説明

外装用下地パネル、下地パネル取付工法及びタイル壁

【課題】パネルの木端面同士を著しく近接させたりあるいは突き合わせるようにして壁面に取り付けた場合でも金属板のせり出し等の変形が防止される外装用下地パネル、下地パネルの取付工法及びタイル壁を提供する。
【解決手段】外装用下地パネル10は長方形であり、裏面が発泡樹脂製の発泡断熱材11よりなり、前面が金属板12よりなるものである。この外装用下地パネル10の4辺において、金属板12が発泡断熱材11の端縁よりも後退している。この外装用下地パネル10の長辺が水平方向となるようにして、この外装用下地パネル10の発泡断熱材11を既存壁21の表面に当てる。そして、アンカー22によって外装用下地パネル10を壁面に取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は壁面をタイル張り壁面とする際に使用される外装用下地パネルと、この外装用下地パネルの取付工法及びタイル壁とに関するものであり、特に金属板と発泡断熱材とからなる外装用下地パネルと、この外装用下地パネルの取付工法及びタイル壁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
壁面をタイル張り壁面とする際に使用される外装用下地パネルとして、金属板と発泡断熱材とを有するものが用いられることがある。
【0003】
特開平11−223005号公報には、金属板よりなる表皮材と発泡断熱材よりなる裏打材と、該裏打材の裏面に固着されたアルミライナー紙等のシートを備えたサイディングパネルが記載されている。
【0004】
このサイディングパネルの前面にはタイルが固着されている(第0019、0020段落)。
【0005】
このサイディングパネルは、上下の端面が表皮材で覆われている(例えば図4)。また、左右の端面では表皮材と裏打材とが面一状となっている。
【0006】
特開平9−13585号公報には、矩形金属板の4辺から側板を起立させて浅箱型とし、その裏側にグラスウール等の断熱材を充填した屋根材等の建築板が記載されている(第0018〜0020段落)。なお、同号公報には、その上にタイル張りを施す点の記載はない。
【特許文献1】特開平11−223005号公報
【特許文献2】特開平9−13585号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
I.上記特開平11−223005号公報及び特開平9−13585号公報のパネルにあっては、いずれも表皮材を構成する金属板がパネル前面の全端縁にまで達しているか、あるいはさらに側面(木端面)まで覆うようになっている。
【0008】
かかる構成のパネルを壁面に突き付けるようにして取り付け施工した場合、金属板に熱膨張が生じたり、建築物躯体の変形によりパネル同士が押し付けられたときには、金属板同士が直に押し合うようになるところから、金属板が前方へせり出す等の変形を起すことがある。
【0009】
かかる金属板の変形を防ぐためには、パネル間に比較的大きな間隙をあける必要があるが、断熱性の低下、雨水や虫の侵入等の弊害が生じる。
【0010】
本発明は、上記従来の問題点を解決し、パネルの木端面同士を著しく近接させたりあるいは突き合わせるようにして壁面に取り付けた場合でもパネルのせり出し等の変形が防止される外装用下地パネルと、この外装用下地パネルの取付工法を提供することを目的とする。
【0011】
II.本発明は、出隅において一方の外装用下地パネルの側縁背面に他方の外装用下地パネルの側端面を当てがうようにして取り付けた場合において該他方の外装用下地パネルが該一方の外装用下地パネルを熱膨張等により押圧したときでも、該一方の外装用下地パネルが前方へ押し出されることがないようにすることができるタイル壁を提供することを目的とする。
【0012】
本発明は、また、その一態様において、かかるタイル壁を構築するための下地パネル取付工法を提供することを目的とする。
【0013】
III.さらに、本発明は、さらに別の一態様において、出隅に施工する場合、段差を生じさせないように容易に外装用下地パネルを取付施工することができる下地パネル取付工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1の外装用下地パネルは、表側の金属板と、裏側の発泡断熱材とを有する方形の外装用下地パネルにおいて、該外装用下地パネルの4端面において該発泡断熱材の端面全体が露呈しており、少なくとも2辺において該金属板が発泡断熱材の端縁よりも後退していることを特徴とするものである。
