説明

外線/内線の接続回線種別設定方法及びその方法を用いた電話機回路

【課題】電話機に接続する電話回線に対応する通話回路の側音平衡回路の自動最適化を単純な制御回路でできていない。
【解決手段】交換装置に接続されるアナログ電話機の発信音種別検出回路21、発信音レベル計測回路22、回線電流計測回路23が発呼により電話回線に接続された際、電話回線に送られる発信音種別、発信音レベル、及び電話機回線端子に流れる電流値を検出計測し、外線/内線判定設定機能20が、検出計測したそれぞれの条件から接続された電話回線種別を外線か内線かに判定し、その多数決の判定に基づいて外線/内線の種別を決定、それに適合する側音平衡回路17−A,Bを通話回線に接続する。更に、その計測値に基づいて、送受話路での音声レベルを適正値に調整し、送受話器を電話回線と接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電話局用交換機、構内交換機、ボタン電話装置などのような交換装置に接続されるアナログ電話機で、外線/内線の接続回線種別に的確に対応させて防側音制御し通話音質を向上させる電話機回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、構内交換機、ボタン電話装置などのような宅内交換装置で、電話回線に接続される電話機は、その宅内交換装置の内線となる電話回線だけでなく、宅内交換装置の外線となる電話局用交換機の加入者回線にも直結して使用される場合がある。一方、電話機の送話器から受話器に回り込む側音を防止するためには、接続される電話回線とのインピーダンス平衡を得る必要がある。このため、送話器及び受話器を接続する通話回路には側音平衡回路網が備えられる。然しながら、交換装置と電話機とを接続する電話回線の長さは、内線では短い一方、外線では長いだけでなくその距離に変動があるので、電気的回路条件が相違することによる側音平衡回路の調整が必要となる。以後、外線は、内線に対応して外線と呼称するが、局線と呼ばれる電話局用交換機の加入者回線と同意である。
【0003】
従来の電話機回路として、例えば、特開昭63−94752号公報(特許文献1)が開示されている。この電話機回路では、内線用及び外線用の平衡回路網を備え、電話機が内線接続の際には内線用、また電話機が外線接続の際には外線用にそれぞれ切換え接続して側音防止のための平衡が保持される。
【0004】
図3を参照してこれを説明すると、電話機110では、フックスイッチにより電話回線が接続された際に、側音平衡切換保持回路111が外線スイッチ112の状態を調べ、それが「オン」の場合には外線用側音平衡回路111−Aを通話回路14に接続する。外線スイッチ112の状態が「オフ」の場合には、内線用側音平衡回路111−Bが通話回路14に接続される。
【0005】
しかし、特許文献1の電話機回路では、電話機設置工事の担当者が、電話機を外線に接続する際に外線スイッチを「オン」に設定する必要がある。この設定を忘れると側音不平衡となり防側音回路が機能せず、通話に支障をもたらすことは免れない。
【0006】
このような問題を解決するため自動的に調整する防側音回路方式が、例えば、特開平8−172475号公報(特許文献2)に開示されている。この電話機は、防側音回路としてブリッジ形の電話機回路を有し、その一素子に非線型抵抗素子又は可変容量素子を使用して、電話回線の接続端における電流又は電圧に対応して側音平衡を連続的に自動調整できる。
【0007】
図4を参照してこれを説明すると、電話機120では、通話回路122が受話器15−A及び送話器15−Bを接続し、防側音回路として電流又は電圧に対応するブリッジ回路を有する。その通話回路122に電話回線がフックスイッチを介して接続された際に、電話回線接続端子における電流値又は電圧値の大きさに応じて側音平衡を保持している。その非線型抵抗素子にはダイオード、バリスタ等が適用される。
【0008】
しかしながら、通話回路の側音平衡回路定数を自動的に最適化するこの方式でも、素子特性の経時変化の発生、適用範囲の大きさなどの問題から、広帯域での通話レベルの自動的適正化には、なお疑問が残っている。
【0009】
また、構内交換機、宅内交換装置などでは、電力消費の観点と、外線直結電話機の条件とを勘案して、擬似的に電話回線のインピーダンスを大きくして、内線の発信音レベル及び回線電流を抑制している場合がある。このような場合、例えば、外線設定で内線に接続した状態では、内線接続の回線電流が20mA以下であるため、遠距離局の外線に接続した場合と同様条件となる。この条件では、音声レベル増幅度が大きい。例えば、外線接続されていて回線電流が40mAで音声レベルを「−20dBm」とした場合、そのまま内線に接続すると音声レベルは「−26dBm」となる。従って、内線が外線設定のまま受話器に接続された場合、非常に大きな音声レベルで受話することになるので、接続先の電話回線種別を自動的に検出して、このような状態を回避する必要がある。
