外科用ステープリングシステム
相互係合する外科用ステープル(11、31、51、71)が提供され、これらの外科用ステープル(11、31、51、71)は、心臓弁の欠陥の外科的矯正のため、および/または腹部領域での脆弱部を支持するためのシステムで有用である。ステープルは、一方のステープル脚部(15、35、55、75)の上端部から横方向に延在する少なくとも1つのリング(21、41、61、81)を有して構成され、このリング(21、41、61、81)は、嵌植された後、そこに次のステープルの他方の脚部(13、33、53、73)を通すことによって次のステープルとの相互係合を可能にする。形状記憶ステープル設計または嵌植ツールにより、2つのステープル脚部が、組織に貫入した後に互いに向けてそれぞれ湾曲し、それにより組織の表面よりも下の領域で組織を寄せ集めて縫縮する。クラウンコネクタに弾性区域(67、83)が提供されることがあり、クラウンコネクタの平面内での撓みを可能にする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2008年4月21日出願の米国仮特許出願第61/046635号の優先権を主張するものであり、その仮特許出願の開示を参照として本明細書に組み込む。
【0002】
本発明は、心臓弁の欠陥を外科的に矯正するため、ならびに腹部領域および身体の他の領域での支持を提供するために設計されたステープリングシステムに関する。より詳細には、本発明は、弁に隣接して原位置(in situ)で一連の相互係合するステープルから連続環状リングを構成することによって不全の心臓弁を効率的かつ効果的に修復するため、および支持メッシュシートと組み合わせて同様の連続リングを構成することによって腹腔領域内の脆弱部分を修復するための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
リウマチ性疾患、結合組織疾患、または虚血性心疾患は、心臓房室弁の構成に甚大な影響を及ぼすことがある。罹患した弁は、細くなる、不全になる、またはその両方になることがある。従って、以前に心筋梗塞を発症した患者であって、虚血性心疾患を患っている非常に多くの患者において、様々な度合いで僧帽弁の不全が発生している。そのような患者で典型的なことに、弁は、肉眼では正常に見えることがある。しかし、その弁輪は広がっており、弁尖の接合(すなわち相互係合)が妨げられて弁の不全を生じている。そのような患者は、修復術として弁輪形成の利益を受けるはずである。
【0004】
弁輪形成リングは、現在一般に、僧帽弁および三尖弁の再建手術の重要な要素となっている。それらの安全性および耐久性は、弁輪形成リングが1960年代後半に開発されて以来行われているいくつかの臨床研究で実証されている。その後の実験および臨床での心エコー検査による研究から、心周期中に、僧帽弁および三尖弁の弁輪のサイズおよび形状が連続的に変化することが示されている。そのような変化に適合することができる可撓性のリングが開発されている。そのような可撓性リングは、依然として弁機能を改善しながら、天然の弁輪の自然な可撓性を制約しないようにすることができるが、可撓性リングおよび非可撓性の剛性リングを使用する際にいくつかの欠点がある。例えば、弁輪に沿った縫合間隔がリングでの間隔に合致しないとき、組織内に張力が生じることがあり、組織の皺または裂傷を引き起こすことがある。従って、可撓性リングがこれらの問題に対する完璧な解決策となることはまだ実証されていない。
【0005】
現在世界中で使用されている一般的な技法は、完全な弁置換に頼らないときには、一般に、弁の円周を減少させると考えられる修復用の安定化弁輪形成リングを採用する。これは通常、弾性、半剛性、または剛性リングを定位置に縫合することによって達成され、このリングは、減少される天然の弁輪の円周にほぼ等しい、またはそれよりも小さい。リングは、閉じた形状を有することも、開いた形状、例えばC字形状を有することもある。設置は、完全な弁置換が行われるときとほぼ同様に通常の縫合を使用して行われ、処置には、完全な弁置換と同程度の時間がかかることがあり、例えば平均で約25から35分である。従って、この手術時間を短縮する改良された弁輪形成システムおよび方法が引き続き追求されている。
【0006】
より近年では、組織を寄せ集めて縫縮する一連の縫合を組織内に配置することによって、不全の弁の円周を減少させるという提案が成されている(例えば、特許文献1参照)。一連のステープル状の襞バンド(plication band)を弁の周縁で組織に挿入するという他の提案もあり、この個別の襞バンドは、連結構造、例えば襞バンドのブリッジ領域内の経路を通されるフィラメントまたはバンドによって、何らかの形で相互接続される(例えば、特許文献2参照)。他の提案は、一連の係留クリップを使用するものであり、これらは不全の弁の周縁に沿って個別に嵌植(implant)され、その後、係留部がクリップ内部に嵌合(cinch)するように操作されて、弁輪を円周方向で締める(例えば、特許文献3参照)。冠状静脈洞の壁を通して僧帽弁の壁内に形状記憶ステープルを挿入することも提案されている(例えば、特許文献4参照)。ステープルは、僧帽弁輪組織に突き刺さり、その組織を寄せ集めて僧帽弁輪を締める。組織の一部を個々に寄せ集める一連の局所襞の嵌植によるカテーテルベースの弁輪形成も提案されている(例えば、特許文献5参照)。この一連の局所襞は、始めは離隔されている脚部の間に位置された組織を寄せ集めてまたは摘んで不全の弁輪を縫縮する状態に戻る形状記憶金属要素である。隣接するポストと接続するようにアームを有する直立ポストを担持する心臓弁組織内への嵌植用固定具を有する複数の個別連結具の使用も示されている(例えば、特許文献6参照)。アームは、形状記憶材料から形成され、心臓弁組織を縫縮するように長さが縮む。
【0007】
ヘルニアは、人類の最も一般的な疾患の1つであり、成人男性人口の約5パーセントが患っている。基本的には、ヘルニアは、腹壁の脆弱部または穴であり、そこを通って腸など腹腔内容物が突出することがある。鼠径ヘルニアの外科的修復(すなわち鼠径ヘルニア縫合術)および腹壁ヘルニアの修復は、行われている最も一般的な処置に含まれ、一般に外来ベースである。米国では、毎年500000件の鼠径ヘルニア縫合術、および約108000件の腹壁ヘルニア縫合術が行われている。腹壁修復の場合、開腹手術で行われる場合であれ、腹腔鏡手術で行われる場合であれ、処置は、初めに患者に麻酔が投与され、次いで外科医が患者の腹壁に関連の切開を行うものである。支持する腹部筋肉および筋膜が切開されて、ヘルニア嚢を露呈させ、腹壁の開口を通して突出するヘルニア内容物が腹部に戻される。その後、外科医は、ヘルニア嚢を、元通りに、または支持用の人工メッシュインプラントを使用して閉じる。次いで、局部組織が、脆弱な組織、穴、またはヘルニアの両側から縫合される。
【0008】
伸びた組織または他の形態で脆弱した組織は切除されることがあり、人工材料のパッチが正常な組織に縫合またはステープリングされることが多く、伸びた組織または他の形態で脆弱した組織の代わりとなる、または修復部の外側もしくは内側に被さって補強する。次いで、修復部にわたって切開が閉じられる。力仕事や激しい活動をできるようになるまでに必要な回復時間は、通常6から8週間である。そのような修復の例は、先行技術文献で見られる(例えば、特許文献7および特許文献8参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,593,424号明細書
【特許文献2】米国特許第6,702,826号明細書
【特許文献3】米国特許第6,986,775号明細書
【特許文献4】米国特許第7,004,958号明細書
【特許文献5】米国特許第7,037,334号明細書
【特許文献6】米国特許第7,485,142号明細書
【特許文献7】米国特許第4,347,847号明細書
【特許文献8】米国特許第5,122,155号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
実際には、前述した提案はどれも、不全の弁および効率的で満足の行くヘルニア修復に関わる上記問題に対する完全に好ましい解決策を与えるとは考えられていない。従って、より良い解決策の追求が続けられている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一連の相互係合する外科用ステープルを嵌植する方法であって、不全の弁を完全に取り囲むようにリングを作成する際の1段階として、嵌植時に各ステープルを最後に嵌植されたステープルと相互係合する方法が、弁尖を望み通りに再び接合させて逆流を回避するための効率的で効果的な弁輪形成法となることが分かっている。そのような相互係合するステープルは、一対の離隔された脚部を有し、脚部は、それらの上端部で、所定の固定長のクラウンコネクタ(crown connector)によって接続され、クラウンコネクタは、嵌植が行われた後に組織の表面に並置して位置する。組織内に埋め込まれた脚部の部分が、互いに向けて屈曲または湾曲して、表面よりも下の領域で組織を寄せ集めて弁輪の周縁の縫縮を行って、周縁を縮め、弁尖を効果的な接合に戻し、弁を機能するように戻す。衝撃吸収クラウンコネクタを有するステープルがヘルニア縫合術のために提供される。
【0012】
1つの特定の形態では、本発明は、2つの離隔された脚部と、前記脚部をそれらの上端部で互いに連接し、前記脚部をそれらの上端部で互いから所定の固定距離だけ離隔するクラウンコネクタとを備える外科用ステープルであって、前記脚部は、それらの尖った下端部よりも上の領域では実質的に一定の断面を有し、前記脚部の一方は、そこから、前記他方の脚部から離れる方向に横方向に延在する一体型リングを有して形成され、前記リングは、前記脚部に垂直に向けられ、同様の外科用ステープルの一方の脚部を受け取るように寸法設定されたアパーチャを有し、前記ステープルは、前記尖った下端部が組織表面に貫入した後に前記2つの脚部が互いに向けて曲がって湾曲構成を取り、前記表面よりも下で組織を寄せ集めて組織を縫縮することを可能にするように設計される外科用ステープルを提供する。
【0013】
別の特定の形態では、本発明は、弁輪形成術用のリング状構成を形成するために外科用ステープルを嵌植する方法であって、2つの離隔された脚部と、前記脚部をそれらの上端部で互いに連接し、前記脚部をそれらの上端部で互いから所定の固定距離だけ離隔するクラウンコネクタとを有する第1のステープルであって、前記脚部の少なくとも一方は、そこから、前記他方の脚部から離れる方向に横方向に延在する一体型のアパーチャの開いたリングを有して形成される、第1のステープルを嵌植するステップと、脚部をそれらの上端部で所定の固定距離だけ離隔するクラウンコネクタによって連接された同様の第1の脚部および第2の脚部をやはり有し、かつ前記第2の脚部から横方向に延在する一体型リングを有する第2の外科用ステープルを、前記第1の嵌植されたステープルのリングのアパーチャに前記第1の脚部を通して2つのステープルを相互係合することによって嵌植するステップと、前記第2のステープルと同様の複数の追加のステープルを、最後に嵌植されたステープルのリングのアパーチャにそれぞれの第1の脚部が通るようにして嵌植して、房室弁の周縁で組織内にリング状構成を作成するステップと、各前記ステープルの前記それぞれの脚部が、前記組織の表面よりも下で互いに向けて曲がって互いに向かう湾曲構成を実現し、それにより表面よりも下で組織を寄せ集めて組織を縫縮するステップとを含む方法を提供する。
【0014】