【0015】
請求項2の外装用下地パネルは、請求項1において、4辺において該金属板が該発泡断熱材の端縁よりも後退していることを特徴とするものである。
【0016】
請求項3の外装用下地パネルは、請求項1において、該外装用下地パネルは正方形であり、1対の平行辺において該金属板が該発泡断熱材の端縁よりも後退していることを特徴とするものである。
【0017】
請求項4の外装用下地パネルは、請求項1において、該金属板のうち該発泡断熱材の端縁よりも後退している辺と対向する少なくとも1辺が、該発泡断熱材の端縁よりも突出して突出片を形成していることを特徴とするものである。
【0018】
請求項5の外装用下地パネルは、請求項4において、該外装用下地パネルは長方形であり、一方の長辺において該突出片は該発泡断熱材の端縁から長さaだけ突出しており、他方の長辺において該金属板が該発泡断熱材の端縁から長さbだけ後退しており、該突出長さaは該後退長さbよりも小さいことを特徴とするものである。
【0019】
請求項6の下地パネル取付工法は、請求項2に記載の外装用下地パネルを壁面に取り付ける工法であって、一部の外装用下地パネルにあっては、一端縁を切断し、この端縁を未切断の外装用下地パネルに隣接配置することを特徴とするものである。
【0020】
請求項7の下地パネル取付工法は、請求項3に記載の外装用下地パネルを壁面に取り付ける工法であって、金属板が後退した端縁を水平方向とした該外装用下地パネルに隣接する外装用下地パネルにあっては、金属板が後退した端縁を上下方向となるように外装用下地パネルを壁面に配置することを特徴とするものである。
【0021】
請求項8の下地パネル取付工法は、請求項4に記載の外装用下地パネルを壁面に取り付ける工法であって、前記突出片を、隣接する外装用下地パネルの突出片と反対側の発泡断熱材上に重ねるようにして外装用下地パネルを壁面に取り付けることを特徴とするものである。
【0022】
請求項9の下地パネル取付工法は、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の外装用下地パネルを壁面に取り付ける工法であって、出隅を構成するように交叉する第1及び第2の壁面にそれぞれ該外装用下地パネルを取り付け、第1の壁面に取り付けた第1の外装用下地パネルの一側縁を出隅から突出させ、第2の壁面に取り付けた第2の外装用下地パネルの側端面を該第1の外装用下地パネルの裏側に配置し、該第1の外装用下地パネルの該一側端の発泡断熱材が該第2の外装用下地パネルの発泡断熱材の前面よりも突出する場合に、この突出した部分を切除することを特徴とするものである。
【0023】
請求項10の下地パネル取付工法は、請求項6ないし9のいずれか1項において、該壁面は既存壁面であることを特徴とするものである。
【0024】
請求項11のタイル壁は、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の外装用下地パネルにタイルを貼着したことを特徴とするものである。
【0025】
請求項12のタイル壁は、出隅を構成するように交叉する第1及び第2の壁面にそれぞれ該外装用下地パネルを取り付け、該外装用下地パネルにタイル張りしてなるタイル壁において、第1の壁面に取り付けた第1の外装用下地パネルの一側縁を出隅から突出させ、第2の壁面に取り付けた第2の外装用下地パネルの側端面を該第1の外装用下地パネルの裏側に配置したタイル壁であって、各外装用下地パネルは請求項1ないし5のいずれか1項に記載の外装用下地パネルであり、該第2の外装用下地パネルの側端縁のうち第1の外装用下地パネルに沿う部分にあっては、金属板が該側端縁から後退していることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0026】
