを認識しているものである。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の精神および範囲の中に入る全てのそのような等価な変形を包含すると意図される。
【図面の簡単な説明】
【0152】
本発明の前述の概要および以下の本発明の詳細な説明は、限定ではなく例示として含まれる添付の図面と共に読むと、よりよく理解される。
【0153】
【図1】代表的なプライマー対選択工程を図解する工程図である。
【図2】代表的なプライマー対確認工程を図解する工程図である。
【図3】プライマー対番号2293および2294を用いた、HTLV-1およびHTLV-2の核酸の増幅により得られた、HTLV-1およびHTLV-2の増幅産物の質量スペクトルを示す。
【図4】ヒトおよびサルレトロウイルスHTLVおよびSTLVの増幅産物の3D塩基組成プロットを示す。
【図5】SV40ウイルス、BKウイルス、およびJCウイルスの増幅産物の3D塩基組成プロットを示す。
【図6】ポリオーマウイルスの増幅産物の3D塩基組成プロットを示す。
【図7】パピローマウイルスの増幅産物の3D塩基組成プロットを示す。
【図8】二つのウイルス(細胞系由来HPV-18およびプラスミド由来HPV-6b)の検出のダイナミックレンジの判定を示す。
【図9】較正法の態様を例示する工程図である。
【図10】合成DNA較正物質に対するプライマーの感度の試験を示す。表4からのプライマーサブセットを限界希釈研究に使用した(1ウェルあたり5,000コピーから始めた較正物質構築物の2倍希釈系列)。
【図11】図11aは、プライマーが設計されたHBV核酸配列(配列番号:338)の高度に保存された領域を示す。図11bは、プライマー対1245および1247の実験的確認における質量スペクトルおよび算出された塩基組成。各対は、独特な予想される増幅産物を生成した。1247は、反応に含まれた他の非HBV性非ヘパドナウイルス科ウイルスを検出しなかった。
【図12】AGCT空間における全ての公知のレスピロウイルス単離物の分布を示す3D塩基組成プロットである。
【図13】図13aは、プニューモノウイルス(Pneumonovirinae)亜科の分布を示す3D塩基組成プロットである。図13bは、三つの異なるATCC培養単離物(VR955、1400、および1401)を使用し、プライマー対2441 (上)および2448 (下)を用いたRSV-Bの検出。産物はRSV-B検出について予想される塩基組成と一致する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つのプライマー対のそれぞれの二つのプライマーのそれぞれが、外来ウイルス核酸の保存された配列領域にハイブリダイズし、二つの該保存された配列領域が外来ウイルスの可変領域に隣接し、該保存された配列領域のそれぞれが遺伝子の少なくとも一部を含む、少なくとも一つのプライマー対と該試料由来の核酸を接触させる段階;
増幅産物を生成するために、二つの該保存された配列領域および該可変領域を増幅する段階;
質量分析により該増幅産物の分子量を判定する段階;ならびに
判定された該分子量を、インデックス付き分子量を含むデータベースと比較する段階
を含む、試料中の外来混入ウイルスの存在または非存在を同定または判定する方法であって、
判定された該分子量と該データベースの中の分子量との一致が、該試料中の該外来混入ウイルスの存在を示す、方法。
【請求項2】
少なくとも一つのプライマー対のそれぞれの二つのプライマーのそれぞれが、外来ウイルス核酸の保存された配列領域にハイブリダイズし、二つの該保存された配列領域が外来ウイルスの可変領域に隣接し、かつ該保存された配列領域のそれぞれが遺伝子の少なくとも一部を含む、少なくとも一つのプライマー対と該試料由来の核酸を接触させる段階;
増幅産物を生成するために、二つの該保存された配列領域および該可変領域を増幅する段階;
質量分析により該増幅産物の分子量を判定する段階;
該分子量から該増幅産物の塩基組成を算出する段階;ならびに
算出された該塩基組成を、インデックス付き塩基組成を含むデータベースと比較する段階
を含む、試料中の外来混入ウイルスの存在または非存在を同定または判定する方法であって、
算出された該塩基組成と該データベースの中の塩基組成との一致が、該試料中の該外来混入ウイルスの存在を示す、方法。
【請求項3】
少なくとも一つのプライマー対の各プライマーが、独立して13から35ヌクレオチド長である、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
質量分析が、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析(FT-ICR-MS)または飛行時間型質量分析(TOF-MS)である、請求項1または2記載の方法。
【請求項5】
増幅産物が約45から約200核酸長である、請求項1または2記載の方法。
【請求項6】
各保存された配列領域が、外来ウイルス属における全ての種の中で約80%から約100%同一である、請求項1または2記載の方法。
【請求項7】
各保存された配列領域が、外来ウイルス属における全ての種の中で約95%を超えて同一である、請求項1または2記載の方法。
【請求項8】
少なくとも一つのプライマー対が、少なくとも二つのプライマー対を含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項9】
増幅する段階における増幅が、多重PCRにより実施される、請求項8記載の方法。
【請求項10】
外来混入ウイルスがパルボウイルス科のメンバーである、請求項1または2記載の方法。
【請求項11】
遺伝子がVP1タンパク質をコードする、請求項10記載の方法。
【請求項12】
遺伝子がNS1タンパク質をコードする、請求項10記載の方法。
【請求項13】
少なくとも一つのプライマー対が少なくとも二つのプライマー対を含み、該少なくとも二つのプライマー対の少なくとも一つがVP1タンパク質をコードしている核酸にハイブリダイズし、かつ該少なくとも二つのプライマー対の少なくとも一つがNS1タンパク質をコードしている核酸にハイブリダイズする、請求項10記載の方法。
