説明

外用貼付剤

【課題】貼付箇所への追随性が高く、しかも使用感が良好な新規な外用貼付剤を提供することを目的とする。
【解決手段】 一方向に配向された繊維同士の交絡によって一体化されたシート状の不織布からなる支持体2に基剤が担持されてなる外用貼付剤1において、前記外用貼付剤1における前記基剤が担持された部分の100%伸長時における引長応力を5N/25mm以下とし、且つ、100%伸長時におけるネックイン収縮率を50%以下とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚表面に貼付して使用される外用貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚表面に貼付して使用される外用貼付剤としては、シート状の不織布からなる支持体に基剤を担持させたものが一般的である。
【0003】
最近では、潜在捲縮繊維を主体とし、この潜在捲縮繊維が捲縮を発現している不織布を支持体として用いた外用貼付剤(テーピング型貼付剤)が開発されている(例えば、下記特許文献1参照。)。
【0004】
特許文献1には、前記不織布として、特に、前記不織布の50%伸長時の強さ(引長応力)が5N/50mm以下のものを用いれば、適用部位の動きに対して抵抗が少なく、剥がれ難く、快適に使用できる旨の記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005‐194231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、図6に示すように、不織布のような柔軟なシート材Sは、引長応力Fが負荷されると、引長応力Fが負荷された方向に沿って引き伸ばされると共に、ネックイン(引長応力Fが負荷された方向に直交する方向に沿って生じる収縮変形)Nが生じる。このネックインNの程度(ネックイン収縮率)が大きいシート材Sを支持体として外用貼付剤を製造すると、製造された外用貼付剤もネックイン収縮率が大きいものとなる。
【0007】
そして、このようなネックイン収縮率が大きい外用貼付剤は、たとえ、伸長された際の引長応力が低くなるように設定されたものであっても、関節の曲げ伸ばしや筋肉の伸縮による応力が負荷された際に、ネックインに起因する変形が生じ、しわ等が発生するため使用感が悪いものとなる。
【0008】
又、外用貼付剤を皮膚表面に貼付するにあたり、外用貼付剤を引き伸ばしながら貼付する者も多いが、外用貼付剤を引き伸ばしながら貼付する際に外用貼付剤に過度のネックインが生じると、想定された貼付面積を確保することができなくなる。
【0009】
本発明は、前記技術的課題を解決するために完成されたものであり、貼付箇所への追随性が高く、しかも使用感が良好な新規な外用貼付剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の外用貼付剤は、一方向に配向された繊維同士の交絡によって一体化されたシート状の不織布からなる支持体に基剤が担持されてなる外用貼付剤であって、前記外用貼付剤における前記基剤が担持された部分の100%伸長時における引長応力が5N/25mm以下、且つ、100%伸長時におけるネックイン収縮率が50%以下であることを特徴とする。
【0011】
なお、前記引長応力、及びネックイン収縮率は、下記の試験条件によって測定されたものである。
【0012】
<試験>
長さ方向を繊維の配向方向に直交させて、長辺150mm、短辺25mmの長方形の試験片を作成する。チャック間距離100mmにて前記試験片をつかみ、毎分100mmの引張速度で、前記試験片を長さ方向に沿って100%伸長させた際の引長応力を測定する。この際、前記試験片における最も短くなった幅方向に沿う長さ(W)を測定し、((25−W)/25)×100の計算式にてネックイン収縮率を求める。
【0013】
一方向に配向された繊維同士の交絡によって一体化されたシート状の不織布は、繊維同士の交絡点が少なく、繊維の配向方向に直行する方向(以下、これをCFD方向(Cross Fiber Direction)と称する。)に沿って伸長された際、繊維間が容易に広がるため、引長応力(以下、これをCFD引長応力と称する。)が小さい性質を有する。
【0014】
そして、この一方向に配向された繊維同士の交絡によって一体化されたシート状の不織布において、互いに絡み合う繊維同士の相互関係が希薄となるようにすれば、繊維の配向方向(以下、これをFD方向(Fiber Direction)と称する。)に沿って生じるネックイン収縮率(以下、これをFDネックイン収縮率と称する。)が低くなる。
【0015】
外用貼付剤における支持体としてこのような性質を有する不織布を用い、前記外用貼付剤における前記基剤が担持された部分の100%伸長時におけるCFD引長応力を5N/25mm以下(好ましくは、3.5N/25mm以下)、且つ、100%伸長時におけるFDネックイン収縮率を50%以下(好ましくは、40%以下)に調整すれば、非常に弱い力で簡単に引き伸ばされ、且つ、引き伸ばされた際の変形の程度が小さい外用貼付剤となる。
【0016】
非常に弱い力で簡単に引き伸ばされ、且つ、引き伸ばされた際の変形の程度が小さい外用貼付剤は、貼付箇所への追随性が高く、しかも変形が生じ難いため、使用感が良好な性質を発現する。
【0017】
本発明の外用貼付剤においては、前記外用貼付剤における前記基剤が担持された部分の50%伸長回復率が80%以上であるものが好ましい態様となる。
【0018】
なお、50%伸長回復率は、下記の試験条件によって測定されたものである。
【0019】
<試験>
チャック間距離100mmにて前記試験片をつかみ、毎分100mmの引張速度で、前記試験片を長さ方向に沿って50%伸長させる。50%伸長後、直ちに、毎分100mmの速度でチャック間距離を100mmに戻すことによって、前記試験片に緩みを与え、再度毎分100mの引張速度でチャック間距離をあけ、抗力が生じた時点のチャック間距離(L)を読み取り、((150−L)/50)×100の計算式にて50%伸長回復率を求める。
【0020】
即ち、CFD方向に沿って伸長された際の50%伸長回復率(以下、これをCFD伸長回復率と称する。)は、一旦、CFD方向に沿って引長応力負荷された後の回復力を示すものである。
【0021】
そして、CFD伸長回復率が80%以上(好ましくは85%以上)となされた外用貼付剤は、関節が曲げられることによって一旦引き伸ばされても、関節が伸ばされれば元の状態に回復しようとするため、その使用感が非常に良好なものとなる。
【0022】
本発明の外用貼付剤においては、前記支持体が、潜在捲縮繊維を含む繊維の集合体からなるパラレルウェブ又はクロスウェブに高温水蒸気による加熱処理を行い、前記潜在捲縮繊維の捲縮を顕在化させることによって、繊維同士を交絡させて一体化させた不織布であるものが好ましい態様となる。
【0023】
潜在捲縮繊維は、複数の樹脂の熱収縮率(又は熱膨張率)の違いに起因して、加熱によりコイル状(ヘリカル状)の捲縮繊維となる非対称又は層状構造(いわゆるバイメタル構造)を有する繊維である。
【0024】
この潜在捲縮繊維を含む繊維の集合体からなるパラレルウェブ又はクロスウェブに加熱処理を行い、前記潜在捲縮繊維の捲縮を顕在化させると、捲縮が顕在化された一の捲縮繊維と他の繊維(他の捲縮繊維や捲縮繊維以外の繊維)とが実質的に融着することなく、各繊維がお互いに絡み合って拘束又は掛止された不織布となる。
【0025】
この不織布は、捲縮が顕在化されたコイル状の捲縮繊維の殆どが、その軸心を不織布のFD方向に略沿うように配置された構造を有することから、繊維同士の交絡点が少なく、CFD方向に沿って引長応力が負荷されると、繊維間が容易に広がる。従って、この不織布は、100%伸長時におけるCFD引長応力が低いものとなる。
【0026】
又、この不織布は、CFD方向に沿って引長応力が負荷されると、捲縮繊維と他の繊維との少ない交絡点が支点となり、変形して、捲縮繊維のコイルが弾性的に応力変形し、その後、引張応力が加えられなくなると、捲縮繊維は元の状態に弾性的に回復しようとする。従って、この不織布は、CFD伸長回復率が高いものとなる。
【0027】
ここで、前記パラレルウェブとは、短繊維又はフィラメントの方向がほぼ縦方向(MD(Machine Direction)方向)に配向されるようにウェブを作るパラレル積層方式によって作成されたウェブを意味する。従って、このパラレルウェブから作成される不織布はパラレル式不織布となる。
【0028】
前記パラレル式不織布におけるCFD方向は、MD方向に直行する方向(CMD方向)となる。従って、本発明において前記パラレル式不織布のCFD方向は、CMD方向を意味し、FD方向はMD方向を意味するものとする。
【0029】
一方、前記クロスウェブとは、下方に設けた集積コンベア上に、その進行方向に対し直交する方向(CMD(Cross Mashine Direction)方向)にウェブを振り落として、多層のウェブを作るクロス積層方式によって作成されたウェブを意味する。従って、このクロスウェブから作成される不織布は、クロス式不織布となる。
【0030】
前記クロス式不織布におけるCFD方向は、クロスウェブを作成する際の、ウェブの送り出し速度と、集積コンベアの速度に左右されるが、MD方向に対して90±45度程度(好ましくは、90±20℃)に配向された繊維が交錯しているため、全体としてMD方向にほぼ沿う方向と考えて差し支えない。従って、本発明において前記クロス式不織布のCFD方向は、MD方向を意味し、FD方向はCMD方向を意味するものとする。