【0010】
【特許文献1】特開昭63−94752号公報
【特許文献2】特開平8−172475号公報
【特許文献3】特開平6−14357号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
解決しようとする課題は、交換装置を介して接続される電話機における接続先電話回線の外線/内線種別を自動的に検出してその電話回線に対応する通話回路の側音平衡回路の最適化を単純な制御でできていないことである。
【0012】
そこで、上記特許文献1において、電話機で内線接続か外線接続かを手動で検出しているが、これを自動的に検出し、それぞれに適した側音平衡回路を選択して通話回線に接続することが考えられる。
【0013】
例えば、特開平6−14357号公報(特許文献3)では、宛先の電話番号を電話局用交換機に接続した際の電話番号とし、構内交換機から発信の際にダイヤルの先頭に付加する外線接続コードを、自動的に付加する技術が開示されている。すなわち、特許文献3の通信端末装置では、オフフックで交換機側から受ける発信音種別の相違により外線接続か内線接続かを識別している。然しながら、この特許文献3による技術は、側音平衡回路の最適化とは無関係である。
【0014】
一方、世界的には各国での電話局用交換機から送出される発信音は多岐にわたるので、交換装置から内線に送出される発信音の周波数と断続パターンとではその国の電話局用交換機から送出される発信音と識別不能な場合がある。
【0015】
従って、より一層の最適化を単純な制御回路で自動的に実現するため、電話機で接続している電話回線が内線か外線かを自動的に検出し、それぞれに適した側音平衡回路を選択して通話回線に接続し、それぞれの接続状態範囲における通話レベルの最適化を図ることが望まれる。それには、発信音種別だけでなく、他の条件も加味して、選択の的確性をはかることが必要である。
【0016】
一方、上述したように、電話局用交換機からの加入者回線である外線と、構内交換機の内線とでは、回線接続の際にその接続回線の種別により、発信音レベル、及び電話機の回線端子に流れる回線電流値が相違する。これらレベル及び電流値などは、外線と内線とで大幅に相違する場合は問題ないが、接続された電話回線の条件によってはその識別範囲が重複し、外線と内線との区別ができない場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明による接続回線種別設定方法では、上記課題を解決するため、電話機に接続する電話回線に対応する通話回路における側音平衡回路の最適化を単純な制御回路で自動的に実現することを目的として、電話機が接続される電話回線の複数の条件を総合して、その電話回線種別が外線/内線のいずれかを決定することを主要な特徴とし、更に、その条件に基づいて信号レベルを調整している。
【0018】
そのため、接続回線種別を設定するに当たり、交換装置に接続されるアナログ電話機が電話回線に接続された際、該電話回線の複数条件、例えば、発信音種別、発信音レベル、及び電話機の回線端子に流れる電流値を検出し、検出したそれぞれの条件から前記交換装置の接続回線種別を外線か内線かに判定し、その多数決又は過半数の判定に基づいて外線/内線の種別を決定する。それにより、それに適合する側音平衡回路を通話回線に接続すると共に通話電流及び送受話路での音声レベルを適正値に調整している。そして、その調整の後、ユーザがアクセスする送話器および受話器は電話回線と接続される。
【0019】
具体的には、前記側音平衡回路は外線用又は内線用に予め設定接続されており、電話回線に接続された際の前記信号レベル及び電流値それぞれの条件を外線及び内線それぞれに対して予め設定し、電話機から発信した際に上記三つの条件から多数決の判定に基づいて接続電話回線の外線/内線の種別を決定し、前記側音平衡回路を現状から切換えするか否かの処理を実施している。
【0020】
