説明

外用組成物

【課題】有効成分の皮膚への吸収性に優れる外用組成物を提供する。
【解決手段】 下記(A)成分と(B)成分とを含む外用組成物。
(A)グリコールエーテル、又はその誘導体;及び
(B)ポリヒドロキシ酸、又は薬学的に許容されるそれらの塩

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚からの有効成分の吸収性に優れる外用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚に適用する外用剤には、貼付剤、軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、固形状製剤など、様々な剤型のものがあるが、外界からの異物の侵入を阻止する角層に阻まれるため、外用剤に配合されている有用な成分を効率的に皮膚に浸透させることは容易ではない。このため、皮膚外用剤や化粧品の有効成分の皮膚への経皮吸収を促進するために様々な検討がなされており、有効成分の経皮吸収性を高める化合物も数多く知られている。
例えば、有効成分の経皮吸収性を向上させた外用剤としては、レシチンおよび親水性非イオン界面活性剤を含有するリポソーム(特許文献1)や、リン脂質および特定の多価アルコールを含有する吸収促進組成物(特許文献2)などが知られている。また、シクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコールが水溶性有効成分の浸透性促進作用に優れることなどが知られている(特許文献3)。また、出願人もグリコールエーテルを利用した経皮吸収の検討を行っており、これまでにグリコールエーテルとリン酸を組み合わせることにより、経皮吸収を促進させる発明を行っている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62-95134号公報
【特許文献2】特開平10-194994号公報
【特許文献3】特開2009-35497号公報
【特許文献4】特開2006-213695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、有効成分の皮膚への吸収性に優れる外用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は上記課題を解決するために研究を重ね、
(A)グリコールエーテル又は、その誘導体;及び
(B)ポリヒドロキシ酸、又は薬学的に許容されるそれらの塩
を含む外用組成物は、有効成分の皮膚への浸透性を著しく向上させることを見出した。
また、この有効成分の浸透性は、上記(A)成分、及び上記(B)成分の各単独の場合に比べて相乗的に向上することも見出した。
【0006】
本発明は、上記知見に基づき完成されたものであり、下記の外用組成物を提供する。
項1. 下記(A)成分と(B)成分とを含む外用組成物。
(A)グリコールエーテル、又はその誘導体;及び
(B)ポリヒドロキシ酸、又は薬学的に許容されるそれらの塩
項2. (A)成分を、組成物の全量に対して、約0.001〜70重量%含有する項1に記載の外用組成物。
項3. (B)成分を、組成物の全量に対して、約0.01〜25重量%含有する項1又は2に記載の外用組成物。
項4. グリコールエーテル又はその誘導体が、ジエチレングリコールモノエチルエーテル又はシクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコールである項1〜3のいずれかに記載の外用組成物。
項5. ポリヒドロキシ酸が、ペンタヒドロキシヘキサン酸、酒石酸、及びこれらの酸の糖酸からなる群より選ばれる化合物である項1〜4のいずれかに記載の外用組成物。
項6. さらに、水溶性有効成分を含む項1〜5のいずれかに記載の外用組成物。
項7. 下記(A)成分と(B)成分とを含む経皮吸収促進剤。
(A)グリコールエーテル又はその誘導体;及び
(B)ポリヒドロキシ酸、又は薬学的に許容されるそれらの塩
項8. 下記(A)成分と(B)成分とを含む組成物と水溶性有効成分とを混合する、水溶性有効成分の皮膚への吸収性の向上方法。
(A)グリコールエーテル、又はその誘導体;及び
(B)ポリヒドロキシ酸、又は薬学的に許容されるそれらの塩
【発明の効果】
【0007】