【請求項14】
外来混入ウイルスがディペンドウイルス属のメンバーである、請求項10記載の方法。
【請求項15】
少なくとも一つのプライマー対のそれぞれが、配列番号:160:329、161:329、161:330、163:332、164:333、165:334、および168:336により表される群より選択される任意のプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
少なくとも一つのプライマー対が少なくとも二つのプライマー対を含み、かつ該少なくとも二つのプライマー対のそれぞれが、配列番号:160:329、161:329、161:330、163:332、164:333、165:334、および168:336により表される群より選択される任意のプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を含む、請求項14記載の方法。
【請求項17】
少なくとも一つのプライマー対が少なくとも四つのプライマー対を含み、該少なくとも四つのプライマー対のそれぞれが、配列番号:160:329、161:329、161:330、163:332、164:333、165:334、および168:336により表される群より選択される任意のプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
外来混入ウイルスがエリスロウイルス属のメンバーである、請求項10記載の方法。
【請求項19】
外来混入ウイルスがパルボウイルス属のメンバーである、請求項10記載の方法。
【請求項20】
外来混入ウイルスがパラミクソウイルス科のメンバーである、請求項1または2記載の方法。
【請求項21】
遺伝子がRdRpタンパク質をコードする、請求項20記載の方法。
【請求項22】
パラミクソウイルス科のメンバーがニューモウイルス亜科のメンバーである、請求項20記載の方法。
【請求項23】
少なくとも一つのプライマー対のそれぞれが、配列番号:103:274、104:274、105:275、106:276、107:275、108:277、109:277、109:278、110:279、111:280、112:280、および113:281により表される群より選択される任意のプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を含む、請求項22記載の方法。
【請求項24】
少なくとも一つのプライマー対のそれぞれが、配列番号:103:274により表されるプライマー対または配列番号:109:278により表されるプライマー対と、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を含む、請求項23記載の方法。
【請求項25】
少なくとも一つのプライマー対が少なくとも二つのプライマー対を含み、該少なくとも二つのプライマー対の一方が、配列番号:103:274により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を含み、かつ該少なくとも二つのプライマー対のもう一方が、配列番号:109:278により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を含む、請求項23記載の方法。
【請求項26】
パラミクソウイルス科のメンバーがレスピロウイルス属のメンバーである、請求項20記載の方法。
【請求項27】
パラミクソウイルス科のメンバーがアブラウイルス属のメンバーである、請求項20記載の方法。
【請求項28】
パラミクソウイルス科のメンバーがルブラウイルス属のメンバーである、請求項20記載の方法。
【請求項29】
外来混入ウイルスがヘパドナウイルス科のメンバーである、請求項1または2記載の方法。
【請求項30】
ヘパドナウイルス科のメンバーがHBVである、請求項29記載の方法。
【請求項31】
保存された配列領域のそれぞれが、配列番号:338のヌクレオチド180〜453の部分、配列番号:338のヌクレオチド1375〜1436の部分、または配列番号:338のヌクレオチド1777〜1876の部分を含む、請求項30記載の方法。
【請求項32】
少なくとも一つのプライマー対のそれぞれが、配列番号:66:235、67:236、68:237、69:238、70:239、71:240、72:241、73:242、74:243、および75:244により表される群より選択される任意のプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を含む、請求項30記載の方法。
【請求項33】
少なくとも一つのプライマー対のそれぞれが、配列番号:67:236により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも100%の配列同一性を含むか、または配列番号:68:237により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも100%の配列同一性を含む、請求項37記載の方法。
【請求項34】
少なくとも一つのプライマー対が少なくとも二つのプライマー対を含み、該少なくとも二つのプライマー対の一方が、配列番号:67:236により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を含み、かつ該少なくとも二つのプライマー対のもう一方が、配列番号:68:237により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を含む、請求項30記載の方法。
【請求項35】
各プライマーが、NS1タンパク質をコードしている核酸またはVP1タンパク質をコードしている核酸にハイブリダイズする、フォワードプライマーおよびリバースプライマーを含む、混入しているパルボウイルス科ウイルスの同定用オリゴヌクレオチドプライマー対。