このような構成により、発信音種別、発信音レベル、及び電話機の回線端子に流れる電流値など、これらを総合して、外線接続か内線接続かを判定し、側音平衡回路を外線用/内線用に自動的に切替えることができる。また、発信音レベル、及び電話機の回線端子に流れる電流値を用いて音声レベルを調整することができる。更に、その調整の後に送受話回路が電話回線に接続されるので、側音平衡回路及び音声レベル調整が外線/内線を入れ違うことが無く、従って、的確な側音平衡回路の接続により側音を抑えることができるのみならず、最高の通話品質を実現することができる。この設定は、電話機が、外線か内線に最初に接続される工事の際に実行されるので、その後には必要ない。更に、本発明による電話機回路では、発信の都度、外線接続か内線接続かを自動的に確認することができるのでその機能は安定している。万一、外線接続か内線接続かを自動的には確認できない場合、ユーザでの外線/内線の識別も配慮し、少なくとも発信音での識別が可能なように、交換装置の内線用発信音を識別可能なものに変更し、それに応じて電話機側の内線検出手段を変更することができる。
【0021】
一方、本発明による交換装置に接続されるアナログ電話機の電話機回路は、接続する電話回線に対応する通話回路の側音平衡回路の自動的最適化を実現するため、一つの実施態様として、以下に説明する外線用側音平衡回路、内線用側音平衡回路、側音平衡切換保持手段、検出計測手段、外線/内線種別判定手段、及び制御手段を備える。
【0022】
側音平衡切換保持手段は、一方の前記外線用側音平衡回路及び内線用側音平衡回路のうちの一つを他方の通話回路と接続保持している。側音平衡切換保持手段は、制御手段から平衡回路切換え指示を受けた際に、接続中の前記外線用側音平衡回路又は内線用側音平衡回路を他方に切換えして通話回路に接続し保持する。
【0023】
検出計測手段は、電話回線に接続して電話機から発信した際に電話回線から入力する発信音及び回線電流を含む回線の複数条件それぞれを検出又は計測する。
【0024】
外線/内線種別判定手段は、電話回線の前記複数条件それぞれに対して前記側音平衡切換保持手段により接続保持される外線用/内線用それぞれの条件を予め設定し、電話機から発信した際に前記複数条件を計測して予め設定された条件と比較し、それぞれの条件で外線/内線種別を判定する。
【0025】
制御手段は、電話機から発呼の際に、前記外線/内線種別判定手段で判定された複数の外線/内線種別を受け、その多数決又は過半数により外線/内線を決定し、側音平衡回路に対する外線用/内線用の接続を設定するよう前記側音平衡切換保持手段に指示する。
【0026】
前記外線/内線種別判定手段での回線の複数条件には、電話回線に接続して電話機から発信した際に受信する発信音の種別と、電話回線に接続して電話機から発信した際に受信する発信音の信号レベルと、電話回線に接続して電話機から発信した際に入力端子に流れる電話回線の電流値と、を含むことが望ましい。
【0027】
また、前記発信音の種別は、少なくとも日本国内では、連続音が外線、また、断続音が内線であることにより検出できる。更に、交換装置では、周波数及び断続音の種別を検出することにより、接続先の電話局用交換機又は交換装置の種別を判定できるようにも設定することができる。
【0028】
また、前記外線/内線種別判定手段では、具体的に、前記電流値が40mA以上の場合に外線、又は、前記信号レベルが「−20dBm」以上の場合に内線とそれぞれを判定することができる。
【0029】
更に、電話機回路は、音声レベル調整指示を受けて通話回路に伝達し電話機の送話/受話それぞれの音声レベルを調整する音声レベル調整手段を備え、前記制御手段は、発信音レベル判定手段及び回線電流判定手段から得られる計測値から音声レベル調整値を求めてその調整指示を前記音声レベル調整手段に出力して、音声レベルの自動調整を行った後、前記通話回路を介して前記電話回線を送受話回路に接続している。
【発明の効果】
【0030】
本発明の電話機回路は、電話機が接続された電話回線の諸条件、例えば、電話機から発信した際に受信する発信音の種別及び信号レベル並びに電話回線入力端子での電流値、それぞれで外線/内線の接続回線種別を判定する範囲を予め設定している。そこで、電話機回路は、電話機から発信した際に検出した前記発信音種別、信号レベル及び電流値それぞれを総合して外線/内線の接続回線種別を判定し、それに適合する側音平衡回路を通話回線に接続している。それにより、側音が自動的に的確に抑制され、快適な通話を実現できる。また、この条件に基づいて音声レベルを自動調整している。これにより、通話電流及び送話/受話における音声レベルが自動的に適正値に調整され、その後、電話回線を送受話回路に接続しているので、最適な音質を得ることができるのみならず、一層の通話品質の確実な向上を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