請求項1の外装用下地パネル及び請求項11のタイル壁にあっては、外装用下地パネルの少なくとも2辺において金属板が発泡断熱材の端縁よりも後退している。このため、外装用下地パネルを複数枚並列させて壁面にアンカーで固定する際に、隣り合う外装用下地パネル同士の対向する1対の辺のうち少なくとも1辺を、金属板が発泡断熱材の端縁よりも後退している辺とするように並列させることにより、金属板同士の間に間隔をあけることができる。これにより、金属板が熱膨張したとしても、金属板同士が押圧し合うことが解消され、外装用下地パネルにせり出し等の変形が生じることが防止される。
【0027】
なお、発泡断熱材は金属板と比べて熱膨張係数が小さく、かつ弾性変形するため、発泡断熱材同士が押圧し合っても、外装用下地パネルにせり出し等の変形が生じることはない。
【0028】
請求項2の外装用下地パネル及び請求項6の下地パネル取付工法にあっては、4辺において金属板が発泡断熱材の端縁よりも後退している。このため、隣り合う金属板同士が熱膨張しても押圧し合うことがない。また、外装用下地パネルの一端縁を切断し、この端縁を未切断の外装用下地パネルに隣接配置した場合、この切断された一端縁において金属板は発泡断熱材と面一となるが、この外装用下地パネルと隣接配置している外装用下地パネルにおける該一端縁と対向する端縁は金属板が発泡断熱材の端縁よりも後退しているため、これら金属板同士の間には間隔があいている。従って、これら隣接配置されている金属板が互いに熱膨張したとしても、金属板同士が押圧し合うことが防止される。また、外装用下地パネルの一端縁を切断することにより外装用下地パネルを所望の形状にすることができるため、予め異形の外装用下地パネルを製造する必要がなく、外装用下地パネルの製造コストが低くなる。
【0029】
請求項3の外装用下地パネル及び請求項7の下地パネル取付工法にあっては、該外装用下地パネルは正方形であり、1対の平行辺において該金属板が該発泡断熱材の端縁よりも後退している。この外装用下地パネルを複数枚並列させて壁面にアンカーで固定する際に、金属板が後退した端縁を水平方向とした該外装用下地パネルに隣接する外装用下地パネルにあっては、金属板が後退した端縁を上下方向となるように外装用下地パネルを壁面に配置する。これにより、隣り合う外装用下地パネルの対向する端縁の一方において必ず金属板が発泡断熱材の端縁よりも後退し、隣り合う金属板同士の間に間隔があくようになるため、金属板が熱膨張したとしても金属板同士が押圧し合うことが防止される。
【0030】
請求項4の外装用下地パネル及び請求項8の下地パネル取付工法にあっては、金属板のうち該発泡断熱材の端縁よりも後退している辺と対向する少なくとも1辺が、該発泡断熱材の端縁よりも突出して突出片を形成している。この突出片を、隣接する外装用下地パネルの突出片と反対側の発泡断熱材上に重ねるようにして外装用下地パネルを壁面に取り付ける。これにより、突出片によって外装用下地パネル同士の境目を覆い、この境目への水分や虫の侵入が防止される。
【0031】
請求項5の外装用下地パネルにあっては、外装用下地パネルは長方形であり、一方の長辺において突出片は発泡断熱材の端縁から長さaだけ突出しており、他方の長辺において該金属板が該発泡断熱材の端縁から長さbだけ後退している。この突出片によって、隣り合う外装用下地パネルの長辺同士の境目を覆うことにより、この境目への水分の浸入等が防止される。また、突出長さaは後退長さbよりも小さいことから、金属板が熱膨張しても金属板同士が接触して押圧し合うことが防止される。
【0032】
請求項9の下地パネル取付工法にあっては、第1の外装用下地パネルの一側端の発泡断熱材が第2の外装用下地パネルの発泡断熱材の前面よりも突出する場合に、この突出した部分を切除する。この突出する辺にあっては、金属板が発泡断熱材の端縁よりも後退しており、金属板は存在しない。このため、この突出した部分を容易に切除することができる。
【0033】
請求項10の通り、本発明の下地パネル取付工法にあっては、壁面は既存壁面であってもよい。この場合であっても、外装用下地パネルの裏側が発泡断熱材よりなるため、既存壁面の凹凸を吸収することが可能となる。
【0034】