【請求項36】
各プライマーが独立して13から35核酸塩基長である、配列番号:160:329、161:329、161:330、163:332、164:333、165:334、および168:336により表される群より選択される任意のプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性をさらに含む、請求項35記載のオリゴヌクレオチドプライマー対。
【請求項37】
請求項36記載のオリゴヌクレオチドプライマー対を含む組成物。
【請求項38】
請求項37記載の組成物を含む、混入しているパルボウイルス科ウイルスの同定または検出のためのキット。
【請求項39】
プライマー対の少なくとも一つがNS1タンパク質をコードしている核酸にハイブリダイズし、該プライマー対の少なくとも一つがVP1タンパク質をコードしている核酸にハイブリダイズし、かつ該プライマー対の使用により、パルボウイルス科の一つまたは複数のメンバーの種、亜種、血清型、遺伝子型、またはそれらの組み合わせを同定するための増幅産物が生成される、少なくとも一つの追加のプライマー対をさらに含む、請求項38記載のキット。
【請求項40】
少なくとも一つの較正ポリヌクレオチドをさらに含む、請求項38または39記載のキット。
【請求項41】
磁気ビーズに結合した少なくとも一つのイオン交換樹脂をさらに含む、請求項38または39記載のキット。
【請求項42】
各プライマー対が、多重反応において独特な増幅産物を生成する、請求項39記載のキット。
【請求項43】
各プライマーが、配列番号:338のヌクレオチド180〜453の部分、配列番号:338のヌクレオチド1375〜1436の部分、または配列番号:338のヌクレオチド1777〜1876の部分にハイブリダイズする、フォワードプライマーおよびリバースプライマーを含む、混入しているヘパドナウイルス科ウイルスの同定用オリゴヌクレオチドプライマー対。
【請求項44】
各プライマーが、独立して13から35核酸塩基長である、配列番号:66:235、67:236、68:237、69:238、70:239、71:240、72:241、73:242、74:243、および75:244により表される群より選択される任意のプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性をさらに含む、請求項43記載のプライマー対。
【請求項45】
配列番号:67:236により表されるプライマー対または配列番号:68:237により表されるプライマー対と、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を含む、請求項44記載のプライマー対。
【請求項46】
請求項44記載のオリゴヌクレオチドプライマー対を含む組成物。
【請求項47】
請求項46記載の組成物を含む、混入しているヘパドナウイルス科ウイルスの同定または検出のためのキット。
【請求項48】
プライマー対のそれぞれの各プライマーが、配列番号:338のヌクレオチド180〜453の部分、配列番号:338のヌクレオチド1375〜1436の部分、または配列番号:338のヌクレオチド1777〜1876の部分にハイブリダイズし、かつ該プライマー対の使用により、ヘパドナウイルス科の一つまたは複数のメンバーの種、亜種、血清型、遺伝子型、またはそれらの組み合わせを同定するための増幅産物が生成される、少なくとも一つの追加のプライマー対をさらに含む、請求項47記載のキット。
【請求項49】
少なくとも一つの較正ポリヌクレオチドをさらに含む、請求項47または48記載のキット。
【請求項50】
磁気ビーズに結合した少なくとも一つのイオン交換樹脂をさらに含む、請求項47または48記載のキット。
【請求項51】
プライマー対が、多重PCR反応に使用するために設計されている、請求項48記載のキット。
【請求項52】
各プライマーがRdRpをコードしている核酸にハイブリダイズする、フォワードプライマーおよびリバースプライマーを含む、混入しているパラミクソウイルス科ウイルスの同定用オリゴヌクレオチドプライマー対。
【請求項53】
配列番号:103:274、104:274、105:275、106:276、107:275、108:277、109:277、109:278、110:279、111:280、112:280、および113:281により表される群より選択される任意のプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性をさらに含む、請求項52記載のプライマー対。
【請求項54】
請求項53記載のオリゴヌクレオチドプライマー対を含む組成物。
【請求項55】
請求項54記載の組成物を含む、混入しているパルボウイルス科ウイルスの同定または検出のためのキット。
【請求項56】
プライマー対の少なくとも一つが、配列番号:109:278により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を含み、かつ該プライマー対の少なくとも一つが、配列番号:103:274により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を含む、少なくとも一つの追加のプライマー対をさらに含む、請求項55記載のキット。
【請求項57】
少なくとも一つの較正ポリヌクレオチドをさらに含む、請求項55または56記載のキット。
【請求項58】
磁気ビーズに結合した少なくとも一つのイオン交換樹脂をさらに含む、請求項55または56記載のキット。
【請求項59】
プライマー対が、多重PCR反応に使用するために設計されている、請求項56記載のキット。
【請求項60】
オリゴヌクレオチドプライマー対のプライマーの一方または両方が、少なくとも一つの修飾核酸塩基を含む、請求項37、46、および54のいずれか一項記載の組成物。
【請求項61】
少なくとも一つの修飾核酸塩基のそれぞれが、質量修飾された核酸塩基またはユニバーサル核酸塩基を含む、請求項60記載の組成物。
