説明

外観検査方法及び外観検査装置

【課題】半導体装置の外観検査の効率を向上する技術を提供する。
【解決手段】表面に配線が形成され且つ前記配線を覆う膜が形成された半導体装置において、膜に発生するクラックを検査する。膜を透過する光を表面に照射する。その表面の画像の所定方向に沿った輝度の変化率を計算する。その変化率の変化率を2次変化率として計算して2次変化率の分布図を作成する。2次変化率を計算する工程の後に連続性を強調する。連続性の強調は次のように行われる。各画素に対して、自画素の輝度と、複数の方向の各々について両側に隣接する画素の輝度との和を計算する。自画素の輝度を、複数の方向のうち和が最大である方向の和とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の品質を外観によって検査するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の回路を保護するためにソルダーレジスト(SR)が用いられている。SRは、例えばBGA(BALL Grid Array)パッケージにおけるプリント配線基板表面の所定の領域に形成される。
【0003】
基板製造工程や半導体装置製造工程において、外部応力などにより、SRにクラックが発生することがある。このクラックは、不特定な方向に線状に複雑に発生する。半導体装置の品質を保証するために、このようなSRのクラックの外観検査が行われている。
【0004】
特許文献1は、クラック検査方法に関する技術の一例である。透明または半透明の被検査物に光を照射し、クラックにおける光学的な不連続性を用いてクラック検査が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−210476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
SRのクラックの外観検査は、基板及び半導体装置の製造工程や検査工程において、被写体に垂直に同軸落射照明を当て、顕微鏡で目視することによって行われる。図1は、顕微鏡で得られる半導体装置の画像の一例を示す。この例の半導体装置では、基板の表面に配線パターンが形成される。基板の表面及び配線パターン102(暗く写っている部分)を保護するために、それらを覆う半透明のSRが形成される。図中で明るい円形に撮影されているBGA103は、配線パターン102とSR外部とを電気的に接続するために用いられる。
【0007】
画像100に、半導体装置の表面が撮像される。画像100には、SRを透過して配線パターン102が撮像される。更にBGA103のはんだバンプ等の構造が撮像される。検査の担当者は、SRクラック101(明るく写っている細長い部分)が特有の形状を有することに基づいて、配線パターン102やはんだバンプ103等から区別してSRクラック101を識別する。
【0008】
目視による検査は、時間と手間が掛かる。特に、SRのクラックは細いため、その検出には高倍率の顕微鏡を用いることが必要である。高倍率の顕微鏡は視野が狭いために、検査に掛かる時間が増大する。
【0009】
検査の効率を上げるために、撮影した画像100をデジタルデータに変換して画像処理を施すことが考えられる。図2は、画像処理を施した半導体装置の画像100aの一例を示す。エッジを強調する処理により、SRクラック101aが強調されている。検査の担当者はその形状の特性に基づいてSRクラック101aを識別することができる。しかし、このような画像100aでは配線パターン102aやはんだバンプ103aのエッジも強調されるため、自動的なSRクラック101aの識別には不向きである。
【0010】
半導体装置の外観検査の効率を向上する技術が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一側面による外観検査方法は、表面に配線が形成され且つ配線を覆う膜が形成された半導体装置において、膜に発生するクラックを検査するための外観検査方法であって、表面の画像を取得する工程と、画像を形成する各画素の輝度について、複数の方向にそれぞれ沿った複数の2次変化率を合計して2次変化率画像を生成する工程と、2次変化率画像の連続性を強調する工程を備える。連続性を強調する工程は、各画素に対して、自画素の輝度と、複数の方向の各々について両側に隣接する画素の輝度との和を計算する工程と、自画素の輝度を、複数の方向のうち和が最大である方向の和とする工程とを備える。
【0012】