【0031】
従来、この種の不織布を製造するにあたっては、潜在捲縮繊維を含む繊維の集合体からなるウェブを作成し、このウェブを3〜5MPa程度の加圧水で処理することによって繊維を交絡(水流交絡)させた後、150〜200℃程度の乾燥熱風による加熱処理を行うことによって、潜在捲縮繊維の捲縮を発現させていた。
【0032】
しかしながら、熱伝導性が低い乾燥熱風を用いて潜在捲縮繊維を捲縮させると、ウェブ中の潜在捲縮繊維に不均一な捲縮が発現する。即ち、熱が伝達されやすいウェブの表層部分に捲縮が多く発現する一方で、ウェブの深層部分は捲縮が発現し難くなる。又、ウェブ中に繊維密度の異なるウェブ斑が存在すると、繊維密度の高い部分は捲縮発現により繊維同士が良く絡む一方で、繊維密度の低い部分は周囲に存する繊維密度の高い部分に引っ張られてより繊維密度が低くなり、ウェブ斑が顕著に顕在化する。
【0033】
又、熱風による加熱処理を行うにあたっては、ウェブ中の繊維が熱風によって吹き飛ばされないように、加熱処理に先立ち、ウェブを3〜5MPa程度の加圧水により処理し、繊維同士に絡合を生じさせる水流交絡処理が行われるが、この水流交絡処理によって繊維同士に予め交絡を生じさせた後に加熱処理を行うと、より一層捲縮繊維と他の繊維との相互関係が密となって、FDネックイン収縮率が更に高くなる。
【0034】
一方、本発明においては、捲縮繊維を含む繊維の集合体からなるパラレルウェブ又はクロスウェブを作成し、このウェブを「高温水蒸気」で処理することによって、潜在捲縮繊維の捲縮を発現させ、もって不織布を作成する。
【0035】
そして、本発明においては、ウェブ中の潜在捲縮繊維に捲縮を発現させるための加熱処理の際、熱風と比較して熱伝導性が高い高温水蒸気を用いているから、潜在捲縮繊維は均一な捲縮を発現する。
【0036】
即ち、本発明においては、高温水蒸気による加熱処理時、高温水蒸気の噴出圧と、蒸気の作用で、ウェブ中に均一且つ効率的に熱が伝達されて、ウェブ全体が瞬時に捲縮発現を起こすため、潜在捲縮繊維は均一な捲縮を発現するのである。
【0037】
又、本発明においては、高温水蒸気による加熱処理中、ウェブ中の潜在捲縮繊維における捲縮が、瞬時且つ全体的に発現し、捲縮発現による繊維間交絡を形成しやすいため、水流交絡処理のような高圧水流による前処理を必ずしも行う必要がない。
【0038】
ここで、高温水蒸気を噴射するためのノズルとしては、例えば、所定のオリフィスが連続的に並んだプレートやダイスが用いられる。このプレートやダイスは、ベルトコンベアなどによって輸送されるウェブの幅方向にオリフィスが並ぶように配置される。オリフィス列は一列以上あればよく、複数列が並行した配列であってもよい。また、一列のオリフィス列を有するノズルダイを複数台並列に設置してもよい。
【0039】
プレートにオリフィスを開けたタイプのノズルを使用する場合、プレートの厚さは、0.5〜1.0mm程度とすることが好ましい。オリフィスの直径は、0.05〜2mmが好ましく、0.1〜1mmがより好ましく、0.2〜0.5mmが特に好ましい。オリフィスのピッチは、0.5〜3mmが好ましく、1〜2.5mmがより好ましく、1〜1.5mmが特に好ましい。
【0040】
又、高温水蒸気の温度は、70〜150℃が好ましく、80〜120℃がより好ましく、90〜110℃が特に好ましい。高温水蒸気の温度が低すぎると、潜在捲縮繊維の捲縮の発現が不十分となる場合がある。一方、高温水蒸気の温度が高すぎると、繊維同士の交絡が過剰となったり、繊維が溶融したりする場合がある。
【0041】
更に、高温水蒸気の噴出圧は、0.1〜2MPaが好ましく、0.2〜1.5MPaがより好ましく、0.3〜1MPaが特に好ましい。高温水蒸気の噴出圧が低すぎると、捲縮繊維の捲縮に必要な熱量をウェブに供給できなくなる場合がある。一方、高温水蒸気の噴出圧が高すぎると、繊維同士の交絡が過剰となる場合がある。
【0042】
加えて、高温水蒸気による加熱処理の処理速度は、200m/分以下とすることが好ましく、0.1〜100m/分とすることがより好ましく、1〜50m/分とすることが特に好ましい。加熱処理の処理速度が速すぎると、捲縮繊維の捲縮に必要な熱量をウェブに供給できなくなる場合がある。一方、加熱処理の処理速度が遅すぎると、繊維同士の交絡が過剰となる場合がある。
【0043】
なお、ウェブに対し、高温水蒸気による加熱処理を行うと、ウェブは捲縮繊維の捲縮に伴って収縮する。そのため、加熱処理に供する前に、ウェブを目的とする不織布の大きさに応じてオーバーフィードすることが好ましい。オーバーフィードの割合は、目的とする不織布の長さに対して、110〜300%とすることが好ましく、120〜250%とすることがより好ましい。
【0044】
又、加熱処理前のウェブの目付けは、10〜200g/m2とすることが好ましく、20〜100g/m2とすることがより好ましい。ウェブの目付けが少なすぎると、不織布の強度や伸縮性を確保することが困難となる場合がある。一方、ウェブの目付けが多すぎると、加熱処理時における高温水蒸気の通過が阻害され、潜在捲縮繊維の捲縮の発現が不十分となる場合がある。なお、この加熱処理前のウェブの目付けは、JIS L1913「一般短繊維不織布試験方法」に準じて測定した値である。
【0045】
潜在捲縮繊維を構成する複数の樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂(低密度、中密度又は高密度ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリC2-4オレフィン系樹脂など)、アクリル系樹脂(アクリロニトリル−塩化ビニル共重合体などのアクリロニトリル単位を有するアクリロニトリル系樹脂など)、ポリビニルアセタール系樹脂(ポリビニルアセタール樹脂など)、ポリ塩化ビニル系樹脂(ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体など)、ポリ塩化ビニリデン系樹脂(塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体、塩化ビニリデン−酢酸ビニル共重合体など)、スチレン系樹脂(耐熱ポリスチレンなど)、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂などのポリC2-4アルキレンアリレート系樹脂など)、ポリアミド系樹脂(ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド610、ポリアミド612などの脂肪族ポリアミド系樹脂、半芳香族ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンイソフタルアミド、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド、ポリp−フェニレンテレフタルアミドなどの芳香族ポリアミド系樹脂など)、ポリカーボネート系樹脂(ビスフェノールA型ポリカーボネートなど)、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリウレタン系樹脂、セルロース系樹脂(セルロースエステルなど)などの熱可塑性樹脂を挙げることができる。これらの熱可塑性樹脂には、共重合可能な他の単量体が共重合されていてもよい。
【0046】
これらの樹脂のうち、本発明においては、高温水蒸気で加熱処理しても溶融又は軟化して繊維が融着しない点を鑑みて、軟化点又は融点が100℃以上の非湿熱接着性樹脂(又は耐熱性疎水性樹脂又は非水性樹脂)、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂を用いることが好ましい。中でも、耐熱性や繊維形成性などのバランスに優れる点から、芳香族ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂を用いることが好ましい。特に、本発明においては、支持体を構成する繊維同士が高温水蒸気で処理された際に融着しないように、潜在捲縮繊維として、その表面に非湿熱接着性繊維を露出させたものを用いることが好ましい。
【0047】
潜在捲縮繊維を構成する複数の樹脂は、熱収縮率が異なっていればよく、同系統の樹脂の組み合わせであっても、異種の樹脂の組み合わせであってもよい。本発明においては、密着性の点から、潜在捲縮繊維を構成する複数の樹脂が、同系統の樹脂の組み合わせで構成されてなるものを用いるのが好ましい。同系統の樹脂の組み合わせの場合、通常、選択された一ないし複数の単量体(以下、基単量体と称する。)を重合させたベース樹脂(A)と、前記基単量体に対して、例えば、結晶化度や融点又は軟化点などを低下させる共重合性単量体を共重合させた変性重合体からなる樹脂(B)との組み合わせが用いられる。
【0048】
基単量体に対して共重合性単量体を共重合させた変性重合体からなる樹脂(B)は、基単量体を重合させたベース樹脂(A)よりも結晶化度が低下したり、非晶性となったりして、ベース樹脂(A)よりも融点や軟化点が低下する。ベース樹脂(A)と、変性重合体からなる樹脂(B)とを組み合わせれば、ベース樹脂(A)の熱収縮率と変性重合体からなる樹脂(B)の熱収縮率との間に差異が生じる。
