説明

外装材取付具

【課題】 RC造建築物の躯体表面とこれに取り付けられる外装材との間の間隔をできるだけ狭く保ちながら、外装材を、不陸を調節しつつ確実に躯体表面に取り付けること。
【解決手段】RC造の建築物の躯体1の表面にアンカーボルト2、2によって当接固定する取付板3と、取付板3の螺合支持部3aに表裏貫通状態に螺合し、その後端側を、裏面側のRC造の躯体1に形成した進入用空間1a中に進退自在に進入させる調節支持ボルト4と、調節支持ボルト4の先端に取り付けた結合板7と、結合板7の前面に接合状態に取り付ける支持金具8とで構成する。支持金具8には、結合板7にその結合孔に対応させつつ高さを調節しながらタッピングネジ8gで取り付け得るように開口した高さ方向に長い調節長孔と、調節長孔で結合板7に取り付けた後に、結合板7にタッピングネジ8gで確定的に固定するための確定固定孔とが構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイル類、石材板、パネル、或いは各種ボード等の外装材をRC造の建築物の壁面に不陸を適切に調節した上で取り付けるのに好適な外装材取付具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特に大型のタイル類をRC造の壁面に取り付ける場合は、基本的に、特許文献1及び2で提案されているような取付構造が採用されてきた。
【0003】
この取付構造は、ほぼL型に折曲された板状部材である支持プレートと、これに取り付けてタイル類を支持する接続プレートとで構成されたものである。支持プレートは、その直立部をRC造の壁面に接合しアンカーボルトで固定する。該直立部には縦向きの長孔が開口してあり、この長孔を該壁面に開口してある結合孔に対応させた上で、これらにアンカーボルトを挿入して固定するものである。直立部の長孔は、前記のように、縦向きの長孔であり、高さ方向の調整が可能である。
【0004】
前記接続プレートは、水平部とその先端に直立状態に構成した係止片部とからなり、その水平部を支持プレートの水平部に接合状態に載せ、前者の不陸方向に長い長孔に後者の丸孔若しくは横方向に長い長孔を対応させ、不陸方向及び横方向の調節を行った上で、ネジ類により両者をその接続状態で固定するものである。
【0005】
タイル類は、該接続プレートの先端の係止片部で支持するものである。
【0006】
このような構成の特許文献1及び2で提案される大型タイルの取付構造では、支持プレートの水平部をRC造躯体の壁面から突出状態に配しておき、これに接続プレートの水平部を不陸を調節しつつ結合固定するものであるため、予め突出させておく支持プレートの水平部の突出長さは、必要な調整幅を確保する観点からある程度の長さ寸法とならざるを得ない。その結果、タイル類等の外装材の裏面とRC造躯体の壁面との間隔が広くなりすぎる問題がある。
【0007】
また前記支持プレートは、前記のように、その直立部をRC造の壁面に接合し、その縦向きの長孔に挿通させたアンカーボルトで固定するものであり、取付時に高さ方向の調整が可能であるが、そのため、アンカーボルトで固定しても、長年月の内に、地震等の揺れによってゆるむ虞もあり、タイル等の外装材の鉛直荷重により徐々に下降してしまう虞もある。
【0008】
【特許文献1】特開平06−264594号公報
【特許文献2】特開平09−296586号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、以上のような従来技術の問題点を解決すべく、RC造建築物の躯体表面とこれに取り付けられる外装材との間の間隔をできるだけ狭く保ちながら、該外装材を不陸を調節しつつ確実に該躯体表面に取り付けることができる外装材取付具を提供することを解決の課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の1は、RC造の建築物の躯体表面に固定手段によって当接固定する取付部材と、
該取付部材の螺合支持部に表裏貫通状態に螺合し、その後端側を、裏面側のRC造の躯体に形成した進入用空間に進退自在に進入させる調節支持ボルトと、
該調節支持ボルトの先端側に構成した外装材の支持部と、
で構成した外装材取付具である。
【0011】
本発明の2は、本発明の1の外装材取付具に於いて、前記螺合支持部を裏面側に突出状態に構成したものである。
【0012】
本発明の3は、本発明の1又は2の外装材取付具に於いて、前記外装材の支持部を、該調節支持ボルトの先端に取り付けた結合板と、該結合板の前面に接合状態に固設する支持金具であって、タイル類を係止する係止片を構成した支持金具とで構成し、
かつ該支持金具に、前記結合板にその結合孔に対応させつつ高さを調節しながらネジ類で取り付け得るように開口した高さ方向に長い調節長孔と、該調節長孔とネジ類で該結合板に取り付けた後に、該結合板にタッピングネジで確定的に固定するための確定固定孔とを構成したものである。
【0013】
本発明の4は、本発明の1又は2の外装材取付具に於いて、前記外装材の支持部を、該調節支持ボルトの先端に取り付けた結合板と、該結合板の前面に間隔をあけて固設すべく脚板部を備え、かつ全面に配列された複数の孔を有し、該複数の孔の各々に裏面側に突き出した縁間連結片を備えた多孔板と、該多孔板に接合状態に固設する支持金具であって、タイル類を係止する係止片を構成した支持金具とで構成し、
更に該多孔板の脚板部に、前記結合板にその結合孔に対応させつつ高さを調節しながらネジ類で取り付け得るように開口した高さ方向に長い調節長孔と、該調節長孔及びネジ類で該結合板に取り付けた後に、該結合板にタッピングネジで確定的に固定するための確定固定孔とを構成し、
前記支持金具に、前記多孔板にその結合孔に対応させつつ横方向の位置決めを調節しながらネジ類で取り付け得るように開口した横方向に長い調節長孔と、該調節長孔及びネジ類で該多孔板に取り付けた後に、該多孔板にタッピングネジで確定的に固定するための確定固定孔とを構成したものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の1の外装材取付具によれば、これを利用してRC造の建築物の壁面に大型タイル等の外装材を取り付けて外壁を構成する場合に、該大型タイル等の取り付けの際に、前記調節支持ボルトを進退調節して、その先端と壁面との間の間隔を適切に調節して外装材の不陸を良好に調節することができる。またこのような不陸の調節のための前記調節支持ボルトの進退調節は、予め躯体表面の対応する部位に進入用空間を形成しておき、この中に該調節支持ボルトの後端側が進入可能であるように構成しておくことにより、自由に行うことが可能となる。またこれによって該調節支持ボルトの先端の躯体表面からの突出寸法を最小限度に設定することが可能になり、躯体表面と外装材との間隔を最小限度にすることができることになる。