本発明の一側面による外観検査装置は、表面に配線が形成され且つ配線を覆う膜が形成された半導体装置において、膜に発生するクラックを検査するための外観検査装置であって、表面の画像を取得する撮影部と、画像を形成する各画素の輝度について、複数の方向にそれぞれ沿った複数の2次変化率を合計して2次変化率画像を生成する微小変化強調部と、2次変化率画像の連続性を強調する連続性強調部を備える。連続性強調部は、各画素に対して、自画素の輝度と、複数の方向の各々について両側に隣接する画素の輝度との和を計算し、自画素の輝度を、複数の方向のうち和が最大である方向の和とする。
【0013】
このような外観検査方法及び外観検査装置により、半導体装置の表面の膜の細長いクラックが強調され、外観検査の効率を向上することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、半導体装置の外観検査の効率を向上することを可能とする外観検査方法及び外観検査装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、顕微鏡による半導体装置の画像を示す。
【図2】図2は、画像処理の結果を示す。
【図3】図3は、被検査物と、それを検査する外観検査装置の構成を示す。
【図4】図4は、照明の説明図である。
【図5】図5は、照明の下面図である。
【図6】図6は、外観検査方法のフローチャートである。
【図7】図7は、斜光照明とSRのクラックの関係を示す側面図である。
【図8】図8は、同軸落射照明とSRのクラックの関係を示す側面図である。
【図9】図9は、画像処理フィルタ(微小変化強調処理)の説明図である。
【図10】図10は、画像処理フィルタ(連続性強調処理)の説明図である。
【図11】図11は、画像処理フィルタ(ノイズ除去処理)の説明図である。
【図12】図12は、微小変化強調処理の説明図である。
【図13】図13は、微小変化強調処理の説明図である。
【図14】図14は、画像処理の計算例を示す。
【図15】図15は、画像処理前の輝度分布の例を示す。
【図16】図16は、画像処理後の輝度分布の例を示す。
【図17】図17は、顕微鏡による目視検査で使用される同軸落射照明の画像である。
【図18】図18は、斜光照明を用い光電変換スキャナ4で取得した画像である。
【図19】図19は、画像処理の結果を示す。
【図20A】図20Aは、外観検査方法の一実施形態を示すフローチャートである。
【図20B】図20Bは、外観検査方法の一実施形態を示すフローチャートである。
【図21A】図21Aは、外観検査方法の他の実施形態を示すフローチャートである。
【図21B】図21Bは、外観検査方法の他の実施形態を示すフローチャートである。
【図22A】図22Aは、外観検査方法の更に他の一実施形態を示すフローチャートである。
【図22B】図22Bは、外観検査方法の更に他の一実施形態を示すフローチャートである。
【図23A】図23Aは、外観検査方法の更に他の一実施形態を示すフローチャートである。
【図23B】図23Bは、外観検査方法の更に他の一実施形態を示すフローチャートである。
【図23C】図23Cは、外観検査方法の更に他の一実施形態を示すフローチャートである。
【図24】図24は、正規化処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図3は、被検査物1と、それを検査する外観検査装置の構成を示す。外観検査装置は、被検査物1に光を照射する照明2と、被検査物1を撮影してアナログ電気信号として出力する光電変換スキャナ4と、そのアナログ電気信号をデジタル電気信号に変換するA/D変換回路5と、それらを制御する制御回路3とを備える。
【0017】
A/D変換回路5が出力する被検査物1の画像データは、第1記憶回路6と第2記憶回路12がそれぞれ記憶する。正規化回路7は、第1記憶回路6が記憶する画像データのサイズや輝度などを必要に応じて正規化する。正規化された画像データは、SRC(Solder Resist Crack)強調回路8によって処理される。SRC強調回路8は、微小変化強調回路9、連続画素強調回路10及びノイズ除去回路11を備える。これらの回路の動作については後述する。マスク回路13は、SRC強調回路8によって処理された画像と、第2記憶回路12が記憶する元画像とによって、SRCの識別に不要な部分がマスクされたマスク画像を作成する。特徴量算出回路14は、SRCが記録されている可能性のあるマスク画像から、SRCの特徴量を算出する。判定回路15はその特徴量に基づいて被検査物が良品であるか不良品であるかを決定する。出力回路16はその決定の結果を出力する。
【0018】