上記(A)成分と上記(B)成分とを含む本発明の外用組成物は、有効成分の皮膚への浸透性が極めて良好で、有効成分本来の作用が十分に得られるものである。特に、水溶性成分は、一般に皮膚からの吸収性が悪いが、本発明の外用組成物は、このような水溶性成分の浸透性、吸収性をも、化粧品や皮膚外用剤として実用できる程度に向上させることができる。
また、一般に、酸を含む外用組成物は、その他の成分との組み合わせによっては、酸による皮膚刺激性が増強される場合があるが、本発明の外用組成物は、酸の皮膚刺激性が増強されず、使用感に優れる。また、本発明の外用組成物は、皮膚へのダメージが無い又は殆ど無い。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】水溶性蛍光物質の皮膚浸透性促進効果についての、シクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコールとグルコン酸との相乗作用を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
(A)グリコールエーテル又はその誘導体
グリコールエーテル
グリコールエーテルとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、又はジプロピレングリコールと、メチルアルコール、エチルアルコール、又はプロピルアルコールとのモノエーテルが挙げられる。
好ましいグリコールエーテルとして、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテルなどが挙げられ、中でもエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルが好ましく、ジエチレングリコールモノエチルエーテルがより好ましい。
誘導体
グリコールエーテルの誘導体としては、上記説明したグリコールエーテルと、1塩基酸又は2塩基酸とのエステルが挙げられる。中でも、2塩基酸とのエステルが好ましい。2塩基酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の飽和直鎖のジカルボン酸;2,2,4−トリメチルアジピン酸、2,4,4−トリメチルアジピン酸等の飽和分岐鎖のジカルボン酸;1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の環状のジカルボン酸(脂環式ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸)等が挙げられる。これらのうち、浸透促進効果に優れ、入手が容易でかつ安価である点で、飽和直鎖のジカルボン酸の中の、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、及び環状のジカルボン酸の中の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、フタル酸、テレフタル酸が好ましい。中でも、コハク酸、アジピン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸が好ましく、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸が最も好ましい。
グリコールエーテル又はその誘導体は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0010】
(B)ポリヒドロキシ酸、又は薬学的に許容されるその塩
ポリヒドロキシ酸としては、炭素数3〜15、水酸基数2〜10(好ましくは、2〜6、カルボキシル基数1〜2(好ましくは1)の化合物が挙げられる。
このようなポリヒドロキシ酸の具体例として、グリセリン酸のようなジヒドロキシプロパン酸(水酸基数2、カルボキシル基数1);エリスロン酸、スレオン酸のようなトリヒドロキシブタン酸(水酸基数3、カルボキシル基数1);リボン酸、アラビノン酸、キシロン酸、リキソン酸のようなテトラヒドロキシペンタン酸(水酸基数4、カルボキシル基数1);アロン酸、アルトロン酸、グルコン酸、マンノン酸、グロン酸、イドン酸、ガラクトン酸、タロン酸のようなペンタヒドロキシヘキサン酸(水酸基数5、カルボキシル基数1);グルコヘプトン酸、ガラクトヘプトン酸のようなヘキサヒドロキシヘプタン酸(水酸基数6、カルボキシル基数1);酒石酸(水酸基数2、カルボキシル基数2)などが挙げられる。また、上記のポリヒドロキシ酸と、ガラクトース、グルコース、マルトースのような糖との糖酸も、本発明のポリヒドロキシ酸に含まれる。