【0015】
なお、前記進入用空間は、このような不陸の調節のための調節支持ボルトの進入用に構成するものであるため、内部の鉄筋に到達するほど深くする必要はない。それ故、この進入用空間を作成するために鉄筋に傷を付けてしまうような虞もない。
【0016】
本発明の2の外装材取付具によれば、取付部材の裏面側、即ち、RC造の建築物の躯体表面に対面する側に螺合支持部を突出状態に構成し、設置状態で、該駆体表面に開口すべく構成した進入用空間に進入状態となるようにしたため、その突出物が裏面側で問題を生じさせることなく、前記調節支持ボルトに対する十分な支持力を保持することができるようになったものである。また該螺合支持部はこのように裏面側に突出させたものであるため、以上の利点を確保しながら躯体表面と取付対象の外装材との間の間隔を広げる原因とならないようにもなっている。
【0017】
本発明の3の外装材取付具によれば、不陸方向の調節に加えて、前記調節支持ボルトの先端側で大型タイル等の外装材を支持する支持金具の高さ方向の位置決め調節が可能であり、かつその位置決め確定後の固定も確実なものとなり、地震等の揺れによってもこの確実な固定が阻害されることはない。そのため、大型タイル等の鉛直荷重を長年月の間受けてもこれがズレ落ちるような心配はない。
【0018】
本発明の4の外装材取付具によれば、不陸方向の調節に加えて、前記調節支持ボルトの先端側で、多孔板の高さ方向の調節が可能であり、かつその調節確定後の固定も確実なものとなる。更に、大型タイル等の外装材を直接支持する支持金具の横方向の位置決め調節も可能であり、かつその位置決め確定後の固定も確実なものとなる。それ故、地震等の揺れによってもそれらの確実な固定が阻害されることはない。また該支持金具の背後側に多孔板が配してあり、支持金具で支持する大型タイル等の外装材の裏面と該支持金具及び該多孔板を接着剤で結合固定することとしたため、その結合固定が一層確実なものとなっている。即ち、該多孔板には各孔及び縁関連結片に接着剤が絡むため一層強固な結合となるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の外装材取付具は、基本的に、RC造の建築物の躯体表面に固定手段によって当接固定する取付部材と、該取付部材の螺合支持部に表裏貫通状態に螺合し、その後端側を、裏面側のRC造の躯体に形成した進入用空間に進退自在に進入させる調節支持ボルトと、該調節支持ボルトの先端側に構成した外装材の支持部とで構成したものである。
【0020】
前記取付部材は、その螺合支持部によって調節支持ボルトを支持した状態でRC造の建築物の躯体表面に取り付けるための手段であり、そのような役割を担当できる部材であれば、自由に採用可能である。例えば、両側部に側板を立ち上げた長方形の金属板材等を採用することができる。このような金属板材を採用した場合は、前記螺合支持部は、その中央部から裏面側に向けて円筒部を突出させ、その内周に雌ねじを形成して構成することができる。或いは、該金属板材の中央部に円孔を開口し、かつ該円孔に対応させて同軸状にナット部材を固設して構成することもできる。
【0021】
なお、このナット部材の雌ねじ部及び前記円筒部の雌ねじ部は、いずれも前記調節支持ボルトと螺合し得る寸法形状のものである必要があるのは云うまでもない。またこれらの螺合支持部は、いずれの場合でも、該取付部材の裏面側に突出する構成とするのが適当である。
【0022】
また前記取付部材は、前記のように、螺合支持部により、前記調節支持ボルトを表裏貫通状態に支持する手段であるが、該調節支持ボルトは、その先端側で外装材を支持する手段であり、相応する鉛直荷重を受ける。該取付部材は、該調節支持ボルトを介して外装材の鉛直荷重を受け、これを躯体に伝えて支持しようとするものであるから、それに対応できる十分な強度を持ったものである必要もある。
【0023】
前記固定手段は、前記取付部材をRC造の建築物の躯体表面に固定する手段であり、そのような役割を担当可能であれば、特定の構成の手段に限定されない。例えば、種々のアンカーボルト類を自由に採用することができる。
【0024】
前記調節支持ボルトは、前記取付部材の螺合支持部に表裏貫通状態で進退自在に螺合する手段であり、進退螺合状態を適切に調節することで、その先端側で支持する外装材の不陸の調節を行うものである。その強度は、支持する外装材の鉛直荷重を余裕を持って受けることができる程度に定め、更にその長さは、外装材の不陸の調節を適切に行えるように定めるべきである。
【0025】
前記外装材の支持部は、前記調節支持ボルトの先端側に構成するものであるが、外装材を適切に支持できる種々の構成を自由に採用することができる。
【0026】
例えば、前記外装材の支持部を、該調節支持ボルトの先端に取り付けた結合板と、該結合板の前面に接合状態に固設する支持金具であって、タイル類を係止する係止片を構成した支持金具とで構成し、
かつ該支持金具には、前記結合板にその結合孔に対応させつつ高さを調節しながらネジ類で取り付け得るように開口した高さ方向に長い調節長孔と、該調節長孔及びネジ類で該結合板に取り付けた後に、該結合板にタッピングネジで確定的に固定するための確定固定孔とを構成するものとすることができる。
【0027】
前記結合板は、種々の方形の金属板材を採用することが可能であるが、例えば、両側部に側板を立ち上げて補強した長方形の金属板材等を採用することもできる。この場合は、前記調節支持ボルトの先端に、該長方形の金属板材の中央部を溶接等により固設し、又は該調節支持ボルトの先端に、該金属板材の中央部に固設したナット部材を螺合することで固設することができる。或いは、このように固設せず、該調節支持ボルトの先端に該金属板材の中央部を回動自在に結合することとすることもできる。必要な強度を確保できればその構成は自由である。なお、該結合板には、支持金具を固設するためのビス又はボルト用の結合孔を開口しておくのが適切である。
【0028】