正規化回路7、SRC強調回路8、マスク回路13、特徴量算出回路14、及び判定回路15は、記憶装置に格納されたプログラムを演算制御装置が読み取って実行することによってソフトウェア的に実現することが可能である。
【0019】
図4は、照明2について説明するための側面図である。図5は、照明2を被検査物1の側から見た下面図である。本実施形態における照明2は、LEDリング照明である。LEDリング照明は、中心の中空部21を取り囲む枠の形状をした支持部材20を備える。図5の例では支持部材20は正方形の枠の形状をしているが、円形であってもよい。照明2は、その支持部材の下面側に、概ね同一平面状に且つ枠の延長方向に沿って並ぶ複数のLED22(発光ダイオード)を備える。
【0020】
光電変換スキャナ4は、照明2の中空部21を通して被検査物1を撮影する。照明2は、LED22が並ぶ平面が被検査物1の検査対象となる基板の主面と平行となるように配置される。照明2は、直上からではなく斜めから被検査物1に照明光23を照射する複数の点光源からなる斜光照明である。照明2と被検査物1との距離を調節することにより、LED22が発生する照明光23が被検査物1に当たる角度が調節される。本願の発明者らが実際の半導体装置について検討したところ、ソルダーレジストのクラックを検査対象とする場合、被検査物1の基板の主面と、照明光23の方向(LED22の光源の中心と、被検査物1の撮影される対象となる部位とを結ぶ線の方向)とが成す角度は、15度以上25度以下であることが好ましい。
【0021】
図6は、以上の構成を備えた外観検査装置を用いた外観検査方法を示すフローチャートである。
【0022】
[ステップS1]
制御回路3は照明を点灯して被検査物1に光を照射する。光電変換スキャナ4は、その反射光を撮像して、被検査物1の画像の情報を含むアナログ電気信号を生成する。A/D変換回路5はその信号を変換してデジタルの画像データを生成する。第1記憶回路6と第2記憶回路12とはそれぞれその画像データを記憶する。正規化回路7はその画像データに必要な正規化を施す。
【0023】
図7は、照明光23とSRのクラック31の関係を示す側面図である。図8は比較のために同軸落射照明を用いた目視検査の場合について照明光35とSRのクラック31の関係を示す。クラック31は、SRの表面に開口している部分である開口部32と、SRの内部も含めたクラック31の幅によって規定される剥離部33とを有する。
【0024】
図8に示す同軸落射照明の場合、開口部32において照明光35が不規則な反射をして、他の箇所のSRの表面の反射光36と輝度が異なる領域として撮像される。クラック31の開口部32以外の剥離部33においては、照明光35はクラック31が無い部分と同じようにSRの表面で反射される(反射光36)。そのため、クラック画像34の幅は開口部32の幅と概ね同じとなる。
【0025】
図7に示す本実施形態の斜光照明の場合、照明2が被検査物1を取り囲むように周囲から斜光を照射する。そのため、照明光23の一部はクラック31の内部まで入り込んで反射する。その反射光38とSRの他の領域の表面における反射光とは輝度が違う。そのため斜方照明においては、クラック31の開口部32の幅だけでなく、剥離部33の幅を有するクラック画像34aが得られる。すなわち斜方照明によれば、同軸落射照明よりも幅の広いクラック画像34aを得ることができる。このような斜光照明の効果により、比較的低倍率であってもクラック31を撮像することができる。その結果、視野の広い画像に基づいてクラック31を認識することができ、検査の効率が向上する。
【0026】
[ステップS2]
SRC強調回路8は、ステップS1で取得した画像に対して画像処理を施すことにより、SRのクラック31を強調した強調画像を生成する。本実施形態において、この処理は以下のステップS3〜S5の処理を含む。
【0027】
[ステップS3]
SRのクラック31は、一次元的な形状を有するヒビであり、半導体装置の配線などの構造に比べて幅が細いことが多い。この経験的事実に基づいて、より幅の細い被写体を強調する画像処理を行うことにより、クラック31を強調した画像を得ることができる。微小変化強調回路9は、そうした画像処理によりクラック31を強調した画像を生成する。
【0028】
ステップS3の微小変化強調処理においては、各画素の輝度について、複数の方向にそれぞれ沿った複数の2次変化率を計算する。各画素について、その複数の方向の2次変化率を合計する。この計算の結果、その合計値を各画素の値とする2次変化率画像(微小変化強調画像)が生成される。
【0029】