【0049】
ベース樹脂(A)と変性重合体からなる樹脂(B)との融点又は軟化点の差は、5〜150℃とすることが好ましく、50〜130℃とすることがより好ましく、70〜120℃とすることが特に好ましい。
【0050】
変性重合体からなる樹脂(B)に含まれる共重合性単量体の割合は、変性重合体からなる樹脂(B)を構成する全単量体(基単量体+共重合性単量体)に対して、1〜50モル%とすることが好ましく、2〜40モル%とすることがより好ましく、3〜30モル%とすることが一層好ましく、5〜20モル%とすることが特に好ましい。
【0051】
ベース樹脂(A)と、変性重合体からなる樹脂(B)との複合比率(質量比)は、繊維の構造に応じて選択できるが、ベース樹脂(A)/変性重合体からなる樹脂(B)=90/10〜10/90とすることが好ましく、70/30〜30/70とすることがより好ましく、60/40〜40/60とすることが特に好ましい。
【0052】
本発明においては、潜在捲縮繊維を製造し易い点に鑑み、潜在捲縮繊維は芳香族ポリエステル系樹脂の組み合わせとすることが好ましい。特に、ベース樹脂(A)としてポリアルキレンアリレート系樹脂を用い、変性重合体からなる樹脂(B)として変性ポリアルキレンアリレート系樹脂(B)を用いることが好ましい。
【0053】
ポリアルキレンアリレート系樹脂としては、芳香族ジカルボン酸(テレフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸などの対称型芳香族ジカルボン酸など)と、アルカンジオール成分(エチレングリコールやブチレングリコールなどC3-6アルカンジオールなど)との重合体を用いることが好ましい。具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリC2-4アルキレンテレフタレート系樹脂などが使用され、通常、固有粘度0.6〜0.7程度の一般的なPET繊維に用いられるPETが使用される。
【0054】
一方、変性ポリアルキレンアリレート系樹脂としては、前記ポリアルキレンアリレート系樹脂の融点又は軟化点、結晶化度を低下させる共重合性単量体、例えば、非対称型芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸などのジカルボン酸成分(以下、「変性用ジカルボン酸成分」と称する。)や、ポリアルキレンアリレート系樹脂のアルカンジオールよりも鎖長の長いアルカンジオール成分及び/又はエーテル結合含有ジオール成分(以下、「変性用ジオール成分」と称する。)が共重合されたものを用いることが好ましい。これらの共重合性単量体は、単独、又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの成分のうち、変性用ジカルボン酸成分としては、非対称型芳香族カルボン酸(イソフタル酸、フタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸など)や、脂肪族ジカルボン酸(アジピン酸などのC6-12脂肪族ジカルボン酸)などを用いることが好ましい。一方、変性用ジオール成分としては、アルカンジオール(1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどC3-6アルカンジオールなど)や、ポリオキシアルキレングリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリオキシC2-4アルキレングリコールなど)などを用いることが好ましい。中でも、イソフタル酸などの非対称型芳香族ジカルボン酸、ジエチレングリコールなどのポリオキシC2-4アルキレングリコールなどを用いることが好ましい。更に、変性ポリアルキレンアリレート系樹脂は、C2-4アルキレンアリレート(エチレンテレフタレート、ブチレンテレフタレートなど)をハードセグメントとし、(ポリ)オキシアルキレングリコールなどをソフトセグメントとするエラストマーであってもよい。
【0055】
変性ポリアルキレンアリレート系樹脂において、共重合性単量体として変性用ジカルボン酸成分(例えば、イソフタル酸など)を用いる場合、その割合は、樹脂を構成する全ジカルボン酸成分量に対して、1〜50モル%とすることが好ましく、5〜50モル%とすることがより好ましく、15〜40モル%とすることが特に好ましい。共重合性単量体として変性ジオール成分(例えば、ジエチレングリコールなど)を用いる場合、その割合は、樹脂を構成する全ジオール成分量に対して、0.1〜30モル%とすることが好ましく、1〜10モル%とすることがより好ましい。共重合性単量体の割合が低すぎると、充分な捲縮が発現しなくなり、捲縮発現後の形態安定性と伸縮性とが低下する。一方、共重合性単量体の割合が高すぎると、捲縮発現性能は高くなるが、安定に紡糸することが困難となる。
【0056】
変性ポリアルキレンアリレート系樹脂は、必要に応じて、トリメリット酸、ピロメリット酸などの多価カルボン酸成分、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトールなどのポリオール成分などを併用して分岐させてもよい。
【0057】
潜在捲縮繊維の断面形状(繊維の長さ方向に垂直な断面形状)は、一般的な中実断面形状である丸型断面や異型断面(偏平状、楕円状、多角形状、3〜14葉状、T字状、H字状、V字状、ドッグボーン(I字状)など)に限定されず、中空断面状などであってもよいが、通常、丸型断面とされる。
【0058】
潜在捲縮繊維繊維の断面構造としては、複数の樹脂によって形成された相構造、例えば、芯鞘型、海島型、ブレンド型、並列型(サイドバイサイド型又は多層貼合型)、放射型(放射状貼合型)、中空放射型、ブロック型、ランダム複合型などの構造が挙げられる。これらの断面構造のうち、加熱により自発捲縮を発現させ易い点から、相部分が隣り合う構造(いわゆるバイメタル構造)や、相構造が非対称である構造、例えば、偏芯芯鞘型、並列型構造が好ましい。
【0059】
なお、潜在捲縮繊維が偏芯芯鞘型などの芯鞘型構造である場合、芯部については、湿熱接着性樹脂(例えば、エチレン‐ビニルアルコール共重合体やポリビニルアルコールなどのビニルアルコール系重合体など)や、低い融点又は軟化点を有する熱可塑性樹脂(例えば、ポリスチレンや低密度ポリエチレンなど)で構成されていてもよい。
【0060】
潜在捲縮繊維の平均繊度は、0.1〜50dtexが好ましく、0.5〜10dtexがより好ましく、1〜5dtexが一層好ましく、1.5〜3dtexが特に好ましい。潜在捲縮繊維の平均繊度が細すぎると繊維強度が低くなり、又、捲縮が不均一となる場合がある。一方、潜在捲縮繊維の平均繊度が太すぎると、繊維強度が剛直になりすぎて、十分な捲縮を発現しなくなる場合がある。なお、平均繊度は、JIS L1015「化学繊維ステープル試験方法(8.5.1(A法))」に準じて測定した値である。
【0061】
潜在捲縮繊維の平均繊維長は、10〜100mmが好ましく、20〜80mmがより好ましく、25〜75mmが一層好ましく、40〜60mmが特に好ましい。潜在捲縮繊維の平均繊維長が短すぎると、作成された不織布の強度や伸縮性を確保することが困難となる場合がある。一方、潜在捲縮繊維の平均繊維長が長すぎると、繊維同士の交絡が過剰となる場合がある。なお、平均繊維長は、JIS L1015「化学繊維ステープル試験方法(8.4.1(A法))」に準じて測定した値である。
【0062】
潜在捲縮繊維の捲縮数(加熱処理前の機械捲縮数)は、0〜30個/25mmが好ましく、1〜25個/25mmがより好ましく、5〜20個/25mmが特に好ましい。加熱処理後の捲縮数(捲縮繊維の捲縮数)は、30〜200個/25mmが好ましく、35〜150個/25mmがより好ましく、40〜120個/25mmが一層好ましく、50〜100個/25mmが特に好ましい。捲縮繊維の捲縮数が少なすぎると、作成された不織布の強度や伸縮性を確保することが困難となる場合がある。一方、捲縮繊維の捲縮数が多すぎると、繊維同士の交絡が過剰となる場合がある。なお、捲縮数は、JIS L1015「化学繊維ステープル試験方法(8.12.1)」に準じて測定した値である。
【0063】
コイル状に捲縮した捲縮繊維のコイルの曲率半径は、10〜250μmが好ましく、20〜200μmがより好ましく、50〜160μmが一層好ましく、70〜130μmが特に好ましい。捲縮繊維のコイルの曲率半径が小さすぎると、繊維同士の交絡が不十分となり、作成された不織布の強度を確保することが困難となる場合がある。一方、捲縮繊維のコイルの曲率半径が大きすぎると、作成された不織布の伸縮性を確保することが困難となる場合がある。なお、曲率半径は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、不織布断面を100倍に拡大した写真を撮影し、撮影した不織布断面写真に写っている繊維の中で、1周以上の螺旋(コイル)を形成している繊維について、その螺旋に沿って円を描いたときの円の半径(コイル軸方向から捲縮繊維を観察したときの円の半径)を求め、これを曲率半径とした。但し、繊維が楕円状に螺旋を描いている場合は、楕円の長径と短径との和の1/2を曲率半径とした。又、捲縮繊維が充分なコイル捲縮を発現していない場合や、繊維の螺旋形状が斜めから観察されることにより楕円として写っている場合を排除するために、楕円の長径と短径との比が0.8〜1.2の範囲に入る楕円だけを測定対象とした。更に、測定は、任意の断面について撮影したSEM画像について測定し、n数=100の平均値として示した。