また、例えば、前記外装材の支持部を、該調節支持ボルトの先端に取り付けた結合板と、該結合板の前面に間隔をあけて固設すべく脚板部を備え、かつ全面に配列された複数の孔を有し、該複数の孔の各々に裏面側に突き出した縁間連結片を備えた多孔板と、該多孔板に接合状態に固設する支持金具であって、タイル類を係止する係止片を構成した支持金具とで構成し、
更に該多孔板の脚板部に、前記結合板にその結合孔に対応させつつ高さを調節しながらネジ類で取り付け得るように開口した高さ方向に長い調節長孔と、該調節長孔及びネジ類で該結合板に取り付けた後に、該結合板にタッピングネジで確定的に固定するための確定固定孔とを構成し、
前記支持金具に、前記多孔板にその結合孔に対応させつつ横方向の位置決めを調節しながらネジ類で取り付け得るように開口した横方向に長い調節長孔と、該調節長孔及びネジ類で該多孔板に取り付けた後に、該多孔板にタッピングネジで確定的に固定するための確定固定孔とを構成したものとすることができる。
【0029】
前記多孔板の脚板部は、該多孔板本体の両側縁又は上下縁に裏面側にほぼ直角に折曲してなる脚部及び該脚部の下端から外方に向かって該多孔板本体と平行に張り出してなる接合脚板部を備えたものとし、前記調節長孔及び確定固定孔は、該接合脚板部にその長さ方向に沿って交互に配列しておくものとする。
【0030】
なお、前記外装材は、特定のそれに限定されないが、特に大型の石材板、大型のタイル、大型の板状レンガ、大型の板状ボード等の建築物の壁面を化粧するそれが適用対象として有効である。
【0031】
従って、本発明の外装材取付具によれば、これを利用してRC造の建築物の壁面に大型タイル等の外装材を取り付けて外壁を構成する場合に、前記調節支持ボルトを進退調節して、その先端で支持される外装材の不陸を良好に調節することができる。またこのような不陸の調節のための前記調節支持ボルトの進退調節は、予め躯体表面の対応する部位に進入用空間を形成しておき、この中に該調節支持ボルトの後端側が進入可能であるように構成しておくことにより、自由に行うことが可能となる。またこれによって該調節支持ボルトの先端部の躯体表面からの突出寸法を最小限度に設定することが可能になり、躯体表面と外装材との間隔を最小限度に設定することができることになる。
【0032】
まず対象のRC造の建築物の躯体表面に進入用空間を開口しておく。これは、云うまでもなく、外装材取付具を取り付ける部位に開口させておくものであり、これは種々に設定可能である。例えば、外装材取付具を取り付ける部位は、外装材として大型の石材又はタイルを用いる場合は、縦横に配列される石材等の隅部が相互に近接し、目地が十字状をなす部位付近とすることができる。それらの位置の内、上記十字状の目地の水平線部の僅か上方の縦線部上とすると、より適切である。なお、また、この進入用空間の深さは、前記したように、不陸の調節のための調節支持ボルトの進退調節によってその後部が進入する深さを考慮し、これが不都合なく進入できるように設定する。これは、云うまでもなく、内部の鉄筋に到達するほど深くする必要のあるものではないため、その形成によって内部の鉄筋に傷を付けてしまうような虞はない。
【0033】
前記外装材取付具の取付部材を、以上の進入用空間に、相互の中心を一致させつつ躯体表面に固設する。該取付部材は、アンカーボルト等の固定手段を利用して固設する。このとき、該取付部材の裏面側に螺合支持部を突出させてある場合は、該螺合支持部は上記進入用空間に進入することになる。この後、その中心の螺合支持部に螺合してある調節支持ボルトを進退調節して、その先端の外装材の支持部を他の部位に取り付けた外装材取付具のそれと同一鉛直面内に位置するようにする。当然、その鉛直面は、躯体表面との間隔が最も短くなるように設定しておくべきものである。なお、以上のようにして進退調節する調節支持ボルトの後端側は、前記螺合支持部と同様に、躯体表面に開口する進入用空間内に進入することになる。
【0034】
次いで、調節支持ボルトの先端の外装材の支持部で、大型のタイルその他の外装材を支持し、建築物の外装部を構成する。
【0035】
なお、前記のように、前記外装材の支持部を、該調節支持ボルトの先端に取り付けた結合板と、該結合板の前面に接合状態に固設する支持金具であって、タイル類を係止する係止片を構成した支持金具とで構成した場合は、該結合板に、支持金具を高さを調節しながら接合固定する。
【0036】
前記支持金具を、前記結合板に接合し、後者の結合孔に前者の調節長孔を一致させながら前者を昇降させて高さを調節し、該調節長孔及び該結合孔に前者からタッピングネジをねじ込み、又は背後にナットを配して正面から挿入したボルトをねじ込む等により固定する。このように一応固定した後に、更に該支持金具に開口した確定固定孔からタッピングネジを挿入し、背後の結合板にねじ込むことにより、該結合板への支持金具の取付状態を確定的に固定する。
【0037】
次いで、該支持金具を利用して大型タイルや石材等の外装材を躯体表面の前面に取り付ける。この取り付けは、該支持金具に構成してある係止片で、上方の外装材の下端を支持し、下方の外装材の上端を支持することにより行う。このように取り付けられる外装材は、前記したように、いずれの外装材取付具の外装材の支持部も全て同一鉛直面内に位置させるべく不陸の調節が行われているので、凹凸無く、同一鉛直面内に設置されることになる。また、前記のように、前記結合板への前記支持金具の取付状態が前記タッピングネジにより、確定的に固定されているため、地震等の揺れによってもこの確実な固定が阻害されることはない。そのため、大型タイル等の外装材の鉛直荷重を長年月の間受けてもこれがズレ落ちるような心配もない。
【0038】
なおまた、前記のように、前記外装材の支持部を、該調節支持ボルトの先端に取り付けた結合板と、該結合板の前面に間隔をあけて固設すべく脚板部を備え、かつ全面に配列された複数の孔を有し、該複数の孔の各々に裏面側に突き出した縁間連結片を備えた多孔板と、該多孔板に接合状態に固設する支持金具であって、タイル類を係止する係止片を構成した支持金具とで構成した場合は、該結合板に高さ方向の位置関係を調節をしながら前記多孔板を取り付け、更に該多孔板に前記支持金具を横方向の位置関係を調節しながら接合固定する。
【0039】
前記多孔板は、前記脚部の下端に構成した接合脚板部を、前記結合板の前面上下又は左右に接合し、その調節長孔を結合板の結合孔に対応させながら上下にスライド調節し、適正な高さ位置で該調節長孔を通じてタッピングネジ又はボルト・ナットのボルト等を挿入し、前者を結合板の結合孔にねじ込み、後者を該結合孔を通じてナットにねじ込み、該結合板に固定する。更にこの後、該多孔板の接合脚板部に開口してある確定固定孔からタッピングネジを挿入し、背後の結合板にねじ込んで多孔板の以上の位置関係の取付状態を確定的に固定する。