さらなる特定の形態では、本発明は、開腹手術または腹腔鏡手術で行われるヘルニア縫合の方法であって、脆弱が生じている患者の腹部領域に可撓性の織物状(textile)パッチを配置するステップと、2つの離隔された第1の脚部および第2の脚部と、前記脚部をそれらの上端部で互いに連接し、前記脚部をそれらの上端部で互いから所定の固定距離だけ離隔するクラウンコネクタとを有する第1のステープルを嵌植して、両方の脚部が織物状パッチを通過するようにするステップであって、前記脚部はそれぞれ、そこから、前記他方の脚部から離れる方向に横方向に延在する一体型のアパーチャの開いたリングを有して形成され、前記クラウンコネクタは、非直線状の弾性区域を含む、ステップと、脚部をそれらの上端部で所定の固定距離だけ離隔するクラウンコネクタによって連接された同様の第1の脚部および第2の脚部をやはり有する第2の外科用ステープルを、前記第1の脚部を前記第1の嵌植されたステープルの第2の脚部と関連付けられたリングのアパーチャに通し、次いで織物状パッチに通して2つのステープルを相互係合することによって嵌植するステップであって、前記ステープルは、前記第2の脚部から横方向に延在する一体型リングと、ステープルのクラウンコネクタでの非直線状の弾性区域とを有する、ステップと、前記第2のステープルと同様の複数の追加のステープルを、それぞれの第1の脚部が最後に嵌植されたステープルのリングのアパーチャを通り、次いで織物状パッチを通るようにして嵌植して、患者の脆弱領域を縁取るリング状構成を組織内に作成するステップと、各前記ステープルの前記それぞれの脚部が、前記組織の表面よりも下で互いに向けて曲がって互いに向かう湾曲構成を実現し、それにより表面よりも下で組織を寄せ集めて(gather)組織を縫縮するステップとを含む方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】2つの脚部が、心臓弁組織に嵌植することができる形態で互いに概して平行に示されている、本発明の様々な特徴を具現化する相互係合ステープルを示す斜視図である。
【図2】各脚部の上に形成された一体型リングを有する図1に示されるものと同様の外科用ステープルの斜視図である。
【図3】2つの脚部が最終的に嵌植された位置で並置されている、異なる角度から取られた図1に示される外科用ステープルの斜視図である。
【図4】脚部が並置されている相互係合向きでの図1に例示されるタイプの2つの外科用ステープルを示す前面図である。
【図5】図3と同様の図であって、ワイヤから形成された本発明の様々な特徴を具現化する外科用ステープルの代替的実施形態を示す図である。
【図6】図5に示されるものと同様であるが、2つの一体型リングを有する外科用ステープルの代替的実施形態の斜視図である。
【図7】チェーンとして互いに相互係合された、図5のものと概して同様の3つの外科用ステープルを示す斜視図である。
【図8】クラウンコネクタが「U」字形のばね状弾性区域を有して形成されている、図5に示されるものとやや同様の、外科用ステープルの代替的実施形態の斜視図である。
【図9】図8に示されるものなど複数のステープルを、ヘルニア縫合術で織物状パッチを通して嵌植することができる方法を概略的に例示する斜視図である。
【図10】クラウンコネクタにおいて「S」字形のばね状弾性区域を有するステープルの別の代替的実施形態を示す図8と同様の斜視図である。
【図11】ヘルニア縫合術で使用される図10に示されるステープルを複数示す図9と同様の図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、基本的には、特に不全の房室弁の周縁で組織領域を再構成するため、または体腔の脆弱領域を支持するために使用することができるチェーンを直ちに作成できるように、共に組織を縫縮して互いに相互接続する設計の外科用ステープルを提供する。このようにすると、一連の相互係合されたステープルが、弁輪形成リングの機能を果たす。数十年来、多くの形態のそのようなリングが、不全の心臓弁を再構成するために使用されてきた。また、ヘルニア縫合術を行うとき、ステープルを可撓性のメッシュパッチと組み合わせても有用である。ステープルの設計は、単一の送達(delivery)ステップが、送達されるステープルを配置済みの最後のステープルと相互係合させるのに効果的なだけでなく、それと同時に、組織の上面よりも下の位置で正確な量の組織の寄せ集めまたは縫縮を行うのにも効果的となるようなものである。これらの外科用ステープルは、組織表面への貫入の時点で、尖った下端部を有する一対の実質的に平行な脚部を有し、脚部は、それらの上端部で中央コネクタバーまたはクラウンコネクタによって相互接続され、クラウンコネクタは、脚部の上端部を所定の固定距離だけ離隔し、この距離は変化しない。実質的に平行とは、脚部が直線であるかまたは軽い湾曲を有することがあることを意味し、例えば、先端が逆の脚部に対して約15度までの角度で位置合わせされることがある。言い換えると、実質的に平行な脚部は、平行であることがある、または直線状であるかもしくは軽い湾曲を有して互いに傾いていることがある。
【0017】
2つの脚部の一方は、その上端部に取り付けられた一体型リングを有する。このリングまたはループはアパーチャを提供し、アパーチャは、同一のステープルのリングを有さない脚部が通過するのを受け入れるように寸法設定され、このようにして2つの隣接するステープルの相互係合を行う。完全な閉じたリングが構成されるとき、嵌植される最初のステープルは、2つのそのようなリングを側方向きで有し、嵌植される最後のステープルは、嵌植済みの最初と最後のステープルのリングに各脚部が通されるので、単純なステープルであり、リングを閉じる。
【0018】
送達時、脚部の尖った端部は、コネクタバーの長さによって決定される離隔された点で組織に突き刺さる。組織の表面よりも下にくると、脚部は、互いに向かって屈曲または湾曲させられ、このようにして表面よりも下のこの領域で組織を寄せ集め、直線コネクタバーによって定義される方向で縫縮を行う。本明細書で以後説明するように、互いに向かう脚部の移動は、外科用ステープルが製造される金属の形状記憶特性によるものであってよく、または、ステープルが送達されて、先端が組織の表面に貫入したときの、ステープル自体に対する送達デバイスまたはツールの作用によるものであってもよい。2つの脚部以外のステープルの残りの部分は組織表面に載置し、または組織表面の上方にあり、長さが変わらないので、全ての縫縮が組織表面よりも下で行われる。
【0019】
外科用ステープルは、適切な生体適合性の、適当な金属合金の材料からなり、例としては、ステンレス鋼、チタン合金、ニチノール、他の生体適合性ニッケルクロム合金などが挙げられる。外科用ステープルは層状金属からなっていてもよく、1つの金属が2つの他の金属によって挟まれて、形状記憶および非形状記憶の超弾性合金または金属などの複合材料を提供する。上述したように、ステープルは、標準的な外科用ステープル材料、例えばチタン合金やクラッドステンレス鋼などの生体適合性金属から形成することができ、または形状記憶特性を有する材料から形成することができる。例えば、外科用ステープルが体温まで温まると予め設定された形状に戻る温度依存ニチノールでよい。あるいは、いわゆる超弾性材料、例えば超弾性ニチノールもしくは他のニッケルチタン合金、または金属合金からなっていてもよい。そのような例では、ステープルは、後で戻ることになる所定の最終的な設定形状を与えるように形成および処理される。次いで、2つの脚部が互いに平行である送達形状まで損壊なく変形される。
【0020】
そのような形状記憶材料に加えて、外科用ステープルは、当技術分野でよく知られている他の生体適合性金属から形成することもでき、それらは、数十年来、外科用ステープル製造で使用されており、劣化または望ましくない副作用を引き起こさずに人体内で長い寿命を有することが分かっている。そのような材料が外科用ステープルの製造に使用されるとき、送達デバイスが採用され、送達デバイスは、脚部にそれらの上端部の下の位置で力を加えて、組織表面よりも下の位置で互いに向けて2つの脚部を屈曲または好ましくは湾曲させて、脚部間で組織を固定して寄せ集め、剛性の固定された接続バーによって定義された方向で、組織の上面よりも下で組織内で所定量の縫縮、例えば1または2mmの縫縮を生じる。
【0021】
図1に、尖った底端部17を有する一対の脚部13、15を含む外科用ステープル11を示す。脚部は、それらの上端部でクラウンコネクタ19を介して相互接続される。脚部15の上端部には、短いスタブアーム23によってそこに接続されたリング21がある。リング21は、脚部15から横方向に、脚部13とは正反対の方向に延在する。コネクタ19は、一対の耳部27、29を側部に形成された中央直線バー25を含む。耳部は、それぞれ、約270°のループ区域であり、コネクタ19と脚部13、15の両方の一部分を成すとみなすことができる。
【0022】
ステープルブランクは、生体適合性の金属合金の平坦なシートからレーザ切断されることがあり、その後、リング21が90°ひねられる。レーザ切断されたブランクのエッジ除去および研磨後、ステープルは、図1、図2、および図3に見られる丸みのある外観を有する。すなわち、ステープルは、尖った端部17を除いて実質的に一定の円形断面を有する。リング21と耳部27はどちらも、脚部13(およびリング21)の円形断面よりも直径が大きい中央アパーチャを有するように寸法設定され、それにより、脚部13(およびリング21)をアパーチャ内部にそれぞれ受け入れることができる。アパーチャは、わずか約20%だけ大きいものでよいが、約4倍のサイズでもよい。一般に、約2倍以下のサイズである。図1に示される外科用ステープル11では、リングまたはループ21は、それが取り付けられる脚部15に対して横方向に位置するように位置合わせされる。すなわち、脚部13、15が位置する平面に実質的に垂直な平面内に位置することが好ましい。脚部15の上端部でのリング21の位置は、クラウンコネクタの直線バー中央部分25が位置する平面と同一平面にあるようなものであることが好ましい。そのような位置合わせにより、そのような外科用ステープルが組織内に挿入または嵌植されるとき、バー25とリング21の両方が、嵌植が行われる組織の表面に並置されて位置する。対称的な耳部27、29も、それらのアパーチャが同様にこの平面内に位置するように位置決めされる。従って、耳部27は、脚部13が通される最後に嵌植されたステープルのリング21の一部を受け入れて収容する。
【0023】
外科用ステープル11を形状記憶材料から製造するときには、生体適合性の金属合金の平坦なシートからレーザ切断し、化学的、機械的、または電気的表面処理を施して研磨し、次いでステープルに形状記憶特性を与えるように適切に処理し、それによりステープルは図3に示される形状に戻る。次いで、図1に示される形状に曲げられ、送達ツールに装填される。心臓外科医が操作する送達ツールを使用して、単純に、最後に嵌植されたステープルのリング21に脚部13が通るようにして各ステープルを嵌植し、それによりこのステープルの直線バー25およびリング21が組織の上面に当たって並置され、隣接するステープルリング21の一区域が耳部27に受け入れられる。通常動作中、ステープル11は、例えば、嵌植が行われる表面よりも下で組織内で約2mmの縫縮を生じるようにサイズ設定されることがある。上述したように、直線バー25および2つの耳部27を含むクラウンコネクタ19は固定寸法となるように設計され、それにより、脚部と耳部27、29の下端部との相互接続部分よりも下に位置する脚部の領域のみが互いに向けて屈曲または湾曲して、組織の寄せ集めを行う。このようにして、縫縮は、組織の表面よりも下に離れた組織自体の内部の領域にずらされる。その結果、組織のより均一な縫縮または寄せ集めを生じ、表面で裂傷が生じやすくならないようにする。
【0024】
形状記憶ステープルが使用されないときには、生体適合性の金属合金から形成されるステープルは、ステープリングツールを使用して嵌植され、このステープリングツールが、図3に示される弓形状を取るように脚部を湾曲させる。その結果、脚部13および15の下側主要部分が、互いに向けて、最上部の残りの直線状区域から弓状に曲がり、その際、表面よりも下の領域内で組織を縫縮し、それにより、不全の房室弁を再構成するときに望まれる再整形を達成することが分かる。