中でも、ペンタヒドロキシヘキサン酸(特に、グルコン酸)、酒石酸、又はこれらの酸とガラクトース、グルコース、マルトースのような糖との糖酸(特に、ラクトビオン酸、マルトビオン酸)が好ましい。
塩は、薬学的に許容される塩であればよく、例えばナトリウム塩、カリウム塩、亜鉛塩、鉄塩などが挙げられる。
ポリヒドロキシ酸、又は薬学的に許容されるその塩は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0011】
(A)成分と(B)成分との好ましい組み合わせ
(A)成分と(B)成分との好ましい組み合わせとして、以下の表1に示す組み合わせが挙げられる。
【表1】

【0012】
(A)成分及び(B)成分の使用量
上記(A)成分の含有量は、組成物の全量に対して、約0.001〜70重量%とすることが好ましく、約0.01〜60重量%がより好ましく、約0.1〜50重量%がさらにより好ましく、約0.1〜30重量%が特に好ましい。グリコールエーテル又はその誘導体の含有量が上記範囲であれば、十分な浸透効果が得られるとともに、良好な使用感が得られる。
上記(B)成分の含有量は、組成物の全量に対して、約0.01〜25重量%が好ましく、約0.05〜15重量%がより好ましい、約0.1〜5重量%が特に好ましい。ポリヒドロキシ酸、又は薬学的に許容されるそれらの塩の含有量が上記範囲であれば、十分な浸透効果が得られるとともに、刺激が殆どなく良好な使用感が得られる。
また、(A)成分のグリコールエーテル又はその誘導体と(B)成分のポリヒドロキシ酸、又は薬学的に許容されるそれらの塩との比率は、(A)成分のグリコールエーテル又はその誘導体の1重量部に対して、(B)成分のポリヒドロキシ酸、又は薬学的に許容されるそれらの塩を約0.004〜250重量部とすることができる。(A)成分と(B)成分との比率が上記範囲であれば、浸透作用について十分に相乗効果が得られる。
【0013】
有効成分
本発明の外用組成物は、各種の有効成分を含むことができる。有効成分の種類は特に限定されず、水難溶性成分、水溶性成分の何れであってもよいが、一般に皮膚への浸透性が悪い水溶性成分が好適である。
本発明において「水溶性成分」は、水中で、20℃の温度下で、5分間隔で30秒間強く振り混ぜるときに、30分以内(即ち、5分間隔で6回振り混ぜてから30秒以内)に、1g/L以上溶解する成分をいう。
有効成分は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
水溶性有効成分を含む有効成分の具体例として、化粧品成分として一般に使用される、例えば、抗酸化成分、老化防止成分、抗炎症成分、美白成分、細胞賦活化成分、ビタミン類、血行促進成分、保湿成分、DNAの損傷の予防及び/又は修復作用を有する成分、抗糖化成分、ペプチド又はその誘導体、アミノ酸又はその誘導体、水溶性スフィンゴ脂質、ヒドロキノン配糖体及びそのエステル類などが挙げられる。
【0014】
水溶性抗酸化成分としては、植物(例えば、ブドウ、オタネニンジン、コンフリー等)に由来する成分;プロアントシアニジン、アスコルビン酸及びその誘導体、グルコシルヘスペリジン、などが挙げられる。
【0015】
水溶性老化防止成分としては、加水分解大豆タンパク、ウコンエキス、等が挙げられる。
【0016】
水溶性抗炎症成分としては、植物(例えば、コンフリー)に由来する成分;アラントイン、グリチルリチン酸又はその誘導体などが挙げられる。
【0017】
水溶性美白成分としては、例えば、アルブチン;ハイドロキノン;コウジ酸;ブチルレゾルシノール;アスコルビン酸又はその誘導体;トラネキサム酸などや、美白作用を有する植物成分(例えば、植物エキス)が挙げられる。
【0018】
水溶性細胞賦活化成分としては、植物(例えば、ビルベリー)に由来する成分;γ-アミノ酪酸、ε-アミノカプロン酸などのアミノ酸類;チアミン、リボフラビン、塩酸ピリドキシン、パントテン酸類などのビタミン類;グリコール酸、乳酸などのα-ヒドロキシ酸類などが挙げられる。
【0019】
水溶性ビタミン類としては、リボフラビン等のビタミンB2類;ニコチン酸アミドなどのニコチン酸類;アスコルビン酸などのビタミンC類(アスコルビン酸及びその誘導体);チアミン塩酸塩、チアミンセチル塩酸塩、チアミンチオシアン酸塩、チアミンラウリル塩酸塩、チアミン硝酸塩、チアミンモノリン酸塩、チアミンリジン塩、チアミントリリン酸塩、チアミンモノリン酸エステルリン酸塩、チアミンモノリン酸エステル、チアミンジリン酸エステル、チアミンジリン酸エステル塩酸塩、チアミントリリン酸エステル、チアミントリリン酸エステルモノリン酸塩等のビタミンB1類;塩酸ピリドキシン、酢酸ピリドキシン、塩酸ピリドキサール、5’−リン酸ピリドキサール、塩酸ピリドキサミン等のビタミンB6類、シアノコバラミン等のビタミンB12類;葉酸等の葉酸類;パントテニルアルコール(パンテノール)等のパントテン酸類;ビオチン等のビオチン類;そのほか、カルニチン等のビタミン様作用因子などが挙げられる。