電話機回路が、電話回線を接続した際に外線/内線の接続回線種別を、接続された電話回線の複数条件により総合的に識別し、その判定された接続回線種別に基づいて外線/内線の種別を決定し、それに適合する側音平衡回路を通話回路に接続する。そのため、電話回線の複数条件を、電話機から発信した際に受信する発信音の種別及び信号レベル並びに電話回線入力端子での電流値の三者とし、それぞれの判定から、その判定の過半数又は多数決、すなわち三分の二以上又は一つでも多い判定を獲得した種別に決定している。
【0032】
以下に図面を参照して実施の形態を説明するが、図面では本発明に係る構成要素は含むが装置として必須の構成要素でも省略されたものがある。また、ブロックの機能配分及びフローの動作順序は本発明の趣旨を損なわない限り変更が自由であり、本発明は、下記説明に限定されるものではない。
【0033】
本発明の実施例1について図1を参照して説明する。
【0034】
図1は、本発明による電話機の実施の一形態をブロックで示す説明図である。
【0035】
図示される電話機10は、アナログ電話機であり、フックスイッチ回路11、電話回線インタフェース12、ダイヤル発信回路13、通話回路14、受話器15−A、送話器15−B、トーンリンガ回路16、側音平衡切換保持回路17、外線用側音平衡回路17−A、内線用側音平衡回路17−B、音声レベル調整回路18、電話機制御回路19、発信音種別検出回路21、発信音レベル計測回路22、及び回線電流計測回路23を含む。電話機制御回路19は外線/内線判定設定機能20を含む。発信音種別検出回路21、発信音レベル計測回路22、及び回線電流計測回路23は、上述の検出計測手段を条件別に分割したものであり、外線/内線種別判定手段は外線/内線判定設定機能20に含まれる。
【0036】
フックスイッチ回路11は、一方を電話回線に接続し、他方を電話回線インタフェース12及びトーンリンガ回路16に接続する。接続する電話回線は電話交換装置への内線又は電話局用交換機への外線である。フックスイッチ回路11は、オフフック状態で電話回線を電話回線インタフェース12に接続し、オンフック状態で受けた呼出信号をトーンリンガ回路16へ接続する。
【0037】
電話回線インタフェース12は、フックスイッチ回路11を介して接続する電話回線をダイヤル発信回路13、通話回路14、発信音種別検出回路21、発信音レベル計測回路22、及び回線電流計測判定回路23に接続する。電話回線インタフェース12は、フックスイッチ回路11のオフフック状態で電話回線を介して相手の電話交換装置と接続するだけでなく、電話機制御回路19と信号を授受して、電話機10の発呼手順又は着呼手順を実行する。
【0038】
ダイヤル発信回路13は、ユーザの操作するボタンを備えるダイヤルパッドを有し、電話機制御回路19の制御を受け、電話機10の発信の際に、ユーザに指定されたダイヤル番号を電話回線インタフェース12及びフックスイッチ回路11を介して電話回線に発信する。
【0039】
通話回路14は、電話回線インタフェース12と接続する電話回線を、防側音回路を介して受話器15−A及び送話器15−Bに接続する。また、側音平衡切換保持回路17を介して防側音のための外線用側音平衡回路17−A又は内線用側音平衡回路17−Bが防側音回路に接続され、更に、受話器15−A及び送話器15−Bの音声レベル調整のための音声レベル調整回路18が接続される。受話器15−A及び送話器15−Bは送受話ハンドセットでよい。また、受話器15−Aはイヤホーン、ヘッドホーン、又はスピーカなどでもよい。送話器15−Bはマイクロホンでもよい。
【0040】
トーンリンガ回路16は、オンフック状態のフックスイッチ回路11を介して電話回線から呼出信号を受け、リンガなどの鳴動による可聴音を放送する。側音平衡切換保持回路17は、電話機制御回路19の制御を受け、その指示により外線用側音平衡回路17−A又は内線用側音平衡回路17−Bを通話回路14に接続しそのまま接続を保持する。外線用側音平衡回路17−A又は内線用側音平衡回路17−Bは、外線用又は内線用の側音平衡回路網を有する。音声レベル調整回路18は、電話機制御回路19の制御を受け、通話回路14に接続して受話器15−A及び送話器15−Bそれぞれの音声レベルを自動的に最適に調整する。レベル調整は、外線接続設定又は内線接続設定により切り換えられ、また外線接続設定の場合には、電話回線電流に基づいて自動調整される。一方、音声レベルは、通常、ユーザによる手動調整も可能である。
【0041】