【0025】
図4に、部分的または完全なリングを弁輪、例えば不全の僧帽弁の弁輪の周りに形成するためにステープルが採用されるときの、2つのそのような相互係合されたステープル11を示す。いくつかの例では、部分的なリングのみが採用されることがあるが、弁輪形成が周縁の周りで360°未満に限られた場合には、不全の弁の改善が一時的なものにしかならないことがあることが多いことが分かっている。部分的リング弁輪形成によってのみ縫縮されるとき、心臓弁組織は、間欠領域など他の位置でよく伸びることが多く、その結果、不全がいくぶん再発することがあることが判明している。図4では、個々の脚部13および15が、(図1に示される)送達時のそれらの実質的に平行な向きから湾曲し、ここでは互いに並置されて位置して図示されているのが見て取れる。その結果、脚部13および15は、直線バー区域25の下の2つの脚部によって囲まれた領域内で心臓弁組織を寄せ集めて縫縮している。
【0026】
この複数ステープル弁輪形成システムの最終的な結果として完全な弁輪形成リングを作成すべきときには、配置される最初のステープルまたは要素は、一対のそのようなリングを有するものにすべきである。図2に、そのようなステープル11aを示し、このステープル11aは、耳部27の領域内で脚部13の上端部から横方向に延在する第2のリング21aを有する。両方のリングが、脚部13、15に垂直な平面内に位置し、この平面は直線バー25を含む。従って、不全の房室弁の周縁の周りに完全なリングを作成するために外科用ステープル11を使用して房室弁を再構成するとき、最初に嵌植されるステープル11aは、一対のリング21、21aを有する。このステープル11aが形状記憶材料から形成されるものである場合、その弾性特性により、ステープル11aの脚部が実質的に平行な向きである図2に示される形状にステープル11aを広げることができ、この形状で、ステープル11aが組織、すなわち再構成すべき弁輪の上面に送達される。その後、形状記憶特性により、脚部11、13は、それらの平行な広げられた向きから戻り、互いに向かって湾曲する。そのような閉じる動きは、脚部11、13が図3に示されるように閉じた向きで並置されるまで続き、それにより、表面よりも下の領域内で脚部間で組織を縫縮する。外科医は、再構成される弁を取り囲む弁輪形成システムを構成するとき、2つのリング21、21aの一方から始めて、各ステープルの脚部13を最後に嵌植されたステープルのリング21のアパーチャに通すことによってステープル11を1つずつ嵌植して、環状構成を形成する。外科用ステープルの円がほぼ閉じられたとき、嵌植された最後のステープル11と、最初に嵌植されたリングが2つ付いたステープル11aとの間に残っているギャップが、2つの開いているリング21、21aが単一のステープルの一対の直線状脚部13、15の距離とほぼ同じだけ離隔されるようなものになるように、外科医が配置を合わせる。次いで、そのギャップが、1つの単純なステープルを使用して閉じられる。このステープルは、図1に示されるものと類似のステープルであって、単純にリング21とその接続アーム23が省かれたものでよい。
【0027】
図5に、図3と同様に縫縮された向きで示された外科用ステープル31の代替的実施形態を示す。ステープル31も同様に、直線クラウンコネクタ37を上端部に有する一対の脚部33、35を組み込む。その構成により、ワイヤ状の外科用ステープルを提供するために円形断面の金属合金ワイヤを曲げることによって、ステープル31の形成が可能である。概して正方形の層状金属ワイヤや非円形断面のワイヤなど他の断面形状のワイヤが使用されることもある。ワイヤは、同様の耳部39が脚部33の上端部に形成されるように形作られるが、対称的な耳部は省かれる。コネクタ37の反対側の端部で脚部35の上部でワイヤからループを形成し、次いでワイヤを270°ひねってツイストベンド(twist bend)43を形成することによって、横方向に向けられたリング41が提供される。その結果、ループ状にされたワイヤが、ツイストジョイント(twisted joint)43に取り付けられた360°のリング41を形成する。ここでも、横方向リング41は、直線コネクタ37と実質的に同じ平面内に位置するように向けられ、それらは共に、嵌植された弁輪形成システムにおいて組織の上面に並置されて位置する。ここでも、耳部39は組織の表面の上方に延在し、その中央アパーチャまたは輪形部分に、最後に嵌植されたステープルのリング41の該当部分を収容する。不全の弁の周りに完全なリングを形成するために、嵌植された最初のステープルは、図6に示されるステープル31aのように2つのリング41、41aを有する。
【0028】
図7に、3つのそのような概して同様のステープル31bを示し、この図ではそれらがチェーンの一部として示されている。唯一の相違点は、ステープル31bでは、より顕著なツイストジョイント43aを作成するためにループ41が450°ひねられていることである。嵌植されると、ステープル11と同様に、リング41の下面および直線コネクタ37の下面が、外科用ステープルが送達される組織の表面に並置される。
【0029】
この弁輪形成システムが、単純に装填型の送達ツールを使用して不全の弁を迅速に再構成する方法を外科医に提供し、送達ツールが、個別のステープルを順次に送達して弁の周りに環状構成を作成し、所望の通り、かつ意図した通りに弁尖を再び接合するような再構成を行うことは、前述したことから明らかであろう。外科医は、組織内に先に嵌植されているステープルまたは他の襞バンドを個別にクランプする必要はなく、迅速かつ単純に外科用ステープルを順次に送達することができ、単純に、各ステープルの一方の脚部を、最後に嵌植されたステープルの一方の脚部の上端部に取り付けられた一体型横方向リングによって提供されるアパーチャに通す。その結果、弁輪形成システムは、操作の簡易性、速度、および精度をもたらし、外科医が望み通りに弁再構成を実現できるようにする。
【0030】
ヘルニアは、一般に、腹壁の脆弱な位置が伸びる、および/または裂傷するときに発症し、これにより、内部の器官が膨らみ出ることがあり、皮膚の下で風船状に見えることが多い。別のタイプのヘルニアは、腹内手術後の腹壁切開の不完全な治癒および瘢痕により生じる。これは、「腹壁瘢痕ヘルニア」と呼ばれる。これらのヘルニアタイプのいくつかは、腹壁などに可撓性の外科用メッシュ材料を縫合することによって組織を補強する追加の処置によって矯正されることが多い。複数のステープル11または31および可撓性のメッシュ合成繊維の織物状材料などを備えるキットを使用してヘルニアを修復することができるが、有利には、連係機能のみならずいわゆる衝撃吸収機能も組み込む代替形状のステープルを採用することができる。これらの代替ステープルも同様に、上述したように各クラウンコネクタによって設定される有限距離だけ離隔された2つの脚部進入点の間で、表面よりも下で身体組織を縫縮するために使用される。しかし、これらのクラウンコネクタは、腹腔内圧の生じ得る増加を、時間と共にしばしば外れるまたは裂傷することがある単一のステープルまたは脆弱位置の近傍に集中させずに、作成されたリングの全周にわたってより均一に分散できるように形作られる。ステープルのチェーンのいくらかの撓みまたは弾性運動を可能にするそのような構成は、そのような瞬間的な腹圧上昇の発生により良く対処し、それにより、現在かなり高いヘルニア縫合術処置の再発率を低減させるはずである。
【0031】
図8に、そのような衝撃吸収ステープル51の一実施形態を示す。このステープルは、クラウンコネクタ57によって離隔された2つの脚部53、55を含み、耳部59が脚部53の上に形成され、リング61が脚部55の上に形成されている点で、ステープル31に類似している。しかし、クラウンコネクタ57は、真直な直線区域37を有しては形成されておらず、弓状リンク67によって相互接続された一対のアーム65を有する主要なU字形湾曲部63を有して形成されている。ステープル51は、図9に概略的に示されるように、補強用の可撓性メッシュ材料パッチ69に突き通すことによって腹部組織などに嵌植される。メッシュ材料パッチ69は、腹腔の脆弱部を覆うのに十分に大きな面積を有するが、概略的に図示されるほど大きなサイズではないと考えられる。通常、外科医が、欠陥部よりも約3〜4cm大きくなるように嵌植前に切って調整する。筋損傷を修復することによって器官を定位置に移動させた状態で、ヘルニア欠陥の領域を縁取るステープル51の環状リングを作成することによって、可撓性メッシュ材料パッチ69は、内腔を覆う組織の表面と接触して固定される。
【0032】
環状リングにおける各ステープル51の向きは、U字形湾曲部63が、複数のステープルの脚部53、55によって画定される円の半径方向外側に位置するようなものである。その結果、腹腔内圧の発生により組織に力が加わるとき、弓状リンク67の半径がわずかに開き、アーム63が曲がることにより、複数のステープルの脚部53、55は弾性的に離れて広がることができる。
【0033】
図10に、そのような衝撃吸収ステープル71の代替的実施形態を示し、この衝撃吸収ステープル71も同様に、クラウンコネクタ77によって所定の距離だけ離隔された一対の脚部73、75を有する。このステープル71は、脚部73の上の耳部79および脚部75の上の横方向リング81を含む。弓状湾曲部によって相互接続された耳部79とリング81の間に引かれた線に対して横方向に向けられた3つの脚部の形態でのS字形区域83によって、瞬間的に撓み、次いで所定の元の形状に戻ることができる機能が与えられ、この区域83はクラウンコネクタ77の主要部分を形成し、所望の弾力性を提供する。図11に、腹腔の脆弱な領域を取り囲むように、外科用の可撓性補強メッシュ材料69のパッチを通して嵌植された複数のステープル71を示す。
【0034】
そのような可撓性メッシュパッチ69は、織られている、もしくは編まれていることがあり、またはヘルニア修復で長い間使用されているタイプの他の適切な布地材料からなることがある。好ましくは、パッチは、ポリプロピレンやポリテトラフルオロエチレン(PTFE)など、生体適合性のポリマー材料からなる。従来、標準的な外科用ステープリングが、ヘルニア修復用の縫合にも使用されている。内視鏡によるヘルニア修復を容易にするために、J&Jグループの1企業であるEthicon社の部門から市販されているENDOPATHY ES内視鏡など、内視鏡ステープラが市販されている。この一般的なタイプのステープラは、ステープル51またはステープル71を嵌植するために適合させることができる。この設計は、形状記憶ステープルを嵌植するようなものであってよく、または当然クラウンコネクタの弾性領域を前提として、ステープリングツールによって確立される形状を保つ標準的な金属合金もしくは層状金属からなるステープルを嵌植するようなものであってよい。
【0035】