【0040】
次いで、該多孔板の前面に支持金具を接合し、その調節長孔を多孔板の本体に開口してある多数の結合孔のいずれかに対応させつつ左右に動かして横方向の位置関係を調節し、適正な位置で該調節長孔を通じてボルトを挿入し、多孔板の背後に配したナットにねじ込み、又は調節長孔からタッピングネジを挿入し、多孔板の該当する部位にねじ込んで、固定する。この場合も、該支持金具の以上の位置関係での取付状態を確定的に固定すべく、これに開口してある確定固定孔からタッピングネジを挿入し、背後の多孔板にねじ込むこととする。
【0041】
次いで、以上の支持金具を利用して大型タイルや石材等の外装材を躯体表面の前面に取り付ける。この取り付けは、該支持金具に構成してある係止片で、上方の外装材の下端を支持し、下方の外装材の上端を支持することにより行う。この場合は、更に接着剤を利用し、外装材の裏面と多孔板とを結合する。多孔板の多数の孔に接着剤が絡み、これとの接着剤の結合がより強固なものになる。なお、該多孔板の背後には、前記縁間連結片に漏れ防止板を接合固定させておき、接着剤が背後側に無用に漏れ出さないようにしておくべきである。この漏れ防止板の縁間連結片への接合固定は、例えば、接着剤等により行う。
【0042】
このように取り付けられる外装材は、前記したように、いずれの外装材取付具の外装材の支持部も全て同一鉛直面内に位置させるべく不陸の調節が行われているので、凹凸無く、同一鉛直面内に位置することになる。また、前記のように、前記結合板への前記多孔板の取付状態及び該多孔板への前記支持金具の取付状態がそれぞれ前記タッピングネジにより、確定的に固定されているため、地震等の揺れによってもこの確実な固定が阻害されることはない。そのため、大型タイル等の外装材の鉛直荷重を長年月の間受けてもこれがズレ落ちるような心配もない。また左右に動いてしまうような虞もない。
【実施例1】
【0043】
この実施例1の外装材取付具は、図1〜図5に示すように、基本的に、RC造の建築物の躯体1の表面にアンカーボルト(固定手段)2、2によって当接固定する取付板(取付部材)3と、該取付板3の螺合支持部3aに表裏貫通状態に螺合し、その後端側を、裏面側のRC造の躯体1に形成した進入用空間1aに進退自在に進入させる調節支持ボルト4と、該調節支持ボルト4の先端側に構成した外装材の支持部とで構成したものである。
【0044】
前記取付板3は、図1、図2(a)、(b)、図3(a)、(c)、図4(a)及び図5(a)に示すように、長方形状の金属板材で構成したものであり、その長さ方向から見た両側部に正面側に直角に折り曲げて構成した補強用の側板3b、3bを備え、かつ中央部には前記螺合支持部3aを、長さ方向の両端付近には結合孔3c、3cを、それぞれ構成してあるものである。また該取付板3の背面には、前記進入用空間1aの開口部より広い範囲をカバーする防水パッキン5を配してある。なお、この防水パッキン5は、前記螺合支持部3aを貫通させる穴が開けてあり、その周囲のみをカバーしている。
【0045】
前記螺合支持部3aは、同図に示すように、この実施例1では、該取付板3の背後側中央にナット部材を溶接によって取り付けて構成したものである。該取付板3の中央部には、該ナット部材で構成した螺合支持部3aに貫通状態に螺合する前記調節支持ボルト4を挿通させることが可能な穴が開口してあるのは云うまでもない。
【0046】
前記調節支持ボルト4は、当然、前記螺合支持部3aに螺合可能な径のボルト部材であり、その長さは、外装材の支持部を不都合なく所定の位置に位置させることが可能な寸法とする。また外装材である大型タイル6等を無理なく支持できる十分な強度を持ったものを採用する。
【0047】
前記外装材の支持部としては、この実施例1では、最上部及び最下部以外に適用できる基本的なタイプのそれと、最上部用と、最下部用の三種のそれがある。
【0048】
基本的なタイプの外装材の支持部は、図1及び図3(a)、(b)、(d)、(e)に示すように、前記調節支持ボルト4の先端に取り付ける結合板7と、該結合板7の前面に接合状態に固設する支持金具8とで構成したものである。
【0049】
前記結合板7は、同図に示すように、前記取付板3より大きな長方形の金属板材で構成したものであり、その長さ方向両側に裏面側に直角に折り曲げて構成した側板7a、7aを備え、裏面側中央に前記調節支持ボルト4の先端と結合するための結合ナット部7bを備え、かつ該結合板7の長さ方向に沿って該結合ナット部7bの両側に開口した結合孔7c、7cを備えたものである。該結合ナット部7bは、この実施例1では、前記結合板7の裏面側中央に溶接により固定したものである。
【0050】
前記支持金具8は、やはり同図に示すように、長方形状の金属板材で構成したものであり、両側端に正面側に向けて折り曲げた補強用の側板8a、8aを、内部途中に構成した一対の上向係止片8b、8bと一対の下向係止片8c、8cを、内部の該上向係止片8b、8b及び下向係止片8c、8cより上方の位置に開口した一対の縦向の調節長孔8d、8dを、更に該調節長孔8d、8dの内側に開口した一対の確定固定孔8e、8eを、それぞれ備えているものである。
【0051】
前記上向係止片8b、8b及び下向係止片8c、8cは、特に図3(d)、(e)に示すように、前記支持金具8を構成する金属板材の概ね中央部から下方の左右二つの部位を長方形に切り起こして構成する。より具体的には、それぞれ両側辺及び下辺に相当する部分をカットし、上辺に相当する部分で前方に折って水平の張出部8f、8fを構成し、それらの先端を二つに分けて上方及び下方に折り曲げ、各々上方に折り曲げた部分を上向係止片8b、8bとし、下方に折り曲げた部分を下向係止片8c、8cとする。左右二つの張出部8f、8fの相互に近接する側に上向係止片8b、8bを構成し、相互に遠い方に下向係止片8c、8cを構成する。また下向係止片8c、8cを長く、上向係止片8b、8bを下向係止片8c、8cより短く構成する。
【0052】
前記調節長孔8d、8dは、前記し、特に図3(e)に示すように、前記支持金具8を構成する金属板材の中央部より上方に配する。より詳しくは、各々前記上向係止片8b、8bの直上に、縦向きに長く構成するものである。また前記確定固定孔8e、8eは、前記し、同図に示すように、各々調節長孔8d、8dの上端付近に近接してその内側の位置に開口する。
【0053】