請求項12のタイル壁にあっては、第1の壁面に取り付けた第1の外装用下地パネルの一側縁を出隅から突出させ、第2の壁面に取り付けた第2の外装用下地パネルの側端面を該第1の外装用下地パネルの裏側に配置する。この際、第2の外装用下地パネルの側端面のうち、第1の外装用下地パネルの裏側に配置される側端面を、金属板が発泡断熱材よりも後退している側端面とすることにより、第2の外装用下地パネルの金属板が熱膨張したとしてもこの金属板が第1の外装用下地パネルの裏側を押圧することが防止される。このため、第1の外装用下地パネルが第1の壁面からせり出すことが防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下に、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。第1図は本発明の実施の形態に係る外装用下地パネルの斜視図、第2図は第1図の外装用下地パネルの取付工法を説明する断面図、第3図は第1図の外装用下地パネルの取付工法を説明する正面図である。
【0036】
外装用下地パネル10は、長方形であり、裏面が発泡樹脂製の発泡断熱材11よりなり、前面が金属板12よりなるものである。これら発泡断熱材11と金属板12とは樹脂層13を介して接着されている。なお、この金属板12は、アルミ板や鋼板などよりなる。
【0037】
この外装用下地パネルの4辺において、金属板12が発泡断熱材11の端縁よりも後退している。
【0038】
次に、この外装用下地パネル10の取付工法を第2,3図を参照して説明する。
【0039】
鉄筋コンクリート躯体(以下、RC躯体と記載する。)20の外面に、モルタル等よりなる既存壁21が設けられている。なお、本実施の形態では既存の建物の外壁に外装用下地パネル10を別途取り付けるため、RC躯体20に既存壁21が設けられているが、建物の新築時に外装用下地パネル10を取り付ける場合等のように、RC躯体20に既存壁21が設けられておらず、RC躯体20に直に外装用下地パネル10が取り付けられてもよい。
【0040】
この外装用下地パネル10の長辺が水平方向となるようにして、この外装用下地パネル10の発泡断熱材11を既存壁21の表面に当てる。そして、該外装用下地パネル10から既存壁21及びRC躯体20にわたってドリルビットによって穿孔し、該外装用下地パネル10に貫通孔10aを設けると共に既存壁21及びRC躯体20にアンカー穴20aを設ける。
【0041】
次に、該貫通孔10aを通して該アンカー穴20aにアンカー22を打ち込み、このアンカー22にアンカーボルト23を螺じ込む。これにより、外装用下地パネル10が壁面に取り付けられる。
【0042】
その後、この外装用下地パネル10の隣りに別の外装用下地パネル10を並べて当接させ、上記と同様にしてこの外装用下地パネル10を壁面に取り付ける。
【0043】
第3図の通り、外装用下地パネル10を既存壁21の左端から右端に向って取り付けていく場合、既存壁21の右端における最後の1枚を取り付けるためのスペースの左右方向長さLが、外装用下地パネル10の長辺よりも短い場合がある。この場合、外装用下地パネル10をその長辺の長さがLとなるように切除して切断パネル10Aとし、この切断パネル10Aを上記スペースに取り付ける。この切断パネル10Aを取り付ける際、切断パネル10Aの切断面が左隣の外装用下地パネル10と隣接し、切断面と対向する辺が既存壁21の右端に倣うようにする。
【0044】
このようにして壁面に複数枚の外装用下地パネル10を並列させて取り付けた後、これら外装用下地パネル10の金属板12の表面に弾性接着剤26を塗布し、この弾性接着剤26を介してタイル25を外装用下地パネル10に張り付ける。
【0045】
本実施の形態に係る外装用下地パネル10と、この外装用下地パネル10の取付工法にあっては、外装用下地パネル10を複数枚並列させて既存壁21に取り付ける際に、隣り合う発泡断熱材11同士を当接させる。各下地パネル10の金属板12は、4辺において発泡断熱材11の端縁よりも後退しているため、金属板12同士の間には間隔があいている。この間隔は、温度の変化により金属板12が熱膨張したとしても、金属板12同士が当接しない大きさとなっており、金属板12同士が押圧して外装用下地パネル10がせり出す等の変形を生じることが防止される。なお、発泡断熱材11は金属板12と比べて熱膨張係数が小さく、かつ弾性変形するため、温度変化があっても発泡断熱材11同士が押圧して外装用下地パネル10がせり出すことはない。
【0046】