【0064】
コイル状に捲縮した捲縮繊維のコイルのピッチは、0.01〜0.5mmが好ましく、0.03〜0.3mmがより好ましく、0.05〜0.2mmが特に好ましい。捲縮繊維のコイルのピッチが狭すぎると、繊維同士の交絡が不十分となり、作成された不織布の強度を確保することが困難となる場合がある。一方、捲縮繊維のコイルのピッチが広すぎると、作成された不織布の伸縮性を確保することが困難となる場合がある。
【0065】
本発明において、「潜在捲縮繊維を含む繊維の集合体」とは、ウェブを構成する繊維の集合体中に、前記潜在捲縮繊維に加えて、他の繊維(非複合繊維)が含まれていてもよいことを意味する。非複合繊維としては、例えば、前述の非湿熱接着性樹脂又は湿熱接着性樹脂で構成された繊維の他、セルロース系繊維、例えば、天然繊維(木綿、羊毛、絹、麻など)、半合成繊維(トリアセテート繊維などのアセテート繊維など)、再生繊維(レーヨン、ポリノジック、キュプラ、リヨセル(例えば、登録商標名:「テンセル」など))などが挙げられる。非複合繊維の好ましい平均繊度及び平均繊維長は、前記潜在捲縮繊維と同様である。本発明においては、これらの非複合繊維から選ばれた一種又は二種以上を用いることができる。これら非複合繊維のうち、レーヨンなどの再生繊維、アセテートなどの半合成繊維、ポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィン系繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維などが好ましい。特に、混紡性などの点から、潜在捲縮繊維と同種の繊維を用いることが好ましく、例えば、潜在捲縮繊維がポリエステル系繊維である場合、非複合繊維もポリエステル系繊維とすることが好ましい。
【0066】
潜在捲縮繊維と非複合繊維との割合(重量%)は、例えば、繊維全体量(潜在捲縮繊維量+非複合繊維量)に対し潜在捲縮繊維が80重量%以上が好ましく、90重量%以上がより好ましく、95重量%以上が更に好ましい。潜在捲縮繊維が繊維全体量の全て(100重量%)を占めていても良い。非複合繊維を混綿することにより、作成された不織布の強度を調整することができる。但し、潜在捲縮繊維の割合が少なすぎると、引長応力が高くなったり、伸長回復率の確保が困難となったりする場合がある。
【0067】
潜在捲縮繊維を含む繊維の集合体からなるウェブには、更に、慣用の添加剤、例えば、安定剤(銅化合物などの熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤など)、抗菌剤、消臭剤、香料、着色剤(染顔料など)、充填剤、帯電防止剤、難燃剤、可塑剤、潤滑剤、結晶化速度遅延剤などが含有されていてもよい。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの添加剤は、繊維表面に担持されていてもよく、繊維中に含まれていてもよい。
【0068】
ところで、前述の如く、高温水蒸気による加熱処理を行う場合、加熱処理に先立ち、加圧水による水流交絡処理を行う必要は無いが、本発明においては、高温水蒸気による加熱処理に先立ち、ウェブを湿潤状態にすることが好ましい。高温水蒸気による加熱処理に先立ち、ウェブを湿潤状態とすると、ウェブ全体への熱伝達が均一となり、潜在捲縮繊維を、より一層均一に捲縮させることができる。
【0069】
ウェブを湿潤状態にするにあたっては、例えば、ベルトコンベアにて輸送されるウェブに向かって水を低圧にて吐出する手段が講じられる。この際、ウェブに向かって吐出させる水の吐出圧は、0.1〜1.5MPaとすることが好ましく、0.3〜1.2MPaとすることがより好ましく、0.6〜1.0MPaとすることが特に好ましい。ウェブを湿潤状態にするための水の吐出圧がこの範囲内にあれば、水の吐出に起因するウェブ中の繊維は殆ど交絡しない。なお、ウェブを湿潤状態にするための水の温度は、潜在捲縮繊維が捲縮を発現しない程度の温度とすることが好ましい。ウェブを湿潤状態にするための水の温度は、5〜50℃が好ましく、10〜40℃がより好ましく、15〜35℃が特に好ましい。
【0070】
この際、ベルトコンベアの輸送方向に直交する方向に沿って一定のピッチをあけて複数の吐出口を配置し、係る複数の吐出口を介して、ベルトコンベアにて輸送されるウェブに向かって水を連続的又は間欠的に吐出させることが好ましい。ベルトコンベアにて輸送されるウェブに向かって、一定のピッチをあけて配置された複数の吐出口から水を連続的に吐出させると、水の吐出圧によってウェブ中の繊維が移動し、ウェブ中に、繊維密度の高い高密度部が縞状に形成される。一方、ベルトコンベアに乗って輸送されるウェブに向かって、一定のピッチをあけて配置された複数の吐出口から水を間欠的に吐出させると、水の吐出圧によってウェブ中の繊維が移動し、ウェブ中に、繊維密度の高い高密度部が格子状(網状)に形成される。
【0071】
なお、吐出口の口径は、1〜10mmが好ましく、1.5〜5mmがより好ましい。又、複数の吐出口のピッチは、1〜5mmが好ましく、1.5〜3mmがより好ましい。
【0072】
ウェブ中に繊維密度の高い高密度部を縞状又は格子状に形成した後、ウェブに高温水蒸気による加熱処理を行えば、隣接する高密度部の間に存する繊維密度の低い低密度部に対してより多く水蒸気が通過するため、低密度部に存する潜在捲縮繊維の捲縮は、高密度部に存する潜在捲縮繊維の捲縮より強く発現する。但し、低密度部は繊維密度が低いため繊維同士の相互関係は、高密度部における繊維同士の相互関係よりも希薄なものとなる。
【0073】
そして、このようにして得られた不織布には、繊維密度の高い高密度部が縞状又は格子状に形成される。繊維密度の高い高密度部が縞状又は格子状に形成された不織布には、隣接する高密度部の間に、繊維同士の相互関係が希薄な低密度部が規則的に存在することとなる。このように、隣接する高密度部の間に繊維同士の相互関係が希薄な低密度部が規則的に存在する不織布は、FDネックイン収縮率がより低くなることが確認されている。
【0074】
不織布に形成された高密度部と低密度部との面積比率は、低密度部/高密度部=90/10〜10/90とすることが好ましく、70/30〜30/70とすることがより好ましく、60/40〜40/60とすることが特に好ましい。不織布に形成された高密度部と低密度部の幅は、それぞれ0.1〜10mmとすることが好ましく、0.5〜5mmとすることがより好ましく、1〜3mmとすることが特に好ましい。
【0075】
なお、不織布の目付けは、10〜300g/m2が好ましく、20〜250g/m2がより好ましく、30〜200g/m2が特に好ましい。なお、不織布の目付けは、JIS L1913「一般短繊維不織布試験方法」に準じて測定した値である。
【0076】
又、不織布の厚みは、0.1〜10mmが好ましく、0.2〜5mmがより好ましく、0.3〜3mmが一層好ましく、0.4〜1.5mmが特に好ましい。なお、不織布の厚みは、JIS L1913「一般短繊維不織布試験方法」に準じて測定した値である。
【0077】
更に、不織布の通気度は、フラジール形法による通気度で0.1cm3/cm2・秒以上が好ましく、1〜500cm3/cm2・秒がより好ましく、5〜300cm3/cm2・秒が一層好ましく、10〜200cm3/cm2・秒が特に好ましい。
【0078】
ところで、潜在捲縮繊維を含む繊維の集合体からなるパラレルウェブ又はクロスウェブに高温水蒸気による加熱処理を行い、前記潜在捲縮繊維の捲縮を顕在化させることによって、繊維同士を交絡させて一体化させた不織布は、FD方向に沿って引長応力が負荷された際、FD方向に沿って軸心が配置されたコイル状の捲縮繊維が伸びながら引き伸ばされるため、FD方向に沿って伸長させるための引長応力が(以下、これをFD引長応力と称する。)が小さい。
【0079】
又、この不織布は、FD方向に沿って引長応力が負荷された際、コイル状の捲縮繊維が他の繊維にあまり影響を与えることなく独立的に伸ばされるため、CFD方向に沿って生じるネックイン収縮率(以下、これをCFDネックイン収縮率と称する。)が低い。
【0080】
更に、この不織布は、FD方向に沿って引長応力負荷された後に、引長応力が緩められると、伸ばされた捲縮繊維が元の状態に戻ろうとするため、FD方向に沿って引張応力が負荷された後の伸長回復率(以下、これをFD伸長回復率と称する。)が高い。
【0081】
ここで、この不織布の100%伸長時におけるFD引長応力は、前述のCFD引長応力に対して大きい値を示す傾向がある。しかしながら、従来の外用貼付剤に用いられていたケミカルボンド不織布やサーマルボンド不織布、或いはスパンレース不織布からなる支持体の引長応力(20〜60N/25mm程度)と比較すると、非常に小さい値を示す。この不織布を支持体として用いた本発明の外用貼付剤における基剤が担持された部分の100%伸長時のFD引長応力は、15N/25mm以下(好ましくは10N/25mm以下)となされることが好ましい。外用貼付剤の100%伸長時のFD引長応力が15N/25mm以下となされると、外用貼付剤の追随性が更に向上する。なお、FD引長応力は、長さ方向をCFD方向に沿わせて作成された前述の試験片(以下、これをCFD試験片と称する。)に替えて、長さ方向をFD方向に沿わせた長辺150mm、短辺25mmの長方形の試験片(以下、これをFD試験片と称する。)を用いた以外は、前記CFD引長応力の測定試験と同様にして測定した値である。