可撓性ポリマーメッシュ材料は、その平面に対して横方向への運動に対する補強支持を提供しながら(それにより、脆弱な腹部領域などが外側へ隆起しないように支持する)、その平面内でいくらかの固有の伸張運動を可能にする。図9および図11に示されるような連係ステープル51または71の環状チェーンは、有限の長さの周縁を形成し、それにより追加の支持を提供する。しかし、瞬間的な腹腔内圧の上昇が生じた場合に、患者の快適性のためにそのような上昇を吸収するのが有利である。この目的は、ステープルのそれぞれ2つの脚部を連接するクラウンコネクタ内に弾性の区域、すなわちばね状区域または衝撃吸収区域を提供するステープル構成によって実現される。身体組織内に埋め込まれた2つの湾曲した脚部分の元の形状を保持するが、かなり狭い範囲の弾性率を有するステープル用構成材料を選択することによって、ステープルは確実に嵌植されたまま保たれ、その一方で、U字形またはS字形区域は、嵌植された相互接続されたステープルに対する力の加わり具合に応答して撓む。この構成は、瞬間的な腹腔内圧上昇が力を生じ、その力がリング全体にわたって分散され、それによりリングが広がり、その後、そのような圧力の緩和後に元の形状に戻り、それにより、生じ得る修復の裂傷を回避するようなものである。ステープルは、金属合金ワイヤから形成することができ、または適切な厚さの金属シートからレーザ切断し、所望の構成を与えるように処理することができる。例えば、約0.5から1.2mmの断面直径および約193GPa(ギガパスカル)の弾性率を有するステンレス鋼316Lステープルが、所望の弾力性を示すはずである。別の例として、ステープル51は、約0.6〜1.2mmの直径および約206GPaの弾性率を有するコバルトニッケルクロム合金L605から形成することができる。そのようなステープル用の弾性率に関する目標範囲は、約190から約210GPaの間であることがある。あるいは、ステープルは、形状記憶特性を有する直径約0.8〜1.2mmの医療グレードニチノールワイヤから形成することもできる。
【0036】
具体的には例示しないが、図9および図11に示されるようなステープルの環状構成を提供するためにキットが提供され、そのようなキットは、(a)図8または図10に示される形状の複数のステープルと、(b)各脚部の上端部に1つずつ2つのリングを有する1つのそのようなステープルと、(c)どちらの脚部の上端部にも横方向リングを有さない1つのステープルと、(d)外科用の可撓性補強布地のパッチとを含むことを理解すべきである。
【0037】
本発明を、本発明を行うために現在知られている最良の形態を成すいくつかの好ましい実施形態に関して説明してきたが、添付の特許請求の範囲に記載する本発明の範囲から逸脱することなく、当業者に明らかな様々な変更および修正を行うことができることを理解すべきである。例えば、前述したように、上記の説明では形状記憶ステープルの使用に度々言及したが、脚部の尖った先端が組織の表面よりも下に通った後に送達作用の一部として脚部を互いに向けて湾曲させる送達ツールと組み合わせて、標準的な生体適合性の金属合金または層状金属を使用することもできることを理解すべきである。U字形湾曲部およびS字形湾曲部を有する中央コネクタの使用を説明したが、望まれるときには、脚部の上端部間の正確な間隔を与えるために他のそのような非直線形状を使用することもでき、クラウンコネクタによって作成される最終的なリングの平面内でいくらかの限られた撓みを可能にし、嵌植された脚部がわずかに広がることができるようにして、組織の生理学的な移動に従い、「ブレシングリング(breathing ring)」と呼ばれることがあるリングを作成する。
【0038】
本発明の特定の特徴は、添付の特許請求の範囲において強調する。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2008年4月21日出願の米国仮特許出願第61/046635号の優先権を主張するものであり、その仮特許出願の開示を参照として本明細書に組み込む。
【0002】
本発明は、心臓弁の欠陥を外科的に矯正するため、ならびに腹部領域および身体の他の領域での支持を提供するために設計されたステープリングシステムに関する。より詳細には、本発明は、弁に隣接して原位置(in situ)で一連の相互係合するステープルから連続環状リングを構成することによって不全の心臓弁を効率的かつ効果的に修復するため、および支持メッシュシートと組み合わせて同様の連続リングを構成することによって腹腔領域内の脆弱部分を修復するための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
リウマチ性疾患、結合組織疾患、または虚血性心疾患は、心臓房室弁の構成に甚大な影響を及ぼすことがある。罹患した弁は、細くなる、不全になる、またはその両方になることがある。従って、以前に心筋梗塞を発症した患者であって、虚血性心疾患を患っている非常に多くの患者において、様々な度合いで僧帽弁の不全が発生している。そのような患者で典型的なことに、弁は、肉眼では正常に見えることがある。しかし、その弁輪は広がっており、弁尖の接合(すなわち相互係合)が妨げられて弁の不全を生じている。そのような患者は、修復術として弁輪形成の利益を受けるはずである。
【0004】
弁輪形成リングは、現在一般に、僧帽弁および三尖弁の再建手術の重要な要素となっている。それらの安全性および耐久性は、弁輪形成リングが1960年代後半に開発されて以来行われているいくつかの臨床研究で実証されている。その後の実験および臨床での心エコー検査による研究から、心周期中に、僧帽弁および三尖弁の弁輪のサイズおよび形状が連続的に変化することが示されている。そのような変化に適合することができる可撓性のリングが開発されている。そのような可撓性リングは、依然として弁機能を改善しながら、天然の弁輪の自然な可撓性を制約しないようにすることができるが、可撓性リングおよび非可撓性の剛性リングを使用する際にいくつかの欠点がある。例えば、弁輪に沿った縫合間隔がリングでの間隔に合致しないとき、組織内に張力が生じることがあり、組織の皺または裂傷を引き起こすことがある。従って、可撓性リングがこれらの問題に対する完璧な解決策となることはまだ実証されていない。
【0005】
現在世界中で使用されている一般的な技法は、完全な弁置換に頼らないときには、一般に、弁の円周を減少させると考えられる修復用の安定化弁輪形成リングを採用する。これは通常、弾性、半剛性、または剛性リングを定位置に縫合することによって達成され、このリングは、減少される天然の弁輪の円周にほぼ等しい、またはそれよりも小さい。リングは、閉じた形状を有することも、開いた形状、例えばC字形状を有することもある。設置は、完全な弁置換が行われるときとほぼ同様に通常の縫合を使用して行われ、処置には、完全な弁置換と同程度の時間がかかることがあり、例えば平均で約25から35分である。従って、この手術時間を短縮する改良された弁輪形成システムおよび方法が引き続き追求されている。
【0006】
より近年では、組織を寄せ集めて縫縮する一連の縫合を組織内に配置することによって、不全の弁の円周を減少させるという提案が成されている(例えば、特許文献1参照)。一連のステープル状の襞バンド(plication band)を弁の周縁で組織に挿入するという他の提案もあり、この個別の襞バンドは、連結構造、例えば襞バンドのブリッジ領域内の経路を通されるフィラメントまたはバンドによって、何らかの形で相互接続される(例えば、特許文献2参照)。他の提案は、一連の係留クリップを使用するものであり、これらは不全の弁の周縁に沿って個別に嵌植(implant)され、その後、係留部がクリップ内部に嵌合(cinch)するように操作されて、弁輪を円周方向で締める(例えば、特許文献3参照)。冠状静脈洞の壁を通して僧帽弁の壁内に形状記憶ステープルを挿入することも提案されている(例えば、特許文献4参照)。ステープルは、僧帽弁輪組織に突き刺さり、その組織を寄せ集めて僧帽弁輪を締める。組織の一部を個々に寄せ集める一連の局所襞の嵌植によるカテーテルベースの弁輪形成も提案されている(例えば、特許文献5参照)。この一連の局所襞は、始めは離隔されている脚部の間に位置された組織を寄せ集めてまたは摘んで不全の弁輪を縫縮する状態に戻る形状記憶金属要素である。隣接するポストと接続するようにアームを有する直立ポストを担持する心臓弁組織内への嵌植用固定具を有する複数の個別連結具の使用も示されている(例えば、特許文献6参照)。アームは、形状記憶材料から形成され、心臓弁組織を縫縮するように長さが縮む。
【0007】
ヘルニアは、人類の最も一般的な疾患の1つであり、成人男性人口の約5パーセントが患っている。基本的には、ヘルニアは、腹壁の脆弱部または穴であり、そこを通って腸など腹腔内容物が突出することがある。鼠径ヘルニアの外科的修復(すなわち鼠径ヘルニア縫合術)および腹壁ヘルニアの修復は、行われている最も一般的な処置に含まれ、一般に外来ベースである。米国では、毎年500000件の鼠径ヘルニア縫合術、および約108000件の腹壁ヘルニア縫合術が行われている。腹壁修復の場合、開腹手術で行われる場合であれ、腹腔鏡手術で行われる場合であれ、処置は、初めに患者に麻酔が投与され、次いで外科医が患者の腹壁に関連の切開を行うものである。支持する腹部筋肉および筋膜が切開されて、ヘルニア嚢を露呈させ、腹壁の開口を通して突出するヘルニア内容物が腹部に戻される。その後、外科医は、ヘルニア嚢を、元通りに、または支持用の人工メッシュインプラントを使用して閉じる。次いで、局部組織が、脆弱な組織、穴、またはヘルニアの両側から縫合される。
【0008】
伸びた組織または他の形態で脆弱した組織は切除されることがあり、人工材料のパッチが正常な組織に縫合またはステープリングされることが多く、伸びた組織または他の形態で脆弱した組織の代わりとなる、または修復部の外側もしくは内側に被さって補強する。次いで、修復部にわたって切開が閉じられる。力仕事や激しい活動をできるようになるまでに必要な回復時間は、通常6から8週間である。そのような修復の例は、先行技術文献で見られる(例えば、特許文献7および特許文献8参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,593,424号明細書
【特許文献2】米国特許第6,702,826号明細書
【特許文献3】米国特許第6,986,775号明細書
【特許文献4】米国特許第7,004,958号明細書
【特許文献5】米国特許第7,037,334号明細書
【特許文献6】米国特許第7,485,142号明細書
【特許文献7】米国特許第4,347,847号明細書
【特許文献8】米国特許第5,122,155号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
実際には、前述した提案はどれも、不全の弁および効率的で満足の行くヘルニア修復に関わる上記問題に対する完全に好ましい解決策を与えるとは考えられていない。従って、より良い解決策の追求が続けられている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一連の相互係合する外科用ステープルを嵌植する方法であって、不全の弁を完全に取り囲むようにリングを作成する際の1段階として、嵌植時に各ステープルを最後に嵌植されたステープルと相互係合する方法が、弁尖を望み通りに再び接合させて逆流を回避するための効率的で効果的な弁輪形成法となることが分かっている。そのような相互係合するステープルは、一対の離隔された脚部を有し、脚部は、それらの上端部で、所定の固定長のクラウンコネクタ(crown connector)によって接続され、クラウンコネクタは、嵌植が行われた後に組織の表面に並置して位置する。組織内に埋め込まれた脚部の部分が、互いに向けて屈曲または湾曲して、表面よりも下の領域で組織を寄せ集めて弁輪の周縁の縫縮を行って、周縁を縮め、弁尖を効果的な接合に戻し、弁を機能するように戻す。衝撃吸収クラウンコネクタを有するステープルがヘルニア縫合術のために提供される。
【0012】
1つの特定の形態では、本発明は、2つの離隔された脚部と、前記脚部をそれらの上端部で互いに連接し、前記脚部をそれらの上端部で互いから所定の固定距離だけ離隔するクラウンコネクタとを備える外科用ステープルであって、前記脚部は、それらの尖った下端部よりも上の領域では実質的に一定の断面を有し、前記脚部の一方は、そこから、前記他方の脚部から離れる方向に横方向に延在する一体型リングを有して形成され、前記リングは、前記脚部に垂直に向けられ、同様の外科用ステープルの一方の脚部を受け取るように寸法設定されたアパーチャを有し、前記ステープルは、前記尖った下端部が組織表面に貫入した後に前記2つの脚部が互いに向けて曲がって湾曲構成を取り、前記表面よりも下で組織を寄せ集めて組織を縫縮することを可能にするように設計される外科用ステープルを提供する。