例えば2次元の画像データの各画素について、縦方向と横方向の2次変化率を計算し合計することにより、微小変化強調画像を生成することができる。このような画像では、横方向に伸び縦方向に狭い幅を有するクラック(縦方向の2次変化率が大きい)や、縦方向に伸び横方向に狭い幅を有するクラック(横方向の2次変化率が大きい)を強調することができる。このような計算は、ラプラシアンフィルタなどの画像処理フィルタを適用することにより実行することができる。
【0030】
図9の左側の3行3列のアレイは、SRC強調回路8に入力した画像データ(原画像)のある画素とその周囲の画素とを示す。中央の3行3列のアレイは、原画像に適用されるフィルタを示す。フィルタは、原画像の各画素の輝度に対して掛けられる重み付け係数によって構成される。図9の右側の3行3列のアレイは、原画像にフィルタを適用した結果として得られた微小変化強調画像を示す。
【0031】
クラックは様々な方向に伸びている可能性があるため、縦・横・斜めの各方向についての2次変化率の和が用いられることが望ましい。その一例として、図9のフィルタにおいてT1=T2=T3=T4=T6=T7=T8=T9=1、T5=−8とすることにより、縦横斜めの各方向について同程度に微小変化を強調することができる。
【0032】
次に図12を参照して、微小変化強調処理について説明する。図12の最上段は、原画像の内の或る線分に沿って抽出した一次元的な輝度分布の例を示す。左欄に示すパターンは、被検査物1である半導体装置の半導体パッケージ上に形成された配線の横断面を示す。右欄に示すパターンは、SRのクラック31の横断面を示す。図12に示されるように、配線の画像は、立上り端と立下り端との間に平坦な上面を有する場合が多い。図12の例では、例えば図の左側から右側に画像処理を施すと考えると、中央の平坦なトップを有するピークの左端が立上り端であり、右端が立下り端である。一方クラック31は配線よりも細く、頂上部が尖り、平坦なトップ面を持たない場合が多い。
【0033】
図12の2段目は、微小変化強調処理回路9が実行する1次微分処理の結果の一例を示す。左欄は配線パターンの処理結果を示す。配線の立上り端では正値のピークが得られる。配線の立下り端では負値のピークが得られる。それら正負のピークの間には、配線の幅に相当して、1次微分が概ね0の領域が得られる。
【0034】
一方、図12の2段目右欄は、SRのクラック31に対して1次微分処理を施した結果を示す。クラック31の立上り端と立下り端とでは、配線パターンと同様に正のピークと負のピークが得られる。しかしながら通常クラック31は幅が細くピークが鋭い。そのため配線の場合のような正負のピークの間の平坦な領域が見られない。1次微分の正のピークの立下り端は、負のピークの立下り端に概ね連続する。
【0035】
図12の3段目は、微小変化強調処理回路9が実行する2次微分処理の結果の一例を示す。左欄の配線パターンの場合は、原画像の立上り端と立下り端に相当する位置の各々に、正のピークと負のピークの対が得られる。一方、右欄のクラック31の場合は、原画像のピークの位置において、1次微分の正負のピークが互いに接近しているために、2次微分に大きい絶対値を有する負のピークが得られる。
【0036】
図13の最上段は、微小変化強調処理回路9が図12の3段目に示した処理結果に−1を掛けて得た結果の例を示す。クラック31の原画像のピークに相当する位置に、大きい正値を有するピークが得られる。
【0037】
図14に計算例を示す。図14の最上段は原画像の特定の画素に注目した場合の、その周辺の3行3列の画素からなる領域の輝度を示す。左欄は、値1の平坦なピークを有する配線パターンの立上り端における輝度分布を示す。左右方向の複数の画素に連続して1が並んでいることが、配線の幅方向に平坦なピークに相当する。右欄は、値1のピークを有するクラック31の箇所における輝度分布を示す。幅が1画素分で図の上下方向に延長するクラック31が例示されている。
【0038】
図14の2段目は、原画像に対して微小変化強調処理を行った結果を示す。左欄の配線パターンでは正に3、負に3の値のピークが得られる。それに対して右欄のクラック31では中心に正に6の値のピークが得られる。以上の微小変化強調処理によって、配線パターンに対して、より微細なパターンであるSRのクラック31のピーク値を強調することができる。図9を参照して説明した画像処理フィルタの例のように、中心画素に対して縦横斜めの各方向の隣接画素に同じ重み付けの画像処理フィルタを用いることにより、いずれの方向に延長するSRのクラック31であっても、図14に示したように強調処理を行うことができる。
【0039】
[ステップS4]