【0082】
又、この不織布における100%伸長時のCFDネックイン収縮率は、前述のFDネックイン収縮率に対して高い値を示す傾向がある。しかしながら、従来の外用貼付剤に用いられていたケミカルボンド不織布やサーマルボンド不織布、或いはスパンレース不織布からなる支持体のネックイン収縮率(70%以上)と比較すると低い値を示す。この不織布を支持体として用いた本発明の外用貼付剤における基剤が担持された部分の100%伸長時のCFDネックイン収縮率は、60%以下(好ましくは55%以下)となされることが好ましい。外用貼付剤の100%伸長時のCFDネックイン収縮率が60%以下となされると、外用貼付剤の使用感が更に良好なものとなる。なお、CFDネックイン収縮率は、前記CFD試験片に替えて、前記FD試験片を用いた以外は、前記FDネックイン収縮率の測定試験と同様にして測定した値である。
【0083】
加えて、この不織布におけるFD伸長回復率は、CFD伸長回復率と比較してほぼ同等の値を示す傾向がある。この特性は、従来の外用貼付剤に用いられていたケミカルボンド不織布やサーマルボンド不織布、或いはスパンレース不織布には見られない特性である。この不織布を支持体として用いた本発明の外用貼付剤における基剤が担持された部分の50%伸長後のFD伸長回復率は、80%以上(好ましくは85%以上)となされることが好ましい。外用貼付剤のFD伸長回復率が80%以上となされると、外用貼付剤の使用感がより一層良好なものとなる。なお、FD伸長回復率は、前記CFD試験片に替えて、前記FD試験片を用いた以外は、前記CFD伸長回復率の測定試験と同様にして測定した値である。
【0084】
本発明の外用貼付剤は、支持体の片側面に基剤を積層したり、支持体に基剤を含浸したりすることによって、支持体に基剤を担持させたものである。支持体に担持される基剤としては、疎水性基剤(油脂性基剤)や親水性基剤(例えば、乳剤性基剤、水溶性基剤、ゲル基剤等)などを挙げることができる。支持体に対する基剤の担持量は、通常、100〜3000g/m2(好ましくは、500〜2000g/m2)とされる。
【0085】
疎水性基剤(油脂性基剤)としては、スチレン‐ブタジエン‐スチレンブロック共重合体、スチレン‐イソプレン‐スチレンブロック共重合体、エチレン‐酢酸ビニル共重合体、アクリル酸エステル‐アクリル酸共重合体、天然ゴム、イソプレン系ゴム、イソブチレン系ゴム、スチレン‐ブタジエン系ゴム、スチレン共重合体系ゴム、シリコン系ゴム、アクリル系ゴム、ブチルゴム、石油樹脂、ロジン、水添ロジン、ロジンエステル、エステルガム、テルペン樹脂、変性テルペン樹脂、クマロン‐インデン樹脂、石油クラッキング留分、芳香族炭化水素樹脂、スチレン系樹脂、イソプレン系樹脂、フェノール樹脂、ポリブテン、ポリイソブチレン、低分子ポリイソブチレン、ワセリン、白色ワセリン、ラノリン、流動パラフィン、パラフィン、スクワラン、高級脂肪酸エステル類、ミリスチン酸オクチルドデシル、トリイソオクタン酸グリセリン、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、イソステアリン酸、クロタミトン、中鎖脂肪酸トリグリセリト、サリチル酸エチレングリコール、ポリビニルアルキルエーテル、ポリ(メタ)アクリレート、ポリウレタン、ポリアミド、ジメチルポリシロキサン、プラスチベース、ミツロウ、植物油、動物油、オリーブ油などからなるものが挙げられる。
【0086】
乳剤性基剤としては、界面活性剤の存在下又は非存在下で、ラノリン、プロピレングリコール、ステアリルアルコール、ワセリン、シリコン油、流動パラフィン、グリセリルモノステアレート、ポリエチレングリコール等の成分を水相中に乳化、分散せしめた水中油型基剤やワセリン、高級脂肪族アルコール、流動パラフィン等の成分に、非イオン性界面活性剤の存在下で、水を加え、乳化、分散せしめた油中水型基剤などからなるものが挙げられる。
【0087】
水溶性基剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、プルランなどからなるものが挙げられる。
【0088】
ゲル基剤としては、水に、デンプン、グリセリン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシメチルセルロース、デンプン・アクリル酸ナトリウムグラフト共重合体、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸部分中和物、寒天、キサンタンガム、ローカストビーンガム、マンナン、カラギーナンなどの懸濁化剤を加えてゲル状にしたものが挙げられる。
【0089】
また、基剤には、外用貼付剤の用途に応じて、更に、保湿剤、防腐剤、抗酸化剤、pH調整剤等の種々の添加剤及び有効成分としての種々の薬剤等が配合されていても良い。
【0090】
保湿剤としては、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3‐ブチレングリコール、ジグリセリン、マンニトール、POEメチルグリコシド、クインスシード、ペクチン、セルロース誘導体、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、ソアギーナ、カルボキシビニルポリマーなどを挙げることができる。
【0091】
防腐剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、フェノキシエタノール、チモール等を挙げることができる。
【0092】
抗酸化剤としては、例えば、亜硫酸水素ナトリウム、アスコルビン酸、トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、EDTA,ベンゾトリアゾール等を挙げることができる。
【0093】
pH調整剤としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン、クエン酸や乳酸等の有機酸及びその塩などを挙げることができる。
【0094】
有効成分として添加される種々の薬剤としては、例えば、コルチコステロイド類、消炎鎮痛剤、高血圧剤、麻酔剤、催眠鎮静剤、精神安定剤、降圧剤、抗生物質、抗菌性物質、ビタミン類、抗てんかん剤、冠血管拡張剤、抗ヒスタミン剤、抗真菌物質、昇華性結晶、ハッカ油、ユーカリ油、ラベンダー油、ホウ酸水、生理的食塩水、硫苦水、亜麻仁油、石灰水、肝油、リバノール水、過マンガン酸カリ液、メンタ水、クレオソート、カラシ、保湿剤、美白剤、制汗剤、抗しわ剤、殺菌剤、創傷治癒剤、抗炎症剤、収れん剤、清涼化剤、ビタミン剤、ホルモン剤、抗ヒスタミン剤等の肌荒れ防止用薬剤、皮脂抑制剤、角質剥離・溶解剤等のニキビ用薬剤、アロエエキス、人参エキス、カンゾウエキス等の動植物抽出物、アミノ酸類の如き栄養剤等を挙げることができる。
【0095】
本発明の外用貼付剤においては、前記基剤が、ゲル基剤であるものが好ましい態様となる。
【0096】
本発明において、前記基剤としてゲル基剤を選択した場合、外用貼付剤における基剤を担持させた部分の破断伸度が、FD方向及びCFD方向の両方について、支持体自体の破断伸度より大幅に向上することが確認されている。これは、ゲル基剤の保形性や弾力性が、支持体の破断伸度に影響を与えるためと解される。
【0097】
従って、本発明において、基剤としてゲル基剤を用いれば、破断伸度を向上させることができ、もって、外用貼付剤の物理的強度を高めることができる。
【0098】
なお、破断伸度は、下記試験条件によって測定されたものである。
【0099】
<試験>
チャック間距離100mmにて前記CFD試験片、又は前記FD試験片をつかみ、毎分200mmの引張速度で、各試験片の長さ方向に沿って引張応力を加える。各試験片が破断した時点の伸び率を破断伸度とする(前記CFD試験片につきCFD破断伸度、前記FD試験片につきFD破断伸度とする。)。
【0100】
本発明においては、基剤としてゲル基剤を選択し、CFD破断伸度につき130%以上(好ましくは150%以上)、FD破断伸度につき110%以上(好ましくは120%以上)となされることが好ましい態様となる。
【0101】
ここで、ゲル基剤としては、1〜9N(好ましくは、5±2N)のゲル強度を有するものを用いることが好ましい。ゲル基剤のゲル強度が1N未満の場合、支持体の破断伸度の向上が十分ではなくなる場合があり、一方、ゲル基剤のゲル強度が9Nを超えると、支持体のネックイン収縮率が大きくなる場合がある。
【0102】
なお、前記ゲル強度は、日本電産シンポ株式会社製のデジタルフォースゲージ(FGC‐5B)及び荷重簡易試験スタンド(FGS‐50V‐H)を用い、デジタルフォースゲージに付属している押しアダプタの押圧面(M6用・押圧面の径12mm)をゲル基剤の表面に当接させた後、移動速度300mm/min、且つ、移動距離30mmにてゲル基剤を押圧し、押圧の後4秒間静止させた時点における、ゲル基剤が押しアダプタを押し返す抗力を測定したものである。
【0103】
本発明の外用貼付剤においては、前記基剤が、JIS Z0237に規定する傾斜角30度における傾斜式ボールタック試験によるボールナンバーが23以下の粘着性を有するものが好ましい態様となる。