【0020】
水溶性血行促進作用成分としては、植物(例えば、オタネニンジン)に由来する成分;グルコシルヘスペリジン、が挙げられる。
【0021】
水溶性保湿成分としては、植物(例えば、チガヤ)に由来する成分;アラニンのようなアミノ酸及びその誘導体;コラーゲン、エラスチンのようなタンパク質やペプチド、その加水分解物;グリセリンなどの多価アルコール;ソルビトールのような糖アルコール;レシチンのようなリン脂質;ヒアルロン酸のようなムコ多糖;乳酸のようなNMF由来成分;ポリグルタミン酸;MPCポリマー(例えば、LIPIDURE(登録商標)等)等のリン脂質極性基を有する高分子;ポリオキシプロピレンメチルグルコシド;トリメチルグリシン(ベタイン);ヒドロキシエチルウレア;ソルビトールなどが挙げられる。
【0022】
水溶性のDNAの損傷の予防及び/又は修復作用を有する成分としては、動物(例えば、アルテミア)に由来する成分;植物(例えば、キャッツクロー)に由来する成分;DNA、DNA塩、RNA、RNA塩等の核酸成分が挙げられる。
【0023】
水溶性抗糖化成分としては、例えば、植物エキス(例えば、ブドレジャアキシラリス葉エキス(ブドレジャアキシラリス葉を水やエタノールなどの溶媒で抽出したものであり、マンドレシーエキスとも称される));アムラーの果実、果汁又はそれらの抽出物(以上、特開2006-028090、特開2006-62989号等);L−アルギニン(特開2001-039816);カルノシン(「美容のための最新皮膚診断マニュアル」、フレグランスジャーナル社、2006年8月15日発行);ブドウ葉の抽出物(特開2006-273811号);ブドウ種子の抽出物(特開2003-212770号);しそ、タイム、ローズマリーの抽出物(以上、特開2004-250445号)などが挙げられる。
【0024】
水溶性ペプチド又はその誘導体としては、エラスチン分解ペプチド、コラーゲン分解ペプチド、大豆蛋白分解ペプチドなどが挙げられる。
【0025】
水溶性アミノ酸又はその誘導体としては、ベタイン(トリメチルグリシン)、アルギニン、リジン、セリン、グリシン、スレオニン、グルタミン酸、グルタミン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、シスチン、ヒスチジン、タウリン、γ−アミノ酪酸、γ−アミノ−β−ヒドロキシ酪酸、カルニチン、カルノシン等が挙げられる。
【0026】
水溶性ヒドロキノン配糖体及びそのエステル類としては、アルブチン、α−アルブチンなどが挙げられる。
【0027】
その他、フェルラ酸塩及びその誘導体、プラセンタエキス、グルタチオン、ヒノキチオール、カフェイン、ルチン及びその配糖体、ヘスペリジン及びその配糖体などの水溶性成分も好適である。
【0028】
特に好ましい水溶性有効成分として、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、グリチルリチン酸、アルブチン、ハイドロキノン、コウジ酸、ブチルレゾルシノール、グルコシルヘスペリジン、エラスチン分解ペプチド、大豆蛋白分解ペプチド、ニコチン酸アミド、カルノシンなどが挙げられる。
【0029】
また、有効成分は、医薬の有効成分として用いられている成分であってもよい。本発明の外用組成物は、塗布剤、貼付剤として好適に使用できることから、皮膚に作用させる抗炎症剤、消毒剤、抗菌剤、創傷治療剤などの他、皮膚から吸収させる鎮痛剤、解熱剤、抗不整脈剤、抗高血圧剤、気管支拡張剤、抗腫瘍剤、鎮咳剤、利尿剤、ホルモン剤等、広範な成分を、水溶性有効成分を含む有効成分とすることができる。
【0030】
有効成分は負に帯電した成分であってもよく、このような成分でも、本発明の外用組成物であれば、効果的に皮膚に浸透又は吸収させることができる。
また、有効成分は、比較的低分子量の成分であることが好ましく、例えば、分子量50〜1000、特に50〜500であれば、一層効率よく、皮膚に、浸透又は吸収させることができる。
【0031】