連続画素強調回路10は、微小変化強調処理によって得られた画像に対して、輝度の稜線(ピークが連続する領域)を強調する処理を行う。この処理は、微小変化強調画像の各画素について以下の計算を行うことで実行できる。自画素の輝度と、複数の方向の各々について両側に隣接する画素の輝度との和を計算する。例えば、自画素と縦方向の両側の画素との輝度の和を第1和として計算し、自画素と横方向の両側の画素との輝度の和を第2和として計算する。それらの和の内で最大値を自画素の輝度とすることにより、稜線強調画像を生成することができる。
【0040】
図10では、注目する自画素がEで示されている。この画素について稜線強調処理を施す場合、3行3列の画素の範囲内で、縦・横・斜めの合計4方向の各々について、輝度の和を計算する。その4方向の各々の和のうち最大値を抽出して、注目する画素の値とする処理を行う。すなわち注目する画素の値を次の値とする。
Max((A+E+I)、(B+E+H)、(C+E+G)、(D+E+F))
【0041】
この処理を微小変化強調処理画像の各画素について実行することにより、孤立しているピークに対して、画素のピーク値が稜線上に連続している領域が強調される。図13の2段目は、その処理結果を示す。クラック31の微小変化強調処理画像はピークの値が大きく、且つピークがクラックの延長線上に沿って連続するため、稜線強調処理によってピークが更に強調される。
【0042】
図14の3段目は稜線強調処理の計算例を示す。配線パターンのエッジのピーク値が3から9に強調される。一方、クラック31のピーク値は6から18に強調される。
【0043】
[ステップS5]
稜線強調処理画像に対して、予め指定した縦横のサイズよりも小さい図形を除去する。図11は、そのような処理の一例を示す。左側の3行3列のアレイでは、中心画素のみ値1を有する。このような孤立した領域は、たとえ大きい値を持っていても、検査対象となるクラック31ではないため、右側の3行3列のアレイのように画像処理によって除去する。この処理により細かいノイズが除去され、所定以上のサイズを有する稜線等のピークのみが残されたSRC強調処理画像が得られる。
【0044】
以上のステップS1〜S5をSRのクラック31の画像に適用した例が図15、図16に示されている。図15は、SRC強調回路8に入力する原画像において、SRのクラック31を横断する線上の画素の輝度分布を示している。この図では、クラック31のコントラストの幅は輝度レベルで40程度である。図16は、この原画像に対してステップS3〜S5の処理を施した結果として得られる濃淡レベルの分布を示す。クラック31のコントラスト幅が150に拡大されている。
【0045】
[ステップS6]
このようにステップS2〜S5の処理によって、配線などの他のパターンに比べてSRのクラック31を強調することが可能である。このように得られた強調処理後の画像に対して、例えば所定の閾値の濃淡レベルで2値画像化することにより、概ねクラック31のみを抽出し、配線パターンなどの紛らわしい画像を削除したSRC抽出画像を生成することができる。
【0046】
特徴量算出回路14は、ノイズが除去された半導体装置の画像から特徴量を抽出する。特徴量としては、例えば輝度が所定の基準よりも大きい(又はSRCが暗く写る画像の場合は、所定の基準よりも小さい)画素が線状に連続する領域(SRC候補と考えられる領域)に含まれる画素数の合計や最大長さを用いることができる。
【0047】
判定回路15は、所定の基準、例えば或る特徴量に関する予め登録した閾値を用いて、抽出された特徴量に基づいて半導体装置の良否判定を行い、その結果を出力回路16によって出力する。
【0048】
以上の処理により、人間が目視検査する場合には判別が容易だが自動判別においてはクラック31と紛らわしい配線パターンなどの影響を取り除いくことが可能であり、SRのクラック31の自動検査が高い精度で可能となる。また斜光照明を用いることにより低倍率でクラック画像の幅を確保することができるため、検査の効率を向上させることができる。
【0049】
外観検査装置は、特徴量算出回路14と判定回路15を省略した場合でも効果を有する。その場合は、SRC強調回路8によってSRCが強調された画像を検査員が目視することにより、SRC及び製品の良否判定を行う。SRCが強調されているため、検査の効率が向上する。
【0050】
図17〜図19は、半導体装置の画像に対して本実施形態の画像処理を適用した例を示す。図17は、顕微鏡による目視検査で使用される同軸落射照明の画像である。図18は、斜光照明を用い、光電変換スキャナ4で取得した画像である。図19は、図18の画像に対して本実施形態の画像処理を適用した画像である。原画像において比較的薄いクラックCを自動的に強調することができた。