【0104】
前記基剤は、前述した種々の薬剤等を担持させるための担持体としての役割の他に、外用貼付剤を皮膚表面に貼着するための粘着剤としての役割を担う。
【0105】
引き伸ばすための引長応力が大きく、しかも、ネックイン収縮率が高い支持体に基剤を担持させることによって製造された従来の外用貼付剤において、関節の曲げ伸ばしや筋肉の伸縮に対して外用貼付剤が容易に剥がれることがないようにするためには、基剤として粘着性の高いもの、例えば、JIS Z0237に規定する傾斜角30度における傾斜式ボールタック試験によるボールナンバーが24以上の粘着性を有するものを用いる必要があった。
【0106】
しかしながら、粘着性の高い基剤を担持させた外用貼付剤は、使用後に剥がし取る際、使用者に苦痛を与える。
【0107】
この点につき、本発明の外用貼付剤は、CFD引長応力が小さく、しかもFDネックイン収縮率が低いことから、粘着性の低い基剤を用いても、関節の曲げ伸ばしに対して良好に追随し、剥がれ難いものとなる。そして、粘着性の低い基剤を担持させた外用貼付剤は、使用後に苦痛を伴うことなく容易に剥がし取ることができる。
【0108】
そこで、本発明の外用貼付剤においては、前記基剤として、JIS Z0237に規定する傾斜角30度における傾斜式ボールタック試験によるボールナンバーが23以下(好ましくは16以下)の粘着性を有するものを用いることが好ましい。なお、ボールナンバーの下限値としては、特に限定されるものではないが、通常、10以上となされる。
【0109】
本発明の外用貼付剤は、皮膚表面に貼付して使用されることによって、基剤中に含まれる薬効成分を経皮吸収的に体内に投与したり、皮膚に潤いや保湿、或いは清涼感等の何らかの作用を与えたりするものであれば、その大きさ、形状及び貼付箇所について特に限定されるものではない。又、外用貼付剤の属性についても特に限定されるものではなく、化粧品、医薬品、医薬部外品或いは雑貨であっても良い。
【0110】
本発明の外用貼付剤においては、前記外用貼付剤が、長方形の支持体に基剤が担持されたものであり、前記支持体における長さ方向が、繊維の配向方向(FD方向)と直交されてなるものが好ましい態様となる。
【0111】
通常、長方形の支持体に基剤が担持されてなる外用貼付剤を、例えば、関節部分に貼付するにあたっては、外用貼付剤の長辺を、関節の曲げ伸ばしによって伸縮される方向に沿わせた状態にて貼付される。そのため、前記外用貼付剤として、長方形の支持体に基剤が担持されたものとし、且つ、その長さ方向をFD方向と直交させれば、前記支持体における長さ方向がCFD方向に沿い、もって、関節の曲げ伸ばしに対して追随させ易くなる。又、関節の曲げ伸ばしに対して変形が生じ難くなり、使用感が良好なものとなる。
【0112】
更に、外用貼付剤を皮膚表面に貼付するにあたり、外用貼付剤を長さ方向に沿って引き伸ばしながら貼付する者も多いが、前記外用貼付剤として、支持体の長さ方向をFD方向と直交させたものを用いれば、外用貼付剤を引き伸ばしながら貼付する際にネックインが殆ど生じず、想定された貼付面積を確保することができる。
【0113】
本発明の外用貼付剤においては、前記外用貼付剤が、人の顔面の一部又は全体にわたって貼付されて使用されるパック用シートであり、顔面に貼付された際、前記支持体における繊維の配向方向が、顔面の幅方向に沿わされた状態にて使用されるものが好ましい態様となる。
【0114】
人の顔面の一部又は全体にわたって貼付されて使用されるパック用シートとしては、例えば、顔面全体にわたって貼付される形態のもの、顔面の上半分や下半分にわたって貼付される形態のもの、目の下や頬、或いは顎などの顔面の一部に貼付されて使用される形態のものを挙げることができる。
【0115】
人の顔面の一部又は全体にわたって貼付されて使用されるパック用シートは、顔面に貼付する際に、通常、パック用シートの幅方向の両端を左右の手でそれぞれ摘んで持ち、しわがよらないように、パック用シートの幅方向に沿って引長応力を負荷しながら貼付される。
【0116】
本発明の外用貼付剤をパック用シートの形態とし、パック用シートを構成する支持体の繊維の配向方向が、顔面の幅方向に沿うように加工すると、パック用シートの幅方向に沿って引長応力を負荷しながら貼付する際に、パックシートが縦方向に縮むことを抑制することができる。これより所定の貼付面積を確保することができる。
【0117】
又、パック用シートには、人の目や口に相当する部位に開口部が設けられたものが多いが、パック用シートを構成する支持体の繊維の配向方向が、顔面の幅方向に沿うように加工すると、パック用シートの幅方向に沿って負荷された引長応力によって前記開口部が過度に変形することを抑制することもできる。
【0118】
本発明の外用貼付剤においては、前記外用貼付剤には、支持体に基剤が担持された貼着部と、支持体に基剤が担持されていない巻き代部とが形成されてなり、貼着部を患部に貼着させた状態、且つ、巻き代部が患部周りに巻き回された状態にて使用されるものが好ましい態様となる。
【0119】
本発明の外用貼付剤は、患部周りに巻き回して使用した際、患部の動きに追随して容易に伸びる。そのため、患部に対する拘束感が生じ難いものとなる。
【0120】
又、患部周りに巻き回して使用する外用貼付剤は、患部周りに巻き回す際に、外用貼付剤の長さ方向に沿って引長応力が加えられるが、本発明の外用貼付剤は、巻き回しの際に変形が生じ難い。これより、患部周りに巻き回された際の外観が美麗となる。
【0121】
ところで、潜在捲縮繊維を含む繊維の集合体からなるパラレルウェブ又はクロスウェブに加熱処理を行い、前記潜在捲縮繊維の捲縮を顕在化させることによって、繊維同士を交絡させて一体化させた不織布は、表裏を重ね合わせると、重ね合わされた部分において捲縮繊維のコイル同士が軽度に係合してくっつき合う性質(自着性)を有する。
【0122】
患部周りに巻き回して使用する外用貼付剤を構成する支持体として、このような自着性を有する支持体を用いれば、貼着部を患部に貼着させた状態で巻き代部を患部周りに巻き回し、巻き重ねられた支持体の表裏を重ね合わせるだけで、外用貼付剤を固定することができる。
【発明の効果】
【0123】
本発明の外用貼付剤は、貼付箇所への追随性が高く、又、使用感が良好であるといった効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】図1は、本発明の外用貼付剤の一実施形態を示す正面図(a)、及びその使用状態を説明する説明図(b)である。
【図2】図2は、本発明の外用貼付剤の他の実施形態を示す正面図(a)、及びその使用状態を説明する説明図(c)である。
【図3】図3は、本発明の外用貼付剤の更に他の実施形態を示す側面図(a)、その使用状態を示す説明図(b)、及びロール状に巻き取った状態を示す斜視図(c)である。
【図4】図4(a)、(b)は、本発明の外用貼付剤を、180°剥離試験に供した状態を模式的に示す説明図である。
【図5】図5は、本発明の外用貼付剤を、保持力試験に供した状態を模式的に示す説明図である。
【図6】図6は、シート材に引長応力を加えて応力変形(ネックイン)を生じさせた状態を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0125】
[実施例1〜3]
‐支持体(不織布)‐
潜在捲縮性繊維として、固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレート樹脂と、イソフタル酸20モル%及びジエチレングリコール5モル%を共重合させた変性ポリエチレンテレフタレート樹脂と、の組み合わせで構成されたサイドバイサイド形複合ステープル繊維((株)クラレ製、「PN‐780」、1.7dtex×51mm長、機械捲縮数12個/25mm、130℃×1分熱処理後における捲縮数62個/25mm)100重量%を用いて、カード法により目付け40.0g/m2のカードウェブ(パラレルウェブ)を作成した。
【0126】
このカードウェブを、コンベアネットにて移動させ、千鳥状に孔(口径2mmの円形孔、2mmピッチ)のあいた多孔板ドラムとの間を通過させ、カードウェブの上面からスプレー状に水流を間欠的に吐出(0.8MPa)して、カードウェブを湿潤状態にした。この際、水の吐出によってカードウェブ中の繊維が移動し、カードウェブには、繊維密度の高い高密度部が格子状に形成された。
【0127】
このカードウェブを200%程度にオーバーフィードさせた後、30メッシュ、幅500mmの樹脂製エンドレスベルトを装備したベルトコンベアに移送した。
【0128】
次いで、ベルトコンベアに備えられた水蒸気噴射装置から水蒸気(105℃、噴出圧0.4MPa)をカードウェブに対し垂直に噴出して加熱処理を行い、潜在捲縮繊維の捲縮を発現させるとともに、繊維を交絡させることによって不織布(目付け92.5g/m2、厚さ1.11mm、密度0.083g/cm3)を得た。なお、水蒸気噴射ノズルの孔径は0.3mmであり、このノズルがベルトコンベア幅方向に沿って2mmピッチで1列に並べられた装置を使用した。加熱処理の処理速度は、10m/分であった。
【0129】
‐基剤‐
基剤として、下記表1に示す成分からなる基剤A(ゲル基剤(ゲル強度5.0N)と、下記表2に示す基剤B(乳化性基剤(クリーム))を用いた。
【0130】
【表1】