前記外装材の支持部の最上部用の外装材の支持部は、図2(a)及び図4(a)、(b)、(c)に示すように、前記調節支持ボルト4の先端に取り付ける結合板7と、該結合板7の前面に接合状態に固設する支持金具9とで構成したものである。結合板7は、符号を同一に付したように、基本的なタイプのそれと全く同様であり、違いは支持金具9にのみある。従って以下には支持金具9に関してのみ説明する。
【0054】
前記支持金具9は、同図に示すように、長方形状の金属板材で構成したものであり、両側端に正面側に向けて折り曲げた補強用の側板9a、9aを、上端に構成した一対の下向係止片9b、9bを、内部に開口した一対の縦向の調節長孔9c、9cを、それぞれ備えているものである。
【0055】
前記下向係止片9b、9bは、特に図4(a)、(b)、(c)に示すように、前記支持金具9を構成する金属板材の上端を前方に向かって水平に折曲し、張出部9dを構成し、更にその先端の左右二箇所に前記下向係止片9b、9bを構成する。これは、前記基本タイプの外装材の支持部に於ける下向係止片8c、8cと同様の長さに構成する。また前記調節長孔9c、9cは、特に図4(c)に示すように、支持金具9を構成する金属板材の高さ方向中央部付近に、前記下向係止片8c、8cの下方に相当する位置に位置させて構成する。
【0056】
前記外装材の支持部の最下部用の外装材の支持部は、図2(b)及び図5(a)、(b)、(c)に示すように、前記調節支持ボルト4の先端に取り付ける結合板7と、該結合板7の前面に接合状態に固設する支持金具10とで構成したものである。結合板7は、符号を同一に付したように、基本的なタイプ及び最上部用のそれらと全く同様であり、違いは支持金具10にのみある。従って以下には支持金具10に関してのみ説明する。
【0057】
前記支持金具10は、同図に示すように、長方形状の金属板材で構成したものであり、両側端に正面側に向けて折り曲げた補強用の側板10a、10aを、下端に構成した一対の上向係止片10b、10bを、内部に開口した一対の縦向の調節長孔10c、10cを、更に内部に開口した一個の確定固定孔10dを、それぞれ備えているものである。
【0058】
前記上向係止片10b、10bは、特に図5(a)、(b)、(c)に示すように、前記支持金具10を構成する金属板材の下端を前方に向かって水平に折曲し、張出部10eを構成し、更にその先端の左右二箇所に前記上向係止片10b、10bを構成する。これは、前記基本タイプの外装材の支持部に於ける上向係止片8b、8bと同様の高さ方向の長さに構成する。また前記調節長孔10c、10cは、特に図4(c)に示すように、支持金具10を構成する金属板材の高さ方向中央部付近に、前記上向係止片10b、10bの上方に相当する位置に位置させて構成する。更に又前記確定固定孔10dは、同図に示すように、支持金具10を構成する金属板材の下部中央、即ち、上記一対の調節長孔10c、10cの下端と上向係止片10b、10bの上端との幅方向及び高さ方向中間付近に開口する。
【0059】
従って、この実施例1の外装材取付具によれば、これを利用してRC造の建築物の壁面に大型タイル6を取り付けて、外壁を不陸なくかつ躯体1の表面との間に無用の広間隔を取らずに構成することができる。
【0060】
この外壁の構成に際して、予め対象のRC造の建築物の躯体1の表面に進入用空間1a、1a…を開口しておく。これらの進入用空間1a、1a…は、云うまでもなく、外装材取付具を取り付ける各部位、詳細には、その内、前記調節支持ボルト4の位置すべき部位に開口させておくべきものである。そして、これらの部位は、この実施例1では、縦横に配列される大型タイル6、6…の隅部が相互に近接し、目地が十字状をなす部位の中に位置させるものとする。詳細には、該目地の十字状をなす部分の内、水平線部の僅か上方の縦線部上の部位とする。
【0061】
また、これらの進入用空間1a、1a…は、前記したように、不陸の調節のための調節支持ボルト4の進退調節によってその後部が進入する深さを考慮してそれに適合する深さに形成する。なお、その深さは内部の鉄筋に到達しない程度のものである。
【0062】
この後、前記外装材取付具の取付部材を、図1、図2(a)、(b)に示すように、以上の進入用空間1aの開口部に相互の中心を一致させつつ躯体1の表面に固設する。まず、この実施例1では、大型タイル6の取付領域の最上部及び最下部以外では、図1に示すように、進入用空間1aを中心にその上下等間隔の位置にその用法に従ってアンカーボルト2を固設する。アンカーボルト2は、例えば、予め躯体1の該当部位に下孔を開口しておき、これにねじ込み又は打ち込んで固定する。次いで、取付板3を、前記進入用空間1aの前面に縦向きに配し、その結合孔3c、3cに前記アンカーボルト2、2を挿通させ、前面側から該アンカーボルト2、2にナット2a、2aを螺合し、該取付板3を進入用空間1aの前面で躯体1に固定する。このとき、該取付板3の裏面側には、前記のように、前記防水パッキン5を接合しておき、前記進入用空間1aの開口部周囲と該取付板3のこれとの対面部位との間に介在して、該進入用空間1a内への防水を図るようにしておく。
【0063】
なお、この状態で、図1に示すように、螺合支持部3aは、該進入用空間1a内に進入した状態となり、これが、該取付板3の躯体1への取り付けの邪魔になることはない。
なおまた、以上に於いて、前記取付板3は、進入用空間1aを挟んで上下に位置するアンカーボルト2、2で躯体1の表面に固設したが、該アンカーボルト2、2を左右に配して固定しても良いことは云うまでもない。
【0064】
またこの実施例1では、大型タイル6の取り付け領域の最上部及び最下部では、図2(a)、(b)に示すように、進入用空間1aを中心にその左右等間隔の位置にその用法に従ってアンカーボルト2を固設する。そのため、同図に示すように、取付板3は当然横向きに配されることになる。これ以外の点に関しては、先に説明した大型タイル6の取り付け領域の最上部及び最下部以外の領域に関して述べたところと全く同一である。
【0065】
こうして取付板3を躯体1の表面に取付固定した後、その中心の螺合支持部3aに螺合してある調節支持ボルト4を進退調節して、その先端の外装材の支持部を他の部位に取り付けた外装材取付具のそれと同一鉛直面内に位置するように調節する。当然、該鉛直面は、躯体1の表面との間隔が最も短くなるように設定しておく。なお、以上のようにして進退調節する調節支持ボルト4の後端側は、前記螺合支持部3aと同様に、躯体1表面に開口する進入用空間1a内に進入することになり、不都合を生じない。