【請求項62】
質量修飾された核酸塩基が5-ヨード-Cである、請求項61記載の組成物。
【請求項63】
質量修飾された核酸塩基が、5-プロピニルウラシルまたは5-プロピニルシトシンである、請求項61記載の組成物。
【請求項64】
ユニバーサル核酸塩基がイノシンである、請求項61記載の組成物。
【請求項65】
プライマーの一方または両方の5'末端上の鋳型をもたない(non-templated)任意のT残基が除去されている、請求項37、46、および54のいずれか一項記載の組成物。
【請求項66】
プライマーのいずれかまたは両方が少なくとも一つの分子量修飾タグを含む、請求項37、46、および54のいずれか一項記載の組成物。
【請求項67】
以下を含む、一つまたは複数のパルボウイルス科ウイルスの同定または検出のためのキット:
配列番号:160:329により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を有する第1プライマー対、
配列番号:161:329により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を有する第2プライマー対、
配列番号:161:330により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を有する第3プライマー対、
配列番号:163:332により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を有する第4プライマー対、
配列番号:164:333により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を有する第5プライマー対、
配列番号:165:334により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を有する第6プライマー対、および
配列番号:168:336により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を有する第7プライマー対。
【請求項68】
以下を含む、一つまたは複数のヘパドナウイルス科ウイルスの同定または検出のためのキット:
配列番号:66:235により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を有する第1プライマー対、
配列番号:67:236により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を有する第2プライマー対、
配列番号:68:237により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を有する第3プライマー対、
配列番号:69:238により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を有する第4プライマー対、
配列番号:70:239により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を有する第5プライマー対、
配列番号:71:240により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を有する第6プライマー対、
配列番号:72:241により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を有する第7プライマー対、
配列番号:73:242により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を有する第8プライマー対、
配列番号:74:243により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を有する第9プライマー対、および
配列番号:75:244により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を有する第10プライマー対。
【請求項69】
以下を含む、一つまたは複数のパラミクソウイルス科ウイルスの同定または検出のためのキット:
配列番号:103:274により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を有する第1プライマー対、
配列番号:104:274により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を有する第2プライマー対、
配列番号:105:275により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を有する第3プライマー対、
配列番号:106:276により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を有する第4プライマー対、
配列番号:107:275により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を有する第5プライマー対、
配列番号:108:277により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を有する第6プライマー対、
配列番号:109:287により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を有する第7プライマー対、
配列番号:109:278により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を有する第8プライマー、
配列番号:110:279により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を有する第9プライマー、