有効成分の含有量は、その種類によって異なるが、外用組成物の全量に対して、約0.001重量%以上が好ましく、約0.01重量%以上がより好ましく、0.1重量%以上がさらにより好ましい。また、有効成分の含有量は、外用組成物の全量に対して、約40重量%以下が好ましく、約30重量%以下がより好ましく、約20重量%以下がさらにより好ましい。有効成分がこのような量含まれていても、皮膚中に効果的に浸透又は吸収される。
【0032】
その他の成分
本発明の外用組成物は、化粧料に通常使用される基剤又は担体、及び必要に応じて添加剤と共に、化粧料組成物とすることができる。
化粧料組成物の使用形態は特に限定されず、例えば、化粧水、乳液、クリーム、美容液、日焼け止め用化粧料、パック、ハンドクリーム、ボディローション、ボディークリームのような基礎化粧料;洗顔料、メイク落とし、ボディーシャンプー、シャンプー、リンス、トリートメントのような洗浄用化粧料などが挙げられる。
また、化粧料組成物の形態としては、液剤、懸濁剤、乳剤、クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤などが挙げられる。中でも、保湿効果を併せ持つ点で、乳剤、クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤が好ましい。
また、化粧料組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、化粧料に添加される公知の添加剤、例えば界面活性剤、増粘剤、保存剤、pH調整剤、キレート剤、安定化剤、刺激軽減剤、防腐剤、着色剤、分散剤、香料、パール光沢付与剤等を添加することができる。添加剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0033】
また、本発明の外用組成物は、医薬外用剤に通常使用される基剤又は担体、及び必要に応じて添加剤と共に、医薬組成物とすることができる。
医薬組成物の形態は特に限定されず、例えば、液剤、懸濁剤、乳剤、クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、リニメント剤、ローション剤又はパップ剤などが挙げられる。
また、医薬組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、医薬外用剤に添加される公知の添加剤、例えば酸化防止剤、防腐剤、安定化剤、キレート剤、両性界面活性剤、陽イオン界面活性剤、保湿剤、還元剤、pH調整剤、粉体類、紫外線吸収剤、美白剤、緩衝剤もしくは無機塩類、噴射剤、低級アルコール(エタノール、イソプロパノール等)、清涼剤、芳香剤、香料又は色素等を添加することができる。添加剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0034】
使用方法
本発明の外用組成物は、有効成分の種類や剤型等に合わせて、通常の使用方法、使用回数で塗布すればよい。
また、上述の通り、(A)成分と(B)成分とを組み合わせることにより、有効成分の皮膚への浸透性を向上できることから、本発明の外用組成物は、(A)グリコールエーテル、又はその誘導体;及び(B)ポリヒドロキシ酸、又は薬学的に許容されるそれらの塩を含む経皮吸収促進剤として使用することができる。
また、本願発明は、(A)成分と(B)成分とを含む組成物と有効成分(特に、水溶性有効成分)とを混合する、水溶性有効成分の皮膚への吸収性の向上方法を包含する。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例を挙げてより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0036】
(1)皮膚浸透性の評価
(1-1)外用組成物サンプルの調製
以下の表2に示す組成の外用組成物を調製した。
【表2】

また、フルオレセインナトリウムは、水溶性蛍光物質である。
【0037】
(1-2)皮膚浸透試験方法
冷凍豚皮(約3センチメートル×5センチメートル)を33℃のインキュベーターに2時間静置し解凍、及び恒温化した。この豚皮をシャーレに設置、蓋をした上でアルミホイルにて遮光した状態で33℃のインキュベーターに入れて2時間静置し、その後外用組成物を十分に拭き取った。