また、切断パネル10Aの切断された一端縁において金属板12は発泡断熱材11と面一となるが、この切断パネル10Aと隣接配置している外装用下地パネル10における該一端縁と当接する端縁は、金属板12が発泡断熱材11の端縁よりも後退しているため、これら金属板12同士には間隔があいている。この間隔を、これら隣接配置されている金属板12が熱膨張したとしても、金属板12同士が押圧することが防止される大きさとしておくことにより、下地パネルのせり出し等の変形が防止される。即ち、この場合、外装用下地パネル10の短辺の各々において、金属板12が発泡断熱材11の端縁よりも後退している長さは、金属板12の端縁が熱膨張によって移動(伸長)すると想定される距離の2倍以上としておく。これにより、第3図の通り切断パネル10Aの切断端縁と外装用下地パネル10の端縁とを当接させても、これら金属板12,12が熱膨張したときに接触して押圧し合うことが防止される。
【0047】
なお、第3図の既存壁21の右端が入隅となっており、該右端から紙面の上側に第2の既存壁が存在する場合であっても、切断パネル10Aの右端は金属12が発泡断熱材11の端縁よりも後退しているため、この切断パネル10Aの金属板12と第2の既存壁とが押圧し合うことはない。
【0048】
この実施の形態では、外装用下地パネル10の一端縁を切断することにより外装用下地パネル10を所望の形状にすることができるため、予め異形の外装用下地パネルを製造する必要がなく、外装用下地パネルの製造コストが低くなる。
【0049】
本実施の形態の外装用下地パネル10にあっては、4辺において金属板12が発泡断熱材11の端縁よりも後退しているため、作業時に外装用下地パネル10の上下方向の向きを考慮する必要がなく、作業効率が向上する。
【0050】
第4図(a)は本発明の異なる実施の形態に係る外装用下地パネルの斜視図、第4図(b)は第4図(a)の外装用下地パネルを既存壁に取り付ける工程を説明する正面図である。
【0051】
外装用下地パネル10Bは正方形であり、裏面が発泡断熱材11よりなり、前面が金属板12よりなるものである。これら発泡断熱材11と金属板12とは樹脂層13を介して接着されている。この金属板12は、アルミ板や鋼板などよりなる。
【0052】
この外装用下地パネル10Bの1対の平行辺において、該金属板12が該発泡断熱材11の端縁よりも後退している。他の1対の平行辺において、金属板12と発泡断熱材11の端縁は面一となっている。
【0053】
次に、この外装用下地パネル10Bの取付工法を第4図(b)を参照して説明する。
【0054】
RC躯体の外面に、モルタル等よりなる既存壁21が設けられている。先ず、この外装用下地パネル10Bの発泡断熱材11を既存壁21の表面に当てる。そして、図示は省略するが、第2図と同様に、該外装用下地パネル10Bから既存壁21及びRC躯体にわたってドリルビットによって穿孔し、該外装用下地パネル10Bに貫通孔を設けると共に既存壁21及びRC躯体にアンカー穴を設ける。次に、該貫通孔を通して該アンカー穴にアンカーを打ち込み、このアンカーにアンカーボルトを螺じ込む。これにより、外装用下地パネル10Bが壁面に取り付けられる。
【0055】
その後、この外装用下地パネル10Bの隣りに別の外装用下地パネル10Bを並べて当接させ、上記と同様にしてこの外装用下地パネル10Bを壁面に取り付ける。この際、第4図(b)の通り、金属板12が後退した端縁を水平方向とした該外装用下地パネル10Bに隣接する外装用下地パネル10Bにあっては、金属板12が後退した端縁を上下方向とする。以下、同様に、金属板12が後退した端縁を上下方向とした該外装用下地パネルと、金属板が後退した端縁を水平方向とした下地パネルとを交互に取り付ける。
【0056】
このようにして壁面に複数枚の外装用下地パネル10Bを並列させて取り付けた後、図示は省略するが、第2図と同様に、これら外装用下地パネル10Bの金属板12の表面に弾性接着剤を塗布し、この弾性接着剤を介してタイルを外装用下地パネル10Bに張り付ける。
【0057】
本実施の形態に係る外装用下地パネル10Bと、この外装用下地パネル10Bの取付工法にあっては、隣り合う外装用下地パネル10Bの当接し合う端縁の一方において必ず金属板12が発泡断熱材11の端縁よりも後退し、隣り合う金属板12同士に間隔があいているため、金属板12が熱膨張したとしても金属板12同士が押圧し合うことが防止される。