配列番号:111:280により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を有する第10プライマー、
配列番号:112:280により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を有する第11プライマー、および
配列番号:113:281により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を有する第12プライマー。
【請求項1】
少なくとも一つのプライマー対のそれぞれの二つのプライマーのそれぞれが、外来ウイルス核酸の保存された配列領域にハイブリダイズし、二つの該保存された配列領域が外来ウイルスの可変領域に隣接し、該保存された配列領域のそれぞれが遺伝子の少なくとも一部を含む、少なくとも一つのプライマー対と該試料由来の核酸を接触させる段階;
増幅産物を生成するために、二つの該保存された配列領域および該可変領域を増幅する段階;
質量分析により該増幅産物の分子量を判定する段階;ならびに
判定された該分子量を、インデックス付き分子量を含むデータベースと比較する段階
を含む、試料中の外来混入ウイルスの存在または非存在を同定または判定する方法であって、
判定された該分子量と該データベースの中の分子量との一致が、該試料中の該外来混入ウイルスの存在を示す、方法。
【請求項2】
少なくとも一つのプライマー対のそれぞれの二つのプライマーのそれぞれが、外来ウイルス核酸の保存された配列領域にハイブリダイズし、二つの該保存された配列領域が外来ウイルスの可変領域に隣接し、かつ該保存された配列領域のそれぞれが遺伝子の少なくとも一部を含む、少なくとも一つのプライマー対と該試料由来の核酸を接触させる段階;
増幅産物を生成するために、二つの該保存された配列領域および該可変領域を増幅する段階;
質量分析により該増幅産物の分子量を判定する段階;
該分子量から該増幅産物の塩基組成を算出する段階;ならびに
算出された該塩基組成を、インデックス付き塩基組成を含むデータベースと比較する段階
を含む、試料中の外来混入ウイルスの存在または非存在を同定または判定する方法であって、
算出された該塩基組成と該データベースの中の塩基組成との一致が、該試料中の該外来混入ウイルスの存在を示す、方法。
【請求項3】
少なくとも一つのプライマー対の各プライマーが、独立して13から35ヌクレオチド長である、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
質量分析が、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析(FT-ICR-MS)または飛行時間型質量分析(TOF-MS)である、請求項1または2記載の方法。
【請求項5】
増幅産物が約45から約200核酸長である、請求項1または2記載の方法。
【請求項6】
各保存された配列領域が、外来ウイルス属における全ての種の中で約80%から約100%同一である、請求項1または2記載の方法。
【請求項7】
各保存された配列領域が、外来ウイルス属における全ての種の中で約95%を超えて同一である、請求項1または2記載の方法。
【請求項8】
少なくとも一つのプライマー対が、少なくとも二つのプライマー対を含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項9】
増幅する段階における増幅が、多重PCRにより実施される、請求項8記載の方法。
【請求項10】
外来混入ウイルスがパルボウイルス科のメンバーである、請求項1または2記載の方法。
【請求項11】
遺伝子がVP1タンパク質をコードする、請求項10記載の方法。
【請求項12】
遺伝子がNS1タンパク質をコードする、請求項10記載の方法。
【請求項13】
少なくとも一つのプライマー対が少なくとも二つのプライマー対を含み、該少なくとも二つのプライマー対の少なくとも一つがVP1タンパク質をコードしている核酸にハイブリダイズし、かつ該少なくとも二つのプライマー対の少なくとも一つがNS1タンパク質をコードしている核酸にハイブリダイズする、請求項10記載の方法。
【請求項14】
外来混入ウイルスがディペンドウイルス属のメンバーである、請求項10記載の方法。
【請求項15】
少なくとも一つのプライマー対のそれぞれが、配列番号:160:329、161:329、161:330、163:332、164:333、165:334、および168:336により表される群より選択される任意のプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
少なくとも一つのプライマー対が少なくとも二つのプライマー対を含み、かつ該少なくとも二つのプライマー対のそれぞれが、配列番号:160:329、161:329、161:330、163:332、164:333、165:334、および168:336により表される群より選択される任意のプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を含む、請求項14記載の方法。
【請求項17】
少なくとも一つのプライマー対が少なくとも四つのプライマー対を含み、該少なくとも四つのプライマー対のそれぞれが、配列番号:160:329、161:329、161:330、163:332、164:333、165:334、および168:336により表される群より選択される任意のプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
外来混入ウイルスがエリスロウイルス属のメンバーである、請求項10記載の方法。
【請求項19】
外来混入ウイルスがパルボウイルス属のメンバーである、請求項10記載の方法。
【請求項20】
外来混入ウイルスがパラミクソウイルス科のメンバーである、請求項1または2記載の方法。
【請求項21】
遺伝子がRdRpタンパク質をコードする、請求項20記載の方法。
【請求項22】
パラミクソウイルス科のメンバーがニューモウイルス亜科のメンバーである、請求項20記載の方法。