【0066】
次いで、前記調節支持ボルト4の先端の外装材の支持部で、この実施例1では、大型タイル6を支持し、建築物の外装部を構成する。
【0067】
この実施例1では、図1及び図2(a)、(b)に示すように、前記結合板7を、その背面中央に配した結合ナット部7bで前記調節支持ボルト4の先端に螺合することにより結合してあり、前記のように、該調節支持ボルト4の進退状態を調節する際には、同時に、この結合板7を、同図に示すように、横長状態になるように設定する。
【0068】
この後、大型タイル6の取り付け領域の最上部及び最下部以外の領域では、図1に示すように、該結合板7に、支持金具8を高さを調節しながら接合固定する。詳細には、該支持金具8を、該結合板7に接合し、後者の結合孔7c、7cに前者の調節長孔8d、8dを一致させながら前者を昇降させて高さを調節し、該調節長孔8d、8d及び該結合孔7c、7cに前者からタッピングネジ8gをねじ込むことにより固定する。このように一応固定した後に、更に該支持金具8に開口した確定固定孔8e、8eからまたタッピングネジ8g、8gを挿入し、背後の結合板7にねじ込むことにより、該結合板7への支持金具8の取付状態を確定的に固定する。
【0069】
大型タイル6の取り付け領域の最上部の領域では、図2(a)に示すように、該結合板7に、支持金具9を高さを調節しながら接合固定する。詳細には、該支持金具9を、該結合板7に接合し、後者の結合孔7c、7cに前者の調節長孔9c、9cを一致させながら前者を昇降させて高さを調節し、該調節長孔9c、9c及び該結合孔7c、7cに前者からタッピングネジ9eをねじ込むことにより固定する。この場合は、該支持金具9に大型タイル6等の鉛直荷重がかからないので、この固定をこれ以上補強する必要はない。
【0070】
大型タイル6の取り付け領域の最下部の領域では、図2(b)に示すように、該結合板7に、支持金具10を高さを調節しながら接合固定する。詳細には、該支持金具10を、該結合板7に接合し、後者の結合孔7c、7cに前者の調節長孔10c、10cを一致させながら前者を昇降させて高さを調節し、該調節長孔10c、10c及び該結合孔7c、7cに前者からタッピングネジ10fをねじ込むことにより固定する。このように一応固定した後に、更に該支持金具10に開口した確定固定孔10dからまたタッピングネジ10fを挿入し、背後の結合板7にねじ込むことにより、該結合板7への支持金具10の取付状態を確定的に固定する。
【0071】
次いで、図1及び図2(a)、(b)に示すように、この実施例1では、該支持金具8、9、10を利用して大型タイル6を躯体1表面の前面に取り付ける。
支持金具8、10に構成してある張出部8f、10e上に上方の大型タイル6の下端を載せ、その先端の上向係止片8b、8b、10b、10bで該大型タイル6の下端を脱落しないように係止する。また支持金具8、9の張出部8f、9dの先端の下向係止片8c、8c、9b、9bで、下方の大型タイル6の上端を前方に倒れないように支持する。
【0072】
個々の大型タイル6は、その上端を上方の外装材取付具の下向係止片8c、8c、9b、9bの背後側に装入し、次いで、これを上方に持ち上げてその下端を下方の外装材取付具の上向係止片8b、8b、10b、10bの上端より高い位置まで引き上げ、そのまま該上向係止片8b、8b、10b、10bの上を通過させてその内側に装入し、該上向係止片8b、8b、10b、10bを先端に立ち上げている張出部8f、10e上に載せた状態とする。こうして、大型タイル6は、図1及び図2(a)、(b)に示すように、支持金具8、9、10で支持された状態となる。なお、以上の各大型タイル6の上端には、弾力性を持った合成ゴム製のスペーサ片6aを貼り付けておき、地震等の振動が生じた場合にも容易にガタツキを生じないようにしておく。
【0073】
このように取り付けられる大型タイル6は、前記したように、いずれの外装材取付具の外装材の支持部も全て同一鉛直面内に位置させるべく不陸の調節が行われているので、凹凸無く、同一鉛直面内に位置することとなる。また、前記のように、前記結合板7への前記支持金具8、10の取付状態が前記タッピングネジ8g、10fにより、確定的に固定されているため、地震等の揺れによってもこの確実な固定が阻害されることもない。そのため、大型タイル6の鉛直荷重を長年月の間受けていてもこれがズレ落ちるような心配もない。
【実施例2】
【0074】
この実施例2の外装材取付具は、図6に示すように、基本的に、RC造の建築物の躯体1の表面にアンカーボルト(固定手段)2、2によって当接固定する取付板3と、該取付板3の螺合支持部3aに表裏貫通状態に螺合し、その後端側を、裏面側のRC造の躯体1に形成した進入用空間1aに進退自在に進入させる調節支持ボルト4と、該調節支持ボルト4の先端側に構成した外装材の支持部とで構成したものであり、該外装材の支持部を、図6(a)、(b)、(c)及び図7(a)、(b)、(c)に示すように、結合板11と、多孔板12と、支持金具13とで構成したものである。従ってこの実施例2の外装材取付具は、実施例1のそれと外装材の支持部以外は全て同様であるから、以下には、異なっている外装材の支持部に関してのみ説明する。
【0075】
前記結合板11は、図6(a)、(b)に示すように、長方形状の金属板材の長手方向両側部に裏面側に直角に折曲してなる側板11a、11aを備え、裏面側の中央部に前記調節支持ボルト4の先端と螺合する結合ナット部11bを有し、更に長さ方向両端近傍に結合孔11c、11cを備えたものである。
【0076】
前記多孔板12は、図6(a)、(b)及び図7(a)、(b)、(c)に示すように、長方形の金属板材で構成した部材であり、その長さ方向の両側部に裏面側に直角に折り曲げて構成した脚部12a1と、該脚部12a1の下端から外方に向かって該多孔板12の本体と平行に張り出してなる接合脚板部12a2と、該接合脚板部12a2の外端から前記脚部12a1に平行にかつ正面側に立ち上がる補強板部12a3とからなる脚板部12aを備え、かつその本体部分には、この実施例2では、上から二番目の横一列を除いて、多数の横長長方形の角孔12b、12b…を縦横に配し、かつ該角孔12b、12b…には、各々その左右の側部縁間を連続する縁間連結片12b1を裏面側に膨らませた状態に配し、かつ該角孔12b、12b…を形成しなかった横一列の部分には、該角孔12b、12b…の横方向の配列に対応させて横長の結合長孔12c、12c…を配列形成し、横方向に隣接する角孔12b、12b間及び結合長孔12c、12c間には各1個の結合丸孔12dを開口したものである。