【0013】
別の特定の形態では、本発明は、弁輪形成術用のリング状構成を形成するために外科用ステープルを嵌植する方法であって、2つの離隔された脚部と、前記脚部をそれらの上端部で互いに連接し、前記脚部をそれらの上端部で互いから所定の固定距離だけ離隔するクラウンコネクタとを有する第1のステープルであって、前記脚部の少なくとも一方は、そこから、前記他方の脚部から離れる方向に横方向に延在する一体型のアパーチャの開いたリングを有して形成される、第1のステープルを嵌植するステップと、脚部をそれらの上端部で所定の固定距離だけ離隔するクラウンコネクタによって連接された同様の第1の脚部および第2の脚部をやはり有し、かつ前記第2の脚部から横方向に延在する一体型リングを有する第2の外科用ステープルを、前記第1の嵌植されたステープルのリングのアパーチャに前記第1の脚部を通して2つのステープルを相互係合することによって嵌植するステップと、前記第2のステープルと同様の複数の追加のステープルを、最後に嵌植されたステープルのリングのアパーチャにそれぞれの第1の脚部が通るようにして嵌植して、房室弁の周縁で組織内にリング状構成を作成するステップと、各前記ステープルの前記それぞれの脚部が、前記組織の表面よりも下で互いに向けて曲がって互いに向かう湾曲構成を実現し、それにより表面よりも下で組織を寄せ集めて組織を縫縮するステップとを含む方法を提供する。
【0014】
さらなる特定の形態では、本発明は、開腹手術または腹腔鏡手術で行われるヘルニア縫合の方法であって、脆弱が生じている患者の腹部領域に可撓性の織物状(textile)パッチを配置するステップと、2つの離隔された第1の脚部および第2の脚部と、前記脚部をそれらの上端部で互いに連接し、前記脚部をそれらの上端部で互いから所定の固定距離だけ離隔するクラウンコネクタとを有する第1のステープルを嵌植して、両方の脚部が織物状パッチを通過するようにするステップであって、前記脚部はそれぞれ、そこから、前記他方の脚部から離れる方向に横方向に延在する一体型のアパーチャの開いたリングを有して形成され、前記クラウンコネクタは、非直線状の弾性区域を含む、ステップと、脚部をそれらの上端部で所定の固定距離だけ離隔するクラウンコネクタによって連接された同様の第1の脚部および第2の脚部をやはり有する第2の外科用ステープルを、前記第1の脚部を前記第1の嵌植されたステープルの第2の脚部と関連付けられたリングのアパーチャに通し、次いで織物状パッチに通して2つのステープルを相互係合することによって嵌植するステップであって、前記ステープルは、前記第2の脚部から横方向に延在する一体型リングと、ステープルのクラウンコネクタでの非直線状の弾性区域とを有する、ステップと、前記第2のステープルと同様の複数の追加のステープルを、それぞれの第1の脚部が最後に嵌植されたステープルのリングのアパーチャを通り、次いで織物状パッチを通るようにして嵌植して、患者の脆弱領域を縁取るリング状構成を組織内に作成するステップと、各前記ステープルの前記それぞれの脚部が、前記組織の表面よりも下で互いに向けて曲がって互いに向かう湾曲構成を実現し、それにより表面よりも下で組織を寄せ集めて(gather)組織を縫縮するステップとを含む方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】2つの脚部が、心臓弁組織に嵌植することができる形態で互いに概して平行に示されている、本発明の様々な特徴を具現化する相互係合ステープルを示す斜視図である。
【図2】各脚部の上に形成された一体型リングを有する図1に示されるものと同様の外科用ステープルの斜視図である。
【図3】2つの脚部が最終的に嵌植された位置で並置されている、異なる角度から取られた図1に示される外科用ステープルの斜視図である。
【図4】脚部が並置されている相互係合向きでの図1に例示されるタイプの2つの外科用ステープルを示す前面図である。
【図5】図3と同様の図であって、ワイヤから形成された本発明の様々な特徴を具現化する外科用ステープルの代替的実施形態を示す図である。
【図6】図5に示されるものと同様であるが、2つの一体型リングを有する外科用ステープルの代替的実施形態の斜視図である。
【図7】チェーンとして互いに相互係合された、図5のものと概して同様の3つの外科用ステープルを示す斜視図である。
【図8】クラウンコネクタが「U」字形のばね状弾性区域を有して形成されている、図5に示されるものとやや同様の、外科用ステープルの代替的実施形態の斜視図である。
【図9】図8に示されるものなど複数のステープルを、ヘルニア縫合術で織物状パッチを通して嵌植することができる方法を概略的に例示する斜視図である。
【図10】クラウンコネクタにおいて「S」字形のばね状弾性区域を有するステープルの別の代替的実施形態を示す図8と同様の斜視図である。
【図11】ヘルニア縫合術で使用される図10に示されるステープルを複数示す図9と同様の図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、基本的には、特に不全の房室弁の周縁で組織領域を再構成するため、または体腔の脆弱領域を支持するために使用することができるチェーンを直ちに作成できるように、共に組織を縫縮して互いに相互接続する設計の外科用ステープルを提供する。このようにすると、一連の相互係合されたステープルが、弁輪形成リングの機能を果たす。数十年来、多くの形態のそのようなリングが、不全の心臓弁を再構成するために使用されてきた。また、ヘルニア縫合術を行うとき、ステープルを可撓性のメッシュパッチと組み合わせても有用である。ステープルの設計は、単一の送達(delivery)ステップが、送達されるステープルを配置済みの最後のステープルと相互係合させるのに効果的なだけでなく、それと同時に、組織の上面よりも下の位置で正確な量の組織の寄せ集めまたは縫縮を行うのにも効果的となるようなものである。これらの外科用ステープルは、組織表面への貫入の時点で、尖った下端部を有する一対の実質的に平行な脚部を有し、脚部は、それらの上端部で中央コネクタバーまたはクラウンコネクタによって相互接続され、クラウンコネクタは、脚部の上端部を所定の固定距離だけ離隔し、この距離は変化しない。実質的に平行とは、脚部が直線であるかまたは軽い湾曲を有することがあることを意味し、例えば、先端が逆の脚部に対して約15度までの角度で位置合わせされることがある。言い換えると、実質的に平行な脚部は、平行であることがある、または直線状であるかもしくは軽い湾曲を有して互いに傾いていることがある。
【0017】
2つの脚部の一方は、その上端部に取り付けられた一体型リングを有する。このリングまたはループはアパーチャを提供し、アパーチャは、同一のステープルのリングを有さない脚部が通過するのを受け入れるように寸法設定され、このようにして2つの隣接するステープルの相互係合を行う。完全な閉じたリングが構成されるとき、嵌植される最初のステープルは、2つのそのようなリングを側方向きで有し、嵌植される最後のステープルは、嵌植済みの最初と最後のステープルのリングに各脚部が通されるので、単純なステープルであり、リングを閉じる。
【0018】
送達時、脚部の尖った端部は、コネクタバーの長さによって決定される離隔された点で組織に突き刺さる。組織の表面よりも下にくると、脚部は、互いに向かって屈曲または湾曲させられ、このようにして表面よりも下のこの領域で組織を寄せ集め、直線コネクタバーによって定義される方向で縫縮を行う。本明細書で以後説明するように、互いに向かう脚部の移動は、外科用ステープルが製造される金属の形状記憶特性によるものであってよく、または、ステープルが送達されて、先端が組織の表面に貫入したときの、ステープル自体に対する送達デバイスまたはツールの作用によるものであってもよい。2つの脚部以外のステープルの残りの部分は組織表面に載置し、または組織表面の上方にあり、長さが変わらないので、全ての縫縮が組織表面よりも下で行われる。
【0019】
外科用ステープルは、適切な生体適合性の、適当な金属合金の材料からなり、例としては、ステンレス鋼、チタン合金、ニチノール、他の生体適合性ニッケルクロム合金などが挙げられる。外科用ステープルは層状金属からなっていてもよく、1つの金属が2つの他の金属によって挟まれて、形状記憶および非形状記憶の超弾性合金または金属などの複合材料を提供する。上述したように、ステープルは、標準的な外科用ステープル材料、例えばチタン合金やクラッドステンレス鋼などの生体適合性金属から形成することができ、または形状記憶特性を有する材料から形成することができる。例えば、外科用ステープルが体温まで温まると予め設定された形状に戻る温度依存ニチノールでよい。あるいは、いわゆる超弾性材料、例えば超弾性ニチノールもしくは他のニッケルチタン合金、または金属合金からなっていてもよい。そのような例では、ステープルは、後で戻ることになる所定の最終的な設定形状を与えるように形成および処理される。次いで、2つの脚部が互いに平行である送達形状まで損壊なく変形される。
【0020】
そのような形状記憶材料に加えて、外科用ステープルは、当技術分野でよく知られている他の生体適合性金属から形成することもでき、それらは、数十年来、外科用ステープル製造で使用されており、劣化または望ましくない副作用を引き起こさずに人体内で長い寿命を有することが分かっている。そのような材料が外科用ステープルの製造に使用されるとき、送達デバイスが採用され、送達デバイスは、脚部にそれらの上端部の下の位置で力を加えて、組織表面よりも下の位置で互いに向けて2つの脚部を屈曲または好ましくは湾曲させて、脚部間で組織を固定して寄せ集め、剛性の固定された接続バーによって定義された方向で、組織の上面よりも下で組織内で所定量の縫縮、例えば1または2mmの縫縮を生じる。
【0021】
図1に、尖った底端部17を有する一対の脚部13、15を含む外科用ステープル11を示す。脚部は、それらの上端部でクラウンコネクタ19を介して相互接続される。脚部15の上端部には、短いスタブアーム23によってそこに接続されたリング21がある。リング21は、脚部15から横方向に、脚部13とは正反対の方向に延在する。コネクタ19は、一対の耳部27、29を側部に形成された中央直線バー25を含む。耳部は、それぞれ、約270°のループ区域であり、コネクタ19と脚部13、15の両方の一部分を成すとみなすことができる。
【0022】
ステープルブランクは、生体適合性の金属合金の平坦なシートからレーザ切断されることがあり、その後、リング21が90°ひねられる。レーザ切断されたブランクのエッジ除去および研磨後、ステープルは、図1、図2、および図3に見られる丸みのある外観を有する。すなわち、ステープルは、尖った端部17を除いて実質的に一定の円形断面を有する。リング21と耳部27はどちらも、脚部13(およびリング21)の円形断面よりも直径が大きい中央アパーチャを有するように寸法設定され、それにより、脚部13(およびリング21)をアパーチャ内部にそれぞれ受け入れることができる。アパーチャは、わずか約20%だけ大きいものでよいが、約4倍のサイズでもよい。一般に、約2倍以下のサイズである。図1に示される外科用ステープル11では、リングまたはループ21は、それが取り付けられる脚部15に対して横方向に位置するように位置合わせされる。すなわち、脚部13、15が位置する平面に実質的に垂直な平面内に位置することが好ましい。脚部15の上端部でのリング21の位置は、クラウンコネクタの直線バー中央部分25が位置する平面と同一平面にあるようなものであることが好ましい。そのような位置合わせにより、そのような外科用ステープルが組織内に挿入または嵌植されるとき、バー25とリング21の両方が、嵌植が行われる組織の表面に並置されて位置する。対称的な耳部27、29も、それらのアパーチャが同様にこの平面内に位置するように位置決めされる。従って、耳部27は、脚部13が通される最後に嵌植されたステープルのリング21の一部を受け入れて収容する。