【請求項23】
少なくとも一つのプライマー対のそれぞれが、配列番号:103:274、104:274、105:275、106:276、107:275、108:277、109:277、109:278、110:279、111:280、112:280、および113:281により表される群より選択される任意のプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を含む、請求項22記載の方法。
【請求項24】
少なくとも一つのプライマー対のそれぞれが、配列番号:103:274により表されるプライマー対または配列番号:109:278により表されるプライマー対と、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を含む、請求項23記載の方法。
【請求項25】
少なくとも一つのプライマー対が少なくとも二つのプライマー対を含み、該少なくとも二つのプライマー対の一方が、配列番号:103:274により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を含み、かつ該少なくとも二つのプライマー対のもう一方が、配列番号:109:278により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を含む、請求項23記載の方法。
【請求項26】
パラミクソウイルス科のメンバーがレスピロウイルス属のメンバーである、請求項20記載の方法。
【請求項27】
パラミクソウイルス科のメンバーがアブラウイルス属のメンバーである、請求項20記載の方法。
【請求項28】
パラミクソウイルス科のメンバーがルブラウイルス属のメンバーである、請求項20記載の方法。
【請求項29】
外来混入ウイルスがヘパドナウイルス科のメンバーである、請求項1または2記載の方法。
【請求項30】
ヘパドナウイルス科のメンバーがHBVである、請求項29記載の方法。
【請求項31】
保存された配列領域のそれぞれが、配列番号:338のヌクレオチド180〜453の部分、配列番号:338のヌクレオチド1375〜1436の部分、または配列番号:338のヌクレオチド1777〜1876の部分を含む、請求項30記載の方法。
【請求項32】
少なくとも一つのプライマー対のそれぞれが、配列番号:66:235、67:236、68:237、69:238、70:239、71:240、72:241、73:242、74:243、および75:244により表される群より選択される任意のプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を含む、請求項30記載の方法。
【請求項33】
少なくとも一つのプライマー対のそれぞれが、配列番号:67:236により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも100%の配列同一性を含むか、または配列番号:68:237により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも100%の配列同一性を含む、請求項37記載の方法。
【請求項34】
少なくとも一つのプライマー対が少なくとも二つのプライマー対を含み、該少なくとも二つのプライマー対の一方が、配列番号:67:236により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を含み、かつ該少なくとも二つのプライマー対のもう一方が、配列番号:68:237により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を含む、請求項30記載の方法。
【請求項35】
各プライマーが、NS1タンパク質をコードしている核酸またはVP1タンパク質をコードしている核酸にハイブリダイズする、フォワードプライマーおよびリバースプライマーを含む、混入しているパルボウイルス科ウイルスの同定用オリゴヌクレオチドプライマー対。
【請求項36】
各プライマーが独立して13から35核酸塩基長である、配列番号:160:329、161:329、161:330、163:332、164:333、165:334、および168:336により表される群より選択される任意のプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性をさらに含む、請求項35記載のオリゴヌクレオチドプライマー対。
【請求項37】
請求項36記載のオリゴヌクレオチドプライマー対を含む組成物。
【請求項38】
請求項37記載の組成物を含む、混入しているパルボウイルス科ウイルスの同定または検出のためのキット。
【請求項39】
プライマー対の少なくとも一つがNS1タンパク質をコードしている核酸にハイブリダイズし、該プライマー対の少なくとも一つがVP1タンパク質をコードしている核酸にハイブリダイズし、かつ該プライマー対の使用により、パルボウイルス科の一つまたは複数のメンバーの種、亜種、血清型、遺伝子型、またはそれらの組み合わせを同定するための増幅産物が生成される、少なくとも一つの追加のプライマー対をさらに含む、請求項38記載のキット。
【請求項40】
少なくとも一つの較正ポリヌクレオチドをさらに含む、請求項38または39記載のキット。
【請求項41】
磁気ビーズに結合した少なくとも一つのイオン交換樹脂をさらに含む、請求項38または39記載のキット。
【請求項42】
各プライマー対が、多重反応において独特な増幅産物を生成する、請求項39記載のキット。
【請求項43】
各プライマーが、配列番号:338のヌクレオチド180〜453の部分、配列番号:338のヌクレオチド1375〜1436の部分、または配列番号:338のヌクレオチド1777〜1876の部分にハイブリダイズする、フォワードプライマーおよびリバースプライマーを含む、混入しているヘパドナウイルス科ウイルスの同定用オリゴヌクレオチドプライマー対。
【請求項44】