次いで、当該部分の角質層に存在するフルオレセインナトリウムの蛍光強度を測定するために、1.8センチメートル巾のセロハンテープを用いてテープストリッピングを15回行った。テープストリッピングした角質層のついたセロハンテープを1枚ずつ、エタノールを3mL入れた10mL容のスピッツ管に回収した後、30分間超音波処理を行い蛍光強度測定用サンプルとした。それぞれのサンプルをそのまま、96ウェルマイクロプレートに100μLずつ分取し、蛍光マイクロプレートリーダーを用いて、励起波長485nm、測定波長538nmで蛍光強度を測定した。皮膚表面から数えて4枚目から15枚目までのテープから得た角質層の蛍光強度値を積算し、皮膚への浸透性の指標とした。なお、皮膚表面から数えて1枚目から3枚目までのテープの蛍光強度値は、サンプルの拭き取りの状態によって大きな誤差を生じるため積算には含めず除外した。なお、本試験で使用した冷凍豚皮は、食肉用の豚から残渣として得られたものであり、本試験用に新たに屠殺して取得したものではない。
【0038】
(1-3)結果
皮膚浸透試験の結果を図1に示す。図1の縦軸は、浸透性の指標となる蛍光強度積算値の相対値であって、シクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコール及びグルコン酸の何れも含まない比較例3の外用組成物の値を100%としたときの相対値である。
シクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコール及びグルコン酸を含有する実施例1の外用組成物では、それぞれの化合物を単独で含有する比較例1及び比較例2の外用組成物と比較して、浸透性指標としての蛍光強度積算値が高く、皮膚に対する浸透性が非常に高いことが分る。また、シクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコールとグルコン酸とを組み合わせることにより、相乗的に、皮膚浸透性が向上することが分る。
【0039】
(2)刺激感の評価
(2-1)サンプルの調製
以下の表3に示す組成のサンプルを調製した。
【表3】

【0040】
(2-2)試験方法
成人(男性、女性)、1群3名のパネラーが、洗顔料で洗顔した後、サンプル10μLを目の周囲に塗布し、刺激感を評価した後、サンプルを洗い流した。
刺激感は以下の4段階で評価した。
0 刺激なし
1 刺激をわずかに感じる
2 弱い刺激を感じる
3 強い刺激を感じる
【0041】
(2-3)結果
結果を以下の表4に示す。
【表4】

乳酸にシクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコールを組み合わせると、乳酸による刺激感が増強されるが、グルコン酸にシクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコールを組み合わせても刺激感は増強されなかった。グルコン酸とシクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコールとを含む外用組成物は、使用感に優れることが分る。
【0042】
処方例
本発明の外用組成物の処方例を以下に示す。処方例中の数値の単位は「重量%」である。
【0043】
製剤実施例1 ローション
濃グリセリン 5
ヒドロキシエチルセルロース 0.1
1,3−ブチレングリコール 10
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.2
アルブチン 3
ジエチレングリコールモノエチルエーテル 5
グルコン酸 10
抗酸化剤 適量
香料 適量
防腐剤 適量
pH調整剤 適量
水 残余
100%
【0044】
製剤実施例2 美容液
ジエチレングリコールモノエチルエーテル 50
グルコン酸 2
ジプロピレングリコール 30
アスコルビン酸 5
水 残余
100%
【0045】
製剤実施例3 美容液
ジエチレングリコールモノエチルエーテル 30
グルコン酸 5
ジプロピレングリコール 30
アスコルビン酸 5
水 残余
100%
【0046】
製剤実施例4 美容液
ジエチレングリコールモノエチルエーテル 20
グルコン酸 10
ジプロピレングリコール 30
アスコルビン酸 5
水 残余
100%
【0047】
製剤実施例5 乳液
濃グリセリン 5
ジプロピレングリコール 5
カルボキシビニルポリマー 0.3
α‐オレフィンオリゴマー 2
中鎖脂肪酸トリグリセリド 4
モノステアリン酸グリセリン 0.8
イソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20.E.O.) 1.6