【0023】
外科用ステープル11を形状記憶材料から製造するときには、生体適合性の金属合金の平坦なシートからレーザ切断し、化学的、機械的、または電気的表面処理を施して研磨し、次いでステープルに形状記憶特性を与えるように適切に処理し、それによりステープルは図3に示される形状に戻る。次いで、図1に示される形状に曲げられ、送達ツールに装填される。心臓外科医が操作する送達ツールを使用して、単純に、最後に嵌植されたステープルのリング21に脚部13が通るようにして各ステープルを嵌植し、それによりこのステープルの直線バー25およびリング21が組織の上面に当たって並置され、隣接するステープルリング21の一区域が耳部27に受け入れられる。通常動作中、ステープル11は、例えば、嵌植が行われる表面よりも下で組織内で約2mmの縫縮を生じるようにサイズ設定されることがある。上述したように、直線バー25および2つの耳部27を含むクラウンコネクタ19は固定寸法となるように設計され、それにより、脚部と耳部27、29の下端部との相互接続部分よりも下に位置する脚部の領域のみが互いに向けて屈曲または湾曲して、組織の寄せ集めを行う。このようにして、縫縮は、組織の表面よりも下に離れた組織自体の内部の領域にずらされる。その結果、組織のより均一な縫縮または寄せ集めを生じ、表面で裂傷が生じやすくならないようにする。
【0024】
形状記憶ステープルが使用されないときには、生体適合性の金属合金から形成されるステープルは、ステープリングツールを使用して嵌植され、このステープリングツールが、図3に示される弓形状を取るように脚部を湾曲させる。その結果、脚部13および15の下側主要部分が、互いに向けて、最上部の残りの直線状区域から弓状に曲がり、その際、表面よりも下の領域内で組織を縫縮し、それにより、不全の房室弁を再構成するときに望まれる再整形を達成することが分かる。
【0025】
図4に、部分的または完全なリングを弁輪、例えば不全の僧帽弁の弁輪の周りに形成するためにステープルが採用されるときの、2つのそのような相互係合されたステープル11を示す。いくつかの例では、部分的なリングのみが採用されることがあるが、弁輪形成が周縁の周りで360°未満に限られた場合には、不全の弁の改善が一時的なものにしかならないことがあることが多いことが分かっている。部分的リング弁輪形成によってのみ縫縮されるとき、心臓弁組織は、間欠領域など他の位置でよく伸びることが多く、その結果、不全がいくぶん再発することがあることが判明している。図4では、個々の脚部13および15が、(図1に示される)送達時のそれらの実質的に平行な向きから湾曲し、ここでは互いに並置されて位置して図示されているのが見て取れる。その結果、脚部13および15は、直線バー区域25の下の2つの脚部によって囲まれた領域内で心臓弁組織を寄せ集めて縫縮している。
【0026】
この複数ステープル弁輪形成システムの最終的な結果として完全な弁輪形成リングを作成すべきときには、配置される最初のステープルまたは要素は、一対のそのようなリングを有するものにすべきである。図2に、そのようなステープル11aを示し、このステープル11aは、耳部27の領域内で脚部13の上端部から横方向に延在する第2のリング21aを有する。両方のリングが、脚部13、15に垂直な平面内に位置し、この平面は直線バー25を含む。従って、不全の房室弁の周縁の周りに完全なリングを作成するために外科用ステープル11を使用して房室弁を再構成するとき、最初に嵌植されるステープル11aは、一対のリング21、21aを有する。このステープル11aが形状記憶材料から形成されるものである場合、その弾性特性により、ステープル11aの脚部が実質的に平行な向きである図2に示される形状にステープル11aを広げることができ、この形状で、ステープル11aが組織、すなわち再構成すべき弁輪の上面に送達される。その後、形状記憶特性により、脚部11、13は、それらの平行な広げられた向きから戻り、互いに向かって湾曲する。そのような閉じる動きは、脚部11、13が図3に示されるように閉じた向きで並置されるまで続き、それにより、表面よりも下の領域内で脚部間で組織を縫縮する。外科医は、再構成される弁を取り囲む弁輪形成システムを構成するとき、2つのリング21、21aの一方から始めて、各ステープルの脚部13を最後に嵌植されたステープルのリング21のアパーチャに通すことによってステープル11を1つずつ嵌植して、環状構成を形成する。外科用ステープルの円がほぼ閉じられたとき、嵌植された最後のステープル11と、最初に嵌植されたリングが2つ付いたステープル11aとの間に残っているギャップが、2つの開いているリング21、21aが単一のステープルの一対の直線状脚部13、15の距離とほぼ同じだけ離隔されるようなものになるように、外科医が配置を合わせる。次いで、そのギャップが、1つの単純なステープルを使用して閉じられる。このステープルは、図1に示されるものと類似のステープルであって、単純にリング21とその接続アーム23が省かれたものでよい。
【0027】
図5に、図3と同様に縫縮された向きで示された外科用ステープル31の代替的実施形態を示す。ステープル31も同様に、直線クラウンコネクタ37を上端部に有する一対の脚部33、35を組み込む。その構成により、ワイヤ状の外科用ステープルを提供するために円形断面の金属合金ワイヤを曲げることによって、ステープル31の形成が可能である。概して正方形の層状金属ワイヤや非円形断面のワイヤなど他の断面形状のワイヤが使用されることもある。ワイヤは、同様の耳部39が脚部33の上端部に形成されるように形作られるが、対称的な耳部は省かれる。コネクタ37の反対側の端部で脚部35の上部でワイヤからループを形成し、次いでワイヤを270°ひねってツイストベンド(twist bend)43を形成することによって、横方向に向けられたリング41が提供される。その結果、ループ状にされたワイヤが、ツイストジョイント(twisted joint)43に取り付けられた360°のリング41を形成する。ここでも、横方向リング41は、直線コネクタ37と実質的に同じ平面内に位置するように向けられ、それらは共に、嵌植された弁輪形成システムにおいて組織の上面に並置されて位置する。ここでも、耳部39は組織の表面の上方に延在し、その中央アパーチャまたは輪形部分に、最後に嵌植されたステープルのリング41の該当部分を収容する。不全の弁の周りに完全なリングを形成するために、嵌植された最初のステープルは、図6に示されるステープル31aのように2つのリング41、41aを有する。
【0028】
図7に、3つのそのような概して同様のステープル31bを示し、この図ではそれらがチェーンの一部として示されている。唯一の相違点は、ステープル31bでは、より顕著なツイストジョイント43aを作成するためにループ41が450°ひねられていることである。嵌植されると、ステープル11と同様に、リング41の下面および直線コネクタ37の下面が、外科用ステープルが送達される組織の表面に並置される。
【0029】
この弁輪形成システムが、単純に装填型の送達ツールを使用して不全の弁を迅速に再構成する方法を外科医に提供し、送達ツールが、個別のステープルを順次に送達して弁の周りに環状構成を作成し、所望の通り、かつ意図した通りに弁尖を再び接合するような再構成を行うことは、前述したことから明らかであろう。外科医は、組織内に先に嵌植されているステープルまたは他の襞バンドを個別にクランプする必要はなく、迅速かつ単純に外科用ステープルを順次に送達することができ、単純に、各ステープルの一方の脚部を、最後に嵌植されたステープルの一方の脚部の上端部に取り付けられた一体型横方向リングによって提供されるアパーチャに通す。その結果、弁輪形成システムは、操作の簡易性、速度、および精度をもたらし、外科医が望み通りに弁再構成を実現できるようにする。
【0030】
ヘルニアは、一般に、腹壁の脆弱な位置が伸びる、および/または裂傷するときに発症し、これにより、内部の器官が膨らみ出ることがあり、皮膚の下で風船状に見えることが多い。別のタイプのヘルニアは、腹内手術後の腹壁切開の不完全な治癒および瘢痕により生じる。これは、「腹壁瘢痕ヘルニア」と呼ばれる。これらのヘルニアタイプのいくつかは、腹壁などに可撓性の外科用メッシュ材料を縫合することによって組織を補強する追加の処置によって矯正されることが多い。複数のステープル11または31および可撓性のメッシュ合成繊維の織物状材料などを備えるキットを使用してヘルニアを修復することができるが、有利には、連係機能のみならずいわゆる衝撃吸収機能も組み込む代替形状のステープルを採用することができる。これらの代替ステープルも同様に、上述したように各クラウンコネクタによって設定される有限距離だけ離隔された2つの脚部進入点の間で、表面よりも下で身体組織を縫縮するために使用される。しかし、これらのクラウンコネクタは、腹腔内圧の生じ得る増加を、時間と共にしばしば外れるまたは裂傷することがある単一のステープルまたは脆弱位置の近傍に集中させずに、作成されたリングの全周にわたってより均一に分散できるように形作られる。ステープルのチェーンのいくらかの撓みまたは弾性運動を可能にするそのような構成は、そのような瞬間的な腹圧上昇の発生により良く対処し、それにより、現在かなり高いヘルニア縫合術処置の再発率を低減させるはずである。
【0031】
図8に、そのような衝撃吸収ステープル51の一実施形態を示す。このステープルは、クラウンコネクタ57によって離隔された2つの脚部53、55を含み、耳部59が脚部53の上に形成され、リング61が脚部55の上に形成されている点で、ステープル31に類似している。しかし、クラウンコネクタ57は、真直な直線区域37を有しては形成されておらず、弓状リンク67によって相互接続された一対のアーム65を有する主要なU字形湾曲部63を有して形成されている。ステープル51は、図9に概略的に示されるように、補強用の可撓性メッシュ材料パッチ69に突き通すことによって腹部組織などに嵌植される。メッシュ材料パッチ69は、腹腔の脆弱部を覆うのに十分に大きな面積を有するが、概略的に図示されるほど大きなサイズではないと考えられる。通常、外科医が、欠陥部よりも約3〜4cm大きくなるように嵌植前に切って調整する。筋損傷を修復することによって器官を定位置に移動させた状態で、ヘルニア欠陥の領域を縁取るステープル51の環状リングを作成することによって、可撓性メッシュ材料パッチ69は、内腔を覆う組織の表面と接触して固定される。
【0032】
環状リングにおける各ステープル51の向きは、U字形湾曲部63が、複数のステープルの脚部53、55によって画定される円の半径方向外側に位置するようなものである。その結果、腹腔内圧の発生により組織に力が加わるとき、弓状リンク67の半径がわずかに開き、アーム63が曲がることにより、複数のステープルの脚部53、55は弾性的に離れて広がることができる。
【0033】
図10に、そのような衝撃吸収ステープル71の代替的実施形態を示し、この衝撃吸収ステープル71も同様に、クラウンコネクタ77によって所定の距離だけ離隔された一対の脚部73、75を有する。このステープル71は、脚部73の上の耳部79および脚部75の上の横方向リング81を含む。弓状湾曲部によって相互接続された耳部79とリング81の間に引かれた線に対して横方向に向けられた3つの脚部の形態でのS字形区域83によって、瞬間的に撓み、次いで所定の元の形状に戻ることができる機能が与えられ、この区域83はクラウンコネクタ77の主要部分を形成し、所望の弾力性を提供する。図11に、腹腔の脆弱な領域を取り囲むように、外科用の可撓性補強メッシュ材料69のパッチを通して嵌植された複数のステープル71を示す。