【0058】
なお、金属板12が発泡断熱材11の端縁よりも後退している長さは、金属板12の端縁が熱膨張によって移動すると想定される距離の2倍以上であることが好ましい。この場合、隣り合う金属板12,12が熱膨張しても、金属板12,12同士が接触して押圧し合うことが防止される。
【0059】
第5図(a)は本発明のさらに異なる実施の形態に係る外装用下地パネルの斜視図、第5図(b)は第5図(a)の外装用下地パネルの取付工法を説明する断面図、第6図は隣接する外装用下地パネルに跨って防水テープを貼着する方法を説明する斜視図である。
【0060】
外装用下地パネル10Cは長方形であり、裏面が発泡断熱材11よりなり、前面が金属板12よりなるものである。これら発泡断熱材11と金属板12とは樹脂層13を介して接着されている。この金属板12は、アルミ板や鋼板などよりなる。
【0061】
この外装用下地パネル10Cの1の長辺(第5図(a)における上辺)及び1対の短辺において、該金属板12が該発泡断熱材11の端縁よりも後退している。また、他の長辺(第5図(a)における下辺)において、該金属板12が該発泡断熱材11の端縁よりも突出して突出片12aを形成している。
【0062】
第5図(a)の通り、突出片12aは発泡断熱材の下側の長辺から長さaだけ突出しており、また金属板12の上辺は発泡断熱材11の上辺から長さbだけ後退している。該突出長さaは該後退長さbよりも小さくなっている。
【0063】
次に、この外装用下地パネル10Cの取付工法を第5図(b)及び第6図を参照して説明する。
【0064】
RC躯体20の外面に、モルタル等よりなる既存壁21が設けられている。この外装用下地パネル10Cの突出片12aを有する側が下側となるようにして、この外装用下地パネル10Cの発泡断熱材11を既存壁21の表面に当てる。そして、該外装用下地パネル10Cから既存壁21及びRC躯体20にわたってドリルビットによって穿孔し、該外装用下地パネル10Cに貫通孔10aを設けると共に既存壁21及びRC躯体20にアンカー穴20aを設ける。次に、該貫通孔10aを通して該アンカー穴20aにアンカー22を打ち込み、このアンカー22にアンカーボルト23を螺じ込む。これにより、外装用下地パネル10Cが壁面に取り付けられる。
【0065】
その後、この外装用下地パネル10Cの上側の木端面に上段側の外装用下地パネル10Cを当接させ、上記と同様にしてこの外装用下地パネル10Cを壁面に取り付ける。この際、第5図(b)の通り、上段側の外装用下地パネル10Cの突出片12aを、下段側の外装用下地パネル10Cの突出片12aと反対側の発泡断熱材11上に重ねるようにして外装用下地パネル10Cを壁面に取り付ける。
【0066】
このようにして壁面に複数枚の外装用下地パネル10Cを取り付けた後、第6図の通り、左右に隣接する外装用下地パネル10Cの金属板12に跨って防水テープ14を貼着する。次に、これら外装用下地パネル10Cの金属板12の表面に弾性接着剤26を塗布し、この弾性接着剤26を介してタイル25を外装用下地パネル10Cに張り付ける。
【0067】
本実施の形態に係る外装用下地パネル10Cと、この外装用下地パネル10Cの取付工法にあっては、突出片12aを、隣接する外装用下地パネル10Cの突出片12aと反対側の発泡断熱材11上に重ねるようにして外装用下地パネル10Cを壁面に取り付けることにより、突出片12aが外装用下地パネル10C同士の境目を覆う。このため、この境目への水分や虫の侵入が防止される。
【0068】
また、突出長さaは後退長さbよりも小さいことから、金属板12が熱膨張しても金属板12同士が接触して押圧し合うことが防止される。
【0069】
なお、この後退長さbと突出長さaとの差(b−a)は、突出片12a及びこの突出片12aと対向する金属板12の上辺が熱膨張によって移動すると想定される距離の合計以上であることが好ましい。この場合、上段側と下段側の金属板12,12が熱膨張しても、これら金属板12,12同士が押圧し合うことが防止される。
【0070】
第7図(a)は本発明の別の実施の形態に係るタイル壁及び下地パネル取付工法を説明する斜視図、第7図(b)は第7図(a)の水平断面図、第8図はこの下地パネル取付工法を説明する斜視図である。