各プライマーが、独立して13から35核酸塩基長である、配列番号:66:235、67:236、68:237、69:238、70:239、71:240、72:241、73:242、74:243、および75:244により表される群より選択される任意のプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性をさらに含む、請求項43記載のプライマー対。
【請求項45】
配列番号:67:236により表されるプライマー対または配列番号:68:237により表されるプライマー対と、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を含む、請求項44記載のプライマー対。
【請求項46】
請求項44記載のオリゴヌクレオチドプライマー対を含む組成物。
【請求項47】
請求項46記載の組成物を含む、混入しているヘパドナウイルス科ウイルスの同定または検出のためのキット。
【請求項48】
プライマー対のそれぞれの各プライマーが、配列番号:338のヌクレオチド180〜453の部分、配列番号:338のヌクレオチド1375〜1436の部分、または配列番号:338のヌクレオチド1777〜1876の部分にハイブリダイズし、かつ該プライマー対の使用により、ヘパドナウイルス科の一つまたは複数のメンバーの種、亜種、血清型、遺伝子型、またはそれらの組み合わせを同定するための増幅産物が生成される、少なくとも一つの追加のプライマー対をさらに含む、請求項47記載のキット。
【請求項49】
少なくとも一つの較正ポリヌクレオチドをさらに含む、請求項47または48記載のキット。
【請求項50】
磁気ビーズに結合した少なくとも一つのイオン交換樹脂をさらに含む、請求項47または48記載のキット。
【請求項51】
プライマー対が、多重PCR反応に使用するために設計されている、請求項48記載のキット。
【請求項52】
各プライマーがRdRpをコードしている核酸にハイブリダイズする、フォワードプライマーおよびリバースプライマーを含む、混入しているパラミクソウイルス科ウイルスの同定用オリゴヌクレオチドプライマー対。
【請求項53】
配列番号:103:274、104:274、105:275、106:276、107:275、108:277、109:277、109:278、110:279、111:280、112:280、および113:281により表される群より選択される任意のプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性をさらに含む、請求項52記載のプライマー対。
【請求項54】
請求項53記載のオリゴヌクレオチドプライマー対を含む組成物。
【請求項55】
請求項54記載の組成物を含む、混入しているパルボウイルス科ウイルスの同定または検出のためのキット。
【請求項56】
プライマー対の少なくとも一つが、配列番号:109:278により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を含み、かつ該プライマー対の少なくとも一つが、配列番号:103:274により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を含む、少なくとも一つの追加のプライマー対をさらに含む、請求項55記載のキット。
【請求項57】
少なくとも一つの較正ポリヌクレオチドをさらに含む、請求項55または56記載のキット。
【請求項58】
磁気ビーズに結合した少なくとも一つのイオン交換樹脂をさらに含む、請求項55または56記載のキット。
【請求項59】
プライマー対が、多重PCR反応に使用するために設計されている、請求項56記載のキット。
【請求項60】
オリゴヌクレオチドプライマー対のプライマーの一方または両方が、少なくとも一つの修飾核酸塩基を含む、請求項37、46、および54のいずれか一項記載の組成物。
【請求項61】
少なくとも一つの修飾核酸塩基のそれぞれが、質量修飾された核酸塩基またはユニバーサル核酸塩基を含む、請求項60記載の組成物。
【請求項62】
質量修飾された核酸塩基が5-ヨード-Cである、請求項61記載の組成物。
【請求項63】
質量修飾された核酸塩基が、5-プロピニルウラシルまたは5-プロピニルシトシンである、請求項61記載の組成物。
【請求項64】
ユニバーサル核酸塩基がイノシンである、請求項61記載の組成物。
【請求項65】
プライマーの一方または両方の5'末端上の鋳型をもたない(non-templated)任意のT残基が除去されている、請求項37、46、および54のいずれか一項記載の組成物。
【請求項66】
プライマーのいずれかまたは両方が少なくとも一つの分子量修飾タグを含む、請求項37、46、および54のいずれか一項記載の組成物。
【請求項67】
以下を含む、一つまたは複数のパルボウイルス科ウイルスの同定または検出のためのキット:
配列番号:160:329により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を有する第1プライマー対、
配列番号:161:329により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を有する第2プライマー対、
配列番号:161:330により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を有する第3プライマー対、
配列番号:163:332により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を有する第4プライマー対、
配列番号:164:333により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を有する第5プライマー対、
配列番号:165:334により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を有する第6プライマー対、および