【0034】
そのような可撓性メッシュパッチ69は、織られている、もしくは編まれていることがあり、またはヘルニア修復で長い間使用されているタイプの他の適切な布地材料からなることがある。好ましくは、パッチは、ポリプロピレンやポリテトラフルオロエチレン(PTFE)など、生体適合性のポリマー材料からなる。従来、標準的な外科用ステープリングが、ヘルニア修復用の縫合にも使用されている。内視鏡によるヘルニア修復を容易にするために、J&Jグループの1企業であるEthicon社の部門から市販されているENDOPATHY ES内視鏡など、内視鏡ステープラが市販されている。この一般的なタイプのステープラは、ステープル51またはステープル71を嵌植するために適合させることができる。この設計は、形状記憶ステープルを嵌植するようなものであってよく、または当然クラウンコネクタの弾性領域を前提として、ステープリングツールによって確立される形状を保つ標準的な金属合金もしくは層状金属からなるステープルを嵌植するようなものであってよい。
【0035】
可撓性ポリマーメッシュ材料は、その平面に対して横方向への運動に対する補強支持を提供しながら(それにより、脆弱な腹部領域などが外側へ隆起しないように支持する)、その平面内でいくらかの固有の伸張運動を可能にする。図9および図11に示されるような連係ステープル51または71の環状チェーンは、有限の長さの周縁を形成し、それにより追加の支持を提供する。しかし、瞬間的な腹腔内圧の上昇が生じた場合に、患者の快適性のためにそのような上昇を吸収するのが有利である。この目的は、ステープルのそれぞれ2つの脚部を連接するクラウンコネクタ内に弾性の区域、すなわちばね状区域または衝撃吸収区域を提供するステープル構成によって実現される。身体組織内に埋め込まれた2つの湾曲した脚部分の元の形状を保持するが、かなり狭い範囲の弾性率を有するステープル用構成材料を選択することによって、ステープルは確実に嵌植されたまま保たれ、その一方で、U字形またはS字形区域は、嵌植された相互接続されたステープルに対する力の加わり具合に応答して撓む。この構成は、瞬間的な腹腔内圧上昇が力を生じ、その力がリング全体にわたって分散され、それによりリングが広がり、その後、そのような圧力の緩和後に元の形状に戻り、それにより、生じ得る修復の裂傷を回避するようなものである。ステープルは、金属合金ワイヤから形成することができ、または適切な厚さの金属シートからレーザ切断し、所望の構成を与えるように処理することができる。例えば、約0.5から1.2mmの断面直径および約193GPa(ギガパスカル)の弾性率を有するステンレス鋼316Lステープルが、所望の弾力性を示すはずである。別の例として、ステープル51は、約0.6〜1.2mmの直径および約206GPaの弾性率を有するコバルトニッケルクロム合金L605から形成することができる。そのようなステープル用の弾性率に関する目標範囲は、約190から約210GPaの間であることがある。あるいは、ステープルは、形状記憶特性を有する直径約0.8〜1.2mmの医療グレードニチノールワイヤから形成することもできる。
【0036】
具体的には例示しないが、図9および図11に示されるようなステープルの環状構成を提供するためにキットが提供され、そのようなキットは、(a)図8または図10に示される形状の複数のステープルと、(b)各脚部の上端部に1つずつ2つのリングを有する1つのそのようなステープルと、(c)どちらの脚部の上端部にも横方向リングを有さない1つのステープルと、(d)外科用の可撓性補強布地のパッチとを含むことを理解すべきである。
【0037】
本発明を、本発明を行うために現在知られている最良の形態を成すいくつかの好ましい実施形態に関して説明してきたが、添付の特許請求の範囲に記載する本発明の範囲から逸脱することなく、当業者に明らかな様々な変更および修正を行うことができることを理解すべきである。例えば、前述したように、上記の説明では形状記憶ステープルの使用に度々言及したが、脚部の尖った先端が組織の表面よりも下に通った後に送達作用の一部として脚部を互いに向けて湾曲させる送達ツールと組み合わせて、標準的な生体適合性の金属合金または層状金属を使用することもできることを理解すべきである。U字形湾曲部およびS字形湾曲部を有する中央コネクタの使用を説明したが、望まれるときには、脚部の上端部間の正確な間隔を与えるために他のそのような非直線形状を使用することもでき、クラウンコネクタによって作成される最終的なリングの平面内でいくらかの限られた撓みを可能にし、嵌植された脚部がわずかに広がることができるようにして、組織の生理学的な移動に従い、「ブレシングリング(breathing ring)」と呼ばれることがあるリングを作成する。
【0038】
本発明の特定の特徴は、添付の特許請求の範囲において強調する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの離隔された脚部と、
前記脚部をそれらの上端部で互いに連接し、前記脚部をそれらの上端部で互いから所定の固定距離だけ離隔するクラウンコネクタと
を備える外科用ステープルであって、
前記脚部は、それらの尖った下端部よりも上の領域では実質的に一定の断面を有し、
前記脚部の一方は、そこから、前記他方の脚部から離れる方向に横方向に延在する一体型リングを有して形成され、前記リングは、前記脚部に垂直に向けられ、同様の外科用ステープルの一方の脚部を受け取るように寸法設定されたアパーチャを有し、
前記ステープルは、前記尖った下端部が組織表面に貫入した後に前記2つの脚部が互いに向けて曲がって湾曲構成を取り、前記表面よりも下で組織を寄せ集めて前記組織を縫縮することを可能にするように設計されることを特徴とする外科用ステープル。
【請求項2】
前記一体型リングは、円形アパーチャを有することを特徴とする請求項1に記載の外科用ステープル。
【請求項3】
前記アパーチャは、前記他方の脚部の最大断面寸法よりも少なくとも約20%大きい直径を有することを特徴とする請求項2に記載の外科用ステープル。
【請求項4】
前記リングは、前記クラウンコネクタと実質的に平面状になるように位置合わせされることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の外科用ステープル。
【請求項5】
形状記憶材料からなり、前記形状記憶材料は、前記2つの脚部が実質的に平行であり、組織表面に嵌植された後に互いに向けて曲がって湾曲構成になり、前記表面よりも下で組織を寄せ集めて前記組織を縫縮するように処理されることを特徴とする請求項1に記載の外科用ステープル。
【請求項6】
非形状記憶材料からなり、組織表面に脚部が貫入する過程中に前記2つの脚部が互いに向けて曲げられて湾曲構成になり、それにより前記表面よりも下で組織を寄せ集めて前記組織を縫縮するのを容易にするように設計されることを特徴とする請求項1に記載の外科用ステープル。
【請求項7】
前記クラウンコネクタは、非直線状の弾性区域を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の外科用ステープル。
【請求項8】
前記クラウンコネクタは、U字形区域またはS字形区域を含むことを特徴とする請求項7に記載の外科用ステープル。
【請求項9】
請求項7に記載の複数の外科用ステープルと、患者の脆弱な解剖学的部分を覆い、前記解剖学的部分の周りの境界を定めるのに十分なサイズのメッシュ材料の可撓性織物状パッチとを含み、前記可撓性織物状パッチを通して前記ステープルを嵌植できることを特徴とするヘルニア修復キット。
【請求項10】
前記パッチは、ポリマーからなる非伸張性の撚り糸から織られた材料から形成され、各前記脚部から互いに反対方向に横方向に延在するリングを有する1つの追加のステープルを含むことを特徴とする請求項9に記載のキット。
【請求項11】
請求項8に記載の複数の外科用ステープルと、患者の脆弱な解剖学的部分を覆い、前記解剖学的部分の周りの境界を定めるのに十分なサイズのメッシュ材料の可撓性織物状パッチとを含み、前記可撓性織物状パッチを通して前記ステープルを嵌植することができ、前記ステープルは、ヒト患者の腹腔内圧の瞬間的な上昇を受けるときに前記U字形またはS字形区域が撓むように弾性率を有する材料から形成されることを特徴とするヘルニア修復キット。
【請求項12】
弁輪形成術用のリング状構成を形成するために外科用ステープルを嵌植する方法であって、
2つの離隔された脚部と、前記脚部をそれらの上端部で互いに連接し、前記脚部をそれらの上端部で互いから所定の固定距離だけ離隔するクラウンコネクタとを有する第1のステープルであって、前記脚部の少なくとも一方は、そこから、前記他方の脚部から離れる方向に横方向に延在する一体型のアパーチャの開いたリングを有して形成される、第1のステープルを嵌植するステップと、
脚部をそれらの上端部で所定の固定距離だけ離隔するクラウンコネクタによって連接された同様の第1の脚部および第2の脚部をやはり有し、かつ前記第2の脚部から横方向に延在する一体型リングを有する第2の外科用ステープルを、前記第1の嵌植されたステープルのリングのアパーチャに前記第1の脚部を通して2つのステープルを相互係合することによって嵌植するステップと、
前記第2のステープルと同様の複数の追加のステープルを、最後に嵌植されたステープルのリングのアパーチャにそれぞれの第1の脚部が通るようにして嵌植して、房室弁の周縁で組織内にリング状構成を作成するステップと、
各前記ステープルの前記それぞれの脚部が、前記組織の表面よりも下で互いに向けて曲がって互いに向かう湾曲構成を実現し、それにより表面よりも下で組織を寄せ集めて前記組織を縫縮するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
前記外科用ステープルは、形状記憶材料から形成され、前記形状記憶材料は、始めは実質的に平行である前記脚部を、前記脚部の嵌植後に互いに向けて徐々に湾曲させることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1のステープルおよび第2のステープルの前記嵌植は、前記脚部が前記弁組織の表面に貫入し、次いで前記嵌植運動の一部として互いに向けて湾曲させられるように行われることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記第1のステープルは、各脚部から互いに反対方向に横方向に延在する2つの前記一体型リングを有し、閉じられたリング状構造が作成されて、再建される房室弁を完全に取り囲むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項16】
ヘルニア縫合の方法であって、
脆弱が生じている患者の腹部領域に可撓性織物状パッチを配置するステップと、
2つの離隔された第1の脚部および第2の脚部と、前記脚部をそれらの上端部で互いに連接し、前記脚部をそれらの上端部で互いから所定の固定距離だけ離隔するクラウンコネクタとを有する第1のステープルを嵌植して、両方の脚部が織物状パッチを通過するようにするステップであって、前記脚部はそれぞれ、そこから、前記他方の脚部から離れる方向に横方向に延在する一体型のアパーチャの開いたリングを有して形成され、前記クラウンコネクタは、非直線状の弾性区域を含む、ステップと、
脚部をそれらの上端部で所定の固定距離だけ離隔するクラウンコネクタによって連接された同様の第1の脚部および第2の脚部をやはり有する第2の外科用ステープルを、前記第1の脚部を前記第1の嵌植されたステープルの第2の脚部と関連付けられたリングのアパーチャに通し、次いで織物状パッチに通して2つのステープルを相互係合することによって嵌植するステップであって、前記ステープルは、前記第2の脚部から横方向に延在する一体型リングと、前記ステープルのクラウンコネクタでの非直線状の弾性区域とを有する、ステップと、