【0077】
また前記脚板部12aの接合脚板部2a2には、図7(a)に示すように、その長さ方向に直交する方向に長い調節長孔12eと、円形孔である確定固定孔12fとを、その長さ方向に沿って交互に配列しておくものとする。なお、該調節長孔12e、12e…は、前記結合板11にその結合孔11cに対応させつつ高さを調節しながらタッピングネジ12gで取り付け得るように開口したものであり、前記確定固定孔12fは、該調節長孔12e及びタッピングネジ12gで該結合板11に取り付けた後に、該結合板11にタッピングネジ12gで確定的に固定するためのものである。
【0078】
前記支持金具13は、図6(a)、(b)、(c)に示すように、長方形の金属板材で構成したものであり、最下部に一対の上向係止片13a、13aと一対の下向係止片13b、13bとを備え、これらより上方に、一対の横向の調節長孔13c、13cと3個の確定固定孔13d、13d、13dを備えているものである。
【0079】
前記上向係止片13a、13a及び下向係止片13b、13bは、図6(a)、(b)、(c)に示すように、前記支持金具13を構成する金属板材の最下部を前方に折り曲げて水平の張出部13eを構成し、その先端を上下に折り曲げて形成する。前記上向係止片13a、13aは、該張出部13eの両端側にそれぞれ直立状態に立ち上げて形成し、前記下向係止片13b、13bは、上記各上向係止片13a、13aの内側に垂下状態に立ち下げて形成する。以上の下向係止片13b、13bは、特に図6(a)、(c)に示すように、垂下長さを長く、上向係止片13a、13aの立ち上がり高さを該下向係止片13b、13bの垂下長さより短く構成する。
【0080】
前記調節長孔13c、13cは、前記し、特に図6(c)に示すように、前記支持金具13を構成する金属板材の中央部よりやや上方に、中央部を挟んで左右対称となるように配する。各調節長孔13c、13cは横長の孔とする。またまた前記確定固定孔13d、13d、13dは、同図に示すように、上記調節長孔13c、13cの間及びその外側の部位の各々に配置する。該確定固定孔13d、13d、13dは、この実施例2では、いずれも丸孔に構成したものである。
【0081】
前記調節長孔13c、13cは、支持金具13を前記多孔板12にその結合長孔12c又は結合丸孔12dに対応させつつ横方向の位置決めを調節しながらタッピングネジで取り付け得るように開口したものであり、また前記確定固定孔13d、13d、13dは、支持金具13を、該調節長孔13c、13c及びタッピングネジで該多孔板12に取り付けた後に、これらを通じて該多孔板12にタッピングネジをねじ込んで確定的に固定するためのものである。
【0082】
従って、この実施例2の外装材取付具によれば、当然、実施例1のそれと同様に、これを利用してRC造の建築物の壁面に大型タイル6を取り付けて、外壁を不陸なくかつ躯体1の表面との間に無用の広間隔を取らずに構成することができる。以下には、やはり、実施例1と異なっている外装材の支持部に関してのみ説明する。
【0083】
この実施例2の場合は、結合板11は、図6(a)に示すように、前記調節支持ボルト4を進退調節して不陸の調節を行った段階で、縦向きになるようにする。即ち、上下ではなく、左右両側に側板11a、11aが位置するように向きを設定する。この結合板11の調節支持ボルト4の先端への取り付けは、その結合ナット部11bに該調節支持ボルト4の先端をねじ込むことで行うのは云うまでもない。
【0084】
この後、該結合板11に高さ方向の位置関係を調節をしながら多孔板12を取り付け、更に該多孔板12に支持金具13を横方向の位置関係を調節しながら接合固定し、最後に大型タイル6を取り付ける。
【0085】
前記多孔板12は、図6(a)、(b)に示すように、前記両脚部12a1、12a1の下端に各々構成した接合脚板部12a2、12a2を、前記結合板11の前面上下に接合し、前者の調節長孔12e、12e…を該結合板11の結合孔11c、11c…に対応させながら上下にスライド調節し、適正な高さの位置で該調節長孔12e、12e…を通じてタッピングネジ12g、12g…を挿入し、該結合板11の結合孔11c、11c…にねじ込み、該結合板11に固定する。更にこの後、該多孔板12の接合脚板部12a2、12a2に開口してある確定固定孔12f、12f…からタッピングネジ12g、12g…を挿入し、背後の結合板11にねじ込んで多孔板12の以上の位置関係の取付状態を確定的に固定する。なお、該多孔板12の背後側では、前記縁間連結片12b1、12b1…の背面側に漏れ防止板12hを接合固定させておくこととする。この接合固定は接着剤によって行っておく。
【0086】
次いで、図6(a)、(b)に示すように、該多孔板12の前面に支持金具13を接合し、その二つの調節長孔13c、13cを多孔板12の本体に開口してある多数の結合長孔12c、12c…又は結合丸孔12d、12…のいずれかに対応させつつ左右に動かして横方向の位置関係を調節し、適正な位置で該調節長孔13c、13cを通じてタッピングネジ(図示していない)を挿入し、該多孔板12の該当する部位にねじ込んで固定する。この場合も、該支持金具13の以上の位置関係での取付状態を確定的に固定すべく、これに開口してある3個の確定固定孔13d、13d、13dからタッピングネジ(図示していない)を挿入し、背後の多孔板12にねじ込んでおく。
【0087】
次いで、この実施例2では、以上の支持金具13を利用して大型タイル6を躯体1表面の前面に取り付ける。この取り付けは、まず該支持金具13に構成してある張出部13e及び上向係止片13aで、上方の大型タイル6の下端を支持し、下方の大型タイル6の上端を下向係止片13bで支持することにより行う。
【0088】
個々の大型タイル6は、その上端を上方の支持金具13の下向係止片13b、13bの背後側に装入し、次いで、これを上方に持ち上げてその下端を下方の支持金具13の上向係止片13a、13aの上端より高い位置まで引き上げ、そのまま該上向係止片13a、13aの上を通過させてその内側に装入し、該上向係止片13a、13aを先端に立ち上げている張出部13e上に載せた状態とする。こうして、大型タイル6は、図6(a)に示すように、支持金具13で支持された状態となる。なお、以上の各大型タイル6の上端には、弾力性を持った合成ゴム製のスペーサ片6aを貼り付けておき、地震等の振動が生じた場合にも容易にガタツキを生じないようにしておく。