【0131】
【表2】

【0132】
‐外用貼付剤‐
前記不織布の片側面全面に対し、前記基剤Aを積層(1000g/m2)することにより、実施例1に係る本発明の外用貼付剤を得た。又、前記不織布の片側面全面に対し、前記基剤Aを積層(2000g/m2)することにより、実施例2に係る本発明の外用貼付剤を得た。更に、前記不織布に対し、前記基剤Bを含浸(1000g/m2)させることによって実施例3に係る本発明の外用貼付剤を得た。又、得られた各外用貼付剤の特性を下記表3に示す。又、基剤が担持されていない不織布自体の特性も併記する。
【0133】
【表3】

【0134】
表3に示す結果より、乳化性基剤である基剤Bを担持させた実施例3に係る外用貼付剤は、不織布自体の特性と殆ど変わりない特性を有することが認められた。一方、ゲル基剤である基剤Aを担持させた実施例1及び実施例2に係る外用貼付剤は、CFD引長応力及びFD引長応力が大きくなり、又、FDネックイン収縮率及びCFDネックイン収縮率が低くなり、更に、CFD伸長回復率及びFD伸長回復率が高くなることが認められた。特に、CFD破断伸度及びFD破断伸度が相当高くなることが認められた。これは、ゲル基剤である基剤Aの保形性や弾力性が、不織布自体の特性に影響を与えたものと考えられる。又、実施例1及び実施例2とを比較した結果、ゲル基剤である基剤Aの担持量に応じて、不織布自体の特性に与える影響に変化が生じることも確認された。
【0135】
<実施形態1>
図1(a)に実施形態1に係る外用貼付剤1を示す。この外用貼付剤1は、前記実施例1〜3において得られた外用貼付剤1を、20cm×10cmの長方形に裁断したものである。なお、外用貼付剤1を長方形に裁断するにあたり、支持体2のCFD方向が長辺となるようにした。
【0136】
図1(b)に示すように、この外用貼付剤1を、その長辺が膝関節の曲げ伸ばしによって伸縮される方向に沿うようにして膝に貼付したところ、膝間接の曲げ伸ばしに対して、剥がれることなく非常に良好に追随した。又、膝関節の曲げ伸ばしによっても、しわ等の変形は生じず、その使用感が非常に良好なものであった。
【0137】
<実施形態2>
図2(a)に実施形態2に係る外用貼付剤1を示す。この外用貼付剤1は、前記実施例1〜3において得られた外用貼付剤1を、人の顔面の上半分の部位に貼付して使用されるパック用シート(パック用マスク)として加工したものである。なお、外用貼付剤1をパック用シートに加工するにあたり、支持体2のCFD方向がパック用シートの横幅方向に沿うようにした。
【0138】
図2(b)に示すように、この外用貼付剤1を人の顔面に貼付したところ、貼付する際に、しわ等の発生が少なく、又、顔面の凹凸に沿って外用貼付剤1が良好にフィットした。更に、使用時における顔の表情筋の伸縮に対しても良好に追随し、その使用感が非常に良好なものであった。
【0139】
<実施形態3>
図3(a)に実施形態3に係る外用貼付剤1を示す。この外用貼付剤1は、前記実施例1〜3において用いた支持体2を帯状に加工し、係る帯状の支持体2の一端の片側面に前記基剤Bを積層(1000g/m2)したものである。即ち、この外用貼付剤1には、帯状の支持体2の一端において基剤が担持された貼着部3と、支持体2に基剤が担持されていない捲き代部4と、が形成されている。図3(b)に示すように、この外用貼付剤の貼着部3を患部(手の甲)に貼着させた状態で、巻き代部4を患部周りに巻き回して使用したところ、患部の動きに追随して容易に伸び、患部に対する拘束感が生じ難いものとなった。又、巻き回しの際にネックインに起因する変形が殆ど生じなかったことから、巻き回し作業が容易で、しかも巻き回された際の外観が美麗となった。更に、支持体2として用いた不織布に自着性があるため、貼着部3を患部に貼着させた状態で巻き代部4を患部周りに巻き回し、巻き重ねられた支持体2の表裏を重ね合わせるだけで、外用貼付剤1をしっかりと固定することができた。
【0140】
ところで、本実施形態において、貼着部3を患部に貼着させた状態で、捲き代部4を患部周りに捲き回して使用しているが、貼着部3を患部周りに一周以上巻き回した状態で、更に捲き代部を更に患部周りに巻き回して使用しても良い。
【0141】
なお、この外用貼付剤1は、平面状に展開された状態で流通に供されても良いが、好ましくは、図3(c)に示すように、外用貼付剤1をロール状に巻き回した状態で流通に供することが好ましい。なお、外用貼付剤1をロール上に巻き回すにあたっては、外用貼付剤1における捲き代部4側の端部から巻き回し、貼着部3がロールの最外周側に来るようにすることが、使用上の観点から好ましい。
【0142】
[実施例4]
‐支持体(不織布)‐
カードウェブとして、目付け21.5g/m2のパラレルウェブを用い、加熱処理に先立ち、水の吐出に替えて、霧吹きによってカードウェブを湿潤状態にした以外は、前記実施例1〜3と同様にして不織布を得た(目付け50.6g/m2、厚さ0.66mm、密度0.077g/cm3)。
【0143】
‐基剤‐
基剤として、前記基剤Aを用いた。
【0144】
‐外用貼付剤‐
前記不織布の片側面全面に対し、前記基剤Aを積層(1000g/m2)することにより、実施例4に係る本発明の外用貼付剤を得た。得られた外用貼付剤の特性を下記表4に示す。又、基剤が担持されていない不織布自体の特性も併記する。なお、不織布自体のFD引長応力及びCFDネックイン収縮率は、不織布自体の破断伸度が100%に達しなかったことから測定できなかった。
【0145】
【表4】

【0146】
前記実施形態1〜3と同様にして、実施例4に係る外用貼付剤を長方形(図1参照)、パック用シート(図2参照)、帯状(図3参照)、にそれぞれ加工したものを使用したところ、実施例4に係る外用貼付剤は、貼付箇所への追随性が高く、しかも使用感が良好なものであることが確認された。
【0147】
[実施例5]
‐支持体(不織布)‐
ウェブとして、目付け68.3g/m2のクロスウェブを用いた以外は、前記実施例1〜3と同様にして不織布を得た(目付け142.1g/m2、厚さ1.48mm、密度0.096g/cm3)。
【0148】
‐基剤‐
基剤として、前記基剤Aを用いた。
【0149】
‐外用貼付剤‐
前記不織布の片側面全面に対し、前記基剤Aを積層(1000g/m2)することにより、実施例3に係る本発明の外用貼付剤を得た。得られた外用貼付剤の特性を下記表4に示す。又、基剤が担持されていない不織布自体の特性も併記する。
【0150】
【表5】

【0151】
前記実施形態1〜3と同様にして、実施例5に係る外用貼付剤を長方形(図1参照)、パック用シート(図2参照)、帯状(図3参照)、にそれぞれ加工したものを使用したところ、実施例5に係る外用貼付剤は、貼付箇所への追随性が高く、しかも使用感が良好なものであることが確認された。
【0152】
[実施例6]
‐支持体(不織布)‐
カードウェブを湿潤状態にするための水の吐出圧を1.2MPaとし、カードウェブに対して連続的に水を吐出した以外は、前記実施例1と同様にして不織布を得た(目付け93.8g/m2、厚さ1.18mm、密度0.079g/cm3)。なお、この不織布には、繊維密度の高い高密度部がFD方向に沿って縞状に形成されていた。
【0153】
‐基剤‐
基剤として、前記基剤Aを用いた。
【0154】
‐外用貼付剤‐
前記不織布の片側面全面に対し、前記基剤Aを積層(1000g/m2)することにより、実施例4に係る本発明の外用貼付剤を得た。得られた外用貼付剤の特性を下記表6に示す。又、基剤が担持されていない不織布自体の特性も併記する。
【0155】
【表6】

【0156】
表6に示す実施例6の結果と、前記表3に示す実施例1の結果を比較したところ、カードウェブを湿潤状態にするための水の吐出圧の違いによって、不織布中の繊維の交絡の程度に変化が生じ、不織布自体の特性に影響が与えられることが認められた。
【0157】
前記実施形態1〜3と同様にして、実施例6に係る外用貼付剤を長方形(図1参照)、パック用シート(図2参照)、帯状(図3参照)、にそれぞれ加工したものを使用したところ、実施例6に係る外用貼付剤は、貼付箇所への追随性が高く、しかも使用感が良好なものであることが確認された。
【0158】
[実施例7]
‐支持体(不織布)‐
潜在捲縮性繊維として、固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレート樹脂と、イソフタル酸30モル%及びジエチレングリコール7モル%を共重合した変性ポリエチレンテレフタレート樹脂とで構成されたサイドバイサイド形複合ステープル繊維(1.7dtex×51mm長、機械捲縮数12個/25mm、130℃×1分熱処理後における捲縮数74個/25mm)100重量%を用いた以外は前記実施例1と同様にして不織布を得た(目付け94.4g/m2、厚さ0.82mm、密度0.115g/cm3)。
【0159】
‐基剤‐
基剤として、前記基剤Aを用いた。
【0160】
‐外用貼付剤‐
前記不織布の片側面全面に対し、前記基剤Aを積層(1000g/m2)することにより、実施例7に係る本発明の外用貼付剤を得た。得られた外用貼付剤の特性を下記表7に示す。又、基剤が担持されていない不織布自体の特性も併記する。
【0161】
【表7】

【0162】
表7に示す実施例7の結果と、表3に示す実施例1の結果とを比較したところ、潜在捲縮繊維の違いによって、不織布中の繊維の交絡の程度に変化が生じ、不織布自体の特性に影響が与えられることが認められた。
【0163】
前記実施形態1〜3と同様にして、実施例7に係る外用貼付剤を長方形(図1参照)、パック用シート(図2参照)、帯状(図3参照)、にそれぞれ加工したものを使用したところ、実施例7に係る外用貼付剤は、貼付箇所への追随性が高く、しかも使用感が良好なものであることが確認された。
【0164】
[実施例8]
‐支持体(不織布)‐
固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレート樹脂と、イソフタル酸20モル%及びジエチレングリコール5モル%を共重合した変性ポリエチレンテレフタレート樹脂とで構成されたサイドバイサイド形複合ステープル繊維((株)クラレ製、「PN‐780」、1.7dtex×51mm長、機械捲縮数12個/25mm、130℃×1分熱処理後における捲縮数62個/25mm)95重量%と、ポリエチレンテレフタレート繊維(1.6dtex×51mm長、機械捲縮数15mm/25mm)5重量%を混紡した混合繊維を、カード法により目付け21.5g/m2のカードウェブ(パラレルウェブ)を作成した以外は、前記実施例1と同様にして不織布を得た(目付け88.7g/m2、厚さ0.92mm、密度0.096g/cm3)。
【0165】
‐基剤‐
基剤として、前記基剤Aを用いた。
【0166】
‐外用貼付剤‐
前記不織布の片側面全面に対し、前記基剤Aを積層(1000g/m2)することにより、実施例8に係る本発明の外用貼付剤を得た。得られた外用貼付剤の特性を下記表8に示す。又、基剤が担持されていない不織布自体の特性も併記する。
【0167】
【表8】

【0168】
表8に示す実施例8の結果と、表3に示す実施例1の結果とを比較したところ、潜在捲縮繊維と被複合繊維とを混紡することによって、不織布中の繊維の交絡の程度に変化が生じ、不織布自体の特性に影響が与えられることが認められた。
【0169】
前記実施形態1〜3と同様にして、実施例8に係る外用貼付剤を長方形(図1参照)、パック用シート(図2参照)、帯状(図3参照)、にそれぞれ加工したものを使用したところ、実施例8に係る外用貼付剤は、貼付箇所への追随性が高く、しかも使用感が良好なものであることが確認された。
【0170】
[比較例1]
‐支持体(不織布)‐
支持体として、市販のスパンレース不織布を用いた。
【0171】
‐基剤‐
基剤として、前記基剤Aを用いた。
【0172】
‐外用貼付剤‐
前記不織布の片側面全面に対し、前記基剤Aを積層(1000g/m2)することにより、比較例1に係る外用貼付剤を得た。得られた外用貼付剤の特性を下記表9に示す。又、基剤が担持されていない不織布自体の特性も併記する。
【0173】
【表9】