【0051】
以上の説明では、半導体基板と基板表面の配線を覆うソルダーレジストのクラックの検査を例として挙げた。しかしながら、以上の外観検査方法及び外観検査装置は、他の検査にも適用することができる。表面に配線が形成された半導体装置において、その配線が半透明又は透明の膜で覆われており、その膜に配線よりも細い幅のクラックが発生した場合、上記の方法と同様にしてクラックを自動的に強調することができる。
【0052】
図6を参照して説明した外観検査方法について、以下により具体的に説明する。図20Aと図20Bは、外観検査方法の一実施形態を示す。
ステップS11〜S15は、図6のステップS1に相当する。制御回路3は、図4と図5を参照して説明した斜光照明によって構成された照明2を点灯する。照明光としては、半導体基板上の膜(例えばソルダーレジスト)を透過する波長を含む光が用いられる(ステップS11)。
【0053】
制御回路3は、照明が点灯している間に、光電変換スキャナ4によって被検査物1(半導体装置の表面)を撮像し(ステップS12)、その画像をA/D変換回路5によりデジタルの画像データに変換する(ステップS13)。第1記憶回路6は、この画像データを原画像として記憶する。制御回路3は、撮像が終了すると照明2を消灯する(ステップS15)。
【0054】
ステップS16とS20は、図6のステップS2に相当する。ステップS17〜S19は、それぞれ図6のステップS2〜S5に相当し、これらの画像処理が施され、2値化されたSRC強調処理画像が記憶装置に記憶される(ステップS20)。
【0055】
ステップS21以降は、図6のステップS6に相当する。第1記憶回路6が記憶した原画像が、その各画素の輝度を所定の閾値に基づいて2値化することにより、2値画像に変換される(ステップS21)。
【0056】
特徴量算出回路14は、SRC強調処理画像からステップS21で生成された2値画像を引く、すなわち各画素の輝度の差を算出し、その差を各画素の輝度値とする画像(SRCの検出画像)を生成する。この検出画像においては、輝度の変化の少ない領域や、幅の太い構造などが概ね除去され、SRCが強調されている(ステップS22)。
【0057】
特徴量算出回路14は、検出画像の中に含まれるピークの稜線を構成する画素数の合計を、各稜線について計算する。これにより、各稜線の規模を示す特徴量が得られる(ステップS23)。
【0058】
判定回路15は、特徴量に基づいて被検査物1の良否判定を行う。例えば、画素数の合計値が所定の閾値を上回っている稜線が存在した場合に被検査物1を不良品と判定する。全ての稜線の各々について、画素数の合計値がその所定の閾値以下である場合に被検査物1を良品と判定する(ステップS24)。出力回路16は、その良否判定の結果を出力する(ステップS25)。
【0059】
図21A、図21Bは、本発明の他の実施形態における外観検査方法を示す。本実施形態においては、異なる複数の条件で撮影した被検査物1の画像を用いて外観検査を行う。ステップS11〜S15においては図20A、図20Bと同様の処理が行われ、第1の条件下で撮影された第1の原画像データ(グレイスケール)が得られる。
【0060】
照明が切り替えられて点灯される(ステップS31、S32)。ステップS11で使用される照明と、ステップS32で使用される照明は、例えば波長が異なる。ステップS32〜S36においては、それぞれステップS11〜S15と同様の処理が行われ、第2の条件下で撮影された第2の原画像データ(グレイスケール)が得られる。
【0061】
SRC強調回路8は、第1の原画像と第2の原画像の差を取ることにより、処理画像を生成する(ステップS37)。ステップS17〜S20において、ステップS37で得られた処理画像に対して、図20A、図20Bと同じ画像処理が施され、SRC強調処理画像が生成される。
【0062】
マスク回路13は、所定の輝度の閾値に基づいて第1の原画像と第2の原画像をそれぞれ2値化することにより、第1の2値化画像と第2の2値化画像とを生成する(ステップS21、S38)。マスク回路13は、第1の2値化画像と第2の2値化画像を足す、すなわち各画素の輝度の和を取ることにより、マスク画像を生成する(ステップS39)。
【0063】
特徴量算出回路14は、SRC強調処理画像からステップS39で生成されたマスク画像を引くことによって、SRCの検出画像を生成する。この検出画像においては、輝度の変化の少ない領域や、幅の太い構造などが概ね除去され、SRCが強調されている(ステップS40)。ステップS23〜S25においては、ステップS40で生成された検出画像に対して、図20A、図20Bと同じ処理が行われ、被検査物1の良否判定が行われる。