配列番号:168:336により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を有する第7プライマー対。
【請求項68】
以下を含む、一つまたは複数のヘパドナウイルス科ウイルスの同定または検出のためのキット:
配列番号:66:235により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を有する第1プライマー対、
配列番号:67:236により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を有する第2プライマー対、
配列番号:68:237により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を有する第3プライマー対、
配列番号:69:238により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を有する第4プライマー対、
配列番号:70:239により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を有する第5プライマー対、
配列番号:71:240により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を有する第6プライマー対、
配列番号:72:241により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を有する第7プライマー対、
配列番号:73:242により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を有する第8プライマー対、
配列番号:74:243により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を有する第9プライマー対、および
配列番号:75:244により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を有する第10プライマー対。
【請求項69】
以下を含む、一つまたは複数のパラミクソウイルス科ウイルスの同定または検出のためのキット:
配列番号:103:274により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を有する第1プライマー対、
配列番号:104:274により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を有する第2プライマー対、
配列番号:105:275により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を有する第3プライマー対、
配列番号:106:276により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を有する第4プライマー対、
配列番号:107:275により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を有する第5プライマー対、
配列番号:108:277により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を有する第6プライマー対、
配列番号:109:287により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を有する第7プライマー対、
配列番号:109:278により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を有する第8プライマー、
配列番号:110:279により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を有する第9プライマー、
配列番号:111:280により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を有する第10プライマー、
配列番号:112:280により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を有する第11プライマー、および
配列番号:113:281により表されるプライマー対と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%の配列同一性を有する第12プライマー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2009−519010(P2009−519010A)
【公表日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−542540(P2008−542540)
【出願日】平成18年11月28日(2006.11.28)
【国際出願番号】PCT/US2006/061307
【国際公開番号】WO2007/100397
【国際公開日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WINDOWS
2.PENTIUM
3.UNIX
【出願人】(508266579)アイビス バイオサイエンシズ インコーポレイティッド (4)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月28日(2006.11.28)
【国際出願番号】PCT/US2006/061307
【国際公開番号】WO2007/100397
【国際公開日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WINDOWS
2.PENTIUM
3.UNIX
【出願人】(508266579)アイビス バイオサイエンシズ インコーポレイティッド (4)
【Fターム(参考)】
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