前記第2のステープルと同様の複数の追加のステープルを、それぞれの第1の脚部が最後に嵌植されたステープルのリングのアパーチャを通り、次いで織物状パッチを通るようにして嵌植して、患者の脆弱領域を縁取るリング状構成を組織内に作成するステップと、
各前記ステープルの前記それぞれの脚部が、前記組織の表面よりも下で互いに向けて曲がって互いに向かう湾曲構成を実現し、それにより表面よりも下で組織を寄せ集めて前記組織を縫縮するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項17】
前記リング状構成は、最後に嵌植されたステープルのリングおよび前記第1のステープルの第1の脚部のリングに通される2つの脚部を有するステープルを嵌植することによって閉じられて、連続円を成すことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記パッチは、ポリマーからなる非伸張性の撚り糸から織られた材料から形成されることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記クラウンコネクタは、U字形区域またはS字形区域を含み、前記区域は、前記脚部間に引かれた線に対して横方向に延在するアームを含み、前記アームは、ヒト患者の腹腔内圧の瞬間的な上昇をステープルの前記閉じられた連続円が受けるときに弾性的に曲がることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記外科用ステープルは、形状記憶材料から形成され、前記形状記憶材料は、始めは実質的に平行な脚部である前記脚部を、前記脚部の嵌植後に互いに向けて徐々に湾曲させることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項1】
2つの離隔された脚部と、
前記脚部をそれらの上端部で互いに連接し、前記脚部をそれらの上端部で互いから所定の固定距離だけ離隔するクラウンコネクタと
を備える外科用ステープルであって、
前記脚部は、それらの尖った下端部よりも上の領域では実質的に一定の断面を有し、
前記脚部の一方は、そこから、前記他方の脚部から離れる方向に横方向に延在する一体型リングを有して形成され、前記リングは、前記脚部に垂直に向けられ、同様の外科用ステープルの一方の脚部を受け取るように寸法設定されたアパーチャを有し、
前記ステープルは、前記尖った下端部が組織表面に貫入した後に前記2つの脚部が互いに向けて曲がって湾曲構成を取り、前記表面よりも下で組織を寄せ集めて前記組織を縫縮することを可能にするように設計されることを特徴とする外科用ステープル。
【請求項2】
前記一体型リングは、円形アパーチャを有することを特徴とする請求項1に記載の外科用ステープル。
【請求項3】
前記アパーチャは、前記他方の脚部の最大断面寸法よりも少なくとも約20%大きい直径を有することを特徴とする請求項2に記載の外科用ステープル。
【請求項4】
前記リングは、前記クラウンコネクタと実質的に平面状になるように位置合わせされることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の外科用ステープル。
【請求項5】
形状記憶材料からなり、前記形状記憶材料は、前記2つの脚部が実質的に平行であり、組織表面に嵌植された後に互いに向けて曲がって湾曲構成になり、前記表面よりも下で組織を寄せ集めて前記組織を縫縮するように処理されることを特徴とする請求項1に記載の外科用ステープル。
【請求項6】
非形状記憶材料からなり、組織表面に脚部が貫入する過程中に前記2つの脚部が互いに向けて曲げられて湾曲構成になり、それにより前記表面よりも下で組織を寄せ集めて前記組織を縫縮するのを容易にするように設計されることを特徴とする請求項1に記載の外科用ステープル。
【請求項7】
前記クラウンコネクタは、非直線状の弾性区域を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の外科用ステープル。
【請求項8】
前記クラウンコネクタは、U字形区域またはS字形区域を含むことを特徴とする請求項7に記載の外科用ステープル。
【請求項9】
請求項7に記載の複数の外科用ステープルと、患者の脆弱な解剖学的部分を覆い、前記解剖学的部分の周りの境界を定めるのに十分なサイズのメッシュ材料の可撓性織物状パッチとを含み、前記可撓性織物状パッチを通して前記ステープルを嵌植できることを特徴とするヘルニア修復キット。
【請求項10】
前記パッチは、ポリマーからなる非伸張性の撚り糸から織られた材料から形成され、各前記脚部から互いに反対方向に横方向に延在するリングを有する1つの追加のステープルを含むことを特徴とする請求項9に記載のキット。
【請求項11】
請求項8に記載の複数の外科用ステープルと、患者の脆弱な解剖学的部分を覆い、前記解剖学的部分の周りの境界を定めるのに十分なサイズのメッシュ材料の可撓性織物状パッチとを含み、前記可撓性織物状パッチを通して前記ステープルを嵌植することができ、前記ステープルは、ヒト患者の腹腔内圧の瞬間的な上昇を受けるときに前記U字形またはS字形区域が撓むように弾性率を有する材料から形成されることを特徴とするヘルニア修復キット。
【請求項12】
弁輪形成術用のリング状構成を形成するために外科用ステープルを嵌植する方法であって、
2つの離隔された脚部と、前記脚部をそれらの上端部で互いに連接し、前記脚部をそれらの上端部で互いから所定の固定距離だけ離隔するクラウンコネクタとを有する第1のステープルであって、前記脚部の少なくとも一方は、そこから、前記他方の脚部から離れる方向に横方向に延在する一体型のアパーチャの開いたリングを有して形成される、第1のステープルを嵌植するステップと、
脚部をそれらの上端部で所定の固定距離だけ離隔するクラウンコネクタによって連接された同様の第1の脚部および第2の脚部をやはり有し、かつ前記第2の脚部から横方向に延在する一体型リングを有する第2の外科用ステープルを、前記第1の嵌植されたステープルのリングのアパーチャに前記第1の脚部を通して2つのステープルを相互係合することによって嵌植するステップと、
前記第2のステープルと同様の複数の追加のステープルを、最後に嵌植されたステープルのリングのアパーチャにそれぞれの第1の脚部が通るようにして嵌植して、房室弁の周縁で組織内にリング状構成を作成するステップと、
各前記ステープルの前記それぞれの脚部が、前記組織の表面よりも下で互いに向けて曲がって互いに向かう湾曲構成を実現し、それにより表面よりも下で組織を寄せ集めて前記組織を縫縮するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
前記外科用ステープルは、形状記憶材料から形成され、前記形状記憶材料は、始めは実質的に平行である前記脚部を、前記脚部の嵌植後に互いに向けて徐々に湾曲させることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1のステープルおよび第2のステープルの前記嵌植は、前記脚部が前記弁組織の表面に貫入し、次いで前記嵌植運動の一部として互いに向けて湾曲させられるように行われることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記第1のステープルは、各脚部から互いに反対方向に横方向に延在する2つの前記一体型リングを有し、閉じられたリング状構造が作成されて、再建される房室弁を完全に取り囲むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項16】
ヘルニア縫合の方法であって、
脆弱が生じている患者の腹部領域に可撓性織物状パッチを配置するステップと、
2つの離隔された第1の脚部および第2の脚部と、前記脚部をそれらの上端部で互いに連接し、前記脚部をそれらの上端部で互いから所定の固定距離だけ離隔するクラウンコネクタとを有する第1のステープルを嵌植して、両方の脚部が織物状パッチを通過するようにするステップであって、前記脚部はそれぞれ、そこから、前記他方の脚部から離れる方向に横方向に延在する一体型のアパーチャの開いたリングを有して形成され、前記クラウンコネクタは、非直線状の弾性区域を含む、ステップと、
脚部をそれらの上端部で所定の固定距離だけ離隔するクラウンコネクタによって連接された同様の第1の脚部および第2の脚部をやはり有する第2の外科用ステープルを、前記第1の脚部を前記第1の嵌植されたステープルの第2の脚部と関連付けられたリングのアパーチャに通し、次いで織物状パッチに通して2つのステープルを相互係合することによって嵌植するステップであって、前記ステープルは、前記第2の脚部から横方向に延在する一体型リングと、前記ステープルのクラウンコネクタでの非直線状の弾性区域とを有する、ステップと、
前記第2のステープルと同様の複数の追加のステープルを、それぞれの第1の脚部が最後に嵌植されたステープルのリングのアパーチャを通り、次いで織物状パッチを通るようにして嵌植して、患者の脆弱領域を縁取るリング状構成を組織内に作成するステップと、
各前記ステープルの前記それぞれの脚部が、前記組織の表面よりも下で互いに向けて曲がって互いに向かう湾曲構成を実現し、それにより表面よりも下で組織を寄せ集めて前記組織を縫縮するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項17】
前記リング状構成は、最後に嵌植されたステープルのリングおよび前記第1のステープルの第1の脚部のリングに通される2つの脚部を有するステープルを嵌植することによって閉じられて、連続円を成すことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記パッチは、ポリマーからなる非伸張性の撚り糸から織られた材料から形成されることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記クラウンコネクタは、U字形区域またはS字形区域を含み、前記区域は、前記脚部間に引かれた線に対して横方向に延在するアームを含み、前記アームは、ヒト患者の腹腔内圧の瞬間的な上昇をステープルの前記閉じられた連続円が受けるときに弾性的に曲がることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記外科用ステープルは、形状記憶材料から形成され、前記形状記憶材料は、始めは実質的に平行な脚部である前記脚部を、前記脚部の嵌植後に互いに向けて徐々に湾曲させることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2011−518017(P2011−518017A)
【公表日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−505619(P2011−505619)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【国際出願番号】PCT/IB2009/051473
【国際公開番号】WO2009/130631
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(502203417)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【国際出願番号】PCT/IB2009/051473
【国際公開番号】WO2009/130631
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(502203417)
【Fターム(参考)】
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