【0064】
本実施形態においては、互いに異なる条件の照明を用いて撮影された第1の原画像と第2の原画像との差分画像に対してSRC強調処理が行われる。半導体装置において、SRCや配線などの領域は互いに異なる色で写ることがある。そのため第1の原画像と第2の原画像との差分を取ることにより、SRCを配線などの他の構造に比べて強調した画像を得ることができる。
【0065】
図22A、図22Bは、本発明の更に他の実施形態における外観検査方法を示す。ステップS11〜S36までは、図22A、図22Bと同じ処理が行われる。本実施形態においては、ステップS17〜S20において、ステップS14で記憶した第1の原画像データに対して画像処理が施され、SRC強調処理画像が得られる。
【0066】
ステップS38において、ステップS35で記憶した第2の原画像データが2値化される。ステップS51において、特徴量算出回路14は、SRC強調処理画像から2値化された第2の原画像を引くことにより、検出画像を生成する。ステップS23〜S25においては、その検出画像に対して図20A、図20Bと同じ処理が行われる。このような実施形態によっても、図21A、図21Bの処理と同様の効果を得ることができる。
【0067】
図23A〜図23Cは、本発明の更に他の実施形態における外観検査方法を示す。ステップS11〜S36までは図21A、図21Bと同じ処理が行われる。ステップS61でヒストグラムが算出され、S62で輝度レベルの正規化が行われる。図24は、その処理の詳細を示す。
【0068】
正規化回路7は、第1の原画像に関して、輝度レベルを横軸とし、各輝度レベルを示す画素数を縦軸とするヒストグラムを算出する(ステップS61)。
【0069】
図24のステップS82、S83は、図23BのステップS62に対応する。正規化回路7は、ヒストグラムの左右の端を検出する。すなわち度数が1以上の輝度レベルを検出し、その中で最小輝度レベル(Kmin)と最大輝度レベル(Kmax)とを算出する(ステップS82)。
【0070】
輝度分布の幅、すなわち原画像のダイナミックレンジは、Kmax−Kminによって示される。正規化回路7は、原画像の各画素について、Kmax−Kminで正規化する。具体的には、各画素の輝度Vについて次の計算を行って、正規化された輝度Vnを算出する。
Vn=255*(V−Kmin)/(Kmax−Kmin)
この計算により、原画像が0〜255までの輝度を有するグレイスケール画像に変換される。
【0071】
ステップS17〜S20までは、正規化された第1の原画像に対して、図20A、図20Bと同じ処理が行われる。ステップS21〜S40までは、図21A、図21Bと同じ処理が行われる。ステップS63において、特徴量算出回路14は、SRC強調処理画像に含まれる線(SRCの候補であると考えられる)の各々を特定するラベリングを行う(ステップS102)。特徴量算出回路14は、そのラベリングに基づいて、SRC候補の各線の画素数の総和と、長さとを算出する(ステップS103)。
【0072】
ステップS24において、各SRC候補について、画素数の総和と長さとが所定の基準値と比較される。その比較結果により、SRC候補の規模が許容範囲内であると判定された場合、被検査物1は良品であると判定される(ステップS24〜S25)。
【符号の説明】
【0073】
1 被検査物
2 照明
3 制御回路
4 光電変換スキャナ
5 A/D変換回路
6 第1記憶回路
7 正規化回路
8 SRC強調回路
9 微小変化強調回路
10 連続画素強調回路
11 ノイズ除去回路
12 第2記憶回路
13 マスク回路
14 特徴量算出回路
15 判定回路
16 出力回路
20 支持部材
21 中空部
22 LED
23 照明光
31 クラック
32 開口部
33 剥離部
34、34a クラック画像
35 照明光
36 反射光
38 反射光
100、100a 画像
101、101a SRクラック
102、102a 配線パターン
103、103a はんだバンプ
C クラック
SR ソルダーレジスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に配線が形成され且つ前記配線を覆う膜が形成された半導体装置において、前記膜に発生するクラックを検査するための外観検査方法であって、
前記表面の画像を取得する工程と、
前記画像を形成する各画素の輝度について、複数の方向にそれぞれ沿った複数の2次変化率を合計して2次変化率画像を生成する工程と、
前記2次変化率画像の連続性を強調する工程を具備し、