電話機制御回路19は、例えばプログラム制御されたプロセッサ及びメモリにより構成され、電話機10の構成要素と接続して電話機10の機能発揮を制御する。特に、本発明では、外線/内線判定設定機能20が、発信音種別検出回路21、発信音レベル計測回路22、及び回線電流計測回路23からそれぞれの検出計測情報を受け、その情報それぞれで外線/内線を判定し、その結果から多数決によって接続電話回線が外線か内線かを決定し、側音平衡切換保持回路17及び音声レベル調整回路18にそれぞれの設定のための制御指示を行う。その詳細は後にフローチャートを参照して説明する。
【0042】
発信音種別検出回路21は、電話機10が発信動作の際、オフフック状態のフックスイッチ回路11、及び電話回線インタフェース12を介して電話回線から発信音を受ける。受けた発信音が連続音か断続音かが検出され、連続音は外線、断続音は内線として電話機制御回路19の外線/内線判定設定機能20へ通知される。接続先電話交換装置によっては、周波数及び断続音の少なくとも一方で種別を検出して相違を通知してもよい。
【0043】
一方、発信音の種別は、少なくとも日本国内では、連続音が外線、また断続音が内線により検出できるが、世界的には各国での電話局用交換機から送出される発信音は周波数及び断続パターンで多岐にわたる。このため、交換装置から内線に送出される発信音の周波数と断続パターンとではその国の電話局用交換機から送出される発信音と識別不能な場合がある。従って、必要な場合、ユーザでの外線/内線の識別も配慮し、少なくとも発信音での識別が可能なように、電話機が接続される交換装置の内線用発信音を外線発信音と識別可能なものに変更し、それに応じて電話機側の内線検出手段を変更することがよい。
【0044】
発信音レベル計測回路22は、電話機10が発信動作の際、オフフック状態のフックスイッチ回路11及び電話回線インタフェース12を介して電話回線から発信音を受ける。発信音レベル計測回路22では、電話回線から受けた発信音のレベルが計測され、そのレベル計測値が電話機制御回路19の外線/内線判定設定機能20へ通知される。通常、外線は回線長が長いのでレベルが低い場合が多いが、近距離の場合は比較的高い。一方、内線では、回線長は短いが、交換機側のレベル調整により適正レベルを維持することができる。
【0045】
例えば、回線電流を40mAとして音声レベルを調整し外線接続で「−20dBm」と設定した場合、内線接続で「−26dBm」となって、ほぼ6dBのレベル上昇がある。従って、このような外線接続設定のまま内線接続した場合、総和及び受話共に側音として音割れが生じる。このため、日本国内では、発信音レベルは「−15dBm」に設定されている。本実施態様では、発信音レベルとして「−20dBm」以上が検出された際には「内線」と判定することとする。しかし、発信音レベル「−20dBm」未満の場合には、外線又は内線の何れかでありその識別はできない。
【0046】
回線電流計測回路23には、オフフック状態のフックスイッチ回路11及び電話回線インタフェース12を介して電話回線が直結される。回線電流計測回路23では、電話回線の電流が計測され、その電流計測値が電話機制御回路19の外線/内線判定設定機能20へ通知される。通常では、外線においては、電話回線の長さに応じて電流値が変化する。内線では、回線長は短いが、電力消費の関係もあり、電流値が比較的小さく20mA以下に設定されている。
【0047】
従って、本実施態様では、回線電流「40mA」以上が検出された際には「外線」と判定することとする。しかし、回線電流「40mA」未満では遠距離外線又は内線の何れかでありその識別はできない。
【0048】
外線/内線判定設定機能20では、発信音レベル計測回路22及び回線電流計測回路23から計測値を受けて、それぞれにおける計測値から外線/内線の判定を行う。
【0049】
上述の条件によれば、内線の電話回線に接続された場合、発信音種別検出回路21は断続音から内線を判定し、発信音レベル計測回路22が「−20dBm」以上を検出して内線を判定する。したがって、外線/内線判定設定機能20は「3分の2」の過半数又は多数決により、内線設定を決定する。外線に接続された場合、発信音種別検出回路21は連続音から外線を判定し、回線電流計測回路23が回線電流値40mA以上を検出して外線を判定する。したがって、外線/内線判定設定機能20は「3分の2」の過半数又は多数決により、外線設定が決定される。
【0050】
然しながら、発信音レベル計測回路22において「−20dBm」以上を検出して内線と判定し、回線電流計測回路23が回線電流値40mA以上を検出して外線と判定された場合には異常状態であり、所定の警告を発生してユーザ又は設置工事者に表示をする。