アラントイン 0.5
グルコシルヘスペリジン 0.1
シクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコール 0.05
グルコン酸 5
抗酸化剤 適量
香料 適量
防腐剤 適量
pH調整剤 適量
水 残余
100%
【0048】
製剤実施例6 乳液
濃グリセリン 5
ジプロピレングリコール 5
カルボキシビニルポリマー 0.3
α‐オレフィンオリゴマー 2
中鎖脂肪酸トリグリセリド 4
モノステアリン酸グリセリン 0.8
イソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20.E.O.) 1.6
アラントイン 0.5
グルコシルヘスペリジン 0.1
シクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコール 0.1
グルコン酸 2
抗酸化剤 適量
香料 適量
防腐剤 適量
pH調整剤 適量
水 残余
100%
【0049】
製剤実施例7 ローション
濃グリセリン 5
ヒドロキシエチルセルロース 0.1
1,3−ブチレングリコール 10
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.2
アルブチン 3
シクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコール 0.5
グルコン酸 2
抗酸化剤 適量
香料 適量
防腐剤 適量
pH調整剤 適量
水 残余
100%
【0050】
製剤実施例8 クリーム
濃グリセリン 5
プロピレングリコール 10
トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル 10
ベヘニルアルコール 2
モノステアリン酸ポリグリセリル 3
ポリアクリルアミド/軽質流動イソパラフィン/ポリオキシエチレンラウリルエーテル/精製水(「SEPIGEL 305」;SEPIC社製) 4
コウジ酸 0.1
シクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコール 2
グルコン酸 0.5
抗酸化剤 適量
香料 適量
防腐剤 適量
pH調整剤 適量
水 残余
100%
【0051】
製剤実施例9 クリーム
濃グリセリン 5
プロピレングリコール 10
トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル 10
ベヘニルアルコール 2
モノステアリン酸ポリグリセリル 3
ポリアクリルアミド/軽質流動イソパラフィン/ポリオキシエチレンラウリルエーテル/精製水(「SEPIGEL 305」;SEPIC社製) 4
コウジ酸 0.1
シクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコール 5
グルコン酸 0.1
抗酸化剤 適量
香料 適量
防腐剤 適量
pH調整剤 適量
水 残余
100%
【0052】
製剤実施例10 ローション
濃グリセリン 5
ヒドロキシエチルセルロース 0.1
1,3−ブチレングリコール 10
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.2
アルブチン 3
シクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコール 5
グルコン酸 2
抗酸化剤 適量
香料 適量
防腐剤 適量
pH調整剤 適量
水 残余
100%
【0053】
製剤実施例11 乳液
濃グリセリン 5
ジプロピレングリコール 5
カルボキシビニルポリマー 0.3
α‐オレフィンオリゴマー 2
中鎖脂肪酸トリグリセリド 4
モノステアリン酸グリセリン 0.8
イソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20.E.O.) 1.6
アラントイン 0.5
グルコシルヘスペリジン 0.1
シクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコール 5
グルコン酸 10
抗酸化剤 適量
香料 適量
防腐剤 適量
pH調整剤 適量
水 残余
100%
【0054】
製剤実施例12 美容液
ジエチレングリコールモノエチルエーテル 30
酒石酸 2
ジプロピレングリコール 30
アスコルビン酸 5
水 残余
100%
【0055】