前記連続性を強調する工程は、
各画素に対して、自画素の輝度と、複数の方向の各々について両側に隣接する画素の輝度との和を計算する工程と、
前記自画素の輝度を、前記複数の方向のうち前記和が最大である方向の前記和とする工程
とを具備する外観検査方法。
【請求項2】
請求項1に記載された外観検査方法であって、
更に、前記連続性を強調する工程の後に、輝度が所定の基準よりも大きい画素が線状に連続する領域の最大長さ又は画素数を計算する工程と、
前記最大長さ又は画素数が所定値以上の場合に前記半導体装置を不良品と判定する工程
とを具備する外観検査方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された外観検査方法であって、
前記画像を取得する工程は、前記膜を透過する光を、前記画像を取得するための光学系の光軸方向から見て被写体を囲むように配置された光源から前記表面に照射する工程を備える
外観検査方法。
【請求項4】
請求項3に記載された外観検査方法であって、
前記膜はソルダーレジストであり、
前記光源の中心と前記被写体の中心とを結ぶ線と、前記基板の表面とが成す角度は、15度以上25度以下である
外観検査方法。
【請求項5】
表面に配線が形成され且つ前記配線を覆う膜が形成された半導体装置において、前記膜に発生するクラックを検査するための外観検査装置であって、
前記表面の画像を取得する撮影部と、
前記画像を形成する各画素の輝度について、複数の方向にそれぞれ沿った複数の2次変化率を合計して2次変化率画像を生成する微小変化強調部と、
前記2次変化率画像の連続性を強調する連続性強調部を具備し、
前記連続性強調部は、
各画素に対して、自画素の輝度と、複数の方向の各々について両側に隣接する画素の輝度との和を計算し、
前記自画素の輝度を、前記複数の方向のうち前記和が最大である方向の前記和とする
外観検査装置。
【請求項6】
請求項5に記載された外観検査装置であって、
更に、前記連続性を強調する工程の後に、輝度が所定の基準よりも大きい画素が線状に連続する領域の最大長さを計算する最大長さ計算部と、
前記最大長さが所定値以上の場合に前記半導体装置を不良品と判定する判定部
とを具備する外観検査装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載された外観検査装置であって、
更に、前記膜を透過する光を、前記画像を取得するための光学系の光軸方向から見て被写体を囲むように配置された光源から前記表面に照射する照明部
を具備する外観検査装置。
【請求項8】
請求項7に記載された外観検査装置であって、
前記膜はソルダーレジストであり、
前記光源の中心と前記被写体の中心とを結ぶ線と、前記基板の表面とが成す角度は、15度以上25度以下である
外観検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20A】
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【図20B】
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【図21A】
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【図21B】
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【図22A】
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【図22B】
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【図23A】
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【図23B】
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【図23C】
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【図24】
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【公開番号】特開2012−42369(P2012−42369A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−184685(P2010−184685)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】