【0089】
なお、この場合は、以上のように、大型タイル6を支持金具13に支持させるに際し、該大型タイル6の裏面側に接着剤14を塗布しておき、該大型タイル6の裏面と多孔板12とを結合する。多孔板12の多数の角孔12b、12b…に該接着剤14が絡み、多孔板12との接着剤14の結合がより強固なものになる。このとき、前記したように、該多孔板12の背後には縁間連結片12b1、12b1…に固定した漏れ防止板12hが配してあるので、該接着剤14が背後側に無用に漏れ出す虞はない。
【0090】
このように取り付けられる大型タイル6、6…は、前記したように、いずれの外装材取付具の外装材の支持部も全て同一鉛直面内に位置させるべく不陸の調節が行われているので、凹凸無く、同一鉛直面内に位置することになる。また、前記のように、前記結合板11への前記多孔板12の取付状態及び該多孔板12への前記支持金具13の取付状態がそれぞれ前記タッピングネジ12g等により、確定的に固定されているため、地震等の揺れによってもこの確実な固定が阻害されることはない。そのため、大型タイル6等の鉛直荷重を長年月の間受けてもこれがズレ落ちるような心配もない。また左右に動いてしまうような虞もない。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】実施例1の最上部及び最下部以外用の外装材取付具とこれで構成した大型タイルによる外壁の断面図。
【図2】(a)は実施例1の最上部用の外装材取付具とこれで構成した大型タイルによる外壁の断面図、(b)は実施例1の最下部用の外装材取付具とこれで構成した大型タイルによる外壁の断面図。
【図3】(a)は実施例1の最上部及び最下部以外用の外装材取付具を分解した状態の主要部品の分解側面図、(b)は結合板の背面図、(c)は取付板の正面図、(d)は支持金具の平面図、(e)は支持金具の正面図。
【図4】(a)は実施例1の最上部用の外装材取付具を分解した状態の主要部品の分解側面図、(b)は支持金具の平面図、(c)は支持金具の正面図。
【図5】(a)は実施例1の最下部用の外装材取付具を分解した状態の主要部品の分解側面図、(b)は支持金具の平面図、(c)は支持金具の正面図。
【図6】(a)は実施例2の最上部及び最下部以外用の外装材取付具とこれで構成した大型タイルによる外壁の部分断面図、(b)は実施例2の最上部及び最下部以外用の外装材取付具とこれで構成した大型タイルによる外壁の外装材の支持部側のみの平面図、(c)は支持金具の正面図。
【図7】(a)は多孔板の一部切欠正面図、(b)は多孔板の側面図、(c)は多孔板の一部切欠平面図。
【符号の説明】
【0092】
1 躯体
1a 進入用空間
2 アンカーボルト
2a ナット
3 取付板
3a 螺合支持部
3b 側板
3c 結合孔
4 調節支持ボルト
5 防水パッキン
6 大型タイル
6a スペーサ片
7 結合板
7a 側板
7b 結合ナット部
7c 結合孔
8 支持金具
8a 側板
8b 上向係止片
8c 下向係止片
8d 調節長孔
8e 確定固定孔
8f 張出部
8g タッピングネジ
9 支持金具
9a 側板
9b 下向係止片
9c 調節長孔
9d 張出部
9e タッピングネジ
10 支持金具
10a 側板
10b 上向係止片
10c 調節長孔
10d 確定固定孔
10e 張出部
10f タッピングネジ
11 結合板
11a 側板
11b 結合ナット部
11c 結合孔
12 多孔板
12a 脚板部
12a1 脚部
12a2 接合脚板部
12a3 補強板部
12b 角孔
12b1 縁間連結片
12c 結合長孔
12d 結合丸孔
12e 調節長孔
12f 確定固定孔
12g タッピングネジ
12h 漏れ防止板
13 支持金具
13a 上向係止片
13b 下向係止片
13c 調節長孔
13d 確定固定孔
13e 張出部
14 接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
RC造の建築物の躯体表面に固定手段によって当接固定する取付部材と、
該取付部材の螺合支持部に表裏貫通状態に螺合し、その後端側を、裏面側のRC造の躯体に形成した進入用空間に進退自在に進入させる調節支持ボルトと、
該調節支持ボルトの先端側に構成した外装材の支持部と、
で構成した外装材取付具。
【請求項2】
前記螺合支持部を裏面側に突出状態に構成した請求項1の外装材取付具。
【請求項3】
前記外装材の支持部を、該調節支持ボルトの先端に取り付けた結合板と、該結合板の前面に接合状態に固設する支持金具であって、タイル類を係止する係止片を構成した支持金具とで構成し、
かつ該支持金具に、前記結合板にその結合孔に対応させつつ高さを調節しながらネジ類で取り付け得るように開口した高さ方向に長い調節長孔と、該調節長孔とネジ類で該結合板に取り付けた後に、該結合板にタッピングネジで確定的に固定するための確定固定孔とを構成した請求項1又は2の外装材取付具。
【請求項4】
前記外装材の支持部を、該調節支持ボルトの先端に取り付けた結合板と、該結合板の前面に間隔をあけて固設すべく脚板部を備え、かつ全面に配列された複数の孔を有し、該複数の孔の各々に裏面側に突き出した縁間連結片を備えた多孔板と、該多孔板に接合状態に固設する支持金具であって、タイル類を係止する係止片を構成した支持金具とで構成し、
更に該多孔板の脚板部に、前記結合板にその結合孔に対応させつつ高さを調節しながらネジ類で取り付け得るように開口した高さ方向に長い調節長孔と、該調節長孔及びネジ類で該結合板に取り付けた後に、該結合板にタッピングネジで確定的に固定するための確定固定孔とを構成し、
前記支持金具に、前記多孔板にその結合孔に対応させつつ横方向の位置決めを調節しながらネジ類で取り付け得るように開口した横方向に長い調節長孔と、該調節長孔及びネジ類で該多孔板に取り付けた後に、該多孔板にタッピングネジで確定的に固定するための確定固定孔とを構成した請求項1又は2の外装材取付具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−202255(P2008−202255A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−37253(P2007−37253)
【出願日】平成19年2月18日(2007.2.18)
【出願人】(500332984)株式会社ヒロコーポレーション (15)
【Fターム(参考)】