【0174】
この外用貼付剤を、20cm(CFD方向)×10cm(FD方向)の長方形に裁断した。この際、不織布のCFD方向が、外用貼付剤の長辺に沿うようにした。この外用貼付剤を、その長辺が関節(膝)の曲げ伸ばしによって伸縮される方向に沿うようにして貼付したところ、関節の曲げ伸ばしによってネックインに起因する変形が生じ、しわが発生することが確認された。
【0175】
[比較例2]
実施例1と同様にしてカード法により目付け40.0g/m2のカードウェブ(パラレルウェブ)を作成した。
【0176】
口径0.1mmのノズルを用いて、このカードウェブを水圧一段目2.9MPa、二段目3.9MPaの条件で水流交絡処理した後、乾燥させた。
【0177】
乾燥後のカードウェブを130℃の熱風乾燥機内で加熱処理し、潜在捲縮繊維の捲縮を発現させるとともに、繊維を交絡させることによって不織布(目付け80.0g/m2、厚さ0.86mm、密度0.093g/cm3)を得た。
【0178】
‐基剤‐
基剤として、前記基剤Aを用いた。
【0179】
‐外用貼付剤‐
前記不織布の片側面全面に対し、前記基剤Aを積層(1000g/m2)することにより、比較例2に係る外用貼付剤を得た。得られた外用貼付剤の特性を下記表10に示す。又、基剤が担持されていない不織布自体の特性も併記する。
【0180】
【表10】

【0181】
この外用貼付剤を、20cm(CFD方向)×10cm(FD方向)の長方形に裁断した。この際、不織布のCFD方向が、外用貼付剤の長辺に沿うようにした。この外用貼付剤を、その長辺が関節(膝)の曲げ伸ばしによって伸縮される方向に沿うようにして貼付したところ、関節の曲げ伸ばしによってネックインに起因する変形が生じ、しわが発生することが確認された。
【0182】
<180°剥離試験>
前記実施例1及び前記比較例1で得られた外用貼付剤を180°剥離試験に供した。この剥離強度試験は、株式会社島津製作所製のオートグラフ(商品名:AGS‐N‐100N)にて実施した。試験方法を図4に示すと共に下記にて順を追って説明する。
【0183】
(1)実施例1及び比較例1で得られた外用貼付剤1を200mm×25mmの帯状に裁断して試験片10を作成する。なお、試験片10は、長辺を、CFD方向に一致させたものとFD方向に一致させたものとの二種類作成した。
【0184】
(2)前記試験片10の貼着面(基剤3側の面)を、長さ方向に沿って80cm分だけ、SUS板からなる試験板(163mm×249mm)100の片面(非処理面)に貼付し、その上(支持体2側)から外径90mm、重さ500gのローラを一往復転がすことによって、前記試験片10を前記試験板100に圧着する。
【0185】
(3)次いで、試験片10を試験板に圧着された部分と圧着されていない部分の境界線で折り返し、図4(a)に示す状態とした後、オートグラフにおける上部チャック101と下部チャック102にてつかむ(チャック間距離140mm)。
【0186】
(4)オートグラフを駆動させ、上部チャック101を200mm/minの速度で上昇させる。
【0187】
(5)上部チャック101が100mm上昇した時点(図4(b)参照)で、上部チャックの上昇を停止し、試験片10が試験板100に対して貼付している部分の長さ(n)を測定し、(n/80)×100の計算式にて貼付残率(%)を求める。この結果を下記表11に示す。
【0188】
【表11】

【0189】
表11に示す結果より、実施例1に係る本発明の外用貼付剤は、比較例1に係る外用貼付剤と比べて、CFD方向及びFD方向への一定速度での引張応力に対し、非常に高い貼付残率を示すことが認められた。これより、本発明の外用貼付剤は、引張応力に対する高い追随性を有し、引き伸ばされた際に、剥がれにくい性質を有することが確認された。
【0190】
<保持力試験>
実施例1〜3において用いた支持体、及び比較例1において用いた支持体に対し、下記表12に示す粘着性の異なるゲル基剤(基剤C〜E)をそれぞれ積層(1000g/m2)することによって外用貼付剤を得、得られた各外用貼付剤を保持力試験に供した。
【0191】
【表12】

【0192】
この保持力試験の試験方法を図5に示すと共に下記にて順を追って説明する。
【0193】
(1)各外用貼付剤を200mm×25mmの帯状に裁断して試験片10を作成する。なお、試験片10は、長辺を、CFD方向に一致させたものとFD方向に一致させたものとの2種類作成した。
【0194】
(2)前記試験片10の短辺に25mmの貼着代をとり、この貼着代をポリプロピレン製の試験板(163mm×249mm)100に貼付し、その上から外径90mm、重さ500gのローラを一往復転がすことによって、前記試験片10を前記試験板100に圧着する。
【0195】
(3)前記試験板100にて、前記試験片10を鉛直方向に吊り下げ、吊下げられた前記試験片の下端に重さ122gの錘Wを取り付ける(図5参照)。
【0196】
(4)錘を取り付けた時点から、試験片が剥がれ落ちるまでの時間を測定する。この結果を下記表13に示す。
【0197】
【表13】

【0198】
表13に示す結果より、粘着性が十分に高い基剤Eを用いた試験片については、支持体の特性に関係なくいずれの試験片もしっかりと貼着されることが確認された。
【0199】
一方、粘着性が中程度の基剤Dを用いた試験片、及び粘着性が非常に低い基剤Cを用いた試験片については、実施例1〜3において用いた不織布を支持体とする試験片の方が、比較例2において用いた不織布よりも、CFD方向及びFD方向のいずれの方向において落下するまでの時間が長くなることが確認された。
【0200】
これより、本発明の外用貼付剤は、粘着性が低い基剤を用いても剥がれ難い性質を有することが認められた。
【0201】
ここで、粘着性が中程度の基剤Dを用いた試験片については、CFD方向に引長応力が負荷された場合より、FD方向に引長応力が負荷された場合の方が落下時間が長くなることが確認された。
【0202】
一方、粘着性が非常に低い基剤Cを用いた試験片については、FD方向に引長応力が負荷された場合より、CFD方向に引長応力が負荷された場合の方が落下時間が長くなることが確認された。
【0203】
この結果は、基剤の粘着性が低くなれば低くなるほど、外用貼付剤の引長応力、及びネックイン収縮率が、外用貼付剤の保持力(貼着性)に影響を与えるためと考察される。
【0204】
なお、本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施形態及び実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0205】
本発明の外用貼付剤は、医薬品、医薬部外品或いは化粧品等の種々の用途に適用することができる。
【符号の説明】
【0206】
1 外用貼付剤
2 支持体
3 貼着部
4 捲き代部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に配向された繊維同士の交絡によって一体化されたシート状の不織布からなる支持体に基剤が担持されてなる外用貼付剤であって、
下記試験条件による、前記外用貼付剤における前記基剤が担持された部分の100%伸長時における引長応力が5N/25mm以下、且つ、100%伸長時におけるネックイン収縮率が50%以下であることを特徴とする外用貼付剤。
<試験>
長さ方向を繊維の配向方向に直交させて、長辺150mm、短辺25mmの長方形の試験片を作成する。チャック間距離100mmにて前記試験片をつかみ、毎分100mmの引張速度で、前記MD試験片を長さ方向に沿って100%伸長させた際の引長応力を測定する。又、この際、前記試験片における最も短くなった幅方向に沿う長さ(W)を測定し、((25−W)/25)×100の計算式にてネックイン収縮率を求める。
【請求項2】
請求項1に記載の外用貼付剤において、
下記の試験条件による、前記外用貼付剤における前記基剤が担持された部分の50%伸長回復率が80%以上である外用貼付剤。
<試験>
チャック間距離100mmにて前記試験片をつかみ、毎分100mmの引張速度で、前記試験片を長さ方向に沿って50%伸長させる。50%伸長後、直ちに、毎分100mmの速度でチャック間距離を100mmに戻すことによって、前記試験片に緩みを与え、再度毎分100mの引張速度でチャック間距離をあけ、抗力が生じた時点のチャック間距離(L)を読み取り、((150−L)/50)×100の計算式にて50%伸長回復率を求める。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の外用貼付剤において、
前記支持体が、潜在捲縮繊維を含む繊維の集合体からなるパラレルウェブ又はクロスウェブに高温水蒸気による加熱処理を行い、前記潜在捲縮繊維の捲縮を顕在化させることによって、繊維同士を交絡させて一体化させたシート状の不織布からなる外用貼付剤。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の外用貼付剤において、
前記基剤が、ゲル基剤である外用貼付剤。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の外用貼付剤において、
前記基剤が、JIS Z0237に規定する傾斜角30度における傾斜式ボールタック試験によるボールナンバーが23以下の粘着性を有する外用貼付剤。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の外用貼付剤において、
前記外用貼付剤は、長方形の支持体に基剤が担持されたものであり、
前記支持体における長辺が、繊維の配向方向と直交されてなる外用貼付剤。
【請求項7】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の外用貼付剤において、
前記外用貼付剤は、人の顔面の一部又は全体にわたって貼付されて使用されるパック用シートであり、
顔面に貼付された際、前記支持体における繊維の配向方向が、顔面の幅方向に沿わされた状態にて使用されるものである外用貼付剤。
【請求項8】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載された外用貼付剤において、
前記外用貼付剤には、支持体に基剤が担持された貼着部と、支持体に基剤が担持されていない巻き代部とが形成されてなり、
貼着部を患部に貼着させた状態、且つ、巻き代部が患部周りに巻き回された状態にて使用されるものである外用貼付剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−48776(P2013−48776A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188880(P2011−188880)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(302060568)株式会社カナエテクノス (11)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】