【0051】
次に、図2A及び図2Bに図1を併せ参照して、電話機10における主要動作手順について説明する。ここで、電話回線から受ける発信音は外線からの場合には連続音で、内線からの場合には断続音であるとする。発信音レベルは、「−20dBm」以上を検出して内線を判定し、電話回線電流値は40mA以上を検出して外線を判定するものとする。
【0052】
電話機10で、ユーザの発呼によりフックスイッチ回路11がオフフックを検出することにより、電話回線が、電話回線インタフェース12から発信音種別検出判定回路21、発信音レベル計測回路22、及び回線電流計測回路23に引込み(手順S1)される。このとき、電話機制御回路19は、フックスイッチ回路11からオフフック情報を受けているので、発呼を認識し、電話回線インタフェース12から電話回線を介して接続先の交換装置に発呼処理(手順S2)を行う。
【0053】
この処理により、接続先の電話局交換機又は交換装置から発信音が送られるので、発信音種別検出回路21では、受信の発信音が断続音か否かを検出し外線/内線判定設定機能20に通知(手順S3)する。発信音レベル計測回路22では受信の発信音レベルを計測しその計測値を外線/内線判定設定機能20に通知(手順S4)する。更に、上記手順S1で電話回線を引込みした回線電流計測回路23は、回線電流を計測しその計測値を外線/内線設定機能20に通知(手順S5)する。
【0054】
上述のそれぞれの通知を受けた外線/内線判定設定機能20は、断続音により内線を判定(手順S6のYES)し、かつ受けた発信音レベルが所定の内線値範囲内で「−20dBm」以上(手順S7のYES)の場合には内線と判定し、後の手順S21へ進む。上記手順S7が「NO」で、受けた回線電流値が所定の外線値範囲外で40mA未満(手順S8のNO)の場合、多数決で内線と判定され、後の手順S21へ進む。しかし、上記手順S8が「YES」の場合には、発信音で内線検出にかかわらず電流値が外線なので多数決判定ができず、例えば、状況を調査して対策を講じるような異常警報発生の処理(手順S10)が成される。
【0055】
上記手順S6が「NO」で発信音が断続する内線ではなく、連続音する外線(手順S11のYES)で回線電流値が所定の外線値範囲内で40mA以上(手順S12のYES)の場合、多数決で外線と判定され、後の手順S25へ進む。上記手順S12が「NO」で受けた電流値が所定の外線値範囲外で40mA未満(手順S13のNO)の場合、発信音により多数決で外線と判定され、後の手順S25へ進む。しかし、上記手順S13が「YES」で発信音レベル値が内線値範囲内の場合には、発信音で外線検出なので、多数決判定ができず、上述の手順S10に進み、例えば状況を調査して対策を講じるような異常警報発生の処理が行われる。
【0056】
上記手順S11が「NO」で発信音では外線/内線の識別不能で、発信音レベルが所定の内線値範囲内で「−20dBm」以上(手順S14のYES)かつ電流値が所定の外線値範囲外で40mA未満(手順S15のNO)の場合、多数決で内線と判定され、後の手順S21へ進む。上記手順S14が「NO」で発信音レベルが所定の内線値範囲外の「−20dBm」未満、かつ電流値が所定の外線値範囲内で40mA以上(手順S16のYES)の場合、多数決で外線と判定され、後の手順S25へ進む。
【0057】
上記手順S15が「YES」の場合は、発信音レベルが所定の内線値範囲内で「−20dBm」以上かつ電流値が所定の外線値範囲内で40mA以上であり、異常状態の発生が予想されるので、例えば、状況を調査して対策を講じるような異常警報発生の処理(手順S20)が行われる。上記手順S16が「NO」で、レベル計測値も電流計測値も外線/内線の識別不能の場合、例えば、内線発信音を識別可能なように交換装置を設定すると共に、それに合わせて電話機も設定するなどの対策処理(手順S30)を講じることができる。
【0058】
電話機制御回路19は、外線/内線設定機能20で、多数決の内線判定により内線用側音平衡回路17−Bの使用を決定する。電話機制御回路19は、側音平衡切換保持回路17から内線用側音平衡回路17−Bの設定保持中(手順S21のYES)であることを受けた場合、外線/内線判定設定機能20で受けた計測値を音声レベル調整回路18に通知する。音声レベル調整回路18は、通話回路14で、受話器15−A及び送話器15−Bに対する音声レベルを調整(手順S22)する。通話回路14は、音声レベルの調整を受けた後、電話回線インタフェース12及びフックスイッチ回路11を介して電話回線を、防側音回路を介した受話器15−A及び送話器15−Bに接続(手順S23)して通話回線を形成する。この結果、発信音が電話回線から受話器15−Aに届き、ユーザが聴取できるので、ダイヤル送出の手順(手順S24)が実行される。