【0071】
本実施の形態で用いられる外装用下地パネル10は第1図の外装用下地パネル10と同一である。
【0072】
第1の壁面20fと第2の壁面20sとが直角に交叉し、出隅を構成している。これら第1の壁面20fと第2の壁面20sとはRC躯体20よりなっている。
【0073】
これら第1及び第2の壁面20f,20sにそれぞれ該外装用下地パネル10を取り付ける。このとき、第1の壁面20fに取り付ける第1の外装用下地パネル10(10f)の一側縁を出隅から突出させ、第2の壁面20sに取り付ける第2の外装用下地パネル10(10s)の側端面を該第1の外装用下地パネル10fの裏側に配置する。
【0074】
そして、これら外装用下地パネル10f,10sから第1の壁面20f及び第2の壁面20sにドリルビットによって穿孔し、該外装用下地パネル10f,10sに貫通孔10aを設けると共に第1の壁面20f及び第2の壁面20sにアンカー穴20aを設ける。次に、該貫通孔10aを通して該アンカー穴20aにアンカー22を打ち込み、このアンカー22にアンカーボルト23を螺じ込む。これにより、第1、第2の外装用下地パネル10f,10sが第1、第2の壁面20f,20sに取り付けられる。
【0075】
このようにして壁面20f,20sに外装用下地パネル10f,10sを取り付けた後、図示は省略するが、第2図及び第5図(b)と同様に、これら外装用下地パネル10f,10sの金属板12の表面に弾性接着剤を塗布し、この弾性接着剤を介してタイルを外装用下地パネル10f,10sに張り付ける。
【0076】
本実施の形態にあっては、第2の外装用下地パネル10sの側端面が第1の外装用下地パネル10fの裏側に配置されているが、該側端面において金属板12が発泡断熱材11の端縁よりも後退している。このため、この第2の外装用下地パネル10sの金属板12が熱膨張したとしてもこの金属板12が第1の外装用下地パネル10fの裏側を押圧することが防止される。このため、第1の外装用下地パネル10fが第1の壁面20fからせり出すことが防止される。
【0077】
なお、第8図の通り、RC躯体20が若干傾いている等の原因によって第1の外装用下地パネル10fの一側端の発泡断熱材11が第2の外装用下地パネル10sの発泡断熱材11の前面よりも突出する場合、この突出した部分をカッターナイフ30等によって切除し、下地パネル10fの端面と隣接下地パネル10sの前面とを揃える。この下地パネル10fにあっては、この突出する辺において、金属板12が発泡断熱材11の端縁よりも後退していることから、この突出した部分には金属板12が存在しない。このため、この突出した部分をカッターナイフ30等によって容易に切除することができる。
【0078】
上記実施の形態はいずれも本発明の一例であり、本発明は図示以外の形態をもとりうる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】実施の形態に係る外装用下地パネルの斜視図である。
【図2】図1の外装用下地パネルの取付工法を説明する断面図である。
【図3】図1の外装用下地パネルの取付工法を説明する正面図である。
【図4】(a)は異なる実施の形態に係る外装用下地パネルの斜視図であり、(b)は(a)の外装用下地パネルの取付工法を説明する正面図である。
【図5】(a)はさらに異なる実施の形態に係る外装用下地パネルの斜視図であり、(b)は(a)の外装用下地パネルの取付工法を説明する断面図である。
【図6】図5の外装用下地パネルに跨って防水テープを貼着する方法を説明する斜視図である。
【図7】(a)は別の実施の形態に係るタイル壁及び下地パネル取付工法を説明する斜視図であり、(b)は(a)の水平断面図である。
【図8】図7の下地パネル取付工法を説明する斜視図である。
【符号の説明】
【0080】
10,10B,10C 外装用下地パネル
10A 切断パネル
10a 貫通孔
10f 第1の外装用下地パネル
10s 第2の外装用下地パネル
11 発泡断熱材
12 金属板
12a 突出片
13 樹脂層
14 防水テープ
20 RC躯体
20a アンカー穴
20f 第1の壁面
20s 第2の壁面
21 既存壁
22 アンカー
23 アンカーボルト
25 タイル