製剤実施例13 美容液
ジエチレングリコールモノエチルエーテル 50
ラクトビオン酸 2
ジプロピレングリコール 30
アスコルビン酸 5
水 残余
100%
【0056】
製剤実施例14 美容液
ジエチレングリコールモノエチルエーテル 50
マルトビオン酸 2
ジプロピレングリコール 30
アスコルビン酸 5
水 残余
100%
【0057】
製剤実施例15 クリーム
濃グリセリン 5
プロピレングリコール 10
トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル 10
ベヘニルアルコール 2
モノステアリン酸ポリグリセリル 3
ポリアクリルアミド/軽質流動イソパラフィン/ポリオキシエチレンラウリルエーテル/精製水(「SEPIGEL 305」;SEPIC社製) 4
コウジ酸 0.1
シクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコール 0.1
酒石酸 2
抗酸化剤 適量
香料 適量
防腐剤 適量
pH調整剤 適量
水 残余
100%
【0058】
製剤実施例16 ローション
濃グリセリン 5
ヒドロキシエチルセルロース 0.1
1,3−ブチレングリコール 10
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.2
ハイドロキノン 4
シクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコール 1
ラクトビオン酸 2
抗酸化剤 適量
香料 適量
防腐剤 適量
pH調整剤 適量
水 残余
100%
【0059】
製剤実施例17 乳液
濃グリセリン 5
ジプロピレングリコール 5
カルボキシビニルポリマー 0.3
α‐オレフィンオリゴマー 2
中鎖脂肪酸トリグリセリド 4
モノステアリン酸グリセリン 0.8
イソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20.E.O.) 1.6
アラントイン 0.5
グルコシルヘスペリジン 0.1
シクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコール 5
マルトビオン酸 2
抗酸化剤 適量
香料 適量
防腐剤 適量
pH調整剤 適量
水 残余
100%
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の外用組成物は、水溶性成分の皮膚への浸透性が極めて高いため、化粧品や医薬外用剤などとして好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分と(B)成分とを含む外用組成物。
(A)グリコールエーテル、又はその誘導体;及び
(B)ポリヒドロキシ酸、又は薬学的に許容されるそれらの塩
【請求項2】
(A)成分を、組成物の全量に対して、約0.001〜70重量%含有する請求項1に記載の外用組成物。
【請求項3】
(B)成分を、組成物の全量に対して、約0.01〜25重量%含有する請求項1又は2に記載の外用組成物。
【請求項4】
グリコールエーテル又はその誘導体が、ジエチレングリコールモノエチルエーテル又はシクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコールである請求項1〜3のいずれかに記載の外用組成物。
【請求項5】
ポリヒドロキシ酸が、ペンタヒドロキシヘキサン酸、酒石酸、及びこれらの酸の糖酸からなる群より選ばれる化合物である請求項1〜4のいずれかに記載の外用組成物。
【請求項6】
さらに、水溶性有効成分を含む請求項1〜5のいずれかに記載の外用組成物。
【請求項7】
下記(A)成分と(B)成分とを含む経皮吸収促進剤。
(A)グリコールエーテル、又はその誘導体;及び
(B)ポリヒドロキシ酸、又は薬学的に許容されるそれらの塩

【図1】
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【公開番号】特開2011−201848(P2011−201848A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14881(P2011−14881)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(000115991)ロート製薬株式会社 (366)
【Fターム(参考)】