【0059】
上記手順S23の際には、側音平衡回路が接続回線に合致しており、かつ音声レベルも調整されているので、快適な受話が保障される。
【0060】
電話機制御回路19は、外線/内線設定機能20で、多数決の「外線判定」により外線用側音平衡回路17−Aの使用を決定する。電話機制御回路19は、側音平衡切換保持回路17から外線用側音平衡回路17−Aの設定保持中(手順S25のYES)であることを受けた場合、外線/内線判定設定機能20で受けた計測値を音声レベル調整回路18に通知する。音声レベル調整回路18は、通話回路14で、受話器15−A及び送話器15−Bに対する音声レベルを調整する上記手順22に進む。
【0061】
上記手順S21又は手順S25が「NO」で、側音平衡回路における外線用/内線用が逆に設定保持されている場合、電話機制御回路19は、側音平衡切換保持回路17に指示して外線用/内線用の側音平衡回路17−A,Bの設定を切換え(手順S26)させ、それを保持させる。発信音レベル計測回路22及び回線電流計測回路23は、切換え後の発信音レベル及び回線電流の計測値を計測(手順S27)して外線/内線判定設定機能20に通知するので、手順はその計測結果に基づいて音声レベルを調整する上記手順S22に進む。
【0062】
上記説明で、手順を図示して順次説明したが、その手順は並列動作でもまた順序が入れ替わってもよい。また、三者の判定において、外線と内線との両者の判定があっても、多数決で一つでも多いほうの判定に従って決定することとした。この場合、その決定動作に加えて、ユーザ又は設置工事者に状況表示をすることにしてもよい。
【0063】
上記説明では、外線/内線の決定を判定の多数決としたが、条件を増加させた場合には曖昧な判定も増加するので、過半数としてもよい。三者の場合の過半数は、3分の2以上となる。従って、外線/内線を判定できない発信音レベル「−20dBm」未満又は回線電流40mA未満の場合、他の一つの判定に合わせることとする。すなわち、例えば発信音レベルが「−20dBm」以上で回線電流40mA未満の場合、内線判定数は「2」となる。
【0064】
上述したような構成を採用したので、電話機からオフフック操作により発信の際、接続される電話回線を発信音種別、発信音レベル、及び回線電流の計測によって外線/内線を自動的にかつ的確に識別できる。その後、外線/内線に適合した側音平衡回路を接続するのみならず音声レベルも調整するので、その後に接続される送受話器、特に受話器における音声レベルは、突然の強力信号音を回避するように制御できる。例えば、外線設定で内線に接続した場合、内線接続では回線電流が20mA以下であるため、遠距離局の外線に接続した場合と同様条件となり、レベル増幅度が大きい。したがって、内線が外線設定のまま受話器に接続された場合、非常に大きな音声レベルを有することになるが、このような状態を回避することができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
接続される電話回線を電話機内に引き込んでその複数条件を検出又は計測し、その結果を総合して接続先電話交換装置の種別を識別することにより、その電話回線に合致した側音平衡回路を選択接続できると共にその計測結果から音声レベルを調整できるので、既存の各種電話交換装置と接続可能なアナログ電話機回路の形成に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明による電話機回路の実施の一形態をブロックで示した説明図である。
【図2A】図1の電話機回路における主要動作手順の前半の実施の一形態をフローチャートで示した説明図である。
【図2B】図2Aに続く電話機回路における主要動作手順の後半の実施の一形態をフローチャートで示した説明図である。
【図3】従来の電話機回路の一例をブロックで示した説明図である。
【図4】従来の電話機回路の図3とは別の一例をブロックで示した説明図である。
【符号の説明】
【0067】
10 電話機
11 フックスイッチ回路
12 電話回線インタフェース
13 ダイヤル発信回路
14 通話回路
15−A 受話器
15−B 送話器
16 トーンリンガ回路
17 側音平衡切換保持回路
17−A 外線用側音平衡回路
17−B 内線用側音平衡回路
18 音声レベル調整回路
19 電話機制御回路
20 外線/内線判定設定