26 弾性接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表側の金属板と、裏側の発泡断熱材とを有する方形の外装用下地パネルにおいて、
該外装用下地パネルの4端面において該発泡断熱材の端面全体が露呈しており、
少なくとも2辺において該金属板が発泡断熱材の端縁よりも後退していることを特徴とする外装用下地パネル。
【請求項2】
請求項1において、4辺において該金属板が該発泡断熱材の端縁よりも後退していることを特徴とする外装用下地パネル。
【請求項3】
請求項1において、該外装用下地パネルは正方形であり、1対の平行辺において該金属板が該発泡断熱材の端縁よりも後退していることを特徴とする外装用下地パネル。
【請求項4】
請求項1において、該金属板のうち該発泡断熱材の端縁よりも後退している辺と対向する少なくとも1辺が、該発泡断熱材の端縁よりも突出して突出片を形成していることを特徴とする外装用下地パネル。
【請求項5】
請求項4において、該外装用下地パネルは長方形であり、一方の長辺において該突出片は該発泡断熱材の端縁から長さaだけ突出しており、他方の長辺において該金属板が該発泡断熱材の端縁から長さbだけ後退しており、
該突出長さaは該後退長さbよりも小さいことを特徴とする外装用下地パネル。
【請求項6】
請求項2に記載の外装用下地パネルを壁面に取り付ける工法であって、一部の外装用下地パネルにあっては、一端縁を切断し、この端縁を未切断の外装用下地パネルに隣接配置することを特徴とする下地パネル取付工法。
【請求項7】
請求項3に記載の外装用下地パネルを壁面に取り付ける工法であって、金属板が後退した端縁を水平方向とした該外装用下地パネルに隣接する外装用下地パネルにあっては、金属板が後退した端縁を上下方向となるように外装用下地パネルを壁面に配置することを特徴とする下地パネル取付工法。
【請求項8】
請求項4に記載の外装用下地パネルを壁面に取り付ける工法であって、前記突出片を、隣接する外装用下地パネルの突出片と反対側の発泡断熱材上に重ねるようにして外装用下地パネルを壁面に取り付けることを特徴とする下地パネル取付工法。
【請求項9】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の外装用下地パネルを壁面に取り付ける工法であって、出隅を構成するように交叉する第1及び第2の壁面にそれぞれ該外装用下地パネルを取り付け、
第1の壁面に取り付けた第1の外装用下地パネルの一側縁を出隅から突出させ、
第2の壁面に取り付けた第2の外装用下地パネルの側端面を該第1の外装用下地パネルの裏側に配置し、
該第1の外装用下地パネルの該一側端の発泡断熱材が該第2の外装用下地パネルの発泡断熱材の前面よりも突出する場合に、この突出した部分を切除することを特徴とする下地パネル取付工法。
【請求項10】
請求項6ないし9のいずれか1項において、該壁面は既存壁面であることを特徴とする下地パネル取付工法。
【請求項11】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の外装用下地パネルにタイルを貼着したことを特徴とするタイル壁。
【請求項12】
出隅を構成するように交叉する第1及び第2の壁面にそれぞれ該外装用下地パネルを取り付け、該外装用下地パネルにタイル張りしてなるタイル壁において、
第1の壁面に取り付けた第1の外装用下地パネルの一側縁を出隅から突出させ、
第2の壁面に取り付けた第2の外装用下地パネルの側端面を該第1の外装用下地パネルの裏側に配置したタイル壁であって、
各外装用下地パネルは請求項1ないし5のいずれか1項に記載の外装用下地パネルであり、
該第2の外装用下地パネルの側端縁のうち第1の外装用下地パネルに沿う部分にあっては、金属板が該側端縁から後退していることを特徴とするタイル壁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−37627(P2006−37627A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−222079(P2004−222079)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】