21 発信音種別検出回路
22 発信音レベル計測回路
23 回線電流計測回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交換装置に接続されるアナログ電話機の接続回線種別設定方法において、電話機が電話回線に接続された際、該電話回線の複数条件を検出し、その検出した複数条件のそれぞれから前記交換装置の外線/内線の接続回線種別を判定し、その多数決の判定に基づいて外線/内線の種別を決定することを特徴とする接続回線種別設定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の接続回線種別設定方法において、前記複数の条件は、電話機から発信した際に受信する発信音の種別、その発信音の信号レベル、及び電話回線入力端子での電流値の三者を含むものであって、前記側音平衡回路は外線用又は内線用に予め設定接続されており、電話回線に接続された際の前記信号レベル及び電流値それぞれの条件を外線及び内線それぞれに対して予め設定し、電話機から発信した際に上記三者を含む条件から判定された外線/内線の種別に基づいて、前記側音平衡回路を現状から切換えするか否かを決定することを特徴とする接続回線種別設定方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の接続回線種別設定方法において、電話機が外線/内線の接続回線種別を決定した際、それに適合する側音平衡回路を通話回線に接続すると共にその接続条件で通話電流及び送受話路での音声レベルを適正値に調整して前記電話回線を電話機の送受話回路に接続することを特徴とする接続回線種別設定方法。
【請求項4】
交換装置に接続されるアナログ電話機の電話機回路において、
外線用側音平衡回路と、
内線用側音平衡回路と、
一方で前記外線用側音平衡回路及び内線用側音平衡回路と他方で通話回路と接続し、平衡回路切換え指示を受けて前記外線用側音平衡回路及び内線用側音平衡回路の一方を通話回路に接続し保持する側音平衡切換保持手段と、
電話回線に接続して電話機から発信した際に電話回線から入力する発信音及び回線電流を含む回線の複数条件それぞれを検出又は計測する検出計測手段と、
電話回線の前記複数条件それぞれに対して前記側音平衡切換保持手段により接続保持される外線用/内線用それぞれの条件を予め設定し、電話機から発信した際に前記複数条件を計測して予め設定された条件と比較し、それぞれの条件で外線/内線種別を判定する外線/内線種別判定手段と、
電話機から発呼の際に、前記外線/内線種別判定手段で判定された複数の外線/内線種別を受け、その多数決により外線/内線を決定し、側音平衡回路に対する外線用/内線用の接続を前記側音平衡切換保持手段に指示する制御手段と、
を備えることを特徴とする電話機回路。
【請求項5】
請求項4に記載の電話機回路において、前記外線/内線種別判定手段での回線の複数条件には、電話回線に接続して電話機から発信した際に受信する発信音の種別と、電話回線に接続して電話機から発信した際に受信する発信音の信号レベルと、電話回線に接続して電話機から発信した際に入力端子に流れる電話回線の電流値と、を含むことを特徴とする電話機回路。
【請求項6】
請求項5に記載の電話機回路において、前記発信音の種別は、連続音が外線、また、断続音が内線であることを検出し判定することを特徴とする電話機回路。
【請求項7】
請求項5に記載の電話機回路において、前記外線/内線種別判定手段では、前記電流値が所定値以上の場合に外線、又は、前記信号レベルが所定値以上の場合に内線と判定することを特徴とする電話機回路。
【請求項8】
請求項4乃至請求項7の一つに記載の電話機回路において、更に、音声レベル調整指示を受けて通話回路に伝達し電話機の送話/受話それぞれの音声レベルを調整する音声レベル調整手段を備え、前記制御手段は、発信音レベル判定手段及び回線電流判定手段から得られる計測値から音声レベル調整値を求めてその調整指示を前記音声レベル調整手段に出力して、前記通話回路を介して前記電話回線を送受話回路に接続することを特徴とする電話機回路。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−187309(P2008−187309A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−17288(P2007−17288)
【出願日】平成19年1月29日(2007.1.29)
【出願人】(000227205)NECインフロンティア株式会社 (1,047)
【Fターム(参考)】